しかしながら、多層化技術による記録容量向上には限界があった。実例として、第1情報記録層80および第2情報記録層40が共にRE層である2層BD500(以降、2層RE−BD)の場合について図13を用いて説明する。なお、第1情報記録層80の各層81〜86は、後述の第3情報記録層60の各層61〜66と同一の機能を有するため、ここではその説明を省略する。また、透光層910(従来の透光層)、中間層930(従来の中間層)、第2情報記録層40および基板50についても後述しているので、ここではその説明を省略する。
2層RE−BD500は、上述した多層光情報記録媒体の一種である。このため、2層RE−BD500に照射される再生光は、再生光入射面に近い側の情報記録層である第1情報記録層80を透過する必要がある。しかしながら、各RE層の記録膜83、43の材料として現在使われている材料は、実際には相変化材料(GeSbTe、AgInSbTe等)しかない。これらの材料は、記録時に照射されるレーザ光を吸収して熱に変える必要があり、この熱に変える特性が上記透過性を阻害する要因となる。このため、2層RE−BD500では、記録膜83の膜厚を薄くすることで透過率を得る必要があり、実際には記録膜83を6nm程度まで薄くして、再生光波長である青色レーザ波長において60%程度の透過率を得ていた。
一方、記録膜を上述のように薄くすることによって、再生耐久性が悪化することが広く知られている。これは記録膜が極薄であるため、記録膜で発生する熱が、隣接層に放熱される前に記録膜自体に熱劣化を与えるためであると考えられる。このため、記録膜を上記以上に薄くすることは、再生耐久性の観点から不可能な状況である。すなわち、記録膜を薄くすることによる透過率の向上は、これ以上望めない状況である。
また、再生光入射面より遠い側の情報記録層である第2情報記録層40には、高い反射率が望まれる。その理由を以下に説明する。
第2情報記録層40へと照射された再生光は、第1情報記録層80を透過して、第2情報記録層40に集光し、そこで反射して再び第1情報記録層80を透過する。そして、この第1情報記録層80を透過した光(戻り光)が、上述した駆動装置の光学ヘッドにて検出される。このようにして、第2情報記録層40における情報再生が行われる。
また、第2情報記録層40からの光学ヘッドへの戻り光は、第1情報記録層80を2回透過しており、第1情報記録層80の透過率は上述のように60%程度である。このため、照射された再生光に対しての、光学ヘッドに検出される光の割合(以降、戻り光率)は、(第2情報記録層40の反射率)×60%×60%となる。
このように、第2情報記録層40へ照射された再生光には、第1情報記録層80による損失が生じる。従って、第2情報記録層40からの戻り光量を光学ヘッドに対して十分にする(すなわち、光学ヘッドが、第2情報記録層40の情報読み取りを行うことを可能とする)ためには、反射率を高める必要がある。
一方、上述したように、RE層の記録膜では光を吸収する必要があるので、第2情報記録層40の反射率としては、第2情報記録層40を透過する光をなくすことによって反射率を高めたとしても、現状では16%程度が限界である。
また、上記より、RE層を3層とした場合、再生光入射面より最も遠い位置に設けられている第3情報記録層(図示しない)からの戻り光率は、2.1%(=16%×60%×60%×60%×60%)である。この2.1%という戻り光率は、後述する理由により、現状の光情報記録媒体駆動装置に搭載されている光学ヘッドではフォーカスが極めて困難な値であり、かつ元々ROM層等に比べてコントラスト比が低いRE層では記録の有無によるコントラスト比もほとんど取れない。よって、実際には、RE層を3層にすることによる記録容量の向上はほぼ不可能である。
さらに、上述したように、一般に光情報記録媒体は、DVD、BD等に見られるように規格化されている。これは、光情報記録媒体に汎用性を持たせるために実質必須である。そして、これまでの規格化の際には、旧規格に対応している光情報記録媒体を新規格に対応している駆動装置で再生することはできるが、新規格に対応している光情報記録媒体を旧規格に対応している駆動装置で再生できないという問題があった。よって、上述したような光学ヘッドによるフォーカス、又はコントラスト比が解決したとしても、旧規格に対応している駆動装置で再生できないという問題は残ることになる。
また、特許文献3のような、ROM層又はR層と、RE層とのコンビネーションによる記録容量の向上の場合においても、同様の問題が生じる。特許文献3によれば、ROM層又はR層は、Au等の金属半透過透明膜が用いられている。これらの反射率は、2層RE−BD等の2層RE光情報記録媒体の第1情報記録層より大きい。また、S字特性は、反射光量に依存するため、フォーカスの際には大きなS字特性が検出されることになる。よって、ROM層又はR層を追加する前の光情報記録媒体のみに対応している駆動装置においては、未知の情報記録層が検出されることになり、再生不良が生じる可能性があるといった問題がある。つまり、新規格に準じてROM層又はR層が追加された光情報記録媒体を、旧規格に対応している駆動装置で再生できないという問題があることになる。
以上のように、新たな規格化を必要とする、多層化による記録容量向上技術には多くの問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、情報記録層数が少ない旧規格の光情報記録媒体に対応している駆動装置でも再生可能であり、旧規格の光情報記録媒体に再生専用層(ROM層)を追加することにより記録容量を向上させることが可能なハイブリッド光情報記録媒体を提供することにある。
本発明に係る光情報記録媒体は、上記課題を解決するために、基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層のうち、上記再生光の入射側に最も近い位置に設けられた第1情報記録層が情報を読み出すことのみ可能な層であり、他の情報記録層のうち少なくとも一層が情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層である、複数の樹脂層を含む光情報記録媒体であって、上記第1情報記録層は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成され、上記第1情報記録層の再生光波長における反射率の値は、0.4%より大きく2.2%以下であることを特徴としている。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記課題を解決するために、基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層のうち、上記再生光の入射側に最も近い位置に設けられた第1情報記録層が情報を読み出すことのみ可能な層であり、他の情報記録層のうち少なくとも一層が情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層である、複数の樹脂層を含む光情報記録媒体であって、上記第1情報記録層は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成され、上記第1情報記録層の再生光波長における反射率の値は、上記書き換え層の戻り光率より小さく、上記書き換え層を再生するときの第2再生光より強度が高い上記第1情報記録層を再生するときの第1再生光を、上記第1情報記録層に照射することにより、上記第1情報記録層がフォーカス可能となる程度に大きい値であることを特徴としている。
上記構成によれば、第1情報記録層は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成されている。このため、本発明に係る光情報記録媒体は、従来のハイブリッド光情報記録媒体に比べて、第1情報記録層を形成する為に金属により形成されるROM層(金属薄膜)を設ける必要がないので、スパッタリングや蒸着などの真空工程を1工程削減することができる。これにより、本発明に係る光情報記録媒体は、その製造工程において、製造コストおよびタクトタイムを削減できる。
なお、上記従来のハイブリット光情報記録媒体とは、書き換え層に加え、第1情報記録層としてAg、Al、Au等の金属により形成されるROM層を追加して設けることにより記録容量の向上を図った光情報記録媒体のことである。
さらに、本発明に係る光情報記録媒体は、上述したように、金属薄膜を設ける必要がないので、該金属薄膜と該金属膜に隣接する層とによる界面が形成されない。このため、本発明に係る光情報記録媒体において、温度変化または湿度変化による膜(層)応力の発生を低減することができる。それゆえ、本発明に係る光情報記録媒体は、その信頼性を向上させることができる。
また、第1情報記録層の再生光波長における反射率の値が2.2%以下である。このため、後述する理由により、第1情報記録層は、書き換え層を再生するときの第2再生光ではフォーカス引き込みが不可能であり、第1情報記録層を再生するときの、第2再生光より強度が高い第1再生光ではフォーカス引き込みが可能になる。
具体的には、本発明に係る光情報記録媒体は、上記情報記録層のうち再生光入射面側に最も近い第1情報記録層が、情報の読み出し可能な層(ROM層)であり、他の情報記録層のうち少なくとも一層は情報の書き換え可能な領域を含む書き換え層(RE層)である、複数の樹脂層を含む光情報記録媒体であって、上記第1情報記録層は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成される構成である。
