JP5038553B2 - スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、金属シリサイドからなるスパッタリングターゲットの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子や液晶表示素子などに代表される電子部品においては、配線や電極の形成材料、また素子構成膜などとして、W、Mo、Ta、Ti、Zr、Coなどの高融点金属のシリサイド化合物が使用されている。特に、半導体素子の高集積化、高密度化に伴う電極や配線の細長化によって、電気信号の遅延が問題となっているが、抵抗値の低いWやMoなどの金属シリサイド薄膜は、低抵抗な電極や配線の形成材料として有用である。金属シリサイド薄膜は、エレクトロマイグレーションの抑制などにも効果を発揮する。
【0003】
WやMoなどの高融点金属のシリサイド化合物(WSi2やMoSi2など)からなる薄膜を形成する方法としては、スパッタリング法とCVD法が代表的な成膜法として挙げられるが、成膜の生産性、安定性、製造コストなどの観点から、特にスパッタリング法が一般的に使用されている。
【0004】
上述したような金属シリサイド薄膜をスパッタリング法で形成する場合、金属シリサイドでスパッタリングターゲットの作製する必要がある。ここで、一般的なスパッタリングターゲットの製造方法としては、電子ビーム(EB)溶解などを適用した溶解法、あるいはホットプレス(HP)や熱間静水圧プレス(HIP)などを適用した粉末焼結法が知られている。
【0005】
金属シリサイドターゲットを作製する場合には、成膜する金属シリサイド膜の組成制御が容易であることなどから、粉末焼結法が一般的に使用されている(例えば特開平5-214523号公報参照)。具体的には、まずWやMoなどの高融点金属(M)粉末とシリコン(Si)粉末とを、Siの原子比が2〜4程度となるように混合し、この混合粉末に熱処理を施して金属シリサイド(MSi2)の合成反応を行う。得られた金属シリサイド粉末に、さらにシリコン(Si)粉末を加えた後に、HPやHIPなどを適用して高真空中、高圧力下で加圧焼結することによって、金属シリサイドターゲットを作製している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような従来の金属シリサイドターゲットは、MSi2相の間隙に微細なSi相を配置する形態をとっている。しかしながら、従来の粉末焼成法では合成金属シリサイド末にSi粉末を加えて焼結体を作製しているため、例えばMSi2.2 〜 3の焼結体ではSi相の占容積率が8〜25%の範囲となり、MSi2相に比べてSi相が非常に少なくなってしまう。従って、MSi2相の周囲にSi相をくまなく行き渡らせるのが容易ではなく、MSi2相同士が凝集したり、また局所的にSi相が存在するなど、不均一な組織を有するシリサイドターゲットとなってしまう。
【0007】
また、高融点金属(M)の融点の違いもターゲット性能に大きく影響している。例えば、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2の各融点は2165℃、2030℃、1540℃、2200℃である。このように、融点が大きく異なるMSi2と融点1414℃のSiとを、共晶温度直下で加圧焼結しているため、熱的に安定なMSi2粒子間では焼結が進まず、粒子間の結合力が弱くなってしまう。このため、シリサイドターゲット中にポアが残存し、緻密化が不十分となってしまう。
【0008】
上述したような従来のシリサイドターゲットを用いてスパッタ成膜を行うと、スパッタ時のAr照射エネルギーにより粒子間の結合が切れ、ターゲットのスパッタ面から欠陥部を起点として破壊、欠落などが生じてしまう。これらはパーティクルの発生原因となる。このパーティクルとは、ターゲットから発生した微細な粒子、例えば直径が0.2〜10μm程度の粒子である。このような粒子が成膜した薄膜中に混入すると、配線間のショートや配線のオープン不良などの原因となり、半導体素子や液晶表示素子などの電子部品の製造歩留りを低下させることになる。このようなことから、パーティクルの発生量を大幅に低減することが強く望まれている。
【0009】
また、パーティクルの発生原因としては、上記したターゲット組織の不均一性や緻密化不足の他に、焼結により得たターゲット素材(金属シリサイド焼結体)を機械加工で仕上げた際に生じる微小な加工欠陥相、表面状態、残留応力などを挙げることができる。
【0010】
すなわち、従来の研削仕上げは、高速回転している研削砥石の硬い砥粒で被加工物を削り取っていく方法であり、このような方法で硬くて脆い金属シリサイド焼結体を加工した場合、不可避的に粒状チップが加工面から飛散するチッピング現象が起こる。これは、研削時に砥粒の接触応力により加工面に微小なクラックが生じ、砥粒の通過後、応力の急激な開放によりクラックの肩部が押上げられて破片として離脱することによって生成されるものと考えられる。
【0011】
