したがって、細胞増殖および固形腫瘍の進行においてP−カドヘリンが有すると思われる中心的な役割を考慮すると、様々な癌の患者に治療上の利益をもたらすことができる、P−カドヘリンに対する抗体を生成することが望ましい。
本発明の一態様は、P−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分であり、抗体またはその抗原結合部分は、下記のA)からK)で記載する複数の機能的特性のうち少なくとも1つを有する。
A)例えば、一実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、E−カドヘリン(KD(E))よりP−カドヘリン(KD(P))に対して大きい結合親和性を有する。一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、1.5以上のKD(E)/KD(P)を有する。さらなる実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、2以上の、3以上の、5以上の、10以上の、20以上の、50以上の、100以上の、200以上の、500以上の、または1000以上のKD(E)/KD(P)を有する。KD(E)値が0など非常に小さくなり得るので、通常はKD(E)/KD(P)の値に上限はない。しかし、実際的な目的で、KD(E)/KD(P)の上限は、1×106となり得る。P−カドヘリンとE−カドヘリンの両方に対するそのようなKD値は、ELISA、RIA、フローサイトメトリーやBIACORE(商標)などの表面プラズモン共鳴など、当業者に知られている任意の技術によって測定することができる。
B)他の実施形態では、抗体またはその部分は、表面プラズモン共鳴によって測定される1000nM以下のKDでP−カドヘリンと結合する。さらなる実施形態では、抗体または部分は、表面プラズモン共鳴によって測定される500nM未満、100nM未満、50nM未満、20nM未満、10nM未満、1nM未満、500pM未満、または100pM未満のKDでP−カドヘリンと結合する。通常はKDの値に下限はない。しかし、実際的な目的で、下限は約1pMであると想定することができる。
C)他の実施形態では、抗体またはその部分は、表面プラズモン共鳴によって測定される0.01s−1以下のP−カドヘリンに対する解離速度(Koff)を有する。例えば、特定の実施形態では、抗体または部分は、0.005s−1未満の、0.004s−1未満の、0.003s−1未満の、0.002s−1未満の、または0.001s−1未満の、P−カドヘリンに対するKoffを有する。通常はKoffの値に下限はない。しかし、実際的な目的で、下限は約1×10−7s−1であると想定することができる。
D)他の実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその部分は、P−カドヘリン依存性細胞接着アッセイによって測定される100nM以下のIC50を有する。さらなる実施形態では、前記IC50は、50nM未満、40nM未満、20nM未満、10nM未満、1nM未満、500pM未満、200pM未満、100pM未満、または10pM未満であり、それはP−カドヘリン依存性細胞接着アッセイによって測定される。通常は、P−カドヘリン依存性細胞接着アッセイによって測定されるIC50の値に下限はない。しかし、実際的な目的で、下限は約1pMであると想定することができる。
E)他の実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその部分は、P−カドヘリン依存性細胞凝集アッセイによって測定される100nM以下のIC50を有する。さらなる実施形態では、前記IC50は、50nM未満、40nM未満、20nM未満、10nM未満、1nM未満、500pM未満、200pM未満、100pM未満、または1pM未満であり、それはP−カドヘリン依存性細胞凝集アッセイによって測定される。通常は、P−カドヘリン依存性細胞凝集アッセイによって測定されるIC50の値に下限はない。しかし、実際的な目的で、下限は約1pMであると想定することができる。
F)他の実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその部分は、P−カドヘリン依存性スフェロイド破壊アッセイで、IgGが存在しない対照試料と比較してスフェロイド破壊を少なくとも2倍増大させる。さらなる実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその部分は、P−カドヘリン依存性スフェロイド破壊アッセイで、IgGが存在しない対照試料と比較して、スフェロイド破壊を少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも6倍、少なくとも10倍、または少なくとも15倍増大させる。
G)他の実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその部分は、P−カドヘリンとの結合について、194−e06;194−a02;194−b09;195−e11;194−g09;196−h02;194−e01;196−d10;196−g03;196−e06;195−a09;198−a09;200−h06;g−194−b09;g−194−g09;g−196−g03;g−196−h02;g−194−e01;g−194−e06;129−1c4;およびg−129−1c4からなる群から選択される抗体と競合する。
H)他の実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその部分は、P−カドヘリンとの結合について、194−e06;194−a02;194−b09;195−e11;194−g09;196−h02;194−e01;196−d10;196−g03;196−e06;195−a09;198−a09;200−h06;g−194−b09;g−194−g09;g−196−g03;g−196−h02;g−194−e01;g−194−e06;129−1c4;およびg−129−1c4からなる群から選択される抗体と交差競合する。
I)他の実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその部分は、194−e06;194−a02;194−b09;195−e11;194−g09;196−h02;194−e01;196−d10;196−g03;196−e06;195−a09;198−a09;200−h06;g−194−b09;g−194−g09;g−196−g03;g−196−h02;g−194−e01;g−194−e06;129−1c4;およびg−129−1c4からなる群から選択される抗体と同じP−カドヘリンのエピトープと結合する。
J)他の実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその部分は、194−e06;194−a02;194−b09;195−e11;194−g09;196−h02;194−e01;196−d10;196−g03;196−e06;195−a09;198−a09;200−h06;g−194−b09;g−194−g09;g−196−g03;g−196−h02;g−194−e01;g−194−e06;129−1c4;およびg−129−1c4からなる群から選択される抗体と実質的に同じKDでP−カドヘリンと結合する。
K)他の実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその部分は、194−e06;194−a02;194−b09;195−e11;194−g09;196−h02;194−e01;196−d10;196−g03;196−e06;195−a09;198−a09;200−h06;g−194−b09;g−194−g09;g−196−g03;g−196−h02;g−194−e01;g−194−e06;129−1c4;およびg−129−1c4からなる群から選択される抗体と実質的に同じKoffでP−カドヘリンと結合する。
本発明のさらなる態様は、配列番号1〜13および320〜325のいずれか1つとアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVHドメインを含む、前記のA)からK)で記載した機能的特性のうち少なくとも1つを有する抗体またはその抗原結合部分である。一実施形態では、前記VHドメインは、配列番号1〜12および320〜325のいずれか1つとアミノ酸配列が少なくとも91%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である。
さらなる実施形態では、抗体またはその部分は、前記のA)からK)で記載した機能的特性のうち少なくとも1つを有し、配列番号1〜13および320〜325のいずれか1つであり、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換を有することにより配列番号1〜13および320〜325のいずれか1つと異なるVHドメインを含む。例えば、VHドメインは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の保存的アミノ酸置換により配列番号1〜13および320〜325のいずれか1つと異なる可能性がある。さらなる実施形態では、これらの保存的アミノ酸置換のいずれかは、CDR1、CDR2、および/またはCDR3領域中で起こり得る。
本発明のさらなる態様は、配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つとアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVLドメインを含む、前記のA)からK)で記載した機能的特性のうち少なくとも1つを有する抗体またはその抗原結合部分である。一実施形態では、前記VLドメインは、配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つとアミノ酸配列が少なくとも91%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である。
さらなる実施形態では、抗体またはその部分は、前記のA)からK)で記載した機能的特性のうち少なくとも1つを有し、配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つであり、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換を有することにより配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つと異なるVLドメインを含む。例えば、VLドメインは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の保存的アミノ酸置換により配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つと異なる可能性がある。さらなる実施形態では、これらの保存的アミノ酸置換のいずれかは、CDR1、CDR2、および/またはCDR3領域中で起こり得る。
本発明の他の態様は、前記のA)からK)で記載した機能的特性のうち少なくとも1つを有する抗体またはその抗原結合部分であり、そのVLおよびVHドメインは、抗体194−e06;194−a02;194−b09;195−e11;194−g09;196−h02;194−e01;196−d10;196−g03;196−e06;195−a09;198−a09;200−h06;g−194−b09;g−194−g09;g−196−g03;g−196−h02;g−194−e01;g−194−e06;129−1c4;およびg−129−1c4のいずれか1つのVLおよびVHドメインとアミノ酸配列がそれぞれ少なくとも90%同一である。例えば、VLおよびVHドメインは、抗体194−e06;194−a02;194−b09;195−e11;194−g09;196−h02;194−e01;196−d10;196−g03;196−e06;195−a09;198−a09;200−h06;g−194−b09;g−194−g09;g−196−g03;g−196−h02;g−194−e01;g−194−e06;129−1c4;およびg−129−1c4のいずれか1つのVLおよびVHドメインとアミノ酸配列がそれぞれ少なくとも91%、93%、95%、97%、99%または100%同一である。
本発明の他の態様は、a)配列番号1で示されるVHドメイン、および配列番号14で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;b)配列番号2で示されるVHドメイン、および配列番号14で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;c)配列番号2で示されるVHドメイン、および配列番号15で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;d)配列番号3で示されるVHドメイン、および配列番号16で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;e)配列番号4で示されるVHドメイン、および配列番号17で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;f)配列番号4で示されるVHドメイン、および配列番号23で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;g)配列番号5で示されるVHドメイン、および配列番号18で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;h)配列番号6で示されるVHドメイン、および配列番号23で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;i)配列番号7で示されるVHドメイン、および配列番号23で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;j)配列番号8で示されるVHドメイン、および配列番号23で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;k)配列番号9で示されるVHドメイン、および配列番号23で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;l)配列番号10で示されるVHドメイン、および配列番号19で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;m)配列番号11で示されるVHドメイン、および配列番号20で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;n)配列番号12で示されるVHドメイン、および配列番号21で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;o)配列番号13で示されるVHドメイン、および配列番号22で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;p)配列番号320で示されるVHドメイン、および配列番号326で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;q)配列番号321で示されるVHドメイン、および配列番号327で示されるVLドメインを含む抗体またはその抗原結合部分;r)配列番号322で示されるVHドメイン、および配列番号328で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;s)配列番号323で示されるVHドメイン、および配列番号329で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;t)配列番号324で示されるVHドメイン、および配列番号330で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分;ならびにu)配列番号325で示されるVHドメイン、および配列番号331で示されるVLドメインを含む抗体またはその部分からなる群から選択される抗体またはその抗原結合部分である。
さらなる実施形態では、上記のa)〜u)の群で記載した抗体またはその部分のいずれかで、VHおよび/またはVLドメインは、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換により、その中に列挙した特定の配列番号と異なる可能性がある。例えば、VHおよび/またはVLドメインは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の保存的アミノ酸置換により、列挙した配列番号と異なる可能性がある。さらなる実施形態では、これらの保存的アミノ酸置換のいずれかは、CDR1、CDR2、および/またはCDR3領域中で起こり得る。
他の実施形態では、本発明は、前記のA)からK)で記載した機能的特性のうち少なくとも1つを有する抗体またはその抗原結合部分を提供し、それは、配列番号1〜13および320〜325のいずれか1つから独立に選択されるVHドメイン、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換により配列番号1〜13および320〜325のいずれか1つと異なる配列を含み、配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つから独立に選択されるVLドメイン、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換により配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つと異なる配列をさらに含む。例えば、VHおよびVLドメインは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の保存的アミノ酸置換により、配列番号1〜13、320〜325、14〜23、および326〜331のいずれか1つとそれぞれ独立に異なる可能性がある。
さらなる実施形態では、本発明は、前記のA)からK)で記載した機能的特性のうち少なくとも1つを有する抗体またはその抗原結合部分を提供し、前記抗体または部分は、配列番号26〜37および91〜256のいずれか1つから選択されるVHCDR3、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換により配列番号26〜37および91〜256のいずれか1つと異なる配列を含む。例えば、VHCDR3は、1、2、3、または4個の保存的アミノ酸置換により、配列番号26〜37および91〜256のいずれか1つと異なる可能性がある。
さらなる実施形態では、本発明は、前記のA)からK)で記載した機能的特性のうち少なくとも1つを有する抗体またはその抗原結合部分を提供し、前記抗体または抗原結合部分は、配列番号40〜47および257〜319のいずれか1つから選択されるVLCDR3、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換により配列番号40〜47および257〜319のいずれか1つと異なる配列を含む。例えば、VLCDR3は、1、2、3、4または5個の保存的アミノ酸置換により、配列番号40〜47および257〜319のいずれか1つと異なる可能性がある。
さらなる実施形態では、本発明は、抗体またはその抗原結合部分を提供し、前記抗体または抗原結合部分は、配列番号24で示されるVHCDR1、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換により配列番号24と異なる配列;配列番号25で示されるVHCDR2、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換により配列番号25と異なる配列;ならびに配列番号26〜37および91〜256のいずれか1つから独立に選択されるVHCDR3、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換により配列番号26〜37および91〜256のいずれか1つと異なる配列を含む。例えば、上記に挙げたVHのCDR1、CDR2、およびCDR3配列は、1、2、3、4または5個の保存的アミノ酸置換により、列挙したそれぞれの配列番号とそれぞれ独立に異なる可能性がある。
さらなる実施形態では、本発明は、抗体またはその抗原結合部分を提供し、前記抗体または抗原結合部分は、配列番号38で示されるVLCDR1、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換により配列番号38と異なる配列;配列番号39で示されるVLCDR2、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換により配列番号39と異なる配列;ならびに配列番号40〜47および257〜319のいずれか1つから独立に選択されるVLCDR3、または少なくとも1個の保存的アミノ酸置換により配列番号40〜47および257〜319のいずれか1つと異なる配列を含む。例えば、上記に挙げたVLのCDR1、CDR2、およびCDR3配列は、1、2、3、4または5個の保存的アミノ酸置換により、列挙したそれぞれの配列番号とそれぞれ独立に異なる可能性がある。
本発明は、抗体またはその抗原結合部分をさらに提供し、前記抗体または抗原結合部分は、配列番号24で示されるVHCDR1;配列番号25で示されるVHCDR2;配列番号26〜37および91〜256のいずれか1つから選択されるVHCDR3;配列番号38で示されるVLCDR1;配列番号39で示されるVLCDR2;ならびに配列番号40〜47および257〜319のいずれか1つから選択されるVLCDR3を含む。さらなる実施形態では、挙げたVHおよびVLのCDR1、CDR2、およびCDR3配列はまた、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換により、上記で列挙した特定の配列番号とそれぞれ独立に異なる可能性もある。例えば、CDR1、CDR2、およびCDR3配列は、1、2、3、4、または5個の保存的アミノ酸置換により、上記で列挙したそれぞれの特定の配列番号とそれぞれ独立に異なる可能性がある。
本発明は、抗体またはその抗原結合部分をさらに提供し、前記抗体または抗原結合部分は、抗体194−e06;194−a02;194−b09;195−e11;194−g09;196−h02;194−e01;196−d10;196−g03;196−e06;195−a09;198−a09;200−h06;g−194−b09;g−194−g09;g−196−g03;g−196−h02;g−194−e01;g−194−e06;129−1c4;およびg129−1c4のいずれかの中で認められるVHおよびVLのCDR1、VHおよびVLのCDR2、およびVHおよびVLのCDR3を含む。
本発明は、配列番号1〜13および320〜325のいずれか1つから選択され、または1〜10個の保存的アミノ酸置換により配列番号1〜13および320〜325のいずれか1つと異なるVHドメインを含む抗体またはその抗原結合部分をさらに提供する。
本発明は、配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つから選択され、または1〜10個の保存的アミノ酸置換により配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つと異なるVLドメインを含む抗体またはその抗原結合部分をさらに提供する。
本発明は、配列番号1〜13および320〜325のいずれか1つから独立に選択されるVHドメイン、または1〜10個の保存的アミノ酸置換により配列番号1〜13および320〜325のいずれか1つと異なる配列を含み、配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つから独立に選択されるVLドメイン、または1〜10個の保存的アミノ酸置換により配列番号14〜23および326〜331のいずれか1つと異なる配列をさらに含む抗体またはその抗原結合部分をさらに提供する。
本発明は、抗体またはその抗原結合部分をさらに提供し、前記抗体または抗原結合部分は、配列番号24で示されるVHCDR1、または1〜4個の保存的アミノ酸置換により配列番号24と異なる配列;配列番号25で示されるVHCDR2、または1〜4個の保存的アミノ酸置換により配列番号25と異なる配列;ならびに配列番号26〜37および91〜256のいずれか1つから選択されるVHCDR3、または1〜4個の保存的アミノ酸置換により配列番号26〜37および91〜256のいずれか1つと異なる配列を含む。
本発明は、抗体またはその抗原結合部分をさらに提供し、前記抗体または抗原結合部分は、配列番号38で示されるVLCDR1、または1〜4個の保存的アミノ酸置換により配列番号38と異なる配列;配列番号39で示されるVLCDR2、または1〜4個の保存的アミノ酸置換により配列番号39と異なる配列;ならびに配列番号40〜47および257〜319のいずれか1つから選択されるVLCDR3、または1〜4個の保存的アミノ酸置換により配列番号40〜47および257〜319のいずれか1つと異なる配列を含む。
本発明は、前記のA)からK)で記載した機能的特性のうち少なくとも1つを有する抗体またはその抗原結合部分をさらに提供し、前記抗体または抗原結合部分は、配列番号48で示されるVHFR1;配列番号49で示されるVHFR2;配列番号50〜55のいずれか1つから選択されるVHFR3;配列番号56および57のいずれか1つから選択されるVHFR4;配列番号58および59のいずれか1つから選択されるVLFR1;配列番号60〜62のいずれか1つから選択されるVLFR2;配列番号63〜66のいずれか1つから選択されるVLFR3;ならびに配列番号67で示されるVLFR4を含む。さらなる実施形態では、挙げたVHおよびVLのFR1、FR2、FR3、およびFR4配列はまた、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換により、上記で列挙した特定の配列番号とそれぞれ独立に異なる可能性もある。例えば、FR1、FR2、FR3、およびFR4配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の保存的アミノ酸置換により、上記で列挙したそれぞれの特定の配列番号とそれぞれ独立に異なる可能性がある。さらなる実施形態では、FR1、FR2、FR3、およびFR4配列のいずれかは、それぞれ独立に突然変異して、それぞれの生殖系列フレームワーク配列と適合する可能性がある。
本発明のさらなる実施形態は、IgG、IgM、IgE、IgA、またはIgD分子であり、あるいはそれに由来する、本明細書に記載の抗体のいずれかである。例えば、抗体は、IgG1またはIgG2でよい。例えば、一実施形態では、IgGはIgG1であり、重鎖定常領域は配列番号344を含み、軽鎖定常領域は配列番号345を含み、ただし配列番号344のC末端リシン残基は切断されていてもよい。
他の実施形態は、Fab断片、F(abs’)2断片、Fv断片、単鎖Fv断片、単鎖VH断片、単鎖VL断片、ヒト化抗体、キメラ抗体または二重特異性抗体である、上記に記載の抗体または抗原結合部分のいずれかを提供する。
さらなる実施形態は、本明細書に記載の抗体またはその部分のいずれか、および少なくとも1つのさらなる分子成分を含む誘導体化抗体または抗原結合部分である。例えば、少なくとも1つのさらなる分子成分は、他の抗体(例えば、二重特異性抗体またはdiabody)、検出用作用物質、標識、細胞傷害作用物質、医薬作用物質、および/あるいは抗体または抗体の部分と他の分子(ストレプトアビジン中核領域やポリヒスチジンタグなど)の結合を媒介することができるタンパク質またはペプチドでよい。例えば、本発明の抗体または抗原結合部分を誘導体化することができる有用な検出用作用物質には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、塩化5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニル、フィコエリスリン、ランタニドリン光体などを含めた蛍光化合物がある。抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出に有用な酵素で標識することもできる。さらなる実施形態では、本発明の抗体またはその部分は、ビオチンで、または二次的レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーの対の配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)で標識することもできる。本発明のさらなる実施形態では、抗体またはその部分のいずれかは、ポリエチレングリコール(PEG)、メチルまたはエチル基や、含水炭素基などの化学基で誘導体化することもできる。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているP−カドヘリン抗体または抗原結合部分は、固体支持体と結合している。
いくつかの実施形態では、本発明のP−カドヘリン抗体のいずれかの重鎖のC末端のリシンは切断されている。本発明の様々な実施形態では、P−カドヘリン抗体の重鎖および軽鎖は、N末端シグナル配列を含んでもよい。例えば、重鎖シグナル配列は配列番号346でよく、軽鎖シグナル配列は配列番号347でよい。