このため、例えば3層以上の多層化が困難である2層のRE層を有する光情報記録媒体に、2層のRE層の戻り光率をほとんど低下させること無しに更にROM層を設けることができるので、RE層を有する光情報記録媒体の記録容量を向上させることができる。なお、再生光波長において透光性を有するとは、再生光波長において80%以上の透過率を有することを指す。また、フォーカス引き込みとは、フォーカスサーボがONになっている状態(すなわち、光学系から照射されるレーザ光の焦点位置が任意の情報記録層に追従している状態)を指す。
また、第1情報記録層としてROM層を追加して設けることにより記録容量の向上を図った従来のハイブリッド光情報記録媒体において、第1情報記録層は、材料的に反射率が低いRE層(再生光波長が約405nmで15%程度の反射率)で作製された第2以降の情報記録層(他の情報記録層)からの反射光を透過させる。このため、Ag、Al、Au等の金属により形成された上記ROM層では、その厚さを薄く形成することによって透過率を高めていた。
しかしながら、上記ROM層は金属薄膜であるため、この金属薄膜が一様に形成される限界まで薄くしても、例えば2層RE−BDにおける第1情報記録層の反射率である5%より高い8%程度の反射率を有する。このため、上記ROM層への再生光照射時に、上記ROM層からフォーカス引き込みに十分なS字特性が検出されてしまう。従って、上記ハイブリッド光情報記録媒体の規格に対応していない駆動装置においても、上記ROM層からのS字特性が検出される可能性が高くなるため、この駆動装置は、未知の情報記録層に対応できず、再生不良を引き起こす可能性が高かった。
これに対して本発明に係る光情報記録媒体では、第1情報記録層が、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成され、かつ上記第1情報記録層の再生光波長における反射率の値が、上記書き換え層を再生するときの第2再生光ではフォーカス引き込みが不可能な値である。従って、追加された上記第1情報記録層に対応していない駆動装置で、かつ第2以降の情報記録層に対応している駆動装置(旧規格に対応している駆動装置)は、当然ながら、上記書き換え層を再生するときの再生光を照射するので、第2以降の情報記録層に確実にフォーカスできる。このため、旧規格に対応している駆動装置は、未知の情報記録層に対応している必要がなく、また再生不良を引き起こすこともなくなる。つまり、本発明に係る光情報記録媒体は、旧規格に対応している駆動装置でも再生することができる。
また、第1情報記録層は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成されている。このため、本発明に係る光情報記録媒体は、第1情報記録層を形成する為の、金属により形成されるROM層(金属薄膜)を設ける必要がない。それゆえ、本発明に係る光情報記録媒体では、第1情報記録層の透光性を高くすることができる。よって、本発明に係る光情報記録媒体では、第1情報記録層が第2以降の情報記録層への光入射をほとんど阻害しないので、記録時の光強度も、ROM層を設けない場合と比較してほとんど増加させる必要がなくなる。
さらに、本発明に係る光情報記録媒体では、第1情報記録層が、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成され、かつ上記第1情報記録層の再生光波長における反射率の値が、上記第1情報記録層を再生するときの、第2再生光より強度が高い第1再生光でフォーカス引き込みが可能になる値である。このため、上記第1情報記録層に対応している駆動装置は、上記第1情報記録層を再生するときの第2再生光より強度が高い第1再生光を照射することによって、第1情報記録層にフォーカスでき、第1情報記録層に記録された情報を再生できる。従って、この場合、本発明に係る光情報記録媒体では、第1情報記録層の分だけ記録容量を向上させることが可能となる。
特に、3層以上の多層化が困難である2層のRE層を有する光情報記録媒体に更にROM層を設けることができるため、書き換え層における記録容量の限界値を保ったまま光情報記録媒体の記録容量を向上させることができる。
ここで、3層以上の多層化が困難である2層のRE層を有する光情報記録媒体にROM層を設ける場合に、本発明に係る光情報記録媒体と異なる位置にROM層を設けたときに問題が生じる理由について、以下に説明する。
まず、2層のRE層の間にROM層を設けた光情報記録媒体の場合、3層の情報記録層各々の層間クロストーク(再生中の情報記録層以外の情報記録層からのノイズ)が問題とならない位置にROM層を設ける必要がある。このため、ROM層が追加されることにより2層のRE層の間隔が広くなってしまうので、旧規格に対応している駆動装置の光学ヘッドでは、このような光情報記録媒体を再生することができない。
通常、光学ヘッドの対物レンズは、光情報記録媒体表面である再生光入射面から所定の距離に焦点を結ぶように設計されている。しかしながら、多層光情報記録媒体では、当然ながら、再生光入射面からの各情報記録層の距離が異なる。この場合、最適距離以外の位置にある情報記録層には球面収差が生じ、駆動装置における再生信号に悪影響を及ぼす。そこで、この球面収差を解消するために、駆動装置には例えばビームエキスパンダーが設けられている。
しかしながら、上記ビームエキスパンダーの許容範囲を拡大する場合、正弦条件をより満足する対物レンズが必要になる。そのような対物レンズは、偏芯誤差、傾き誤差等の各公差の条件が非常に厳しくなるので高価なものになる。結果として、光学ヘッドが高価なものになる。従って、ROM層がない旧規格の光情報記録媒体に対応している駆動装置では、当然ながら、2層のRE層の間隔が広くなる場合に対応できるビームエキスパンダーを備えた光学ヘッドが設けられていない場合が多い。このため、旧規格に対応している駆動装置では、2層のRE層各々を再生することができない可能性が高い。
次に、ROM層を2層のRE層の後に設けた(すなわち、ROM層を基板に最も近い位置に設けた)光情報記録媒体の場合、2層のRE層各々の反射率をROM層がない場合と同程度にすると、第2情報記録層であるRE層は再生光波長における透過率が0%となる可能性が高い(上記2層RE−BDの例より明らか)。このため、このような光情報記録媒体では、ROM層に再生光を集光照射することができない可能性が高い。
従って、本発明に係る光情報記録媒体のように、追加されるROM層は、2層のRE層の前(すなわち、基板上に積層された複数の情報記録層のうち、基板から最も遠い位置)に設けられていることが好ましい。
また、上記構成によれば、第1情報記録層の再生光波長における反射率の値が0.4%より大きいので、例えばBDにおいては、再生レーザパワーを3.5mW程度までに抑制することができる。このため、本発明に係る光情報記録媒体では、後述する理由により、情報記録層カウント時のRE層の劣化を防止できる。
本発明に係る光情報記録媒体は、上記課題を解決するために、基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層のうち、上記再生光の入射側に最も近い位置に設けられた第1情報記録層が情報を読み出すことのみ可能な層であり、他の情報記録層のうち少なくとも一層が情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層である、複数の樹脂層を含む光情報記録媒体であって、上記第1情報記録層は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成され、上記第1情報記録層の再生光波長における反射率の値は、上記書き換え層が再生するときの第2再生光を照射することにより得られる上記第1情報記録層のS字特性が、上記第2再生光を照射することにより得られる上記書き換え層のS字特性と比較して、S字特性を検出する検出器のゲインを変更して検出される必要がある程度に小さく、上記第1情報記録層を再生するときの、上記第2再生光より強度が高い第1再生光を照射することにより得られる上記第1情報記録層のS字特性が、上記第2再生光を照射することにより得られる上記書き換え層のS字特性と同じ大きさとなるような値であることを特徴としている。
上記構成によれば、第1情報記録層の再生光波長における反射率の値は、書き換え層を再生するときの第2再生光を照射することにより得られる上記第1情報記録層のS字特性が、上記第2再生光を照射することにより得られる他の情報記録層のS字特性に比較して、S字特性を検出する検出器のゲインを変更して検出される必要がある程度に小さくなるような値である。このため、追加された第1情報記録層に対応していない駆動装置で、かつ第2以降の情報記録層に対応している駆動装置(旧規格に対応している駆動装置;以降、旧規格対応駆動装置)で本発明に係る光情報記録媒体を再生する場合、この旧規格対応駆動装置による上記第1情報記録層の検出は困難である。
すなわち、旧規格対応駆動装置は、再生初期で行われる光情報記録媒体の情報記録層数カウント時には、対応していない第1情報記録層再生のための第1再生光を照射しない。従って、旧規格対応駆動装置が、S字特性検出器のゲインを所定値に変更すること無しに、本発明に係る光情報記録媒体の第1情報記録層を検出することは困難である。
一方、上記第1情報記録層にも対応している駆動装置(以降、新規格対応駆動装置)は、再生初期で行われる光情報記録媒体の情報記録層数カウント時には、対応している第1情報記録層再生のための第1再生光を照射する。従って、新規格対応駆動装置は、S字特性検出器のゲインを変更すること無しに、本発明に係る光情報記録媒体の第1情報記録層を認識することが可能となる。
従って、本発明に係る光情報記録媒体は、旧規格対応駆動装置においても再生不良を引き起こすことがなく、旧規格対応駆動装置における第2以降の情報記録層の情報読み取りを可能とする。一方、本発明に係る光情報記録媒体は、新規格対応駆動装置において再生される場合には、上記第1情報記録層の情報読み取りが可能となるため、第1情報記録層の分だけ記録容量を向上させることが可能となる。
