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JP5006242B2 - 面発光半導体レーザ素子 - Google Patents

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JP5006242B2 JP2008092181A JP2008092181A JP5006242B2 JP 5006242 B2 JP5006242 B2 JP 5006242B2 JP 2008092181 A JP2008092181 A JP 2008092181A JP 2008092181 A JP2008092181 A JP 2008092181A JP 5006242 B2 JP5006242 B2 JP 5006242B2
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Description

本発明は、面発光半導体レーザ素子に関し、更に詳しくは、基本横モード発振を実現する面発光半導体レーザ素子に関する。
垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL:Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser、以下、単に面発光レーザと称する)は、その名の通り、光の共振方向が基板面に対して垂直であり、光インターコネクションをはじめ、通信用光源として、また、センサー用途などの様々なアプリケーション用デバイスとして注目されている。
その理由として、面発光レーザは、従来の端面発光型の半導体レーザ素子と比較して、素子の2次元配列を容易に形成できること、ミラーを設けるために劈開する必要がないのでウエハレベルでテストできること、活性層体積が格段に小さいので低しきい値で発振でき、消費電力が小さいことなどの利点を有していることが挙げられる。
特に、面発光レーザでは、共振器長が極端に短いことから、発振スペクトルの縦モードで容易に基本モード発振が得られる利点がある。その一方で、横モードに関しては制御機構を有していないため、複数の高次モードが発振しやすい。この複数の高次横モードによって発振したレーザ光は、光伝送時に、特に高速変調時には、伝送距離に比例して著しい劣化を引き起こす原因となる。そこで、面発光レーザでは、基本横モードでのレーザ発振を実現するさまざまな構造が提案されている。
基本横モードを得るための最も単純な方法は、発光領域の面積を、基本モードのみが発振できる程度に小さくした構造を採用することである。例えば、発振波長が1300nm帯の、AlAs層選択酸化閉じ込め型(酸化狭窄型)の面発光レーザの場合、AlAs層と酸化層(Al)との屈折率差が大きいため、基本横モードを得るためには発光領域のサイズを30μm程度にする必要がある。ここで、酸化狭窄型の面発光レーザでは、発光領域の面積の大きさを制御する電流狭窄幅は、一般にAlAs層の外縁部を選択的に酸化した酸化層によって決定される。ところが、電流開口の面積が30μm程度となるように酸化層の内径を得るには、精密な酸化プロセス制御が要求されることになり、結果的に製品歩留まりが低くなる。また、選択酸化によって応力歪みが発生し、その応力歪みによってレーザ素子が発振中に破壊するなど、素子信頼性を損なうという重大な欠点もある。
一方、信頼性の高い電流狭窄の手法として、端面出射型半導体レーザ素子で採用される埋め込み型が知られている(特許文献1)。これは、例えば、活性層を含む積層の一部を、エッチングによりメサストライプに加工した後、そのメサストライプの側面をn型電流ブロック層及びp型電流ブロック層により埋め込む手法である。この手法は、光通信波長帯における端面出射型半導体レーザにおいて広く採用されている。
また、面発光レーザにおいて、発光面積を広くし、かつ基本横モード発振を得るための手段としては、例えば、特許文献2に示されるような構造が提案されている。この構造では、上部DBRミラー内に、点欠陥領域を中央部に有する周期的な2次元空孔配列を形成する。二次元空孔配列は、光が感じる屈折率を僅かに低下させ、中央の点欠陥領域に対してクラッドとして働き、弱い屈折率閉じ込めによる横モード制御を実現する。この横モード制御は、基本横モードのみを発振させる際に発光領域の面積を大きくすることができる。なお、この構造の面発光レーザは、フォトニック結晶面発光レーザと呼ばれる。
特開平8−195523号公報 特表2007−502029号公報
