JP3911857B2 - 密封装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は２つのシール部材を組み合わせた組立式の密封装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、この種の２つのシール部材を組み合わせた組立式の密封装置としては、例えば図５に示すようなものがある。すなわち、この密封装置１００は互いに同心的に相対回転自在に組み付けられるハウジング１０１と軸１０２間をシールするもので、ハウジング１０１に取付けられる第１シール部材１０３と、第１シール部材１０３に取付けられる第２シール部材１０４と、を組み立てて一体化したものである。
【０００３】
第１シール部材１０３は金属環１０８とメインリップ１０９を備えている。
【０００４】
金属環１０８は大気側Ａに径方向内向きの内向きフランジ部１０８Ａを有する円筒状部材である。そして、金属環１０８の内向きフランジ部１０８Ａの内端に、軸１０２の外周面に摺接するメインリップ１０９と、メインリップ１０９の大気側Ａに延びるダストリップ１１０と、が設けられている。
【０００５】
このメインリップ１０９は内向きフランジ部１０８Ａの内端から密封流体側Ｏに延びる断面楔状をして、摺動面にはねじ溝が設けられており、ポンプ作用により漏出した流体を密封流体側Ｏへ押し戻しシール性を高め、また、グリース１１４を摺動面に供給し長寿命化を図っている。
【０００６】
また、メインリップ１０９の外周面には、軸１０２の外周面に対して緊迫力を付与するためのばね部材１１１が設けられている。
【０００７】
第２シール部材１０４は金属環１０６を備えており、その密封流体側Ｏに径方向内向きのフランジ部１０５を有し、そのフランジ部１０５の先端にサブリップ１０７を備えている。
【０００８】
そして、金属環１０８の内周面には、ゴム状弾性体１１２が固定されている。このゴム状弾性体１１２に金属環１０６が摺接して、第１シール部材１０３と第２シール部材１０４が取り付けられている。
【０００９】
従って、摺動面である軸１０２の外周表面と第１シール部材１０３と第２シール部材１０４に囲まれた領域を環状の密封空間１１３として形成している。
【００１０】
また、軸１０２と、サブリップ１０７とメインリップ１０９との間、メインリップ１０９とダストリップ１１０との間にそれぞれ潤滑剤としてのグリース１１４が封入されている。
【００１１】
上記構成の密封装置１００にあっては、第１シール部材１０３に設けられたダストリップ１１０により、大気側Ａからのダストが内部に侵入するのを防止して、メインリップ１０９によって密封流体側Ｏから漏出した流体が大気側Ａに漏れるのを防止している。
【００１２】
さらに、第２シール部材１０４に設けられたサブリップ１０７により、密封流体が第１シール部材１０３に対し直接かかることを防止している。
【００１３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術の密封装置１００は、メインリップ１０９のポンプ作用によって、メインリップ１０９とダストリップ１１０間のグリース１１４や大気側Ａから空気を吸い込み、密封空間１１３の内圧上昇を引き起こす。
【００１４】
これにより、グリース１１４が密封空間１１３から押し戻されてサブリップ１０７がめくれて軸１０２から離れてしまい、密封空間１１３に密封流体が侵入してしまったり、閉じ込められた気体の圧力により第２シール部材１０４が第１シール部材１０３から分離してしまうという問題が生じていた。
【００１５】
また、サブリップ１０７及び第２シール部材１０４に上記の問題が生じない場合であっても、密封空間１１３の圧力の上昇により、第１シール部材１０３のメインリップ１０９の軸１０２に対する接触圧が上昇し、本来のシール性が発揮できなくなり、寿命を短くしてしまう虞がある。
【００１６】
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、シール部材間の内圧上昇を抑制し、シール性の向上と密封装置の長寿命化を図り得る密封装置を提供することにある。
