実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の実施の形態1における筐体にて構成される電子機器としての携帯電話の構成を示した斜視図、図2は図1に示した携帯電話の筐体の第1の部材および第2の部材から形成される丸枠II内箇所の詳細を拡大して示した部分斜視図、図3は図1に示した筐体の第1の部材および第2の部材から形成される箇所における製造方法を示す断面図である。
図1において、本実施の形態1においては筐体が用いられる電子機器として携帯電話を例に示している。本携帯電話は、筐体100の表側を構成する第1の部品1と、筐体100の裏側を構成する第2の部品2と、バッテリーカバ3と、このバッテリーカバ3に形成された端子部4となどにて構成されている。また、図示はしていないものの、本携帯電話の内部には、電子基板、バッテリ、表示部、操作ボタン、通信を行うための電波の送受信部等の他の部品が組み込まれることは言うまでもない。
そして、筐体100の表側を構成する第1の部品1は、表示部が組み込まれる枠の部分に、第1の融解点を有する第1の材料の例えばステンレス板金にて形成される第1の部材5と、それ以外の部位が第1の融解点より低い第2の融解点を有する第2の材料60の例えばポリカーボネート樹脂およびアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂のポリマーアロイ(以下、PC+ABS樹脂と記す)にて形成される第2の部材6とにて構成されている箇所を有する。ここで使用される第1の部材5を構成するステンレス板金の厚さは例えば0.3mm程度のものを使用することが考えられる。尚、第2の部材6を形成しているPC+ABS樹脂では、溶融した状態で金型内に充填して所望の形状に成形する際に、この厚さでは途中で固化するため成形することは困難である。
図2において、第1の部材5は筐体100の第1の部品1の形状と成るように内面に沿って折り曲げられ、その外側には第2の部材6が接合されている。そして第2の部材6は、外観の意匠面と成る第1の部材5と接しない側の反接合面9および第2の部材6の他の部材との組み立てに必要な嵌合構造部10などが形成されている。そして、第2の部材6と第1の部材5とを一体化するために、第1の部材5の端部5aを折り曲げて第2の部材6内部に埋没させる埋没箇所Zと、第1の部材5および第2の部材6が互いに一方の面である接合面111のみにて接合する接合箇所Yと、第1の部材5のみにて形成される単体箇所Xとが連続して形成されている。
そして、第1の部材5の端部5aの折り曲げ方向は、第1の部材5の接合箇所Yにおける第2の部材6との接合方向、すなわち接合面111の方向に折り曲げられている。またその、第1の部材5の端部5aの折り曲げ開始位置5cは、埋没箇所Zと接合箇所Yとの境界位置Wにて形成されている。また、第1の部材5の端部5aの先端5b側は凹凸構造にて構成されている。これは、この先端5b側の凹凸構造が第2の部材6に食い込むようにして一体に成形され、第1の部材5の端部5aに沿う方向に対する両者の相対的な変位を拘束し、より強固に一体化するためである。尚、第1の部材5の端部5aとは、本実施の形態1においては第1の部材5の先端を指すものではなく、第1の部材5の折り曲げられた部分の全体を指すものである。
図3において、金型11は、第1の金型部分12と第2の金型部分13とにて構成されており、これらによりキャビティ14が形成されている。そしてこのキャビティ14が、第1の部材5の端部5aおよび接合箇所Yに対応する箇所を挿入することが可能なように第1の金型部分12および第2の金型部分13はそれぞれ形成されている。また、金型11には、第2の材料60の充填開始位置15が、第1の部材5の接合箇所Yにおける第2の部材6との接合側に形成され、第2の材料60の充填は充填方向が、第1の部材5の接合箇所Yにおける第2の部材6との接合側から第1の部材5の端部5a方向と成るように形成されている。なお充填開始位置15の形状は、例えばピンゲート、サブマリンゲート、サイドゲート、ダイレクトゲート、ファンゲート等のいずれでも形成することが可能である。
次に上記のように構成された実施の形態1の電子機器の筐体の製造方法について図3を交えて説明する。まず、第1の金型部分12と第2の金型部分13とから構成される金型11にて形成されるキャビティ14内の所定の位置、すなわち、第1の部材5の端部5aおよび接合箇所Yに対応する箇所に第1の部材5を設置する(図3(a))。この第1の部材5を金型11のキャビティ14内に挿入する際には、第1の部材5の端部5aが折り曲げられているため、第1の部材5の端部5aが垂直にまっすぐ形成されている場合と比較して、この端部5aの折り曲がりが誘導(ガイド)となって金型11のキャビティ14内に挿入されるため、第1の部材5を容易に設置することできる効果を有する。
そして、このように第1の部材5を金型11に設置する場合、第1の部材5は一般的にプレス成形などにおいて大量に製作されるため、個々の内側寸法Bを全て同じ寸法に製作することはほぼ不可能であり、ばらつきが生じている。また、たとえ第1の部材5が同じ寸法に作成されていたとしても、金型11への設置において誤差が生じる可能性がある。従って、この寸法Bと第1の金型部分12の寸法Cとの間には隙間Aが発生する。但し、図3中における隙間Aは誇張して大きく示しているが、実際には隙間Aは数ミクロンから数十ミクロン程度の大きさを有することが考えられる。また、第1の部材5を金型11に挿入できるように、寸法Bについてはばらつきの範囲内で最小と形成されるものでも、寸法Cよりも大きく形成されるように公差を設定しておくことは言うまでもない。
次に、金型11のキャビティ14内に溶融した第2の材料60を充填開始位置15から充填する(図3(b))。よって、第2の材料60の充填方向は、第1の部材5の接合箇所Yにおける第2の部材6との接合側から第1の部材5の端部5aへ向かって流れる方向と成る。そして、埋没箇所Zにおいて第1の部材5の端部5aが折れ曲がって形成されているため、第2の材料60の流路が狭められる(圧力損失部D)。次に、第2の材料60の充填が進むと、第2の材料60の充填圧力によって第1の部材5が押されて内倒れする。そして、第1の部材の5の折れ曲がり開始位置5cと第1の金型部分12とがE点にて接触する(図3(c))。このように、圧力損失部Dによって、第2の材料60は第1の部材5の端部5aを回り込み隙間Aに先に流れることはなく、隙間Aに向かっては遅延して流れ込む。よって、第1の部材5の折れ曲がり開始位置5cと第1の金型部分12とがE点にて接触して確実に隙間Aが封止されてから、第2の材料60がE点に向かって流れ込み充填される。
次に、完全に第2の材料60が充填し、第2の材料60を完全に固化させて第2の部材6を形成する(図3(d))。そして、第1の金型部分12と第2の金型部分13を離隔し、第1の部材5と第2の部材6とが一体化される。尚、第2の材料60と第1の部材5とを一体化と成るように成形する際、第1の部材5によって第2の材料60の成形収縮が拘束されると、その部位には熱応力が発生する。この熱応力は成形した後の反りや強度低下を招く。しかしながら、第1の部材5の端部5aの先端5b側は凹凸構造にて形成されているため、最小限の部位で第2の部材6は拘束され、それ以外の部分は拘束から解放されるので熱応力を緩和でき、応力の残留を最小限に抑えることができる。