通常、脆性材料の加工にあたっては、砥粒当りの切り込み深さ、または荷重を適当に大きくして、砥粒により誘起される局所応力場にクラックが含まれるくらいにし、材料の微小破砕の集積により加工を進めている。従って、シリサイドターゲットの研削面、例えばスパッタ面には、研削条痕、脱落孔、微小クラックなどが多数発生する。また、加工面には残留応力が生じる。このようなシリサイドターゲットを用いてスパッタ成膜を行うと、欠陥部を起点として破壊、欠落などが起こり、パーティクルを発生させることになる。
【0012】
なお、特開平11-256322号公報には、パーティクルの発生を使用初期から低減するターゲットとして、ターゲット材が化学量論的な高融点金属シリサイドMSi2および純シリコンSiで構成されると仮定して計算された理論密度に対するターゲット材の真密度の比である相対密度が100%以上であり、ターゲット材のスパッタ面のX線回折強度測定においてMSi2相の(101)ピークの半価幅が0.7deg以下である金属シリサイドターゲットが記載されている。
【0013】
上記した公報に記載された金属シリサイドターゲットは、歪を低減することにより初期パーティクルの減少を図ったものであり、そのためにX線回折強度測定における半価幅を規定している。この公報に記載されている製造方法は、鏡面加工後の歪を除去するために、加工後のターゲットに対して800〜1250℃の温度で熱処理を施すことが記載されている。
【0014】
本発明はこのような課題に対処するためになされたものであって、シリサイドターゲットの内部組織や内部状態、さらには加工面(特にスパッタ面)の状態などに起因するパーティクルの発生を大幅に抑制することを可能にしたスパッタリングターゲットの製造方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記したシリサイドターゲットの内部組織や内部状態に起因すると考えられるパーティクルの発生を抑制するために、種々の検討を重ねた結果、スパッタ時にシリサイドターゲットの内部残留応力が開放されることがパーティクルの発生要因の1つとなっていることを見出した。
【0016】
内部残留応力の開放に基づくパーティクルは、予めターゲットの残留応力を開放しておくことで大幅に抑制することができ、さらにこの残留応力の開放状態はターゲットの硬度から判断することができることを、本発明者らは見出した。すなわち、シリサイドターゲットの残留応力を予め開放し、この残留応力の開放に基づいてシリサイドターゲットを低硬度化することによって、上記した応力開放に基づくパーティクルを大幅に抑制することが可能となる。
【0017】
また、ターゲット表面を加工するにあたって、残留応力を低減し得るような加工方法を適用し、それに基づいて残留応力の小さい表面状態とすることによって、応力開放に基づくパーティクルの発生量をより一層低減することができる。ターゲット表面(スパッタ面)に関しては、大きな凹凸や偏った凹凸がパーティクルの発生原因の1つとなっていることから、このような凹凸を減少させることで、さらにパーティクルの発生量を低減することが可能となる。
【0018】
本発明はこのような知見に基づいてなされたもので、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法により製造されるスパッタリングターゲットは請求項1に記載したように、一般式:MSix(式中、MはW、Mo、Ta、Ti、Zr、Hf、NiおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素を、xは2〜4の範囲の数を示す)で表される金属シリサイドにより構成され、かつ連鎖状に形成された金属シリサイド相と、過剰なSi粒子が結合して形成され、前記金属シリサイド相の間隙に不連続に存在するSi相とを含む微細組織を有するスパッタリングターゲットにおいて、前記ターゲットはビッカース硬さで1300Hv以下の硬度を有し、かつ前記ターゲット全体のビッカース硬さのバラツキが±20%以内であることを特徴としている。
【0019】
このような硬度を有する金属シリサイドターゲットによれば、上記した応力開放に基づくパーティクルの発生量を大幅に低減することができる。
【0021】
また、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、上記したスパッタリングターゲットを製造する方法であって、前記金属シリサイドからなるターゲット素材を作製する工程と、前記ターゲット素材を1250℃を超え1400℃以下の温度で2〜10時間熱処理し、前記ターゲット素材の硬度をビッカース硬さで1300Hv以下、かつ前記ターゲット素材全体のビッカース硬さのバラツキを±20%以内とする工程と、前記ターゲット素材を所望の寸法に加工し、スパッタ面の表面粗さが最大高さRyで2μm以下、ゆがみ値Rskで−3〜+3の範囲となるようにポリッシング加工またはCMPにより表面を加工する工程とを具備することを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0024】
本発明のスパッタリングターゲットは、
一般式:MSix …(1)
