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JP5003009B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

空気入りタイヤ Download PDF

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JP5003009B2
JP5003009B2 JP2006115568A JP2006115568A JP5003009B2 JP 5003009 B2 JP5003009 B2 JP 5003009B2 JP 2006115568 A JP2006115568 A JP 2006115568A JP 2006115568 A JP2006115568 A JP 2006115568A JP 5003009 B2 JP5003009 B2 JP 5003009B2
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Description

この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、分割カーカス構造を有すると共にタイヤの耐久性能を向上できる空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤでは、大きなサイドフォースが加わると圧縮方向の歪みがカーカス層に繰り返し入力されて、カーカス層がトレッド部センター領域にて疲労破断するという課題がある。そこで、近年の空気入りタイヤでは、カーカス層がトレッド部センター領域で分割されると共にその分割端がタイヤ幅方向に分離された構造が採用されている(分割カーカス構造)。これにより、トレッド部センター領域におけるカーカス層の疲労破断が防止されて、タイヤの耐久性能が高められている。なお、空気入りタイヤでは、その扁平率が小さいほど、トレッド部センター領域でのカーカス層の張力分担率が減少して、ベルト層の張力分担率が増加する。このため、上記のような分割カーカス構造においても、タイヤの構造上の強度が確保される。
かかる分割カーカス構造を採用する従来の空気入りタイヤには、特許文献1に記載される技術が知られている。従来の空気入りタイヤ1は、スチールコードからなる少なくとも一枚のカーカスプライを、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至るまでトロイダルに延在させるとともに、各ビード部に埋設したビードコアの周りで巻返してなる空気入りタイヤにおいて、カーカスプライは、トレッド部の幅方向の中心部にてそれを左右に同等に分断して離隔領域を形成する分断端を備えたものとし、カーカスプライの各巻返し部分にはビードコアの周面に沿ってそれに巻付く巻込み部を設けてなる、ことを特徴とする。
特開2000−343907号公報
しかしながら、従来の空気入りタイヤでは、トレッド部(特にショルダー領域)にカーカス層の分割端が位置するため、タイヤ転動時にてカーカス層に繰り返し荷重が負荷されると、カーカス層の分割端が変位してインナーライナー層を破断させるおそれがある。すると、タイヤの空気漏れやトレッドゴムあるいはカーカス層の酸化劣化が発生するおそれがある。したがって、近年では、分割カーカス構造を有する空気入りタイヤにおいて、タイヤの耐久性能を向上すべき要請がある。
そこで、この発明は、上記に鑑みて為されたものであって、分割カーカス構造を有すると共にタイヤの耐久性能を向上できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、カーカス層と前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層とを含み、且つ、前記カーカス層がトレッド部センター領域にて分割されると共に前記カーカス層の分割端がタイヤ幅方向に相互に分離されている空気入りタイヤであって、前記カーカス層のタイヤ径方向内側に配置されると共に前記カーカス層の少なくとも一方の分割端をタイヤ径方向内側から保持する補強層を有し、前記補強層のタイヤ幅方向内側の端部が前記カーカス層の分割端よりもタイヤ幅方向内側に位置し、且つ、前記補強層のタイヤ幅方向内側の端部と前記カーカス層の分割端とのタイヤ幅方向の距離aがa≧5[mm]の範囲にあることを特徴とする。
この空気入りタイヤでは、カーカス層の分割端が補強層によりタイヤ径方向内側から保持されるので、かかる補強層が設けられていない構成と比較して、タイヤ転動時における分割端の変位が抑制される。これにより、分割端周辺におけるゴム材の破断が抑制されるので、タイヤの耐久性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤでは、補強層によりカーカス層の分割端が確実に保持されるので、分割端周辺におけるゴム材の破断が効果的に抑制される。これにより、タイヤの耐久性能がより向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤでは、カーカス層の分割端が確実に保持されて、カーカス層の分割端周辺におけるゴム材の破断が効果的に抑制される利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記カーカス層の分割端が前記補強層と前記ベルト層との間に挟み込まれて保持される。
