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JP5029997B2 - 酸化亜鉛結合性抗体及びその用途 - Google Patents

酸化亜鉛結合性抗体及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は酸化亜鉛と特異的に結合可能な酸化亜鉛結合性ラクダ抗体と、前記抗体発現ベクター、及び前記抗体を固定した酸化亜鉛層を含む固相支持体(バイオセンサ、プロテインチップ等)等に関する。
酵素と基質、抗原と抗体など、生体分子には極めて特異性の高い分子認識機構が存在する。こうした生体分子の機能は、極めて温和な条件下で、しかも高い安全性と正確性をもって発揮されることから、医療、食品、環境分野などさまざまな分野でその利用が期待されている。
生体分子の認識機構を利用した材料開発では、タンパク質などの生体分子を無機材料に安定して固定化することが重要なポイントとなる。これまで、コーティングされた金表面に関しては、カップリング剤を用いたタンパク質の固定化方法が知られているが、この方法は固定化反応率が悪く、また、タンパク質の活性低下を招いた。これに対し、発明者らはヒト末梢血細胞Fab遺伝子ライブラリーをスクリーニングして金結合性タンパク質(金結合性VLあるいはVH)を取得し、当該タンパク質の金基板への固相化に成功した(特許文献1及び2)
金属酸化物は多くの光・電子デバイスに使われる重要な材料である。なかでも、酸化亜鉛は、透明で絶縁体としても半導体としても活用するできることから、バイオセンシングの様々な用途に使用可能な材料といえる。酸化亜鉛を簡便かつダイレクトに生体分子(タンパク質)を固定化できれば、それはハイスループットなセンシング技術開発に極めて有用である。発明者らは、ファージ提示ライブラリーをスクリーニングすることで、酸化亜鉛に特異的で高い結合活性を有するペプチドを取得し(非特許文献1)、これを利用した酸化亜鉛粒子のパターニングに成功した(特許文献3)。
さらに、発明者らは、抗体のヒト型化技術に用いられるCDR移植法を用いて、前記したマテリアル認識ペプチド(金結合性タンパク質や酸化亜鉛結合性ペプチド)を抗ニワトリ卵白リゾチーム(HEL)抗体に融合させることで、マテリアル特異的抗体の開発を試みた(非特許文献2及び3)。しかしながら、HEL抗体に融合された酸化亜鉛結合性抗体は不安定で、バイオセンサやプロテインチップ等の実使用には適さないという問題があった。
ラクダ抗体は、カノニカル構造を持たないことや、相補性決定領域(CDR)にジスルフィド結合を有することから、ペプチドのCDR移植には適していないと考えられていた。最近、SaerensらによりCDR移植に適したラクダ抗体が開発され(非特許文献4)、癌細胞へのターゲッティングなど医薬分野でのラクダ抗体の利用が期待されるようになってきた。しかしながら、ラクダ抗体をバイオセンサ等の材料開発に利用しようという報告はこれまでなされていない。
特開2005−314411号公報 特開2005−312446号公報 特開2006−225294号公報 Umetsu et al.,Advanced Materials,17,p2571−2575,(2005) 第3回東北大学バイオサイエンスシンポジウム(2006) 講演要旨集 p240 PS−189「工学材料を標的とした多機能性抗体に関する研究」 第3回東北大学バイオサイエンスシンポジウム(2006) 講演要旨集 p241 PS−190「機能性ペプチドの移植による無機材料結合抗体の創製」 Saerens et al.,J.Mol.Biol.,352,p597−607,(2005)
本発明の課題は、高い安定性と結合活性を有する酸化亜鉛結合性抗体を提供し、これを利用して抗体を酸化亜鉛に安定的に結合させることで、免疫バイオセンサ等のハイスループットなセンシング技術の開発を可能にすることにある。
発明者らは前記課題を達成するために鋭意検討し、ラクダ抗体を利用することで安定な酸化亜鉛結合性抗体が作製できることを見出した。さらにin vitroアフィニティマチュレーションを用いてこの抗体の親和性をより高め、実使用に適した、高い安定性と結合活性を有する酸化亜鉛結合性抗体の作製に成功した。
すなわち、本発明は、ラクダ抗体のCDR H−1領域にEAHVMHKを含むアミノ酸配列からなる酸化亜鉛認識ペプチドを含むペプチド移植抗体、あるいは前記ペプチド移植抗体のCDR H−3領域にさらに変異を有し、かつ前記ペプチド移植抗体より高い酸化亜鉛親和性を有する変異体からなる、酸化亜鉛結合性抗体に関する。
前記変異体としては、CDR H−3領域にHXXHXXHXXHあるいはHXXHXXHXXRからなるペプチド(但し、XはG、L、R、又はVである)を含むもの、たとえば、CDR H−3領域にHLGHGGHRLH、HLGHGGHGLH、HVGHGLHGVR、又はHLGHGLHRVHからなるペプチドを含むものを挙げることができる。
本発明の酸化亜鉛結合性抗体は、酸化亜鉛との解離平衡定数Kが1.7x10−7[M]より小さいことが好ましく、9.5x10−9[M]より小さいことがより好ましい。
前記酸化亜鉛認識ペプチドとしては、EAHVMHKを含む7〜20アミノ酸からなるペプチド、特に7〜12アミノ酸程度のペプチドが好ましく、たとえばEAHVMHKVAPRPを挙げることができる。
本発明の酸化亜鉛結合性抗体の1つの実施形態として、ラクダ抗体のCDR H−1領域にEAHVMHKVAPRPからなる酸化亜鉛認識ペプチドを含み、かつ、CDR H−3領域にHLGHGLHRVHからなるペプチドを含むものを挙げることができる。
なお、前記ラクダ抗体としては、CDR間にジスルフィド結合を有しないものが好ましい。
本発明はまた、前記した酸化亜鉛結合性抗体をコードする遺伝子を含む発現ベクターを提供する。そのようなベクターの一例としては、たとえば、配列番号14に示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む発現ベクターを挙げることができる。
本発明はまた、前記発現ベクターを導入した宿主細胞を培養し、その培養物から酸化亜鉛結合性抗体を取得することを特徴とする、酸化亜鉛結合性抗体の製造方法も提供する。
さらに本発明は、前記酸化亜鉛結合性抗体を固定した酸化亜鉛層を含む固相支持体(たとえば、粒子やプロテインチップ等の基板)を提供する。
さらに本発明は、前記酸化亜鉛結合性抗体を固定した酸化亜鉛層を含む固相支持体と、前記抗体を介した分子間相互作用を検出する手段を有するバイオセンサも提供する。
さらにまた本発明は、前記酸化亜鉛結合性抗体に、材料認識配列を有する第2のタンパク質を融合させたタンパク質も提供する。前記材料認識配列を有する第2のタンパク質とは、本発明の酸化亜鉛認識ペプチドのように、ある材料(たとえば、金属や金属酸化物)を特異的に認識して特異的に結合する配列を含むタンパク質を意味し、たとえばLKAHLPPSRLPSの配列を有する金認識ペプチドや金結合性抗体(特開2005−312446号公報、特開2006−225294号公報)を挙げることができる。
本発明によれば、酸化亜鉛に簡便に標的物質検出に必要な抗体を固定化できる。これにより、免疫バイオセンサ等のハイスループットなセンシング技術の開発が可能となる。
図1Aは、VHH1 or 2 or 3発現ベクター、図1BはpTZ−VHH、図1CはpRA4F2−AuVHH1の模式図である。
図2Aは、タンパク質の精製方法、図2BはVHH1,VHH2,VHH3の大腸菌における発現確認結果を示す。
図3は、ペプチド移植抗体のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すグラフである(グラフ上からVHH2(黄緑)、VHH3(青)、WT VHH1(黒)、VHH1(赤))。
図4は、円偏光二色性スペクトル測定の結果を示すグラフである(グラフ上から、WT VHH1(黒)、VHH3(青)、VHH1(赤)、VHH2(黄緑))。
図5は、酸化亜鉛粒子とペプチド移植抗体との結合評価のプロセスを示す。
図6Aは、図5に示される上清、Wash、Elute画分をそれぞれSDS−PAGEで解析した結果(1:Total、2:上清画分、3〜5:Wash画分、6:Elute画分)を、図6BはSDS−PAGEによる材料識別評価試験の結果を示す。
