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JP5143196B2 - 半導体装置用フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、チップ状ワーク(半導体チップ等)と電極部材とを固着するための接着剤を、ダイシング前にワーク(半導体ウェハ等)に付設した状態で、ワークのダイシングに供する半導体装置用フィルムに関する。また、本発明は前記半導体装置用フィルムを用いて製造された半導体装置に関する。
回路パターンを形成した半導体ウェハは、必要に応じて裏面研磨により厚さを調整した後、半導体チップにダイシングされる(ダイシング工程)。次いで、前記半導体チップを接着剤にてリードフレーム等の被着体に固着(ダイアタッチ工程)した後、ボンディング工程に移される。前記ダイアタッチ工程に於いては、接着剤をリードフレームや半導体チップに塗布して行っていた。しかし、この方法では接着剤層の均一化が困難であり、また接着剤の塗布に特殊装置や長時間を必要とする。このため、ダイシング工程で半導体ウェハを接着保持するとともに、マウント工程に必要なチップ固着用の接着剤層をも付与するダイシング・ダイボンドフィルムが提案されている(例えば、特開昭60−57642号公報参照)。
前記公報に記載のダイシング・ダイボンドフィルムは、基材上に粘着剤層及び接着剤層が順次積層され、当該接着剤層を剥離可能に設けてなるものである。即ち、接着剤層による保持下に半導体ウェハをダイシングしたのち、基材を延伸して半導体チップを接着剤層とともに剥離し、これを個々に回収してその接着剤層を介してリードフレーム等の被着体に固着させるようにしたものである。
この種のダイシング・ダイボンドフィルムは、高温・高湿の環境下に置かれたり、荷重が加えられた状態で長期間保存されると硬化する場合がある。その結果、接着剤層の流動性や、半導体ウェハに対する保持力の低下、ダイシング後の剥離性の低下を招来する。このため、ダイシング・ダイボンドフィルムは−30〜−10℃の冷凍、又は−5〜10℃の冷蔵状態で保存しながら輸送されることが多く、これによりフィルム特性の長期間の保存を可能にしている。
しかしながら、従来のダイシング・ダイボンドフィルムは、製造工程上の制約から、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムをそれぞれ個別に作製した上で、両者を貼り合わせて作製している。このため、各々フィルム作製工程において弛みや巻ズレ、位置ズレ、ボイド(気泡)等が発生するのを防止する観点から、ロールによる搬送の際に各フィルムに引張張力を加えながらその作製が行われる。その結果、作製されたダイシング・ダイボンドフィルムには残留応力が残存しており、これにより前述の低温状態での輸送や長時間の保管後において、粘着剤層と接着剤層の界面で両者の剥離を生じるという問題がある。また、ダイシング・ダイボンドフィルムの収縮により、例えば接着剤層上に設けられたカバーフィルムにフィルム浮き現象が発生するという問題もある。更に、接着剤層の一部がカバーフィルムに転写する問題もある。
特開昭60−57642号公報
本発明は、ダイシングフィルム上に接着フィルム及びカバーフィルムが順次積層された半導体装置用フィルムであって、低温状態での輸送や長時間の保管後においても、各フィルム間での界面剥離やフィルム浮き現象、接着フィルムのカバーフィルムへの転写を防止することが可能な半導体装置用フィルム、及びそれを用いて得られる半導体装置を提供することを目的とする。
本願発明者等は、前記従来の課題を解決すべく、半導体装置用フィルム、及びそれ用いて得られる半導体装置について検討した。その結果、下記構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係る半導体装置用フィルムは、前記の課題を解決する為に、ダイシングフィルム上に接着フィルム及びカバーフィルムが順次積層された半導体装置用フィルムであって、温度23±2℃、剥離速度300mm/minの条件下でのT型剥離試験における、前記接着フィルムと前記カバーフィルムの間の剥離力F1は0.025〜0.075N/100mmの範囲内であり、前記接着フィルムと前記ダイシングフィルムの間の剥離力F2は0.08〜10N/100mmの範囲内であり、前記F1と前記F2はF1<F2の関係を満たすことを特徴とする。
半導体装置用フィルムは、弛みや巻ズレ、位置ズレ、ボイド(気泡)等の発生防止の観点から、ダイシングフィルムや接着フィルム、カバーフィルムに引張張力を加えながら製造される。その結果、半導体装置用フィルムは、それを構成するフィルムの何れかに引張残留歪みが存在した状態で製造される。この引張残留歪みは、例えば、−30〜−10℃の冷凍、又は−5〜10℃の低温状態で輸送したり長時間保管した場合に、各フィルムで収縮を引き起こす。更に、各フィルムは物性が相違することから収縮の程度も相違する。例えば、ダイシングフィルムは各フィルムの中で最も収縮の程度が大きく、カバーフィルムは最も収縮の程度が小さい。その結果、ダイシングフィルムと接着フィルムの間で界面剥離を生じさせたり、カバーフィルムのフィルム浮き現象を引き起こす。
本願発明は、接着フィルムとカバーフィルムの間の剥離力Fを0.025〜0.075N/100mmの範囲とし、かつ、接着フィルムとダイシングフィルムの間の剥離力Fを0.08〜10N/100mmの範囲内とした上で、F<Fの関係を満たす構成を採用したものである。前述の通り、各フィルムにおける収縮はダイシングフィルムが最も大きいことから、接着フィルムとカバーフィルムの間の剥離力Fよりも、接着フィルムとダイシングフィルムの間の剥離力Fを大きくすることで、最も収縮率の大きいダイシングフィルムの収縮を抑制し、ダイシングフィルムと接着フィルムの間の界面剥離や、カバーフィルムのフィルム浮き現象を防止するものである。更に、接着フィルムの一部又は全部がカバーフィルムに転写することも防止できる。
前記の構成に於いては、前記ダイシングフィルム、接着フィルム又はカバーフィルムの少なくとも何れかに引張残留歪みが存在していてもよい。前記「引張残留歪み」とは、ダイシングフィルム、接着フィルム又はカバーフィルムに対し、その長手方向(即ち、フィルムのMD(machine direction)方向)や幅方向(長手方向と直行するTD(transverse direction)方向)に引張張力を加えることにより歪みが残留していることを意味する。
更に、前記構成に於いては、前記接着フィルムにおける接着剤組成物のガラス転移温度が−20〜50℃の範囲内であることが好ましい。接着剤組成物のガラス転移温度を−20℃以上にすることにより、Bステージ状態での接着フィルムのタック性が大きくなるのを抑制し、良好な取り扱い性を維持することができる。また、ダイシングの際に、ダイシングフィルムの一部が溶融して粘着剤が半導体チップに付着するのを防止することができる。その結果、半導体チップの良好なピックアップ性を維持することができる。その一方、ガラス転移温度を50℃以下にすることにより、接着フィルムの流動性の低下を防止できる。また、半導体ウェハとの良好な接着性も維持することができる。なお、接着フィルムが熱硬化型の場合、接着剤組成物のガラス転移温度とは、熱硬化前のことをいう。
更に、前記構成に於いて、前記接着フィルムは熱硬化型であり、熱硬化前の23℃における引張弾性率が50〜2000MPaの範囲内であることが好ましい。前記引張貯蔵弾性率を50MPa以上にすることにより、ダイシングの際に、粘着剤層の一部が溶融して粘着剤が半導体チップに付着するのを防止することができる。その一方、引張貯蔵弾性率を2000MPa以下にすることにより、半導体ウェハや基板との良好な接着性も維持することができる。
前記構成に於いて、前記ダイシングフィルムは基材上に紫外線硬化型の粘着剤層が積層されたものであり、前記粘着剤層の紫外線硬化後の23℃における引張弾性率が1〜170MPaの範囲内であることが好ましい。ダイシングフィルムの引張弾性率を1MPa以上にすることにより、良好なピックアップ性を維持することができる。その一方、引張弾性率を170MPa以下にすることにより、ダイシングの際のチップ飛びの発生を防止することができる。
また、本発明に係る半導体装置は、前記に記載の半導体装置用フィルムを用いて製造されたものである。
