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JP5051455B2 - エピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法 - Google Patents

エピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、エピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法に関し、更に詳しくは、窒化物半導体、例えば、InAlGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、0≦X+Y≦1)からなるオフ角ばらつきの小さい自立基板を製造できるエピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法に関する。
窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化ガリウムアルミニウム(GaAlN)等の窒化物系半導体材料は、禁制帯幅が大きく、バンド間遷移も直接遷移型であるため、短波長発光素子への適用が盛んに検討されている。また、電子の飽和ドリフト速度が大きいこと、ヘテロ接合による2次元キャリアガスの利用が可能なこと等から、電子素子への応用も期待されている。
窒化物半導体基板は、窒素の蒸気圧が非常に高いためにボート法や引き上げ法などにみられる融液からのバルク状結晶成長が極めて困難であり、高圧を印加することでV族元素の乖離を抑止する原理を利用したこれらの方法からは、ごく小さな基板しか得られていない。
この理由により、窒化物半導体基板の製造方法としては、図8に示すように、一般にサファイア基板やシリコン基板あるいはガリウム砒素基板などの窒化物半導体とは異なる異種基板21上に、主に気相成長法を用いて窒化物半導体層22をヘテロエピタキシャル成長させた後(図8(a))、剥離や研磨あるいはエッチング等の手法を用いて異種基板21を除去し(図8(b))、異種基板21上に形成した前記窒化物半導体層22のみを残し、窒化物半導体層22の表裏面を研磨等することで、いわゆる「自立基板」を得ている(図8(c))。なお、図8における矢印は、結晶の主たる面方位を示している。結晶の主たる面方位とは、表面に最も近い低指数面の方位のことで、例えば、サファイア、GaN等の六方晶系で言えば、C面、A面、またはM面の方位のことである。
このようにして自立基板を作製する具体的な方法としては、例えば特許文献1に記載されているような方法が知られている。
また、異種基板を除去した後、残った窒化物半導体層から1枚のみの自立基板を取得する場合もあるが、窒化物半導体層を厚くエピタキシャル成長させてスライスすることにより複数枚の自立基板を取得する場合もある。さらに得られた窒化物半導体自立基板を種結晶として、その上に厚くエピタキシャル成長させてスライスすることにより複数枚の自立基板を取得する場合もある。
本明細書でいう自立基板とは、これらのうちいずれの場合も含むものである。
窒化物半導体層の成長方法については、サファイア基板やシリコン基板あるいはガリウム砒素基板などの窒化物半導体とは異なる異種基板上に、窒化物半導体層をヘテロエピタキシャル成長させるため、成長の開始当初は、いわゆるステップフローモードではなく、3次元島状成長モードで結晶成長が進行する。このため、こうして得られた窒化物半導体層は、10〜1010cm−2もの転位密度を有している。この欠陥は、AlGaN系デバイス、特にLDや紫外発光LEDを製作する上で障害となる。
近年、このような欠陥の密度を低減する方法として、ELOや、FIELO、ペンデオエピタキシーといった成長技術が報告された。これらの成長技術は、サファイア等の基板上に成長させたGaN上に、SiO等でパターニングされたマスクを形成し、マスクの窓部からさらにGaN結晶を選択的に成長させて、マスク上をGaNがラテラル成長で覆うようにすることで、下地結晶からの転位の伝播を防ぐものである。これらの成長技術の
開発により、GaN中の転位密度は10cm−2台程度にまで、飛躍的に低減させることができるようになった。
更に、サファイア基板等の異種基板上に転位密度を低減したGaN層を厚くエピ成長させ、成長後に下地から剥離して、GaN層を自立したGaN基板として用いる方法が種々提案されている。例えば、前述のELO技術を用いてサファイア基板上にGaN層を形成した後、サファイア基板をエッチング等により除去し、GaN自立基板を得ることが提案されている。