(式中、MはW、Mo、Ta、Ti、Zr、Hf、NiおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素を、xは2〜4の範囲の数を示す)
で表される金属シリサイドからなるものである。
【0025】
ここで、xの値は基本的にはMSi2を構成するSi量と過剰のSi量とから設定されるものである。xの値が2未満であると、目的とする金属シリサイド(MSi2)薄膜を再現性よく得ることができない。一方、xの値が4.0を超えると、過剰のSi量が多すぎることにより抵抗値が高くなり、素子に悪影響を及ぼすおそれがある。xの値は2.5〜3.2の範囲とすることがさらに好ましい。
【0026】
本発明による金属シリサイドターゲットは、上記した過剰のSiに基づいて、連鎖状に形成されたMSi2相(金属シリサイド相)の間隙に、過剰なSi粒子が結合して形成されたSi相を不連続に存在させた微細組織を有している。MSi2相の間隙にSi相を不連続に存在させることによって、MSi2相間の結合状態を高めることができる。
【0027】
本発明のスパッタリングターゲットにおいては、上述した過剰のSiを含む金属シリサイド(MSi2+Si)からなり、かつMSi2相とSi相とを含む微細組織を有する金属シリサイドターゲットの硬度を、ビッカース硬さで1300Hv以下としている。
【0028】
ここで、本発明で規定するターゲットの硬度は、以下に示す方法により測定された値とする。すなわち、図1に示すように、例えば円板状ターゲットの中心部(位置1)と、中心部を通り円周を均等に分割した4本の直線上の外周近傍位置(位置2〜9)およびその1/2の距離の位置(位置10〜17)とから、それぞれ長さ10mm、幅10mmの試験片を採取し、これら17点の試験片のスパッタ面の硬度を次に示すビッカース硬さの測定条件で測定し、これらの測定値を平均した値を示すものとする。さらに、後述するターゲット全体のビッカース硬さのバラツキは、上記した17点の試験片から求めたビッカース硬さの最大値および最小値から、{(最大値−最小値)/(最大値+最小値)}×100の式に基づいて求めた値を示すものとする。
【0029】
本発明におけるビッカース硬さは、ビッカース硬さ試験機を用いて、試験荷重500gf、時間15s、室温の条件下で測定した値を示すものとする。なお、本発明の金属シリサイドターゲットは、上述したように微細組織中に高硬度のMSi2相と低硬度のSi相とを有しているため、ビッカース硬さの測定は1つの試験片で測定箇所を変えて10点測定し、それを平均した値を各試験片の硬さとする。
【0030】
金属シリサイドターゲットにおけるパーティクルの発生原因の1つとして、スパッタ時にターゲットの内部残留応力が開放されることが挙げられる。すなわち、ターゲット素材の作製工程や所望形状への加工工程(表面の仕上げ加工を含む)で生じた残留応力が、スパッタ時のAr照射エネルギーにより開放され、この応力開放に伴ってスパッタ面で破壊や欠落などが生じる。このスパッタ面での破壊や欠落などにより生じた異物がパーティクルとして、成膜した金属シリサイド膜中に混入して問題を引き起こす。
【0031】
上述した応力開放に基づいて発生するパーティクル数は、予め金属シリサイドターゲットの残留応力を開放しておき、スパッタエネルギーによる応力開放を抑えることによって、大幅に低減することが可能となる。ターゲットの残留応力は、例えばホッとプレス(HP)処理や熱間静水圧プレス(HIP)処理により焼結されて作製された、金属シリサイドからなるターゲット素材に対して、その焼結後に1250℃を超え1400℃以下の温度で熱処理し、少なくとも表面部を軟化させる、すなわち最終的に得られるターゲットのビッカース硬さを1300Hv以下にすることによって、大幅に低減(応力開放)することができる。また、この熱処理に代えて、HP処理やHIP処理後の冷却時に無加圧状態で所定の温度で保持することによっても、同様な効果を得ることができる。
【0032】
応力開放(軟化)のための熱処理の温度が1400℃を超えると、遊離Siが溶出してしまい、ターゲット組織に悪影響を及ぼす。一方、1250℃以下では十分な応力開放効果を得ることができない。言い換えると、金属シリサイドターゲットを十分に軟化させることができない。熱処理温度は1250℃を超え1350℃以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは1300〜1350℃の範囲である。
【0033】
このように、応力開放のための熱処理を施した金属シリサイドターゲットは、熱処理前に比べて硬度が低下する。そして、金属シリサイドターゲットの硬度を低下させることによって、スパッタ時の残留応力の開放に基づくパーティクルの発生を大幅に抑制することが可能となる。硬度の低下に基づくパーティクルの抑制効果は、金属シリサイドターゲットの硬度をビッカース硬さで1300Hv以下とすることで顕著に得ることができる。
【0034】
すなわち、上述したような測定法に基づくビッカース硬さが1300Hv以下の金属シリサイドターゲットによれば、スパッタ時の応力開放に基づくパーティクルの発生を大幅に抑制することが可能となる。パーティクルの抑制効果をより一層高める上で、金属シリサイドターゲットの硬度はビッカース硬さで1100Hv以下、さらには1000Hv以下とすることがより好ましい。
