本発明の高出力電池用電極は、集電体と、該集電体上に形成されてなる電極層とを有する電池用電極において、該電極層内の導電材微粒子同士の間が、電極層厚さ方向に集電体表面から接した状態で繋がっており、該電極層内の電極活物質微粒子の表面の一部が、該導電材微粒子に接した状態であることを特徴とするものである。また、本発明の高出力電池用電極では、主に前記導電材微粒子で構成される導電材部と、主に前記電極活物質微粒子で構成される電極活物質部とが、電極層内に分散して配置されており、前記導電材部内の導電材微粒子同士の間が、電極層厚さ方向に該電極層表面から集電体表面に至るまで接した状態で繋がっており、前記電極活物質部内の電極活物質微粒子の表面の一部が、隣接する導電材部内の導電材微粒子に接した状態となるように、それぞれが配置されていることが望ましい。さらに、電極層を構成する前記導電材部と前記電極活物質部とが、前記電極層厚さ方向に対して垂直な面方向に、いわば二次元的に分散して、好ましくは略均等に分散して配置(配列)されていることがより望ましい。そして、これらの電極層の配置(配列)は、例えば、インクジェット方式で印刷する塗布方法を用いて形成されていること
が特に望ましいといえる。すなわち、導電材と活物質を別々の工程で塗り分けることのできる方法を用いて形成されていることが特に望ましいといえる。
なお、本願では導電材微粒子が電極層表面から集電体表面まで繋がったものを実施例として挙げているが、これに限るものではなく例えば工程を簡略化するために、少なくとも集電体表面から5μm程度まで本願構成を用い、その上から従来技術のように導電材と活物質を混合したものを塗布して集電体層となしても効果の一部を得られることは言うまでもない。よって、導電材微粒子の連結長さは、5μm以上であることが望ましいといえる。
以下、本発明に係る超薄膜の高出力電池用電極の実施の形態につき、図面を用いて説明する。
図1〜6は、本発明の超薄膜の高出力電池用電極の代表的な実施の形態を模式的に表わした概略図である。このうち、図1(a)は、集電体と、該集電体上に形成されてなる電極層とからなる高出力電池用電極において、電極層の導電材と電極活物質との1つの配置構成を模式的に表わした断面概略図であり、図1(b)は、図1(a)の平面概略図である。図2〜図6は、集電体と、該集電体上に形成されてなる電極層とからなる高出力電池用電極において、電極層の導電材と電極活物質とのそれぞれ異なる配置構成を模式的に表わした平面概略図である。図6は、集電体と、該集電体上に形成されてなる電極層とからなる高出力電池用電極において、電極層の導電材と電極活物質との更に異なる配置構成を模式的に表わした概略図である。
図1に示す実施形態(実施例1の正極層に適用した)の電極層では、図1(a)に示すように、電極層厚さ方向に対して垂直な面方向(以下、単に面方向ともいう)は、4個の正極活物質微粒子13aにつき導電材微粒子を1つ配置したパターンを示す。また、厚さ方向は、図1(a)に示すように、図1(b)の面方向の配置(2次元の平面配置、以下、同様とする。)をそのまま厚さ方向に垂直に積層していき、導電材微粒子12aが厚さ方向に繋がって形成(積層)された導電材部(導電パス)12の周りに活物質微粒子13aが繋がって形成(積層)された活物質部13を配置したパターンを示す。
図2に示す実施形態(実施例2の正極層に適用した)の電極層では、面方向は、1個の正極活物質粒子13aにつき導電材微粒子12aを2つ配置したパターンを示す。この例では、1個の正極活物質粒子13aを挟んで2つの導電材微粒子12aが対峙(対向)するように配置した。厚さ方向は、図1に示す実施形態と同様である。即ち、図2の面方向配置をそのまま厚さ方向に積層していき、導電材微粒子12aが厚さ方向に繋がって形成(積層)された導電材部12の周りに活物質微粒子13aが繋がって形成(積層)された活物質部13を配置したパターンを示す(以下の図3〜5の実施形態についても、厚さ方向は図1に示す実施形態と同様であるため、その説明は省略する)。
図3に示す実施形態(実施例3の正極層に適用した)の電極層では、面方向は、1個の正極活物質粒子13aにつき導電材微粒子12aを2つ接触させて配置したパターンを示す。この例では、1個の正極活物質粒子13aを挟んで2つの導電材微粒子12aが対峙(対向)するように配置した。厚さ方向は、図1に示す実施形態と同様である。
図4に示す実施形態(実施例4の正極層に適用した)の電極層では、面方向は、1個の正極活物質粒子13aにつき導電材微粒子12aを3つ接触させて配置した別のパターンの例を示す。厚さ方向は、図1に示す実施形態と同様である。
図5に示す実施形態(実施例5の正極層に適用した)の電極層では、面方向は、1個の
正極活物質粒子13aにつき導電材微粒子12aを4つ接触させて配置したパターンを示す。厚さ方向は、図1に示す実施形態と同様である。
上記図1〜図5の例では、後述する実施例1〜5に示すように、導電材と活物質との配列を変える事で電極層内の導電材の割合を変える事ができる。これにより、図9や図10に示すように、導電材の割合と内部抵抗ないし内部抵抗比(これについては、実施例で詳しく規定しているので、ここでの説明は省略する)との関係、ひいては利用率(導電材の割合が低いほど、利用率は高い)と導電率(内部抵抗または内部抵抗比が低いほど、導電率は高い)との関係から、使用目的にあった電極を設計することができるものである。後述する実施例では、導電材と微粒子化した活物質とを任意の位置に配列する事で、従来のコーターによる塗布方法に比べて、少なくとも3〜6割程度の導電材で、超薄膜の高出力電池用電極として、十分な性能を達成することができるものである。また、導電材の割合が低くなれば、相対的に活物質の割合が増すため、利用率もアップすることができる。
図6に示す実施形態(実施例6の正極層に適用した)の電極層では、電極層11内の活物質微粒子13aが厚さ方向に真っ直ぐに繋がって形成(積層)された活物質部13の周りに螺旋状に導電材微粒子12aを接触させて配置するパターンとした。そして、螺旋状の導電材微粒子12a同士の間が、電極層11の厚さ方向に電極層11の表面から集電体15の表面に至るまで接した状態で繋がって形成されており、これにより1つの導電材部(導電パス)12を構築している。また、本実施形態では、活物質部13の周りの導電材微粒子以外の部分には電解質インクを用いて活物質部の周りに電解質部(図示せず)を配置するパターンとするのが望ましい。これにより、導電材部12と電極活物質部13とがいわば3次元的(立体的)に分散して配置した構成とすることができる。
以上が、本発明の超薄膜の高出力電池用電極における電極層内の導電材と電極活物質との配置(配列)構成例の説明であるが、本発明がこれらの配置(配列)構成に何ら制限されるべきものでないことはいうまでもない。
すなわち、本発明では、導電材部12を構成する導電材微粒子が、該電極層表面から集電体表面に至る電極層厚さ方向に接した状態で繋がっており、電極活物質部13を構成する電極活物質微粒子の表面の一部が、該導電材微粒子に接した状態であれば特に制限されるべきものではない。
第1に、電極層内の電極活物質微粒子の表面の一部が、導電材微粒子に接した状態になっていればよい。より具体的には、主に活物質微粒子13aで構成される活物質部13が電極層11内に複数形成されており、活物質部13内の活物質微粒子13aの表面の一部のみが、隣接する導電材部12内の導電材微粒子12aに接した状態に配置されているともいえる。そして、これらの導電材部12と活物質部13とが、電極層内に分散して配置されている、いわばミクロ電極構造を有しているともいえる(図1(b)、図2〜5参照のこと。)。より具体的には、これら多数の導電材部12と活物質部13とが、電極層11の厚さ方向に対して垂直な面方向(図1(a)参照)に分散して、好ましくは略均等に分散して配置(配列)されているものである。導電材部12と活物質部13との面方向の配置(配列)の例としては、図1(b)、図2〜5に示すものが例示できるが、これに制限されるものではなく、例えば、導電材部12と活物質部13とが面方向に海島構造のように配置されていてもよい。この場合、海側が、導電材部12であってもよいし、活物質部13であってもよい。面方向の配置(配列)は、面全体に一様であってもよいし一様でなくてもよい。また、規則的であってもよいし、不規則であってもよい。また規則的な面方向の配置(配列)は、電極層全体でなくともよく、電極層内に規則性を有する部分と不規則な部分とが混在してもよい。また、電池を構成する複数の電極においては、各電極ごとの導電材部12と電極活物質部13との面方向の配置(配列)は、同一であってもよい
し、異なっていてもよい。
第2に、電極層内の導電材微粒子同士の間が、電極層厚さ方向に電極層表面から集電体表面に至るまで接した状態で繋がっていればよい。これにより導電材部(導電パス)が形成されることになる。より具体的には、主に導電材微粒子12aで構成される導電材部12が電極層11内に複数形成されており、各導電材部12内の導電材微粒子12a同士の間が電極層11の表面から集電体15の表面に至るまで電極層11の厚さ方向に接した状態で繋がるように配置(配列)されているともいえる。厚さ方向の配置(配列)の実施形態に関しては、上記面方向の配置(配列)の実施形態は、同様である。すなわち、導電材部12と活物質部13との電極層厚さ方向の配置(配列)の例としては、図1(a)に示すように、上記した面方向の配置をそのまま厚さ方向に積層した形で集電体まで繋がった配列が例示できるが、これに制限されるものではない。例えば、導電材部12と活物質部13との厚さ方向の配置(配列)は、図6に示すように、導電材部13が、活物質部12と接しながら螺旋状に集電体15まで繋がっていてもよいし、立体格子状(3次元的な網目状)にネットワーク化されて集電体まで繋がってもよい。さらに導電材部12が、電極層厚さ方向に、垂直または適当な傾斜角を持って、いわば直線的に繋がっていてもよい。さらにまた導電材部12が、集電体から電極層表面に向けて樹枝状(3次元的構造)に繋がっていてもよいなど、任意の配置(配列)をとりえるものである。好ましくは電極層表面と集電体表面とを結ぶ最短距離をいわば直線的に結ぶように繋がっているのが、電子伝導性向上の観点から望ましい(図1(a)参照のこと)。
本発明では、パターニング塗布可能な印刷塗布手法、特にインクジェット方式で印刷する塗布方法を用いることで、微粒子化した電極活物質と導電材とを1次元的(直線的)、2次元的(平面的)、さらには3次元的(立体的)に任意の位置に、微細かつ複雑な配列(ミクロ電極構造)であろうとも簡単に配置(配列)して電極層を形成することができる。これにより、導電性、利用率の低下を招くことなく、超薄膜の高出力電池用電極を作製することができるものである。その結果、車両搭載用電源に適した高出力電池電を提供できる。さらに電池の小型軽量化を図ることができ、車両搭載用電源の総重量及び総容積の軽減を図ることもできる。
ここで、導電材部が、主に導電材微粒子で構成されるとしたのは、導電材微粒子同士を結びつけるためにバインダ等を含んでいても良いためである。活物質部に関しても同様である。