また、VAS(Void-assisted Separation:例えば、非特許文献1)法や、DEEP(Dislocation Elimi nation by the Epi-growth with inverted-Pyramidal pits:例えば
、非特許文献2)法などが公開されている。VASは、サファイア等の基板上で、網目構造のTiN薄膜を介してGaNを成長することで、下地基板とGaN層の界面にボイドを形成し、GaN基板の剥離と低転位化を同時に可能にしたものである。また、DEEPは、エッチング等で除去が可能なGaAs基板上にパターニングしたSiN等のマスクを用いてGaNを成長させ、結晶表面に故意にファセット面で囲まれたピットを複数形成し、前記ピットの底部に転位を集積させることで、その他の領域を低転位化するものである。
特開2002−57119号公報 Y.Oshima et.al., Jpn.J.Appl.Phys., Vol.42(2003), pp.L1-L3 K.Motoki et.al., Jpn.J.Appl.Phys., Vol.40(2001), pp.L140-L143
しかしながら、上述した従来方法で作製した窒化物半導体層22には、表裏面に欠陥密度差が存在することから、結晶格子が歪み内部応力が生じて、下地基板21から剥離した後の窒化物半導体層22は、どのようにしても裏面22bが凸形状になるように反ってしまう(図8(b))。そのように反った窒化物半導体層22は、研磨などで平坦な加工を施したとしても、表面22aの面内の各位置で面方位が一様な方向に向いていないため、オフ角が面内でばらついてしまうという問題が発生する(図8(c))。ここでいう「オフ角」とは、「表面の各位置の法線の、主たる面方位からのずれの角度」(あるいは「表面と、主たる結晶面とのなす角度」)のことであり、「オフ角がばらつく」というのは、「表面の各位置の法線の、主たる面方位からずれの角度が一様にならず、面内の位置によって、ずれの角度が異なってしまう」ことである。
面内のオフ角がばらつくと、その上に形成した発光素子デバイスの発光波長のばらつきに大きな影響を与え、著しく歩留まりを低下させてしまう。
さらに面内でオフ角がばらついている窒化物半導体自立基板23(図8(c))を種結晶として、その上にエピタキシャル成長しても、配向性は引き継がれるので、エピタキシャル層を厚く成長してスライスして得られる自立基板も、結局オフ角がばらついてしまうことになる。また、面方位が一様に揃っている窒化物半導体基板上に成長しても、貫通転位の減少などによる表裏面の欠陥密度差により、再び反ってしまうため、オフ角ばらつきの原因となる。
本発明は、上記課題を解決し、オフ角ばらつきの小さい、窒化物半導体基板を製造することができるエピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成されている。
本発明の第1の態様は、下地基板上に窒化物半導体層を形成し、前記下地基板から分離した前記窒化物半導体層を用いて厚さ200μm以上の自立した窒化物半導体基板を作製するエピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法において、前記下地基板の反り量を、前記下地基板の中心位置と前記下地基板の中心から距離Rの位置とにおける結晶成長面である表面の高さの差(ただし、前記表面の高さの差の正負を、前記下地基板の表面が凸形状の場合をマイナス、凹形状の場合をプラスとする)と定義したとき、前記下地基板は、R=25mmに換算した場合の前記反り量が−100μm以上−20μm以下の範囲にあることを特徴とするエピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様の窒化物半導体基板の製造方法において、前記反りを有する前記下地基板の表面は、面内でオフ角が一様に揃っていることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様の窒化物半導体基板の製造方法において、前記下地基板は、サファイア基板、窒化物半導体基板、シリコン基板またはガリウム砒素基板であることを特徴とする。
本発明によれば、クラックが発生せず、かつオフ角ばらつきの小さい窒化物半導体の自立基板が得られる。また、得られた窒化物半導体自立基板上にLEDやLDなどの半導体発光素子を作製した場合の歩留りを著しく向上させることができる。