図7は、VHH3の酸化亜鉛に対する結合活性評価結果(1mMリン酸緩衝液)を示す。
図8は、VHH1の酸化亜鉛への吸着に対する吸着等温線(A)とラングミュアプロット(B)を示す。
図9は、CDR H−3に変異導入を行ったペプチドライブラリーの作製プロトコルを示す模式図である。
図10は、SDS−PAGEによる材料識別評価結果を示す。
図11は、4F2のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すグラフである(WT VHH1(黒)、VHH1(青)、4F2(橙))。
図12は、4F2の円偏光二色性スペクトルを示すグラフである(WT VHH1(黒)、VHH1(青)、4F2(橙))。
図13は、酸化亜鉛粒子の分散性評価結果を示す写真である(A:抗体3μM、B:抗体0.5μM)。
図14は、酸化亜鉛粒子に固定した酸化亜鉛結合性抗体の脱離試験結果を示す。
図15は、Fv(H−2),(H−3),(L−2),(L−3)の共発現ベクターの模式図である。
図16は、マウス由来抗ニワトリ卵白リゾチーム抗体HyHEL−10Fvへの酸化亜鉛認識ペプチドCDR移植結果を示す。AはHyHEL−10Fvの立体構造を示す。Bは重鎖CDR−2にペプチド移植した抗体のゲルろ過生成過程を示す。Cは、重鎖CDR−2にペプチド移植したVH単独(VH2sd)の円偏光二色性スペクトルの結果を示す。
図17は、A:マウス由来抗ニワトリ卵白リゾチーム抗体Fv単独での酸化亜鉛結合評価結果(Fv(H−2):V鎖のCDR−2に移植、Fv(H−3):V鎖のCDR−3に移植、Fv(H−2):L鎖のCDR−2に移植、Fv(L−3):L鎖のCDR−3に移植)、B:精製したペプチド移植VH鎖の酸化亜鉛結合評価結果を示す。
図18は、酸化亜鉛認識ペプチド断片の酸化亜鉛に対する結合評価結果を示す。
図19は、本発明の酸化亜鉛結合性抗体を利用したバイオセンサの概念図を示す。
図20は、RlfS検出によるフロー系でのGFP固定化評価を示す(展開蛋白質濃度:10mM、展開溶媒:10 or 30mM PO 3−(pH7.5),150mM NaCl、展開速度:10ml/min、飽和結合量:89nmol/m)。
図21は、フロー系システムへの酸化亜鉛結合性ラクダ抗体4F2の固定化評価を示す(飽和結合量:130nmol/m)。
図22は、フロー系システムへの抗GFPラクダ抗体4F2の固定化評価を示す(ラクダ抗体4F2(下):134nmol/m、抗GFPラクダ抗体4F2(上):134nmol/m、GFPの固定化量:110nmol/m)。
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2007−35073号の明細書に記載された内容を包含する。
1.酸化亜鉛認識ペプチド
本発明で用いられる酸化亜鉛認識ペプチドは、酸化亜鉛を特異的に認識し、高い親和性で酸化亜鉛に結合可能なペプチドである。発明者らは、これまでファージ提示法を用いたスクリーニングにより、5種の酸化亜鉛に結合性を有するペプチド:EAHVMHKVAPRP(ZnO1:配列番号1)、QNTATAVSRLSP(ZnO2:配列番号2)、ATHTNQTHALYR(ZnO3:配列番号3)、VSNHKALDYPTR(ZnO4:配列番号4)、DSGRYSMTNHYS(ZnO5:配列番号5)を取得している(特開2006−225294号公報参照)が、このうち配列番号1のペプチドは、酸化亜鉛に対して10−7Mという高い結合活性を有するものだった。発明者らは、さらにこのペプチドの配列を解析し、EAHVMHK(配列番号6)の7ペプチドが酸化亜鉛の認識に重要であることを特定した(化学工学会代71年会 研究発表講演要旨集 B206、参考例1参照)。特に、塩基性アミノ酸であるヒスチジンは結合定数に対する影響が大きく、2つのヒスチジンにはさまれたHVMH領域が結合モチーフとして重要である可能性が高いと考えられた。
本発明では、前記したEAHVMHKの7ペプチドを含むアミノ酸配列からなるペプチドを酸化亜鉛認識ペプチドとして利用する。限定するものではないが、前記酸化亜鉛認識ペプチドは、7〜20アミノ酸、特に7〜12アミノ酸程度の大きさであることが好ましい。
なお、所望の酸化亜鉛に対する結合性を維持する限り、ペプチドを構成する各アミノ酸は適宜修飾あるいは誘導体化されていてもよく、そのような修飾あるいは誘導体化されたペプチドもまた本発明の酸化亜鉛認識ペプチドに含まれる。
2.ラクダ抗体
2.1 ラクダ抗体の特徴
本発明で用いられる抗体は、ラクダ由来の抗体分子(ラクダ抗体)である。通常、抗体の可変領域は、重鎖と軽鎖からなるヘテロダイマー構造をしている。図16Aは、マウス由来の抗ニワトリ卵白リゾチーム抗体HyHEL−10Fvの立体構造であるが、重鎖(VH)と軽鎖(VL)サブユニットからなる二量体である。ところが、ラクダ抗体は軽鎖を持たずVH単独ドメインで抗原結合力を示す。そのため、従来の抗体より分子量が小さく、構造が単純で、酵母等を用いて容易に大量生産できる。
これまで、ラクダ抗体は、カノニカル構造を持たないことや、相補性決定領域(CDR)ループを安定化させるためのCDR H−1−H−3間ジスルフィド結合を持つ抗体が多く、CDR領域へのペプチド移植には適していないと考えられていた。しかし、近年、CDR−graftingに適した抗β−lactamaseラクダ抗体cAb BCII−10が単離され、“Universal VHH framework”と名づけられた(J.Mol.Biol.352(2005)597)。このcAb BCII−10は、CDRs間にジスルフィド結合がなく、CDR移植後の組換え抗体の発現量も多く、ペプチド移植の鋳型抗体として極めて有用である。本発明では、このようなCDRs間にジスルフィド結合を有しないラクダ抗体を用いることが好ましく、前記したcAb BCII−10をその好適な一例として記載する。
発明者らは、前記したラクダ抗体CDR部位に酸化亜鉛認識ペプチドを移植し、その抗体構造が壊れないことを見出した。従来使用されている、ヘテロダイマー構造を持つ、マウス由来の抗ニワトリ卵白リゾチーム抗体を用いた場合、そのCDR部分(CDR H−2)に酸化亜鉛認識ペプチドを移植した融合タンパク質は、酸化亜鉛結合活性を示すものの、その精製過程においてVHとVLが解離してしまう現象を回避できなかった(図16B)。解離したペプチド移植VH単独では、抗体特有の構造をとることはできず(ランダム構造を示す:図16C)、抗体の機能を失ってしまう。
これに対し、ラクダ抗体は、もともと各ドメインが単独であるため、ドメインの解離の現象は起きず、そのCDR部分に酸化亜鉛認識ペプチドを移植した融合タンパク質は、抗体構造を安定に維持しつつ、酸化亜鉛に対し高い結合活性を示すことが確認された。
また、ラクダ抗体は、一量体であるため、分子量が小さく、すべての分子が共有結合で結ばれているため解離という現象がなく、そのため他のドメインとの融合タンパク質の作製が容易であるという利点を有する。この利点を利用することで、後述するよう、本発明の酸化亜鉛結合性抗体を他の材料認識ペプチド等との融合により、異種材料結合タンパク質を作製することも可能である。
さらに、後述するプロテインチップやバイオセンサでは、抗体構造の安定性極めて重要であるが、一量体であるラクダ抗体は、ダイマー構造を有する従来の抗体に比較して極めて安定性が高く、実使用に適した酸化亜鉛結合性抗体を提供できる。
2.2 ラクダ抗体の一次構造
ラクダ抗体の全アミノ酸配列は公知であり、cAb BCII−10の配列はAntimicrobial Agents and Chemotherapy,2807−2812(2001)に記載されている。CDR領域にジスルフィド結合を有しないラクダ抗体cAb BCII−10の全アミノ酸配列を配列表の配列番号7に示す。この配列中、26−38残基がCDR H−1領域に該当し53−69残基がCDR H−2領域に該当し、102−117残基がCDR H−3領域に該当する。
3.酸化亜鉛結合性抗体(ラクダ抗体−酸化亜鉛認識ペプチド融合タンパク質)
本発明では、前記した酸化亜鉛認識ペプチドをラクダ抗体のCDR領域(特に、CDR H−1領域)に移植することで、酸化亜鉛結合性抗体(ラクダ抗体−酸化亜鉛認識ペプチド融合タンパク)を作製する。
3.1 CDR移植