【００１７】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明にあっては、対向面を形成する２部材間をシールするもので、２部材の内の一方の部材に取付けられ、他方の部材の摺動面に摺接するメインリップを有する第１シール部材と、前記第１シール部材に取付けられ、他方の部材の摺動面に摺接するサブリップを有する第２シール部材と、を備え、前記他方の部材の摺動面と前記第１及び第２シール部材によって囲まれる領域を密封空間とした密封装置において、前記密封空間から該密封空間の外側へと疎通する通路と、前記通路を介して前記密封空間の圧力を解放する一方向弁を備え、前記第１及び第２シール部材は、それぞれ互いに嵌め合わされる軸方向の円筒部を備えた環状部材であり、前記第２シール部材の円筒部は第１シール部材の円筒部の内周に嵌合し、少なくとも一方の円筒部は嵌め合わされた円筒部の境界面をシールするゴム状弾性部を一体的に備え、前記通路は前記ゴム状弾性部に形成された軸方向溝であり、前記一方向弁は嵌め合わされた円筒部間の環状隙間を塞ぐもので、一方のシール部材の円筒部に形成されたシールリップであることを特徴とする。
【００１８】
従って、密封空間に圧力が蓄積されて密封空間内が高圧になると、一方向弁が開いて密封空間の圧力を密封空間の外側へと疎通する通路を介して解放し、密封空間内の圧力の過大上昇を抑制する。そして、密封空間と密封空間の外側の圧力が等しくなると、一方向弁が閉じるので、一方向弁は密封空間の外側から密封空間への逆流入を防止することができる。
【００１９】
よって、密封空間内の圧力を安定させることができ、密封空間内の圧力が過大上昇して生じる密封流体側のリップがめくれて密封空間に流体が侵入してしまうことや、第１及び第２シール部材が分離してしまうことを防止してシール性を向上し、また長寿命化を図ることができる。
【００２３】
また、第１及び第２シール部材の円筒部を嵌合することで、容易に通路及び一方向弁を設けることができる。
【００２４】
一方向弁は円筒部に形成されたメインリップであるので、円筒部と一体的に容易に形成することができ、構成が簡単となり、円筒部間の環状隙間を塞ぐことができる。
【００２７】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【００２８】
図１は実施の形態に係る密封装置を示す断面図である。
【００２９】
図１において、１は密封装置を示しており、２つのシール部材を組み合わせた組立式のもので、互いに同心的に相対回転自在に組み付けられる対向面を形成する２部材としてのハウジング２と軸３間をシールするものである。
【００３０】
密封装置１はハウジング２に取付けられる第１シール部材４と、第１シール部材４に取付けられる第２シール部材５と、を組み立てて一体化したものである。
【００３１】
第２シール部材５は金属製の金属環６を備え、軸方向の円筒部６Ａと密封流体側Ｏに径方向内向きのフランジ部６Ｂとを有し、そのフランジ部６Ｂの先端にサブリップ７を備えている。
【００３２】
第１シール部材４は円筒状部材の金属製の金属環８を備え、軸方向の円筒部８Ａと大気側Ａに径方向内向きのフランジ部８Ｂとを有し、フランジ部８Ｂの先端にメインリップ９を備えている。
【００３３】
金属環８の内向きフランジ部８Ｂの内端に、軸３の外周面に摺接するメインリップ９と、メインリップ９の大気側Ａに延びるダストリップ１０と、が設けられている。
【００３４】
このメインリップ９は内向きフランジ部８Ｂの内端から密封流体側Ｏに延びる断面楔状をして、摺動面にはねじ溝が設けられており、ポンプ作用により漏出した流体を密封流体側Ｏへ押し戻しシール性を高め、また、グリース１５を摺動面に供給し長寿命化を図っている。
【００３５】
ここで、摺動面にはねじ溝に限られず、例えばねじ突起等のポンプ作用を行うものが設けてあればよい。
【００３６】
また、メインリップ９の外周面には、軸３の外周面に対して緊迫力を付与するためのばね部材１１が設けられている。
【００３７】
そして、金属環８の円筒部８Ａには、円筒部８Ａと円筒部６Ａとに挟まれるゴム状弾性部１３を有するゴム状弾性体１２が焼付固定されている。このゴム状弾性体１２のゴム状弾性部１３に金属環６の円筒部６Ａが摺接して、第１シール部材４と第２シール部材５が取り付けられている。
【００３８】
従って、摺動面である軸３の外周表面と第１シール部材４と第２シール部材５に囲まれた領域を環状の密封空間１４として形成している。
【００３９】
このゴム状弾性部１３には密封空間１４から密封空間１４の外側としての密封流体側Ｏへ疎通する通路としてのスリット１６を設けてある。
