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JP5067828B2 - ガラス基板の切断方法及び光学ガラス - Google Patents

ガラス基板の切断方法及び光学ガラス Download PDF

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Description

本発明は、一面側に近赤外線カット膜が設けられた透光性のガラス基板の切断方法について、ガラス基板の一方の面に第1ダイシング溝を形成した後、ガラス基板を反転し、先にダイシング加工した面の反対の面より第1ダイシング溝に沿って第2ダイシング溝を形成する際、ガラス基板の位置決めを正確に行うことにより、切断面の段差やずれを可及的に小さくする切断方法に関する。
デジタルスチルカメラ等に使用されるCCDなどの固体撮像素子は可視光域から1100nm付近の近赤外域にわたる分光感度特性を有している。したがって、そのままでは良好な色再現性を得ることができないので視感度補正フィルタを用いている。この視感度補正フィルタは、近赤外線を吸収する特定の物質が添加されたガラス基板の表面に、近赤外線を反射する近赤外線カット膜を真空蒸着法等の方法で成膜された光学ガラスである。
従来、この種の光学ガラスの製造にあたっては、最初にベースとなるガラス基板を所定寸法に切断、分割したのち、個片に分割したガラス基板の端面を1個づつ面取りし、その後、個々の個片基板を両面研磨仕上げしてから近赤外線カット膜を成膜し、最終的に基板の洗浄、検査を行っていた。
近年のデジタルスチルカメラ等の小型化に伴い、この種の光学ガラスも小型化してきており、縦横数mm程度の非常に小さいサイズのものもある。このように小さいサイズの光学ガラスの場合、面取工程や研磨工程や成膜工程での基板の取り扱いが難しく、製品の歩留まりを下げる要因となっていた。
そこで最近では、研磨工程等の効率化を図るべく、研磨済みのガラス基板の一方の面に規定のカッティングラインに沿って所定の切溝を形成し、次いで前記切溝に沿って他方の面からガラス基板をフルカットするダイシングブレードを用いたガラス基板の加工方法が提案されている。(特許文献1)
また、反射防止膜が設けられた面にガラス板の厚さ未満の深さのダイシング溝を形成し、ダイシング溝を形成した面の反対の面をダイシング加工する際、この反対の面からガラス板に光を照射して先に形成したダイシング溝を明瞭に検出することにより、正確に反対の面のダイシング加工を行うことができるガラス板の分割方法が提案されている。(特許文献2)
特開平9-141646号公報 特開2003−2674号公報
しかし、両面からダイシング加工を行う場合、一方の面のダイシング溝と他方の面のダイシング溝とが僅かにずれるだけで、切断面に段差が生じてしまう。切断面に段差がある場合、製品への組み付け時にガタが生じたり、製品使用時に段差から欠けが生じる虞がある。よって、切断面の段差を除去するための2次加工が必要となり、製作コストが余計に掛かるという問題がある。また、断面V字型ダイシングブレードを用いて切断部に面取加工を行う場合、一方の面及び他方の面のダイシング溝がずれると、溝の左右で切断後の面取寸法がアンバランスとなり、面取寸法規格を満たすことが難しくなる。
特許文献2のガラス板の分割方法では、反射光が反射防止膜が存在する部分で多くなるため、第1ダイシング溝を暗部として検出することができ、粘着テープを貼着した反射防止膜が存在する部分の分光反射率の平均値は3.17%であるとされている。ここで、撮像される画像は、ガラス板裏面(先に形成したダイシング加工面)の反射光とガラス板表面の反射光とが合成された反射光が検出される。一般的に空気からガラスへの入射光はガラス表面で約4%が反射するとされている。