【0035】
さらに、金属シリサイドターゲットの硬度は、ターゲット全体のビッカース硬さのバラツキとして±20%以内とすることが好ましい。なお、ビッカース硬さのバラツキは前述した方法により定義されるものである。このように、ターゲット全体の硬度を平均的に低下させることによって、ターゲット中の各部位によるパーティクルの発生量のバラツキを抑えることができる。すなわち、金属シリサイドターゲット全体としてパーティクルの発生量の抑制することができ、より高品質な金属シリサイド薄膜を得ることができる。ターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは±15%以内、さらには±10%以内とすることがより好ましい。
【0036】
本発明のスパッタリングターゲット(金属シリサイドターゲット)においては、スパッタ面の表面粗さを最大高さRyで2μm以下とすることが好ましい。また、スパッタ面の表面粗さは最大高さRyに加えて、ゆがみ値Rskで表される表面粗さを-3〜+3の範囲とすることがさらに好ましい。
【0037】
すなわち、ターゲット表面の残留応力の大きさは、表面の加工方法によって大きく異なってくる。従来の表面研削のように、高速回転している研削砥石の硬い砥粒で被加工物を削り取っていく方法では、加工面に研削条痕、脱落孔、微小クラックなどが多数発生すると共に、大きな残留応力が発生する。
【0038】
これに対して、ターゲット素材を所望の寸法に機械加工した後、ラッピング加工、ポリッシング加工、CMPなどで表面を仕上げることによって、加工面を平滑化することができると共に、ターゲット表面(特にスパッタ面)の残留応力を低減することが可能となる。言い換えると、スパッタ面の表面粗さが最大高さRyで2μm以下、さらにゆがみ値Rskで-3〜+3の範囲となるように、ターゲット表面を加工することによって、残留応力の発生自体を抑えることが可能となる。従って、スパッタ面の表面粗さを上述したような範囲とすることによって、スパッタ成膜時のパーティクルの発生数をさらに低減することができる。
【0039】
さらに、スパッタ面に存在する大きな凹凸は、それ自体パーティクルの発生原因となる。すなわち、金属シリサイドターゲットのスパッタ面の状態に起因するパーティクルは、比較的大きな凹凸の存在に基づいて異常放電が生じ、この異常放電により凸部先端が脱落して塊状の異物を発生させたり、あるいは異常放電自体が微細なダストを発生させることによるものである。従って、上記したような異常放電の原因となる大きな凹凸を除去することによって、スパッタ面の状態に起因するパーティクルの発生を抑制することが可能となる。
【0040】
ここで、最大高さRyは表面に存在する最大の凹凸高さを表したものである。具体的には、粗さ曲線からその平均線の方向に基準線Lだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から最も高い山頂までの高さ(Yp)と最も低い谷底までの深さ(Yv)との和(Ry=Yp+Yv)で表される。このような最大高さRyを2μm以下とすることによって、すなわちスパッタ面から大きな凹凸を除くことによって、パーティクルの発生をさらに抑制することが可能となる。スパッタ面の最大高さRyは1.5μm以下、さらには1μm以下とすることがより好ましい。
【0041】
なお、前述した特開平5-214523号公報には、表面加工状態の一つの指標として、算術平均粗さRaを0.05μm以下とすることが記載されている。しかしながら、表面粗さRaは粗さ曲線を平均化した値であるため、スパッタ面にいくつかの大きな凹凸が存在していても、Ra値からは判断することができない。従って、このような表面粗さの規定だけでは、上記したような異常放電を再現性よく抑制することはできない。
【0042】
また、ゆがみ値Rskは表面のゆがみを表した値であり、振幅分布曲線と呼ばれる粗さ曲線の最も高い山頂と最も低い谷底との間を等間隔に分割し、2本の平行線内の領域に存在するデータの数(n)と全データ数(N)との比を横軸に、粗さ曲線の高さ方向(Y)を縦軸にとってプロットしたものに対して、上下方向の偏りを表すものであり、下記の(2)式により表現されるものである。
【0043】
【式1】
上記したゆがみ値Rskがプラスの値を示したときは全体に上方に山が多いことを表し、マイナスの値を示したときは下方にへこみが多いことを表している。このようなゆがみ値Rskが+3を超える場合や-3より小さい場合には、凹凸の偏りに基づいて、スパッタ面の状態に起因するパーティクルの発生数が増大する。言い換えると、スパッタ面のゆがみ値Rskを-3〜+3の範囲とすることによって、パーティクル発生数をより一層低減することが可能となる。スパッタ面のゆがみ値Rskは-1〜+1の範囲、さらには-0.5〜+0.5の範囲とすることがより好ましい。
【0044】