さらなる実施形態では、本発明は、ヒト由来である、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分のいずれかに関する。
本発明はまた、上記に記載の抗体またはその抗原結合部分のいずれか、および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物をも提供する。
他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子に関する。特定の一実施形態は、配列番号68〜90および332〜343のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子である。本発明はさらに、本明細書に記載の核酸分子のいずれかを含むベクターに関し、ベクターは、核酸分子と作動的に連結した発現調節配列を含んでもよい。
他の実施形態は、本明細書に記載のベクターのいずれか1つを含み、または本明細書に記載の核酸分子のいずれか1つを含む宿主細胞を提供する。本発明はまた、本明細書に記載の抗体または抗原結合部分のいずれかを産生し、あるいは前記抗体または前記抗原結合部分のいずれかの重鎖または軽鎖を産生する単離細胞系統をも含む。
他の実施形態では、本発明は、P−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分を作製する方法に関し、その方法は、本明細書に記載の宿主細胞または細胞系統を適切な条件下で培養するステップと、前記抗体または抗原結合部分を回収するステップとを含む。
本発明はまた、本明細書に記載の核酸のいずれかを含む非ヒト遺伝子導入動物または遺伝子導入植物にも関し、非ヒト遺伝子導入動物または遺伝子導入植物は前記核酸を発現する。
本発明は、P−カドヘリンと結合する抗体またはその抗原結合部分を単離する方法をさらに提供し、その方法は、本明細書に記載の非ヒト遺伝子導入動物または遺伝子導入植物から抗体を単離するステップを含む。
本発明はまた、その必要がある哺乳動物中の異常細胞増殖を治療する方法をも提供し、その方法は、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分のいずれかあるいは医薬組成物のいずれかを前記哺乳動物に投与するステップを含む。本発明は、P−カドヘリンと結合する抗体またはその抗原結合部分で、その必要がある哺乳動物中の異常細胞増殖を治療する方法をさらに提供し、その方法は、本明細書に記載の核酸分子のいずれかを、前記核酸分子の発現を可能にする適切な条件下で前記哺乳動物に有効量投与するステップとを含む。他の実施形態では、異常細胞増殖を治療する方法は、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、シグナル伝達阻害剤、および抗増殖剤から選択される1つまたは複数の物質を、前記異常細胞増殖を治療する際に一緒に有効となる量投与するステップをさらに含む。特定の実施形態では、前記異常細胞増殖は、癌性のものである。
本発明は、P−カドヘリン依存性細胞凝集を低下させる方法をさらに提供し、その方法は、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分のいずれかあるいは本明細書に記載の医薬組成物のいずれかと細胞を接触させるステップを含む。
本発明の他の態様は、ヒトVH−3ファミリー遺伝子を利用する重鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合部分である。一実施形態では、例えば、ヒトVH−3ファミリー遺伝子はVH−3−23である。
本発明の他の態様は、ヒト抗体である、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分のいずれかを提供する。さらなる態様では、前記抗体または抗原結合部分はヒト組換え抗体である。
本発明はまた、P−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分を作製する方法をも提供し、その方法は、ファージ上のヒト抗体のライブラリーを合成するステップと、P−カドヘリンまたはその抗原性部分でライブラリーをスクリーニングするステップと、P−カドヘリンと結合するファージを単離するステップと、ファージから抗体を得るステップとを含む。
定義および一般的技術
本明細書において別段定義しない限り、本発明に関して使用した科学技術用語は、当業者に通常理解されている意味を含むものとする。さらに、文脈上別段に必要としない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関して使用した命名法およびその技術は、当技術分野で周知のものであり、通常使用されている。
本発明の方法および技術は一般に、別段示さない限り、当技術分野で周知である従来の方法に従って、本明細書全体にわたって引用し論じた種々の一般的参照文献およびより具体的な参照文献に記載されているように実施する。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州Cold Spring Harbor(2000);Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Wiley,John & Sons,Inc.(2002);HarlowおよびLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州Cold Spring Harbor(1998);ならびにColiganら、Short Protocols in Protein Science、Wiley,John & Sons,Inc.(2003)を参照されたい。酵素反応および精製技術は、当技術分野で通常行われるように、または本明細書に記載のように、製造業者の仕様書に従って実施する。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品および製薬化学に関して使用した命名法ならびにその実験手順および技術は、当技術分野で周知のものであり、通常使用されている。化学合成、化学分析、製剤、処方、送達、および患者の治療には標準的な技術を使用する。
基本的な抗体の構造単位は、テトラマーを含むことが知られている。各テトラマーは、ポリペプチド鎖の2つの同一の対からなり、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識に関与する、約100〜120個以上のアミノ酸からなる可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主としてエフェクター機能に関与する定常領域を規定する。ヒト軽鎖は、κおよびλ軽鎖に分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEと定義する。重鎖および軽鎖内で、可変領域および定常領域は、約12個以上のアミノ酸からなる「J」領域によって結合され、重鎖は、約3個以上のアミノ酸からなる「D」領域も含む。一般的には、(すべての目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれている)Fundamental Immunology、第7章(Paul,W.編、第2版、Raven Press、ニューヨーク州(1989))を参照されたい。重鎖/軽鎖の各対の可変領域(VHおよびVL)は、抗体結合部位を形成する。したがって、例えば、完全IgG抗体は、2つの結合部位を有する。二機能性または二重特異性抗体を除いて、2つの結合部位は同じである。
重鎖および軽鎖の可変領域は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって結合される比較的保存されているフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で大きく異なることを指し、特定の各抗体の、その特定の抗原に対する結合および特異性において使用される。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均一に分布しているわけではなく、より高度に保存されているFRで分離されているCDR中に集中している。各対の2つの鎖のCDRはFRによって整列され、それによって特定のエピトープとの結合が可能となる。N末端からC末端までに、軽鎖も重鎖もドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインに対するアミノ酸の割り当ては、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、メリーランド州Bethesda(1987および1991))、またはChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.、196:901〜917(1987);Chothiaら、Nature、342:878〜883(1989)の定義に従っている。
下記の用語は、別段示さない限り、下記の意味を有すると理解されるものとする:
特に別段示さない限り、「P−カドヘリン」という用語はヒトP−カドヘリンを指し、それは内在性膜タンパク質であり、細胞間接着を制御する膜貫通糖タンパク質の古典的カドヘリンファミリーの構成要素である。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれているShimoyamaら、J.Cell Biol.、109(4 Pt 1)、1787〜1794(1989)でヒトP−カドヘリンのクローン化および配列が報告されている。P−カドヘリンという用語は、組換えヒトP−カドヘリンおよび組換えキメラ型のP−カドヘリンを含むものとし、それは、標準的な組換え発現法によって調製することもでき、あるいは商業的に購入することもできる(R&D Systems 861−PC−100)。
特に別段示さない限り、本明細書において「E−カドヘリン」という用語はヒトE−カドヘリンを指し、それは内在性膜タンパク質であり、細胞間接着を制御する膜貫通糖タンパク質の古典的カドヘリンファミリーの構成要素である。E−カドヘリンは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれているTakeichi、Science、251:1451〜1455(1991)で記載されている。E−カドヘリンという用語は、組換えヒトE−カドヘリンおよび組換えキメラ型のE−カドヘリンを含むものとし、それは、標準的な組換え発現法によって調製することもでき、あるいは商業的に購入することもできる(R&D 648−EC−100)。
「ポリペプチド」という用語は、天然または人工タンパク質、タンパク質断片、およびタンパク質の配列のポリペプチド類似体を包含する。ポリペプチドは、単量体でもよく、あるいは重合体でもよい。
「単離タンパク質」、「単離ポリペプチド」または「単離抗体」という用語は、その由来または派生元により、(1)その天然の状態でそれに伴う、天然に結合する構成成分と結合せず、(2)同じ種由来の他のタンパク質を含まず、(3)異なる種由来の細胞によって発現され、または(4)天然に存在しないタンパク質、ポリペプチドまたは抗体である。したがって、化学合成され、またはそれが天然に生じる細胞と異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、天然に結合するその構成成分から「単離」される。タンパク質はまた、当技術分野で周知のタンパク質精製技術を使用して、単離により、天然に結合する構成成分を実質的に含まなくすることもできる。
単離抗体の例には、P−カドヘリンを使用してアフィニティー精製されたP−カドヘリン抗体、およびin vitroで細胞系統によって合成されたP−カドヘリン抗体がある。
タンパク質またはポリペプチドは、少なくとも約60〜75%の試料が単一種のポリペプチドを示すときに、「実質的に純粋」であり、「実質的に均質」であり、または「実質的に精製」されている。ポリペプチドまたはタンパク質は、単量体でもよく、あるいは多量体でもよい。実質的に純粋なポリペプチドまたはタンパク質は、通常約50%、60%、70%、80%または90%w/wのタンパク質試料を含み得、より一般には約95%、好ましくは99%を超えて純粋であり得る。タンパク質の純度および均質性は、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動、その後当技術分野で周知の染色液でゲルを染色した後の単一ポリペプチドバンドの視覚化など、当技術分野で周知であるいくつかの手段によって示すことができる。特定の目的で、HPLCまたは精製の技術分野で周知の他の手段を使用することにより、高解像度をもたらすことができる。
本明細書において「ポリペプチド断片」という用語は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失を有するポリペプチドを指すが、残存するアミノ酸配列は、天然に存在する配列中の対応する位置と同一である。いくつかの実施形態では、断片は、長さが少なくとも5、6、8または10アミノ酸である。他の実施形態では、断片は、長さが少なくとも14、少なくとも20、少なくとも50、あるいは少なくとも70、80、90、100、150または200アミノ酸である。
本明細書において「類似体」または「ポリペプチド類似体」という用語は、何らかの基準アミノ酸配列に対する実質的な同一性を有し、基準アミノ酸配列と実質的に同じ機能または活性を有するセグメントを含むポリペプチドを指す。通常、ポリペプチド類似体は、基準配列に対しての保存的アミノ酸置換(あるいは挿入または欠失)を含む。類似体は、長さが少なくとも20または25アミノ酸であり得、あるいは長さが少なくとも50、60、70、80、90、100、150または200アミノ酸以上であり得、しばしば全長ポリペプチドと同程度の長さであり得る。本発明のいくつかの実施形態は、生殖系列アミノ酸配列からの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17個のポリペプチド断片またはポリペプチド類似抗体を含む。抗体またはイムノグロブリン分子の断片または類似体は、本明細書の教示を受けて、当業者により容易に調製することができる。
特定の実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分に対するアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ、(2)酸化に対する感受性を低下させ、(3)タンパク質複合体形成の結合親和性を変化させ、(4)そのような類似体の他の物理化学的または機能的特性を付与しまたは改変するが、P−カドヘリンに対する特異的結合性は依然として保持しているものである。類似体は、天然に存在するペプチド配列に対する様々な置換を含み得る。例えば、単一または複数のアミノ酸置換、好ましくは保存的アミノ酸置換は、天然に存在する配列中で、例えば、分子間接触を形成する(複数の)ドメインの外側にあるポリペプチドの部分中で行うことができる。アミノ酸置換はまた、分子間接触を形成する(複数の)ドメイン中で行うこともでき、それにより、ポリペプチドの活性を向上させることができる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的な特徴を実質的に変化させるべきでない;例えば、置換アミノ酸は、親配列中に存在するイムノグロブリン結合ドメインを構成する逆方向βシートを変化させ、または親配列を特徴付ける他の型の二次構造を破壊すべきでない。一般に、グリシンおよびプロリンは、逆方向βシート中で使用されない。当技術分野で認められているポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、参照により本明細書に組み込まれているProteins,Structures and Molecular Principles(Creighton編、W.H.Freeman and Company、New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.BrandenおよびJ.Tooze編、Garland Publishing、ニューヨーク州New York(1991));ならびにThorntonら、Nature、354:105(1991)に記載されている。
本明細書において、「抗体」という用語は、イムノグロブリンと同義であり、当技術分野で通常知られている通りに理解されるべきである。具体的には、抗体という用語は、抗体を作製する任意の特定の方法により限定されるものではない。例えば、抗体という用語には、それだけに限らないが、組換え抗体、モノクローナル抗体、およびポリクローナル抗体がある。
抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)という用語は、本明細書において、抗原(例えばP−カドヘリン)と特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって果たすことができることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語の中に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片という、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片という、ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一の腕部のVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、Nature、(1989)341:544〜546);ならびに(vi)単離した相補性決定領域(CDR)がある。さらに、Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされているが、それらは、組換え法を使用して、VLおよびVH領域が対となって一価の分子を形成する単一タンパク質の鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる)としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーにより結合することができる;例えば、Birdら、Science(1988)242:423〜426およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879〜5883(1988)を参照されたい。そのような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語の中に包含されるものとする。diabodyなど他の型の単鎖抗体も包含される。diabodyは、二価の二重特異性抗体であり、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現するが、短すぎて同じ鎖上の2つのドメイン間で対を形成することができないリンカーを使用し、それによって、そのドメインは他の鎖の相補性ドメインと対を形成し、2つの抗原結合部位が生成する(例えば、Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448(1993);Poljakら、Structure、2:1121〜1123(1994)を参照)。
さらに、抗体またはその抗原結合部分は、抗体または抗体部分と1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドの共有結合または非共有結合によって形成された大きな免疫接着分子の一部でもよい。そのような免疫接着分子の例には、テトラマーscFv分子を作製するためのストレプトアビジン中核領域の使用(Kipriyanovら、Human Antibodies and Hybridomas、6:93〜101(1995))、ならびに二価およびビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanovら、Mol.Immunol.、31:1047〜1058(1994))がある。他の例には、抗体由来の1つまたは複数のCDRを共有結合または非共有結合で分子に組み込んで、それを、P−カドヘリンなどの対象とする抗原と特異的に結合する免疫接着因子にする場合がある。そのような実施形態では、(複数の)CDRを、より大きなポリペプチド鎖の一部として組み込むこともでき、他のポリペプチド鎖と共有結合することもでき、あるいは、非共有結合で組み込むこともできる。抗体全体のパパイン消化やペプシン消化などの従来の技術をそれぞれ使用して、抗体全体からFabやF(ab’)2断片などの抗体部分を調製することができる。さらに、本明細書に記載のように、標準的な組換えDNA技術を使用して、抗体、抗体部分および免疫接着分子を得ることができる。
本発明に関して本明細書で「抗体」に言及する場合、その抗原結合部分を使用することもできることを理解されたい。抗原結合部分は、特異的結合において完全抗体と競合する。一般には、Fundamental Immunology、第7章(Paul,W.編、第2版、Raven Press、ニューヨーク州(1989))(すべての目的でその全体が参照により組み込まれている)を参照されたい。抗原結合部分は、組換えDNA技術、あるいは完全抗体の酵素的または化学的切断によって作製することができる。いくつかの実施形態では、抗原結合部分には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、diabody、およびポリペプチドに対して特異的抗原結合性を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含むポリペプチドがある。1つまたは複数の結合部位を有する実施形態では、結合部位は互いに同一でもよく、あるいは異なるものでもよい。
本明細書において、「ヒト抗体」という用語は、可変ドメインおよび定常ドメインの配列がヒト配列である任意の抗体を意味する。その用語は、ヒト遺伝子に由来する配列を有するが、例えば、考えられる免疫原性の低下、親和性の増大、望ましくない折りたたみを引き起こす可能性があるシステインの除去などを行うように変化させている抗体を包含する。その用語はまた、ヒト細胞に特有でないグリコシル化を施すことができる、非ヒト細胞中で組換えにより作製されたそのような抗体をも包含する。これらの抗体は、下記に記載のように、様々な形で調製することができる。
本明細書において「キメラ抗体」という用語は、異なる種由来の抗体を含めて、2つ以上の異なる抗体由来の領域を含む抗体を意味する。例えば、キメラ抗体の1つまたは複数のCDRは、ヒトP−カドヘリン抗体に由来し得る。一例では、ヒト抗体由来のCDRを、マウスやラットなどの非ヒト抗体由来のCDRと組み合わせることができる。他の例では、すべてのCDRがヒトP−カドヘリン抗体に由来し得る。他の例では、複数のヒトP−カドヘリン抗体に由来するCDRを、キメラ抗体中で組み合わせることができる。例えば、キメラ抗体は、第1のヒトP−カドヘリン抗体の軽鎖のCDR1、第2のヒトP−カドヘリン抗体の軽鎖のCDR2および第3のヒトP−カドヘリン抗体の軽鎖のCDR3を含んでよく、重鎖のCDRは、1つまたは複数の他のP−カドヘリン抗体に由来するものでよい。さらに、「キメラ抗体」という用語は、ヒト抗体および非ヒト抗体を含んだ、上記に挙げた任意の組合せを包含するものとする。
本明細書において、「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト由来の抗体を指し、非ヒト種の抗体配列に特徴的なアミノ酸残基が、ヒト抗体の対応する位置で認められる残基と置換されている。この「ヒト化」の工程が、その結果得られる抗体のヒトでの免疫原性を低下させると考えられる。当技術分野で周知の技術を使用して、非ヒト由来の抗体をヒト化できることが理解されるであろう。例えば、Winterら、Immunol.Today、14:43〜46(1993)を参照されたい。対象とする抗体は、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメイン、および/またはフレームワークドメインを対応するヒト配列と置換する組換えDNA技術によって工学的に作製することができる。例えば、WO92/02190、ならびに米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,792号、第5,714,350号、および第5,777,085号を参照されたい。本明細書において、「ヒト化抗体」という用語は、その意味の範囲内で、キメラヒト抗体およびCDR移植抗体を含む。本発明のキメラヒト抗体は、非ヒト種の抗体のVHおよびVL、ならびにヒト抗体のCHおよびCLドメインを含む。本発明のCDR移植抗体は、ヒト抗体のVHおよびVLのCDRを、ヒト以外の動物の抗体のそれぞれVHおよびVLのCDRと置換することによって得られる。
本明細書において、「ELISA」という用語は、酵素結合免疫吸着アッセイを指す。このアッセイは、当業者に周知である。このアッセイの例は、Vaughan,T.J.ら、Nat.Biotech.、14:309〜314(1996)、ならびに本出願の実施例7の中に認めることができる。
本明細書において、「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えばBIACORE(商標)系(Pharmacia Biosensor AB、スウェーデンUppsalaおよびニュージャージー州Piscataway)を使用して、バイオセンサーマトリックス内でのタンパク質濃度の変化を検出することによりリアルタイムの生体特異的相互作用の分析を可能にする光学的現象を指す。さらなる記述については、Jonssonら、Ann.Biol.Clin.、51:19〜26(1993);Jonssonら、Biotechniques、11:620〜627(1991);Jonssonら、J.Mol.Recognit.、8:125〜131(1995);およびJohnssonら、Anal.Biochem.、198:268〜277(1991)を参照されたい。
「KD」という用語は、特定の抗体と抗原の相互作用の結合親和性の平衡定数を指す。抗体は、KDが≦1mM、好ましくは≦100nM、最も好ましくは≦10nMであるとき、抗原と特異的に結合するといえる。KD結合親和定数は、実施例6で論じるように、例えば、BIACORE(商標)系を使用して、表面プラズモン共鳴により測定することができる。
「Koff」という用語は、特定の抗体と抗原の相互作用の解離速度定数を指す。Koff解離速度定数は、実施例6で論じるように、例えば、BIACORE(商標)系を使用して、表面プラズモン共鳴により測定することができる。
本明細書において、「P−カドヘリン依存性細胞接着アッセイ」という用語は、固体支持体上に固定化されている受容体P−カドヘリンと細胞の接着を遮断するP−カドヘリン抗体の能力の測定に使用するアッセイを指す。この型のアッセイは、例えば、プラスチックなどの固体支持体上にP−カドヘリンを固定化することによって実施することができる。次いで、P−カドヘリンを過剰発現する細胞を、P−カドヘリン間の相互作用を介して固体支持体に接着させる。次いで、P−カドヘリン抗体がある状態およびない状態で接着のレベルを定量することができる。次いで、抗体濃度の関数としての接着を使用して、IC50値を決定することができる。実施例3に、P−カドヘリン抗体のIC50値の測定に使用したP−カドヘリン依存性細胞接着アッセイのさらなる詳細を示す。
本明細書において、「P−カドヘリン依存性細胞凝集アッセイ」という用語は、その表面上にP−カドヘリンを発現している細胞の凝集を遮断するP−カドヘリン抗体の能力を測定するアッセイを指す。例えば、この型のアッセイでは、P−カドヘリンを過剰発現する細胞系統を使用することができ、その細胞を懸濁液中に入れ、P−カドヘリン依存性の凝集物を形成させる。次いで、凝集アッセイを使用して、抗体がある状態およびない状態で生じる細胞凝集物のサイズを測定することによりこの凝集を防止するP−カドヘリン抗体の能力を定量する。次いで、P−カドヘリン抗体濃度の関数としての細胞凝集物のサイズを使用して、IC50値を決定することができる。実施例4に、複数のP−カドヘリン抗体のIC50値の測定に使用したP−カドヘリン依存性細胞凝集アッセイのさらなる詳細を示す。
本明細書において、「P−カドヘリン依存性スフェロイド破壊アッセイ」という用語は、予め形成されたP−カドヘリン依存性の細胞凝集物を破壊するP−カドヘリン抗体の能力を測定するアッセイを指す。抗体濃度の関数としての凝集物のサイズ低下を測定することによって、IC50値を決定することができる。実施例5に、P−カドヘリン抗体のIC50値の測定に使用したP−カドヘリン依存性スフェロイド破壊アッセイのさらなる詳細を示す。
本明細書において、「分子選択性」という用語は、関連する抗原に対するものより大きい、特定の抗原に対する抗体の結合親和性を指す。例えば、本発明の抗体は、E−カドヘリンと比べてP−カドヘリンに対して選択的であり、これは、P−カドヘリンに対する抗体の結合親和性が、E−カドヘリンに対するものより少なくとも2倍、例えば4倍、または10倍、または50倍、または100倍以上大きいことを意味する。そのような結合親和性は、当業者に知られている標準的な技術を使用して測定することができる。
