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JP5092485B2 - 有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ及びその製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ及びその製造方法 Download PDF

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JP5092485B2 JP2007081333A JP2007081333A JP5092485B2 JP 5092485 B2 JP5092485 B2 JP 5092485B2 JP 2007081333 A JP2007081333 A JP 2007081333A JP 2007081333 A JP2007081333 A JP 2007081333A JP 5092485 B2 JP5092485 B2 JP 5092485B2
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Description

本発明は、ディスプレイやその他所定のパターン等の発光表示などに用いられる有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ及びその製造方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、有機ELディスプレイとする)は、基板上に少なくとも陽極と有機発光層と陰極を含み、電極間に電界を印加することにより該有機発光層に電子と正孔を注入し発光させるディスプレイである。有機ELディスプレイは自発光型ディスプレイであることから、液晶ディスプレイのようにバックライトを用いなくても表示が可能である。また、構造が単純であるため薄く、軽量なディスプレイを作製することができ、現在活発に研究が行われている。また、有機ELディスプレイは陽極、陰極間に有機発光層だけでなく、発光補助層を備えている場合もある。発光補助層としては、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等がある。以下、有機発光層及び発光補助層を合わせて有機発光媒体層と呼ぶ。
有機ELディスプレイの有機発光媒体層に用いられる有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、一般に低分子材料は蒸着法等の真空成膜法(ドライコーティング法)により薄膜形成される。しかし、フルカラーの有機ELディスプレイを製造する場合、例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)といった3色の異なる発光を有する有機発光層を画素毎にパターン形成する必要がある。このとき、真空成膜法により有機発光層のパターニングをおこなう場合には微細パターンを有するマスクを用いるが、マスクを用いてパターニングをおこなう方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出にくいという問題があった。また、ドライコーティングである為基板表面状のゴミや突起を十分に被覆することが出来ずショートが発生しやすいなどの問題もある。また、有機発光層以外の有機発光媒体層についても同様の問題が生じていた。
これに対し、最近では有機発光媒体材料に高分子材料を用い、有機発光媒体材料を溶媒に溶解若しくは分散させインキ(塗工液)とし、これを塗布法や印刷法といったウェットコーティング法にて薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。ウェットコーティング法を用いることによって均一に薄膜を形成することが可能になるため、大型基板を用いた際に有利になることから盛んに研究開発が行われている。
高分子系有機発光媒体材料を用いた有機ELディスプレイの構造は主に正孔輸送層/有機発光層/陰極となっており、陽極、陰極といった電極を除いてすべてウェットコーティング法により作成することが可能である。薄膜形成するためのウェットコーティング法としては、スリットコート法、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、吐出コート法、ロールコート法等の塗布法や、凸版印刷法、インクジェット法、凹版印刷法といった印刷法がある。
特に、有機発光層を、画素ごとにR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の異なる発光色を有する有機発光層に塗りわけをおこないパターニングする場合においては、塗り分け、パターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が最も有効であると考えられる。
また、発光補助層である正孔輸送層をウェットコート法により形成する場合、パターニングせずに、有機ELディスプレイの画像形成に関わる部分全体に全面塗布いわゆるベタ塗りする方法が一般的であり、スピンコート法やダイコート法といったコーティング法を用いて形成されてきた。これは、正孔輸送層の膜厚は一般に100nm以下の薄膜であり、層の横方向へ流れる電流よりも厚み方向へ流れる電流のほうが流れやすく、よって電極がパターニングされていれば、電流が画素の外へリークすることは非常に少ないことによる。
しかしながら、上記の塗布方法では塗布膜は画素を隔てる隔壁上を乾きながら最終的に画素部において膜となるため、画素の断面形状が隔壁に近い部分の膜厚が厚くなる凹型になりやすい。凹型になると膜厚によっては発光し無い部分が出てくるため最終的には開口率を低下させることにつながる。開口率が低下すると必要なパネル輝度を得る為に高輝度点灯しなければならなくなり、結果として有機ELディスプレイの寿命が短くなるため改善されることが望まれている。