また、上記構成によれば、上記第1情報記録層の再生光波長における反射率の値は、上記書き換え層を再生するときの第2再生光ではフォーカス引き込みが不可能になる値であり、上記第1情報記録層を再生するときの、第2再生光より強度が高い第1再生光でフォーカス引き込みが可能になる値となる。従って、上記構成によれば、上述した効果も同様に得ることができる。すなわち、本発明に係る光情報記録媒体は、旧規格対応駆動装置でも再生することができると共に、新規格対応駆動装置で再生される場合には、第1情報記録層の分だけ記録容量を向上させることが可能となる。
なお、再生初期で行われる光情報記録媒体の情報記録層数カウント時に、S字特性検出器のゲインを固定しない場合、駆動装置に例えばAGC等を備えることもできる。しかしながら、駆動装置は、フォーカス前の状態であり、基準となる信号振幅を得ることができない。このため、駆動装置が所定のゲインに固定する以外に適切に情報記録層のS字特性を検出することは極めて困難である。
本発明に係る光情報記録媒体は、上記課題を解決するために、基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層のうち、上記再生光の入射側に最も近い位置に設けられた第1情報記録層が情報を読み出すことのみ可能な層であり、他の情報記録層のうち少なくとも一層が情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層である、複数の樹脂層を含む光情報記録媒体であって、上記第1情報記録層は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成され、上記第1情報記録層の再生光波長における反射率の値は、上記書き換え層を再生するときの第2再生光ではフォーカス引き込みが不可能になる値であり、上記第1情報記録層を再生するときの、上記第2再生光より強度が高い第1再生光ではフォーカス引き込みが可能になる値であることを特徴としている。
上記構成によれば、第1情報記録層が、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成され、かつ上記第1情報記録層の再生光波長における反射率の値が、上記書き換え層を再生するときの第2再生光ではフォーカス引き込みが不可能な値である。従って、追加された上記第1情報記録層に対応していない駆動装置で、かつ第2以降の情報記録層に対応している駆動装置(旧規格対応駆動装置)は、当然ながら、上記書き換え層を再生するときの再生光を照射するので、第2以降の情報記録層に確実にフォーカスできる。このため、旧規格対応駆動装置は、未知の情報記録層に対応している必要がなく、また再生不良を引き起こすことがなくなる。つまり、本発明に係る光情報記録媒体は、旧規格対応駆動装置でも再生することができる。
また、第1情報記録層は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成されている。このため、本発明に係る光情報記録媒体は、第1情報記録層を形成する為の、金属により形成されるROM層(金属薄膜)を設ける必要がない。それゆえ、本発明に係る光情報記録媒体では、第1情報記録層の透光性を高くすることができる。よって、本発明に係る光情報記録媒体では、第1情報記録層が第2以降の情報記録層への光入射をほとんど阻害しないので、記録時の光強度も、ROM層を設けない場合と比較してほとんど増加させる必要がなくなる。
さらに、本発明に係る光情報記録媒体では、第1情報記録層が、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成され、かつ上記第1情報記録層の再生光波長における反射率の値が、上記第1情報記録層を再生するときの、第2再生光より強度が高い第1再生光でフォーカス引き込みが可能になる値である。このため、上記第1情報記録層に対応している駆動装置は、上記第1情報記録層を再生するときの第2再生光より強度が高い第1再生光を照射することによって、第1情報記録層にフォーカスでき、第1情報記録層に記録された情報を再生できる。従って、この場合、本発明に係る光情報記録媒体では、第1情報記録層の分だけ記録容量を向上させることが可能となる。
本発明に係る光情報記録媒体は、上記2つの隣接する樹脂層のうち、上記再生光の入射側に位置する樹脂層の上記再生光波長における屈折率をn1、上記基板側に位置する樹脂層の上記再生光波長における屈折率をn2とした場合、
が成り立つことが好ましい。
上記構成によれば、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成される上記第1情報記録層の再生光波長における反射率を得るための構造が、特定できる。
なお、上記2つの隣接する層のうち、再生光の入射側に位置する層の再生光波長における屈折率をn1、基板側に位置する層の再生光波長における屈折率をn2とした場合、再生光の入射側に位置する層と基板側に位置する層との界面における再生光の反射率、すなわち第1情報記録層における再生光の反射率は、一般に知られるように、垂直入射条件下でのフレネルの式で表すことができる。
本発明に係る光情報記録媒体は、上記2つの隣接する樹脂層のうち、上記再生光の入射側に位置する樹脂層が透光層であり、上記基板側に位置する樹脂層が中間層であることが好ましい。
上記構成によれば、透光層と中間層との界面が第1情報記録層をなすので、第1情報記録層としてAg、Al、Au等の金属により形成されるROM層(金属薄膜)を追加して設けることにより記録容量の向上を図った従来のハイブリッド光情報記録媒体に比べて、上記金属薄膜の製造工程を削減することができる。また、上記金属薄膜の製造工程以外の工程については、従来と同様の工程を利用することができるため、光情報記録媒体の全ての製造工程を新たに考慮する必要がない。これにより、本発明に係る光情報記録媒体は、従来の製造ノウハウを適用でき、しかも従来に比べ、金属薄膜の製造工程が削減できるので、コストダウンが実現できる。
本発明に係る光情報記録媒体は、上記2つの隣接する樹脂層は、いずれも紫外線硬化樹脂からなることが好ましい。
上記構成によれば、2つの隣接する樹脂層は、いずれも紫外線硬化樹脂からなるので、スピンコートおよび紫外線による硬化などで形成可能である。このため、第1情報記録層を形成するために真空工程を必要としないので、製造コストおよびタクトタイムを低減することができる。
また、紫外線硬化樹脂は、その製造上、屈折率をコントロールすることが可能であるので、屈折率を例えば1.30〜1.70程度の値に自由に選別できる。このため、第1情報記録層の反射率を制御することが可能である。
また、上記2つの隣接する樹脂層を形成する紫外線樹脂を適宜に選択することによって、当該2つの隣接する樹脂層それぞれの線膨張係数または水蒸気透過率を近似させることができるので、温度変化または湿度変化による応力の発生を低減させることができ、当該光情報記録媒体の信頼性を確保することができる。
上記水蒸気透過率(透湿度、水蒸気透過係数、水蒸気透過度とも呼ばれる)とは、薄膜材料が湿度(水分・水蒸気)を透過させる程度を指す物性値指標である。なお、水蒸気透過率は、「所定の温度及び湿度の条件で単位時間に単位面積の試験片を通過する水蒸気の量」で定義される。
本発明に係る光情報記録媒体は、上記2つの隣接する樹脂層は、共通の官能基を有する材料を主成分とすることが好ましい。
また、本発明に係る光情報記録媒体は、上記2つの隣接する樹脂層は、共通の官能基を有する同一の材料を主成分とすることが好ましい。
上記構成によれば、2つの隣接する樹脂層は、共通の官能基材料を有する材料、または共通の官能基を有する同一の材料を主成分とするため、線膨張係数または水蒸気透過率を近似させることができる。それゆえ、本発明に係る光情報記録媒体では、温度変化または湿度変化による応力の発生を低減することができ、光情報記録媒体の信頼性が確保される。
また、本発明に係る光情報記録媒体駆動装置は、基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層を有し、上記複数の情報記録層のうち、少なくとも再生光の入射側に最も近い位置に設けられた第1情報記録層が、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成され、かつ、情報を読み出すことのみ可能な層であり、他の情報記録層のうち少なくとも一層が情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層である、複数の樹脂層を含む光情報記録媒体を再生可能な光情報記録媒体駆動装置であって、上記第1情報記録層を再生するときの再生光強度は、上記書き換え層を再生するときの再生光強度より大きく、上記書き換え層を劣化させない程度に小さいことを特徴としている。
上記構成によれば、上記第1情報記録層を再生するときの再生光強度は、上記書き換え層を再生するときの再生光強度より大きい。このため、本発明に係る光情報記録媒体駆動装置は、上述した旧規格に対応した駆動装置においても再生可能である本発明に係る光情報記録媒体の第1情報記録層に確実にフォーカスできるため、第1情報記録層に記録された情報の再生を行うことができる。