この空気入りタイヤでは、カーカス層の分割端が補強層とベルト層との間に挟み込まれて保持されるので、分割端が補強層のみにより保持される構成と比較して、分割端がより強固に保持される。これにより、分割端周辺におけるゴム材の破断がより効果的に抑制されるので、タイヤの耐久性能がより向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されると共に前記カーカス層の分割端を前記補強層との間に挟み込んで保持する補助補強層を有する。
この空気入りタイヤでは、カーカス層の分割端が補強層と補助補強層との間に挟み込まれて保持されるので、分割端が補強層のみにより保持される構成と比較して、タイヤ転動時における分割端の変位が抑制される。これにより、分割端周辺におけるゴム材の破断がより効果的に抑制されるので、タイヤの耐久性能がより向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記補強層が繊維材から成ると共に前記繊維材の繊維方向を略タイヤ周方向に向けて配置される。
この空気入りタイヤでは、補強層のタイヤ幅方向の端部が破断し難いので、タイヤの耐久性能が向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、一対の前記補強層が配置され、且つ、前記カーカス層の一方の分割端が一方の前記補強層により保持されると共に前記カーカス層の他方の分割端が他方の前記補強層により保持される。
この空気入りタイヤでは、補強層がカーカス層の各分割端に対して個別に設置されるので、必要十分な範囲のみに補強層を設置することが可能となる。したがって、単一の補強層が設置される構成と比較して、各補強層の総重量が低減され得る。これにより、カーカス層の分割端周辺におけるゴム材の破断を適正に抑制しつつ、補強層の重量によるタイヤ重量の増加を抑制できる利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記カーカス層の双方の分割端が単一の前記補強層により保持される。
この空気入りタイヤでは、複数の補強層が設置される構成と比較して、タイヤの部品点数が低減されると共に補強層の設置工程が簡略化される。これにより、タイヤ製造工程が簡略化される利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記補強層と前記カーカス層とのラップ量bが前記ベルト層の最大幅BWに対してb/BW≧0.03の関係を有する。
この空気入りタイヤでは、カーカス層の分割端が適正に保持されて、インナーライナー層の破断が効果的に抑制される。これにより、タイヤの耐久性能が向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記補強層がトレッド部ショルダー領域に配置される。
この空気入りタイヤでは、補強層が設置されていない構成と比較して、トレッド部ショルダー領域の剛性が増加する。すると、タイヤ転動時におけるトレッド部ショルダー領域のせり上がりが抑制されて、ベルト層の端部近傍におけるトレッドゴムのセパレーションが抑制される。これにより、タイヤの耐久性能がさらに向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、トレッド部センタークラウンCLから前記補強層のタイヤ幅方向外側の端部までの距離がトレッド部センタークラウンCLから前記ベルト層の最大幅BWの位置までの距離に対して50[%]以上100[%]以下の範囲内にある。
この空気入りタイヤでは、補強層のタイヤ幅方向外側の端部の位置が上記のように規定されることにより、タイヤ転動時におけるトレッド部ショルダー領域のせり上がりが抑制される。これにより、ベルト層の端部近傍におけるトレッドゴムのセパレーションが抑制されて、タイヤの耐久性能がさらに向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記カーカス層の分割幅CWと前記ベルト層の最大幅BWとがCW/BW≦0.90の関係を有する。
この空気入りタイヤでは、インフレート時におけるタイヤ幅の広がりを抑制できる利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、扁平率が70以下である。
この空気入りタイヤでは、扁平率70以下のタイヤが適用対象とされることにより、タイヤの耐久性能の向上効果がより顕著に得られる利点がある。