抗体分子のうち、抗原結合性部位は、相補性決定領域(Complementary determining region,CDR)あるいは超可変領域と呼ばれる。抗体医薬の作製では、このCDRだけを異種(マウス)由来のものに置換するCDR移植が、ヒト型抗体の作製に利用されている。
本発明では、このCDR移植を利用して、ラクダ抗体に酸化亜鉛認識ペプチドを移植する。発明者らは、ラクダ抗体に存在する3つのCDR領域(H−1、H−2、H−3)のそれぞれについて、野生型の立体構造から、CDR表面に露出しており、フレームワーク領域と直接連結していない領域(29−35残基,53−69残基,102−117残基)を決定し、酸化亜鉛認識ペプチドの移植を行った。
3.2 CDR移植による構造変化と酸化亜鉛結合活性
本発明の酸化亜鉛結合性抗体は、CDR移植によっても本来の抗体構造が維持され、かつ移植した酸化亜鉛認識ペプチドと同等あるいはそれ以上の酸化亜鉛結合性を有するものでなければならない。
前記したラクダ抗体−酸化亜鉛認識ペプチド融合タンパク質の立体構造は、X線結晶構造解析、核磁気共鳴スペクトル、蛍光スペクトル、円偏光二色性スペクトル等を測定することにより、調べることができる。その結果、野生型ラクダ抗体と融合タンパク質で全く異なる結果が得られた場合、当該部位への移植は抗体構造を変化させ、抗体活性を損なわせることがわかる。
ラクダ抗体−酸化亜鉛認識ペプチド融合タンパク質の酸化亜鉛結合活性は、結合速度、解離速度、解離平衡定数、飽和結合量の測定等により評価することができる。たとえば、解離平衡定数は、融合タンパク質を含む緩衝液に、酸化亜鉛粒子を加えて上清を回収し、未吸着の酸化亜鉛量から、融合タンパク質への結合量を求め、ラングミュアプロットを行なって決定することができる。結合特性の簡便かつ詳細な評価には、表面プラズモン共鳴を用いた方法が好適であり、その方法の詳細は当該分野で周知である。
発明者らが行なった3つのCDR領域(H−1、H−2、H−3)への移植では、H−2領域への移植はラクダ抗体特有の構造を変化させ、その活性を失わせることが確認された。さらに、H−1領域に移植した抗体は移植前の酸化亜鉛認識ペプチドと同等の結合活性(解離平衡定数(Kd)=1.76x10−7M)を維持していた。H−3領域に移植した抗体は酸化亜鉛結合活性を示すものの、H−1領域に移植した抗体と比較するとその結合活性は弱かった。
この結果から、CDR H−1領域、特にその抗体表面露出領域に酸化亜鉛認識ペプチドを移植することにより、結合活性の高い酸化亜鉛結合タンパク質が取得できることがわかった。以下、このラクダ抗体CDR H−1領域に酸化亜鉛認識ペプチドを移植した抗体を「VHH1」と呼ぶ。
4.融合タンパク質のアフィニティマチュレーション(高親和性変異体)
発明者らは、前項で作製したVHH1を母体として、さらにその結合活性を高めた高親和性変異体の取得を試みた。3つのCDR領域への移植結果から、H−2領域は抗体構造の安定的維持に必要な領域と判断されたため、H−3領域を変異体作製のターゲットとした。
4.1 in vitroアフィニティマチュレーション
in vitroアフィニティマチュレーションは、変異導入による変異ライブラリーの作製とライブラリーからの高親和性抗体のスクリーニングの2つの工程からなる。変異導入法としては、当該分野周知の方法、例えばchain shuffling法、ランダム変異導入法、CDR walkingを用いて実施することができる。こうして作製された変異ライブラリーからの選択方法としては、低濃度の抗原を用いて高親和性抗体を選択する方法、洗浄条件を厳しく設定し抗原に強く結合している抗体のみ回収する方法、拮抗反応を利用して高親和性抗体のみ選択する方法等が挙げられる。本発明の酸化亜鉛結合性抗体は低分子一本鎖抗体であるため、大量生産が容易で、上記したアフィニティマチュレーションの工程も容易に実施できる。
4.2 高親和性酸化亜鉛結合性抗体変異体の取得
以前の検討から、酸化亜鉛への結合にはHXXH(HはRでもよい:配列番号8)という塩基性アミノ酸に挟まれたモチーフが重要であることが予測された。そこで、HXXHを3回繰り返した12ペプチドHXXHXXHXXH(HはRでもよく、XはG(グリシン)、L(ロイシン)、R(アルギニン:配列番号9)、又はV(バリン))を、前述のVHH1に導入し、その酸化亜鉛結合性を評価した。なお、モチーフ内のアミノ酸Xについては、これまで報告されている無機材料結合ペプチドの配列情報よりヒスチジン、トリプトファン、アルギニン、リジン、グリシン残基が無機材料結合に重要であること、またアミノ酸をコードするコドンから理論上の計算されるライブラリー規模と、調製可能なライブラリー規模を考慮し、ヒスチジン、グリシン、アルギニン、ロイシン、バリン残基に限定した。
その結果、VHH1よりも優れた酸化亜鉛親和性を有する4つのクローン:HLGHGGHRLH(配列番号10)、HLGHGGHGLH(配列番号11)、HVGHGLHGVR(配列番号12)、又はHLGHGLHRVH(配列番号13)が選択された。これらは、いずれも、VHH1と同等の飽和結合量で、解離平衡定数(Kd)はVHH1の値(1.76x10−7M)をはるかに下回る。なかでも、4F2は酸化亜鉛に対する親和性が極めて高く(解離平衡定数(Kd)=9.39x10−9M)、しかも他の材料に対してほとんど親和性を示さない優れた選択性を有し、抗体の立体構造も適切に保持されていることが確認された。4F2の全アミノ酸配列を配列表の配列番号14に示す。
5.酸化亜鉛結合性抗体発現ベクター
本発明は、前記酸化亜鉛結合性抗体コードする遺伝子を含み、当該酸化亜鉛結合性抗体を発現しうるベクターも提供する。
本発明の発現ベクターは、プラスミド等の公知のベクターに本発明の酸化亜鉛結合性抗体をコードする遺伝子を連結(挿入)して得ることができる。塩基配列は、導入する宿主細胞に合わせて適宜最適化してもよい。ベクターは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えばプラスミドDNA、ファージDNA等を利用することができる。
前記プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322,pBR325,pUC18,pUC119,pTrcHis,pBlueBacHis等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110,pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13,YEp24,YCp50,pYE52等)などが、ファージDNAとしてはλファージ等が挙げられる。
前記ベクターへの遺伝子の挿入は、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、ベクターDNAの適当な制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法が採用される。
宿主内で外来遺伝子を発現させるためには、構造遺伝子の前に、適当なプロモーターを配置させる必要がある。前記プロモーターは特に限定されず、宿主内で機能することが知られている任意のものを用いることができる。なおプロモーターについては、次項において、宿主ごとに詳述する。また、必要であればエンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、ターミネーター配列等を配置させてもよい。
前記ベクターは、宿主細胞で機能する他の酵素やタンパク質の遺伝子を含んでいてもよい。後述するよう、本発明の酸化亜鉛結合性抗体は他の材料認識ペプチドとの融合タンパク質として発現させることもできる。その場合、前記ベクターには、融合タンパク質をコードする遺伝子を導入すればよい。
6.酸化亜鉛結合性抗体の組換え生産
本発明の酸化亜鉛結合性抗体は、適当な宿主に前項で記載した発現ベクターを当該遺伝子が発現しうるように導入し、培養することによって、組換え生産することができる。特に、本発明のラクダ抗体を用いた酸化亜鉛結合性抗体は、低分子一量体抗体でジスルフィド結合も有しないため、効率よく組換え生産可能であり、cAb BCII−10に関しては酵母による高生産が確認されている(前掲)。
