JP5069478B2 - 電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、有機感光体のなかでも単層型電子写真感光体は、積層型電子写真感光体のように機能分離をすることができないため、用いられる樹脂やその他材料についての選定の幅が狭められることとなる。したがって、感光層の表面特性を向上させることが、積層型電子写真感光体と比較して困難となり、フィルミングが発生しやすくなる。その結果、単層型電子写真感光体を用いて画像形成を実施すると、フィルミングの発生に起因して黒点が発生しやすくなるという問題が見られた。
より具体的には、例えば、高温高湿条件下(温度40℃、湿度90%Rh)に、ドラム回転速度を140mm/秒として画像形成を繰り返すと、黒点が顕著に発生するという問題が見られた。
すなわち、本発明の目的は、いずれの使用条件下で画像形成を行った場合であっても、フィルミングの発生及びそれに起因した黒点の発生を効果的に抑制することができる単層型電子写真感光体及びそのような単層型電子写真感光体を搭載した画像形成装置を提供することにある。
より具体的には、感光層表面における接触角を増加させることができる。
また、かかる特定の構造を有する正孔輸送剤は、感光層中において結晶化しにくく、分散性に優れることから、上述した感光層の表面特性を向上させる効果を、感光層表面全体にわたって、均一に発揮させることができる。
さらに、結着樹脂として、所定の測定条件下における接触角が98°以上の値である結着樹脂を用いることによって、上述した特定の構造を有する正孔輸送剤の効果と相俟って、より効果的に感光層の表面特性を向上させることができる。
したがって、いずれの使用条件下であっても、フィルミングの発生及びそれに起因した黒点の発生を、効果的に抑制することができる。
このように構成することにより、感光層の表面特性を向上させる効果と、その電荷輸送能と、を共にバランスよく発揮させることができる。
このように構成することにより、感光層の表面特性の調節が容易になって、感光層表面におけるフィルミングの発生をより効果的に抑制することができるばかりか、結着樹脂と特定の構造を有する正孔輸送剤との相溶性を向上させることができる。
このように構成することにより、感光層の表面特性をさらに容易に調節することができる。
このように構成することにより、感光層の表面特性をさらに容易に調節することができる。
すなわち、本発明の画像形成装置は、所定の単層型電子写真感光体を備えるため、いずれの使用条件下であっても、フィルミングの発生に起因した黒点の発生を有効に防止した高品質な画像を、安定的に形成することができる。
このように構成することにより、黒点の発生を効果的に抑制しつつも、画像形成装置を簡略化及び小型化することができる。
第1の実施形態は、結着樹脂と、正孔輸送剤と、電荷発生剤と、を含む感光層を備えた単層型電子写真感光体であって、正孔輸送剤として、一般式(2)で表されるヒドラゾン化合物を含むとともに、結着樹脂の接触角(測定温度:25℃、測定試料:純水)を98°以上の値とすることを特徴とする単層型電子写真感光体である。
以下、第1の実施形態としての単層型電子写真感光体について、各構成要件ごとに、具体的に説明する。
図1(a)に示すように、単層型電子写真感光体10は、基体12上に単一の感光層14を設けたものである。
また、かかる感光層は、特定の結着樹脂と、特定の構造を有する正孔輸送剤と、電荷発生剤と、を含むとともに、さらに必要に応じて電子輸送剤、レベリング剤またはシリル基含有化合物等の添加剤を含むことができる。
また、図1(b)に示すように、導電性基体12と感光層14との間に、単層型電子写真感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層16が形成されている単層型電子写真感光体10´でもよい。
なお、電荷輸送剤として、さらに電子輸送剤を含有させることによって、電荷発生剤と正孔輸送剤との間における電荷輸送効率を、さらに向上させることができる。
また、基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。
(1)結着樹脂
(1)−1 撥水性
本発明においては、結着樹脂として、その接触角(測定温度:25℃、測定試料:純水)が98°以上の値である結着樹脂を用いることを特徴とする。
この理由は、このような撥水性を有する結着樹脂であれば、後述する特定構造の正孔輸送剤が有する表面改質効果と相俟って、効果的に感光層の表面特性を向上させ、フィルミングの発生及びそれに起因した黒点の発生を、効果的に抑制することができるためである。
すなわち、単層型電子写真感光体は、積層型電子写真感光体のように機能分離をすることができないため、用いられる樹脂やその他材料についての選定の幅が狭められることとなる。したがって、感光層の表面特性を向上させることが、積層型電子写真感光体と比較して困難となり、フィルミングが発生しやすくなる。その結果、単層型電子写真感光体を用いて画像形成を実施すると、フィルミングの発生に起因して黒点が発生しやすくなるという問題が見られた。