本発明の半導体装置用フィルムによれば、接着フィルムとカバーフィルムの間の剥離力Fを0.025〜0.075N/100mmの範囲内とし、かつ、接着フィルムとダイシングフィルムの間の剥離力Fを0.08〜10N/100mmの範囲内とした上で、F<Fの関係を満足させることにより、−30〜−10℃の冷凍、又は−5〜10℃の低温状態で輸送したり、長時間の保管した後においても、引張残留歪みに起因した各フィルム間の界面剥離やフィルム浮き現象、接着フィルムのカバーフィルムへの転写を防止することができる。その結果、例えばダイシングフィルムと接着フィルムの間での界面剥離の防止により、半導体ウェハのダイシングの際に半導体チップがチップ飛びしたりチッピングするのを防止することができる。また、カバーフィルムのフィルム浮き現象の防止により、接着フィルム上に半導体ウェハをマウントした際にも接着フィルムと半導体ウェハの間にボイド(気泡)やシワが発生するのを防止することができる。即ち、本発明であると、歩留まりを低減させて半導体装置を製造することが可能な半導体装置用フィルムを提供することができる。
本発明の実施の一形態に係る半導体装置用フィルムの概略を表す断面図である。 前記半導体装置用フィルムの製造過程を説明するための概略図である。
本実施の形態に係る半導体装置用フィルムについて以下に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る半導体装置用フィルム10は、ダイシング・ダイボンドフィルム1上にカバーフィルム2が積層された構造である。前記ダイシング・ダイボンドフィルム1は、ダイシングフィルム11上にダイボンドフィルム12が積層されており、更にダイシングフィルム11は基材13上に粘着剤層14が積層された構造である。なお、ダイボンドフィルム12は、本発明の接着フィルムに相当する。
本発明の接着フィルムは、ダイボンドフィルムや、フリップチップ型半導体裏面用フィルムとして用いることができる。フリップチップ型半導体裏面用フィルムとは、被着体(例えば、リードフレームや回路基板等の各種基板)上にフリップチップ接続された半導体素子(例えば、半導体チップ)の裏面に形成するために用いられるものである。
本発明の半導体装置用フィルムは、ダイシングフィルム上に接着フィルム及びカバーフィルムが順次積層された構成を有している。ダイシングフィルム上に接着フィルムが積層されたものは、ダイシングシート付接着フィルムである。接着フィルムがダイボンドフィルムである場合、ダイシングシート付接着フィルムは、ダイシング・ダイボンドフィルムに相当する。
前記ダイボンドフィルム12と前記カバーフィルム2の間の剥離力Fは、ダイボンドフィルム12とダイシングフィルム11の間の剥離力Fよりも小さい。半導体装置用フィルム10は、その製造過程において、弛みや巻ズレ、位置ズレ、ボイド(気泡)等の発生防止の観点から、ダイシングフィルム11、ダイボンドフィルム12及びカバーフィルム2に対し引張張力を加えながら積層し製造される。そのため、各フィルムには引張残留歪みが存在する。この引張残留歪みは、例えば、−30〜−10℃の冷凍、又は−5〜10℃の低温状態で輸送したり長時間保管した場合に各フィルムでそれぞれ収縮を引き起こす。例えば、ダイシングフィルムは最も収縮の程度が大きく、カバーフィルムは最も収縮の程度が小さい。ここで、本実施の形態に係る半導体装置用フィルムは、前記剥離力F及びFをF<Fの関係にすることで、各フィルムでの収縮の差異に起因したフィルム間の界面剥離やカバーフィルム2のフィルム浮き現象を防止することができる。更に、ダイボンドフィルム12の一部又は全部がカバーフィルム2に転写することも防止できる。
前記ダイボンドフィルム12と前記カバーフィルム2の間の剥離力Fは0.025〜0.075N/100mmの範囲内が好ましく、0.03〜0.06N/100mmの範囲内がより好ましく、0.035〜0.05N/100mmの範囲内が特に好ましい。剥離力Fが0.025N/100mm未満であると、例えば−30〜−10℃の冷凍、又は−5〜10℃の低温状態で輸送したり長時間保管した場合に、ダイボンドフィルム12及びカバーフィルム2が各々異なる収縮率で収縮し、これによりカバーフィルム2のフィルム浮き現象が生じる場合がある。また、半導体装置用フィルム10等の搬送中に、シワや巻きズレ、異物の混入を発生させる場合がある。更に、半導体ウェハのマウントの際にダイボンドフィルム12と半導体ウェハとの間でボイド(気泡)を発生させる場合がある。その一方、剥離力Fが0.075N/100mmより大きいと、ダイボンドフィルム12とカバーフィルム2の密着性が強すぎるので、カバーフィルム2の剥離やその収縮の際に、ダイボンドフィルム12を構成する接着剤(詳細については後述する。)が一部又は全面に転写する場合がある。尚、前記剥離力Fの値は、ダイボンドフィルム12が熱硬化型である場合は、熱硬化前のダイボンドフィルム12とカバーフィルム2の間の剥離力を意味する。
また、前記ダイボンドフィルム12とダイシングフィルム11の間の剥離力Fは0.08〜10N/100mmの範囲内が好ましく、0.1〜6N/100mmの範囲内がより好ましく、0.15〜0.4N/100mmの範囲内が特に好ましい。剥離力F2が0.08N/100mm未満であると、例えば−30〜−10℃の冷凍、又は−5〜10℃の低温状態で輸送したり長時間保管した場合に、ダイシングフィルム11及びダイボンドフィルム12が各々異なる収縮率で収縮し、これによりダイシングフィルム11とダイボンドフィルム12の間で界面剥離を生じる場合がある。また、半導体装置用フィルム10等の搬送中に、シワや巻きズレ、異物の混入、ボイドを発生させる場合がある。更に、半導体ウェハをダイシングする際にチップ飛びやチッピングを発生する場合もある。その一方、剥離力Fが10N/100mmより大きいと、半導体チップのピックアップの際に、ダイボンドフィルム12と粘着剤層14との間での剥離が困難となり、半導体チップのピックアップ不良を引き起こす場合がある。また、接着剤付き半導体チップに粘着剤層14を構成する粘着剤(詳細については後述する。)が糊付着する場合がある。尚、前記剥離力Fの数値範囲は、ダイシングフィルム11に於ける粘着剤層が紫外線硬化型であり、かつ、予め紫外線照射により一定程度硬化された場合も包含している。また、紫外線照射による粘着剤層の硬化は、ダイボンドフィルム12と貼り合わせる前であってもよく、貼り合わせた後であってもよい。
前記剥離力F及びFの値は、温度23±2℃、剥離速度300mm/min、チャック間距離100mmの条件下で行ったT型剥離試験(JIS K6854−3)における測定値である。また、引張試験機としては、商品名「オートグラフAGS−H」((株)島津製作所製)を用いた。
前記ダイシングフィルム11における前記基材13は、ダイシングフィルム11だけでなく半導体装置用フィルム10の強度母体となるものである。前記基材13としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。尚、粘着剤層14が紫外線硬化型の場合、基材13としては前記に例示したもののうち紫外線透過性を有するものが好ましい。
また基材13の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後にその基材13を熱収縮させることにより粘着剤層14とダイボンドフィルム12との接着面積を低下させて、半導体チップの回収の容易化を図ることができる。
基材13の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
前記基材13は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材13には、帯電防止能を付与する為、前記の基材13上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材13は単層あるいは2種以上の複層でもよい。
前記基材13の厚さは特に制限されず適宜に設定できるが、例えば5〜200μm程度である。前記熱収縮によってダイボンドフィルム12による張力に耐えられる厚さで有れば、特に制限されるものではない。
前記粘着剤層14の形成に用いる粘着剤としては特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤を用いることができる。前記感圧性粘着剤としては、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。尚、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
更に、前記アクリル系ポリマーは、架橋させる為、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、更に好ましくは40万〜300万程度である。