よって、ガラス板の表面の反射光の影響を考慮すると、このガラス板分割方法で撮像された画像の暗部と明部のコントラストは小さく、この画像を元に正確な位置決めを行うのにはまだ不十分であると考えられる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、透光性のガラス基板の位置決めを正確に行うことにより、ガラス基板の切断面の段差やずれを可及的に小さくする切断方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、近赤外線カット膜が設けられている面を先にダイシング溝を形成するダイシング加工面とすることにより、先に形成したダイシング溝が反対のダイシング加工面から明瞭に識別でき、これを利用して正確にガラス基板を位置決めできることを見出した。
本発明のガラス基板の切断方法は、ガラス基板の一面側に近赤外線カット膜が設けられたガラス基板の切断方法であって、前記近赤外線カット膜が設けられている面に所定のカッティングラインに沿って前記ガラス基板の厚さ未満の深さの第1ダイシング溝を形成する第1ダイシング工程と、前記ガラス基板の前記第1ダイシング溝を形成した面に、粘着テープを貼着する貼着工程と、前記ガラス基板を反転する反転工程と、前記ガラス基板の第1ダイシング溝を形成した面の反対の面に前記第1ダイシング溝に沿って第2ダイシング溝を形成し、前記ガラス基板を切断する第2ダイシング工程とを有し、前記第2ダイシング工程は、第2ダイシング溝を形成する前に、ガラス基板に光を照射し、その反射光をイメージセンサで検出し、第1ダイシング溝の位置を特定することで第2ダイシング溝の形成位置を調整する位置調整工程を備えることを特徴とする。
これにより、ガラス基板に形成された第1ダイシング溝を第2ダイシング溝を形成する側から明瞭に識別できるため、第2ダイシング溝が第1ダイシング溝と一致するようガラス基板の位置決めを正確に行うことができる。よって、第1及び第2ダイシング加工により形成される切断面の段差やずれを可及的に小さくすることができる。
これにより、ガラス基板に形成された第1ダイシング溝を第2ダイシング溝を形成する側から明瞭に識別できるため、ガラス基板の位置決めを正確に行うことができる。よって、第1及び第2ダイシング加工により形成される切断面の段差やずれを可及的に小さくすることができる。
また、第1ダイシング工程は、両側に傾斜面を有するテーパー溝を形成することを特徴とする。
また、第2ダイシング工程は、前記ガラス基板の厚さ未満の深さの両側に傾斜面を有するテーパー溝を形成した後、前記テーパー溝より薄いダイシングブレードを用いてガラス基板を切断することを特徴とする。
これにより、面取部が表裏面でずれることなく、切断加工を行うことができる。
また、前記ガラス基板の切断方法は、表面が光学研磨された後に反射防止膜が設けられていることを特徴とする。
これにより、光学研磨された面であっても、ガラス基板に形成された第1ダイシング溝を、第2ダイシング溝を形成する側から明瞭に識別することができる。
また、前記ガラス基板の切断方法は、近赤外線カット膜が設けられている面の反対の面に、反射防止膜が設けられることを特徴とする。
これにより、ガラス基板に形成された第1ダイシング溝を、第2ダイシング溝を形成する側から更に明瞭に識別することができる。
本発明の光学ガラスは、上述の何れかに記載の切断方法を用いて加工されたことを特徴とするものである。
これにより、光学ガラスの切断面の段差や面取寸法のずれを可及的に小さくすることができる。よって、光学ガラスも製品への組み付け時や、製品の使用時における切断面からの欠け等の問題が発生する可能性が低い。
本発明によれば、第2ダイシング加工の位置決めを行う際、近赤外線カット膜が設けられている面を第1ダイシング加工面とすることにより、第1ダイシング溝を第2ダイシング溝を形成する側からより明瞭に識別することができる。よって、第2ダイシング溝が第1ダイシング溝と一致するようガラス基板の位置決めを正確に行うことができ、第1及び第2ダイシング加工により形成される切断面の段差やずれを可及的に小さくすることができる。