また、電極層内の活物質微粒子の表面の一部のみが、導電材微粒子に接した状態を要件としたのは、既に説明した通りである。即ち、活物質微粒子の表面全体を導電材微粒子で覆うことなく導電パスを形成することができ、イオン伝導性物質である電解質(電解液)とも接した状態にすることができる。例えば、図1〜6の導電材微粒子12aや活物質微粒子13a間の空隙部には電解液(ないし電解質)が存在する(図示せず。詳しくは、後述する実施例参照のこと)。こうすることで、イオン伝導性を確保した上で活物質の微粒子化を図ることができるものである。すなわち、活物質の微粒子化に伴い、活物質微粒子の表面全体を導電材微粒子で覆う場合には導電材の割合を高める必要があり内部抵抗の増加を招くが、本発明の電極構造をとる事で、導電材微粒子の20層もの被覆層がないためLiイオンが出入りし易い構造とすることができる。そのため、電極層中に占める導電材の比率を高めなくとも電極の内部抵抗を低下させることができる(図9、10参照のこと)。よって、大電流で充放電した際にLiイオンの枯渇を招くことなく、安定した充放電(電力供給)を継続することができる。また、図1(a)に示すように活物質微粒子13aの表面の一部が導電材微粒子12aと接触した状態で導電材部(導電パス)12を形成することで十分な電子伝導性を確保することができる。なお、上記説明では、電極反応により電子が発生する例を示したが、正極側と負極側とで、あるいは充電時と放電時とでは
、電子のやり取りが反対となる。その場合には、電子が集電体から導電材部(導電パス)を通って活物質微粒子側に移動し、電極反応が進行しLiイオンを放出することになる。
なお、図1〜6では、図中の丸が1個の導電材微粒子12aまたは活物質微粒子13aに相当するものであるが、本発明では、インクジェット方式で印刷する塗布方法ので、導電材イオンまたは活物質インクの1滴の液滴を表すものと見ることもできる。すなわち、本発明では、導電材イオンまたは活物質インクの液適中に導電材微粒子12aまたは活物質微粒子13aを1個に制御することもできるが、2個以上であっても本発明の構成を実現できるものである。ただし、平均粒径によって二次粒子の大きさが変わるため、二次粒子の径が1μm以下であればよいといえる。同様にスクリーン印刷する塗布方法でも同様である。
また、活物質微粒子の平均粒径は、活物質を微粒子化し、電極のより一層の薄膜化、ひいては車両の駆動用電源などに利用可能な高出力の二次電池用電極を提供する観点から、10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.05〜1μm、特に好ましくは0.1〜1μmの範囲が望ましい。一方、活物質微粒子の平均粒径が10μmを超える場合には、電極のより一層の薄膜化を達成するのが困難となり、本発明の作用効果を十分に発現することができない。活物質微粒子の平均粒径の下限値は特に制限されるものではないが、0.05μm未満の場合には、製造が困難で好ましい放電特性を得ることができない可能性がある。
また、導電材微粒子の平均粒径は、電極のより一層の薄膜化の観点から、1μm以下、好ましくは0.1〜0.05μmが望ましい。導電材微粒子の平均粒径が1μmを超える場合には、電極のより一層の薄膜化を達成するのが困難となり、本発明の作用効果を十分に発現することができない。一方、導電材微粒子の平均粒径の下限値は、電極のより一層の薄膜化の観点からは特に制限されるものではない。
また、電極層内の導電材の割合(質量比)は、導電材や電極活物質の微粒子サイズや導電材部及び電極活物質部の配置(配列)構成等に応じて適宜決定されるものである。例えば、後述する実施例1〜5に示すように、導電材と電極活物質の微粒子サイズ及びその配置(配列)によって、導電材の割合(濃度)と内部抵抗との関係(図9、10に示すグラフ)を求めることができ、最適な導電材の割合(導電材濃度)を決定することができる。例えば、活物質微粒子の平均粒径が1μm以下では、実施例の結果から、導電材の割合(質量比)は、本発明を適用する電極層の全量に対して2〜10質量%、好ましくは4〜6質量%の範囲である。導電材の割合(質量比)が10質量%を超える場合には、利用率が低下し、また導電材が活物質表面全体を覆うようになり、イオン伝導性の低下を招くおそれがある。導電材の比率(質量比)が2質量%未満の場合には、本発明の電極構造をとるのが困難となり、十分な電子伝導性を確保するのが困難となる場合がある。
また、本発明の電極では、電解質層に液系電解質を用いる液系電解質型の高出力電池用の電極の場合には、電池内のセパレータに電解液を注入等により含浸させる際に、電極層内の電極活物質や導電材の微粒子間等の空隙部にも電解液が浸透するので、電極層内に高分子電解質を更に含有させなくともよいといえる。ただし、使用用途に応じて、必要があれば高分子電解質を含有させても良いことはいうまでもない。
一方、電解質層に高分子ゲル電解質や高分子固体電解質を用いる高分子電解質型の高出力電池用の電極の場合には、電極層内に高分子電解質を含有させておくのが、イオン電導性を確保する上で好ましい。具体的には、(1)電極層内の電極活物質部に、高分子電解質が更に含有されていてもよい。また(2)電極層内に、主に高分子電解質で構成される高分子電解質部が上記活物質部と接するように配置(配列)してもよい。例えば、図1(
b)、図2〜6の空隙部に、電解質インクを用いてインクジェット方式による印刷塗布方法により電解質部を形成しても良いが、これらに制限されるものではない。電極活物質微粒子と導電材微粒子との接触を確実に行う観点からは、後者の(2)の形態が望ましいといえる。
さらに、上記電極層内に、主に熱伝導性のよい物質で構成される良熱伝導部および/または空隙部が、配置されていてもよい。電極を薄膜化して多層に積層する場合には、電極の周辺部よりも中央部に熱がこもり易いため、こうした良熱伝導部や空隙部を形成することで、電極中央部の発熱を抑えることができる点で優れている。本発明では、インクジェット方式で印刷する塗布方法を用いて電極を形成することで、こうした電極層内で特性の異なる配置(パターン)を可能とするものである。
なお、本発明で電極層とは、正極層および/または負極層をいう。また、高出力電池用電極は、集電体と、該集電体上に形成されてなる電極層とを有するものであればよく、正極、負極のほか、バイポーラ電極も含まれる。すなわち、バイポーラ型でない正極は、集電体の両面に正極層が形成された構造であり、負極は集電体の両面に負極層が形成された構造であり、バイポーラ電極は、集電体の一方の面に正極層が、他方の面に負極層が形成された構造である。
本発明では、上記電極層は、インクジェット方式による印刷、スクリーン印刷などの印刷塗布方法、エアブラシ法等を用いて形成されてなるものが望ましく、インクジェット方式で印刷する塗布方法を用いて形成されていることがより望ましい。これは、従来のコーターによる塗布技術では形成不可能な本発明のミクロ電極構造のパターニング塗布を簡単に行うことができるためである。さらに、スクリーン印刷のようにパターンごとに異なるスクリーンを用意する必要が無く、交換の必要もない。すなわち、インクジェットプリンタと接続されたコンピュータのソフトウェア(印刷ソフト)の印刷画面上の電極層の平面ないし立体配置(例えば、導電材部と電極活物質部との配列や各導電材部と電極活物質部の形状や大きさ等)、各導電材部と電極活物質部、更に必要に応じて設けられる高分子電解質部や良熱伝導部や空隙部の構成成分の組成や材質等に対応する色を変更すればよい。すなわち構成成分の組成や材質を変更する場合には、印刷画面上の色(カラー)表示の変更に応じて、必要があれば、インクジェットプリンタのインクカートリッジを交換したり、カートリッジ数を増減すればよく、極めて簡単に設計変更に対応することができる。本明細書でいうインクとは、正極層、負極層、さらには電解質層(後述する高出力電池の構成要素)を形成するのに用いられる原料を、適宜必要に応じて、適当な溶媒で粘度調整して得られた原料スラリーをいうものとする。例えば、正極層の導電材部形成用の材料スラリーを正極導電材インク、正極層の正極活物質部形成用の材料スラリーを正極活物質インク、負極層の導電材部形成用の材料スラリーを負極導電材インク、負極層の負極活物質部形成用の材料スラリーを負極活物質インク、電解質層(または電解質部)形成用の材料スラリーを電解質インク(これらを総称して単にスラリーまたはインクともいう)などという(後述する実施例参照のこと)。
ここで、インクジェット方式で印刷する塗布方法(単にインクジェット法ともいう)は、インクジェットのノズルから正・負極活物質インク、正・負極導電材インク、電解質インク等を液滴として集電体(または電解質層やセパレータなどの基材)上に塗布する方法である。これにより、集電体(または電解質層やセパレータなどの基材)上の所要領域に所望の均一かつ薄い塗布膜厚を形成させることができ、最適なパターンで正・負極活物質インク、正・負極導電材インク、電解質インク等を塗布することができるため好ましい。
さらに、前記インクジェット方式が、ピエゾ素子を用いたインクジェット方式であることが望ましい。ピエゾ素子を用いたインクジェット方式とは、一般にドロップオンデマン
ド方式として知られている、電圧を印加すると変形するセラミックス(ピエゾ素子)を用いて液体を吐出する、ピエゾ型を用いる方式をいう。ピエゾ素子を用いたインクジェット方式は、正・負極活物質インクや正・負極導電材インクや電解質インク等に含まれる電極材料や高分子材料等の熱安定性に優れ、塗布する各インク量を可変することができる。さらには、比較的高粘度の液体を他のインクジェットヘッドに比べて確実・安定に、かつ精確に吐出することができ、粘度10Pa・s(100cP)までの液体の吐出に有効に用いることができる点で優れている。
ピエゾ型のインクジェットヘッド内部は、一般的に、各インクを貯留する液室が形成され、この液室はインク導入部を介して前記液室に連なっている構造を有する。インクジェットヘッドの下方部位には、ノズルが多数配列形成されている。また、インクジェットヘッドの上方部位には、前記液室内のインクをノズルから吐出するための圧電素子と、この圧電素子を動作させるためのドライバーとが配備されている。かようなインクジェットヘッドの構造は一実施形態に過ぎず、特に限定されない。
インク導入部がプラスチックであった場合、各インクに含まれ得る溶媒が、前記プラスチック部分を溶解させる恐れがある。従って、インク導入部は耐溶媒性に優れた金属製のものが好ましい。
また、25℃での粘度が、0.1〜100cP、好ましくは0.5〜10cP、より好ましくは1〜3cPのインクを用いるのがよい。各インクの粘度が、0.1cP未満であると、流量を制御することが困難となる恐れがあり、100cPを超えるとノズルを通過できない恐れがあるため上記範囲が好ましい。
また、本発明の高出力電池用電極では、電極の薄膜化の観点から、電極層の厚さは、10μm以下、好ましくは1〜5μmの範囲であることが望ましい。これにより、電極の薄膜化、ひいては電池の薄型・小型軽量化を図ることができるためである。電極層の厚さが10μmを超える場合には、本発明の目的である電極の薄膜化が困難となるおそれがある。なお、電極層の厚さの下限値は特に制限されるものではない。ここでいう電極層の厚さとは、集電体の片側に形成される電極層の厚さを言うものとする。
