以下、本発明の実施の形態につき、説明する。
本発明に係る二次電池用電極は、基体上の電極層が、抵抗値または容量が異なる複数の微小セルからなり、前記電極層が応力および/または熱応力を緩和するように、前記抵抗値または容量が2次元的あるいは1次元的に傾斜的になるように前記微小セルが配置されていることを特徴とするものである。これにより、電極形成時の応力や充放電時(高温時)の熱応力を緩和し、電極の歪を解消し、電極層へのクラック等を防ぐことができる。またクラックや歪による電極層の基体からの剥離や脱落を防止でき、電池の長寿命化が図れるものである。
ここで、上記基体とは、集電層、イオン伝導層、セパレータ(非イオン伝導材料)、電極端子(タブ)、電池の構成部材以外の適当な離型フィルムなどを含む。
上記イオン伝導層とは、既存の電解質層を含む広い概念であって、セパレータに電解液、固体高分子ないしゲル高分子を含浸させた電解質層、固体高分子ないしゲル高分子からなる。
上記電極層とは、正極層および/または負極層を電極層とする。
また、本発明の二次電池用電極には、正極、負極のほか、バイポーラ電極も含む。よって、バイポーラ電極構造によっては、正極層及び負極層のほかに、集電層やイオン伝導層も本発明の二次電池用電極の構成部材に含まれるものである。すなわち、正極は、バイポーラ型でない二次電池用電極では、正極は基体、例えば、集電層の両面に正極層(負極層)が形成された構造であり、負極は基体、例えば、集電層の両面に正極層(負極層)が形成された構造である。一方、バイポーラ型の二次電池用電極、すなわちバイポーラ電極は、基体、例えば、集電層やイオン伝導層の一方の面に正極層が、他方の面に負極層が形成された構造である。
なお、本明細書中において、単電池構造とは、イオン伝導層と、これを挟んだ正極層と負極層とにより構成されるものをいい、バイポーラ型電池およびバイポーラ型でない電池の双方に共通の概念である。
また、上記応力とは、電極形成時の応力、曲率をもった面への設置で生じる応力、車両走行時など振動・衝撃等で生じる応力などが該当する。
上記熱応力とは、充放電時など温度変化による熱応力が該当する。したがって、本発明の二次電池用電極では、例えば、車両の駆動用電源として搭載される電池では、寒冷地等の場合には、充放電開始前の低温から走行に伴う電池充放電により急速に高温に達するような場合等、低温から高温まで幅広く電池温度が変化した際の熱応力にも充分に適用し得るように、使用用途に応じて最適な電極層の配置が成されているのが望ましい。
すなわち、基体上の電極層の配置(パターン)は、応力および/または熱応力を緩和することができるものであれば何ら制限されるものではなく、例えば、(i)面方向(図1のX−Y軸の方向)への二次元の平面的な配置、(ii)厚さ方向(図2のZ軸の方向)への配置、(iii)さらにこれらを組み合わせた3次元の立体的な配置を含んでいてもよい。
本発明の二次電池用電極の具体的な実施形態としては、応力および/または熱応力を緩和するように、電極層を細かく区分した微小セル(以下、小電極ともいう)が基体上に、連続しておよび/または間隔を隔てて複数配置されていることを特徴とするものである。これにより、微小セル間の間隙に熱歪を逃がすことができる。その結果、電極形成時の応力や充放電時(高温時)の熱応力を緩和し、電極の歪を解消し、電極層へのクラック等を防ぐことができる。またクラックや歪による電極層の基体からの剥離や脱落を防止でき長寿命化が図れるものである。さらに、間隙を空けて微小セルを配置することで、電極全体がフレキシブルとなり、図1のX軸またはY軸に対して曲げることができる。このため、図3に示すように、電池搭載面が、ある方向に曲率を有する面33であっても、本電極31を用いた電池(35)、特に本電極31を曲げることができるので、曲率を有する面33に沿って設置することができる(図3参照のこと)。そのため、曲率を持った面に密着させることで、電池全体から曲率を持った面に略均一に熱放射させて放熱させることができる点で優れている。すなわち、従来のように一様な電極層を形成した場合には、電極を曲げることで、電極層にクラックやひび割れ等を生じさせ電池性能の低下を招くことも無い。また、曲率を有する面に電極を曲げずに設置する場合には、電池の安定性が悪く、振動や衝撃に対して弱くなるほか、曲率を有する面と電池との接触部分と非接触部分とで熱放射量(熱伝導性)が異なるため、電池内部に温度差が生じ易くなる傾向があるが、本発明のように曲率を有する面に電極を密着させることができる構造の電池では、こうした問題も無く良好な電池性能を発揮することができる。っさらに車両への電池搭載時の設置スペースが制限されにくいため、電池形状等の設計の自由度が広がる利点を有する。
また、上記微小セルは、基体表面(図1のX−Y軸平面)上に、2以上に細かく区分されて形成された電極層の各細分化された1つの区画(セル)をいう。
上記微小セルの平面形状(図1のX−Y軸平面で見た場合の形状)としては、応力および/または熱応力を緩和するように配置可能であれば特に制限されるべきものではなく、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形形状、円形状、楕円形状、十文字形状などの定形形状が挙げられるが、これらに制限されるものではなく、不定形形状であってよい。基板上に配置される各微小セルの平面形状は、全て同一の形状であってもよいし、2種以上の異なる形状であってもよい。なお、電池を構成する複数の電極においては、各電極ごとに微小セルの平面形状が同一の形状であってもよいし、各電極ごとに異なる形状であってもよい。
上記微小セルの大きさ(図1のX−Y軸平面で見た場合の大きさ=面積)に関しても、応力および/または熱応力を緩和するように配置可能であれば特に制限されるべきものではなく、基板上に配置される各微小セルの大きさは、全て同一の大きさであってもよいし、2以上の異なる大きさであってもよい。なお、電池を構成する複数の電極においては、各電極ごとに微小セルの大きさが同一の大きさであってもよいし、各電極ごとに異なる大きさであってもよい。
上記各微小セルごとの構成成分の組成や材質(以下、単に微小セルの材質等とも略記する。)に関しても、応力および/または熱応力を緩和するように配置可能であれば特に制限されるべきものではなく、基板上に配置される微小セルの材質等は、全て同じ材質等であってもよいし、2種以上の異なる材質等であってもよい。なお、電池を構成する複数の電極においては、各電極ごとに微小セルの材質等が同一であってもよいし、各電極ごとに異なるものであってもよい。
また、微小セルの基体上への配置(パターン)に関しても、応力および/または熱応力を緩和するように配置可能であれば特に制限されるべきものではなく、例えば、二次元的な平面配置(図1のX−Y軸平面配置)であってもよいし、厚さ方向(図2のZ軸の方向)の配置であってもよいし、これらの組み合わせとして3次元的な立体配置であってもよい。また、微小セルの配置(パターン)は基体上全体に一様であってもよいし一様でなくてもよい。また、微小セルの配置(パターン)は、規則的であってもよいし、不規則であってもよい。また規則的な配置は、基体全体でなくともよく、基体上に規則性を有する部分と不規則な部分とが混在してもよい。また、電池を構成する複数の電極においては、各電極ごとの微小セルの配置は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。これは、高容量で、高電圧・大電流の電池を構成しようとすれば、電池を構成する電極も数十〜数百数十の単電池層を形成することにもなる。そうした場合、多層化された電極の中央部付近と、最外層付近とでは、温度分布状況や熱の逃げやすさ(熱伝導性)も異なるため、積層される電極ごとに微小セルの基体上への配置(パターニング)も変えることが応力や熱応力の緩和に最適となることもあるためである。本発明では、後述するインクジェット工法を用いて正極層、負極層、さらにはイオン伝導層を形成することで、任意のパターニングを簡単に行うことができる点で極めて優れている。特にインクジェットプリンタと接続されたコンピュータのソフトウェア(印刷ソフト)の印刷画面上の電極層の平面形状、大きさ、構成成分の組成や材質、配置等を変更すればよい。また構成成分の組成や材質を変更する場合には、印刷画面上の色(カラー)表示の変更に応じて、必要があれば、インクジェットプリンタのインク(本明細書でいうインクとは、正極層、負極層、さらにはイオン伝導層を形成するのに用いられる原料を、適宜必要に応じて、適当な溶媒で粘度調整して得られた原料スラリーをいうものとする。すなわち、正極層形成材料を正極インクといい、負極層形成材料を負極インクといい、イオン伝導層形成材料を電解質インクという。後述する実施例参照のこと。)カートリッジを交換すればよく、極めて簡単に設計変更に対応することができる。
上記微小セルの長さ(図1のX−Y軸平面における微小セルの長さL1)及び微小セル間の間隔(図1のX−Y軸平面における微小セルの間の間隔D1)に関しても、応力および/または熱応力を緩和するように配置可能であれば特に制限されるべきものではない。例えば、各微小セルの材質等や厚さ等によっても異なるほか、微小セルが円形状や不定形形状では間隔は一定でなく、複数の異なる平面形状の微小セルをランダムに配置するような場合には、微小セルの長さは各平面形状ごとに、また間隔も各微小セル間ごとに異なるため、一義的に決定されるべきものではない。
上記微小セルは、応力および/または熱応力を緩和することができるのであればよく、例えば、基体上に各微小セルが上記間隔を隔てることなく連続して配置されていてもよいし、各微小セルが連続することなく間隔を隔てて複数配置されていてもよいし(図1、4、6、9〜11参照のこと)、連続して配置された部分と間隔を隔てて配置された部分とが混在していてもよいなど、特に制限されるものではない。連続して配置された部分と間隔を隔てて配置された部分とが混在する例としては、2つの隣接する微小セルが連続して配置され、それらのセル集合体同士が間隔を隔てて配置された例が挙げられる(図8参照のこと)。また、図8や図9の配置は、特に間隔を設けなくても抵抗値や容量等が異なる微小セルを間隔を隔てることなく連続して配置しても各実施態様例の効果に加え、応力および/または熱応力の緩和は可能であることから、基体上に各微小セルが間隔(上記間隔D)を隔てることなく連続して配置されていてもよいとしたものである。ただし、図3に示すような曲率を有する面への設置が求められるような場合には、各微小セルが間隔を隔てて複数配置された電極を用いるものが望ましいといえる。一方、体積容量の大きな電池が要求されるような場合には、微小セルを間隔を隔てることなく連続して配置した電極を用いる方が、空隙部分が無い分だけ体積容量を大きくできる点で望ましいと言える。
また、本発明では、対向する正極層と負極層、さらにはこの間に挟まれるイオン伝導層の微小セルの二次元面の配置は、重なる(同じになる)ようにしてもよいし(図2、5、7)、ずらす(異なる)ようにしてもよい。電池反応の効率化の観点からは前者である。
また、本発明の二次電池用電極では、前記微小セル間の間隙に、熱伝導層を配置するものであってもよい。言い換えれば、前記微小セル間の間隙に、熱伝導度の良い材料を配置することにより、温度変化を緩和するようにしてもよい。これにより、微小セル間の間隙の熱伝導率の大きい材料を通じて速やかに熱を逃がす(移動する)構造とすることができる。温度変化を緩和することができる。なお、該熱伝導層は微小セル間の間隙の全部に配置されていなくてもよい、間隙の一部に配置されていてもよい。該熱伝導層を構成する熱伝導率の大きい材料(熱伝導度の良い材料)とは、電子伝導性のないシリコン材料などが挙げられるほか、電極層を構成する電極層形成材料の組成比率を変更したものであってもよい。すなわち、新たな材料を準備しなくともよく、組成比率を変えるだけでよいため、材料部品点数が軽減できる。また、インクジェット工法で微小セルを形成する場合には、各組成成分ごとのインクを用意し、各微小セルや熱伝導層によって該印刷に用いるインクの組み合わせを変えるだけでも十分に対応できる点で優れている。
また、本発明の二次電池用電極では、電極層を構成する電極材料の種類および/または組成比率を変えて基体上に配置されているものであってもよい。この場合の電極層は、細かく区分されて微小セル化されている場合も、そうでない場合も含む。これは、例えば、間隙を設けずに中央部から外周部に向けて抵抗値や容量等を変えても温度分布等の均一化(応力緩和)を図れる場合があるためである。
上記電極材料の組成や種類を変える対象としては、特に制限されるものではなく、例えば、活物質および/または導電助などが挙げられるが、これらに何ら制限されるべきものではない。
上記基体上への配置(パターン)としては、面方向(X−Y軸面=厚さ方向に垂直な方向)での二次元ないし1次元配置であってもよいし、さらに基体上に多層化して3次元的に組成や種類の配置(パターン)を変えて積層するような場合、厚さ方向のみの配置を変更する場合も含むなど、特に配置(パターン)の仕方は特に制限されるものではない(後述する図10、11等を参照のこと)。
また、本発明の二次電池用電極では、上記電極層を細かく区分して形成された微小セルの抵抗値が基体上の中央部から外周部に向けて変化するように、各微小セルを配置していることを特徴とするものであってもよい。言い換えれば、細分化された抵抗値の異なる微小セルを2次元的あるいは1次元的に傾斜的に配置することで、温度分布の均一化を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和することを特徴とするものであってもよい。これにより、上述した作用効果において、特に温度分布均一化による長寿命化が図れる。
上記微小セル抵抗値としては、段階的に変化させてもよいし、連続的・傾斜的に変化させてもよい(いわば、傾斜機能材料)。
微小セル抵抗値の変化のさせ方としては、応力および/または熱応力を緩和するように変化させることができるものであればよく、例えば、微小セルの抵抗値が中央部から外周部に向けて2次元的または1次元的に、段階的または連続的・傾斜的に低下するように変化させて配置すればよいが、かかる配置構成に何ら制限されるものではない。