宿主細胞としては、原核細胞であれば、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)等が挙げられる。目的の遺伝子をこれらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわち複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。該ベクターとしては、形質転換細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与しうる配列を有するものが好ましい。
例えば、大腸菌であれば、K12株等がよく用いられ、ベクターとしては、一般にpBR322やpUC系のプラスミドが用いられるが、これらに限定されず、公知の各種菌株やベクターを使用できる。また、大腸菌で用いられるプロモーターとしては、例えば、トリプトファン(trp)プロモーター、ラクトース(lac)プロモーター、トリプトファン・ラクトース(tac)プロモーター、リポプロテイン(lpp)プロモーター、ポリペプチド鎖伸張因子Tu(tufB)プロモーター等を挙げることができ、いずれも好適に用いることができる。
また、枯草菌であれば、207−25株が好ましく、ベクターとしてはpTUB228(Ohmura,K.et al.(1984)J.Biochem.95,87−93)等が用いられるが、これに限定されるものではない。なお、ベクターに枯草菌のα−アミラーゼのシグナルペプチド配列をコードするDNA配列を連結することにより、菌体外での分泌発現も可能となる。
真核細胞の宿主細胞としては、脊椎動物、昆虫、酵母等の細胞が挙げられる。脊椎動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman,Y.(1981)Cell 23,175−182、ATCC CRL−1650)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL−61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub,G.and Chasin,L.A.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77,4126−4220)等がよく用いられているが、これらに限定されない。
脊椎動物細胞の発現ベクターとしては、通常発現させようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列等を有するものを使用できる。さらに、これは必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、サイトメガロウイルス初期プロモーターを有するpCR3.1(Invitrogen社製)、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani,S.et al.(1981)Mol.Cell.Biol.1,854−864)等が挙げられるが、これらに限定されない。
宿主細胞として、COS細胞を用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞において自立増殖が可能であり、さらに、転写プロモーター、転写終結シグナル、及びRNAスプライス部位を備えたものを好適に用いることができる。該発現ベクターは、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン法(Luthman,H.and Magnusson,G.(1983)Nucleic Acids Res,11,1295−1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham,F.L.and van der Eb,A.J.(1973)Virology 52,456−457)、及び電気パルス穿孔法(Neumann,E.et al.(1982)EMEO J.1,841−845)等によりCOS細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。
また、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、発現ベクターと共に、抗生物質G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター、例えば、pRSVneo(Sambrook,J.et al.(1989):“Molecular Cloning A Laboratory Manual“Cold Spring Harbor Laboratory,NY)やpSV2neo(Southern,P.J.and Berg,P.(1982)J.Mol.Appl.Genet.1,327−341)等をコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することにより、目的のポリペプチドを安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、鱗翅類ヤガ科のSpodoptera frugiperdaの卵巣細胞由来株化細胞(Sf−9又はSf−21)やTrichoplusianiの卵細胞由来High Five細胞(Wickham,T.J.et al,(1992)Biotechnol.Prog.i:391−396)等が宿主細胞としてよく用いられ、バキュロウイルストランスファーベクターとしてはオートグラファ核多角体ウイルス(AcNPV)のポリヘドリンタンパクのプロモーターを利用したpVL1392/1393がよく用いられる(Kidd,i.M.and V.C.Emery(1993)The use of baculoviruses as expression vectors.Applied Biochemistry and Biotechnology 420,137−159)。この他にも、バキュロウイルスのP10や同塩基性タンパク質のプロモーターを利用したベクターも使用できる。さらに、AcNPVのエンベロープ表面タンパク質GP67の分泌シグナル配列を目的タンパク質のN末端側に繋げることにより、組換えタンパク質を分泌タンパク質として発現させることも可能である(Zhe−mei Wang,et al.(1998)Biol.Chem.,379,167−174)。
真核微生物を宿主細胞とした発現系としては、酵母が一般によく知られており、その中でもサッカロミセス属酵母、例えば、パン酵母Saccharomyces cerevisiaeや石油酵母Pichiapastorisが好ましい。該酵母等の真核微生物の発現ベクターとしては、例えば、アルコール脱水素酵素遺伝子のプロモーター(Bennetzen,J.L.and Hall,B.D.(1982)J.Biol.Chem.257,3018−3025)や酸性フォスファターゼ遺伝子のプロモーター(Miyanohara,A.et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80,1−5)等を好ましく利用できる。また、分泌型タンパク質として発現させる場合には、分泌シグナル配列と宿主細胞の持つ内在性プロテアーゼあるいは既知のプロテアーゼの切断部位をN末端側に持つ組換え体として発現させることも可能である。例えば、トリプシン型セリンプロテアーゼのヒトマスト細胞トリプターゼを石油酵母で発現させた系では、N末端側に酵母のαファクターの分泌シグナル配列と石油酵母の持つKEX2プロテアーゼの切断部位をつなぎ発現させることにより、活性型トリプターゼが培地中に分泌されることが知られている(Andrew,L.Niles,et al.(1998)Biotechnol.Appl.Biochem.28,125−131)。
上記のようにして得られた形質転換体は、常法にしたがい培養することができ、該培養により細胞内、又は細胞外に目的の酸化亜鉛結合性抗体が産生される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択できる。例えば、上記COS細胞であれば、RPMI1640培地やダルベッコ変法イーグル培地(以下「DMEM」という)等の培地に、必要に応じウシ胎児血清等の血清成分を添加したものを使用できる。