以下、本発明に係る窒化物半導体基板の製造方法の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の工程を概略的に示す工程図である。
本実施形態の窒化物半導体基板の製造方法は、まず、下地基板1を準備し、下地基板上1に窒化物半導体層2を形成する(図1(a))。
下地基板1には、サファイア基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板などの窒化物半導体とは異なる異種基板、あるいは窒化物半導体基板を用いる。窒化物半導体層2は、例えば、InAlGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、0≦X+Y≦1)層などである。窒化物半導体層2の形成方法には、有機金属気相成長法(MOVPE法)やハイドライド気相成長法(HVPE法)、或いはこれらを組み合わせた気相成長法などが用いられる。
次に、下地基板1上に形成した窒化物半導体層2を、下地基板1から分離する(図1(b))。分離方法(除去方法)は、剥離(図示例)のほか、研磨、エッチング、レーザー照射などの方法を用いてもよい。
最後に、分離された窒化物半導体層2の表面2a及び裏面2bを研磨し(図1(b)の破線部分を残し)、洗浄などすることで、自立した窒化物半導体基板3を作製する(図1(c))。なお、図1における矢印は、結晶の主たる面方位を示している。
自立した窒化物半導体基板3は、分離された窒化物半導体層2から1枚のみ取得しても、窒化物半導体層3を厚くエピタキシャル成長させてスライスすることにより複数枚の窒化物半導体自立基板を取得してもよい。なお、窒化物半導体の「自立基板」は、搬送などの基板処理が可能な強度を有する基板であって、基板の厚さは、例えば200μm以上が好ましい。
上記実施形態の製造方法で特徴とするところは、窒化物半導体層2を形成するための下地となる下地基板1、特に下地基板1の反り量を所定範囲に規定したことにある。
下地基板1の反り量は、図2に示すように、下地基板1の中心位置と下地基板1の中心から距離Rの位置とにおける結晶成長面である表面1aの高さの差で定義した。ただし、下地基板1の表面1aの高さの差である反り量の正負は、下地基板1の表面1aが凸形状
の場合(図2(a))をマイナス、凹形状の場合(図2(b))をプラスとする。
このとき、下地基板1として、R=25mmに換算した場合の前記反り量が−100μm以上−20μm以下の範囲にある表面が凸形状の基板を用いる。
ここで、「R=25mmに換算した場合の前記反り量が−100μm以上−20μm以下の範囲」とは、言い換えれば「下地基板1を2インチ(=50.8mm)径に規格化し
たときの、反り量が−100μm以上−20μm以下の範囲である」という意味であって、下地基板の径に対応して、例えば、もっと大きい場合には、反り量の数値(絶対値)は、後述する反りのキャンセル効果を発揮できるように、より大きくなる。
下地基板1上に形成した窒化物半導体層2は、その表面2aの欠陥密度が小さく、裏面2bの欠陥密度が大きいため、必ず表面2aが凹形状に反るように内部応力が働く。
従って、図8(a)に示す従来の下地基板21のように、下地基板の表面が平坦で反りがない場合、下地基板21から分離された窒化物半導体層22は、図8(b)に示すように、その表面22aが凹形状に反ってしまう。このため、下地基板21上の窒化物半導体層22の主たる面方位が一様な方向に揃って形成されていても、分離された窒化物半導体層22は、欠陥密度差に起因した内部応力により歪んで表面22aが凹形状に反ってしまい、研磨などで平坦な加工を施した窒化物半導体自立基板23の表面内の各位置で面方位が一様な方向に向かず、オフ角が面内でばらついてしまう。
そこで、本実施形態では、分離後の窒化物半導体層2に生じる凹形状の反りとは、反対向きで絶対値が同程度の凸形状の反りを有する下地基板1を用いることにより、分離後の窒化物半導体層2に欠陥密度差に起因して生じる凹形状の反りをキャンセルすること(打ち消すこと)ができ、図1(b)に示すように主たる面方位はほぼ一様に揃い、分離後の窒化物半導体層2の表裏面を研磨して作製される自立した窒化物半導体基板3も面内のオフ角ばらつきは小さくなる。すなわち、下地基板1の反り量を規定することによって、エピタキシャル成長して分離した後の窒化物半導体層2の反り量を調整・制御でき、結果としてオフ角ばらつきの小さい、面方位の一様に揃った窒化物半導体基板3を作製できる。また、反りをキャンセルするように調整しているので、分離後の窒化物半導体層2の反りは少なく、表裏面を研磨する研磨量も少なくて済み、分離後の窒化物半導体層2を無駄なく有効に活用できると共に、研磨加工の時間等も削減できる。