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高める為、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、更には0.1〜5重量部配合するのが好ましい。更に、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
粘着剤層14は紫外線硬化型粘着剤により形成することができる。紫外線硬化型粘着剤は、紫外線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができ、粘着剤層14の半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分のみを紫外線照射することにより他の部分との粘着力の差を設けることができる。
前記粘着剤層14を紫外線硬化させた後の23℃におけるダイシングフィルム11の引張弾性率は1〜170MPaの範囲内が好ましく、5〜100MPaの範囲内がより好ましい。前記引張弾性率を1MPa以上にすることにより、良好なピックアップ性を維持することができる。その一方、引張弾性率を170MPa以下にすることにより、ダイシングの際のチップ飛びの発生を防止することができる。尚、前記紫外線の照射は、例えば30〜1000mJ/cmの紫外線照射積算光量で行われることが好ましい。紫外線照射積算光量が30mJ/cm以上にすることにより、粘着剤層14を不足なく硬化させることができ、ダイボンドフィルム12との過度な密着を防止できる。その結果、半導体チップのピックアップの際に、良好なピックアップ性を示すことができる。また、ピックアップ後にダイボンドフィルム12に粘着剤層14の粘着剤が付着(いわゆる糊残り)するのを防止できる。その一方、紫外線照射積算光量を1000mJ/cm以下にすることにより、粘着剤層14の粘着力の極度の低下を防止し、これによりダイボンドフィルム12との間で剥離が生じて、マウントされた半導体ウェハの脱落が生じるのを防止する。また、半導体ウェハのダイシングの際に、形成された半導体チップのチップ飛びが発生するのを防止することができる。
前記引張弾性率の値は、次の測定方法によるものである。即ち、ダイシングフィルム11から長さ10.0mm、幅2mm、断面積0.1〜0.5mmのサンプルを切り出す。このサンプルに対し、測定温度23℃、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minでMD方向に引張試験を行い、当該サンプルが伸長したことによるその変化量(mm)を測定した。これにより、得られたS−S(Strain-Strength)曲線において、その初期の立ち上がりの部分に接線を引き、その接線が100%の伸びに相当するときの引張強度をダイシングフィルム11の断面積で除し、得られた値を引張弾性率としている。
ここで、ダイボンドフィルム12は、半導体ウェハの平面視における形状に応じて、その貼り付け部分にのみ形成した構成であってもよい。この場合、ダイボンドフィルム12の形状に合わせて紫外線硬化型の粘着剤層14を硬化させることにより、半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分の粘着力を容易に低下させることができる。粘着力の低下した前記部分にダイボンドフィルム12が貼付けられる為、粘着剤層14の前記部分とダイボンドフィルム12との界面は、ピックアップ時に容易に剥がれる性質を有する。一方、紫外線を照射していない部分は十分な粘着力を有している。
前述の通り、前記粘着剤層14が未硬化の紫外線硬化型粘着剤により形成されている前記部分はダイボンドフィルム12と粘着し、ダイシングする際の保持力を確保できる。この様に紫外線硬化型粘着剤は、チップ状半導体ウェハ(半導体チップ等)を基板等の被着体に固着する為のダイボンドフィルム12を、接着・剥離のバランスよく支持することができる。半導体ウェハの貼り付け部分にのみダイボンドフィルム12が積層される場合は、ダイボンドフィルム12が積層されていない領域において、ウェハリングが固定される。
紫外線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の紫外線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の紫外線硬化型粘着剤を例示できる。
配合する紫外線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また紫外線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
また、紫外線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の紫外線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の紫外線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の紫外線硬化型粘着剤は、低分子量成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる為好ましい。
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の紫外線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
前記内在型の紫外線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。紫外線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
前記紫外線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
前記紫外線硬化型の粘着剤層14中には、必要に応じて、紫外線照射により着色する化合物を含有させることもできる。紫外線照射により、着色する化合物を粘着剤層14に含ませることによって、紫外線照射された部分のみを着色することができる。これにより、粘着剤層14に紫外線が照射されたか否かが目視により直ちに判明することができ、半導体ウェハ貼り付け部分を認識し易く、半導体ウェハの貼り合せが容易である。また光センサー等によって半導体チップを検出する際に、その検出精度が高まり、半導体チップのピックアップ時に誤動作が生ずることがない。
紫外線照射により着色する化合物は、紫外線照射前には無色又は淡色であるが、紫外線照射により有色となる化合物である。かかる化合物の好ましい具体例としてはロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料としては、慣用のトリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系のものが好ましく用いられる。具体的には3−[N−(p−トリルアミノ)]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−メチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−エチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフエニルメタノール、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフェニルメタン等が挙げられる。
これらロイコ染料とともに好ましく用いられる顕色剤としては、従来から用いられているフェノールホルマリン樹脂の初期重合体、芳香族カルボン酸誘導体、活性白土等の電子受容体があげられ、更に、色調を変化させる場合は種々公知の発色剤を組合せて用いることもできる。
この様な紫外線照射によって着色する化合物は、一旦有機溶媒等に溶解された後に紫外線硬化型粘着剤中に含ませてもよく、また微粉末状にして当該粘着剤中に含ませてもよい。この化合物の使用割合は、粘着剤層14中に10重量%以下、好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%であるのが望ましい。該化合物の割合が10重量%を超えると、粘着剤層14に照射される紫外線がこの化合物に吸収されすぎてしまう為、粘着剤層14における半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分の硬化が不十分となり、十分に粘着力が低下しないことがある。一方、充分に着色させるには、該化合物の割合を0.01重量%以上とするのが好ましい。