本発明のガラス基板の切断方法に用いられる透光性のガラス基板は、一方面に近赤外線カット膜が設けられたものである。
例えば、デジタルスチルカメラ等の固体撮像素子に用いられる視感度補正用の近赤外線カットフィルタがある。CCD、C−MOS等に使用される固体撮像素子の分光感度は、400nm付近から1100nm付近の赤外領域までと広い範囲に渡っている。一方、人間の視感度は400〜700nm付近である。図6において、実線で示すものが固体撮像素子を構成するシリコンの受光素子の分光感度特性であり、破線で示すものが人間の視感度である。よって、固体撮像素子をデジタルスチルカメラ等に用いる場合、良好な色再現性を得るため、近赤外領域である700nm以上の光を除去して固体撮像素子の感度を人間の視感度に合わせる必要がある。
上記目的で用いられる近赤外線カットフィルタは、400〜600nmの可視光域を効率よく透過し、700nm付近におけるシャープカット特性に優れていることが求められている。そのため、近赤外線カットフィルタは、弗燐酸系ガラス等のガラス基板の表面に近赤外線カット膜が設けられている。
また、その他のガラス基板としては、固体撮像素子用カバーガラスがある。固体撮像素子用カバーガラスは、固体撮像素子の受光素子であるLSIチップが収められたアルミナセラミックパッケージに気密封着されるものであり、接合される部材との熱膨張係数を合わせるため、例えば硼珪酸系ガラスが用いられる。そしてガラス基板には視感度を調整する目的で、近赤外線カット膜が設けられている。
その他では、液晶プロジェクタ装置などの各種光学機器に用いられる光学ガラスや照明機器、分析機器等に用いられる板状ガラスがあり、適宜の組成のガラス基板に対して近赤外線カット膜が設けられている。
近赤外線カット膜は、例えば、Ti・SiOの多層膜やAl・Ti・SiOの多層膜などで構成されている。また、これらの多層膜は真空蒸着やスパッタリング等の成膜方法にて形成されている。これらの近赤外線カット膜は、700nm付近の波長の反射率が50%以上になるよう膜構成が設計されている。図7に一般的な膜構成の近赤外線カット膜が一方面に設けられたCCD用カバーガラスの分光透過率を示す。
ところで、本発明の切断方法に用いられるダイシング装置は、ガラス基板の正確な位置決めを行うため、CCDやC−MOS等のイメージセンサを用いている。これらのイメージセンサは、切断部を画像として検出し、得られた画像を切断装置に設けられた処理装置にて所定のしきい値にて明部と暗部を2値化し、その情報を元にガラス基板の位置決めを行うものである。そのため、明部と暗部を明瞭な画像として認識できるよう、感度が重要とされている。
前述の通り、CCD等のイメージセンサの分光感度は、400nm付近から1100nm付近の赤外領域までと広い範囲に渡っている。デジタルスチルカメラに用いられるイメージセンサは、カラー表示や色再現性が必要とされるため、カラーフィルタや近赤外線カットフィルタなどが用いられる。これに対し、ダイシング装置は、切断部の識別を目的としており、ガラス基板からの反射光の強弱を感度良く受光できることが重要である。イメージセンサにカラーフィルタ等を用いると、特定の波長の光が反射し、イメージセンサが受光するガラス基板からの反射光量の絶対量が少なくなり、感度が低下することになる。このため、ダイシング装置に用いられるイメージセンサには、カラーフィルタ等を用いられることはなく、700nm以上の近赤外領域にも分光感度を有している。
近赤外線カット膜が表面に設けられたガラス基板の分光透過率は、例えば図7に示す通りであり、ガラス基板に入射する照射光のうち700nm以上の近赤外領域の光の大半は、近赤外線カット膜が設けられた面で反射する。
