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JP5087605B2 - 酸化インジウム−酸化亜鉛−酸化マグネシウム系スパッタリングターゲット及び透明導電膜 - Google Patents

酸化インジウム−酸化亜鉛−酸化マグネシウム系スパッタリングターゲット及び透明導電膜 Download PDF

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Description

本発明は、液晶駆動用の電極基板、EL用の電極基板に関し、特に、これらの電極基板に用いられる透明電極を構成する透明導電膜に関する。また、本発明は、この透明導電膜を製造するために用いられるスパッタリングターゲットに関する。
従来より、透明導電膜用スパッタリングターゲットとして、Snをドーピングした材料が検討されている。特に、ITO(インジウム・スズ酸化物:Indium Tin Oxide)は広く用いられている。
しかしながら、ITOの場合には、その比抵抗を下げるために、結晶化させる必要がある。そのため、高温で成膜するか、又は、成膜後に所定の加熱処理を行う必要があった。
また、結晶化したITO膜のエッチング加工時には、強酸である王水(硝酸・塩酸の混合液)がエッチング液として用いられているが、強酸を使用することによる不具合の発生が、問題になる場合がある。すなわち、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等を構成要素として使用する液晶表示装置では、ゲート線、ソース・ドレイン線(又は電極)として金属細線を使用することがある。この場合には、ITO膜のエッチング加工時に、王水によりこれら配線材料が断線したり、線細りが発生するという問題が生じる場合があった。
そこで、成膜時に、スパッタガス中に水素や水を存在させることにより、非晶質ITOを成膜し、成膜された非晶質ITOを弱酸でエッチングする方法が提案されている。しかしながら、ITO自身は結晶性であるため、弱酸でエッチングを行った場合には、エッチング残渣を発生してしまうことが問題となる場合があった。また、成膜時に、スパッタガス中に水素又は水を散在させると、ITOスパッタリングターゲット上に、ノジュールと呼ばれる突起が発生し、異常放電の原因にもなる恐れもあった。
一方、一般的に透明導電膜に添加されるSn以外の添加金属として、Znを添加するスパッタリングターゲットや導電材料、透明導電膜に関する特許の一例として、次のような特許文献が開示されている。
例えば、下記特許文献1には、InとZnを主成分とし、一般式In(ZnO)(m=2〜20)で表される六方晶層状化合物を含むターゲットが開示されている。このターゲットによれば、ITO膜よりも耐湿性に優れるとともに、ITO膜と同等の導電性および光透過率を有する透明導電膜が得られる。
また、下記特許文献2には、非晶質酸化物における亜鉛元素と、インジウム元素と、の原子比であるZn/(Zn+In)の値が、0.2〜0.9未満である液晶駆動用透明電極を備える液晶ディスプレイ用カラーフィルタであって、上記液晶駆動用透明電極に、クラックや剥離が生じにくい液晶ディスプレイ用カラーフィルタが開示されている。
また、下記特許文献3には、In及びZnを含有し、In/(In+Zn)の値が0.8〜0.9である導電性透明基材であって、エッチング特性、比抵抗の熱的安定性に優れた導電性透明基材が開示されている。
さらに、これらの開示された特許文献1〜3の中には、ノジュールの発生しないターゲットが得られることや、エッチング性に優れ、且つ、ITOと同等の比抵抗を有する透明導電膜が得られること、が示されている特許文献もある。
特開平06−234565号公報 特開平07−120612号公報 特開平07−235219号公報 特開平08−264022号公報
しかしながら、非晶質の透明導電膜では、バンドギャップが明確に出ない、すなわちバンドギャップがそれほど大きくないので、短波長側、特に400〜450nm域における光線透過率が低下するという問題が生じる場合があった。
これに対して、上記特許文献4では、擬3元系酸化物の組成を調整することにより、屈折率を制御でき、且つ、透明性の高い透明導電膜を製造している。しかしながら、この透明導電膜を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの導電率が低くスパッタリングしにくかったり、成膜された透明導電膜が結晶性であることからエッチング性がそれほど高くないという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、スパッタリング時に、ノジュールを発生しないターゲットを提供することである。また、本発明の他の目的は、エッチング性に優れ、且つ、特に400〜450nm域の透明性に優れた(400〜450nm域において、高い光線透過率を有する)非晶質透明導電膜を提供することである。
スパッタリングターゲットの発明
(1)そこで、上記課題を解決するために、本発明は、酸化インジウムと、酸化亜鉛と、酸化マグネシウムと、を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットである。
酸化インジウムと、酸化亜鉛と、からなるスパッタリングターゲットに、さらに、酸化マグネシウムを加えることにより、スパッタリング時に生じるノジュール発生をより効果的に抑え、異常放電の少ないターゲットが得られる。
(2)また、本発明は、酸化インジウムと、酸化亜鉛と、酸化マグネシウムと、を含むスパッタリングターゲットにおいて、X線回折により得られる結晶ピークを観察した場合に、前記結晶ピークが、酸化インジウム及び酸化亜鉛からなる一般式In(ZnO)で表される六方晶層状化合物と、酸化インジウム及び酸化マグネシウムからなるInMgOと、に由来するピークを含むことを特徴とするスパッタリングターゲットである。ここで、mは3〜20の整数である。
X線回折によりスパッタリングターゲット表面を測定した結果、得られる結晶ピークを観察した場合に、この結晶ピークには、所定の六方晶層状化合物と、InMgOと、に由来するピークが含まれていることが必須である。ここで、所定の六方晶層状化合物とは、酸化インジウム及び酸化亜鉛からなる一般式In(ZnO)(ここで、mは3〜20の整数である)で表される六方晶層状化合物のことである。また、上記InMgOは、酸化インジウム及び酸化マグネシウムから構成される。