フォトニック結晶面発光レーザにおける電流狭窄構造としては、これまでAlAs選択酸化閉じ込め型と、イオン注入型とが知られている。AlAs選択酸化閉じ込め型では、AlAsとAlAsを酸化したAlOxとの間で屈折率差が大きいため、フォトニック結晶による弱い屈折率閉じ込めモードに影響を与え、高電流の注入時や高速変調時に不安定になることがあった。また,先に述べたように、応力歪みによって素子の信頼性を損なうという欠点があった。一方、イオン注入型においては、電流狭窄構造による屈折率差はほとんどないため、フォトニック結晶による屈折率閉じ込めモードに影響を与えない反面、イオン注入による絶縁層の厚さが選択酸化閉じ込め型に比べて厚いために、素子抵抗が高くなるという問題があった。
本発明は、上記に鑑み、従来の面発光レーザにおける電流狭窄構造及び光閉じ込め構造を改良し、単一横モードで発振し、且つ、素子抵抗の増大を抑えつつ、レーザ素子の信頼性を向上した面発光レーザを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため、埋め込み型狭窄構造の面発光レーザにおいて、メサ部の屈折率と同等の屈折率を有する電流ブロック層でメサ部の周囲を埋め込むことによって、積層面内において屈折率分布のない積層構造を形成し、その上部にフォトニック結晶構造による光閉じ込め構造を形成する面発光レーザに想到した。
すなわち、本発明は、第一の態様において、半導体基板上に順次に形成された、多層膜からなる第1の反射鏡、第1導電型の第1のクラッド層、活性層、第2導電型の第2のクラッド層、及び、多層膜からなる第2の反射鏡を含む積層構造を有する面発光半導体レーザ素子において、
前記第2のクラッド層は、一様な厚みを有する平坦部と該平坦部の中央部分において該平坦部から上方に突出するメサ部とを有し、該メサ部の側面が、前記平坦部に順次に積層された第1導電型の第1の電流ブロック層及び第2導電型の第2の電流ブロック層によって埋め込まれており、
前記メサ部の屈折率と、前記第1及び第2の電流ブロック層の等価屈折率とがほぼ等しく、
前記上部反射鏡構造には、空孔が存在しない点欠陥を前記メサ部上方の中央部に有する2次元空孔配列が形成されていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子、を提供する。
また、本発明は、第2の態様において、半導体基板上に順次に形成された、多層膜からなる第1の反射鏡、第1導電型の第1のコンタクト層、活性層、第2導電型の第2のコンタクト層、及び、誘電体多層膜からなる第2の反射鏡を含む積層構造を有する面発光半導体レーザ素子において、
前記第2のコンタクト層は、一様な厚みを有する平坦部と該平坦部の中央部分において該平坦部から上方に突出するメサ部とを有し、該メサ部の側面が、前記平坦部に順次に積層された第1導電型の第1の電流ブロック層及び第2導電型の第2の電流ブロック層によって埋め込まれており、
前記メサ部の屈折率と、前記第1及び第2の電流ブロック層の等価屈折率とがほぼ等しく、
前記誘電体多層膜には、積層面内における前記メサ部上方の所定の領域を除き、前記積層面内において周期的な屈折率の二次元分布が形成され、該屈折率の二次元分布は、前記所定の領域を除く領域に周期的に空孔を形成した前記誘電体多層膜の一つの層上に、誘電体多層膜の他の層を複数形成することにより形成されていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子、を提供する。
上記第1及び第2の態様の面発光レーザ素子では、前記基板の主面が(100)面であり、前記メサ部の横断面が、<011>方向又は<01-1>方向との間でなす角度が45度である4辺を有する略正方形構造であることが好ましい。
本発明の面発光レーザでは、電流狭窄構造として、AlAs選択酸化閉じ込め型に見られるような電流狭窄構造に付随する屈折率分布を有しない埋め込み構造を採用し、且つ、光閉じ込め構造として、フォトニック結晶構造、又は、フォトニック結晶構造に類似の構造を有する二次元周期的構造(以下、疑似フォトニック結晶構造と呼ぶ)を採用する。このため、電流狭窄構造は光閉じ込め機能を有しないので、フォトニック結晶構造、又は、疑似フォトニック結晶構造のみによる光閉じ込め機能を実現する。従って、高電流注入時や高速変調時であっても安定した単一横モード発振が可能である。また、埋め込み構造を採用するため、電流狭窄構造の厚みがイオン注入型よりも薄くでき、素子抵抗の低い面発光レーザが得られる。更に、酸化狭窄構造を採用しないので、酸化歪みに起因して素子の信頼性が低下することもない。