上記本発明の二次電池用電極を用いた電池では、電池に熱交換器を外設してもよい。これにより、充放電中に電極内部で発生する熱を効率よく取り出して冷却し、電池内部での過熱を防止する。さらに寒冷地などでは車両のスタート時などエンジンなどで発生する排熱を利用して電池の動作温度域まで急速加熱するのにも利用できる。ここでいう熱交換器としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウムなどの無機潜線熱蓄熱材やパラフィン系潜線熱蓄熱材、ヒートパイプなどが例示できる。ここでは、該熱交換器を電極の構成部材の一部として規定したが、電池または組電池の構成部材の1部としてもよいことはいうまでもない。
また、本発明の二次電池用電極では、容量および/または内部抵抗の異なる電極材料または微小セルが、基体上にいずれも適当に、好ましくは略均等に、より好ましくは均等に分散するように配置されていてもよい。すなわち、容量および/または内部抵抗の異なる電極材料または微小セルのうち、同じ種類の微小セル同士が局在化して配置されることがないように適度に、好ましくは略均等に、より好ましくは均等に分散されて配置していてもよいといえる。言い換えれば、(交互に)抵抗値が異なる微小セルを配置することで、電流の分散を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和するようにしてもよいといえる。これにより、電流が局所的に流れるのを緩和し、電流均一化、温度分布均一化を達成でき、温度上昇を招くのを防止し、応力/熱応力の緩和を図ることができる。従来のように均一な内部抵抗の場合、局所的に電流が流れる箇所があると、当該箇所が発熱する。発熱すると当該箇所の内部抵抗が低下する。内部抵抗が低下すると当該箇所に電流が流れ易くなり、ますます電流が増大し、呼応して発熱量が急激に増大するため、当該箇所の電極層が熱溶融するなどにより短絡するなどの異常を招くことになる。本発明では、電極層内に意図的に容量ないし内部抵抗の低い領域を分散さえて作りこんでおくことで、予期しない連鎖的な発熱によるトラブルを解消できる。
上記容量および/または内部抵抗の異なる電極材料または微小セルを配置する仕方としては、電極材料や微小セルの組成や種類を変えることで達成可能であり、本発明(同一発明)を多面的に記載したものといえる。
ここで、容量や内部抵抗等の異なる数としては、2種またはそれ以上であればよく、特に制限されるものではない。特にインクジェット工法では、3種類のインクを用意して、これを任意に組み合わせることで数百から数千種類の組み合わせが可能であり、設計通りの容量や内部抵抗が異なる数に十分に対応可能であるため、特に上限に関しては制限されるものではない。
配置(パターン;1次元〜3次元配置)としては、電流の分散を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和することができるものであれば特に制限されるものではなく、同一種類の微小セル同士が基板上に局在化しないように略均等に分散していればよい。2種の例では、例えば、内部抵抗の異なる電極材料または微小セルを二次元状に交互に配置した構造、図8に示すようないわば海島構造(種類の異なる一方の電極材料または微小セルが他方の電極材料または微小セルで囲まれた状態に配置した構造)、種類の異なる電極材料または微小セルが、二次元状に相互にまばらに、いわば千鳥模様に配置した構造などが例示できる。
また、本発明の二次電池用電では、前記電極層が、インクジェット工法によるパターン電極塗布により形成されてなることが望ましい。また、前記インクジェット工法により、電極層を構成する導電性材料比率を連続的・傾斜的に変えることが望ましい。さらに前記電極層の厚さが、1〜10μmの範囲であること画望ましい。
上記インクジェット工法によるパターン電極塗布では、特に従来塗布技術では達成困難であった微小セル化、材料混合比でセル特性制御が可能、特に導電性材料比率を連続的・傾斜的に変えることが可能。高出力(30kw)で高電圧・大電流(100A×300V)を必要とする車両用電池の大幅な薄型軽量化が図れる。
以下に本発明の二次電池用電極の具体的な実施形態につき図面を用いて説明する。
第1の実施形態;矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した構成例
図1は、本発明の二次電池用電極の具体的な実施態様として、基体上に微小セルを複数配置した構成例であって、電極形成時の応力および/または温度変化による熱応力を緩和することのできる微小セルの2次元タイル状の配置を模式的に表わした平面概略図である。図2は、図1の二次電池用電極を用いて構成した二次電池の一部の電極積層構造の様子を模式的に表わした側面概略図である。図3は、図2の二次電池を曲率を有する面に密着させて設置すべく、電池を曲げて設置させる様子を模式的に表わした解説図である。
図1、2に示す二次電池用電極10は、基体として2次元面の集電層(金属;厚さ5μm)11を用い、該集電層11の片面上に、正極層としてX軸、Y軸方向に矩形(正方形)形状の正極用の微小セル(厚さ5μm)12を配置し、同様に負極層として、該集電層11の他方の面上にX軸、Y軸方向に矩形形状の負極用の微小セル(厚さ5μm)13を配置してなるバイポーラ電極である。そして、図2に示す二次電池20の電極積層構造は、上記バイポーラ電極10上の正極用の微小セル12および/または負極用の微小セル13上に、同様にX軸、Y軸方向に矩形形状のイオン伝導用の微小セル14(厚さ5μm)を配置したイオン導電層が形成されてなる構造体がZ軸方向に複数積層された構造である。
さらに、微小セル12(微小セル13及び14も同様)の設置において、隣接する微小セル12間に、該微小セル長さL1の10%分の間隔D1を空けた。これを集電層11のX軸、Y軸の両方向に施したものである。言い換えれば、全て同一の正方形形状の微小セルが、基体のX−Y軸で形成される矩形表面上に配置されており、該微小セルを配置するにあたり、X軸及びY軸の両方向にそれぞれ等間隔でいわば桝目状に配置されているものともいえる。本実施態様例では、微小セル長さL1=10mm、微小セル間の空隙間隔D1=1mmとする配置(パターン)構成としてものである。本実施形態例では、本発明の作用効果を奏する1例を示したにすぎず、微小セル12〜14の平面形状、長さL1、間隔D1等は、これらに何ら制限されるべきものではない。特に電極10間に挟まれるイオン伝導層は、図2に示すような微小セル化して配置してもよいし、既存の電解質膜やセパレータに電解質を含浸させた連続体を用いても良いことは言うまでもない。
本実施形態例に示すように電極を矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した構成とすることで、低温から高温まで幅広く電池温度が変化しても、集電層、正極層、負極層、イオン伝導層の熱膨張係数が異なる際にも、電極横方向(X軸、Y軸面方向)の熱歪を解消し、従来のコータ塗布法を用いて、集電層上に数十mm以上の厚さで均一に電極層を構成した場合と比較して、大幅に電極でのクラック等、または集電層の歪み発生を防ぐことができる。さらに、図3を用いて既に説明したように、基体上に間隔を空けて微小セルを設置することで、電極全体がフレキシブルとなり、X軸またはY軸に対して曲げることができる。このため、ある方向に曲率を有する面33であっても、本電極を用いた二次電池31を曲げることで、曲率を有する面33に沿って設置することができる。なお、図3の二次電池では、電極だけでなく、電池外装材もフレキシブルとなるように、金属製シート材料よりも既存の多層化したラミネートシートを用いるのが望ましい。
第2実施形態;矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した他の構成例
図4は、本発明の二次電池用電極の具体的な実施態様として、基体上に微小セルを複数配置した構成例であって、電極形成時の応力および/または温度変化による熱応力を緩和することのできる微小セルの2次元タイル状の別の配置を模式的に表わした平面概略図である。図5は、図4の二次電池用電極を用いて構成した二次電池の一部の電極積層構造の様子を模式的に表わした側面概略図である。
図4、5に示す二次電池用電極40は、基体として2次元面の集電層(金属;厚さ5μm)41を用い、該集電層41の片面上に、正極層として、Y軸方向に矩形(正方形)形状の正極用の微小セル(厚さ5μm)42を配置するにあたり、交互にずらして設置し、同様に該集電層41の他方の面上に、負極層として、Y軸方向に矩形形状の負極用の微小セル(厚さ5μm)43を配置するにあたり、交互にずらして設置してなるバイポーラ電極である。そして、図5に示す二次電池50の電極積層構造は、上記バイポーラ電極40上の正極用の微小セル42および/または負極用の微小セル43上に、同様に、Y軸方向に矩形形状のイオン伝導用の微小セル44(厚さ5μm)を配置するにあたり、交互にずらして設置したイオン導電層が形成されてなる構造体がZ軸方向に複数積層された構造である。
さらに、微小セル42(微小セル43及び44も同様)の設置において、隣接する微小セル42間に、該微小セル長さL2の10%分の間隔D2を空けた。さらに、隣接する微小セル列は、電極ずらし量C=微小セル長さL2×1.1÷2だけ、交互にずらした配置構成としたものである。言い換えれば、同一の正方形形状の微小セルが、基体のX−Y軸で形成される矩形表面上に配置されており、該微小セルを配置するにあたり、X軸及びY軸の両方向にそれぞれ等間隔で、かつ隣接するX軸またはY軸の微小セル列ごとに、その位置を一定量づつ変えて(ずらして)配置されているともいえる。本実施態様例では、微小セル長さL2=5mm、微小セル間の空隙間隔D2=0.5mm、電極ずらし量C=2.27mmとする配置(パターン)構成としたものである。尚、本実施形態例でも、本発明の作用効果を奏する1例を示したにすぎず、微小セル42〜44の平面形状、長さL2、間隔D2、電極ずらし量C等は、これらに何ら制限されるべきものではない。特に電極40間に挟まれるイオン伝導層は、図5に示すような微小セル化して配置してもよいし、既存の電解質膜やセパレータに電解質を含浸させた連続体を用いても良いことは言うまでもない。
本実施形態例に示すように電極を矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した構成とすることで、上記実施形態例1と同様に、電極層が細かく区分されていることで、低温から高温まで幅広く電池温度が変化し、集電層、正極層、負極層、イオン伝導層の熱膨張係数が異なる際にも、電極横方向(X軸、Y軸面方向)の熱歪を解消でき、電極でのクラック等、または集電層の歪み発生を防ぐことができる。また、Y軸方向の折れ曲がりに対して、集電層部分での座屈が(微小セルが交互に組まれることで)、より起き難い構成とすることができる。
第3実施形態;矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した他の構成例
図6は、本発明の二次電池用電極の具体的な実施態様として、基体上に微小セルを複数配置した構成例であって、電極形成時の応力および/または温度変化による熱応力を緩和することのできる微小セルの2次元タイル状の更に別の配置を模式的に表わした平面概略図である。図6は、図5の二次電池用電極を用いて構成した二次電池の一部の電極積層構造の様子を模式的に表わした側面概略図である。
図6、7に示す二次電池用電極60は、基体として2次元面の集電層(金属;厚さ5μm)61を用い、該集電層61の片面上に、正極層として、Y軸方向に矩形(正方形)形状の正極用の微小セル(厚さ5μm)62を配置するにあたり、X軸、Y軸共に交互にずらして設置し、同様に該集電層61の他方の面上に、負極層として、Y軸方向に矩形形状の負極用の微小セル(厚さ5μm)63を配置するにあたり、X軸、Y軸共に交互にずらして設置してなるバイポーラ電極である。そして、図7に示す二次電池70の電極積層構造は、上記バイポーラ電極60上の正極用の微小セル62および/または負極用の微小セル63上に、同様に、Y軸方向に矩形形状のイオン伝導用の微小セル64(厚さ5μm)を配置するにあたり、X軸、Y軸共に交互にずらして設置したイオン導電層が形成されてなる構造体がZ軸方向に複数積層された構造である。
さらに、微小セル62(微小セル63及び64も同様)の設置において、隣接する微小セル62間に、該微小セル長さL3の10%分の間隔D3を空けた。さらに、隣接する微小セル列は、電極ずらし量F=微小セル長さL3×1.1÷2だけ、交互にずらした配置構成としたものである。言い換えれば、同一の矩形形状の微小セルが、基体のX−Y軸で形成される矩形表面上に配置されており、該微小セルを配置するにあたり、微小セル列がX軸ないしY軸から所定の角度(45°)ずらして配置され、隣接する微小セル列ごとに微小セルの長手方向を所定の角度(90°)づつ交互に変えて(ずらして)等間隔に配置されているともいえる。本実施態様例では、微小セル縦長さL3=8mm、微小セル横長さS3=4mm、縦微小セル間の空隙間隔D3=0.8mm、縦微小セル間の空隙間隔E3=0.4mm、電極ずらし量F=4.4mmとする配置(パターン)構成としたものである。尚、本実施形態例でも、本発明の作用効果を奏する1例を示したにすぎず、微小セル62〜64の平面形状、長さL3、S3、間隔D3、E3、電極ずらし量F等は、これらに何ら制限されるべきものではない。特に電極60間に挟まれるイオン伝導層は、図7に示すような微小セル化して配置してもよいし、既存の電解質膜やセパレータに電解質を含浸させた連続体を用いても良いことは言うまでもない。
本実施形態例に示すように電極を矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した構成とすることで、上記実施形態例1と同様に、電極層が細かく区分されていることで、低温から高温まで幅広く電池温度が変化し、集電層、正極層、負極層、イオン伝導層の熱膨張係数が異なる際にも、電極横方向(X軸、Y軸面方向)の熱歪を解消でき、電極でのクラック等、または集電層の歪み発生を防ぐことができる。また、X軸、Y軸方向の折れ曲がりに対して、集電層部分での座屈が(微小セルが交互に組まれることで)、より起き難い構成とすることができる。
第4実施形態;三角形または菱形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した他の構成例
図8は、本発明の二次電池用電極の具体的な実施態様として、基体上に微小セルを複数配置した構成例であって、電極形成時の応力および/または温度変化による熱応力を緩和することのできる微小セルの2次元タイル状の更に異なる他の配置を模式的に表わした平面概略図である。
