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JP5074843B2 - ウッド型ゴルフクラブヘッド - Google Patents

ウッド型ゴルフクラブヘッド Download PDF

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JP5074843B2 JP2007184768A JP2007184768A JP5074843B2 JP 5074843 B2 JP5074843 B2 JP 5074843B2 JP 2007184768 A JP2007184768 A JP 2007184768A JP 2007184768 A JP2007184768 A JP 2007184768A JP 5074843 B2 JP5074843 B2 JP 5074843B2
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Description

本発明は、打球の方向性を安定させつつ飛距離を増大しうるウッド型ゴルフクラブヘッドに関する。
ヘッド重心を通る垂直軸周りの慣性モーメントが大きいウッド型ゴルフクラブヘッドは、フェースのトウ側又はヒール側でボールを打撃したときのヘッドのブレが小さく、ひいては打球の方向性が安定するという利点を有する(下記特許文献1参照)。前記慣性モーメントを大きくするための手法として、例えば、クラブヘッドの前後方向の長さを大きくすることが考えられる。
一方、図8に示されるように、前後方向の長さが大きいゴルフクラブヘッドaは、ヘッド重心Gがシャフト軸中心線CLから後方に大きく離れた位置(この例では距離Aを隔てた位置)に設けられる。従って、ヒール側から見た場合、スイング中の遠心力により、クラブヘッドaは、仮想線で示されるように、そのヘッド重心Gがシャフト軸中心線CL上に近づくよう時計回りの回転運動をする。このようなスイング中のクラブヘッドの回転運動は、フェースbの動的なロフト角を大きくする。また、該回転運動は、前記距離Aに比例して大きくなる。
しかしながら、このような回転運動が大きく生じるクラブヘッドでボールを打撃すると、そのリーディングエッジLeでボールを打撃するいわゆる「トップ」と呼ばれるミスショットが生じやすい。また、上述のクラブヘッドaの回転運動により、フェースbのソール側でボールを打球し易くなり、縦のギヤ効果によって打球のバックスピン量が増加するとともに、打撃時の動的なロフト角も大きくなるため、打球が吹け上がりやすく十分な飛距離が得られない傾向がある。
特開2006−20719号公報
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、トウ・ヒール方向長さLとヘッド奥行き長さWとの比(W/L)や、重心深度GLとフェースプログレッションFPとの比(FP/GL)を一定範囲に限定することを基本として、上述したスイング中のヘッドの回転運動を抑制し、ひいては打球の方向性を安定させつつ飛距離を増大させるのに役立つウッド型ゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、ボールを打球するフェースを有する中空構造のウッド型ゴルフクラブヘッドであって、シャフト軸中心線を任意の垂直面内に配しかつ水平面に対して規定のライ角で傾けるとともに前記フェースを規定のロフト角に保持した基準状態の正面視において、前記シャフト軸中心線と、該シャフト軸中心線から最もトウ側に離れるヘッド表面点である最トウ側点との間の距離であるトウ・ヒール方向長さL、及び前記フェースのスイートスポットに接する平面と、該平面から最もヘッド後方側に離れるヘッド表面点である最バック側点との間の長さであるヘッド奥行き長さWの比(W/L)が0.86以上かつ0.99以下であり、しかもヘッド重心とリーディングエッジとの間の水平距離である重心深度GLと、フェースプログレッションFPとの比(FP/GL)が0.61〜0.70であることを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、ヘッド体積が400〜470cm3である請求項1記載のウッド型ゴルフクラブヘッドである。