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態について説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る面発光レーザの一部断面斜視図である。本面発光レーザは、発振波長が1300nmとなるように設計されている。面発光レーザ100は、n型GaAs基板101上に形成されており、下部DBRミラー102と、n型の下部クラッド層103と、p型の上部クラッド層105と、下部クラッド層103と上部クラッド層105との間に形成された活性層104と、上部DBRミラー109と、上部DBRミラー上に形成された上部電極111と、n型GaAs基板101の裏面に形成された下部電極112とを有する。本面発光レーザは、上記構成により、下部クラッド層103、活性層104、上部クラッド層がレーザ共振部を構成し、このレーザ共振部が、下部DBRミラー102と上部DBRミラー109との間に挟まれた構造を有する。
上部クラッド層105は、一様な厚みを有する平坦部と、平坦部の中央部分において平坦部から上方に突出するメサ部106とを有する。このメサ部106の側面が、平坦部の表面に順次に積層されたn導電型の第1の電流ブロック層(n型電流ブロック層)107、及び、p導電型の第2の電流ブロック層(p型電流ブロック層)108によって埋め込まれている。メサ部106の頂面は、p型電流ブロック層108の表面と同一平面内にある。p型の上部クラッド層105、n型電流ブロック層107、及び、p型電流ブロック層108のp−n−p接合により、電流狭窄構造が実現される。また、上部DBRミラー109の内部には、フォトニック結晶構造が形成されており、メサ部106の上方でフォトニック結晶構造を構成する2次元空孔配列110の中央部分には、空孔が存在しない点欠陥が形成されている。フォトニック結晶構造により、光閉じ込め構造が形成される。
本実施形態では、メサ部の屈折率と第1及び第2の電流ブロック層の等価屈折率とがほぼ等しいため、電流狭窄構造は光閉じ込め機能を有しない。従って、光閉じ込め機能は、上部DBRミラー109に形成されたフォトニック結晶構造によってのみ得られる。従って、高電流注入時や高速変調時であっても安定した単一横モード発振が可能であり、また、電流狭窄構造の厚みがイオン注入型よりも薄くできるため、素子抵抗の低い面発光レーザが得られる。更に、酸化狭窄構造を採用しないので、酸化歪みに起因して素子の信頼性が低下することもない。
上記実施形態の構造は、例えば以下の製造プロセスにより得られる。まず(100)面を主面とするn型GaAs基板101の表面に、MBE法またはMOCVD法で、それぞれの厚みがλ/4n(但し、λは発振波長、nは屈折率)であるn型Al0.2Ga0.8As層とAlAs層とを交互に積層して、35.5ペアの多層膜からなる下部DBRミラー102を形成する。各層のキャリア密度は、例えば1×1018cm−3とする。次に、その積層上に、n型GaAsからなる下部クラッド層103、3層のGaInNAs/GaAs多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造の活性層104、p型GaAsからなる上部クラッド層105を順次に積層する(図2)。
次に、上記積層構造の表面に、プラズマCVD法を用いSiNx膜を成膜したのち、その上に通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーにより、SiNx膜を一辺の長さが10μmの略正方形状に加工する。正方形状は、各辺が<011>方向又は<01-1>方向となす角度が45度となるように形成する。このSiNx膜をマスクとするウェットエッチングにより、上部クラッド層105について、その底部を残し、その表面部分のみをエッチングし、平坦部と平坦部から上方に突出するメサ部106とを有する膜形状に加工する(図3)。形成されるメサ部106は、その頂面がほぼ正方形の角錐台形状を有する。
その後、先のSiNx膜を選択成長マスクとして、MOCVD法により、メサ部106の周囲にn型GaAsからなる電流ブロック層107と、p型GaAsからなる電流ブロック層108とを順次に積層する(図4)。ここで、双方の電流ブロック層として、上部クラッド層105と同じ材料であるGaAsを用いて平坦に埋め込むことにより、メサ部106と埋め込み部との間に、積層方向において等価屈折率差がほとんど生じない構造が得られる。このため、埋め込み構造自体は光閉じ込め機能を発揮することはなく、後述するフォトニック結晶構造による屈折率分布のみが光閉じ込め機能を持つ面発光レーザが実現できる。なお、このような光閉じ込め構造が実現できれば、メサ部106は略正方形状に限ることはない。
その後、SiNx膜を除去し、各層の厚みがλ/4nのp型Al0.8Ga0.2As層と、p型Al0.2Ga0.8As層とを交互に積層して、30ペアからなる上部DBRミラー109を形成する。各層のキャリア濃度は、例えば1×1018cm−3とする。
次に、上記積層構造の表面に、プラズマCVD法を用いて、新たにSiNx膜を成膜する。得られたSiNx膜を、通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーとRIE(反応性イオンエッチング)とを用いてエッチングし、2次元の周期的な空孔配列用ハードマスクを形成する。