この発明にかかる空気入りタイヤでは、カーカス層の分割端が補強層によりタイヤ径方向内側から保持されるので、かかる補強層が設けられていない構成と比較して、タイヤ転動時における分割端の変位が抑制される。これにより、分割端周辺におけるゴム材の破断が抑制されるので、タイヤの耐久性能が向上する利点がある。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的同一のものが含まれる。また、この実施例に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
図1は、この発明の実施例にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。図2は、図1に記載した空気入りタイヤの補強層を示す拡大断面図である。図3〜図6は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。図7〜図9は、この発明の実施例にかかる空気入りタイヤの性能試験を示す試験結果表(図7)および説明図(図8および図9)である。
この空気入りタイヤ1は、ビードコア2、2と、カーカス層3と、ベルト層4と、トレッドゴム5と、サイドウォールゴム6とを含み構成される(図1参照)。ビードコア2、2は、左右一対を一組として構成される。カーカス層3は、左右のビードコア2、2間にトロイド状に架け渡される。また、カーカス層3は、トレッド部センター領域にて分割されており、その分割端31、32がタイヤ幅方向に相互に分離されている(分割カーカス構造)。このため、カーカス層3は、トレッド部センター領域に中抜き部分を有する。ベルト層4は、積層された複数のベルト材41、42から成り、カーカス層3のタイヤ径方向外周に配置される。なお、ベルト材41、42は、例えば、有機繊維製あるいはスチール繊維製の繊維材(ベルトコード)がカレンダー状に配列されて構成される。トレッドゴム5は、カーカス層3およびベルト層4のタイヤ径方向外周に配置され、空気入りタイヤ1のトレッド部を構成する。サイドウォールゴム6は、カーカス層3のタイヤ幅方向外側に配置され、空気入りタイヤ1のサイドウォール部を構成する。また、カーカス層3のタイヤ径方向内側(内周面)には、タイヤの気密性を確保するためのインナーライナー層7が配置される。
また、空気入りタイヤ1は、補強層81を有する(図1および図2参照)。この補強層81は、繊維材(コード材)がカレンダー状に配列されて構成される。ここで、補強層81の繊維材は、例えば、スチール繊維あるいは有機繊維(アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリケトンなど)から成る。また、補強層81は、カーカス層3の少なくとも一方の分割端31(32)を覆いつつカーカス層3に積層されて配置される。これにより、カーカス層3の分割端31(32)が、補強層81とベルト層4との間に挟み込まれて保持される。この実施例では、補強層81がカーカス層3のタイヤ径方向内側に配置されて、カーカス層3の分割端31(32)をタイヤ径方向内側から押さえ込んでいる。
かかる構成では、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81によりタイヤ径方向内側から保持されるので、かかる補強層が設けられていない構成と比較して、タイヤ転動時における分割端31(32)の変位(タイヤ径方向へ動き)が抑制される。これにより、分割端31(32)周辺におけるゴム材の破断(例えば、インナーライナー層7におけるクラックの発生など)が抑制されるので、タイヤの耐久性能が向上する利点がある。
また、かかる構成では、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81とベルト層4との間に挟み込まれて保持されるので(図1および図2参照)、分割端31(32)が補強層81のみ(補強層81とトレッドゴム5)により保持される構成と比較して、分割端31(32)がより強固に保持される。これにより、分割端31(32)周辺におけるゴム材の破断がより効果的に抑制されるので、タイヤの耐久性能がより向上する利点がある。
また、かかる構成では、カーカス層3が中抜き部分(分割および分離されている部分)を有するので(図1参照)、カーカス層3が中抜き部分を有さない(連続している)構成と比較して、タイヤが軽量化される。これにより、タイヤ重量が低減され、あるいは同程度に維持される利点がある。
[変形例1]
また、この空気入りタイヤ1では、カーカス層3のタイヤ径方向外側に配置されると共にカーカス層3の分割端31(32)を補強層81との間に挟み込んで保持する補助補強層82が設置されても良い(図3参照)。すなわち、カーカス層3とベルト層4との間にさらに補助補強層82が設置される。なお、この補助補強層82は、補強層81と同様の構成を有する。
