JP5048046B2 - 電子機器用銅合金 - Google Patents
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Description
また、電子機器の電子回路に多く用いられるプリント配線板には、圧延銅箔、電解銅箔が用いられる。特に可撓性銅張積層板(フレキシブル基板)には屈曲性に優れた圧延銅箔が適している。さらに強度や耐熱性が要求される場合は、銅合金箔が用いられる。これら圧延銅箔及び圧延銅合金箔においても、近年の電子部品の小型化による高強度、高導電性の要請はばね材用銅合金と同様である。
一般に、Cuに強化元素を添加して高強度化すると導電率が低下し、一方で導電率を上昇させるためCu純度を高めると低強度となる関係がある。そこで、Cu母相中に第二相を晶出させた合金系(複相合金)が開発された。この合金は、強加工することにより第二相がファイバ状に分散され、りん青銅と同等の強度を持ちつつ、母相はCuであるため、導電率が60%IACS(international annealed copper standard、焼鈍標準軟銅に対する電気伝導度の比)を超える高導電性材が得られている。この複相合金系としては、Cu-Cr、Cu-Fe、Cu-Nb、Cu-W、Cu-Ta、Cu-Agなどが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。複相合金は高強度、高導電性を示すだけではなく、半導体素子と同等程度の熱膨張係数を有することからヒートシンク、ヒートスプレッタなどの放熱用部品としても用いられている。
複相合金は複合則を利用した強化機構であり,通常、複合則では材料の強度(σ:応力)は、第一相及び第二相の体積分率(それぞれV1,V2)に依存するが(σ=V1σ1+V2σ2)、第二相の体積分率よりはむしろ分散した第二相間の距離の方が強度への寄与が大きい。つまり、第二相同士の間隔が加工によって狭まること、つまりCu母相と第二相の界面の面積を増大させること、すなわち、Cu母相厚みが薄くなることが最も高強度化につながる。
すなわち、複相合金を強化するためには,第二相の初期晶出物を微細とさせ、さらにその後の加工により第二相を変形させて互いに近接させることが重要であり、そのため第二相が変形し易いことが必要である。しかしながら、複相合金系に第三元素を添加すると、第三元素が第二相に多く分配され(第二相中の第三元素の濃度が高くなり)、第二相が変形し難くなる。その結果、加工により第二相が充分に引き伸ばされず母相中に粗大な介在物が存在するのと同様なこととなり、Cu母相と第二相の界面の面積が減少する。このような組織は、かえって強度低下を招くとともに、ばね材用に要求される曲げ加工性及び、圧延箔に要求される屈曲性等をも低下させる。
又、圧延材であって、圧延直角断面から見たとき、前記第二相の平均アスペクト比Atが10≦At≦80であること、さらに前記第二相を前記圧延直角断面から見たときの平均アスペクト比Atと、前記第二相を圧延平行断面から見たときの平均アスペクト比ALとが、1<AL/At<20の関係を満すことが好ましい。
本発明の第一の実施形態に係る電子機器用銅合金は、以下の添加元素とCuとの2相合金に加え、さらに第三元素(微量元素)を含むものである。
上記銅合金は、添加元素として、Fe,Nb,V,Ta及びCrの群から選ばれる1種又は2種以上の添加元素を合計で7%以上20%以下含有する。これらの元素は、合計で7%以上含有されるとCu母相中に第二相として晶出し、いわゆる「複相合金」を構成する。上記元素の合計含有量は、質量%で7〜20%とする。合計含有量が7%未満であると、第二相による複合強化の効果が少なく、20%を超えると、融点が上昇すると共に固液共存温度域が大きくなって鋳造が困難になる等により生産性が低下する。
なお、上記元素が1%未満含有されていても第二相は晶出する場合もあるが,その量が少ないため複合強化としては不充分であり、この場合は添加元素として取り扱う。