また、粘着剤層14を紫外線硬化型粘着剤により形成する場合には、基材13の少なくとも片面の、半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分以外の部分の全部又は一部が遮光されたものを用い、これに紫外線硬化型の粘着剤層14を形成した後に紫外線照射して、半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分を硬化させ、粘着力を低下させた前記部分を形成することができる。遮光材料としては、支持フィルム上でフォトマスクになりえるものを印刷や蒸着等で作成することができる。かかる製造方法によれば、効率よく本発明の半導体装置用フィルム10を製造可能である。
尚、紫外線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、紫外線硬化型の粘着剤層14の表面よりなんらかの方法で酸素(空気)を遮断するのが望ましい。例えば、前記粘着剤層14の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線の照射を行う方法等が挙げられる。
粘着剤層14の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止やダイボンドフィルムの固定保持の両立性等の点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。
前記ダイボンドフィルム12は接着機能を有する層であり、その構成材料としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を併用してもよく、熱可塑性樹脂を単独で使用してもよい。
ダイボンドフィルム12における接着剤組成物のガラス転移温度は−20〜50℃の範囲内が好ましく、−10〜40℃の範囲内がより好ましい。ガラス転移温度が−20℃以上であると、Bステージ状態でのダイボンドフィルム12のタック性が大きくなってその取り扱い性が低下するのを防止できる。また、半導体ウェハのダイシングの際に、ダイシング刃との摩擦により熱溶融した接着剤が半導体チップに付着し、これによりピックアップ不良の原因となるのを防止できる。その一方、ガラス転移温度を50℃以下にすることにより、流動性や半導体ウェハとの密着性が低下するのを防止することができる。ここで、前記ガラス転移温度は、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製:形式:RSA−II)を用いて、−50℃〜250℃の温度域で周波数0.01Hz、歪み0.025%、昇温速度10℃/分の条件下で測定したときのTanδ(G”(損失弾性率)/G’(貯蔵弾性率))が極大値を示す温度である。
ダイボンドフィルム12の硬化前の23℃における引張貯蔵弾性率は50〜2000MPaの範囲内が好ましく、60〜1000MPaの範囲内がより好ましい。引張貯蔵弾性率を50MPa以上にすることにより、半導体ウェハのダイシングの際に、ダイシング刃との摩擦により熱溶融した接着剤が半導体チップに付着し、これによりピックアップ不良の原因となるのを防止できる。その一方、引張貯蔵弾性率を2000MPa以下にすることにより、マウントされる半導体ウェハやダイボンドする基板等との密着性を良好できる。
前記引張貯蔵弾性率の値は、次の測定方法によるものである。即ち、離型処理を施した剥離ライナー上に接着剤組成物の溶液を塗布して乾燥し、厚さ100μmのダイボンドフィルム12を形成する。このダイボンドフィルム12を150℃で1時間オーブン中に放置した後、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製:形式:RSA−II)を用いて、ダイボンドフィルム12の硬化後に於ける200℃での引張貯蔵弾性率を測定する。より詳細には、サンプルサイズを長さ30.0×幅5.0×厚さ0.1mmとし、測定試料をフィルム引っ張り測定用治具にセットし、50℃〜250℃の温度域で周波数0.01Hz、歪み0.025%、昇温速度10℃/分の条件下で測定する。
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体装置の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。特に、半導体チップを腐食させるイオン性不純物等含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型,ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
尚、本実施の形態に於いては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を含むダイボンドフィルム12が特に好ましい。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体チップの信頼性を確保できる。この場合の配合比は、アクリル樹脂成分100重量部に対して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合量が10〜200重量部である。
本実施の形態に係るダイボンドフィルム12は、予めある程度架橋をさせておくために、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させてもよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図る。
前記架橋剤としては、従来公知のものを採用することができる。特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、この様なポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
また、ダイボンドフィルム12には、その用途に応じて無機充填剤を適宜配合することができる。無機充填剤の配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田等の金属、又は合金類、その他カーボン等からなる種々の無機粉末が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、シリカ、特に溶融シリ力が好適に用いられる。また、無機充填剤の平均粒径は0.1〜80μmの範囲内であることが好ましい。
前記無機充填剤の配合量は、有機成分100重量部に対し0〜80重量部に設定することが好ましく、0〜70重量部に設定することがより好ましい。
尚、ダイボンドフィルム12には、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
ダイボンドフィルム12の厚さは特に限定されないが、例えば、5〜100μm程度、好ましくは5〜50μm程度である。
半導体装置用フィルム10には、帯電防止能を持たせることができる。これにより、その接着時及び剥離時等に於ける静電気の発生やそれによる半導体ウェハ等の帯電で回路が破壊されること等を防止することができる。帯電防止能の付与は、基材13、粘着剤層14又はダイボンドフィルム12に帯電防止剤や導電性物質を添加する方法、基材13への電荷移動錯体や金属膜等からなる導電層の付設等、適宜な方式で行うことができる。これらの方式としては、半導体ウェハを変質させるおそれのある不純物イオンが発生しにくい方式が好ましい。導電性の付与、熱伝導性の向上等を目的として配合される導電性物質(導電フィラー)としては、銀、アルミニウム、金、銅、ニッケル、導電性合金等の球状、針状、フレーク状の金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。ただし、前記ダイボンドフィルム12は、非導電性であることが、電気的にリークしないようにできる点から好ましい。
前記ダイボンドフィルム12は、カバーフィルム2により保護されている。カバーフィルム2は、実用に供するまでダイボンドフィルム12を保護する保護材としての機能を有している。カバーフィルム2はダイシング・ダイボンドフィルムのダイボンドフィルム12上に半導体ウェハを貼着する際に剥がされる。カバーフィルム2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等も使用可能である。
カバーフィルム2の厚さは特に限定されず、例えば、0.01〜2mmの範囲内であることが好ましく、0.01〜1mmの範囲内であることがより好ましい。
