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JP5089045B2 - ポリビニルアルコール系フィルム、およびその製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系フィルム、およびその製造方法 Download PDF

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JP5089045B2 JP2006002540A JP2006002540A JP5089045B2 JP 5089045 B2 JP5089045 B2 JP 5089045B2 JP 2006002540 A JP2006002540 A JP 2006002540A JP 2006002540 A JP2006002540 A JP 2006002540A JP 5089045 B2 JP5089045 B2 JP 5089045B2
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Description

本発明は、光線透過率に優れたポリビニルアルコール系フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、光線透過率と偏光性能に優れた偏光膜を製造するために原反フィルムとして用いられるポリビニルアルコール系フィルムおよびその製造方法に関するものである。
従来、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を水などの溶媒に溶解して原液を調製した後、溶液流延法(キャスティング法)により製膜して、金属加熱ロール等を使用して乾燥することにより製造される。このようにして得られたポリビニルアルコール系フィルムは、透明性に優れたフィルムとして多くの用途に利用されており、その有用な用途の一つに偏光膜が挙げられる。かかる偏光膜は液晶ディスプレイの基本構成要素として用いられており、近年では高品位で高信頼性の要求される機器へとその使用が拡大されている。
このような中、液晶テレビなどの画面の高輝度化、高精細化に伴い、従来品より一段と透明性に優れ、光学的な欠陥の無い偏光膜が要望されている。このような要望への対策として、例えば、5μm以上の光学的異物が100cm2当たり500個以下であるポリビニルアルコール系フィルムを用いること(例えば、特許文献1参照)や、フィルムの表面に存在する20μm以上の大きさの異物が1平方m当たり10個以下のポリビニルアルコールフィルムを用いること(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
しかし、光学的な欠陥の原因はミクロンオーダーの異物だけではない。製膜中にフィルム内部に析出した添加剤、またはフィルム表面にブリードアウトした添加剤なども、光学的な欠陥の原因となる。フィルムの内部や表面に析出した界面活性剤は、光線透過率を低下させると共に、光学ムラ発生の原因にもなり、特に、表面にブリードアウトした界面活性剤は、偏光膜製造の際の染色性にも大きく影響し、色ムラを発生させ、偏光性能を低下させる原因となっていた。したがって、液晶ディスプレイにおける近年の高輝度化、高精細化を達成するために、フィルムの更なる改良が望まれていた。
特開2001−316492号公報 特開2004−20631号公報
本発明は、光線透過率が高く、偏光性能に優れた偏光膜を製造するための原反フィルムとして用いることのできるポリビニルアルコール系フィルム、およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、フィルム中、ポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤に基づくポリオキシエチレン基含有化合物を100〜500ppm含有するポリビニルアルコール系フィルムに関する。
また、本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂に、少なくとも1種のポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤を、下記式(1)を満足するように添加する工程を含む前記ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法に関する。
0.5≦Σ{( ノニオン系界面活性剤のHLB) ×( ノニオン系界面活性剤のポリビニルアルコール系樹脂に対する添加量( 重量%))}≦2(1)
(式中、HLBは親水親油バランスを、Σは2種以上のノニオン系界面活性剤を添加する場合の総和を意味する。)
前記ポリビニルアルコール系フィルムは、重量平均分子量140000〜260000のポリビニルアルコール系樹脂からなることが好ましい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムは、フィルム幅が3.0m以上であることが好ましい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムは、フィルムの厚さが30〜70μmであることが好ましい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムは、フィルムの長さが4000m以上であることが好ましい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムは、偏光膜の原反フィルムとして用いることが好ましい。
また、本発明は、前記ポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光膜に関する。
さらに、本発明は、前記偏光膜の少なくとも片面に保護膜を設けてなる偏光板に関する。
フィルム中に存在する、ポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤に基づくポリオキシエチレン基含有化合物の量を限定することにより、本発明のポリビニルアルコール系フィルムは優れた光線透過率を有する。したがって、本発明のポリビニルアルコール系フィルムを原反フィルムとして製造される偏光膜は、優れた光線透過率および偏光性能を示す。
本発明は、フィルム中に、ポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤に基づくポリオキシエチレン基含有化合物を100〜500ppm含有するポリビニルアルコール系フィルムに関する。