上記のようにウェットコーティングを利用して作成される有機ELディスプレイにおいては、画素内の形状が非常に重視される。画素内の形状を平坦にする方法として、下記の特許文献1によれば、隔壁の下部が隔壁側から電極側に向けて傾斜した形状を持つように隔壁を形成することによって画素内形状を改善している。しかし本手法では高精細なディスプレイ作成を考えた際に傾斜部分作製するのが非常に困難になり実現可能性が低い。その他にも特許文献2のように、隔壁を2段としその上段を撥液性、下段を親液性として画素内形状の改善を試みている例もある。この手法では塗りわけを必要としない層、例えば正孔輸送層などを塗布する再に隔壁上部が撥液性となっている為に形成することが困難になる。また、例えば特許文献3のように隔壁を逆テーパー構造とし平坦化を狙った手法も提案されているが、本手法を用いると、表面に露出した逆テーパー状隔壁が全面に成膜される陰極層を分離してしまい、現在主流となっているアクティブマトリクス型ディスプレイに対応することが出来ない。
特開2004−198486 特開2004−319119 特開2005−166645
本発明では、以上のような正孔輸送層及び有機発光層に代表される有機発光媒体層を、ウェットコーティング法を用いて基板上に形成した場合の、隔壁に対する濡れ上がりに起因する画素内発光ムラを改善し、均一な発光が可能な有機ELディスプレイを得ることを課題とする。
上記課題を解決するために、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに係る発明として、以下の発明を提案する。
(1)少なくとも基板上に、絶縁性を有する隔壁のパターンと、第一電極及び第二電極に挟持された有機発光媒体層と、を具備する有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであって、前記隔壁は少なくとも第一隔壁部及び該第一隔壁部上の第二隔壁部の2つの層を有し、前記第一隔壁部が基板面から前記第二電極側に向けて逆テーパー形状であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。ここで、有機発光媒体層とは、有機発光層及び、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等の有機発光補助層を含むものである。
(2)さらに、上記有機エレクトロルミネッセンスディスプレイにおいて、前記第二電極の有機発光媒体層上での膜厚が、前記第一隔壁部の頭頂部と前記有機発光媒体層の最表面との段差よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイ。ここで、有機発光媒体層の最表面とは、複数の有機発光媒体層が形成されている場合には、基板上最も上位にある有機発光媒体層の表面を意味する。
(3)さらに、上記有機エレクトロルミネッセンスディスプレイにおいて、前記第一隔壁部の頭頂部の幅が、前記第二隔壁部の底部の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイ。
(4)さらに、上記有機エレクトロルミネッセンスディスプレイにおいて、前記第二隔壁部が、前記第一隔壁部上順テーパー形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイ。
(5)さらに、上記有機エレクトロルミネッセンスディスプレイにおいて、前記第一隔壁部が、感光性樹脂又は無機絶縁物からなる事を特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
(6)さらに、上記有機エレクトロルミネッセンスディスプレイにおいて、前記第一隔壁部の基板からの高さが、0.7μm以下である事を特長とする請求項1から5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
また、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法に係る発明として、以下の発明を提案する。
(7)基板上に、第一電極のパターンを形成する工程と、前記第一電極のパターン間に隔壁を形成する工程と、前記第一電極上に有機発光媒体層を形成する工程と、を有する有機エレクトロルミネセンスディスプレイの製造方法であって、前記隔壁を形成する工程において、基板面から前記第二電極側に向けて逆テーパー形状である第一隔壁部を形成する工程と、前記第一隔壁部上に第二隔壁部を形成する工程と、を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法。
(8)さらに前記有機発光媒体層を形成する工程において、該有機発光媒体層の内少なくとも正孔輸送層が、ウェットコーティング法にて形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法。
(9)さらに前記第一隔壁部を形成する工程において、陽極がパターニングされた基板上に、無機絶縁物膜を形成する工程と、エッチングにより基板上に逆テーパー形状に形成する工程と、を少なくとも有することを特徴とする請求項7又は8に記載の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法。
(10)さらに(9)の発明において前記基板が、薄膜トランジスタ(TFT)基板であることを特徴とする請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法。
(11)また、(7)又は(8)の発明の第一隔壁部を形成する工程において、感光性樹脂を基板上に塗布する工程と、露光する工程と、現像する工程と、を少なくとも有することを特徴とする請求項7又は8に記載の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法。
