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JP2005204609A - 有機物固定化用キット、有機物固定化構造体及びその製造方法 - Google Patents

有機物固定化用キット、有機物固定化構造体及びその製造方法 Download PDF

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JP2005204609A JP2004016858A JP2004016858A JP2005204609A JP 2005204609 A JP2005204609 A JP 2005204609A JP 2004016858 A JP2004016858 A JP 2004016858A JP 2004016858 A JP2004016858 A JP 2004016858A JP 2005204609 A JP2005204609 A JP 2005204609A
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和宏 藩
Hidenori Shiozuka
秀則 塩塚
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剛士 今村
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Abstract

【課題】 有機物、特には、生体物質を基材の表面に固定化する際、その有機物、特には、生体物質が有する生理的機能の発揮に適する配向で、基材の表面に安定に有機物の固定化が可能な新規な固定化手段を採用する有機物固定化構造体と、その新規な固定化手段を利用する作製方法の提供。
【解決手段】 基体表面の少なくとも一部は、酸化アルミニウムを含む一以上の部材によって構成される面とした上で、基体表面への有機物の固定化は、前記有機物に連結される、少なくとも一以上のアミノ酸からなる酸化珪素に親和性を有するペプチドを含んでなる結合ドメインを介して、基体表面に対して、前記結合ドメインの少なくとも一部が結合することによってなされている有機物固定化構造体とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、少なくとも一部に酸化アルミニウム層を有する基体表面に有機物を固定化してなる有機物固定化基体、ならびにその製造方法、更には、前記有機物の固定化に利用される、酸化アルミニウムを含む層に親和性のあるペプチドと前記親和性ペプチドをコードするDNAに関する。より具体的には、基体上に固定した生体物質を利用する標的物質検出素子や標的物質変換素子、標的物質分離素子、タンパク質立体構造最適化素子への応用が可能な、生体物質固定化基体、ならびにその製造方法に関する。
DNA、RNAといった遺伝子を含む核酸分子、酵素や抗体といった生体物質の有する分子認識能、物質変換能を利用した、所謂バイオセンサー、バイオリアクタに関し、その広範な応用を目的として、多くの研究開発が行われてきた。
バイオセンサーに関しては、環境汚染物質の問題や社会的安全性、更には、健康に対する関心の高まりと共に、例えば、多様な検出対象への適用を目標とする、更なる技術開発の要求が高まっている。また、バイオリアクタに関しても、最近、環境にやさしいクリーンなプロセス技術として高い注目を集めており、例えば、種々なバイオプロセスを利用する産物の生産法開発等、一層の技術開発の要求が高まっている。
具体的には、バイオセンサーに関しては、上記のように、各生体物質分子が有する分子認識の選択性を利用する検出装置の開発が広く行われている。例えば、デオキシリボ核酸(以下、DNAと記す)鎖間における、塩基配列依存の相補的水素結合(相補鎖間のハイブリダイズ反応)を利用したDNAセンサーチップ、あるいは、タンパク質分子と低分子間またはタンパク質分子同士などの特異的な結合能に由来する分子認識能、例えば、抗原抗体反応を利用して、血液中に溶出する疾病マーカー等を検出する抗体センサー、さらには、糖尿病患者のためのグルコースセンサーに代表される、酸化還元酵素や加水分解酵素を利用して、基質物質の濃度を検出する酵素センサー等のバイオセンサーを初めとする、各種の検出手法に基づく検出装置の開発が挙げられる。
現在は、これら生体物質を応用するバイオセンサーでは、利用されるDNAなどの核酸分子や、抗体・酵素等のタンパク質などの生体物質を、基板または担体などの基体表面に固定化して、生体物質固定化基体の形態で使用する方式をとるものが一般的である。
また、昨今開発が進められているバイオセンサーに要求される性能品質の一つに、μ−TASに代表される、「高感度且つ小型化」が挙げられる。この「高感度且つ小型化」の目標を達成するためには、如何にして、微小な反応場または検出場の空間を有効に利用するとともに、感度を上げるかが重要な技術課題となる。
例えば、基板上に生体物質を固定化している検出場において、目的とする被検出物の特異的な結合に加えて、被検出物以外の生体物質の非特異な吸着が多く生じる可能性、あるいは、被検出物自体が非特異的に基板上に吸着する可能性があり、これら非特異な吸着現象は、バイオセンサーのSignal/Noise比を低下させる要因の一つとなる。特に、検出場が微小になるほど、目的とする被検出物の特異的な結合の総量自体、少なくなるため、非特異な吸着に起因するノイズの影響を受けやすく、高感度な測定を難しくする。また、微量なサンプルを有効に活用する観点でも、被検出物の非特異的吸着が多いと、十分高い確度で測定を行うことが困難となり、非特異な吸着現象を低減、抑制することが、今後、改善すべき大きな技術的な課題となってくる。
一方、バイオリアクタに関しては、目的産物の産生能を有する微生物自体を利用する手法に代えて、主にタンパク質の一種である酵素の位置選択的触媒機能を利用して、アミノ酸等の食品添加物、医薬候補物質や抗生物質を酵素反応により生産する手法、さらには、酵素反応を、化学品やポリマー材料の生産へと応用する検討もなされてきている。この様な酵素反応を利用するバイオリアクタの開発においても、少量多品種生産に適する装置の開発が主流となってきている点、例えば、コンビナトリアル・ケミストリー手法による候補物質のスクリーニング技術の普及に伴い、前記バイオセンサーと同様に反応に利用する酵素タンパク質を固定化した装置によって、個々のバイオリアクタの小型化(すなわち、多品種少量生産)へのニーズが高まってきている。
また、このようなバイオセンサー及びバイオリアクタに利用される生体物質固定化基材用の基材、基板・担体の材料としては、一般的に、固定化する有機物、例えば、生体物質の種類・用途に応じて、有機ポリマー、ガラス、セラミクス、金属基板等、既知の材料から適宜選択して用いられている。
上記基板表面に、生体物質、特にタンパク質等を固定化する方法としては、例えば、タンパク質溶液中に浸漬する、またはタンパク質溶液を塗布する手段を用いて、基板表面にタンパク質溶液の塗布層を形成した後、前記塗布層に含有される溶媒を除去・乾燥することで、物理吸着によってタンパク質を基板表面上に固定化する物理吸着的に固定化する手法や、反応性官能基を基板表面またはタンパク質分子に化学修飾を施した後に、導入される反応性官能基間の反応を利用して、化学結合を形成することによって、基板表面にタンパク質分子を化学結合的に固定化する手法等が、基板表面への生体物質の固定化手段として、現在まで知られている。 物理吸着による固定化法の一例として、特開平06−003317号公報には、導電性基板の表面上に有機電荷移動錯体層を形成し、次いで、この有機電荷移動層上にタンパク質溶液を塗布した後乾燥させることで、有機電荷移動層を介して基板表面に酵素タンパク質を物理的吸着・固定化する手法を適用した酵素電極の作製方法が開示されている。
化学結合を用いた固定化法の一例として、Sensor and Actuators B 15−16 p127 (1993)には、白金蒸着したシリコン基板表面に、アミン系シランカップリング剤処理を施した後、グルタルアルデヒド等架橋剤を用いて、前記アミノ・シランカップリング由来のアミノ基と、ペプチド鎖との間を化学的結合により連結して、固定化する方法が開示されている。その他に、ガラス基板上に抗体を固定化してなるバイオセンサー等の検出装置を作製する際にも、ガラス基板の表面にシランカップリング剤処理によって反応性官能基を導入し、同様に架橋剤を用いて、化学的結合を介してペプチド鎖を固定化する方法が適用されている。
しかしながら、上記物理吸着的や化学架橋による化学的な固定化法にでは、基板との吸着及び結合に係わるタンパク質の部位は無作為に選択される。
そのため、前記タンパク質に要求される結合能や、前記タンパク質の酵素活性等に、直接的に関与する部位、もしく間接的に関係している部位が、基板表面への結合にも関与する部位となると、基板上に結合した際、タンパク質の所望の機能が著しく低下することが懸念される。
従って、基板表面への結合に関与する、被固定化分子側の固定化部位を予め設定する手段、例えば、基板表面上に固定化される生体物質の配向性を予め制御することが可能な技術開発が重要となっている。
加えて、「高感度且つ小型化」を達成する際には、基材表面の微小な領域において、生体物質を高集積化して、固定化することが必要となる。
生体物質を高集積化して固定化する方法の一例として、比表面積が大きい基材、例えば、ナノレベルの規則的な細孔構造を有する多孔体を基板として採用し、比表面積の大きな細孔構造を具える表面に生体物質を固定化する手法が、一般的に知られている。前記用途に利用可能なナノメートル・オーダーのスケールで、規則性を有する細孔構造を形成する従来の方法として、ポリマーメンブレン・フィルタ−や、ポーラス・ガラス、陽極酸化アルミニウム膜等がよく知られている。特に、陽極酸化アルミニウム膜については、酸化時の電圧によって孔径が制御でき、nmオーダーの任意の孔径を持つ膜を作製することができる。
このような多孔体を基板とすることで、微小な領域においても、高感度の検出に十分な量の生体物質が固定化されている反応場を作製することができる。
このような多孔質基材を基板として利用する方法、特に、陽極酸化アルミニウム膜に対して、タンパク質等の生体物質を固定化する方法の従来例として、下記する手法を挙げることができる。
アミノ・シランカップリング剤で表面処理したのち、架橋剤を利用して、タンパク質を共有結合的に結合する手法の一例として、特許第3208390号公報には、サンドイッチ・イムノアッセイを高感度に実施するために、市販の酸化アルミニウム膜を基板とし、その表面に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)処理を施し、更に、架橋剤としてグルタルアルデヒドを用いて、抗ヒト絨毛性ゴナドトロピンマウスモノクローナル抗体を共有結合により、上記基板表面上に固定化させる方法が開示されている(特許文献2を参照)。
また、有機物とペプチドとの分子間結合を利用する手法の一例として、特表2002−520618号公報には、酸化アルミニウム膜上にタンパク質を結合させるための有機薄膜を配し、前記薄膜を構成する有機物に対する親和性を有するペプチド鎖を融合させたタンパク質を固定化する方法が開示されている(特許文献3を参照)。
特開平06−003317号公報 特許第3208390号公報 特表2002−520618号公報
上述した比表面積が大きい基材、例えば、ナノレベルの規則的な細孔構造を有する多孔体を基板として採用することで、基板表面により多くの生体物質を固定化することは可能であるが、上記基板上に固定化される生体物質が、例えば、検出する対象物質との結合に適する配向をとっていない場合、固定化されている生体物質の量に見合った検出感度を達成することができない。また、作用すべき基質物質に対して、適正な配向をとっていない場合、固定化されている生体物質の量に見合った、反応性を達成することができない。すなわち、基板上に固定化される生体物質は、その用途に適する配向性を制御した上で、固定化が達成されていないと、比表面積の大きい基材を利用して、基板表面により多くの生体物質を固定化することに伴う利点が十分に発揮されないものとなる。
換言するならば、基板上に固定化される生体物質が、その用途に適する配向性を制御した上で、固定化が達成されていないと、所望の検出感度、あるいは、反応性を得るためには、基板上に固定化される生体物質の量を更に増すことが必要となり、基板の単位面積当たりに過剰な量の生体物質を固定化する、あるいは、生体物質を固定化する基板の面積を過度に広くするなどの対応を余儀なくされることになる。生体物質を固定化する基板の面積を過度に広くすると、装置自体の小型化を図る上で、大きな障害となる。
更には、その調製にコストを要する生体物質材料の場合にはその使用量が増すと、装置全体として、コストアップの要因となる。更に加えて、有機物を基板へ結合させるために新たな接着層(固定化する有機物と異なる別の構成を基板と有機物の間に設けられた層)を設ける手法は、必要な工程が増え装置コスト低減する上においても大きな障害となる。
また、前記ナノレベルの細孔構造体の細孔部内壁表面にも、接着層を洩れなく設けることは高い技術を要する。細孔内の接着層形成が不十分であると、細孔構造体による比表面積増大効果を十分に発揮することができない。
このような問題に対して、接着層を介した物理吸着や、架橋剤を用いた非特異的な修飾により基板と化学結合させることで生体物質材料を固定化する公知技術は十分に対応できていないのが現状である。
従って、基板と前記基板表面にその所望の機能が発揮されるように分子配向性を制御されて固定化された有機物からなる構造体、及びそのような有機物の基板表面の固定化を可能とする簡便な固定化手法の提供が望まれている。
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明は、バイオセンサーやバイオリアクタなどで利用される、有機物、特には、生体物質を基材の表面に固定化する際、その有機物、特には、生体物質が有する生理的機能の発揮に適する配向で、基材の表面に安定に有機物の固定化が可能な新規な固定化手段を採用する有機物固定化構造体と、その新規な固定化手段を利用する作製方法を提供することにある。加えて、本発明は、前記新規な固定化手段として利用可能な酸化アルミニウムを含む層に親和性のあるペプチドと前記ペプチドをコードするDNA、前記有機物と前記酸化アルミニウム親和性ペプチドを含む結合ドメインの融合体を提供するための発現用ベクターを提供するものである。また、有機物と結合ドメインとの融合体を提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、基材の表面に対して、有機物、特には、生体物質を固定化する際、利用可能な新たな固定化手段を検討したところ、固定化した有機物、特には、生体物質が、その本来の生理的機能を十分に発揮する上では、固定化に利用される部位を有機物の本体部とは別に設け、加えて、前記固定化に利用される部位における基材の表面との結合には、化学的試薬を利用する手法ではなく、かかる固定化に利用される部位に特異的な、物理的な相互作用を利用する手法を選択すると、有機物、特には、生体物質が有する生理的機能の発揮に適する配向で、基材の表面に安定に有機物の固定化が可能となることを見出した。
さらに、前記固定化に利用される部位に特異的な、物理的な相互作用を利用する手法として、固定化すべき表面の材質として、酸化アルミニウムを含む部材を利用すると、酸化アルミニウムに対して親和性を有するペプチドを選別することが可能であり、この酸化アルミニウムに対して親和性を有するペプチドを含む結合ドメインを、有機物、特には、生体物質からなる機能ドメインと連結した融合体の形態とすると、酸化アルミニウムを含む部材で構成される表面を有する基材に対して、表面の酸化アルミニウムと、酸化アルミニウムに対して親和性を有するペプチドを含む結合ドメインとの間における物理的な相互作用を介して、有機物、特には、生体物質を、それが有する生理的機能の発揮に適する配向で、高い再現性と安定性で固定化が可能であることを確認した。
本発明は、これらの知見に基づき、完成されたものである。
すなわち、本発明にかかる有機物固定化構造体は、
基体の表面に有機物が固定化された構造体であって、
前記表面の少なくとも一部に酸化アルミニウムを含む基体と、
前記酸化アルミニウムに対して結合能を有し、且つ前記有機物と連結されている、前記基体に前記有機物を固定化するための結合ドメインとを有し、
前記結合ドメインは、少なくとも1つ以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでおり、前記ペプチドが前記酸化アルミニウムに特異的に結合することにより、前記有機物が前記結合ドメインを介して前記基体の表面に固定化されている
ことを特徴とする構造体である。
本発明にかかる有機物固定化構造体において、
前記有機物として、標的物質を補足するための捕捉分子を用いることができる。あるいは、前記有機物として、物質を変換するための機能を有する分子を用いることができる。
また、本発明は、上記の有機物固定化構造体を作製する方法の発明をも提供し、
すなわち、本発明にかかる有機物固定化構造体の製造方法は、
基体に有機物が固定化された構造体の製造方法であって、
表面の少なくとも一部に酸化アルミニウムを含む基体と、前記酸化アルミニウムに対して結合能を有し、且つ前記有機物と連結されている結合ドメインとからなる、有機物−結合ドメイン融合体とを用意する工程と、
前記融合体を前記基体の表面に接触させることにより、前記結合ドメインが有する前記酸化アルミニウムに対して結合能を有するペプチドが前記酸化アルミニウムに特異的に結合し、前記有機物を前記基体に固定化する工程を有する
ことを特徴とする、構造体の製造方法である。
その際、前記有機物は、タンパク質を含んでなる生体物質であり、
前記タンパク質のアミノ酸配列と前記結合ドメインに含まれるアミノ酸配列とを連結してコードするように連結されてなる塩基配列を有する連結遺伝子に基づき、前記結合ドメインに含まれるペプチド部分を前記生体物質に含まれるタンパク質に連結してなる融合体型タンパク質を発現させることにより、前記有機物−結合ドメイン融合体を得る工程を更に有する
ことを特徴とする製造方法とすることができる。
一方、本発明にかかる有機物固定化構造体における特徴である、酸化アルミニウムに対して結合能を有するペプチドは、
下記配列番号1〜32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列、もしくはそれらアミノ酸配列を2以上含んでなる複合アミノ酸配列、またはそれらアミノ酸配列の繰り返し配列、のいずれかを含んでなり、
前記アミノ酸配列は、酸化アルミニウムに対する親和性を有する
ことを特徴とするペプチドである。
Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg (配列番号:1)
Gln-Ser-Ser-Ile-Thr-Thr-Arg-Asn-Pro-Phe-Met-Thr (配列番号:2)
Phe-Met-Asn-His-His-Pro-Asn-Ser-Gln-Gln-Tyr-His (配列番号:3)
Gln-Tyr-Thr-Ser-Ser-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Ser-Ala (配列番号:4)
His-His-His-Pro-Glu-Asn-Leu-Asp-Ser-Thr-Phe-Gln (配列番号:5)
Gln-Pro-His-Met-His-Arg-Ser-Ser-His-Gln-Asp-Gly (配列番号:6)
Asn-Thr-Thr-Met-Gly-Pro-Met-Ser-Pro-His-Ser-Gln (配列番号:7)
Ala-Ala-His-Phe-Glu-Pro-Gln-Thr-Met-Pro-Met-Ile (配列番号:8)
Asp-His-Gln-Leu-His-Arg-Pro-Pro-His-Met-Met-Arg (配列番号:9)
Val-Ser-Arg-His-Gln-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:10)
Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Asn-Ala-Gln (配列番号:11)
Val-Thr-Leu-His-Thr-Val-Asp-His-Ala-Pro-Gln-Asp (配列番号:12)
Ser-Val-Ser-Val-Gly-Met-Lys-Pro-Ser-Pro-Arg-Pro (配列番号:13)
His-Leu-Gln-Ser-Met-Lys-Pro-Arg-Thr-His-Val-Leu (配列番号:14)
Ile-Pro-Asn-Ala-Glu-Thr-Leu-Arg-Gln-Pro-Ala-Arg (配列番号:15)
Val-Gly-Val-Ile-Ser-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:16)
Thr-Val-Pro-Ile-Tyr-Asn-Thr-Gly-Ile-Leu-Pro-Thr (配列番号:17)
Tyr-Thr-Met-His-His-Gly-Ser-Thr-Phe-Met-Arg-Arg (配列番号:18)
Ser-Met-Met-His-Val-Asn-Ile-Arg-Leu-Gly-Ile-Leu (配列番号:19)
Ala-Pro-Met-His-His-Met-Lys-Ser-Leu-Tyr-Arg-Ala (配列番号:20)
Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Met-Arg-Arg (配列番号:21)
Met-Lys-Thr-His-His-Gly-Asn-Asn-Ala-Val-Phe-Leu (配列番号:22)
Leu-Glu-Pro-Leu-Pro-His-Thr-Pro-Arg-Met-Tyr-Ala (配列番号:23)
Gln-Leu-Tyr-Glu-Pro-Asp-Ser-Gly-Pro-Trp-Ala-Pro (配列番号:24)
Trp-Met-Thr-Lys-Met-Pro-Thr-Thr-His-Thr-Arg-Tyr (配列番号:25)
His-His-Pro-Met-Tyr-Ser-Met-Thr-Arg-Ala-Leu-Pro (配列番号:26)
Gly-Ser-Ala-His-Ser-Arg-Asn-Asp-Ala-Ala-Pro-Val (配列番号:27)
His-Ser-Pro-Leu-Met-Gln-Tyr-His-Met-Ser-Gly-Thr (配列番号:28)
Thr-Ala-His-Met-Thr-Met-Pro-Ser-Arg-Phe-Leu-Pro (配列番号:29)
Ala-Cys-Pro-Pro-Thr-Gln-Ser-Arg-Tyr-Cys (配列番号:30)
Ala-Cys-Asn-Gly-Met-Leu-Ala-Phe-Gln-Cys (配列番号:31)
Ala-Cys-Thr-Pro-Lys-Pro-Gly-Lys-His-Cys (配列番号:32)
同時に、本発明は、前記有機物固定化構造体の製造方法において、融合体型タンパク質の一部として、上記の酸化アルミニウムに対して結合能を有するペプチド鎖を作製する際に利用するDNA分子をも提供し、
すなわち、本発明にかかる酸化アルミニウムに対して結合能を有するペプチド鎖をコードするDNA分子は、
ペプチド鎖をコードするDNA分子であって、
前記ペプチド鎖は、
上記配列番号1〜32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列、もしくはそれらアミノ酸配列を2以上含んでなる複合アミノ酸配列、またはそれらアミノ酸配列の繰り返し配列、のいずれかを含んでなり、
前記アミノ酸配列は、酸化アルミニウムに対する親和性を有する
ことを特徴とするDNA分子である。
また、本発明は、前記有機物固定化構造体の製造方法において、上記の酸化アルミニウムに対して結合能を有するペプチド鎖を内在する融合体型タンパク質の発現に利用する発現用ベクターをも併せて提供し、
すなわち、本発明にかかる発現用ベクターは、
少なくとも一部にタンパク質を含む有機物と、
