JP5091519B2 - ジオポリマー組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
現在、大規模に工業生産されているセメントはポルトランドセメント(JIS A 5210)であり、その主原料は石灰石である。石灰石は炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とし、焼成されると約900℃で酸化カルシウム(CaO)に分解され、同時にCO2を排出する。
このようなジオポリマー法による材料化として、例えば、特許文献1には、珪酸ナトリウム水溶液とフライアッシュを混合し、常温または蒸気養生で固化させたセメント質固化材が記載されている。
FAは、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)を主成分とし、JIS A6201において、粒度やフロー値に基づきI〜IV種に規格化され、セメントの混合材やコンクリート混和材などに利用されている。
フライアッシュセメントの特徴として、活性化したガラス質のFAが、セメントの水和によって生成した水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と反応(ポゾラン反応)して、緻密な硬化体組織を形成する。また、FAが球状の微粉であることから、コンクリートやモルタル施工時の流動性が良くなり、フロー値やワーカビリティー、ポンパビリティーが向上すると共に、単位水量を減少して乾燥収縮も低減できるなどの利点がある。
さらに、アルカリ量が少ないためにアルカリ骨材反応を抑制することや、水和熱が小さいこと、長期強度が大きいことなどが知られている。
また、特許文献1に記載の材料化は、珪酸ナトリウムとFAを主原料としたセメント質固化材に関するものであり、ジオポリマー組成物やそれを用いた構造体、並びにそれらの製造方法については記載されていない。
1)〜(6)の構成とした。
(1)本発明のジオポリマー組成物は、フィラーとアルカリ活性剤と骨材を原料とし、前記アルカリ活性剤は、アルカリ量/水量のモル比が0.1以上であることを特徴とする。
(2)本発明のジオポリマー組成物は、フィラーとアルカリ活性剤と骨材を原料とし、前記アルカリ活性剤は、前記アルカリ量/水量のモル比が0.15〜0.23の範囲であることとした。
(3)本発明のジオポリマー組成物は、前記(1)または(2)において、前記アルカリ活性剤が、少なくとも水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムのいずれかを含むこととした。
(4)本発明のジオポリマー組成物は、フィラーとアルカリ活性剤と骨材を原料とし、前記アルカリ活性剤が水酸化ナトリウム溶液及び珪酸ナトリウム溶液からなり、モルタルフロー値が15cm以上であることとした。
(5)本発明のジオポリマー組成物は、前記(1)〜(4)のいずれか1項において、前記フィラーが少なくともフライアッシュ、高炉スラグ、下水焼却汚泥のいずれかを含むこととした。
(6)本発明のジオポリマー組成物の製造方法は、フィラーと、アルカリ活性剤と、骨材とを原料として混合し、その混合物を反応させて、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物を製造することを特徴とする。
また、アルカリ活性剤が、少なくとも水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムのいずれかを含み、特にメタ珪酸ナトリウム添加することにより、ジオポリマー法による重合固化の効果が高まり、圧縮強度の高い構造体を得ることができる。また、アルカリ活性剤のアルカリ量/水量のモル比が0.1以上であることで、施工性に優れ、圧縮強度の高い構造体を得ることができ、アルカリ量/水量のモル比が0.15〜0.23の範囲であることで、よりその効果が顕著となる。
また、アルカリ活性剤が水酸化ナトリウム溶液及び珪酸ナトリウム溶液からなる場合、モルタルフロー値が15cm以上であることで、施工の際に凝固速度が適切に保たれ、施工性に優れ、圧縮強度の高い構造体を得ることができる。
<ジオポリマー組成物>
本発明のジオポリマー組成物は、フィラーと、アルカリ活性剤と、骨材とを原料とする。