「エピトープ」という用語は、イムノグロブリンまたはT細胞受容体またはその他分子と相互作用するものと特異的結合を行うことができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は一般に、アミノ酸や含水炭素や糖側鎖などの化学的に活性な表面の分子群からなり、一般に、特定の三次元構造の特徴ならびに特定の荷電の特徴を有する。エピトープは、「直線的」でもよく、あるいは「立体構造的」でもよい。直線的エピトープでは、タンパク質と相互作用分子(抗体など)との相互作用点がすべて、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に存在する。立体構造的エピトープでは、相互作用点は、互いに離れているタンパク質上のアミノ酸残基をまたいで存在する。抗原上の所望のエピトープを決定した後、例えば、本発明で記載されている技術を使用して、そのエピトープに対する抗体を生成することができる。あるいは、発見する工程の間に、抗体の生成および特徴付けにより、所望のエピトープについての情報が解明される可能性もある。次いで、この情報から、同じエピトープとの結合について抗体を競合的にスクリーニングすることができる。これを実現する手法は、交差競合試験を行って、互いに競合的に結合する抗体、すなわち抗原との結合について競合する抗体を見つけることである。それらの交差競合に基づいて抗体を「ビニング」する高処理能の方法が、国際特許公開WO03/48731に記載されている。
抗体に関して、本明細書において「競合する」という用語は、第1の抗体、またはその抗原結合部分が、結合について第2の抗体、またはその抗原結合部分と競合することを意味し、第1の抗体とその同系エピトープの結合が、第2の抗体の不在下での第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下では検出可能な程度低下する。第2の抗体とそのエピトープの結合も第1の抗体の存在下で検出可能な程度低下する代替の場合も該当するが、そうである必要はない。すなわち、第1の抗体は、第2の抗体が第1の抗体とそのそれぞれのエピトープの結合を阻害しなくても、第2の抗体とそのエピトープの結合を阻害することができる。しかし、同じ程度であれ、大きい程度であれ、あるいは小さい程度であれ、各抗体が他の抗体とその同系エピトープまたはリガンドの結合を検出可能な程度阻害する場合、その抗体は、そのそれぞれの(複数の)エピトープの結合について互いに「交差競合している」といえる。競合抗体と交差競合抗体はどちらも本発明に包含される。そのような競合または交差競合が起こる機構(例えば、立体障害、構造変化、あるいは共通エピトープまたはその一部との結合など)とは無関係に、当業者なら、本明細書で提供される教示に基づいて、そのような競合および/または交差競合抗体が包含され、本明細書で開示される方法に有用となり得ることを理解するであろう。
本明細書において、特定の遺伝子に関して「利用する」という用語は、抗体中の特定の領域のアミノ酸配列が、B細胞の成熟の間に最終的にその遺伝子から誘導されたことを意味する。例えば、「ヒトVH−3ファミリー遺伝子を利用する重鎖可変領域アミノ酸配列」という語句は、抗体のVH領域が、B細胞の成熟の間にVH−3ファミリーの遺伝子セグメントから誘導された状況を指す。ヒトB細胞中には、30個を超える別々の機能的重鎖可変遺伝子があり、それを用いて抗体を生成する。したがって、特定の重鎖可変遺伝子の使用は、抗原との結合と機能活性を合わせた特性に関して、抗体と抗原の相互作用の好ましい結合モチーフを示唆するものである。理解されるであろうが、遺伝子利用分析は、抗体の構造の限られた概観しかもたらさない。ヒトB細胞がV−D−J重鎖転写物またはV−Jκ軽鎖転写物を確率的に生成するとき、それだけに限らないが、体細胞高頻度突然変異、n付加、およびCDR3伸張を含めて、いくつかの二次的工程が行われる。例えば、Mendezら、Nature Genetics、15:146〜156(1997)を参照されたい。
本明細書において、20個の従来のアミノ酸およびその略記法は、従来の使用法に従う。参照により本明細書に組み込まれている、Immunology − A Synthesis(第2版、E.S.GolubおよびD.R.Gren編、Sinauer Associates、マサチューセッツ州Sunderland(1991))を参照されたい。
本明細書において言及される「ポリヌクレオチド」という用語は、長さが少なくとも10塩基の重合型ヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドあるいは修飾された形態のどちらかの型のヌクレオチドを意味する。その用語は、一本鎖および二本鎖の形態を含む。
本明細書において「単離ポリペプチド」という用語は、ゲノム、cDNA、または合成由来のポリヌクレオチド、あるいはそのいくつかの組合せを意味し、その由来により、「単離ポリヌクレオチド」は、(1)天然ではそれとともに「単離ポリヌクレオチド」が認められるポリヌクレオチドの全部または一部と結合せず、(2)天然では連結していないポリヌクレオチドと作動的に連結し、あるいは(3)大きな配列の一部として天然には存在しない。
本明細書において「天然に存在するヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。本明細書において「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾または置換された糖基(sugar group)などを有するヌクレオチドを含む。本明細書で言及される「オリゴヌクレオチド結合」という用語は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデートやホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、LaPlancheら、Nucl.Acids Res.、14:9081(1986);Stecら、J.Am.Chem.Soc.、106:6077(1984);Steinら、Nucl.Acids Res.、16:3209(1988);Zonら、Anti−Cancer Drug Design、6:539(1991);Zonら、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、pp.87〜108(F.Eckstein編、Oxford University Press、英国Oxford(1991));米国特許第5,151,510号;UhlmannおよびPeyman、Chemical Reviews、90:543(1990)を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、必要に応じて、検出用の標識を含んでよい。
「作動的に連結した」配列は、対象とする遺伝子と隣接している発現調節配列と、トランスにまたは離れた所で働いて対象とする遺伝子を調節する発現調節配列の両方を含む。
本明細書において「発現調節配列」という用語は、それと連結したコード配列の発現およびプロセシングの実施に必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現調節配列には、適当な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングやポリアデニル化シグナルなどの効率のよいRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozak共通配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに所望されるときにはタンパク質の分泌を高める配列がある。そのような調節配列の性質は、宿主生物に応じて異なる;原核生物では、そのような調節配列には一般にプロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列がある;真核生物では、一般に、そのような調節配列にはプロモーターおよび転写終結配列がある。「調節配列」という用語は、その存在が発現およびプロセシングに不可欠であるすべての構成成分を最小限含むものとし、その存在により有利となるさらなる構成成分、例えばリーダー配列および融合パートナー配列を含むこともできる。
本明細書において「ベクター」という用語は、それと連結している他の核酸を輸送することができる核酸分子を意味する。いくつかの実施形態では、ベクターはプラスミド、すなわちその中にさらなるDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖のDNA片である。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントをそのウイルスゲノム中に連結することができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、それが導入されている宿主細胞中で自律複製を行うことができる(例えば、細菌性複製起点を有する細菌性ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクター)。他の実施形態では、ベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中に導入した後宿主細胞のゲノム中に組み込むことができ、それによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、特定のベクターは、それと作動的に連結している遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターを、本明細書において「組換え発現ベクター」(または単純に「発現ベクター」)と呼ぶ。
本明細書において、「組換え宿主細胞」(または単純に「宿主細胞」)という用語は、その中に組換え発現ベクターが導入されている細胞を意味する。「組換え宿主細胞」および「宿主細胞」が特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫をも意味することを理解されたい。突然変異または環境的な影響により次の世代で特定の変化が生じる可能性があるので、そのような子孫は、実際、親細胞と同一でない可能性があるが、それは依然として本明細書における「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
本明細書において、「生殖系列」という用語は、生殖細胞を介して親から子孫へと伝わる、抗体遺伝子および遺伝子セグメントのヌクレオチド配列を指す。この生殖系列の配列は、B細胞の成熟過程の間で組換えおよび高頻度突然変異の事象によって変化している、成熟B細胞中の抗体をコードするヌクレオチド配列と区別される。
核酸配列との関連で、「%配列同一性」という用語は、一致が最大となるように整列させたときに同じである2つの配列中の残基を意味する。配列同一性の比較の長さは、少なくとも約9ヌクレオチド、一般には少なくとも約18ヌクレオチド、より一般には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36、48ヌクレオチド以上の一続きより長くてもよい。ヌクレオチド配列同一性の測定に使用することができる、当技術分野で知られているいくつかの異なるアルゴリズムがある。例えば、Wisconsin Package第10.0版、Genetics Computer Group(GCG)、ウィスコンシン州Madison中のプログラムであるFASTA、GapまたはBestfitを使用して、ポリヌクレオチド配列を比較することができる。例えばプログラムFASTA2およびFASTA3を含むFASTAは、質問配列と検索配列の間で最良の重複領域のアラインメントおよび%配列同一性を提供する(参照により本明細書に組み込まれている、Pearson、Methods Enzymol.、183:63〜98(1990);Pearson、Methods Mol.Biol.、132:185〜219(2000);Pearson、Methods Enzymol.、266:227〜258(1996);Pearson、J.Mol.Biol.、276:71〜84(1998))。別段の指定がない限り、特定のプログラムまたはアルゴリズムの初期設定パラメーターを使用する。例えば、核酸配列間の%配列同一性は、その初期設定パラメーター(ワードサイズが6、スコア行列についてはNOPAM因子(NOPAM factor))とともにFASTAを使用して、または参照により本明細書に組み込まれるGCG第6.1版で提供される初期設定パラメーターとともにGapを使用して決定することができる。
ヌクレオチド配列への言及には、別段の指定がない限りその相補体が包含される。したがって、特定の配列を有する核酸への言及には、その相補的配列を有するその相補鎖が包含されることを理解されたい。
核酸またはその断片に言及するとき、「実質的な類似性」または「実質的な配列類似性」という用語は、適当なヌクレオチドの挿入または欠失を用いて他の核酸(またはその相補鎖)と最適に整列させたとき、ヌクレオチド塩基の少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%でヌクレオチド配列の同一性があることを意味し、それは、上記で論じたFASTA、BLASTやGapなどの周知である任意の配列同一性アルゴリズムによって測定される。
アミノ酸配列との関連で、「%配列同一性」という用語は、一致が最大となるように整列させたときに同じである2つの配列中の残基を意味する。配列同一性の比較の長さは、少なくとも約5アミノ酸、一般には少なくとも約20アミノ酸、より一般には少なくとも約30アミノ酸、典型的には少なくとも約50アミノ酸、より典型的には少なくとも約100アミノ酸、さらに典型的には約150、200アミノ酸以上の一続きより長くてもよい。アミノ酸配列同一性の測定に使用することができる、当技術分野で知られているいくつかの異なるアルゴリズムがある。例えば、Wisconsin Package第10.0版、Genetics Computer Group(GCG)、ウィスコンシン州Madison中のプログラムであるFASTA、GapまたはBestfitを使用して、アミノ酸配列を比較することができる。
ポリペプチドに適用するとき、「実質的な同一性」または「実質的な類似性」という用語は、2つのアミノ酸配列が、プログラムGAPまたはBESTFITなどにより、そのプログラムとともに供給される初期設定のギャップの重みを使用して最適に整列させたとき、少なくとも70%、75%または80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%または95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも97%、98%または99%の配列同一性を有することを意味する。特定の実施形態では、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換により異なっている。
本明細書において、「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、化学的特性(例えば、電荷または疎水性)が類似した側鎖R基を有する他のアミノ酸残基によって置換されるものである。一般に、保存的アミノ酸置換では、タンパク質の機能的特性は実質的に変化しない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換により互いに異なる場合、%配列同一性を上方に調整して、置換の保存的な性質を修正することができる。この調整を行う手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson、Methods Mol.Biol.、243:307〜31(1994)を参照されたい。化学的特性が類似した側鎖を有するアミノ酸の群の例には、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリンおよびスレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;5)塩基性側鎖;リシン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸;ならびに7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンがある。例えば、保存的アミノ酸置換の群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、ロイシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンであり得る。
あるいは、保存的置換は、Gonnetら、Science、256:1443〜45(1992)で開示されているPAM250対数尤度行列で正の値となる任意の変化である。「中程度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度行列で負でない値となる任意の変化である。
ポリペプチドの配列類似性は通常、配列分析ソフトウェアを使用して測定する。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含めた様々な置換、欠失および他の修飾に割り当てられた類似性の尺度を使用して、配列を整合させる。例えば、GCGは、「Gap」や「Bestfit」などのプログラムを含み、プログラムによって指定される初期設定パラメーターとともにそれを使用して、異なる種の生物由来の相同なポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間で、または野生型タンパク質とその相同体の間で配列相同性または配列同一性を決定することができる。例えば、GCG第6.1版(University of Wisconsin、ウィスコンシン州)を参照されたい。初期設定のまたは推奨されているパラメーターを使用するFASTAを使用して、ポリペプチド配列を比較することもできる。GCG第6.1版を参照されたい。FASTA(例えばFASTA2およびFASTA3)は、質問配列と検索配列の間で最良の重複領域のアラインメントおよび%配列同一性を提供する(Pearson、Methods Enzymol.、183:63〜98(1990);Pearson、Methods Mol.Biol.、132:185〜219(2000))。様々な生物に由来する多数の配列を含むデータベースと本発明の配列を比較するときに好ましい他のアルゴリズムは、プログラムとともに供給される初期設定パラメーターを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にblastpまたはtblastnである。例えば、Altschulら、J.Mol.Biol.、215:403〜410(1990);Altschulら、Nucleic Acids Res.、25:3389〜402(1997)を参照されたい。
相同性について比較するポリペプチドの長さは通常は少なくとも約16アミノ酸残基となり、一般には少なくとも約20残基となり、より一般には少なくとも約24残基となり、典型的には少なくとも約28残基となり、好ましくは約35残基を超える長さとなる。多数の異なる生物由来の配列を含むデータベースを検索するとき、アミノ酸配列を比較することが好ましい。
本明細書において、「標識(label)」または「標識した(labeled)」という用語は、抗体における他の分子の組み込みを指す。一実施形態では、標識は、検出可能なマーカーであり、例えば、放射標識したアミノ酸の組み込み、または印をつけたアビジン(例えば、光学的方法または比色法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分とポリペプチドの結合である。他の実施形態では、標識またはマーカーは、治療に関するもの、例えば、薬物結合体または毒素でよい。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が当技術分野で知られ、それを使用することができる。ポリペプチド用の標識の例には、それだけに限らないが、下記のものがある:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次的レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーの対の配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、ガドリニウムキレートなどの磁性作用物質、百日咳毒素などの毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジデオキシアンスラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにその類似体または相同体。いくつかの実施形態では、標識を様々な長さのスペーサーアームにより結合して、潜在的な立体障害を低下させる。
「治療有効量」とは、治療する障害の1つまたは複数の症状がそれによりある程度緩和される、投与する治療用作用物質の量を指す。癌の治療に関して、治療有効量とは、下記の効果のうち少なくとも1つを有する量を指す:腫瘍サイズの低下;腫瘍の転移の阻害(すなわち、ある程度の遅延、好ましくは停止);腫瘍増殖のある程度の阻害(すなわち、ある程度の遅延、好ましくは停止)、および癌と関係する1つまたは複数の症状のある程度の緩和(または、好ましくは消失)。
「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」および「治療(treatment)」とは、生物学的障害および/またはそれに付随する症状を緩和または抑制する方法を指す。癌に関しては、これらの用語は単に、癌に罹患している個人の余命が延長し、あるいは疾患の1つまたは複数の症状が軽減されることを意味する。
「接触(Contacting)」とは、本発明の抗体またはその抗原結合部分と標的P−カドヘリンまたはそのエピトープを、抗体がP−カドヘリンの生物学的活性に影響を及ぼすことができるような形で一緒にすることを指す。そのような「接触」は、「in vitro」で、すなわち試験管、ペトリ皿などの中で行うことができる。試験管中では、接触には抗体またはその抗原結合部分とP−カドヘリンまたはそのエピトープだけが関与することもあり、あるいは細胞全体が関与することもある。細胞はまた、細胞培養皿中で維持しまたは増殖させ、その環境中で抗体またはその抗原結合部分と接触させることもできる。これに関連して、P−カドヘリン関連障害に影響を及ぼす特定の抗体またはその抗原結合部分の能力、すなわち抗体のIC50を、より複雑な生物での抗体のin vivo使用を試みる前に決定することができる。生物の外にある細胞については、P−カドヘリンを抗体またはその抗原結合部分と接触させる複数の方法が存在し、それは当業者に周知である。
本明細書において、「異常細胞増殖」とは、別段示さない限り、正常細胞の異常増殖および異常細胞の増殖を含めて、正常な制御機構と無関係である(例えば接触阻害の喪失)細胞増殖を指す。これには、それだけに限らないが、突然変異したチロシンキナーゼの発現または受容体チロシンキナーゼの過剰発現によって増殖する腫瘍細胞(腫瘍)の異常増殖;異常なチロシンキナーゼの活性化が起こる他の増殖性疾患の良性および悪性細胞の異常増殖;受容体チロシンキナーゼによって増殖する任意の腫瘍の異常増殖;異常なセリン/スレオニンキナーゼの活性化によって増殖する任意の腫瘍の異常増殖;異常なセリン/スレオニンキナーゼの活性化が起こる他の増殖性疾患の良性および悪性細胞の異常増殖;活性化Ras癌遺伝子が発現している良性と悪性両方の腫瘍の異常増殖;他の遺伝子における発癌性突然変異の結果Rasタンパク質が活性化された良性と悪性両方の腫瘍細胞の異常増殖;異常なRas活性化が起こる他の増殖疾患の良性および悪性細胞の異常増殖が含まれる。そのような良性増殖性疾患の例は、乾癬、良性前立腺肥大、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、および再狭窄である。「異常細胞増殖」はまた、酵素ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの活性から生じる良性と悪性両方の細胞の異常増殖を指し、それを含む。
「異常細胞増殖」および「過剰増殖性障害」という用語は、本出願において互換性のあるものとして使用される。
「in vitro」とは、例えば、それだけに限らないが、試験管や培地中など、人工的な環境中で行われる手順を指す。
「in vivo」とは、それだけに限らないが、マウス、ラットやウサギなど、生物内で行われる手順を指す。
ヒトP−カドヘリン抗体
本発明は、ヒトP−カドヘリンと結合する単離ヒト抗体またはその抗原結合部分に関する。好ましくは、ヒト抗体は、E−カドヘリンよりP−カドヘリンに対して大きい親和性を有する組換えヒトP−カドヘリン抗体である。本発明の様々な態様は、そのような抗体および抗原結合部分、ならびにその医薬組成物にも、そのような抗体および抗原結合部分を作製するための核酸、組換え発現ベクターおよび宿主細胞にも関する。本発明の抗体および抗原結合部分を使用して、in vitroまたはin vivoでヒトP−カドヘリンを検出しまたはヒトP−カドヘリン活性を阻害する方法も、本発明により包含される。
ヒトを含めたいくつかの種に由来するP−カドヘリンのアミノ酸およびヌクレオチド配列が知られている(例えば、アクセッション番号NM_001793.3を参照)。ヒトP−カドヘリンまたはその抗原性部分は、当業者に周知の方法に従って調製することもでき、あるいは商業的な販売業者から購入することもできる(例えば、R&D Systems 861−PC−100)。
特定の実施形態では、本発明の抗体は194−e06;194−a02;194−b09;195−e11;194−g09;196−h02;194−e01;196−d10;196−g03;196−e06;195−a09;198−a09;200−h06;g−194−b09;g−194−g09;g−196−g03;g−196−h02;g−194−e01;g−194−e06;129−1c4;およびg−129−1c4と称するIgGである。実施例1でさらに詳細に論じるように、scFvファージディスプレイライブラリーの高処理能スクリーニングを使用して、129−1c4scFvを同定し、その後それをIgGに転換した。129−1c4は、最初のファージディスプレイスクリーニングの間に同定されたリード抗体に相当し、本発明のいくつかの他の抗体が派生した系統の親抗体である。いくつかのそのように派生した抗体は、194−e06;194−a02;194−b09;195−e11;194−g09;196−h02;194−e01;196−d10;196−g03;196−e06;195−a09;198−a09;および200−h06と称され、129−1c4親系統内で最適化された抗体に相当する。g−129−1c4抗体は、生殖系列化型の129−1c4親抗体であり、VHおよびVLドメインのフレームワーク領域中の特定のアミノ酸が突然変異して生殖系列フレームワーク領域中のアミノ酸と整合したものである。上記に挙げた任意の抗体を生殖系列化することもでき、その結果、フレームワーク領域配列が、g−129−1c4と同様に生殖系列フレームワーク領域と同一となる。例えば、本発明の一実施形態では、抗体g−194−b09、g−194−g09、g−196−g03、g−196−h02、g−194−e01、g−195−e11、g−200−h06、およびg−194−e06はそれぞれ、生殖系列化型の194−b09、194−g09、196−g03、196−h02、194−e01、195−e11、200−h06、および194−e06である。突然変異して生殖系列化型に達した特定のアミノ酸は、生殖系列化抗体対非生殖系列化抗体の配列比較を行うことによって当業者に明らかとなる。下記で論じるように、本発明の抗体の特定のアミノ酸配列を表1〜3および図1に記載する。
重鎖可変領域のVH3遺伝子ファミリーの利用に向けての強い偏向をつけて本発明の抗体を生成した。具体的には、129−1c4親抗体はVH3−23可変遺伝子セグメントから派生した。ヒトB細胞中には、30個を超える別々の機能的重鎖可変遺伝子があり、それを用いて抗体を生成する。したがって、偏向は、抗原との結合と機能活性を組み合わせた特性に関して、抗体と抗原の相互作用の好ましい結合モチーフを示唆するものである。
理解されるであろうが、遺伝子利用分析は、抗体の構造の限られた概観しかもたらさない。ヒトB細胞がV−D−J重鎖転写物またはV−Jκ軽鎖転写物を確率的に生成するとき、それだけに限らないが、体細胞高頻度突然変異、n付加、およびCDR3伸張を含めて、いくつかの二次的工程が行われる。例えば、Mendezら、Nature Genetics、15:146〜156(1997)、および2002年2月19日に出願された米国公開特許出願第2003−0070185号を参照されたい。したがって、本発明の抗体の構造をさらに調べるために、クローンから得られたcDNAから、抗体の予測アミノ酸配列を生成した。さらに、タンパク質の配列決定によりN末端アミノ酸配列を得た。図1に、本発明のいくつかの抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を示す。
上記に挙げた特定の各抗体を、表1および2で示す重鎖(VH)および軽鎖(VL)のその可変ドメイン配列により記載することができる。これらの配列番号が指す特定の配列を図1に示す。表1および2に示すように、上記に挙げた抗体の対応するVHおよびVLのアミノ酸およびDNA配列は、配列番号1〜23、68〜90、および320〜343により記載される。
