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JP5141930B2 - 密封装置 - Google Patents

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Description

本発明は、回転体の外周を密封する密封装置において、特に、大気側にダストフィルタを備えたものに関する。
貨物自動車等のエンジンシールとして用いられる密封装置には、ダストフィルタを有するものが用いられている(例えば下記の特許文献参照)。
実開平5−90046号公報 実公平8−3757号公報 実開平5−14739号公報
図5は、この種の従来の密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す使用状態の半断面図である。図5に示される密封装置100は、ハウジング200に取り付けられるシール本体110と、ハウジング200の内周に挿通された回転軸300に取り付けられる金属製のスリンガ120とを備え、シール本体110が、ハウジング200の内周面に圧入嵌着される金属製の取付環111と、この取付環111にゴム材料又はゴム状弾性を有する材料で一体的に成形されスリンガ120のフランジ121に摺動可能に密接されるシールリップ112と、このシールリップ112より大気A側に設けられて内径部がスリンガ120のスリーブ122の外周面に大気A側へ屈曲した状態で摺動可能に密接され合成樹脂繊維の不織布(ファブリック)からなるダストフィルタ113を備える。
シールリップ112は、その先端がスリンガ120のフランジ121と密接されることによって、機内B側の密封対象油が大気A側へ漏洩するのを防止するものであり、スリンガ120は、そのフランジ121と接触する流体を遠心力によって外周側へ振り切る作用を有するので、シールリップ112との摺動部Sを内周側へ通過しようとする密封対象油に対して優れた密封機能を奏する。また、ダストフィルタ113は、前記振り切り作用によって低圧となるシールリップ112の内周空間Cへ、大気A側からダストが侵入するのを阻止するものである。
ところで近年、自動車の燃費規制の観点から、この種の密封装置100にも一層の摺動トルクの低減が求められている。そして、この種の密封装置100で発生する摺動トルクのうち、1/3〜1/2程度はダストフィルタ113とスリンガ120のスリーブ122との摺動によるものであるため、摺動トルクの低減には、ダストフィルタ113を廃止した構造とするか、あるいはダストフィルタ113を薄肉とすることによって前記スリーブ122に対する緊迫力を小さくすることが考えられる。
しかしながら、ダストフィルタ113を廃止あるいは薄肉とした場合は、大気A側のダストが、フランジ121の振り切り作用によって低圧となるシールリップ112の内周空間Cへ侵入してシールリップ112とスリンガ120のフランジ121との摺動部Sへ噛み込まれ、シールリップ112の耐久性の低下を来たすおそれがある。あるいはさらに、このダストがスリンガ120のフランジ121の振り切り作用によって、シールリップ112の内周空間Cから機内B側へ侵入するおそれがある。
また、図5に示される密封装置100は、ハウジング200及び回転軸300への未装着状態において、スリーブ122におけるフランジ121と反対側の端部に形成された突条123がダストフィルタ113の内径部と掛合可能とすることによって、スリンガ120をシール本体110に対して抜け止め状態に仮組みしておくことができるようになっているが、ダストフィルタ113を廃止したり薄肉に形成したりすると、このような仮組みができなくなってしまう問題も指摘される。
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、ダストフィルタを備えた密封装置において、ダストフィルタによるダストシール性を確保した状態で、ダストフィルタ由来の摺動トルクを低減することにある。
上述した技術的課題を有効に解決するため、請求項1の発明に係る密封装置は、非回転のハウジングに取り付けられると共に回転側部材に摺動可能に密接されるシールリップと、このシールリップより大気側にあって内径部が前記回転側部材の外周面に摺動可能に密接されるダストフィルタを備え、前記ダストフィルタの内径部に複数の切欠が円周方向所定間隔で形成され、前記切欠における最深部の縁部が、前記回転側部材の外周面より小径であることにより、前記回転側部材の外周面に対する適当な締め代を有するものとする。
