JP5026770B2 - 超音波探触子及び超音波診断装置 - Google Patents
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近年、cMUT(Capative Micromachined Ultrasonic Transducer)を用いた超音波探触子が開発されている。cMUTは、半導体微細加工プロセスにより製造される超微細容量型超音波振動子である。cMUTでは、バイアス電圧の大きさに応じて超音波送受信感度すなわち電気機械結合係数が変化する。尚、バイアス電圧は、超音波送受信部から供給される駆動信号に重畳して印加される(例えば、[特許文献1]参照。)。PZT(ジルコンチタン酸鉛)探触子では、パルス特性に尾引きが残留しやすい。一方、cMUT探触子では、パルス特性が大幅に改善されて距離分解能が向上する。さらに、周波数特性も広帯域となるのでペネトレーション(深達度)も向上する。
最初に、図1を参照しながら、超音波診断装置1の構成について説明する。
図1は、超音波診断装置1の構成図である。
超音波診断装置1は、超音波探触子2、送信手段4、バイアス手段6、受信手段8、整相加算手段10、画像処理手段12、表示手段14、制御手段16、操作手段18から構成される。
受信手段8は、超音波探触子2から出力される反射エコー信号を受信する装置である。受信手段8は、さらに、受信した反射エコー信号に対してアナログデジタル変換等の処理を行う。
画像処理手段12は、整相加算された反射エコー信号に基づいて診断画像(例えば、断層像や血流像)を構成する装置である。
表示部18は、画像処理された診断画像を表示する表示装置である。
制御手段16は、上述した各構成要素を制御する装置である。
操作手段18は、制御手段16に指示を与える装置である。操作手段18は、例えば、トラックボールやキーボードやマウス等の入力機器である。
次に、図2〜図4を参照しながら、超音波探触子2について説明する。
図2は、超音波探触子2の構成図である。図2は、超音波探触子2の一部切り欠き斜視図である。
超音波探触子2は、cMUTチップ20を備える。cMUTチップ20は、複数の振動子21−1、振動子21−2、…が短柵状に配列された1次元アレイ型の振動子群である。振動子21−1、振動子21−2、…には、複数の振動要素28が配設される。尚、2次元アレイ型やコンベックス型等の他の形態の振動子群を用いてもよい。
cMUTチップ20の背面側には、バッキング層22が設けられる。cMUTチップ20の超音波射出側には、音響レンズ26が設けられる。cMUTチップ20及びバッキング層22は、超音波探触子カバー25に格納される。
バッキング層22は、cMUTチップ20から背面側に射出される超音波の伝搬を吸収して、余分な振動を抑制する層である。
音響レンズ26は、cMUTチップ20から送波される超音波ビームを収束させるレンズである。音響レンズ26は、1つの焦点距離に基づいて曲率が定められる。
図3は、振動子21の構成図である。
振動要素28の上部電極46は、長軸方向Xに区分された振動子21毎に結線される。すなわち、上部電極46−1、上部電極46−2、…は、長軸方向Xに並列配置される。
振動要素28の下部電極48は、短軸方向Yに区分された区分毎に結線される。すなわち、下部電極48−1、下部電極48−2、…は、短軸方向Yに並列配置される。
図4は、振動要素28の構成図である。図4は、1つの振動要素28の断面図である。
振動要素28は、基板40、膜体44、膜体45、上部電極46、枠体47、下部電極48から構成される。振動要素28は、半導体プロセスによる微細加工により形成される。尚、振動要素28は、cMUTの1素子分に相当する。
膜体44及び枠体47は、シリコン化合物等の半導体化合物から形成される。膜体44は、枠体47の超音波射出側に設けられる。膜体44と枠体47との間に上部電極46が設けられる。基板40と膜体45との間に下部電極48が設けられる。枠体47及び膜体45により区画された内部空間50は、真空状態とされるか、あるいは、所定のガスにより充填される。