また請求項3記載の発明は、前記基準状態におけるヘッド重心を通る垂直軸周りの慣性モーメントが4800〜5100(g・cm2)である請求項1又は2記載のウッド型ゴルフクラブヘッドである。
本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドは、クラブヘッドのトウ・ヒール方向長さL及びヘッド奥行き長さWの比(W/L)が0.86以上かつ0.99以下に設定される。このようにヘッド奥行き長さWをトウ・ヒール方向長さLに関連付けて大きく設定することにより、十分に大きな慣性モーメントを確保でき、かつ、重心深度も大きくなる。従って、ボールの打撃位置がフェースのトウ側又はヒール側にずれた場合もでヘッドのブレを小さく抑え、ひいては打球の方向性を安定させ得る。
また、上述のようにヘッド奥行き長さWが大きいゴルフクラブヘッドは、本来ならばスイング中の遠心力によってヘッド重心がシャフト軸中心線に寄る回転運動が生じやすい。しかしながら、本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドは、ヘッド重心とリーディングエッジとの間の水平距離である重心深度GLと、フェースプログレッションFPとの比(FP/GL)が0.61〜0.70に設定される。即ち、フェースプログレッションFPが重心深度GLに関連付けて従来よりも大きく設定される。このため、ヘッド重心とシャフト軸中心線との前後方向の距離を小さくでき、ひいてはスイング中に生じがちな上述の回転運動を抑制し、ひいては打球のトップや吹け上がりが防止され飛距離が向上する。
このように、本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドは、打球の方向性を安定させつつ飛距離を増大させることができる。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1〜4には、本実施形態のウッド型ゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」又は「クラブヘッド」ということがある。)1の斜視図、同正面図、同平面図及びそのA−A拡大端面図がそれぞれ示される。
本実施形態のクラブヘッド1は、中空構造のヘッド本体1aと、そのヒール側に設けられたホーゼル部1bとを具える。
前記ヘッド本体1aは、ボールを打球するフェース2を前面に有するフェース部3と、前記フェース2の上縁2aに連なりヘッド上面をなすクラウン部4と、前記フェース2の下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部5と、前記クラウン部4とソール部5との間を継ぎかつ前記フェース2のトウ側縁2cからバックフェースBFを通りヒール側縁2dに至るサイド部6とを含む。
また、前記ホーゼル部1bは、前記ヘッド本体1aのクラウン部4のヒール側に設けられかつシャフト(図示せず)が装着される円筒状のシャフト差込孔7が設けられる。このシャフト差込孔7の軸中心線は、後にシャフト(図示省略)が装着された場合、そのシャフト軸中心線CLと実質的に一致する。従って、クラブヘッド1にシャフトが装着されていない場合には、このシャフト差込孔7の軸中心線がシャフト軸中心線CLとして代用される。
前記図1ないし4では、クラブヘッド1は基準状態に保たれている。この基準状態とは、図2ないし3に示されるように、シャフト軸中心線CLを任意の垂直面VP内に配しかつ水平面HPに対して規定のライ角βで傾けるとともに、フェース2を前記垂直面VP(又はこれと平行な面)に対して規定のロフト角α(リアルロフト角であって、以下同じである。)で傾けた状態とする。そして、本明細書中で特に断りがない場合、ヘッド1は、このような基準状態にあるものとして説明される。なお、規定のライ角β及びロフト角αは、当該ヘッドに設定されているライ角及びロフト角を意味する。
また、クラブヘッド1に関して上下ないし高さ方向とは、前記基準状態のヘッド1に関しての上下ないし高さ方向を意味する。またクラブヘッド1に関して前後方向とは、基準状態のクラブヘッド1を上方から見た平面視(図3)において、ヘッド重心GとスイートスポットSSとを結ぶ直線Nと平行な方向とし、フェース2側を前側、バックフェースBF側を後側とする。なお、スイートスポットSSは、ヘッド重心Gからフェース2に立てた垂線の足である。