かかる構成では、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81と補助補強層82との間に挟み込まれて保持されるので、分割端31(32)が補強層81のみにより保持される構成と比較して、タイヤ転動時における分割端31(32)の変位が抑制される。これにより、分割端31(32)周辺におけるゴム材の破断がより効果的に抑制されるので、タイヤの耐久性能がより向上する利点がある。
[付加的事項1]
また、この空気入りタイヤ1では、上記のように補強層81が繊維材から成る構成において、補強層81がその繊維材の繊維方向を略タイヤ周方向に向けて配置されることが好ましい。かかる構成では、補強層81のタイヤ幅方向の端部が破断し難い。これにより、タイヤの耐久性能が向上する利点がある。例えば、補強層の繊維方向がタイヤ周方向に対して傾斜している構成では、補強層81を構成する繊維材の端末が補強層81のタイヤ幅方向の端部に多数位置するため、補強層81の端部が破断し易い。なお、略タイヤ周方向とは、タイヤ周方向に対する傾斜角度が±5[deg]以内であることをいう。
また、上記の構成は、補助補強層82にも適用され得る。すなわち、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81と補助補強層82との間に挟み込まれて保持される構成(変形例1の構成)において、補助補強層82が繊維材から成ると共にその繊維材の繊維方向を略タイヤ周方向に向けて配置されることが好ましい。かかる構成では、双方の補強層81、82におけるタイヤ幅方向の端部の破断が抑制されるので、タイヤの耐久性能がより向上する利点がある。
[付加的事項2]
また、この空気入りタイヤ1では、補強層81のタイヤ幅方向内側の端部がカーカス層3の分割端31(32)よりもタイヤ幅方向内側に位置することが好ましい(図2参照)。かかる構成では、補強層81によりカーカス層3の分割端31(32)が確実に保持されるので、分割端31(32)周辺におけるゴム材の破断が効果的に抑制される。これにより、タイヤの耐久性能がより向上する利点がある。例えば、補強層のタイヤ幅方向内側の端部がカーカス層の分割端よりもタイヤ幅方向内側に位置しない(突出していない)構成では、カーカス層の分割端が保持され難いため、分割端の周辺にてゴム材の破断が発生するおそれがある。
また、上記の構成では、補強層81のタイヤ幅方向内側の端部とカーカス層3の分割端31(32)とのタイヤ幅方向の距離aがa≧5[mm]の範囲にあることが好ましい。また、この距離aは、a≧10[mm]の範囲にあることがより好ましい。これにより、カーカス層3の分割端31(32)が確実に保持されて、カーカス層3の分割端31(32)周辺におけるゴム材の破断が効果的に抑制される利点がある。
また、上記の構成は、補助補強層82にも適用され得る(図3参照)。すなわち、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81と補助補強層82との間に挟み込まれて保持される構成(変形例1の構成)において、補助補強層82のタイヤ幅方向内側の端部がカーカス層3の分割端31(32)よりもタイヤ幅方向内側に位置することが好ましく、また、補助補強層82のタイヤ幅方向内側の端部とカーカス層3の分割端31(32)とのタイヤ幅方向の距離aがa≧5[mm](さらにはa≧10[mm])の範囲にあることが好ましい。かかる構成では、補強層81および補助補強層82の双方によりカーカス層3の分割端31(32)が確実に保持されるので、分割端31(32)周辺におけるゴム材の破断がより効果的に抑制される。これにより、タイヤの耐久性能がより向上する利点がある。
なお、補助補強層82のタイヤ幅方向内側の端部とカーカス層3の分割端31(32)とのタイヤ幅方向の距離(突出量)は、補強層81と略同一であっても良いし(図3参照)、相異しても良い(図4参照)。
[変形例2]
また、この空気入りタイヤ1では、一対の補強層81、81が配置され、且つ、カーカス層3の一方の分割端31が一方の補強層81に保持されると共にカーカス層3の他方の分割端32が他方の補強層81により保持される(図1および図2参照)。かかる構成では、補強層81がカーカス層3の各分割端31、32に対して個別に設置されるので、必要十分な範囲のみに補強層81を設置することが可能となる。したがって、単一の補強層が設置される構成(図5参照)と比較して、各補強層の総重量が低減され得る。これにより、カーカス層3の分割端31(32)周辺におけるゴム材の破断を適正に抑制しつつ、補強層81の重量によるタイヤ重量の増加を抑制できる利点がある。
また、かかる構成は、補助補強層82にも適用され得る(図3参照)。すなわち、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81と補助補強層82との間に挟み込まれて保持される構成(変形例1の構成)において、一対の補助補強層82、82が配置され、且つ、カーカス層3の一方の分割端31が一方の補助補強層82により保持されると共にカーカス層3の他方の分割端32が他方の補助補強層82により保持されても良い。これにより、単一の補助補強層82が設置される構成(図6参照)と比較して、カーカス層3の分割端31(32)周辺におけるゴム材の破断を適正に抑制しつつ、補助補強層82の重量によるタイヤ重量の増加を抑制できる利点がある。
