JP5087790B2 - アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法 - Google Patents
アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法 Download PDFInfo
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Description
この解決策としては、コバルト、マンガン、鉄等の遷移金属元素又はアルミニウムを添加することで、リチウムイオン電池の正極材料として安全性やサイクル特性が良好なリチウムニッケル複合酸化物を得ることが一般的である。
以上のように、従来の製造方法では、水酸化ニッケル粒子中への錯形成剤又はハロゲンの混入を避けることができない。
一般式: Ni(1−x−y)MxAly(OH)2
(式中、Mは、Co又はMnから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、xは、0.01〜0.2、及び、yは、0.01〜0.15である。)
Ni(1−x−y)CoxAly(OH)2 …(1)
(式中、xは、0.01〜0.2、及び、yは、0.01〜0.15である。)
Ni(1−x−y)CoxAly(OH)2 …(1)
(式中、xは、0.01〜0.2、及び、yは、0.01〜0.15である。)
で表されるアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を製造する方法であって、
ニッケル化合物とコバルト化合物を含む水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びアンモニウムイオン供給体を含む水溶液からなる原料溶液を、それぞれ同一の反応槽内に個別にかつ同時に供給して反応させる際、該反応槽内の空間部に不活性ガスを生成されるアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子中に含有されるコバルトの全量に対し3価のコバルトの比率が0.25以下になるように供給することを特徴とするアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法が提供される。
アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法が提供される。
Ni(1−x−y)CoxAly(OH)2 …(1)
(式中、xは、0.01〜0.2、及び、yは、0.01〜0.15である。)
本発明のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法は、次の一般式(1):
Ni(1−x−y)CoxAly(OH)2 …(1)
(式中、xは、0.01〜0.2、及び、yは、0.01〜0.15である。)
で表されるアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を製造する方法であって、
ニッケル化合物とコバルト化合物を含む水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びアンモニウムイオン供給体を含む水溶液からなる原料溶液を、それぞれ同一の反応槽内に個別にかつ同時に供給して反応させる際、該反応槽内の空間部に不活性ガスを供給することを特徴とする。
すなわち、反応槽内のコバルトの酸化は、反応槽内の空間部に存在する空気中の酸素が、反応槽の攪拌に伴い液中に巻き込まれることが原因で発生しているものであると考えられる。したがって、気温の低下により反応槽内の空間部への空気の混入量が増加すれば、反応槽内の空間部の酸素濃度が上昇し、結果的に反応液中へ供給される酸素量が増加することにより、コバルトの酸化が促進される。ところで、気温の低下が反応槽内の空間部への空気の混入量を増加させる作用機構としては、反応液中から遊離してきた非常に水に対する溶解性の高いアンモニアガスが反応槽内の空間部に存在し、それが気温の低下により反応槽のフタなどに凝縮した反応液からの水蒸気由来の水滴に吸収されて反応槽内の空間部が負圧になり、そのため、オーバーフロー口などの大気と繋がっている開口部から空気が流入することによるものと考えられる。なお、気温の高い場合は、水蒸気の凝縮も発生せず、反応液中から遊離してくるアンモニアガスにより反応槽内の空間部が正圧になるため、空気の混入量が抑えられると考えられる。
これに対して、本発明の製造方法によれば、事前に調製した原料溶液を反応槽内に供給して反応させる際、反応槽内の空間部に不活性ガスを供給することにより、上記酸素による酸化を抑えて、3価のコバルトが生成するのを抑制するためである。
なお、上記アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子中に含有されるコバルトの全量に対し3価のコバルトの比率は、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を分析して、3価のCo品位と全Co品位を得て、その比(3価のCoの質量%/全Coの質量%)から求められる。
上記不活性ガスとしては、窒素ガス、又はアルゴン等の希ガスが挙げられるが、経済性から窒素ガスが好ましい。
上記製造方法で用いるニッケル化合物及びコバルト化合物としては、特に限定されるものではないが、硫酸塩又は塩化物が好ましく、ハロゲンによる汚染のない硫酸塩がより好ましい。
上記製造方法で用いるアンモニウムイオン供給体としては、特に限定されるものではないが、アンモニア水、硫酸アンモニウム又は塩化アンモニウムが好ましく、アンモニア水がより好ましい。
また、上記製造方法で用いる水酸化ナトリウム水溶液の水酸化ナトリウム濃度としては、特に限定されるものではない。
なお、上記アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子としては、下記の一般式(1)で表され、その平均粒径が8〜20μmであるものである。
Ni(1−x−y)CoxAly(OH)2 …(1)
(式中、xは、0.01〜0.2、及び、yは、0.01〜0.15である。)
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)3価のコバルトの分析:塩化第二鉄溶液を使用し、ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムを指示薬として、二クロム酸カリウム溶液で滴定する方法、例えば「コバルト酸化物中の金属コバルト、コバルト(II)及びコバルト(III)の分別定量」(並木美智子、広川吉之助:分析化学、30、143(1981))に記載の方法に従った。