上記のように構成された実施の形態1の筐体および電子機器は、第1の部材の端部の折り曲げ方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合方向に折り曲げられ、また、第1の部材の端部の折り曲げ開始位置が、埋没箇所と接合箇所との境界位置にて形成されているため、第1の部材の折り曲げ開始位置が金型とが容易に当接可能となる。さらに、第2の材料のキャビティ内への充填圧力により、第1の部材の端部の折り曲げ開始位置を金型と接触させることにより、第1の部材の折り曲げ開始位置が金型と確実に当接可能となる。
さらに、第2の材料の充填は充填方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合側から第1の部材の端部方向となるため、第1の部材と金型との隙間に第2の材料が入り込むことを延滞させることができる。これらのことより、第2の材料が隙間から漏出し、バリが形成されるのを防止できる。よって、このバリに生じていた第1の部品の内側寸法の精度の悪化が改善され、携帯電話を使用中にバリが剥がれ、筐体の内部で遊離する恐れが低減する。また、第1の材料は金属材にて形成され、第2の材料は樹脂材にて形成されているため、第1の材料にて成る第1の部材の強度を容易に得ることができ、第2の材料にて成る第2の部材の外観形状の自由度が向上する。
また、従来の第1の部材と第2の部材とを一体化するための構成としては、第1の部材の両面から第2の部材で挟み込む3層構造にて形成されていた。よって、第2の部材を構成する第2の材料を溶融した状態で充填して所望の形状に成形する際に、途中で固化して充填できない事態を回避するために、第2の部材の層は十分な厚さが必要となり、一体化される3層構造の部位の厚さが厚く形成されていた。しかし、本実施の形態1では第1の部材の端部を第2の部材の内部に埋没させる埋没箇所のみを3層構造とし、その他の部分を第1の部材と第2の部材とにて成る接合箇所の2層構造、さらには第1の部材のみにてなる単体箇所の1層構造にて形成されているため、一体化される部位の厚さはより薄くすることができる。そしてこのように、第1の部材と第2の部材とを一体化することにより、筐体の剛性は向上することができる。よって、このような筐体を電子機器など小型化および薄型化が極めて進んでいるものに用いることは、小型化および薄型化に対してはより一層有効的となる。尚、埋没箇所のある第2の部材の一部は薄肉にて形成されているが、局部的であるので第2の部材を構成する第2の材料が途中で固化して充填できなくなるという恐れは防止できる。
特に、表示部を設置する箇所の筐体の部分は表示部を外力や衝撃から保護する目的で強度が大きく必要となるため、樹脂材のみにて表示部を配設する箇所を形成すると厚みが大きく必要となる。しかしながら、本実施の形態1においては、第1の部材のみにて成る単体箇所に表示部を配設することが可能となり、表示部の設置が容易に可能になるとともに厚みを薄く形成することが可能となる。また、金属材にて成る第1の部材のように強度が優れて薄く形成することが可能な部材にて筐体の全てを形成することも考えられるが、コスト的に高くなり、また、筐体の外観の意匠の自由度が低下する。さらに、例えば携帯電話のように通信を行うための電波の送受信部を備えた電子機器の場合には、第1の部材のような金属材にて全て筐体を形成すると、電波の送受信に不具合を生じる可能性が大きいため、金属材にて成る第1の部材の使用が制限される。よって、このような場合、本実施の形態1のような第1の部材と第2の部材とに成る筐体を利用することは有効となる。
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2における筐体にて構成される電子機器としてのカメラの構成を示した斜視図、図5は図4に示したカメラの筐体の第1の部材および第2の部材から形成される丸枠V内箇所の詳細を拡大して示した部分斜視図、図6は図4に示した筐体の第1の部材および第2の部材から形成される箇所における製造方法を示す断面図である。
図4において、本実施の形態2においては筐体が用いられる電子機器としてカメラを例に示している。本カメラは、筐体101の表側を構成する第1の部品21と、筐体101の裏側を構成する第2の部品22とにて構成されている。また、図示はしていないものの、本カメラの内部には、電子基板、バッテリ、レンズ等が組み込まれていることは言うまでもない。そして、筐体101の表側を構成する第1の部品21は、第1の融解点を有する第1の材料の例えばステンレス板金にて形成される第1の部材25と、それ以外の部位が第1の融解点より低い第2の融解点を有する第2の材料260の例えばガラス繊維で複合強化されたポリカーボネート樹脂(以下、PC樹脂と記す)にて形成される第2の部材26とにて構成されている箇所を有する。ここで使用される第1の部材25を構成するステンレス板金の厚さは例えば0.3mm程度のものを使用することが考えられる。尚、第2の部材26を形成しているPC樹脂では、溶融した状態で金型内に充填して所望の形状に成形する際に、この厚さでは途中で固化するため成形することは困難である。
図5において、第1の部材25は筐体101の第1の部品21の形状と成るように内面に沿って折り曲げられ、その外側には第2の部材26が接合されている。そして第2の部材26は、外観の意匠面と成る第1の部材25と接しない側の反接合面29および第2の部材26の他の部材との組み立てに必要な嵌合構造部210などが形成されている。そして、第2の部材26と第1の部材25とを一体化するために、第1の部材25の端部25aを折り曲げて第2の部材26内部に埋没させる埋没箇所Zと、第1の部材25および第2の部材26が互いに一方の面である接合面211のみにて接合する接合箇所Yと、第1の部材25のみにて形成される単体箇所Xとが連続して形成されている。
そして、第1の部材25の端部25aの折り曲げ方向は、第1の部材25の接合箇所Yにおける第2の部材26との接合方向、すなわち接合面211の方向に折り曲げられている。またその、第1の部材25の端部25aの折り曲げ開始位置25cは、埋没箇所Zと接合箇所Yとの境界位置Wの近傍にて形成されている。また、第1の部材25の端部25の先端25b側は上記実施の形態1と同様に凹凸構造にて構成され同様の効果を有するものである(図面上においては省略して示している)。尚、第1の部材25の端部25aとは、本実施の形態2においては第1の部材25の先端を指すものではなく、第1の部材25の折り曲げられた部分の全体を指すものである。
図6において、金型31は、第1の金型部分32と第2の金型部分33とにて構成されており、これらによりキャビティ34が形成されている。そしてこのキャビティ34が、第1の部材25の端部25aおよび接合箇所Yに対応する箇所を挿入することが可能なように第1の金型部分32および第2の金型部分33はそれぞれ形成されている。また、金型31には、第2の材料60の充填開始位置215が、上記実施の形態1と同様に、第1の部材25の接合箇所Yにおける第2の部材26との接合側に形成され、第2の材料260の充填は充填方向が、第1の部材25の接合箇所Yにおける第2の部材26との接合側から第1の部材25の端部25a方向と成るように形成されている。さらに金型11には、第1の部材25の端部25aの折り曲げ開始位置25cより端部25aと相反する側の箇所で、かつ、第1の部材25を挿入した際に第1の部材25と対向する箇所に凸部320が形成されている。