少なくとも、1つ以上のアミノ酸からなる酸化アルミニウムに親和性を有するペプチドを含み、且つ前記酸化アルミニウムに対して結合能を有する結合ドメインであり、且つ前記酸化アルミニウムに親和性を有するペプチドは、上記配列番号1〜32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列、もしくはそれらアミノ酸配列を2以上含んでなる複合アミノ酸配列、またはそれらアミノ酸配列の繰り返し配列、のいずれかを含んでなり、前記有機物と連結されている前記結合ドメインとからなる、有機物−結合ドメイン融合体について、
前記有機物−結合ドメイン融合体を構成している、前記タンパク質のアミノ酸配列と前記結合ドメインに含まれるアミノ酸配列とを連結してコードするように連結されてなる塩基配列を有する連結遺伝子に基づき、前記結合ドメインに含まれるペプチド部分を前記生体物質に含まれるタンパク質に連結してなる融合体型タンパク質を宿主細胞内で発現させることができる、前記連結遺伝子を含んでなる
ことを特徴とする発現用ベクターである。
従って、本発明にかかる発現用ベクターは、例えば、プラスミド、ファージミド、コスミドといった、宿主細胞への遺伝子導入による形質転換、タンパク質発現等の分子生物学的操作に用いられる各種ベクター中に、上記有機物−結合ドメイン融合体を構成するペプチド鎖のうち、少なくとも、融合体型タンパク質のアミノ酸配列コードされたDNAを挿入してなる発現用ベクターとすることができる。
さらには、本発明は、上述する本発明にかかる有機物固定化構造体の製造に専ら使用する目的で、有機物固定化構造体作製用のキットの発明をも提供し、
すなわち、本発明にかかる有機物固定化構造体作製用のキットは、
基体に有機物を固定化するためのキットであって、
前記キットは、
表面の少なくとも一部に酸化アルミニウムを含む基体と、
前記酸化アルミニウムに対して結合能を有し、且つ前記有機物と連結されている、前記基体に前記有機物を固定化するための結合ドメインとを有し、
前記結合ドメインは、少なくとも、1つ以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでおり、前記基体と前記結合ドメインを接触させたときに、前記ペプチドが前記酸化アルミニウムと特異的に結合することにより前記有機物が前記基体に固定化される
ことを特徴とするキットである。
また、有機物と、酸化アルミニウムに対して結合能を有する結合ドメインとを含む有機物−結合ドメイン融合体であって、前記結合ドメインは、少なくとも1つ以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでおり、前記ペプチドは、上記配列番号1〜32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列、もしくはそれらアミノ酸配列を2以上含んでなる複合アミノ酸配列、またはそれらアミノ酸配列の繰り返し配列のいずれかを含んでいることを特徴とする有機物−結合ドメイン融合体である。
本発明にかかる有機物固定化構造体、例えば、有機物を固定化した基板においては、固定がなされる基板表面として、酸化アルミニウム層を設け、一方、固定する有機物は、有機物自体を機能ドメインとして、前記酸化アルミニウム層に対する結合能を有する一以上のアミノ酸から構成されるペプチドからなる結合ドメインを、この機能ドメインに連結した構成とすることにより、機能ドメインである有機物は、基板表面と直接接触することなく、連結されている結合ドメインの酸化アルミニウム結合能による選択的に基板表面への固定が可能となっている。この独立に設けられている結合ドメインを介して、基板表面に固定化することで、有機物は、その本来の機能に対する固定化の影響は及ばず、また、固定化に際して、なんら試薬を利用していないため、前記有機物の所望の機能に影響を及ぼす化学反応を被ることもない。
本発明にかかる有機物固定化構造体は、結合ドメインに含まれるペプチドのアミノ酸配列を本発明の酸化アルミ親和性ペプチドから適宜選択することにより、固定対象の有機物、特には、生体物質が有する機能が、本来の機能水準と全く遜色のない融合体とすることができ、多様な固定対象の有機物への利用が可能である。更には、固定化する有機物の機能を選択して用いることにより、本発明の有機物固定化構造体は、より優れた標的物質捕捉素子、標的物質変換素子、標的物質分離素子、タンパク質立体構造最適化素子に適用することができる。
本発明にかかる有機物固定化構造体は、
基体の表面上に有機物を固定化してなる構造体であって、
表面の少なくとも一部が、酸化アルミニウムを含んでなる基体と、
前記基体表面に対して、少なくとも一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメインを介して固定化された有機物
とを含むことを特徴とする、有機物固定化構造体である。特に、結合ドメイン中に含まれる前記ペプチドは、前記酸化アルミニウムに対して結合能を有するアミノ酸配列を含んでなるペプチドであることを特徴とする。
一方、前記有機物は、生体物質を含み、更には、かかる生体物質中には、タンパク質あるいはその一部を含む。その際、前記生体物質と結合ドメインとの連結部において、
前記結合ドメイン中の前記酸化アルミニウムに対して結合能を有するアミノ酸配列を含んでなるペプチドと前記生体物質の間には、一以上のアミノ酸からなるリンカーが含まれていてもよい。
結合ドメイン中の前記酸化アルミニウムに対して結合能を有するアミノ酸配列を含んでなるペプチドは、例えば、
下記配列番号:1〜配列番号:32
Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg (配列番号:1)
Gln-Ser-Ser-Ile-Thr-Thr-Arg-Asn-Pro-Phe-Met-Thr (配列番号:2)
Phe-Met-Asn-His-His-Pro-Asn-Ser-Gln-Gln-Tyr-His (配列番号:3)
Gln-Tyr-Thr-Ser-Ser-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Ser-Ala (配列番号:4)
His-His-His-Pro-Glu-Asn-Leu-Asp-Ser-Thr-Phe-Gln (配列番号:5)
Gln-Pro-His-Met-His-Arg-Ser-Ser-His-Gln-Asp-Gly (配列番号:6)
Asn-Thr-Thr-Met-Gly-Pro-Met-Ser-Pro-His-Ser-Gln (配列番号:7)
Ala-Ala-His-Phe-Glu-Pro-Gln-Thr-Met-Pro-Met-Ile (配列番号:8)
Asp-His-Gln-Leu-His-Arg-Pro-Pro-His-Met-Met-Arg (配列番号:9)
Val-Ser-Arg-His-Gln-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:10)
Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Asn-Ala-Gln (配列番号:11)
Val-Thr-Leu-His-Thr-Val-Asp-His-Ala-Pro-Gln-Asp (配列番号:12)
Ser-Val-Ser-Val-Gly-Met-Lys-Pro-Ser-Pro-Arg-Pro (配列番号:13)
His-Leu-Gln-Ser-Met-Lys-Pro-Arg-Thr-His-Val-Leu (配列番号:14)
Ile-Pro-Asn-Ala-Glu-Thr-Leu-Arg-Gln-Pro-Ala-Arg (配列番号:15)
Val-Gly-Val-Ile-Ser-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:16)
Thr-Val-Pro-Ile-Tyr-Asn-Thr-Gly-Ile-Leu-Pro-Thr (配列番号:17)
Tyr-Thr-Met-His-His-Gly-Ser-Thr-Phe-Met-Arg-Arg (配列番号:18)
Ser-Met-Met-His-Val-Asn-Ile-Arg-Leu-Gly-Ile-Leu (配列番号:19)
Ala-Pro-Met-His-His-Met-Lys-Ser-Leu-Tyr-Arg-Ala (配列番号:20)
Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Met-Arg-Arg (配列番号:21)
Met-Lys-Thr-His-His-Gly-Asn-Asn-Ala-Val-Phe-Leu (配列番号:22)
Leu-Glu-Pro-Leu-Pro-His-Thr-Pro-Arg-Met-Tyr-Ala (配列番号:23)
Gln-Leu-Tyr-Glu-Pro-Asp-Ser-Gly-Pro-Trp-Ala-Pro (配列番号:24)
Trp-Met-Thr-Lys-Met-Pro-Thr-Thr-His-Thr-Arg-Tyr (配列番号:25)
His-His-Pro-Met-Tyr-Ser-Met-Thr-Arg-Ala-Leu-Pro (配列番号:26)
Gly-Ser-Ala-His-Ser-Arg-Asn-Asp-Ala-Ala-Pro-Val (配列番号:27)
His-Ser-Pro-Leu-Met-Gln-Tyr-His-Met-Ser-Gly-Thr (配列番号:28)
Thr-Ala-His-Met-Thr-Met-Pro-Ser-Arg-Phe-Leu-Pro (配列番号:29)
Ala-Cys-Pro-Pro-Thr-Gln-Ser-Arg-Tyr-Cys (配列番号:30)
Ala-Cys-Asn-Gly-Met-Leu-Ala-Phe-Gln-Cys (配列番号:31)
Ala-Cys-Thr-Pro-Lys-Pro-Gly-Lys-His-Cys (配列番号:32)
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される、少なくとも1つのアミノ酸配列の全部、またはその一部を含むアミノ酸配列を含んでなるペプチド、
もしくはそれらアミノ酸配列の繰り返し構造をもつペプチド、
またはそれらアミノ酸配列からなる複合体を含んでなるペプチド、
更には、前記ペプチドが前記アミン酸配列番号30〜32のいずれかの配列を一以上含み、前記配列で分子内シスルフィド結合により環状構造を形成してもよい。
すなわち、本発明にかかる有機物固定化構造体では、
表面の少なくとも一部が、酸化アルミニウムを含んでなる基体の表面上に、有機物を固定化する際、前記酸化アルミニウムに対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド含む結合ドメインを設計し、所望の有機物に対して、前記結合ドメインを予め結合してなる有機物−結合ドメイン融合体とすることで、この酸化アルミニウムに対する結合能を有する前記結合ドメイン部を介して、特異的に有機物−結合ドメイン融合体を酸化アルミニウムを含む基板表面に対して固定化する手法を用いている。
従って、前記結合ドメインを予め結合してなる有機物−結合ドメイン融合体において、前記有機物が生体物質の場合、生体物質−結合ドメイン融合体を、酸化アルミニウムを含む部材表面に固定化する際、生体物質の機能(分子認識能や触媒能)に対して、影響を及ぼす試薬等を利用する化学的な反応を利用していないので、固定化される生体物質は、その機能を十分発揮できる状態に保持されたものとなる。
加えて、基材表面に利用する酸化アルミニウム部材に応じて、スクリーニングによって、予め所望の結合能を有するアミノ酸配列を選別することができ、また、対象とする生体物質に応じて、生体物質と予め結合させる結合ドメインの結合形態と、結合ドメイン中に含まれる酸化アルミニウムに対する結合能を示すアミノ酸配列とを最適化する設計ができるので、本発明にかかる有機物固定化構造体は、利用する酸化アルミニウム、対象とする有機物、特に生体物質の双方ともに、広範囲に適用することが可能である。
また、本発明にかかる有機物固定化構造体の製造方法は、
表面の少なくとも一部が、酸化アルミニウムを含んでなる基体と、
前記基体表面に対して、少なくとも一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメインを介して固定化された有機物と
を含むことを特徴とする、有機物固定化構造体を製造する方法であって、
(1)前記結合ドメインを前記有機物に連結してなる構成の有機物−結合ドメイン融合体を作製する工程、及び
(2)前記有機物−結合ドメイン融合体を前記基体の表面に接触させ、前記有機物−結合ドメイン融合体中に含まれる結合ドメインの少なくとも一部を、前記基体表面に結合させて、前記結合ドメインを介して、基体の表面に前記有機物の固定化を行う工程を含む
ことを特徴とする、有機物固定化構造体の製造方法である。
更には、前記有機物が、タンパク質を含んでなる生体物質であり、
前記(1)有機物−結合ドメイン融合体を作製する工程は、
前記生体物質に含まれるタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、
前記結合ドメインに含まれるペプチド部分のアミノ酸配列をコードする塩基配列とが、前記二つのアミノ酸配列を連結してコードするように、連結されてなる塩基配列を有する連結遺伝子に基づき、前記結合ドメインに含まれるペプチド部分を前記生体物質に含まれるタンパク質に連結してなる融合体型タンパク質を発現させる工程を含むことが好ましい。
更には、前記連結遺伝子が前記生体物質に含まれるタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、前記結合ドメインに含まれるペプチド部分のアミノ酸配列をコードする塩基配列との間に一以上のアミノ酸からなるリンカーをコードする塩基配列が、前記二つのアミノ酸配列を連結してコードするように、連結されてなる塩基配列を有することを特徴とする製造方法である。
なお、本発明による有機物固定化構造体は、用いる有機物の選択に応じて、標的物質捕捉素子、標的物質検出素子、物質変換素子、あるいは、標的物質分離素子の何れか、またはそれら素子全てにおいて利用可能な構成材料となる。
加えて、本発明では、上述する本発明にかかる有機物固定化構造体の構成に利用される結合ドメインに含まれるペプチドが有する、特定のアミノ酸配列の発明をも利用しており、すなわち、本発明にかかる酸化アルミニウム親和性ペプチドは、上記配列番号:1〜配列番号:32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される、少なくとも1つのアミノ酸配列の全部、またはその一部を含むアミノ酸配列、
もしくは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造、もしくは、それらアミノ酸配列の複合体を含んでなることを特徴とする酸化アルミニウム親和性ペプチドであってもよい。
更には、前記配列番号30〜32のいずれかのアミノ酸配列を一以上含むペプチドであって、含まれている前記アミノ酸配列30〜32のアミノ酸配列部が分子内ジスルフィド結合により環状構造を形成することを特徴とする酸化アルミニウム親和性ペプチドであってもよい。
さらには、本発明にかかるDNA分子は、上記配列番号:1〜配列番号:32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される、少なくとも1つのアミノ酸配列の全部、またはその一部を含むアミノ酸配列、
もしくは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造を含んでなる酸化アルミニウム親和性ペプチド鎖をコードするDNAを含むことを特徴とするDNA分子である。
本発明にかかるベクターは、上記配列番号:1〜配列番号:32
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される、少なくとも1つのアミノ酸配列の全部、またはその一部を含むアミノ酸配列、
もしくは、前記アミノ酸配列の繰り返し構造、またはそれらアミノ酸配列の複合体を含んでなるペプチドを含む前記結合ドメインと、少なくとも一部にタンパク質を含む有機物とを宿主細胞内で融合体として発現することができる発現ベクターであって
前記結合ドメインに含まれるペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列と、前記有機物に含まれるタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列とが、前記結合ドメインと前記有機物が連結してコードするように、連結されてなる塩基配列を有する連結遺伝子を含むことを特徴とする発現用ベクターである。
以下に、本発明の有機物固定化構造体の構成と、その作製にについて、より詳しく説明する。
本発明にかかる有機物固定化構造体では、基体表面に、少なくとも一部に、酸化アルミニウムが露出された領域を設けられている。この酸化アルミニウム露出領域において、前記有機物−結合ドメイン融合体中に、有機物に由来する機能ドメインとは独立して設けられている、少なくとも一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメインを介して固定化されている。
図1〜図3に、本発明にかかる有機物固定化構造体の実施形態の一例を模式的に示す。
図1に示す形態では、基材本体は、平板状の基板11であり、その表面に酸化アルミニウムを含む部材で構成される被覆層として、酸化アルミニウム層12を設けている。有機物の固定化は、この酸化アルミニウム層12の表面において、結合ドメイン15と選択的になされる。一方、この結合ドメイン15と連結されている機能ドメイン14に相当する有機物自体は、酸化アルミニウム層12に対して、非選択的な、弱い物理吸着が可能であっても、酸化アルミニウムに対して特異的に結合する結合ドメイン15部分がより優先的に結合する結果、かかる競争過程によって、機能ドメイン14に相当する有機物自体が基板表面に物理吸着を起こす頻度は低く、また非特異的な弱い物理吸着は固定化条件を選択することにより低減させることも可能である。
(基体)
基材本体、例えば、基板は、その表面に酸化アルミニウムを含む部材で構成される被覆層を設けることが可能であれば、従来公知の種々の材料からなる基板を、使用目的に応じて、適宜選択して用いることができる。具体的には、鉄、銅、金、銀、白金等の金属材料、ポリスチレン、メタクリル酸メチル共重合体(PMMA)、ポリカーボネート(PC)に代表される合成樹脂材料、シリコンなどの半導体材料、シリカ、サファイアなどの酸化物やセラミックス材料、あるいは、これら材料の二種以上を組み合わせた複合材料を用いて形成される基板から、適宜選択して用いることができる。
基体を、導電性材料または導電性材料を積層し複合材料とすることにより本発明の有機物近傍で起こる物理量または化学量の変化を電気的な手法より検出することも可能となる。または、基材を透光性材料とすることにより、本発明の有機物近傍で生じる変化を例えば屈折率変化等として光学的な手法により測定することも可能とある。
本発明の構造体を用いた検出素子、変換素子等の場合、上記のようなことを十分考慮の上基板を選択することがより望ましい。
(酸化アルミニウム層)
前記基材表面の少なくとも一部には、酸化アルミニウムの表層が露呈する形態とする。基材表面に設ける酸化アルミニウム層12の厚さを、ナノメートル・オーダーに選択する際には、薄膜形成により適しているCVD法などの気相堆積法を適用することが好ましい。
例えば、先ず、基体表面にアルミニウム層をCVD法により形成する。次いで、大気中、または加熱や電気化学的な手法により基材表面に形成したアルミニウム層の酸化を促し、酸化アルミニウム層を得ることができる。このような酸化アルミニウム層形成法を適用する場合、CVD法によるアルミニウム層の堆積過程や、加熱や電気的な手法による酸化過程において、基材自体の変性及び特性低下の生じない基材を選択する必要がある。
また、予め酸化アルミニウム材料粒子を形成し、基板材料の性質を鑑みて選択された分散溶媒中に懸濁し、酸化アルミニウム材料粒子の懸濁液を所定の膜厚塗布し、必要に応じて加熱して分散溶媒を除去することにより、粒子状酸化アルミニウムを含む層を形成することも可能である。
いずれの手法を用いる場合においても、形成される酸化アルミニウム層の熱膨張率と、基板の熱膨張率に大きな差異があると、加熱処理に際して、酸化アルミニウム層に機械的歪みが誘起され、形成した酸化アルミニウム層の剥落や反りを生じることもあり、この点をも考慮して、基板材料の選択とともに、酸化アルミニウム層の厚さを選択することが好ましい。
更には、酸化アルミニウム層12は、多孔体被膜構造とすると、多孔体は細孔を有し、比表面積が大きくなり、固定化に利用可能な延べ表面積を増すことができる。
また、平坦な基板上に有機物を固定化した場合に比べ、多孔体被膜構造とする際には、その細孔内部一つ一つ縮小された反応場と考えることができる。例えば、本発明の構造体を、標的物質捕捉素子、変換素子として利用する場合、細孔内部では、標的物質が本発明の構造体における固定化された有機物と結合するために必要とされる移動距離の平均を大幅に短縮でき、分子認識反応効率を向上する効果を示すことも期待できる。
更には、その孔径を選択することにより、標的物質とそれ以外の夾雑物質とを細孔径により選別することも可能である。
本発明においては、酸化アルミニウム層を多孔体とする場合、上記のような多孔体の特性を発揮できるように、更には、素子における用途に応じて、適合する孔径を適宜選択することが望ましい。また、酸化アルミニウム層の厚さも、その強度や基材と密着性を考慮するとともに、適応する素子等の要求特性に応じて、適正化することが好ましい。
酸化アルミニウム層を多孔体層とする方法としては、従来公知の方法から選択して用いることができる。例えば、陽極酸化法を用いて、多孔質性の酸化アルミニウム層を形成することが可能である。陽極酸化法を用いると、得られる酸化アルミニウム多孔体の細孔を、ナノオーダーのサイズに作製することが可能であり、その孔径の調整は、印加電圧等の酸化条件制御によって行うことが可能である。
図2と図3に、本発明の有機物固定化構造体における、酸化アルミニウム形状の例を概略断面図により示す。
図2は、基板材料上に設けられた酸化アルミニウム層多孔体例の概略断面図を示している。図3は、酸化アルミニウム多孔体薄膜例の概略断面図を示している。
(有機物)
本発明においては、基材表面に固定化される有機物は、作製される有機物固定化構造体の使用用途に応じて、適宜選択できる。少なくとも、一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメインと連結することが可能であれば、機能ドメインとして利用される有機物の種類は、特に制限はない。一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメインと連結することが可能な、種々の生体物質を、基材表面に固定化される有機物として選択することができる。本発明を適用可能な有機物として、選択可能な生体物質の例として、具体的には、核酸分子、アミノ酸、ペプチドまたはタンパク質、糖鎖および糖鎖−タンパク質複合体を挙げることができる。なかでも、より好ましくは、ペプチドまたはタンパク質、糖鎖および糖鎖−タンパク質複合体である。
ペプチドとしては、標的物質と特異的に結合することができる種々のペプチドやインスリンに代表されるペプチドホルモン等が挙げられる。
また、本発明を適用可能な有機物の選択可能なタンパク質分子の例として、酵素、抗体、レセプター分子、または足場タンパク質分子が挙げられる。酵素としては、従来公知の酵素を用いることができる。