酸化インジウムと、酸化亜鉛と、からなる六方晶層状化合物の具体例としては、InZn、InZn、InZn、等が挙げられ、その一般式は、In(ZnO)(ここでmは、3〜20の整数である。)で表される。また、EPMA(Electron Probe Microanalysis:X線マイクロアナライザー)のマッピングによるこれらの複合酸化物の結晶粒子の大きさは、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下であることが好ましい。
スパッタリングターゲットが、酸化インジウムと、酸化亜鉛と、からなる上記六方晶状化合物及びInMgO等を含まない場合には、スパッタリングターゲットのバルク抵抗が、10mΩcm超になることがある。このように、バルク抵抗が10mΩcm超になると、スパッタリング中に異常放電が生じたり、スパッタリングターゲットが割れたりすることがある。
(3)また、本発明は、酸化インジウム及び酸化亜鉛からなる六方晶層状化合物と、酸化インジウム及び酸化マグネシウムからなるInMgOと、を含むことを特徴とする上記(1)に記載のスパッタリングターゲットである。
(4)また、本発明は、[In]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.74〜0.94であり、[Zn]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.05〜0.25であり、[Mg]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.01〜0.20であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のスパッタリングターゲットである。ここで、[In]は、単位体積当たりのインジウム原子の数を表し、[Zn]は、単位体積当たりの亜鉛原子の数を表し、[Mg]は、単位体積当たりのマグネシウム原子の数を表す。
インジウムの組成
本発明のスパッタリングターゲットにおいて、[In]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.74〜0.94である。[In]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が、0.74未満である場合には、スパッタリングターゲットのバルク抵抗が大きくなりすぎたり、成膜された透明導電膜の比抵抗が大きくなることがある。一方、[In]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が、0.94超である場合には、成膜された透明導電膜の比抵抗が大きくなったり、透明導電膜が結晶化して、エッチング時に、残渣を発生することがある。
亜鉛の組成
また、本発明のスパッタリングターゲットにおいて、[Zn]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.05〜0.25である。[Zn]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が0.05未満である場合には、成膜された透明導電膜の比抵抗が大きくなりすぎたり、結晶化することがある。一方、[Zn]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が0.25超である場合には、成膜された透明導電膜の比抵抗が大きくなりすぎることがある。
マグネシウムの組成
また、本発明のスパッタリングターゲットにおいて、[Mg]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.01〜0.20である。[Mg]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が0.01未満である場合には、成膜された透明導電膜の比抵抗が大きくなりすぎたり、結晶化することがあり、また、透明導電膜の透過率が高くならないことがある。一方、[Mg]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が0.25超である場合には、成膜された透明導電膜の比抵抗が大きくなりすぎることがある。
(5)また、本発明は、さらに、正4価の金属酸化物を含むことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のスパッタリングターゲットである。
正4価とは、金属酸化物中の金属原子の原子価が、+4であることを意味する。正4価の金属酸化物を含むことにより、スパッタリングターゲットのバルク抵抗が下がり、異常放電を防止することができる。
(6)また、本発明は、正4価の前記金属酸化物が、SnO、ZrO、GeO、CeOであることを特徴とする上記(5)に記載のスパッタリングターゲットである。
正4価の金属酸化物の中でも、SnO、ZrO、GeO、CeOが好適に使用できる。
(7)また、本発明は、SnO、ZrO、GeO、CeO、及びGaからなる群Mから選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物を含むことを特徴とする上記(6)に記載のスパッタリングターゲットである。
(8)また、本発明は、前記群Mから選ばれる1種又は2種以上の前記金属酸化物の添加量が、[M]/[全金属]=0.0001〜0.15であることを特徴とする上記(7)に記載のスパッタリングターゲットである。ここで、[M]は、単位体積当たりの前記群Mから選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物中の金属、すなわち単位体積当たりの、Sn、Zr、Ge、Ce、Gaのいずれか1種又は2種以上の原子の数を表し、[全金属]は、単位体積当たりの全金属、すなわち単位体積当たりの、In、Zn、Mgと、前記群Mから選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物中の金属と、の原子の総数を表す。
スパッタリングターゲットにおいて、[M]/[全金属]の値は、0.0001〜0.15であり、好ましくは0.0003〜0.12であり、より好ましくは0.0005〜0.1である。[M]/[全金属]の値が0.0001未満である場合には、添加効果が出ないことがあり、一方、[M]/[全金属]の値が0.15を超える場合には、成膜された透明導電膜のエッチング性がほとんど向上しないことがある。
非晶質透明導電膜の発明
(9)また、本発明は、酸化インジウムと、酸化亜鉛と、酸化マグネシウムと、を含むことを特徴する非晶質透明導電膜である。