本発明に係る光情報記録媒体は、以上のように、基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層のうち、上記再生光の入射側に最も近い位置に設けられた第1情報記録層が情報を読み出すことのみ可能な層であり、他の情報記録層のうち少なくとも一層が情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層である、複数の樹脂層を含む光情報記録媒体であって、上記第1情報記録層は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状を形成していることで構成され、上記第1情報記録層の再生光波長における反射率の値は、0.4%より大きく2.2%以下である構成である。
それゆえ、本発明に係る光情報記録媒体は、情報記録層が少ない旧規格の光情報記録媒体に対応している駆動装置に対応可能であるという汎用性を保ちながら、書き換え層における記録容量の限界値を保ったまま光情報記録媒体の記録容量を向上させることができるという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の実施の形態1について図1〜図11に基づいて説明すると以下の通りである。
図1に示すように、本実施の形態1の一例である光情報記録媒体200は、再生光入射面側から順に、透光層10、第1情報記録層(第1情報記録層、情報記録層)20、中間層30、第2情報記録層(書き換え層、情報記録層)40および基板50が積層された構造となっている。なお、図1は、本実施の形態1に係る光情報記録媒体200の概略構成の一例を示す断面図である。
透光層10は、例えば、厚さ75μmの紫外線硬化樹脂からなる。透光層10の材料は、再生光の波長において透過率が高く(すなわち透光性を有する)、後述する屈折率条件を満たすものであれば良い。透光層10に用いることのできる樹脂材料としては、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、フッ素化アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂等がある。また、透光層10は、1層構造に限られるものではなく、ポリカーボネートフィルム等の透明樹脂フィルムと透明粘着樹脂層との2層構造としてもよい。他にも、透光層10の光入射面に、表面保護のためのハードコート層を設ける構造であってもよい。さらに、透光層10の厚さは、光情報記録媒体200の再生装置(駆動装置)が有する光学系に応じて変更されても良い。また、透光層10は、例えば0.6mmのポリカーボネ−ト基板であっても良い。
中間層30は、例えば、厚さ25μmの透明紫外線硬化樹脂からなる。中間層30の材料は、これに限られたものではなく、再生光の波長において透過率が高く(すなわち透光性を有する)、後述する屈折率条件を満たす材料であれば良い。中間層10に用いることのできる樹脂材料としては、透光層10と同様、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、フッ素化アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂等がある。中間層30の厚さは、これに限られたものではなく、各情報記録層(ここでは、第1情報記録層20および第2情報記録層40)を分離でき、層間クロストークが問題にならない適度の厚さであれば良い。なお、層間クロストークとは、再生中の情報記録層以外の情報記録層からのノイズを指す。さらに、中間層30は、多層構造であっても良い。
第1情報記録層20は、透光層10および中間層30の界面からなる。上述のように中間層30の第1情報記録層20側、すなわち透光層10側の面には、凹凸からなるプリピットが設けられているため、中間層30に隣接して形成される透光層10との界面は上記プリピットより情報が記録されていることになる。すなわち、第1情報記録層20は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状(プリピット)を形成していることで構成されている。
また、透光層10と中間層30とのそり等を防ぐために、透光層10および中間層30の熱膨張等の特性を共通もしくは近似させることが望ましい。
透光層10および中間層30は、構成材料が同一に近ければ近いほど、両者の熱膨張等の特性が近づくと考えられる。よって、透光層10および中間層30は、共通の官能基を有する材料を、透光層10および中間層30の主成分とすることがさらに好ましい。
ここで、透光層10および中間層30の屈折率と第1情報記録層20における反射率について説明する。
ともに透明な(透光性を有する)2層の薄膜があり、それぞれの屈折率をn1およびn2とし、かつ、上記両薄膜の膜厚が充分厚く、光干渉効果を有さないという条件の下で、その隣接界面における垂直入射光のエネルギー反射率は、垂直入射条件下でのフレネルの式
で表される。
光情報記録媒体の再生においては、所望の薄膜あるいは界面に再生光が集光(フォーカス)され、ビームウェストで反射するため、その反射率は、垂直入射という条件によるものと考えてよいことが一般に知られている。
従って、透光層10および中間層30が上記2層の薄膜とすれば、その界面での反射率は、透光層10および中間層30の屈折率をそれぞれn1、n2とすると上記式で表すことができる。つまり、上記n1、n2を適切に設定することで界面において再生光を反射させることができ、上記界面が第1情報記録層20として機能することになる。
なお、透光層10と中間層30とはそれぞれ多層構造であってもよいと上述した。その場合、透光層10と中間層30との、少なくとも第1情報記録層20(すなわち界面)を形成する部分(層)の屈折率が上記条件を満たせば、第1情報記録層20の反射率が0.4%より大きく、2.2%以下となるように実現できるので、それ以外の他の部分(層)は上記条件の制約を受けない。また、透光層10と中間層30とは、それぞれが複数層からなる場合には屈折率調整が困難になり、コスト高にもなることから、それぞれが1層構造であることが好ましい。
なお、本発明における第1情報記録層20は、隣接する2つの層の界面からなるので、構造として実際には層が存在せず、正確には「情報記録層」を「情報記録面」と表現すべきものであるが、実質的に他の情報記録層と同様に機能するものであるため、機能的に「情報記録層」と表現して差し支えないものである。
上記第1情報記録層20は、読み取り専用層、すなわちROM層であり、例えば再生光波長における第1情報記録層20の反射率の値が0.4%より大きく2.2%以下となるものであれば良い。すなわち、第1情報記録層20の上記反射率の値は、書き換え層(第2情報記録層40)を再生するときの第2再生光ではフォーカス引き込みが不可能になる値であり、第1情報記録層20を再生するときの第1再生光ではフォーカス引き込みが可能になる値であれば良い。
ここで、上記第2再生光は、第2情報記録層40等のRE層を再生するときに光情報記録媒体200に照射されるものであり、例えば旧規格の光情報記録媒体に対応した駆動装置でも照射できるものである。また、上記第1再生光は、第2再生光よりも強度が高く、第1情報記録層20を再生するときに光情報記録媒体200(又は後述の光情報記録媒体201)に照射されるものである。この第1再生光は、新規格の光情報記録媒体に対応した駆動装置にて照射されるものである。
なお、再生光波長における第1情報記録層20の反射率の値が0.4%より大きく2.2%以下となるためには、上記垂直入射条件下でのフレネルの式が上記条件を満たせばよい。すなわち、
を満たせばよい。例えば、n1=1.45、n2=1.70の場合、反射率は0.63%(すなわち0.0063)となり、上記式を満足するため、透光層10と中間層30との界面が、本発明の第1情報記録層20として機能する。なお、式から容易に分かるように、n1=1.70、n2=1.45の場合も同様の値となる。
透光層10および中間層30の屈折率としては、一般的に1.45〜1.70の範囲内で用いられることが多い。このため、上記式は、上記屈折率範囲内で各屈折率を適切に設定することで満たされることとなる。例えば、一方の樹脂層の屈折率を1.45に固定した場合、再生光波長における第1情報記録層20の反射率の値が0.4%より大きく2.2%以下となるためには、もう一方の樹脂層の屈折率は上記式より、1.08以上1.28未満、もしくは1.65より大きく1.96以下、と導かれる。なお、透光性を有する樹脂の取りうる実際の屈折率の範囲を考慮すると、もう一方の樹脂層の屈折率範囲が1.65より大きく1.96以下で上記式が満たされることになる。
また、例えば一方の樹脂層の屈折率を1.70に固定した場合、再生光波長における第1情報記録層20の反射率の値が0.4%より大きく2.2%以下となるためには、もう一方の樹脂層の屈折率は上記式より、1.26以上1.50未満、もしくは1.93より大きく2.29以下、と導かれる。なお、透光性を有する樹脂の取りうる実際の屈折率の範囲を考慮すると、もう一方の樹脂層の屈折率範囲が1.26以上1.50未満で上記式が満たされることになる。
このように上記式を解くことにより、上記屈折率n1、n2の適切な値を容易に導くことができる。
また、例えば紫外線硬化樹脂は、一般的に屈折率を1.30〜1.70程度の範囲で調整することができる。このため、透光層10および中間層30に紫外線硬化樹脂を用いることで、透光層10および中間層30の屈折率を例えば上記のように調整することができる。
具体的には、紫外線硬化樹脂の屈折率の調整は、一般的に、樹脂材料に対して屈折率の異なる他の材料を配合することによって行われる。配合される材料には、原子屈折の低いフッ素原子や、原子屈折の高い硫黄原子、芳香族環、フッ素を除くハロゲンなど、を含む材料が用いられる。
なお、透光層10および中間層30の材料を紫外線硬化樹脂に限定するものではなく、上記屈折率の条件を満たせば紫外線硬化樹脂以外の樹脂を用いても構わない。
