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JP5032957B2 - 全芳香族ポリエステル及びポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

全芳香族ポリエステル及びポリエステル樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、耐熱性に優れ、通常の重合装置で製造可能で、且つ溶融成形の容易な全芳香族ポリエステルに関するものである。
全芳香族ポリエステルとして現在市販されているものは4−ヒドロキシ安息香酸が主成分である。しかし、4−ヒドロキシ安息香酸のホモポリマーは、融点が分解点よりも高くなってしまう為、種々の成分を共重合する事により、低融点化する必要がある。
共重合成分として1,4 −フェニレンジカルボン酸、1,4 −ジヒドロキシベンゼン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル等を用いた全芳香族ポリエステルは、融点が350℃以上と高く、汎用の装置にて溶融加工を行うには高すぎる。又、このような高い融点のものを、汎用の溶融加工機器で加工できる温度まで融点を下げるために種々の方法が試みられているが、低融点化がある程度実現される一方で高温(融点下近傍)での機械的強度を保てないという問題がある。
この問題を解決するために、特許文献1では、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ジオール成分、ジカルボン酸成分を組み合わせた共重合ポリエステルが提案されているが、このポリエステルは冷却時の固化速度が速く、重合釜の排出口でポリマーが固化し易いという問題があった。また特許文献2では、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ジオール成分、ジカルボン酸成分を組み合わせた共重合ポリエステルが提案されているが、耐熱性、溶融加工性に難があった。
耐熱性と成形性(溶融加工性)は二律背反関係にあり、高耐熱性のポリマーほど高い成形加工温度を必要とするため、成形時のポリマーの分解劣化が激しく、ポリマー分解ガスによる成形品の膨れ(ブリスター変形)、成形品の色相悪化(縞模様の発生)、成形機が発生するガス成分により腐食しやすい等の問題があり、耐熱性と成形性という両性質を良好に併せ持つことは難しい。
この問題を解決するため、本発明者らは、4−ヒドロキシ安息香酸を少量導入した特定構造からなる全芳香族ポリエステルを提案した(特許文献3)。しかし、4−ヒドロキシ安息香酸はフェノールガスの発生原因となるため、4−ヒドロキシ安息香酸を含まない、耐熱性と成形性という両性質を良好に併せ持つ全芳香族ポリエステルが求められていた。
特開昭56−10526号公報 特開昭55−144024号公報 特開2002−179776号公報
本発明は、上記問題点を解決し、耐熱性に優れつつも、低温での溶融成形が容易であり、フェノール等のガス発生の少ない全芳香族ポリエステルの提供を目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意研究した結果、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位、ジオール成分単位、ジカルボン酸成分単位で構成されるポリマーにおいて、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸と特定の芳香族ジカルボン酸単位及び/又は芳香族ジオール単位を特定の限定された比率で組み合わせることが上記目的達成のために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、必須の構成成分として下記一般式(I),(II),(III),(IV)で表される構成単位を含み、全構成単位に対して(I)の構成単位が35〜75モル%、(II)の構成単位が12.5〜32.5モル%、(III)の構成単位が12.5〜32.5モル%、(IV)の構成単位が1〜8モル%であることを特徴とする溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルである。
Figure 0005032957
本発明で得られる特定の構成単位よりなる溶融時に異方性を示す全芳香族ポリエステル及びその組成物は、溶融時の流動性が良好でなおかつ熱安定性に優れており、また成形可能温度があまり高くないために、特殊な構造を持った成形機を用いずとも射出成形や押出成形、圧縮成形が可能であり、種々の立体成形品、繊維、フィルム等に加工出来る。特に、リレースイッチ部品、ボビン、アクチュエータ、ノイズ低減フィルターケース又はOA機器の加熱定着ロール等の成形品に好適である。
上記(I)〜(IV)の構成単位を具現化するには通常のエステル形成能を有する種々の化合物が使用される。以下に本発明を構成する全芳香族ポリエステルを形成するために必要な原料化合物について順を追って詳しく説明する。