上記構成によれば、ダストフィルタの内径部に複数の切欠が円周方向所定間隔で形成されたことによって、回転側部材の外周面に対するダストフィルタの緊迫力が減少し、しかも切欠によって回転側部材の外周面に対するダストフィルタの摺動面積も小さくなるので、摺動トルクが低下する。また、切欠における最深部の縁部が、回転側部材の外周面に対する適当な締め代を有するので、切欠によって回転側部材の外周面との間に隙間を生じるようなことはなく、ダストフィルタを薄肉とするものでもないので、所要のダストシール性が確保される。
また、請求項2の発明に係る密封装置は、非回転のハウジングに取り付けられると共に回転側部材に摺動可能に密接されるシールリップと、このシールリップより大気側にあって内径部が前記回転側部材の外周面に摺動可能に密接されるダストフィルタを備え、前記ダストフィルタの内径部に複数のスリットが円周方向所定間隔で形成され、前記スリットにおける最深部の縁部が、前記回転側部材の外周面より小径であることにより、前記回転側部材の外周面に対する適当な締め代を有するものとする。
この構成でも、ダストフィルタの内径部に複数のスリットが円周方向所定間隔で形成されたことによって、回転側部材の外周面に対するダストフィルタの緊迫力が減少するので、摺動トルクが低下する。また、スリットにおける最深部の縁部が、回転側部材の外周面に対する適当な締め代を有するので、切欠によって回転側部材の外周面との間に隙間を生じるようなことはなく、ダストフィルタを薄肉とするものでもないので、所要のダストシール性が確保される。
本発明に係る密封装置によれば、ダストフィルタによるダストシール性が確保されるので、シール耐久性を犠牲にすることなくダストフィルタによる摺動トルクを低減することができる。
本発明の第一の形態に係る密封装置の使用状態を、軸心を通る平面で切断して示す半断面図である。 図1の密封装置の未装着状態を、軸心を通る平面で切断して示す半断面図である。 図1の密封装置に使用されるダストフィルタを、軸心の延長方向から見た図である。 本発明の第二の形態に係る密封装置の使用状態を、軸心を通る平面で切断して示す半断面図である。 従来の密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す使用状態の半断面図である。
以下、本発明に係る密封装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第一の形態に係る密封装置の使用状態を、軸心を通る平面で切断して示す半断面図、図2は、図1の密封装置の未装着状態を、軸心を通る平面で切断して示す半断面図、図3は、図1の密封装置に使用されるダストフィルタを、軸心の延長方向から見た図である。
図1において、参照符号200は貨物自動車のエンジン等における非回転のハウジング、300はハウジング200の内周に挿通された回転軸である。本発明に係る密封装置は、ハウジング200に取り付けられるシール本体1と、回転軸300に取り付けられるスリンガ2とを備える。なお、スリンガ2は、請求項1に記載された回転側部材に相当するものである。
シール本体1は、ハウジング200の内周面に圧入嵌着される取付環11と、この取付環11に一体成形されたシールリップ12、ガスケット部13、油戻し部14及びこれらの間を連続して延びる弾性層15と、シールリップ12よりも大気A側に位置して弾性層15の内径部に取り付けられたダストフィルタ16とを備える。
取付環11は、鋼板等の金属板を打ち抜きプレス加工することによって製作されたものであって、ハウジング200の内周面に圧入嵌合される外周嵌着部11aと、この外周嵌着部11aから大気A側となる方向へ、やや小径となる段差をもって形成されたガスケット支持部11bと、そこから内周側へ延びる径方向部11cと、その内周から機内B側へ延びる円錐筒部11dと、さらにその端部から内周側へ延びる内向き鍔部11eとからなる。