上記培養により、形質転換された宿主細胞内又は細胞外に産生される組換えタンパク質は、該タンパク質の物理的性質や化学的性質等を利用した公知の分離操作法により、分離・精製することができる。該方法としては、例えば、タンパク沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、を単独あるいは組合せて利用できる。また、発現させる組換えタンパク質に6残基からなるヒスチジンを繋げれば、ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することができる。目的とする酸化亜鉛結合性抗体タンパクは、以上に記載した方法を適宜組み合わせることにより、容易に高収率、高純度で製造できる。
7.酸化亜鉛結合性抗体と第2のタンパク質との融合
前述のとおり、ラクダ抗体は一量体抗体であるため、分子量が小さく、各分子がすべて共有結合で結ばれているため解離という現象が起こらない。そのため、本発明の酸化亜鉛結合性抗体を他のタンパク質と融合させた組換えタンパク質を容易に調製することができる。本発明はそのような融合タンパク質も提供する。
融合タンパク質の作製は、既報(Nature Biotech.23,1126−1136./Cancer Immunol.Immunother.,53,497−509(2004)、Biochem.Biophys.Res.Commun.,328,98−105(2005))を参照して実施することができる。
融合させるタンパク質として、他の材料認識ペプチドを含むタンパク質(材料認識配列を有する第2のタンパク質)を用いれば、この融合タンパク質は、異なる2つの材料間を連結する役目を果たす。なお、「材料認識配列を有する第2のタンパク質」とは、本発明の酸化亜鉛認識ペプチドのように、ある材料(たとえば、金属や金属酸化物)を特異的に認識して特異的に結合する配列を含むタンパク質を意味する。そのようなタンパク質は、例えば、WO2004/031381、WO2005/010031、WO2006/064639、WO2006/068250、WO2006/126595、Brown et al.,J.Mol.Biol.(2000),299,725−735、Naik et al.,Nature materials,(2002),Vol.1,November,169−172、Naik et al.,J.Nanosci.Nanotech.,(2002),Vol.2,No.1,95−100、Mao et al.,PNAS,(2003),Vol.100,No.12.6946−6951、Mao et al.,Science,(2004),Vol.303,213−217等に記載のものなど、当該分野で多数知られており、それらを適宜利用することができる。こうした融合タンパク質は、ナノ粒子の配列技術とナノ粒子間の接合技術等に利用することができる。
たとえば、金材料認識ペプチド(LKAHLPPSRLPS:配列番号20)や金結合性抗体(特開2005−312446号公報、特開2006−225294号公報)と本発明の酸化亜鉛結合性抗体を融合させたタンパク質は、金材料表面に酸化亜鉛粒子を固定化することができ、また、酸化亜鉛粒子と金ナノ粒子を接合させることができる。
上記のほか、本発明の酸化亜鉛結合性抗体は、Hisタグペプチド,GSTタンパク質,各種結合性タンパク質を融合させることによって、タンパク質精製の用途にも用いることができる。
8.酸化亜鉛結合性抗体による抗体固定化支持体(プロテインチップ、ナノ粒子)
本発明は、酸化亜鉛結合性抗体を固定した酸化亜鉛層を含む固相支持体を提供する。支持体の形状は酸化亜鉛層を含む限り特に限定されず、基板状(プロテインチップ等)であっても、粒子状(ナノ粒子等)であってもよい。
8.1 プロテインチップ
「安定」・「簡便」・「迅速」な測定が可能なプロテインチップの作製には、(1)タンパク質が吸着しにくい、(2)選択的にタンパク質を固定化できる、(3)基板のパターニングが容易、という条件の達成が望まれる。
従来基板へのタンパク質の固定化法として一般的なものは、(a)金基板への金−硫黄結合を利用した固定化法、(b)シランカップリング剤によるシリカ膜への結合を利用した固定化法、(c)前記(a)(b)の方法により結合された有機膜に提示された官能基を利用した化学的結合による固定化法、がある。しかし、これらの手法は、タンパク質固定化によりタンパク質の活性が低下する、基板加工が複雑、タンパク質固定化法が多段階にわたる等の問題があった。
これに対し、酸化亜鉛はセラミックスであるためタンパク質が吸着しにくく、本発明にかかる酸化亜鉛結合性抗体(ラクダ抗体)を用いることにより、簡便・迅速に酸化亜鉛表面にタンパク質を固定化できる。また、酸化亜鉛は、半導体加工技術(微細加工技術)を用いることで、様々な構造の基板を作製可能である。さらに、既報のとおり、そのパターニング技術が確立しており(特開2006−225294号公報)、プロテインチップ等の固相基板の作製に有用といえる。
なお、固相基板の材質は酸化亜鉛層が形成可能である限り、特に限定されず、金属、ガラス、シリコン等、当該分野で汎用されている基板を適宜用いることができる。
8.2 ナノ粒子/マイクロ粒子
本発明の酸化亜鉛結合性抗体を固定化した酸化亜鉛層を有する粒子(ナノサイズ,マイクロサイズ)はタンパク質精製等の様々な分析に応用できる。特にナノ粒子はその表面積を生かしてマイクロ流路内における高感度分析に有用である。
また、酸化亜鉛結合性抗体を固定化した酸化亜鉛粒子はタンパク質で粒子が修飾されるため水溶液中での分散性がよく、作用物質と効率よく反応する。完全分散が達成されると、タンパク質間相互作用がおきたとき粒子が凝集するため、簡便にタンパク質間の結合が解析できる。なお、こうした分散性の良さは、インクジェット手法やスプレー手法でナノ粒子をパターニングする場合にも重要である。
9.バイオセンサ
本発明はまた、酸化亜鉛結合性抗体を固定した酸化亜鉛層を含む固相支持体と、前記抗体を介した分子間相互作用を検出する手段を有するバイオセンサ(免疫バイオセンサ)を提供する。ここで、抗体を介した分子間相互作用とは、抗体−抗原の相互作用に限定されず、抗体と第2抗体を介した抗原との相互作用など、抗体を介したアナライトとの結合・解離のすべてを含む。検出手段は、FETのような電気的検出手段、表面プラズモン共鳴のような光学的検出など、周知の検出手段のいずれであってもよい。以下、代表的な実施態様について記載する。また、図19に本発明の酸化亜鉛結合性抗体を利用したバイオセンサの概念図を示す。
9.1 FET技術を利用したバイオセンサ
電解効果トランジスタ(Field−Effect Transistor,FET)は、電気的検出を利用したバイオセンサに汎用されている技術である。原理は、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流を、第三の電極であるゲート電極で制御し、そのゲート電極表面でタンパク質間相互作用を起こさせるとゲート電極の電荷が変化するため、電流的応答が変化する(Anal.Chim.Acta 136,93(1982))。このゲート電極に酸化亜鉛を用いることによって、FET技術を用いたタンパク質間相互作用が測定できる。すなわち、バイオセンサとして利用できる。
タンパク質間相互作用をFETによって検出するためには、その反応ができるだけゲート電極表面に近い場所で起こる必要がある。ラクダ抗体4F2を接合ユニットとしたタンパク質固定化は、ゲート電極に極めて近くに目的タンパク質を固定化できるため、従来よりも高感度なFET、これを利用したバイオセンサに有用である。
9.2 表面プラズモン共鳴法を利用したバイオセンサ
表面プラズモン共鳴センサは、表面プラズモン共鳴を利用し、センサーチップ上で分子間相互作用をリアルタイムで解析できるバイオセンサである。既に、市販の表面プラズモン共鳴センサ(例えば、BIAcore社のSPR測定用金膜センサーチップSensor Chip Au等)は容易に入手可能である。センサーチップ上に酸化亜鉛層を形成させれば、本発明の酸化亜鉛結合性抗体は高い結合性で安定に吸着される。こうして、酸化亜鉛結合性抗体を結合させたセンサーチップ上にマイクロ流路を設け、ここにアナライト(抗原)を含むサンプルを一定の流速で送液する。抗体とサンプル中の抗原が相互作用をすれば、表面プラズモン現象により、結合と解離が光学的に検出され、センサグラムとしてリアルタイムでモニターできる。表面プラズモン共鳴センサは、微量サンプルを高感度に検出できるとともに、相互作用のキネティクスをリアルタイムで解析できるという利点がある。したがって、本発明の酸化亜鉛結合性抗体を結合させた表面プラズモン共鳴センサは、抗原抗体間相互作用解析のバイオセンサとして有用である。