なお、本発明で規定するスパッタ面の表面粗さは、スパッタリングターゲットのスパッタ面の各表面粗さ、すなわち最大高さRy、ゆがみ値Rskを、それぞれ以下の方法により測定した値とする。図1に示すように、例えば円板状ターゲットの中心部(位置1)と、中心部を通り円周を均等に分割した4本の直線上の外周近傍位置(位置2〜9)およびその1/2の距離の位置(位置10〜17)とから、それぞれ長さ10mm、幅10mmの試験片を採取し、これら17点の試験片のスパッタ面の各表面粗さを常法の触針法で測定し、これら各測定値をそれぞれ平均する。これらの各平均値をスパッタ面の各表面粗さとする。
【0045】
本発明の金属シリサイドからなるスパッタリングターゲットは、例えば以下のようにして製造することができる。
【0046】
すなわち、まず原料となるM元素粉末とSi粉末とを、所望の組成比となるように混合する。これら原料粉末の粒径(最大粒径)は、良好な混合状態を得る上で10μm以下とすることが好ましい。このような混合粉末にM元素に応じた温度で熱処理を施して、金属シリサイド(MSix=MSi2+Six-2)を合成する。
【0047】
次いで、上記した金属シリサイドの仮焼体を粉砕して、金属シリサイド粉末とする。得られた金属シリサイド粉末を例えば黒鉛製の成型用型に充填してホットプレスする。あるいは、金属シリサイド粉末にHIP処理を施す。なお、得られた金属シリサイド粉末に対して、組成調整のためにSi粉末を添加して原料粉末としてもよいが、ターゲット組織を均一化する上で、合成反応により得られた金属シリサイド粉末を単独で原料粉末として使用することが好ましい。
【0048】
次に、焼結工程により得られたターゲット素材(金属シリサイド焼結体)に対して軟化のための熱処理、言い換えると残留応力の開放のための熱処理を施す。この熱処理は7×10-2Pa以下の真空中にて、1250℃を超え1400℃以下の温度で実施することが好ましい。前述したように、熱処理温度が1400℃を超えると、遊離Siが溶出してしまう。一方、1250℃以下では十分に軟化させることができない。熱処理時間は2〜10時間程度することが好ましい。より好ましくは3〜7時間、さらには4〜6時間とすることが望ましい。
【0049】
この後、熱処理したターゲット素材に対して機械加工を施し、所望のターゲット寸法とし、さらにスパッタ面を仕上げ加工する。このスパッタ面の表面加工には、前述したようにラッピング加工、ポリッシング加工、CMPなどを適用することが好ましい。これらの仕上げ加工はラッピング、ポリッシング、CMPの順で研磨量が少なくなるため、仕上げ面(スパッタ面)の微細性が向上すると共に、残留応力も小さくなる。これらは併用することも可能である。表面仕上げ工程は、前述したようにスパッタ面の表面粗さが、最大高さRyで2μm以下、さらにゆがみ値Rskで-3〜+3の範囲となるように実施することが好ましい。
【0050】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0051】
実施例1
まず、最大粒径10μm程度の高純度W粉末と、最大粒径30μm以下のSi粉末とを、Si/Wの原子比(x)が2.8となるように配合し、これを高純度Arガスで置換したボールミルで48時間混合した。この混合粉末を1200℃×1hの条件でシリサイド反応熱処理し、得られた仮焼体を96hの条件で粉砕して、Wシリサイド粉末を得た。このWシリサイド粉末を黒鉛製の成型用型内に充填した後、ホットプレス装置にセットし、5×10-4Pa以下の真空中にて34MPaの圧力を印加しながら1380℃×5hの熱処理条件で緻密化焼結を行った。
【0052】
次いで、Wシリサイド焼結体(ターゲット素材)に対して、5×10-2Paの真空中にて1300℃×2hの条件で軟化熱処理を施した。
【0053】
この後、熱処理したWシリサイド焼結体を所望のターゲット寸法に機械加工した後、スパッタ面をポリッシング加工により面仕上げした。仕上げ加工後のスパッタ面の表面粗さを、ティーラーホブソン社製S4Cを用いた触針法により測定したところ、最大高さRyは1.08μm、ゆがみ値Rskは-0.5であった。
【0054】
このようにして得たWシリサイドターゲット(直径127mm×厚さ6mm)を、
Cu製バッキングプレートに接合した後、スパッタリング装置にセットした。このようなスパッタリング装置を用いて、5インチSiウェーハ上に厚さ200nmのWシリサイド膜を成膜した。スパッタリング条件は、Ar圧=0.2Pa、Ar流量=80sccm、Power=0.5kWとした。スパッタ成膜は24枚のSiウェーハに対して順に行い、各Siウェーハ上のWシリサイド膜中に存在する0.2μm以上のパーティクル数を調べ、その平均値を求めた。その結果、0.2μm以上のパーティクル数は5個/枚であった。
【0055】
また、上記した製造条件と同一条件で作製したWシリサイドターゲットを用意し、このターゲットの硬度を前述した方法にしたがって、ビッカース硬さ試験機(島津微小硬度計:HMV-2000)にて測定した。その結果、Wシリサイドターゲットのビッカース硬さは950Hvであり、またターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは5%であった。