(3)アンモニウムイオン濃度の分析:JIS標準による蒸留法によって測定した。
(4)平均粒径の測定:レーザー回折式粒度分布計(商品名マイクロトラック、日機装製)を用いて行った。
(5)粒子形状の観察:走査型電子顕微鏡を用いて行った。
まず、室温が30℃の状況下で、下記の(イ)〜(ハ)の方法でニッケルとコバルトとの金属化合物を含む水溶液(ニッケル水溶液(A))、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を作製した。
(イ)ニッケル水溶液(A):工業用硫酸ニッケル6水和物21.8kgと工業用硫酸コバルト7水和物4.0kgを水に溶解した後、全量を60リットルに調整して、硫酸ニッケルと硫酸コバルトの混合溶液を得た。
(ロ)アルミン酸ナトリウム水溶液:工業用アルミン酸ナトリウム500gを水に溶解した後、全量を10リットルに調整した。
(ハ)水酸化ナトリウム水溶液:工業用水酸化ナトリウム12.5kgを水に溶解した後、全量を50リットルに調整した。
また、反応槽内の反応液のpHを、上記水酸化ナトリウム水溶液の供給流量を調整し、反応槽内に設置したpHコントローラーを用いて制御した。なお、反応槽内のpHは、24時間ごとに反応槽内の液をサンプリングし、25℃で測定した際のpHが12.4となるように調整した。この後、反応槽内の反応液のpH、温度、アンモニウムイオン濃度及びスラリー濃度が一定値になるまで、この状態で40時間運転した。さらに、40時間経過後から60時間後まで反応槽内から反応液を回収した。
その後、上記評価方法により、乾燥後のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の化学組成、平均粒径、粒子形状、及び3価のコバルトの比率を求めた。なお、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子は、高密度の球状粒子であり、その組成式は、Ni0.77Co0.13Al0.10(OH)2で表された。結果を表1に示す。
室温が25℃の状況下で、上記(イ)〜(ハ)の方法でニッケルとコバルトの金属化合物を含む水溶液(ニッケル水溶液(A))、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を作製し、次の条件でアルミニウム含有水酸化ニッケルを製造した。
また、反応槽内の反応液のpHを、反応槽内に設置したpHコントローラーを用いて、上記水酸化ナトリウム水溶液の供給流量を調整して制御した。なお、反応槽内のpHは、24時間ごとに反応槽内の液をサンプリングし、25℃で測定した際のpHが12.8となるように調整した。この後、反応槽内の反応液のpH、温度、アンモニウムイオン濃度及びスラリー濃度が一定値になるまで、この状態で100時間運転した。さらに、100時間経過後から135時間後まで反応槽内から反応液を回収した。
その後、上記評価方法により、乾燥後のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の化学組成、平均粒径、粒子形状、及び3価のコバルトの比率を求めた。なお、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子は、高密度の球状粒子であり、その組成式は、Ni0.77Co0.13Al0.10(OH)2で表された。結果を表1に示す。
室温が15℃の状況下で、上記(イ)〜(ハ)の方法でニッケルとコバルトの金属化合物を含む水溶液(ニッケル水溶液(A))、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を得た。
その後、上記評価方法により、乾燥後のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の化学組成、平均粒径、粒子形状、及び3価のコバルトの比率を求めた。なお、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子は、高密度の球状粒子であり、その組成式は、Ni0.77Co0.13Al0.10(OH)2で表された。結果を表1に示す。
室温が10℃の状況下で、上記(イ)〜(ハ)の方法でニッケルとコバルトの金属化合物を含む水溶液(ニッケル水溶液(A))、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を作製したこと以外は、実施例2と同様にして、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を得た。
その後、上記評価方法により、乾燥後のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の化学組成、平均粒径、粒子形状、及び3価のコバルトの比率を求めた。なお、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子は、高密度の球状粒子であり、その組成式は、Ni0.77Co0.13Al0.10(OH)2で表された。結果を表1に示す。
反応槽内の空間部に窒素ガスを供給しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を得た。
その後、上記評価方法により、乾燥後のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の化学組成、平均粒径、粒子形状、及び3価のコバルトの比率を求めた。なお、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子は、高密度の球状粒子であり、その組成式は、Ni0.77Co0.13Al0.10(OH)2で表された。結果を表1に示す。
室温が25℃の状況下で、上記(イ)〜(ハ)の方法でニッケルとコバルトの金属化合物を含む水溶液(ニッケル水溶液(A))、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を作製したこと、及び反応槽内の空間部に窒素ガスを供給しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を得た。
その後、上記評価方法により、乾燥後のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の化学組成、平均粒径、粒子形状、及び3価のコバルトの比率を求めた。なお、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子は、高密度の球状粒子であり、その組成式は、Ni0.77Co0.13Al0.10(OH)2で表された。結果を表1に示す。