本発明のさらなる抗体および抗原結合部分はまた、表1および2で示す抗体の重鎖および軽鎖可変領域を形成する様々なCDRおよびFR配列を含むものとして記載することもできる。したがって、本発明の抗体の種々のCDRおよびFR配列に対応する配列番号を表3に示す。さらに、129−1c4親抗体の重鎖および軽鎖CDR3領域中での多数の無作為化突然変異も実施し、それによりP−カドヘリン親和性が向上し、エピトープ競合アッセイ(実施例8を参照)によって測定される10〜417倍の向上に及んだ。これらの突然変異したVHおよびVLCDR3配列の配列番号(配列番号91〜256、および257〜319)も下記の表3の中に含まれる。
抗体を作製する方法
ファージディスプレイライブラリー
本発明の抗体または抗原結合部分は、当技術分野で知られているいくつかの方法に従って調製することができる。例えば、ファージディスプレイ技術を使用して、P−カドヘリンに対する親和性が様々である抗体のレパートリーを含むライブラリーを提供することができる。次いで、これらのライブラリーをスクリーニングして、P−カドヘリンに対する所望の親和性を有する抗体を同定し単離することができる。
例えば、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって、本発明の組換えヒトP−カドヘリン抗体を単離することができる。好ましくは、ライブラリーは、ヒトB細胞から単離されたmRNAから調製されたヒトVLおよびVHcDNAを使用して生成されるscFvファージディスプレイライブラリーである。そのようなライブラリーを調製しスクリーニングする方法は当技術分野で知られている。ファージディスプレイライブラリーを生成するキットが市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;およびStratagene SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。抗体ディスプレイライブラリーの生成およびスクリーニングで使用することができる他の方法および試薬もある(例えば、米国特許第5,223,409号;PCT公開WO92/18619、WO91/17271、WO92/20791、WO92/15679、WO93/01288、WO92/01047、およびWO92/09690;Fuchsら、Bio/Technology、9:1370〜1372(1991);Hayら、Hum.Antibod.Hybridomas、3:81〜85(1992);Huseら、Science、246:1275〜1281(1989);McCaffertyら、Nature、348:552〜554(1990);Griffithsら、EMBO J.、12:725〜734(1993);Hawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889〜896(1992);Clacksonら、Nature、352:624〜628(1991);Gramら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:3576〜3580(1992);Garradら、Bio/Technology、9:1373〜1377(1991);Hoogenboomら、Nuc.Acid Res.、19:4133〜4137(1991);Barbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:7978〜7982(1991);ならびにGriffithsら、EMBO J.、13:3245〜3260(1994)を参照;これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれている)。
ファージディスプレイ技術で使用する抗体のライブラリーを調製する他の方法は、ヒトイムノグロブリン遺伝子座を含む非ヒト動物をP−カドヘリンまたはその抗原性部分で免疫感作して免疫応答を生じさせるステップと、免疫感作した動物から抗体産生細胞を抽出するステップと、抽出した細胞から本発明の抗体の重鎖および軽鎖をコードするRNAを単離するステップと、RNAを逆転写してcDNAを作製するステップと、プライマーを使用してcDNAを増幅するステップと、抗体がファージ上で発現するようにファージディスプレイベクター中にcDNAを挿入するステップとを含む。そのようなレパートリーの作製では、免疫感作した動物由来のB細胞を不死化する必要はない。むしろ、初代B細胞をDNAの供給源として直接使用することができる。B細胞から得られた、例えば脾臓に由来するcDNAの混合物を使用して、発現ライブラリー、例えば大腸菌(E.coli)中にトランスフェクトするファージディスプレイライブラリーを調製する。最終的に、抗原に対する所望の大きさの結合親和性を生じさせるライブラリーのクローンを同定し、そのような結合に関与する産物をコードするDNAを回収し処置して標準的な組換え発現を行う。ファージディスプレイライブラリーを、予め処置したヌクレオチド配列を使用して構築し、それを類似した形でスクリーニングすることもできる。一般に、重鎖および軽鎖をコードするcDNAは独立に供給され、またはそれらを連結してファージライブラリー中で作製するためのFv類似体を形成する。次いで、P−カドヘリンに対する親和性が最高である抗体についてファージライブラリーをスクリーニングし、適当なクローンから遺伝物質を回収する。さらなる回数のスクリーニングにより、単離した元の抗体の親和性を高めることができる。
一実施形態では、所望の特徴を有するヒトP−カドヘリン抗体を単離し作製するために、本明細書に記載のヒトP−カドヘリン抗体を最初に使用して、参照により本明細書に組み込まれているPCT公開WO93/06213に記載のエピトープインプリンティング法を用いてP−カドヘリンに対する類似した結合活性を有するヒト重鎖および軽鎖配列を選択する。この方法で使用する抗体ライブラリーは、好ましくは、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれるPCT公開WO92/01047、McCaffertyら、Nature、348:552〜554(1990);およびGriffithsら、EMBO J.、12:725〜734(1993)に記載のように調製しスクリーニングするscFvライブラリーである。ヒトP−カドヘリンを抗原として使用して、scFv抗体ライブラリーをスクリーニングすることができる。P−カドヘリンに対する親和性が最高である抗体についてファージライブラリーをスクリーニングし、適当なクローンから遺伝物質を回収する。さらなる回数のスクリーニングにより、単離した元の抗体の親和性を高めることができる。
最初のヒトVLおよびVHドメインを選択した後、最初に選択されたVLおよびVHセグメントの様々な対をP−カドヘリンの結合についてスクリーニングして、好ましいVL/VH対の組合せを選択する、「混合および整合」実験を行うことができる。この混合および整合実験はまた、下記に記載のように、VHおよびVLセグメントを無作為に突然変異させて結合を最適化した後に行うこともできる。さらに、抗体の品質を高めるために、好ましい(複数の)VL/VH対のVLおよびVHセグメントを、好ましくはVHおよび/またはVLのCDR3領域内で、自然免疫応答中の抗体の親和性成熟に関与するin vivo体細胞突然変異の過程と類似した工程で、無作為に突然変異させることもできる。このin vitro親和性成熟は、例えば、VHCDR3またはVLCDR3と相補的なPCRプライマーを使用してそれぞれVHおよびVLドメインを増幅することによって実現することができ、そのプライマーは、得られたPCR産物が、VHおよび/またはVLCDR3領域中に無作為突然変異が導入されているVHおよびVLセグメントをコードするように、4つのヌクレオチド塩基の無作為混合物で特定の位置に「スパイク」が入っている。これらの無作為に突然変異したVHおよびVLセグメントを、P−カドヘリンとの結合について再度スクリーニングすることができ、P−カドヘリンに対する高い親和性および低い解離速度を示す配列を選択することができる。前記で論じたように、無作為に突然変異し、親和性の向上を示した本発明のいくつかのVHおよびVLCDR3配列を、配列番号91〜256および257〜319で示す。
組換えイムノグロブリンディスプレイライブラリーから本発明のP−カドヘリン抗体をスクリーニングし単離した後、選択した抗体をコードする核酸をディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収し、標準的な組換えDNA技術によって他の発現ベクター中にサブクローン化することができる。必要に応じて、下記に記載のように、核酸をさらに処理して本発明の他の抗体型を作製することができる。下記に記載のように、コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングによって単離された組換えヒト抗体を発現させるために、抗体をコードするDNAを組換え発現ベクター中にクローン化し、宿主細胞中に導入する。
免疫感作
他の実施形態では、そのゲノム内にヒトイムノグロブリン重鎖および軽鎖遺伝子座の一部または全部を含む非ヒト遺伝子導入動物をP−カドヘリン抗原で免疫感作することによってヒトP−カドヘリン抗体を作製することができる。例えば、非ヒト動物は、XenoMouse(商標)動物(Abgenix,Inc.、カリフォルニア州Fremont)でよい。
XenoMouse(商標)マウスは、工学的に作製されたマウスの系統であり、ヒトイムノグロブリン重鎖および軽鎖遺伝子座の大きな断片を含み、マウス抗体の産生が欠損している。例えば、Greenら、Nature Genetics、7:13〜21(1994)ならびに米国特許第5,916,771号、第5,939,598号、第5,985,615号、第5,998,209号、第6,075,181号、第6,091,001号、第6,114,598号、第6,130,364号、第6,162,963号および第6,150,584号を参照されたい。WO91/10741、WO94/02602、WO96/34096、WO96/33735、WO98/16654、WO98/24893、WO98/50433、WO99/45031、WO99/53049、WO00/09560、およびWO00/037504も参照されたい。
これらの文献中に開示されている方法は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,994,619号に記載のように改変することができる。米国特許第5,994,619号は、ブタおよび雌ウシに由来する新規の培養内部細胞塊(CICM)細胞および細胞系統、ならびに異種DNAが挿入されている遺伝子導入CICM細胞を作製する方法について記載している。CICM遺伝子導入細胞を使用して、クローン化した遺伝子導入胚、胎児、および子孫を作製することができる。‘619の特許はまた、異種DNAをその子孫に伝達することができる遺伝子導入動物を作製する方法についても記載している。これらの方法で使用することができる非ヒト動物の例には、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ニワトリおよびウマがある。
XenoMouse(商標)マウスは、完全ヒト抗体の成人様のヒトレパートリーを産生し、抗原特異的なヒト抗体を生成する。いくつかの実施形態では、XenoMouse(商標)マウスは、メガ塩基サイズの、酵母人工染色体(YAC)中のヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の生殖系列構造断片の導入により約80%のヒト抗体V遺伝子レパートリーを含む。他の実施形態では、XenoMouse(商標)マウスは、ほぼすべてのヒトλ軽鎖遺伝子座をさらに含む。その開示が参照により本明細書に組み込まれている、Mendezら、Nature Genetics、15:146〜156(1997)、GreenおよびJakobovits、J.Exp.Med.、188:483〜495(1998)、ならびにWO98/24893を参照されたい。
いくつかの実施形態では、ヒトイムノグロブリン遺伝子を含む非ヒト動物は、ヒトイムノグロブリン「ミニ遺伝子座」を有する動物である。ミニ遺伝子座の手法では、Ig遺伝子座の個々の遺伝子を含めることにより外因性Ig遺伝子座が模倣される。したがって、1つまたは複数のVH遺伝子、1つまたは複数のDH遺伝子、1つまたは複数のJH遺伝子、μ定常ドメイン、および第2の定常ドメイン(好ましくはγ定常ドメイン)が、動物中への挿入用の構築物中に形成される。この手法は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号、第5,770,429号、第5,789,650号、第5,814,318号、第5,591,669号、第5,612,205号、第5,721,367号、第5,789,215号および第5,643,763号に記載されている。
次いで、上記に記載の非ヒト動物を、下記に記載のように、抗体産生を可能にする条件下で、P−カドヘリン抗原で免疫感作することができる。抗体産生細胞を動物から単離し、対象とするP−カドヘリン抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸を、単離した抗体産生細胞から、またはそのような細胞から作製した不死化細胞系統から単離する。その後、当業者に知られている技術を使用して、下記にさらに記載するようにこれらの核酸を工学的に作製して、非ヒト配列の量を減らし、すなわち抗体をヒト化してヒトでの免疫応答を低下させる。
いくつかの実施形態では、P−カドヘリン抗原は、単離および/または精製されたP−カドヘリンでよい。いくつかの実施形態では、P−カドヘリン抗原はヒトP−カドヘリンである。他の実施形態では、P−カドヘリン抗原は、P−カドヘリンを発現しまたは過剰発現する細胞でよい。他の実施形態では、P−カドヘリン抗原は、酵母、昆虫細胞、大腸菌などの細菌、または他の供給源から組換え技術により発現させた組換えタンパク質である。動物の免疫感作は、当技術分野で知られている任意の方法によるものでよい。例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press(1990)を参照されたい。マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシやウマなどの非ヒト動物を免疫感作する方法は当技術分野で周知である。例えば、HarlowおよびLane、上記、および米国特許第5,994,619号を参照されたい。例えば、P−カドヘリン抗原は、免疫応答を刺激するアジュバントとともに投与することができる。例示的なアジュバントには、完全または不完全フロイント(Freund)アジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)、あるいはISCOM(免疫刺激複合体)がある。そのようなアジュバントは、ポリペプチドを局所沈殿物中に隔離することによって急速な分散からそれを保護することができ、または、アジュバントは、宿主を刺激してマクロファージおよび免疫系の他の構成成分にとって走化性のあるファクターを分泌させる物質を含んでよい。好ましくは、ポリペプチドを投与する場合、免疫感作の予定は、いくつかの週にわたって散在させた、ポリペプチドの2回以上の投与を含む。
例えば、上記に記載の遺伝子導入動物をP−カドヘリンで免疫感作した後、免疫感作した遺伝子導入動物から初代細胞(例えば脾臓または末梢血B細胞)を単離することができ、所望の抗原に特異的な抗体を産生する個々の細胞を同定することができる。次いで、個々の各細胞由来のポリアデニル化mRNAを単離し、可変領域配列とアニールするセンスプライマー(例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子のFR1領域の大部分または全部を認識する縮重プライマー、ならびに定常または連結領域配列とアニールするアンチセンスプライマー)を使用して逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を行う。次いで、重鎖および軽鎖可変ドメインのcDNAをクローン化し、任意の適切な宿主細胞、例えば骨髄腫細胞中で、重鎖およびκまたはλの定常ドメインなど、それぞれのイムノグロブリン定常領域を有するキメラ抗体としてそれを発現させる。参照により本明細書に組み込まれるBabcookら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:7843〜48、(1996)を参照されたい。次いで、P−カドヘリン抗体を本明細書に記載のように同定し単離することができる。
抗体を作製するための組換え法
本発明の抗体または抗体部分は、宿主細胞中で、イムノグロブリン軽鎖および重鎖遺伝子の組換え発現によって調製することができる。例えば、抗体を組換えにより発現させるために、抗体のイムノグロブリン軽鎖および重鎖をコードするDNA断片を有する1つまたは複数の組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトし、その結果、軽鎖および重鎖が宿主細胞中で発現し、好ましくは、その中で宿主細胞が培養されている培地中に分泌され、その培地から抗体を回収することができる。その開示が参照により本明細書に組み込まれている、Sambrook、FritschおよびManiatis(編)、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州Cold Spring Harbor(1989)、Ausubel,F.M.ら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1989)ならびに米国特許第4,816,397号に記載されているもののような、標準的な組換えDNA法を使用して、抗体の重鎖および軽鎖遺伝子を得、これらの遺伝子を組換え発現ベクター中に組み込み、ベクターを宿主細胞中に導入する。
突然変異および改変
本発明のP−カドヘリン抗体を発現させるために、上記に記載の方法のいずれかを使用して、VHおよびVL領域をコードするDNA断片を最初に得ることができる。当業者に知られている標準的な方法を使用して、様々な突然変異、欠失、および/または付加をDNA配列中に導入することもできる。例えば、突然変異したヌクレオチドをPCRプライマー中に組み込み、その結果PCR産物が所望の突然変異を含むPCR媒介突然変異生成や、部位特異的突然変異生成などの標準的な方法を使用して突然変異生成を行うことができる。例えば、行うことができる1つの型の置換は、化学的に反応性のある可能性がある、抗体中の1つまたは複数のシステインを、それだけに限らないが、アラニンやセリンなどの他の残基に変化させることである。例えば、非標準的なシステインの置換があり得る。抗体の可変ドメインのCDRまたはフレームワーク領域中であるいは定常ドメイン中で置換を行うことができる。いくつかの実施形態では、システインは標準的なものである。
重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン中で抗体を突然変異させて、例えば抗体の結合特性を変化させることもできる。例えば、1つまたは複数のCDR領域中で突然変異を起こさせて、P−カドヘリンに対する抗体のKDを増大または低下させ、Koffを増大または低下させ、あるいは抗体の結合特異性を変化させることができる。部位特異的突然変異生成の技術は、当技術分野で周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Sambrookら、およびAusubelら、上記を参照されたい。例えば、実施例8でさらに詳細に論じるように、上記で論じた手順に従って129−1c4親の多数の変異VHおよびVLCDR3配列を作製し、それを図1における配列番号91〜256(VHCDR3変異体)および配列番号257〜319(VLCDR3変異体)として示す。
フレームワーク領域または定常ドメイン中で突然変異を起こさせて、P−カドヘリン抗体の半減期を延長することもできる。例えば、参照により本明細書に組み込まれているPCT公開WO00/09560を参照されたい。フレームワーク領域または定常ドメイン中で突然変異を起こさせて、抗体の免疫原性を変化させ、他の分子との共有結合または非共有結合部位をもたらし、あるいは補体結合、FcR結合や抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)などの特性を変化させることもできる。本発明によれば、単一の抗体が、可変ドメインの任意の1つまたは複数のCDRまたはフレームワーク領域中であるいは定常ドメイン中で突然変異を有してもよい。
「生殖系列化」として知られる工程では、VHおよびVL配列中の特定のアミノ酸を突然変異させて、生殖系列VHおよびVL配列中で天然に認められるアミノ酸と整合させることができる。具体的には、VHおよびVL配列中のフレームワーク領域のアミノ酸配列を突然変異させて、生殖系列配列と整合させて抗体を投与したときの免疫原性のリスクを減らすことができる。ヒトVHおよびVL遺伝子の生殖系列DNA配列は当技術分野で知られている(例えば、「Vbase」ヒト生殖系列配列データベースを参照されたい;Kabat,E.A.ら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242;Tomlinsonら、(1992)、J.Mol.Biol.、227:776〜798;およびCoxら、Eur.J.Immunol.、24:827〜836(1994)も参照されたい;そのそれぞれの内容は参照により本明細書に特に組み込まれている)。
行うことができる他の型のアミノ酸置換は、抗体中の潜在的なタンパク質分解性部位を除去することである。そのような部位は、抗体の可変ドメインのCDRまたはフレームワーク領域中であるいは定常ドメイン中で生じる可能性がある。システイン残基の置換およびタンパク質分解性部位の除去によって、抗体産物の異種性のリスクを減らし、したがってその同種性を増大させることができる。他の型のアミノ酸置換は、潜在的なアミド分解部位を形成するアスパラギン−グリシンの対を、その残基の一方または両方を変化させることによって除去することである。他の例では、本発明のP−カドヘリン抗体の重鎖のC末端にあるリシンを切断することができる。本発明の様々な実施形態では、P−カドヘリン抗体の重鎖および軽鎖は、配列番号346および347で示されるものなど、N末端シグナル配列を含んでもよい。
本発明のVHおよびVLセグメントをコードするDNA断片を得た後、これらのDNA断片を標準的な組換えDNA技術によりさらに処理して、例えば可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、またはscFv遺伝子に転換することができる。これらの処理では、VLまたはVHをコードするDNA断片を、抗体の定常領域や柔軟なリンカーなどの他のタンパク質をコードする他のDNA断片と作動的に連結する。この文脈で使用する「作動的に連結する」という用語は、2つのDNA断片によってコードされたアミノ酸配列がインフレーム(in−frame)のままであるようにその2つのDNA断片が連結することを意味するものとする。
VH領域をコードする単離DNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする他のDNA分子と作動的に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に転換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており(例えば、Kabat,E.A.ら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgDの定常領域でよいが、最も好ましくはIgG1またはIgG2の定常領域である。IgG1定常領域配列は、Gm(1)、Gm(2)、Gm(3)やGm(17)など、異なる個人間で生じることが知られている任意の様々な対立遺伝子またはアロタイプでよい。これらのアロタイプは、IgG1定常領域中の天然に存在するアミノ酸置換に相当する。例えば、重鎖IgG1定常領域は、配列番号344でよい。Fab断片重鎖遺伝子では、VHをコードするDNAを、重鎖CH1定常領域だけをコードする他のDNA分子と作動的に連結することができる。CH1重鎖定常領域は、任意の重鎖遺伝子に由来するものでよい。
VL領域をコードする単離DNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする他のDNA分子と作動的に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に転換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており(例えば、Kabat,E.A.ら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、κまたはλの定常領域でよい。κ定常領域は、Inv(1)、Inv(2)やInv(3)など、異なる個人間で生じることが知られている任意の様々な対立遺伝子でよい。λ定常領域は、3つのλ遺伝子のいずれかに由来するものでよい。例えば、軽鎖IgG1定常領域は、配列番号347でよい。
scFv遺伝子を作製するために、VHおよびVLをコードするDNA断片を、柔軟なリンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4−Ser)3をコードする他の断片と作動的に連結し、その結果、VHおよびVL配列を、柔軟なリンカーによって連結したVLおよびVH領域を有する連続した単鎖タンパク質として発現させることができる(例えば、Birdら、Science、242:423〜426(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879〜5883(1988);McCaffertyら、Nature、348:552〜554(1990)を参照されたい)。単鎖抗体は、単一のVHおよびVLしか使用しない場合は単価でもよく、2つのVHおよびVLを使用する場合は二価でもよく、あるいは2つより多いVLおよびVHを使用する場合は多価でもよい。P−カドヘリンおよび他の分子と特異的に結合する、二重特異性または多価抗体を生成することができる。
他の実施形態では、他のポリペプチドと連結した本発明のP−カドヘリン抗体の全部または一部を含む融合抗体または免疫接着分子を作製することができる。他の実施形態では、P−カドヘリン抗体の可変ドメインだけをポリペプチドと連結する。他の実施形態では、VHおよびVLドメインが互いに相互作用して抗原結合部位を形成することができるような形で、P−カドヘリン抗体のVHドメインを第1のポリペプチドと連結し、その一方で、P−カドヘリン抗体のVLドメインを、第1のポリペプチドと結合した第2のポリペプチドと連結する。次いで、VH−リンカー−VL抗体を、対象とするポリペプチドと連結する。他の好ましい実施形態では、VHドメインは、リンカーによりVLドメインと分離し、その結果VHおよびVLドメインが互いに相互作用することができる。さらに、2つ(以上の)単鎖抗体が互いに連結した融合抗体を作製することができる。これは、単一のポリペプチド鎖上で二価または多価の抗体を作製したい場合、あるいは二重特異性抗体を作製したい場合に有用である。
他の実施形態では、P−カドヘリン抗体をコードする核酸分子を使用して、他の改変抗体を調製することができる。例えば、「Kappa body」(Illら、Protein Eng.、10:949〜57(1997))、「Minibody」(Martinら、EMBO J.、13:5303〜9(1994))、「Diabody」(Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448(1993))、または「Janusin」(Trauneckerら、EMBO J.、10:3655〜3659(1991)およびTrauneckerら、Int.J.Cancer、(Suppl.)7:51〜52(1992))を、本明細書の教示を受けて、標準的な分子生物学的技術を使用して調製することができる。
ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結を含めた種々の方法によって、二重特異性抗体または抗原結合断片を作製することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann、Clin.Exp.Immunol.、79:315〜321(1990)、Kostelnyら、J.Immunol.、148:1547〜1553(1992)を参照されたい。さらに、二重特異性抗体を「diabody」または「Janusin」として形成することができる。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はP−カドヘリンの2つの異なるエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するヒトP−カドヘリン抗体由来の1つまたは複数の可変ドメインまたはCDR領域を使用して、上記に記載の改変抗体を調製することができる。
ベクターおよび宿主細胞