次に、本発明の高出力電池用電極の製造方法としては、特に制限されるべきものではないが、電極層内の導電材微粒子が、電極層表面から集電体表面に至る電極層厚さ方向に接した状態で繋がっており、電極層内の電極活物質微粒子の表面の一部が、導電材微粒子と接した状態になるように、印刷塗布方法により、少なくとも導電材を主成分とする材料と電極活物質を主成分とする材料とを分けてパターニング塗布して電極層を形成することが望ましい。これにより従来のコーターによる塗布方法では得られなかったミクロ電極構造、即ち電極活物質と導電材微粒子とを任意の位置に配置した電極構造を形成することができるものである。
上記印刷塗布工法としては、特に制限されるべきものではなく、例えば、スクリーン印刷、インクジェット方式で印刷する塗布方法等が挙げられるが、好ましくはインクジェット方式で印刷する塗布方法である。また、上記インクジェット方式には、ピエゾ素子方式、サーマルインクジェット方式、continuance方式の3つの方式があり、そのいずれをも採用しえるものであるが、電池材料の熱安定性の観点から、ピエゾ素子方式を用いるのが望ましい。
インクジェット法により各インクを塗布する方法として、特に限定されないが、例えば、(1)各インクごとにインクジェットヘッドを一つ設け、その複数の微小径ノズルの液体吐出動作を、それぞれ独立に制御することにより、集電体(または基材)表面に液滴を
最適なパターンで塗布する方法、(2)各インクごとにインクジェットヘッドを複数設けるとともに、これらインクジェットヘッドの液体吐出動作を独立に制御して、集電体(または基材)表面に液滴を最適なパターンで塗布する方法、などが挙げられる。かような方法により所望の最適パターンを短時間で形成することができる。
上記(1)および(2)において、液体吐出動作を独立に制御するには、特に限定されないが、例えば、上述のインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンターを、市販のコンピューターなどに連結させ、Power Point(マイクロソフト社製)、AutoCAD(AutoDesk社製)、などのソフトにより所望するパターンを作成して、かようなソフトからの電気信号により制御を行えばよい。
上記(1)または(2)の方法を用いて集電体(または基材)上に最適なパターンで各インクを塗布する方法としては、1または複数設けられたインクジェットヘッドごとの複数の微小径ノズルの液体吐出動作を、それぞれ独立に制御して、集電体(または基材)表面に、各インクをパターニング塗布して薄膜層(平面配置)を形成した後、同一または異なる配置構成にて各インクをパターニング塗布して薄膜層を形成する操作を繰り返して、所望の立体配置となるように複数積層し、所望の電極層構造を得る方法が挙げられる。例えば、図6の螺旋状の配置(配列)場合には、各薄膜層ごとに異なるパターニング塗布を行うことになる。一方、図1〜5の配置(配列)の場合には、各薄膜層で同一のパターニング塗布を行えばよい。
また、上記薄膜層の厚さは、10μm以下、好ましくは1〜5μm、とするのがよい。薄膜層の厚さが10μmを超えると、多数積層して立体配置の電極層の構成する上で、所期の目的である電極の薄膜化を達成するのが困難となる恐れがある。なお、薄膜層の厚さの下限値は特に制限されるものではない。また、電極層において、複数積層される薄膜層の厚さは、それぞれが均一である必要はなく、所望する電極特性が得られるように、適宜決定すればよい。
インクジェットヘッドから吐出させる各インクの液滴の粒径は、電極の薄膜化の観点から、500pl以下、好ましくは1〜100plとするのが好ましい。なお、液滴の粒径の下限値は、特に制限されるものではないが、液滴の粒径が500plを超える場合には、該液滴中に含有される電極活物質微粒子数が多くなりすぎ、本発明の電極構造を形成するのが困難となるおそれがある。そのため、集電体(または基材)上の形成された電極インク液滴のパターンに隣接するように導電材インク液滴のパターンを配置しても、各電極活物質微粒子表面の一部に導電材微粒子を接触させるのが困難となる場合がある。すなわち、電極インク液滴の中央部に導電材微粒子と接触していない電極活物質微粒子が多数存在することになり、大電流による充放電時に電池特性が充分に得られないおそれがある。一方、1pl未満の液滴を得るには微小径ノズルの超微細加工技術を導入する必要があるなど、高コスト化要因となるおそれがある。また、微小径ノズルに対応する活物質微粒子の作製も困難となる。
なお、集電体(または基材)上に塗布した各インクを乾燥させる手段としては、通常雰囲気、好ましくは真空雰囲気下、20〜200℃、好ましくは80〜150℃で、1分〜8時間、好ましくは3分〜1時間行えばよい。しかし、これに限定されず、塗布した各インクに含まれる溶媒量などに応じて適宜決定すればよい。
用いたインクに高分子電解質(全固体高分子電解質または高分子ゲル電解質)が含まれていない場合には、後述する実施例1〜5に示すように、各インクを塗布、乾燥させた後に電解質スラリーないし電解液を含浸(ないし注入)させてもよい。含浸方法は特に限定されず、アプリケーターやコーターなどを用いれば微量の供給も可能である。
各インクに含まれる高分子材料(電解質材料)を重合させる手段としては、後述する実施例6に示すように、重合開始剤に応じて適宜決定すればよいが、例えば、光重合開始剤を用いた場合には、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気下、好ましくは真空雰囲気下、0〜150℃、好ましくは20〜40℃で、1分〜8時間、好ましくは3分〜1時間、紫外線を照射して行う。
本発明の電極は、上述した製造方法に限定されない。例えば、始めからインクに高分子電解質の原料である高分子材料および重合開始剤などを添加して製造してもよい。また、電解質層またはセパレータ上に各インクをパターニング塗布して電極層を形成してもよい。この場合には、各インクをパターニング塗布して電極層を形成した後に、該電極層上に集電体を積層すればよい。
次に、本発明に係る高出力電池は、上述した本発明の高出力電池用電極を用いてなることを特徴とするものである。かかる高出力電池用電極を用いることにより、かつ大電流での充放電を行う場合にも必要なエネルギーをとり出すことのできる、高いエネルギー密度を有する超薄膜の高出力電池を提供することができる。
また、本発明の高出力電池では、上述した本発明の高出力電池用電極を用いてなることを除いては、何ら制限されるべきものではなく、他の構成要件に関しては、従来公知の高出力用二次電池の構成要件を適宜利用することができるものであるので、ここでは、簡単に説明するが、本発明では、後述する実施例6に示すように、電極以外にも電解質層に関しても、インクジェット方式で印刷する塗布方法を用いて形成してもよい。こうすることで、電極層と電解質層を連続して製造できる点で優れている。
本発明に係る高出力電池としては、例えば、電池の構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されるべきものではなく、従来公知のいずれの構造にも適用し得るものである。同様に電池の電解質層の種類で区別した場合にも、特に制限されるべきものではなく、液系電解質型電池、高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用しえるものである。これらの電解質は、これら高分子ゲル電解質および固体高分子電解質(全固体電解質)単独で使用することもできるし、電解液、高分子ゲル電解質、固体高分子電解質(全固体電解質)をセパレータ(不織布セパレータを含む)に含浸させて使用することもできるなど、特に制限されるべきものではない。また、電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、バイポーラ型ではない(内部並列接続タイプ)電池およびバイポーラ型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。好ましくは、バイポーラ型電池である。バイポーラ電池とは1枚の集電体(箔)を挟んで、片側に正極層、反対側に負極層が形成されている単位電池が複数積層されたものである。バイポーラ電池ではない電池を積層する場合は正極、負極それぞれからリード線をとり、そのリード線を介して隣の電池と接続される。そのため、リード線の長さに相当する電子伝導のパスが長くなり、電池の出力が低くなる。それに対して、バイポーラ電池は集電体を介して、縦方向に電流が流れるため、電子伝導のパスが格段に短くなり、その分、高出力になるためである。さらに、電池の電極材料ないし電極間を移動する金属イオンで見た場合には、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池など特に制限されるべきものではなく、従来公知のいずれの電極材料等にも適用し得るものである。好ましくは、リチウムイオン二次電池である。リチウムイオン二次電池では、セル電圧が大きく、高出力が要求される車両用の電池に適している。そのため、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用として優れた電池が作製できるためである。したがって、以下の説明では、本発明の電極を用いてなるリチウムイオン二次電池として、バイポーラ型でないポリマーリチウムイオン二次電池及びバイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池につき説
明するが、これらに何ら制限されるべきものではない。
図7に、バイポーラ型でない扁平型(積層型)のポリマーリチウムイオン二次電池の断面概略図を示す。図7に示すポリマーリチウムイオン二次電池31では、電池外装材33に高分子−金属を複合したラミネートフィルムを用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、正極集電体35の両面(発電要素の最下層および最上層用は片面)に正極層(正極活物質層ともいう)37が形成された正極板、電解質層39、および負極集電体41の両面(発電要素の最下層および最上層用は片面)に負極層(負極活物質層ともいう)43が形成された負極板を積層した発電要素を収納し密封した構成を有している。また、上記の各電極板(正極板及び負極板)と導通される正極(端子)リード45および負極(端子)リード47が、各電極板の正極集電体35及び負極集電体41に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられ、上記熱融着部に挟まれて上記の電池外装材33の外部に露出される構造を有している。