透明導電膜が、酸化インジウムと、酸化亜鉛と、さらに、酸化マグネシウムと、を含むことにより、完全に非晶質の透明導電膜が得られる。このように透明導電膜を非晶質とすることにより、エッチング時に、エッチング残渣をほとんど発生しなくなるのである。また、透明導電膜が酸化マグネシウムを含むことにより、透明導電膜の400〜450nm域における光線透過率の低下を効果的に防止できる。
(10)また、本発明は、[In]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.74〜0.94であり、[Zn]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.05〜0.25であり、[Mg]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.01〜0.20であることを特徴とする上記(9)に記載の非晶質透明導電膜である。ここで、[In]は、単位体積当たりのインジウム原子の数を表し、[Zn]は、単位体積当たりの亜鉛原子の数を表し、[Mg]は、単位体積当たりのマグネシウム原子の数を表す。
インジウムの組成
本発明の透明導電膜において、[In]/([In]+[Zn]+[Mg])の値は0.74〜0.94であり、好ましくは0.7〜0.92であり、より好ましくは0.75〜0.9である。[In]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が、0.74未満である場合には、透明導電膜の比抵抗が大きくなりすぎることがあり、[In]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が、0.94超である場合には、透明導電膜が結晶化しやすくなったり、比抵抗が大きくなることがある。
亜鉛の組成
本発明の透明導電膜において、[Zn]/([In]+[Zn]+[Mg])の値は、0.05〜0.25であり、好ましくは0.07〜0.25、より好ましくは0.08〜0.22である。[Zn]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が、0.05未満である場合には、透明導電膜が結晶化しやすくなったり、比抵抗が大きくなることがある。一方、[Zn]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が、0.25超である場合には、透明導電膜の比抵抗が大きくなりすぎる場合がある。
マグネシウムの組成
本発明の透明導電膜において、[Mg]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が、0.01〜0.2であり、好ましくは0.01〜0.15であり、より好ましくは0.02〜0.1である。[Mg]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が、0.01未満である場合には、透明導電膜の透過率が高くならなかったり、結晶化しやすくなったり、比抵抗が大きくなることがある。[Mg]/([In]+[Zn]+[Mg])の値が、0.20超である場合にでは、成膜された透明導電膜の比抵抗が大きくなりすぎることがある。
透明導電膜中のIn、Zn、Mgの含有量が上記範囲内にない場合には、透明導電膜は、好ましい透明性、比抵抗、エッチング性等を得られない場合がある。
(11)また、本発明は、さらに、正4価の金属酸化物を含むことを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の非晶質透明導電膜である。
透明導電膜に、正4価の金属酸化物を含ませることにより、ターゲットのバルク抵抗が低減され、安定した放電状態で透明導電膜を成膜できる。このため、より安定した透明導電膜が得られる。
(12)また、本発明は、正4価の前記金属酸化物が、SnO、ZrO、GeO、CeOであることを特徴とする上記(11)に記載の非晶質透明導電膜である。
正4価の金属酸化物の中でも、SnO、ZrO、GeO、CeOが好適に使用できる。
(13)また、本発明は、SnO、ZrO、及びGeO、CeO、及びGaからなる群Mから選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物を含むことを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の非晶質透明導電膜である。
(14)また、本発明は、前記群Mから選ばれる1種又は2種以上の前記金属酸化物の添加量が、[M]/[全金属]=0.0001〜0.15であることを特徴とする上記(13)に記載の非晶質透明導電膜である。ここで、[M]は、単位体積当たりの前記群Mから選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物中の金属、すなわち単位体積当たりの、Sn、Zr、Ge、Ce、Gaのいずれか1種又は2種以上の原子の数を表し、[全金属]は、単位体積当たりの全金属、すなわち単位体積当たりの、In、Zn、Mgと、前記群Mから選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物中の金属と、の原子の総数を表す。
透明導電膜において、[M]/[全金属]の値は、[M]/[全金属]=0.0001〜0.15であり、好ましくは0.0003〜0.12であり、より好ましくは0.0005〜0.1である。[M]/[全金属]の値が、0.0001未満である場合には、添加効果が出ないことがあり、[M]/[全金属]の値が0.15を超える場合には、透明導電膜のエッチング性がほとんど向上しないことがある。
上記の通り、本発明のスパッタリングターゲットは、スパッタリング時に、ノジュールをほとんど発生しない。
また、本発明の非晶質透明導電膜は、弱酸(有機酸等)によるエッチングにより、残渣等がほとんど発生せず、且つ、400〜450nm域の透明性(光線透過性)に優れている。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
ターゲット1
平均粒経が1μm以下のIn粉末、平均粒経が1μm以下のZnO粉末、及び平均粒経が1μm以下のMgO粉末を所定の割合で秤量し、混合した後、樹脂製ポットに入れ、さらに水を加えて、硬質ZrOボールを用いた湿式ボールミル混合を行った。この時、混合時間は20時間とした。この混合により、得られた混合スラリーを取り出し、濾過、乾燥及び造粒を行った。得られた造粒物を成形型に入れ、冷間静水圧プレスで3ton/cmの圧力をかけて成形し、成形体を得た。