【００４０】
ここで、通路としてのスリット１６はゴム状弾性部１３周上に一つだけ設けられてもよいし或は複数設けられてもよい。
【００４１】
そして、スリット１６の密封流体側Ｏのそれぞれの円筒部６Ａ，円筒部８Ａに挟まれた環状隙間を、第２シール部材５の円筒部６Ａの密封流体側Ｏ端部にゴム状弾性体で形成して突出させた一方向弁としてのシールリップ１７で、第１シール部材４の円筒部８Ａの密封流体側Ｏ端部に当接して密封できるようにさせている。
【００４２】
また、軸３と、サブリップ７とメインリップ９との間、メインリップ９とダストリップ１０との間にそれぞれ潤滑剤としてのグリース１５が封入されている。
【００４３】
上記構成の密封装置１にあっては、第１シール部材４に設けられたダストリップ１０により、大気側Ａからのダストが内部に侵入するのを防止して、メインリップ９によって密封流体側Ｏから漏出した流体が大気側Ａに漏れるのを防止している。
【００４４】
また、第２シール部材５に設けられたサブリップ７により、第１シール部材４に対し直接かかることを防止している。
【００４５】
さらに、メインリップ９によるポンプ効果で、グリース１５や大気側Ａの空気が密封流体側Ｏに吸い込まれて密封空間１４に流れ込み、密封空間１４の気体の体積を小さくして密封空間１４内を高圧化するが、密封空間１４内の圧力が密封流体側Ｏの圧力よりも高くなると、シールリップ１７が開いてスリット１６を介して密封空間１４の圧力を密封流体側Ｏへ解放して密封空間１４内の高圧化を防止する。
【００４６】
そして、密封空間１４と密封流体側Ｏとの圧力が等しくなると、シールリップ１７を閉じるので、シールリップ１７から密封流体が密封空間１４へ漏れることもない。
【００４７】
従って、密封空間１４が高圧化してグリース１５が押し戻されてサブリップ７がめくれて軸３と離れてしまうことを防止することができるし、第２シール部材５が分離することもない。また、密封空間１４内の圧力上昇による第１シール部材４のメインリップ９の軸３に対する接触圧が上昇してしまい、本来のシール性を損なうことを防ぐことができ、長寿命化を図ることができる。
【００４８】
尚、図２、図３、図４には本実施の形態に係る密封装置の他の例を示している。
【００４９】
図２に示された密封装置では、密封空間１４から密封流体側Ｏへ貫通する隙間としてのスリット１６をゴム状弾性部１３ではなく、金属環６の円筒部６Ａに設けている。その他の構成は実施の形態と同一である。
【００５０】
図３に示された密封装置では、スリット１６ではなく、金属環６の円筒部６Ａに孔１６’を設けている。その他の構成は実施の形態と同一である。
【００５１】
図４に示された密封装置では、シールリップ１７を第１シール部材４の円筒部８Ａの密封流体側Ｏ端部にゴム状弾性体１２で形成して設け、第２シール部材５の円筒部６Ａの密封流体側Ｏ端部に当接させる。その他の構成は実施の形態と同一である。
【００５２】
以上のような密封装置であっても、本実施の形態と同様な作用、効果を得ることができる。但し、本発明が適用できる密封装置をこれらに限るものではない。
【００５３】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、密封空間から密封空間の外側へと疎通する通路と、通路を介して密封空間の圧力を解放する一方向弁を備えたことで、密封空間に圧力が蓄積されて密封空間内が高圧になると、一方向弁が開いて密封空間の圧力を密封空間の外側へと疎通する通路を介して解放し、密封空間内の圧力の過大上昇を抑制する。そして、密封空間と密封空間の外側の圧力が等しくなると、一方向弁が閉じるので、一方向弁は密封空間の外側から密封空間への逆流入を防止することができる。よって、密封空間内の圧力を安定させることができ、密封空間内の圧力が過大上昇して生じる密封流体側のリップがめくれて密封空間に流体が侵入してしまうことや、第１及び第２シール部材が分離してしまうことを防止してシール性を向上し、また長寿命化を図ることができる。
【００５４】
また、通路は前記第１及び第２シール部材の取付部における境界面に設けられていることで、境界面に溝や凹部を形成することにより、容易に通路を形成することができる。
【００５５】