上部電極46及び下部電極48は、それぞれ、駆動信号として交流高周波電圧を供給する送信手段4と、バイアス電圧として直流電圧を印加するバイアス手段6とに接続される。
また、振動要素28に上部電極46及び下部電極48を介して、直流のバイアス電圧(Vb)が印加されると、バイアス電圧(Vb)により電界が発生する。発生した電界により膜体44が緊張して所定の電気機械結合係数(Sb)になる。送信手段4から上部電極46に駆動信号が供給されると、電気機械結合係数(Sb)に基づいて超音波が膜体44から射出される。
一方、超音波を受波する場合には、被検体から発生した反射エコー信号により膜体44が励起されて内部空間50の容量が変化する。この内部空間50の変化量に基づいて、電気信号が上部電極46を介して検出される。
次に、図5〜図13を参照しながら、第1の実施形態について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る超音波探触子2を示す図である。図5は、図2の超音波探触子2の平面A断面図である。
音響レンズ26の上面は、少なくとも領域23の範囲内において、超音波照射方向に凸状である。音響レンズ26の上面は、領域23の境界部分にV字状凹部を有する。cMUTチップ20には、少なくとも領域23に対応する範囲内に、振動要素28が配置される。音響レンズ26の凸状の部分から超音波が照射される。
音響レンズ26の下面は、cMUTチップ20の周縁に対応する位置に、U字状凹部を有する。このU字状凹部には、cMUTチップ20とフレキシブル基板72との接続部分(光硬化樹脂88の部分)が嵌合される。
図6は、超音波探触子2の接続を示す模式図である。
上部電極46は、ケーブル96及び送受分離回路98を介して受信アンプ100及び送信手段4に接続される。下部電極48は、ケーブル102を介してバイアス手段6に接続される。
抵抗110は、バイアス手段6の電位をグランド電位に安定化させる抵抗素子である。コンデンサ112は、信号電流のバイパス用の容量素子である。
図7は、超音波探触子2の配線を示す図である。
cMUTチップ20の基板40は、バッキング層22の上面に固定される。フレキシブル基板72は、バッキング層22の上面周縁に固定される。
フレキシブル基板72には、紙面上下で対になる信号パターン38−1〜信号パターン38−n及び紙面左右で対になる信号パターン41−1〜信号パターン41−4が配設される。
また、信号パターン38−1〜信号パターン38−nは紙面上下に対にして設けられ、信号パターン48−1〜信号パターン48−4は紙面左右に対にして設けられるものとして説明したが、これに限られず、対にせずに片方だけでもよい。
また、信号パターンと上部電極又は下部電極とがワイヤボンディング方式により接続されるものとして説明したが、これに限られず、パッド同士で接続するフリップチップボンディング方式を用いてもよい。
図8は、接着層90の厚さ毎に伝達関数を示す図である。
図9〜図13は、接着層90の厚さ毎にインパルス応答を示す図である。
グラフ201が示すように、最薄の接着層厚10μmにおける周波数特性が最も良好である。
グラフ211は、他のグラフ212〜グラフ215と比較して、超音波ビーム形状がシャープであり、サイドローブも小さい。
以上説明したように、第1の実施形態では、cMUTチップ20上部の接着層90の厚さを薄くすることにより、接着層90による音響特性への影響を抑制し、パルス特性や周波数特性を向上させることができる。望ましくは、接着層90の厚さを10μm程度あるいは10μm以下とする。
次に、図14を参照しながら、第2の実施形態について説明する。
図14は、第2の実施形態に係る超音波探触子2aを示す図である。
また、音響レンズ26aの上面にV字状凹部が存在しないので、レンズ面形状に起因する撮像時の画像の「抜け」を防止して、超音波画像の画質を向上させることができる。
図15は、第3の実施形態に係る超音波探触子2bを示す図である。
また、超音波送受信面とcMUTチップとの間は、音響レンズ及び2層の絶縁層により三重絶縁される。これにより、超音波探触子の絶縁性を高めて安全性を向上させることができる。