しかし、上記に限らず、カーカス層3の双方の分割端31、32が単一の補強層81により保持されても良い(図5参照)。かかる構成では、複数の補強層が設置される構成と比較して、タイヤの部品点数が低減されると共に補強層81の設置工程が簡略化される。これにより、タイヤ製造工程が簡略化される利点がある。また、補強層81の幅が広いので、カーカス層3の分割端31、32に対する保持力が増大する。これにより、分割端31、32周辺におけるゴム材の破断がより効果的に抑制されて、タイヤの耐久性能が向上する利点がある。
また、かかる構成は、補助補強層82にも適用され得る(図6参照)。すなわち、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81と補助補強層82との間に挟み込まれて保持される構成(変形例1の構成)において、カーカス層3の双方の分割端31、32が単一の補助補強層82により保持されても良い。これにより、上記の作用により、タイヤ製造工程が簡略化され、また、タイヤの耐久性能が向上する利点がある。
[付加的事項3]
また、この空気入りタイヤ1では、補強層81とカーカス層3とのラップ量bがベルト層4の最大幅BWに対してb/BW≧0.03の関係を有することが好ましい(図2参照)。また、これらは、b/BW≧0.05の関係を有することがより好ましい。かかる構成では、カーカス層3の分割端31(32)が適正に保持されて、インナーライナー層7の破断が効果的に抑制される(図7参照)。これにより、タイヤの耐久性能が向上する利点がある。なお、補強層81とカーカス層3とのラップ量bが大きいほど、カーカス層3の分割端31(32)が適正に保持されて、インナーライナー層7の破断が効果的に抑制される。
また、かかる構成は、補助補強層82にも適用され得る(図6参照)。すなわち、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81と補助補強層82との間に挟み込まれて保持される構成(変形例1の構成)において、補助補強層82とカーカス層3とのラップ量bがベルト層4の最大幅BWに対してb/BW≧0.03(さらにはb/BW≧0.05)の関係を有することが好ましい。かかる構成では、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81および補助補強層82により適正に保持されて、インナーライナー層7の破断が効果的に抑制される。これにより、タイヤの耐久性能が向上する利点がある。
[付加的事項4]
一般に、空気入りタイヤでは、ベルト層の両端部がトレッド部ショルダー領域に位置する。また、タイヤ転動時におけるトレッド部の変形量は、センター領域よりもショルダー領域の方が大きい。このため、ベルト層の端部近傍では、トレッドゴムのセパレーションが発生し易い。
そこで、この空気入りタイヤ1では、補強層81がトレッド部ショルダー領域に配置されることが好ましい(図1および図2参照)。かかる構成では、補強層が設置されていない構成と比較して、トレッド部ショルダー領域の剛性が増加する。すると、タイヤ転動時におけるトレッド部ショルダー領域のせり上がりが抑制されて、ベルト層4の端部近傍におけるトレッドゴム5のセパレーションが抑制される。これにより、タイヤの耐久性能がさらに向上する利点がある。
また、かかる構成は、補助補強層82にも適用され得る(図3参照)。すなわち、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81と補助補強層82との間に挟み込まれて保持される構成(変形例1の構成)において、補助補強層82がトレッド部ショルダー領域に配置されることが好ましい。かかる構成では、補強層81および補助補強層82によりトレッド部ショルダー領域が補強されるので、補強層81のみがトレッド部ショルダー領域に設置される構成(図2参照)と比較して、トレッド部ショルダー領域の剛性が増加する。これにより、ベルト層4の端部近傍におけるトレッドゴム5のセパレーションが抑制されて、タイヤの耐久性能がさらに向上する利点がある。
なお、トレッド部ショルダー領域とは、トレッド展開幅TDWに対してタイヤ幅方向外側からTDW/4の範囲を言う。ここで、トレッド展開幅TDWとは、タイヤが正規リムに装着されて正規内圧を付与されると共に無負荷状態とされたときのタイヤのトレッド模様部分の両端の直線距離をいう。また、正規リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、乗用車用タイヤの場合には、正規内圧が空気圧180[kPa]であり、正規荷重が最大負荷能力の88[%]である。
[付加的事項5]