なお充填開始位置215の形状は、例えばピンゲート、サブマリンゲート、サイドゲート、ダイレクトゲート、ファンゲート等のいずれでも形成することが可能である。
次に上記のように構成された実施の形態2の電子機器の筐体の製造方法について図6を交えて説明する。まず、上記実施の形態1と同様に、第1の金型部分32と第2の金型部分33とから構成される金型31にて形成されるキャビティ34内の所定の位置、すなわち、第1の部材25の端部25aおよび接合箇所Yに対応する箇所に第1の部材25を設置する(図6(a))。この第1の部材25を金型31のキャビティ34内に挿入する際には、第1の部材25の端部25aが折り曲げられているため、第1の部材25の端部25aが垂直にまっすぐ形成されている場合と比較して、この端部25aの折り曲がりが誘導(ガイド)となって金型31のキャビティ34内に挿入されるため、第1の部材25を容易に設置することできる効果を有する。
そして、このように第1の部材25を金型31に設置する場合、上記実施の形態1と同様の原因により隙間Aが発生する。但し、図6中における隙間Aは誇張して大きく示しているが、実際には隙間Aは数ミクロンから数十ミクロン程度の大きさを有することが考えられる。また、第1の部材25を金型31に挿入できるように、寸法Bについてはばらつきの範囲内で最小と形成されるものでも、寸法Cよりも大きく形成されるように公差を設定しておくことは言うまでもない。
次に、金型31のキャビティ34内に溶融した第2の材料260を充填開始位置215から充填する(図6(b))。よって、第2の材料260の充填方向は、第1の部材25の接合箇所Yにおける第2の部材26との接合側から第1の部材25の端部25aへ向かって流れる方向と成る。そして、埋没箇所Zにおいて第1の部材25の端部25aが折れ曲がって形成されているため、第2の材料260の流路が狭められる(圧力損失部D)。次に、第2の材料260の充填が進むと、第2の材料260の充填圧力によって第1の部材25が押されて内倒れする。そして、金型31の第1の部材25の折れ曲がり開始位置25cより端部25aと相反する側の箇所に形成された凸部320と第1の部材25とがE点にて接触する(図6(c))。このように、圧力損失部Dによって、第2の材料260は第1の部材25の端部25aを回り込み隙間Aに先に流れることはなく、隙間Aに向かっては遅延して流れ込む。よって、第1の部材25の折れ曲がり開始位置25cより端部25aと相反する側の凸部320と対応する第1の部材25とがE点にて接触して確実に隙間Aが封止されてから、第2の材料260がE点に向かって流れ込み充填される。
次に、完全に第2の材料260が充填し、第2の材料260を完全に固化させて第2の部材26を形成する(図6(d))。そして、第1の金型部分32と第2の金型部分33を離隔し、第1の部材25と第2の部材26とが一体化される。尚、第2の材料260と第1の部材25とを一体化と成るように成形する際、第1の部材25によって第2の材料260の成形収縮が拘束されると、その部位には熱応力が発生する。この熱応力は成形した後の反りや強度低下を招く。しかしながら、第1の部材25の端部25aの先端25b側は凹凸構造にて形成されているため、最小限の部位で第2の部材26は拘束され、それ以外の部分は拘束から解放されるので熱応力を緩和でき、応力の残留を最小限に抑えることができる。
上記のように構成された実施の形態2の筐体および電子機器は、上記実施の形態1と同様に、第1の部材の端部の折り曲げ方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合方向に折り曲げられ、また、第1の部材の端部の折り曲げ開始位置が、埋没箇所と接合箇所との境界位置の近傍にて形成されているため、第1の部材の折り曲げ開始位置の近傍である金型の凸部と対応する箇所の第1の部材と金型の凸部とが容易に当接可能となる。さらに、第2の材料のキャビティ内への充填圧力により、第1の部材の端部の折り曲げ開始位置の近傍である金型の凸部と対応する箇所の第1の部材と金型の凸部と接触させることにより、第1の部材の折り曲げ開始位置の近傍である金型の凸部と対応する箇所が金型の凸部と確実に当接可能となる。また、第1の部材に印加した充填圧力を金型の凸部で全て受けることになり、より強く当接可能となる。
さらに、第2の材料の充填は充填方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合側から第1の部材の端部方向となるため、第1の部材と金型との隙間に第2の材料が入り込むことを延滞させることができる。これらのことより、第2の材料が隙間から漏出し、バリが形成されるのを防止できる。よって、このバリに生じていた第1の部品の内側寸法の精度の悪化が改善され、カメラを使用中にバリが剥がれ、筐体の内部で遊離する恐れが低減する。また、第1の材料は金属材にて形成され、第2の材料は樹脂材にて形成されているため、第1の材料にて成る第1の部材の強度を容易に得ることができ、第2の材料にて成る第2の部材の外観形状の自由度が向上する。
また、従来の第1の部材と第2の部材とを一体化するための構成としては、第1の部材の両面から第2の部材で挟み込む3層構造にて形成されていた。よって、第2の部材を構成する第2の材料を溶融した状態で充填して所望の形状に成形する際に、途中で固化して充填できない事態を回避するために、第2の部材の層は十分な厚さが必要となり、一体化される3層構造の部位の厚さが厚く形成されていた。しかし、本実施の形態2では第1の部材の端部を第2の部材の内部に埋没させる埋没箇所のみを3層構造とし、その他の部分を第1の部材と第2の部材とにて成る接合箇所の2層構造、さらには第1の部材のみにてなる単体箇所の1層構造にて形成されているため、一体化される部位の厚さはより薄くすることができる。そしてこのように、第1の部材と第2の部材とを一体化することにより、筐体の剛性は向上することができる。よって、このような筐体を電子機器など小型化および薄型化が極めて進んでいるものに用いることは、小型化および薄型化に対してはより一層有効的となる。尚、埋没箇所のある第2の部材の一部は薄肉にて形成されているが、局部的であるので第2の部材を構成する第2の材料が途中で固化して充填できなくなるという恐れは防止できる。
特にレンズや光学素子等、設置において強度が必要となる部材を設置する場合、筐体のその部分は強度が大きく必要となるため、樹脂材のみにてその部材を配設する箇所を形成すると厚みが大きく必要となる。しかしながら、本実施の形態2においては、第1の部材のみにて成る単体箇所にその部材を配設することが可能となり、その部材の設置が容易に可能になるとともに厚みを薄く形成することが可能となる。また、金属材にて成る第1の部材のように強度が優れて薄く形成することが可能な部材にて筐体の全てを形成することも考えられるが、コスト的に高くなり、また、筐体の外観の意匠の自由度が低下する。