(1)の発明により、有機発光媒体層と接する隔壁部分(第一隔壁部)が逆テーパー形状であることによって、接する部分での有機発光媒体層途膜の濡れ上がりが押さえられ、さらに、有機発光媒体層上に形成された画素電極が、第一隔壁部がひさしとなることで、ムラが大きい部分は第二電極と接触しないため、非発光となり、画素内膜厚バラツキを低減し、さらには画素内が均一に発光する有機ELディスプレイを得ることが出来た。
また(2)の発明により、有機発光媒体層上に形成された画素電極の膜厚が、有機発光媒体層と逆テーパー形状の第一隔壁部との段差よりも大きいことで、隔壁のパターンを跨ぐように画素電極を形成する場合にも、連続的に隔壁上と有機発光媒体層上の間で電極が途切れることないために、画素電極が断線しない。
また(3)の発明により、第一隔壁部と第二隔壁部との境界においてテラス状に隔壁が形成されていることになり、塗布された余分な有機発光媒体材料のインキが上記テラス状の部分に残ることになるため、第一電極上に塗布されることなく膜厚バラツキをより低減することができた。また、テラス状の部分に残された有機発光媒体材料のインキは、第一電極と接していないために、発光に寄与することはない。
また(4)の発明では、第一隔壁部が順テーパー形状であることによって、第一隔壁部上に陰極層が断線することを抑制することができる。
また(6)の発明では、第一隔壁部の基板からの高さが、0.7μm以下である事によって、通常の陰極の膜厚でも断線することがない。
また、(7)の発明の製造工程により容易に本発明の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを形成することが出来、有機発光媒体層の平坦性に優れ、発光ムラの少ない高品質な有機エレクトロルミネッセンスディスプレイとなった。特に、(8)の発明のように、正孔輸送層をウェットコーティング法にて形成した場合には、正孔輸送層の特性から、特に効果的に平坦性に優れ、発光ムラの少ない高品質な有機エレクトロルミネッセンスディスプレイとなった。
また、第一隔壁部を、無機絶縁物を用いて形成する場合には、(9)の発明の方法を用いることにより、容易に作製することができた。この場合、特に(10)の発明に記載されるように、基板がTFT基板であれば、TFT製造工程において用いられる無機絶縁物を第一隔壁部材料として用いることにより、第一隔壁部作製工程を、TFT製造工程に含める事が可能になるため、工程削減が可能となる。
また、(11)の発明では、感光性樹脂を用いてフォトリソグラフィー法にて第一隔壁部を形成することにより、例えばネガ型レジストを用いれば、容易に逆テーパー形状の第一隔壁部を形成することができる。
<有機ELディスプレイ>
図1に本発明の有機ELディスプレイの断面模式図を示すが、本発明の有機ELディスプレイは図1に示した構成例に限られるものではない。
図1の有機ELディスプレイにおいては、基板1上に、第一電極(陽極)2、正孔輸送層5、有機発光層6、第二電極(陰極)7を備えている。陽極2、陰極7間には有機発光層6が設けられ、陽極2と有機発光層6の間に正孔輸送層5が設けられる。また、陽極2パターン間には、第一隔壁部3a及びその上部の第二隔壁部3bからなる隔壁3が設けられる。なお隔壁3のパターンは、ストライプ状、あるいは格子状のいずれのパターン形状でも良い。
基板1上に、上述の陽極2、隔壁3、正孔輸送層5、有機発光層6、陰極7が設けられた有機EL構成体には、通常、電極や有機発光層を外部の環境から保護するために封止体8が設けられる。封止体8には例えば、封止キャップ8a、接着剤8b、乾燥剤8cを備えている。
また、本発明の有機ELディスプレイにあっては、陽極と陰極の間には有機発光層の他に発光補助層を備えてもよい。発光補助層としては、図1に示した正孔注入層の他に、電子注入層、電子輸送層等を挙げることができる。これらの発光補助層は適宜選択されるが、複数選択してもよい。正孔注入層は陽極と有機発光層の間に設けられる。電子注入層、電子輸送層は有機発光層、陰極間に設けられる。また、本発明の有機ELディスプレイにあっては、陽極、陰極、有機発光層、正孔輸送層は単層構造ではなく、多層構造としてもよい。
また、本発明の有機ELディスプレイにあっては、パッシブマトリックス方式の有機ELディスプレイ、アクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイのどちらにも適用可能である。パッシブマトリックス方式とはストライプ状の陽極及び陰極を直交させるように対向させ、その交点を発光させる方式であるのに対し、アクティブマトリックス方式は画素毎に薄膜トランジスタ(TFT)を形成した、いわゆるTFT基板を用いることにより、画素毎に独立して発光する方式である。アクティブマトリックス方式有機ELディスプレイの場合、陽極、陰極の一方の電極はTFT基板上に画素毎に設けられ、もう一方の電極は画素全体に設けられる。
また、本発明の有機ELディスプレイにあっては、発光した光を基板側から取り出すボトムエミッション方式の有機ELディスプレイ、発光した光を基板と反対側から取り出すトップエミッション方式の有機ELディスプレイのどちらでもかまわない。ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイとする場合には、基板及び陽極が光透過性を有する必要があり、トップエミッション方式の有機ELディスプレイとするためには、陰極及び封止体が光透過性を有する必要がある。
また、本発明の有機ELディスプレイにおいては、図1とは逆に、基板上に、陰極、有機発光層、正孔輸送層、陽極の順に設けてもよい。