【0056】
実施例2
実施例1と同一条件で作製したWシリサイド焼結体に対して、5×10-2Paの真空中にて1250℃×2hの条件で軟化熱処理を施した後、所望のターゲット寸法に機械加工し、さらにスパッタ面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)で仕上げ加工してWシリサイドターゲットとした。このスパッタ面の表面粗さは、最大高さRyは1.57μm、ゆがみ値Rskは-0.8であった。
【0057】
このようにして得たWシリサイドターゲット(直径127mm×厚さ6mm)を用いて、実施例1と同一条件でWシリサイド膜を成膜し、Wシリサイド膜中に存在する0.2μm以上のパーティクル数(平均値)を調べたところ、0.2μm以上のパーティクル数は10個/枚であった。
【0058】
また、上記した製造条件と同一条件で作製したWシリサイドターゲットを用意し、このターゲットの硬度を前述した方法にしたがって測定した。その結果、Wシリサイドターゲットのビッカース硬さは1020Hvであり、またターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは10%であった。
【0059】
比較例1、2
実施例1と同一条件で作製したWシリサイドの焼結体を所望のターゲット寸法に機械加工した後、スパッタ面を研削加工により面仕上げして、Wシリサイドターゲット(比較例1)とした。このスパッタ面の表面粗さは、最大高さRyが3.12μm、ゆがみ値Rskが+4.2であった。これとは別に、実施例1と同一条件でスパッタ面を仕上げ加工してWシリサイドターゲット(比較例2)とした。このスパッタ面の表面粗さは実施例1とほぼ同等であり、最大高さRyは1.23μm、ゆがみ値Rskは-0.8であった。なお、これら比較例1、2によるWシリサイドターゲットには、いずれも軟化熱処理を施していない。
【0060】
このようにして得た各Wシリサイドターゲット(直径127mm×厚さ6mm)を用いて、実施例1と同一条件でWシリサイド膜を成膜し、Wシリサイド膜中に存在する0.2μm以上のパーティクル数(平均値)を調べた。その結果、比較例1では0.2μm以上のパーティクル数は72個/枚、比較例2では0.2μm以上のパーティクル数は60個/枚であった。
【0061】
また、上記した製造条件と同一条件で作製したWシリサイドターゲットをそれぞれ用意し、これらのターゲットの硬度を前述した方法にしたがって測定した。その結果、比較例1のWシリサイドターゲットのビッカース硬さは1490Hvで、ターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは12%であった。また、比較例2のWシリサイドターゲットのビッカース硬さは1390Hvで、ターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは25%であった。
【0062】
実施例3
まず、最大粒径20μm程度の高純度Mo粉末と、最大粒径30μm以下のSi粉末とを、Si/Moの原子比(x)が2.7となるように配合し、これを高純度Arガスで置換したボールミルで48時間混合した。この混合粉末を1150℃×1hの条件でシリサイド反応熱処理し、得られた仮焼体を96hの条件で粉砕して、Moシリサイド粉末を得た。このMoシリサイド粉末を黒鉛製の成型用型内に充填した後、ホットプレス装置にセットして、5×10-4Pa以下の真空中にて34MPaの圧力を印加しながら1350℃×5hの熱処理条件で緻密化焼結を行った。
【0063】
次いで、Moシリサイド焼結体(ターゲット素材)に対して、5×10-2Paの真空中にて1200℃×2hの条件で軟化熱処理を施した。
【0064】
この後、熱処理したMoシリサイドの焼結体を所望のターゲット寸法に機械加工し、さらにスパッタ面をポリッシング加工により面仕上げした。仕上げ加工後のスパッタ面の表面粗さを前述の方法で測定したところ、最大高さRyは1.28μm、ゆがみ値Rskは-0.2であった。
【0065】
このようにして得たMoシリサイドターゲット(直径127mm×厚さ6mm)を、Cu製バッキングプレートに接合した後、スパッタリング装置にセットした。このようなスパッタリング装置を用いて、5インチSiウェーハ上に厚さ200nmのMoシリサイド膜を成膜した。スパッタリング条件は、Ar圧=0.2Pa、Ar流量=80sccm、Power=0.5kWした。スパッタ成膜は24枚のSiウェーハに対して順に行い、各Siウェーハ上のMoシリサイド膜中に存在する0.2μm以上のパーティクル数を調べ、その平均値を求めた。その結果、0.2μm以上のパーティクル数は19個/枚であった。
【0066】
また、上記した製造条件と同一条件で作製したMoシリサイドターゲットを用意し、このターゲットの硬度を前述した方法にしたがって測定した。その結果、Moシリサイドターゲットのビッカース硬さは1020Hvであり、またターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは10%であった。
【0067】
実施例4