第2情報記録層40は、RE層であり、例えば7層の薄膜からなる。この7層の薄膜は、再生光入射側から、第1保護膜41(例えば、厚さ35nmのZnS−SiO2)、第2保護膜42(例えば、厚さ5nmのZrO2)、記録層43(例えば、厚さ10nmのGeTe−Sb2Te3)、第3保護膜44(例えば、厚さ5nmのZrO2)、第4保護膜45(例えば、厚さ35nmのZnS−SiO2)、第5保護膜46(例えば、厚さ5nmのZrO2)、および反射膜47(例えば、厚さ20nmのAPC(AgPdCu))が順に積層されてなる。なお、第2情報記録層40の材料、厚さおよび層数は、これに限られるものではなく、RE層として機能するものであれば良い。
基板50は、例えば、厚さ1.1mmのポリカーボネートからなる。基板50の材料および厚さは、これに限られるものではなく、表面にグルーブが設けられており、上記基板として使用できる程度の所定の強度があれば良い。具体的には、基板50は、例えばポリオレフィン樹脂、金属等からなっていても良い。さらに、基板50は、多層構造であっても良い。
なお、上記基板50の表面には、グルーブの他に、第2情報記録層40に形状として記録される情報に応じた凹凸からなるプリピットが設けられていても良い。この場合、第2情報記録層40のプリピットが設けられた領域は、情報の読み出しのみ可能な領域となる。すなわち、第2情報記録層40は、RE領域とROM領域とを含む構成であっても良い。
また、図2に示すように、本実施の形態1の別の一例である光情報記録媒体201は、再生光入射面側から順に、透光層10、第1情報記録層20、中間層30、第3情報記録層(書き換え層、情報記録層)60、中間層930、第2情報記録層40および基板50が積層された構造となっている。なお、図2は、本実施の形態1に係る光情報記録媒体201の概略構成の一例を示す断面図である。
透光層10は、例えば、厚さ50μmの紫外線硬化樹脂からなる。透光層10の材料は、再生光の波長において透過率が高く(すなわち透光性を有する)、後述する屈折率条件を満たすものであれば良い。透光層10に用いることのできる樹脂材料としては、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、フッ素化アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂等がある。また、透光層10は、1層構造に限られるものではなく、ポリカーボネートフィルム等の透明樹脂フィルムと透明粘着樹脂層との2層構造としてもよい。他にも、透光層10の光入射面に、表面保護のためのハードコート層を設ける構造であってもよい。さらに、透光層10の厚さは、光情報記録媒体201の再生装置(駆動装置)が有する光学系に応じて変更されても良い。また、透光層10は、例えば0.6mmのポリカーボネ−ト基板であっても良い。
中間層30は、例えば、厚さ25μmの透明紫外線硬化樹脂からなる。中間層30の材料は、これに限られたものではなく、再生光の波長において透過率が高く(すなわち透光性を有する)、後述する屈折率条件を満たす材料であれば良い。中間層30としては、例えば透光層10と同様の材料を用いてもよい。また、中間層30の厚さも、これに限られたものではなく、各情報記録層(ここでは、第1情報記録層20および第2情報記録層40)を分離でき、層間クロストークが問題にならない適度の厚さであれば良い。さらに、中間層30は、多層構造であっても良い。
第1情報記録層20は、透光層10および中間層30の界面からなる。上述のように中間層30の第1情報記録層20側、すなわち透光層10側の面には、凹凸からなるプリピットが設けられているため、中間層30に隣接して形成される透光層10との界面は上記プリピットより情報が記録されていることになる。すなわち、第1情報記録層20は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状(プリピット)を形成していることで構成されている。
透光層10および中間層30の屈折率と第1情報記録層20における反射率については、すでに図1にて説明したものと同様である。透光層10および中間層30の界面での反射率は、透光層10および中間層30の屈折率をそれぞれn1、n2とすると、すでに図1にて説明した式で表すことができる。つまり、上記n1、n2を適切に設定することで界面において再生光を反射させることができ、上記界面が第1情報記録層20として機能することになる。
なお、透光層10および中間層30はそれぞれ多層構造であってもよいと上述した。その場合、透光層10および中間層30の少なくとも第1情報記録層20すなわち界面を形成する部分(層)の屈折率が上記条件を満たせば第1情報記録層20の反射率が0.4%より大きく、2.2%以下となるように実現できるので、それ以外の他の部分(層)は上記条件の制約を受けない。また、透光層10と中間層30とは、それぞれが複数層からなる場合には屈折率調整が困難になり、コスト高にもなることから、それぞれが1層構造であることが好ましい。
なお、本発明に係る光情報記録媒体201の第1情報記録層20は、2つの隣接する層の界面からなるが、実質的に他の情報記録層と同様に機能するものであるため、機能的に「情報記録層」と表現して差し支えないため、「第1情報記録層」と表現する。
上記第1情報記録層20は、読み取り専用層、すなわちROM層であり、例えば再生光波長における第1情報記録層20の反射率の値が0.4%より大きく2.2%以下となるものであれば良い。すなわち、第1情報記録層20の上記反射率の値は、書き換え層(第2情報記録層40および第3情報記録層60)を再生するときの第2再生光ではフォーカス引き込みが不可能になる値であり、第1情報記録層20を再生するときの第1再生光ではフォーカス引き込みが可能になる値であれば良い。
なお、再生光波長における第1情報記録層20の反射率の値が0.4%より大きく2.2%以下となるためには、上記垂直入射条件下でのフレネルの式が上記条件を満たせばよい。すなわち、
を満たせばよい。例えば、n1=1.45、n2=1.70の場合、反射率は0.63%すなわち0.0063となり、上記式を満足するため、透光層10と中間層30との界面が、本発明の第1情報記録層20として機能する。なお、上記式から容易に分かるように、n1=1.70、n2=1.45の場合も同様の値となる。
透光層10および中間層30の屈折率としては、一般的に1.45〜1.70の範囲内で用いられることが多い。このため、上記式は、上記屈折率範囲内で各屈折率を適切に設定することで満足されることとなる。
また、例えば紫外線硬化樹脂は一般的に屈折率を1.30〜1.70程度の範囲で調整することができる。このため、透光層10および中間層30に紫外線硬化樹脂を用いることで、透光層10および中間層30の屈折率を例えば上記のように調整することができる。なお、透光層10および中間層30の材料は、紫外線硬化樹脂に限定するものではなく、上記屈折率条件を満たせば、紫外線硬化樹脂以外の樹脂を用いても構わない。
中間層930(従来の中間層)は、例えば、厚さ25μmの透明紫外線硬化樹脂からなる。中間層930の材料は、これに限られたものではなく、再生光の波長において透過率が高い材料であれば良い。また、中間層930の厚さも、これに限られたものではなく、各情報記録層(ここでは、第2情報記録層40および第3情報記録層60)を分離でき、層間クロストークが問題にならない適度の厚さであれば良い。
さらに、中間層930は、多層構造であっても良い。中間層930は、中間層30と同様の材料を使用しても構わないし、異なる材料を用いても構わない。ただし、中間層930は、中間層30のように第1情報記録層20を形成するものではないため、上述した屈折率の条件の制約を受けない。
中間層930の屈折率は、一般的に1.45〜1.70の範囲内で用いられることが多く、上記屈折率範囲内で従来と同様に使用することが可能である。また、例えば紫外線硬化樹脂は一般的に屈折率を1.30〜1.70程度の範囲で調整することができる。このため、中間層930の材料として紫外線硬化樹脂を用いても構わない。ただし、透光層10および中間層30の材料を紫外線硬化樹脂に限定するものではない。
また、中間層930の屈折率と中間層30の屈折率とを同様にすれば、中間層30および中間層930に対して、共通の材料を使用することができるので、コスト的に有利となる。さらに線膨張係数および水蒸気透過率を近似させることができるため、温度変化や湿度変化に伴う応力発生を低減することができ、光情報記録媒体の信頼性を確保することができる。
なお、第2情報記録層40と第3情報記録層60との間に積層されている中間層930において、この中間層930(従来の中間層)の、第3情報記録層60側の面には、グルーブが設けられている。また、中間層930には、グルーブと第3情報記録層60に形状として記録される情報に応じた凹凸からなるプリピットとが設けられていても良い。この場合、第3情報記録層60のプリピットが設けられた領域は、情報の読み出しのみ可能な領域となる。すなわち、第3情報記録層60は、RE領域とROM領域とを含む構成であっても良い。
第2情報記録層40は、RE層であり、例えば7層の薄膜からなる。この7層の薄膜は、再生光入射側から、第1保護膜41(例えば、厚さ35nmのZnS−SiO2)、第2保護膜42(例えば、厚さ5nmのZrO2)、記録層43(例えば、厚さ10nmのGeTe−Sb2Te3)、第3保護膜44(例えば、厚さ5nmのZrO2)、第4保護膜45(例えば、厚さ35nmのZnS−SiO2)、第5保護膜46(例えば、厚さ5nmのZrO2)、および反射膜47(例えば、厚さ20nmのAPC(AgPdCu))が順に積層されてなる。なお、第2情報記録層40の材料、厚さおよび層数は、これに限られるものではなく、RE層として機能するものであれば良い。