図2は図1に示した有機ELディスプレイにおいて、二つの隔壁に囲まれた一画素の有機発光媒体層及び隔壁の部分を拡大して示したものである。基板1上に陽極2のパターンが形成され、このパターン間に隔壁3がされている。陽極のパターンは、例えばパッシブマトリックス方式の場合には紙面と垂直な方向へのストライプ状パターン、アクティブマトリックス方式の場合には島状であれば良い。隔壁は第一隔壁部3aと、第一隔壁部上の第二隔壁部3bとからなっている。また、陰極7は、例えばパッシブマトリックス方式の場合にはストライプ状の陽極パターンに対して垂直な方向のストライプ状パターン、アクティブマトリックス方式の場合には全面に形成されていれば良い。
この陽極上、隔壁間に正孔輸送層5、有機発光層6を含む有機発光媒体層4が形成されているが、従来、ウェットプロセスにて有機発光媒体層を形成する際に、画素の中央部と周辺部とで有機発光媒体層の膜厚が異なり、膜厚が不均一となり、結果として色ムラ、発光ムラを生じてしまうことが特に正孔輸送層の形成時には問題となっていた。
この問題を解決するために、本発明の有機ELディスプレイは、逆テーパー形状に形成された第一隔壁部3aを有するものとした。有機発光媒体層側から見て、有機発光媒体層接触面での基板と隔壁の壁面との為す角が鋭角となっていることにより、隔壁壁面への濡れ上がりを抑制することができる。さらに、図の点線A及びBで示すように基板に垂直なラインから見ると、有機発光媒体層において隔壁近傍の膜厚のムラが大きい部分が、第一隔壁部が傘となり、奥まった部分当たるため、陰極層が直接に接触することがなくなる。このため、有機発光媒体層の膜厚のムラが大きい部分は非発光となり、結果として均一な部分のみが発光し、発光ムラの少ない有機ELディスプレイとなる。また、第一隔壁部上に第二隔壁部3bが形成されていることにより、各画素で異なる有機発光媒体材料のインキを用いた場合にも混色を防ぐことが出来る。
第一隔壁部3aは、逆テーパー形状であれば本発明の条件を満たすが、有機ELディスプレイとして動作させるためには陰極7が断線していない必要があり、そのためには陰極の膜厚が、第一隔壁部と、有機発光媒体層の段差よりも大きいことが望ましい。あるいは、第一隔壁部の基板からの高さが、0.7μm以下であることが望ましい。通常形成する陰極の膜厚においては、0.7μm以上では断線するおそれがあるためである。また、第一隔壁は少なくとも0.1μm以上の高さがある事が望ましい。第一隔壁の高さがこれ以下であると第一隔壁自身の高さが、塗布形成される有機発光媒体層よりも低くなり、本発明の効果が充分に得られなくなるためである。
第二隔壁部3bは、基板から陰極側へ垂直方向に、順テーパー形状であることが好ましい。逆テーパー形状、あるいは基板に対して垂直な壁面だと、陰極が断線してしまうおそれがあるためである。また第二隔壁部の第一隔壁部3aの頭頂部からの高さは、0.5μmから5.0μmの範囲にあることが望ましい。第二隔壁を隣接する画素電極間に設けることによって、電極パターン上に塗布された有機発光媒体層材料のインキはレベリングとともに隔壁上部になるに従って膜厚が薄くなることから、隣接画素間のリーク等が発生しにくくなる。また陽極端部からのショート発生を防ぐこと効果もある。さらに、異なる発光色を有する有機発光材料を溶媒に溶解または分散させた有機発光インキを用いて画素ごとに塗り分けをおこなう場合、隣接する画素との混色を防止することが出来る。第二隔壁部の高さが0.5μm以下だと、隣接画素間で正孔輸送層経由でのリーク電流の発生やショートの防止、混色の効果が得られないおそれがある。逆に、5μm以上だと、陰極が断線してしまうおそれがある。
次に、第二隔壁部3bは、第一隔壁部3aとの境界面である底部においてその幅が、第一隔壁部3aの頭頂部の幅よりも小さいものとした。これにより、図2で示されているように、第一隔壁部の頭頂部と、第二隔壁部との間にテラス状の部分が生じる。この発明によって、有機発光媒体材料のインキを塗布した際に、隔壁周辺で余剰となったインキがテラス状部分に残されることになり、有機発光媒体層の塗布ムラが抑制される。また、テラス状部分に残された有機発光媒体材料のインキは、基板上の陽極2と接触しないから、残されたインキにより発光ムラが生じることもない。
以上のように、隔壁が第一隔壁部と、第一隔壁部上の第二隔壁部からなることによって、有機発光媒体層の均一性・平坦性が向上し、発光ムラの少ない有機ELディスプレイとすることが出来た。
<有機ELディスプレイの製造方法>
次に、図1に示した本発明の有機ELディスプレイの製造方法について説明する。ただし、本発明は図1あるいは以下に示す工程によって製造される有機ELディスプレイの構成に限定されるものではない。例えば前述のように、二つの電極によって挟持される有機発光媒体層の各層の順序を基板に対して逆にした構成であっても良い。
本発明にかかる基板1としては、絶縁性を有する基板であればいかなる基板も使用することができる。この基板側から光を出射するボトムエミッションディスプレイの場合には、基板として透明なものを使用する必要がある。
例えば、このような基板としては、ガラス基板や石英基板が使用できる。また、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートであっても良い。あるいは、これらプラスチックフィルムやシートに、金属酸化物薄膜、金属弗化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属酸窒化膜薄膜、あるいは高分子樹脂膜を積層したものを基板として利用してもよい。
前記金属酸化物薄膜としては、酸化珪素、酸化アルミニウム等が例示できる。前記金属弗化物薄膜としては、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等が例示できる。金属窒化物薄膜としては、窒化珪素、窒化アルミニウム等が例示できる。また、前記高分子樹脂膜としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等が例示できる。また、トップエミッションディスプレイの場合には、不透明な基板を使用することもできる。例えば、シリコンウエハ、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、金属シート金属板等である。また、前記プラスチックフィルムやシートにアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属薄膜を積層させたものを用いることも可能である。