次に、得られた成形体を以下のように焼結した。まず、焼結炉内に、成形体を載置し、この焼結炉内の容積0.1m当たり、5リットル/分の割合で、酸素を流入した。この雰囲気中で、上記成形体を1470℃で5時間焼結した。この時、焼結炉内の温度を、1000℃までは1℃/分で昇温し、1000℃〜1470℃間は3℃/分で昇温した。
その後、酸素流入を止め、上記焼結炉内の温度を、1470℃から1300℃へ10℃/分で降温した。そして、この焼結炉内の容積0.1m当たり、10リットル/分の割合でArを流入し、この雰囲気中で、上記成形体を1300℃で3時間保持した後、放冷し、焼結体を得た。
得られた焼結体の相対密度は、以下のように求めた。まず、水を用いたアルキメデス法により測定し、理論密度から相対密度を算出したところ、その値は、97%であった。この相対密度は図1に示されている。尚、この際の理論密度は、酸素欠陥のないIn結晶(ビックスバイト型構造)と、Znと、Mgと、の酸化物の重量分率より算出した。
また、焼結体中のZnとMgの含有量をICP(誘導結合プラズマ:Inductively Coupled Plasma)発光分析法で定量分析したところ、原料粉末を混合する際の仕込み組成が、焼結体中でも維持されていることが確認できた。この時、確認した焼結体中の具体的な原子組成比率である[In]/([In]+[Zn]+[Mg])の値と、[Zn]/([In]+[Zn]+[Mg])の値と、[Mg]/([In]+[Zn]+[Mg])の値と、は図1に示されている。
なお、図1中の[In]は、焼結体中の単位体積当たりのインジウム原子の数を表し、[Zn]は、焼結体中の単位体積当たりの亜鉛原子の数を表し、[Mg]は、焼結体中の単位体積当たりのマグネシウム原子の数を表す。
次に、上記焼結体のスパッタ面をカップ砥石で磨き、直径100mm、厚さ5mmに加工し、In系合金を用いてバッキングプレートを貼り合わせて、スパッタリング用ターゲット1を製造した。このスパッタリング用ターゲット1のバルク抵抗は、まず、ロレスタ(三菱油化製)を用いて、4探針法により、ターゲット1の比抵抗を計測し、計測された比抵抗の値に基づて、計算により求めた。算出されたバルク抵抗の値は、図1に示されている。
亜鉛やマグネシウムがターゲット1内に含まれる形態は、酸化亜鉛(ZnO)や、酸化マグネシウム(MgO)として分散しているよりも、酸化インジウム−酸化亜鉛の複合酸化物(例えば、InZn、InZn10、InZn、InZn、等)として分散していることが好ましい。図2には、ターゲット1のX線チャートを表す図が示されている。図2において、縦軸は回折したX線の強度を表し、横軸は回折したX線の角度を表している。尚、酸化インジウム及び酸化亜鉛からなる上記六方晶層状化合物は、例えば、InZn、InZn、InZn等、一般式がIn(ZnO)(ここでmは、3〜20の整数である。)で表されることが好ましい。
亜鉛原子やマグネシウム原子が、酸化インジウムのインジウムサイトに置換固溶し、酸化インジウム焼結体中に原子レベルで分散している場合には、ターゲット1のバルク抵抗が大きくなりすぎて、スパッタリング時に、放電が安定せず、異常放電を誘発する恐れがある。
ターゲット1中の酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムは、例えば、酸化インジウム及び酸化亜鉛からなる六方晶層状化合物の形態と、酸化インジウム及び酸化マグネシウムからなるInMgOの形態と、で分散していることが好ましい。このような形態で分散することにより、ターゲット1のバルク抵抗が大きくなりすぎず、スパッタリング時に、放電が安定する。
本実施例1のターゲット1における酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムが、上記六方晶層状化合物と、InMgOと、いう形態で分散していることを、X線回折により確認した。尚、スパッタリング用ターゲット1中の酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムが分散している上記のような形態は、X線回折により得られる結晶ピークに基づき、確認した。
なお、酸化インジウム及び酸化亜鉛からなる上記六方晶層状化合物は、例えば、InZn、InZn、InZn等、一般式がIn(ZnO)(ここでmは、3〜20の整数である。)で表されることが好ましい。
このような形態で分散することにより、ターゲット1のバルク抵抗が、10mΩcm未満となり、安定したスパッタリングが可能となる。また、このターゲット1を用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールは発生しなかった(図1)。
透明導電膜1a
得られたターゲット1をDCスパッタリング装置に装着した後、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜1aを成膜した。成膜した透明導電膜1aの比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定された比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜1aについて、X線回折を測定した結果、ピークは観測されず非晶質であることが判明した。また、この透明導電膜1aについて、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣は発生しなかった(図1)。
このように本実施例1では、非晶質でありながら、400〜450nmにおける光線透過率が改善された透明導電膜1aが得られた。
ターゲット2
平均粒経が1μm以下のIn粉末と、平均粒経が1μm以下のZnO粉末と、平均粒経が1μm以下のMgO粉末と、の混合割合が異なる点を除き、上記実施例1と同様の方法で、上記粉末を混合し、成形し、焼結することにより、焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度を、上記実施例1と同様の方法により求めた。求めた相対密度は、図1に示されている。
また、上記実施例1と同様に、得られた焼結体中のZnとMgの含有量をICP発光分析法で定量分析したところ、原料粉末を混合する際の仕込み組成が、焼結体中でも維持されていることが確認できた。この時、確認した焼結体中の具体的な組成比率の値は、図1に示されている。