シールリップ12、ガスケット部13、油戻し部14及び弾性層15は、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料からなるものであって、このうち弾性層15は、取付環11の外側面(大気A側を向いた面)を被覆するように一体的に加硫接着され、シールリップ12は、弾性層15の内径部から、先端が外周側を向くようなテーパ状をなして機内B側へ延びている。また、ガスケット部13は、取付環11におけるガスケット支持部11bの外周に位置して、弾性層15の外径部に連続して形成されている。また、油戻し部14は弾性層15の内径部に形成され、先端がシールリップ12側を向くような樋状をなしている。
ダストフィルタ16は、合成樹脂繊維の不織布(ファブリック)からなるものであって、その外径部が、シールリップ12より大気A側、ひいては取付環11の内向き鍔部11eの外側に位置して弾性層15に接合されている。
スリンガ2は、金属板を打ち抜きプレス加工することによって製作されたものであって、回転軸300の外周面に密嵌されるスリーブ21と、その機内B側の端部から円盤状に展開するフランジ22と、前記スリーブ21における大気A側の端部に外径側へ屈曲形成された突条23を有する。シール本体1のシールリップ12は、このスリンガ2におけるフランジ22の機内Bと反対側を向いた端面に、先端及びその近傍が摺動可能に密接されて摺動部Sを形成しており、ダストフィルタ16は、内径部16aがスリンガ2におけるスリーブ21の外周面に摺動可能に密接されている。
ダストフィルタ16の内径部16aには、複数の切欠16bが円周方向所定間隔で形成されている。そしてこのダストフィルタ16は、図2及び図3に示される未装着状態では軸心と直交する平面をなしており、この状態では、各切欠16bの最深部の内径φ1はダストフィルタ16の内径φ2よりも大径であると共に、スリンガ2のスリーブ21におけるダストフィルタ16との摺動部の外径φ3より僅かに小径となっている。また、スリンガ2のスリーブ21の端部に形成された突条23の外径は、このスリンガ2を図2に太矢印で示されるように挿入するときに、ダストフィルタ16の内径部16aを適当に押し開きながら通過することの可能な程度の大きさとなっている。
したがって、図2に示される分離状態からスリンガ2のスリーブ21をシール本体1の内周へ挿入して行くことによって、図1に示されるように、ダストフィルタ16の内径部16aは適当に押し広げられた状態で前記スリーブ21の外周面に密接され、各切欠16bの最深部の縁部16cも、前記スリーブ21の外周面に対して適当な締め代をもって密接されるようになっている。
以上の構成を備える密封装置は、図1に示されるように、シール本体1が、その取付環11の外周嵌着部11aにおいてハウジング200の内周面に圧入嵌着されると共に、ガスケット部13において適当なつぶし代をもって密嵌され、シール本体1のシールリップ12が、回転軸300と一体的に回転するスリンガ2のフランジ22と密接摺動することによって、機内(例えばエンジンのクランク室)B側から飛来する密封対象油が大気A側へ漏洩するのを阻止するものである。そしてスリンガ2は、フランジ22と接触する流体を遠心力によって外径方向へ振り切る作用を有するので、シールリップ12との間の摺動部Sを内周側へ通過しようとする密封対象油に対して優れた密封機能を奏する。
また万一、密封対象油がシールリップ12とスリンガ2のフランジ22との摺動部Sを内周側へ僅かに通過した場合、この漏液は、シールリップ12の上半部側では、そのテーパ状の表面12aを伝って下方へ流れ、樋状の油戻し部14で受け止められる。そしてさらにこの漏液は、前記油戻し部14内をその下半部側へ向けて流れ、シールリップ12の下半部の表面12aを伝ってシールリップ12の外径側(下方)へ流れ落ちるので、フランジ22との摺動部Sから遠心力によって外径側へ振り切られ排除される。
ここで上述のように、スリンガ2のフランジ22は、回転時の遠心力によって流体を摺動部Sから外径側へ排出する作用を有するため、シールリップ12の内周空間Cに負圧が発生し、これによって大気A側からダストが空気と共に前記内周空間Cへ流入しようとするが、このダストは、合成繊維の不織布からなるダストフィルタ16によって捕捉されるので、前記内周空間Cへの侵入を阻止することができる。
また、ダストフィルタ16の内径部16aは、複数の切欠16bが円周方向所定間隔で形成されているので、スリンガ2のスリーブ21の外周面に対する緊迫力が低く抑えられる。しかも切欠16bによってスリーブ21の外周面に対するダストフィルタ16の摺動面積も小さくなる。したがって、ダストフィルタ16の摺動トルクが低下し、ひいては密封装置全体としての摺動トルクが低下することになるので、燃費の改善に寄与することができる。