セメントとジオポリマーの違いは、セメントがカルシウム系のバインダーであるのに対し、ジオポリマーはアルミニウム系のバインダーであることであり、フィラーを無機質の不定形ゲルで固めた構造になる。フィラーから溶出した金属(主として、アルミニウム)は水ガラス成分を含む水と接すると、珪酸錯体(SiO4)を架橋しポリマー化する。そのため、ジオポリマーは珪酸錯体の源として、一般に水ガラスが必要であり、このときバインダーゲル6員環を形成していると考えられる。この反応は天然現象でも多く見られ、地殻中の堆積岩の生成機構はまさにジオポリマー反応であり、ジオポリマーの述語もこれに由来する。
具体的には、フライアッシュ(JIS A 6201)(以下、FA)、クリンカアッシュなどの石炭灰、高炉スラグ(JIS A 6206)、下水焼却汚泥などのガラス成分を含む産業廃棄物を用いることができ、得られるジオポリマーコンクリート及びジオポリマーモルタルの施工性や圧縮強度の面からFAが好ましく、フロー値など施工性に優れ、圧縮強度の高い構造体を得ることができる。
モル比が高いほど得られる構造体は高強度であるため、練り混ぜ時に添加するアルカリの量を増やし、水を減らす必要があるが、水を減らすほど流動性が低下し、モールドへの充填が困難となる。そのため、モル比は0.15〜0.23の範囲であることがより好ましい。
好ましくは、水ガラスに水酸化カリウム溶液または水酸化ナトリウム溶液であり、メタ珪酸ナトリウムを添加するとより好ましい。これらを用いることで、ジオポリマー法による重合固化の効果が高まり、圧縮強度の高い構造体を得ることができる。
また、特にメタ珪酸ナトリウム粉体を添加すると、同一モル比で流動性が大きくなるため、高強度の構造体を作製する場合、これを用いることが望ましい。
<ジオポリマーモルタル>
フィラーとして、JIS A 6201 フライアッシュI種(以下、FA‐I)、フライアッシュII種(以下、FA‐II)を用いた。骨材には人工軽量骨材太平洋アサノライトを用いた。FA及び骨材を練り混ぜる溶液には、JIS珪酸ソーダ1号の2倍希釈溶液とKOH溶液あるいはNaOH溶液の混合溶液を用いた。また、アルカリ源として無水メタ珪酸Naの添加も行った。このFA、骨材、混合溶液を様々な配合条件でモルタルミキサーにより練り混ぜ、鋳型に入れ80℃で8時間処理することによりジオポリマーモルタルを作製した。配合条件を表1に示す。
図1に示されるように、原料に関わりなく圧縮強度は各種アルカリ溶液とケイ酸ナトリウム溶液、及びメタケイ酸ナトリウム中のアルカリ成分(カリウム及びナトリウム)と、水量のモル比をとった、モル比と強い相関があり、モル比が0.23程度まではほぼ直線的に圧縮強度が増加するが、モル比0.23を超えるとその強度の伸びは頭打ち傾向となる。したがって、ジオポリマーモルタルの作製に当たっては、モル比を0.23以下で、所定の強度となるように作製すればよい。
続いて、ジオポリマーコンクリートの実施例として、ジオポリマーモルタル作製の際に用いたフィラー・骨材・試薬などに粗骨材として太平洋マテリアル製アサノライトを加えて作製した。配合条件は、ジオポリマーモルタルの実施例で得られた結果を参考にして、以下の表3に示す配合条件で作製した。
図3に示されるように、モル比と圧縮強度に相関が認められ、モル比が0.20程度までは直線的に圧縮強度が増加し、それ以上で強度増加の程度が小さくなることがわかった。
また、ジオポリマーモルタルの試験結果と同様に、アルカリ溶液として水酸化ナトリウムを使用したものは、速い凝結による施工性の悪化のためモル比の大きな試料を作成することが困難であった。
一方、水酸化カリウム及びメタ珪酸ナトリウムを使用した試料は、比較的高アルカリ濃度まで施工性の悪化がないため、高強度のジオポリマーコンクリートを作製するには、メタ珪酸ナトリウムの添加は有効であることがわかった。
FA−IIと、モル比が0.10のアルカリ活性剤を用いて、ジオポリマーモルタルを作製し、走査型電子顕微鏡を用いてその破面のSEM像を撮影した。アルカリ活性剤には水酸化ナトリウム及び珪酸ナトリウム溶液を用いた。結果を図4に示す。
図4に示されるように、FAが未反応で表面が滑らかな部分、付着物に覆われている部分が確認される。滑らかな部分は、モル比が大きいジオポリマーモルタルほど減少することが確認された。
また、図4の右部には針状の物質が確認される。この組成は、EDS分析によりNaに富む組成であることが確認されたため、針状物質の存在はNaの過剰分が析出したことを示唆している。
一方、アルカリ活性剤として、水酸化カリウム溶液を用いたモルタルの破面には、図4に見られるようなK過剰分が析出したと考えられるような物質は認められなかった。