第3情報記録層60は、RE層であり、例えば、6層の薄膜からなる。この6層の薄膜は、再生光入射側から、第1保護膜61(例えば、厚さ35nmのZnS−SiO2)、第2保護膜62(例えば、厚さ5nmのZrO2)、記録層63(例えば、厚さ6nmのGeTe−Sb2Te3)、第3保護膜64(例えば、厚さ5nmのZrO2)、半透明膜65(例えば、厚さ20nmのAPC(AgPdCu))、および透過率調整膜66(例えば、厚さ19nmのTiO2)が順に積層されてなる。第3情報記録層60の材料、厚さおよび層数は、これに限られるものではなく、再生光の波長において透過率60%程度を有するRE層として機能するものであれば良い。
基板50は、例えば、厚さ1.1mmのポリカーボネートからなる。基板50の材料および厚さは、これに限られるものではなく、表面にグルーブが設けられており、かつ基板として使用できる程度の所定の強度があれば良い。具体的には、基板50は、例えばポリオレフィン樹脂、金属等からなっていても良い。さらに、基板50は、多層構造であっても良い。
なお、上記基板50の表面には、グルーブの他に、第2情報記録層40に形状として記録される情報に応じた凹凸からなるプリピットが設けられていても良い。この場合、第2情報記録層40のプリピットが設けられた領域は、情報の読み出しのみ可能な領域となる。すなわち、第2情報記録層40は、RE領域とROM領域とを含む構成であっても良い。
なお、本実施の形態1に係る光情報記録媒体201は、上述した構成に限られるものではなく、RE層のいずれかがR層又はROM層であっても良い。また、本実施の形態1に係る光情報記録媒体200、201は、2層又は3層構造に限られたものではなく、さらに情報記録層を加えた光情報記録媒体であっても良い。
〔実施例〕
図1に示す本実施の形態1に係る光情報記録媒体200を実施例1として作製し、この実施例1の比較例1として、図3に示す光情報記録媒体202を作製した。以下に、各々の構造を図1および図3を用いて説明する。なお、図3は、実施例1として作製された光情報記録媒体200の比較例1である光情報記録媒体202の概略構成を示す断面図である。
実施例1である光情報記録媒体200は、図1に示すように、再生光入射面側から順に、透光層10、第1情報記録層20、中間層30、第2情報記録層40および基板50が積層された構造となっている。
透光層10は、厚さ75μmの紫外線硬化樹脂(再生光波長における屈折率1.45)からなる。
中間層30は、厚さ25μmの透明紫外線硬化樹脂(再生光波長における屈折率1.70)からなる。また、この中間層30の、第1情報記録層20側、すなわち透光層10側の面には、2P法(photo polymarization法)により第1情報記録層20に形状として記録される情報に応じた凹凸からなるプリピットが設けられている。ここで、2P法とは、平板と原盤との間に紫外線硬化樹脂を充填し、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させた後原盤を剥離することによって、平板上に原盤の凹凸を転写する手法を指す。すなわち、第1情報記録層20は、ともに透光性を有する2つの隣接する樹脂層の界面が、記録される情報に応じた凹凸形状(プリピット)を形成していることで構成されている。
第2情報記録層40は、RE層であり、スパッタ法により7層の薄膜が積層されている。具体的には、再生光入射側から、第1保護膜41(厚さ35nmのZnS−SiO2)、第2保護膜42(厚さ5nmのZrO2)、記録層43(厚さ10nmのGeTe−Sb2Te3)、第3保護膜44(厚さ5nmのZrO2)、第4保護膜45(厚さ35nmのZnS−SiO2)、第5保護膜46(厚さ5nmのZrO2)、および反射膜47(厚さ20nmのAPC(AgPdCu))が順に積層されている。
基板50には、直径120mm、厚さ1.1mmである、グルーブを有するポリカーボネートの円盤状基板を使用した。
比較例1である光情報記録媒体202は、図3に示すように、再生光入射面側から順に、透光層910、第1情報記録層920、中間層930、第2情報記録層40および基板50が積層された構造となっている。光情報記録媒体202の第1情報記録層920は、従来より使用されている金属半透明膜APC(AgPdCu)からなり、厚さ5nmに成膜されたものである。透光層910および中間層930は、従来より用いられている、ともに再生光波長における屈折率1.50の紫外線硬化樹脂からなる。その他の層(第2情報記録層40および基板50)は、実施例1と同一に作製されている。
なお、第1情報記録層の透過率は、実施例1では98%、比較例1では80%であった。また、実施例1の第1情報記録層20の再生光波長における反射率は0.6%であり、第2情報記録層40の戻り光率は14.4%であった。一方、比較例1の第1情報記録層920の再生光波長における反射率は8%であり、第2情報記録層40の戻り光率は9.6%であった。
ここで、上記第1情報記録層20の反射率は次のように算出した。後述するディスク評価機にて、光情報記録媒体200、202の第1情報記録層20、920におけるミラー部(平面部)にフォーカスした際の再生光の光量と、第1情報記録層20、920で反射されて光学系検出器で検出される反射光量との比率を算出した。さらに、上記算出した比率を、絶対反射率が既知であるリファレンスディスクにおいて上記と同様に算出した比率を用いて補正した。このため、上記第1情報記録層20、920の反射率は、光学系の影響を除去した絶対反射率となる。また、第2情報記録層40の戻り光率は同じく第2情報記録層40におけるミラー部(平面部)にフォーカスした際の再生光および反射光から求めた。
なお、界面における透過率を単独に測定することは困難であるため、上記第1情報記録層20、920の透過率は次の方法で求めた。
具体的には、第1情報記録層20、920を、屈折率1.53のガラス基板上に形成した。このとき、実施例1の場合はガラス基板上に中間層30および透光層10をこの順で、比較例1の場合はガラス基板上に中間層930(従来の中間層)、第1情報記録層920(従来の第1情報記録層)および透光層910(従来の透光層)をこの順で積層させ、2つの試料を作製した。この2つの試料に対し、第1情報記録層20(第1情報記録層920)側から光を入射させ、分光光度計にて光の透過率を測定する。そして、リファレンスとなるガラス基板単独の透過率で、上記測定した透過率を補正した値を、上記第1情報記録層20(第1情報記録層920)における光の透過率とする。
次に、実施例1と比較例1との、再生初期における情報記録層数カウント時に検出されるS字特性を、BD用評価機として一般的に用いられる、波長406nmのレーザ光を出射可能な半導体レーザとN.A.(開口率)0.85の光学系とを有するディスク評価機(パルステック社製 ODU−1000)にて測定した。この測定によって得られた結果を図4および図5に示す。
ここで、図4は、レーザ強度を、RE層(第2情報記録層40)を再生するための強度であり、かつ現状の規格化されているBD駆動装置における最大再生レーザパワーである0.7mWに設定して、光情報記録媒体200、202にそれぞれ照射することによって得られたS字特性を示す図である。なお、図4(a)は、実施例1である光情報記録媒体200に対する測定によって得られたS字特性を示し、図4(b)は、比較例1である光情報記録媒体202に対する測定によって得られたS字特性を示す図である。また、図5は、レーザ強度を、ROM層を再生するための強度である3.0mWに設定して、実施例1である光情報記録媒体200に照射することによって得られたS字特性を示す図である。
図4(a)に示すように、実施例1の第1情報記録層20におけるS字特性の実測値は、65mVであり、上記ディスク評価機におけるフォーカスがかかるための基準電圧+V1(230mV)を超えていない。よって、図4(a)は、現状の規格化されているBD駆動装置における最大再生レーザパワーである0.7mWのレーザ光で情報記録層数のカウントを行う駆動装置(第1情報記録層20に対応していない旧規格対応駆動装置)は、第1情報記録層20を情報記録層として認識できないことを示している。すなわち、上記ディスク評価機では、図4(a)に示す基準電圧+V1を変更しない限り、実施例1の第1情報記録層20におけるS字特性を検出できないことが分かる。
このため、上記旧規格対応駆動装置では、当然ながら、第1情報記録層20にフォーカスすることはできない。実際、測定時において第1情報記録層20へのフォーカスを行ったが、通常市販されている民生用ディスク駆動装置に比べ様々な光情報記録媒体に対応可能な汎用性の高い上記ディスク評価機であってもフォーカスがかかることはなかった。なお、基準電圧+V1は、上記ODU−1000において、2層情報記録媒体に記録された情報を再生評価できる値として設定された値である。
一方、図4(b)に示すように、比較例1の第1情報記録層920におけるS字特性の実測値は、847mVであり、基準電圧+V1(230mV)を超えている。よって、図4(b)は、現状の規格化されているBD駆動装置における最大再生レーザパワーである0.7mWのレーザ光で情報記録層数のカウントを行う駆動装置(第1情報記録層20に対応していない旧規格対応駆動装置)が、第1情報記録層920を情報記録層として認識できることを示している。
上記結果より、実施例1の第1情報記録層20は、比較例1と比較して、現状の規格化されているBD駆動装置における最大再生レーザパワーである0.7mWのレーザ光での情報記録層数のカウント時において、上記旧規格対応駆動装置に認識される可能性は極めて低い。すなわち、第1情報記録層20は、通常用いられている駆動装置以上に汎用性の高いディスク評価機にてフォーカス不可能であるため、上記旧規格対応駆動装置では実質認識できないと言える。