次に、本実施の形態に係る半導体装置用フィルム10の製造方法について、以下に説明する。
本実施の形態に係る半導体装置用フィルム10の製造方法は、基材13上に粘着剤層14を形成してダイシングフィルム11を作製する工程と、基材セパレータ22上にダイボンドフィルム12を形成する工程と、ダイシングフィルム11とダイボンドフィルム12を、少なくとも何れか一方に引張張力を加えた状態で、粘着剤層14とダイボンドフィルム12を貼り合わせ面として積層させる工程と、ダイボンドフィルム12上の基材セパレータ22を剥離することによりダイシング・ダイボンドフィルム1を作製する工程と、ダイシング・ダイボンドフィルム1と前記カバーフィルム2を、少なくとも何れか一方に引張張力を加えた状態で、前記ダイボンドフィルム12を貼り合わせ面として貼り合わせる工程とを含む。
前記ダイシングフィルム11の作製工程は、例えば、次の通りにして行われる。先ず、基材13は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
次に、基材13上に粘着剤組成物溶液を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層14を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては塗布膜の厚さや材料等に応じて適宜設定され得る。具体的には、例えば乾燥温度80〜150℃、乾燥時間0.5〜5分間の範囲内で行われる。また、第1セパレータ21上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層14を形成してもよい。その後、基材13上に粘着剤層14を第1セパレータ21と共に貼り合わせる。これにより、第1セパレータ21で粘着剤層14が保護されたダイシングフィルム11が作製される(図2(a)参照)。作製されたダイシングフィルム11は、ロール状に巻回された長尺の形態を有していてもよい。この場合、ダイシングフィルム11に弛みや巻ズレ、位置ズレが生じない様に、その長手方向や幅方向に引張張力を加えながら巻回するのが好ましい。但し、引張張力を加えることにより、ダイシングフィルム11は引張残留歪みが残存した状態でロール状に巻回される。尚、ダイシングフィルム11の巻き取りの際に、前記引張張力が加わることによりダイシングフィルム11が延伸される場合があるが、巻き取りは延伸操作を目的とするものではない。
粘着剤層14として、紫外線硬化型粘着剤からなり、かつ、予め紫外線硬化されたものを採用する場合は、次の通りにして形成する。即ち、基材13上に紫外線硬化型の粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層を形成する。塗布方法、塗布条件、及び乾燥条件は前記と同様に行うことができる。また、第1セパレータ21上に紫外線硬化型の粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層を形成してもよい。その後、基材13上に粘着剤層を転写する。更に、粘着剤層に所定条件下で紫外線を照射する。紫外線の照射条件としては特に限定されないが、通常は積算光量が50〜800mJ/cmとなる範囲内が好ましく、100〜500mJ/cmとなる範囲内がより好ましい。積算光量を前記数値範囲内に調節することで、ダイボンドフィルム12とダイシングフィルム11の間の剥離力Fを0.08〜10N/100mmの範囲内に制御することができる。紫外線の照射が30mJ/cm未満であると、粘着剤層14の硬化が不十分になり、ダイボンドフィルム12との剥離力が大きくなり過ぎる場合がある。その結果、ダイボンドフィルムとの密着性が増大し、ピックアップ性の低下を招来する。またピックアップ後、ダイボンドフィルムに糊残りが発生する場合がある。その一方、積算光量が1000mJ/cmを超えると、ダイボンドフィルム12との剥離力が小さくなり過ぎる場合がある。その結果、粘着剤層14とダイボンドフィルム12の間で界面剥離を生じる場合がある。その結果、半導体ウェハのダイシングの際に、チップ飛びが発生する場合がある。また、基材13に対し熱的ダメージを与える場合がある。更に、粘着剤層14の硬化が過度に進行して引張弾性率が大きくなりすぎ、エキスパンド性が低下する。尚、紫外線の照射は、後述のダイボンドフィルム12との貼り合わせ工程後に行ってもよい。この場合、紫外線照射は基材13側から行うのが好ましい。
前記ダイボンドフィルム12の作製工程は次の通りにして行われる。即ち、ダイボンドフィルム12を形成するための接着剤組成物溶液を基材セパレータ22上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成する。その後、塗布膜を所定条件下で乾燥させ、ダイボンドフィルム12を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては塗布膜の厚さや材料等に応じて適宜設定され得る。具体的には、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。また、第2セパレータ23上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させてダイボンドフィルム12を形成してもよい。その後、基材セパレータ22上にダイボンドフィルム12を第2セパレータ23と共に貼り合わせる。これにより、基材セパレータ22上にダイボンドフィルム12及び第2セパレータ23が順次積層された積層フィルムが作製される(図2(b)参照)。作製されたダイボンドフィルム12は、ロール状に巻回された長尺の形態を有していてもよい。この場合、ダイボンドフィルム12に弛みや巻ズレ、位置ズレが生じない様に、その長手方向や幅方向に引張張力を加えながら巻回するのが好ましい。但し、引張張力を加えることにより、ダイボンドフィルム12は引張残留歪みが残存した状態でロール状に巻回される。尚、ダイボンドフィルム12の巻き取りの際に、前記引張張力が加わることによりダイボンドフィルム12が延伸される場合があるが、巻き取りは延伸操作を目的とするものではない。
次に、ダイシングフィルム11とダイボンドフィルム12の貼り合わせを行い、ダイシング・ダイボンドフィルム1を作製する。即ち、ダイシングフィルム11から第1セパレータ21を剥離すると共に、ダイボンドフィルム12から第2セパレータ23を剥離し、ダイボンドフィルム12と粘着剤層14とが貼り合わせ面となる様にして両者を貼り合わせる(図2(c)参照)。このとき、ダイシングフィルム11又はダイボンドフィルム12の少なくとも何れか一方に対し、周縁部に引張張力を加えながら圧着を行う。また、ダイシングフィルム11及びダイボンドフィルム12がそれぞれロール状に巻回された長尺のものである場合、ダイシングフィルム11及びダイボンドフィルム12に対しては、その長手方向において極力引張張力を加えずに搬送するのが好ましい。これらのフィルムの引張残留歪みを抑制するためである。但し、ダイシングフィルム11及びダイボンドフィルム12に弛みや巻ズレ、位置ズレ、ボイド(気泡)等の発生を防止する観点からは、10〜25Nの範囲内で引張張力を加えてもよい。当該範囲内であれば、ダイシングフィルム11及びダイボンドフィルム12に引張残留歪みが残存していても、ダイシングフィルム11とダイボンドフィルム12の間の界面剥離が発生するのを防止することができる。
また、ダイシングフィルム11とダイボンドフィルム12の貼り合わせは、例えば圧着により行うことができる。このとき、ラミネート温度は特に限定されないが、通常は30〜80℃が好ましく、30〜60℃がより好ましく、30〜50℃が特に好ましい。また、線圧は特に限定されないが、通常は0.1〜20kgf/cmが好ましく、1〜10kgf/cmがより好ましい。接着剤組成物のガラス転移温度が−20〜50℃の範囲内であるダイボンドフィルム12に対し、ラミネート温度及び/又は線圧を、それぞれ前記数値範囲内に調整して、ダイシングフィルム11と貼り合わせることで、ダイボンドフィルム12とダイシングフィルム11の間の剥離力Fを0.08〜10N/100mmの範囲内に制御することができる。ここで、例えばラミネート温度を前記範囲内で高くすることにより、ダイシングフィルム11とダイボンドフィルム12との間の剥離力Fを大きくすることができる。また、線圧を前記範囲内で大きくすることによっても、剥離力Fを大きくすることができる。