次いで、SiNx膜に形成された二次元空孔配列構造をマスクとして、Clを用いたICP(誘導結合プラズマ)ドライエッチングにより、SiNx膜の下層のDBRミラー109の積層構造に、深さ4μm程度の空孔配列構造を形成する。2次元空孔配列は、中央部に空孔(円孔)が存在しない点欠陥(点欠陥領域)を有し、空孔の配列周期が5μm、各空孔の直径が3μmの三角格子状の2次元空孔配列構造とする。なお、点欠陥は、本実施形態のように、2次元空孔配列から1つの空孔を除いたものに限らず、複数(例えば7つ)の空孔を除いたものでもよい。
次に、上記積層構造の表面に、プラズマCVD法を用いて、新たにSiNx膜を成膜し、通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーとRIEとにより、このSiNx膜を選択的に除去してリング形状の開口を形成する。SiNx膜を除去した開口部に、例えばAuZnを蒸着して、リング形状をした上部電極111を形成する。その後、基板厚さが200μm程度となるように、n型GaAs基板101を裏面から研磨し、その研磨した裏面に、例えばTi/Pt/Auを蒸着して、下部電極112を形成する。以上により本実施形態の面発光レーザが得られる。
(実施形態例2)
次に、本発明の第2の実施形態に係る面発光レーザ素子について説明する。本実施形態の面発光レーザ素子は、上部DBRミラーが誘電体多層膜ミラーである点、イントラキャビティ・コンタクト構造を採用する点、活性層、電流ブロック層、及び、p型コンタクト層を含む積層がメサポストを形成する点、及び、上部誘電体多層膜ミラー内に疑似フォトニック結晶構造の2次元屈折率分布が形成されている点において、第1の実施形態と異なっている。以下、詳細に説明する。
図5及び図6は、本発明の第2の実施形態に係る面発光レーザの構成を示す図である。図5は平面図であり、図6は、図5中に示したVI−VI線に沿う断面図である。これらの図に示すように、面発光レーザ200は、例えば半絶縁性のGaAs基板201上に積層された半導体下部DBRミラー202、n型コンタクト層203、活性層204、電流ブロック層207及び208、p型コンタクト層205、2次元周期配列の起点となる最下層210を含む誘電体からなる上部DBRミラー209、p側電極211及びn側電極212を備える。このうちn型コンタクト層203上に積層された活性層204、電流ブロック層207及び208、p型コンタクト層205は、エッチング処理等によって円柱状に形成されたメサポスト213を構成する。
上記実施形態の面発光レーザ200は、例えば以下の製造プロセスにより製造される。まず(100)面を主面とする半絶縁性GaAs基板201上に、MBE法又はMOCVD法で、それぞれの層の厚みがλ/4n(λは発振波長、nは屈折率)である、例えばGaAs/AlAsペア層からなる複合半導体層を複数ペア積層して、半導体多層膜反射鏡からなる下部DBRミラー202を形成する。次に、その下部DBRミラー202上に、例えばn−GaAsからなるn型コンタクト層203、例えばGaInNAs/GaAsからなる複合半導体層が3層積層された多重量子井戸構造を有する活性層204、及び、例えばp−GaAsからなるp型コンタクト層205の一部を順次に積層する。
次に、上記積層構造の表面に、プラズマCVD法によりSiNx膜を成膜したのち、フォトレジストを用いたリソグラフィー技術とRIE(反応性イオンエッチング)により、SiNx膜を所定の大きさを有する正方形に加工する。この正方形は、各辺が<011>方向又は<01−1>方向となす角が45度となるように形成する。その後、正方形状のSiNx膜をマスクとして、ウェットエッチングによりp型コンタクト層205の一部を正方形メサ部206に加工する。続いて、先の正方形状のSiNx膜を選択成長マスクとして、MOCVD法により、正方形メサ部206の周囲に、n型GaAsからなる電流ブロック層207とp型GaAsからなる電流ブロック層208を積層する。その後、SiNx膜を除去したのち、さらにMOCVD法によりp型コンタクト層205の残りを積層する。このように、電流ブロック層として、p型コンタクト層205と同じ材料であるGaAsを用いて平坦に埋め込むことにより、メサ部と埋め込み部との間に、積層方向において等価屈折率差がほとんど生じないようにしている。なお、以上のような埋め込み形状が実現できれば、メサ部206は平面形状が略正方形に限ることはない。