ダイシング装置において、近赤外線カット膜が設けられたガラス基板に対し、第2ダイシング加工面側より光を照射し、反射光により第1ダイシング溝を識別しようとする場合、第2ダイシング加工面に近赤外線カット膜が存在すると、近赤外領域以上の光が第2ダイシング加工面の表面で反射することにより、イメージセンサで検出された画像は大半が明部となり、ガラス基板裏面の第1ダイシング溝を識別することは難しい。
これに対し、近赤外線カット膜が設けられている面を第1ダイシング加工面とすると、第2ダイシング加工面側から照射した光は近赤外線カット膜が存在する第1ダイシング溝未加工部で多く反射する。未加工部の反射光は、近赤外線カット膜により特に近赤外領域以上の光が多いため、イメージセンサで検出される反射光量も多い。そのため、第2ダイシング加工面の表面の反射光の影響は小さく、得られる画像は第1ダイシング溝未加工部の明部と第1ダイシング溝の暗部とのコントラストが非常に大きいものとなる。
よって、近赤外線カット膜が設けられている面を第1ダイシング加工面とすることにより、イメージセンサを用いて第1ダイシング溝と未加工部とを明瞭に識別することが可能となる。
図1は、本発明のガラス基板の切断方法の加工工程の一実施形態を示すフロー図であり、これはデジタルスチルカメラ用の光学ガラスを加工対象とした場合の例を示している。この光学ガラスは、近赤外線カットフィルタとして用いられるものであり、一面側のみに近赤外線カット膜が設けられている。
図1(a)は、第1ダイシング工程を示す。第1ダイシング工程では、近赤外線カット膜8が設けられた面を第1ダイシング加工面2とし、断面V字型ダイシングブレード4を用いて、所定のカッティングラインに沿って両面に傾斜面を有するテーパー溝(第1ダイシング溝6)を形成する。この際、第1ダイシング溝6の加工深さは、ガラス基板1を切断しないようガラス基板1の厚さ未満の深さとする。第1ダイシング溝6の加工深さは、面取寸法及び断面V字型ダイシングブレード4の仕様に基づき設定されるものであり、ガラス基板の厚さの半分未満であることが好ましい。断面V字型ダイシングブレード4は、ダイヤモンド砥粒を適宜のボンドで固着したダイヤモンドブレード等であり、刃先角度は90度程度のものが用いられる。切断装置は、高速回転するスピンドルの先端に取り付けられたダイシングブレードにより切断を行うものである。また、ガラス基板1と加工テーブル11とは、ガラス基板1に紫外線硬化型ダイシングテープ10を貼着し、紫外線硬化型ダイシングテープ10を加工テーブル11に真空吸着することにより固定する。尚、ガラス基板1の稜線部を面取りする必要がない場合は、切断用ダイシングブレードを用いて、ガラス基板1の厚さ未満の深さまで溝加工を行う。切断用ダイシングブレードによる溝加工の深さは、後述する反転工程時のガラス基板1の割れを防ぐため、ガラス基板1の厚さの半分程度が好ましい。
次に、図1(b)は、ガラス基板1を反転する反転工程を示す。ガラス基板の反転工程は、第2ダイシング加工面3が加工側となるようガラス基板1を反転する。この際、図2に示すように、第1ダイシング溝6を加工後、加工テーブル11の真空吸着を解除し、加工テーブル11から外したガラス基板1に紫外線を照射し、第1紫外線硬化型ダイシングテープ101を硬化させて粘着力を低下させる。そして、第1ダイシング加工面2に第2紫外線硬化型ダイシングテープ102を貼着した後、ガラス基板1を反転し、粘着力の低下した第1ダイシング加工面2の第1紫外線硬化型ダイシングテープ101を除去する。尚、第1紫外線硬化型ダイシングテープ101を除去する際、ガラス基板1の割れを防ぐため、ガラス基板1の第2紫外線硬化型ダイシングテープ102が貼着された面を加工テーブル11に真空吸着した状態で行うことが好ましい。
次に、図1(c)は、第2ダイシング工程を示す。第2ダイシング工程では、第1ダイシング溝6に沿って第2ダイシング溝7を形成し、ガラス基板1を切断する。この際、第1及び第2ダイシング溝による切断面に段差やずれが生じないよう、第2ダイシング加工を行う前に位置調整を正確に行うことが重要である。