さらに、第１及び第２シール部材は、それぞれ互いに嵌め合わされる円筒部を備えた環状部材であり、第２シール部材の円筒部は第１シール部材の円筒部の内周に嵌合し、少なくとも一方の円筒部は嵌め合わされたの境界面をシールするゴム状弾性部を一体的に備え、通路はゴム状弾性部に形成された軸方向溝であり、一方向弁は嵌め合わされた円筒部間の環状隙間を塞ぐもので、一方のシール部材の円筒部に形成されたメインリップであり、第１及び第２シール部材の円筒部を嵌合することで、容易に通路及び一方向弁を設けることができる。また、一方向弁は円筒部に形成されたメインリップであるので、円筒部と一体的に容易に形成することができ、構成が簡単となり、円筒部間の環状隙間を塞ぐことができる。
【００５６】
一方向弁は、密封流体側に圧力を解放することで、密封空間と密封流体側との圧力を等しく維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は実施の形態に係る密封装置を示す断面図である。
【図２】図２は実施の形態に係る他の密封装置を示す断面図である。
【図３】図３は実施の形態に係る他の密封装置を示す断面図である。
【図４】図４は実施の形態に係る他の密封装置を示す断面図である。
【図５】図５は従来の密封装置を示す断面図である。
【符号の説明】
１ 密封装置
２ ハウジング
３ 軸
４ 第１シール部材
５ 第２シール部材
６ 金属環
６Ａ 円筒部
６Ｂ フランジ部
７ サブリップ
８ 金属環
８Ａ 円筒部
８Ｂ 内向きフランジ部
９ メインリップ
１０ ダストリップ
１１ ばね部材
１２ ゴム状弾性部
１３ ゴム状弾性体
１４ 密封空間
１５ グリース
１６ スリット
１６’ 孔
１７ シールリップ
【発明の属する技術分野】
本発明は２つのシール部材を組み合わせた組立式の密封装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、この種の２つのシール部材を組み合わせた組立式の密封装置としては、例えば図５に示すようなものがある。すなわち、この密封装置１００は互いに同心的に相対回転自在に組み付けられるハウジング１０１と軸１０２間をシールするもので、ハウジング１０１に取付けられる第１シール部材１０３と、第１シール部材１０３に取付けられる第２シール部材１０４と、を組み立てて一体化したものである。
【０００３】
第１シール部材１０３は金属環１０８とメインリップ１０９を備えている。
【０００４】
金属環１０８は大気側Ａに径方向内向きの内向きフランジ部１０８Ａを有する円筒状部材である。そして、金属環１０８の内向きフランジ部１０８Ａの内端に、軸１０２の外周面に摺接するメインリップ１０９と、メインリップ１０９の大気側Ａに延びるダストリップ１１０と、が設けられている。
【０００５】
このメインリップ１０９は内向きフランジ部１０８Ａの内端から密封流体側Ｏに延びる断面楔状をして、摺動面にはねじ溝が設けられており、ポンプ作用により漏出した流体を密封流体側Ｏへ押し戻しシール性を高め、また、グリース１１４を摺動面に供給し長寿命化を図っている。
【０００６】
また、メインリップ１０９の外周面には、軸１０２の外周面に対して緊迫力を付与するためのばね部材１１１が設けられている。
【０００７】
第２シール部材１０４は金属環１０６を備えており、その密封流体側Ｏに径方向内向きのフランジ部１０５を有し、そのフランジ部１０５の先端にサブリップ１０７を備えている。
【０００８】
そして、金属環１０８の内周面には、ゴム状弾性体１１２が固定されている。このゴム状弾性体１１２に金属環１０６が摺接して、第１シール部材１０３と第２シール部材１０４が取り付けられている。
【０００９】
従って、摺動面である軸１０２の外周表面と第１シール部材１０３と第２シール部材１０４に囲まれた領域を環状の密封空間１１３として形成している。
【００１０】
また、軸１０２と、サブリップ１０７とメインリップ１０９との間、メインリップ１０９とダストリップ１１０との間にそれぞれ潤滑剤としてのグリース１１４が封入されている。
【００１１】
上記構成の密封装置１００にあっては、第１シール部材１０３に設けられたダストリップ１１０により、大気側Ａからのダストが内部に侵入するのを防止して、メインリップ１０９によって密封流体側Ｏから漏出した流体が大気側Ａに漏れるのを防止している。
【００１２】
さらに、第２シール部材１０４に設けられたサブリップ１０７により、密封流体が第１シール部材１０３に対し直接かかることを防止している。