実施例3と同一条件で作製したMoシリサイド焼結体に対して、5×10-2Paの真空中にて1350℃×4hの条件で軟化熱処理を施した後、所望のターゲット寸法に機械加工し、さらにスパッタ面をCMPで仕上げ加工してMoシリサイドターゲットとした。このスパッタ面の表面粗さは、最大高さRyは1.18μm、ゆがみ値Rskは-0.5であった。
【0068】
このようにして得たMoシリサイドターゲット(直径127mm×厚さ6mm)を用いて、実施例3と同一条件でMoシリサイド膜を成膜し、Moシリサイド膜中に存在する0.2μm以上のパーティクル数(平均値)を調べたところ、0.2μm以上のパーティクル数は14個/枚であった。
【0069】
また、上記した製造条件と同一条件で作製したMoシリサイドターゲットを用意し、このターゲットの硬度を前述した方法にしたがって測定した。その結果、Moシリサイドターゲットのビッカース硬さは998Hvであり、またターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは14%であった。
【0070】
比較例3、4
実施例3と同一条件で作製したMoシリサイドの焼結体を所望のターゲット寸法に機械加工した後、スパッタ面を研削加工により面仕上げして、Moシリサイドターゲット(比較例3)とした。このスパッタ面の表面粗さは、最大高さRyが2.1μm、ゆがみ値Rskが-4.1であった。これとは別に、実施例3と同一条件でスパッタ面を仕上げ加工してMoシリサイドターゲット(比較例4)とした。スパッタ面の表面粗さは実施例3とほぼ同等であり、最大高さRyは1.31μm、ゆがみ値Rskは-1.5であった。なお、これら比較例3、4によるMoシリサイドターゲットには、いずれも軟化熱処理を施していない。
【0071】
このようにして得た各Moシリサイドターゲット(直径127mm×厚さ6mm)を用いて、実施例3と同一条件でMoシリサイド膜を成膜し、Moシリサイド膜中に存在する0.2μm以上のパーティクル数(平均値)を調べた。その結果、比較例3では0.2μm以上のパーティクル数は174個/枚、比較例4では0.2μm以上のパーティクル数は85個/枚であった。
【0072】
また、上記した製造条件と同一条件で作製したMoシリサイドターゲットをそれぞれ用意し、これらのターゲットの硬度を前述した方法にしたがって測定した。その結果、比較例3のMoシリサイドターゲットのビッカース硬さは1320Hvで、ターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは18%であった。また、比較例4のMoシリサイドターゲットのビッカース硬さは1400Hvで、ターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは25%であった。
【0073】
実施例5
まず、最大粒径20μm程度の高純度Ta粉末と、最大粒径30μm以下のSi粉末とを、Si/Taの原子比(x)が2.6となるように配合し、これを高純度Arガスで置換したボールミルで48時間混合した。この混合粉末を1250℃×0.5hの条件でシリサイド反応熱処理し、得られた仮焼体を96hの条件で粉砕して、Taシリサイド粉末を得た。このTaシリサイド粉末を黒鉛製の成型用型内に充填した後、ホットプレス装置にセットして、5×10-4Pa以下の真空中にて34MPaの圧力を印加しながら1400℃×5hの熱処理条件で緻密化焼結を行った。
【0074】
次いで、Taシリサイド焼結体(ターゲット素材)に対して、5×10-2Paの真空中にて1350℃×2hの条件で軟化熱処理を施した。
【0075】
この後、熱処理したTaシリサイド焼結体を所望のターゲット寸法に機械加工し、さらにスパッタ面をポリッシング加工により面仕上げした。仕上げ加工後のスパッタ面の表面粗さを前述の方法により測定したところ、最大高さRyは1.14μm、ゆがみ値Rskは+2.3であった。
【0076】
このようにして得たTaシリサイドターゲット(直径127mm×厚さ6mm)を、Cu製バッキングプレートに接合した後、スパッタリング装置にセットした。このようなスパッタリング装置を用いて、5インチSiウェーハ上に厚さ200nmのTaシリサイド膜を成膜した。スパッタリング条件は、Ar圧=0.2Pa、Ar流量=80sccm、Power=0.5kWとした。スパッタ成膜は24枚のSiウェーハに対して順に行い、各Siウェーハ上のTaシリサイド膜中に存在する0.2μm以上のパーティクル数を調べ、その平均値を求めた。その結果、0.2μm以上のパーティクル数は10個/枚であった。
【0077】
また、上記した製造条件と同一条件で作製したTaシリサイドターゲットを用意し、このターゲットの硬度を前述した方法にしたがって測定した。その結果、Taシリサイドターゲットのビッカース硬さは1270Hvであり、またターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは15%であった。
【0078】
実施例6