ポリビニルアルコール系フィルムを製膜する際に用いられるキャスト用原液には、通常、製膜性や染色性の向上を目的として、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの各種界面活性剤が、複数種添加されている。しかし、前述したように、これらの界面活性剤は、フィルムの内部や表面に析出すると、フィルムの光線透過率の低下、光学ムラ、偏光膜製造時の染色性の低下などを引き起こす原因ともなるものであるため、用いる界面活性剤の種類や使用量、それに由来するポリオキシエチレン基含有化合物のコントロールが重要である。
したがって、本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、フィルム中に存在する、ポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤に基づくポリオキシエチレン基含有化合物の量が100〜500ppmであることを最大の特徴とする。前記ポリオキシエチレン基含有化合物の量は、好ましくは110〜300ppm、さらに好ましくは115〜200ppmである。前記ポリオキシエチレン基含有化合物の量が100ppm未満では、本発明のポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜の原反フィルムとして用いる場合に、親水性の低下のため色素の染色が充分に行なわれず、偏光度が低下する。逆に、500ppmを超えると、添加剤の凝集によりポリビニルアルコール系フィルムの光線透過率が低下し、ポリビニルアルコール系フィルムから得られる偏光膜の光線透過率も低下する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法は、とくに限定されず、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を用いて調製したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を流延して製膜、乾燥することにより製造されるが、このとき、ポリビニルアルコール系樹脂に、少なくとも1種のポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤(以下、単に「ノニオン系界面活性剤」とも言う。)を、下記式(1)を満足するように添加する工程を含むことが好ましい。
0.5≦Σ{( ノニオン系界面活性剤のHLB) ×( ノニオン系界面活性剤のポリビニルアルコール系樹脂に対する添加量( 重量%))}≦2(1)
(式中、HLBは親水親油バランスを、Σは2種以上のノニオン系界面活性剤を添加する場合の総和を意味する。)
以下、前記工程を含む本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法について説明する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を製膜して得られるものである。ポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂が用いられるが、本発明のポリビニルアルコール系フィルムにおいては、必ずしもこれに限定されるものではなく、酢酸ビニルと、少量の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、たとえば、不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2−グリコール結合を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることも好ましい。側鎖に1,2−グリコール結合を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(ア)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化および脱炭酸する方法、(ウ)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化および脱ケタール化する方法、(エ)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量はとくに限定されないが、好ましくは120000〜300000、より好ましくは140000〜260000、さらに好ましくは160000〜200000である。重量平均分子量が120000未満では、ポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られず、300000を超えると、フィルムを偏光膜とする場合に延伸が困難となり、工業的な生産が難しく好ましくない。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ−低角度レーザー光散乱法(以下、GPC−LALLS法という)により測定される。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は97モル%以上であることが好ましく、より好ましくは98〜100モル%、さら好ましくは99〜100モル%である。かかるケン化度が97モル%未満では光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られず好ましくない。
ポリビニルアルコール系樹脂には、通常酢酸ナトリウムが含まれているため、まず、酢酸ナトリウムを除去するため、ポリビニルアルコール系樹脂粉末を洗浄する。洗浄には、メタノールまたは水が用いられるが、メタノールで洗浄する方法では溶剤回収などが必要になるため、水で洗浄する方法がより好ましい。