上記バイポーラ型でないポリマーリチウムイオン二次電池は、扁平型(積層型)の電池構造にすることが好ましい。巻回型(円筒型)の電池構造とする場合には、正極および負極リード端子を取り出す個所のシール性を高めることが困難な場合があり、電気自動車やハイブリッド電気自動車に搭載する高エネルギー密度、高出力密度の電池では、リード端子取り出し部位のシール性の長期の信頼性を確保できないためおそれがあるが、扁平型の構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点でも有利である。
ここで、上記電極層(正極層および負極層)に、上述したように、電極層内の導電材微粒子同士の間が、電極層厚さ方向に該電極層表面から集電体表面に至るまで接した状態で繋がっており、該電極層内の電極活物質微粒子の表面の一部が、該導電材微粒子に接した状態であるものを利用するものであり、他の構成要件に関しては、特に制限されるべきものではない。
よって、上記ポリマーリチウムイオン二次電池の電極には、リチウムイオンを吸蔵・放出できる正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極を用い、電極以外の発電要素には、電解質層として、高分子電解質(ゲル状もしくは固体状高分子を用いてなるゲル電解質若しくは固体電解質、またはセパレータを含む固体電解質若しくはゲル電解質)を用いることができる。
正極には、正極集電体および正極活物質層のほか、正極集電体の先端部に取り付けられた正極端子リードまでを含めて称する場合もある。正極板は、正極集電体のうち正極活物質層を具備する反応部をいうものとする。負極には、負極集電体および負極活物質層のほか、負極集電体の先端部に取り付けられた負極端子リードまでを含めて称する場合もある。負極板は、負極集電体のうち負極活物質層を具備する反応部をいうものとする。したがって、本発明の発電素子は、発電素子を構成する負極板と、該負極板と電気的に接続される負極端子リードと、電解質層と、正極板と、該正極板と電気的に接続される正極端子リードとが具備されてなるものといえる。
本発明で用いることのできる正・負極集電体としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、SUSとアルミニウムのクラッド材あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。複合集電体を用いる場合、正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SU
S、チタンなどの導電性金属を用いることができるが、アルミニウムが特に好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、銅、ニッケル、銀、SUSなどの導電性金属を用いることができるが、SUS及びニッケル等が特に好ましい。また、複合集電体においては、正極集電体と負極集電体とは、互いに直接あるいは第三の材料からなる導電性を有する中間層を介して電気的に接続していれば良い。
複合集電体における正極集電体および負極集電体の各厚みは、通常通りでよく両集電体とも、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは電極の薄膜化の観点から、集電体(複合集電体を含む)の厚さが100μm以下、好ましくは1〜50μmであるのが望ましい。
上記正極層内では、正極活物質、電子伝導性を高めるための導電材が含まれ、他にバインダ(結着材ともいう)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)、電解質材料および添加剤などが含まれ得る。
このうち、正極活物質部を構成するものとしては、正極活物質、バインダ(結着材ともいう)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩および電解質材料などが含まれ得る。一方、導電材部を構成するものとしては、電子伝導性を高めるための導電材、バインダなどが含まれ得る。さらに、正極活物質部とは別に高分子電解質部を設ける場合には、該高分子電解質部を構成するものとしては、電解質材料、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、バインダなどが含まれ得る。
上記正極活物質としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)を好適に使用できる。具体的には、LiMnO2、LiMn2O4などのLi−Mn系複合酸化物、LiCoO2などのLi−Co系複合酸化物、Li2Cr2O7、Li2CrO4などのLi−Cr系複合酸化物など、LiNiO2などのLi−Ni系複合酸化物、LixFeOy、LiFeO2などのLi−Fe系複合酸化物、LixVyOzなどのLi−V系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したもの(例えば、LiNixCo1−xO2(0<x<1)等)などが使用できるなど、Li金属酸化物から選択し使用するが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル耐久性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することができる点で有利である。この他、LiFePO4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V2O5、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3などの遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOHなどが挙げられる。上記正極活物質の中では、Li−Mn系複合酸化物が望ましい。これは、Li−Mn系複合酸化物を用いることにより、プロファイルを傾けることが可能となり、異常時信頼性が向上するためである。その結果、各単電池層及びバイポーラ電池全体の電圧の検知が容易になる利点を有する。正極活物質の平均粒径に関しては、既に説明したとおりである。
導電材としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、種々炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。ただし、ただし、これらに限られるわけではない。導電材の平均粒径に関しても、既に説明したとおりである。
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、ポリイミドなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
電解質層に高分子電解質を用いる場合には、正極層にも電解質が含まれていることが望ましい。正極層における正極活物質微粒子や導電材微粒子間の空隙等に電解質を充填することによって、正極層におけるイオン伝導がスムーズになり、バイポーラ電池全体として
の出力向上が図れるためである。一方、電解質層に高分子ゲル電解質(電解液を含む)や電解液をセパレータに含浸させて用いる場合には、正極層に電解質が含まれていなくてもよく、正極活物質微粒子同士を結びつける従来公知の結着材が含まれていればよい。
高分子固体電解質用高分子としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体などが挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子は、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2などのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。本発明において高分子固体電解質は、正極活物質層または負極活物質層の少なくとも一方に含まれる。ただし、バイポーラ電池の電池特性をより向上させるためには、双方に含まれることが好適である。
リチウム塩としては、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(C2F5SO2)2Nとも記載)、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
電解質は、高分子電解質とリチウム塩などの支持塩のみで構成される全固体高分子電解質と、高分子に電解液を保持させた高分子ゲル電解質と、が挙げられる。ただし、これらはポリマーリチウムイオン二次電池の例であり、これらに何ら制限されるものではない。
全固体高分子電解質としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体などが挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子は、BETI、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2などのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。
また、高分子ゲル電解質としては、イオン導伝性を有する全固体高分子電解質に、電解液を含んだものであるが、さらに、リチウムイオン導伝性を持たない高分子(ホストポリマー)の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれる。
ここで、高分子ゲル電解質に含まれる電解液(電解質塩および可塑剤)としては、通常リチウムイオン電池で用いられるものであればよく、例えば、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質支持塩)を含み、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリ
ロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのゲル化ポリマーを形成するモノマーが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、PAN、PMMAなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできるが、ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子として例示したものである。
高分子ゲル電解質中のホストポリマーと電解液との比率(質量比)は、使用目的などに応じて決定すればよいが、2:98〜90:10の範囲である。すなわち、電極活物質層の外周部からの電解質の染み出しについても、絶縁層や絶縁処理部を設けることで効果的にシールすることができる。そのため、上記高分子ゲル電解質中のホストポリマーと電解液との比率(質量比)に関しても、比較的電池特性を優先したものとすることができる。
上記添加剤としては、例えば、電池の性能や寿命を高めるためのトリフルオロプロピレンカーボネート、補強材として各種フィラーなどが挙げられる。