第二相は、Cu及び上記添加元素を含む合金溶湯から鋳造時に上記元素が晶出したものである。第二相はFe,Nb,V,Ta及びCrの群から選ばれる1種又は2種以上を含み、通常はこれらの元素を70%以上を含む。上記銅合金が2成分系(添加元素がAのみ)の場合、通常、第二相は主として元素Aを含有する。一方、上記銅合金が3成分系(添加元素がA、Bの2種)の場合、例えば、主としてA及びBを含有する第二相(AB相)が存在してもよく、A又はBのいずれかを含有する第二相(A相又はB相)が存在してもよい。すなわち、母相以外の相を第二相とすることとする。4成分系以上の場合も同様である。なお、例えばCu-Fe合金の場合、主としてFeを含有する相が第二相であり、Cu-8Cr-8Nb合金の場合、Cr及び/又はNbを主として含む相が第二相である。第二相は、母相であるCuマトリクス内に例えば針状に晶出するが、晶出形態はこれに限定されない。
第二相は、最終工程終了後の材料の断面を研磨した後、圧延組織の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)のBSE(反射電子)像により、Cu母相と異なる組成として観察することができる。組織が観察しにくい場合は、エッチング又は電解研磨を行ってもよい。
上記銅合金は、さらに第三元素(微量元素)として、Co,Ni,Mg,Sn,Ag,Zr,Cd,P,In,Ti及びSiの群から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.05%以上1%以下含有する。上記微量元素は、上記銅合金鋳造時の第二相の晶出物を微細化する。さらに、以下に述べるようにCu母相に分配されると上記銅合金の母相を固溶強化する。微量元素の含有量が0.05%未満であると、これらの効果が認められず、1%を超えると合金の導電率を著しく低下させる。
本発明においては、上記第二相における前記微量元素の含有割合の最大値を0.5%以下とする。複相合金系に添加された上記微量元素が第二相に多く分配され、第二相中の微量元素の濃度が高くなると、第二相が硬化し、変形し難くなるという問題がある。そこで、微量元素の含有割合の最大値を0.5%以下とすることにより,第二相の変形を容易にする一方、Cu母相に分配された上記微量元素により母相の強化を図ることができる。微量元素の含有割合は少ないほど良い。
第二相の微量元素の含有割合は、例えば得られた材料の表面又は断面をオージェ電子分光分析法(AES:Auger Electron Spectroscopy)により分析し、元素定量を行うことで求めることができる。第二相がある程度大きさを有する間(例えば、鋳造後の圧延初期等)に分析すれば、銅母相の影響を受けずに通常のオージェ分析が可能である。又、予め、各微量元素の純物質に対して検量線を作成しておき、定量を行えばよい。
例えば、Cu−Fe系合金に微量元素としてPを添加した場合、第二相を形成する元素Feと微量元素Pが形成する金属間化合物には、Fe3P、Fe2P、FeP、FeP2、FeP4があり、組成比は、Pの質量%でそれぞれ約15%、22%、36%、52%、69%である。これらに近い値を示す場合には、第二相を形成する元素と微量元素が形成する金属間化合物とみなし、測定から除外する。
又、第二相が二種以上の微量元素を含有している場合は、それら複数の微量元素の合計量を含有割合とする。
第二相における微量元素の含有量を調整する方法として、鋳造条件,均質化条件,熱間圧延,鍛造条件を制御することが挙げられる。特に、鋳造条件を制御することで微量元素の含有量を大きく変化させることができる。鋳造条件の制御とは、例えば鋳塊への冷却条件を調整し、冷却水量、凝固時の温度勾配、及び過冷度を制御したりして凝固速度を高くする(凝固を早くする)ようにする。又、電磁攪拌を併用することもある。具体的には、鋳塊の凝固速度は、鋳型の材質や厚みを変化させて冷却能を変化させたり、鋳型の寸法を変えたりすることで調整可能である。
上記銅合金中の不可避的不純物の含有量は、JIS H 3510に規格する無酸素銅と同一であるのが好ましい。例えば、JIS H 2123に規格する無酸素形銅C1011における、不純物の含有量と同等にすることができる。
本実施形態において、第二相のCu母相への分散形態はファイバ(繊維)状でもよいが、好ましくは、以下のように規定されるリボン状(舌片状)とするのがよい。第二相をリボン状に分散させると、特に圧延材(ばね用材料、箔)を製造する場合に有利となる。