位置調整工程は、一例として図3に示すように、第2ダイシング加工面側より光を照射し、その反射光をイメージセンサであるCCDカメラ12にて画像として検出する。この検出画像に基づき加工テーブル11を調整することにより、第1ダイシング溝6に沿って第2ダイシング溝7を形成するようガラス基板1を正確に位置決めする。CCDカメラ12は、ガラス基板1に対して鉛直方向下向に取り付けられており、光源からの照射光13はCCDカメラ12の対物レンズを通り、ガラス基板1を照明する。光源としては、ハロゲンランプ 、タングステンランプ 、レーザ装置、LEDなど任意のタイプの光源とすることができる。特に、近赤外領域に分光特性を有する光源を用いることが好ましい。第1ダイシング加工面からの反射光は、CCDカメラ12により画像として検出される。検出された画像は、第1ダイシング加工面2の第1ダイシング溝6を暗部、未加工部9を明部として表示する。そしてこれらの情報を元に、第1ダイシング溝6の中心線が第2ダイシング溝7の加工中心線と一致するように加工テーブル11を調整する。尚、反射光の画像検出から加工テーブル11の調整までの動作は、切断装置に組み込んだプログラムにより自動で行ってもよく、また作業者がモニター(不図示)に表示された画像を目視することで第1ダイシング溝6を確認し、加工テーブル11を調整してもよい。また、第2ダイシング工程では、最初の第2ダイシング溝7を形成する前にのみ位置調整工程を行っても良いし、ダイシング溝を形成する毎に位置調整工程を行っても良い。
図4に、第2ダイシング加工面から光を照射し、その反射光により得られた画像を示す。光源からの照射光13は、第2ダイシング加工面を通過し、ガラス基板1の中を透過して第1ダイシング加工面に達する。ここで、第1ダイシング溝6は第1ダイシング工程で加工されているため照射光は散乱し、また近赤外線カット膜8が除去されているため、CCDカメラ12より検出される反射光量は少なく、画像では暗部として表示されることになる。これに対し、未加工部9は溝加工されておらず近赤外線カット膜8が存在しており、且つ表面が平坦であるため、照射光の中でも特に近赤外領域の光が多く反射し、CCDカメラ12により検出される反射光量は多いため、画像では明部として表示されることになる。よって、検出された画像について、明部と暗部とのコントラストが大きくなる。これにより、暗部の中心が第1ダイシング溝6の加工中心線と認識し、第2ダイシング工程では、この暗部の中心に第2ダイシング溝7の加工中心線が沿うようガラス基板1の位置決めを行う。
本発明において、近赤外線カット膜8が設けられている面を第1ダイシング加工面2とすることが必須である。前述の通り、本発明の切断方法では、第2ダイシング加工面3から第1ダイシング溝6を検出することによりガラス基板1の位置決めを行うため、第2ダイシング加工面3から第1ダイシング溝6が明瞭に識別できることが必要である。
近赤外線カット膜8が設けられている面を第1ダイシング加工面2としない場合、第1ダイシング溝6の暗部と未加工部の明部とのコントラストが小さく、第1ダイシング溝6を明瞭に識別することは難しい。これに対し、第1ダイシング加工面2に近赤外線カット膜8が形成されている場合、近赤外線カット膜8により第1ダイシング加工面2の未加工部9の反射光量が大きくなり、第1ダイシング溝6の暗部と未加工部の明部とのコントラストが大きくなるため、得られた画像から第1ダイシング溝6を明瞭に識別することができる。