また、ウッド型のゴルフクラブヘッドとは、ヘッド材料が木質材からなるものという意味ではなく、従来、木質材で形成することが主流であったヘッド形状を有するものを指す。具体的には、少なくともドライバー(#1)、プラッシー(#2)、スプーン(#3)、バフィ(#4)及びクリーク(#5)を含み、かつこれらとは番手ないし名称が異なるが、ほぼ類似した形状を持つヘッドをも含む概念である。
本実施形態において、クラブヘッド1は金属材料により構成される。前記金属材料は、特に限定されないが、好ましくはステンレス鋼、マルエージング鋼、純チタン、チタン合金又はアルミニウム合金等の1種又は2種以上が好ましい。ただし、軽量化等の目的で一部に、例えば繊維強化樹脂やアイオノマー樹脂等の非金属材料が用いられても良い。
また、クラブヘッド1の体積は、好ましくは400cm以上、より好ましくは420cm以上、さらに好ましくは430cm以上が望ましい。ここで、前記体積は、ホーゼル部1bのシャフト差込孔7を埋めて得られるヘッド外表面にて囲まれる全体の体積とする。このような大きな体積は、アドレス時に安心感を与えるとともに、クラブヘッド1の慣性モーメントや重心深度を大きくして打球の方向性を向上するのに役立つ。他方、クラブヘッド1の体積が大きすぎても、ヘッド重量の増加、スイングバランスの悪化、耐久性の低下及びゴルフ規則違反等の問題があるため、好ましくは470cm3以下、より好ましくは460cm3 以下が望ましい。
また、クラブヘッド1の全重量は、スイングバランス、反発性及びスイングし易さ等を考慮し、好ましくは180g以上、より好ましくは183g以上、さらに好ましくは185g以上が望ましく、他方、上限については、好ましくは220g以下、より好ましくは215g以下、さらに好ましくは213g以下が望ましい。
本実施形態のクラブヘッド1は、そのトウ・ヒール方向長さL(mm)とヘッド奥行き長さW(mm)との比(W/L)が0.85以上かつ1.0以下に設定される。
ここで、前記「トウ・ヒール方向長さL」は、図2に示されるように、基準状態の正面視(垂直面VPと直角な方向から見る)において、シャフト軸中心線CLと、該シャフト軸中心線CLから最もトウ側に離れるヘッド表面点である最トウ側点Tとの間の前記軸中心線CLと直角方向の長さである。また、前記「ヘッド奥行き長さW」は、図4に示されるように、フェース2のスイートスポットSSに接する平面P3と、該平面P3から最もヘッド後方側に離れるヘッド表面点である最バック側点Bとの間の前記平面P3と直角方向の長さである。
クラブヘッドは、ボールを打撃するフェース部3に最も高い強度が要求される。このため、通常、フェース部3の厚さtfがヘッドの中で最も大きく形成されている。従って、フェース部3はヘッドの中で最も大きな重量を有し、通常、ヘッド全重量の30ないし40%程度の重量を占めている。一方、ヘッド重心Gを通る垂直軸周りの慣性モーメントを大きくするためには、ヘッド重心Gをフェース部3から遠ざけることが効果的である。
そこで、本発明では、前記比(W/L)を0.86以上とすることにより、ヘッド奥行き長さWをトウ・ヒール方向長さLに関連づけて十分に大きくし、ひいては大きな慣性モーメントや重心深度GLを確保している。これにより、打撃位置がフェースのトウ側又はヒール側にずれた場合でもヘッドのブレが抑制され、ひいては打球の方向性が安定する。また、トウ・ヒール方向長さLを適度に抑制することができるので、打球のスライスなどを防止しうる。このような観点より、前記比(W/L)は、さらに好ましくは0.88以上、特に好ましくは0.92以上が望ましい。
ここで、本実施形態のクラブヘッド1において、ヘッド重心Gを通る垂直軸周りの慣性モーメントは、好ましくは4000(g・cm2)以上、より好ましくは4100(g・cm2)以上、さらに好ましくは4200(g・cm2)以上、さらに好ましくは4800(g・cm 2 )以上が望ましい。これにより、ボール打撃位置がフェース2のトウ又はヒール側にずれた場合でも、前記垂直軸周りのヘッドの回転量(ブレ)を小さくでき、打球の方向性をより確実に安定させ得る。なお、該慣性モーメントが大きすぎても、ヘッド重量が大きくなったり、ヘッドの形状が特異的なものになるおそれがあるので、その値は、好ましくは5900(g・cm2)以下、より好ましくは5800(g・cm2)以下、さらに好ましくは5100(g・cm 2 )以下が望ましい。