次に、上記実施例1と同様の方法で、この焼結体のスパッタ面にバッキングプレートを貼り合わせて、スパッタリング用ターゲット2を製造した。さらに、上記実施例1と同様の方法で、このターゲット2のバルク抵抗を求めた。求めたバルク抵抗の値は、図1に示されている。また、このターゲット2を用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールは発生しなかった(図1)。
また、本実施例2のスパッタリング用ターゲット2における酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムが、上記実施例1と同様の形態の六方晶層状化合物と、InMgOと、いう形態で存在していることを、X線回折により確認した。
透明導電膜2a
得られたターゲット2をDCスパッタリング装置に装着した後、上記実施例1と同様に、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜2aを成膜した。成膜した透明導電膜2aの比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定した比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜2aについて、X線回折を測定した結果、ピークは観測されず非晶質であることが判明した。また、この透明導電膜2aについて、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣は発生しなかった(図1)。
このように本実施例2においても、上記実施例1と同様に、非晶質でありながら、400〜450nmにおける光線透過率が改善された透明導電膜2aが得られた。
ターゲット3
平均粒経が1μm以下のIn粉末と、平均粒経が1μm以下のZnO粉末と、平均粒経が1μm以下のMgO粉末と、の混合割合が異なる点を除き、上記実施例1及び2と同様の方法で、上記粉末を混合し、成形し、焼結することにより、焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度を、上記実施例1及び2と同様の方法により求めた。この時、求めた相対密度は、図1に示されている。
また、上記実施例1及び2と同様に、得られた焼結体中のZnとMgの含有量をICP発光分析法で定量分析したところ、原料粉末を混合する際の仕込み組成が、焼結体中でも維持されていることが確認できた。この時、確認した焼結体中の具体的な組成比率の値は、図1に示されている。
次に、上記実施例1及び2と同様の方法で、この焼結体のスパッタ面にバッキングプレートを貼り合わせて、スパッタリング用ターゲット3を製造した。さらに、上記実施例1及び2と同様の方法で、このターゲット3のバルク抵抗を求めた。求めたバルク抵抗の値は、図1に示されている。また、このターゲット3を用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールは発生しなかった(図1)。
また、本実施例3のスパッタリング用ターゲット3における酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムが、上記実施例1及び2と同様の形態の六方晶層状化合物と、InMgOと、いう形態で存在していることを、X線回折により確認した。
透明導電膜3a
得られたターゲット3をDCスパッタリング装置に装着した後、上記実施例1及び2と同様に、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜3aを成膜した。成膜した透明導電膜3aの比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定した比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜3aについて、X線回折を測定した結果、ピークは観測されず非晶質であることが判明した。また、この透明導電膜3aについて、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣は発生しなかった(図1)。
このように本実施例3においても、上記実施例1及び2と同様に、非晶質でありながら、400〜450nmにおける光線透過率が改善された透明導電膜3aが得られた。
ターゲット4
平均粒経が1μm以下のIn粉末と、平均粒経が1μm以下のZnO粉末と、平均粒経が1μm以下のMgO粉末と、の混合割合が異なる点を除き、上記実施例1〜3と同様の方法で、上記粉末を混合し、成形し、焼結することにより、焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度を、上記実施例1〜3と同様の方法により求めた。求めた相対密度は、図1に示されている。
また、上記実施例1〜3と同様に、得られた焼結体中のZnとMgの含有量をICP発光分析法で定量分析したところ、原料粉末を混合する際の仕込み組成が、焼結体中でも維持されていることが確認できた。この時、確認した焼結体中の具体的な組成比率の値は、図1に示されている。
次に、上記実施例1〜3と同様の方法で、この焼結体のスパッタ面にバッキングプレートを貼り合わせて、スパッタリング用ターゲット4を製造した。さらに、上記実施例1〜3と同様の方法で、このターゲット4のバルク抵抗を求めた。求めたバルク抵抗の値は、図1に示されている。また、このターゲット4を用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールは発生しなかった(図1)。
また、本実施例4のスパッタリング用ターゲット4における酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムが、上記実施例1〜3と同様の形態の六方晶層状化合物と、InMgOと、いう形態で存在していることを、X線回折により確認した。
透明導電膜4a
得られたターゲット2をDCスパッタリング装置に装着した後、上記実施例1と同様に、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜4aを成膜した。成膜した透明導電膜4aの比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定した比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜4aについて、X線回折を測定した結果、ピークは観測されず非晶質であることが判明した。また、この透明導電膜4aについて、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣は発生しなかった(図1)。