次に、積層構造の表面に、プラズマCVD法を用いて新たにSiNx膜を成膜したのち、通常のフォトレジストを用いたリソグラフィー技術とRIEとにより、SiNx膜をエッチングし、2次元空孔配列を有する空孔形成層210を形成する。2次元空孔配列は、中央部に空孔が存在しない点欠陥を有し、空孔の2次元周期が5μm、各空孔の直径が3μmの三角格子状の2次元空孔配列とする。またエッチングする深さは、最下層の膜厚より小さな深さ、例えば50nmとする。なお、空孔の配列周期、孔径、深さなどは、空孔が形成された部分の平均屈折率と空孔がない点欠陥の平均屈折率との差により、基本横モード発振が得られるように、適宜調整される。
本実施形態例では、誘電体多層膜の内の1層における50nm深さのエッチングによる二次元屈折率分布を、その上層の誘電体多層膜に及ぼした構造の疑似フォトニック結晶構造を採用した。この構成により、半導体多層膜反射鏡の大部分に空孔を深く形成するフォトニック結晶構造を有する第1の実施例と比べて、深さ制御性に優れ、かつ光の散乱損失を生じにくい効果が得られる。
続いて、通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーとRIEとにより、SiNxを除去してリング形状の開口を形成する。SiNx膜を除去した部分に、例えばAuZnを蒸着して、リング形状をしたp側電極211を形成する。このように、p側電極211は、p型コンタクト層205上に積層され、電流注入領域204aの直上部における上部DBRミラー209の一部を、その積層面に沿って取り囲むようにしてリング状に形成される。その後、p型コンタクト層205、電流ブロック層207及び208、活性層204の周縁部をn型コンタクト層に達するまでエッチングし、円形状のメサポスト213に加工する。
次いで、空孔を形成した上部多層膜反射鏡209の最下層210の上に、プラズマCVD法を用いて、例えばSiO/SiNxペア層からなる誘電体層を12ペア積層して、誘電体多層膜からなる上部DBRミラー209を積層形成する。この工程により、SiNx膜からなる最下層210に形成された2次元空孔配列は、その最下層210を起点として、空孔配列の形状を少なくとも部分的に保持しながら、上部積層に伝達される。このようにして、上部DBRミラー209には、フォトニック結晶構造と類似の機能を有する、積層内の全体に屈折率の2次元配列構造が形成される。なお、2次元屈折率分布の起点となる空孔形成層は、必ずしも上部多層膜反射鏡209の最下層210に限定されない。また、1層には限定されず、例えば2ペア程度の層を空孔形成層としてもよい。
SiO/SiNxペア層からなる誘電体多層膜の上部DBRミラー209は、全体として所定透過率の光透過性を有している。面発光レーザ200では、このように上部多層膜反射鏡として誘電体多層膜を用いることで、半導体多層膜を用いる場合に比べて、上部DBRミラー209における光の吸収損失を大幅に低減させている。
次いで、メサポスト213上に形成された上部DBRミラー209について説明する。上部DBRミラー209は、図5及び図6に示したように、メサポスト213を含む範囲に成膜され、メサポスト213を覆うようにこれと一体形成されている。上部DBRミラー209は、大別して出射窓部209aと、この出射窓部209aに比べて積層数が少ない低層部209bとによって構成されている。
出射窓部209aは、活性層204内に設けられた電流注入領域204aの直上部に位置し、電流注入領域204aから発せられた自然放出光を下部DBRミラー202と協働して共振させ、その一部をレーザ光として出射させる。すなわち、出射窓部209aは、上部DBRミラー209の中でDBRミラーとして実際に機能する部分として設けられている。一方、低層部209bは、メサポスト213の側面213aを含む領域であって電流注入領域204aの直上部以外の周囲領域に形成され、側面部213aを外気から保護する保護膜として機能する。
上記構成を有する上部DBRミラー209は、例えば、メサポスト213を含む範囲に所定層数の誘電体多層膜を成膜し、この誘電体多層膜のうち電流注入領域204aの直上部以外の周囲領域をエッチングすることで形成される。具体的には、図6に破線で示すように、成膜された誘電体多層膜のうち環状のエッチング部209cをエッチングよって取り除くことで形成される。
誘電体多層膜としては、例えば、SiO/SiNxペア層からなる複合誘電体層が12層積層され、その12層のうち8層の複合誘電体層が、エッチング部209cとしてエッチングされる。本構成によって、出射窓部209aは、12層の複合誘電体層で形成され、低層部209bは、4層の複合誘電体層で構成される。なお、出射窓部209aおよび低層部209bの積層数は、この例に限定されるものではなく、様々な積層構成が適用可能である。
