JP5056933B2 - 積層体のガスバリア性向上方法 - Google Patents
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前記ガスバリア層前駆体が、ポリカルボン酸系重合体及び可塑剤の混合物からなる層(A)と、多価金属化合物及びバインダ樹脂の混合物からなる層(B)と、イオン化制御樹脂からなり、層の厚みが0.01〜1μmである層(C)とを備えており、
前記層(A)と前記層(B)とが前記層(C)を介して積層されていることを特徴とするものである。
本発明にかかる支持体は、未延伸のものであって、後述するアンカーコート層、ガスバリア層前駆体及び熱可塑性樹脂からなる層を順次積層させるための支持体となるものである。
本発明にかかるアンカーコート層は、前記支持体と後述するガスバリア層前駆体との層間接着強度を高めるために、前記支持体の少なくとも片面に形成された層であって、アンカーコート剤を含有する層である。
本発明にかかるガスバリア層前駆体は、ポリカルボン酸系重合体及び可塑剤の混合物からなる層(A)と、多価金属化合物及びバインダ樹脂の混合物からなる層(B)と、イオン化制御樹脂からなり、層の厚みが0.01〜1μmである層(C)とを備える積層体である。そして、このようなガスバリア層前駆体は、前記支持体の少なくとも片面にアンカーコート層を介して積層されている。
本発明にかかる層(A)は、ポリカルボン酸系重合体及び可塑剤の混合物からなる層である。そして、本発明にかかるポリカルボン酸系重合体は、ポリカルボン酸系の重合性単量体が重合したものであり、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する重合体である。具体的には、重合性単量体として、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸を用いた単独重合体、それらのうちの少なくとも2種を用いた共重合体、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、更にアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類を例示することができる。これらのポリカルボン酸系重合性単量体は1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
本発明にかかる層(B)は、多価金属化合物及びバインダ樹脂の混合物からなる層である。そして、本発明にかかる多価金属化合物は、前記ポリカルボン酸系重合体とイオン結合を形成させるためのものである。このような多価金属化合物に含有される金属としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の遷移金属;アルミニウムを挙げることができる。
本発明にかかる層(C)は、前記層(A)と前記層(B)との間に配置される層であって、イオン化制御樹脂からなる層である。そして、本発明にかかるイオン化制御樹脂とは、常温において前記層(B)中の多価金属イオンが前記層(A)に移動することを抑制することができる樹脂のことをいう。このようなイオン化制御樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂を挙げることができる。これらの中でも、延伸成形性、並びに常温において多価金属イオンが移動することを抑制するという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂が好ましい。
本発明にかかるガスバリア層前駆体においては、前記層(A)と前記層(B)とが前記層(C)を介して積層されていることが必要である。前記層(A)と前記層(B)とが前記層(C)を介して積層されていることにより、前記層(B)中の多価金属イオンが前記層(A)に移動することを抑制することができ、前記多価金属イオンと前記ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基との間にイオン結合が形成されること(イオン結合反応)を抑制することができる。そのため、本発明の絞り成形用積層体は、絞り成形前において長期間にわたり保存することが可能となる。
1:(A)/(C)/(B)、
2:(A)/(C)/(B)/(C)/(A)、
3:(B)/(C)/(A)/(C)/(B)、
4:(A)/(C)/(B)/(C)/(A)/(C)/(B)。
本発明にかかる熱可塑性樹脂からなる層は、前記ガスバリア層前駆体の表面に配置された層である。そして、このような熱可塑性樹脂からなる層は、絞り成形用積層体への耐磨耗性付与、光沢性付与、ヒートシール性付与、強度付与、防湿性付与等の目的に併せて適宜配置される層である。また、このような熱可塑性樹脂としては、前記支持体の材料と同様のものを挙げることができる。さらに、このような熱可塑性樹脂は、上記の目的に併せて適宜選択して用いることができる。なお、本発明の絞り成形用積層体は、上記の目的に併せて2層以上の熱可塑性樹脂からなる層を備えていてもよい。
本発明の絞り成形用積層体は、前述した支持体と、前述したガスバリア層前駆体と、前述した熱可塑性樹脂からなる層とを備えるものである。このような絞り成形用積層体は、絞り成形前において長期間にわたり保存することができる。また、このような絞り成形用積層体を絞り成形してなる絞り成形容器は、ボイル処理、レトルト処理等の殺菌処理を施すことによって、高湿度雰囲気下においても優れたガスバリア性を有する絞り成形容器となる。したがって、本発明の絞り成形用積層体は、ボイル処理、レトルト処理等の殺菌処理を施す必要がある絞り成形容器に用いる積層体として特に有用である。