正極層において、電極活物質部や導電材部、更には電解質部等をそれぞれ構成するのに用いられる正極活物質、導電材、結着材、電解質(ホストポリマー、電解液など)、リチウム塩、添加剤等の成分配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性等を充分に考慮して決定すべきである。例えば、正極層内におけるポリマー電解質の配合量が少なすぎると、正極層内でのLiイオン伝導抵抗やLiイオン拡散抵抗が大きくなり、電池性能が低下してしまう。一方、正極層内におけるポリマー電解質の配合量が多すぎると、電池のエネルギー密度が低下してしまう。従って、これらの要因を考慮して、目的に合致した高分子(ゲル)電解質量を決定する。
正極層の厚さとしては、上述の通りであるため、ここではその記載を省略する。
なお、正極層を形成するには、上述したように、各インクによる印刷塗布方法を用いて形成してなるのが望ましい。本発明では、インクジェット方式による塗布方法を用いて形成されていることがより望ましい。
また、本発明では、正極層のほか、さらには後述する負極層や電解質層や絶縁材、シール材などが、インクジェット方式で印刷する塗布方法を用いて形成されていることがより望ましい。これは、上記したように、任意の位置に活物質や導電材などを配列して形成することができ、複雑かつ微細な配列(パターン)であっても、何ら生産性を損なうことなく、極めて精巧に配列(パターン)を形成することができるため、数十〜数百層もの単電池を積層するような場合など、極めて有効な電極層等の形成手段となり得るものである。なお、インクジェット方式で印刷する塗布方法に関しては、後述する実施例において詳しく説明しており、ここでの説明は省略する。ただし、本発明では、後述する実施例によるものに何ら制限されるべきものではなく、従来公知のインクジェット技術を適宜利用して、上記電極層などを形成することができることはいうまでもない。
上記負極層内では、負極活物質、電子伝導性を高めるための導電材(ただし、負極活物質がカーボンなどの電子伝導性に優れる場合には、特に用いなくても良い)が含まれ、他にバインダ、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、電解質などが含まれ得る。このうち、負極活物質部を構成するものとしては、負極活物質、バインダ、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩および電解質材料などが含まれ得る。一方、導電材部を構成するものとしては、電子伝導性を高めるための導電材、バインダなどが含まれ得る。さらに、負極活物質部とは別に電解質部を設ける場合には、該電解質部を構成するものとしては、電解質材料、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、バインダなどが含まれ得る。
負極活物質の種類以外は、基本的に正極層の項で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
上記負極活物質としては、各種の天然黒鉛や人造黒鉛、例えば繊維状黒鉛、鱗片状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛類、および金属化合物、金属酸化物、Li金属化合物、Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物を含む)、ホウ素添加炭素などが挙げられる。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用して用いても良い。具体的には、上記カーボンとしては、例えば、グラファイトカーボン、ハードカーボン、ソフトカーボンなど、従来公知のカーボン材料が挙げられる。上記金属化合物としては、LiAl、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sd、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17C(LiC6)等が挙げられる。上記金属酸化物としては、SnO、SnO2、GeO、GeO2、In2O、In2O3、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Ag2O、AgO、Ag2O3、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、SiO、ZnO、CoO、NiO、FeO等が挙げられる。Li金属化合物としては、Li3FeN2、Li2.6Co0.4N、Li2.6Cu0.4N等が挙げられる。Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)としては、Li4Ti5O12などLixTiyOzで表されるリチウム−チタン複合酸化物等が挙げられる。上記ホウ素添加炭素としては、ホウ素添加カーボン、ホウ素添加グラファイト等が挙げられる。ただし、本発明では、これらに制限されるべきものではなく従来公知のものを適宜利用することができる。上記ホウ素添加炭素中のホウ素の含有量は0.1〜10質量%の範囲が望ましいが、これに制限されるべきものではない。好ましくは結晶性炭素材、非結晶性炭素材から選ばれるものである。これらを用いることで、プロファイルを傾けることが可能となり、各単電池層及びバイポーラ全体の電圧の検知が容易になるからである。ここでいう結晶性炭素材とは、グラファイト系炭素材料をいい、上記グラファイトカーボンなどがこれに含まれる。非結晶性炭素材とは、ハードカーボン系炭素材料をいい、上記ハードカーボンなどがこれに含まれる。負極層の厚さは、正極層と同様に、上述の通りであるため、ここではその説明を省略する。
上記電解質層としては、(a)高分子ゲル電解質、(b)高分子固体電解質または(c)これらポリマー電解質ないし電解液を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む。以下、同様とする)、のいずれにも適用し得るものである。ただし、これらはポリマーリチウムイオン二次電池の例であり、本発明では、絶縁層シール材を用いて各電解質層ごとにシールすることにより、セパレータに電解液を含浸させてなる液系電解質を用いることもできることはいうまでもない。上記(a)高分子ゲル電解質および(b)高分子固体電解質に関しては、正極層に用いられる電解質と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。上記(c)上記ポリマー電解質ないし電解液(電解質塩および可塑剤)を含浸させたセパレータにおいて、電解質は、正極層に用いられる電解質で既に説明したものと同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
上記セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができるものであり、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)などを用いることができる。有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を持つ上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有するものである。
該ポリマーの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミドなどが挙げられる。
上記セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することは
できないが、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、電池の薄膜化の観点から、単層あるいは多層で1〜60μmであることが望ましい。セパレータの厚さが、かかる範囲にあることでセパレータに微粒が食い込むことによって発生する短絡の防止と、高出力のために電極間を狭くすることが望ましいという理由から、厚さ方向の機械的強度と高出力性の確保という効果がある。また電池を複数接続する場合には、電極面積が増大することから、電池の信頼性を高めるために上記範囲のなかでも厚形のセパレータを用いることが望ましい。
上記セパレータの微細孔の径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。セパレータの微細孔の平均径が、上記範囲にあることで熱によってセパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きるという理由から、異常時信頼性が上がり、その結果として耐熱性が向上するという効果がある。すなわち、過充電で電池温度が上昇していったとき(異常時)に、セパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きることで、電池(電極)の正極(+)から負極(−)側にLiイオンが通れなくなり、それ以上は充電できなくなる。そのため過充電できなくなり、過充電が解消する。その結果、電池の耐熱性(安全性)が向上するほか、ガスがでて電池外装材の熱融着部(シール部)が開くのを防止できる。ここでセパレータの微細孔の平均径は、セパレータを走査電子顕微鏡等で観察し、その写真をイメージアナライザ等で統計的に処理した平均径として算出される。
上記セパレータの空孔率は20〜50%であることが望ましい。セパレータの空孔率が、上記範囲にあることで電解質(電解液)の抵抗による出力低下の防止と、微粒がセパレータの空孔(微細孔)を貫くことによる短絡の防止という理由から出力と信頼性の両方を確保するという効果がある。ここでセパレータの空孔率とは、原材料レジンの密度と最終製品のセパレータの密度から体積比として求められる値である。
上記セパレータへの電解質の含浸量は、セパレータの保持能力範囲まで含浸させればよいが、当該保持能力範囲を超えて含浸させてもよい。これは、電解質にシール部を設け、電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保持できる範囲であれば含浸可能である。
電解質を保持させる為に用いる不織布セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、繊維を絡めてシート化することにより製造することができる。また、加熱によって繊維同士を融着することにより得られるスパンボンド等も用いることができる。すなわち、繊維を適当な方法でウェブ(薄綿)状またはマット状に配列させ、適当な接着剤あるいは繊維自身の融着力により接合して作ったシート状のものであればよい。上記接着剤としては、製造及び使用時の温度下で十分な耐熱性を有し、ゲル電解質に対しても反応性や溶解性等がなく安定したものであれば、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用できる。また、使用繊維としては、特に制限されるものではなく、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを用いることができ、使用目的(電解質層に要求される機械強度など)に応じて、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性を得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。すなわち、あまり不織布のかさ密度が大きすぎると、電解質層中の非電解質材料が占める割合が大きくなりすぎ、電解質層におけるイオン伝導度などを損なうおそれがあるためである。