また、この空気入りタイヤ1では、トレッド部センタークラウンCLから補強層81のタイヤ幅方向外側の端部までの距離がトレッド部センタークラウンCLからベルト層4の最大幅BWの位置までの距離に対して50[%]以上100[%]以下の範囲内にあることが好ましい(図2参照)。例えば、空気入りタイヤ1がトレッド部センタークラウンCLを中心軸として左右対称な構造を有する場合には、トレッド部センタークラウンCLから補強層81のタイヤ幅方向外側の端部までの距離W/2と、トレッド部センタークラウンCLからベルト層4の最大幅BWの位置までの距離BW/2とが、0.50≦(W/2)/(BW/2)≦1.00の関係を有することが好ましい。
かかる構成では、補強層81のタイヤ幅方向外側の端部の位置が上記のように規定されることにより、タイヤ転動時におけるトレッド部ショルダー領域のせり上がりが抑制される。これにより、ベルト層4の端部近傍におけるトレッドゴム5のセパレーションが抑制されて、タイヤの耐久性能がさらに向上する利点がある。例えば、(W/2)/(BW/2)<0.50の場合には、補強層81がトレッド部ショルダー領域から外れた位置にあるため、タイヤ転動時におけるトレッド部ショルダー領域のせり上がりが抑制されない。また、1.00<(W/2)/(BW/2)の場合には、補強層81に過剰な引張応力が作用して補強層81が破断するおそれがある。また、補強層81の設置面積が増大してタイヤの軽量化に支障が生じるおそれもある。
また、かかる構成は、補助補強層82にも適用され得る(図3参照)。すなわち、カーカス層3の分割端31(32)が補強層81と補助補強層82との間に挟み込まれて保持される構成(変形例1の構成)において、トレッド部センタークラウンCLから補助補強層82のタイヤ幅方向外側の端部までの距離がトレッド部センタークラウンCLからベルト層4の最大幅BWの位置までの距離に対して50[%]以上100[%]以下の範囲内にあることが好ましい。かかる構成では、補強層81および補助補強層82によりトレッド部ショルダー領域が補強されるので、補強層81のみがトレッド部ショルダー領域に設置される構成(図2参照)と比較して、タイヤ転動時におけるトレッド部ショルダー領域のせり上がりがより効果的に抑制される。これにより、ベルト層4の端部近傍におけるトレッドゴム5のセパレーションが抑制されて、タイヤの耐久性能がさらに向上する利点がある。
[付加的事項6]
また、この空気入りタイヤ1では、カーカス層3の分割幅(各分割端31、32におけるタイヤ幅方向の距離)CWとベルト層4の最大幅BWとがCW/BW≦0.90の関係を有することが好ましい(図1および図2参照)。また、この比CW/BWは、CW/BW≦0.70の関係を有することがより好ましい。これにより、インフレート時におけるタイヤ幅の広がりを抑制できる利点がある。例えば、カーカス層3の分割端31、32間の距離CWがベルト層4の最大幅BWの90[%]を越える構成は、タイヤの軽量化の観点から好ましい。しかし、かかる構成では、インフレート時におけるタイヤ幅の広がりが著しくなるため、タイヤの形状保持性が低下する。
[付加的事項7]
一般に、空気入りタイヤでは、ベルト層の張力分担率が増加すると、これに伴ってベルト層の両端部での張力分担率が増加する。すると、トレッド部ショルダー領域では、ベルト層によるタガ効果(タイヤ形状を保持する効果)がトレッド部センター領域よりも弱くなってタイヤ径の成長(径方向外側へのせり上がり)が大きくなる。その結果、ベルト層の両端部に作用する応力が増大して、トレッドゴムのセパレーションが発生するおそれがある。このような現象は、特に、扁平率が低い空気入りタイヤにて発生し易い。
そこで、この空気入りタイヤ1は、扁平率が70以下のタイヤに適用されることが好ましい。かかるタイヤが適用対象とされることにより、タイヤの耐久性能の向上効果がより顕著に得られる利点がある。
[製造方法]
なお、この空気入りタイヤ1は、剛性内型(剛性中子)が用いられる製造方法によって製造されることが好ましい。すなわち、タイヤ成形時にて剛性内型によりタイヤ内面が保持されることが好ましい。かかる構成では、タイヤ成形時にてタイヤがブラダーにより内側から膨らまされる構成と比較して、タイヤに付与される内圧が小さいので、カーカス層3および補強層81に作用する引張応力が低減される。これにより、タイヤ成形時におけるタイヤの破損(例えば、インナーライナー層7の破断など)が抑制される利点がある。なお、剛性内型が用いられる製造方法としては、例えば、特開2005−319656号公報に記載される技術が知られている。
例えば、剛性内型が用いられる空気入りタイヤ1の製造方法では、加硫成形装置が中心部に剛性内型をクランプするためのクランプ機構を有する(図示省略)。このクランプ機構の上方および下方には、タイヤのサイドウォール部を成型するための上モールド(上型)および下モールド(下型)が配置される。これらの上モールドおよび下モールドには、これらを加熱するための加熱手段(ヒータまたは電磁誘導加熱)が設置される。また、クランプ機構の周囲には、タイヤのトレッド部を成型するためのセクターモールドが配置される。なお、セクターモールドは、その周方向に複数に分割(例えば、8〜12分割)可能な構造を有し、その径方向に摺動可能に設置される。