次に、洗浄後の含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを溶解させて、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製するのであるが、かかる含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキをそのまま水に溶解すると所望する高濃度の水溶液が得られないため、一旦脱水を行なうことが好ましい。脱水方法は特に限定されないが、遠心力を利用した方法が一般的である。かかる洗浄および脱水により、含水率50重量%以下、好ましくは30〜45重量%の含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキとすることが好ましい。含水率が50重量%を超えると所望する水溶液濃度にすることが難しくなり好ましくない。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、フィルムの製膜性や染色性の向上を目的として、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの各種界面活性剤が添加される。本発明においては、キャスト基材からの剥離性、工程中のロールとのすべり性、偏光膜製造における染色性、あるいはトリアセテートセルロース(TAC)などの保護フィルムの貼付性を確保するために、ノニオン系の界面活性剤が必須成分として、得られるポリビニルアルコール系フィルム中に存在する、ポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤に基づくポリオキシエチレン基含有化合物の量が100〜500ppmになるべく添加される。
しかし、ノニオン系界面活性剤と、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液との相溶性が不足していると、製膜の過程で界面活性剤がフィルム内部や表面に析出する。特に、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は水溶性であるため、アニオン性やカチオン性の界面活性剤では析出が起こりにくいが、ノニオン系界面活性剤は析出を起こしやすい。このような析出回避には、添加されるノニオン系界面活性剤が適度な親水性部分を有する必要がある。界面活性剤の分子に含まれる親水性部分の割合は、親水性部分の原子団質量を分子量で除した親水親油バランス(Hydrophile Lipophile Balance;以下、HLBという)で表わされる。したがって、適切なHLBを有するノニオン系界面活性剤を選択することにより、フィルム内部や表面への析出を回避することができるのである。
一方、界面活性剤の析出を回避するには、界面活性剤のHLBだけでなく、適切な添加量を設定する必要もある。添加量が多すぎると析出の度合いは大きくなるからである。もちろん少なすぎると、本来の界面活性剤の機能が発現しない。すなわち、ノニオン系界面活性剤のHLBと添加量の積が析出回避には重要なのである。
したがって、本発明のポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤に基づくポリオキシエチレン基含有化合物を100〜500ppm含有するポリビニルアルコール系フィルムの製造方法においては、少なくとも1種のポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤を、下記式(1)を満足するように、好ましくは式(2)を満足するように、より好ましくは式(3)を満足するように添加する。
0.5≦Σ{( ノニオン系界面活性剤のHLB) ×( ノニオン系界面活性剤のポリビニルアルコール系樹脂に対する添加量( 重量%))}≦2(1)
0.5≦Σ{( ノニオン系界面活性剤のHLB) ×( ノニオン系界面活性剤のポリビニルアルコール系樹脂に対する添加量( 重量%))}≦1.3(2)
0.5≦Σ{( ノニオン系界面活性剤のHLB) ×( ノニオン系界面活性剤のポリビニルアルコール系樹脂に対する添加量( 重量%))}≦1.2(3)
式中、HLBは親水親油バランスを、Σは2種以上のノニオン系界面活性剤を添加する場合の総和を意味する。
Σ{(ノニオン系界面活性剤のHLB)×(ノニオン系界面活性剤のポリビニルアルコール系樹脂に対する添加量(重量%))}が0.5未満の場合は、キャスト基材からポリビニルアルコール系フィルムを剥離するのが困難であり、2を超えると界面活性剤の析出が起こり、フィルムの光線透過率が低下し好ましくない。
ニオン系界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、やし油還元アルコールエチレンオキサイド付加物、牛脂還元アルコールエチレンオキサイド付加物などのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルアミン、ポリオキシエチレンヘプチルアミン、ポリオキシエチレンオクチルアミン、ポリオキシエチレンノニルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンテトラデシルアミン、ポリオキシエチレンヘキサデシルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンエイコシルアミンなどのポリオキシエチレンアルキルアミン、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ミリスチン酸アミド、ラウリン酸アミド、カプロン酸アミド、ジエタノールラウリルアミド、ポリオキシエチレンカプロン酸アミド、ポリオキシエチレンカプリル酸アミド、ポリオキシエチレンカプリン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリル酸アミド、ポリオキシエチレンミリスチン酸アミド、ポリオキシエチレンパルミチン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド、ステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ソルビタンなどが挙げられる。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法において用いられるノニオン系界面活性剤はポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤であり、上記の中では、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミンなどのポリオキシエチレン基含有化合物が好ましい。
ノニオン性界面活性剤を1種用いる場合、前記式(1)を満足する界面活性剤と可能な添加量を例示すると、次のようになる
均縮合度3のポリオキシエチレンステアリルエーテル(HLB=7)
0.1〜0.25重量%
平均縮合度3のポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=9)
0.1〜0.2重量%
平均縮合度4のポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=10)