本発明の抗体および抗原結合部分を発現させるために、上記に記載のように得られた部分的なまたは完全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAを発現ベクター中に挿入し、その結果、遺伝子が転写および翻訳調節配列と作動的に連結する。この文脈で、「作動的に連結する」という用語は、抗体遺伝子をベクター中に連結し、その結果、ベクター内の転写および翻訳調節配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を制御するその意図された機能を果たすことを意味するものとする。発現ベクターおよび発現調節配列は、使用する発現用宿主細胞と適合するように選択する。発現ベクターには、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、カリフラワーモザイクウイルスやタバコモザイクウイルスなどの植物ウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどがある。抗体遺伝子をベクター中に連結し、その結果、ベクター内の転写および翻訳調節配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を制御するその意図された機能を果たす。発現ベクターおよび発現調節配列は、使用する発現用宿主細胞と適合するように選択する。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別々のベクター中に挿入することができる。好ましい実施形態では、両方の遺伝子を同じ発現ベクター中に挿入する。抗体遺伝子を、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片上の相補的な制限部位とベクターの連結、または制限部位が存在しない場合には平滑末端連結)によって発現ベクター中に挿入する。
好都合なベクターは、上記に記載のように任意のVHまたはVL配列を容易に挿入し発現させることができるように工学的に作製された適当な制限部位を有する機能的に完全なヒトCHまたはCLイムノグロブリン配列をコードするものである。そのようなベクターでは、通常、挿入されたJ領域中のスプライス供与部位とヒトCドメインに先行するスプライス受容部位の間で、またヒトCHエキソン内に存在するスプライス領域でもスプライシングが起こる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域の下流にある天然の染色体部位で起こる。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞由来の抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることもできる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドがインフレームでイムノグロブリン鎖のアミノ末端と連結するようにベクター中にクローン化することができる。シグナルペプチドは、イムノグロブリンシグナルペプチドでもよく、あるいは異種性シグナルペプチド(すなわち非イムノグロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)でもよい。
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中の抗体鎖遺伝子の発現を調節する制御配列を有する。制御配列の選択を含めて、発現ベクターの設計が、形質転換する宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現レベルなどのファクターに依存する可能性があることが当業者には理解されるであろう。哺乳動物宿主細胞発現に好ましい制御配列には、レトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(Simian Virus 40)(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなど、哺乳動物細胞中での高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルスエレメント、ならびに天然のイムノグロブリンやアクチンのプロモーターなどの強い哺乳動物プロモーターがある。ウイルス制御性エレメントおよびその配列のさらなる記載については、例えば、米国特許第5,168,062号、米国特許第4,510,245号および米国特許第4,968,615号を参照されたい。プロモーターおよびベクター、ならびに植物の形質転換の記載を含めて、植物中で抗体を発現させる方法は、当技術分野で知られている。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,517,529号を参照されたい。細菌細胞、または真菌細胞、例えば酵母細胞中でポリペプチドを発現させる方法も、当技術分野で周知である。
抗体鎖遺伝子および制御配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)や選択マーカー遺伝子などのさらなる配列を有してよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を促進する(例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号を参照されたい)。例えば、通常、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞上に、G418、ハイグロマイシンやメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子には、デヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr−宿主細胞でメトトレキセート選択/増幅とともに使用する)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(G418選択用)、およびグルタミン酸合成酵素遺伝子がある。
P−カドヘリン抗体をコードする核酸分子およびこれらの核酸分子を含むベクターを、適切な哺乳動物、植物、細菌または酵母宿主細胞のトランスフェクションに使用することができる。形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入する、任意の知られている方法によるものでよい。異種性ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞中に導入する方法は当技術分野で周知であり、それにはデキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、原形質体融合、エレクトロポレーション、リポソーム中への(複数の)ポリヌクレオチドの封入、および核中へのDNAの直接微小注入がある。さらに、ウイルスベクターによって、核酸分子を哺乳動物細胞中に導入することができる。細胞を形質転換する方法は当技術分野で周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号および第4,959,455号を参照されたい。例えばアグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換、微粒子銃形質転換、直接注入、エレクトロポレーションおよびウイルス性形質転換を含めて、植物細胞を形質転換する方法は、当技術分野で周知である。細菌および酵母細胞を形質転換する方法も、当技術分野で周知である。
発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞系統は当技術分野で周知であり、それには、米国基準菌株保存機構(ATCC)から入手可能な多数の不死化細胞系統がある。これらには、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO細胞、SP2細胞、HEK−293T細胞、NIH−3T3細胞、HeLa細胞、仔ハムスター腎(BHK)細胞、アフリカミドリサル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、およびいくつかの他の細胞系統がある。特に好ましい細胞系統は、どの細胞系統が高発現レベルを有するかを決定することにより選択される。使用することができる他の細胞系統は、Sf9やSf21細胞などの昆虫細胞系統である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞中に導入したとき、宿主細胞を、宿主細胞中での抗体の発現、または、より好ましくはその中で宿主細胞が増殖している培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間培養することによって抗体が産生される。標準的なタンパク質精製方法を使用して、培地から抗体を回収することができる。植物宿主細胞には、タバコ(Nicotiana)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、ウキクサ、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモなどがある。細菌宿主細胞には、大腸菌およびストレプトマイセス(Streptomyces)種がある。酵母宿主細胞には、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)およびピキアパストリス(Pichia pastoris)がある。
さらに、いくつかの知られている技術を使用して、産生細胞系統からの本発明の抗体の産生を高めることができる。例えば、グルタミン合成酵素(GS系)およびDHFR遺伝子発現系は、特定の条件下で発現を高める一般的な手法である。限界希釈クローン化やマイクロドロップ(Microdrop)技術などの従来の技術を使用して、高発現細胞クローンを同定することができる。GS系は、欧州特許第0 216 846号、第0 256 055号、第0 323 997号および第0 338 841号で論じられている。
異なる細胞系統によりまたは遺伝子導入動物中で発現した抗体は、互いに異なるグリコシル化を有する可能性が高い。しかし、本明細書で提供する核酸分子によってコードされ、または本明細書で提供するアミノ酸配列を含む抗体はすべて、抗体のグリコシル化とは無関係に、本発明の一部である。
遺伝子導入動物および植物
本発明のP−カドヘリン抗体はまた、対象とするイムノグロブリン重鎖および軽鎖配列を遺伝子導入した哺乳動物または植物の発生、ならびにそれから回収可能な形での抗体の産生を介して遺伝子導入により作製することもできる。哺乳動物における遺伝子導入による産生に関して、P−カドヘリン抗体を、ヤギ、雌ウシ、または他の動物の乳汁中で産生させ、それから回収することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,827,690号、第5,756,687号、第5,750,172号および第5,741,957号を参照されたい。いくつかの実施形態では、上記に記載のように、ヒトイムノグロブリン遺伝子座を含む非ヒト遺伝子導入動物を、P−カドヘリンまたはその免疫原性部分で免疫感作する。植物中で抗体を作製する方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,046,037号および第5,959,177号に記載されている。
いくつかの実施形態では、本発明のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分をコードする1つまたは複数の核酸分子を、標準的な遺伝子導入技術により動物または植物中に導入することによって、非ヒト遺伝子導入動物または植物を作製する。上記のHoganおよび米国特許第6,417,429号を参照されたい。遺伝子導入動物の作製に使用する遺伝子導入細胞は、胚性幹細胞または体細胞または受精卵でよい。遺伝子導入非ヒト生物は、キメラ、非キメラのヘテロ接合体、および非キメラのホモ接合体でよい。例えば、すべてが参照により本明細書に組み込まれている、Hoganら、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press(1999);Jacksonら、Mouse Genetics and Transgenics:A Practical Approach、Oxford University Press(2000);およびPinkert、Transgenic Animal Technology:A Laboratory Handbook、Academic Press(1999)を参照されたい。いくつかの実施形態では、遺伝子導入非ヒト動物は、対象とする重鎖および/または軽鎖をコードするターゲッティング構築物による標的破壊および置換を有する。任意の遺伝子導入動物中でP−カドヘリン抗体を作製することができる。好ましい実施形態では、非ヒト動物はマウス、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマである。非ヒト遺伝子導入動物は、血液、乳汁、尿、唾液、涙液、粘液および他の体液中で前記のコードされたポリペプチドを発現する。
クラススイッチ
当技術分野で知られている任意の方法によって、P−カドヘリン抗体のクラス(例えば、IgG、IgM、IgE、IgA、またはIgD)およびサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)を決定することができる。一般に、抗体の特定のクラスおよびサブクラスに特異的な抗体を使用して、抗体のクラスおよびサブクラスを決定することができる。そのような抗体は市販されている。クラスおよびサブクラスは、ELISA、またはウェスタンブロット法ならびに他の技術によって決定することができる。あるいは、クラスおよびサブクラスは、抗体の重鎖および/または軽鎖の定常ドメインの全部または一部の配列を決定し、そのアミノ酸配列をイムノグロブリンの様々なクラスおよびサブクラスの既知のアミノ酸配列と比較し、抗体のクラスおよびサブクラスを決定することによって決定することもできる。本発明のP−カドヘリン抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、またはIgD分子でよい。例えば、P−カドヘリン抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブクラスであるIgGでよい。一実施形態では、P−カドヘリン抗体は、配列番号344で示される重鎖定常領域、および配列番号345で示される軽鎖定常領域を有し得る。
本発明の一態様は、P−カドヘリン抗体のクラスまたはサブクラスを他のクラスまたはサブクラスに転換する方法を提供する。いくつかの実施形態では、CLまたはCHをコードする配列を含まない、VLまたはVHをコードする核酸分子を、当技術分野で周知の方法を使用して単離する。次いで、核酸分子を、所望されるイムノグロブリンのクラスまたはサブクラス由来のCLまたはCHをコードする核酸配列と作動的に連結する。これは、上記に記載のように、CLまたはCH鎖を含むベクターまたは核酸分子を使用して実現することができる。例えば、元はIgMであったP−カドヘリン抗体を、IgGにクラススイッチすることができる。さらに、クラススイッチを使用して、1つのIgGサブクラスを他のものに、例えばIgG1からIgG2に転換することができる。所望されるアイソタイプを含む本発明の抗体を作製する他の方法は、P−カドヘリン抗体の重鎖をコードする核酸およびP−カドヘリン抗体の軽鎖をコードする核酸を単離するステップと、VH領域をコードする配列を単離するステップと、VH配列を、所望されるアイソタイプの重鎖定常ドメインをコードする配列と連結するステップと、細胞中で軽鎖遺伝子および重鎖の構築物を発現させるステップと、所望されるアイソタイプを有するP−カドヘリン抗体を収集するステップとを含む。
脱免疫感作抗体
本発明の他の態様では、例えば(参照により本明細書に組み込まれている)PCT公開WO98/52976およびWO00/34317に記載されている技術を使用して、抗体またはその抗原結合部分を脱免疫感作して、その免疫原性を低下させることができる。
誘導体化および標識抗体
本発明のP−カドヘリン抗体または抗原結合部分を誘導体化しまたは他の分子(例えば他のペプチドまたはタンパク質)と連結することができる。一般に、P−カドヘリンの結合が誘導体化または標識によって悪影響を受けないように、抗体またはその部分を誘導体化する。したがって、本発明の抗体および抗体部分は、完全な形態と修飾した形態の、本明細書に記載のヒトP−カドヘリン抗体をどちらも含むものとする。例えば、本発明の抗体および抗体部分は、他の抗体(例えば、二重特異性抗体またはdiabody)、検出用作用物質、標識、細胞傷害作用物質、医薬作用物質、および/あるいは抗体または抗体の部分と他の分子(ストレプトアビジン中核領域やポリヒスチジンタグなど)の結合を媒介することができるタンパク質またはペプチドなど、1つまたは複数の他の分子成分と(化学結合、遺伝子融合、非共有結合またはその他の方法により)機能的に連結することができる。
1つの型の誘導体化抗体は、(同じ型の、または例えば二重特異性抗体を作製するために異なる型の)2つ以上の抗体を架橋することによって作製される。適切な架橋剤には、適当なスペーサーにより分離された2つの別々に反応する基を有する、ヘテロ二官能性であるもの(例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、またはホモ二官能性であるもの(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)がある。そのようなリンカーは、Pierce Chemical Company、イリノイ州Rockfordから入手可能である。
他の型の誘導体化抗体は標識抗体である。本発明の抗体または抗原結合部分を誘導体化することができる有用な検出用作用物質には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、塩化5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニル、フィコエリスリン、ランタニドリン光体などを含めた蛍光化合物がある。抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出に有用な酵素で標識することもできる。抗体を検出可能な酵素で標識したとき、それは、酵素を使用して、識別できる反応産物を生じさせるさらなる試薬を添加することによって検出される。例えば、作用物質の西洋ワサビペルオキシダーゼが存在するとき、過酸化水素およびジアミノベンチジンを添加すると、着色した反応産物が生じ、それは検出可能である。抗体はまた、ビオチンで標識し、アビジンまたはストレプトアビジンの結合の間接的測定を介して検出することもできる。抗体はまた、二次的レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーの対の配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)で標識することもできる。いくつかの実施形態では、標識を様々な長さのスペーサーアームにより結合して、潜在的な立体障害を低下させる。P−カドヘリン抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)、メチルまたはエチル基や、含水炭素基などの化学基で誘導体化することもできる。これらの基は、抗体の生物学的特徴の向上、例えば血清半減期の延長に有用である。
P−カドヘリンに対するP−カドヘリン抗体の結合親和性
P−カドヘリンに対するP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分の結合親和性(KD)および解離速度(Koff)を、当技術分野で知られている方法によって決定することができる。結合親和性は、ELISA、RIA、フローサイトメトリー、またはBIACORE(商標)などの表面プラズモン共鳴によって測定することができる。解離速度は、表面プラズモン共鳴によって測定することができる。好ましくは、結合親和性および解離速度を、表面プラズモン共鳴によって測定する。より好ましくは、結合親和性および解離速度を、BIACORE(商標)を使用して測定する。当技術分野で知られている方法を使用することによって、抗体がP−カドヘリン抗体と実質的に同じKDを有するかどうかを決定することができる。KDおよびKoffを決定するそのような方法は、最初のスクリーニング段階の間、ならびにその後の最適化段階の間に使用することができる。
P−カドヘリン抗体によって認識されるP−カドヘリンエピトープの同定
本発明は、P−カドヘリンと結合し、表1または2で記載した任意の抗体と同じエピトープと競合または交差競合し、かつ/あるいはそれと結合するヒトP−カドヘリン抗体を提供する。当技術分野で知られている方法を使用することによって、抗体が、同じエピトープと結合し、または結合について本発明のP−カドヘリン抗体と交差競合するかどうかを決定することができる。一実施形態では、本発明のP−カドヘリン抗体を飽和条件下でP−カドヘリンと結合させ、次いでP−カドヘリンと結合する試験抗体の能力を測定する。試験抗体がP−カドヘリン抗体と同じ時間でP−カドヘリンと結合できる場合、試験抗体は、P−カドヘリン抗体と異なるエピトープと結合する。しかし、試験抗体が同じ時間でP−カドヘリンと結合できない場合、試験抗体は、同じエピトープ、重複するエピトープ、またはヒトP−カドヘリン抗体が結合したエピトープに近接しているエピトープと結合する。この実験は、ELISA、RIA、BIACORE(商標)、またはフローサイトメトリーを使用して行うことができる。好ましい実施形態では、実験はELISAを使用して行う。
P−カドヘリン抗体によるP−カドヘリン活性の阻害
いくつかのアッセイを使用して、P−カドヘリン活性を阻害するP−カドヘリン抗体を同定することができる。細胞凝集アッセイは、例えば、P−カドヘリン依存性の細胞凝集を測定する方法をもたらす。この型のアッセイは、P−カドヘリンを過剰発現する細胞系統を使用し、その細胞を懸濁液中に入れ、P−カドヘリン依存性の凝集物を形成させる。次いで、凝集アッセイを使用して、抗体がある状態およびない状態で生じる細胞凝集物のサイズを測定することによりこの凝集を防止するP−カドヘリン抗体の能力を定量する。次いで、P−カドヘリン抗体濃度の関数としての細胞凝集物のサイズを使用して、IC50値を決定することができる。実施例4に、複数のP−カドヘリン抗体のIC50値の測定に使用したP−カドヘリン依存性凝集アッセイのさらなる詳細を示す。
細胞接着アッセイを使用して、固体支持体上に固定化されている受容体P−カドヘリンと細胞の接着を遮断するP−カドヘリン抗体の能力を測定することもできる。この型のアッセイは、例えば、プラスチックなどの固体支持体上にP−カドヘリンを固定化することによって実施することができる。次いで、P−カドヘリンを過剰発現する細胞を、P−カドヘリン間の相互作用を介して固体支持体に接着させる。次いで、P−カドヘリン抗体がある状態およびない状態で接着のレベルを定量することができる。次いで、抗体濃度の関数としての接着を使用して、IC50値を決定する。実施例3に、P−カドヘリン抗体のIC50値の測定に使用したP−カドヘリン依存性細胞接着アッセイのさらなる詳細を示す。
P−カドヘリン活性の阻害はまた、P−カドヘリン依存性スフェロイド破壊アッセイを使用して測定することもできる。この型のアッセイは、予め形成されたP−カドヘリン依存性の細胞凝集物を破壊するP−カドヘリン抗体の能力を測定するものである。抗体濃度の関数としての凝集物のサイズ低下を測定することによって、IC50値を決定することができる。実施例5に、P−カドヘリン抗体のIC50値の測定に使用したP−カドヘリン依存性スフェロイド破壊アッセイのさらなる詳細を示す。様々な抗体またはその抗原結合部分によってP−カドヘリン活性の阻害を決定する上記に記載の方法およびアッセイは、最初のスクリーニング段階の間、ならびにその後の最適化段階の間に使用することができる。
分子選択性
E−カドヘリンなど、他のカドヘリンと比べての本発明のP−カドヘリン抗体の選択性は、当技術分野で周知の方法を使用して決定することができる。例えば、ウェスタンブロット法、フローサイトメトリー、ELISA、免疫沈降法またはRIAを使用して、選択性を決定することができる。実施例7に、E−カドヘリンと比べてのP−カドヘリンに対する特異的抗体の選択性の測定に使用したELISAアッセイのさらなる詳細を示す。様々な抗体またはその抗原結合部分のP−カドヘリンに対する選択性を決定する上記に記載の方法およびアッセイは、最初のスクリーニング段階の間、ならびにその後の最適化段階の間に使用することができる。
医薬組成物および投与
本発明はまた、ヒトを含めた哺乳動物中の異常細胞増殖を治療するための医薬組成物にも関し、それは、異常細胞増殖の治療に有効な量の、本明細書に記載のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分、および薬学的に許容できる担体を含む。
本発明の抗体および抗原結合部分は、対象への投与に適した医薬組成物中に組み込むことができる。通常、医薬組成物は、本発明の抗体または抗原結合部分および薬学的に許容できる担体を含む。本明細書において、「薬学的に許容できる担体」は、生理学的に適合する任意のかつすべての溶媒、分散媒、被覆、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを意味する。薬学的に許容できる担体の一部の例は、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにその組合せである。多数の場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトールなどのポリアルコール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。薬学的に許容できる物質のさらなる例は、湿潤剤、あるいは湿潤剤または乳化剤、保存剤や緩衝剤などの少量の補助物質であり、それは抗体の貯蔵寿命または有効性を高める。
本発明の組成物は、様々な形態、例えば、液剤(例えば、注射可能かつ注入可能な液剤)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、リポソームおよび坐剤などの液体、半固体、および固体の剤形のものでよい。好ましい形態は、意図される投与形態、および治療への適用によって決まる。通常好ましい組成物は、ヒトの受動的免疫感作に使用するものに類似した組成物など、注射可能なまたは注入可能な溶剤の形態である。好ましい投与形態は、非経口(例えば、静脈内、経皮、腹腔内、筋内)投与である。好ましい実施形態では、静脈内注入または注射によって抗体を投与する。他の好ましい実施形態では、筋内または経皮注射によって抗体を投与する。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、保存剤を添加したまたは添加しないアンプルでまたは複数投与量の容器で提供することができる。組成物は、懸濁剤、液剤や油性または水性媒体中のエマルジョン剤などの形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤などの製剤用作用物質(formulatory agent)を含んでよい。あるいは、有効成分は、使用前に適切な媒体で、例えば、発熱物質を含まない滅菌水で溶く粉末の形態でもよい。
治療用組成物は通常、製造および貯蔵の条件下で無菌的かつ安定でなければならない。組成物は、溶剤、マイクロエマルジョン剤、分散剤、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の規則正しい構造として製剤することができる。注射可能な滅菌溶剤は、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたはその組合せを含む適当な溶媒中に必要量の抗体を入れ、その後濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散剤は、基礎となる分散媒、および上記に列挙したものから必要な他の成分を含む滅菌媒体中に活性化合物を入れることによって調製する。注射可能な滅菌溶剤調製用の滅菌粉末剤の場合では、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過したその溶液から有効成分+任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥である。溶剤の適当な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆の使用、分散剤の場合では必要な粒子サイズの維持、および界面活性物質の使用によって維持することができる。注射可能な組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
本発明の抗体または抗体部分は、当技術分野で知られている様々な方法によって投与することができるが、多くの治療への適用では、好ましい投与経路/形態は、経皮、筋内、または静脈内注入である。当業者には理解されるであろうが、投与経路および/または形態は、所望の結果に応じて様々となる。
特定の実施形態では、植込錠、経皮貼布、およびマイクロカプセル化送達系を含めた制御放出製剤など、急速な放出から化合物を保護する担体とともに本発明の抗体組成物を調製することができる。酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生体分解性、生体適合性のポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製する多数の方法が一般に当業者に知られている。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York(1978)を参照されたい。