【００１３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術の密封装置１００は、メインリップ１０９のポンプ作用によって、メインリップ１０９とダストリップ１１０間のグリース１１４や大気側Ａから空気を吸い込み、密封空間１１３の内圧上昇を引き起こす。
【００１４】
これにより、グリース１１４が密封空間１１３から押し戻されてサブリップ１０７がめくれて軸１０２から離れてしまい、密封空間１１３に密封流体が侵入してしまったり、閉じ込められた気体の圧力により第２シール部材１０４が第１シール部材１０３から分離してしまうという問題が生じていた。
【００１５】
また、サブリップ１０７及び第２シール部材１０４に上記の問題が生じない場合であっても、密封空間１１３の圧力の上昇により、第１シール部材１０３のメインリップ１０９の軸１０２に対する接触圧が上昇し、本来のシール性が発揮できなくなり、寿命を短くしてしまう虞がある。
【００１６】
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、シール部材間の内圧上昇を抑制し、シール性の向上と密封装置の長寿命化を図り得る密封装置を提供することにある。
【００１７】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明にあっては、対向面を形成する２部材間をシールするもので、２部材の内の一方の部材に取付けられ、他方の部材の摺動面に摺接するメインリップを有する第１シール部材と、前記第１シール部材に取付けられ、他方の部材の摺動面に摺接するサブリップを有する第２シール部材と、を備え、前記他方の部材の摺動面と前記第１及び第２シール部材によって囲まれる領域を密封空間とした密封装置において、前記密封空間から該密封空間の外側へと疎通する通路と、前記通路を介して前記密封空間の圧力を解放する一方向弁を備え、前記第１及び第２シール部材は、それぞれ互いに嵌め合わされる軸方向の円筒部を備えた環状部材であり、前記第２シール部材の円筒部は第１シール部材の円筒部の内周に嵌合し、少なくとも一方の円筒部は嵌め合わされた円筒部の境界面をシールするゴム状弾性部を一体的に備え、前記通路は前記ゴム状弾性部に形成された軸方向溝であり、前記一方向弁は嵌め合わされた円筒部間の環状隙間を塞ぐもので、一方のシール部材の円筒部に形成されたシールリップであることを特徴とする。
【００１８】
従って、密封空間に圧力が蓄積されて密封空間内が高圧になると、一方向弁が開いて密封空間の圧力を密封空間の外側へと疎通する通路を介して解放し、密封空間内の圧力の過大上昇を抑制する。そして、密封空間と密封空間の外側の圧力が等しくなると、一方向弁が閉じるので、一方向弁は密封空間の外側から密封空間への逆流入を防止することができる。
【００１９】
よって、密封空間内の圧力を安定させることができ、密封空間内の圧力が過大上昇して生じる密封流体側のリップがめくれて密封空間に流体が侵入してしまうことや、第１及び第２シール部材が分離してしまうことを防止してシール性を向上し、また長寿命化を図ることができる。
【００２３】
また、第１及び第２シール部材の円筒部を嵌合することで、容易に通路及び一方向弁を設けることができる。
【００２４】
一方向弁は円筒部に形成されたメインリップであるので、円筒部と一体的に容易に形成することができ、構成が簡単となり、円筒部間の環状隙間を塞ぐことができる。
【００２７】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【００２８】
図１は実施の形態に係る密封装置を示す断面図である。
【００２９】
図１において、１は密封装置を示しており、２つのシール部材を組み合わせた組立式のもので、互いに同心的に相対回転自在に組み付けられる対向面を形成する２部材としてのハウジング２と軸３間をシールするものである。
【００３０】
密封装置１はハウジング２に取付けられる第１シール部材４と、第１シール部材４に取付けられる第２シール部材５と、を組み立てて一体化したものである。
【００３１】
第２シール部材５は金属製の金属環６を備え、軸方向の円筒部６Ａと密封流体側Ｏに径方向内向きのフランジ部６Ｂとを有し、そのフランジ部６Ｂの先端にサブリップ７を備えている。
【００３２】