0.05〜0.2重量%
平均縮合度7のポリオキシエチレンステアリルエーテル(HLB=11)
0.05〜0.15重量%
平均縮合度10のポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル(HLB=12)
0.045〜0.15重量%
平均縮合度10のポリオキシエチレンステアリルエーテル(HLB=13)
0.04〜0.15重量%
平均縮合度10のポリオキシエチレンラウリルアミン(HLB=14)
0.04〜0.1重量%
平均縮合度17のポリオキシエチレンステアリルエーテル(HLB=15)
0.035〜0.1重量%
平均縮合度17のポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=16)
0.035〜0.1重量%
平均縮合度24のポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=17)
0.03〜0.1重量%
平均縮合度38のポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=18)
0.03〜0.1重量%
平均縮合度80のポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=19)
0.03〜0.1重量%
である。
ノニオン性界面活性剤を2種以上用いる場合、例えば、ポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤とポリオキシエチレン基を含有しないノニオン系界面活性剤とを用いる場合、前記式(1)を満足する界面活性剤と可能な添加量を例示すると、次のようになる。
ジエタノールラウリルアミド(HLB=6) 0.1重量%
平均縮合度10のポリオキシエチレンラウリルアミン(HLB=14) 0.05重量%
このとき、
Σ{( ノニオン系界面活性剤のHLB) ×( ノニオン性界面活性剤の樹脂に対する添加量(重量%) )}=6×0.1+14×0.05=1.3
となり、これらのノニオン性界面活性剤のHLBおよび添加量は、式(1)を満足する。
ノニオン性界面活性剤単独のHLBは5〜17であることが好ましく、7〜15であることがより好ましく、9〜13であることがさらに好ましい。HLBが5未満の場合は、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液に対する相溶性に劣り、17を超えると剥離性が不足することとなり好ましくない。
添加するノニオン系界面活性剤は、1種類でもよく、2種類以上を併用しても構わないが、キャスト基材からの剥離性、工程中のロールとのすべり性、偏光膜製造における染色性、あるいはトリアセチルセルロースなどの保護フィルムの貼付性を確保するためには、2種以上を併用することが好ましい。ノニオン性界面活性剤の添加総量は、0.01〜0.5重量%が好ましく、0.02〜0.3重量%がより好ましく、0.04〜0.2重量%がさらに好ましい。0.01重量%未満の場合は、剥離性が不足し、0.5重量%を超えると析出による光線透過率の低下が生じることとなり好ましくない。
このように、ポリビニルアルコール系フィルムの製造時に添加するノニオン系界面活性剤のHLBと添加量(重量%)の積を特定範囲に設定することにより、ノニオン系界面活性剤とポリビニルアルコールとの相溶性が向上するため、製膜後のフィルム内部および表面へのノニオン系界面活性剤の析出が抑えられ、得られるポリビニルアルコール系フィルムの光線透過率はきわめて高くなる。
また、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法において添加されるカチオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤としては、例えば、カチオン系の界面活性剤として、ドデシルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩などの高級アルキルモノアミン塩、N−ドデシル−1,3−ジアミノプロパンアジピン酸塩、N−ドデシルプロピレンジアミンジオレイン酸塩などのアルキルジアミン塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩などが挙げられ、アニオン系の界面活性剤として、ヘキシル硫酸ナトリウム、ヘプチル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ノニル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、エイコシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンヘキシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘプチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンテトラデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘキサデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクタデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエイコシルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、カプロン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、カプリル酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、カプリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、ラウリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、パルミチン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、ステアリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、オレイン酸エタノールアミド硫酸ナトリウムなどの高級脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル塩、ヘキシルスルホン酸ナトリウム、ヘプチルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、ノニルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、炭素数6〜18の脂肪族アルキルスルホン酸ナトリウムの混合物などの脂肪族アルキルスルホン酸塩などを挙げることができる。