次に、本発明の絞り成形用積層体を製造する方法について説明する。本発明の絞り成形用積層体を製造する方法としては、前記アンカーコート層、前記層(A)、前記層(B)及び前記層(C)を形成するための塗工液を調製する工程と、前記支持体の少なくとも片面に前記アンカーコート層を介して前記ガスバリア層前駆体が形成されるように、前記支持体に順次調製した塗工液を塗工及び乾燥する工程と、前記ガスバリア層前駆体の表面に熱可塑性樹脂フィルムを積層させて熱可塑性樹脂からなる層を形成する工程とを含む方法を挙げることができる。
次に、本発明の絞り成形容器について説明する。本発明の絞り成形容器は、前記絞り成形用積層体を絞り成形してなることを特徴とするものである。また、本発明のガスバリア性を有する絞り成形容器は、前記絞り成形用積層体を絞り成形してなる絞り成形容器に高温高湿処理を施すことにより、前記層(B)中の多価金属イオンを前記層(C)を介して前記層(A)に移動せしめ、前記多価金属イオンと前記ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基との間にイオン結合を形成せしめてなることを特徴とするものである。
ポリエステル系ポリオール(EL−510−1:東洋モートン(株)製、固形分濃度50質量%)を主剤とし、ポリイソシアネート(CAT−RT87:東洋モートン(株)製、固形分濃度70質量%)を硬化剤とした。そして、それらの質量比(主剤/硬化剤)が5/1となるようにして溶媒(酢酸エチル)に溶解させてアンカーコート層用の塗工液(Ac−1)を調製した。得られた塗工液(Ac−1)における固形分濃度は5質量%であった。
ポリエステル系樹脂(紫外線遮蔽用バインダ樹脂:住友大阪セメント(株)製、固形分濃度20質量%)を主剤とし、ポリイソシアネート(住友大阪セメント(株)製、固形分濃度75質量%)を硬化剤とした。そして、それらの質量比(主剤/硬化剤)が3/1となるように混合した後、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=4/1)にて固形分濃度が5質量%となるように希釈してアンカーコート層用の塗工液(Ac−2)を調製した。
先ず、数平均分子量200,000のポリアクリル酸重合体(アロンA−10H:東亞合成(株)製、25質量%水溶液)を蒸留水にて固形分濃度が4質量%となるように希釈して、ポリアクリル酸水溶液を調製した。次に、得られたポリアクリル酸水溶液90質量部と、グリセリン4質量%水溶液10質量部とを混合した後に攪拌して層(A)用の塗工液(A−1)を調製した。
調製例3で得られた塗工液(A−1)に、ポリアクリル酸のカルボキシル基に対して0.05化学当量の水酸化カルシウムを添加して層(A)用の塗工液(A−2)を調製した。
酸化亜鉛分散液(紫外線遮蔽用サスペンションZS−303:住友大阪セメント(株)製、固形分濃度32.4質量%)と、ポリエステル系樹脂(紫外線遮蔽用バインダ樹脂:住友大阪セメント(株)製、固形分濃度20質量%)とを、酸化亜鉛とポリエステル系樹脂との質量比(酸化亜鉛/ポリエステル系樹脂)が80/20となるように混合して混合液を得た。得られた混合液100質量部にポリイソシアネート(住友大阪セメント(株)製、固形分濃度75質量%)3質量部を添加した後、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=4/1)にて固形分濃度が15質量%となるように希釈して層(B)用の塗工液(B−1)を調製した。
酸化亜鉛とポリエステル系樹脂との質量比(酸化亜鉛/ポリエステル系樹脂)が85/15となるように混合した以外は調製例5と同様にして層(B)用の塗工液(B−2)を調製した。
酸化亜鉛とポリエステル系樹脂との質量比(酸化亜鉛/ポリエステル系樹脂)が88/12となるように混合した以外は調製例5と同様にして層(B)用の塗工液(B−3)を調製した。
調製例1と同様にして固形分濃度が5質量%の層(C)用の塗工液(C−1)を調製した。
調製例2と同様にして固形分濃度が5質量%の層(C)用の塗工液(C−2)を調製した。
先ず、厚み250μmの未延伸ポリエステル(PET)フィルム(支持体)の表面に、バーコーター(K303
PROOFER;RK Print−Coat Instruments社製)を用いて、調製例1で得られた塗工液(Ac−1)を塗工し、70℃にて1分間乾燥させてアンカーコート層を形成させた。得られたアンカーコート層の厚みは0.3μmであった。
調製例8で得られた塗工液(C−1)に代えて調製例9で得られた塗工液(C−2)を用いた以外は実施例1と同様にして絞り成形用積層体を得た。なお、得られた層(C−2)の厚みは0.15μmであった。
調製例1で得られた塗工液(Ac−1)に代えて調製例2で得られた塗工液(Ac−2)を用い、調製例8で得られた塗工液(C−1)に代えて調製例9で得られた塗工液(C−2)を用いた以外は実施例1と同様にして絞り成形用積層体を得た。なお、得られた層(C−2)の厚みは0.15μmであった。
厚み250μmの未延伸ポリエステル(PET)フィルムに代えて厚み60μmの未延伸6ナイロン(Ny)フィルムを支持体として用い、厚み80μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムに代えて厚み150μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして絞り成形用積層体を得た。
