JP5046022B2 - 自動変速機のレンジ切換装置 - Google Patents
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Description
この自動変速機のレンジ切換装置は、運転者によるシフト操作装置の操作状態に基づいてモータによりマニュアルシャフトを回転させ、マニュアルシャフトの回転角度をディテント機構により位置決めするとともに、ディテント機構のディテントプレートの回転位置の変化を角度センサにより検出し、シフト制御手段により自動変速機内のマニュアルバルブを制御してレンジの切り換えを行うシフト制御装置を備えている。
レンジ切換装置は、ディテント機構の長期使用による摩擦の増大、ディテントスプリングの付勢力低下、マニュアルシャフトの回転負荷増加などの原因によって、検出するディテントプレートの回転角度と実際の回転角度とのずれが大きくなると、モータによりマニュアルシャフトを目標のレンジになるように制御しても、実際は隣接するレンジに切り換えてしまう可能性がある。このため、レンジ切換装置は、検出するディテントプレートの回転角度の補正が必要となる。
このレンジ切換装置は、シフト制御装置に、角度センサの出力電圧値に基づきディテントプレートの回転位置が各々のレンジ位置にあることを判断してモータを制御する手段と、角度センサが出力する各々のレンジ位置に応じた出力電圧値を記憶するメモリと、このメモリに記憶する出力電圧値を学習する手段と、メモリに記憶された学習電圧値をレンジ位置に対応する新たな出力電圧値として補正する手段と、を備えている。シフト制御装置は、マニュアルシャフトのモータ制御に必要となるディテントプレートの回転方向のレンジ位置を基準位置に保つように、ディテント機構のディテントプレートの回転位置を角度センサにより検出し、この角度センサの出力電圧値を学習してディテントプレートの回転方向の基準位置を補正している。
特許文献2に開示されるシフト切換装置は、前述特許文献1と同様に、ディテントプレートを回転させないと補正値が決定しないため、システム起動時の補正が正しく行われない場合があり、また、レンジ毎の補正を行う場合、補正プログラムが複雑化してしまう問題がある。
特許文献3に開示されるシフト切換装置は、バルブ位置センサの出力電圧値を学習電圧値としてメモリに記憶させているため、メモリへの書き込み・読み出し時に不具合があると、電圧値データが変更してレンジ位置を誤判定する可能性がある。
特許文献4に開示されるシフト切換装置は、レンジ毎の補正を行う必要があるため、補正プログラムが複雑化してしまう問題がある。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。
図1において、1は車両に搭載された自動変速機、2はシフトバイワイヤ式のレンジ切換装置である。自動変速機1は、レンジとして、例えば、パーキングレンジP、リバースレンジR、ニュートラルレンジN、ドライブレンジDを有している。自動変速機1のレンジ切換装置2は、運転者により操作されるシフト操作装置3と、このシフト操作装置3の操作状態に基づいて自動変速機1のレンジを切り換えるシフト制御装置4とを備えている。シフト操作装置3とシフト制御装置4とは、通信回線5で接続されている。
前記シフト操作装置3は、シフトセレクタ6にシフトレバー7を揺動可能に支持している。シフトセレクタ6には、シフトレバー7が操作されるレンジ位置として、自動変速機1の各レンジP、R、N、Dに対応した、パーキングレンジ位置P、リバースレンジ位置R、ニュートラルレンジ位置N、ドライブレンジ位置Dを備えている。シフト操作装置3は、シフトレバー7を各レンジ位置P、R、N、Dに操作したことを検出する、パーキングレンジセレクトスイッチ8、リバースレンジセレクトスイッチ9、ニュートラルレンジセレクトスイッチ10、ドライブレンジセレクトスイッチ11を備えている。
シフト操作装置3は、シフトレバー7を各レンジ位置P、R、N、Dに操作すると、各レンジセレクトスイッチ8〜11によりシフトレバー7が操作された各レンジ位置P、R、N、Dに対応するレンジ位置信号を出力する。各レンジセレクトスイッチ8〜11のレンジ位置信号は、入力シフト操作判定手段12に入力する。入力シフト操作判定手段12は、レンジ位置信号によりシフトレバー7が操作されたレンジ位置を判定し、判定されたレンジ位置に応じたレンジ変更の指示信号を通信出力手段13により通信回線5を介して前記シフト制御装置4に出力する。
この自動変速機1のレンジ切換装置2は、ディテント機構16の回転位置の変化を検出する角度センサ19の検出値によってモータ14の回転を制御し、基本的に、シフト操作装置3のレンジセレクトスイッチ8〜11が出力する信号に基づいて自動変速機1内のマニュアルハルブ21を制御して、レンジの切り換えを行う。