一方、複相合金により圧延材を製造する際、第二相が圧延方向に充分延伸されて繊維状になると、圧延直角方向(圧延材の長手方向に圧延が進むとして、圧延材の幅方向をいう)の強度も向上する。しかしながら、コネクタを上記圧延材から採取する場合、コネクタの並ぶ方向を圧延材の長手方向とし、各ピンが圧延材の幅方向に延びるようにしてコネクタを打抜くのが通例であるが、上記圧延直角方向に曲げる場合には、この方向の曲げ加工性が低いと、コネクタへ曲げ加工する際、クラックが発生することがある。このような複相合金の圧延材の曲げ加工性については従来検討されていなかったが、本発明者らの調査により、従来は圧延直角方向の曲げ加工性が非常に悪いことが判明した。この対策として、第二相をリボン状に分散させることが、圧延直角方向の曲げ加工性の向上に有効であることがわかった。
図6は、本実施形態の圧延材組織を模式的に示したものである。この図において、圧延材組織は、Cu母相2のマトリクス中に第二相4が分散されている。従来の複相合金の場合、第二相は圧延直角方向には殆ど延伸されずファイバ状である。一方、本実施形態においては、第二相は圧延直角方向にも延伸され、例えばリボン状(舌片状)の形態を示す。なお、従来から公知の他の複相合金において、圧延直角方向にも第二相が延伸されてリボン状(舌片状)になったものが存在する場合があっても、本発明においては、好ましくは第二相の圧延直角方向の長さは従来の複相合金より長い。
次に、個々の第二相のt2、t1から算出されるAtを複数個(たとえば100個)の第二相について測定し、得られたAtの平均値を平均アスペクト比Atとする。平均アスペクト比ALも同様である。
なお、隣接する第二相の間隔(圧延方向の距離)をdとする。Cu−Fe合金、Cu−Cr合金、Cu−Ag合金の場合、dが小さくなるほど、強度が高くなる。dは、圧延加工度を高くすることで小さくすることができる。特に、dが1μm以下である場合、高い強度が得られる。例えば、本実施形態中で最も強度が高いCu-Ag系合金のdは600nmである。
本実施形態において、Atは10〜80とすると好ましい。Atが10未満であると、圧延直角方向に第二相があまり延伸されず、この方向の複合強化が不充分となって強度が向上しない場合がある。一方、Atが80を超えても、複合強化による強度がそれ以上向上しないにも関わらず、製造上の困難性が増大するため、Atは80以下が好ましい。
通常、圧延を行うと材料の結晶組織は圧延平行方向に延伸されるが、圧延直角方向にはあまり延伸されない。そこで、最終的に管理されるAtの値を考慮し、圧延直角方向に第二相の幅t2が伸びるよう、圧延前に晶出物(第二相)をある程度の大きさまで成長させるなどの方法がある。また、材料の厚みが厚い段階で、クロス圧延や鍛造等による幅出しをおこなうことで圧延直角方向に第二相を延伸させることができる。さらに、圧延時の圧延方向張力を低くすることにより、圧延平行方向への組織の延伸を弱めて圧延直角方向に第二相を延伸させることも有効である。
さらに好ましくは、平均アスペクト比AtとALとが1<AL/At<20の関係を満たすのがよい。AL/Atの比を上記範囲に規定することで、曲げ加工性としてMBR/t≦2.5(安全曲げ半径、日本伸銅協会技術標準JBMA T307、「銅および銅合金薄板条の曲げ加工性評価方法、電気部品用銅および銅合金板条の曲げ加工性の評価方法」)となり、強度としてYS(降伏強さ)が700MPa以上となる材料が得られ、強度と曲げ加工性をともに満足することができる。
ここで、AL/Atの比を規定した理由について説明する。まず、AL/Atが1以下であると、圧延平行方向に強化されずに逆に強度が低下する場合がある。そもそも圧延直角方向への第二相の延伸には限度があり、AL/Atの値が小さいことは、第二相の圧延平行方向への延伸が不充分でALが小さいことを意味し、一方向圧延で製造するのは難しい。
一方、AL/Atが20以上である場合、圧延直角方向への第二相の延伸が充分でなく、この方向での強度や曲げ加工性が劣化する。この場合に圧延直角方向の曲げ加工を行うと、銅母相と第二相の界面で亀裂が入りやすくなる。