不織布セパレータの空孔率は30〜70%であることが好ましい。空孔率が30%未満では、電解質の保持性が悪化し、70%超では強度が不足する。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜20μmであり、特に好まし
くは5〜10μmである。厚さが5μm未満ではショート不良が増加電解質の保持性が悪化し、20μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
なお、上記(1)〜(3)の電解質層は、1つの電池の中で併用してもよい。
また、高分子電解質は、電解質層、正極活物質層、負極活物質層に含まれ得るが、同一の高分子電解質を使用してもよく、層によって異なる高分子電解質を用いてもよい。
ところで、現在好ましく使用される高分子電解質用のホストポリマーは、PEO、PPOのようなポリエーテル系高分子である。このため、高温条件下における正極側での耐酸化性が弱い。従って、溶液系のリチウムイオン電池で一般に使用される、酸化還元電位の高い正極剤を使用する場合には、負極の容量が、高分子電解質層を介して対向する正極の容量より少ないことが好ましい。負極の容量が対向する正極の容量より少ないと、充電末期に正極電位が上がり過ぎることを防止できる。なお、正極および負極の容量は、正極および負極を製造する際の理論容量として、製造条件から求めることができる。完成品の容量を測定装置で直接測定してもよい。
ただし、負極の容量を対向する正極の容量と比べて少ないと、負極電位が下がりすぎて電池の耐久性が損なわれる恐れがあるので充放電電圧に注意する必要がある。例えば、一のセル(単電池層)の平均充電電圧を使用する正極活物質の酸化還元電位に対して適切な値に設定して、耐久性が低下しないように注意する。
電池を構成する電解質層の厚さは、特に限定するものではない。しかしながら、コンパクトな電池を得るためには、電解質としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好ましい。かかる観点から、電解質層の厚さは5〜20μm、好ましくは5〜10μmである。
本発明において、正極板、負極板は、上述した電極の製造方法に説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。電解質層に関しても、電極の製造方法と同様に、インクジェット方式で印刷する塗布方法を用いて形成してもよいし、従来と同様にコーターなどを用いて形成しても良い。これら正・負極板及び電解質層は、負極板の上側の負極活物質層を電解質層を介してその上方の正極板の正極活物質層に対向させると共に、負極板の下側の負極活物質層を電解質層を介してその下方の正極板の正極活物質層に対向させた状態で、これらを積層状態にして熱接合により一体化して、積層電極(発電素子)を構成している。
上記電極端子リードに用いられる金属(合金を含む)としては、Cu、Feから選ばれる金属を用いることができるが、Al、SUS(ステンレス鋼)といった金属またはこれらを含む合金材料も同様に使用可能である。電極端子リード全体の抵抗増加を抑える観点からは、Cuを用いることが望ましい。さらに外装材の高分子材料との密着性を向上させるために、電極端子リードに表面被覆層を形成してもよい。表面被覆層にはNiが最も好適に使用できるが、Ag、Auといった金属材料も同様に使用可能である。
また、電池外装材である高分子−金属を複合したラミネートフィルム(単に、高分子−金属複合ラミネートフィルムとも称する)としては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、外装材に用いられる高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フ
ィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。上記金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、上記絶縁性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。
こうしたラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
次に、バイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池につき説明する。
バイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池は、集電体の一方の面に正極層が形成され、他方の面に負極層が形成されたバイポーラ電極を、電解質層を挟んで複数枚直列に積層した構造をとる。バイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池では、通常の電池に比べて単電池の電圧が高く、容量、出力特性に優れた電池を構成できる。また、電解質にゲル状もしくは固体状高分子を用いたポリマー電池であるので、液漏れが生じないので、液絡の問題が無く信頼性が高く、かつ簡易な構成で出力特性に優れたバイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池を形成することができる点で有利である。更に、正極活物質としてリチウム−遷移金属複合酸化物を用いたバイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池では、反応性、サイクル耐久性に優れ、低コストな材料であるから、これらの材料を正極電極に用いることにより、出力特性により優れた電池を形成することができる点で有利である。
以下、本発明のポリマー電池の好適な態様の1つである、バイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池(以下、単にバイポーラポリマー電池とも称する)を図面を用いて説明するが、本発明がこれらに制限されるべきものではないことはいうまでもない。
図8には、バイポーラポリマー電池の全体構造を模式的に表わした概略断面図を示す。図8に示したように、バイポーラポリマー電池51では、1枚または2枚以上で構成される集電体53の片面に正極層(正極活物質層ともいう)55を設け、もう一方の面に本発明の負極層(負極活物質層ともいう)57を設けたバイポーラ電極59を、固体電解質層61を挟み隣合うバイポーラ電極59の電極層55、57が対向するようになっている。すなわち、バイポーラポリマー電池51では、集電体53の片方の面上に正極層55を有し、他方の面上に負極層57を有するバイポーラ電極59を、電解質層61を介して複数枚積層した構造の電極積層体(バイポーラ電池本体)63からなるものである。また、こうしたバイポーラ電極59を複数枚積層した電極積層体63の最上層と最下層の電極55a、57aは、バイポーラ電極構造でなくてもよく、集電体53(または端子板)に必要な片面のみの電極層(正極活物質層55aおよび負極活物質層57a)を配置した構造としてもよい。また、バイポーラポリマー電池51では、上下両端の集電体53にそれぞれ正極および負極リード65、67が接合されている。なお、バイポーラ電極の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、本発明のバイポーラポリマー電池51では、電極層の厚みを極力薄くできるため、バイポーラ電極59の積層回数を数十から数百まで高めることができ、電池として十分な出力を確保することができる。また、本発明のバイポ
ーラポリマー電池51では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電極積層体部分を電池外装材(外装パッケージ)69に減圧封入し、電極リード65、67を電池外装材69の外部に取り出した構造とするのがよい。軽量化の観点からは、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)をポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムなど、従来公知の電池外装材を用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電極積層体を収納し減圧封入(密封)し、電極リード65、67を電池外装材69の外部に取り出した構成とするのが好ましい。このバイポーラポリマー電池51の基本構成は、複数積層した単電池層(単セル)が直列に接続された構成ともいえるものである。
なお、バイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池の構成要素に関しては、上述したバイポーラ型でないポリマーリチウムイオン二次電池の構成要素と同様であるものに関しては、その説明を省略する。
よって、集電体、正極層、負極層及び電解質層に関しては、その説明を省略する。
本発明のバイポーラ型のポリマーリチウムイオン二次電池に用いられる絶縁シート材(絶縁層)は、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で、各電極の周囲に形成されてなるものであるが、本発明では、当該絶縁層の働きを有する樹脂群で電池集電体の外部を被覆(封止)するため、特に絶縁層を形成する必要はないが、本発明のバイポーラ電池では、電極の周囲に絶縁層を設ける実施形態を排除するものではない。
該絶縁層に求められる多くの機能は本発明の樹脂群により提供されるため、絶縁層に用いられる材料としては、絶縁性のほか、電池動作温度下での耐熱性、耐電解液性等を有するものであればよく、例えば、エポキシ樹脂、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドなどが使用できるが、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
正極および負極タブは、必要に応じて使用すればよい。すなわち、バイポーラ電池の積層(ないし巻回)構造によっては、最外部の集電体を電極端子として直接取り出しても良く、この場合には正極および負極端子(タブ)は用いなくとも良い。この正極および負極タブは、バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池にも適用可能である。