さらなる活性化合物を組成物中に組み込むこともできる。特定の実施形態では、本発明の阻害性P−カドヘリン抗体を、1つまたは複数のさらなる治療用作用物質と同時に製剤および/または投与することができる。これらの作用物質には、それだけに限らないが、他の標的と結合する抗体、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、シグナル伝達阻害剤、抗増殖剤、化学療法剤、またはP−カドヘリンを阻害するペプチド類似体がある。そのような併用療法は、低投与量の阻害性P−カドヘリン抗体ならびに同時投与する作用物質を必要とする可能性があり、それによって、種々の単剤療法と関係する、考えられる毒性または合併症が回避される。
本発明の組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の、本発明の抗体または抗原結合部分を含んでよい。「治療有効量」とは、必要な投与量および期間で、所望の治療結果を実現するのに有効な量を指す。抗体または抗原結合部分の治療有効量は、個人の病期、年齢、性別および体重や、個人において所望の応答を誘発する抗体または抗体部分の能力などのファクターに応じて様々となる可能性がある。治療有効量とは、抗体または抗原結合部分の任意の毒性のあるまたは有害な効果より、治療上有益な効果が勝っているものでもある。「予防有効量」とは、必要な投与量および期間で、所望の予防結果を実現するのに有効な量を指す。通常、疾患の前またはその初期段階で対象において予防上の投与を使用するので、予防有効量は、治療有効量より少ない可能性がある。
投与法を調整して、最適な所望の応答(例えば、治療的または予防的応答)をもたらすことができる。例えば、治療の状況の緊急性によって示される通りに、単回ボーラス投与を行うこともでき、いくつかに分割した投与を、時間をかけて行うこともでき、あるいは投与量を比例的に増減することもできる。投与しやすく投与量が均一な単位剤形で非経口組成物を製剤すると特に有利となる。本明細書において、単位剤形とは、治療される哺乳動物対象に対する単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な薬学的担体とともに所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物を含む。本発明の単位剤形の指定は、(a)P−カドヘリン抗体またはその部分の独特の特徴および実現される特定の治療的または予防的効果、ならびに(b)個人における感受性の治療用のそのような抗体を化合する技術に固有の制限によって決定され、それらに直接依存する。
本発明の抗体または抗体部分の治療または予防有効量の例示的であり非限定的な範囲は、0.025〜50mg/kgであり、より好ましくは0.1〜50mg/kgであり、より好ましくは0.1〜25、0.1〜10または0.1〜3mg/kgである。いくつかの実施形態では、製剤は、20mMのクエン酸ナトリウム、pH5.5、140mMのNaCl、および0.2mg/mLのポリソルベート80の緩衝液中に5mg/mLの抗体を含む。緩和する状態の型および重症度によって投与値は様々でよいことに留意されたい。任意の特定の対象について、個々の必要性、および組成物の投与を行いまたは指示する者の職業的判断に従って具体的な投与法をその過程で調整すべきであり、本明細書で示した投与量の範囲は例示的なものにすぎず、特許請求に係る組成物の範囲または実施を限定するものではないことをさらに理解されたい。
本発明の他の態様は、本発明のP−カドヘリン抗体または抗原結合部分、あるいはそのような抗体または部分を含む組成物を含むキットを提供する。キットは、抗体または組成物に加えて、診断用または治療用作用物質を含んでよい。キットはまた、診断または治療方法における使用説明書を含んでもよい。好ましい実施形態では、キットは、抗体またはそれを含む組成物、および下記に記載の方法で使用することができる診断用作用物質を含む。他の好ましい実施形態では、キットは、抗体またはそれを含む組成物、および下記に記載の方法で使用することができる1つまたは複数の治療用作用物質を含む。
使用する診断方法
P−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分を診断方法で使用して、in vitroまたはin vivoで生体試料中のP−カドヘリンを検出することができる。例えば、P−カドヘリン抗体は、それだけに限らないが、ELISA、RIA、フローサイトメトリー、組織の免疫組織化学分析、ウェスタンブロット法または免疫沈降法を含めて、従来のイムノアッセイで使用することができる。本発明のP−カドヘリン抗体を使用して、ヒトのP−カドヘリンを検出することができる。P−カドヘリン抗体を使用して、マウス、ラットおよびカニクイザルのP−カドヘリンを検出することもできる。
本発明は、生体試料中のP−カドヘリンを検出する方法を提供し、その方法は、生体試料を本発明のP−カドヘリン抗体と接触させるステップと、結合した抗体を検出するステップとを含む。一実施形態では、P−カドヘリン抗体を検出可能な標識で直接標識する。他の実施形態では、P−カドヘリン抗体(一次抗体)を標識せず、P−カドヘリン抗体と結合することができる二次抗体または他の分子を標識する。当業者には周知であろうが、特定の種およびクラスの一次抗体と特異的に結合することができる二次抗体を選択する。例えば、P−カドヘリン抗体がヒトIgGである場合、二次抗体は抗ヒトIgGでよい。抗体と結合することができる他の分子には、それだけに限らないが、例えばPierce Chemical Co.からどちらも市販されているプロテインAおよびプロテインGがある。
抗体または二次抗体に適した標識は前記で論じており、それには、様々な酵素、接合団、蛍光物質、発光物質および放射性物質がある。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼがあり、適切な接合団複合体の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリスリンがあり、発光物質の例にはルミノールがあり、適切な放射性物質の例には、125I、131I、35Sまたは3Hがある。
他の実施形態では、検出可能な物質で標識したP−カドヘリン標準物質および非標識P−カドヘリン抗体を利用する競合イムノアッセイによって、生体試料中でP−カドヘリンのアッセイを行うことができる。このアッセイでは、生体試料、標識P−カドヘリン標準物質およびP−カドヘリン抗体を混合し、非標識抗体と結合した標識P−カドヘリン標準物質の量を決定する。生体試料中のP−カドヘリンの量は、P−カドヘリン抗体と結合した標識P−カドヘリン標準物質の量と反比例する。
いくつかの目的で、上記で開示されているイムノアッセイを使用することができる。例えば、P−カドヘリン抗体を使用して、培養細胞中でP−カドヘリンを検出することができる。好ましい実施形態では、P−カドヘリン抗体を使用して、様々な化合物で処理されている細胞によって産生されたP−カドヘリンの量を決定する。この方法を使用して、P−カドヘリンのタンパク質レベルを調節する化合物を同定することができる。この方法に従って、1つの試料の細胞を試験化合物でしばらくの間処理し、その一方で他の試料を処理しないままにしておく。全体レベルのP−カドヘリンを測定する場合、細胞を溶解し、上記に記載のイムノアッセイの1つを使用して全体のP−カドヘリンレベルを測定する。処理細胞対非処理細胞の全体レベルのP−カドヘリンを比較して、試験化合物の効果を決定する。
全体のP−カドヘリンレベルの測定に好ましいイムノアッセイは、フローサイトメトリーまたは免疫組織化学分析である。ELISA、RIA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学分析、内在性膜タンパク質の細胞表面標識および免疫沈降法などの方法は、当技術分野で周知である。例えば、HarlowおよびLane、上記を参照されたい。さらに、P−カドヘリン発現の活性化または阻害について多数の化合物を試験するために、イムノアッセイの規模を高処理能スクリーニングに拡大することができる。
本発明のP−カドヘリンを使用して、組織中または組織に由来する細胞中のP−カドヘリンのレベルを決定することもできる。いくつかの実施形態では、組織は罹患組織である。その方法のいくつかの実施形態では、組織またはその生検材料を患者から切り出す。次いで、組織または生検材料をイムノアッセイで使用して、例えば、上記で論じた方法によって全体のP−カドヘリンレベルまたはP−カドヘリンの局在を決定することができる。
本発明の抗体をin vivoで使用して、P−カドヘリンを発現する組織および臓器を特定することもできる。本発明のヒトP−カドヘリン抗体を使用する1つの利点は、非ヒト由来の抗体、あるいはヒト化またはキメラ抗体を有する抗体と異なり、投与後に抗体に対する実質的な免疫応答を誘発することなく、それをin vivoで安全に使用できることである。
その方法は、検出可能となるように標識したP−カドヘリン抗体またはそれを含む組成物を、そのような診断試験の必要がある患者に投与するステップと、患者に画像化分析を施してP−カドヘリン発現組織の位置を決定するステップとを含む。画像化分析は医療技術分野で周知であり、それには、それだけに限らないが、X線分析、磁気共鳴画像化(MRI)またはコンピュータ断層撮影(CT)がある。抗体は、in vivo画像化に適した任意の作用物質、例えば、X線分析に使用することができるバリウムなどの造影剤、あるいはMRIまたはCTに使用することができるガドリニウムキレートなどの磁性造影剤で標識することができる。他の標識用作用物質には、それだけに限らないが、99Tcなどの放射性同位体がある。他の実施形態では、P−カドヘリン抗体を標識せず、検出可能でありP−カドヘリン抗体と結合することができる二次抗体または他の分子を投与することによって画像化を行う。一実施形態では、患者から生検材料を得て、対象とする組織がP−カドヘリンを発現するかどうかを決定する。
使用する治療方法
他の実施形態では、本発明は、その必要がある患者にP−カドヘリン抗体を投与することによってP−カドヘリン活性を阻害する方法を提供する。本明細書に記載の抗体または抗原結合部分のいずれかを治療上使用することができる。好ましい実施形態では、P−カドヘリン抗体は、ヒト抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体である。他の好ましい実施形態では、P−カドヘリンはヒトであり、患者はヒト患者である。あるいは、患者は、P−カドヘリンが交差反応するP−カドヘリンを発現する哺乳動物でもよい。獣医学的な目的で、またはヒト疾患の動物モデルとして、抗体が交差反応するP−カドヘリンを発現する非ヒト哺乳動物(例えば、ラット、マウス、またはカニクイザル)に抗体を投与することができる。そのような動物モデルは、本発明の抗体の治療効果を評価するのに有用である可能性がある。
他の実施形態では、P−カドヘリン抗体またはその抗体部分を、不適切に高レベルのP−カドヘリンを発現する患者に投与することができる。抗体は、1回投与することができるが、より好ましくは複数回投与する。抗体は、1日に3回から6カ月以上毎に1回で投与することができる。投与は、1日に3回、1日に2回、1日に1回、2日毎に1回、3日毎に1回、1週間に1回、2週間毎に1回、1カ月毎に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回や6カ月毎に1回などの予定で行うことができる。抗体はまた、ミニポンプにより連続して投与することもできる。抗体は、粘膜経路、口腔内経路、鼻内経路、吸入可能な経路、静脈内経路、皮下経路、筋内経路、非経口経路、または腫瘍内経路を介して投与することができる。抗体は、1回、少なくとも2回、あるいは、状態が治療され、緩和しまたは治癒するまで少なくともしばらくの間投与することができる。抗体は一般に、状態が存在する限り投与される。抗体は一般に、上記に記載の医薬組成物の一部として投与される。抗体の投与量は一般に0.1〜100mg/kg、より好ましくは0.5〜50mg/kg、より好ましくは1〜20mg/kg、さらに好ましくは1〜10mg/kgとなる。抗体の血清濃度は、当技術分野で知られている任意の方法によって測定することができる。
本発明はまた、ヒトを含めた哺乳動物中の異常細胞増殖を治療する方法にも関し、その方法は、異常細胞増殖の治療に有効な、本明細書に記載のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分を前記哺乳動物に治療有効量投与するステップを含む。
この方法の一実施形態では、異常細胞増殖は、それだけに限らないが、中皮腫、肝胆管(肝および胆管)腫瘍、原発性または続発性のCNS腫瘍、原発性または続発性の脳腫瘍、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、骨癌、膵癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚性または眼内黒色腫、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、胃腸(胃、結腸直腸、および十二指腸)癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚部癌、膣癌、外陰部癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、精巣癌、慢性または急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎または尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、多発性骨髄腫、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、あるいは上記の癌の1つまたは複数の組合せを含めた癌である。
本発明の好ましい実施形態では、癌は、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、頭頚部癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、乳癌、腎または尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、あるいは上記の癌の1つまたは複数の組合せから選択される。
本発明の他の好ましい実施形態では、癌は、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門領域の癌、あるいは上記の癌の1つまたは複数の組合せから選択される。
前記方法の他の実施形態では、前記異常細胞増殖は、それだけに限らないが、乾癬、良性前立腺肥大または再狭窄を含めた良性増殖性疾患である。
本発明はまた、哺乳動物中の異常細胞増殖を治療する方法にも関し、その方法は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、挿入抗生物質、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾物質、抗体、細胞傷害性物質、抗ホルモン、および抗アンドロゲンからなる群から選択される抗腫瘍剤と組み合わせた、異常細胞増殖の治療に有効な量の、本明細書に記載のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分を前記哺乳動物に投与するステップを含む。
本発明はまた、ヒトを含めた哺乳動物中の異常細胞増殖を治療するための医薬組成物にも関し、それは、薬学的に許容できる担体、ならびに有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、挿入抗生物質、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾物質、抗ホルモン、および抗アンドロゲンからなる群から選択される抗腫瘍剤と組み合わせた、異常細胞増殖の治療に有効な量の、本明細書に記載のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分を含む。
本発明はまた、哺乳動物中の過剰増殖性障害を治療する方法にも関し、その方法は、抗増殖剤、キナーゼ阻害剤、血管新生阻害剤、成長因子阻害剤、cox−I阻害剤、cox−II阻害剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、挿入抗生物質、成長因子阻害剤、放射線、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾物質、抗体、細胞傷害性物質、抗ホルモン、スタチン、および抗アンドロゲンからなる群から選択される抗腫瘍剤と組み合わせた、本明細書に記載のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分を前記哺乳動物に治療有効量投与するステップを含む。
本発明の一実施形態では、本明細書に記載のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分および医薬組成物と組み合わせて使用する抗腫瘍剤は、抗血管新生剤、キナーゼ阻害剤、汎性キナーゼ阻害剤または成長因子阻害剤である。好ましい汎性キナーゼ阻害剤には、米国特許第6,573,293号に記載のSU−11248(Pfizer,Inc、米国ニューヨーク州)がある。
抗血管新生剤には、それだけに限らないが、EGF阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、TIE2阻害剤、IGF1R阻害剤、COX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤、MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)阻害剤やMMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)阻害剤などの作用物質がある。好ましいVEGF阻害剤には、例えば、カリフォルニア州South San FranciscoのGenentechの抗VEGFモノクローナル抗体であるAvastin(ベバシズマブ)がある。
さらなるVEGF阻害剤には、CP−547,632(Pfizer Inc.、米国ニューヨーク州)、AG13736(Pfizer Inc.)、ZD−6474(AstraZeneca)、AEE788(Novartis)、AZD−2171、VEGF Trap(Regeneron、/Aventis)、バタラニブ(PTK−787、ZK−222584としても知られる:Novartis & Schering AG)、Macugen(ペガプタニブ八ナトリウム、NX−1838、EYE−001、Pfizer Inc./Gilead/Eyetech)、IM862(米国ワシントン州KirklandのCytran Inc.);およびRibozyme(コロラド州Boulder)およびChiron(カリフォルニア州Emeryville)の合成リボザイムであるアンギオザイム(angiozyme)ならびにその組合せがある。本発明の実施で有用なVEGF阻害剤は、米国特許第6,534,524号および第6,235,764号で開示されており、どちらもすべての目的でその全体が組み込まれている。特に好ましいVEGF阻害剤には、CP−547,632、AG13736、バタラニブ、Macugenおよびその組合せがある。
さらなるVEGF阻害剤は、例えば、WO99/24440(1999年5月20日に公開)、PCT国際出願PCT/IB99/00797(1999年5月3日に出願)、WO95/21613(1995年8月17日に公開)、WO99/61422(1999年12月2日に公開)、米国特許第6,534,524号(AG13736を開示)、米国特許第5,834,504号(1998年11月10日に発行)、WO98/50356(1998年11月12日に公開)、米国特許第5,883,113号(1999年3月16日に発行)、米国特許第5,886,020号(1999年3月23日に発行)、米国特許第5,792,783号(1998年8月11日に発行)、米国特許第6,653,308号(2003年11月25日に発行)、WO99/10349(1999年3月4日に公開)、WO97/32856(1997年9月12日に公開)、WO97/22596(1997年6月26日に公開)、WO98/54093(1998年12月3日に公開)、WO98/02438(1998年1月22日に公開)、WO99/16755(1999年4月8日に公開)、およびWO98/02437(1998年1月22日に公開)に記載され、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
本発明の抗体またはその抗原結合部分とともに使用することができる他の抗増殖剤には、米国特許出願第09/221946号(1998年12月28日に出願)、第09/454058号(1999年12月2日に出願)、第09/501163号(2000年2月9日に出願)、第09/539930号(2000年3月31日に出願)、第09/202796号(1997年5月22日に出願)、第09/384339号(1999年8月26日に出願)、および第09/383755号(1999年8月26日に出願)で開示され、特許請求されている化合物、ならびに米国仮特許出願第60/168207号(1999年11月30日に出願)、第60/170119号(1999年12月10日に出願)、第60/177718号(2000年1月21日に出願)、第60/168217号(1999年11月30日に出願)、および第60/200834号(2000年5月1日に出願)で開示され、特許請求されている化合物を含めた、酵素ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害剤、および受容体チロシンキナーゼPDGFrの阻害剤がある。上記の特許出願および仮特許出願はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
PDGFr阻害剤には、それだけに限らないが、2001年7月7日に公開されたWO01/40217、および2004年3月11日に公開されたWO2004/020431で開示されているものがあり、その内容は、すべての目的でその全体が組み込まれている。好ましいPDGFr阻害剤には、PfizerのCP−673,451およびCP−868,596、ならびにその薬学的に許容できるその塩がある。
好ましいGARF阻害剤には、PfizerのAG−2037(ペリトレキソール(pelitrexol)および薬学的に許容できるその塩)がある。本発明の実施で有用なGARF阻害剤は、すべての目的でその全体が組み込まれている米国特許第5,608,082号で開示されている。
本明細書に記載のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分、および本明細書に記載の医薬組成物と組み合わせて使用することができる有用なCOX−II阻害剤の例には、CELEBREX(商標)(セレコキシブ)、パレコキシブ、デラコキシブ、ABT−963、MK−663(エトリコキシブ)、COX−189(ルミラコキシブ)、BMS347070、RS57067、NS−398、Bextra(バルデコキシブ)、パラコキシブ(paracoxib)、Vioxx(ロフェコキシブ)、SD−8381、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロール、2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、T−614、JTE−522、S−2474、SVT−2016、CT−3、SC−58125およびArcoxia(エトリコキシブ)がある。さらに、COX−II阻害剤は、米国特許出願第10/801,446号および第10/801,429号で開示されており、その内容は、すべての目的でその全体が組み込まれている。
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、米国特許第5,466,823号で開示されているセレコキシブであり、その内容は、すべての目的でその全体が参照により組み込まれている。セレコキシブの構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、米国特許第5,633,272号で開示されているバルデコキシブ(valdecoxib)であり、その内容は、すべての目的でその全体が参照により組み込まれている。バルデコキシブの構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、米国特許第5,932,598号で開示されているパレコキシブであり、その内容は、すべての目的でその全体が参照により組み込まれている。パラコキシブの構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、米国特許第5,521,207号で開示されているデラコキシブであり、その内容は、すべての目的でその全体が参照により組み込まれている。デラコキシブの構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、米国特許第6,034,256号で開示されているSD−8381であり、その内容は、すべての目的でその全体が参照により組み込まれている。SD−8381の構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、国際公開WO2002/24719で開示されているABT−963であり、その内容は、すべての目的でその全体が参照により組み込まれている。ABT−963の構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、下記に示すロフェコキシブである:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、国際公開WO1998/03484で開示されているMK−663(エトリコキシブ)であり、その内容は、すべての目的でその全体が参照により組み込まれている。エトリコキシブの構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、国際公開WO1999/11605で開示されているCOX−189(ルミラコキシブ)であり、その内容は、すべての目的でその全体が参照により組み込まれている。ルミラコキシブの構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、米国特許第6,180,651号で開示されているBMS−347070であり、その内容は、すべての目的でその全体が参照により組み込まれている。BMS−347070の構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、NS−398(CAS 123653−11−2)である。NS−398(CAS 123653−11−2)の構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、RS57067(CAS 17932−91−3)である。RS−57067(CAS 17932−91−3)の構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロールである。4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロールの構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロールである。2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロールの構造を下記に示す:
好ましい一実施形態では、抗腫瘍剤は、メロキシカムである。メロキシカムの構造を下記に示す:
本発明の抗体および本明細書に記載の医薬組成物と組み合わせて使用する抗腫瘍剤として有用な他の阻害剤には、プロスタグランジンを作り出す酵素(シクロオキシゲナーゼIおよびII)を阻害し、その結果プロスタグランジンのレベルを低下させるアスピリンおよび非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)があり、それだけに限らないが、サルサレート(Amigesic)、ジフルニサル(Dolobid)、イブプロフェン(Motrin)、ケトプロフェン(Orudis)、ナブメトン(Relafen)、ピロキシカム(Feldene)、ナプロキセン(Aleve、Naprosyn)、ジクロフェナク(Voltaren)、インドメタシン(Indocin)、スリンダック(Clinoril)、トルメチン(Tolectin)、エトドラク(Lodine)、ケトロラック(Toradol)、オキサプロジン(Daypro)、およびその組合せがある。好ましいCOX−I阻害剤には、イブプロフェン(Motrin)、ニュープリン、ナプロキセン(Aleve)、インドメタシン(Indocin)、ナブメトン(Relafen)、およびその組合せがある。