構成単位(I)は、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から導入される。
構成単位(II)は、ジカルボン酸単位であり、テレフタル酸から導入される。
構成単位(III) は、ジオール単位であり、4,4'−ジヒドロキシビフェニルから導入される。
また、構成単位(IV)は、レゾルシノール及び/又はナフタレンジカルボン酸(好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸)から導入される構成単位であり、それらの置換体およびその誘導体から導入されたものであってもよい。構成単位(IV)としては、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジカルボン酸の何れかから導入されたものでもよく、双方から導入されたものでもよい。
本発明では、上記構成単位(I)〜(IV)を含み、全構成単位に対して(I)の構成単位が35〜75モル%(好ましくは40〜70モル%、より好ましくは45〜65モル%)、(II)の構成単位が12.5〜32.5モル%(好ましくは15〜30モル%、より好ましくは17.5〜27.5モル%)、(III)の構成単位が12.5〜32.5モル%(好ましくは15〜30モル%、より好ましくは17.5〜27.5モル%)、(IV)の構成単位が1〜8モル%(好ましくは2〜6モル%、より好ましくは2〜5モル%)の範囲にあることが必要である。
(I)の構成単位が35モル%未満では、融点が著しく高くなり、場合によっては製造時にポリマーがリアクター内で固化し、所望の分子量のポリマーを製造することができなくなるため好ましくない。また、75モル%より多くなると成形加工温度に対するポリマーの耐熱性が低くなるため好ましくない。
(II)の構成単位が12.5モル%未満では、成形加工温度に対するポリマーの耐熱性が低くなるため好ましくない。また、32.5モル%より多くなると融点が著しく高くなり、場合によっては製造時にポリマーがリアクター内で固化し、所望の分子量のポリマーを製造することができなくなるため好ましくない。
(III)の構成単位が12.5モル%未満では、成形加工温度に対するポリマーの耐熱性が低くなるため好ましくない。また、32.5モル%より多くなると融点が著しく高くなり、場合によっては製造時にポリマーがリアクター内で固化し、所望の分子量のポリマーを製造することができなくなるため好ましくない。
また、(IV)の構成単位が1モル%未満では、ポリマー冷却時の固化速度が速くなり、リアクターの排出口でポリマーが固化し易くなり、ポリマー排出が不安定になるため好ましくない。また、8モル%より多くなると成形加工温度に対するポリマーの耐熱性が低くなるため好ましくない。
尚、本発明の全芳香族ポリエステルには、本発明の目的を阻害しない範囲で少量の公知の他の構成単位を導入することもできる。但し、ビスフェノールAのようなSP炭素が存在する空間自由度が高い化合物から導入される構成単位は、成形加工温度に対するポリマーの耐熱性が低くなるため、導入しないほうが好ましい。
特に、下記一般式(V)で表される構成単位を全構成単位に対して1〜6モル%導入することは製造性の点からも好ましい。ここで、(V)の構成単位は、(IV)の構成単位が比較的少量(1〜2モル%)の場合にそれを補完する意味で併用することが好ましく、(IV)の構成単位と(V)の構成単位の合計が全構成単位に対して8モル%以下であることが望ましい。
Figure 0005032957
前述の通り、特開昭56−10526号公報には、構成単位(I)、(II)、(III) を夫々10〜90モル%、5〜45モル%、5〜45モル%の割合で含む共重合ポリエステルが提案されているが、このポリエステルは冷却時の固化速度が速く、重合釜の排出口でポリマーが固化し易いという問題があった。本発明では、この問題を解決し、冷却時の固化速度を遅くし、重合釜からのポリマーの排出を可能にするため、構成単位(IV)を1〜8モル%含ませ、構成単位(I)〜(III)の割合を上記範囲に制御したのである。
また、本発明では、冷却時の固化速度を適度に遅くし、重合釜からのポリマーの排出を可能にしつつ、且つ耐熱性を高めるために、ポリマーの結晶化状態を最適に制御すべく、構成単位(I)、(II)、(III)、(IV)の比率を前記範囲に保つことで、これまでの問題点を解決し、耐熱性、製造性、成形性の何れにも優れた全芳香族ポリエステルを得ることができたのである。
本発明の全芳香族ポリエステルは、直接重合法やエステル交換法を用いて重合され、重合に際しては、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等が用いられる。
本発明では、重合に際し、重合モノマーに対するアシル化剤や、酸塩化物誘導体として末端を活性化したモノマーを使用できる。アシル化剤としては、無水酢酸等の酸無水物等が挙げられる。