一方、本発明であれば、結着樹脂の特性及び正孔輸送剤の種類をそれぞれ限定し、その相乗効果によって、感光層表面における撥水性を効果的に向上させることができる。
したがって、いずれの使用条件下であっても、フィルミングの発生及びそれに起因した黒点の発生を、効果的に抑制することができる。
より具体的には、結着樹脂の接触角が98°未満の値となると、特定の構造を有する正孔輸送剤と組み合わせた場合であっても、感光層表面の撥水性を十分に向上させることが困難となる場合があるためである。一方、結着樹脂の接触角が過度に大きな値となると、フィルミングの発生を抑制することはできるものの、感光層表面における現像されたトナーの付着性が過度に低下する場合がある。
したがって、結着樹脂の接触角(測定温度:25℃、測定試料:純水)を98〜120°の範囲内の値とすることがより好ましく、102〜110°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
すなわち、樹脂濃度25%のテトラヒドロフラン溶液を、アルミニウム基板上にディップコート法にて塗布した後、100℃、40分間の条件で熱風乾燥して得られる膜厚25μmの樹脂膜を対象とすることができる。また、かかる樹脂膜の純水に対する接触角を、25℃の条件下にて、接触角計(協和界面科学社製、FACE−CONTACT−ANGLE METER)を用いて液滴法にて測定することができる。
図2においては、横軸に、結着樹脂の接触角(°)(測定温度:25℃、測定試料:純水)を採り、縦軸に、対応する結着樹脂を使用して製造された単層型電子写真感光体を用いて画像形成を実施した場合におけるA4紙一枚あたりの黒点発生数(個/A4紙)を採った特性曲線が示してある。
なお、正孔輸送剤としては、後述する式(6)で表される化合物(HTM−1)を使用した。また、単層型電子写真感光体の構成及び黒点発生数の測定条件等についての詳細は、後の実施例において詳述する。
かかる特性曲線から理解されるように、結着樹脂の接触角が増加するのにともなって、黒点発生数が減少する傾向が見られる。
より具体的には、結着樹脂の接触角が98°未満の範囲では、かかる値の増加にともなって、黒点発生数が緩やかに減少してはいるものの、100個/A4紙以上発生しており、実用上の許容範囲を超えてしまっている。一方、結着樹脂の接触角が98°以上の範囲では、かかる値の増加にともなって、急激に黒点発生数が減少しており、100個/A4紙以下の範囲を安定して保持することができることがわかる。
したがって、特定の構造を有する正孔輸送剤を使用している場合であれば、結着樹脂の接触角(測定温度:25℃、測定試料:純水)を98°以上の値とすることによって、臨界的に黒点の発生を抑制することができることがわかる。
また、結着樹脂として、撥水性ポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
この理由は、撥水性ポリカーボネート樹脂であれば、感光層の表面特性の調節が容易になって、感光層表面におけるフィルミングの発生をより効果的に抑制することができるばかりか、結着樹脂と特定の構造を有する正孔輸送剤との相溶性を向上させることができるためである。
なお、かかる撥水性ポリカーボネート樹脂が、感光層表面付近においてその含有割合が増加するように、勾配をもって含有されていることも好ましい。
この理由は、比較的少量の撥水性ポリカーボネート樹脂であっても、フィルミングの発生を効果的に抑制することができるためである。
この理由は、シロキサン構造を有するポリカーボネート樹脂であれば、感光層の表面特性をさらに容易に調節することができるためである。
すなわち、シロキサン構造部分が優れた撥水性を発揮させることができるためである。
この理由は、シロキサン構造を有する単位の含有割合をかかる範囲内の値とすることによって、感光層の表面特性をさらに容易に調節することができるためである。
すなわち、シロキサン構造を有する単位の含有割合が0.1mol%未満の値となると、感光層の表面特性を十分に向上させることが困難となる場合があるためである。一方、シロキサン構造を有する単位の含有割合が20mol%を超えた値となると、感光層の機械的強度や電気特性が過度に低下する場合があるためである。
また、単層型感光層に用いられる溶剤以外の全成分の全体量を100重量部とした時、撥水性ポリカーボネート樹脂の含有割合を、35〜60重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、撥水性ポリカーボネート樹脂の含有割合が、35重量部未満の値となると、感光層の表面特性を調整することが困難になる場合があり、逆に、かかる撥水性ポリカーボネート樹脂の含有割合が、60重量部を超えると、感光層と、基材との間の密着力が極端に低下する場合があるためである。