本明細書に記載のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分、および本明細書に記載のその医薬組成物と組み合わせて使用する標的作用物質には、Iressa(ゲフィチニブ、AstraZeneca)、Tarceva(エルロチニブまたはOSI−774、OSI Pharmaceuticals Inc.)、Erbitux(セツキシマブ、Imclone Pharmaceuticals,Inc.)、EMD−7200(Merck AG)、ABX−EGF(Amgen Inc.およびAbgenix Inc.)、HR3(キューバ政府(Cuban Government))、IgA抗体(Erlangen−Nuremberg大学)、TP−38(IVAX)、EGFR融合タンパク質、EGF−ワクチン、抗EGFrイムノリポソーム(Hermes Biosciences Inc.)やその組合せなどのEGFr阻害剤がある。
好ましいEGFr阻害剤には、Iressa、Erbitux、Tarcevaおよびその組合せがある。
本発明はまた、CP−724,714(Pfizer,Inc.)、CI−1033(カネルチニブ(canertinib)、Pfizer,Inc.)、Herceptin(トラスツズマブ、Genentech Inc.)、Omitarg(2C4、ペルツズマブ、Genentech Inc.)、TAK−165(Takeda)、GW−572016(ロナファルニブ(lonafarnib)、GlaxoSmithKline)、GW−282974(GlaxoSmithKline)、EKB−569(Wyeth)、PKI−166(Novartis)、dHER2(HER2ワクチン、CorixaおよびGlaxoSmithKline)、APC8024(HER2ワクチン、Dendreon)、抗HER2/neu二重特異性抗体(Decof Cancer Center)、B7.her2.IgG3(Agensys)、AS HER2(Research Institute for Rad Biology & Medicine)、三官能二重特異性抗体(Munich大学)、mAB AR−209(Aronex Pharmaceuticals Inc)およびmAB 2B−1(Chiron)ならびにその組合せなど、汎性erb受容体阻害剤またはErbB2受容体阻害剤から選択される抗腫瘍剤にも関する。好ましいerb選択的抗腫瘍剤には、Herceptin、TAK−165、CP−724,714、ABX−EGF、HER3およびその組合せがある。好ましい汎性erbb受容体阻害剤には、GW572016、CI−1033、EKB−569、およびOmitargならびにその組合せがある。
さらなるerbB2阻害剤には、WO98/02434(1998年1月22日に公開)、WO99/35146(1999年7月15日に公開)、WO99/35132(1999年7月15日に公開)、WO98/02437(1998年1月22日に公開)、WO97/13760(1997年4月17日に公開)、WO95/19970(1995年7月27日に公開)、米国特許第5,587,458号(1996年12月24日に発行)、および米国特許第5,877,305号(1999年3月2日に発行)に記載のものがあり、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。本発明で有用なErbB2受容体阻害剤はまた、米国特許第6,465,449号、および第6,284,764号、ならびに国際出願WO2001/98277にも記載され、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
さらに、他の抗腫瘍剤は、作用物質BAY−43−9006(Onyx Pharmaceuticals Inc.)、Genasense(オーグメロセン(augmerosen)、Genta)、パニツムマブ(Abgenix/Amgen)、Zevalin(Schering)、Bexxar(Corixa/GlaxoSmithKline)、Abarelix、Alimta、EPO906(Novartis)、ディスコデルモライド(XAA−296)、ABT−510(Abbott)、ネオバスタット(Aeterna)、エンザスタウリン(Eli Lilly)、コンブレスタチン(Combrestatin)A4P(Oxigene)、ZD−6126(AstraZeneca)、フラボピリドール(Aventis)、CYC−202(Cyclacel)、AVE−8062(Aventis)、DMXAA(Roche/Antisoma)、Thymitaq(Eximias)、Temodar(テモゾロミド、Schering Plough)およびRevilimd(Celegene)ならびにその組合せから選択することができる。
他の抗腫瘍剤は、作用物質CyPat(酢酸シプロテロン)、Histerelin(酢酸ヒストレリン)、Plenaixis(アバレリクスデポー剤)、アトラセンタン(ABT−627)、サトラプラチン(JM−216)、サロミド(サリドマイド)、Theratope、テミリフェン(Temilifene)(DPPE)、ABI−007(パクリタキセル)、Evista(ラロキシフェン)、アタメスタン(Biomed−777)、Xyotax(ポリグルタミン酸付加パクリタキセル)、Targetin(ベクサロチン(bexarotine))およびその組合せから選択することができる。
さらに、他の抗腫瘍剤は、作用物質Trizaone(チラパザミン)、Aposyn(エクシスリンド(exisulind))、Nevastat(AE−941)、Ceplene(二塩酸ヒスタミン)、Orathecin(ルビテカン)、Virulizin、Gastrimmune(G17DT)、DX−8951f(メシル酸エキサテカン)、Onconase(ランピルナーゼ)、BEC2(ミツモアブ(mitumoab))、Xcytrin(モテキサフィンガドリニウム(motexafin gadolinium))およびその組合せから選択することができる。
さらなる抗腫瘍剤は、作用物質CeaVac(CEA)、NeuTrexin(グルクロン酸トリメトレキセート)およびその組合せから選択することができる。さらなる抗腫瘍剤は、作用物質OvaRex(オレゴボマブ)、Osidem(IDM−1)およびその組合せから選択することができる。さらなる抗腫瘍剤は、作用物質Advexin(ING 201)、Tirazone(チラパザミン)およびその組合せから選択することができる。さらなる抗腫瘍剤は、作用物質RSR13(エファプロキシラール)、Cotara(131I chTNT 1/b)、NBI−3001(IL−4)およびその組合せから選択することができる。さらなる抗腫瘍剤は、作用物質Canvaxin、GMKワクチン、PEG Interon A、Taxoprexin(DHA/パクリタキセル)およびその組合せから選択することができる。他の好ましい抗腫瘍剤には、PfizerのMEK1/2阻害剤であるPD325901、Array BiopharmのMEK阻害剤であるARRY−142886、Bristol MyerのCDK2阻害剤であるBMS−387,032、PfizerのCDK阻害剤であるPD0332991およびAstraZenecaのAXD−5438ならびにその組合せがある。さらに、CCI−779(Wyeth)やラパマイシン誘導体RAD001(Novartis)およびAP−23573(Ariad)などのmTOR阻害剤、HDAC阻害剤SAHA(Merck Inc./Aton Pharmaceuticals)ならびにその組合せを利用することもできる。さらなる抗腫瘍剤には、aurora2阻害剤VX−680(Vertex)、Chk1/2阻害剤XL844(Exilixis)がある。
下記の細胞傷害作用物質、例えば、エピルビシン(Ellence)、ドセタキセル(Taxotere)、パクリタキセル、Zinecard(デクスラゾキサン)、リツキシマブ(Rituxan)、メシル酸イマチニブ(Gleevec)およびその組合せからなる群から選択される1つまたは複数の作用物質を、本明細書に記載のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分、および本明細書に記載のその医薬組成物と組み合わせて使用することができる。
本発明はまた、それだけに限らないが、エキセメスタン(Aromasin、Pfizer Inc.)、リュープロレリン(LupronまたはLeuplin、TAP/Abbott/Takeda)、アナストロゾール(Arimidex、Astrazeneca)、ゴセレリン(Zoladex、AstraZeneca)、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、ホルメスタン、クエン酸タモキシフェン(tamoxifen、Nolvadex、AstraZeneca)、Casodex(AstraZeneca)、Abarelix(Praecis)、Trelstarおよびその組合せを含めたホルモン療法剤と一緒に、本発明の抗体およびその抗原結合部分を使用することを意図するものでもある。
本発明はまた、それだけに限らないが、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、レトロゾール(Femara、Novartis)を含めた抗エストロゲン、ビカルタミド、フルタミド、ミフェプリストン、ニルタミド、Casodex(登録商標)(4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド、ビカルタミド)などの抗アンドロゲンなどのホルモン療法剤およびその組合せにも関する。
さらに、本発明は、単独で、あるいは1つまたは複数の対症療法用製品、例えば、フィルグラスチム(Neupogen)、オンダンセトロン(Zofran)、Fragmin、Procrit、Aloxi、Emendまたはその組合せからなる群から選択される製品と組み合わせて、本発明の抗体を提供するものである。
特に好ましい細胞傷害作用物質には、Camptosar、Erbitux、Iressa、Gleevec、Taxotereおよびその組合せがある。
下記のトポイソメラーゼI阻害剤を抗腫瘍剤として利用することができる:カンプトセシン、イリノテカンHCl(Camptosar)、エドテカリン、オラセシン(orathecin)(Supergen)、エキサテカン(Daiichi)、BN−80915(Roche)およびその組合せ。特に好ましいトポイソメラーゼII阻害剤には、エピルビシン(Ellence)がある。
本発明の抗体は、抗腫瘍剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗生物質、植物由来の抗腫瘍剤、カンプトセシン誘導体、チロシンキナーゼ阻害剤、他の抗体、インターフェロン、および/または生物学的応答修飾物質とともに使用することができる。
アルキル化剤には、それだけに限らないが、ナイトロジェンマスタードN−オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、ミトブロニトール、カルボコン、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、テモゾロマイド、AMD−473、アルトレタミン、AP−5280、アパジコン(apaziquone)、ブロスタリシン(brostallicin)、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、フォテムスチン、グルフォスファミド、イホスファミド、KW−2170、マホスファミド、およびミトラクトールがある;白金配位アルキル化化合物には、それだけに限らないが、シスプラチン、Paraplatin(カルボプラチン)、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、Eloxatin(オキサリプラチン、Sanofi)またはサトラプラチンおよびその組合せがある。特に好ましいアルキル化剤にはEloxatin(オキサリプラチン)がある。
代謝拮抗物質には、それだけに限らないが、メトトレキセート、6−メルカプトプリンリボシド、メルカプトプリン、単独のまたはロイコボリンと組み合わせた5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、エノシタビン、S−1、Alimta(プレメトレキセド(premetrexed)二ナトリウム、LY231514、MTA)、Gemzar(ゲムシタビン、Eli Lilly)、フルダラビン、5−アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルニチン、エチニルシチジン、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、TS−1、メルファラン、ネララビン、ノラトレキセド、オクホスファート、プレメトレキセド二ナトリウム(disodium premetrexed)、ペントスタチン、ペリトレキソール(pelitrexol)、ラルチトレキセド、トリアピン(triapine)、トリメトレキセート、ビダラビン、ビンクリスチン、ビノレルビン;あるいは、例えば、N−(5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル)−L−グルタミン酸などの欧州特許出願第239362号で開示されている好ましい代謝拮抗物質の1つ、およびその組合せがある。
抗生物質には、それだけに限らないが、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アムルビシン、アンナマイシン(annamycin)、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エルサミツルシン(elsamitrucin)、エピルビシン、ガラルビシン(galarubicin)、イダルビシン、マイトマイシンC、ネモルビシン(nemorubicin)、ネオカルチノスタチン、ペプロマイシン、ピラルビシン、レベッカマイシン、スチマラマー、ストレプトゾシン、バルルビシン、ジノスタチンおよびその組合せを含めた挿入抗生物質がある。
植物由来の抗腫瘍物質には、例えば、有糸分裂阻害剤、例えばビンブラスチン、ドセタキセル(Taxotere)、パクリタキセルおよびその組合せから選択されるものがある。
細胞傷害性トポイソメラーゼ阻害作用物質には、アクラルビシン、アモナフィド、ベロテカン(belotecan)、カンプトセシン、10−ヒドロキシカンプトセシン、9−アミノカンプトセシン、ジフロモテカン(diflomotecan)、イリノテカンHCl(Camptosar)、エドテカリン、エピルビシン(Ellence)、エトポシド、エキサテカン、ギマテカン(gimatecan)、ルルトテカン(lurtotecan)、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピクサントロン(pixantrone)、ルビテカン、ソブゾキサン、SN−38、タフルポシド(tafluposide)、トポテカン、およびその組合せからなる群から選択される1つまたは複数の作用物質がある。
好ましい細胞傷害性トポイソメラーゼ阻害作用物質には、カンプトセシン、10−ヒドロキシカンプトセシン、9−アミノカンプトセシン、イリノテカンHCl(Camptosar)、エドテカリン、エピルビシン(Ellence)、エトポシド、SN−38、トポテカン、およびその組合せからなる群から選択される1つまたは複数の作用物質がある。
免疫学的作用物質には、インターフェロンおよび多数の他の免疫増強作用物質がある。インターフェロンには、インターフェロンα、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ−1a、インターフェロンγ−1b(Actimmune)、またはインターフェロンγ−n1、およびその組合せがある。他の作用物質には、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、TheraCys、ウベニメクス、WF−10、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM−002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、レンチナン、黒色腫ワクチン(Corixa)、モルグラモスチム、OncoVAX−CL、サルグラモスチム、タソネルミン、テクロイキン(tecleukin)、サイマラシン(thymalasin)、トシツモマブ、Virulizin、Z−100、エプラツズマブ、ミツモマブ(mitumomab)、オレゴボマブ、ペムツモマブ(pemtumomab)(Y−muHMFG1)、Provenge(Dendreon)およびその組合せがある。
生物学的応答修飾物質は、組織細胞の生存、増殖や分化など、生体の防御機構または生物学的応答を修飾して、それが抗腫瘍活性を有するように誘導する作用物質である。そのような作用物質には、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン、ピシバニール、ウベニメクスおよびその組合せがある。
他の抗癌剤には、アリトレチノイン、アンプリゲン、アトラセンタン、ベキサロテン、ボルテゾミブ、Bosentan、カルシトリオール、エクシスリンド、フィナステリド、フォテムスチン、イバンドロン酸、ミルテフォシン、ミトキサントロン、l−アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペグアスパルガーゼ、ペントスタチン、タザロテン、Telcyta(TLK−286、Telik Inc.)、Velcade(ボルテゾミブ、Millenium)、トレチノインおよびその組合せがある。
他の抗血管新生性化合物には、アシトレチン、フェンレチニド、サリドマイド、ゾレドロン酸、アンギオスタチン、アピリジン(aplidine)、シレングチド(cilengtide)、コンブレタスタチンA−4、エンドスタチン、ハロフジノン、レビマスタット(rebimastat)、レモバブ(removab)、Revlimid、スクワラミン、ウクライン、Vitaxinおよびその組合せがある。
白金配位化合物には、それだけに限らないが、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、およびその組合せがある。
カンプトセシン誘導体には、カンプトセシン、10−ヒドロキシカンプトセシン、9−アミノカンプトセシン、イリノテカン、SN−38、エドテカリン、トポテカンおよびその組合せがある。
他の抗腫瘍剤には、ミトキサントロン、l−アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、トレチノインおよびその組合せがある。
CTLA4(細胞傷害性リンパ球抗原4)抗体などの抗腫瘍免疫応答を増強することができる抗腫瘍剤、およびMDX−010(Medarex)や米国特許第6,682,736号で開示されているCTLA4化合物などのCTLA4を遮断することができる他の作用物質;ならびに他のファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤などの抗増殖剤、例えばファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤を利用することもできる。本発明で使用することができる、さらなる特定のCTLA4抗体には、米国仮出願第60/113,647号(1998年12月23日に出願)、米国特許第6,682,736号に記載のものがあり、これらはどちらも参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
本発明で使用することができる特定のIGF1R抗体には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている国際特許出願WO2002/053596に記載のものがある。
本発明で使用することができる特定のCD40抗体には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている国際特許出願WO2003/040170に記載のものがある。
放射線療法に反応してTNFαを発現させるTNFerade(GeneVec)などの遺伝子治療剤を抗腫瘍剤として使用することもできる。
本発明の一実施形態では、本明細書に記載のP−カドヘリン抗体またはその抗原結合部分、ならびにその医薬組成物と組み合わせて、スタチンを使用することができる。スタチン(HMG−CoAレダクターゼ阻害剤)は、アトロバスタチン(Lipitor、Pfizer Inc.)、プロバスタチン(Provastatin)(Pravachol、Bristol−Myers Squibb)、ロバスタチン(Mevacor、Merck Inc.)、シンバスタチン(Zocor、Merck Inc.)、フルバスタチン(Lescol、Novartis)、セリバスタチン(Baycol、Bayer)、ロスバスタチン(Crestor、AstraZeneca)、ロボスタチン(Lovostatin)およびナイアシン(Advicor、Kos Pharmaceuticals)、その誘導体および組合せからなる群から選択することができる。
好ましい実施形態では、スタチンは、アトロバスタチンおよびロバスタチン、その誘導体および組合せからなる群から選択される。
抗腫瘍剤として有用な他の作用物質には、Caduetがある。
P−カドヘリン抗体または抗原結合部分と少なくとも1つのさらなる治療用作用物質の組合せを使用して、本明細書に記載のように過剰増殖性障害または異常細胞増殖を治療する任意の方法では、P−カドヘリン抗体をさらなる治療用作用物質と結合し、またはそれで誘導体化することができる。少なくとも1つのさらなる治療用作用物質を別々に投与することもでき、あるいは誘導体化しないまたは結合しない形で投与することもできる。少なくとも1つのさらなる治療用作用物質を誘導体化せずまたは抗体と結合しないとき、それを抗体と同じ医薬製剤内で投与することもでき、あるいは別々の製剤で投与することもできる。
遺伝子治療
本発明の抗体および抗体部分をコードする核酸分子を、遺伝子治療を介してその必要がある患者に投与することができる。その治療は、in vivoで行ってもよく、あるいはex vivoで行ってもよい。好ましい実施形態では、重鎖と軽鎖をどちらもコードする核酸分子を患者に投与する。より好ましい実施形態では、B細胞が抗体の産生に特殊化しているので、核酸分子がB細胞の染色体中に安定に組み込まれるように核酸分子を投与する。好ましい実施形態では、前駆B細胞にex vivoでトランスフェクトしまたは感染させ、その必要がある患者中にそれを再度移植する。他の実施形態では、前駆B細胞または他の細胞に、対象とする細胞型に感染することが知られているウイルスを使用してin vivoで感染させる。遺伝子治療に使用する典型的なベクターには、リポソーム、プラスミド、およびウイルスベクターがある。例示的なウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスである。in vivoまたはex vivoでの感染後、治療した患者から試料を採取し、当技術分野で知られまたは本明細書で論じた任意のイムノアッセイを使用することによって抗体発現のレベルをモニターすることができる。
好ましい実施形態では、遺伝子治療の方法は、P−カドヘリン抗体の重鎖またはその抗原結合部分をコードする単離核酸分子を投与するステップと、核酸分子を発現させるステップとを含む。他の実施形態では、遺伝子治療の方法は、P−カドヘリン抗体の軽鎖またはその抗原結合部分をコードする単離核酸分子を投与するステップと、核酸分子を発現させるステップとを含む。より好ましい方法では、遺伝子治療の方法は、本発明のP−カドヘリン抗体の重鎖またはその抗原結合部分をコードする単離核酸分子、および軽鎖またはその抗原結合部分をコードする単離核酸分子を投与するステップと、核酸分子を発現させるステップとを含む。遺伝子治療の方法はまた、併用療法に関して前記で論じた作用物質のいずれかなど、他の治療用作用物質を投与するステップを含むこともできる。
本発明をよりよく理解できるように、下記の実施例を示す。これらの実施例は、例示の目的のものにすぎず、どんな形であれ本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
下記の実施例および調製では、「BSA」はウシ血清アルブミンを意味し、「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味し、「DMSO」はジメチルスルホキシドを意味し、「MOPS」は3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸を意味し、「MES」は2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸を意味し、「PBS」はリン酸緩衝食塩水を意味し、「dPBS」はダルベッコ(Dulbecco)リン酸緩衝食塩水を意味し、「HEMA」は2−ヒドロキシ−エチルメタクリレートを意味し、「DMEM」はダルベッコ改変イーグル培地を意味し、「FBS」はウシ胎児血清を意味し、「NEAA」は非必須アミノ酸を意味し、「HEPES」はN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸を意味し、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味する。
(実施例1)
scFvファージディスプレイライブラリーのスクリーニング
組換えヒトP−カドヘリン(R&D Systems、861−PC−100)を抗原として使用して、scFvファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした。ファージミドベクター中にクローン化した大型のscFvヒト抗体ライブラリーを選択に使用した(Vaughan,T.J.ら、Nat.Biotech.、14:309〜314(1996))。組換えヒトP−カドヘリンおよびP−カドヘリンを発現する集密状態の単層HCT116細胞上での一連の反復選択サイクルで、P−カドヘリンを認識したscFvをファージディスプレイライブラリーから単離した。簡潔に述べると、ライブラリーとともにインキュベートした後、結合したファージをP−カドヘリンから回収し、結合しなかったファージを洗い流した。次いで結合したファージをVaughan,T.J.ら、Nat.Biotech.、14:309〜314(1996)に記載のように救済し、選択工程を反復した。基本的にはVaughan,T.J.ら、Nat.Biotech.、14:309〜314(1996)に記載のように、選択過程の結果得られたものから典型的な割合のクローンにファージ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を施して、P−カドヘリンとの結合について試験した。組換えヒトP−カドヘリン(R&D Systems)およびP−カドヘリンを発現する集密状態の単層A431細胞という2つの異なる抗原をELISAで使用した。Vaughan,T.J.ら、Nat.Biotech.、14:309〜314(1996)およびOsbourn,J.K.ら、Immunotechnology、3:293〜302(1998)に記載のように、ELISA陽性クローンにDNA配列決定を施した。独特のELISA陽性クローンを全IgG分子に転換し、実施例4で記載するP−カドヘリン依存性接着アッセイでP−カドヘリンを中和するその能力について試験した。このスクリーニングの結果に基づいて、抗体129−1c4(A431接着アッセイでIC50が1〜3μM)を、リード親系統としてさらなる最適化用に選択した。
(実施例2)
リード最適化
抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)CDR3領域のオリゴヌクレオチド特異的突然変異生成によって、129−1c4に由来するファージディスプレイライブラリーを作製した。ClacksonおよびLowman、Phage Display−A Practical Approach(Oxford University Press、2004)に記載の標準的な分子生物学的技術を使用してライブラリーを構築した。親和性に基づく選択をそれにより行った;ライブラリーとともにインキュベートした後、組換えヒトP−カドヘリン(R&D Systems)をプロテインG被覆常磁性ビーズ(Dynal、100.03)によって捕捉し、結合したファージを磁性選択により回収し、その一方で、結合しなかった複合体を洗い流した。選択の間に、存在する組換えヒトP−カドヘリンの濃度を(4回にわたって25nMから10pMまで)低下させながら、選択工程を反復した。さらに、VHCDR3およびVLCDR3ライブラリーからの選択の結果得られたものをさらなるファージディスプレイライブラリー中に再度混合し、2回を超える過程の親和性に基づく選択を行って選択した。選択過程の結果得られたものから典型的な割合のクローンに、実施例8に記載の129−1c4エピトープ競合アッセイにおいて、scFvとしてスクリーニングを施した。
(実施例3)
P−カドヘリン依存性接着アッセイ
下記のプロトコールを使用して、上記の実施例2で記載した抗体発見の最適化段階の間にIgGに転換したいくつかの最適化scFvを使用するP−カドヘリン依存性接着アッセイでIC50値を決定した。これらの抗体について測定した平均のIC50値を下記の表4に示す。