実施例5と同一条件で作製したTaシリサイド焼結体に対して、5×10-2Paの真空中にて1300℃×4hの条件で軟化熱処理を施した後、所望のターゲット寸法に機械加工し、さらにスパッタ面をCMPで仕上げ加工してTaシリサイドターゲットとした。このスパッタ面の表面粗さは、最大高さRyは1.05μm、ゆがみ値Rskは+1.4であった。
【0079】
このようにして得たTaシリサイドターゲット(直径127mm×厚さ6mm)を用いて、実施例5と同一条件でTaシリサイド膜を成膜し、Taシリサイド膜中に存在する0.2μm以上のパーティクル数(平均値)を調べたところ、0.2μm以上のパーティクル数は16個/枚であった。
【0080】
また、上記した製造条件と同一条件で作製したTaシリサイドターゲットを用意し、このターゲットの硬度を前述した方法にしたがって測定した。その結果、Taシリサイドターゲットのビッカース硬さは1250Hvであり、またターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは5%であった。
【0081】
比較例5、6
実施例5と同一条件で作製したTaシリサイドの焼結体を所望のターゲット寸法に機械加工した後、スパッタ面を研削加工により面仕上げして、Taシリサイドターゲット(比較例5)とした。このスパッタ面の表面粗さは、最大高さRyが2.1μm、ゆがみ値Rskが+5.4であった。これとは別に、実施例5と同一条件でスパッタ面を仕上げ加工してTaシリサイドターゲット(比較例6)とした。スパッタ面の表面粗さは実施例5とほぼ同等であり、最大高さRyは1.41μm、ゆがみ値Rskは+0.9であった。なお、これら比較例5、6によるTaシリサイドターゲットには、いずれも軟化熱処理を施していない。
【0082】
このようにして得た各Taシリサイドターゲット(直径127mm×厚さ6mm)を用いて、実施例5と同一条件でTaシリサイド膜を成膜し、Taシリサイド膜中に存在する0.2μm以上のパーティクル数(平均値)を調べた。その結果、比較例5では0.2μm以上のパーティクル数は108個/枚、比較例6では0.2μm以上のパーティクル数は88個/枚であった。
【0083】
また、上記した製造条件と同一条件で作製したTaシリサイドターゲットをそれぞれ用意し、これらのターゲットの硬度を前述した方法にしたがって測定した。その結果、比較例5のTaシリサイドターゲットのビッカース硬さは1574Hvで、ターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは35%であった。また、比較例6のTaシリサイドターゲットのビッカース硬さは1500Hvで、ターゲット全体としてのビッカース硬さのバラツキは32%であった。
【0084】
さらに、上記した各実施例によるシリサイドターゲットを用いて、半導体素子および液晶表示素子の電極および配線を形成することによって、半導体素子および液晶表示素子の歩留りや品質を高めることができることを確認した。すなわち、高品質の電子部品を高歩留りで得ることができる。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のスパッタリングターゲットによれば、ターゲットの残留応力に起因するパーティクルの発生を大幅に抑制することができ、さらにはスパッタ面の形態などに起因するパーティクルの発生も抑制することができる。従って、半導体素子や液晶表示素子などに代表される電子部品の配線、電極、素子構成膜などとして使用される金属シリサイド薄膜の品質を大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスパッタリングターゲットにおける硬度および表面粗さの測定方法を説明するための図である。
Claims (1)
- 一般式:MSix(式中、MはW、Mo、Ta、Ti、Zr、Hf、NiおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素を、xは2〜4の範囲の数を示す)
で表される金属シリサイドにより構成され、かつ連鎖状に形成された金属シリサイド相と、過剰なSi粒子が結合して形成され、前記金属シリサイド相の間隙に不連続に存在するSi相とを含む微細組織を有し、ビッカース硬さで1300Hv以下の硬度を有し、かつ全体のビッカース硬さのバラツキが±20%以内であるスパッタリングターゲットを製造する方法であって、
前記金属シリサイドからなるターゲット素材を作製する工程と、
前記ターゲット素材を1250℃を超え1400℃以下の温度で2〜10時間熱処理し、前記ターゲット素材の硬度をビッカース硬さで1300Hv以下、かつ前記ターゲット素材全体のビッカース硬さのバラツキを±20%以内とする工程と、
前記ターゲット素材を所望の寸法に加工し、スパッタ面の表面粗さが最大高さRyで2μm以下、ゆがみ値Rskで−3〜+3の範囲となるようにポリッシング加工またはCMPにより表面を加工する工程と
を具備することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
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