図8に示す二次電池用電極80は、基体としてX−Y軸で形成される矩形形状の2次元面を持つ集電層(金属;厚さ5μm)81を用い、該集電層81の片面上に、正極層として、(1)正極用の微小セル(厚さ5μm)=正三角形形状と見た場合には、同一の正三角形形状の微小セル82が、基体である集電層81の片面上に配置されている。該微小セル82を配置するにあたり、微小セル82がいわゆるハニカム形状に配置されている。そして各ハニカム形状間は間隔D4を隔てて配置されている。個々のハニカム形状は6個の微小セル82で構成され、このうち隣接する2個の微小セル82’同士を連続して配置されている。そして、これら2個の微小セルの連続体も間隔D4を隔てて配置されている。(2)正極用の微小セル=菱形形状と見た場合には、同一の菱形形状の微小セル82’が、集電層81の片面上に配置されている。該微小セル82’を配置するにあたり、微小セル82’がハニカム形状に配置されている。各ハニカム形状間は間隔D4を隔てて配置され、個々のハニカム形状を3個の微小セル82’で構成し、微小セル82’間も間隔D4を隔てて配置されているともいえる。同様に該集電層81の他方の面上に、負極層として、正三角形形状ないし菱形形状の負極用の微小セル(厚さ5μm;図示せず)を正極層と同様に配置してなるバイポーラ電極である。そして、二次電池本体は、例えば、上記バイポーラ電極80上の正極用の微小セル82および/または負極用の微小セル上に、同様に正三角形形状ないし菱形形状のイオン伝導用の微小セル(厚さ5μm;図示せず)を正極層及び負極層と同様に配置したイオン導電層が形成されてなる構造体が厚さ方向(Z軸方向;図示せず)に複数積層された構造とすることができる。
さらに、正極用の微小セル82または82’(負極用およびイオン伝導用の微小セルも同様)の設置において、隣接する微小セル82または82’間に、該微小セル長さL4の10%分またはL4’の5%分の間隔D4を空けた配置構成としたものである。本実施態様例では、微小セル長さL4=約10mm、微小セル間の空隙間隔D4=1mmとする配置(パターン)構成としたものである。尚、本実施形態例でも、本発明の作用効果を奏する1例を示したにすぎず、微小セルの平面形状、長さL4、間隔D4等は、これらに何ら制限されるべきものではない。
本実施形態例に示すように、三角形または菱形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した構成とすることで、上記実施形態例3と同様の作用効果を奏することができる。特に、X軸、及びX軸±120°方向の折れ曲がりに対して、集電層部分での座屈が(微小セルが交互に組まれることで)、より起き難い構成とすることができる。さらに、6個の微小セルで構成される個々のハニカム形状を構成する6個の微小セル間を全て間隔D4を隔てて配置することで、X軸及び該X軸から60°づつ、ずれた6方向全ての折れ曲がりに対して、集電層部分での座屈が(微小セルが交互に組まれることで)、より起き難い構成とすることができる。
第5実施態様;十文字形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した他の構成例
図9は、本発明の二次電池用電極の具体的な実施態様として、基体上に微小セルを複数配置した構成例であって、電極形成時の応力および/または温度変化による熱応力を緩和することのできる微小セルの2次元タイル状の更にまた異なる別の配置を模式的に表わした平面概略図である。
図9に示す二次電池用電極90は、基体としてX−Y軸で形成される矩形形状の2次元面を持つ集電層(金属;厚さ5μm)91を用い、該集電層91の片面上に、正極層として、Y軸方向に十文字形状の正極用の微小セル92を配置するにあたり、交互にずらして設置し、同様に該集電層91の他方の面上に、負極層として、Y軸方向に十文字形状の負極用の微小セル(厚さ5μm;図示せず)を配置するにあたり、交互にずらして設置してなるバイポーラ電極である。そして、二次電池本体は、上記バイポーラ電極90上の正極用の微小セル92および/または負極用の微小セル上に、同様に、Y軸方向に十文字形状のイオン伝導用の微小セル(厚さ5μm;図示せず)を配置するにあたり、交互にずらして設置したイオン導電層が形成されてなる構造体が厚さ方向(Z軸方向;図示せず)に複数積層された構造である。
さらに、正極用の微小セル92(負極用およびイオン伝導用の微小セルも同様)の設置において、隣接する微小セル92間に、該微小セル長さL5の10%分の間隔D5を空けた。言い換えれば、同一の十文字形状の微小セルが、基体のX−Y軸で形成される矩形表面上に等間隔に配置されており、該微小セルを配置するにあたり、微小セル列がX軸ないしY軸から所定の角度(45°)ずらして配置されているともいえる。本実施態様例では、微小セル長さL5=15mm、微小セル間の空隙間隔D5=1.5mmとする配置(パターン)構成としたものである。尚、本実施形態例でも、本発明の作用効果を奏する1例を示したにすぎず、微小セルの平面形状、長さL5、間隔D5、電極ずらし量G等は、これらに何ら制限されるべきものではない。特にバイポーラ電極90間に挟まれるイオン伝導層は、微小セル化して配置してもよいし、既存の電解質膜やセパレータに電解質を含浸させた連続体を用いても良いことは言うまでもない。
本実施形態例に示すように、矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した構成とすることで、上記実施形態例3と同様の作用効果を奏することができる。また折れ曲がりに対して、集電層部分での座屈が(微小セルが交互に組まれることで)、より起き難い構成とすることができる。
第6実施形態;抵抗値の異なる2種の微小セルを2次元にタイル状に設置した構成例
図10は、本発明の二次電池用電極の具体的な実施態様として、基体上に抵抗値が異なる微小セルを配置することで、電流の分散を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和することのできる、微小セルの2次元タイル状の配置を模式的に表わした平面概略図である。
図10に示す二次電池用電極100は、基体としてX−Y軸で形成される矩形形状の2次元面を持つ集電層(金属;厚さ10μm)101を用い、該集電層101の片面上に、正極層として、X軸、Y軸方向に正六角形形状の正極用の微小セル(厚さ5μm)102を配置するにあたり、隣接する微小セル間に間隔を空けて設置し、同様に該集電層101の他方の面上に、負極層として、X軸、Y軸方向に正六角形形状の負極用の微小セル(厚さ5μm;図示せず)を配置するにあたり、隣接する微小セル間に間隔を空けて設置してなるバイポーラ電極である。そして、二次電池の電極積層構造は、上記バイポーラ電極100上の正極用の微小セル102および/または負極用の微小セル上に、同様に、X軸、Y軸方向に正六角形形状のイオン伝導用の微小セル(厚さ5μm;図示せず)を配置するにあたり、隣接する微小セル間に間隔を空けて設置したイオン導電層が形成されてなる構造体が厚さ方向(Z軸方向;図示せず)に複数積層された構造である。
さらに、正極用の微小セル102(負極用およびイオン伝導用の微小セルも同様)の設置において、隣接する微小セル102間に、該微小セル長さL6の15%分の間隔D6を空けた。さらに、正極用の微小セル102としては、図10に示すように、抵抗値が異なる微小セル102aと102bを交互に設置した(対向する負極用の微小セルも同様に設置したが、イオン伝導用の微小セルに関しては全て同じ抵抗値のものとした。)。本実施態様例では、微小セル長さL6=10mm、微小セル間の空隙間隔D6=1.5mmとする配置構成としたものである。また、微小セル102aは、導電助剤を多く含み抵抗が小さく、微小セル102bは導電助剤の含量が少なく抵抗が大きくなるように微小セルを構成する成分組成を調整して抵抗値が異なる微小セルを形成した例である。尚、本実施形態例でも、本発明の作用効果を奏する1例を示したにすぎず、微小セルの平面形状、長さL6、間隔D6等は、電流の分散を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和するように配置可能であれば、これらに何ら制限されるべきものではない。したがって、例えば、抵抗値が異なる微小セルを交互に配置することで電流の分散を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和するように配置可能であれば、特に隣接する微小セル間に間隔を空けなくてもよい構成を取りえる場合もありえる。同様に、本実施態様例では、抵抗値が異なる2種の微小セルを用いたが、電流の分散を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和するように配置可能であれば、抵抗値が異なる3種以上の微小セルを用いてもよいし、抵抗値ではなく容量の異なる複数の微小セルを用いてもよいし、さらには抵抗値と容量の異なる複数の微小セルを用いてもよいなど特に制限されるものではない。さらにバイポーラ電極100間に挟まれるイオン伝導層は、微小セル化して配置してもよいし、既存の電解質膜やセパレータに電解質を含浸させた連続体を用いても良いことは言うまでもない。
本実施形態に示すような構成とすることで、大電流放電においては、電流は集電層平面上に均等に分散配置(分布)された抵抗値の小さい微小セル102aをもっぱら通り、大電流放電による発熱は電極上で分散されることなる。そのため、電極上の局所的な温度上昇を構造上の電極配置により効果的に抑え、熱応力の緩和を防止することができる。
また電極が細かく区分されている(微小セル化されている)ことで、低温から高温まで幅広く電池温度が変化し、集電層、正極層、負極層、イオン伝導層の熱膨張係数が異なる際にも、電極横方向(X軸、Y軸面方向)の熱歪を解消し、従来のコータ塗布法を用いて、集電層上の全面に数十mm以上の厚さで均一に電極層を構成した場合と比較して、大幅に電極でのクラック等、または集電層の歪み発生を防ぐことができる。
第7の実施形態;傾斜的に抵抗値の異なる微小セルを2次元に設置した構成例
図11は、本発明の二次電池用電極の具体的な実施態様として、細分化された抵抗値の異なる微小セルを2次元的あるいは1次元的に傾斜的に配置することで、温度分布の均一化を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和することのできる、微小セルの2次元配置を模式的に表わした平面概略図である。
図11に示す二次電池用電極110は、基体としてX−Y軸で形成される矩形形状の2次元面を持つ集電層(金属;厚さ10μm)111を用い、該集電層111の片面上に、正極層として、X軸、Y軸方向に円形形状の正極用の微小セル(厚さ5μm)102を配置するにあたり、隣接する微小セル間に間隔を空けて設置し、同様に該集電層111の他方の面上に、負極層として、X軸、Y軸方向に円形形状の負極用の微小セル(厚さ5μm;図示せず)を配置するにあたり、隣接する微小セル間に間隔を空けて設置してなるバイポーラ電極である。そして、二次電池の電極積層構造は、上記バイポーラ電極110上の正極用の微小セル112および/または負極用の微小セル上に、同様に、X軸、Y軸方向に円形形状のイオン伝導用の微小セル(厚さ5μm;図示せず)を配置するにあたり、隣接する微小セル間に間隔を空けて設置したイオン導電層が形成されてなる構造体が厚さ方向(Z軸方向;図示せず)に複数積層された構造である。
さらに、正極用の微小セル112(負極用およびイオン伝導用の微小セルも同様)の設置において、隣接する微小セル112間に、該微小セル長さ(直径)L7の10%分の間隔(最小間隔)D7を空けた。また、正極用の微小セル112としては、図11に示すように、集電層の中心部に設置されているものが、抵抗値が一番大きくなるようにしてあり、周囲になるにしたがって抵抗値が小さくなるように、2次元的に傾斜的に配置してなるものである。本実施態様例では、微小セル長さL7=10mm、微小セル間の空隙間隔D7=1mmとする配置構成としたものである。尚、本実施形態例でも、本発明の作用効果を奏する1例を示したにすぎず、微小セルの平面形状、長さL7、間隔D7等は、温度分布の均一化を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和するように配置可能であれば、これらに何ら制限されるべきものではなく、例えば、隣接する微小セル間に間隔を空けなくてもよい場合もありえる。同様に、本実施態様例では、抵抗値が異なる複数の微小セルを2次元的に傾斜的に配置した、温度分布の均一化を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和するように配置可能であれば、1次元的に傾斜的に配置してもよいし、あるいは、2次元的または1次元的に段階的に抵抗値が異なる複数の微小セルを配置してもよいし、抵抗値ではなく容量の異なる複数の微小セルを配置してもよいし、さらには抵抗値と容量の異なる複数の微小セルを配置してもよいなど特に制限されるものではない。さらに正極層と負極層間に挟まれるイオン伝導層は、微小セル化して配置してもよいし、既存の電解質膜やセパレータに電解質を含浸させた連続体を用いても良いことは言うまでもない。
本実施形態例に示すような構成とすることで、大電流放電においては、中心部の電流は絞られ、電池の発熱により中心部の温度上昇が急激に上昇するのを防ぐことができる。
特にポリマー電池においては、電極内部に大きな温度分布ができると、更に高温部の電極抵抗が下がり、この部分に大量に電流が流れ込むという、電流不均衡が生じる恐れがある。上記構成とすることで、温度不均衡を抑えることができる。
また、本実施形態では、インクジェット工法を用いることで、電極作成時、導電性材料比率をインク塗布量を調整することで変化させ、傾斜的、連続的に書く部分の微小セルの抵抗を変えてゆくことができる。
また、電極が細かく区分されている(微小セル化されている)ことで、低温から高温まで幅広く電池温度が変化し、集電層、正極層、負極層、イオン伝導層の熱膨張係数が異なる際にも、電極横方向(X軸、Y軸面方向)の熱歪を解消し、従来のコータ塗布法を用いて、集電層上の全面に数十mm以上の厚さで均一に電極層を構成した場合と比較して、大幅に電極でのクラック等、または集電層の歪み発生を防ぐことができる。