さらに、本発明の酸化亜鉛結合性抗体を酸化亜鉛の微細加工や、酸化亜鉛のドット(数百μm程度)を用いた2次元表面プラズモン共鳴(SPR)に応用することも可能である。微細加工した亜鉛などの無機材料(半導体材料)上への酸化亜鉛膜形成は、半導体作製技術を使って容易に実施することができる。たとえば、μmレベルのパターニングであれば、リフトオフ法やマスキングを利用したスパッタ法で実施可能なほか、Pd触媒を使った室温でのパターニング(Adv.Mater.14,418−421(2002))も可能である。
9.3 リフレクトメトリーを利用したバイオセンサ
リフレクトメトリーとは、レーザーを試料板に反射させ、反射光を測定することによって、試料版表面への蛋白質吸着量を測定する手法である。このリフレクトメトリーの原理とマイクロ流体チップを組み合わせたリフレクトメトリーバイオセンサは容易に入手可能である(フルイドウェアテクノロジーズ(株)のリフレクトメトリーバイオセンサアレイシステムFluid−RIfS等)。センサーチップ上に酸化亜鉛層を形成させれば、本発明の酸化亜鉛結合性抗体は高い結合性で安定に吸着される。こうして、酸化亜鉛結合性抗体を結合させたセンサーチップ上にマイクロ流路を設け、ここにアナライト(抗原)を含むサンプルを一定の流速で送液する。抗体とサンプル中の抗原が相互作用をすれば、吸着タンパク質量がセンサグラムとしてリアルタイムでモニターできる。リフレクトメトリーバイオセンサは、微量サンプルを高感度に検出できるとともに、相互作用のキネティクスをリアルタイムで解析できるという利点がある。したがって、本発明の酸化亜鉛結合性抗体を結合させたリフレクトメトリーバイオセンサは、抗原抗体間相互作用解析のバイオセンサとして有用である。
上記の事例に限定されず、本発明の酸化亜鉛結合性抗体は、赤外線などの電磁波の透過光・反射光・近接場光・水晶発振子マイクロバランスを利用したバイオセンサにも応用可能である。また、他の免疫検出に用いられる周知の技術:たとえば、免疫沈降、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、及びRIA法等の固相免疫法を適宜応用したバイオセンサの開発も可能である。
10.その他
酸化亜鉛基板上に固定化した本発明の酸化亜鉛結合性抗体は、適当な条件を設定することで容易に脱離させることができる。すなわち、条件を変えることで、固定した酸化亜鉛結合性抗体を回収して分析することができる。この際特筆すべきは、脱離に使う溶液は通常のタンパク質調製水溶液(リン酸緩衝液等)でよく、タンパク質は変性することなく、活性構造を維持した状態で脱離させることができることである。
実施例1:酸化亜鉛結合性ラクダ抗体の作製
1.ZnO認識ペプチドのラクダ抗体への移植
(1)ラクダ抗体cAb BCII−10
ラクダ抗体は、本来相補性決定領域(CDR)ループを安定化させるCDR H−1−H−3間ジスルフィド結合を有するが、本実施例では、CDRs間にジスルフィド結合を有さない“Universal VHH framework”と名づけられた抗β−lactamaseラクダ抗体cAb BCII−10(J.Mol.Biol.352(2005)597)をペプチド移植する鋳型抗体として用いた。cAb BCII−10は既報(Antimicrobial Agents and Chemotheraphy,2807−2812(2001))の配列に従い作製した。
(2)cAb BCII−10及びペプチド移植ラクダ抗体の発現ベクターの構築
Overlap extension PCR法を用いて、抗β−lactamase抗体cAbBCII−10のCDR H−3領域の103−114部位にEAHVMHKVAPRPからなる酸化亜鉛認識ペプチド(配列番号1)を移植した抗体VHH3をコードする遺伝子を全合成した。その後、ZnO認識ペプチド配列となっているCDR H−3を野生型のCDRに置換するprimerを用いて野生型cAb BCII−10(WT VHH)を作製した。同様にしてCDR H−1、H−2に酸化亜鉛認識ペプチドを移植し、ペプチド移植ラクダ抗体VHH1,VHH2を作製した。CDRへの移植箇所については、野生型ラクダ抗体の立体構造から、CDR中の表面に露出している12アミノ酸残基(29−35残基,53−69残基,102−117残基)を選択した。作製した発現ベクターの模式図を図1Aに示す。また、PCR反応溶液組成と反応条件(表1)、使用したPCRプライマーとペプチド移植ラクダ抗体のアミノ酸配列(表2)を以下に示す。
VHH3全合成用primer
WTVHH合成用primer
VHH1,VHH2,ZnOtag−WTVHH作製用primer
2.酸化亜鉛認識ペプチド移植ラクダ抗体VHH1、VHH2、VHH3の大腸菌発現と構造・機能評価
前項で作製したVHH1、VHH2、VHH3発現ベクターを用いて、大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、タンパク質を発現させた。タンパク質の精製方法を図2Aに示す。VHH1、VHH2、VHH3のいずれも、可溶性画分として調製できた(図2B)。その調製タンパク質を、ゲルろ過クロマトグラフィー(Superdex75;50mM Tris−HCl(pH8.0)/200mM NaCl)と円偏光二色性(AVIV円二色性分光計(Proterion Co.,New Jersey,USA);path length,1.0mm;resolution,0.2nm;average time,4s)により評価したところ、VHH1とVHH3は単量体の単一成分で(図3中の赤線,青線)、かつ、ラクダ抗体特有の円偏光二色性を示したのに対し(図4中の赤線,青線)、VHH2は均一なゲルろ過クロマトグラムを示さず、円偏光二色性もラクダ抗体特有のものではなかった(図3,4中の黄緑線)。
次に、調製されたVHH1、VHH2、VHH3の酸化亜鉛粒子との活性評価を行った。具体的には、粒径100nmの酸化亜鉛と10mMリン酸緩衝液(界面活性剤含)中で混合し、遠心後上清と沈殿物(酸化亜鉛)に分離した(図5)。沈殿物に関しては、数回上記リン酸緩衝液で洗浄し、最後に6Mグアニジン塩酸塩(GdnHCl)水溶液を用いて吸着しているタンパク質を可溶化させ、SDS−PAGEにより評価した(図6)。SDS−PAGEの結果は、VHH1は酸化亜鉛に対して結合し(図6A)、材料特異性も保持していることが分かった(図6A)。VHH3に関しては、10mMリン酸緩衝液を使用した際には結合特性は見られなかったが、1mMリン酸緩衝液を使用した際は、ZnOに結合した(図7)。これより、VHH3もZnOに対して結合機能があるが、VHH1と比較すると、その結合活性は弱いことがわかった。
さらに、VHH1に対して、ラングミュアプロットによる結合評価を行った(図8)。その場合、酸化亜鉛に対するVHH1の解離平衡定数は、176nMあり、WT VHHのN末端に酸化亜鉛認識ペプチドを融合したもの(3.30×10−7M)と同程度の活性と評価された。これより、CDR H−1領域にペプチドを移植しても、ラクダ抗体自身の立体構造は保持され、ペプチドの活性も低下しないことが確認された。
実施例2:In vitroアフィニティマチュレーションによる高親和性ラクダ抗体の作製
実施例1で作製されたVHH1を母体として、より活性を向上させることを試みた。具体的には、酸化亜鉛認識ペプチドを移植していないCDR H−3領域に注目し、そのアミノ酸配列をランダム化しライブラリーを構築した。CDR H−2領域は、実施例1の結果より、この部分の配列を変えるとラクダ抗体の構造が変性し活性を失うことがわかったため改変には利用しなかった。