したがって、撥水性ポリカーボネート樹脂の含有割合を、単層型感光層に用いられる結着樹脂全体量を100重量部とした場合に、40〜55重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、45〜50重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の単層型感光層に用いられる撥水性ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を10,000〜60,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる粘度平均分子量を有する撥水性ポリカーボネート樹脂を用いることにより、耐久性に優れた単層型電子写真感光体を提供することができるためである。
なお、撥水性ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、オストワルド粘度計によって、極限粘度[η]を求め、Schnellの式によって、[η]=1.23×10-4M0.83より算出することができる。なお、[η]は、20℃で、塩化メチレン溶液を溶媒として、濃度(C)が6.0g/dm3となるようにポリカーボネート樹脂を溶解させて得られたポリカーボネート樹脂溶液から測定することができる。
また、本発明に用いられる撥水性ポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記構造式(3)〜(5)のポリカーボネート樹脂(Resin−1〜3)が挙げられる。
(2)−1 種類
また、本発明に用いられる正孔輸送剤としては、上述した一般式(2)で表されるヒドラゾン化合物を用いることを特徴とする。
この理由は、一般式(2)で表されるヒドラゾン化合物であれば、それ自体が表面改質効果を有するため、感光層の表面特性を向上させることができるためである。より具体的には、感光層表面における接触角を増加させることができるためである。
また、かかる特定の構造を有する正孔輸送剤は、感光層中において結晶化しにくく、分散性に優れることから、上述した感光層の表面特性を向上させる効果を、感光層表面全体にわたって、均一に発揮させることができるためである。
すなわち、一般式(2)に示すように、ヒドラゾン化合物の左側部分に記載されているエチレンまたはブタジエン構造を含む構成部位、及び右側部分に記載されているヒドラゾン構造を含む構成部位が、それぞれ中央部分に記載されているジフェニルアミンにおけるフェニル基のパラ位に位置することによって、分子の平面性や対称性が好適な状態となり、結晶性をさらに低下させることができるためである。
また、電子雲の広がりが好適な状態となって、正孔移動速度についてもさらに向上させることができるためである。
したがって、上述した所定の特性を有する結着樹脂の効果と相俟って、いずれの使用条件下であっても、フィルミングの発生及びそれに起因した黒点の発生を、効果的に抑制することができる。
すなわち、従来より、所定の特性を有する結着樹脂を用いることによって、感光層の表面特性を向上させる方法が実施されてきた。
しかしながら、かかる結着樹脂とともに用いられる電荷輸送剤等のモノマー成分の種類によっては、当該結着樹脂による感光層の表面特性を向上させる効果が阻害されてしまう場合が多く見られた。
より具体的には、モノマー成分自体の特性に起因して感光層の表面特性が低下したり、モノマー成分の結晶性に起因して、使用条件によっては感光層の表面特性が不安定になる場合があった。
一方、本発明における特定の構造を有する正孔輸送剤であれば、モノマー成分として上述した諸特性に優れることから、所定の特性を有する結着樹脂の効果と相俟って、いずれの使用条件下であっても、フィルミングの発生及びそれに起因した黒点の発生を、効果的に抑制することができる。
また、一般式(2)で表されるヒドラゾン化合物の具体例としては、下記式(6)〜(7)で表される化合物(HTM−1〜2)を挙げることができる。また、下記式(8)〜(10)で表される化合物(HTM−3〜5)は、参考例である。
また、一般式(2)で表されるヒドラゾン化合物の含有量を、感光層における結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、特定の構造を有する正孔輸送剤の含有量を、かかる範囲内の値とすることによって、感光層の表面特性を向上させる効果と、その電荷輸送能と、を共にバランスよく発揮させることができるためである。
すなわち、特定の構造を有する正孔輸送剤の含有量が10重量部未満の値となると、感光層の表面特性を向上させることが困難となるばかりか、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、特定の構造を有する正孔輸送剤の含有量が100重量部を超えた値となると、かかる正孔輸送剤が過度に結晶化しやすくなって、感光層の表面特性が低下するばかりか、単層型電子写真感光体における電気特性が低下したり、クラックが発生しやすくなる場合があるためである。
したがって、特定の構造を有する正孔輸送剤の含有量を20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜70重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