一方、比較例1の第1情報記録層920は、現状の規格化されているBD駆動装置における最大再生レーザパワーである0.7mWのレーザ光での情報記録層数カウント時において、上記旧規格対応駆動装置に認識される可能性が高い。これは、現時点において通常用いられている旧規格対応駆動装置は、2層の情報記録層まで対応可能となっているためである。しかしながら、上記旧規格対応駆動装置は、第1情報記録層920という未知の情報記録層を認識することとなるため、再生不良を引き起こす可能性がある。
また、図5に示すように、実施例1の第1情報記録層20におけるS字特性の実測値は、288mVであり、基準電圧+V1(230mV)を超えている。よって、図5は、第1情報記録層20を再生するための強度である3.0mWのレーザ光で情報記録層数のカウントを行う駆動装置(第1情報記録層20に対応している新規格対応駆動装置)は、第1情報記録層20を情報記録層として認識できることを示している。すわなち、上記新規格対応駆動装置は、当然ながら第1情報記録層20にフォーカスすることができ、第1情報記録層20を再生することが可能である。実際、測定時において第1情報記録層20へのフォーカスを行い、フォーカスがかかることを確認した。
なお、図4(a)および図5に示すように、実施例1の第2情報記録層40のS字特性の実測値は、各々1535mVと6739mVとであり、共に基準電圧+V1(230mV)を超えている。このため、新旧いずれの規格に対応した駆動装置(すなわち、上記旧規格対応駆動装置又は新規格対応駆動装置)であっても、第2情報記録層40をフォーカスすることができ、第2情報記録層40に対して、情報の記録・再生が可能となる。
以上のように、本実施の形態1に係る光情報記録媒体200は、旧規格対応駆動装置にて再生された場合であっても、比較例1のように上記旧規格対応駆動装置に対して再生不良を生じさせることなく、第2情報記録層40への情報の記録・再生が可能となる。また、新規格対応駆動装置では、第1情報記録層20に記録された情報も再生可能であるので、光情報記録媒体200は、第2情報記録層40における記録容量の限界値を保ったまま記録容量を向上させることができたと言える。なお、本実施の形態1に係る光情報記録媒体201についても、上記光情報記録媒体200と同様のことが言える。
ところで、通常用いられている駆動装置がフォーカスできる限界は、上述したようにS字特性に依存するので、基本的には反射光量に依存する。ここで、複数のサンプルを用いて、各再生レーザパワーにおけるフォーカスできない反射率の上限値を、上述のディスク評価機にて測定した。このときの測定結果を図6に示す。
図6に示すように、現状の規格化されているBD駆動装置における最大再生レーザパワーである0.7mWでは、反射率2.2%が、フォーカスできない(認識できない)反射率の上限値であることがわかる。
なお、再生レーザパワーは、BD駆動装置によってばらつく可能性が高いため、実際には2割程度高いパワー(0.84mW)である場合も考えられる。この場合(再生レーザパワー0.84mW)であっても、フォーカスできない(認識できない)反射率の上限値は、図6に示す結果より1.8%と求めることができた。
また、本実施の形態1に係る光情報記録媒体200、201は、RE層(第2情報記録層40および第3情報記録層60)を含んでいる。よって、情報記録層数カウント時に、RE層に対して、第1情報記録層20を再生するための高いレーザパワーの再生光が集光照射される可能性がある。
ところで、情報記録層数カウントは、通常、リードインエリアで行われる。そこで、現在市販されている単層BD−REのリードインエリアの反射率を、上記ディスク評価機より再生レーザパワーを上げることが可能な、波長406nmのレーザ光を出射可能な半導体レーザとN.A.(開口率)0.85の光学系とを有するディスク評価機(パルステック社製 DDU−1000)にて測定した。
まず、単層BDの再生レーザパワーである0.35mWで上記リードインエリアの反射率を測定し、次に、より高い再生レーザパワーを照射した後、再度0.35mWに戻して上記リードインエリアの反射率を測定する。この測定によって、RE層の劣化(上記リードインエリアの反射率の低下)が起こる再生レーザパワーを測定した。
この結果、再生レーザパワーが3.5mWまでは反射率は変化しないが、4.0mWにて5%反射率が低下(すなわち、RE層が劣化)することがわかった。すなわち、3.5mWより高いレーザパワーで情報記録層数をカウントする場合、RE層のリードインエリアを劣化させる可能性がある。よって、図6に示す結果より、3.5mWでフォーカスがかからない反射率の上限値を求めると0.4%であるので、第1情報記録膜の反射率は、0.4%より大きい必要があることになる。
よって、本実施の形態1に係る光情報記録媒体200、201の第1情報記録層20の再生光波長における反射率は、0.4%より大きく2.2%以下であれば良く、より好ましくは、0.4%より大きく1.8%以下であれば良い。
なお、上記両ディスク評価機による測定結果は、再生光波長が、青色レーザ波長の範囲であれば、変わることはない。
ところで、通常用いられている駆動装置では、各情報記録層から検出されるS字特性の実測値が所定の基準電圧を超えると情報記録層が認識される。そして、上記駆動装置によって情報記録層が認識されると、認識された情報記録層にフォーカスがかかり、この情報記録層の情報再生が可能になる。このS字特性の検出結果によって、フォーカスがかかり情報再生が可能となる理由を以下に説明する。
まず、一般的な多層光情報記録媒体を再生する再生システム100について説明する。例えば、図8に示す4層の光情報記録媒体400を再生する再生システム100の構成について、図7を用いて以下に説明する。
図7に示すように、再生システム100のディスク駆動モータ101は、円盤状の光情報記録媒体400(概略的な断面構造は図8参照)を所定の速度で回転駆動させる。このディスク駆動モータ101は、モータ制御回路109によって制御されている。また、このように回転駆動している光情報記録媒体400からの情報の読み取りは、光学ピックアップ102によって行われる。
光学ピックアップ102は、フィードモータ111の駆動力によって、光情報記録媒体400の半径方向に移動できるように構成されている。このフィードモータ111は、フィードモータ制御回路108によって制御されている。また、フィードモータ111は、その回転速度が速度検出器112によって検出されるように構成されている。そして、速度検出器112は、検出した結果を速度信号として、フィードモータ制御回路108に供給する。
上記光学ピックアップ102は、対物レンズ102aを備えている。この対物レンズ102aは、フォーカス方向(光軸方向)とトラッキング方向(光情報記録媒体400の半径方向)とに、それぞれ移動可能に支持されている。そして、この対物レンズ102aは、フォーカス制御回路105にて生成されたフォーカス制御信号がフォーカス駆動コイル102cに供給されることによって、フォーカス方向の位置が制御される。同様に、対物レンズ102aは、トラッキング制御回路108にて生成されたトラッキング制御信号がトラッキング駆動コイル102bに供給されることによって、トラッキング方向の位置が制御される。
また、レーザ制御回路103は、光学ピックアップ102内の半導体レーザ発振器102fを駆動し、半導体レーザ発振器102fにおいてレーザ光を発生させる。光量検出器102gは、この半導体レーザ発振器102fで発生するレーザ光の光量を検出し、この検出結果をレーザ制御回路103に帰還する。この構成により、レーザ制御回路103は、半導体レーザ発振器102fに発生させるレーザ光の光量を一定に制御することができる。
そして、この半導体レーザ発振器102fで発生したレーザ光は、コリメータレンズ102eを通過してハーフプリズム102dにて直角に折曲された後、対物レンズ102aにより、光情報記録媒体400の何れかの情報記録層上に集光することになる。この光情報記録媒体400の何れかの情報記録層とは、図8に示す第1情報記録層A、第2情報記録層B、第3情報記録層C又は第4情報記録層Dを指す。なお、第1情報記録層A、第2情報記録層B、第3情報記録層C、および第4情報記録層Dは、いずれも、情報に応じて設けられた凹凸からなるプリピット上にAPC(AgPdCu)が成膜されることでAPC(AgPdCu)の形状が固定された情報の読み出しのみ可能なROM層である。
また、光情報記録媒体400からの反射光は、対物レンズ102aを逆行し、ハーフプリズム102dを直進した後、集光レンズ102hおよびシリンドリカルレンズ102iを介して、光電変換器102jに受光される。この光電変換器102jは、受光量に応じた電気信号を発生する4つのフォトディテクタ102j1〜102j4によって構成されている。この光電変換器102jの場合、フォトディテクタ102j1・102j2の並び方向およびフォトディテクタ102j3・102j4の並び方向が、光情報記録媒体400のトラッキング方向に対応する。同様に、フォトディテクタ102j1・102j4の並び方向およびフォトディテクタ102j2・102j3の並び方向が、光情報記録媒体400の接線方向に対応する。
上記フォトディテクタ102j1から出力された電気信号は、増幅回路114aを介して加算回路113a・113dの1端にそれぞれ供給され、上記フォトディテクタ102j2から出力された電気信号は、増幅回路114bを介して加算回路113b・113cの1端にそれぞれ供給される。また、上記フォトディテクタ102j3から出力された電気信号は、増幅回路114cを介して加算回路113a・113cの他端にそれぞれ供給され、上記フォトディテクタ102j4から出力された電気信号は、増幅回路114dを介して加算回路113b・113dの他端にそれぞれ供給されている。