さらに、本発明のポリビニルアルコール系フィルムを製造する際には、ポリビニルアルコール系樹脂に、必要に応じて、グリセリンなどの一般的に使用される可塑剤が配合される。可塑剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂に対して30重量%以下、好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。配合量が30重量%を超えるとフィルム強度が劣り好ましくない。
キャスト用原液となるポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、脱水後の含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキ、界面活性剤、および必要に応じて可塑剤を水に溶解することにより調製される。かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、溶解缶を用いて、脱水後のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキ、水、可塑剤および界面活性剤を仕込み、加温、撹拌することにより溶解させて得られる水溶液であってもよく、あるいは多軸押出機を用いて、脱水後のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキまたはそれを乾燥させたポリビニルアルコール系樹脂を仕込み、サイドフィードにより、水、可塑剤および界面活性剤などの添加剤を仕込み、加温し、剪断をかけながら溶解させて得られる水溶液であってもよいが、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法において用いられるポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、特に、上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶中で水蒸気を吹き込んで含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを溶解して得られる水溶液であることが好ましい。
かかる上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶中で含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを溶解させる際には、水蒸気を吹き込むわけであるが、かかる水蒸気を吹き込むにあたり、所望する濃度となるように水を加えることも好ましい。水蒸気の吹き込み量は、溶解させるポリビニルアルコール系樹脂に対して0.5〜5倍量(重量換算)が好ましく、吹き込み時間は0.5〜3時間が好ましい。吹き込み量が0.5倍量未満では溶解不充分となり、5倍量を超えるとドレン量が多くなりすぎて所望する濃度にならず好ましくない。また、水蒸気を吹き込む際は、缶底より吹き込むことが好ましいがこれに限らず側面等から吹き込んでもよい。また、水蒸気を吹き込み、樹脂温度が40〜80℃、好ましくは45〜70℃となった時点で、撹拌を開始することが均一溶解ができる点で好ましい。樹脂温度が40℃未満ではモーターの負荷が大きくなり、80℃を超えるとポリビニルアルコール系樹脂の固まりができて均一な溶解ができなくなり好ましくない。
さらに、水蒸気を吹き込み、樹脂温度が90〜100℃、好ましくは95〜100℃となった時点で、缶内を加圧することも均一溶解ができる点で好ましい。樹脂温度が90℃未満では未溶解物ができ好ましくない。樹脂温度が130〜150℃となったところで、水蒸気の吹き込みを終了し、0.5〜3時間撹拌を続けて溶解させる。溶解後は、所望する濃度となるように濃度調整が行なわれる。かかる水溶液の濃度は、缶の中の液を一部抜き出し、循環させながらプロセス屈折率計(K−PATENTS社製)を用いて濃度測定を行なうことにより調整される。
前述のようにして得られるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の濃度は、15〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは17〜55重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。濃度が15重量%未満では乾燥負荷が大きくなって生産能力が劣り、60重量%を超えると粘度が高くなりすぎて均一な溶解ができず好ましくない。
次に、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、脱泡処理される。脱泡方法としては、静置脱泡や多軸押出機による脱泡等が挙げられるが、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法においては、多軸押出機を用いて脱泡する方法が好ましい。多軸押出機としては、ベントを有した多軸押出機であれば特に限定されないが、通常はベントを有した2軸押出機が用いられる。多軸押出機を用いた脱泡は、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機に供給し、ベント部の樹脂温度が105〜180℃、好ましくは110〜160℃、かつ押出機先端圧力が2〜100kg/cm2、好ましくは5〜70kg/cm2の範囲の条件下で行なわれる。
ベント部の樹脂温度が105℃未満では脱泡が不充分となり、180℃を超えると樹脂劣化が起こることになる。また、押出機先端圧力が2kg/cm2未満では脱泡が不充分となり、100kg/cm2を超えると配管での樹脂漏れ等が発生し、安定生産することができなくなる。