ただし、下地基板1は、その表面が凸形状に反っていた方がいいと言っても、大きく反り過ぎていると、下地基板1上に窒化物半導体層2をエピタキシャル成長する際、面内で温度の不均一が生じ、表面にピットが形成されるなどの不具合を生じる。これを防止するためには、R=25mmに換算した場合の下地基板1の反り量を−100μm以上とするのが好ましい。また、後述するように、得られた窒化物半導体自立基板3上にLEDやLDなどの半導体発光素子を作製した場合の歩留りなどを考慮すると、R=25mmの場合の下地基板1の反り量を−20μm以下とするのが好ましい。
下地基板1上にエピタキシャル成長される窒化物半導体層2は、図1(a)に示すように、下地基板1の配向性が引き継がれる。このため、分離後の窒化物半導体層2の欠陥密度差に起因する反りを下地基板1の反りによってキャンセルさせて、図1(b)に示すように、層内で主たる面方位がほぼ平行に揃った窒化物半導体層2を分離するには、前記反りを有する下地基板1の表面は、面内でオフ角が一様に揃っていることが好ましい。ここで、下地基板1の表面内でオフ角が一様に揃っているとは、下地基板1表面の各位置において、表面の法線と主たる面方位とのずれがほぼ一致していること、即ち、下地基板1の表面内の各位置で、主たる面方位が下地基板1の表面に垂直な方向から±0.3°程度の
ばらつきの範囲内にあることをいう。
また、下地基板が平板状で反りがなく、面内でオフ角がほぼ揃っている場合(図8(a)の下地基板21のような場合)には、この下地基板を多少、撓ませることが可能である
ならば、上記反り量の範囲の凸球面を有する基材上に、この下地基板を撓ませて密着させた状態で接着剤等により固定したものを、下地基板として用いてもよい。
次に、本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
この実施例1では、種々の反り量を有する直径2インチのサファイア単結晶基板(下地基板)上に、MOVPE法によりGaN層を形成して、サファイア単結晶基板の反りの大きさとGaN層表面のピットとの関係を調べた。
まず、サファイア基板をMOVPE成長炉内のサセプタにセットし、1200℃まで昇温して水素雰囲気中で10分間サーマルクリーニングを行った。その後500℃まで降温して、原料としてトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)及びアンモニア(NH)を、キャリアガスとしてH、Nを含んだ混合ガスを流し、低温InGaN層を20nm形成した。その後、NH及びH、N雰囲気中で1100℃まで昇温して、再びTMGを流して、GaN層を300nm成長した。成長後、NHとN雰囲気にて500℃まで降温し、500℃以下になった所で、Nのみで降温し、100℃以下となったところで、サファイア基板を取り出した。
本実施例1では、下記の表1に示す凸150μm(反り量−150μm)〜凹20μm(反り量+20μm)までの反り量のサファイア基板を用いた。そして、サファイア基板上に形成したGaN層の表面をノマルスキ光学顕微鏡で観察を行った。その結果、凸反り150μmのものと、凸反り120μmのものに、サファイア基板の端から10mm程度の範囲の全周にわたって、図3に見られるようなピット(黒点状)が密集している様子が見られた。それ以外の反り量のサファイア基板では、ピットは発生しておらず、平坦なGaN膜が得られていた。
以上の結果から、下地基板の反りは、凸反り(反り量がマイナス)に関しては、100μm以下が必要である事が分かった。
[実施例2]
ボイド形成剥離法(Void-assisted Separation Method:VAS法)を用いてサファイ
ア基板上にGaNエピタキシャル層を成長させ、その後、サファイア基板を除去することにより、自立したGaN基板を得て、その評価を行った。
VAS法は、サファイア基板とGaN成長層との間に網目構造を有する窒化チタンの薄膜を挟み込んで結晶成長を行う方法であるが、その詳細は例えば非特許文献1に記載されている。
以下、本実施例2のGaN自立基板の製造方法について説明する。
まず、直径2インチのサファイアC面基板上に、MOVPE法により、トリメチルガリウム(TMG)とNHを原料として、アンドープGaN層を300nmの厚さに成長させた。次に、このGaNエピタキシャル基板上に、Ti薄膜を20nmの厚さに蒸着し、これを電気炉に入れて、20%のNHと80%のHの混合ガスの雰囲気中、1050℃で20分間熱処理を施した。その結果、アンドープGaN層の一部がエッチングされて高密度の空隙が発生してボイド形成GaN層に変化するとともに、Ti薄膜が窒化されて表面にサブミクロンの微細な穴が高密度に形成された穴形成TiN層に変化した。