例えば、本発明の有機物固定化構造体による、標的物質検出素子を考えた場合には、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ等が挙げられ、本発明の有機物固定化構造体による、標的物質変換素子を考えた場合には、原料となる物質を目的物質と変換できる酵素が好ましい。具体的には、アミノアシラーゼ、リパーゼ、ホスホジエステラーゼ等の従来既知の変換型酵素が挙げられる。また、分子シャペロンと呼ばれるGroELを始めとする種々のタンパク・リフォールディング介助タンパク質を固定化することも可能である。 本発明を適用可能な抗体分子としては、抗原物質を被検体動物に導入し、その免疫反応の結果産出される免疫抗体分子、さらには、前記免疫抗体の構造を部分的もしくは全体的に遺伝工学的に改変された組換え抗体分子など、種々の方法で採取される免疫グロブリン分子が挙げられる。
本発明に用いる抗体は、モノクロ−ナル抗体、またはポリクロ−ナル抗体であってもよい。これら抗体分子は、任意の免疫グロブリン・クラスに含まれ、例えば、ヒトIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEから選択できる。これらのクラスのなかでも、IgGクラスの抗体分子は、より好適に利用できる。
免疫グロブリン分子に加えて、抗体断片分子を利用することもでき、Fab、Fab’、F(ab’)2等が挙げられる。例えば、Fab断片分子は、抗体グロブリンのパパイン消化によって得られる抗体断片分子と、ほぼ同じ断片分子である。F(ab’)2は、抗体グロブリンのペプシン消化によって得られる抗体断片分子と、ほぼ同じ断片分子である。
これら抗体断片分子の調製は、抗体グロブリンを酵素的または化学的分解して作製する方法もあるが、多くは、遺伝子工学的に組み換え生産する方法も適用可能である。さらには、免疫グロブリン分子中の抗原認識部位である、可変領域部(Fv)を構成する重鎖部(VH)と軽鎖部(VL)とを、一方のカルボキシ末端と他方のアミノ末端数個のアミノ酸からなるペプチドを介して連結して、抗原認識能を具える、遺伝子工学的に組み換え生産された分子とされている、scFv(single chain Fv)を利用することもできる。
足場タンパク質とは、それ自体で標的物質を捕捉、変換、分離することができないが、そのような機能を有する物質、例えば酵素や抗体を結合することができるタンパク質や細胞接着性タンパク質などであり、種々の公知タンパク質から選択して用いることができる。
機能ドメイン14が上述するようなタンパク質で、宿主細胞を用いた組み換え体として生産可能な場合、それと連結される一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメイン15とは、両者のペプチド鎖が一連に連結された融合タンパク質の形態とすることができる。その際、機能ドメイン14部と、結合ドメイン15部との間に、適当なアミノ酸残基数からなるリンカー配列を挿入することもできる。
一方、本発明を適用する有機物が、その配列が未知なタンパク質や核酸分子、糖鎖の場合には、この生体物質、ペプチド構造を含む結合ドメイン、あるいは、双方に対して、その機能に重大な影響を及ぼさない範囲で、両者の連結に利用される反応性官能基の導入等の化学的修飾・変換を予め施した上で、両者間を化学結合によって連結した複合体を作製することができる。具体的には、両者の連結に利用される反応性官能基として、マレイミド基とスルファニル基(−SH)、スクシイミド基とアミノ基、イソシアネート基とアミノ基、ハロゲンとヒドロキシ基、ハロゲンとスルファニル基(−SH)、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とスルファニル基(−SH)の組み合わせになるように、生体物質、ペプチド構造を含む結合ドメイン、あるいは、双方に、予め化学的修飾・変換を施した後に、前記の官能基間で化学的な結合を形成させることで、生体物質−ペプチド構造含む結合ドメイン融合体を形成することができる。
さらには、本発明を適用する有機物が脂質分子である場合には、酸化アルミニウム結合性ペプチド構造に加えて、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニンなどの遊離の疎水性基を有するアミノ酸を複数含む「疎水ペプチド構造」をも具えている「結合ドメイン」を作製し、脂質分子の「疎水ペプチド構造」に対する疎水結合により、脂質−ペプチド構造含む結合ドメインの複合体を作製し、融合体に代えて利用することも可能である。
(結合ドメイン)
本発明にかかる有機物固定化構造体において、基体表面に設ける酸化アルミニウム層表面に固定化する際に利用する結合ドメイン15は、前記酸化アルミニウム層12に対して特異的な結合能を有する一以上のアミノ酸からなるペプチド鎖を含む分子、あるいは、前記ペプチド鎖のアミノ酸配列を含むタンパク質を利用することができる。
本発明に利用される結合ドメイン15は、好ましい一形態において、酸化アルミニウム層12に親和性を有する一以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有している。
結合ドメインが有する、酸化アルミニウム層に親和性を有するアミノ配列の好ましい例は、上記配列番号:1〜配列番号:32に示すアミノ酸配列からなる群より選択された、少なくとも1つのアミノ酸配列の全部、またはその一部を含むものである。更には、前記アミノ酸配列の繰り返し構造を有するものであっても、上記アミノ酸配列から選択される複数配列の複合体であってもよい。また、また、配列番号30〜32のアミノ酸配列は、含まれるシステイン間の分子内ジスルフィド結合により、環状構造を形成していてもよい。これらアミノ酸配列は、本発明者が鋭意検討の上、得るに至った酸化アルミニウムに対して親和性を有するペプチド(酸化アルミニウム親和性ペプチド)のアミノ酸配列である。
このペプチドを少なくとも一部に有する結合ドメインは、酸化アルミニウムが露呈した表面を有する基板に対して、前記酸化アルミ親和性ペプチドを介して選択的に結合することができる。つまり、これら酸化アルミニウム親和性ペプチドによって本発明の有機物固定化構造体を構成することができ、また前記構造体を用いた標的物質検出素子、変換素子、分離素子が所望の特性を得ることができる。
前記アミノ酸配列の一以上の繰り返し構造や二以上の前記アミノ酸配列の複合体を形成することで酸化アルミニウムに対する親和性をより高くすることも期待できる。また、分子内ジスルフィド結合を形成するで、酸化アルミニウム親和性ペプチドを含む結合ドメインを構造的に安定させるとともに、結合性、分子配向性を改善することも期待できる。
このような酸化アルミニウム親和性ペプチドは、ランダム・ペプチド・ライブラリーのスクリーニングによって決定されたアミノ酸配列、もしくは酸化アルミニウム層の化学的性質により合理的に設計されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。
以下に、一例として酸化アルミニウム層に親和性を有するアミノ酸配列を取得するための、ランダム・ペプチド・ライブラリーのスクリーニング法について記載する。
スクリーニングに利用可能なランダム・ペプチド・ライブラリーとしては、ランダム・ペプチドを可溶性の形で化学的に合成したランダム合成ペプチド・ライブラリーや、樹脂ビーズ上で合成した固相固定化ペプチド・ライブラリー、化学合成されたランダム配列のDNAをリボソ−ム無細胞系で生合成したペプチド・ライブラリー、例えば、M13系ファージの表面蛋白質(例えば、geneIII蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結して調製されたファージ・ディスプレイ・ペプチドライブラリー、同様の手法で細菌の層タンパク質、Omp A(Francisco , 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 10444−10448あるいはPistor と Hoborn, 1989, Klin. Wochenschr., 66, 110−116)、PAL(Fuchs ら, 1991, Bio/Technology, 9, 1369−1372)、Lamb(Charbit ら, 1988, Gene, 70, 181−189及び Bradbury ら, 1993, Bio/Technology, 1565−1568)、フィンブリン(Hedeg AardとKlem M., 1989, Gene, 85, 115−124及び Hofnung, 1991, Methods Cell Biol.、 34, 77−105)、およびIgAプロテア−ゼβ領域(Klauser ら, 1990, EMBO J., 9, 1991−1999)に融合して提示したランダム・ペプチド・ライブラリーなどを挙げることができる。
これらのランダム・ペプチド・ライブラリーを用いて、酸化アルミニウムに対して親和性を有するアミノ酸配列をスクリ−ニング手法としては、化学合成ペプチド・ライブラリーを用いる場合には、ペプチド・ライブラリーと、本発明の構造体と同じ、または同じような表面特性を示す酸化アルミニウムからなるカラム担体やプレート等の担体または基板、微粒子等とを接触させ結合(吸着)させた後、酸化アルミニウム層に対して親和性を有しないペプチドを洗浄工程により除き、しかる後に酸化アルミニウム層に結合しているペプチドを回収しエドマン分解等を用いてそのアミノ酸配列を決定することができる。
一方、ファージ・ディスプレイ・ペプチドライブラリーを用いる場合には、前記担体や前記酸化アルミニウム被覆基板、微粒子表面に、上記の種々のペプチドを提示したファージライブラリーを添加することによって接触させ、非特異的に結合したファージは選択した洗浄条件で洗い流す。洗浄後、残ったファージを酸などにより溶出し緩衝液で中和した後、大腸菌に感染させファージを増幅する。この選別(パンニング操作)を複数回繰り返すと、目的の酸化アルミニウム層に親和性のある複数のクローンが濃縮される。
ここで単一のクローンを得るため再度大腸菌に感染させた状態で培地プレート上にコロニーを作らせる。それぞれの単一コロニーを液体培地で培養した後、培地上清中に存在するファージをポリエチレングリコ−ル等で沈澱精製し、ファージミドを回収し、その塩基配列を解析すれば、目的とする酸化アルミニウムに結合性を示したペプチドのアミノ酸配列を知ることができる。
上述するファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリーを用いたスクリ−ニングは、多種多様のペプチド提示ファージライブラリー(通常109種以上)の中から酸化アルミニウム層に対してより強く結合するペプチドを提示しているファージを濃縮することができるので、本発明の目的に好適に用いることができる。
ファージ・ディスプレイ・ランダム・ペプチド・ライブラリーを構築する方法としては、例えば、M13 系ファージの表面蛋白質(例えば、geneIII蛋白質)のN末端側遺伝子にランダムなアミノ酸配列をコードする合成遺伝子を連結し作製すれば良い。その方法としては、Scott、 J.K. and Smith、 G.P., Science Vol.249, 386 (1990)やCwirla、 S.E. et al.、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol.87、 6378、 (1990)等の報告がある。挿入する遺伝子の大きさは、ペプチドが安定に発現できれば、特に制限はないが、作製したライブラリーがすべてのランダム配列を網羅し、しかも親和性を有するためには6から40アミノ酸に相当する長さ(分子量約600から4000に相当)が適当で、中でも7から18アミノ酸が好ましい。
また、ファージ表面に提示させるペプチド配列中に二以上のシステインを設けることにより、システイン間において分子内ジスルフィド結合を形成している、環状の酸化アルミニウム親和性ペプチドをファージ表面蛋白質上に提示することも可能である。ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリーのスクリ−ニングによって得られた酸化アルミニウム親和性ペプチドのアミノ酸配列も、上述と同様に直列繋ぎ繰り返し構造を構成してもよい。また、二種類以上得られた場合には、これらのアミノ酸配列からなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸配列の、全部または一部分のアミノ酸配列を適当な組合せで直列に繋いだ配列を、酸化アルミニウム層に対して親和性を有するアミノ酸配列として用いても良い。この際、二種類のアミノ酸配列の間には適当なスペーサー配列を設けることが望ましい。スペーサー配列としては、約3〜約400アミノ酸が好ましく、また、スペーサー配列はいかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、スペーサー配列は、前記機能ドメインの機能を妨害せず、また、有機物質が酸化アルミニウム層に結合するのを妨害しないものである。
本発明で利用される、酸化アルミニウムに対する親和性を有するアミノ酸配列は、ランダム・ペプチド・ライブラリーのスクリ−ニングによって決定されたアミノ酸配列の他、酸化アルミニウム層の化学的性質により合理的に設計し、アミノ酸配列とすることもできる。それらでライブラリーを構成し、上記のようなスクリーニング方法により、更に親和性の高いアミノ酸配列を選択することもできる。
このような一以上のアミノ酸からなる、酸化アルミニウム親和性ペプチドの有するアミノ酸配列を含む結合ドメインと、機能ドメインとする、所望の特性を有するタンパク質とを連結してなる融合タンパク質は、前記機能ドメインをコードする遺伝子の上流もしくは下流に、本発明にかかる酸化アルミニウム親和性ペプチドを少なくとも一以上含んでいる結合ドメインのアミノ酸配列をコードする遺伝子を、読み枠を一致させて挿入した発現ベクターを構築することにより、安定に前記融合タンパク質を作製することができる。
また、前記結合ドメインと前記機能ドメイン間に一以上のアミノ酸リンカーを有する場合、そのリンカー配列をコードする塩基配列を、前記結合ドメインのコード配列及び前記機能ドメインのコード配列と読み枠がずれないように、前記結合ドメイン及び前記機能ドメインをコードする塩基配列の間に挿入することができる。これにより、前記酸化アルミニウム層親和性部位は、前記機能ドメイン14とされるタンパク質のN末端あるいはC末端に連結して発現することができる。また、適当なリンカー配列を挿入して、結合ドメインとして、発現することもできる。
リンカー配列としては、約3〜約400アミノ酸が好ましく、また、リンカー配列はいかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、リンカー配列は、前記機能ドメイン14とするタンパク質の機能発揮を妨害せず、また、前記結合ドメイン15が酸化アルミニウム層12に結合するのを妨害しないものである。
前記発現ベクターに使用するプロモーター配列や、形質転換確認用の抗生物質耐性遺伝子配列等は、従来既知のものから適宜選択して使用することができる。
このようにして得られた酸化アルミニウム層に対する融合タンパク質の固定化は、前記機能ドメイン14に融合され、翻訳される前記結合ドメイン15中の前記スクリーニング操作により得られた酸化アルミニウム親和性ペプチドを含むアミノ酸配列(以下、酸化アルミニウム層親和性部位15a)を介して成される。
表面が親水性である酸化アルミニウム層12では、前記機能ドメイン14に融合され、翻訳される前記酸化アルミニウム層親和性部位15aとして、前記アミノ酸配列から親水性基、特には、カチオン性を有する残基やヒドロキシ基を有するアミノ酸を多く含んだ配列を選ぶことによって、前記結合ドメイン15を介する酸化アルミニウム層12への固定化をより強固なものとすることができる。
前記機能ドメイン14とするタンパク質と前記酸化アルミニウム層親和性部位15aを含む結合ドメインとを連結してなる融合タンパク質の分離・精製方法は、前記機能ドメインとするタンパク質の活性が、保持される方法であれば、いかなる方法をも用いることができる。
以下に、本発明にかかる有機物固定化構造体の作製方法に述べる。
酸化アルミニウム層12に、有機物を、酸化アルミニウム層親和性部位15aを含む結合ドメインを介して固定化する工程は、有機物と結合ドメインとで構成される融合体を、水性媒体中で酸化アルミニウム層12と接触させることにより達成される。
本発明において、結合ドメインを介して固定化を行う工程に用いる水性媒体の組成は、固定化される有機物、例えば、生体物質が行う目的化合物の結合または変換反応を妨げないものであればよいが、後の工程の省略化を図るために、生体物質が示す結合または変換反応活性を発揮させ得る組成としておくこともできる。ここで、活性を発揮させ得る組成として、例えば、緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、生化学的反応に用いられる一般的な緩衝液、例えば、酢酸バッファー、リン酸バッファー、リン酸カリウムバッファー、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルフォン酸(MOPS)バッファー、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルフォン酸(TAPS)バッファー、トリス塩酸バッファー、グリシンバッファー、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルフォン酸(CHES)バッファーなどが好適に用いられる。例えば、生体物質が後述するPHA合成酵素タンパク質である際、その酵素活性を発揮させ得る緩衝液の濃度は、一般的な濃度、即ち5mMから10Mの範囲で使用することができるが、望ましくは10〜200mMで行うことが好ましい。また、pHは5.5〜9.0、好ましくは7.0〜8.5となるように調製する。
有機物と結合ドメインとで構成される融合体を、結合ドメイン15を介して、基板表面の酸化アルミニウム層12への固定化は、酸化アルミニウム層12を設ける基板が浸漬される液を、有機物と結合ドメインとで構成される融合体が所定の濃度となるように上記水性媒体中に溶解する溶液とすることによって達成される。このとき、有機物と結合ドメインとで構成される融合体に含まれる、酸化アルミニウム層親和性部位15aを含む結合ドメイン部分が、酸化アルミニウム層の表面に均等に結合されるよう、反応容器を適当な強度で振盪あるいは攪拌することが望ましい。
上記固定化処理において、利用される水性媒体の組成としては、水性媒体のpHや塩濃度によって、酸化アルミニウム層および結合ドメインに含まれる酸化アルミニウム層親和性部位15aの表面電荷の電荷量、疎水性が変化するので、それを考慮した組成とするのが望ましい。例えば、塩濃度を上げることによって両者の疎水性を増やすことができる。
また、基板表面に設ける酸化アルミニウム層12に対する、溶媒のぬれ角等を予め測定し、酸化アルミニウム層12の親水性、疎水性を調べることで、結合ドメインの結合に適した溶液組成を設定することもできる。さらに、酸化アルミニウム層12表面に対する、酸化アルミニウム層親和性部位15aの結合量を直接測定して、溶液組成を求めることもできる。結合量の測定は、例えば、ある一定面積の酸化アルミニウム層に、濃度既知の有機物と結合ドメインとで構成される融合体溶液を添加し、固定化処理を行った後、溶液中に残余している有機物と結合ドメインとで構成される融合体の濃度を測定し、差し引き法により結合量を求める等の方法を用いればよい。
生体物質の固定化処理を行う時間は、1分間から48時間が望ましく、より望ましくは、10分間から3時間である。過剰な静置あるいは放置は、固定化された生体物質の所望の機能活性低下を招くことも少なくなく、一般に好ましくない。
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるが、本発明はかかる実施例に示す形態に限定されるものではない。
下記する実施例では、本発明にかかる有機体固定化構造体、特には、生体物質固定化基体の構成について、機能ドメインに相当する生体物質として、ポリヒドロキシアルカネ−ト(PHA)合成酵素タンパク質、また、結合ドメインとして、酸化アルミニウム層親和性ペプチドを採用し、PHA合成酵素タンパク質のN末に、前記酸化アルミニウム層親和性ペプチドを、リンカー配列を介して連結してなる、融合体型PHA合成酵素タンパク質を、表面に酸化アルミニウム層を被覆した基板上に固定化してなる生体物質固定基板を例に採り、かかる生体物質固定基板の構成と、その製造方法に関して、具体的に説明する。
また、前記結合ドメインとして利用される、酸化アルミニウム層親和性ペプチドのアミノ酸配列の取得方法に関しても、具体的に説明する。
これら実施例に先立ち、参照例1において、PHA合成酵素タンパク質を構成する、機能ドメインに相当する生体物質である、PHA合成酵素タンパク質の遺伝子組換え生産方法、ならびに、前記組換え型PHA合成酵素タンパク質の酵素活性、その測定方法について、予め説明を加える。
さらには、実施例においては、融合体型PHA合成酵素タンパク質を、表面に酸化アルミニウム層を被覆した基板上に固定化してなる生体物質固定基板において、固定化されている融合体型PHA合成酵素タンパク質が保持する酵素活性は、前記組換え型PHA合成酵素タンパク質の酵素活性を基準とした評価によって、検証がなされる。
(参照例1)
PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製、及びPHA合成酵素の組換え生産
PHA合成酵素生産能を有する形質転換体を以下の方法で作製した。
先ず、PHA合成酵素生産能を有するYN2株(Pseudomonas cichorii YN2, FERM BP−7375)を100 mlのLB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.4)で30℃、一晩培養後、マーマーらの方法により、前記YN2株の染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素HindIIIで完全分解した。クローニング・ベクターには、pUC18を使用し、制限酵素HindIIIで切断した。末端の脱リン酸処理(Molecular Cloning, 1, 572 (1989); Cold Spring Harbor Laboratory出版)の後、DNAライゲーション・キット Ver.II(宝酒造)を用いて、ベクターの切断部位(クローニングサイト)に、染色体DNAのHindIII完全分解断片を連結・挿入した。この染色体DNA断片を組み込んだプラスミド・ベクターを用いて、大腸菌(Escherichia coli)HB101株を形質転換し、YN2株のDNAライブラリーを作製した。
次に、YN2株由来のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を選択するため、コロニー・ハイブリダイズ用のプロ−ブ調製を行った。配列番号:37ならびに配列番号:38の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成し(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)、このオリゴヌクレオチド二種をプライマー対に用いて、染色体DNAをテンプレートとして、PCR増幅を行った。PCR増幅産物のDNA断片を単離し、コロニー・ハイブリダイゼーション用のプローブとして用いた。プローブの標識化は、市販のアルカリフォスパターゼ標識酵素系AlkPhosDirect(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)を利用して行った。得られた酵素標識化プロ−ブを用いて、YN2株の染色体DNAライブラリーからコロニー・ハイブリダイゼーション法によって、目的とするPHA合成酵素遺伝子を含む組換えプラスミドを有する大腸菌菌株を選抜した。選抜した菌株から、アルカリ法によってプラスミドを回収することで、YN2株由来のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
(配列番号:37) フォワード・プライマーの塩基配列
5’−TGCTGGAACT GATCCAGTAC−3’
(配列番号:38) リバース・プライマーの塩基配列
5’−GGGTTGAGGA TGCTCTGGAT GTG−3’