また、本実施形態では、図11に示すように、熱交換器113を集電層111の対向する2辺の外部に配置して、温度管理を行ってもよい。こうした構成とすることで、電極で発生する熱を効率よく外部に逃がすことができる。なお、熱交換器113としては、特に制限されるべきものではないが、例えば、車両用に搭載する電源であれば、既存の車両の熱交換システム、例えば、カーエアコンシステム、エンジンの排熱などを利用して、該熱交換器を該熱交換システムの一部に組み込んでもよいし、これらとは別に当該電池用に専用の熱交換システムを設けてもよい。該熱交換器では、上記したように電池の充放電時には、電池内部温度上昇を抑える観点から冷却器として機能させることができるものであればよいが、寒冷地や冬季などで電池温度が電池の作動温度よりも低くなっているような場合には、ウォームアップ手段としての加熱器として機能させることができるものがより望ましいといえる。かかる観点からは、蓄熱材、ヒートパイプなどを用いるのが望ましいといえる。また、本実施形態7の熱交換器の設置に関しては、他の実施形態にも利用可能であることはいうまでもない。
第8の実施形態;矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置した構成例
図12は、本発明の二次電池用電極の具体的な実施態様として、基体上に微小セルを複数配置し、更に前記微小セル間の間隙に、熱伝導度の良い材料を配置した構成例であって、速やかに熱を移動し、温度変化を緩和することのできる微小セルの2次元タイル状の配置を模式的に表わした平面概略図である。図13、図12の二次電池用電極を用いて構成した二次電池の一部の電極積層構造の様子を模式的に表わした側面概略図である。
図12、13に示す二次電池用電極120は、基体として2次元面の集電層(金属;厚さ5μm)121を用い、該集電層121の片面上に、正極層としてX軸、Y軸方向に矩形(正方形)形状の正極用の微小セル(厚さ5μm)122を配置し、同様に負極層として、該集電層121の他方の面上にX軸、Y軸方向に矩形形状の負極用の微小セル(厚さ5μm)123を配置してなるバイポーラ電極である。そして、図13に示す二次電池130の電極積層構造は、上記バイポーラ電極120上の正極用の微小セル122および/または負極用の微小セル123上に、同様にX軸、Y軸方向に矩形形状のイオン伝導用の微小セル124(厚さ5μm)を配置したイオン導電層が形成されてなる構造体がZ軸方向に複数積層された構造である。
さらに、微小セル122(微小セル123及び124も同様)の設置において、隣接する微小セル122間に、該微小セル長さL8の10%分の間隔D8を空けた。ここに良熱伝導層125を設けた。これを集電層121のX軸、Y軸の両方向に施したものである。これにより、図13に示すように良熱伝導層125は、隣接する集電層121間を結ぶ連続層として配置されることになる。本実施態様例では、微小セル長さA=10mm、微小セル間の空隙間隔D1=1mmとする配置(パターン)構成としてものである。本実施形態例では、本発明の作用効果を奏する1例を示したにすぎず、微小セル122〜124の平面形状、長さL8、間隔D8等は、これらに何ら制限されるべきものではない。特に電極10間に挟まれるイオン伝導層は、図13に示すような微小セル化して配置してもよいし、既存の電解質膜やセパレータに電解質を含浸させた連続体を用いても良いことは言うまでもない。また、本実施形態8の熱伝導層125に関しては、微小セル間に間隙を持つ他の実施形態にも利用可能であることはいうまでもない。
ここで、熱伝導層とは、電極層の微小セルを構成する電極材料よりも熱伝導度の良い材料(熱伝導率の大きい材料)を用いた層をいい、微小セル間の間隙の一部または全部に配置可能である。また、図13にあるように隣接する集電層間を連通するように形成可能かのうである。なお、熱伝導層が電極材料を含む場合には電極層を構成する微小セルの1種とも取れるものであり、この場合には、第7実施形態で説明したように抵抗値の異なる2種の微小セルを間隔を隔てることなく連続して用いた例ともいえる。ここで、熱伝導度の良い材料としては、例えば、シリコン材料などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
本実施形態例に示すような構成とすることで、低温から高温まで幅広く電池温度が変化し、集電層、正極層、負極層、イオン伝導層の熱膨張係数が異なる際にも、熱伝導層125が速やかに熱を移動し、急激な温度変化を緩和し、電極横方向(X軸、Y軸面方向)の熱歪を解消し、従来のコータ塗布法を用いて、集電層上の全面に数十mm以上の厚さで均一に電極層を構成した場合と比較して、大幅に電極でのクラック等、または集電層の歪み発生を防ぐことができる。
また、本発明の二次電池用電極の製造方法は、基体上に電極層用材料(以下、単にインクともいう)を、応力および/または熱応力を緩和するようにパターニング塗布して電極層を形成することを特徴とするものである。これにより、集電層、正負極電極層、イオン伝導層の熱膨張係数が異なる際にも、電極横方向の熱歪を解消することができるようにパターニング塗布して電極層を形成することが可能となり、従来のコータにより塗布して数10mm以上均一に電極層を構成した場合と比較して、大幅に電極でのクラック等、または集電層の歪を発生を防ぐことができる。
本発明の二次電池用電極の製造方法の具体的な実施形態としては、図1〜13に示すように、(1)基体上に電極層用材料をパターニング塗布し、基体上に間隔を隔てて複数の微小セルを配置して電極層を形成すればよい。すなわち、本発明では、基体上に電極層用材料をパターニング塗布し、電極形成時の応力および/または温度変化による熱応力を緩和するように基体上に交互に微小セルを配置して電極層を形成するようにしてもよい。
また、図12、13に示すように、(2)基体上に電極層用材料をパターニング塗布し、前記微小セル間の間隙に、熱伝導層を配置するようにしてもよい。すなわち、前記パターニング塗布により、前記微小セル間の間隙に、速やかに熱を移動し、温度変化を緩和するように更に微小セルを構成する電極材料よりも熱伝導度の良い材料を配置するようにしてもよい。
さらに、図10、11に示すように、(3)パターニング塗布により、電極層を構成する電極材料の組成および/または種類を、基体上の電極層内で変えて配置するようにしてもよい。より具体的には、図11に示すように、パターニング塗布により、基体上の中央部から外周部に向けて内部抵抗値が変化するように微小セルを配置するようにしてもよい。すなわち、前記パターニング塗布により、温度分布の均一化を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和するように、細分化された抵抗値の異なる微小セルを2次元的あるいは1次元的に傾斜的に配置するようにしてもよい。あるいは図12に示すように、前記パターニング塗布により、容量および/または内部抵抗の異なる電極材料または微小セルを、基体上にいずれも略均等に分散するように配置するようにしてもよい。すなわち、前記パターニング塗布により、電流の分散を図り、かつ温度変化による熱応力を緩和するように、交互に抵抗値が異なる微小セルを配置するようにしてもよい。
本発明の二次電池用電極の製造方法では、前記パターニング塗布を印刷塗布工法により行うことが望ましいものである。これにより従来のコータ塗布法では得られなかった図1〜13に示すような微小セルの複雑な配置構成をパターニング塗布を行うことで達成することができるものである。これにより、応力や熱応力を緩和する上で、電極層が細かく区分したり、連続的、傾斜的に電極層の組成成分を変化させることができるものである。
上記前記印刷塗布工法としては、特に制限されるべきものではなく、例えば、等が挙げられるが、好ましくはインクジェット工法である。特に、インクジェット工法を用いる場合には、電極層を構成する導電性材料比率を他の工法では達成が困難である、連続的・傾斜的に変えることができる点で優れている。これにより、より細かな温度変化にも対応することができ、温度分布の均一化をより一層向上させることができる。
また、上記インクジェット工法には、ピエゾ素子方式、サーマルインクジェット方式、continuance方式の3つの方式があり、そのいずれをも採用しえるものであるが、電池材料の熱安定性の観点から、ピエゾ素子方式を用いるのが望ましい。
また、前記パターニング塗布により、電極層を乾燥後の厚さが1〜10μmの範囲になるように形成することが望ましい。これにより、特に高容量で、高電圧・項電流が求められる車両用電源では、数十〜百層程度の多層積層化する必要があり、そうした場合でも電池の小型軽量化を図ることができるためである。特に上記インクジェット工法では、インクジェットの液滴を1.8pl程度にまで超微小化する技術が既に確立されており、こうした既存の高度化された技術を適用することで、理論的には10μm程度の電極層を達成することができるものである。なお、こうした極薄膜を既存のコータ塗布法で達成することは、基体表面やコータ面の平滑度(平面度)を極限にまで高める必要があり、実際上実現困難であり、極めて高コストになる。
なお、本発明の二次電池用電極の製造方法では、図13に示すように、必要に応じて、基体および/または電極層の外周部に熱交換器を設置するようにしてもよい。
次に、本発明に係る二次電池は、上述した本発明の二次電池用電極を用いてなることを特徴とするものである。かかる二次電池用電極を用いることにより、電極形成時の応力および/または温度変化による熱応力を緩和することができ、電池の長寿命化を図ることができる本発明に係る二次電池としては、特に制限されるべきものではなく従来公知の各種二次電池に幅広く適用し得るものである。
また、本発明では、電池では、上述したように、正極層、負極層のほかに、イオン伝導層(電解質層)も電極と同様に微小セル化して、正極層および負極層と同じ配置構成とするのが望ましいとい得る。
なお、本発明の二次電池では、上述した本発明の二次電池用電極を用いてなることを除いては、何ら制限されるべきものではなく、他の構成要件に関しては、従来公知の二次電池の構成要件を適宜利用することができるものであるので、ここでは、簡単に説明する。
本発明に係る二次電池としては、特に制限されるべきものではなく、例えば、電池の構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されるべきものではなく、従来公知のいずれの構造にも適用し得るものである。同様に二次電池の電解質の種類で区別した場合にも、特に制限されるべきものではなく、液系電解質型電池、高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用しえるものである。これらの電解質は、これら高分子ゲル電解質および固体高分子電解質(全固体電解質)単独で使用することもできるし、電解液、高分子ゲル電解質、固体高分子電解質(全固体電解質)をセパレータ(不織布を含む)に含浸させて使用することもできるなど、特に制限されるべきものではない。また、電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、バイポーラ型ではない(内部並列接続タイプ)の電池およびバイポーラ型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。好ましくは、バイポーラ型電池である。バイポーラ電池とは1枚の集電箔を挟んで、片側に正極、反対側に負極がついている単位電池が複数積層されたものである。バイポーラ電池ではない電池を積層する場合は正極、負極それぞれからリード線をとり、そのリード線を介して隣の電池と接続される。さらに、二次電池の電極材料ないし電極間を移動する金属イオンで見た場合には、ポリマーリチウムイオン二次電池、ポリマーナトリウムイオン二次電池、ポリマーニッケル水素二次電池など特に制限されるべきものではなく、従来公知のいずれの電極材料等にも適用し得るものである。好ましくは、ポリマーリチウムイオン二次電池である。ポリマーリチウムイオン二次電池では、セル電圧が大きく、高出力が要求される車両用の電池に適している。そのため、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用として優れたポリマーリチウムイオン二次電池が作製できるためである。したがって、以下の説明では、本発明の電極を用いてなるポリマーリチウムイオン二次電池(バイポーラ型でないポリマーリチウムイオン二次電池及びバイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池)につき説明するが、これらに何ら制限されるべきものではない。
すなわち、本発明の対象となるポリマーリチウムイオン二次電池は、本発明の電極を用いたポリマーリチウムイオン二次電池であればよく、他の構成要件に関しては、何ら制限されるべきものではない。そこで、バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池につき、図面を用いて説明をする。
図14に、バイポーラ型でない扁平型(積層型)のポリマーリチウムイオン二次電池の断面概略図を示す。図14に示すポリマーリチウムイオン二次電池131では、電池外装材133に高分子−金属を複合したラミネートフィルムを用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、正極集電体135の両面に正極層(正極活物質層)137が形成された正極板、電解質層139、および負極集電体141の両面(発電要素の最下層および最上層用は片面)に負極層(負極活物質層)143が形成された負極板を積層した発電要素を収納し密封した構成を有している。また、上記の各電極板(正極板及び負極板)と導通される正極(端子)リード145および負極(端子)リード147が、各電極板の正極集電体5及び負極集電体141に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられ、上記熱融着部に挟まれて上記の電池外装材133の外部に露出される構造を有している。
上記ポリマーリチウムイオン二次電池は、扁平型(積層型)の電池構造にすることが好ましい。巻回型(円筒型)の電池構造とする場合には、正極および負極リード端子を取り出す個所のシール性を高めることが困難な場合があり、電気自動車やハイブリッド電気自動車に搭載する高エネルギー密度、高出力密度の電池では、リード端子取り出し部位のシール性の長期の信頼性を確保できないためおそれがあるが、扁平型の構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点でも有利である。