また、光学ガラスとして用いられるガラス基板は、透過率を上げるためにガラス表面が光学研磨されていることが多い。第1ダイシング加工面2が光学研磨されていると、前述のように鉛直方向下向に光が照射される場合、第2ダイシング加工面3からの反射光量が多くなり、第1ダイシング溝6を明瞭に画像として検出することが難しい。ここで、近赤外線カット膜8が設けられている面を第1ダイシング加工面2とすることにより、第1ダイシング加工面2の未加工部9における反射光量が多くなるため、第2ダイシング加工面3が光学研磨されている場合でも、第1ダイシング溝6を明瞭に識別することができる。また、第1ダイシング加工面2が光学研磨されていると、未加工部9からの反射光量が多くなるため、第1ダイシング溝6と未加工部9とのコントラストがより明瞭になる。
また、ガラス基板は第2ダイシング加工面3に反射防止膜8が形成されていてもよい。前述の通り、本発明の切断方法では、第2ダイシング加工面3から第1ダイシング溝6を検出することによりガラス基板1の位置決めを行うため、第2ダイシング加工面3から第1ダイシング溝6が明瞭に識別できることが必要である。
一般に、空気から反射防止膜が形成されていないガラス基板への入射光は、ガラス表面で約4%が反射する。これに対し、ガラス基板の表面に反射防止膜が形成されている場合、ガラス基板への入射光は、ガラス表面で約0.25%が反射する程度と極僅かである。これを比較すると、ガラス表面での反射は16倍の差がある。ガラス基板表面の反射光量が多いと検出される画像全体が明部となり、第1ダイシング溝6の暗部と未加工部の明部とのコントラストが小さくなってしまい、第1ダイシング溝6を明瞭に識別することは難しい。しかし、第2ダイシング加工面3に反射防止膜が形成されていると、ガラス基板表面の反射光の影響が極めて小さく、第1ダイシング溝6の暗部と未加工部の明部とのコントラストが大きくなるため、第2ダイシング加工面3から第1ダイシング溝6がより明瞭に識別できる。また、反射防止膜8は、ガラス基板1を透過した光が空気側に抜けていくときに、ガラス基板1側への反射を抑制する場合にも有効である。よって、第2ダイシング加工面3の反射防止膜8は、第1ダイシング加工面2からの反射光が第2ダイシング加工面3を通過する際の反射光量の減衰(ガラス基板1側への反射)を抑制するため、得られた画像から第1ダイシング溝6を明瞭に識別することができる。第2ダイシング加工面3に反射防止膜17が形成されている場合の実施形態を、図8に示す。反射防止膜は、ガラス基板表面の反射率を低減させて、透過率を増加させるものであり、MgFの単層膜やAl・Ta・MgFの多層膜などで構成されている。また、これらの単層・多層膜は真空蒸着やスパッタリング等の成膜方法にて形成される。
第2ダイシング工程にてガラス基板1の稜線部を面取加工する場合は、第1ダイシング工程で説明したものと同じ断面V字型ダイシングブレード4を用いて、ガラス基板1の厚さ未満の深さまで両面に傾斜面を有するテーパー溝(第2ダイシング溝7)を形成する。テーパー溝の加工深さは、第1ダイシング溝6の加工深さと同じとすることが好ましい。次にテーパー溝の幅より薄い切断用ダイシングブレード5を用いて、ガラス基板1を個片に切断する。切断用ダイシングブレード5は、ダイヤモンド砥粒を適宜のボンドで固着したダイヤモンドブレード等であり、刃厚は0.2mm程度のものが用いられる。
尚、ガラス基板1の稜線部を面取りする必要がない場合は、切断用ダイシングブレード5のみを用いて、第1ダイシング溝6に沿って第2ダイシング溝7を形成し、ガラス基板1を個片に切断する。
第1ダイシング工程及び第2ダイシング工程は、碁盤目状にダイシング溝を形成する場合は、まず一方向にダイシング溝を所定のピッチで複数形成した後、加工テーブル11を90°回転し、先に形成したダイシング溝と直交する方向にダイシング溝を所定のピッチで複数形成する。
第2ダイシング溝7を形成し、ガラス基板1を個片に切断した後、第2ダイシング加工面3の第2紫外線硬化型ダイシングテープ102に紫外線を照射し、粘着力を低下させて、第2紫外線硬化型ダイシングテープ102から切断したガラス基板1の各個片(光学ガラス)を剥離する。その後、個片の寸法検査、洗浄等を行って製品として出荷する。