ここで取得したPHA合成酵素遺伝子DNA断片を、不和合性グル−プであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない、広宿主域複製領域を含むベクター pBBR122(Mo Bi Tec)に組み換えた。この組み換えプラスミドを、シュードモナス・チコリアイ YN2ml株(PHA合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、形質転換したYN2ml株では、PHA合成能が復帰し、相補性を示した。従って、選抜された遺伝子DNA断片は、少なくとも、シュードモナス・チコリアイ YN2ml株内において、PHA合成酵素に翻訳可能な、PHA合成酵素遺伝子領域を含むことが確認される。
このYN2株由来のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片について、サンガー法により塩基配列を決定した。その結果、決定された塩基配列中には、それぞれペプチド鎖をコ−ドする、配列番号:33ならびに配列番号:34で示される二種の塩基配列が存在することが確認された。下で述べるように、この二種の塩基配列でコードされる、二種のペプチド鎖からなるタンパク質は、ともに、PHA合成酵素活性を有しており、配列番号:33と配列番号:34で示される塩基配列は、それぞれPHA合成酵素遺伝子であることを確認することができた。すなわち、配列番号:35に示すアミノ酸配列が、配列番号:33の塩基配列によりコードされており、配列番号:36に示すアミノ酸配列は、配列番号:34の塩基配列によってコードされており、この二種のアミノ酸配列を有するタンパク質の何れか一方のみでも、PHA合成能が発揮されることを確認した。
配列番号:33で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子に関して、染色体DNAをテンプレートとして、PCR増幅を行って、完全長のPHA合成酵素遺伝子を再調製した。
配列番号:34で示される塩基配列に対して、上流側プライマーとなる、その開始コドンよりも上流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:41)、ならびに下流側プライマーとなる、終止コドンよりも下流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:39)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。この二種のオリゴヌクレオチドをプライマー対として、染色体DNAをテンプレートとしてPCR増幅を行って、完全長のPHA合成酵素遺伝子を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
(配列番号:41) 上流側プライマーの塩基配列
5’−GGACCAAGCT TCTCGTCTCA GGGCAATGG−3’
(配列番号:39) 下流側プライマーの塩基配列
5’−CGAGCAAGCT TGCTCCTACA GGTGAAGGC−3’