次に、ダイボンドフィルム12上の基材セパレータ22を剥離し、これにより基材13上に粘着剤層14及びダイボンドフィルム12が順次積層されたダイシング・ダイボンドフィルム1が得られる。続いて、このダイシング・ダイボンドフィルム1のダイボンドフィルム12上に、カバーフィルム2を貼り合わせる。ここで、ダイシング・ダイボンドフィルム1に対しては、その長手方向において極力引張張力を加えずに搬送するのが好ましい。基材13のみが支持体としてダイシング・ダイボンドフィルムのフィルム形状及び積層構造を維持しているので、容易に延伸され易い状態にあり、引張残留歪みを抑制するためである。但し、ダイシング・ダイボンドフィルム1に弛みや巻ズレ、位置ズレ、ボイド(気泡)等の発生を防止する観点からは、10〜25Nの範囲内で引張張力を加えてもよい。当該範囲内であれば、ダイシング・ダイボンドフィルム1に引張残留歪みが残存していても、ダイシングフィルム11とダイボンドフィルム12の間の界面剥離やカバーフィルム2のフィルム浮き現象が発生するのを防止することができる。
カバーフィルム2のダイシング・ダイボンドフィルム1におけるダイボンドフィルム12への貼り合わせは、圧着により行うことが好ましい。これにより、本実施の形態に係る半導体装置用フィルム10が作製される。このとき、ラミネート温度は特に限定されないが、通常は30〜80℃が好ましく、30〜60℃がより好ましく、30〜50℃が特に好ましい。また、線圧は特に限定されないが、通常は0.1〜20kgf/cmが好ましく、1〜10kgf/cmがより好ましい。接着剤組成物のガラス転移温度が−20〜50℃の範囲内であるダイボンドフィルム12に対し、ラミネート温度及び/又は線圧を、それぞれ前記数値範囲内に調整して、カバーフィルム2と貼り合わせることで、ダイボンドフィルム12とカバーフィルム2の間の剥離力Fを0.025〜0.075N/100mmの範囲内に制御することができる。ここで、例えばラミネート温度を前記範囲内で高くすることにより、ダイシング・ダイボンドフィルム1とカバーフィルム2との間の剥離力Fを大きくすることができる。また、線圧を前記範囲内で大きくすることによっても、剥離力Fを大きくすることができる。また、前記カバーフィルム2に対しては、その長手方向において引張張力を極力加えずに搬送するのが好ましい。カバーフィルム2の引張残留歪みを抑制するためである。但し、カバーフィルム2に弛みや巻ズレ、位置ズレ、ボイド(気泡)等の発生を防止する観点からは、10〜25Nの範囲内で引張張力を加えてもよい。当該範囲内であれば、カバーフィルム2に引張残留歪みが残存していても、ダイシング・ダイボンドフィルム1に対するカバーフィルム2のフィルム浮き現象が発生するのを防止することができる。
尚、ダイシングフィルム11の粘着剤層14上に貼り合わされる第1セパレータ21、ダイボンドフィルム12の基材セパレータ22、及びそのダイボンドフィルム12上に貼り合わされる第2セパレータ23としては特に限定されず、従来公知の離型処理されたフィルムを用いることができる。第1セパレータ21及び第2セパレータ23は、それぞれ保護材としての機能を有している。また、基材セパレータ22は、ダイボンドフィルム12をダイシングフィルム11の粘着剤層14上に転写する際の基材としての機能を有している。これらの各フィルムを構成する材料としては特に限定されず、従来公知のものを採用することができる。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨ではない。また、部とあるのは、重量部を意味する。
(実施例1)
<ダイシングフィルムの作製>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」という。)88.8部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という。)11.2部、過酸化ベンゾイル0.2部及びトルエン65部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、重量平均分子量85万のアクリル系ポリマーAを得た。2EHAとHEAとのモル比は、100mol対20molとした。重量平均分子量の測定は後述の通りである。
このアクリル系ポリマーAに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」という。)12部(HEAに対し80mol%)を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)8部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)5部を加えて、粘着剤溶液を作製した。
前記で調製した粘着剤溶液を、PET剥離ライナー(第1セパレータ)のシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、当該粘着剤層の表面に、厚さ100μmのポリオレフィンフィルム(基材)を貼り合せた。その後、50℃にて24時間保存をした。
更に、前記PET剥離ライナーを剥離し、粘着剤層の半導体ウェハ貼り付け部分(直径200mmの円形状)に相当する部分(直径200mmの円形状)にのみ紫外線を直接照射した。これにより、本実施例に係るダイシングフィルムを作製した。尚、照射条件は下記の通りである。また、後述の方法により粘着剤層の引張弾性率を測定したところ、引張弾性率は20MPaであった。
<紫外線の照射条件>
紫外線(UV)照射装置:高圧水銀灯
紫外線照射積算光量:500mJ/cm
出力:120W
照射強度:200mW/cm
<ダイボンドフィルムの作製>
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンW−197CM、Tg:18℃)100部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、商品名;コロネートHX)2部、エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1004)50部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名:ミレックスXLC−3L)10部、無機充填剤として球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R、平均粒径0.5μm)30部をメチルエチルケトンに溶解して、濃度18.0重量%となる様に調製した。
この接着剤組成物の溶液を、離型処理フィルム(基材セパレータ)上にファウンテンコーターで塗布して塗布層を形成し、この塗布層に対し150℃、10m/sの熱風を2分間、直接噴射して乾燥させた。これにより、離型処理フィルム上に、厚さ25μmのダイボンドフィルムを作製した。尚、離型処理フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)にシリコーン離型処理したものを用いた。
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
次に、前記ダイシングフィルムとダイボンドフィルムを、粘着剤層とダイボンドフィルムとが貼り合わせ面となる様にして貼り合わせた。貼り合わせはニップロールを用い、貼り合わせ条件はラミネート温度T50℃、線圧3kgf/cmとした。更に、ダイボンドフィルム上の基材セパレータを剥離してダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。得られたダイシング・ダイボンドフィルムはロール状に巻き取り、このときの巻き取り張力は延伸しない程度、具体的には13Nとした。
<半導体装置用フィルムの作製>
前記ダイシング・ダイボンドフィルムに対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)からなるカバーフィルムを前記ダイボンドフィルム上に貼り合わせた。このとき、ダイシング・ダイボンドフィルム及びカバーフィルムのそれぞれに対し、位置ズレ、ボイド(気泡)等が発生するのを防止するため、ダンサーロールを用いて17Nの引張張力をMD方向に加えながら行った。また、貼り合わせはニップロールを用いて、ラミネート温度T50℃、線圧3kgf/cmで行った。これにより、本実施例に係る半導体装置用フィルムを作製した。
(実施例2)
<ダイシングフィルムの作製>
本実施例に係るダイシングフィルムは、前記実施例1と同様のものを使用した。
<ダイボンドフィルムの作製>