図3には、横軸に結着樹脂100重量部に対する正孔輸送剤の添加量(重量部)を採り、縦軸に、対応する電子写真感光体を用いて画像形成を実施した場合におけるA4紙一枚あたりの黒点発生数(個/A4紙)を採った特性曲線が示してある。
ここで、特性曲線Aは、一般式(2)で表されるヒドラゾン化合物である式(6)で表される化合物(HTM−1)を、特性曲線Bは、従来のヒドラゾン化合物である下記式(11)で表される化合物(HTM−6)を、さらに、特性曲線Cは、アミン化合物である下記式(12)で表される化合物(HTM−7)を、それぞれ正孔輸送剤として用いた場合の特性曲線である。
なお、結着樹脂としては、式(3)で表される撥水性ポリカーボネート樹脂(Resin−1)を用いた。また、単層型電子写真感光体の詳細な構成及び黒点発生数の測定条件等に付いての詳細は、後の実施例において詳述する。
一方、特性曲線B及びCから理解されるように、正孔輸送剤として一般式(2)で表されるヒドラゾン化合物以外の化合物を用いた場合には、その含有量の増加にともなって、黒点発生数が増加してしまうことがわかる。より具体的には、正孔輸送剤の含有量を60重量部とした場合には、黒点発生数が150個/A4紙前後にまで増加してしまうことがわかる。かかる理由は、特定の構造を有する正孔輸送剤以外の正孔輸送剤では、それ自身が十分な表面改質効果を有さず、さらには、特定の結着樹脂との特異的な相互作用を発揮することもできないためであると考えられる。
なお、特性曲線Aに示すように、特定の構造を有する正孔輸送剤であれば、その含有量の変化に関わらず、黒点発生数を50個/A4紙前後に抑制することができる。しかしながら、特定の構造を有する正孔輸送剤の含有量が過剰量であったり、過度に少ない場合には、共に用いられる特定の結着樹脂の種類によっては、それらの結着樹脂との相互作用を発揮することが困難となったり、感度不足や結晶化等の問題が発生しやすくなる場合がある。したがって、特定の構造を有する正孔輸送剤の含有量を、10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
(3)−1 種類
本発明に用いられる電子輸送剤としては、従来公知の電子輸送剤を用いることができる。
例えば、ジフェノキノン誘導体、ピレン誘導体、ベンゾキノン誘導体のほか、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
これらの電子輸送剤の具体例として、下記式(13)〜(16)で表わされる化合物(ETM−A〜ETM−D)が挙げられる。
また、電子輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電子輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、電子輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、電子輸送剤が結晶化しやすくなり、感光層として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、電子輸送剤の添加量を20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかる全ETM/全HTMの比率がかかる範囲外の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。
したがって、かかる全ETM/全HTMの比率を0.5〜1.25の範囲内の値とすることがより好ましい。
(4)−1 種類
また、本発明の単層型電子写真感光体に使用される電荷発生剤としては、従来公知の電荷発生剤を用いることができる。
例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体や、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンといった無機光導電剤等の一種単独又は二種以上の混合物が挙げられる。
また、これらの電荷発生剤のうち、具体的に、下記式(17)〜(20)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜CGM−D)を使用することがより好ましい。
また、電荷発生剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、0.2〜40重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電荷発生剤の添加量が0.2重量部未満の値になると、量子収率を高める効果が不十分となり、単層型電子写真感光体の感度、電気特性、安定性等を向上させることができなくなるためである。一方、電荷発生剤の添加量が40重量部を超えた値になると、可視光における赤色領域、近赤外領域、あるいは赤外領域に波長を有する光に対する吸光係数を大きくする効果が不十分となり、単層型電子写真感光体の感度特性、電気特性、及び安定性等を向上させることができない場合があるためである。