同様に、配列番号:34で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子についても、染色体DNAをテンプレートとして、PCR増幅を行い、完全長のPHA合成酵素遺伝子を再調製した。配列番号:34で示される塩基配列に対して、上流側プライマーとなる、その開始コドンよりも上流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:40)および下流側プライマーとなる、終止コドンよりも下流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:42)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、PCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
(配列番号:40) 上流側プライマーの塩基配列
5’−GTATTAAGCT TGAAGACGAA GGAGTGTTG−3’
(配列番号:42) 下流側プライマーの塩基配列
5’−CATCCAAGCT TCTTATGATC GGGTCATGCC−3’

次に、上述する二種の得られた完全長のPHA合成酵素遺伝子を含むPCR増幅断片を、それぞれ、制限酵素HindIIIを用いて完全分解した。また、発現ベクター pTrc99Aも制限酵素HindIIIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning、 1巻、 572頁、 1989年; Cold Spring Harbor Laboratory出版)した。この発現ベクター pTrc99AのHindIII切断部位に、両末端の不用な塩基配列を除いた、完全長のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を、それぞれ、DNAライゲ−ション・キット Ver.II(宝酒造)を用いて連結して、二種の組換えプラスミドを作製した。
得られた組換えプラスミドにより、大腸菌(Escherichia coli HB101:宝酒造)を塩化カルシウム法により形質転換した。得られた組換え体を培養し、組換えプラスミドの増幅を行い、組換えプラスミドをそれぞれ回収した。配列番号:33の塩基配列を含む完全長のPHA合成酵素遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドを、pYN2−C1(配列番号:37由来)、配列番号:34の塩基配列を含む完全長のPHA合成酵素遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドを、pYN2−C2(配列番号:38由来)とした。
組換えプラスミドpYN2−C1、pYN2−C2をそれぞれ用いて、大腸菌(Escherichia coli HB101fB fadB欠損株)を塩化カルシウム法により形質転換し、各組換えプラスミドを保持する組換え大腸菌株、pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株を得た。
pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株を、それぞれを酵母エキス0.5%、オクタン酸0.1%とを含むM9培地200mlに植菌して、37℃、125ストロ−ク/分で振盪培養した。24時間後、菌体を遠心分離によって回収し、常法によりプラスミドDNAを回収した。
pYN2−C1に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:43)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:44)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。この二種のオリゴヌクレオチドをプライマー対に用いて、pYN2−C1をテンプレートとしてPCR増幅を行い、上流にBamHIおよびSacI制限部位、下流にSpeIおよびXhoI制限部位を有する、完全長のPHA合成酵素遺伝子を含むDNAを増幅産物として得た(LA−PCRキット;宝酒造)。
上流側プライマー(配列番号:43):
5’−AGTGGATCCT CCGAGCTCAG TAACAAGAGT AACGATGAGT TGAAG−3’
下流側プライマー(配列番号:44):
5’−ATACTCGAGA CTACTAGTCC GTTCGTGCAC GTACGTGCCT GGCGC−3’

同様に、pYN2−C2に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:45)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:46)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。この二種のオリゴヌクレオチドをプライマー対に用いて、pYN2−C2をテンプレートとしてPCR増幅を行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有する、完全長のPHA合成酵素遺伝子を含むDNAを増幅産物として得た(LA−PCRキット;宝酒造)。
上流側プライマー(配列番号:45):
5’−ATACTCGAGA CTACTAGTGC GCACGCGCAC GTAAGTCCCG GGCGC−3’
下流側プライマー(配列番号:46):
5’−AGTGGATCCT CCGAGCTCCG CGATAAACCT GCGAGGGAGT CACTA−3’

精製したそれぞれのPCR増幅産物を、制限酵素BamHIおよびXhoIにより消化し、プラスミドpGEX−6P−1(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)の対応する部位に挿入した。これらの二種のベクター(pGEX−C1およびpGEX−C2)を用いて、大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。各菌株における発現ベクター導入の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAを、制限酵素BamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片の分子量確認によって行った。得られた発現用菌株をLB−Amp培地10mlで一晩プレ・カルチャ−した後、その培養物0.1mlを、10mlのLB−Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後、IPTG(終濃度 1mM)を添加し、37℃で4〜12時間培養を続けた。
IPTG誘導した大腸菌を遠心(8000×g、2分、4℃)して、集菌し、1/10量の4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(8000×g、10分、4℃)して、固形夾雑物を取り除いた。発現された目的タンパク質(GST融合タンパク質)が上清に存在することを、SDS−PAGEで確認した後、誘導・発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロ−ス4B(Glutathion SePHArose 4B beads:アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
使用したグルタチオン・セファロ−スは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオン・セファロ−スを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃)した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後、同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオン・セファロ−ス 40μLを、無細胞抽出液1mlに添加し、4℃で静かに攪拌した。この攪拌処理により、GST融合タンパク質GST−YN2−C1およびGST−YN2−C2を、融合パートナーGSTの結合能を利用して、グルタチオン・セファロ−ス上に吸着させた。
吸着後、遠心(8000×g、 1分、4℃)して、グルタチオン・セファロ−スを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mM グルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着したGST融合タンパク質を溶出した。遠心(8000×g、2分、4℃)して、GST融合タンパク質を含む上清を回収した。その後、PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。精製後、SDS−PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
各GST融合タンパク質500μgを、PreScissionプロテア−ゼ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、5U)で消化して、N末の融合パートナーGST部とC末側のPHA合成酵素タンパク質とを分離した後、グルタチオン・セファロ−ス・カラムに通して、プロテアーゼとGSTを除去した。グルタチオン・セファロ−ス・カラムのフロー・スルー分画を、さらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、発現タンパク質YN2−C1およびYN2−C2の最終精製物を得た。SDS−PAGEにより、最終精製済みの発現タンパク質YN2−C1およびYN2−C2は、それぞれ60.8kDa、および61.5kDaのシングルバンドを示すことを確認した。

各精製酵素タンパク質の活性は以下の方法で測定した。
PHA合成酵素の活性測定は、基質の3−ヒドロキシアシルCoAがPHA合成酵素の触媒作用により重合してPHAになる過程で放出されるCoAの量を、5、5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)で発色させて測定する、評価方法に基づき、以下の手順で測定した。
試薬1:ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を、0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0 mg/ml溶解、
試薬2:3’−ヒドロキシオクタノイルCoAを、0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0 mM溶解、
試薬3:トリクロロ酢酸を、0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0)に10 mg/ml溶解、
試薬4:5、5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を、0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0)に2.0 mM溶解。
第1反応(PHA合成反応):試料(酵素)溶液100μlに、試薬1を100μl添加・混合し、30℃で1分間プレインキュベートする。次いで、この液に、試薬2を100μl添加・混合し、30℃で1〜30分間インキュベートした後、試薬3を添加して、酵素反応を停止させる。
第2反応(遊離CoAの発色反応):反応停止した第1反応液を、遠心分離(15,000×g、10分間)し、上清を採取する。この上清500μlに、試薬4を500μl添加し、30℃で10分間インキュベ−トした後、412 nmの吸光度を測定して、含有されていたCoAの濃度を決定する。
酵素活性の算出:1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)とする。

また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。表1に、各精製酵素の活性測定の結果を示す。
Figure 2005204609
測定された活性に基づき、前記酵素溶液を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくん AB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
以下に示す、実施例では、比活性の高いPHA合成酵素タンパク質YN−C1を用いる。
(実施例1)酸化アルミニウムナノホールに対する親和性を有するアミノ酸配列の取得
1)パンニング操作による酸化アルミニウム親和性ファージの選択
(ステップ1)
PhD.−12ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリー(NEWENGLANDBIOLAB)の2×1011pfuを、、0.1%Tween−20/TBSバッファー(50 mM Tris−HCl pH 7.5、150 mM NaCl)<以下、TBSTバッファー>で0.5mlに希釈し、ライブラリー懸濁液とした。
(ステップ2)
アミノ酸配列取得のための酸化アルミニウム膜(厚さ60μm、直径13mm、孔径0.2μm、商品名:アノディスクメンブレン、Whatman社製)を1枚入れた平底の24穴タイタープレートの1ウェルに前記ライブラリー懸濁液0.5mlを添加し、25℃で30分間静置した。
(ステップ3)
上清を捨て、前記ウェル内においてアノディスクメンブレンをTBSTバッファー2mlで10回洗浄した。
(ステップ4)
洗浄済みのアノディスクメンブレンに0.5mlの溶出バッファー(0.2M Glycine−HCl(pH2.2)、1mg/ml BSA)を加えて、10分間緩やかに振盪させた後、上清をマイクロタイタープレートの別のウェルに移した。分取された上清に、75μlの1M Tris−HCl(pH9.1)を加えて中和し、アノディスクメンブレン上から溶出されたファージを得た。
(ステップ5)
溶出されたファージを、対数増殖初期の大腸菌ER2537(NEW ENGLAND BIOLAB社製)に感染させ、下記の手順に従って増幅した。
感染後、大腸菌を37℃で4.5時間培養した。次に、遠心分離により、ファージを大腸菌から分離し、上清からポリエチレングリコールにより沈澱させて、精製した。増幅、精製されたファージは、TBSバッファーに懸濁し、前記ファージ懸濁液について、適当な希釈系列で大腸菌に感染させることによって、その力価(Titer)を測定した。
(ステップ6)
上記のファージの提示するペプチドについて、アノディスクメンブレンに対する親和性に関する、一次スクリーニングされた前記懸濁液に含まれるファージについて、前記ステップ1〜ステップ5のスクリーニング操作を更に4回繰り返した。但し、二次スクリーニング以降、洗浄に用いる、TBSTバッファー中のTween−20濃度を0.5%(以下、0.5%TBSTバッファー)に上げることによって、ステップ3における洗浄条件を厳しくし、アノディスクメンブレンに対して、より高い親和性を示すファージを選別した。また、三次スクリーニング(2回目)以降では、前記ステップ3における洗浄によって、アノディスクメンブレンから離脱したファージに関しても、同様の操作を行い、その力価(Titer)を測定し、コントロールとした。
以上、1次スクリーニング〜5次スクリーニングの各回において、アノディスクメンブレン上から溶出されたファージの力価(titer)を表2に示す。
Figure 2005204609
上記のスクリーニング操作において選別された、最終スクリーニング・ステップで溶出されたファージを、大過剰の大腸菌に感染させることによってクロ−ン化した。
分離される各クロ−ンを、大腸菌に感染させ、増幅した後、各クローンのファージからssDNAを調製し、ランダム領域の塩基配列を解読することによって、アノディスクメンブレンに対して高い親和性を有する51クローンのファージを取得した。
取得された51クローンのファージに対して、ファージELISAによって酸化アルミニウムに対する親和性評価を行い、また、各ファージの提示ペプチド部をコードするDNA配列を解析して、酸化アルミニウムに対する結合能を示すペプチドのアミノ酸配列を決定した。
2)ファージELISAによる酸化アルミニウム親和性評価
(ステップ1)
上記スクリーニングにおいて選別された、前記51クローンの各クローンのファージ懸濁液について、前記懸濁液の2×1011pfu相当を0.5%TBSTバッファーで希釈して0.5mlとした。
(ステップ2)
アノディスクメンブレンを1枚入れた平底の24穴タイタープレートの1ウェルに、前記ファージ懸濁液を各々全て添加し、25℃で30分間静置した。
(ステップ3)
上清を捨てた後、前記ウェル内においてアノディスクメンブレンを0.5%TBSTバッファー2mlで10回洗浄した。
(ステップ4)
上記ウェル中の洗浄済みアノディスクメンブレンに、0.5mlのHRP結合抗M13抗体溶液(抗M13抗体(NEW ENGLAND BIOLAB社製)1μLをTBST10mLに懸濁)を加えて、室温にて60分間緩やかに振盪させた。次に、上清を捨て、0.5%TBSTバッファー2mlで洗浄する操作を繰り返すことによって5回洗浄した。
(ステップ5)
アノディスクメンブレン上に結合しているファージに前記HRP結合抗M13抗体を反応させる処理を施した、アノディスクメンブレンが入っているウェルに、0.5mlのDetction Reagent1(Amersham Pharmacia #RPN2209)を添加した。
さらに、0.5mlのDetction Reagent2(Amersham Pharmacia #RPN2209)を加えて、3分後、HRP結合抗M13抗体中の標識酵素HRPの作用により得られる、420nmにおけるルミノール発光強度を測定した。
表3に、各クローンに対する評価結果を示す。なお、I420は420nmでの発光強度を示す。
Figure 2005204609
なお、上記ファージELISA測定系において、ステップ2において、アノディスクメンブレンと接触させる液にファージを混合していない場合(コントロール)に観測される、発光強度は、0.001であった。
以上の評価によって、得られた51のファージ・クローンが提示するペプチドは、いずれも酸化アルミニウム親和性を有することが確認された。
3)酸化アルミニウムとの結合能を示すアミノ酸配列
選別された51のファージ・クローンについて、前記ファージのDNA配列解析結果から、各ファージのランダム・ペプチド提示領域のアミノ酸配列を対比して、酸化アルミニウムに対する親和性に関与すると推定されるアミノ酸配列を特定した。表4に、特定された酸化アルミニウムに対する親和性を示すアミノ酸配列と、その出現頻度を示す。
Figure 2005204609
(実施例2)酸化アルミニウムに対する親和性を有する環状アミノ酸配列の取得
1)パンニング操作による酸化アルミニウム親和性ファージの選択
(ステップ1)
PhD.−C7Cファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリー(NEWENGLANDBIOLAB)の2×1011pfuを、0.1%Tween−20/TBSバッファー(50 mM Tris−HCl pH 7.5、150 mM NaCl)<以下、TBSTバッファー>で0.5mlに希釈し、ライブラリー懸濁液とした。
(ステップ2)
アミノ酸配列取得のための酸化アルミニウム膜として、厚さ60μm、直径13mm、孔径0.2μmのアノディスクメンブレン(Whatman製)を1枚入れた平底の24穴タイタープレートの1ウェルに該ライブラリー懸濁液0.5mlを添加し、25℃で30分間静置した。
(ステップ3)
上清を捨て、前記ウェル内においてアノディスクメンブレンをTBSTバッファー2mlで10回洗浄した。
(ステップ4)
洗浄済みのアノディスクメンブレンに0.5mlの溶出バッファー(0.2M Glycine−HCl(pH2.2)、1mg/ml BSA)を加えて、10分間緩やかに振盪させた後、上清をマイクロタイタープレートの別のウェルに移した。分取された上清に、75μlの1M Tris−HCl(pH9.1)を加えて中和し、アノディスクメンブレン上から溶出されたファージを得た。
(ステップ5)
溶出されたファージを、対数増殖初期の大腸菌ER2537(NEW ENGLAND BIOLAB社製)に感染させ、下記の手順に従って増幅した。
感染後、大腸菌を37℃で4.5時間培養した。次に、遠心分離により、ファージを大腸菌から分離し、上清からポリエチレングリコールにより沈澱させて、精製した。増幅、精製されたファージは、TBSバッファーに懸濁し、該ファージ懸濁液について、適当な希釈系列で大腸菌に感染させることによって、その力価(Titer)を測定した。
(ステップ6)
上記のファージの提示するペプチドについて、アノディスクメンブレンに対する親和性に関する、一次スクリーニングされた該懸濁液に含まれるファージについて、前記ステップ1〜ステップ5のスクリーニング操作を更に3回繰り返した。但し、二次スクリーニング以降、洗浄に用いる、TBSTバッファー中のTween−20濃度を0.5%(以下、0.5%TBSTバッファー)に上げることによって、ステップ3における洗浄条件を厳しくし、アノディスクメンブレンに対して、より高い親和性を示すファージを選別した。また、三次スクリーニング(2回目)以降では、前記ステップ3における洗浄によって、アノディスクメンブレンから離脱したファージに関しても、同様の操作を行い、その力価(Titer)を測定し、コントロールとした。
以上、1次スクリーニング〜4次スクリーニングの各回において、アノディスクメンブレン上から溶出されたファージの力価(titer)を表5に示す。
Figure 2005204609
上記のスクリーニング操作において選別された、最終スクリーニング・ステップで溶出されたファージを、大過剰の大腸菌に感染させることによってクロ−ン化した。
分離される各クロ−ンを、大腸菌に感染させ、増幅した後、各クローンのファージからssDNAを調製し、ランダム領域の塩基配列を解読することによって、アノディスクメンブレンに対して高い親和性を有する11クローンのファージを取得した。
取得された11クローンのファージに対して、ファージELISAによって酸化アルミニウムに対する親和性評価を行い、また、各ファージの提示ペプチド部をコードするDNA配列を解析して、酸化アルミニウムに対する結合能を示すペプチドのアミノ酸配列を決定した。
2)ファージELISAによる酸化アルミニウム親和性評価
(ステップ1)
PhD.−C7Cファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリー(NEWENGLAND BIOLAB)から選別された上記11クローンの各クローンのファージ懸濁液について、該懸濁液の2×1011pfu相当を0.5%TBSTバッファーで希釈して0.5mlとした。
(ステップ2)
アノディスクメンブレンを1枚入れた平底の24穴タイタープレートの1ウェルに、該ファージ懸濁液を各々全て添加し、25℃で30分間静置した。
(ステップ3)
上清を捨てた後、前記ウェル内においてアノディスクメンブレンを0.5%TBSTバッファー2mlで10回洗浄した。
(ステップ4)
上記ウェル中の洗浄済みアノディスクメンブレンに、0.5mlのHRP結合抗M13抗体溶液(抗M13抗体(NEW ENGLAND BIOLAB社製)1μLをTBST10mLに懸濁)を加えて、60分間緩やかに振盪させた。次に、上清を捨て、0.5%TBSTバッファー2mlで洗浄する操作を繰り返すことによって5回洗浄した。
(ステップ5)
アノディスクメンブレン上に結合しているファージに前記HRP結合抗M13抗体を反応させる処理を施した、アノディスクメンブレンが入っているウェルに、0.5mlのDetction Reagent1(Amersham Pharmacia #RPN2209)を添加した。
さらに、0.5mlのDetction Reagent2(Amersham Pharmacia #RPN2209)を加えて、3分後、HRP結合抗M13抗体中の標識酵素HRPの作用により得られる、420nmにおけるルミノール発光強度を測定した。
表6に、各クローンに対する評価結果を示す。なお、I420は420nmでの発光強度を示す。
Figure 2005204609
なお、上記ファージELISA測定系において、ステップ2において、アノディスクメンブレンと接触させる液にファージを混合していない場合(コントロール)に観測される、発光強度は、0.001であった。
以上の評価によって、得られた11のファージ・クローンが提示するペプチドは、いずれも酸化アルミニウム親和性を有することが確認された。
3)酸化アルミニウムとの結合能を示すアミノ酸配列
選別された51のファージ・クローンについて、該ファージのDNA配列解析結果から、各ファージのランダム・ペプチド提示領域のアミノ酸配列を対比して、酸化アルミニウムに対する親和性に関与すると推定されるアミノ酸配列を特定した。表7に、特定された酸化アルミニウムに対する親和性を示すアミノ酸配列と、その出現頻度を示す。
Figure 2005204609
(実施例3)酸化アルミニウム親和性ペプチド融合PHA合成酵素
1)酸化アルミニウム親和性ペプチド融合PHA合成酵素をコードするDNA断片の作製
前記アノディスクメンブレンに対する親和性を示すアミノ酸配列Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg(配列番号:1)を、リンカー配列GGGSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合してなる、アノディスクメンブレン結合性ペプチド−PHA合成酵素融合体を発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。
このアノディスクメンブレン結合性ペプチドとリンカー配列部をコ−ドするDNA断片は、二本鎖DNAとして作製し、融合タンパク質GST−YN2−C1発現用のpGEX−C1プラスミドの適切な制限開裂部位(BamHIおよびSacI)にライゲーションする。その際、2つの合成オリゴヌクレオチドO1(5’−GATCCGTTTATGCGAATCAGACTCCGCCTTCTAAGGCGCGGGGTGGAGGTTCGGAGCT−3’、配列番号:47)およびO2(5’−CGAACCTCCACCCCGCGCCTTAGAAGGCGGAGTCTGATTCGCATAAAC−3’、配列番号:48)を製造業者の説明に従い、T4ポリヌクレオチドキナ−ゼ(Gibco製)を用いて、末端をリン酸化した。続いて、二種の合成DNAを等モル混合し、80℃で5分間加熱し、その後、室温までゆっくり冷却させることによって、二本鎖DNA断片を形成した。形成された二本鎖DNA断片は、その後のクロ−ニングに直接用いた。