第１シール部材４は円筒状部材の金属製の金属環８を備え、軸方向の円筒部８Ａと大気側Ａに径方向内向きのフランジ部８Ｂとを有し、フランジ部８Ｂの先端にメインリップ９を備えている。
【００３３】
金属環８の内向きフランジ部８Ｂの内端に、軸３の外周面に摺接するメインリップ９と、メインリップ９の大気側Ａに延びるダストリップ１０と、が設けられている。
【００３４】
このメインリップ９は内向きフランジ部８Ｂの内端から密封流体側Ｏに延びる断面楔状をして、摺動面にはねじ溝が設けられており、ポンプ作用により漏出した流体を密封流体側Ｏへ押し戻しシール性を高め、また、グリース１５を摺動面に供給し長寿命化を図っている。
【００３５】
ここで、摺動面にはねじ溝に限られず、例えばねじ突起等のポンプ作用を行うものが設けてあればよい。
【００３６】
また、メインリップ９の外周面には、軸３の外周面に対して緊迫力を付与するためのばね部材１１が設けられている。
【００３７】
そして、金属環８の円筒部８Ａには、円筒部８Ａと円筒部６Ａとに挟まれるゴム状弾性部１３を有するゴム状弾性体１２が焼付固定されている。このゴム状弾性体１２のゴム状弾性部１３に金属環６の円筒部６Ａが摺接して、第１シール部材４と第２シール部材５が取り付けられている。
【００３８】
従って、摺動面である軸３の外周表面と第１シール部材４と第２シール部材５に囲まれた領域を環状の密封空間１４として形成している。
【００３９】
このゴム状弾性部１３には密封空間１４から密封空間１４の外側としての密封流体側Ｏへ疎通する通路としてのスリット１６を設けてある。
【００４０】
ここで、通路としてのスリット１６はゴム状弾性部１３周上に一つだけ設けられてもよいし或は複数設けられてもよい。
【００４１】
そして、スリット１６の密封流体側Ｏのそれぞれの円筒部６Ａ，円筒部８Ａに挟まれた環状隙間を、第２シール部材５の円筒部６Ａの密封流体側Ｏ端部にゴム状弾性体で形成して突出させた一方向弁としてのシールリップ１７で、第１シール部材４の円筒部８Ａの密封流体側Ｏ端部に当接して密封できるようにさせている。
【００４２】
また、軸３と、サブリップ７とメインリップ９との間、メインリップ９とダストリップ１０との間にそれぞれ潤滑剤としてのグリース１５が封入されている。
【００４３】
上記構成の密封装置１にあっては、第１シール部材４に設けられたダストリップ１０により、大気側Ａからのダストが内部に侵入するのを防止して、メインリップ９によって密封流体側Ｏから漏出した流体が大気側Ａに漏れるのを防止している。
【００４４】
また、第２シール部材５に設けられたサブリップ７により、第１シール部材４に対し直接かかることを防止している。
【００４５】
さらに、メインリップ９によるポンプ効果で、グリース１５や大気側Ａの空気が密封流体側Ｏに吸い込まれて密封空間１４に流れ込み、密封空間１４の気体の体積を小さくして密封空間１４内を高圧化するが、密封空間１４内の圧力が密封流体側Ｏの圧力よりも高くなると、シールリップ１７が開いてスリット１６を介して密封空間１４の圧力を密封流体側Ｏへ解放して密封空間１４内の高圧化を防止する。
【００４６】
そして、密封空間１４と密封流体側Ｏとの圧力が等しくなると、シールリップ１７を閉じるので、シールリップ１７から密封流体が密封空間１４へ漏れることもない。
【００４７】
従って、密封空間１４が高圧化してグリース１５が押し戻されてサブリップ７がめくれて軸３と離れてしまうことを防止することができるし、第２シール部材５が分離することもない。また、密封空間１４内の圧力上昇による第１シール部材４のメインリップ９の軸３に対する接触圧が上昇してしまい、本来のシール性を損なうことを防ぐことができ、長寿命化を図ることができる。
【００４８】
尚、図２、図３、図４には本実施の形態に係る密封装置の他の例を示している。
【００４９】
図２に示された密封装置では、密封空間１４から密封流体側Ｏへ貫通する隙間としてのスリット１６をゴム状弾性部１３ではなく、金属環６の円筒部６Ａに設けている。その他の構成は実施の形態と同一である。
【００５０】
図３に示された密封装置では、スリット１６ではなく、金属環６の円筒部６Ａに孔１６’を設けている。その他の構成は実施の形態と同一である。
【００５１】
図４に示された密封装置では、シールリップ１７を第１シール部材４の円筒部８Ａの密封流体側Ｏ端部にゴム状弾性体１２で形成して設け、第２シール部材５の円筒部６Ａの密封流体側Ｏ端部に当接させる。その他の構成は実施の形態と同一である。