このように本実施例4においても、上記実施例1〜3と同様に、非晶質でありながら、400〜450nmにおける光線透過率が改善された透明導電膜4aが得られた。
ターゲット5
さらに、SnO粉末を所定の割合で混合した点を除き、上記実施例1と同様の組成比率で、上記粉末を混合し、成形し、焼結することにより、焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度を、上記実施例1〜4と同様の方法により求めた。求めた相対密度は、図1に示されている。
また、上記実施例1〜4と同様の方法で、得られた焼結体中のZn、Mg、及びSnの含有量をICP発光分析法で定量分析したところ、原料粉末を混合する際の仕込み組成が、焼結体中でも維持されていることが確認できた。この時、確認した焼結体中の具体的な組成比率の値は、図1に示されている。
尚、本特許において、Mとは、Sn、Zr、及びGeからなる群を意味し、特に図1中においてMとは、Sn、Zr、及びGeのいずれかを表す。また、[M]は、焼結体中の単位体積当たりのSn、Zr、及びGeの原子の数を表す。
次に、上記実施例1〜4と同様の方法で、この焼結体のスパッタ面にバッキングプレートを貼り合わせて、スパッタリング用ターゲット5を製造した。さらに、上記実施例1〜4と同様の方法で、このターゲット5のバルク抵抗を求めた。求めたバルク抵抗の値は、図1に示されている。また、このターゲット5を用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールは発生しなかった(図1)。
また、本実施例5のスパッタリング用ターゲット5における酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムが、上記実施例1〜4と同様の形態の六方晶層状化合物と、InMgOと、いう形態で存在していることを、X線回折により確認した。
透明導電膜5a
得られたターゲット5をDCスパッタリング装置に装着した後、上記実施例1〜4と同様に、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜5aを成膜した。成膜した透明導電膜5aの比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定した比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜5aについて、X線回折を測定した結果、ピークは観測されず非晶質であることが判明した。また、この透明導電膜5aについて、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣は発生しなかった(図1)。
このように本実施例5においても、上記実施例1〜4と同様に、非晶質でありながら、400〜450nmにおける光線透過率が改善された透明導電膜5aが得られた。
ターゲット6
平均粒経が1μm以下のIn粉末と、平均粒経が1μm以下のZnO粉末と、平均粒経が1μm以下のMgO粉末と、SnO粉末と、の混合割合が異なる点を除き、上記実施例5と同様の方法で、上記粉末を混合し、成形し、焼結することにより、焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度を、上記実施例1〜5と同様の方法により求めた。求めた相対密度は、図1に示されている。
また、上記実施例5と同様に、得られた焼結体中のZn、Mg、及びSnの含有量をICP発光分析法で定量分析したところ、原料粉末を混合する際の仕込み組成が、焼結体中でも維持されていることが確認できた。この時、確認した焼結体中の具体的な組成比率の値は、図1に示されている。
次に、上記実施例1〜5と同様の方法で、この焼結体のスパッタ面にバッキングプレートを貼り合わせて、スパッタリング用ターゲット6を製造した。さらに、上記実施例1〜5と同様の方法で、このターゲット6のバルク抵抗を求めた。求めたバルク抵抗の値は、図1に示されている。また、このターゲット6を用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールは発生しなかった(図1)。
また、本実施例6のスパッタリング用ターゲット6における酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムが、上記実施例1〜5と同様の形態の六方晶層状化合物と、InMgOと、いう形態で存在していることを、X線回折により確認した。
透明導電膜6a
得られたターゲット6をDCスパッタリング装置に装着した後、上記実施例1〜5と同様に、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜6aを成膜した。成膜した透明導電膜6aの比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定した比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜6aについて、X線回折を測定した結果、ピークは観測されず非晶質であることが判明した。また、この透明導電膜6aについて、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣は発生しなかった(図1)。
このように本実施例6においても、上記実施例1〜5と同様に、非晶質でありながら、400〜450nmにおける光線透過率が改善された透明導電膜6aが得られた。
ターゲット7
平均粒経が1μm以下のIn粉末と、平均粒経が1μm以下のZnO粉末と、平均粒経が1μm以下のMgO粉末と、SnO粉末と、の混合割合が異なる点を除き、上記実施例5及び6と同様の方法で、上記粉末を混合し、成形し、焼結することにより、焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度を、上記実施例1〜6と同様の方法により求めた。求めた相対密度は、図1に示されている。
また、上記実施例5及び6と同様に、得られた焼結体中のZn、Mg、及びSnの含有量をICP発光分析法で定量分析したところ、原料粉末を混合する際の仕込み組成が、焼結体中でも維持されていることが確認できた。この時、確認した焼結体中の具体的な組成比率の値は、図1に示されている。
次に、上記実施例1〜6と同様の方法で、この焼結体のスパッタ面にバッキングプレートを貼り合わせて、スパッタリング用ターゲット7を製造した。さらに、上記実施例1〜6と同様の方法で、このターゲット7のバルク抵抗を求めた。求めたバルク抵抗の値は、図1に示されている。また、このターゲット7を用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールは発生しなかった(図1)。