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3における筐体にて構成される電子機器としてのカメラの構成を示した斜視図、図8は図7に示したカメラの筐体の第1の部材および第2の部材から形成される丸枠VIII内箇所の詳細を拡大して示した部分斜視図、図9は図7に示した筐体の第1の部材および第2の部材から形成される箇所における製造方法を示す断面図である。
図7において、本実施の形態3においては筐体が用いられる電子機器としてカメラを例に示している。本カメラは、上記実施の形態2と同様に、筐体102の表側を構成する第1の部品321と、筐体102の裏側を構成する第2の部品322とにて構成されている。また、図示はしていないものの、本カメラの内部には、電子基板、バッテリ、レンズ等が組み込まれていることは言うまでもない。そして、筐体102の表側を構成する第1の部品321は、第1の融解点を有する第1の材料の例えばステンレス板金にて形成される第1の部材35と、それ以外の部位が第1の融解点より低い第2の融解点を有する第2の材料360の例えばPC樹脂にて形成される第2の部材36とにて構成されている箇所を有する。ここで使用される第1の部材35を構成するステンレス板金の厚さは例えば0.3mm程度のものを使用することが考えられる。尚、第2の部材36を形成しているPC樹脂ではこの厚さに成形することは困難である。
図8において、第1の部材35は筐体102の第1の部品321の形状と成るように内面に沿って折り曲げられ、その外側には第2の部材36が接合されている。そして第2の部材36は、外観の意匠面と成る第1の部材35と接しない側の反接合面39および第2の部材36の他の部材との組み立てに必要な嵌合構造部310などが形成されている。そして、第2の部材36と第1の部材35とを一体化するために、第1の部材35の端部35aを折り曲げて第2の部材36内部に埋没させる埋没箇所Zと、第1の部材35および第2の部材36が互いに一方の面である接合面311のみにて接合する接合箇所Yと、第1の部材35のみにて形成される単体箇所Xとが連続して形成されている。
そして、第1の部材35の端部35aの折り曲げ方向は、第1の部材35の接合箇所Yにおける第2の部材36との接合方向、すなわち接合面311の方向に折り曲げられている。またその、第1の部材35の端部35aの折り曲げ開始位置35cは、埋没箇所Zと接合箇所Yとの境界位置Wにて形成されている。そして、第1の部材35の端部35aである折り曲げ開始位置35cには、第1の部材35の端部35aの折り曲げ方向と相反する方向の突出する突起部35dを形成している。また、第1の部材35の端部35aの先端35b側は上記各実施の形態と同様に凹凸構造にて構成され同様の効果を有するものである(図面上においては省略して示している)。尚、第1の部材35の端部35aとは、本実施の形態3においては第1の部材35の先端を指すものではなく、第1の部材35の折り曲げられた部分の全体を指すものである。
図9において、金型331は、第1の金型部分332と第2の金型部分333とにて構成されており、これらによりキャビティ334が形成されている。そしてこのキャビティ334が、第1の部材35の端部35aおよび接合箇所Yに対応する箇所を挿入することが可能なように第1の金型部分332および第2の金型部分333はそれぞれ形成されている。また、金型331には、第2の材料360の充填開始位置315が、上記各実施の形態と同様に、第1の部材35の接合箇所Yにおける第2の部材36との接合側に形成され、第2の材料360の充填は充填方向が、第1の部材35の接合箇所Yにおける第2の部材36との接合側から第1の部材35の端部35a方向と成るように形成されている。なお充填開始位置315の形状は、例えばピンゲート、サブマリンゲート、サイドゲート、ダイレクトゲート、ファンゲート等のいずれでも形成することが可能である。
次に上記のように構成された実施の形態3の電子機器の筐体の製造方法について図9を交えて説明する。まず、上記各実施の形態と同様に、第1の金型部分332と第2の金型部分333とから構成される金型331にて形成されるキャビティ334内の所定の位置、すなわち、第1の部材35の端部35aおよび接合箇所Yに対応する箇所に第1の部材35を設置する(図9(a))。この第1の部材35を金型331のキャビティ334内に挿入する際には、第1の部材35の端部35aが折り曲げられているため、第1の部材35の端部35aが垂直にまっすぐ形成されている場合と比較して、この端部35aの折り曲がりが誘導(ガイド)となって金型331のキャビティ334内に挿入されるため、第1の部材35を容易に設置することできる効果を有する。
そして、このように第1の部材35を金型331に設置する場合、上記各実施の形態と同様の原因により隙間Aが発生する。但し、図9中における隙間Aは誇張して大きく示しているが、実際には隙間Aは数ミクロンから数十ミクロン程度の大きさを有することが考えられる。また、第1の部材35を金型331に挿入できるように、寸法Bについてはばらつきの範囲内で最小と形成されるものでも、寸法Cよりも大きく形成されるように公差を設定しておくことは言うまでもない。
次に、金型331のキャビティ334内に溶融した第2の材料360を充填開始位置315から充填する(図9(b))。よって、第2の材料360の充填方向は、第1の部材35の接合箇所Yにおける第2の部材36との接合側から第1の部材35の端部35aへ向かって流れる方向と成る。そして、埋没箇所Zにおいて第1の部材35の端部35aが折れ曲がって形成されているため、第2の材料360の流路が狭められる(圧力損失部D)。次に、第2の材料360の充填が進むと、第2の材料360の充填圧力によって第1の部材35が押されて内倒れする。そして、第1の部材35の折れ曲がり開始位置35cに形成された突起部35dと第1の金型部分12とがE点にて接触する(図9(c))。このように、圧力損失部Dによって、第2の材料360は第1の部材35の端部35aを回り込み隙間Aに先に流れることはなく、隙間Aに向かっては遅延して流れ込む。よって、第1の部材35の折れ曲がり開始位置35cに形成された突起部35dと第1の金型部分12とがE点にて接触して確実に隙間Aが封止されてから、第2の材料360がE点に向かって流れ込み充填される。
次に、完全に第2の材料360が充填し、第2の材料360を完全に固化させて第2の部材36を形成する(図9(d))。そして、第1の金型部分332と第2の金型部分333を離隔し、第1の部材35と第2の部材36とが一体化される。尚、第2の材料360と第1の部材35とを一体化と成るように成形する際、第1の部材35によって第2の材料360の成形収縮が拘束されると、その部位には熱応力が発生する。この熱応力は成形した後の反りや強度低下を招く。しかしながら、第1の部材35の端部35aの先端35b側は凹凸構造にて形成されているため、最小限の部位で第2の部材36は拘束され、それ以外の部分は拘束から解放されるので熱応力を緩和でき、応力の残留を最小限に抑えることができる。