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンW−197C、Tg:18℃)100部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、商品名;コロネートHX)4部、エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1004)30部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名:ミレックスXLC−3L)15部、無機充填剤として球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R、平均粒径0.5μm)60部をメチルエチルケトンに溶解して、濃度18.0重量%となる様に調製した。
この接着剤組成物の溶液を、離型処理フィルム(基材セパレータ)上にファウンテンコーターで塗布して塗布層を形成し、この塗布層に対し150℃、10m/sの熱風を2分間、直接噴射して乾燥させた。これにより、離型処理フィルム上に、厚さ25μmのダイボンドフィルムを作製した。尚、離型処理フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)にシリコーン離型処理したものを用いた。
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
次に、前記ダイシングフィルムとダイボンドフィルムを、粘着剤層とダイボンドフィルムとが貼り合わせ面となる様にして貼り合わせた。このとき、ダイシングフィルム及びダイボンドフィルムのそれぞれに対し、位置ズレ、ボイド(気泡)等が発生するのを防止するため、ダンサーロールを用いて17Nの引張張力をMD方向に加えながら行った。また、貼り合わせはニップロールを用い、貼り合わせ条件はラミネート温度T50℃、線圧3kgf/cmとした。更に、ダイボンドフィルム上の基材セパレータを剥離してダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。得られたダイシング・ダイボンドフィルムはロール状に巻き取り、このときの巻き取り張力は延伸しない程度、具体的には13Nとした。
<半導体装置用フィルムの作製>
前記ダイシング・ダイボンドフィルムに対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)からなるカバーフィルムを前記ダイボンドフィルム上に貼り合わせた。このとき、ダイシング・ダイボンドフィルム及びカバーフィルムのそれぞれに対し、位置ズレ、ボイド(気泡)等が発生するのを防止するため、ダンサーロールを用いて17Nの引張張力をMD方向に加えながら行った。また、貼り合わせはニップロールを用いて、ラミネート温度T50℃、線圧3kgf/cmで行った。これにより、本実施例に係る半導体装置用フィルムを作製した。
(比較例1)
<ダイシングフィルムの作製>
本比較例に係るダイシングフィルムは、前記実施例1と同様のものを使用した。
<ダイボンドフィルムの作製>
本比較例に係るダイボンドフィルムは、前記実施例1と同様のものを使用した。
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
本比較例においては、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの貼り合わせの際のラミネート温度T及びTを25℃に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本比較例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
<半導体装置用フィルムの作製>
本比較例に係る半導体装置用フィルムは、前記ダイシング・ダイボンドフィルムに対し、前記実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるカバーフィルムを貼り合わせることにより作製した。
(比較例2)
<ダイシングフィルムの作製>
本比較例に係るダイシングフィルムは、前記実施例1と同様のものを使用した。
<ダイボンドフィルムの作製>
本比較例に係るダイボンドフィルムは、前記実施例1と同様のものを使用した。
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
本比較例においては、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの貼り合わせの際のラミネート温度T及びTを35℃に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本比較例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
<半導体装置用フィルムの作製>
本比較例に係る半導体装置用フィルムは、前記ダイシング・ダイボンドフィルムに対し、前記実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるカバーフィルムを貼り合わせることにより作製した。
(比較例3)
<ダイシングフィルムの作製>
本比較例に係るダイシングフィルムは、前記実施例1と同様のものを使用した。
<ダイボンドフィルムの作製>
ブチルアクリレートを主成分とするポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンAS−3000、Tg:−36℃)100部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、商品名;コロネートHX)2部、エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1004)60部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名:ミレックスXLC−3L)10部、無機充填剤として球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R、平均粒径0.5μm)15部をメチルエチルケトンに溶解して、濃度18.0重量%となる様に調製した。
この接着剤組成物の溶液を、離型処理フィルム(基材セパレータ)上にファウンテンコーターで塗布して塗布層を形成し、この塗布層に対し150℃、10m/sの熱風を2分間、直接噴射して乾燥させた。これにより、離型処理フィルム上に、厚さ25μmのダイボンドフィルムを作製した。尚、離型処理フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)にシリコーン離型処理したものを用いた。
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
本比較例においては、前記実施例1と同様にして、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの貼り合わせを行い、本比較例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
<半導体装置用フィルムの作製>
本比較例に係る半導体装置用フィルムは、前記実施例1と同様にして、前記ダイシング・ダイボンドフィルムにポリエチレンテレフタレートフィルムからなるカバーフィルムの貼り合わせを行い、本比較例に係る半導体装置用フィルムを作製した。
(剥離力の測定)
各実施例及び比較例で得られた半導体装置用フィルムにおけるダイボンドフィルムとカバーフィルムの間の剥離力、及びダイシングフィルムとダイボンドフィルムの間の剥離力の測定は、温度23±2℃、相対湿度55±5%Rh、剥離速度300mm/minの条件下で、T型剥離試験(JIS K6854−3)により行った。また、引張試験機としては、商品名「オートグラフAGS−H」((株)島津製作所製)を用いた。
(粘着剤層の引張弾性率)
各実施例及び比較例におけるダイシングフィルムから、長さ10.0mm、幅2mm、断面積0.1〜0.5mmのサンプルを切り出した。このサンプルに対し、測定温度23℃、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minでMD方向に引張試験を行い、当該サンプルが伸長したことによるその変化量(mm)を測定した。これにより、得られたS−S(Strain-Strength)曲線において、その初期の立ち上がりの部分に接線を引き、その接線が100%の伸びに相当するときの引張強度を各ダイシングフィルムの断面積で除し、得られた値を引張弾性率とした。