また、本実施例7のスパッタリング用ターゲット7における酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムが、上記実施例1〜6と同様の形態の六方晶層状化合物と、InMgOと、いう形態で存在していることを、X線回折により確認した。
透明導電膜7a
得られたターゲット7をDCスパッタリング装置に装着した後、上記実施例1〜6と同様に、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜7aを成膜した。成膜した透明導電膜7aの比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定した比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜7aについて、X線回折を測定した結果、ピークは観測されず非晶質であることが判明した。また、この透明導電膜7aについて、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣は発生しなかった(図1)。
このように本実施例7においても、上記実施例1〜6と同様に、非晶質でありながら、400〜450nmにおける光線透過率が改善された透明導電膜7aが得られた。
ターゲット8
さらに、ZrO粉末を所定の割合で混合した点を除き、上記実施例4と同様の組成比率で、上記粉末を混合し、成形し、焼結することにより、焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度を、上記実施例1〜7と同様の方法により求めた。求めた相対密度は、図1に示されている。
また、上記実施例1〜7と同様の方法で、得られた焼結体中のZn、Mg、及びZrの含有量をICP発光分析法で定量分析したところ、原料粉末を混合する際の仕込み組成が、焼結体中でも維持されていることが確認できた。この時、確認した焼結体中の具体的な組成比率の値は、図1に示されている。
次に、上記実施例1〜7と同様の方法で、この焼結体のスパッタ面にバッキングプレートを貼り合わせて、スパッタリング用ターゲット8を製造した。さらに、上記実施例1〜7と同様の方法で、このターゲット8のバルク抵抗を求めた。求めたバルク抵抗の値は、図1に示されている。また、このターゲット8を用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールは発生しなかった(図1)。
また、本実施例8のスパッタリング用ターゲット8における酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムが、上記実施例1〜7と同様の形態の六方晶層状化合物と、InMgOと、いう形態で存在していることを、X線回折により確認した。
透明導電膜8a
得られたターゲット8をDCスパッタリング装置に装着した後、上記実施例1〜7と同様に、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜8aを成膜した。成膜した透明導電膜8aの比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定した比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜8aについて、X線回折を測定した結果、ピークは観測されず非晶質であることが判明した。また、この透明導電膜8aについて、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣は発生しなかった(図1)。
このように本実施例8においても、上記実施例1〜7と同様に、非晶質でありながら、400〜450nmにおける光線透過率が改善された透明導電膜8aが得られた。
ターゲット9
ZrO粉末の代わりに、GeO粉末を混合した点を除き、上記実施例8と同様の組成比率で、上記粉末を混合し、成形し、焼結することにより、焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度を、上記実施例1〜8と同様の方法により求めた。求めた相対密度は、図1に示されている。
また、上記実施例1〜8と同様の方法で、得られた焼結体中のZn、Mg、及びGeの含有量をICP発光分析法で定量分析したところ、原料粉末を混合する際の仕込み組成が、焼結体中でも維持されていることが確認できた。この時、確認した焼結体中の具体的な組成比率の値は、図1に示されている。
次に、上記実施例1〜8と同様の方法で、この焼結体のスパッタ面にバッキングプレートを貼り合わせて、スパッタリング用ターゲット9を製造した。さらに、上記実施例1〜8と同様の方法で、このターゲット9のバルク抵抗を求めた。求めたバルク抵抗の値は、図1に示されている。また、このターゲット9を用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールは発生しなかった(図1)。
また、本実施例9のスパッタリング用ターゲット9における酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムが、上記実施例1〜8と同様の形態の六方晶層状化合物と、InMgOと、いう形態で存在していることを、X線回折により確認した。
透明導電膜9a
得られたターゲット9をDCスパッタリング装置に装着した後、上記実施例1〜8と同様に、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜9aを成膜した。成膜した透明導電膜9aの比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定した比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜9aについて、X線回折を測定した結果、ピークは観測されず非晶質であることが判明した。また、この透明導電膜9aについて、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣は発生しなかった(図1)。
このように本実施例9においても、上記実施例1〜8と同様に、非晶質でありながら、400〜450nmにおける光線透過率が改善された透明導電膜9aが得られた。