正極および負極タブを用いる場合には、端子としての機能を有するほか、薄型化の観点からは極力薄い方がよいが、積層されてなる電極、電解質および集電体はいずれも機械的強度が弱いため、これらを両側から挟示し支持するだけの強度を持たせることが望ましい。さらに、電極タブでの内部抵抗を抑える観点から、正極および負極タブの厚さは、通常0.1〜2mm程度が望ましいといえる。
正極および負極タブの材質としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。正極タブと負極タブとの材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極および負極タブは、材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
正極および負極リードに関しては、上述したバイポーラ型ではない通常のポリマーリチウムイオン電池で用いられる公知のリードを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
電池外装材(電池ケース)に関しても、上述したバイポーラ型ではない通常のポリマーリチウムイオン電池で用いられる公知の電池外装材(電池ケース)を用いることができるため、ここでの説明は省略する。
次に、本発明の高出力電池の用途としては、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)や燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両駆動用電源(補助電源を含む)に好適に利用することができる。この場合には、本発明の高出力電池を複数個接続して構成した組電池とすることが望ましい。すなわち、本発明の高出力電池、特にバイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池を少なくとも2個以上を用いて、並列接続、直列接続、並列−直列接続および直列−並列接続の少なくとも一つの接続方式を用いて構成した組電池とすることにより、高容量、高出力の電池モジュールを形成することが出来る。そのため、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、比較的安価に対応することが可能になる。
具体的には、例えば、本発明の高出力電池をN個並列に接続し、N個並列にした高出力電池をさらにM個直列にして金属製ないし樹脂製の組電池ケースに収納し、組電池とする。この際、高出力電池の直列/並列接続数は、使用目的に応じて決定する。例えば、EVやHEVや燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車など大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両の駆動用電源(補助電源を含む)に適用し得るように組み合わせればよい。また、組電池用の正極端子および負極端子と、各高出力電池の電極リードとは、リード線等を用いて電気的に接続すればよい。また、高出力電池同士を直列/並列に接続する際には、スペーサやバスバーのような適当な接続部材を用いて電気的に接続すればよい。ただし、本発明の組電池は、ここで説明したものに制限されるべきものではなく、従来公知のものを適宜採用することができる。
本発明では、上記高出力電池および/または組電池を駆動用電源(補助電源を含む)として搭載した車両とすることができる。本発明の高出力電池および/または組電池は、上述のように各種特性を有し、特に、コンパクトな電池である。このため、エネルギー密度および出力密度に関して、とりわけ厳しい要求がなされる車両、例えば、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車等の駆動用電源(補助電源を含む)として好適であり、燃費、走行性能に優れたEVやHEVや燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車を提供できる。例えば、EVやHEVや燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車の車体中央部の座席下に組電池を駆動用電源として搭載するのが、社内空間およびトランクルームを広く取れるため便利である。ただし、本発明では、これらに何ら制限されるべきものではなく、組電池ないし電池は、車両の床下、トランクルーム、エンジンルーム、屋根、ボンネットフード内などに設置することができる。なお、本発明では、組電池だけではなく、使用用途によっては、高出力電池を組電池化することなく搭載するようにしてもよいし、これら組電池と高出力電池を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明の高出力電池および/または組電池を駆動用電源として搭載することのできる車両としては、上記のEVやHEVや燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車が好ましいが、これらに制限されるものではない。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の内容を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例においては、特に断りのない限り、正極活物質、負極活物質、導電材、高分子電解質原料、リチウム塩、光重合開始剤及びバインダとして、以下の材料を用いた。
・正極活物質:分級により略同粒径になるように粒度調整した平均粒径0.6μmのスピネル型LiMn2O4
・負極活物質:粉砕後、分級により略同粒径になるように粒度調整した平均粒径0.7μmのグラファイト
・導電材:分級により略同粒径になるように粒度調整した二次粒子平均粒径0.1μmのアセチレンブラック
・高分子電解質原料:エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのマクロマー、リチウム塩:六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)(液系リチウムイオン電池)ないしLiN(SO2C2F5)2(以下、「LiBETI」と略す)(高分子電解質電池)、光重合開始剤:ベンジルジメチルケタール(高分子電解質電池)、バインダ:ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)
高分子電解質原料は、特開2002−110239号公報記載の方法に準じて合成した。また、負極インク、正極活物質インク、正極導電材インクおよび電解質インクの調製、印刷、電池の組み立ては、露点−30℃以下の乾燥雰囲気下で行った。なお、以下の実施例では、負極層には、いずれも負極活物質に電子導電性の高いグラファイトを用いているため、本発明の電極構造とせず、正極層のみ本発明の電極構造とした。
(実施例1)
以下の手順に従って、液系リチウムイオン電池を作製した。
<負極インクの調製>
負極活物質(9質量%)、PVdF(1質量%)およびNMP(90質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、負極インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は約5cPであった。
<正極活物質インクの調製>
正極活物質(7質量%)、PVdF(1質量%)およびNMP(90質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、正極活物質インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は約4cPであった。
<正極導電材インクの調製>
導電材(10質量%)、およびNMP(90質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、正極導電材インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は約4cPであった。
<電池の作製>
調製したインクおよび市販のインクジェットプリンターを用いて、以下の手順により、電池を作成した。なお、上記のインクを使用した場合、溶媒であるNMPがインクジェットプリンターのインク導入部分にあるプラスチック部品を溶解させてしまう問題があった。よって、以下の改造を施したプリンターで印刷を行った。すなわちインク導入部分にある部品を金属製の部品と交換し、インク溜から直接金属部品にインクを供給させた。また、インクの粘度が低く、活物質が沈殿する懸念があったので、インク溜りを常に回転翼を用いて攪拌した。また、インクジェットプリンターは、市販のコンピューターおよびソフトウェアによって制御した。なお、集電体として用いた金属箔を直接プリンターに供給する事は困難だったので、A4版上質紙に該金属箔を貼り付け、これをプリンターに供給し、印刷した。また、本実施例では、負極層および正極層の厚さ(乾燥後)がいずれも5μmという従来では達成し得なかった超薄膜になるように印刷した。これにあわせて各集電体の厚さも15μmとし、集電体の大きさはA4版上質紙サイズと同じ大きさとした。
まず、改造を施したインクジェットプリンターに負極インクを導入し、コンピューター上で作成したパターン(本実施例では、負極層は、全体を均一に印刷塗布した。)を、負極用集電体としての銅箔上に印刷した。印刷後、溶媒を乾燥させるために120℃の真空
オーブン中で12時間乾燥を行った。乾燥後、ロールプレス機にて塗膜密度が1.3g/cc以上になるようにプレス加工を行い、負極を完成させた。
次に、改造を施したインクジェットプリンターに正極活物質インクおよび正極導電材インクを別々に分けて導入し、コンピューター上で作成したパターン(本実施例では、正極層のみ本発明の構成要件を満足するように、先述した図1(a)、(b)に示すパターン)を、正極活物質インクおよび正極導電材インクをそれぞれ用い、インクジェットプリンターにて印刷塗布することによって正極用集電体としてのアルミ箔上に正極層を作製した。
作製された正極層での導電材(アセチレンブラック)の割合はインク使用量から求めた結果、3質量%であった。印刷後、溶媒を乾燥させるために120℃の真空オーブン中で12時間乾燥を行った。乾燥後、ロールプレス機にて塗膜密度が2.0g/cc以上になるようにプレス加工を行い、正極を完成させた。完成した正極を切断して、正極層の断面をSEMを用いて観察したところ、図1(a)に示すように、正極層内の各導電材部において、導電材微粒子が、正極層表面から集電体表面に至る正極層厚さ方向に接した状態で繋がっており、正極層内の各正極活物質部において、正極活物質微粒子の表面の一部のみが、隣接する導電材部内の導電材微粒子に接した状態であることが確認できた。
作製した正極および負極を円形(直径10mm)に打ち抜き、厚さ25μmのポリエチレン微多孔膜セパレータを介して積層させ、コインセルとした。電解液には、LiPF6を1mol/リットルの濃度で含む、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との体積分率3:7の混合溶媒を用いた。