上記加算回路113aの出力信号は、差動増幅回路104の反転入力端子−に供給され、上記加算回路113bの出力信号は、差動増幅回路104の非反転入力端子+に供給されている。この差動増幅回路104は、加算回路113a・113bの出力信号の差を算出することによってフォーカスエラー信号を生成し、フォーカス制御回路105に供給している。このフォーカス制御回路105は、入力されたフォーカスエラー信号が0レベルとなるようにフォーカス駆動コイル102cに与えるフォーカス制御信号を生成し、対物レンズ102aに対するフォーカスサーボが行われる。
ここで、差動増幅回路104から出力されるフォーカスエラー信号は、対物レンズ102aによるレーザ光の集光位置を、その初期位置からフォーカス方向に順次移動させてフォーカスサーチ処理(すなわち、情報記録層数をカウントする処理)が行われた場合、図9に示すように、S字特性を描く。具体的には、上記フォーカスサーチ処理が行われた場合、フォーカスエラー信号は、対物レンズ102aによるレーザ光の焦点位置が、図8に示す各情報記録層(第1情報記録層A、第4情報記録層D、第3情報記録層Cおよび第2情報記録層B)を通過する毎に、図9に示すようなS字特性を描く。なお、上記初期位置とは、対物レンズ102aのフォーカス前の位置であり、通常、図7においては、光情報記録媒体400の第1情報記録層Aの下方であって、光情報記録媒体400から光軸方向に最も離れた位置を指す。
例えば、光情報記録媒体400の再生開始時には、再生システム100は、最初に、光学ピックアップ102内の半導体レーザ発振器102fにて、単層光情報記録媒体に対応した再生光を発生させる。
次に、対物レンズ102aによるレーザ光の集光位置を、上記初期位置から図7においては上方に、駆動上限位置まで移動させる。そして、再生システム100は、フォーカスエラー信号が所定の基準電圧+V0を越えた回数をカウントすることにより、光情報記録媒体400の情報記録層数を認識する。
その後、再生システム100は、光情報記録媒体400が有する情報記録層数に基づいて定められた再生光パワーを変更する。そして、再生システム100は、変更された再生光パワーにて、対物レンズ102aによるレーザ光の集光位置を、駆動上限位置から図7においては下方に、初期位置まで移動させる。そのときに、最初にフォーカスサーチ処理される情報記録層から検出されるフォーカスエラー信号の電圧値が、適切な値となるようフォーカス制御回路105等に含まれる増幅器のゲインを変更する。
そして、例えば、第2情報記録層Bにフォーカスサーチ処理する場合、再生システム100は、フォーカスエラー信号が所定の基準電圧+V0を越えた回数をカウントし、4回目となった後、最初に0レベル(フォーカスサーボ動作の中心レベル)となった時点でフォーカスサーボをON状態とする。これにより、再生システム100における第2情報記録層Bに対するフォーカスサーチ処理が終了される。
なお、図10は、再生システム100によって上述の第2情報記録層40にフォーカスサーチ処理が行われたときの対物レンズ位置の遷移とフォーカスエラー信号とを示す図であり、同図(a)は、対物レンズ位置の遷移を示す図であり、同図(b)は、フォーカスエラー信号を示すものである。
また、例えば、第4情報記録層Dから第2情報記録層Bにレイヤージャンプする場合、再生システム100は、フォーカスサーボを一旦OFF状態にし、第4情報記録層Dから第2情報記録層40に対物レンズ102aによるレーザ光の焦点位置を順次移動させる。そして、再生システム100は、差動増幅回路104から出力されるフォーカスエラー信号が所定の基準電圧+V0を越えた回数をカウントし、2回目となった後、最初に0レベル(フォーカスサーボ動作の中心レベル)となった時点でフォーカスサーボをON状態とする。これにより、レイヤージャンプ処理が終了する。なお、レイヤージャンプ処理については、フォーカスサーチ処理とほぼ同じ処理のため図示していない。
また、これらのフォーカスサーチ処理が行われたとき、位相差検出回路107は、光電変換器102jのフォトディテクタ102j1・102j4の出力信号の和と、フォトディテクタ102j2・102j3の出力信号の和との位相差が検出する。そして、位相差検出回路107は、この検出結果をトラッキングエラー信号としてトラッキング制御回路106に供給する。
このトラッキング制御回路106は、入力されたトラッキングエラー信号に基づいてトラッキング駆動コイル102bに与えるトラッキング制御信号を生成し、対物レンズ102aに対してトラッキングサーボを施す。そして、再生システム100では、このトラッキングサーボが行われている状態で光情報記録媒体400の再生が行われる。そして、加算回路113c・113dから出力された電気信号が加算回路113eで合計され、データ再生回路110でデジタル信号に変換される。
なお、上記再生システム100のレーザ制御回路103、フォーカス制御回路105、トラッキング制御回路108、モータ制御回路109およびデータ再生回路110は、制御部115によって制御されている。制御部115には、再生システム100に装填される光情報記録媒体400の記録・再生に関する情報が記憶されている。制御部115は、この情報に従って上記回路を制御することとなる。
また、情報記録層からの反射率が大きくなると、再生システム100のフォーカスエラー信号の電圧値も大きくなる。
ここで、一般的な多層光情報記録媒体(ここでは、光情報記録媒体400)を再生する再生システム100における処理の流れを説明する。図11は、上記多層光情報記録媒体を再生する再生システム100における処理の流れを示すフローチャートである。
まず、再生システム100に光情報記録媒体400を装填後、ディスク駆動モータ101により、光情報記録媒体400を所定回転数で回転させる(S1)。次いで、制御部115は、光情報記録媒体400のリードインエリアに対向する位置に、光学ピックアップ102を移動し、所望のレイヤーにフォーカスサーチ処理する(S2)。このレイヤーとは、光情報記録媒体400においては、第1情報記録層A、第2情報記録層B、第3情報記録層Cおよび第4情報記録層Dの何れかを指す。そして、トラッキング制御回路106がトラッキング処理を行い(S3)、再生システム100による情報再生処理が行われる(S4)。
以上のように、上記再生システム100において、情報記録層の認識と各情報記録層へのフォーカスとは、全て各情報記録層から得られるS字特性に基づいて行われていることがわかる。従って、上記のような多層光情報記録媒体の再生システム100が駆動装置に用いられているので、この駆動装置は、各情報記録層のS字特性を測定することによって、情報記録層の認識の有無および再生の可否を判断することができる。
〔実施の形態2〕
本発明の実施の形態2について図12に基づいて説明すると以下の通りである。本発明の実施の形態2である光情報記録媒体駆動装置としての再生システム(光情報記録媒体駆動装置)600は、図7に示す再生システム100の制御部115の代わりに、制御部615を備えた構成となっている。なお、制御部615以外の構成については、再生システム100に備えられた構成と同一の機能を有するため、その説明を省略する。
制御部615には、例えば本実施の形態1の光情報記録媒体200、201に対応して記録・再生を行うための情報が記憶されている。この情報とは、例えば、情報記録層数カウント時の再生光強度、各情報記録層に対応した再生光強度等を指す。
そのため、例えば光情報記録媒体200が装填されると、最初に行われる情報記録層数カウント開始時に、レーザ制御回路603は、制御部615によって制御されることにより、光学ピックアップ602内の半導体レーザ発振器602fを駆動する。すなわち、レーザ制御回路603は、半導体レーザ発振器602fにおいて、光情報記録媒体200における第1情報記録層20に対応した再生光(第1再生光)を発生させる。
つまり、再生システム600では、装填された光情報記録媒体が、例えば本実施の形態1に係る光情報記録媒体200、201であった場合でも、第1情報記録層20から得られるS字特性は、基準電圧+V0を超える値となる。このため、再生システム600では、新規格の第1情報記録層20を認識し、フォーカスできるため、第1情報記録層20から得られた情報を再生することができる。
また、第1情報記録層20以外の層にフォーカスする場合は、レーザ制御回路603は、制御部615によって制御されることにより、第1情報記録層20以外の情報記録層(例えば第2情報記録層40又は第3情報記録層60)に対応した、より強度が低い再生光(第2再生光)に変更する。よって、再生システム600では、第1情報記録層20以外の情報記録層に対してもフォーカスできるため、この情報記録層に記録された情報についても再生することができる。
さらに、装填された光情報記録媒体が、上記光情報記録媒体200、201と異なる旧規格の光情報記録媒体(例えば、光情報記録媒体500)であった場合、再生システム600は、情報記録層数カウント後、新規格に対応した第1情報記録層20のS字特性を検出しない。このため、再生システム600では、新規格に対応した光情報記録媒体でないことを認識できる。
従って、再生システム600では、上述した光情報記録媒体200、201と同様、レーザ制御回路603が制御部615によって制御され、新規格の第1情報記録層20以外の情報記録層に対応したより強度が低い再生光(第2再生光)に変更する。これにより、再生システム600では、旧規格の光情報記録媒体の各情報記録層も再生することができる。
以上のように、本実施の形態2である光情報記録媒体駆動装置としての再生システム600は、新旧いずれの規格の光情報記録媒体であっても、光情報記録媒体の各情報記録層を確実に再生することができる。
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。