また、トウ・ヒール方向長さLに対してヘッド奥行き長さWが過度に大きくなると、スイング中におけるボールの打撃時の瞬間に、クラブヘッドのフェースが、構えた状態まで正しく戻りきらず、その結果、ボールの捕まりが悪くなって特に初心者にはスライスのようなミスショットが生じるおそれがあり、また、これが原因となって飛距離が低下するおそれがある。このような観点より、前記比(W/L)は、0.99以下、さらに好ましくは0.96以下に抑えることが望ましい。
ここで、クラブヘッド1の奥行き長さWの値は、特に限定はされるものではないが、小さくなると、構えたときのヘッドのボリューム感が無くなって安心感が得られにくく、また慣性モーメントや重心深度GLが小さくなって、打球の方向安定性が悪化するおそれがある。このような観点より、前記奥行き長さWは、好ましくは100mm以上、より好ましくは105mm以上、さらに好ましくは110mm以上が望ましい。他方、前記奥行き長さWが大きくなると、スイートスポットSSの高さが大きくなり、ひいてはバックスピン量の多い吹け上がった弾道となって飛距離を損ねるおそれがある。このような観点より、前記奥行き長さWは、好ましくは127mm以下が望ましい。
また、クラブヘッド1の前記トウ・ヒール方向長さLの値も特に限定されるものではないが、小さくなると、フェース2のトウ・ヒール方向の長さも小さくなってミート率が悪化したり、構えた際の安心感が失われるおそれがある。また、図3に示されるように、ヘッド重心Gと、該ヘッド重心Gからシャフト軸中心線CLに下ろした垂線の足Xとの距離である重心距離GSLが著しく小さくなって、フックが生じやすくなる傾向がある。このような観点より、前記トウ・ヒール方向長さLは、好ましくは105mm以上、より好ましくは110mm以上、さらに好ましくは115mm以上が望ましい。他方、トウ・ヒール方向長さLが過度に大きくなると、ボールの捕まりが悪化するおそれがあるので、好ましくは127mm以下が望ましい。
さらに、図5に示されるように、本実施形態のクラブヘッド1は、ヘッド重心GとリーディングエッジLeとの間の水平距離である重心深度GLと、フェースプログレッションFPとの比(FP/GL)が0.61〜0.70に設定される。ここで、リーディングエッジLeは、図5に示されるように、基準状態のクラブヘッド1の前側で前記垂直面VPと平行な垂直面P4と接触する位置とし、重心深度GLは、この垂直面P4とヘッド重心Gとの距離として測定される。また、フェースプログレッションFPは、前記垂直面VPとP4との間の距離として測定される。
このように、前記比(FP/GL)が従来に比して大きく設定されたクラブヘッド1は、垂直面VPからヘッド重心Gまでの距離A(=GL−FP)が小さくなる。このため、スイング時の遠心力によってクラブヘッド1のヘッド重心がシャフト軸中心線CLに移動しようとする回転運動が小さく抑えられる。この結果、トップなどのミスショットや、フェース2のソール側でボールを打撃する機会が低減する。また、ボール打撃時におけるフェース2の動的なロフト角が過度に大きくなるのも防止できる。従って、打球の打ち出し角が著しく大きくなるのも防止できる。以上のように、本発明のクラブヘッド1では、ミスショットや打球の吹け上がりを防止できるので、打球の方向性を安定させつつ飛距離を増大しうる。
なお、前記比(FP/GL)が0.61未満の場合、スイング中の遠心力によるクラブヘッド1の前記回転運動を十分に小さく抑えることができず、ひいては上述の作用が期待できない。このような観点より、前記比(FP/GL)は、より好ましくは0.65以上が望ましい。
他方、前記比(FP/GL)を大きくすることでスイング中のクラブヘッドの前記回転運動をより小さく抑え得る。しかし、この場合、フェースプログレッションFPが大きくなる場合がある。フェースプログレッションFPが大きいクラブヘッド1では、前記垂直面VPよりもフェース2が大きく前方に位置するので、ボール打撃時のタイミングが早くなりやすく、ひいてはスライスのようなミスショットが多発しやすい。また、前記比(FP/GL)が大きい場合、重心深度GLが小さくなる場合があり、この場合には打球の方向性が悪化し、これが原因となって飛距離が低下しやすい。このような観点より、前記比(FP/GL)は、0.70以下とされる