伸び過ぎた第二相は、冷間圧延加工度の総和(総加工度)を高くする、延伸前の熱処理により調整する、延伸後に再圧延する、延伸後に熱処理を行う、等で分断することができ、これにより平均アスペクト比ALを小さくすることができる。従って、これらの因子を適宜組合せることにより、第二相の平均アスペクト比AL、ひいてはAL/Atを調整できる。
たとえば、まず、熱間圧延後、加工度η=1.39(75%)程度の冷間圧延を施し,その後600〜1000℃の温度域で1〜3時間以上の熱処理(最も好ましくは、800℃,1時間以上)を行うことで、一度圧延平行方向に伸びた晶出物を分断させる。分断した第二相はさらに熱処理を加えると大きく成長する。熱処理温度が高いほど、又、熱処理時間が長いほど、第二相はさらに大きくなり、その結果、Atを大きくすることができる。熱処理前の圧延張力は特に限定されない。
次に、熱処理後に冷間圧延を行うが、Atを大きくするには冷間圧延時の一パスあたりの加工度η=0.16〜0.36(15〜30%),好ましくはη=0.29(25%)以下程度と低くし,冷間圧延時にかける張力を80MPa〜300MPa、好ましくは80MPa〜200MPaに抑えるとよい。
電気銅又は無酸素銅を主原料とし、所定の化学成分その他を添加した組成の原料を溶解炉にて溶解し、インゴットを作製する。インゴットを例えば均質化焼鈍、熱間圧延(もしくは熱間鍛造)、冷間圧延、焼鈍、冷間圧延、焼鈍を順次行うことで、圧延材が得られる。冷間圧延は、例えば加工度η=3.5以上で行うことが好ましく、より好ましくはη=5以上とする。
本実施形態の電子機器用銅合金は、AgとCuとの2相合金に、さらに第三元素(微量元素)を含むものであるが、他の構成は第一の実施形態と変わるところがないので説明を省略する。
上記銅合金は、添加元素としてAgを7%以上15%以下含有する。Agが7%以上含有されるとCu母相中に第二相として晶出し、いわゆる「複相合金」を構成する。Agの含有量が7%未満であると、第二相による複合強化の効果が少なく、Agはマクロ粒界に晶出しやすい。又、Agを20%より多く添加すると粒界が脆く加工時にAgに沿って粒界が割れ、又、Agが高価であるため15%以下とする。なお、Agが1%未満含有されていても第二相は晶出するが,その量が少ないため複合強化としては不充分であり、複合強化として利用する場合に最低限必要な含有量が7%である。
なお、本実施形態の第二相の組成としては、凝固が非平衡状態であることから、Ag中へのCu固溶限を示すAg-8.8%Cuなどの複数の組成が挙げられる。又、本実施形態の合金は、他の複相合金と比較してAg−rich相にCuを多く含有することが圧延後の組織として違う点である。又、本実施形態の合金の圧延前組織(鋳造組織)については、銅母相が先に晶出するか、Ag以外の第二相が先に晶出するか(Cu-Ag合金の場合Cu相)により、その組織形態が大きく異なる特徴がある。なお、第二相は、通常、Agを50%以上含む。
上記銅合金は、さらに第三元素(微量元素)としてCr,Fe,Nb,Co,Ni,Mg,Sn,Zr,Cd,Ti,P,In及びSiの群から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.05%以上1%以下含有する。上記微量元素を添加する理由、及び含有量を上記規定範囲とした理由は、第一の実施形態の場合と同様である。
なお、Cu-Ag系合金は、第一の実施形態に係る2相合金と比較すると第二相が変形しやすい。第二相に第三元素が添加されると第二相が硬くなり、一方でCu母相の第三元素による強化が図れない。一方、Cu-Ag系合金の第二相(Ag相)は耐熱性に劣り、加熱によりAg相が容易に分断されてしまうため、Ag相に第三元素を少量含有させると、耐熱性を向上させることができる。このように、耐熱性を向上させる観点から、合金中の微量元素の含有量を0.05〜1%とする。
本発明の銅合金を箔とした場合、例えば、プリント配線板、特に可撓性銅張積層板に適用可能である。
実施例1は、本発明の実施形態に係る合金を、ばね材用条に加工し、板厚を0.1m〜0.3mmとした。実施例2は、実施例1と同一の各合金試料を箔に加工し、板厚を0.050mmとした。なお、表1(実験例1〜24、基準例1〜7、比較例1〜7)が実施例1に対応し、表2(実験例25〜48、基準例8〜14、比較例8〜14)が実施例2に対応する。