上記ポリマーリチウムイオン二次電池の電極には、リチウムイオンを吸蔵・放出できる正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極を用い、電極以外の発電要素には、電解質として、ゲル状もしくは固体状高分子を用いてなるゲル電解質若しくは固体電解質、またはセパレータを含む固体電解質若しくはゲル電解質を用いることができる。
正極には、正極集電体および正極活物質層のほか、正極集電体の先端部に取り付けられた正極端子リードまでを含めて称する場合もある。正極板は、正極集電体のうち正極活物質層を具備する反応部をいうものとする。負極には、負極集電体および負極活物質層のほか、負極集電体の先端部に取り付けられた負極端子リードまでを含めて称する場合もある。負極板は、負極集電体のうち負極活物質層を具備する反応部をいうものとする。したがって、本発明の発電素子は、発電素子を構成する負極板と、該負極板と電気的に接続される負極端子リードと、電解質層と、正極板と、該正極板と電気的に接続される正極端子リードとが具備されてなるものといえる。
上記正極には、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2を主材料とする正極活物質を用いることが望ましいが、特に限定されない。負極には、カーボンを用いることが望ましいが、特に限定されない。正極集電体及び負極集電体にはAl箔および銅箔を用いることができるが、特に限定されない。電解質層に用いられるセパレータ、ゲル状ないし固体状電解質に関しても、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができる。これらに関しては、後述するバイポーラ電池において説明する。
本発明において、正極板、電解質層および負極板を積層または巻回した発電要素は、従来の発電素子と同様に構成される。例えば、正極板は、正極集電体の反応部の両面に正極活物質の主材料と有機電解液を吸収保持するポリマーを含む正極活物質を塗布乾燥させて、正極活物質層を正極集電体に支持させている。また負極板は、Cu板等の負極集電体の両面に負極活物質の主材料と有機電解液を吸収保持するポリマーを含む負極活物質を塗布乾燥させて、負極活物質層を負極集電体に支持させている。電解質層は、固体電解質若しくはゲル電解質で構成されている。負極板の上側の負極活物質層を電解質層を介してその上方の正極板の正極活物質層に対向させると共に、負極板の下側の負極活物質層を電解質層を介してその下方の正極板の正極活物質層に対向させた状態で、これらを積層状態にして熱接合により一体化して、積層電極(発電素子)を構成している。なお、上記電解質層が固体電解質で構成される場合、セパレータを必要としないケースが多く、本発明の実施例もセパレータを使用していない例を示したが、セパレータを含む固体電解質やゲル電解質を用いても良いことは言うまでもない。また、上記セパレータには、有機電解液等を吸収保持するポリマー電解質シートや不織布等からなる多孔性シートで構成されているものを用いることができる。
上記電極端子リードに用いられる金属(合金を含む)としては、Cu、Feから選ばれる金属を用いることができるが、Al、SUS(ステンレス鋼)といった金属またはこれらを含む合金材料も同様に使用可能である。電極端子リード全体の抵抗増加を抑える観点からは、Cuを用いることが望ましい。さらに外装材の高分子材料との密着性を向上させるために、電極端子リードに表面被覆層を形成してもよい。表面被覆層にはNiが最も好適に使用できるが、Ag、Auといった金属材料も同様に使用可能である。
また、電池外装材である高分子−金属を複合したラミネートフィルム(単に、高分子−金属複合ラミネートフィルムとも称する)としては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、外装材に用いられる高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。上記金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、上記絶縁性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。
こうしたラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
次に、バイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池につき説明する。
バイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池は、集電体の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を、電解質を挟んで複数枚直列に積層した構造をとる。バイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池では、通常の電池に比べて単電池の電圧が高く、容量、出力特性に優れた電池を構成できる。また、電解質にゲル状もしくは固体状高分子を用いたポリマー電池であるので、液漏れが生じないので、液絡の問題が無く信頼性が高く、かつ簡易な構成で出力特性に優れたバイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池を形成することができる点で有利である。更に、正極活物質としてリチウム−遷移金属複合酸化物を用いたバイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池では、反応性、サイクル耐久性に優れ、低コストな材料であるから、これらの材料を正極電極に用いることにより、出力特性により優れた電池を形成することができる点で有利である。
以下、本発明のポリマー電池の好適な態様の1つである、バイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池(以下、単にバイポーラポリマー電池とも称する)を図面を用いて説明するが、本発明がこれらに制限されるべきものではないことはいうまでもない。
図15には、バイポーラポリマー電池の全体構造を模式的に表わした概略断面図を示す。図15に示したように、バイポーラポリマー電池151では、1枚または2枚以上で構成される集電体153の片面に正極電極(正極活物質層ともいう)155を設け、もう一方の面に本発明の負極電極(負極活物質層ともいう)157を設けたバイポーラ電極159を、固体電解質層161を挟み隣合うバイポーラ電極159の電極層155、157が対向するようになっている。すなわち、バイポーラポリマー電池151では、集電体23の片方の面上に正極層1555を有し、他方の面上に負極層157を有するバイポーラ電極(電極層)159を、電解質層161を介して複数枚積層した構造の電極積層体(バイポーラ電池本体)163からなるものである。また、こうしたバイポーラ電極29等を複数枚積層した電極積層体163の最上層と最下層の電極155a、157aは、バイポーラ電極構造でなくてもよく、集電体153(または端子板)に必要な片面のみの電極層(正極活物質層155aおよび負極活物質層157a)を配置した構造としてもよい。また、バイポーラポリマー電池151では、上下両端の集電体153にそれぞれ正極および負極リード165、167が接合されている。なお、バイポーラ電極の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、バイポーラポリマー電池151では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できるものであるので、バイポーラ電極159の積層回数を少なくしてもよい。また、本発明のバイポーラポリマー電池151では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電極積層体1633部分を電池外装材(外装パッケージ)169に減圧封入し、電極リード165、167を電池外装材169の外部に取り出した構造とするのがよい。軽量化の観点からは、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)をポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムなど、従来公知の電池外装材を用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電極積層体を収納し減圧封入(密封)し、電極リード165、167を電池外装材169の外部に取り出した構成とするのが好ましい。このバイポーラポリマー電池151の基本構成は、複数積層した単電池層(単セル)が直列に接続された構成ともいえるものである。
以下、本発明のバイポーラポリマー電池の構成要素を中心に説明する。
上記正極層の構成材料としては、正極活物質を含むものであれば良く、さらに必要に応じて、電子伝導性を高めるための導電助剤、バインダ、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)、高分子電解質、添加剤などが含まれ得るが、電解質層に高分子ゲル電解質や液体電解質を用いる場合には、正極活物質微粒子同士を結びつける従来公知のバインダ、電子伝導性を高めるための導電助剤などが含まれていればよく、高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくても良い。電解質層に液体電解質を用いる場合にも、正極層には高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくても良い。
正極活物質としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)を好適に使用できる。具体的には、LiMnO2、LiMn2O4などのLi−Mn系複合酸化物、LiCoO2などのLi−Co系複合酸化物、Li2Cr2O7、Li2CrO4などのLi−Cr系複合酸化物など、LiNiO2などのLi−Ni系複合酸化物、LixFeOy、LiFeO2などのLi−Fe系複合酸化物、LixVyOzなどのLi−V系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したもの(例えば、LiNixCo1−xO2(0<x<1)等)などが使用できるなど、Li金属酸化物から選択し使用するが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル耐久性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することができる点で有利である。この他、LiFePO4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V2O5、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3などの遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOHなどが挙げられる。上記正極活物質の中では、Li−Mn系複合酸化物が望ましい。これは、Li−Mn系複合酸化物を用いることにより、(1)プロファイルを傾けることが可能となり、(2)異常時信頼性が向上するためである。その結果、各単電池層及びバイポーラ電池全体の電圧の検知が容易になる利点を有する。
上記導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、種々炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
上記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、SBR、ポリイミドなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
上記電解質のうち高分子ゲル電解質は、イオン導伝性を有する固体高分子電解質に、バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池で用いられる電解液を含んだものであるが、さらに、リチウムイオン導伝性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれるものである。よって、上記電解質のうち高分子固体電解質は、イオン導伝性を有する高分子固体電解質となる。
ここで、高分子ゲル電解質に含まれる電解液(電解質塩および可塑剤)としては、特に制限されるべきものではなく、従来既知の各種電解液を適宜使用することができるものである。例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);LiBETIともいう)等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質塩)を含み、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の可塑剤(有機溶媒)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
イオン導伝性を有する固体高分子電解質としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のような公知の固体高分子電解質が挙げられる。
高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、PAN、PMMAなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできるが、ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子として例示したものである。
上記イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10等の無機酸陰イオン塩、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等の有機酸陰イオン塩、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
正極層における、正極活物質、導電助剤、バインダ、高分子電解質(ホストポリマー、電解液など)、リチウム塩等の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。