本発明は上記の実施例に限定されるものではない。また、近赤外線カット膜は、400nm以下の紫外領域の波長をカットする機能も併せて有する、いわゆるUV−IRカット膜でも同様の効果を示す。UV−IRカット膜としては、例えば、Ti・SiOの多層膜やTa・SiOの多層膜などで構成されているものを用いることができる。
本発明のガラス基板の切断方法によれば、第2ダイシング加工面から第1ダイシング溝を明瞭に認識できるため、第2ダイシング溝を第1ダイシング溝に沿って正確に加工することができる。よって、第1及び第2ダイシング溝における切断面に段差やずれが発生することがない。
本発明のガラス基板の切断方法の加工工程を示すフロー図である。 本発明のガラス基板の切断方法の反転工程を示すフロー図である。 本発明の第1ダイシング溝を光学的に検出する工程を示す図である。 第1ダイシング溝が光学的に検出された検出画像を示す。 第1及び第2ダイシング加工面の段差やずれを示す図である。 人間の視感度及びCCD等に用いられるシリコンの受光素子の分光感度特性を示す図である。 一般的な近紫外線カット膜が一方面に設けられたCCD用カバーガラスの分光透過率を示す図である。 本発明のガラス基板の切断方法のその他の形態を示すフロー図である。
符号の説明
1…ガラス基板、2…第1ダイシング加工面、3…第2ダイシング加工面、4…断面V字型ダイシングブレード、5…切断用ダイシングブレード、6…第1ダイシング溝、7…第2ダイシング溝、8…近赤外線カット膜、9…未加工部、10…紫外線硬化型ダイシングテープ、11…加工テーブル、12…CCDカメラ、13…照射光、14…切断面、15…突起、16…切断溝、17…反射防止膜、101…第1紫外線硬化型ダイシングテープ、102…第2紫外線硬化型ダイシングテープ。

Claims (6)

  1. ガラス基板の一面側に近赤外線カット膜が設けられたガラス基板の切断方法であって、前記近赤外線カット膜が設けられている面に所定のカッティングラインに沿って前記ガラス基板の厚さ未満の深さの第1ダイシング溝を形成する第1ダイシング工程と、前記ガラス基板の前記第1ダイシング溝を形成した面に、粘着テープを貼着する貼着工程と、前記ガラス基板を反転する反転工程と、前記ガラス基板の第1ダイシング溝を形成した面の反対の面に前記第1ダイシング溝に沿って第2ダイシング溝を形成し、前記ガラス基板を切断する第2ダイシング工程とを有し、前記第2ダイシング工程は、第2ダイシング溝を形成する前に、ガラス基板に光を照射し、その反射光をイメージセンサで検出し、第1ダイシング溝の位置を特定することで第2ダイシング溝の形成位置を調整する位置調整工程を備えることを特徴とするガラス基板の切断方法。
  2. 前記第1ダイシング工程は、両側に傾斜面を有するテーパー溝を形成することを特徴とする請求項記載のガラス基板の切断方法。
  3. 前記第2ダイシング工程は、前記ガラス基板の厚さ未満の深さの両側に傾斜面を有するテーパー溝を形成した後、前記テーパー溝の溝幅より薄いダイシングブレードを用いてガラス基板を切断することを特徴とする請求項1または2記載のガラス基板の切断方法。
  4. 前記ガラス基板は、表面が光学研磨された後に近赤外線カット膜が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガラス基板の切断方法。
  5. 前記ガラス基板は、近赤外線カット膜が設けられている面の反対面に、反射防止膜が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のガラス基板の切断方法。
  6. 請求項1からの何れか1項に記載のガラス基板の切断方法を用いて加工されたことを特徴とする光学ガラス。
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