上記のように構成された実施の形態3の筐体および電子機器は、上記各実施の形態と同様に、第1の部材の端部の折り曲げ方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合方向に折り曲げられ、また、第1の部材の端部の折り曲げ開始位置が、埋没箇所と接合箇所との境界位置にて形成されているため、第1の部材の折り曲げ開始位置に形成された突起部と金型とが容易に当接可能となる。さらに、第2の材料のキャビティ内への充填圧力により、第1の部材の端部の折り曲げ開始位置の突起部と金型とを接触させることにより、第1の部材の折り曲げ開始位置に形成された突起部と金型とを確実に当接可能となる。また、第1の部材に印加した充填圧力を第1の部材の端部の折り曲げ開始位置の突起部で全て受けることになり、より強く当接可能となる。
さらに、第2の材料の充填は充填方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合側から第1の部材の端部方向となるため、第1の部材と金型との隙間に第2の材料が入り込むことを延滞させることができる。これらのことより、第2の材料が隙間から漏出し、バリが形成されるのを防止できる。よって、このバリに生じていた第1の部品の内側寸法の精度の悪化が改善され、カメラを使用中にバリが剥がれ、筐体の内部で遊離する恐れが低減する。また、第1の材料は金属材にて形成され、第2の材料は樹脂材にて形成されているため、第1の材料にて成る第1の部材の強度を容易に得ることができ、第2の材料にて成る第2の部材の外観形状の自由度が向上する。
また、従来の第1の部材と第2の部材とを一体化するための構成としては、第1の部材の両面から第2の部材で挟み込む3層構造にて形成されていた。よって、第2の部材を構成する第2の材料を溶融した状態で充填して所望の形状に成形する際に、途中で固化して充填できない事態を回避するために、第2の部材の層は十分な厚さが必要となり、一体化される3層構造の部位の厚さが厚く形成されていた。しかし、本実施の形態3では第1の部材の端部を第2の部材の内部に埋没させる埋没箇所のみを3層構造とし、その他の部分を第1の部材と第2の部材とにて成る接合箇所の2層構造、さらには第1の部材のみにてなる単体箇所の1層構造にて形成されているため、一体化される部位の厚さはより薄くすることができる。そしてこのように、第1の部材と第2の部材とを一体化することにより、筐体の剛性は向上することができる。よって、このような筐体を電子機器など小型化および薄型化が極めて進んでいるものに用いることは、小型化および薄型化に対してはより一層有効的となる。尚、埋没箇所のある第2の部材の一部は薄肉にて形成されているが、局部的であるので第2の部材を構成する第2の材料が途中で固化して充填できなくなるという恐れは防止できる。
特にレンズや光学素子等、設置において強度が必要となる部材を設置する場合、筐体のその部分は強度が大きく必要となるため、樹脂材のみにてその部材を配設する箇所を形成すると厚みが大きく必要となる。しかしながら、本実施の形態3においては、第1の部材のみにて成る単体箇所にその部材を配設することが可能となり、その部材の設置が容易に可能になるとともに厚みを薄く形成することが可能となる。また、金属材にて成る第1の部材のように強度が優れて薄く形成することが可能な部材にて筐体の全てを形成することも考えられるが、コスト的に高くなり、また、筐体の外観の意匠の自由度が低下する。
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4における筐体にて構成される電子機器としての携帯用音楽再生機の構成を示した斜視図、図11は図10に示した携帯用音楽再生機の筐体の第1の部材および第2の部材から形成される丸枠XI内箇所の詳細を拡大して示した部分斜視図、図12は図10に示した筐体の第1の部材および第2の部材から形成される箇所における製造方法を示す断面図である。
図10において、本実施の形態4においては筐体が用いられる電子機器として携帯用音楽再生機を例に示している。本携帯用音楽再生機は、筐体103の表側を構成する第1の部品41と、筐体103の裏側を構成する第2の部品42とにて構成されている。また、図示はしていないものの、本携帯用音楽再生機の内部には、電子基板、バッテリ、表示部、操作ボタン等が組み込まれていることは言うまでもない。そして、筐体103の表側を構成する第1の部品41は、第1の融解点を有する第1の材料の例えばステンレス板金にて形成される第1の部材43と、それ以外の部位が第1の融解点より低い第2の融解点を有する第2の材料440の例えばガラス繊維で複合強化されたポリアミド樹脂(以下PA樹脂と記す)にて形成される第2の部材44とにて構成されている箇所を有する。ここで使用される第1の部材43を構成するテンレス板金の厚さは例えば0.2mm程度のものを使用することが考えられる。尚、第2の部材44を形成しているPA樹脂ではこの厚さに成形することが困難である。
図11において、第1の部材43は筐体103の第1の部品41の形状と成るように形成され、その外側には第2の部材44が接合されている。そして第2の部材44は、外観の意匠面と成る第1の部材43と接しない側の反接合面46および第2の部材44の他の部材との組み立てに必要な嵌合構造部47などが形成されている。そして、第2の部材44と第1の部材43とを一体化するために、第1の部材43の端部43aを折り曲げて第2の部材44内部に埋没させる埋没箇所Zと、第1の部材43および第2の部材44が互いに一方の面である接合面411のみにて接合する接合箇所Yと、第1の部材43のみにて形成される単体箇所Xとが連続して形成されている。
そして、第1の部材43の端部43aの折り曲げ方向は、第1の部材43の接合箇所Yにおける第2の部材44との接合方向、すなわち接合面411の方向に折り曲げられている。またその、第1の部材43の端部43aの折り曲げ開始位置43cは、埋没箇所Zと接合箇所Yとの境界位置Wにて形成されている。また、後述する金型51に形成されている突起部と対応する箇所に凹部44aが形成されている。さらに、第1の部材43の端部43aの先端43b側は上記各実施の形態と同様に凹凸構造にて構成され同様の効果を有するものである(図面上においては省略して示している)。尚、第1の部材43の端部43aとは、本実施の形態3においては第1の部材43の先端を指すものではなく、第1の部材43の折り曲げられた部分の全体を指すものである。
図12において、金型51は、第1の金型部分52と第2の金型部分53とにて構成されており、これらによりキャビティ54が形成されている。そしてこのキャビティ54が、第1の部材43の端部43aおよび接合箇所Yに対応する箇所を挿入することが可能なように第1の金型部分52および第2の金型部分53はそれぞれ形成されている。また、金型51には、第2の材料440の充填開始位置515が、上記各実施の形態と同様に、第1の部材43の接合箇所Yにおける第2の部材44との接合側に形成され、第2の材料440の充填は充填方向が、第1の部材43の接合箇所Yにおける第2の部材44との接合側から第1の部材43の端部43a方向と成るように形成されている。また、金型51の第1の部材43の端部43aに対向する箇所で、かつ、第1の部材43の端部43aの折り曲げ方向と相反する方向の突出する突起部55を備えている。なお充填開始位置515の形状は、例えばピンゲート、サブマリンゲート、サイドゲート、ダイレクトゲート、ファンゲート等のいずれでも形成することが可能である。