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものはジアルキル錫酸化物、ジアリール錫酸化物、二酸化チタン、アルコキシチタンけい酸塩類、チタンアルコラート類、カルボン酸のアルカリ及びアルカリ土類金属塩類、BF3 の如きルイス酸塩等が挙げられる。触媒の使用量は一般にはモノマーの全重量に基いて約0.001乃至1重量%、特に約0.003乃至0.2重量%が好ましい。
また、溶液重合又はスラリー重合を行う場合、溶媒としては流動パラフィン、高耐熱性合成油、不活性鉱物油等が用いられる。
反応条件としては、反応温度200〜380℃、最終到達圧力0.1〜760Torr(即ち、13〜101,080Pa)である。特に溶融反応では、反応温度260〜380℃、好ましくは300〜360℃、最終到達圧力1〜100Torr(即ち、133〜13,300Pa)、好ましくは1〜50Torr(即ち、133〜6,670Pa)である。
反応は、全原料モノマー、アシル化剤及び触媒を同一反応容器に仕込んで反応を開始させる(一段方式)こともできるし、原料モノマー(I)、(III)及び(IV)のヒドロキシル基をアシル化剤によりアシル化させた後、(II)のカルボキシル基と反応させる(二段方式)こともできる。
溶融重合は、反応系内が所定温度に達した後、減圧を開始して所定の減圧度にして行う。撹拌機のトルクが所定値に達した後、不活性ガスを導入し、減圧状態から常圧を経て、所定の加圧状態にして反応系からポリマーを排出する。
上記重合方法により製造されたポリマーは更に常圧又は減圧、不活性ガス中で加熱する固相重合により分子量の増加を図ることができる。固相重合反応の好ましい条件は、反応温度230〜350℃、好ましくは260〜330℃、最終到達圧力10〜760Torr(即ち、1,330〜101,080Pa)である。
溶融時に光学的異方性を示す液晶性ポリマーであることは、本発明において熱安定性と易加工性を併せ持つ上で不可欠な要素である。上記構成単位(I)〜(IV)からなる全芳香族ポリエステルは、構成成分およびポリマー中のシーケンス分布によっては、異方性溶融相を形成しないものも存在するが、本発明に係わるポリマーは溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルに限られる。
溶融異方性の性質は直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により確認することができる。より具体的には溶融異方性の確認はオリンパス社製偏光顕微鏡を使用しリンカム社製ホットステージにのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150倍の倍率で観察することにより実施できる。上記ポリマーは光学的に異方性であり、直交偏光子間に挿入したとき光を透過させる。試料が光学的に異方性であると、例えば溶融静止液状態であっても偏光は透過する。
本発明の加工性の指標としては液晶性及び融点(液晶性発現温度)が考えられる。液晶性を示すか否かは溶融時の流動性に深く係わり、本願のポリエステルは溶融状態で液晶性を示すことが不可欠である。
ネマチックな液晶性ポリマーは融点以上で著しく粘性低下を生じるので、一般的に融点またはそれ以上の温度で液晶性を示すことが加工性の指標となる。融点(液晶性発現温度)は、出来得る限り高い方が耐熱性の観点からは好ましいが、ポリマーの溶融加工時の熱劣化や成形機の加熱能力等を考慮すると、380℃以下であることが望ましい目安となる。
また、融点が300〜380℃で、融点と軟化温度との差が55℃以下であることで、比較的低い成形加工温度で高温まで軟化が起こりにくい、高度に成形性と耐熱性を両立した液晶性ポリマーを得ることができる。軟化温度が融点より55℃以上低い場合は、成形加工温度に比較し満足できる耐熱性が得られない。
更に、融点より10〜40℃高い温度で、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が1×105 Pa・s以下であることが好ましい。更に好ましくは5Pa・s以上で1×102 Pa・s以下である。これらの溶融粘度は液晶性を具備することで概ね実現される。
次に本発明のポリエステルは使用目的に応じて各種の繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を配合することができる。
繊維状充填剤としてはガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、ウォラストナイトの如き珪酸塩の繊維、硫酸マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などの無機質繊維状物質が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤はガラス繊維である。尚、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質も使用することが出来る。