厚み250μmの未延伸ポリエステル(PET)フィルムに代えて厚み150μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを支持体として用い、厚み80μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムに代えて厚み150μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして絞り成形用積層体を得た。
調製例5で得られた塗工液(B−1)に代えて調製例6で得られた塗工液(B−2)を用いた以外は実施例1と同様にして絞り成形用積層体を得た。なお、得られた層(B−2)の厚みは0.6μmであった。
調製例5で得られた塗工液(B−1)に代えて調製例7で得られた塗工液(B−3)を用いた以外は実施例1と同様にして絞り成形用積層体を得た。なお、得られた層(B−3)の厚みは0.6μmであった。
調製例3で得られた塗工液(A−1)に代えて調製例4で得られた塗工液(A−2)を用いた以外は実施例1と同様にして絞り成形用積層体を得た。なお、得られた層(A−2)の厚みは0.48μmであった。
層(C−1)を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして比較用の絞り成形用積層体を得た。
層(C−1)を形成しなかったこと以外は実施例4と同様にして比較用の絞り成形用積層体を得た。
(i)絞り成形容器の作製
先ず、実施例1〜8及び比較例1、2で得られた絞り成形用積層体を温度40℃で3日間エージングしたエージング後の積層体と、エージング後の積層体をさらに室温で70日間保存した保存後の積層体を準備した。次に、これらの積層体を深絞り型高速自動真空包装機(FV−603型:大森機械工業(株)製)を用いて、それぞれ直径φ90mm、深さ40mmに成形して絞り成形容器を得た。
得られた絞り成形容器を試料として、特定微小部の電子顕微鏡観察(TEM−EDX)を行い、試料における層(C)の厚みを測定した。すなわち、得られた絞り成形容器の容器側面からウルトラミクロトームを用いて、それぞれ試験片を切り出した。それらの試験片について、透過電子顕微鏡(HF2000:日立製作所製)及び元素分析装置(VOYAGERIII
M3100:NORAN製)を用いて、その断面をTEM−EDXにより観察して層(C)の厚みを測定した。なお、測定条件としては、加速電圧を200keV、ビーム径を10nm、エネルギー分解能を137eV、測定時間を100秒間とした。TEM−EDXの結果から、実施例1〜8で得られた絞り成形用積層体を深絞り成形した絞り成形容器においては、厚みが75nmの層(C)が形成されていることが確認された。
先ず、得られた絞り成形容器に、高温高圧処理として、レトルト処理機(RCS−60:日阪製作所製)を用いて、温度120℃にて30分間のレトルト処理(貯湯式)を施して試料を得た。次に、得られた試料について、酸素透過試験器(TMOX−TRAN2/20;Modern
Control社製)を用いて、容器外側の雰囲気を温度20℃、50%相対湿度(RH)、容器内側の雰囲気を温度20℃、80%相対湿度(RH)とした場合の酸素透過度を測定した。そして、得られた測定値を、雰囲気中の酸素濃度(20%)及び容器表面積(0.018m2)の値を用いて換算して、酸素濃度100%、表面積1m2における酸素透過度〔単位:cm3(STP)/(m2・day・MPa)〕の値を算出した。
Claims (6)
- 支持体と、ポリカルボン酸系重合体を含有する層と多価金属化合物を含有する層とがイオン化制御樹脂からなる層を介して積層されてなるガスバリア層前駆体とを備えた積層体に、相対湿度90%以上で80℃以上の高温高湿の雰囲気に10分以上曝す処理又は80℃以上の熱水に10分以上曝す処理である高温高湿処理を施し、前記多価金属化合物を含有する層から供給される多価金属イオンを、高温高湿処理中に、前記イオン化制御樹脂からなる層、さらには前記ポリカルボン酸系重合体を含有する層に移動させ、前記ポリカルボン酸系重合体を含有する層の中のカルボキシル基と前記多価金属イオンとの間にイオン結合反応を起こさせて、前記ガスバリア層前駆体をガスバリア層とすることを特徴とする積層体のガスバリア性向上方法。
- 前記高温高湿処理を行う前の常温においては、前記イオン化制御樹脂からなる層が前記多価金属イオンの移動を抑制していることを特徴とする請求項1に記載の積層体のガスバリア性向上方法。
- 前記高温高湿処理がレトルト処理又はボイル処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体のガスバリア性向上方法。
- 前記高温高湿処理を行う前に、絞り成形を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の積層体のガスバリア性向上方法。
- 前記積層体が、前記ガスバリア層前駆体の表面の上にさらに熱可塑性樹脂からなる層を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の積層体のガスバリア性向上方法。
- 前記積層体が、前記支持体と前記ガスバリア層前駆体との間にアンカーコート層を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の積層体のガスバリア性向上方法。
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