また、多軸押出機の前後にギアポンプ(P1)およびギアポンプ(P2)を設け、ギアポンプ(P1)によりポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機に供給し、ギアポンプ(P2)によりポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機から排出するわけであるが、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法においては、ギアポンプ(P2)の入口圧力が2〜70kg/cm2の範囲、好ましくは5〜70kg/cm2の範囲で一定値を示すようにギアポンプ(P1)を制御することがフィルム膜厚の精度向上の点で好ましい。入口圧力が2kg/cm2未満では脱泡が不充分となり、70kg/cm2を超えるとベント部分より樹脂が出てくることとなり好ましくない。また、入口圧力が上記範囲であっても、一定値を示さなければフィルム膜厚の精度が不充分となり好ましくない。なお、ここで言う一定値とは、指定値から±2%以内、好ましくは±1.5%以内の範囲を許容するものである。
多軸押出機による脱泡処理の後、多軸押出機から排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、流延され、製膜、乾燥される。
T型スリットダイとしては、通常、細長の矩形を有したT型スリットダイが用いられる。
ポリビニルアルコール系水溶液の流延は、ドラム型ロールまたはエンドレスベルトで行なわれるが、幅広化や長尺化、膜厚の均一性などの点からドラム型ロールで行なうことが好ましい。
ドラム型ロールで流延製膜するにあたっては、例えばドラム型ロールの回転速度は5〜30m/分であることが好ましく、特に好ましくは6〜20m/分である。ドラム型ロールの表面温度は70〜99℃であることが好ましく、より好ましくは75〜97℃である。ドラム型ロールの表面温度が70℃未満では乾燥不良となり、99℃を超えると発泡し好ましくない。また、T型スリットダイ出口の樹脂温度は80〜100℃であることが好ましく、より好ましくは85〜98℃である。T型スリットダイ出口の樹脂温度が80℃未満では流動不良となり、100℃を超えると発泡し好ましくない。ドラム型ロールの大きさについては特に限定されないが、例えばロールの直径は2000〜4000mmが好ましく、より好ましくは2500〜3800mmである。
製膜後に行なわれる乾燥は、例えば乾燥ロールを用いて行なわれる。乾燥ロールの表面温度は特に限定されないが、60〜100℃、さらには65〜90℃であることが好ましい。表面温度が60℃未満では乾燥不良となり、100℃を超えると乾燥しすぎることとなり外観不良を招き好ましくない。乾燥後、必要に応じて熱処理され、ポリビニルアルコール系フィルムとなる。
前述のようにして得られる本発明のポリビニルアルコール系フィルムの幅は、好ましくは3.0m以上、より好ましくは3.5m以上、さらに好ましくは4.0m以上である。幅が3.0m未満では偏光膜の生産性に劣り好ましくない。フィルムの長さは、好ましくは4000m以上、より好ましくは4500m以上、さらに好ましくは5000m以上である。長さが4000m未満では偏光膜の生産性に劣り好ましくない。フィルムの膜厚は、30〜100μmが好ましく、より好ましくは30〜70μm、さらに好ましくは35〜55μmである。膜厚が30μm未満では、本発明のポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜の製造に用いる場合に延伸が難しく、100μmを超えると膜厚精度が低下して好ましくない。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの光線透過率は、好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上である。90%未満では偏光膜の光線透過率が不足し好ましくない。なお、ポリビニルアルコール系フィルムの光線透過率は、分光光度計により測定される。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、光線透過率に優れており、光線透過率に優れ、かつ偏光性能(偏光度および単体透過率)の面内均一性に優れた偏光膜を製造するための原反フィルムとして好ましく用いられる。
以下、本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いた本発明の偏光膜の製造方法について説明する。
本発明の偏光膜は、通常の染色、延伸、ホウ酸架橋および熱処理などの工程を経て製造される。偏光膜の製造方法としては、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸してヨウ素または二色性染料の溶液に浸漬し染色した後、ホウ素化合物処理する方法、延伸と染色を同時に行なった後、ホウ素化合物処理する方法、ヨウ素または二色性染料により染色して延伸した後、ホウ素化合物処理する方法、染色した後、ホウ素化合物の溶液中で延伸する方法などがあり、適宜選択して用いることができる。このように、ポリビニルアルコール系フィルム(未延伸フィルム)は、延伸と染色、さらにホウ素化合物処理を別々に行なっても同時に行なってもよいが、染色工程、ホウ素化合物処理工程の少なくとも一方の工程中に一軸延伸を実施することが、生産性の点より望ましい。
延伸は一軸方向に3〜10倍、好ましくは3.5〜6倍延伸することが望ましい。この際、延伸方向の直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸)を行なっても差し支えない。延伸時の温度は、40〜170℃から選ぶのが望ましい。さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定されればよく、延伸操作は一段階段のみならず、製造工程の任意の範囲の段階に実施すればよい。
フィルムへの染色は、フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は10〜50g/L、ヨウ化カリウム/ヨウ素の重量比は20〜100が適当である。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。処理浴の温度は5〜50℃が好ましい。水溶液には、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させても差し支えない。接触手段としては浸漬、塗布、噴霧などの任意の手段が適用できる。