なお、本発明では、正極層を形成するには、正極インク(本明細書でいうインクとは、正極層、負極層、さらにはイオン伝導層を形成するのに用いられる原料を、適宜必要に応じて、適当な溶媒で粘度調整して得られた原料スラリーをいうものとする。すなわち、正極層形成材料を正極インクといい、負極層形成材料を負極インクといい、イオン伝導層形成材料を電解質インクという。後述する実施例参照のこと。)により形成している。
本発明では、当該正極層、さらには後述する負極層や電解質層などが、インクジェット工法を用いて形成されていることが望ましい。これは、連続的に集電体や電解質層上に複数の電極層(正極層、負極層)をまとめて形成することができるためである。特に、材質の異なる電極層などを間隔を空けて形成する場合にも極めて適しているものであり、生産効率に優れた塗布方法と言えるものである。これは、従来のコータを用いた塗布方法では、達成し得ないものであり、本発明者らが見出したインクジェット工法やスクリーン印刷塗布工法などのパターニング塗布工法を採用することにより、初めて実現し得たものであり、極めて適用範囲が広いものと言える。
また、本発明では、当該正極層、さらには後述する負極層や電解質層や電子導電材層や絶縁材、シール材などが、インクジェット方式で印刷する塗布方法を用いて形成されていることがより望ましい。これは、上記したように、任意のパターンを形成することができ、複雑なパターンであっても、何ら生産性を損なうことなく、極めて精巧にパターンを形成することができるため、数十〜数百層もの単電池を積層するような場合など、極めて有効な電極層等の形成手段となり得るものといえる。なお、インクジェット方式で印刷する塗布方法に関しては、後述する実施例において詳しく説明しており、ここでの説明は省略する。ただし、本発明では、後述する実施例によるものに何ら制限されるべきものではなく、従来公知のインクジェット技術を適宜利用して、上記電極層などを形成することができることはいうまでもない。
上記負極層は、負極活物質活物質を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、バインダ、高分子電解質(ホストポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、添加剤などが含まれ得るが、高分子電解質層に高分子ゲル電解質を用いる場合には、負極活物質微粒子同士を結びつける従来公知のバインダ、電子伝導性を高めるための導電助剤などが含まれていればよく、高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくても良い。電解質層に溶液電解質を用いる場合にも、負極層には高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくてもよい。負極活物質の種類以外は、基本的に正極層の項で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
負極活物質としては、溶液系のリチウムイオン電池でも使用される負極活物質を用いることができる。具体的には、カーボン、金属化合物、金属酸化物、Li金属化合物、Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物を含む)、ホウ素添加炭素、グラファイトなどを用いることができる。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用して用いても良い。上記カーボンとしては、例えば、グラファイトカーボン、ハードカーボン、ソフトカーボンなど、従来公知のカーボン材料が挙げられる。上記金属化合物としては、LiAl、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sd、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17C(LiC6)等が挙げられる。上記金属酸化物としては、SnO、SnO2、GeO、GeO2、In2O、In2O3、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Ag2O、AgO、Ag2O3、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、SiO、ZnO、CoO、NiO、FeO等が挙げられる。Li金属化合物としては、Li3FeN2、Li2.6Co0.4N、Li2.6Cu0.4N等が挙げられる。Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)としては、Li4Ti5O12などLixTiyOzで表されるリチウム−チタン複合酸化物等が挙げられる。上記ホウ素添加炭素としては、ホウ素添加カーボン、ホウ素添加グラファイト等が挙げられる。ただし、本発明では、これらに制限されるべきものではなく従来公知のものを適宜利用することができる。上記ホウ素添加炭素中のホウ素の含有量は0.1〜10質量%の範囲が望ましいが、これに制限されるべきものではない。好ましくは結晶性炭素材、非結晶性炭素材から選ばれるものである。これらを用いることで、プロファイルを傾けることが可能となり、各単電池層及びバイポーラ全体の電圧の検知が容易になるからである。ここでいう結晶性炭素材とは、グラファイト系炭素材料をいい、上記グラファイトカーボンなどがこれに含まれる。非結晶性炭素材とは、ハードカーボン系炭素材料をいい、上記ハードカーボンなどがこれに含まれる。
上記集電体としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、チタン箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、SUSとアルミニウムのクラッド材あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。複合集電体を用いる場合、正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、チタンなどの導電性金属を用いることができるが、アルミニウムが特に好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、銅、ニッケル、銀、SUSなどの導電性金属を用いることができるが、SUS及びニッケル等が特に好ましい。また、複合集電体においては、正極集電体と負極集電体とは、互いに直接あるいは第三の材料からなる導電性を有する中間層を介して電気的に接続していれば良い。
複合集電体における正極集電体および負極集電体の各厚みは、通常通りでよく両集電体とも、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは集電体(複合集電体を含む)の厚さが1〜100μm程度であるのが電池の薄型化の観点からは望ましい。
上記電解質層としては、(a)高分子ゲル電解質、(b)高分子固体電解質または(c)これらポリマー電解質ないし電解液を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)、のいずれにも適用し得るものである。さらに、本発明では、絶縁層シール材を用いて各電解質層ごとにシールすることにより、セパレータに電解液を含浸させてなる液系電解質を用いることもできる。
(a)高分子ゲル電解質
高分子ゲル電解質としては、特に制限されるべきものではなく、従来のゲル電解質層に用いられているものを適宜利用することができる。ここで、ゲル電解質とは、ポリマーマトリックス中に電解液を保持させたものをいう。なお、本発明において、全固体高分子電解質(単に、高分子固体電解質ともいう)と、ゲル電解質との違いは、以下のとおりである。
・ポリエチレンオキシド(PEO)などの全固体高分子電解質に、通常のリチウムイオン電池で用いられる電解液を含んだものがゲル電解質である。
・ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など、リチウムイオン伝導性をもたない高分子の骨格中に、電解液を保持させたものもゲル電解質にあたる。
・ゲル電解質を構成するポリマー(ホストポリマーないしポリマーマトリックスとも称する。)と電解液の比率は幅広く、ポリマー100質量%を全固体高分子電解質、電解液100質量%を液体電解質とすると、その中間体はすべてゲル電解質にあたる。
上記ゲル電解質の、ホストポリマーとしては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができるが、好ましくは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびそれらの共重合体が望ましく、溶媒には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびそれらの混合物が望ましい。
上記ゲル電解質の、電解液(電解質塩および可塑剤)としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。具体的には、通常リチウムイオン電池で用いられるものであればよく、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質塩)を含み、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
本発明におけるゲル電解質中の電解液の割合としては、特に制限されるべきものではないが、イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%程度とするのが望ましい。本発明では、電解液の割合が70質量%以上の、電解液が多いゲル電解質について、特に効果がある。
また、本発明では、ゲル電解質に含まれる電解液の量は、ゲル電解質内部で略均一になるようにしてもよいし、中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていってもよい。前者は、より広範囲で反応性を得ることができるため好ましく、後者は、外周部の全固体高分子電解質部の電解液に対するシール性を高めることができる点で好ましい。中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていく場合には、上記ホストポリマーには、リチウムイオン伝導性のあるポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)およびそれらの共重合体を用いることが望ましい。
(b)高分子固体電解質
全固体高分子電解質としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。具体的には、イオン伝導性を有する高分子から構成される層であり、イオン伝導性を示すのであれば材料は限定されない。全固体高分子電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のような公知の固体高分子電解質が挙げられる。固体高分子電解質中には、イオン伝導性を確保するためにリチウム塩が含まれる。リチウム塩としては、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。PEO、PPOのようなポリアルキレンオキシド系高分子は、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2などのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。
(c)上記ポリマー電解質ないし電解液(電解質塩および可塑剤)を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)
セパレータに含浸させることのできる電解質としては、既に説明した(a)および(b)または上記(a)で説明した電解(電解質塩および可塑剤)液と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
上記セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができるものであり、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)などを用いることができる。有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を持つ上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有するものである。
該ポリマーの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミドなどが挙げられる。
上記セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできないが、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。セパレータの厚さが、かかる範囲にあることでセパレータに微粒が食い込むことによって発生する短絡の防止と、高出力のために電極間を狭くすることが望ましいという理由から、厚さ方向の機械的強度と高出力性の確保という効果がある。また電池を複数接続する場合には、電極面積が増大することから、電池の信頼性を高めるために上記範囲のなかでも厚形のセパレータを用いることが望ましい。
上記セパレータの微細孔の径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。セパレータの微細孔の平均径が、上記範囲にあることで熱によってセパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きるという理由から、異常時信頼性が上がり、その結果として耐熱性が向上するという効果がある。すなわち、過充電で電池温度が上昇していったとき(異常時)に、セパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きることで、電池(電極)の正極(+)から負極(−)側にLiイオンが通れなくなり、それ以上は充電できなくなる。そのため過充電できなくなり、過充電が解消する。その結果、電池の耐熱性(安全性)が向上するほか、ガスがでて電池外装材の熱融着部(シール部)が開くのを防止できる。ここでセパレータの微細孔の平均径は、セパレータを走査電子顕微鏡等で観察し、その写真をイメージアナライザ等で統計的に処理した平均径として算出される。