室温が20℃の状況下で、上記(イ)〜(ハ)の方法でニッケルとコバルトの金属化合物を含む水溶液(ニッケル水溶液(A))、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を作製したこと、及び反応槽内の空間部に窒素ガスを供給しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を得た。
その後、上記評価方法により、乾燥後のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の化学組成、平均粒径、粒子形状、及び3価のコバルトの比率を求めた。なお、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子は、高密度の球状粒子であり、その組成式は、Ni0.77Co0.13Al0.10(OH)2で表された。結果を表1に示す。
室温が15℃の状況下で、上記(イ)〜(ハ)の方法でニッケルとコバルトの金属化合物を含む水溶液(ニッケル水溶液(A))、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を作製したこと、及び反応槽内の空間部に窒素ガスを供給しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を得た。
その後、上記評価方法により、乾燥後のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の化学組成、平均粒径、粒子形状、及び3価のコバルトの比率を求めた。なお、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子は、高密度の球状粒子であり、その組成式は、Ni0.77Co0.13Al0.10(OH)2で表された。結果を表1に示す。
室温が10℃の状況下で、上記(イ)〜(ハ)の方法でニッケルとコバルトの金属化合物を含む水溶液(ニッケル水溶液(A))、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を作製したこと、及び反応槽内の空間部に窒素ガスを供給しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を得た。
その後、上記評価方法により、乾燥後のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の化学組成、平均粒径、粒子形状、及び3価のコバルトの比率を求めた。なお、アルミニウム含有水酸化ニッケル粒子は、高密度の球状粒子であり、その組成式は、Ni0.77Co0.13Al0.10(OH)2で表された。結果を表1に示す。
Claims (9)
- 次の一般式(1): Ni(1−x−y)CoxAly(OH)2 …(1)
(式中、xは、0.01〜0.2、及び、yは、0.01〜0.15である。)
で表されるアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子を製造する方法であって、
ニッケル化合物とコバルト化合物を含む水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びアンモニウムイオン供給体を含む水溶液からなる原料溶液を、それぞれ同一の反応槽内に個別にかつ同時に供給して反応させる際、該反応槽内の空間部に不活性ガスを生成されるアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子中に含有されるコバルトの全量に対し3価のコバルトの比率が0.25以下になるように供給することを特徴とするアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法。 - 前記反応槽内に前記原料溶液を供給して反応させる際、該反応槽として攪拌機、蓋、オーバーフロー口及び温度制御手段を備えた容器を用いるとともに、ニッケル化合物とコバルト化合物を含む水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、及びアンモニウムイオン供給体を含む水溶液は、それぞれ該反応槽内に定量的に連続供給し、水酸化ナトリウム水溶液は、該反応槽内の反応液を所定のpHに保持するために添加量を調整して供給し、一方、生成されたアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子は、オーバーフロー口を経て連続的に排出することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法。
- 前記不活性ガスの反応槽内の空間部への供給量は、空間部の容積1m3当たり2リットル以上とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法。
- 前記ニッケル化合物とコバルト化合物は、硫酸塩又は塩化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法。
- 前記アンモニウムイオン供給体は、アンモニア水、硫酸アンモニウム又は塩化アンモニウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法。
- 前記反応槽内の反応液の温度は、40〜60℃で、かつ±1℃の温度範囲に制御されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法。
- 前記反応槽内の反応液のpHは、液温を25℃にして測定した基準で11.0〜13.5の範囲内の一定値に保持されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法。
- 前記反応槽内に供給する原料溶液の合計流量は、反応槽の容積を1分当たりの該合計流量で割った値が300〜1200の範囲の一定値に保持されるように調整することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法。
- 前記反応槽内の反応液のアンモニウムイオン濃度は、5〜25g/リットルの範囲内の一定値に保持されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のアルミニウム含有水酸化ニッケル粒子の製造方法。
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