染色処理されたフィルムは、ついでホウ素化合物によって処理される。ホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ砂が実用的である。ホウ素化合物は水溶液または水−有機溶媒混合液の形で濃度0.5〜2モル/L程度で用いられ、液中には少量のヨウ化カリウムを共存させるのが実用上望ましい。処理法は浸漬法が望ましいが、もちろん塗布法、噴霧法も実施可能である。処理時の温度は50〜70℃程度、処理時間は5〜20分程度が好ましく、また必要に応じて処理中に延伸操作を行なってもよい。
本発明の偏光膜の光線透過率は、好ましくは43%以上、より好ましくは44%以上である。43%未満では、液晶ディスプレイの高輝度化を達成できない。なお、偏光膜の光線透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
また、本発明の偏光膜の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。98%未満では表示画像の精細性に劣り好ましくない。
このようにして得られる偏光膜は、その片面または両面に光学的に等方性の高分子フィルムまたはシートを保護膜として積層接着して、偏光板として用いることもできる。保護膜としては、たとえば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイド、シクロ系ないしはノルボルネン系ポリオレフィンなどのフィルムまたはシートがあげられる。
また、偏光膜には、薄膜化を目的として、上記保護膜の代わりに、その片面または両面にウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂などの硬化性樹脂を塗布し、積層させることもできる。
偏光膜(少なくとも片面に保護膜あるいは硬化性樹脂を積層させたものを含む)は、その一方の表面に必要に応じて、透明な感圧性接着剤層が通常知られている方法で形成されて、実用に供される場合もある。感圧性接着剤層としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルと、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα−モノオレフィンカルボン酸との共重合物(アクリルニトリル、酢酸ビニル、スチロールのようなビニル単量体を添加したものも含む)を主体とするものが、偏光フィルムの偏光特性を阻害することがないのでとくに好ましいが、これに限定されることなく、透明性を有する感圧性接着剤であれば使用可能で、たとえばポリビニルエーテル系、ゴム系などでもよい。
本発明の偏光膜は、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、パソコン、携帯情報端末機、自動車や機械類の計器類などの液晶表示装置、サングラス、防目メガネ、立体メガネ、表示素子(CRT、LCDなど)用反射低減層、医療機器、建築材料、玩具などに用いられる。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。なお実施例中、「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
(1)重量平均分子量
GPC−LALLS法により以下の条件で測定する。
1)GPC
装置:Waters製244型ゲル浸透クロマトグラフ
カラム:東ソー(株)製TSK−gel−GMPWXL(内径8mm、長さ30cm、2本)
溶媒:0.1M−トリス緩衝液(pH7.9)
流速:0.5ml/分
温度:23℃
試料濃度:0.040%
ろ過:東ソー(株)製0.45μmマイショリディスクW−25−5
注入量:0.2ml
検出感度(示差屈折率検出器):4倍
2)LALLS
装置:Chromatrix製KMX−6型低角度レーザー光散乱光度計
温度:23℃
波長:633nm
第2ビリアル係数×濃度:0mol/g
屈折率濃度変化(dn/dc):0.159ml/g
フィルター:MILLIPORE製0.45μmフィルターHAWP01300
ゲイン:800mV
(2)ポリオキシエチレン基含有化合物の定量
1gのポリビニルアルコール系フィルムを用いて、メタノールを溶剤としてソックスレー抽出を6時間行なう。抽出液をエバポレーターで濃縮乾固した後、メタノールで定容して、LC−MASS法にてフィルム中に含まれる各添加剤を定量する。LC−MASSの測定は、HEWLETTPACKARD製の高速液体クロマトグラフィー質量分析計「HP1100MSD」を用いて行なう。測定条件は以下の通りであるが、機種および測定条件はこれに限定されるものではない。
カラム:(株)ワイエムシイー製 YMC−Pack ODS−A 150×4.6mm I.D.
カラム温度:30℃
溶離液:0.1M酢酸アンモニウム水溶液/メタノール、グラジエント測定(25/75→0/100(15分))
流量:0.7ml/分
注入量:20μL
MASS:エレクトロンスプレーイオン化法ネガティブモード
(3)ポリビニルアルコール系フィルムの光線透過率
分光光度計(日本分光工業(株)製、商品名:Ubest−35)を用いて550nmの光線透過率を測定する。
(4)偏光膜の光線透過率
高速多波長複屈折測定装置(大塚電子(株)製:RETS−2000 波長:550nm)を用いて測定する。
(5)偏光膜の偏光度
下記式(4)にしたがって算出する。
〔(H11−H1)/(H11+H1)〕1/2 ・・・ (4)
11:2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で測定した550nmにおける光線透過率
1:2枚の偏光膜を、配向方向が互いに直交する方向になるように重ね合わせた状態で測定した550nmにおける光線透過率
実施例1
(ポリビニルアルコール系フィルムの製造)
500lのタンクに18℃の水200kgを入れ、撹拌しながら、重量平均分子量166000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂40kgを加え15分間撹拌を続けた。その後一旦水を抜いた後、さらに水200kgを加え15分間撹拌した。得られたスラリーをスーパーデカンタ(巴工業(株)製)により脱水し、含水率43%のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを得た。
かかるポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキ70kgを、マックスブレンド型翼を備えた溶解缶に入れ、以下の2種類のノニオン系界面活性剤を加えた。式(1)の値は0.5である。
ジエタノールラウリルアミド(HLB=6)
21g(ポリビニルアルコール系樹脂に対して0.05%)