(熱硬化前のダイボンドフィルムの引張弾性率)
各実施例及び比較例におけるダイボンドフィルムについて、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製:形式:RSA−II)を用いて、23℃における引張弾性率を測定した。より詳細には、サンプルサイズを長さ30mm×幅5mm×厚さ0.1mmとし、測定試料をフィルム引っ張り測定用治具にセットし−40〜250℃の温度域で周波数0.01Hz、歪み0.025%、昇温速度10℃/minの条件下で測定した。
(界面剥離及びフィルム浮きの有無)
各実施例及び比較例で得られた半導体装置用フィルムにおけるフィルム浮きの確認は、次の通りにして行った。即ち、各半導体装置用フィルムを、温度−30±2℃の冷凍庫で120時間放置した。更に、温度23±2℃、相対湿度55±5%Rhの環境下で24時間放置した。その後、半導体装置用フィルムにおける各フィルム間の界面剥離及びフィルム浮きの有無を確認した。評価基準は、目視で界面剥離やフィルム浮きが観察されなかった場合を○とし、観察された場合を×とした。
(ボイドの有無)
各実施例及び比較例で得られた半導体装置用フィルムのボイドの有無は、次の通りにして確認した。即ち、各半導体装置用フィルムからカバーフィルムをそれぞれ剥離し、ダイボンドフィルム上に半導体ウェハのマウントを行った。半導体ウェハとしては大きさが8インチ、厚さ75μmのものを使用した。半導体ウェハのマウント条件は、下記の通りとした。
<貼り合わせ条件>
貼り付け装置:ACC(株)製、商品名;RM−300
貼り付け速度計:50mm/sec
貼り付け圧力:0.2MPa
貼り付け温度:50℃
続いて、ダイシング・ダイボンドフィルムと半導体ウェハとの貼り合わせ面にボイド(気泡)の有無を、顕微鏡により確認した。結果を下記表1に示す。
(ダイシング及びピックアップの評価)
各半導体装置用フィルムからカバーフィルムをそれぞれ剥離し、ダイボンドフィルム上に半導体ウェハのマウントを行った。半導体ウェハとしては大きさが8インチ、厚さ75μmのものを使用した。半導体ウェハのマウント条件は、前記と同様にした。
次に、下記の条件に従って半導体ウェハのダイシングを行い、30個の半導体チップを形成した。このときのチッピングやチップ飛びの有無をカウントした。結果を下記表1に示す。更に、半導体チップをダイボンドフィルムと共にピックアップした。ピックアップは30個の半導体チップ(縦5mm×横5mm)に対し行い、破損なく半導体チップのピックアップが成功した場合をカウントして成功率を算出した。結果を下記表1に示す。ピックアップ条件は下記の通りである。
<ダイシング条件>
ダイシング方法:シングルカット
ダイシング装置:DISCO DFD6361(商品名、株式会社ディスコ製)
ダイシング速度:50mm/sec
ダイシングブレード:2050−HECC
ダイシングブレード回転数:45,000rpm
ダイシングテープ切り込み深さ:20μm
ウェハチップサイズ:5mm×5mm
<ピックアップ条件>
ピックアップ装置:CPS−100(NESマシナリー社製)
ニードル数:9本
突き上げ量 :300μm
突き上げ速度:10mm/秒
引き落とし量:3mm
(ダイボンドフィルムのガラス転移温度Tgの測定)
実施例1、2及び比較例3におけるダイボンドフィルムについて、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製:形式:RSA−II)を用いて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。より詳細には、−50℃〜250℃の温度域で周波数0.01Hz、歪み0.025%、昇温速度10℃/分の条件下で測定し、Tanδ(G”(損失弾性率)/G’(貯蔵弾性率))が極大値を示す温度をTgとした。その結果、実施例1のダイボンドフィルムのTgは、39℃であり、実施例2のダイボンドフィルムのTgは、47℃であり、比較例3のダイボンドフィルムのTgは、−23℃であった。
(結果)
下記表1から明らかな通り、実施例1及び2の半導体装置用フィルムであると、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの間での界面剥離がなくカバーフィルムのフィルム浮きの現象も確認されなかった。また、ダイボンドフィルム上に半導体ウェハをマウントした際にも、ボイドやシワは発生しなかった。更に、半導体ウェハのダイシングの際に半導体チップのチップ飛びが発生することもなく、かつ、ピックアップ性も良好であった。これに対し、比較例1の半導体装置用フィルムでは、ピックアップ成功率が100%であったが、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの間で界面剥離が発生し、カバーフィルムのフィルム浮きの現象も確認された。更に、半導体ウェハのマウントの際にもボイドやシワが発生した。また、比較例2の半導体装置用フィルムでは、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの間での界面剥離やカバーフィルムのフィルム浮きが発生し、また半導体ウェハのダイシングの際にチップ飛びやチッピングが発生した。更に、比較例3の半導体装置用フィルムでは、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの間での密着性が高いためにピックアップが困難になり、半導体チップの割れや欠けが確認された。
Figure 0005143196
尚、表1中の剥離力Fはダイシング・ダイボンドフィルムとカバーフィルムとの間の剥離力を表し、剥離力Fはダイシングフィルムとダイボンドフィルムとの間の剥離力を表す。また、ラミネート温度Tはダイシングフィルムとダイボンドフィルムを貼り合わせた際の温度を表し、ラミネート温度Tはダイシング・ダイボンドフィルムとカバーフィルムを貼り合わせた際の温度を表す。
1 ダイシング・ダイボンドフィルム
2 カバーフィルム
10 半導体装置用フィルム
11 ダイシングフィルム
12 ダイボンドフィルム
13 基材
14 粘着剤層
21 第1セパレータ
22 基材セパレータ
23 第2セパレータ

Claims (5)

  1. 基材上に粘着剤層が積層されたダイシングフィルム上に接着フィルム及びカバーフィルムが順次積層されており、温度23±2℃、剥離速度300mm/minの条件下でのT型剥離試験における、前記接着フィルムと前記カバーフィルムの間の剥離力Fは0.025〜0.075N/100mmの範囲内であり、前記接着フィルムと前記ダイシングフィルムの間の剥離力Fは0.08〜10N/100mmの範囲内であり、前記Fと前記FはF<Fの関係を満たす半導体装置用フィルムの製造方法であって、
    前記接着フィルムにおける接着剤組成物のガラス転移温度が−20〜50℃の範囲内であり、
    前記ダイシングフィルムと前記接着フィルムとを、少なくとも何れか一方に引張張力を加えた状態で、前記粘着剤層と前記接着フィルムを貼り合わせ面として積層させ、ダイシングフィルム付接着フィルムを作製する工程Aと、
    前記ダイシングフィルム付接着フィルムと前記カバーフィルムとを、少なくとも何れか一方に引張張力を加えた状態で、前記接着フィルムを貼り合わせ面として貼り合わせる工程Bとを含む半導体装置用フィルムの製造方法であり、
    前記工程Aは、ラミネート温度30〜80℃、線圧0.1〜20kgf/cmの範囲内で行う半導体装置用フィルムの製造方法。
  2. 前記接着フィルムは熱硬化型であり、熱硬化前の23℃における引張弾性率が50〜2000MPaの範囲内である請求項1に記載の半導体装置用フィルムの製造方法
  3. 前記ダイシングフィルムは基材上に紫外線硬化型の粘着剤層が積層されたものであり、前記粘着剤層の紫外線硬化後の23℃における引張弾性率が1〜170MPaの範囲内である請求項1又は2に記載の半導体装置用フィルムの製造方法
  4. 前記工程Bは、ラミネート温度30〜80℃、線圧0.1〜20kgf/cmの範囲内で行う請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置用フィルムの製造方法。
  5. 前記工程Aの引張張力が10〜25Nであり、前記工程Bの引張張力が10〜25Nである請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体装置用フィルムの製造方法。
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