FA−IIと、モル比がそれぞれ0.10と0.20のアルカリ活性溶液でペーストを作製し、それらペースト及びFA−IIの29SiNMRスペクトルを測定した。アルカリ活性剤には水酸化ナトリウム溶液及び珪酸ナトリウム溶液を用いた。結果を図5に示す。
図5に示されるように、FA‐IIは主に‐110ppm付近のQ4(0A1)から構成されていることがわかる。
モル比が0.10のペーストは、FA‐IIと比較するとQ4(0A1)が減少しQ4(1A1)〜Q4(4A1)が増加している。このことから、FA‐IIをアルカリで活性することで重縮合が進行し、Q4(0A1)がQ4(1A1)〜Q4(4A1)に変化したと考えられる。
モル比が0.20のペーストは、モル比が0.10のペーストよりもQ4(0A1)の相対比が小さくなり、Q4(1A1)〜Q4(4A1)がさらに増加している。つまり、モル比が大きい試料ほど、FA‐IIを主に構成しているQ4(0A1)は減少し、Q4(1A1)〜Q4(4A1)が卓越する。
長期強度の測定としてジオポリマーモルタル・コンクリートを作製し、2ヵ月後の圧縮強度を測定した。
作製方法は、表3における試料番号27及び28と同様である。
圧縮強度測定法はJIS A 1108に準じて行った。
その結果、試料番号27番(表3)の2ヵ月後の圧縮強度は、61.2、試料番号28番の圧縮強度は57.8と、蒸気養生後に測定したもの(表3)と大差なかった。したがって、本試験条件では、蒸気養生後の常温では、重合固化が進行することはなく、同様の圧縮強度を維持することが分かった。
人工軽量骨材を使用したモルタルを作製し、そのアルカリ骨材反応性を評価した。ジオポリマーモルタルは、表1の試料番号16の配合で作製した。また、比較のために同様の人工軽量骨材を使用し、普通ポルトランドセメント900g、人工軽量骨材1066g、水450gの配合で普通セメント軽量モルタルも作製した。アルカリ骨材反応性の評価は、ASTM C1260の迅速モルタルバー法により行った。
図6はその結果である。ジオポリマーモルタルは、普通セメントを使用したものと比較して、膨張量が小さく、その反応性が小さいことがわかった
また、様々な条件でジオポリマーモルタル・コンクリートを作製し、配合条件と圧縮強度の関連性を検討した結果、モル比が高いジオポリマーモルタル・コンクリートほど、高強度であるという傾向が得られた。つまり、高強度のモルタル・コンクリートを得るためには、練り混ぜ時に添加するアルカリの量を増やし、水を減らす必要があるが、水を減らすほど流動性が低下しモールドへの充填が困難となる。しかしながら、無水メタ珪酸ナトリウムを添加することで流動性を保ちつつ、高強度のモルタル・コンクリートを得ることができた。また、圧縮強度が大きいジオポリマーモルタル・コンクリートほど、そのバインダー部分の構造はQ4(0A1)が減少しQ4(1A1)〜Q4(4A1)が卓越するという結果が得られた。
また、長期強度においても、80℃で8時間養生した場合と同じ程度の強度が得られることが確認できた。
Claims (6)
- フィラーとアルカリ活性剤と骨材を原料とし、前記アルカリ活性剤は、アルカリ量/水量のモル比が0.1以上であることを特徴とするジオポリマー組成物。
- フィラーとアルカリ活性剤と骨材を原料とし、前記アルカリ活性剤は、前記アルカリ量/水量のモル比が0.15〜0.23の範囲であることを特徴とするジオポリマー組成物。
- 前記アルカリ活性剤は、少なくとも水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムのいずれかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のジオポリマー組成物。
- フィラーとアルカリ活性剤と骨材を原料とし、前記アルカリ活性剤が水酸化ナトリウム溶液及び珪酸ナトリウム溶液からなり、モルタルフロー値が15cm以上であることを特徴とするジオポリマー組成物。
- 前記フィラーは、少なくともフライアッシュ、高炉スラグ、下水焼却汚泥のいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物。
- フィラーと、アルカリ活性剤と、骨材とを原料として混合し、その混合物を反応させて、請求項1〜5のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物を製造することを特徴とするジオポリマー組成物製造法。
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