この基板をHVPE炉に入れ、GaNを全体で800μmの厚さに堆積させた。Gaメタルのボートは900℃に加熱し、基板側は1100℃とし、キャリアガスとして水素5%と窒素95%の混合ガスを用いた。原料ガスとしてHClガスとGaを反応させてGaClを生成させ、同時にアンモニアガスを供給し、成長の開始時にはV/III比が10に
なるように流量を調整した。
この条件で、GaNの核がTiN層上に3次元の島状に成長し、次いで結晶同士が横方向に成長して互いに結合し、表面の平坦化が進行していった。この様子は、成長時間を変えて炉外に取り出した基板表面及び断面を顕微鏡観察することにより確認した。さらに成長時間を延ばして成長を続けた。GaN結晶成長の終了後、HVPE装置を冷却する過程で、GaN層はボイド層を境にサファイアの下地基板から自然に剥離し、800μm厚さ
のGaN自立基板が得られた。
本実施例において、表1の中の、凸150μm〜凹20μmまでの反り量のサファイア基板を用いて、上記成長を行った。
それぞれ反り量の異なるサファイア基板から得られたGaN自立基板は、表1に示すように、凸形状に100μm反ったサファイア基板(反り量−100μm)上に成長したものが、最も反り量が小さく、逆に凹形状に20μm反ったサファイア基板(反り量+20μm)上に成長したものが、最も反り量が大きい結果となった。また、凸形状に150μm、120μm反ったサファイア基板上に成長したものは、どちらもHVPE成長中に割れてしまった。
次に、上記GaN自立基板が平坦になるように、さらに表裏面研磨し、厚さ400μmの平坦なGaN自立基板を得た。
これらGaN自立基板のオフ角を、図4に示すように、面内で5点、すなわち中心及び中心から20mm離れた正方形の四隅の位置でX線回折測定装置(パナリティカル社製)により測定した。その結果、オフ角のばらつきは、表1に示すような結果となった。ばらつき(±度)は、次に述べるように、面内の5点の測定結果から、(|最大オフ角|−|最小オフ角|)/2を計算して、得たものである。
上述したように「オフ角」とは、「表面と、結晶面とのなす角度」の事で、X線回折装置を用いて測ることができる。結晶面の回折角度は、例えばC面の回折角度で、{0002}面などの回折ピーク角度から得ることができる。表面の角度は、入射角=反射角となる位置で生じるX線の表面での全反射現象を利用して得られる回折ピーク角度から得ることができる。
上記結晶面の回折ピーク角度と表面の回折ピーク角度との差を全周囲方向(少なくとも90°おきに4方向)から測定することにより、「表面と、結晶面とのなす角度」すなわちオフ角を決定することができる。オフ角の測定を面内の各点で測定すると、オフ角は、その位置によって、大きさも方向も異なる場合がある。上記5点の測定結果のうち、そのオフ角の大きさが一番大きい値(絶対値)を|最大オフ角|、一番小さい値(絶対値)を|最小オフ角|とした場合、|最大オフ角|−|最小オフ角|(度)が、ばらつきの範囲の大きさを表し、それを2で割って、「±度」という単位にして、「ばらつき」を表現した。また、(|最大オフ角|+|最小オフ角|)/2は、オフ角の中心値となる。
表1に示すように、凸形状に100μm反ったサファイア基板上に成長したものが、最もオフ角のばらつきが小さい結果となった。また、表1におけるサファイア基板(下地基板)の反り量とオフ角のばらつきとの関係をグラフ化した図5を見ると、反り量−100μm〜+20μmの範囲において、下地基板の凸形状の反り量が小さくなるにつれて、オフ角ばらつきは大きくなり、凹形状の場合は反転して、反り量が大きくなるにつれて、オフ角ばらつきが大きくなる結果となった。
[実施例3]
実施例2で作製して得られたGaN自立基板上に、次に示す発光素子構造の成長層を形成した。図7は、この実施例3に係わる窒化物半導体発光素子を示す構造断面図である。
実施例3の半導体活性層は、量子井戸構造を有している。発光ダイオード用の多層膜は、有機金属気相成長(MOCVD)法により作製した。有機金属原料として、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いた。ガス原料として、アンモニア(NH)、シラン(SiH)を用いた。また、キャリアガスとして、水素及び窒素を用いた。