また、これらの基板は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基板内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基板上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施してから使用することが好ましい。
また、前記基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を形成して、駆動用基板としても良い。TFTの材料としては、ポリチオフェンやポリアニリン、銅フタロシアニンやペリレン誘導体等の有機TFTでもよく、また、アモルファスシリコンやポリシリコンTFTでもよい。また、前記基板のどちらかの面にカラーフィルタ層や光散乱層、光偏光層等を設けて基板としてよい。
次に、この基板1上に、陽極2を形成する。陽極形成材料として、ITO(インジウムスズ複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物が利用できる。被膜形成方法としてはドライコーティング方式が利用できる。例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等である。そして、真空製膜された金属酸化物被膜にフォトレジストを塗布して露光・現像し、ウェットエッチング又はドライエッチングして、パターン状に加工することができる。パッシブマトリックス方式の有機ELディスプレイの場合には、陽極はストライプ状に形成される。アクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイの場合には、陽極は島状にパターン形成される。
陽極2を形成後、本発明の画素隔壁3を形成する。すなわち本発明の画素隔壁は直接基板上に形成され基板側から見て逆テーパー形状になっている第一隔壁部3aと、第一隔壁上に形成される第二隔壁部3bからなる。以下、図3に基づいて隔壁の形成工程について説明する。
まず第一隔壁3aの形成方法について説明する。
第一隔壁部は、感光性樹脂もしくは無機絶縁物を用いて作成することが出来る。感光性樹脂としてはポジ型レジスト、ネガ型レジストのどちらであっても良いが、良好な逆テーパー形状を得やすいネガ型レジストを用いるのがより好適である。感光性樹脂は市販の物でかまわないが絶縁性を有する必要がある。隔壁が十分な絶縁性を持たない場合隔壁を通じて隣り合う画素電極に電流が流れてしまい表示不良が発生してしまう。感光性材料としては、具体的にはエポキシ系、ポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン系といったものが挙げられるがこれらに限定するものではない。また、有機ELディスプレイパネルの表示コントラストを上げる目的で、光遮光性の材料を感光性材料に含有させても良い。
感光性樹脂を用いた場合の第一隔壁部形成方法としては、まず感光性樹脂を含む塗工液をスピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の公知の塗布方法を用いて基板上全面に塗布する(工程(b))。次に、パターン露光、現像して陽極パターン間に第一隔壁部のパターンを形成する(工程(c))。上記パターン露光、現像する工程では、従来公知の露光、現像方法により第二隔壁部のパターンを形成できる。また焼成に関してはオーブン、ホットプレート等での従来公知の方法により焼成を行うことができる。
また、無機絶縁物としては酸化シリコン、酸化スズ、酸化アルミ、酸化チタン等の無機酸化物、窒化シリコン、窒化チタン、窒化モリブデン等の無機窒化物、窒化酸化シリコンのような無機窒化酸化膜といった物が上げられるがこれらに限定するものでは無い。これら、無機絶縁膜のなかでも特に好適なのが窒化シリコン、酸化シリコンである。これらは、TFT製造工程において用いる事が多いので、第一隔壁部作製工程を、TFT製造工程に含める事が可能になるため、工程削減が可能になり好適である。
上記無機絶縁物の場合の第一隔壁部形成方法としては、図4に示したように、陽極がパターニングされた基板上に、無機絶縁物をスパッタリング法やプラズマCVD法に代表されるようなドライコーティング法を用いて全面成膜した後、フォトリソグラフィーによってパターニングし、陽極部分の無機絶縁膜をエッチングして形成することが出来る。前述のように、無機物膜にTFTの保護膜、層間絶縁膜と同様の材料を用いることが可能であるから、基板をTFT基板の場合とし、無機物膜にTFTの保護膜と同様の材料を用いればアクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイの製造に好適である。
上記無機絶縁物の第一隔壁部形成に用いるエッチングとしては、ドライエッチング、ウェットエッチングの両方を用いる事が出来るが、逆テーパー形状の厳密な制御のためにはドライエッチング法を用いることがより好適である。