剛性内型は、タイヤ成形時にてタイヤの内面を保持するための内型であり、その周方向に複数に分割(例えば、10分割)可能な構造を有する(図示省略)。また、剛性内型は、その内表面の前面または一部に、マイクロ波により発熱する発熱体を有する。かかる発熱体には、例えば、一定の組成を有すると共に所定の厚さおよび大きさを有する炭化ケイ素の焼結体が採用される。また、この剛性内型の内部には、マイクロ波を導くための導波管が開口し、また、この導波管の開口部に対向する位置にマイクロ波を反射させる反射板が配置される。また、この導波管は、外部のマイクロ波供給手段(発振器)に接続されている。
空気入りタイヤ1の成形工程では、組み立てられた剛性内型がタイヤ成型機の主軸に保持される。そして、タイヤ成型機が、この剛性内型を回転させつつ、タイヤ構成材料であるゴム状弾性材料を剛性内型の外周面に順次巻付け或いは貼合わせて積層させる。これにより、未加硫タイヤが成型される。次に、この未加硫タイヤが剛性内型と共にタイヤ成形機の主軸から取り外されて、加硫成形装置にセットされる。このとき、未加硫タイヤの外周面が上記の上モールド、下モールドおよびセクターモールドにより保持される。
次に、加熱手段により上モールドおよび下モールドが加熱され、また、マイクロ波供給手段から剛性内型にマイクロ波が供給されて発熱体が加熱されて、剛性内型が加熱される。これにより、タイヤの加硫成形が行われる。そして、この加硫成形後のタイヤが取り出されて、次の成形工程に搬送される。
[性能試験]
この実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、(1)インナーライナー層の耐破断性能、(2)ベルト層端部の耐セパレーション性能、(3)補強層の耐久性能および(4)タイヤ重量について評価が行われた(図7参照)。これらの評価では、タイヤサイズ285/60R22.5の空気入りタイヤがリムサイズ22.5×8.25JJのリムに装着され、この空気入りタイヤに900[kPa]の空気圧が付与される。
(1)インナーライナー層の耐破断性能にかかる評価では、室内ドラム試験が行われる。この室内ドラム試験では、JATMA規定の正規荷重の120[%]の負荷荷重が空気入りタイヤに付与され、速度60[km/h]にて20000[km]走行した後に、インナーライナー層にクラックが発生しているか否かが目視により観察される。図7中では、クラックが発生していない場合に○印が付されている。
(2)ベルト層端部の耐セパレーション性能にかかる評価では、上記の室内ドラム試験後にタイヤが解体されて、ベルト層の端部付近におけるトレッドゴムのセパレーション(長さおよび深さ)が測定され、従来例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は数値が大きいほど好ましい。
(3)補強層の耐久性能にかかる評価では、上記の室内ドラム試験後にタイヤが解体されて、補強層(繊維材)の破断の有無が観察される。図7中では、補強層の破断が発生していない場合に○印が付されている。
(4)タイヤ重量にかかる評価は、タイヤの重量が計測され、従来例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は数値が大きいほど好ましい。
従来例1の空気入りタイヤ100は、分割カーカス構造を有しない(図8参照)。従来例2の空気入りタイヤ100は、分割カーカス構造を有する(図9参照)。また、従来例2の空気入りタイヤ100では、カーカス層103の分割幅CWとベルト層104の最大幅BWとがCW/BW=0.40の関係に設定される。
発明例1〜5の空気入りタイヤ1では、分割カーカス構造が採用されており、且つ、カーカス層のタイヤ径方向内側に単層の補強層81が配置されている(図1および図2参照)。この補強層81は、スチール繊維から成り、その繊維方向がタイヤ周方向に向くように配置される。また、発明例1〜5の空気入りタイヤ1では、カーカス層3の分割幅CWとベルト層4の最大幅BWとがCW/BW=0.40の関係に設定される。また、補強層81のタイヤ幅方向内側の端部とカーカス層3の分割端31(32)とのタイヤ幅方向の距離aがa=10[mm]に設定される。また、補強層81とカーカス層3とのラップ量bならびにカーカス層3の分割幅CWとベルト層4の最大幅BWとの比CW/BWが図7中に記載されるように設定される。
試験結果に示すように、発明例1〜5の空気入りタイヤ1では、(1)インナーライナー層の耐破断性能、(2)ベルト層端部の耐セパレーション性能、(3)補強層の耐久性能および(4)タイヤ重量のいずれもが従来例1よりも向上し、あるいは、従来例1と同レベルに維持されることが分かる(図7参照)。また、発明例1〜発明例5を比較すると、補強層81とカーカス層3とのラップ量bならびにカーカス層3の分割幅CWとベルト層4の最大幅BWとの比CW/BWが適正化されることにより、(3)ベルト層端部の耐セパレーション性能が向上することが分かる。