電気銅に表1、2に示す組成の元素をそれぞれ添加して真空溶解してインゴットを鋳造し、これを均質化焼鈍後、熱間圧延を施し、さらに面削して冷間圧延し、時効処理後、再度冷間圧延を行い、上記各実施例1,2に応じた所定の板厚とした。均質化焼鈍を800℃,3時間の条件で行った。又、冷間圧延(含時効後)の圧延条件として、総加工度99%,1パスあたりの加工度を30〜36%,張力を350MPa以上(ただし、冷間圧延の初期パスでは150MPa、板厚が薄くなった後期パスでは375MPa程度)とした。
実施例3は、本発明の実施形態に係るCu−Ag系合金を、ばね材用条に加工し、板厚を0.1m〜0.3mmとした。実施例4は、実施例3と同一の各合金試料を箔に加工し、板厚を0.050mmとした。なお、表3(実験例49〜63、基準例15〜18、比較例15〜19)が実施例3に対応し、表4(実験例64〜78、基準例19〜22、比較例20〜24)が実施例4に対応する。
表3,4における各元素記号の前の数字の意義は表1、2の場合と同様である。
比較例1〜14と同様な条件で、電気銅に表3、4に示す組成の元素をそれぞれ添加したものからインゴットを鋳造した後、試料を得た。
実施例1〜4の各試料について、以下の評価を行った。実施例1,3については、強度、導電性、曲げ加工性を評価項目とし、実施例2,4については、強度、導電性、屈曲性を評価項目とした。
(1)強度の評価
JIS-Z2241に従い、試料の引張強度を測定し、0.2%耐力(YS:yielding strength)を求めた。試料はJISに従って作製した。
(2)導電性の評価
四端子法にて、試料の導電率を求めた。単位の%IACS(international annealed copper standard)は、焼鈍標準軟銅に対する電気伝導度の比である。
日本伸銅協会技術標準(JBMA T307)に従ってW曲げ試験を行った。圧延直角方向に延びる10mm幅の試料(t:試料厚さ)について最小曲げ半径(MBR)を求めた。そして、以下の基準で各実験例及び比較例の試料を評価した。
○:MBR/tの値が基準例の値より小さいもの
△:MBR/tの値が基準例の値より大きいもの
×:MBR/tの値が基準例の値よりかなり大きいもの
基準例のMBR/tは2.5程度である。
MIT屈曲性試験により、屈曲性の評価を行った。試験条件は、曲げ半径2.0mm,曲げ荷重500g,折り曲げ角度が左右へ135°とし、試料は、板厚50μmのものを用いた。破断に至るまでの曲げ回数を数え、以下の評価をした。
○:曲げ回数が基準例より多いもの(通常、100回を超えるもの)
△:曲げ回数が基準例と同等のもの
×:曲げ回数が基準例より少ないもの
実施例2、4(箔)の各実験例の場合も、強度、導電性、屈曲性がいずれも基準例より優れ、性能上のバランスのよい銅合金を得ることができた。なお、強度の点からは、実験例64〜78のCu−Ag系合金が他の実験例より優れていた。
以上より、電子機器類の小型化や性能向上に大きく寄与することが期待される。
4 第二相
Claims (4)
- 質量%でAgを7%以上15%以下含有し、Cr,Fe,Nb,Co,Ni,Mg,Sn,Zr,Cd,Ti,P,In及びSiの群から選ばれる1種又は2種以上の微量元素を合計で0.05%以上1%以下含有し、残部Cu及び不可避的不純物からなる二相合金であって、Agを含む第二相における前記微量元素含有割合の合計の最大値が0.5%以下である、電子機器用銅合金。
- 前記第二相における前記微量元素含有割合の合計の最大値が0.05%以上0.3%以下である、請求項1に記載の電子機器用銅合金。
- 圧延材であって、圧延直角断面から見たとき、前記第二相の平均アスペクト比Atが10≦At≦80である、請求項1又は2に記載の電子機器用銅合金。
- 前記第二相を前記圧延直角断面から見たときの平均アスペクト比Atと、前記第二相を圧延平行断面から見たときの平均アスペクト比ALとが、1<AL/At<20の関係を満す、請求項3に記載の電子機器用銅合金。
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