こうして、形成した第一隔壁部3a上に第二隔壁部3bを形成する。第二隔壁は感光性樹脂を用いて形成する。さらに詳しくは、感光性樹脂組成物を基板に塗布する工程(工程(d))と、パターン露光、現像、焼成して隔壁パターンを形成する工程(工程(e))と、を少なくとも有する。感光性樹脂としてはネガ型ポジ型どちらのレジストを用いても良いが、好適にはポジ型レジストを用いる事が望ましい。ポジ型レジストであれば、容易に第二隔壁部に適した順テーパー形状を形成することができるためである。用いる事が出来るポジ型レジストとしてはエポキシ系、ポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン系といったものが挙げられるがこの中でも感光性ポリイミドは耐熱性、耐溶剤性、低アウトガスなどの特性から最も好適である。
また、前述のように、第一隔壁部上に形成される第二隔壁部の幅は第一隔壁の幅よりも狭い事が望ましい。第二隔壁部の幅を第一隔壁よりも狭くする事によって第一隔壁部と第二隔壁部の間に裾ができ、画素内形状の平坦化がより促進される。
第二隔壁部3bを形成する感光性樹脂はスピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の公知の塗布方法を用いて塗布される。次に、パターン露光、現像して第一隔壁部上に隔壁パターンを形成する工程では、従来公知の露光、現像方法により第二隔壁部のパターンを形成できる。また焼成に関してはオーブン、ホットプレート等での従来公知の方法により焼成を行うことができる。
前記隔壁作製工程の後、有機発光媒体層を形成する。電極間に挟まれる有機発光媒体層としては、有機発光層単独から構成されたものでもよいし、有機発光層と正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光を補助するための発光補助層との積層構造としてもよい。なお、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層は必要に応じて適宜選択される。
そして、本発明は有機発光層や正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光補助層からなる有機発光媒体層のうち少なくとも1層を、有機発光媒体層材料を溶媒に溶解または分散させたインキを用い、ウェットコーティング法により、前記陽極の上部に塗布し、形成する際には有効である。以降、本発明の有機ELディスプレイの製造方法の具体例として、正孔輸送層及び有機発光層からなる有機発光媒体層を形成した場合について説明する。
まず、上述の工程により陽極及び隔壁が形成された基板上に、正孔輸送層5を形成する。正孔輸送層5の形成材料としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
これらの、正孔輸送層材料を溶解または分散する溶媒としては、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独またはこれらの混合溶剤などが挙げられる。
前記インキの表面張力は35mN/m以下に調整することが望ましい。表面張力が35mN/mよりも大きくなると塗膜を塗布した直後からその表面張力により液のよりが発生してしまうためである。また溶媒が水を中心とする場合には、表面張力を下げるためには水に対して10−30vol%程度のアルコール類を入れることがのぞましい。水に対するアルコールの濃度が30vol%を超えると水との蒸発速度差からムラが発生しやすくなり、さらに分散体の凝集などの問題が起こる。また、10vol%以下であると表面張力を下げるのに不十分である。以上のような溶媒を用いたインキの濃度は通常0.01%−10%程度、好ましくは0.1%−3%固形分を含むように調整される。
以上のような溶媒にてインキ化された材料をウェットコーティング法によって基板に塗布する。ウェットコート法としては、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、吐出コート法、ロールコート法などの塗布法や、凸版印刷法、インクジェット法、凹版印刷法などの印刷法が挙げられる。
上記手法にて塗布した膜は、速やかに乾燥を行うことが望ましい。乾燥はオーブンやホットプレートなどの既知の加熱方法のいずれを用いてもよい。正孔輸送層の焼成温度は正孔輸送層がPEDOT/PSSの場合、130℃〜230℃で10分〜60分間加熱することが好ましい。ここで焼成温度が130℃未満では正孔輸送層の焼成条件としては低く、正孔輸送層からの水分の蒸発不足などの問題が懸念される。水分が隔壁中に残ると発光材料が水分により汚染劣化されてしまうためである。また230℃以上では温度が高すぎるために正孔輸送層が熱劣化してしまう危険がある。また時間が10分以下では短いために焼成不足となるし、60分以上では生産性が劣るため好ましくない。また、乾燥する際に減圧下で乾燥してもよいし、窒素下で乾燥してもよい。
正孔輸送層形成工程後、有機発光層6を形成する。有機発光層6は電流を通すことにより発光する層であり、有機発光層6を形成する有機発光材料は、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’―ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系、ポリフェニレンビニレン系やポリフルオレン系の高分子材料が挙げられる。
これらの有機発光材料は、溶媒に溶解または安定に分散させ有機発光インキとなる。有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の単独またはこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶剤が有機発光材料の溶解性の面から好適である。又、有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されても良い。
有機発光層6の形成方法としては、本発明のスリットコート法の他にインクジェット法や凸版印刷法、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法等によりパターン形成することが可能である。