<評価>
作製した電池(コインセル)に対して、20μA/cm2の定電流定電圧充電を上限電圧4.2Vで行い、次に20μA/cm2の定電流放電を下限電圧2.5Vで行った。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。
(実施例2)
正極層の電極層厚さ方向に対して垂直な面方向の配置を、図1(b)のパターンから先述した図2に示すパターンとした以外は、実施例1と同様にして、印刷、乾燥、組み立て、評価を行った。
正極層での導電材の割合はインク使用量から求めた結果、3.5質量%であった。また、完成した正極を切断して正極層の断面を観察したところ、実施例1と同様に(図1(a)参照のこと)、正極層内の各導電材部において、導電材微粒子が、正極層表面から集電体表面に至る正極層厚さ方向に接した状態で繋がっており、正極層内の各正極活物質部において、正極活物質微粒子の表面の一部のみが、隣接する導電材部内の導電材微粒子に接した状態であることが確認できた。
<評価>
実施例1と同様にして、充放電特性を評価した。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。
(実施例3)
正極層の電極層厚さ方向に対して垂直な面方向の配置を、図1(b)のパターンから先述した図3に示すパターンとした以外は、実施例1と同様にして、印刷、乾燥、組み立て、評価を行った。
正極層での導電材の割合はインク使用量から求めた結果、4質量%であった。また、完成した正極を切断して正極層の断面を観察したところ、実施例1と同様に(図1(a)参照のこと)、正極層内の各導電材部において、導電材微粒子が、正極層表面から集電体表面に至る正極層厚さ方向に接した状態で繋がっており、正極層内の各正極活物質部において、正極活物質微粒子の表面の一部のみが、隣接する導電材部内の導電材微粒子に接した状態であることが確認できた。
<評価>
実施例1と同様にして、充放電特性を評価した。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。
(実施例4)
正極層の電極層厚さ方向に対して垂直な面方向の配置を、図1(b)のパターンから図4に示すパターンとした以外は、実施例1と同様にして、印刷、乾燥、組み立て、評価を行った。
正極層での導電材の割合はインク使用量から求めた結果、5質量%であった。また、完成した正極を切断して正極層の断面を観察したところ、実施例1と同様に(図1(a)参照のこと)、正極層内の各導電材部において、導電材微粒子が、正極層表面から集電体表面に至る正極層厚さ方向に接した状態で繋がっており、正極層内の各正極活物質部において、正極活物質微粒子の表面の一部のみが、隣接する導電材部内の導電材微粒子に接した状態であることが確認できた。
<評価>
実施例1と同様にして、充放電特性を評価した。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。
(実施例5)
正極層の電極層厚さ方向に対して垂直な面方向の配置を、図1(b)のパターンから図5に示すパターンとした以外は、実施例1と同様にして、印刷、乾燥、組み立て、評価を行った。
正極層での導電材の割合はインク使用量から求めた結果、6質量%であった。また、完成した正極を切断して正極層の断面を観察したところ、実施例1と同様に(図1(a)参照のこと)、正極層内の各導電材部において、導電材微粒子が、正極層表面から集電体表面に至る正極層厚さ方向に接した状態で繋がっており、正極層内の各正極活物質部において、正極活物質微粒子の表面の一部のみが、隣接する導電材部内の導電材微粒子に接した状態であることが確認できた。
<評価>
作製した電池に対して、20μA/cm2の定電流定電圧充電を上限電圧4.2Vで行い、次に20μA/cm2の定電流放電を下限電圧2.5Vで行った。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。
比較例1(活物質の微粒化によるが困難なコーターによる塗布方法(従来法)を用いた例)
<負極インクの調製>
負極活物質として平均粒径0.7μmのグラファイト(45質量%)、PVdF(5質
量%)およびNMP(50質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、負極インクとしてのスラリーを調製した。
<正極インクの調製>
正極活物質として平均粒径0.6μmのスピネル型LiMn2O4(40質量%)、導電材として2次粒子平均粒径0.1μmのアセチレンブラック(5質量%)、PVdF(5質量%)およびNMP(50質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、正極インクとしてのスラリーを調製した。
<電池の作製>
正極層及び負極層を、実施例1で作製した負極インク、正極活物質インクおよび正極導電材インクを用いてインクジェット方式で印刷する塗布方法により形成する代わりに、本比較例で作成した正極及び負極インクを用いて従来のコーターによる塗布方法、すなわちコーターにより全体を均一に塗布して形成した以外は、実施例1と同様にして、塗布、乾燥、組み立て、評価を行った。
実施例1〜5および比較例1の電池の内部抵抗を測定した。図8は、正極層の導電材の割合(質量%)に対する内部抵抗比を表したものである。図8の結果から、実施例1〜5に示すように、導電材を任意の位置に配置して導電パスを形成することで、内部抵抗を下げることができることが確認できた。なお、ここでいう内部抵抗比は、比較例1のコーターによる塗布方法で作製した電極を用いた電池(コインセル)の内部抵抗を1としたときの本実施例のインクジェット方式で印刷した電極を用いた電池の内部抵抗の比とした。
実施例6
液系リチウムイオン電池である実施例1〜5および比較例1に対し、以下の手順に従って、高分子電解質電池を作製した。
<負極インクの調製>
負極活物質(9質量%)、高分子電解質原料(4質量%)、リチウム塩(2質量%)、および光重合開始剤(高分子電解質原料に対して0.1質量%)を準備し、これらに溶媒としてアセトニトリル(85質量%)を加えた。これを十分に撹拌して、負極インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は約3cPであった。
<正極活物質インクの調製>
正極活物質(7質量%)、および溶媒としてアセトニトリル(85質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、正極活物質インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は約3cPであった。
<正極導電材インクの調製>
導電材(10質量%)、およびアセトニトリル(90質量%)を準備した。これらを十分に撹拌して、正極導電材インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は約3cPであった。
<電解質インクの調製>
高分子電解質原料(15質量%)、リチウム塩(8質量%)、および光重合開始剤(高分子電解質原料に対して0.1質量%)を準備し、これに溶媒としてアセトニトリル(77質量%)を加えた。これを十分に撹拌して、電解質インクとしてのスラリーを調製した。このインクの粘度は2cPであった。
<電池の作製>
調製したインクおよび市販のインクジェットプリンターを用いて、以下の手順により、電池を作成した。なお、上記のインクを使用した場合、溶媒であるアセトニトリルがインクジェットプリンターのインク導入部分にあるプラスチック部品を溶解させてしまう問題があった。よって、インク導入部分にある部品を金属製の部品と交換し、インク溜から直接金属部品にインクを供給させた。また、インクの粘度が低く、活物質が沈殿する懸念があったので、インク溜りを常に回転翼を用いて攪拌した。また、インクジェットプリンターは、市販のコンピューターおよびソフトウェアによって制御した。
なお、集電体として用いた金属箔や高分子電解質膜を直接プリンターに供給する事は困難だったので、A4版上質紙に金属箔(集電体)、更には高分子電解質膜を貼り付け、これらをプリンターに供給し、印刷した。また、本実施例では、負極層、高分子電解質膜および正極層の厚さ(乾燥後)がいずれも5μmという従来では達成し得なかった超薄膜になるように印刷した。これにあわせて集電体の厚さも10μmとし、集電体の大きさはA4版上質紙サイズと同じ大きさとした。
上記改造を施したインクジェットプリンターに負極インクを導入し、コンピューター上で作成したパターン(全面を均一に塗布するパターン)を、集電体としてのステンレス箔上に印刷した。形成された負極層は、ムラがなく、均一に形成された。印刷後、溶媒を乾燥させるために60℃の真空オーブン中で2時間乾燥を行った。乾燥後、高分子電解質原料を重合させるために、真空中、紫外線を20分間照射し、集電体上に負極層が積層された積層体を得た。
上記改造を施したインクジェットプリンターに電解質インクを導入し、前記負極層上に、前記負極層から少しはみ出る程度に、電解質インクを(全面を均一に塗布するパターンとして)印刷した。形成された高分子電解質膜は、ムラがなく、均一に形成された。印刷後、溶媒を乾燥させるために60℃の真空オーブン中で2時間乾燥を行った。乾燥後、高分子電解質原料を重合させるために、真空中、紫外線を20分間照射し、集電体、負極層および高分子電解質膜の積層体を得た。
同様にして、高分子電解質膜上に、形成される正極層が前記負極層よりも少し小さくなるように、正極活物質インク、正極導電材インクおよび電解質インクを、先述した図6に示すパターンとなるように印刷した。印刷後、溶媒を乾燥させるために60℃の真空オーブン中で2時間乾燥を行った。乾燥後、高分子電解質原料を重合させるために、真空中、紫外線を20分間照射し、集電体、負極層、高分子電解質膜および正極層の積層体を得た。さらに、完成した積層体を切断して正極層の断面を観察したところ、正極層内の各導電材部12において、導電材微粒子が、正極層表面から集電体表面に至る正極層厚さ方向に螺旋状に接した状態で繋がっており(図6参照のこと)、正極層内の各正極活物質部において、正極活物質微粒子の表面の一部のみが、隣接する導電材部内の導電材微粒子に接した状態であることが確認できた。
この積層体を、集電体としてのステンレス箔で挟持した。最後に、正負極の電極リードだけが電池外に出るようにアルミラミネート材で封止、成型し、電池とした。ここでいうアルミラミネート材とは、具体的には、容器内外で水蒸気および酸素などの気体の交換が行われないようアルミニウム箔の金属薄膜と、ポリエチレンテレフタレートの金属薄膜を物理的に保護する樹脂フィルムおよび、アイオノマーの熱融着性樹脂フィルムを重ね合わせて多層化したラミネートシートをいう。
<電池の評価>
作製した電池に対して、20μA/cm2の定電流定電圧充電を上限電圧4.2Vで行
い、次に20μA/cm2の定電流放電を下限電圧2.5Vで行った。充放電評価の結果、平均電圧約3.8V付近に充放電プラトーが見られ、作製した電池が機能していることを確認した。