しかもダストフィルタ16の内径部16aは、切欠16bにおける最深部の縁部16cも、スリンガ2のスリーブ21の外周面に対して適当な締め代をもって密接されるため、切欠16bによって前記スリーブ21の外周面との間に隙間を生じるようなことはなく、低トルク化のためにダストフィルタ16を薄肉とするものでもないので、所要のダストシール性が確保される。
また、図2に示される分離状態から、スリンガ2のスリーブ21をシール本体1の内周へ挿入することによって、スリーブ21の端部に形成された突条23がダストフィルタ16の内径部16aを適当に押し開きながらこの内径部16aをいったん通過した後は、前記突条23とダストフィルタ16の内径部16aが互いに掛合可能な状態で軸方向に対向するので、シール本体1とスリンガ2を抜け止め状態に仮組みしておくことができる。そして上述のように、本発明によれば低トルク化のためにダストフィルタ16を薄肉とする必要がないので、スリーブ21の外周面に適当な締め代をもって密接されたダストフィルタ16の内径部16aによって突条23との所要の掛合力を確保し、例えば仮組み状態での輸送過程でシール本体1とスリンガ2が分離してしまうのを防止することができる。
なお、上述の形態では、シールリップ12及びダストフィルタ16が回転側部材としてのスリンガ2に摺動可能に密接されるものとしたが、本発明は、シールリップ12及びダストフィルタ16が回転側部材としての回転軸300の外周面に摺動可能に密接されるものについても適用することができ、シールリップ12等の材質についても特に限定されない。
また、切欠16bの形状も、図示のようなコ字形のほか、半円状、U字形、V字形、波状などが考えられ、特に限定されない。
図4は、本発明の第二の形態に係る密封装置の使用状態を、軸心を通る平面で切断して示す半断面図である。
この第二の形態は、ダストフィルタ16の内径部16aに、先に説明した第一の形態における複数の切欠16bの代わりに、半径方向へ延びる複数のスリット16dが円周方向所定間隔で形成されたものである。そしてこのダストフィルタ16も、未装着状態では軸心と直交する平面をなしており、この状態では、各スリット16dの最深部の内径φ1はダストフィルタ16の内径φ2よりも大径であると共に、スリンガ2のスリーブ21におけるダストフィルタ16との摺動部の外径φ3(図2参照)より僅かに小径となっている。その他の構成は、先に説明した第一の形態と同様である。
したがってこの場合も、ダストフィルタ16の内径部16aは適当に押し広げられた状態で図1に示されるスリーブ21の外周面に密接され、各スリット16dの最深部の縁部16eも、前記スリーブ21の外周面に対して適当な締め代をもって密接されることになるので、第一の形態と同様の効果を実現することができる。
1 シール本体
11 取付環
12 シールリップ
16 ダストフィルタ
16a 内径部
16b 切欠
16c,16e 縁部
16d スリット
2 スリンガ(回転側部材)
21 スリーブ
22 フランジ
200 ハウジング
300 回転軸

Claims (2)

  1. 非回転のハウジングに取り付けられると共に回転側部材に摺動可能に密接されるシールリップと、このシールリップより大気側にあって内径部が前記回転側部材の外周面に摺動可能に密接されるダストフィルタを備え、前記ダストフィルタの内径部に複数の切欠が円周方向所定間隔で形成され、前記切欠における最深部の縁部が、前記回転側部材の外周面より小径であることにより、前記回転側部材の外周面に対する適当な締め代を有することを特徴とする密封装置。
  2. 非回転のハウジングに取り付けられると共に回転側部材に摺動可能に密接されるシールリップと、このシールリップより大気側にあって内径部が前記回転側部材の外周面に摺動可能に密接されるダストフィルタを備え、前記ダストフィルタの内径部に複数のスリットが円周方向所定間隔で形成され、前記スリットにおける最深部の縁部が、前記回転側部材の外周面より小径であることにより、前記回転側部材の外周面に対する適当な締め代を有することを特徴とする密封装置。
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