したがって、電荷発生剤の添加量を0.5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、感光層には、上述した各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
また、単層型電子写真感光体における感光層の厚さは、5〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、感光層の厚さが5μm未満の値となると、感光層を均一に形成することが困難となったり、機械的強度が低下する場合があるためである。一方、感光層の厚さが100μmを超えた値となると、感光層が基体から剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって感光層の厚さを10〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、15〜45μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、感光層の接触角(測定温度:25℃、測定試料:純水)を100°以上の値とすることが好ましい。
この理由は、感光層の接触角をかかる範囲内の値とすることによって、感光層の表面特性を定量的に調節することができるためである。
すなわち、感光層の接触角が100°未満の値となると、感光層表面の撥水性が過度に低下して、フィルミングが発生しやすくなる場合があるためである。一方、感光層の接触角が過度に大きな値となると、フィルミングの発生を抑制することはできるものの、感光層表面に現像されたトナーの付着性が過度に低下する場合がある。
したがって、感光層の接触角(測定温度:25℃、測定試料:純水)を102〜120°の範囲内の値とすることがより好ましく、103〜110°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、感光層の接触角は、感光層表面を対象とする以外は、上述した結着樹脂の接触角と同様の方法で測定することができる。
単層型電子写真感光体の製造方法としては、特に制限されるものではないが、以下のような手順で実施することができる。
まず、溶剤に電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂、添加剤等を含有させて塗布液を作成する。このようにして得られた塗布液を、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて基材(アルミニウム素管)上に塗布する。
その後、例えば100℃、40分間の条件で熱風乾燥して、所定膜厚の感光層を有する単層型電子写真感光体を得ることができる。
なお、分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4-ジオキサン、等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。このとき、さらに、電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を含有させてもよい。
この中間層を形成するにあたり、結着樹脂、必要に応じて添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を適当な分散媒とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して塗布液を調整し、これを公知の手段、例えばブレード法、浸漬法、スプレー法により塗布して、熱処理を施し中間層を形成する。
また、添加剤は製造時の沈降等が問題とならない範囲であって、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止する等の目的のために、各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を少量添加することができる。
次いで、得られた塗布液を、公知の製造方法に準じて、例えば、支持基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて塗布することができる。
その後、基体上の塗布液を乾燥する工程は、20〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが好ましい。
第2の実施形態は、第1の実施形態としての単層型電子写真感光体を備えるとともに、当該単層型電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段をそれぞれ配置することを特徴とする画像形成装置である。
以下、第1の実施形態において記載した内容と異なる点を中心に、第2の実施形態としての画像形成装置について説明する。
そして、原稿が原稿読取位置Pに送られた段階で、画像読取ユニット33において、光源33aからの光を利用して、原稿上の画像が読み取られる。すなわち、CCD等の光学素子33bを用いて、原稿上の画像に対応した画像信号が形成される。