さらに、絶縁層としての絶縁膜78bの下方にグランド層としての導電膜76bが設けられる。これにより、音響レンズ26b及び絶縁膜78bが破損した場合でも導電膜76bがグランド電位のために感電を防止し、超音波探触子の安全性を向上させることができる。
図16は、第4の実施形態に係る超音波探触子2cを示す図である。
また、平滑化樹脂層120を形成することにより、接着層90cの厚さを薄くしても音響レンズ26cの下面を平坦とすることができ、音響レンズ26cの成形や超音波探触子の製作が容易である。
上述の実施の形態では、絶縁層を形成する場合には、膜厚を1μm程度とすることが望ましい。絶縁層の膜厚をそれぞれ薄くすることにより、cMUTチップにおいて送受される超音波への影響(パルス特性・周波数特性への影響や減衰)を抑制することができる。
2………超音波探触子
4………送信手段
6………バイアス手段
8………受信手段
10………整相加算手段
12………画像処理手段
14………表示手段
16………制御手段
18………操作手段
20………cMUTチップ
21−1、21−2、…、………振動子
22………バッキング層
25………超音波探触子カバー
26………音響レンズ
28………振動要素
40………基板
46………上部電極
48………下部電極
72………フレキシブル基板
70、71………接着層
90………接着層
78………絶縁膜(絶縁層)
86………ワイヤ
88………光硬化樹脂
26a、26b、26c………音響レンズ
74b、78b………絶縁膜
76b………導電膜
90a、90b、90c………接着層
108………グランド
120………平滑化樹脂層
Claims (4)
- バイアス電圧に応じて電気機械結合係数または感度が変化する複数の振動要素を有し超音波を送受波するcMUTチップと、前記cMUTチップの上方に設けられる音響レンズと、前記cMUTチップの下方に設けられるバッキング層と、前記cMUTチップに接続されるワイヤと、を備える超音波探触子において、
少なくとも前記cMUTチップの上方の前記超音波が通過する領域では、前記cMUTチップに前記ワイヤが接続される部分の上方の領域と比較して、前記音響レンズと前記cMUTチップとを接着する接着層の厚さを薄くし、
前記超音波が通過する領域では、超音波ビーム形状がシャープとなるような前記音響レンズと前記cMUTチップとを接着する接着層の厚さとし、
前記音響レンズは、その下面の前記超音波が通過する領域において下方に突出する突出部を備えることを特徴とする超音波探触子。 - バイアス電圧に応じて電気機械結合係数または感度が変化する複数の振動要素を有し超音波を送受波するcMUTチップと、前記cMUTチップの上方に設けられる音響レンズと、前記cMUTチップの下方に設けられるバッキング層と、前記cMUTチップに接続されるワイヤと、を備える超音波探触子において、
少なくとも前記cMUTチップの上方の前記超音波が通過する領域では、前記cMUTチップに前記ワイヤが接続される部分の上方の領域と比較して、前記音響レンズと前記cMUTチップとを接着する接着層の厚さを薄くし、
前記超音波が通過する領域では、前記音響レンズと前記cMUTチップとを接着する接着層の厚さを略10μm以下とし、
前記音響レンズは、その下面の前記超音波が通過する領域において下方に突出する突出部を備えることを特徴とする超音波探触子。 - 前記音響レンズと前記cMUTチップとを接着する接着層の材質は、前記音響レンズと類似の材質であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波探触子。
- 被検体に超音波を送受信する超音波探触子と、前記超音波探触子から出力される超音波受信信号に基づいて超音波画像を構成する画像処理部と、前記超音波画像を表示する表示部と、を備える超音波診断装置において、
前記超音波探触子は請求項1から請求項3までのいずれかに記載の超音波探触子であることを特徴とする超音波診断装置。
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