次に、陰極7を形成する。陰極層7の材料としては、有機発光層6への電子注入効率の高い物質を用いる。具体的には、Mg、Al、Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li,LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いてもよい。または、電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg、AlLi、CuLi等の合金が使用できる。陰極層7を透光性電極層として利用する場合には、仕事関数が低いLi、Caを薄く設けた後に、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物を積層してもよく、前記有機発光層6に、仕事関数が低いLi,Caなどの金属を少量ドーピングして、ITOなどの金属酸化物を積層してもよい。
陰極7の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。陰極の膜厚は、前述のように第一隔壁部と、有機発光媒体層の境界で断線しない程度の膜厚であれば特に制限はないが、10nm〜1000nm程度が望ましい。陰極の膜厚が10nm未満であると膜のピンホールが十分に埋められずショートの原因となる。また1000nmより大きいと製膜時間が長くなり生産性が悪くなる。なお、陰極のパターニングについては、成膜時にマスクを用いることによりパターン形成をおこなうことができる。
最後にこれらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、封止体8を用いて有機EL構成体を封止する。封止体8としては、凹部を有する封止キャップ8aを用い、封止キャップ8aと基板1を接着剤8bを介して貼りあわせる方法を用いることができる。また、封止キャップ7aと基板1で密封させた空間には乾燥剤8cを備えることが出来る。
封止キャップ7aとしては、金属キャップ、ガラスキャップを用いることができる。接着剤7bとしては、エステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート等のアクリレート、ウレタンポリエステル等の樹脂を用いたラジカル系接着剤や、エポキシ、ビニルエーテル等の樹脂を用いたカチオン系接着剤、チオール・エン付加型樹脂系接着剤等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂を用いることが出来る。また、紫外線硬化型エポキシ系接着剤も利用できる。乾燥剤7cとしては、酸化バリウムや酸化カルシウムを用いることができる。
また、この他にも有機EL構成体にバリア層を形成し、バリア層を封止体とすることも可能である。このとき、バリア層としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等を用いることができ、これらは、CVD法等のドライコーティング法により有機EL構成体全面を覆うように形成される。また、バリア層が形成された有機ELディスプレイは接着層を介して封止基板と貼りあわせ、これらを封止体とすることも可能である。
本発明の実施例について述べる。100mm角のガラス基板の上にスパッタ法を用いてITO(インジウム−錫酸化物)薄膜を形成し、フォトリソ法と酸溶液によるエッチングでITO膜をパターニングして、陽極を形成した。陽極のラインパターンは、線幅40μm、スペース23μmでラインが約60mm幅に960ライン形成される133ppiのパターンとした。また、ITO膜の膜厚は150nmとした。
次に感光性樹脂を用いて第一隔壁部を形成する。陽極を形成したガラス基板をアセトン、純水、ブラシ洗浄、超音波洗浄などのウェットプロセスによる洗浄を行った後に、ネガ型ポリイミド(東レ BG−2400 )を全面スピンコートした。スピンコートの条件は、300rpmで5秒間回転させた後、500rpmで20秒間回転とし、スピンコート後の感光性材料の高さを0.6μmとした。全面に塗布した感光性材料に対し、i線ステッパーを用いて200mJ/cm2露光した。露光した後現像を行い、その後に裏面露光を行い、200℃で30分ベークし第一隔壁部を得た。こうして形成された第一隔壁部は、テーパー角度が110度となり、幅が25μm、膜厚が0.55μmとなった。
次に第二隔壁部を以下のように形成した。陽極を形成しその上に第一隔壁が形成された基板上に、ポジ型感光性ポリイミドを全面スピンコートした。スピンコートの条件を150rpmで5秒間回転させた後500rpmで20秒間回転させ、隔壁の高さを2.0μmとした。全面に塗布した感光性材料に対し、i線ステッパーを用いて75mJ/cm2露光した。露光した後現像を行いそのあとで、220℃で30分ベークし第二隔壁部を得た。こうして形成された第二隔壁部は、幅が21μm、膜厚が1.8μmとなった。
次に、正孔輸送インキとしてPEDOT/PSS水分散液であるバイトロンCH−8000を60%、超純水を20%、1−プロパノールを20%混合し、インキとした。上記のインキを用いてスリットコート法にて基板上に正孔輸送層を形成し、膜厚を60nmとした。尚、正孔輸送インキ塗布前の基板に前処理としてオーク製作所製 UV/O3洗浄装置にて3分間紫外線照射を行った。
次に、有機発光材料であるポリフェニレンビニレン誘導体を濃度1%になるようにトルエンに溶解させた有機発光インキを用い、スリットコート法にて基板上に有機発光層を形成した。このとき乾燥後の有機発光層の膜厚は80nmとなった。
その上にCa、Alからなる陰極材料を、画素電極のストライプパターンと直交するようなストライプパターンで抵抗加熱蒸着法によりマスク蒸着し、膜厚500nmの陰極層を形成した。最後にこれらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップとエポキシ系の接着剤を用いて密閉封止し、有機ELディスプレイを作製した。