上記セパレータの空孔率は20〜50%であることが望ましい。セパレータの空孔率が、上記範囲にあることで電解質(電解液)の抵抗による出力低下の防止と、微粒がセパレータの空孔(微細孔)を貫くことによる短絡の防止という理由から出力と信頼性の両方を確保するという効果がある。ここでセパレータの空孔率とは、原材料レジンの密度と最終製品のセパレータの密度から体積比として求められる値である。
上記セパレータへの電解質の含浸量は、セパレータの保持能力範囲まで含浸させればよいが、当該保持能力範囲を超えて含浸させてもよい。これは、電解質にシール部を設け、電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保持できる範囲であれば含浸可能である。
電解質を保持させる為に用いる不織布セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、繊維を絡めてシート化することにより製造することができる。また、加熱によって繊維同士を融着することにより得られるスパンボンド等も用いることができる。すなわち、繊維を適当な方法でウェブ(薄綿)状またはマット状に配列させ、適当な接着剤あるいは繊維自身の融着力により接合して作ったシート状のものであればよい。上記接着剤としては、製造及び使用時の温度下で十分な耐熱性を有し、ゲル電解質に対しても反応性や溶解性等がなく安定したものであれば、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用できる。また、使用繊維としては、特に制限されるものではなく、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを用いることができ、使用目的(電解質層に要求される機械強度など)に応じて、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性を得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。すなわち、あまり不織布のかさ密度が大きすぎると、電解質層中の非電解質材料が占める割合が大きくなりすぎ、電解質層におけるイオン伝導度などを損なうおそれがあるためである。
不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。空孔率が50%未満では、電解質の保持性が悪化し、90%超では強度が不足する。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
なお、上記(1)〜(3)の電解質層は、1つの電池の中で併用してもよい。
また、高分子電解質は、電解質層、正極活物質層、負極活物質層に含まれ得るが、同一の高分子電解質を使用してもよく、層によって異なる高分子電解質を用いてもよい。
ところで、現在好ましく使用される高分子電解質用のホストポリマーは、PEO、PPOのようなポリエーテル系高分子である。このため、高温条件下における正極側での耐酸化性が弱い。従って、溶液系のリチウムイオン電池で一般に使用される、酸化還元電位の高い正極剤を使用する場合には、負極の容量が、高分子電解質層を介して対向する正極の容量より少ないことが好ましい。負極の容量が対向する正極の容量より少ないと、充電末期に正極電位が上がり過ぎることを防止できる。なお、正極および負極の容量は、正極および負極を製造する際の理論容量として、製造条件から求めることができる。完成品の容量を測定装置で直接測定してもよい。
ただし、負極の容量を対向する正極の容量と比べて少ないと、負極電位が下がりすぎて電池の耐久性が損なわれる恐れがあるので充放電電圧に注意する必要がある。例えば、一のセル(単電池層)の平均充電電圧を使用する正極活物質の酸化還元電位に対して適切な値に設定して、耐久性が低下しないように注意する。
電池を構成する電解質層の厚さは、特に限定するものではない。しかしながら、コンパクトなバイポーラポリマー電池を得るためには、電解質としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好ましい。一般的な電解質層の厚さは5〜200μm、好ましくは5〜20μm程度である。
上記絶縁シート材(絶縁層)は、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で、各電極の周囲に形成されてなるものであるが、本発明では、当該絶縁層の働きを有する樹脂群で電池集電体の外部を被覆(封止)するため、特に絶縁層を形成する必要はないが、本発明のバイポーラ電池では、電極の周囲に絶縁層を設ける実施形態を排除するものではない。
該絶縁層に求められる多くの機能は本発明の樹脂群により提供されるため、絶縁層に用いられる材料としては、絶縁性のほか、電池動作温度下での耐熱性、耐電解液性等を有するものであればよく、例えば、エポキシ樹脂、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドなどが使用できるが、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
正極および負極タブは、必要に応じて使用すればよい。すなわち、バイポーラ
電池の積層(ないし巻回)構造によっては、最外部の集電体を電極端子として直
接取り出しても良く、この場合には正極および負極端子(タブ)は用いなくとも
良い。
正極および負極タブを用いる場合には、端子としての機能を有するほか、薄型化の観点からは極力薄い方がよいが、積層されてなる電極、電解質および集電体はいずれも機械的強度が弱いため、これらを両側から挟示し支持するだけの強度を持たせることが望ましい。さらに、電極タブでの内部抵抗を抑える観点から、正極および負極タブの厚さは、通常0.1〜2mm程度が望ましいといえる。
正極および負極タブの材質は、通常のバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。
正極タブと負極タブとの材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極および負極タブは、材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
正極および負極リードに関しては、上述したバイポーラ型ではない通常のポリマーリチウムイオン電池で用いられる公知のリードを用いることができる。なお、電池外装材(電池ケース)から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆しておくのが好まし
い。
電池外装材(電池ケース)20としては、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池本体である電池積層体ないし電池巻回体全体を電池外装材ないし電池ケースに収容するのが望ましい。軽量化の観点からは、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)の両面をポリプロピレンフィルム等の絶縁体(好ましく耐熱性の絶縁体)で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルム(例えば、ポリプロピレン−アルミニウム複合ラミネートフィルム;単にアルミラミネートフィルムともいう)など、従来公知の電池外装材を用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電池積層体を収納し密封した構成とするのが好ましい。この場合、上記正極および負極リードは、上記熱融着部に挟まれて上記電池外装材の外部に露出される構造とすればよい。また熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムなどを用いることが、自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を電池動作温度まですばやく加熱することができる点で好ましい。
次に、本発明のポリマー電池の用途としては、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)や燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両駆動用電源(補助電源を含む)に好適に利用することができる。この場合には、本発明のポリマー電池を複数個接続して構成した組電池とすることが望ましい。すなわち、本発明のポリマー電池、特にバイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池を少なくとも2個以上を用いて、並列接続、直列接続、並列−直列接続および直列−並列接続の少なくとも一つの接続方式を用いて構成した組電池とすることにより、高容量、高出力の電池モジュールを形成することが出来る。そのため、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、比較的安価に対応することが可能になる。
具体的には、例えば、上記のポリマー電池をN個並列に接続し、N個並列にしたポリマー電池をさらにM個直列にして金属製ないし樹脂製の組電池ケースに収納し、組電池とする。この際、ポリマー電池の直列/並列接続数は、使用目的に応じて決定する。例えば、EVやHEVや燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車など大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両の駆動用電源(補助電源を含む)に適用し得るように組み合わせればよい。また、組電池用の正極端子および負極端子と、各ポリマー電池の電極リードとは、リード線等を用いて電気的に接続すればよい。また、ポリマー電池同士を直列/並列に接続する際には、スペーサやバスバーのような適当な接続部材を用いて電気的に接続すればよい。ただし、本発明の組電池は、ここで説明したものに制限されるべきものではなく、従来公知のものを適宜採用することができる。
本発明では、上記のポリマー電池および/または組電池を駆動用電源(補助電源を含む)として搭載した車両とすることができる。本発明のポリマー電池および/または組電池は、上述のように各種特性を有し、特に、コンパクトな電池である。このため、エネルギー密度および出力密度に関して、とりわけ厳しい要求がなされる車両、例えば、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車等の駆動用電源(補助電源を含む)として好適であり、燃費、走行性能に優れたEVやHEVや燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車を提供できる。例えば、EVやHEVや燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車の車体中央部の座席下に組電池を駆動用電源として搭載するのが、社内空間およびトランクルームを広く取れるため便利である。ただし、本発明では、これらに何ら制限されるべきものではなく、組電池ないし電池は、車両の床下、トランクルーム、エンジンルーム、屋根、ボンネットフード内などに設置することができる。なお、本発明では、組電池だけではなく、使用用途によっては、ポリマー電池を搭載するようにしてもよいし、これら組電池とポリマー電池を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明のポリマー電池および/または組電池を駆動用電源として搭載することのできる車両としては、上記のEVやHEVや燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車が好ましいが、これらに制限されるものではない。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。以下の実施例においては、特に断りのない限り、高分子電解質原料、リチウム塩、正極活物質、および負極活物質として、以下の材料を用いた。
・高分子電解質原料:エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのマクロマー
・リチウム塩:LiN(SO2C2F5)2(以下、「BETI」と略す)
・正極活物質:スピネル型LiMn2O4(平均粒子径:0.6μm)
・負極活物質:粉砕したグラファイト(平均粒径:0.7μm)
・光重合開始剤:ベンジルジメチルケタール
高分子電解質原料は、特開2002−110239号公報記載の方法に準じて合成した。また、負極インク、正極インクおよび電解質インクの調製、印刷、電池の組み立ては、露点−30℃以下の乾燥雰囲気下で行った。
(実施例1)
<負極インクの調製>
負極活物質(9質量%)、高分子電解質原料(4質量%)、リチウム塩(2質量%)、および光重合開始剤(高分子電解質原料に対して0.1質量%)を準備し、これらに溶媒としてアセトニトリル(85質量%)を加えた。これを十分に撹拌して、負極インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は約3cPであった。
<正極インクの調製>
正極活物質(7質量%)、導電材としてアセチレンブラック(2質量%)、高分子電解質原料(4質量%)、リチウム塩(2質量%)、および光重合開始剤(高分子電解質原料に対して0.1質量%)を準備し、これに溶媒としてアセトニトリル(85質量%)を加えた。これを十分に撹拌して、正極インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は約3cPであった。
<電解質インクの調製>
高分子電解質原料(15質量%)、リチウム塩(8質量%)、および光重合開始剤(高分子電解質原料に対して0.1質量%)を準備し、これに溶媒としてアセトニトリル(77質量%)を加えた。これを十分に撹拌して、電解質インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は2cPであった。
<電池の作製>