以上のように、本発明にかかる空気入りタイヤは、分割カーカス構造を有すると共にタイヤの耐久性能を向上できる点で有用である。
この発明の実施例にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。 図1に記載した空気入りタイヤの補強層を示す拡大断面図である。 図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。 図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。 図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。 図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。 この発明の実施例にかかる空気入りタイヤの性能試験を示す試験結果図表である。 この発明の実施例にかかる空気入りタイヤの性能試験を示す説明図である。 この発明の実施例にかかる空気入りタイヤの性能試験を示す説明図である。
符号の説明
1 空気入りタイヤ
2 ビードコア
3 カーカス層
31、32 分割端
4 ベルト層
41、42 ベルト材
5 トレッドゴム
6 サイドウォールゴム
7 インナーライナー層
81 補強層
82 補助補強層

Claims (11)

  1. カーカス層と前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層とを含み、且つ、前記カーカス層がトレッド部センター領域にて分割されると共に前記カーカス層の分割端がタイヤ幅方向に相互に分離されている空気入りタイヤであって、
    前記カーカス層のタイヤ径方向内側に配置されると共に前記カーカス層の少なくとも一方の分割端をタイヤ径方向内側から保持する補強層を有し、
    前記補強層のタイヤ幅方向内側の端部が前記カーカス層の分割端よりもタイヤ幅方向内側に位置し、且つ、
    前記補強層のタイヤ幅方向内側の端部と前記カーカス層の分割端とのタイヤ幅方向の距離aがa≧5[mm]の範囲にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記カーカス層の分割端が前記補強層と前記ベルト層との間に挟み込まれて保持される請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されると共に前記カーカス層の分割端を前記補強層との間に挟み込んで保持する補助補強層を有する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記補強層が繊維材から成ると共に前記繊維材の繊維方向を略タイヤ周方向に向けて配置される請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  5. 一対の前記補強層が配置され、且つ、前記カーカス層の一方の分割端が一方の前記補強層により保持されると共に前記カーカス層の他方の分割端が他方の前記補強層により保持される請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記カーカス層の双方の分割端が単一の前記補強層により保持される請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記補強層と前記カーカス層とのラップ量bが前記ベルト層の最大幅BWに対してb/BW≧0.03の関係を有する請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記補強層がトレッド部ショルダー領域に配置される請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  9. トレッド部センタークラウンCLから前記補強層のタイヤ幅方向外側の端部までの距離がトレッド部センタークラウンCLから前記ベルト層の最大幅BWの位置までの距離に対して50[%]以上100[%]以下の範囲内にある請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記カーカス層の分割幅CWと前記ベルト層の最大幅BWとがCW/BW≦0.90の関係を有する請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  11. 扁平率が70以下である請求項1〜10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
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