一方、給紙部31bに積載された記録用紙(以下、単に用紙と呼ぶ。)Sは、一枚ずつ画像形成部31aに送られる。この画像形成部31aには、像担持体である感光体ドラム41が備えられており、さらに、この感光体ドラム41の周囲には、帯電器42、露光器43、現像器44、及び転写ローラ45が、感光体ドラム41の回転方向に沿って配置されている。
この静電潜像に基づき、現像器44によりトナーを付着させて現像し、感光体ドラム41の表面にトナー像を形成する。そして、このトナー像は、感光体ドラム41と転写ローラ45とのニップ部に搬送される用紙Sに転写像として転写される。次いで、転写像が転写された用紙Sは、定着ユニット47に搬送されて、定着プロセスが行われる。
なお、感光体ドラム41として、第1の実施形態で説明した単層型電子写真感光体を用いることを特徴とする。
通常、このようなクリーナーレスシステムの画像形成装置であれば、紙粉及びシリカ等を完全に回収することが難しく、単層型電子写真感光体に紙粉及びシリカの付着が比較的多くなる場合があり、黒点及び黒筋が発生しやすいという問題が生じやすくなる。一方、本発明の画像形成装置によれば、所定の単層型電子写真感光体を搭載しているため、現像手段が現像同時クリーニング方式であっても、フィルミングの発生を効果的に防ぐことができる。したがって、黒点の発生を有効に抑制しつつも、画像形成装置を簡略化及び小型化することができる。
このようなドラム回転速度にすることにより、搬送経路における紙への負荷が大きくなり、そのため紙粉が発生しやすくなる。そのため、単層型電子写真感光体への紙粉の付着が多くなり、画像に黒点及び黒筋等が発生しやすくなるという問題が生じる。一方、かかる画像形成装置は、所定の単層型電子写真感光体を搭載しているため、黒点の発生を有効に抑制しつつも、画像形成効率を向上させることができる。
1.単層型電子写真感光体の製造
容器内に、電荷発生剤として、式(17)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−A)を4重量部と、正孔輸送剤として式(6)で表されるヒドラゾン化合物(HTM−1)を50重量部と、電子輸送剤として式(13)で表されるナフトキノン誘導体(ETM−A)を30重量部と、結着樹脂として式(3)で表される粘度平均分子量が20,000のポリカーボネート樹脂(Resin−1)を100重量部と、溶媒としてテトラヒドロフランを800重量部と、を収容した。
次いで、ボールミルにて50時間混合分散して、単層型感光層用の塗布液を作成した。得られた塗布液を、直径30mmの基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、100℃、40分間の条件で熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型感光層を有する単層型電子写真感光体を得た。
また、使用した結着樹脂における接触角の測定を行った。
すなわち、使用した結着樹脂25重量部と、テトラヒドロフラン75重量部と、を24時間混合して、樹脂塗布液を作成した。次いで、得られた樹脂塗布液を直径30mmの基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、100℃、40分間の条件で熱風乾燥して、膜厚25μmの樹脂膜を得た。次いで、かかる樹脂膜の純水に対する接触角(測定温度:25℃)を、接触角計(協和界面科学社製、FACE−CONTACT−ANGLE METER)を用いて液滴法にて測定した。得られた結果を表1に示す。
(1)黒点発生数の測定
次いで、得られた単層型電子写真感光体を、ドラム回転速度が140mm/secのプリンタ(京セラミタ製、Antico40改造機)に装着し、40℃、90%Rhの環境条件で、A4紙(富士ゼロックス製上質PPC用紙)を5000枚連続印刷した。その後、24時間放置した後、A4紙の白紙原稿を印字して、そのA4紙上に発生した黒点の発生数を計数するとともに、下記基準に準じて評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:A4紙1枚あたりに黒点の発生が50個未満である。
○:A4紙1枚あたりに黒点の発生が50個以上、100個未満である。
×:A4紙1枚あたりに黒点の発生が100個以上である。
また、得られた単層型電子写真感光体の明電位測定を以下の条件で測定した。
すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC(株)製)を用いて、単層型電子写真感光体の表面電位を+850Vに帯電させた状態で、ハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅20nm、光強度0.6μJ/cm2)を単層型電子写真感光体表面に対して50msec照射した。次いで、露光開始から0.35秒経過した時点での表面電位を明電位(V)として測定した。得られた結果を表1に示す。
また、実施例2では、結着樹脂として、式(4)で表される粘度平均分子量が20,000のポリカーボネート樹脂(Resin−2)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