調製したインクおよび市販のインクジェットプリンターを用いて、以下の手順により、電池を作成した。なお、上記のインクを使用した場合、溶媒であるアセトニトリルがインクジェットプリンターのインク導入部分にあるプラスチック部品を溶解させてしまう問題があった。よって、インク導入部分にある部品を金属製の部品と交換し、インク溜から直接金属部品にインクを供給させた。また、インクの粘度が低く、活物質が沈殿する懸念があったので、インク溜りを常に回転翼を用いて攪拌した。
インクジェットプリンターは、市販のコンピューターおよびソフトウェアによって制御された。負極層、高分子電解質膜(イオン伝導層)および正極層を作製する際に、調製した負極インク、電解質インクおよび正極インクを、それぞれ用いた。負極層、高分子電解質膜(イオン伝導層)および正極層は、コンピューター上で作成したパターン(本実施例では、図1に示す矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置したパターンとした。)を、インクジェットプリンターを用いて印刷することによって作製された。なお、集電層として用いた金属箔を直接プリンターに供給する事は困難だったので、A4版上質紙に金属箔を貼り付け、これをプリンターに供給し、印刷した(以下の実施例においても、集電層、更には高分子電解質膜(イオン伝導層)をA4版上質紙にこれら集電層や高分子電解質膜を貼り付け、これをプリンターに供給し、印刷する点は、本実施例と同様とした。)。また、本実施例では、負極層、高分子電解質膜(イオン伝導層)および正極層の厚さ(乾燥後)がいずれも5μmとなるように印刷し、図1に示すように、正極用、負極用およびイオン伝導用の各微小セルの長さL1=10mm、微小セル間の空隙間隔D1=1mmとする配置(パターン)構成とした。また集電層の厚さは5μmとし、集電層の大きさはA4版上質紙サイズと同じ大きさとした。
上記改造を施したインクジェットプリンターに負極インクを導入し、コンピューター上で作成したパターンを、集電層としてのステンレス箔上に印刷した。印刷後、溶媒を乾燥させるために60℃の真空オーブン中で2時間乾燥を行った。乾燥後、高分子電解質原料を重合させるために、真空中、紫外線を20分間照射し、集電層上に負極層が積層された積層体を得た。
上記改造を施したインクジェットプリンターに電解質インクを導入し、前記負極層上に、前記負極層と同じパターンとなるように、電解質インクを印刷した。形成された高分子電解質膜(イオン伝導層)は、ムラがなく、均一に形成された。印刷後、溶媒を乾燥させるために60℃の真空オーブン中で2時間乾燥を行った。乾燥後、高分子電解質原料を重合させるために、真空中、紫外線を20分間照射し、集電層、負極層および高分子電解質膜(イオン伝導層)の積層体を得た。
同様にして、高分子電解質膜(イオン伝導層)上に、形成される正極層が前記負極層と同じパターンとなるように、正極インクを印刷した。印刷後、溶媒を乾燥させるために60℃の真空オーブン中で2時間乾燥を行った。乾燥後、高分子電解質原料を重合させるために、真空中、紫外線を20分間照射し、集電体、負極層、高分子電解質膜(イオン伝導層)および正極層の積層体を得た。
この積層体を、集電層としてのステンレス箔で挟持した。最後に、正負極の電極リードだけが電池外に出るようにアルミラミネート材で封止、成型し、電池とした。ここでいうアルミラミネート材とは、具体的には、容器内外で水蒸気および酸素などの気体の交換が行われないようアルミニウム箔の金属薄膜と、ポリエチレンテレフタレートの金属薄膜を物理的に保護する樹脂フィルムおよび、アイオノマーの熱融着性樹脂フィルムを重ね合わせて多層化したラミネートシートをいう。
<電池の評価>
作製した電池に対して、20μA/cm2の定電流定電圧充電を上限電圧4.2Vで行い、次に20μA/cm2の定電流放電を下限電圧2.5Vで行った。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。また、冷熱サイクルをかけたがクラックは発生しなかった。
(実施例2)
<電池の作製>
負極インク、正極インクおよび電解質インクの調製において、溶媒量を実施例1の半分とし、粘度の高いインクを得た。インクの粘度が高いので、そのまま印刷すると、印刷に筋やかすれが生じた。そこで、インクジェットプリンターのインク溜りにヒーターを付け、インクを温めた。これにより、インク粘度が適正な状態になり、美しい印刷が可能となった。その他は、実施例1と同様に、印刷、乾燥、重合、組み立て、評価を行った。
<評価>
実施例1と同様にして、充放電特性を評価した。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。
(実施例3)
<高分子電解質膜(イオン伝導層)の調製>
高分子電解質原料(53質量%)、リチウム塩(26質量%)、および光重合開始剤(高分子電解質原料に対して0.1質量%)を準備し、これに溶媒としてアセトニトリル(21質量%)を加えた。この溶液を空隙率約50%のポリエステル系樹脂不織布セパレータに染み込ませた。溶液が染み込んだ不織布セパレータを60℃の真空オーブン中で2時間乾燥させた。さらに乾燥した不織布セパレータを、真空中、紫外線を20分間照射して光重合し、高分子電解質膜(イオン伝導層)とした。高分子電解質膜(イオン伝導層)の厚さ(乾燥後)は5μmであった。高分子電解質膜(イオン伝導層)の大きさはA4版上質紙サイズと同じ大きさとした。
<電池の作製>
この高分子電解質膜(イオン伝導層)を基体として用い、該高分子電解質膜(イオン伝導層)上に、実施例1と同様の方法で、負極層を作製した。さらに、負極層の反対面に、実施例1と同様の方法で、正極層を作製した。本実施例では、正極層および負極層共に、図1に示す矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置したパターン(配置)となるように印刷した。この際、図1に示すように、正極層と負極層は、高分子電解質膜(イオン伝導層)を挟んで全く同じ位置に配置されるように印刷した。また、本実施例では、負極層および正極層の厚さ(乾燥後)がいずれも5μmとなるように印刷し、図1に示すように、正極用および負極用の各微小セルの長さL1=10mm、微小セル間の空隙間隔D1=1mmとする配置(パターン)構成とした。また集電層の厚さは5μmとし、集電層の大きさはA4版上質紙サイズと同じ大きさとした。
負極層、高分子電解質膜(イオン伝導層)および正極層が積層された積層体を、集電層としての2枚のステンレス箔で挟持した。最後に、正負極の電極リードだけが電池外に出るように実施例1と同様のアルミラミネート材で封止、成型し、電池とした。
<評価>
実施例1と同様にして、充放電特性を評価した。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。
(実施例4)
以下の手順に従って、溶媒を用いずに調製されたインクを用いて、電池を作製
した。
<負極インクの調製>
負極活物質(60質量%)、高分子電解質原料(27質量%)、リチウム塩(13質量%)、および光重合開始剤(高分子電解質原料に対して0.1質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、負極インクとしてのスラリーを調製した。このインクの室温での粘度は約200cPであった。また、60℃での粘度は約20cPであった。
<正極インクの調製>
正極活物質(47質量%)、導電材としてアセチレンブラック(13質量%)、高分子電解質原料(27質量%)、リチウム塩(13質量%)、および光重合開始剤(高分子電解質原料に対して0.1質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、正極インクとしてのスラリーを調製した。このインクの室温での粘度は約200cPであった。また、60℃での粘度は約20cPであった。
<電解質インクの調製>
高分子電解質原料(15質量%)、リチウム塩(8質量%)、および光重合開始剤(高分子電解質原料に対して0.1質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、電解質インクとしてのスラリーを調製した。このインクの室温での粘度は約200cPであった。また、60℃における粘度は約20cPであった。
<電池の作製>
調製したインクおよび実験用インクジェットプリンターを用いて、以下の手順により、電池を作成した。なお、実験用インクジェットプリンターはピエゾ素子型のヘッドを備えており、印加電圧を200Vまで加える事が出来る仕様となっている。また、インク加熱用ヒーターを具えており、インク温度を室温から100℃までコントロールする事が可能である。
実験用インクジェットプリンターに負極インクを導入し、コンピューター上で作成したパターン(本実施例では、図1に示す矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置したパターンとした。)を、集電層としてのステンレス箔上に印刷した。インク温度は60℃に設定しておいた。印刷後、高分子電解質原料を重合させるために、真空中、紫外線を20分間照射し、集電層上に負極層が積層された積層体を得た。
実験用インクジェットプリンターに電解質インクを導入し、前記負極層上に、前記負極層と同じパターンとなるように、電解質インクを印刷した。インク温度は60℃に設定した。形成された高分子電解質膜(イオン伝導層)は、ムラがなく、均一に形成された。印刷後、高分子電解質原料を重合させるために、真空中、紫外線を20分間照射し、集電層、負極層および高分子電解質膜(イオン伝導層)の積層体を得た。
同様にして、高分子電解質膜(イオン伝導層)上に、形成される正極層が前記負極層と同じパターンとなるように、正極インクを印刷した。インク温度は60℃に設定した。印刷後、高分子電解質原料を重合させるために、真空中、紫外線を20分間照射し、集電層、負極層、高分子電解質膜(イオン伝導層)および正極層の積層体を得た。また、本実施例では、負極層、高分子電解質膜(イオン伝導層)および正極層の厚さ(乾燥後)がいずれも5μmとなるように印刷し、図1に示すように、正極用、負極用およびイオン伝導用の各微小セルの長さL1=10mm、微小セル間の空隙間隔D1=1mmとする配置(パターン)構成とした。また集電層の厚さは5μmとし、集電層の大きさはA4版上質紙サイズと同じ大きさとした。
この積層体を、集電層としてのステンレス箔で挟持した。最後に、正負極の電極リードだけが電池外に出るように実施例1と同様のアルミラミネート材で封止、成型し、電池とした。
<評価>
実施例1と同様にして、充放電特性を評価した。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。
(実施例5)
高分子電解質電池である実施例1〜4に対し、以下の手順に従って、液系リチウムイオン電池を作製した。
<負極インクの調製>
負極活物質(9質量%)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF;1質量%)、および溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP;90質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、負極インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は約5cPであった。
<正極インクの調製>
正極活物質(7質量%)、導電材としてのアセチレンブラック(2質量%)、PVdF(1質量%)、および溶媒としてNMP(90質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、正極インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は約4cPであった。
<電池の作製>
調製したインクおよび市販のインクジェットプリンターを用いて、以下の手順により、電池を作成した。なお、上記のインクを使用した場合、溶媒であるNMPがインクジェットプリンターのインク導入部分にあるプラスチック部品を溶解させてしまう問題があった。よって実施例1〜3と同様の改造を施したプリンターで印刷を行った。
改造を施したインクジェットプリンターに負極インクを導入し、コンピューター上で作成したパターン(本実施例では、図1に示す矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置したパターンとした。)を、負極用集電層としての銅箔上に印刷した。印刷後、溶媒を乾燥させるために120℃の真空オーブン中で12時間乾燥を行った。乾燥後、ロールプレス機にて塗膜密度が1.3g/cc以上になるようにプレス加工を行い、負極を完成させた。
改造を施したインクジェットプリンターに正極インクを導入し、コンピューター上で作成したパターン(本実施例では、図1に示す矩形形状の微小セルを2次元にタイル状に設置したパターンとした。この際、図1に示すように、正極層と負極層は、後述するポリエチレン微多孔膜セパレータに電解液を含浸してなる電解質層(イオン伝導層)を挟んで全く同じ位置(対向する位置)に配置されるように印刷した。)を、正極用集電層としてのアルミ箔上に印刷した。印刷後、溶媒を乾燥させるために120℃の真空オーブン中で12時間乾燥を行った。乾燥後、ロールプレス機にて塗膜密度が2.0g/cc以上になるようにプレス加工を行い、正極を完成させた。本実施例では、負極層および正極層の厚さ(乾燥後)がいずれも5μmとなるように印刷し、図1に示すように、正極用および負極用の各微小セルの長さL1=10mm、微小セル間の空隙間隔D1=1mmとする配置(パターン)構成とした。また集電層の厚さは5μmとし、集電層の大きさはA4版上質紙サイズと同じ大きさとした。
作製した正極および負極を角形10cm四方(100cm2)に打ち抜き、厚さ25μmのポリエチレン微多孔膜セパレータを介して積層させ、ラミネート外装材で封止し、評価用セルとした。電解液には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/リットルの濃度で含む、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との体積分率3:7の混合溶媒を用いた。
<評価>
作製した電池に対して、20μA/cm2の定電流定電圧充電を上限電圧4.2Vで行い、次に20μA/cm2の定電流放電を下限電圧2.5Vで行った。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。