本発明のスパッタリング用ターゲットは、所定の割合で、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウム、の3成分を含有する点以外は、特に制限されない。したがって、例えば、公知の方法を用いて、上記3成分からなる粉体を混合し、成形し、焼結することにより、製造することができる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記3成分以外の成分を含有することも好ましい。例えば、上記実施例5〜9においては、スパッタリング用ターゲットが、上記3成分の他に、SnO、ZrO、又はGeO、を所定の割合で含有しているが、これら以外の成分として、Ga、又は、CeO等を含有することも好ましい。また、上記3成分の他に、SnO、ZrO、GeO、Ga、及びCeO等から選ばれる2以上の成分を同時に含有することも好ましい。
尚、ターゲット中にGaを添加した場合、InGaMgO、InGaMgや、InGaMgZnO、InGaMgZn、InGaZnO、InGaZnO、InGaZn、InGaZn、InGaZn、InGaZn、InGaZn、InGaZn10、等の複合酸化物の形態で分散することが好ましい。
本実施例10のスパッタリング用ターゲットが、、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウム、の3成分の他に、上記SnO、ZrO、GeO、Ga、CeO等の成分を含有する場合においても、本実施例10のスパッタリング用ターゲットは、上記実施例1〜9のスパッタリング用ターゲットと同様の作用効果を奏する。また、このようなスパッタリング用ターゲットを用いて、成膜した透明導電膜も、上記実施例1〜9の透明導電膜と同様の作用効果を奏する。
『比較例1』
ITOターゲット
市販のITOターゲット、すなわち、酸化インジウム及び酸化スズからなるスパッタリング用ターゲットを用いて、上記実施例1〜9と同様の処理・操作を行った。
上記実施例1〜9と同様の方法で、ITOターゲットの相対密度、組成比率、バルク抵抗を求めた。求めた相対密度、組成比率、バルク抵抗の値は、図1に示されている。なお、図1中の[X]は、ターゲット中の単位体積当たりのSn又はZnの原子の数を表す。また、このITOターゲットを用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールが発生した(図1)。
透明導電膜
このITOターゲットをDCスパッタリング装置に装着した後、上記実施例1〜9と同様に、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜を成膜した。成膜した透明導電膜の比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定した比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜について、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣が発生した(図1)。
このように、比較例1の透明導電膜について、弱酸を用いてエッチングを行うと、エッチング残渣が発生した。
『比較例2』
IZOターゲット
市販のIZO(インジウム−亜鉛酸化物:「IZO」は登録商標)ターゲット、すなわち、酸化インジウム及び酸化亜鉛からなるスパッタリング用ターゲットを用いて、上記実施例1〜9と同様の処理・操作を行った。
上記実施例1〜9と同様の方法で、IZOターゲットの相対密度、組成比率、バルク抵抗を求めた。求めた相対密度、組成比率、バルク抵抗の値は、図1に示されている。また、このIZOターゲットを用いて、スパッタリングを行ったところ、ノジュールが発生した(図1)。
透明導電膜
このIZOターゲットをDCスパッタリング装置に装着した後、上記実施例1〜9と同様に、200℃で、スライドガラス上に、130nmの膜厚の透明導電膜を成膜した。成膜した透明導電膜の比抵抗、及び光線透過率(400nm、450nm)を測定した。測定した比抵抗、及び光線透過率の値は、図1に示されている。また、この透明導電膜について、弱酸を用いてエッチングを行ったところ、残渣は発生しなかった(図1)。
このように、比較例2の透明導電膜においては、400nm〜450nmの光線透過率は、それほど高くならなかった。
本実施例1〜9及び比較例1、2におけるスパッタリング用ターゲット及び透明導電膜の物性パラメータを表す図である。 本実施例1におけるターゲット1のX線チャートを表す図である。

Claims (5)

  1. 酸化インジウムと、
    酸化亜鉛と、
    酸化マグネシウムと、
    を含み、[In]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.74〜0.94であり、[Zn]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.05〜0.25であり、[Mg]/([In]+[Zn]+[Mg])=0.01〜0.20であることを特徴とする非晶質透明導電膜。ここで、[In]は、単位体積当たりのインジウム原子の数を表し、[Zn]は、単位体積当たりの亜鉛原子の数を表し、[Mg]は、単位体積当たりのマグネシウム原子の数を表す。
  2. さらに、正4価の金属酸化物を含むことを特徴とする請求頃に記載の非晶質透明導電膜。
  3. 正4価の前記金属酸化物が、SnO、ZrO、GeO、CeOであることを特徴とする請求項に記載の非晶質透明導電膜。
  4. SnO、ZrO、GeO、CeO、及びGaからなる群Mから選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項に記載の非晶質透明導電膜。
  5. 前記群Mから選ばれる1種又は2種以上の前記金属酸化物の添加量が、[M]/[全金属]=0.0001〜0.15であることを特徴とする請求項に記載の非晶質透明導電膜。ここで、[M]は、単位体積当たりの前記群Mから選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物中の金属、すなわち単位体積当たりの、Sn、Zr、Ge、Ce、Gaのいずれか1種又は2種以上の原子の数を表し、[全金属]は、単位体積当たりの全金属、すなわち単位体積当たりの、In、Zn、Mgと、前記群Mから選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物中の金属と、の原子の総数を表す。
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