また、実施例3では、結着樹脂として、式(5)で表される粘度平均分子量が20,000のポリカーボネート樹脂(Resin−3)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
実施例4では、正孔輸送剤として、式(7)で表されるヒドラゾン化合物(HTM−2)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
参考例5では、正孔輸送剤として、式(8)で表されるヒドラゾン化合物(HTM−3)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
参考例6では、正孔輸送剤として、式(9)で表されるヒドラゾン化合物(HTM−4)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
参考例7では、正孔輸送剤として、式(10)で表されるヒドラゾン化合物(HTM−5)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例1では、結着樹脂として、下記式(21)で表される粘度平均分子量が20,000のポリカーボネート樹脂(Resin−4)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例2では、結着樹脂として、下記式(22)で表される粘度平均分子量が20,000のポリカーボネート樹脂(Resin−5)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例3では、結着樹脂として、下記式(23)で表される粘度平均分子量が20,000のポリカーボネート樹脂(Resin−6)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例4では、正孔輸送剤として、式(11)で表されるヒドラゾン化合物(HTM−6)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例5では、正孔輸送剤として、式(12)で表されるアミン化合物(HTM−7)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
したがって、本発明の単層型電子写真感光体は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置における低コスト化、高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
12:基体
14:感光層
16:バリア層
30:複写機
31:画像形成ユニット
31a:画像形成部
31b:給紙部
32:排紙ユニット
33:画像読取ユニット
33a:光源
33b:光学素子
34:原稿給送ユニット
34a:原稿載置トレイ
34b:原稿給送機構
34c:原稿排出トレイ
41:感光体ドラム
42:帯電器
43:露光源
44:現像器
45:転写ローラ
Claims (7)
- 結着樹脂と、正孔輸送剤と、電荷発生剤と、を含む感光層を備えた単層型電子写真感光体であって、
前記正孔輸送剤として、下記一般式(2)で表されるヒドラゾン化合物を含むとともに、
前記結着樹脂の接触角(測定温度:25℃、測定試料:純水)を98°以上の値とすることを特徴とする単層型電子写真感光体。
(一般式(2)中、Ar 1 は、非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、繰り返し数nは0または1である。) - 前記一般式(2)で表されるヒドラゾン化合物の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の単層型電子写真感光体。
- 前記結着樹脂として、撥水性ポリカーボネート樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の単層型電子写真感光体。
- 前記撥水性ポリカーボネート樹脂として、シロキサン構造を有するポリカーボネート樹脂を含むことを特徴とする請求項3に記載の単層型電子写真感光体。
- 前記シロキサン構造を有するポリカーボネート樹脂の全体量を100mol%とした場合に、シロキサン構造を有する単位の含有割合を0.1〜20mol%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項4に記載の単層型電子写真感光体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の単層型電子写真感光体を備えるとともに、当該単層型電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段をそれぞれ配置することを特徴とする画像形成装置。
- 前記現像手段が、現像同時クリーニング方式であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
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