次に上記のように構成された実施の形態4の電子機器の筐体の製造方法について図12を交えて説明する。まず、上記各実施の形態と同様に、第1の金型部分52と第2の金型部分53とから構成される金型51にて形成されるキャビティ54内の所定の位置、すなわち、第1の部材43の端部43aおよび接合箇所Yに対応する箇所に第1の部材43を設置する(図12(a))。そして、このように第1の部材43を金型51に設置する場合、上記各実施の形態と同様の原因により隙間Aが発生する。但し、図12中における隙間Aは誇張して大きく示しているが、実際には隙間Aは数ミクロンから数十ミクロン程度の大きさを有することが考えられる。
次に、金型51のキャビティ54内に溶融した第2の材料440を充填開始位置515から充填する(図12(b))。よって、第2の材料440の充填方向は、第1の部材43の接合箇所Yにおける第2の部材44との接合側から第1の部材43の端部43aへ向かって流れる方向と成る。そして、埋没箇所Zにおいて第1の部材43の端部43aが折れ曲がって形成されているため、第2の材料440の隙間Aに向かう流路が狭められる。さらに、ここでは金型51の第1の部材43の端部43aに対向する箇所で、かつ、第1の部材43の端部43aの折り曲げ方向と相反する方向の突出する突起部55により、第2の材料440の流路が更に狭められ、第2の材料440の充填における圧力損失を確実に得ることができる。次に、第2の材料440の充填が進むと、第2の材料440の充填圧力によって第1の部材43が押されて内倒れする。そして、第1の部材43の折れ曲がり開始位置43cと第2の金型部分53とがE点にて接触する(図12(c))。このように、圧力損失部Dによって、第2の材料440は第1の部材43の端部43aを回り込み隙間Aに先に流れることはなく、隙間Aに向かっては遅延して流れ込む。よって、第1の部材43の折れ曲がり開始位置43cと第2の金型部分53がE点にて接触して確実に隙間Aが封止されてから、第2の材料440がE点に向かって流れ込み充填される。
次に、完全に第2の材料440が充填し、第2の材料440を完全に固化させて第2の部材44を形成する(図12(d))。そして、第1の金型部分52と第2の金型部分53を離隔し、第1の部材43と第2の部材44とが一体化される。尚、第2の材料440と第1の部材43とを一体化と成るように成形する際、第1の部材43によって第2の材料440の成形収縮が拘束されると、その部位には熱応力が発生する。この熱応力は成形した後の反りや強度低下を招く。しかしながら、第1の部材43の端部43aの先端43b側は凹凸構造にて形成されているため、最小限の部位で第2の部材44は拘束され、それ以外の部分は拘束から解放されるので熱応力を緩和でき、応力の残留を最小限に抑えることができる。
上記のように構成された実施の形態4の筐体および電子機器は、上記各実施の形態と同様に、第1の部材の端部の折り曲げ方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合方向に折り曲げられ、また、第1の部材の端部の折り曲げ開始位置が、埋没箇所と接合箇所との境界位置にて形成されているため、第1の部材の折り曲げ開始位置と金型とが容易に当接可能となる。さらに、第2の材料のキャビティ内への充填圧力により、第1の部材の端部の折り曲げ開始位置と金型と接触させることにより、第1の部材の折り曲げ開始位置と金型とを確実に当接可能となる。
さらに、第2の材料の充填は充填方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合側から第1の部材の端部方向となるため、第1の部材と金型との隙間に第2の材料が入り込むことを延滞させることができる。さらに、ここでは金型の第1の部材の端部に対向する箇所で、かつ、第1の部材の端部の折り曲げ方向と相反する方向の突出する突起部を形成しているため、第1の部材と金型との隙間に第2の材料が入り込むことを確実に延滞させることができる。これらのことより、第2の材料が隙間から漏出し、バリが形成されるのを防止できる。よって、このバリに生じていた第1の部品の寸法の精度の悪化が改善され、携帯用音楽再生機を使用中にバリが剥がれ、筐体の内部で遊離する恐れが低減する。また、第1の材料は金属材にて形成され、第2の材料は樹脂材にて形成されているため、第1の材料にて成る第1の部材の強度を容易に得ることができ、第2の材料にて成る第2の部材の外観形状の自由度が向上する。
また、従来の第1の部材と第2の部材とを一体化するための構成としては、第1の部材の両面から第2の部材で挟み込む3層構造にて形成されていた。よって、第2の部材を構成する第2の材料を溶融した状態で充填して所望の形状に成形する際に、途中で固化して充填できない事態を回避するために、第2の部材の層は十分な厚さが必要となり、一体化される3層構造の部位の厚さが厚く形成されていた。しかし、本実施の形態4では第1の部材の端部を第2の部材の内部に埋没させる埋没箇所のみを3層構造とし、その他の部分を第1の部材と第2の部材とにて成る接合箇所の2層構造、さらには第1の部材のみにてなる単体箇所の1層構造にて形成されているため、一体化される部位の厚さはより薄くすることができる。そしてこのように、第1の部材と第2の部材とを一体化することにより、筐体の剛性は向上することができる。よって、このような筐体を電子機器など小型化および薄型化が極めて進んでいるものに用いることは、小型化および薄型化に対してはより一層有効的となる。尚、埋没箇所のある第2の部材の一部は薄肉にて形成されているが、局部的であるので第2の部材を構成する第2の材料が途中で固化して充填できなくなるという恐れは防止できる。
特に、表示部を設置する箇所の筐体の部分は強度が大きく必要となるため、樹脂材のみにて表示部を配設する箇所を形成すると厚みが大きく必要となる。しかしながら、本実施の形態4においては、第1の部材のみにて成る単体箇所に表示部を配設することが可能となり、表示部の設置が容易に可能になるとともに厚みを薄く形成することが可能となる。また、金属材にて成る第1の部材のように強度が優れて薄く形成することが可能な部材にて筐体の全てを形成することも考えられるが、コスト的に高くなり、また、筐体の外観の意匠の自由度が低下する。
尚、上記実施の形態4においては、第2の材料の充填における充填方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合側から第1の部材の端部方向と成る例を示したが、これに限られることはなく、例えば図13および図14に示すように、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合側とは相反する方向側の位置に、第2の材料の充填開始位置を備えて形成する場合について説明する。尚、筐体にて構成される電子機器としての携帯用音楽再生機の構成は上記実施の形態4を示した図10と同様であるため図示を省略する。よって、図13は図10に示した携帯用音楽再生機の筐体の第1の部材および第2の部材から形成される丸枠XI内箇所の他の例の詳細を拡大して示した部分斜視図であり、図14は図10に示した筐体の第1の部材および第2の部材から形成される箇所における製造方法の他の例を示す断面図である。