ライブラリーは、CDR−H3領域の105残基から114残基部分を図9に示した配列でライブラリー化して作製した。図中のH(R)部分の遺伝子は、DNAの塩基配列が、「(CもしくはAもしくはG)(TもしくはCもしくはA)」となるようし設計し、His残基もしくはArg残基になるようにした。そして、Xに関しては、「(CもしくはG)(TもしくはG)(AもしくはTもしくはGもしくはC)」とし、Gly残基もしくはLeu残基もしくはArg残基もしくはVal残基となるようにした。作製した遺伝子ライブラリーをファージミドベクターpTZへ導入し、M13ファージに抗体断片ライブラリーが提示した、VHH1ライブラリーを調製した。すなわち、ペプチド移植抗体VHH1を鋳型としてOverlap extension PCRによりCDR H−3をランダム化させた遺伝子断片を増幅した後、ファージミドベクターpTZ(図1B)へ導入した。PCR反応溶液組成と反応条件は実施例1の表1と同様であり、変異導入プライマーの配列は以下のとおりである。
CDRH−3ランダム化primer
本研究において使用したファージミドベクターpTZは、lacプロモーターが目的遺伝子とは逆の方向に配置してあり、mRNAの転写がg3p末端に位置するファージ由来のgVIプロモーターから開始される。これによりg3pとの融合タンパク質の産生が適度に抑制され、遺伝子欠損を生じることなく、より多種類のクローンを提示させることが可能となる。作製したファージミドベクターを用いてエレクトロポレーション法により大腸菌DH12S株を形質転換し、20ml LB培地に植え継ぎ37℃,O/Nで培養後、プラスミドの抽出を行い、これをファージミドライブラリーとしてファージ提示法の操作に用いた。作製したライブラリーの規模は6.5×10,形質転換体は1.2×10であった。
次に、作製したファージ抗体ライブラリーからより親和性の高い酸化亜鉛特異的ラクダ抗体を選択した。リン酸は酸化亜鉛表面と結合し、タンパク質の吸着を防ぐことが以前の実験より確認されていたため、ファージ抗体ライブラリー溶液を酸化亜鉛粒子と混合した後、酸化亜鉛に結合しない、もしくは、弱く結合する抗体提示ファージは、リン酸(10〜50mM)と界面活性剤(0.05% Tween−20)を含む水溶液で取り除いた(洗浄操作)。強く結合したファージは、高濃度なリン酸水溶液(200mM)を用いて取り除き、取り除いたファージを再増幅させた。
具体的には、調製したファージ抗体ライブラリー840μlをZnO粉末(0.2mg)に添加し、1hr混合した。ZnOに対する非特異吸着分子を10mM phosphate(pH7.4)/200mM NaCl/0.05% Tween20溶液にて洗浄後、0.2M phosphate buffer(pH7.4,200mM NaCl)にて結合ファージ抗体を溶出した。回収したファージ抗体をO.D.600nm=0.5まで培養した大腸菌JM109株に再感染させ増幅し、菌体をプレートにまいた。プレート上のファージ遺伝子を含んだ大腸菌を回収後、再びファージ抗体を調製し、繰り返しパニング操作を行った。ZnOに強固に結合するファージ抗体を取得するために、ラウンド毎に洗浄におけるphosphate濃度を上げた。以上の操作を4ラウンド繰り返し、ZnOに対する結合能を有する抗体の濃縮を行った。各種条件を表3に示す。
その結果、CDR−H3に表4のアミノ酸配列を持つラクダ抗体が選択された。各々のラクダ抗体に対して、ラングミュアプロットにより酸化亜鉛に対する親和性を評価したところ、表5の結果が得られ、4F2が最も親和性が高いことが確認された。
4F2に対しては、材料選択性についても評価した(図10)。すなわち、酸化亜鉛と同様の方法で、酸化鉄、酸化チタンへの結合性を調べたところ、若干結合するものの、酸化亜鉛に対してのみ強い選択性があることがわかった。また、作製した4F2を、ゲルろ過クロマトグラフィーと円偏光二色性測定により評価したところ、単量体の単一成分で(図11中の橙線)、かつ、抗体特有のβ構造の円偏光二色性を示し(図12中の橙線)、野生型と同様の抗体分子構造を保持していることが確認された。表6に4F2の全アミノ酸配列(配列番号14)を示す。
実施例3:ラクダ抗体4F2を用いた酸化亜鉛粒子の分散性向上
抗体断片(WT VHH,もしくはVHH1もしくは4F2)水溶液(10mMリン酸緩衝液)1mlに対して、0.5mgの酸化亜鉛微粒子(粒径15〜35nm)を加え、10秒間超音波処理をし、その後の粒子分散性を評価した。抗体断片濃度が3μMの時は、VHH1もしくは4F2使用で酸化亜鉛粒子の分散性は1日経過後も保持されていた(図12)。しかし、抗体濃度が0.5μMの時は、4F2のみ酸化亜鉛微粒子の分散性が維持された(図13)。
実施例4:固定した酸化亜鉛結合抗体の脱離
酸化亜鉛結合性抗体水溶液を酸化亜鉛粒子と混合・遠心分離後、酸化亜鉛粒子を取り出し、その粒子に様々なリン酸濃度のリン酸緩衝液を加え、抗体の上清への解離を測定した(図14)。すべての抗体は酸化亜鉛に結合した後、10mM以上500mM以下のリン濃度のリン酸緩衝液を適切に調製すればその抗体を酸化亜鉛表面より脱離させることができた。
実施例5:4F2と金認識抗体を融合させた酸化亜鉛−金連結タンパク質の作製
ZnOに高親和性を示す4F2抗体とAuに結合するAu VHH1をヒンジリンカーで融合することで、二重特異性抗体を作製する。Overlap extension PCR法を用いて、既に報告されているAu結合ペプチド移植抗体AuVHH1とZnO結合抗体4F2をリンカー:Llama IgG2 upper hinge(EPKIPQPQPKPQPQPQPQPQPKPQPKPEP(配列番号39)を介して結合し、4F2−AuVHH1の遺伝子を作製する。実施例1にしたがい、以下のプライマーを用いて、この遺伝子を組み込んだ発現ベクター:pRA4F2−AuVHH1(図1C)を作製する。
4F2−AuVHH1作製用primer
この融合タンパク質を介して、金材料表面と酸化亜鉛粒子、あるいは酸化亜鉛粒子と金ナノ粒子を接合できる。
実施例6:表面プラズモン共鳴を用いた結合活性評価
1.酸化亜鉛結合性抗体の酸化亜鉛結合活性評価
BIAcore社のSPR測定用金膜センサーチップSensor Chip Auに酸化亜鉛膜を作製し、BIAcore(登録商標)2000を用いて抗体の酸化亜鉛膜に対する親和性を測定する。具体的には、Sensor Chip Auの金プレート表面にスパッタ法などにより、酸化亜鉛膜を数nm〜50nmの膜厚で作製する。そして、そのプレートをBIAcore(登録商標)2000に設置し、抗体水溶液を流して、抗体の酸化亜鉛膜への吸着を測定する。
酸化亜鉛膜は、作製の条件を変えることによって、結晶構造を変化させることができるので、酸化膜の結晶性の違いによる抗体の吸着特性(下記の結合速度(ka),解離速度(kd),解離定数(KD)と飽和結合量)も評価する。定量的評価は、前記装置に添付された解析ソフトに従って得られる結合曲線から、抗体の酸化亜鉛に対する結合速度(ka),解離速度(kd),解離定数(KD)を求めて行う。
2.酸化亜鉛結合性抗体固定化亜鉛結合基板の抗原結合活性評価
前項で酸化亜鉛結合性抗体を吸着させた酸化亜鉛膜を有するセンサーチップ(基板)上にマイクロ流路を設け、ここにアナライト(抗原)を含むサンプルを一定速度で送液し、抗体とサンプル中の抗原の相互作用を表面プラズモン現象によりリアルタイムにモニターする。
本発明の酸化亜鉛結合性抗体を吸着させたセンサーチップは、それ自体が、抗原抗体間相互作用のキネティクスを解析するためのセンサーチップとして利用できる。
実施例7:リフレクトメトリーを用いた酸化亜鉛結合性抗体の酸化亜鉛への吸着特性とプロテインチップ・フロー系センサーへの応用
リフレクトメトリーとは、レーザーを試料板に反射させ、反射光を測定することによって、試料版表面への蛋白質吸着量を測定する手法である。このリフレクトメトリーの原理とマイクロ流体チップを組み合わせたリフレクトメトリーバイオセンサアレイシステムFluid−RIfS(フルイドウェアテクノロジーズ(株)製)を用いて、そのシリコン基板上に酸化亜鉛薄膜と微小流路を設計し、蛋白質水溶液を展開させることによって、酸化亜鉛基板上への蛋白質吸着量を測定した。
緑色蛍光蛋白質GFPを展開してみると、10mM,30mMリン酸水溶液中ではほとんど酸化亜鉛基板へ吸着しなかった(図20中の黒点線,黒破線)。これより、酸化亜鉛表面にGFPはほとんど物理吸着しないことがわかった。しかし、N末端に酸化亜鉛結合性ペプチド(EAHVMHKVAPRP)を融合したGFPは酸化亜鉛基板への明確な吸着を示し、30mMリン酸水溶液中で飽和結合量が約89nmol/mであった(図20)。しかし、展開溶液を、蛋白質を含まないリン酸水溶液に交換すると(解離工程)、ペプチド融合GFPは一部解離していった。