2)遺伝子導入および融合体の発現、精製
参照例1で作製したプラスミドpGEX−C1を、制限酵素BamHIおよびSacIにより消化し、前記二本鎖DNA断片を挿入した。このベクターを用いて、大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。各菌株における発現ベクター導入の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて調製したプラスミドDNAをテンプレートとして、pGEX 5’ Sequencing Primer(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)を用いたシークエンシングによって、制限酵素BamHIおよびSacI部位間にインサートされている塩基配列を決定することによって行った。得られた発現用菌株を、LB−Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その培養物0.1mLを、10mLのLB−Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後、IPTG(終濃度 1mM)を添加し、37℃で4〜12時間培養を続けた。
IPTG誘導した大腸菌を集菌(8000×g、2分、4℃)し、1/10量の4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(8000×g、10分、4℃)して、固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が、上清に存在することを、SDS−PAGEで確認した。その後、上清から、誘導・発現されたGST融合タンパク質を、グルタチオン・セファロ−ス4B(Glutathion Sepharose 4B beads:アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)で精製した。なお、誘導・発現されるGST融合タンパク質は、融合パートナーのGSTタンパク質のC末と、PHA合成酵素タンパク質YN2−C1のN末との間に、上記配列番号:1のアミノ酸配列とリンカー配列GGGSとが連結されるペプチド鎖が挿入されている融合タンパク質GST−A01−GS−YN2−C1である。
使用したグルタチオン・セファロ−スは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオン・セファロ−スを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃)した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後、同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオン・セファロ−ス 40μLを、無細胞抽出液(上清)1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。この攪拌により、融合タンパク質GST−A01−GS−YN2−C1をグルタチオン・セファロ−スに吸着させた。
吸着後、遠心(8000×g、1分、4℃)して、グルタチオン・セファロ−スを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心(8000×g、2分、4℃)して、融合タンパク質を含む上清を回収した後、PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。精製後、SDS−PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
各GST融合タンパク質500μgを、PreScissionプロテア−ゼ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、5U)で消化して、N末の融合パートナーGST部を切断分離した。この液をグルタチオン・セファロ−ス・カラムに通して、プロテアーゼとGSTを除去した。グルタチオン・セファロ−ス・カラムのフロー・スルー分画を、さらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、ペプチド融合タンパク質A01−YN2−C1の最終精製物を得た。SDS−PAGEにより、最終精製済みの発現タンパク質A01−GS−YN2−C1は、シングルバンドを示すことを確認した。
得られる最終精製済みの発現タンパク質A01−GS−YN2−C1の酵素活性は、上記参照例2に記載の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。試料の酵素活性は、1.9 U/ml、また比活性は、4.0 U/mgタンパク質であった。最終精製済み酵素溶液を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくん AB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。

3)酸化アルミニウム親和性ペプチド融合タンパク質の酸化アルミニウム粒子に対する親和性評価
酸化アルミニウム粒子AW40−74(マイクロン製)を0.1%Tween−20/TBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。この懸濁液10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、実施例2で調製した、ペプチド融合PHA合成酵素A01−GS−YN2−C1、あるいは、参照例2で調製したPHA合成酵素YN2−C1の0.5U相当量を加え、室温で30分間振とうした。遠心分離操作(10,000×g、4℃、10分間)によって、AW40−74粒子を沈澱として回収し、AW40−74に結合しなかった酵素タンパク質を含む上清と分離した。沈澱画分として、回収されるAW40−74を再び0.1%Tween−20を含むTBSバッファーに懸濁し、遠心分離して、沈澱画分を回収する操作を繰り返すことによって、AW40−74を洗浄した。表8に、洗浄したAW40−74の懸濁液について、上記参照例2に記載する測定方法で、酵素活性を測定した結果を示す。
Figure 2005204609
また、配列番号:2〜配列番号:32に示す31種類の酸化アルミニウム親和性配列についても、配列番号:49〜配列番号:110に示した合成オリゴヌクレオチドを用いて、実施例2と同様の方法で、酸化アルミニウム粒子−PHA合成酵素複合体:A02−GS−YN2−C1〜A32−GS−YN2−C1を調製し、同様に酸化アルミニウム粒子に対する結合能の評価を行うため、酸化アルミニウム粒子に結合したそれぞれのPHA合成酵素活性を測定した。測定結果を表9に示す。
Figure 2005204609
コントロ−ルの酵素タンパク質YN2−C1と比較して、N末に酸化アルミニウムに対する結合能を有するアミノ酸配列のペプチド鎖を融合している酵素タンパク質A01−GS−YN2−C1ならびにA30−GS−YN2−C1において、観測される酵素活性は高く、N末に融合されている酸化アルミニウムに対する結合能を有するアミノ酸配列のペプチド鎖を介して、酵素タンパク質が有効に酸化アルミニウムからなる基材表面に固定化できることが確認された。
(実施例4) 酸化アルミニウム親和性ペプチド融合西洋ワサビペルオキシダーゼ(HPR)の作製
アノディスクメンブレンに対する親和性を示すアミノ酸配列Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg(配列番号:1)を、リンカー配列GGGSを介して、HPRのN末端に融合してなる、アノディスクメンブレン結合性ペプチド−HRP融合タンパクを発現する大腸菌発現ベクターを以下のように構築する。
1)酸化アルミニウム親和性ペプチド融合HRPをコードするDNA断片の作製およびプライマーの調整
まず、前記アノディスクメンブレン結合性ペプチド融合タンパク−リンカー配列(GGGS)−HPR(A01−GS−HPR)をコ−ドする二本鎖DNA(配列番号:111)を合成する。
本実施例では、長鎖DNAの合成方法として知られている藤本らの手法(藤本英也、合成遺伝子の作製法、植物細胞工学シリーズ7 植物のPCR実験プロトコール、1997、秀潤社、p95−100)を用いた。この方法の原理は、120MER程度のオリゴヌクレオチドプライマーを3'末端に20mer程度のオーバーラップを持つように作製し、お互いのオリゴヌクレオチドプライマーのオーバーラップ領域を利用して、欠損部分を伸張させ、さらに両末端のプライマーを用いてPCRを行うことによって増幅するというものである。この操作を順次繰り返し、目的とする長鎖DNAを合成する。
一連のオーバーラップPCR法を図4に従って順次行う。図4に示す全20種の各種プライマー(Ha、H01、Hb、H02、Hc、H03、Hd、H04、He、H05、Hf、H06、Hg、H07、Hh、H08、Hi、H09、Hj、H10)のDNA配列を配列番号112〜131にそれぞれ示す。図4におけるStep4の伸張反応終了後、完全長のA01−GS−HRP遺伝子が合成されているか塩基配列を確認する。
A01−GS−HRP遺伝子に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:132)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:133)をそれぞれ設計・合成する。この二種のオリゴヌクレオチドをプライマー対に用いて、A01−GS−HRP遺伝子をテンプレートとしてPCR増幅を行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有する、完全長のPHA合成酵素遺伝子を含むDNAを増幅産物として得る(LA−PCRキット;宝酒造)。
上流側プライマー(配列番号:132):
5’−AGTCGGATCC GTTTATGCGA ATCAGACTCC GCCTTCTAAG GCGCGGGGTG GAGGTTCG−3’
下流側プライマー(配列番号:133):
5’−AGGCCTCGAG AGAGTTGGAG TTCACCACCC TACA−3’

2)遺伝子導入および融合体の発現
前記融合タンパク質GST−YN2−C1発現用のpGEX−C1プラスミドの適切な制限開裂部位(BamHIおよびSacI)にライゲーションする。
参照例2で作製したプラスミドpGEX−C1及び上記で得られたPCR産物を制限酵素BamHIおよびXhoIにより消化する。
次に、T4リガーゼを用いて前記断片を結合する。
このライゲーション溶液を用いて、大腸菌溶液40μL(JM109コンピテントセル)へヒートショック法により形質転換を行う。形質転換を試みた大腸菌溶液に、更にLB750μLを加え、37℃にて1時間振盪培養を行う。続いて、前記培養液をLB/amp.プレートに撒き、37℃にて一晩静置する。
発現ベクター中に導入されたインサートの塩基配列確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて、調製したプラスミドDNAをテンプレートとして、pGEX 5’ Sequencing Primer(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)を用いたシークエンシングによって、制限酵素BamHIおよびXhoI部位間にインサートされている塩基配列を決定することによって行う。
得られたGST−A01−GS−HPR融合タンパク質用発現ベクターをBL21(DE3)コンピテントセルにヒートショック法により形質転換する。得られた発現用菌株を、LB−Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その培養物5mLを、1.5LのLB−Amp培地に添加し、28℃、150rpmで15時間振とう培養する。その後、IPTG(終濃度 1mM)を添加し、37℃で12時間培養を続ける。
IPTG誘導した大腸菌を集菌(8000×g、30分、4℃)し、1/10量の4℃ PBSに再懸濁する。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(8000×g、10分、4℃)して、固形夾雑物を取り除く。目的の発現タンパク質が、上清に存在することを、SDS−PAGEで確認する。
3)融合タンパク質の精製
上清から、誘導・発現されたGST融合タンパク質を、グルタチオン・セファロ−ス4B(Glutathion Sepharose 4B beads:アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)で精製する。
なお、誘導・発現されるGST融合タンパク質は、融合パートナーのGSTタンパク質のC末端と、HRPタンパク質のN末端との間に、上記配列番号:1のアミノ酸配列とリンカー配列GGGSとが連結されるペプチド鎖が挿入されている融合タンパク質GST−A01−GS−HRPである。
使用したグルタチオン・セファロ−スは、予め非特異的吸着を抑える処理を行う。すなわち、グルタチオン・セファロ−スを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、10分、4℃) した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理する。処理後、同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁する。前処理したグルタチオン・セファロ−ス 400μLを、無細胞抽出液(上清)10mL に添加し、4℃で静かに攪拌する。この攪拌により、融合タンパク質GST−A01−GS−HRPをグルタチオン・セファロ−スに吸着させる。
吸着後、遠心(8000×g、10分、4℃)して、グルタチオン・セファロ−スを回収し、5mLのPBSで3回洗浄する。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出する。遠心(8000×g、3分、4℃)して、融合タンパク質を含む上清を回収した後、PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製する。精製後、SDS−PAGEにより、シングルバンドを示す。
各GST融合タンパク質500μgを、PreScissionプロテア−ゼ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、5U)で消化して、N末の融合パートナーGST部を切断分離する。この液をグルタチオン・セファロ−ス・カラムに通して、プロテアーゼとGSTを除去する。グルタチオン・セファロ−ス・カラムのフロー・スルー分画を、さらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、ペプチド融合タンパク質A01−GS−HPR/PBSを最終精製物として得る。
4)親和性ペプチド融合HRPを用いたバイオセンサ
得られるA01−GS−HRPを酸化アルミニウム蒸着白金基板上に、以下の方法により固定化する。
上記で得られるA01−GS−HPR/PBS中に、上記基板を浸漬し、室温にて一晩攪拌する。その後、酸化アルミニウム基板を溶液から引き上げ、0.05%Tween20/リン酸水溶液に浸漬し、3分間攪拌(100rpm)しながら表裏を洗浄する。この操作を3回繰り返す。これにより、HRP固定化基板を得る。
得られたHRP固定化基板を作用電極、対極として白金、参照電極として銀/塩化銀電極を30mMヨウ化カリウム/リン酸水溶液(pH7.4)を満たした容器に浸漬し、酵素電極測定系を作製する。
次に、作用極に電位E1=−300mVvs.Ag/AgClを40秒間印加した後、作用極の電位を0mVvs.Ag/AgClにして、240〜320秒間保持し、次いで、−300mVvs.Ag/AgClにステップする。こうして作用極と対極間の電流挙動が再現性を有するようになるまで0mVvs.Ag/AgClと−300mVvs.Ag/AgClの間での電位ステップを繰り返す。その後、過酸化水素溶液を終濃度10μMになるように添加し、そのときのHRP固定化電極の電流値を測定する。過酸化水素溶液を添加する度に5秒間攪拌し、30〜40秒経過後、0mVからE1=−300mVvs.Ag/AgClに電位ステップする。次いで、電位をE2=0mVvs.Ag/AgClにステップし、その際に作用極と対極間に流れた電流応答をモニタリングする。
次いで、過酸化水素溶液の終濃度50、100、500μMについても同様にモニタリングする。その結果、添加する過酸化水素量に比例したHRP固定化電極電流の増加が観察される。
上記過酸化水素電極は、過酸化水素センサーとして機能することが期待される。
(実施例5)酸化アルミニウム親和性ペプチド融合GroELの作製
アノディスクメンブレンに対する親和性を示すアミノ酸配列Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg(配列番号:1)とリンカー配列GGGSを介して、GroELのN末端に融合してなる、アノディスクメンブレン結合性ペプチド−GroEL融合タンパクを発現する大腸菌発現ベクターを以下のように構築する。
1)酸化アルミニウム親和性ペプチド融合GroELをコードするDNA断片の作製およびプライマーの調製
まず、前記アノディスクメンブレン結合性ペプチド融合タンパク−リンカー配列GGGS−GroEL(A01−GS−GroEL)をコ−ドするDNA(配列番号:134)を合成する。
実施例5−1)と同様に、一連のオーバーラップPCR法を図5に従って順次行う。図5に示す全20種の各種プライマー(Ga、G01、Gb、G02、Gc、G03、Gd、G04、Ge、G05、Gf、G06、Gg、G07、Gh、G08、Gi、G09、Gj、G10、Gk、G11、Gm、G12、Gn、G13、Gp、G14、Gq、G15、Gr、G16、Gs、G17)のDNA配列を配列番号135〜168にそれぞれ示す。図5におけるStep5の伸張反応終了後、完全長のA01−GS−GroEL遺伝子が合成されているか塩基配列を確認する。
A01−GS−GroELに対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:132)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:169)をそれぞれ設計・合成する。この二種のオリゴヌクレオチドをプライマー対に用いて、A01−GS−GroELをテンプレートとしてPCR増幅を行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有する、完全長のPHA合成酵素遺伝子を含むDNAを増幅産物として得る(LA−PCRキット;宝酒造)。
上流側プライマー(配列番号:132):
5’−AGTCGGATCC GTTTATGCGA ATCAGACTCC GCCTTCTAAG GCGCGGGGTG GAGGTTCG−3’
下流側プライマー(配列番号:169):
5’−AGGCCTCGAG TTACATCATG CCGCCCATGC CAC−3’