ここでは、金型51の第1の部材43の端部43aに対向する箇所で、かつ、第1の部材43の端部43aの折り曲げ方向と相反する方向の突出する突起部550を形成する。この突起部550は、先の図12にて示した突起部55より隙間A方向へ伸びる幅広の突起にて形成されている。そして、図14(a)に示すように、充填開始位置516は第1の部材43の接合箇所Yにおける第2の部材44との接合側とは相反する方向側の位置に形成する。そして、この充填開始位置516から第2の材料440を充填する。すると、突起部550により隙間Aに向かう第2の材料440の流路が狭められ、第2の材料440の充填における圧力損失を確実に得ることができる。よって、第2の材料440は図14(b)に示すように、第1の部材43の端部43bを回り込んで第1の部材43の接合箇所Yにおける第2の部材44との接合側に至る。
次に、第2の材料440の充填が進むと、第2の材料440の充填圧力によって第1の部材43が押されて内倒れする。そして、第1の部材43の折れ曲がり開始位置43cと第2の金型部分53とがE点にて接触する(図14(c))。このように、圧力損失部Dによって、第2の材料440は第1の部材43の端部43aの隙間Aに先に流れることはなく、隙間Aに向かっては遅延して流れ込む。よって、第1の部材43の折れ曲がり開始位置43cと第2の金型部分53がE点にて接触して確実に隙間Aが封止されてから、第2の材料440がE点に向かって流れ込み充填される。以下、上記実施の形態4と同様に行い、完全に第2の材料440が充填し、第2の材料440を完全に固化させて第2の部材44を形成する(図14(d))。そして、第1の金型部分52と第2の金型部分53を離隔し、第1の部材43と第2の部材44とが一体化される。そして、金型51に形成されている突起部550と対応する箇所には凹部44bが形成されている。
上記に示したように金型に突起部を形成することにより、第2の材料の隙間Aへの充填が確実に抑制される。このことにより、第2の材料の充填開始位置を、第2の材料の充填における充填方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合側から第1の部材の端部方向となる箇所以外であっても形成することが可能となり、充填開始位置の形成位置の自由度を向上することができる。
実施の形態5.
図15はこの発明の実施の形態5における筐体にて構成される電子機器としての携帯用音楽再生機の構成を示した斜視図、図16は図15に示した携帯用音楽再生機の筐体の第1の部材および第2の部材から形成される丸枠XVI内箇所の詳細を拡大して示した部分斜視図、図17は図15に示した筐体の第1の部材および第2の部材から形成される箇所における製造方法を示す断面図である。
図15において、本実施の形態5においては筐体が用いられる電子機器として携帯用音楽再生機を例に示している。本携帯用音楽再生機は、筐体104の表側を構成する第1の部品71と、筐体104の裏側を構成する第2の部品72とにて構成されている。また、図示はしていないものの、本携帯用音楽再生機の内部には、電子基板、バッテリ、表示部、操作ボタン等が組み込まれていることは言うまでもない。そして、筐体104の表側を構成する第1の部品71は、第1の融解点を有する第1の材料の例えばステンレス板金にて形成される第1の部材73と、それ以外の部位が第1の融解点より低い第2の融解点を有する第2の材料740の例えばPA樹脂にて形成される第2の部材74にて構成されている箇所を有する。ここで使用される第1の部材73を構成するテンレス板金の厚さは例えば0.2mm程度のものを使用することが考えられる。尚、第2の部材74を形成しているPA樹脂ではこの厚さに成形することが困難である。
図16において、第1の部材73は筐体104の第1の部品71の形状と成るように形成され、その外側には第2の部材74が接合されている。そして第2の部材74は、外観の意匠面と成る第1の部材73と接しない側の反接合面76および第2の部材74の他の部材との組み立てに必要な嵌合構造部77などが形成されている。そして、第2の部材74と第1の部材73とを一体化するために、第1の部材73の端部73aを折り曲げて第2の部材74内部に埋没させる埋没箇所Zと、第1の部材73および第2の部材74が互いに一方の面である接合面711のみにて接合する接合箇所Yと、第1の部材73のみにて形成される単体箇所Xとが連続して形成されている。
そして、第1の部材73の端部73aの折り曲げ方向は、第1の部材73の接合箇所Yにおける第2の部材74との接合方向、すなわち接合面711の方向に折り曲げられている。またその、第1の部材73の端部73aの折り曲げ開始位置73cは、埋没箇所Zと接合箇所Yとの境界位置Wにて形成されている。また、第1の部材73の端部73aには、第1の部材73の端部73aの折り曲げ方向と相反する方向の突出する突起部73dを備えている。さらに、第1の部材73の端部73aの先端73b側は上記各実施の形態と同様に凹凸構造にて構成され同様の効果を有するものである(図面上においては省略して示している)。尚、第1の部材73の端部73aとは、本実施の形態5においては第1の部材73の先端を指すものではなく、第1の部材73の折り曲げられた部分の全体を指すものである。
図17において、金型81は、第1の金型部分82と第2の金型部分83とにて構成されており、これらによりキャビティ84が形成されている。そしてこのキャビティ84が、第1の部材73の端部73aおよび接合箇所Yに対応する箇所を挿入することが可能なように第1の金型部分82および第2の金型部分83はそれぞれ形成されている。また、金型81には、第2の材料740の充填開始位置815が、上記各実施の形態と同様に、第1の部材73の接合箇所Yにおける第2の部材74との接合側に形成され、第2の材料740の充填は充填方向が、第1の部材73の接合箇所Yにおける第2の部材74との接合側から第1の部材73の端部73a方向と成るように形成されている。
なお充填開始位置815の形状は、例えばピンゲート、サブマリンゲート、サイドゲート、ダイレクトゲート、ファンゲート等のいずれでも形成することが可能である。
次に上記のように構成された実施の形態5の電子機器の筐体の製造方法について図17を交えて説明する。まず、上記各実施の形態と同様に、第1の金型部分82と第2の金型部分83とから構成される金型81にて形成されるキャビティ84内の所定の位置、すなわち、第1の部材73の端部73aおよび接合箇所Yに対応する箇所に第1の部材73を設置する(図17(a))。そして、このように第1の部材73を金型81に設置する場合、上記各実施の形態と同様の原因により隙間Aが発生する。但し、図17中における隙間Aは誇張して大きく示しているが、実際には隙間Aは数ミクロンから数十ミクロン程度の大きさを有することが考えられる。