また、前記重心深度GLの値は、上述の比を満たすものであれば特に限定されるものではない。しかし、該重心深度GLは、小さすぎると、ヘッド重心Gを通る垂直軸周りの慣性モーメントが小さくなるおそれがあるので、好ましくは30mm以上、より好ましくは32mm以上、さらに好ましくは33mm以上が望ましい。他方、該重心深度GLが大きすぎると、ヘッド重心Gがフェース2から大きく遠ざかり、打球感を感じづらく、ひいては打球フィーリングが悪化するおそれがある。このような観点より、前記重心深度GLは、好ましくは60mm以下、より好ましくは57mm以下、さらに好ましくは55mm以下が望ましい。
また、前記フェースプログレッションFPの値も、上述の比を満たすものであれば特に限定されるものではない。しかし、該フェースプログレッションFPの値が小さくなると、ボールを打撃するタイミングが遅くなる傾向があるため、フェース2が閉じた状態でボールを打撃し易い。このような打撃は、ボールが上がりにくくかつ飛距離も低下しやすい。このような観点より、フェースプログレッションFPは、好ましくは15mm以上、より好ましくは16mm以上、さらに好ましくは17mm以上が望ましい。他方、該フェースプログレッションFPが大きくなると、ボールを打撃するタイミングが早くなるため、フェース2が開いた状態でボールを打撃し、スライスを招きやすい。このような観点より、フェースプログレッションFPは、好ましくは35mm以下、より好ましくは34mm以下、さらに好ましくは32mm以下が望ましい。
なお、特に好ましい態様として、前記重心深度GLとフェースプログレッションFPとの比(FP/GL)を、トウ・ヒール方向長さLとヘッド奥行き長さWとの比(W/L)に関連付けて規定することが望ましい。具体的には、下式(1)を満たすように、比(FP/GL)及び(W/L)を規定することが望ましい。
(FP/GL)−0.6×(W/L)≧0 …(1)
図7には、縦軸に比(FP/GL)を、横軸に比(W/L)を設定したグラフが示されている。本発明のクラブヘッドは、斜線の領域に含まれるが、上記式(1)を満たす場合には、さらにその範囲が限定される。先ず、前記比(W/L)が大きくなるほど、大きな慣性モーメントと深い重心深度が得られる反面、上述したスイング時のヘッドの回転運度も大きくなって飛距離が低下する傾向がある。この問題を解決するためには、比(FP/GL)を大きくするのが良い。また、比(W/L)が大きいほど、前記回転運動も大きくなる。従って、比(W/L)が大きいヘッドほど、比(FP/GL)を大きくするのが好ましい。発明者らは、この技術理論に照らして比(W/L)や比(FP/GL)の異なるヘッドを種々評価し、前記式(1)を見出した。この式(1)を満たすことにより、さらに高い次元で打球の方向性と高飛距離とを両立しうるものとなる。とりわけ
(FP/GL)−0.6×(W/L)≧0.03 …(2)
とするのが良く、さらに好ましくは
(FP/GL)−0.6×(W/L)≧0.11 …(3)
を満たすものが望ましい。なお、「(FP/GL)−0.6×(W/L)」の値が過度に大きくなると、比(W/L)の値が小さくなり、ひいてはヘッドのブレが大きくなって方向性が低下したり、比(FP/GL)の値が大きくなって、ヘッドの返りが悪くなってスライスが発生しやすくなり、方向性が低下しやすくなるので、
(FP/GL)−0.6×(W/L)≦0.19 …(4)
を満たすのが望ましい。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は図示された具体的な実施例に限定されるものではなく、種々の態様にて実施しうるのは言うまでもない。
図1〜4に示した基本形状を有するウッド型ゴルフクラブヘッドを表1の仕様に基づいて試作し、打球の飛距離や方向性などについてテストが行われた。各クラブヘッドは、図1に鎖線で境界が示されるように、板状のフェース部材fと、中空のヘッド基体mとを溶接することにより製造された。
ヘッド基体mは、Ti−6Al−4Vを精密鋳造することにより準備された。またフェース部材fは、α+β系のチタン合金(JFEスチール(株)製のチタン合金「SP700HM」であり、その組成は、Al:4.0〜5.0wt%、V:2.5〜3.5wt%、Mo:1.8〜2.2wt%、Fe:1.7〜2.3wt%、残部Ti及び不可避不純物)をNCによって機械加工及びプレス加工することにより、中央部を厚くかつ周辺部を薄く形成された。そして、ヘッド基体mとフェース部材fとをレーザー溶接にて接合した。これにより、以下の共通仕様のクラブヘッドが製造された。