一方、粉粒状充填剤としてはカーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
又、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。
有機充填剤の例を示せば芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリマー繊維、芳香族ポリアミド、ポリイミド繊維等の耐熱性高強度合成繊維等である。
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することが出来る。繊維状充填剤と粒状又は板状充填剤との併用は特に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。無機充填剤の配合量は、全芳香族ポリエステル100重量部に対し、120重量部以下、好ましくは20〜80重量部である。
特に好ましくは、繊維状充填剤、特にガラス繊維であり、その配合量は、全芳香族ポリエステル100重量部に対し30〜80重量部である。また、その繊維長は、200μm以上であることが好ましい。このようなガラス繊維は上記配合量で含む組成物は、熱変形温度、機械的物性等の向上が特に顕著である。
これらの充填剤の使用にあたっては必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することができる。
更に本発明のポリエステルには、本発明の企図する目的を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂を補助的に添加してもよい。
この場合に使用する熱可塑性樹脂の例を示すと、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ジカルボン酸とジオール等からなる芳香族ポリエステル、ポリアセタール(ホモ又はコポリマー)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂等を挙げることができる。またこれらの熱可塑性樹脂は2種以上混合して使用することができる。
以下に実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中の物性測定の方法は以下の通りである。
[融点]
TAインスツルメント社製DSCにて測定した。
[軟化温度]
調製したポリエステルから、ホットプレスで厚さ1mmの円盤を成形し、この成形品に1.82MPaの一定荷重をかけながらホットプレート上で10℃/分で昇温し、荷重のかかった直径1mmの針が成形品厚みの5%に到達した時の温度を、軟化温度とした。
[熱変形温度]
ISO75/Aに準じて、測定圧力1.8MPaにて測定した。
[曲げ強度]
ISO178に準じて測定した。
[ポリマー排出性]
重合装置の撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て0.5kg/cm3の加圧状態にして、重合装置の下部からポリマーを排出する際の挙動を観察した。
[溶融粘度]
表1及び2に示す測定温度、剪断速度1000sec-1の条件で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて東洋精機製キャピログラフで測定した。
実施例1
攪拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、金属触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸165g(48モル%)(HNA)
(II)テレフタル酸73g(24モル%)(TA)
(III)4,4'−ジヒドロキシビフェニル88g(26モル%)(BP)
(IV)2,6−ナフタレンジカルボン酸4g(1モル%)(NDA)
(V)イソフタル酸3g(1モル%)(IA)
酢酸カリウム触媒45mg
無水酢酸194g
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で2時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。
得られたポリマーの融点は352℃、軟化温度は315℃であり、融点と軟化温度の差は37℃と小さかった。また溶融粘度は13Pa・sであった。
参考例1〜10
原料モノマーの種類、仕込み量を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリマーを得た。これら結果を表1に示す。使用した原料モノマーの略称は以下のものを示す。
RES:レゾルシノール
Bis−A:ビスフェノールA
HBA:4−ヒドロキシ安息香酸
参考例11
攪拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、金属触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸1273g(50モル%)(HNA)