次に、金型81のキャビティ84内に溶融した第2の材料740を充填開始位置815から充填する(図17(b))。よって、第2の材料740の充填方向は、第1の部材73の接合箇所Yにおける第2の部材74との接合側から第1の部材73の端部73aへ向かって流れる方向と成る。そして、埋没箇所Zにおいて第1の部材73の端部73aが折れ曲がって形成されているため、第2の材料740の隙間Aに向かう流路が狭められる。さらに、ここでは第1の部材73の端部73aの折り曲げ方向と相反する方向の突出する突起部73dにより、第2の材料740の流路が更に狭められ、第2の材料740の充填における圧力損失を確実に得ることができる。次に、第2の材料740の充填が進むと、第2の材料740の充填圧力によって第1の部材73が押されて内倒れする。そして、第1の部材73の折れ曲がり開始位置73cと第2の金型部分83とがE点にて接触する(図17(c))。このように、圧力損失部Dによって、第2の材料740は第1の部材73の端部73aを回り込み隙間Aに先に流れることはなく、隙間Aに向かっては遅延して流れ込む。よって、第1の部材73の折れ曲がり開始位置73cと第2の金型部分73がE点にて接触して確実に隙間Aが封止されてから、第2の材料740がE点に向かって流れ込み充填される。
次に、完全に第2の材料740が充填し、第2の材料740を完全に固化させて第2の部材74を形成する(図17(d))。そして、第1の金型部分82と第2の金型部分83を離隔し、第1の部材73と第2の部材74とが一体化される。尚、第2の材料740と第1の部材73とを一体化と成るように成形する際、第1の部材73によって第2の材料740の成形収縮が拘束されると、その部位には熱応力が発生する。この熱応力は成形した後の反りや強度低下を招く。しかしながら、第1の部材73の端部73aの先端73b側は凹凸構造にて形成されているため、最小限の部位で第2の部材74は拘束され、それ以外の部分は拘束から解放されるので熱応力を緩和でき、応力の残留を最小限に抑えることができる。
上記のように構成された実施の形態5の筐体および電子機器は、上記各実施の形態と同様に、第1の部材の端部の折り曲げ方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合方向に折り曲げられ、また、第1の部材の端部の折り曲げ開始位置が、埋没箇所と接合箇所との境界位置にて形成されているため、第1の部材の折り曲げ開始位置と金型と容易に当接可能となる。さらに、第2の材料のキャビティ内への充填圧力により、第1の部材の端部の折り曲げ開始位置と金型と接触させることにより、第1の部材の折り曲げ開始位置と金型とを確実に当接可能となる。
さらに、第2の材料の充填は充填方向が、第1の部材の接合箇所における第2の部材との接合側から第1の部材の端部方向となるため、第1の部材と金型との隙間に第2の材料が入り込むことを延滞させることができる。さらに、ここでは、第1の部材の端部の折り曲げ方向と相反する方向の突出する突起部を形成しているため、第1の部材と金型との隙間に第2の材料が入り込むことを確実に延滞させることができる。これらのことより、第2の材料が隙間から漏出し、バリが形成されるのを防止できる。よって、このバリに生じていた第1の部品の寸法の精度の悪化が改善され、携帯用音楽再生機を使用中にバリが剥がれ、筐体の内部で遊離する恐れが低減する。また、第1の材料は金属材にて形成され、第2の材料は樹脂材にて形成されているため、第1の材料にて成る第1の部材の強度を容易に得ることができ、第2の材料にて成る第2の部材の外観形状の自由度が向上する。
また、従来の第1の部材と第2の部材とを一体化するための構成としては、第1の部材の両面から第2の部材で挟み込む3層構造にて形成されていた。よって、第2の部材を構成する第2の材料を溶融した状態で充填して所望の形状に成形する際に、途中で固化して充填できない事態を回避するために、第2の部材の層は十分な厚さが必要となり、一体化される3層構造の部位の厚さが厚く形成されていた。しかし、本実施の形態5では第1の部材の端部を第2の部材の内部に埋没させる埋没箇所のみを3層構造とし、その他の部分を第1の部材と第2の部材とにて成る接合箇所の2層構造、さらには第1の部材のみにてなる単体箇所の1層構造にて形成されているため、一体化される部位の厚さはより薄くすることができる。そしてこのように、第1の部材と第2の部材とを一体化することにより、筐体の剛性は向上することができる。よって、このような筐体を電子機器など小型化および薄型化が極めて進んでいるものに用いることは、小型化および薄型化に対してはより一層有効的となる。尚、埋没箇所のある第2の部材の一部は薄肉にて形成されているが、局部的であるので第2の部材を構成する第2の材料が途中で固化して充填できなくなるという恐れは防止できる。
特に、表示部を設置する箇所の筐体の部分は強度が大きく必要となるため、樹脂材のみにて表示部を配設する箇所を形成すると厚みが大きく必要となる。しかしながら、本実施の形態5においては、第1の部材のみにて成る単体箇所に表示部を配設することが可能となり、表示部の設置が容易に可能になるとともに厚みを薄く形成することが可能となる。また、金属材にて成る第1の部材のように強度が優れて薄く形成することが可能な部材にて筐体の全てを形成することも考えられるが、コスト的に高くなり、また、筐体の外観の意匠の自由度が低下する。
尚、上記各実施の形態においては、第1の材料としてステンレス板金を例に示したが、これに限定されるものではなく、アルミニウム合金や銅合金、マグネシウム合金、チタン合金などの各種金属の板金の他、各種金属のダイカスト品や鋳造品、各種樹脂の成形体やシート、フィルム等にも適用することができる。また、第2の材料としてPC+ABS樹脂やガラス繊維で複合強化されたPC樹脂及びPA樹脂を例に示したが、これに限定されるものではなく、第1の部材を形成する第1の材料の第1の融解点より低い第2の融解点を有するものであればよく、その他各種樹脂や金属、ガラス繊維やカーボン繊維等で複合強化された材料等にも適用することができる。
また、上記各実施の形態においては表示部において特に示していないが、例えば液晶が用いられる表示部が採用されることが考えられる。液晶が用いられる表示部はそれを設置する箇所に強度が大きく必要となるため、本願発明において採用する場合、その効果が発揮されることとなる。
また、樹脂にて成る第2の材料を射出成形などによって成形する例を示したが、第2の材料として金属を適用する場合は、ダイカストや金属粉末射出成形などによっても同様に成形することができる。さらに、電子機器として、携帯電話機、カメラ、携帯用音楽再生機等を例に示したが、これらの電子機器に限定されるものではなく、例えば携帯用ゲーム機、携帯用の通信機、ラジオ、テレビ、ノート型パソコン、ノート型ワープロ、ビデオカメラ、電子手帳、各種の赤外線式または無線式リモートコントローラ、電卓、モータ、ブレーカ、スイッチ、バッテリ、及び自動車用電子制御機器など、各種電子機器に適用することが可能であることは言うまでもない。また、固定型の電子機器に用いることが可能であることは言うまでもない。また、電子機器の形状や大きさに制限はなく、第1の材料から形成される第1の部材や第2の材料から形成される第2の部材の形状や大きさも上記に示したものに限定されるものではない。また、電子機器に限定されるものではなく、筐体を利用することが可能な機器であれば、上記各実施の形態と同様に用いることが可能であることは言うまでもない。