本実施例の半導体発光素子は、次のようにして製造した。
まず、上記の実施例2により得られたGaN自立基板(オフ角のばらつきを異にする)11を用いて、GaN自立基板11上に、1050℃にて、Siをキャリア濃度1×1019cm−3ドープしたn型GaN層12を4μmの膜厚で成長させた。次に800℃で、活性層として、厚さ10nmのGaN障壁層13(4層)と、厚さ3nmのIn0.1
Ga0.9N井戸層14(3層)とが交互に積層された多重量子井戸構造(MQW)を有
するInGaN系活性層15を成長させた。その上部に、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層16と、p型GaNコンタクト層17をこの順で形成した。更に、p型GaNコンタクト層17上に正電極19、GaN自立基板11裏面に負電極18を形成した後、チップ化して作製した。
本実施例で作製した全サンプルについて、その後、上記オフ角の測定箇所と同じ箇所に位置する5個のチップ(発光素子)を選んで、EL(Electro Luminescence)測定により、各チップの発光波長を測定し、基板面内の発光波長のばらつきを求めた。5つの発光波長の測定値のうち、「発光波長の最大値−発光波長の最小値」を発光波長のばらつきと定義した。
発光波長ばらつきを測定した結果を表1に示すが、オフ角のばらつきの小さいサンプルで、発光波長のばらつきが小さくなる結果が得られた。
発光波長のばらつきは、もちろん小さい方が良いが、実用上、20nm以下に収めるのが良い。そのためには、GaN自立基板のオフ角のばらつきと発光波長のばらつきとの関係を示すグラフ(図6)より、窒化物半導体自立基板のオフ角のばらつきを、±0.25
度以下とするのが好ましい。さらに、オフ角のばらつきを±0.25度以下とするために
は、図5より下地基板の反り量を、−20μm以下とするのが良いことが分かった。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法を概略的に示す工程図である。 本発明に係る窒化物半導体基板の製造方法で用いる下地基板の反り量を説明するための説明図である。 サファイア基板上に成長したGaN層の表面に発生したピット(黒点状)の様子を示す顕微鏡写真である。 GaN自立基板のオフ角の測定点を示す図である。 サファイア基板(下地基板)の反り量と、その上に成長し、剥離、加工した後のGaN自立基板におけるオフ角のばらつきとの関係を示したグラフである。 GaN自立基板のオフ角のばらつきと、そのGaN自立基板上にさらに発光素子構造を形成した際の発光波長のばらつきとの関係を示したグラフである。 実施例で作製した窒化物半導体発光素子の断面構造を示す概略断面図である。 従来の窒化物半導体基板の製造方法を概略的に示す工程図である。
符号の説明
1 下地基板
1a 下地基板の表面
1b 下地基板の裏面
2 窒化物半導体層
2a 分離された窒化物半導体層の表面
2b 分離された窒化物半導体層の裏面
3 自立した窒化物半導体基板
11 GaN自立基板
15 InGaN系活性層

Claims (3)

  1. 下地基板上に窒化物半導体層を形成し、前記下地基板から分離した前記窒化物半導体層を用いて厚さ200μm以上の自立した窒化物半導体基板を作製するエピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法において、
    前記下地基板の反り量を、前記下地基板の中心位置と前記下地基板の中心から距離Rの位置とにおける結晶成長面である表面の高さの差(ただし、前記表面の高さの差の正負を、前記下地基板の表面が凸形状の場合をマイナス、凹形状の場合をプラスとする)と定義したとき、前記下地基板は、R=25mmに換算した場合の前記反り量が−100μm以上−20μm以下の範囲にあることを特徴とするエピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法。
  2. 前記反りを有する前記下地基板の表面は、面内でオフ角が一様に揃っていることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法。
  3. 前記下地基板は、サファイア基板、窒化物半導体基板、シリコン基板またはガリウム砒素基板であることを特徴とする請求項1または2に記載のエピタキシャル成長用窒化物半導体基板の製造方法。
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