平均縮合度4のポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=10)
8.5g(ポリビニルアルコール系樹脂に対して0.02%)
さらに、水10kgおよび可塑剤としてグリセリン4.2kgを加え、缶底から水蒸気を吹き込んだ。内部樹脂温度が50℃になった時点で撹拌(回転数:5rpm)を行ない、内部樹脂温度が100℃になった時点で系内を加圧し、150℃まで昇温した後、水蒸気の吹き込みを停止した(水蒸気の吹き込み量は合計75kg)。30分間撹拌(回転数:20rpm)を行ない均一に溶解した後、濃度調整により樹脂濃度25%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。
次に、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液(液温147℃)を、ギアポンプ1より2軸押出機に供給し、脱泡した後、ギアポンプ2より排出した。排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、T型スリットダイ(ストレートマニホールドダイ)よりドラム型ロールに流延して製膜した。かかる流延製膜の条件は下記の通りである。
ドラム型ロール
直径(R1):3200mm、幅:4200mm、回転速度:8m/分、表面温度:90℃、T型スリットダイ出口の樹脂温度:95℃
得られた膜の表面と裏面とを下記の条件にて乾燥ロールに交互に通過させながら乾燥を行った。
乾燥ロール
直径(R2):320mm、幅:4200mm、本数(n):10本、回転速度:8m/分、表面温度:75℃
その後、さらに熱処理(条件:フローティングドライヤー(120℃、長さ6m))を行ない、ポリビニルアルコール系フィルム(幅4000mm、厚さ50μm、長さ5000m)を得た。得られたフィルムの光線透過率は、91.4%であった。
(偏光膜の製造)
さらに、得られたポリビニルアルコール系フィルムを、水洗槽(30℃)で膨潤させた後、ヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム15g/Lよりなる水溶液中に30℃にて240秒浸漬して1.4倍延伸し、ついでホウ酸60g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(55℃)に浸漬するとともに、同時に2.3倍に一軸延伸しつつ5分間にわたってホウ酸処理を行ない、トータル5.6倍一軸延伸を行なった。その後、乾燥して偏光膜を得た。得られた偏光膜の光線透過率は44.1%、偏光度は99.9%であった。
実施例2および3
表1に示される界面活性剤を用いる以外は実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルムおよび偏光膜を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの光線透過率と、偏光膜の光線透過率および偏光度を表1に示す。
実施例4
実施例1において、流延製膜の条件を下記の通りとした以外は同様にしてポリビニルアルコール系フィルムおよび偏光膜を得た。
ドラム型ロール
直径(R1):3200mm、幅:4200mm、回転速度:10m/分、表面温度:85℃、T型スリットダイ出口の樹脂温度:95℃
得られた膜の表面と裏面とを下記の条件にて乾燥ロールに交互に通過させながら乾燥を行った。
乾燥ロール
直径(R2):320mm、幅:4200mm、本数(n):20本、回転速度:10m/分、表面温度:75℃
得られたポリビニルアルコール系フィルムの光線透過率と、偏光膜の光線透過率および偏光度を表1に示す。
比較例1および2
表1に示される界面活性剤を用いる以外は実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルムおよび偏光膜を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの光線透過率と、偏光膜の光線透過率および偏光度を表1に示す。
Figure 0005089045

Claims (9)

  1. フィルム中に、ポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤に基づくポリオキシエチレン基含有化合物を100〜500ppm含有することを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
  2. ポリビニルアルコール系樹脂に、少なくとも1種のポリオキシエチレン基含有ノニオン系界面活性剤を、下記式(1)を満足するように添加する工程を含むことを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
    0.5≦Σ{(ノニオン系界面活性剤のHLB)×(ノニオン系界面活性剤のポリビニルアルコール系樹脂に対する添加量(重量%))}≦2 (1)
    (式中、HLBは親水親油バランスを、Σは2種以上のノニオン系界面活性剤を添加する場合の総和を意味する。)
  3. 重量平均分子量140000〜260000のポリビニルアルコール系樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  4. フィルム幅が3.0m以上であることを特徴とする請求項1または3記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  5. フィルムの厚さが30〜70μmであることを特徴とする請求項1、3または4記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  6. フィルムの長さが4000m以上であることを特徴とする請求項1、3、4または5記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  7. 偏光膜の原反フィルムとして用いることを特徴とする請求項1、3、4、5または6記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  8. 請求項1、3、4、5、6または7記載のポリビニルアルコール系フィルムからなることを特徴とする偏光膜。
  9. 請求項8記載の偏光膜の少なくとも片面に保護膜を設けてなることを特徴とする偏光板。
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