得られた有機ELディスプレイの表示部の周辺部には各画素電極に接続されている陽極側の取り出し電極と、陰極側の取り出し電極があり、これらを電源に接続することにより、有機ELディスプレイパネルを得た。
実施例2においては、実施例1では感光性樹脂を用いて作製した第一隔壁を、無機絶縁物材料に代えて本発明の有機ELディスプレイを作製した。
まず、画素電極が形成されたガラス基板をアセトン、純水、ブラシ洗浄超音波洗浄などのウェットプロセスによる洗浄を行った後に、プラズマCVD装置に投入し基板温度200℃で窒化シリコン膜を全面に成膜した。成膜した後にウェット洗浄を行いノボラック系ポジ型レジスト(日本ゼオンZWD6216−6)を全面に塗布し露光現像を行い所定のパターンを得た。この後にCF4プラズマを用いたRIE装置を用いて、エッチングを行い膜厚0.60μm、幅25μmでテーパー角が106度である窒化シリコン膜で作られた第一隔壁を得た。
その他は、実施例1と同様に有機ELディスプレイを作製し、これらを電源に接続することにより有機ELディスプレイパネルを得た。
(比較例1)
実施例1において、本発明の2つの隔壁を持つ構造を作成せずに、感光性ポリイミドを用いて一層構造からなる隔壁を作製しその他は実施例1と同様にディスプレイパネルを作成した。
(比較例2)
実施例1において、第一隔壁の高さを1.0μmとした。その他は実施例1と同様に有機ELディスプレイを作製し、これらを電源に接続することにより有機ELディスプレイパネルを得た。
実施例1、2、及び比較例1、2において得られた正孔輸送層が形成された基板及び有機ELディスプレイパネルについて、以下の評価をおこなった。
・画素内発光強度確認
得られた有機ELディスプレイに対し、電流を流すことにより有機ELディスプレイを発光させた画素の発光状態をCCDを用いて撮影し、画素内における面内バラツキ(標準偏差/平均値%)、最大輝度、最小輝度比を測定した。
実施例1においては、面内バラツキが9.6%、輝度比が1.26と良好な値を示し、パネル全面の発光でもムラなどの問題は無かった。
実施例2においては、面内バラツキが6.8%、輝度比が1.18と実施例1よりやや良好な値を示し、パネル全面の発光でもムラなどの問題は無かった。
比較例1においては、面内バラツキが34.2%、輝度比が3.07と画素内における輝度ムラが大きく表示品質を著しく低下させる結果となった。また、パネル全面の発光は特にムラなどの問題は無かった。
比較例2においては、断線が多数発生し、評価できなかった。
表1に実施例及び比較例の評価結果を示す。
本発明の有機ELディスプレイの断面模式図である。 図1の隔壁及び有機発光媒体層部分の拡大図である。 本発明の有機ELディスプレイの製造工程の模式図である。 無機絶縁物を用いた場合の第一隔壁部の作製工程の模式図である。
符号の説明
1:基板
2:第一電極(陽極)
3:隔壁
3a:第一隔壁部
3b:第二隔壁部
4:有機発光媒体層
5:正孔輸送層
6:有機発光層
7:第二電極(陰極)
8:封止体
8a:封止キャップ
8b:接着剤
8c:乾燥剤
9:無機絶縁物膜
10:レジストパターン

Claims (3)

  1. 少なくとも層間絶縁層を有する薄膜トランジスタ基板上に画素毎に形成された複数の第一電極と、前記第一電極間に形成された絶縁性を有する隔壁のパターンと、前記複数の第一電極上に形成された有機発光媒体層と、前記隔壁のパターン及び前記有機発光媒体層の全面を覆うように形成された第二電極と、を具備する有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであって、
    前記隔壁は少なくとも第一隔壁部及び該第一隔壁部上の第二隔壁部の2つの層を有し、前記第一隔壁部が基板上逆テーパー形状であり、前記第一隔壁部の高さは0.1μm以上0.7μm以下であり、前記層間絶縁層と前記第一隔壁部は窒化シリコンからなり、
    前記第二電極は前記複数の第一電極及び前記複数の有機発光媒体層の全面を覆うように形成され、
    前記第二電極の有機発光媒体層上での膜厚が、前記第一隔壁部の頭頂部と前記有機発光媒体層の最表面との段差よりも大きく、
    前記第一隔壁部の頭頂部の幅が、前記第二隔壁部の底部の幅よりも大きいことを特徴とする有機エレクトロルミネセンスディスプレイ。
  2. 前記第二隔壁部が、前記第一隔壁部上順テーパー形状であることを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイ。
  3. 基板上に窒化シリコンからなる層間絶縁層を有する薄膜トランジスタを形成する工程、前記薄膜トランジスタ上に第一電極のパターンを形成する工程、前記第一電極のパターン間に窒化シリコンからなる第一隔壁部を形成する工程、からなる薄膜トランジスタ基板形成工程と、
    前記第一隔壁部上に第二隔壁部を形成する工程と、
    前記第一電極上に有機発光媒体層を形成する工程と、
    前記有機発光媒体層、前記第一隔壁部及び前記第二隔壁部を覆い、かつ有機発光媒体層上での膜厚が前記第一隔壁部の頭頂部と前記有機発光媒体層の最表面との段差よりも大きくなるように全面に第二電極を形成する工程と、
    を有し、
    前記第一隔壁部を形成する工程は、前記第一電極が形成された基板上に窒化シリコン膜を形成する工程と、エッチングにより前記第一電極部を開口し、高さが0.1μm以上0.7μm以下の逆テーパー形状に形成する工程と、
    からなり、
    前記有機発光媒体層を形成する工程において、該有機発光媒体層の内少なくとも有機発光層が、凸版印刷法にて形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法。
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