組換えヒトP−カドヘリンFc(R&D、Cat.861−PC)を、使用する24時間前にMilliQ水中で2mMのCaCl2を含む濃度1mg/mLに再調製し、4℃で貯蔵した。A431細胞を下記の通りに培養し調製した。A431細胞(ECACC番号85090402)をNuncトリプルフラスコ(面積3×175cm2)に入れて、10%のウシ胎児血清(Invitrogen、Cat.10100−147)および1%の非必須アミノ酸(Invitrogen、Cat.11140−035)を含む最小必須培地(MEM)(Invitrogen、Cat 31095)中で通常通りに培養した。培養した細胞は、アッセイで使用するために回収した時点で約80%の集密状態であった。考えられる継代関連の影響から保護するために、継代4回目から8回目の間の細胞を通常使用し、48時間または72時間培養した後にそれを回収した。0.25%トリプシン/1mM EDTA(Gibco、Cat 25200−056)で、細胞が解離するのにちょうど十分な時間(7〜10分)かけてA431細胞を回収し、次いで組織培養用培地中にそれを1mL当たり細胞約2×108個の密度に直ちに希釈した。次いでA431細胞を遠心分離し(1200rpm)、アッセイ用緩衝液(終濃度で1mMのCaCl2を補充したハンクス(Hanks)平衡塩類溶液(Mg2+およびCa2+を含まず、フェノールレッドを含まない)(Invitrogen、Cat.14175−053))中に再懸濁し、それを再度遠心分離し、1mL当たり細胞2×106個の最終密度で再度アッセイ用緩衝液中に再懸濁した。
IgG段階希釈物の調製およびA431細胞との事前インキュベーションを下記の通りに行った。各試験IgGまたはその部分180μLに、10%のBSA(Sigma、Cat.A−9576)を含むアッセイ用緩衝液20μLを補充して、BSA濃度を1%に標準化した。最初に抗ネズミ/ヒトP−カドヘリン基準ポリクローナル抗体(R&D、Cat.AF−761)をMilliQ水中に再懸濁して1mg/mLストックを得た。次いでこのストック溶液40μLをアッセイ用緩衝液140μL中に入れてさらに希釈した。次いで、10%のBSAを含むアッセイ用緩衝液20μLを添加して、抗体0.2mg/mLおよびBSA0.1%の200μLを得た。最初に2×90μLのAF−761ポリクローナル抗体または試験IgGをGreiner96穴ポリプロピレン製希釈用プレート(Greiner、Cat.780271)のカラム1に添加することによって、二連の段階希釈物を調製した。次いでアッセイ用緩衝液60μLをカラム2〜11に添加した。次いで、カラム1〜11にかけて左から右へとプレートを横断して60μL中に30μLを入れる(1:3)希釈物を調製した。次いで、アッセイ用緩衝液60μL単独を穴12A〜Dに添加して、最大の接着を規定した。穴12E〜Hに(アッセイ用緩衝液中)25mMのEDTA60μLを添加することによって最小の接着を規定した。次いで、A431細胞懸濁液(アッセイ用緩衝液1mL当たり細胞2×106個−上記で概略を述べた通りに調製)をすべての穴に添加し、攪拌後、プレートを37℃で1時間事前にインキュベートした。
試験IgGの段階希釈およびA431細胞との事前インキュベーションと並行して、P−カドヘリンで被覆したアッセイ用プレートを下記の通りに調製した。組換えヒトP−カドヘリンFcを被覆用緩衝液(Mg2+およびCa2+を含まないPBS−Invitrogen、Cat.14190−094)で濃度10μg/mLに希釈し、それをFluoronunc96穴アッセイ用プレート(Nunc、Cat.437958)上に分注した(1穴当たり100μL)。次いでプレートを室温で1時間30分インキュベートした。次いで、Tecan96穴プレート洗浄器を使用して、PBSでプレートを3回洗浄した。ブロッキング処理のためにアッセイ用緩衝液を1穴当たり200μL添加し、プレートをさらに1時間室温でインキュベートした。次いで、前記に記載のように、PBSでプレートを3回洗浄した。
次いで、1穴当たり100μLの事前にインキュベートしたIgG/A431物質を、Greiner96穴希釈用プレートからP−カドヘリンで被覆したアッセイ用プレートに移した。移した時点で、確実に細胞が均質となるようにピペットで出し入れすることによってIgG/A431物質を混合した。次いで、アッセイ用プレートを37℃で30〜45分間インキュベートすることによって接着工程を行った。インキュベーションの終了時に、プレートから培地を穏やかに吸引し、細胞洗浄緩衝液(終濃度で1mMのCaCl2を補充したハンクス平衡塩類溶液(Mg2+およびCa2+を含まず、フェノールレッドを含まない−Invitrogen、Cat.14175−053))を穴に再度満たすことによって、接着しなかった細胞を除去した。次いで、細胞洗浄緩衝液槽上でプレートを反転させて15分置いて、残存している接着しなかった細胞を除去した。このインキュベーションの終了時に、穴の内容物を穏やかに吸引した。
接着した細胞の定量を下記の通りに行った。1穴当たり100μLの溶解/アルカリ性ホスファターゼ検出用混合試薬(ジエタノールアミン基質緩衝液5×濃縮液(Pierce、Cat.34064)を水で1:5に希釈し、その後1×溶液25mL当たりに15mgPNPP錠(Sigma、Cat.N−2640)1錠を溶解したもの)を添加し、その後37℃で30〜60分間インキュベートすることによって、接着した細胞を検出した。次いで、阻害のない状態で約0.8の最大OD値を得ることを目的として、1MのNaOH(1穴当たり50μL)を添加して反応を停止した。次いで、標準的なプレートリーダーを使用して、405nmでの吸光度を測定した。
次いで、結果を下記の通りに分析した。カラム12の穴A〜Dを100%接着、カラム12の穴E〜Hを0%接着とみなして、最初に生データを下記の通りに%接着の値に転換した:
%接着={(値−最小接着)/(最大−最小接着)}*100
次いで、IgG阻害剤の濃度に対する%接着をプロットし、Prismソフトウェアを使用してIC50値を決定した。部分的な阻害が観察された場合、曲線の中点ではなく真の50%阻害が得られるIgGの濃度としてIC50の値をつける。表4でIC50値を報告する。
別々のA431接着アッセイを2回行って、129−1c4系統に由来するいくつかの生殖系列化した最適化IgGを、その非生殖系列化同等物と比較して調べた。これらの実験では、新たなバッチのP−カドヘリン(CFR−134041)に変更することが必要であり、このことが、他のデータと比較したIC50値のわずかな増大と関係すると思われる。2回の実験からいくつかの生殖系列化IgGについて平均をとったデータを表5に示す。前記で言及したように、g−194−b09その他は、生殖系列化型の194−b09その他を指す。
(実施例4)
P−カドヘリン依存性細胞凝集アッセイ
下記のプロトコールを使用して、上記の実施例2で記載した抗体発見の最適化段階の間にIgGに転換したいくつかの最適化scFvを使用するP−カドヘリン依存性凝集アッセイでIC50値を決定した。懸濁増殖物中に入れたときに、P−カドヘリンを過剰発現する細胞系統が堅固な多細胞凝集物を形成するので、細胞凝集に干渉するP−カドヘリン抗体の存在下で細胞凝集を測定することができる。いくつかの抗体について測定した平均のIC50値を下記の表6に示す。
プレートの調製を下記の通りに行った。各96穴アッセイ用プレートをポリHEMA(90%エタノール、10%メタノール中12mg/mL)50μLで被覆し、6時間〜1晩かけてそれを蒸発させ、その後、使用前に3×100μLの滅菌H2Oで洗浄した。次いで細胞を下記の通りに培養した。(P−カドヘリンG418rを安定に発現する)ヒト細胞系統SW480由来の細胞を完全増殖培地(qs DMEM(inVitrogen、11995−065)、10%FBS(Omega Scientific、FB−02)、1:100NEAA(InVitrogen、11140−050)、1:100ピルビン酸ナトリウム(InVitrogen、11360−070)、1:100グルタミン(InVitrogen、25030−051)、1:100ペニシリン/ストレプトリシン(InVitrogen、15070−063)、1:100ジェネティシン50mg/mL(Invitrogen、10131−035))+G418(500μg/mL)中で継代し、次いで、1週間当たり2回、1:3〜4に分割した。次いで、培養物を増殖培地+10%DMSO中で凍結させた。
1日目に、SW480:pCAD細胞および対照のSW480:pCLNX(対照ベクターが安定)を、1:3以下に希釈して、100mm皿1枚当たり細胞5×106個で播いた。次いで、細胞を48時間培養して増殖させた。各100mm皿では細胞が約10×106個となり、または2×96穴プレートに十分な個数となった。
3日目に、培地を除去し、その後dPBS(ダルベッコPBS(InVitrogen、14040−133))で洗浄し、その後細胞に100mm皿当たり3mLのトリプシン処理を行った。次いで、遊離後、2倍の体積(6mL)の完全増殖培地で中和を実施した。次いで、ピペットを使用して10mLでプレートを3回洗浄してクラスターを破壊した。次いで、細胞を計数し、1000rpmで5分間Beckmanの遠心分離機を使用してペレットを得た。次いで培地を吸引し、ペレットを最初に<1mLの完全増殖培地中で指でのボルテックス、次いでp1000ピペットにより再懸濁し、次いで細胞濃度を1.3M/mLに標準化した。単独で細胞が分散している状態を顕微鏡観察により確認した。
次いで、96穴プレートをdPBSおよび5%FBSで30分間ブロッキング処理することによって試薬プレートを調製した。次いで1×100μLのdPBSを使用してプレートを洗浄し、その後それを吸引し、軽くはじいて乾燥させた。96穴プレートの1穴で処理プレートの3穴に十分な4×[IgG]の濃度を使用してdPBSで試験IgGの希釈系列を調製した。1穴当たり30μL中40000個の細胞を96穴の洗浄したポリHEMA被覆Costar3590非組織培養用プレート(Corning、3590)に等分に分注した。次いで試薬10μLを96穴プレートの各穴に移した。8連ピペットを使用して1処理当たり3連の試料を処理した。次いで、250rpmで振盪した状態で、加湿した37℃、5%のCO2インキュベーター中で1晩(16〜18時間)インキュベーションを行った。
4日目に、振盪した細胞40μLを、ポリリシン被覆96穴プレート(BioCoatポリリシン被覆96穴プレート:BD 356516)に移した。次いで穴を完全増殖培地60μLですすぎ、軽くたたくことによってプレートを振盪し、それをポリリシン被覆プレートに移した。必要な場合には、さらなる50μL洗浄を実施した。加湿した37℃、5%のCO2インキュベーター中でインキュベーションを60分間続けた。過度にピペットで出し入れすることなくできるだけ穏やかにすべての細胞を定量的に移すこのステップでは注意を払った。次いで、ドラフトチャンバー内で固定溶液(7.4%ホルムアミド(37%重量/体積−Sigma、F15587))100μLを添加することによって細胞を固定し、その後室温で>30分間インキュベートした。
次いで、細胞を洗浄するために、液体をデカントして収集ビーカーまたはトレイに入れ、軽くはじいて残存している液体を除去し、ペーパータオル上で穏やかに軽くたたいた。次いで1穴当たり100μLのdPBSを入れて洗浄し、その後15分間インキュベートした。次いで、上記の通りにデカントし、Hoescht(dPBS中1μg/mLのHoescht−Hoescht 10mg/mL、Molecular Probes、33342)を100μL入れ、その後30分間インキュベートすることによって細胞を染色した。次いで細胞を2回洗浄し、顕微鏡観察のために穴中のdPBS100μLを残存させた。
次いで、1穴当たりの凝集対象物の数を測定し(Cellomics)、(試験IgGがある状態での)平均の対象物計数値を、IgG(例えば、Gt−抗P−カドヘリン、R&D Systems、AF761)または培地単独の対照の計数値と比較した。IgG阻害剤の濃度に対する対象物計数値をプロットし、IC50値を決定した。本発明のいくつかの抗体のIC50値を表6で報告する。
(実施例5)
P−カドヘリン依存性スフェロイド破壊アッセイ
下記のスフェロイド破壊アッセイは、(実施例4に記載の)凝集アッセイの変法であり、1晩かけて細胞凝集物を形成させた後P−カドヘリンおよび対照の抗体を添加する。次いで、試験試薬を添加してさらに24時間置いた後分析を行う。
下記のようにしてプレートの調製を行った。各96穴アッセイ用プレートをポリHEMA(90%エタノール、10%メタノール中12mg/mL)50μLで被覆し、6時間〜1晩かけてそれを蒸発させ、その後、使用前に3×100μLの滅菌H2Oで洗浄した。次いで細胞を下記の通りに培養した。(P−カドヘリンG418rを安定に発現する)ヒト細胞系統SW480由来の細胞を完全増殖培地(qs DMEM(InVitrogen、11995−065)、10%FBS(Omega Scientific、FB−02)、1:100NEAA(InVitrogen、11140−050)、1:100ピルビン酸ナトリウム(InVitrogen、11360−070)、1:100グルタミン(InVitrogen、25030−051)、1:100ペニシリン/ストレプトリシン(InVitrogen、15070−063)、1:100ジェネティシン50mg/mL(Invitrogen、10131−035))+G418(500μg/mL)中で継代し、次いで、1週間当たり2回、1:3〜4に分割した。次いで、培養物を増殖培地+10%DMSO中で凍結させた。
1日目に、SW480:pCAD細胞および対照のSW480:pCLNX(対照ベクターが安定)を、1:3以下に希釈して、100mm皿1枚当たり細胞5×106個で播いた。次いで、細胞を48時間培養して増殖させた。各100mm皿では細胞が約10×106個となり、または2×96穴プレートに十分な個数となった。
3日目に、培地を除去し、その後dPBS(ダルベッコPBS(InVitrogen、14040−133))で洗浄し、その後細胞に100mm皿当たり3mLのトリプシン処理を行った。次いで、遊離後、2倍の体積(6mL)の完全増殖培地で中和を実施した。次いで、ピペットを使用して10mLでプレートを3回洗浄してクラスターを破壊した。次いで、細胞を計数し、1000rpmで5分間Beckmanの遠心分離機を使用してペレットを得た。次いで培地を吸引し、ペレットを最初に<1mLの完全増殖培地中で指でのボルテックス、次いでp1000ピペットにより再懸濁し、次いで細胞濃度を1mL当たり1.0×106個に標準化した。単独で細胞が分散している状態を顕微鏡観察により確認した。
1穴当たり40μL中40000個の細胞を96穴の洗浄したポリHEMA被覆Costar3590非組織培養用プレート(Corning、3590)に等分に分注した。次いで、250rpmで振盪した状態で、加湿した37℃、5%のCO2インキュベーター中で1晩(16〜18時間)インキュベーションを行った。
4日目に、次いで96穴プレートをdPBSおよび5%FBSで30分間ブロッキング処理することによって試薬プレートを調製した。次いで1×100μLのdPBSを使用してプレートを洗浄し、その後それを吸引し、軽くはじいて乾燥させた。96穴プレートの1穴で処理プレートの3穴に十分な5×[IgG]の濃度を使用してdPBSで試験IgGの希釈系列を調製した。次いで試薬10μLを96穴プレートの各穴に移した。8連ピペットを使用して1処理当たり3連の試料を処理した。次いで、250rpmで振盪した状態で、加湿した37℃、5%のCO2インキュベーター中でインキュベーションを行った(20〜24時間)。
5日目に、振盪した細胞50μLを、ポリリシン被覆96穴プレート(BioCoatポリリシン被覆96穴プレート:BD 356516)に移した。次いで穴を完全増殖培地50μLですすぎ、軽くたたくことによってプレートを振盪し、それをポリリシン被覆プレートに移した。必要な場合には、さらなる50μL洗浄を実施した。加湿した37℃、5%のCO2インキュベーター中でインキュベーションを60分間続けた。過度にピペットで出し入れすることなくできるだけ穏やかにすべての細胞を定量的に移すこのステップでは注意を払った。次いで、ドラフトチャンバー内で固定溶液(7.4%ホルムアミド(37%重量/体積−Sigma、F15587))100μLを添加することによって細胞を固定し、その後室温で>30分間インキュベートした。
次いで、細胞を洗浄するために、液体をデカントして収集ビーカーまたはトレイに入れ、軽くはじいて残存している液体を除去し、ペーパータオル上で穏やかに軽くたたいた。次いで1穴当たり100μLのdPBSを入れて洗浄し、その後15分間インキュベートした。次いで、上記の通りにデカントし、Hoescht(dPBS中1μg/mLのHoescht−Hoescht 10mg/mL、Molecular Probes、33342)を100μL入れ、その後30分間インキュベートすることによって細胞を染色した。次いで細胞を2回洗浄し、顕微鏡観察のために穴中のdPBS100μLを残存させた。次いで、1穴当たりの凝集対象物の数を測定し(Cellomics)、(試験IgGがある状態での)平均の対象物計数値を、IgG(例えば、Gt−抗P−カドヘリン、R&D Systems、AF761)または培地単独の対照の計数値と比較した。IgG阻害剤の濃度に対する対象物計数値をプロットしてIC50値を決定することができる。その代わりに、表7に示すように、対象物計数値を、1つの定められた濃度での対照に対する破壊の倍数として表した。
(実施例6)
P−カドヘリン抗体のKDおよびKoffの測定
BIACORE(商標)3000機器を使用した表面プラズモン共鳴によるP−カドヘリンscFv単鎖抗体の親和性の測定(KDおよびKoff)を、製造業者のプロトコールを使用して下記の通りに行った。
動態分析を行うために、通常通りのアミン結合を使用して、組換えヒトP−カドヘリン/Fc融合タンパク質(hCad/Fc)およびマウスP−カドヘリン/Fc融合タンパク質(mCad/Fc)を、CM5BIACORE(商標)センサーチップの別々のフローセル上に固定化した。2.0mMのCaCl2を含む10mM酢酸緩衝液、pH4.5を固定化用緩衝液として使用して表面を調製し、hCad/FcおよびmCad/Fc融合タンパク質についてそれぞれ5800および1600RUのタンパク質密度を得た。1M塩酸エタノールアミン、pH8.5を使用して、未反応のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの失活を行った。活性化/失活したブランク表面を対照表面として使用した。200〜0.78nMの濃度で流動用緩衝液中のscFv抗体試料を調製した(流動用緩衝液のみを含む0nMの溶液をゼロ基準として含めた)。試料を無作為化し、2.0mMのCaCl2を含むHBS−P(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、0.005%のSurfactant P20)を流動用緩衝液として使用して、それぞれフローセル全体にわたって3連で1分間注入した。流速25μL/分を使用して親和性定数を決定した。抗体の解離を5分間モニターし、10mMのグリシン−HCl、pH1.5を(25μL/分で)12秒注入することによって表面を再生した。生データは、Scrubber((C)BioLogic Software)ソフトウェアパッケージを使用して処理し、CLAMP((C)BioLogic Software)ソフトウェアパッケージを使用して分析した。単純な1:1のラングミュア(Langmuir)結合モデルにデータを全体的に適合させた。
表8に、本発明の単鎖抗P−カドヘリン抗体の親和性定数を列挙する。
(実施例7)
P−カドヘリン抗体の選択性の決定
下記のプロトコールを使用して、E−カドヘリンと比べてのP−カドヘリンに対する様々な抗体の選択性を決定した。
PBS+0.5mMのCaCl2中で1μg/mLの組換えヒトP−カドヘリン(R&D Systems、861−PC−100)および組換えヒトE−カドヘリン(R&D Systems、648−EC−100)で、Exiqonタンパク質固定化プレート(VWR International)の穴上を被覆した。3%Marvel/PBS+0.5mMのCaCl2中で試料IgGのブロッキング処理を1時間行った後、50nM(7.5μg/mL)から0.64nM(0.096μg/mL)に至るまでそれを滴定し、2つの異なる抗原で被覆した穴に2連で添加した。4℃で1晩平衡化した後、1×PBS/0.1%Tween+0.5mMのCaCl2で3回、次いで1×PBS+0.5mMのCaCl2で3回プレートを洗浄した。次いで、3%Marvel/PBS+0.5mMのCaCl2中で1:5000に希釈した抗ヒトFabペルオキシダーゼ結合体50μLを各穴に添加し、それを室温で1時間平衡化した。1×PBS/0.1%Tween+0.5mMのCaCl2で3回、1×PBS+0.5mMのCaCl2で3回プレートを洗浄し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB;Sigma)50μlを各穴に添加し、20分間発色反応を起こさせた後、0.5MのH2SO4を1穴当たり25μL添加することによってそれを停止した。450nmで吸光度の値を読み取った後、Graphpad Prismソフトウェアを使用してデータを分析して、P−カドヘリンおよびE−カドヘリンとの結合についての各抗体の相対的KD値を計算した。得られたデータの概要を表9に示す。
(実施例8)
エピトープ競合アッセイ
下記のプロトコールを使用してエピトープ競合アッセイでIC50値を測定して、A431細胞の表面上の天然P−カドヘリンから親IgGをはずす親系統内での変異scFvの能力を測定した。阻害性scFvの存在下で結合したビオチン化親IgGの量を、ユーロピウムストレプトアビジンおよびDELFIA定量法を用いて検出する。いくつかのscFvについて測定したIC50値を表10に示す。
標準的な方法に従って培養し、約80%の集密状態で回収したA431細胞(ECACC番号85090402)を、使用する前日に、96穴Beckton Dickensonコラーゲン被覆プレート(BD、Cat.6407)中に1穴当たり細胞2.5×104個で播いた。次いで、PBS緩衝液(Gibco、Cat.14190−094、カルシウム、マグネシウム、および炭酸水素ナトリウムを含まない)貯留槽中に浸すことによって3回洗浄した後、ブロッキング用緩衝液(PBS(Gibco、Cat.14190−094)+3%Marvel(Premier International Foods Ltd.))を1穴当たり200μL添加し、それを室温で2時間インキュベートした。次いで、上記の通りにプレートをPBSで3回洗浄した。
高処理能スクリーニングでもIC50プロファイル作成でも、Greiner希釈用プレート(Greiner96穴ポリプロピレンプレート(Greiner、Cat.780271))中に、合計体積60μLのアッセイ用緩衝液中のscFv/IgG物質を最初に調製した。次いで、50μLを従属Greinerプレートから直接アッセイ用プレート上に移し、結合反応を室温で2時間30分進行させた。結合反応の終了時にプレートをPBSで3回洗浄した後、ユーロピウムで標識したストレプトアビジン(Perkin Elmer、Cat.1244−360、DELFIAアッセイ用緩衝液(Perkin Elmer、Cat.4002−0010)中での1:1000希釈物)を添加し、それを室温でさらに1時間インキュベートした。
次いで、プレートを緩衝液貯留槽中に反復して浸すことにより、DELFIA洗浄用緩衝液(Perkin Elmer、Cat.4010−0010)でプレートを7回洗浄した。最後に、DELFIAエンハンサー(enhancer)(Perkin Elmer、Cat.4001−0010、1穴当たり100μL)を添加した後、標準的なDELFIAのプロトコールを使用して、互換性のあるリーダー(例えば、WallacまたはEnvision)上でプレートを読み取った。
Greiner希釈用プレートの準備−HTS
最適化の段階に応じて別々に高処理能スクリーニング(HTS)の条件を構成した。個々のVHおよびVL鎖の最適化から得られたもののHTSでは、最終[ペリプレップ]を12.5%で固定し、その結果親scFvが部分的阻害を示した。後の、VH:VL組換えライブラリーから得られたもののHTSでは、最終ペリプレップ濃度を1.7%に低下させ、この条件下で、VHを最適化した基準scFv(TOP−108−C01)が部分的阻害を示した。関連する基準scFvが部分的阻害を示すようなペリプレップ濃度の最適化により、改良されたクローンを同定する余地が残された。
これらの最終scFvペリプレップ濃度を実現するために、下記の手順を採用した:
i)Cybiwell機器を使用して、必要とする体積(下記を参照)のペリプレップ試料物質を、深い穴の試料プレートからGreiner希釈用プレートへと、カラム1〜11中に移した。
[最終ペリプレップ] 移す体積
[12.5%] =7.5uL
[1.7%] =(1:10希釈したペリプレップ)10.0uL
(ペリプレップ10μLをそのまま試料プレートからアッセイ用緩衝液を90μL含むGreiner希釈用プレート中に(Cybiwellを使用して)移すことによって、1:10に予め希釈したペリプレップを調製した。)
ii)次いで、適当な体積のアッセイ用緩衝液を添加することによって、カラム1〜11の体積を30μLにした。
iii)次いで、アッセイ用緩衝液30μLをカラム12(A〜D)(全結合の穴)に添加した。
iv)アッセイ用緩衝液中の過剰量非標識親IgG(129−1c4)30μLをカラム12(E〜H)に添加して非特異的結合を規定した。これを濃度1000nMで添加して終濃度500nMにした。
v)水溶性試薬EZ−link−NHS−LC−Biotin(Perbio/Pierce、製品番号21336)を使用して129−1c4 IgGをビオチン化した。1/10体積の1M NaHCO3および1/10体積のジメチルホルムアミドを添加することによってIgG溶液を補充した。EZ−link−NHS−LC−Biotin試薬をDMF中に溶解し、次いで、IgGより5倍過剰なモル濃度でそれを添加し、反応を室温で20分間進行させた。次いで、BSA(0.1%)を添加することによってビオチン化IgGを安定化した。アッセイ用緩衝液中のビオチン化親129−1c4 IgG30μLを全穴に添加して、最終体積60μL中で終濃度1.5nMにした(すなわち、ユーロピウム標識IgGを2×終濃度で添加した)。
vi)攪拌によりGreinerプレートの内容物を混合した後、50μLを直接アッセイ用プレートに移し、(前記に記載のように)結合反応を室温で2時間30分進行させた。
Greiner希釈用プレートの準備−IC50プロファイル作成
i)1穴当たり30μLのアッセイ用緩衝液を標準的なGreiner希釈用プレートのカラム2〜11および穴12A〜12Dに添加した。
ii)アッセイ用緩衝液中の過剰量非標識129−1c4親IgG30μLをカラム12(E〜H)に添加して非特異的結合を規定した。これは濃度1000nMで添加して終濃度500nMにすべきである。
iii)96穴アッセイ用プレート1枚当たりに、11点ある2連のIC50滴定物4つが準備できるように、カラム1にそれぞれ希釈していないscFv His−プレップ2×45μLを添加した。次いで、カラム1から15μLを取ってカラム2中へと混合し、その後カラム2から15μLを取ってカラム3中へと混合する(以下略)ことによって、2連の1:3段階希釈を行った。カラム11中へと混合した後、15μLを除去した(すなわち、除去して最終体積30μLを残した)。
iv)アッセイ用緩衝液中のビオチン化129−1c4親IgG30μLを全穴に添加して、最終体積60μL中で終濃度1.5nMにした(すなわち、ユーロピウム標識IgGを2×終濃度で添加した)。
v)攪拌によりGreinerプレートの内容物を混合した後、50μLを直接アッセイ用プレートに移し、前記に記載のように、結合反応を室温で2時間30分進行させた。
HTSでは、MOPS/EDTA/ソルビトール、pH7.4(MES、pH7.4)を含む塩基性緩衝液中の細菌ペリプラズムの粗抽出物(scFvペリプレップ)として96穴の形式でscFvを発現させた。IC50プロファイル作成では、PBSの塩基性緩衝液中でのアフィニティー精製にscFvのHisタグを使用する低処理能の精製形態でscFvを発現させた。
HTSでもIC50分析でも、下記の等式に従って最初に生データを%結合のデータに転換した:
%結合={(値−非特異的結合)/(全結合−非特異的結合)}*100
次いで、標準的なExcelテンプレートを使用してHTSデータをさらに分析して、関連する基準scFvより大きな阻害(低い%結合)を示すヒットを同定した。IC50分析では、Prism第4.0版曲線適合ソフトウェアを使用して%結合のデータを分析した。実施例2に記載のように、scFvは、129−1c4親IgGの変異体であり、VHおよびVLのCDR3領域が無作為に突然変異している。VHCDR3変異配列は、図1に配列番号91〜256として示す。VLCDR3変異配列は、図1に配列番号257〜319として示す。親129−1c4 IgGを上回る結合性の向上を示したいくつかのscFvのIC50値を表10に示す。129−1c4親のscFv変異体はそれぞれ、2つの配列番号:VHCDR3およびVLCDR3によって特定される。参考として、親129−1c4 IgGのIC50は108.3nMであった。
本明細書で引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の各刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的にかつそれぞれ独立に示された場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれている。理解を明確にすることを目的とする例証および実例により上記の発明をある程度詳細に説明してきたが、添付した特許請求の範囲の趣旨または範囲を逸脱することなく、それに特定の変更および改変を加えることができることが、本発明の教示に照らして、当業者には容易に明らかとなるであろう。