2)遺伝子導入および融合体の発現、精製
合成された遺伝子配列と前記プライマーを用いて、実施例5−2)同様の操作に行った後、上清から、誘導・発現されたGST融合タンパク質を、グルタチオン・セファロ−ス4B(Glutathion Sepharose 4B beads:アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)で精製する。
なお、誘導・発現されるGST融合タンパク質は、融合パートナーのGSTタンパク質のC末端と、GroELタンパク質のN末端との間に、上記配列番号:1のアミノ酸配列とリンカー配列GSとが連結されるペプチド鎖が挿入されている融合タンパク質GST−A01−GS−GroELである。
使用したグルタチオン・セファロ−スは、予め非特異的吸着を抑える処理を行う。すなわち、グルタチオン・セファロ−スを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、10分、4℃) した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理する。処理後、同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオン・セファロ−ス 400μLを、無細胞抽出液(上清)10mL に添加し、4℃で静かに攪拌する。この攪拌により、融合タンパク質GST−A01−GS−GroELをグルタチオン・セファロ−スに吸着させる。
吸着後、遠心(8000×g、 10分、4℃)して、グルタチオン・セファロ−スを回収し、5mLのPBSで3回洗浄する。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出する。遠心(8000×g、3分、4℃)して、融合タンパク質を含む上清を回収した後、PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製する。精製後、SDS−PAGEにより、シングルバンドを示す。
各GST融合タンパク質500μgを、PreScissionプロテア−ゼ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、5U)で消化して、N末の融合パートナーGST部を切断分離する。この液をグルタチオン・セファロ−ス・カラムに通して、プロテアーゼとGSTを除去する。グルタチオン・セファロ−ス・カラムのフロー・スルー分画を、さらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、ペプチド融合タンパク質A01−GS−GroEL/PBSを最終精製物として得る。
3)親和性ペプチド融合GroELを用いた酵素活性化フィルター
得られるA01−GS−GroELと、酸化アルミニウムナノホールを以下の方法により固定化する。
酸化アルミニウムナノホール内蔵のシリンジフィルタ(メンブレン厚さ60μm、直径10mm、孔径0.2μm、商品名:アノトップ10シリンジフィルタ、Whatman社製)に上記で得られるA01−GS−GroEL 1μM−PBS溶液 10mlを、0.1ml/minの速度で注入する。その後、0.05%Tween20/リン酸水溶液 30mlを0.5ml/minの速度で注入して洗浄する。これにより、タンパク質立体構造を最適化するフィルターを得る。
一方、4M塩酸グアニジン中で変性させて活性を低下させたイーストエノラーゼ(Oriented Yeast Corporation製)を、再生用緩衝液(10mM Mg(CH3COO)2、20mM KCl、5mM ATP、50mM Tris−Cl pH7.8)中、終濃度が15μg/ml、になるように添加し、前記フィルターに2μl/minの速度で注入し、反応させる。
反応終了後のエノラーゼの活性は、0.04mlのエノラーゼ溶液を0.96mlの基質溶液(50mM Tris−Cl、pH7.8、1mM MgCl2、1mM 2−PGA(2−phosphoglyceric acid))と混合し37℃でのホスホエノールピルビン酸の生成による240nmでの吸光度の増加を時間の関数として測定すると、活性回復能が確認される。酸化アルミニウム親和性ペプチドを持たないサブユニットから構成されるGroELに対して、エノラーゼ活性能を比較すると、95%の活性回復能が確認される。比較としてヒスチジンタグがサブユニットすべてに付加したままのGroELの活性回復能と比較したところ80%であったことから、改善が確認できる。
(実施例6)酸化アルミニウム親和性ペプチド類似体融合PHA合成酵素
酸化アルミニウム親和性ペプチドのアミノ酸欠失、置換あるいは付加された改変アミノ酸配列、あるいはそれら2つを複合したアミノ酸配列が親和性を有することを確認するため、実施例3にて高い親和性が示されたペプチド融合タンパク質A01−GS−YN2−C1の親和性ペプチドVal-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg(配列番号:1)について、
アミノ酸4残基を欠如させた配列Tyr-Ala-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Arg(配列番号:170)、
アミノ酸4残基を置換させた配列Leu-Tyr-Ala-Gln-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Arg-Ser-Arg(配列番号:171)、
アミノ酸4残基を付加させた配列Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Arg-Ala-Arg-Ala-Lys-Ala-Arg(配列番号:172)、
さらに配列番号:1と配列番号:170を複合したVal-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg-Tyr-Ala-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Arg(配列番号:173)を各々にリンカー配列GGGSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合してなる、アノディスクメンブレン結合性ペプチド−PHA合成酵素融合体を発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築する。
このアノディスクメンブレン結合性ペプチドとリンカー配列部をコ−ドするDNA断片は、二本鎖DNAとして作製し、融合タンパク質GST−YN2−C1発現用のpGEX−C1プラスミドの適切な制限開裂部位(BamHIおよびSacI)にライゲーションする。その際、配列番号:174〜配列番号:181の合成オリゴヌクレオチドを製造業者の説明に従い、T4ポリヌクレオチドキナ−ゼ(Gibco製)を用いて、末端をリン酸化した。続いて、二種の合成DNAを等モル混合し、80℃で5分間加熱し、その後、室温までゆっくり冷却させることによって、二本鎖DNA断片を形成する。形成された二本鎖DNA断片は、その後のクロ−ニングに直接用いる。その後、実施例3−2同様に遺伝子導入および融合体の発現、精製を行い、A01−GS−YN2−C1からアミノ酸4残基を欠如させたA01M−GS−YN2−C1、アミノ酸4残基を置換させたA01S−GS−YN2−C1、アミノ酸4残基を付加させたA01P−GS−YN2−C1、さらに配列番号:1と配列番号:170を複合したA01W−GS−YN2−C1の10U/mlの精製酵素溶液を得た。
さらに、得られたペプチド融合タンパク質について、実施例3−3同様に親和性評価を行い、酵素活性を測定し、その結果を表10に示す。
Figure 2005204609
コントロ−ルの酵素タンパク質YN2−C1と比較して、N末に酸化アルミニウムに対する結合能を有するアミノ酸配列のペプチド鎖を融合している酵素タンパク質A01−GS−YN2−C1とほぼ同様、A01M−GS−YN2−C1、A01S−GS−YN2−C1、A01P−GS−YN2−C1、A01W−GS−YN2−C1について観測される酵素活性は高い。このことにより、前記酸化アルミニウム親和性ペプチドのアミノ酸配列のうち、数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列、あるいはそれら2以上の複合アミノ酸配列、のうちのいずれかが融合された酵素タンパク質が、それらが位置するN末を介して、有効に酸化アルミニウムからなる基材表面に固定化できることが確認された。
本発明は、有機物固定化構造体、例えば、表面に生体物質を固定化した基板において、固定がなされる基板表面として、酸化アルミニウム層を設け、一方、固定する有機物は、生体物質自体を機能ドメインとして、前記酸化アルミニウム層に対する結合能を有する結合ドメインを、この機能ドメインに連結した構成とすることにより、機能ドメインである生体物質部分は、基板表面と直接接触することなく、連結されている結合ドメインによって、その酸化アルミニウム結合能による選択的な固定を可能としている。この独立に設けられている結合ドメインを介して、基板表面に固定化されている生体物質は、その本来の機能に対する固定化の影響は及ばず、また、固定化に際して、なんらの試薬を利用していないため、その機能に影響を及ぼす化学反応を被ることもない。従って、本発明を適用することで得られる、生体物質固定化基体では、固定化されている生体物質は、その機能に対する影響を最小限に抑え、効率的かつ高配向に基板表面上に固定されたものとなる。
つまり、本発明は、生体物質などの有機物を基体表面に固定化して、前記有機物の有する種々の生理的機能を利用する、バイオセンサーやバイオリアクタを初めとする、各種の生体物質の機能を応用する製品の高性能化に利用可能である。
本発明にかかる有機物固定化構造体の一例における、構造体の構成を模式的に示す断面図である。 本発明にかかる有機物固定化構造体の一例における、構造体の構成を模式的に示す断面図である。 本発明にかかる有機物固定化構造体の一例における、構造体の構成を模式的に示す断面図である。 実施例4で用いたPCRによる長鎖DNA合成に使用したプライマー構成と、合成ステップ(ステップ1〜4)を示す図である。 実施例5で用いたPCRによる長鎖DNA合成に使用したプライマー構成と、合成ステップ(ステップ1〜5)を示す図である。
符号の説明
11 基板
12 酸化アルミニウム層
14 機能ドメイン(酵素タンパク質)
15 結合ドメイン
15a 酸化アルミニウム親和性ペプチド
21 導電性基板
22 酸化アルミニウム多孔体

Claims (14)