【００５２】
以上のような密封装置であっても、本実施の形態と同様な作用、効果を得ることができる。但し、本発明が適用できる密封装置をこれらに限るものではない。
【００５３】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、密封空間から密封空間の外側へと疎通する通路と、通路を介して密封空間の圧力を解放する一方向弁を備えたことで、密封空間に圧力が蓄積されて密封空間内が高圧になると、一方向弁が開いて密封空間の圧力を密封空間の外側へと疎通する通路を介して解放し、密封空間内の圧力の過大上昇を抑制する。そして、密封空間と密封空間の外側の圧力が等しくなると、一方向弁が閉じるので、一方向弁は密封空間の外側から密封空間への逆流入を防止することができる。よって、密封空間内の圧力を安定させることができ、密封空間内の圧力が過大上昇して生じる密封流体側のリップがめくれて密封空間に流体が侵入してしまうことや、第１及び第２シール部材が分離してしまうことを防止してシール性を向上し、また長寿命化を図ることができる。
【００５４】
また、通路は前記第１及び第２シール部材の取付部における境界面に設けられていることで、境界面に溝や凹部を形成することにより、容易に通路を形成することができる。
【００５５】
さらに、第１及び第２シール部材は、それぞれ互いに嵌め合わされる円筒部を備えた環状部材であり、第２シール部材の円筒部は第１シール部材の円筒部の内周に嵌合し、少なくとも一方の円筒部は嵌め合わされたの境界面をシールするゴム状弾性部を一体的に備え、通路はゴム状弾性部に形成された軸方向溝であり、一方向弁は嵌め合わされた円筒部間の環状隙間を塞ぐもので、一方のシール部材の円筒部に形成されたメインリップであり、第１及び第２シール部材の円筒部を嵌合することで、容易に通路及び一方向弁を設けることができる。また、一方向弁は円筒部に形成されたメインリップであるので、円筒部と一体的に容易に形成することができ、構成が簡単となり、円筒部間の環状隙間を塞ぐことができる。
【００５６】
一方向弁は、密封流体側に圧力を解放することで、密封空間と密封流体側との圧力を等しく維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は実施の形態に係る密封装置を示す断面図である。
【図２】図２は実施の形態に係る他の密封装置を示す断面図である。
【図３】図３は実施の形態に係る他の密封装置を示す断面図である。
【図４】図４は実施の形態に係る他の密封装置を示す断面図である。
【図５】図５は従来の密封装置を示す断面図である。
【符号の説明】
１ 密封装置
２ ハウジング
３ 軸
４ 第１シール部材
５ 第２シール部材
６ 金属環
６Ａ 円筒部
６Ｂ フランジ部
７ サブリップ
８ 金属環
８Ａ 円筒部
８Ｂ 内向きフランジ部
９ メインリップ
１０ ダストリップ
１１ ばね部材
１２ ゴム状弾性部
１３ ゴム状弾性体
１４ 密封空間
１５ グリース
１６ スリット
１６’ 孔
１７ シールリップ
Claims (1)
- 対向面を形成する２部材間をシールするもので、
２部材の内の一方の部材に取付けられ、他方の部材の摺動面に摺接するメインリップを有する第１シール部材と、
前記第１シール部材に取付けられ、他方の部材の摺動面に摺接するサブリップを有する第２シール部材と、を備え、
前記他方の部材の摺動面と前記第１及び第２シール部材によって囲まれる領域を密封空間とした密封装置において、
前記密封空間から該密封空間の外側へと疎通する通路と、
前記通路を介して前記密封空間の圧力を解放する一方向弁を備え、
前記第１及び第２シール部材は、それぞれ互いに嵌め合わされる軸方向の円筒部を備えた環状部材であり、前記第２シール部材の円筒部は第１シール部材の円筒部の内周に嵌合し、
少なくとも一方の円筒部は嵌め合わされた円筒部の境界面をシールするゴム状弾性部を一体的に備え、
前記通路は前記ゴム状弾性部に形成された軸方向溝であり、
前記一方向弁は嵌め合わされた円筒部間の環状隙間を塞ぐもので、一方のシール部材の円筒部に形成されたシールリップであることを特徴とする密封装置。
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