ヘッド全重量:200g
ヘッド体積:460cm3
リアルロフト角:11度
クラウン部の厚さ:0.7mm
フェース部の中央部の厚さ:3.2mm
フェース部の周辺部の厚さ:2.2mm
また、奥行き長さW及びトウ・ヒール方向長さLの値は、ヘッド体積が変わらないように調整された。また、ヘッド重心及び慣性モーメントについては、ソール部及びサイド部の厚さを変えて調整された。
テストの方法は、次の通りである。
<打球の飛距離及び方向安定性>
各クラブヘッドに同一のシャフトを装着し、全長45インチのウッド型のゴルフクラブが試作された。そして、ハンディキャップ15〜30の右打ちゴルファ10名が、各クラブで10球ずつゴルフボールを打球し、飛距離の平均値が計算された。また、打球の方向安定性は、上記10名のテスターによる感応により評価された。基準は以下の通りであり、表1には10名の平均値が示される。数値が大きいほど良好である。
5:非常に方向安定性が良い
4:やや方向安定性が良い
3:普通
2:やや方向安定性が悪い
1:方向安定性が悪い
<打球の平均ずれ量>
上記飛距離テストの結果から、目標飛球線に対する打球のずれ量の平均値が求められた。なお、ずれ量は、左右のいずれにずれた場合でも+値として測定された。数値が小さいほど良好である。
<打球の上がり易さ>
打球の上がり易さは、それぞれ上記10名のテスターによる感応により評価された。基準は以下の通りであり、表1には10名の平均値が示される。数値が大きいほど良好である。
5:非常に良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
テストの結果等は表1に示される。また、実施例及び比較例を図7のグラフにも示す。
Figure 0005074843
テストの結果、実施例のクラブヘッドは、比較例に比べて打球の飛距離が向上し、かつ、方向性も安定していることが確認できた。
本発明の実施形態を示すクラブヘッドの基準状態の斜視図である。 図1のクラブヘッドの正面図である。 図1のクラブヘッドの平面図である。 図3のA−A断面図である。 本実施形態のクラブヘッドをヒール側から見た側面図である。 本発明の作用を説明するクラブヘッドのヒール側から見た側面図である。 比(W/L)と比(FP/GL)との関係を示すグラフである。 従来技術を説明するクラブヘッドのヒール側から見た側面図である。
符号の説明
1 ゴルフクラブヘッド
2 フェース
3 フェース部
4 クラウン部
5 ソール部
6 サイド部
G ヘッド重心
L ヘッドのトウ・ヒール方向長さ
SS スイートスポット
W ヘッドの奥行き長さ
VP 垂直面
B 最バック点
T 最トウ点
FP フェースプログレッション
GL 重心深度

Claims (3)

  1. ボールを打球するフェースを有する中空構造のウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
    シャフト軸中心線を任意の垂直面内に配しかつ水平面に対して規定のライ角で傾けるとともに前記フェースを規定のロフト角に保持した基準状態の正面視において、前記シャフト軸中心線と、該シャフト軸中心線から最もトウ側に離れるヘッド表面点である最トウ側点との間の距離であるトウ・ヒール方向長さL、及び
    前記フェースのスイートスポットに接する平面と、該平面から最もヘッド後方側に離れるヘッド表面点である最バック側点との間の長さであるヘッド奥行き長さWの比(W/L)が0.86以上かつ0.99以下であり、しかも
    ヘッド重心とリーディングエッジとの間の水平距離である重心深度GLと、フェースプログレッションFPとの比(FP/GL)が0.61〜0.70であることを特徴とするウッド型ゴルフクラブヘッド。
  2. ヘッド体積が400〜470cm3である請求項1記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
  3. 前記基準状態におけるヘッド重心を通る垂直軸周りの慣性モーメントが4800〜5100(g・cm2)である請求項1又は2記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
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