  1. 基体に有機物を固定化するためのキットであって、
    前記キットは、
    表面の少なくとも一部に酸化アルミニウムを含む基体と、
    前記酸化アルミニウムに対して結合能を有し、且つ前記有機物と連結されている、前記基体に前記有機物を固定化するための結合ドメインとを有し、
    前記結合ドメインは、少なくとも、1つ以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでおり、前記基体と前記結合ドメインを接触させたときに、前記ペプチドが前記酸化アルミニウムと特異的に結合することにより前記有機物が前記基体に固定化される
    ことを特徴とするキット。
  2. 前記有機物が、生体物質を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載のキット。
  3. 前記有機物と前記結合ドメインとの連結部に、
    少なくとも1つ以上のアミノ酸からなるリンカーを更に有する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のキット。
  4. 前記酸化アルミニウムに対する結合能を有するアミノ酸配列を含んでなるペプチドは、
    下記配列番号1〜32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列、もしくはそれらアミノ酸配列を2以上含んでなる複合アミノ酸配列、またはそれらアミノ酸配列の繰り返し配列からなる
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のキット。
    Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg (配列番号:1)
    Gln-Ser-Ser-Ile-Thr-Thr-Arg-Asn-Pro-Phe-Met-Thr (配列番号:2)
    Phe-Met-Asn-His-His-Pro-Asn-Ser-Gln-Gln-Tyr-His (配列番号:3)
    Gln-Tyr-Thr-Ser-Ser-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Ser-Ala (配列番号:4)
    His-His-His-Pro-Glu-Asn-Leu-Asp-Ser-Thr-Phe-Gln (配列番号:5)
    Gln-Pro-His-Met-His-Arg-Ser-Ser-His-Gln-Asp-Gly (配列番号:6)
    Asn-Thr-Thr-Met-Gly-Pro-Met-Ser-Pro-His-Ser-Gln (配列番号:7)
    Ala-Ala-His-Phe-Glu-Pro-Gln-Thr-Met-Pro-Met-Ile (配列番号:8)
    Asp-His-Gln-Leu-His-Arg-Pro-Pro-His-Met-Met-Arg (配列番号:9)
    Val-Ser-Arg-His-Gln-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:10)
    Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Asn-Ala-Gln (配列番号:11)
    Val-Thr-Leu-His-Thr-Val-Asp-His-Ala-Pro-Gln-Asp (配列番号:12)
    Ser-Val-Ser-Val-Gly-Met-Lys-Pro-Ser-Pro-Arg-Pro (配列番号:13)
    His-Leu-Gln-Ser-Met-Lys-Pro-Arg-Thr-His-Val-Leu (配列番号:14)
    Ile-Pro-Asn-Ala-Glu-Thr-Leu-Arg-Gln-Pro-Ala-Arg (配列番号:15)
    Val-Gly-Val-Ile-Ser-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:16)
    Thr-Val-Pro-Ile-Tyr-Asn-Thr-Gly-Ile-Leu-Pro-Thr (配列番号:17)
    Tyr-Thr-Met-His-His-Gly-Ser-Thr-Phe-Met-Arg-Arg (配列番号:18)
    Ser-Met-Met-His-Val-Asn-Ile-Arg-Leu-Gly-Ile-Leu (配列番号:19)
    Ala-Pro-Met-His-His-Met-Lys-Ser-Leu-Tyr-Arg-Ala (配列番号:20)
    Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Met-Arg-Arg (配列番号:21)
    Met-Lys-Thr-His-His-Gly-Asn-Asn-Ala-Val-Phe-Leu (配列番号:22)
    Leu-Glu-Pro-Leu-Pro-His-Thr-Pro-Arg-Met-Tyr-Ala (配列番号:23)
    Gln-Leu-Tyr-Glu-Pro-Asp-Ser-Gly-Pro-Trp-Ala-Pro (配列番号:24)
    Trp-Met-Thr-Lys-Met-Pro-Thr-Thr-His-Thr-Arg-Tyr (配列番号:25)
    His-His-Pro-Met-Tyr-Ser-Met-Thr-Arg-Ala-Leu-Pro (配列番号:26)
    Gly-Ser-Ala-His-Ser-Arg-Asn-Asp-Ala-Ala-Pro-Val (配列番号:27)
    His-Ser-Pro-Leu-Met-Gln-Tyr-His-Met-Ser-Gly-Thr (配列番号:28)
    Thr-Ala-His-Met-Thr-Met-Pro-Ser-Arg-Phe-Leu-Pro (配列番号:29)
    Ala-Cys-Pro-Pro-Thr-Gln-Ser-Arg-Tyr-Cys (配列番号:30)
    Ala-Cys-Asn-Gly-Met-Leu-Ala-Phe-Gln-Cys (配列番号:31)
    Ala-Cys-Thr-Pro-Lys-Pro-Gly-Lys-His-Cys (配列番号:32)
  5. 前記配列番号30〜32のいずれかのアミノ酸配列部は、含まれるCysアミノ酸残基間における分子内ジスルフィド結合により環状構造を形成し得る
    ことを特徴とする請求項4に記載のキット。
  6. 基体の表面に有機物が固定化された構造体であって、
    前記表面の少なくとも一部に酸化アルミニウムを含む基体と、
    前記酸化アルミニウムに対して結合能を有し、且つ前記有機物と連結されている、前記基体に前記有機物を固定化するための結合ドメインとを有し、
    前記結合ドメインは、少なくとも1つ以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでおり、前記ペプチドが前記酸化アルミニウムに特異的に結合することにより、前記有機物が前記結合ドメインを介して前記基体の表面に固定化されている
    ことを特徴とする構造体。
  7. 前記有機物が、標的物質を補足するための捕捉分子である
    ことを特徴とする請求項6に記載の構造体。
  8. 前記有機物が、物質を変換するための機能を有する分子である
    ことを特徴とする請求項6に記載の構造体。
  9. 基体に有機物が固定化された構造体の製造方法であって、
    表面の少なくとも一部に酸化アルミニウムを含む基体と、前記酸化アルミニウムに対して結合能を有し、且つ前記有機物と連結されている結合ドメインとからなる、有機物−結合ドメイン融合体とを用意する工程と、
    前記融合体を前記基体の表面に接触させることにより、前記結合ドメインが有する前記酸化アルミニウムに対して結合能を有するペプチドが前記酸化アルミニウムに特異的に結合し、前記有機物を前記基体に固定化する工程とを有する
    ことを特徴とする、構造体の製造方法。
  10. 前記有機物は、タンパク質を含んでなる生体物質であり、
    前記タンパク質のアミノ酸配列と前記結合ドメインに含まれるアミノ酸配列とを連結してコードするように連結されてなる塩基配列を有する連結遺伝子に基づき、前記結合ドメインに含まれるペプチド部分を前記生体物質に含まれるタンパク質に連結してなる融合体型タンパク質を発現させることにより、前記有機物−結合ドメイン融合体を得る工程を更に有する
    ことを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
  11. 下記配列番号1〜32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列、もしくはそれらアミノ酸配列を2以上含んでなる複合アミノ酸配列、またはそれらアミノ酸配列の繰り返し配列のいずれかを含んでなり、
    前記アミノ酸配列は、酸化アルミニウムに対する親和性を有する
    ことを特徴とするペプチド。
    Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg (配列番号:1)
    Gln-Ser-Ser-Ile-Thr-Thr-Arg-Asn-Pro-Phe-Met-Thr (配列番号:2)
    Phe-Met-Asn-His-His-Pro-Asn-Ser-Gln-Gln-Tyr-His (配列番号:3)
    Gln-Tyr-Thr-Ser-Ser-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Ser-Ala (配列番号:4)
    His-His-His-Pro-Glu-Asn-Leu-Asp-Ser-Thr-Phe-Gln (配列番号:5)
    Gln-Pro-His-Met-His-Arg-Ser-Ser-His-Gln-Asp-Gly (配列番号:6)
    Asn-Thr-Thr-Met-Gly-Pro-Met-Ser-Pro-His-Ser-Gln (配列番号:7)
    Ala-Ala-His-Phe-Glu-Pro-Gln-Thr-Met-Pro-Met-Ile (配列番号:8)
    Asp-His-Gln-Leu-His-Arg-Pro-Pro-His-Met-Met-Arg (配列番号:9)
    Val-Ser-Arg-His-Gln-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:10)
    Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Asn-Ala-Gln (配列番号:11)
    Val-Thr-Leu-His-Thr-Val-Asp-His-Ala-Pro-Gln-Asp (配列番号:12)
    Ser-Val-Ser-Val-Gly-Met-Lys-Pro-Ser-Pro-Arg-Pro (配列番号:13)
    His-Leu-Gln-Ser-Met-Lys-Pro-Arg-Thr-His-Val-Leu (配列番号:14)
    Ile-Pro-Asn-Ala-Glu-Thr-Leu-Arg-Gln-Pro-Ala-Arg (配列番号:15)
    Val-Gly-Val-Ile-Ser-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:16)
    Thr-Val-Pro-Ile-Tyr-Asn-Thr-Gly-Ile-Leu-Pro-Thr (配列番号:17)
    Tyr-Thr-Met-His-His-Gly-Ser-Thr-Phe-Met-Arg-Arg (配列番号:18)
    Ser-Met-Met-His-Val-Asn-Ile-Arg-Leu-Gly-Ile-Leu (配列番号:19)
    Ala-Pro-Met-His-His-Met-Lys-Ser-Leu-Tyr-Arg-Ala (配列番号:20)
    Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Met-Arg-Arg (配列番号:21)
    Met-Lys-Thr-His-His-Gly-Asn-Asn-Ala-Val-Phe-Leu (配列番号:22)
    Leu-Glu-Pro-Leu-Pro-His-Thr-Pro-Arg-Met-Tyr-Ala (配列番号:23)
    Gln-Leu-Tyr-Glu-Pro-Asp-Ser-Gly-Pro-Trp-Ala-Pro (配列番号:24)
    Trp-Met-Thr-Lys-Met-Pro-Thr-Thr-His-Thr-Arg-Tyr (配列番号:25)
    His-His-Pro-Met-Tyr-Ser-Met-Thr-Arg-Ala-Leu-Pro (配列番号:26)
    Gly-Ser-Ala-His-Ser-Arg-Asn-Asp-Ala-Ala-Pro-Val (配列番号:27)
    His-Ser-Pro-Leu-Met-Gln-Tyr-His-Met-Ser-Gly-Thr (配列番号:28)
    Thr-Ala-His-Met-Thr-Met-Pro-Ser-Arg-Phe-Leu-Pro (配列番号:29)
    Ala-Cys-Pro-Pro-Thr-Gln-Ser-Arg-Tyr-Cys (配列番号:30)
    Ala-Cys-Asn-Gly-Met-Leu-Ala-Phe-Gln-Cys (配列番号:31)
    Ala-Cys-Thr-Pro-Lys-Pro-Gly-Lys-His-Cys (配列番号:32)
  12. ペプチド鎖をコードするDNA分子であって、
    前記ペプチド鎖は、
    下記配列番号1〜32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列、もしくはそれらアミノ酸配列を2以上含んでなる複合アミノ酸配列、またはそれらアミノ酸配列の繰り返し配列のいずれかを含んでなり、
    前記アミノ酸配列は、酸化アルミニウムに対する親和性を有する
    ことを特徴とするDNA分子。
    Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg (配列番号:1)
    Gln-Ser-Ser-Ile-Thr-Thr-Arg-Asn-Pro-Phe-Met-Thr (配列番号:2)
    Phe-Met-Asn-His-His-Pro-Asn-Ser-Gln-Gln-Tyr-His (配列番号:3)
    Gln-Tyr-Thr-Ser-Ser-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Ser-Ala (配列番号:4)
    His-His-His-Pro-Glu-Asn-Leu-Asp-Ser-Thr-Phe-Gln (配列番号:5)
    Gln-Pro-His-Met-His-Arg-Ser-Ser-His-Gln-Asp-Gly (配列番号:6)
    Asn-Thr-Thr-Met-Gly-Pro-Met-Ser-Pro-His-Ser-Gln (配列番号:7)
    Ala-Ala-His-Phe-Glu-Pro-Gln-Thr-Met-Pro-Met-Ile (配列番号:8)
    Asp-His-Gln-Leu-His-Arg-Pro-Pro-His-Met-Met-Arg (配列番号:9)
    Val-Ser-Arg-His-Gln-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:10)
    Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Asn-Ala-Gln (配列番号:11)
    Val-Thr-Leu-His-Thr-Val-Asp-His-Ala-Pro-Gln-Asp (配列番号:12)
    Ser-Val-Ser-Val-Gly-Met-Lys-Pro-Ser-Pro-Arg-Pro (配列番号:13)
    His-Leu-Gln-Ser-Met-Lys-Pro-Arg-Thr-His-Val-Leu (配列番号:14)
    Ile-Pro-Asn-Ala-Glu-Thr-Leu-Arg-Gln-Pro-Ala-Arg (配列番号:15)
    Val-Gly-Val-Ile-Ser-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:16)
    Thr-Val-Pro-Ile-Tyr-Asn-Thr-Gly-Ile-Leu-Pro-Thr (配列番号:17)
    Tyr-Thr-Met-His-His-Gly-Ser-Thr-Phe-Met-Arg-Arg (配列番号:18)
    Ser-Met-Met-His-Val-Asn-Ile-Arg-Leu-Gly-Ile-Leu (配列番号:19)
    Ala-Pro-Met-His-His-Met-Lys-Ser-Leu-Tyr-Arg-Ala (配列番号:20)
    Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Met-Arg-Arg (配列番号:21)
    Met-Lys-Thr-His-His-Gly-Asn-Asn-Ala-Val-Phe-Leu (配列番号:22)
    Leu-Glu-Pro-Leu-Pro-His-Thr-Pro-Arg-Met-Tyr-Ala (配列番号:23)
    Gln-Leu-Tyr-Glu-Pro-Asp-Ser-Gly-Pro-Trp-Ala-Pro (配列番号:24)
    Trp-Met-Thr-Lys-Met-Pro-Thr-Thr-His-Thr-Arg-Tyr (配列番号:25)
    His-His-Pro-Met-Tyr-Ser-Met-Thr-Arg-Ala-Leu-Pro (配列番号:26)
    Gly-Ser-Ala-His-Ser-Arg-Asn-Asp-Ala-Ala-Pro-Val (配列番号:27)
    His-Ser-Pro-Leu-Met-Gln-Tyr-His-Met-Ser-Gly-Thr (配列番号:28)
    Thr-Ala-His-Met-Thr-Met-Pro-Ser-Arg-Phe-Leu-Pro (配列番号:29)
    Ala-Cys-Pro-Pro-Thr-Gln-Ser-Arg-Tyr-Cys (配列番号:30)
    Ala-Cys-Asn-Gly-Met-Leu-Ala-Phe-Gln-Cys (配列番号:31)
    Ala-Cys-Thr-Pro-Lys-Pro-Gly-Lys-His-Cys (配列番号:32)
  13. 少なくとも一部にタンパク質を含む有機物と、酸化アルミニウムに対して結合能を有する結合ドメインとを含む有機物−結合ドメイン融合体を宿主細胞内で発現させる能力を有する発現用ベクターであって、
    前記結合ドメインは、少なくとも1つ以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでおり、
    前記ペプチドは、下記配列番号1〜32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列、もしくはそれらアミノ酸配列を2以上含んでなる複合アミノ酸配列、またはそれらアミノ酸配列の繰り返し配列のいずれかを含んでいることを特徴とする発現用ベクター。
    Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg (配列番号:1)
    Gln-Ser-Ser-Ile-Thr-Thr-Arg-Asn-Pro-Phe-Met-Thr (配列番号:2)
    Phe-Met-Asn-His-His-Pro-Asn-Ser-Gln-Gln-Tyr-His (配列番号:3)
    Gln-Tyr-Thr-Ser-Ser-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Ser-Ala (配列番号:4)
    His-His-His-Pro-Glu-Asn-Leu-Asp-Ser-Thr-Phe-Gln (配列番号:5)
    Gln-Pro-His-Met-His-Arg-Ser-Ser-His-Gln-Asp-Gly (配列番号:6)
    Asn-Thr-Thr-Met-Gly-Pro-Met-Ser-Pro-His-Ser-Gln (配列番号:7)
    Ala-Ala-His-Phe-Glu-Pro-Gln-Thr-Met-Pro-Met-Ile (配列番号:8)
    Asp-His-Gln-Leu-His-Arg-Pro-Pro-His-Met-Met-Arg (配列番号:9)
    Val-Ser-Arg-His-Gln-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:10)
    Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Asn-Ala-Gln (配列番号:11)
    Val-Thr-Leu-His-Thr-Val-Asp-His-Ala-Pro-Gln-Asp (配列番号:12)
    Ser-Val-Ser-Val-Gly-Met-Lys-Pro-Ser-Pro-Arg-Pro (配列番号:13)
    His-Leu-Gln-Ser-Met-Lys-Pro-Arg-Thr-His-Val-Leu (配列番号:14)
    Ile-Pro-Asn-Ala-Glu-Thr-Leu-Arg-Gln-Pro-Ala-Arg (配列番号:15)
    Val-Gly-Val-Ile-Ser-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:16)
    Thr-Val-Pro-Ile-Tyr-Asn-Thr-Gly-Ile-Leu-Pro-Thr (配列番号:17)
    Tyr-Thr-Met-His-His-Gly-Ser-Thr-Phe-Met-Arg-Arg (配列番号:18)
    Ser-Met-Met-His-Val-Asn-Ile-Arg-Leu-Gly-Ile-Leu (配列番号:19)
    Ala-Pro-Met-His-His-Met-Lys-Ser-Leu-Tyr-Arg-Ala (配列番号:20)
    Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Met-Arg-Arg (配列番号:21)
    Met-Lys-Thr-His-His-Gly-Asn-Asn-Ala-Val-Phe-Leu (配列番号:22)
    Leu-Glu-Pro-Leu-Pro-His-Thr-Pro-Arg-Met-Tyr-Ala (配列番号:23)
    Gln-Leu-Tyr-Glu-Pro-Asp-Ser-Gly-Pro-Trp-Ala-Pro (配列番号:24)
    Trp-Met-Thr-Lys-Met-Pro-Thr-Thr-His-Thr-Arg-Tyr (配列番号:25)
    His-His-Pro-Met-Tyr-Ser-Met-Thr-Arg-Ala-Leu-Pro (配列番号:26)
    Gly-Ser-Ala-His-Ser-Arg-Asn-Asp-Ala-Ala-Pro-Val (配列番号:27)
    His-Ser-Pro-Leu-Met-Gln-Tyr-His-Met-Ser-Gly-Thr (配列番号:28)
    Thr-Ala-His-Met-Thr-Met-Pro-Ser-Arg-Phe-Leu-Pro (配列番号:29)
    Ala-Cys-Pro-Pro-Thr-Gln-Ser-Arg-Tyr-Cys (配列番号:30)
    Ala-Cys-Asn-Gly-Met-Leu-Ala-Phe-Gln-Cys (配列番号:31)
    Ala-Cys-Thr-Pro-Lys-Pro-Gly-Lys-His-Cys (配列番号:32)
  14. 有機物と、酸化アルミニウムに対して結合能を有する結合ドメインとを含む有機物−結合ドメイン融合体であって、
    前記結合ドメインは、少なくとも1つ以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでおり、
    前記ペプチドは、下記配列番号1〜32に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列、もしくはそれらアミノ酸配列を2以上含んでなる複合アミノ酸配列、またはそれらアミノ酸配列の繰り返し配列のいずれかを含んでいることを特徴とする有機物−結合ドメイン融合体。
    Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg (配列番号:1)
    Gln-Ser-Ser-Ile-Thr-Thr-Arg-Asn-Pro-Phe-Met-Thr (配列番号:2)
    Phe-Met-Asn-His-His-Pro-Asn-Ser-Gln-Gln-Tyr-His (配列番号:3)
    Gln-Tyr-Thr-Ser-Ser-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Ser-Ala (配列番号:4)
    His-His-His-Pro-Glu-Asn-Leu-Asp-Ser-Thr-Phe-Gln (配列番号:5)
    Gln-Pro-His-Met-His-Arg-Ser-Ser-His-Gln-Asp-Gly (配列番号:6)
    Asn-Thr-Thr-Met-Gly-Pro-Met-Ser-Pro-His-Ser-Gln (配列番号:7)
    Ala-Ala-His-Phe-Glu-Pro-Gln-Thr-Met-Pro-Met-Ile (配列番号:8)
    Asp-His-Gln-Leu-His-Arg-Pro-Pro-His-Met-Met-Arg (配列番号:9)
    Val-Ser-Arg-His-Gln-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:10)
    Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Asn-Ala-Gln (配列番号:11)
    Val-Thr-Leu-His-Thr-Val-Asp-His-Ala-Pro-Gln-Asp (配列番号:12)
    Ser-Val-Ser-Val-Gly-Met-Lys-Pro-Ser-Pro-Arg-Pro (配列番号:13)
    His-Leu-Gln-Ser-Met-Lys-Pro-Arg-Thr-His-Val-Leu (配列番号:14)
    Ile-Pro-Asn-Ala-Glu-Thr-Leu-Arg-Gln-Pro-Ala-Arg (配列番号:15)
    Val-Gly-Val-Ile-Ser-Ser-Trp-His-Pro-His-Asp-Leu (配列番号:16)
    Thr-Val-Pro-Ile-Tyr-Asn-Thr-Gly-Ile-Leu-Pro-Thr (配列番号:17)
    Tyr-Thr-Met-His-His-Gly-Ser-Thr-Phe-Met-Arg-Arg (配列番号:18)
    Ser-Met-Met-His-Val-Asn-Ile-Arg-Leu-Gly-Ile-Leu (配列番号:19)
    Ala-Pro-Met-His-His-Met-Lys-Ser-Leu-Tyr-Arg-Ala (配列番号:20)
    Met-Met-Gln-Arg-Asp-His-His-Gln-His-Met-Arg-Arg (配列番号:21)
    Met-Lys-Thr-His-His-Gly-Asn-Asn-Ala-Val-Phe-Leu (配列番号:22)
    Leu-Glu-Pro-Leu-Pro-His-Thr-Pro-Arg-Met-Tyr-Ala (配列番号:23)
    Gln-Leu-Tyr-Glu-Pro-Asp-Ser-Gly-Pro-Trp-Ala-Pro (配列番号:24)
    Trp-Met-Thr-Lys-Met-Pro-Thr-Thr-His-Thr-Arg-Tyr (配列番号:25)
    His-His-Pro-Met-Tyr-Ser-Met-Thr-Arg-Ala-Leu-Pro (配列番号:26)
    Gly-Ser-Ala-His-Ser-Arg-Asn-Asp-Ala-Ala-Pro-Val (配列番号:27)
    His-Ser-Pro-Leu-Met-Gln-Tyr-His-Met-Ser-Gly-Thr (配列番号:28)
    Thr-Ala-His-Met-Thr-Met-Pro-Ser-Arg-Phe-Leu-Pro (配列番号:29)
    Ala-Cys-Pro-Pro-Thr-Gln-Ser-Arg-Tyr-Cys (配列番号:30)
    Ala-Cys-Asn-Gly-Met-Leu-Ala-Phe-Gln-Cys (配列番号:31)
    Ala-Cys-Thr-Pro-Lys-Pro-Gly-Lys-His-Cys (配列番号:32)
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