(II)テレフタル酸562g(25モル%)(TA)
(III)4,4'−ジヒドロキシビフェニル579g(23モル%)(BP)
(IV)レゾルシノール30g(2モル%)(RES)
酢酸カリウム触媒330mg
無水酢酸1436g
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で2時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから40分かけて5Torr(即ち667Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。
得られたペレットについて、窒素気流下、300℃で6時間熱処理を行った。ペレットの融点は347℃、軟化温度は327℃であり、融点と軟化温度の差は20℃と小さかった。また溶融粘度は29Pa・sであった。
また、このペレット100重量部に対しガラスファイバー(日本電気硝子(株)製GL−P)53.8重量部を二軸押出機により配合混練し、ペレット形状の全芳香族ポリエステル組成物を得た。この全芳香族ポリエステル組成物を140℃で3時間乾燥後、射出成形機を用いて、シリンダー温度380℃で射出成形したところ、成形性は良好であった。得られた試験片の熱変形温度は327℃、曲げ強度は243MPaであり、良好な耐熱性を示した。
参考例12〜13
原料モノマーの種類、仕込み量を表1に示す通りとした以外は、参考例11と同様にしてポリマーを得た。これら結果を表1に示す。
また参考例11と同様にして、全芳香族ポリエステル組成物を調製し、射出成形したところ、成形性は良好であった。得られた試験片(参考例12)の熱変形温度は330℃、曲げ強度は214MPaであり、また試験片(参考例13)の熱変形温度は314℃、曲げ強度は243MPaであり、良好な耐熱性を示した。
比較例1〜9
原料モノマーの種類、仕込み量を表2に示す通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリマーを得た。これら結果を表2に示す。尚、比較例1〜2については、リアクターの排出口でポリマーが固化し易く、ポリマー排出が困難であった。また、比較例3については、製造時にポリマーがリアクター内で固化し、所望の分子量のポリマーを製造することができなかった。
Figure 0005032957
Figure 0005032957

Claims (11)

  1. 必須の構成成分として下記一般式(I),(II),(III),(IV),(V)で表される構成単位を含み、全構成単位に対して(I)の構成単位が35〜75モル%、(II)の構成単位が12.5〜32.5モル%、(III)の構成単位が12.5〜32.5モル%、(IV)の構成単位が1〜8モル%、(V)の構成単位が1〜6モル%であり、(IV)の構成単位と(V)の構成単位の合計が全構成単位に対して8モル%以下であることを特徴とする溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステル。
    Figure 0005032957
  2. 全構成単位に対して(I)の構成単位が40〜70モル%、(II)の構成単位が15〜30モル%、(III)の構成単位が15〜30モル%、(IV)の構成単位が2〜6モル%である請求項1記載の全芳香族ポリエステル。
  3. 全構成単位に対して(I)の構成単位が45〜65モル%、(II)の構成単位が17.5〜27.5モル%、(III)の構成単位が17.5〜27.5モル%、(IV)の構成単位が2〜5モル%である請求項1記載の全芳香族ポリエステル。
  4. 全芳香族ポリエステルの融点より10〜40℃高い温度で、剪断速度1000sec -1 における溶融粘度が1×10 5 Pa・s以下である請求項1〜3の何れか1項記載の全芳香族ポリエステル。
  5. 融点が300〜380℃で、融点と軟化温度との差が55℃以下である請求項1〜4の何れか1項記載の全芳香族ポリエステル。
  6. 請求項1〜5の何れか1項記載の全芳香族ポリエステル100重量部に対し無機又は有機充填剤を120重量部以下配合してなるポリエステル樹脂組成物。
  7. 無機充填剤が繊維状充填剤であり、その配合量が全芳香族ポリエステル100重量部に対し30〜80重量部である請求項6記載のポリエステル樹脂組成物。
  8. 請求項1〜5の何れか1項記載の全芳香族ポリエステルもしくは請求項6又は7記載のポリエステル樹脂組成物を成形したポリエステル成形品。
  9. 成形品が、リレースイッチ部品、ボビン、アクチュエータ、ノイズ低減フィルターケース又はOA機器の加熱定着ロールである請求項8記載のポリエステル成形品。
  10. 成形品が、ポリエステル繊維である請求項8記載のポリエステル成形品。
  11. 成形品が、ポリエステルフィルムである請求項8記載のポリエステル成形品。
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