その後、n型コンタクト層203上に、例えばTi/Auからなるn側電極212を形成する。n側電極212は、n型コンタクト層203上に積層され、メサポスト213の底面部を積層面に沿って取り囲むようにして、コの字状又はC字状に形成されている。なお、p側電極211及びn側電極212は、それぞれp側引出し電極214及びn側引出し電極215によって、図示しない外部回路(電流供給回路)に電気的に接続される。以上により本実施形態の面発光レーザが得られる。
上記各実施形態では、基板にGaAs基板を用いる例を示したが、基板にはInPなど、他の基板を採用することが出来る。上部クラッド層または上部(p型)コンタクト層内に正方形状のメサ部を形成する例を示したが、適当な成長法を採用することにより、他の形状のメサ部が形成できれば、そのようなメサ部で足りる。上部クラッド層や、コンタクト層と電流ブロック層とを同じ材料で形成する例を示したが、双方の屈折率差が小さければ、別の材料を採用することも可能である。
以上、本発明をその好適な実施態様に基づいて説明したが、本発明の面発光レーザは、上記実施態様の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施態様の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
本発明の第1の実施形態に係る面発光レーザ素子の一部断面斜視図。 図1の面発光レーザ素子について、その製造プロセス中の一工程段階を示す一部断面斜視図。 図1の面発光レーザ素子について、その製造プロセス中の一工程段階を示す一部断面斜視図。 図1の面発光レーザ素子について、その製造プロセス中の一工程段階を示す一部断面斜視図。 本発明の第2の実施形態に係る面発光レーザ素子の平面図。 本発明の第2の実施形態に係る面発光レーザ素子の断面図。
符号の説明
101:基板
102:下部DBRミラー
103:下部クラッド層
104:活性層
105:上部クラッド層
106:メサ部
107:電流ブロック層
108:電流ブロック層
109:上部DBRミラー
110:2次元空孔配列
111:上部電極
112:下部電極
201:基板
202:下部DBRミラー
203:n型コンタクト層
204:活性層
205:p型コンタクト層
206:メサ部
207:電流ブロック層
208:電流ブロック層
209:上部DBRミラー
210:2次元空孔配列
211:p側電極
212:n側電極
213:メサポスト
214:p側引出し電極
215:n側引出し電極

Claims (3)

  1. 半導体基板上に順次に形成された、多層膜からなる第1の反射鏡、第1導電型の第1のクラッド層、活性層、第2導電型の第2のクラッド層、及び、多層膜からなる第2の反射鏡を含む積層構造を有する面発光半導体レーザ素子において、
    前記第2のクラッド層は、一様な厚みを有する平坦部と該平坦部の中央部分において該平坦部から上方に突出するメサ部とを有し、該メサ部の側面が、前記平坦部に順次に積層された第1導電型の第1の電流ブロック層及び第2導電型の第2の電流ブロック層によって埋め込まれており、
    前記メサ部の屈折率と、前記第1及び第2の電流ブロック層の等価屈折率とがほぼ等しく、
    前記上部反射鏡構造には、空孔が存在しない点欠陥を前記メサ部上方の中央部に有する2次元空孔配列が形成されていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
  2. 半導体基板上に順次に形成された、多層膜からなる第1の反射鏡、第1導電型の第1のコンタクト層、活性層、第2導電型の第2のコンタクト層、及び、誘電体多層膜からなる第2の反射鏡を含む積層構造を有する面発光半導体レーザ素子において、
    前記第2のコンタクト層は、一様な厚みを有する平坦部と該平坦部の中央部分において該平坦部から上方に突出するメサ部とを有し、該メサ部の側面が、前記平坦部に順次に積層された第1導電型の第1の電流ブロック層及び第2導電型の第2の電流ブロック層によって埋め込まれており、
    前記メサ部の屈折率と、前記第1及び第2の電流ブロック層の等価屈折率とがほぼ等しく、
    前記誘電体多層膜には、積層面内における前記メサ部上方の所定の領域を除き、前記積層面内において周期的な屈折率の二次元分布が形成され、該屈折率の二次元分布は、前記所定の領域を除く領域に周期的に空孔を形成した前記誘電体多層膜の一つの層上に、誘電体多層膜の他の層を複数形成することにより形成されていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
  3. 前記基板の主面が(100)面であり、前記メサ部の横断面が、<011>方向又は<01-1>方向との間でなす角度がそれぞれ45度である4辺を有する略正方形構造である、請求項1又は2に記載の面発光半導体レーザ素子。
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