次に、酸化亜鉛結合性ラクダ抗体4F2を用いて同様の実験を行ったところ、酸化亜鉛結合性ペプチド融合GFPと同様に酸化亜鉛基板への吸着を示したが、その吸着量は約130nmol/mとペプチドの約1.5倍であり、さらに解離工程においても、ほとんど蛋白質の解離は観測されなかった(図21)。これより、酸化亜鉛への結合性が強い4F2は酸化亜鉛基板上へ、安定的強く、かつ、迅速に蛋白質を固定化できるタグとして使用できることが確認できた。
さらに、4F2とGFPに結合性を示すラクダ抗体(抗GFPラクダ抗体)を融合させて、GFP検出バイオリフレクトセンサーを作成し、評価した。その結果、4F2を介して、80%の活性を保持した状態で抗GFPラクダ抗体を酸化亜鉛表面へ固定化させることができ、さらに、GFPも検出できることが確認できた(図22中の上の線)。
比較例1:マウス由来抗ニワトリ卵白リゾチーム抗体を用いた酸化亜鉛結合性抗体の作製
実施例1にしたがい、ラクダ抗体のかわりに、抗ニワトリ卵白リゾチーム抗体HyHEL−10Fv(Protein Data Bank:1C08,J.Biol.Chem.274 27623−27631(1999)、立体構造:図16A)を用いて、その6つのCDR領域にそれぞれ酸化亜鉛認識ペプチドを移植した。
すなわち、ZnO結合性ペプチドの配列(EAHVMHKVAPRP)をもとにPCR primerを設計し、本研究室既存のHyHEL−10VH(or VL)遺伝子を含むベクターpRA−WT VH(or VL)を鋳型として、以下のプライマーを用いて、Overlap Extension PCRを行い、各CDRにペプチド配列を移植した。
VH−2(CDRH−2),VH−3(CDRH−3)作製用primer
VL−2(CDR L−2),VL−3(CDR L−3)作製用primer
つぎに、PCR増幅した各DNA断片と本研究室既存の発現ベクターpRA−scFv(HyHEL−10scFv発現ベクター)をNcoIとSacIIで制限酵素消化した後、連結し、VH−2,VH−3,VL−2,VL−3各単独発現ベクターを作製した。さらに、本研究室既存のHyHEL−10Fv共発現ベクターpRA−pKTN2 VH及びpRA−pKTN2 VLをNcoIとSacIIで制限酵素消化し、繋ぎかえることでFv(H−2),(H−3),(L−2),(L−3)の共発現ベクター(図15)を作製した。
移植した抗体について、酸化亜鉛結合性を調べたところ、重鎖のCDR−2にペプチド移植したものが、酸化亜鉛結合活性を示したが、精製過程においてVHとVLが解離してしまう現象を回避できなかった(図16B)。ペプチド移植したVH領域のみ単独で、大腸菌発現させ精製し、円偏光二色性を測定したところ、抗体特有のシグナルを示さず、ランダム構造を示すシグナルが得られた(図16C)。
上記のとおり、マウス由来抗ニワトリ卵白リゾチーム抗体は解離を回避することができなかった。そこで、大腸菌発現の際に倍地上清に分泌されてくるFvを精製せずにそのまま用いて酸化亜鉛に対する結合評価を行った(図17A)。その結果、V鎖のCDR−H2に移植したものが活性を示したので、VH鎖だけの形で精製し、酸化亜鉛に対する結合評価を行った(図17B)。VH鎖は活性は示したものの、構造が不安定であるため、定量的評価はできなかった。
参考例1:短い酸化亜鉛認識ペプチドの結合評価
酸化亜鉛への結合に必要なペプチドの長さを調べるために、酸化亜鉛認識ペプチド(EAHVMHKVAPRP)の断片の結合評価を行った(図18)。その結果、前記配列の1−7アミノ酸残基からなるペプチド(EAHVMHK)が最も高い結合平衡定数(解離平衡定数の逆数)を示すことがわかった。
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
本発明によれば、酸化亜鉛に抗体分子を安定かつ特定の配向で結合させることができる。この技術は、バイオセンサ、プロテインチップ等、ハイスループットなセンシング技術の開発に利用できる。
配列番号1:酸化亜鉛認識ペプチド(ZnO1)
配列番号2:酸化亜鉛認識ペプチド(ZnO2)
配列番号3:酸化亜鉛認識ペプチド(ZnO3)
配列番号4:酸化亜鉛認識ペプチド(ZnO4)
配列番号5:酸化亜鉛認識ペプチド(ZnO5)
配列番号6:酸化亜鉛認識領域の配列
配列番号7:cAb BCII−10
配列番号8:酸化亜鉛結合モチーフ
配列番号9:H−3領域導入配列
配列番号10:高親和性変異体H−3領域導入配列(3D2)
配列番号11:高親和性変異体H−3領域導入配列(3E2)
配列番号12:高親和性変異体H−3領域導入配列(4D4)
配列番号13:高親和性変異体H−3領域導入配列(4F2)
配列番号14:4F2の全アミノ酸配列
配列番号15:VHH1の全アミノ酸配列
配列番号16:VHH2の全アミノ酸配列
配列番号17:VHH3の全アミノ酸配列
配列番号18:図9のcAb BCII−10 CDR H−3配列(102−117位)
配列番号19:図9のcAb BCII−10 CDR H−3移植配列
配列番号20:金認識ペプチド
配列番号21〜38:プライマー
配列番号39:リンカー配列(Llama IgG2 upper hinge)
配列番号40〜55:プライマー
[配列表]

Claims (13)

  1. ラクダ抗体のCDR H-1領域にEAHVMHKを含むアミノ酸配列からなる酸化亜鉛認識ペプチドを含み、かつCDR H-3領域にHLGHGGHRLH、HLGHGGHGLH、HVGHGLHGVR、又はHLGHGLHRVHからなるペプチドを含むペプチド移植抗体らなる、酸化亜鉛結合性抗体。
  2. 酸化亜鉛との解離平衡定数Kdが1.7x10-7[M]より小さいことを特徴とする、請求項に記載の酸化亜鉛結合性抗体。
  3. 酸化亜鉛との解離平衡定数Kdが9.5x10-9[M]より小さいことを特徴とする、請求項に記載の酸化亜鉛結合性抗体。
  4. 前記酸化亜鉛認識ペプチドがEAHVMHKVAPRPである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化亜鉛結合性抗体。
  5. ラクダ抗体のCDR H-1領域にEAHVMHKVAPRPからなる酸化亜鉛認識ペプチドを含み、かつ、CDR H-3領域にHLGHGLHRVHからなるペプチドを含む、酸化亜鉛結合性抗体。
  6. 前記ラクダ抗体が、CDR間のジスルフィド結合を有しないものである、請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化亜鉛結合性抗体。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化亜鉛結合性抗体をコードする遺伝子を含み、該遺伝子によってコードされるタンパク質を発現しうる発現ベクター。
  8. 配列番号14に示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子を含み、該アミノ酸配列からなるタンパク質を発現しうる請求項に記載の発現ベクター。
  9. 請求項7又は8に記載の発現ベクターを導入した宿主細胞を培養し、その培養物から酸化亜鉛結合性抗体を取得することを特徴とする、酸化亜鉛結合性抗体の製造方法。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化亜鉛結合性抗体を固定した酸化亜鉛層を含む固相支持体。
  11. 請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化亜鉛結合性抗体を固定した酸化亜鉛層を含む固相支持体と、前記抗体を介した分子間相互作用を検出する手段を有するバイオセンサ。
  12. 請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化亜鉛結合性抗体に、第2のタンパク質を融合させた融合タンパク質。
  13. 前記第2のタンパク質が、LKAHLPPSRLPSの配列を有する金認識ペプチドを含むものである、請求項12に記載の融合タンパク質。
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