ディテント機構16は、ディテントスプリング24によってディテントピン18をディテントプレート17の係合凹部23P、23R、23N、23Dに向かって押圧付勢し、図3に線分P、R、N、Dで示す各係合凹部23P、23R、23N、23Dの中心で最深部となる谷底中心に、ディテントピン18を係合してディテントプレート17の回転を停止させる。これにより、ディテント機構16は、マニュアルシャフト15の回転角度を、パーキングレンジ位置P、リバースレンジ位置R、ニュートラルレンジ位置N、ドライブレンジ位置Dのいずれかに位置決めする。
このディテント機構16は、ディテントプレート17の谷形状の係合凹部23P、23R、23N、23Dと、ディテントスプリング24の付勢力によって係合凹部23P、23R、23N、23Dに向かって押圧付勢されるディテントピン18とによる機械的な構造に基づいて、図3に線分P、R、N、Dで示す各係合凹部23P、23R、23N、23Dの谷底中心が各レンジP、R、N、Dの中心に合致するようにディテントプレート17を回転させる、調芯機能を有している。
なお、図3に線分P、R、N、Dで示す谷底中心とは、ディテントプレート17の回動方向における各係合凹部23P、23R、23N、23Dの所定の回動停止位置であり、ディテントスプリング24の付勢力が小さくなり係合凹部23P、23R、23N、23Dに対してディテントピン18のすわりが最も安定する位置である。
前記インヒビタスイッチ20は、マニュアルシャフト15の回転に同期して回転し、現在の自動変速機1のレンジが、パーキングレンジP、リバースレンジR、ニュートラルレンジN、ドライブレンジDのいずれであるかを検出し、レンジを示す信号を出力する。
前記シフト制御手段22は、図2に示すように、角度センサ19の出力電圧値に基づきディテントプレート17の回転位置が各々のレンジ位置P、R、N、Dにあることを判断してモータ14を制御する手段25と、角度センサ19が出力する各々のレンジ位置P、N、R、Dに応じた出力電圧値を記憶するメモリ26と、このメモリ26に記憶する出力電圧値を学習する手段27と、メモリ26に記憶された学習電圧値を、レンジ位置P、R、N、Dに対応する新たな出力電圧値として補正する手段28と、を備えている。
シフト制御手段22は、角度センサ19から入力する角度信号とインヒビタスイッチ20から入力するレンジ信号とにより、自動変速機1のレンジが変更を要求されたレンジに切り換わるように、モータ14の駆動を制御してマニュアルシャフト15を回転させ、自動変速機1内部のマニュアルバルブ21を制御して油圧回路を切り換え、自動変速機1のレンジの切り換えを行う。また、シフト制御手段22は、自動変速機1の切り換えられたレンジにおいて、変速歯車列を車速、エンジン負荷等に応じた噛み合い状態に切り換える。
前記第一の調芯制御手段30による第一の調芯制御では、ディテントプレート17の係合凹部23P、23R、23N、23Dとディテントピン18との係合関係を変化させる第一のモータ駆動制御をモータ制御手段25によって行った後、ディテントプレート17とディテントピン18との係合関係に基づきディテント機構16が自ら有する調芯機能を働かせるように制御する(例えば、図4の(A)〜(C))。
ディテント機構16の調芯機能は、例えば、図4(C)に示すように、パーキングレンジPの係合凹部23Pの左側の傾斜面にあるディテントピン18が、ディテントスプリング24の付勢力によって谷底中心に向かって移動され、あるいは、図4(E)に示すように、パーキングレンジPの係合凹部23Pの右側の傾斜面にあるディテントピン18が、ディテントスプリング24の付勢力により谷底中心に向かって移動され、この結果、ディテントピン18に対してディテントプレート17の係合凹部23P、23R、23N、23Dの谷底中心を合わせるようにディテントプレート17を回転させる機能である。
前記第一の調芯制御を行う際の第一のモータ駆動制御は、ディテントプレート17の個々の係合凹部23P、23R、23N、23Dの谷底中心に関して、モータ14の第一の回転方向が予め決められている。第1の回転方向は、ディテントプレート17が隣の係合凹部23に回転しない(例えば、係合凹部23Pから見て係合凹部23Rがある側に回転しない)ように設定し、又は回転しても対応が容易な係合凹部23にディテントプレート17が回転する(例えば、係合凹部23Nから見て係合凹部23Dに回転する)ように設定する。
例えば、図3において、ディテントピン18がディテントプレート17の係合凹部23Pに係合している場合は、ディテントプレート17が係合凹部23Dの形成された右側(D側)に向かって回転され、相対的にディテントピン18がディテントプレート17の係合凹部23P内で係合凹部23Rから離れるように左側(図3の矢印1で示す方向)の傾斜面に移動する方向を、モータ14の第一の回転方向として設定する。また、図3において、ディテントピン18がディテントプレート17の係合凹部23Nに係合している場合は、ディテントプレート17が係合凹部23Pの形成された左側(P側)に向かって回転され、相対的にディテントピン18がディテントプレート17の係合凹部23N内で係合凹部23Dに近付くように右側(図3の矢印1で示す方向)の傾斜面に移動する方向を、モータ14の第一の回転方向として設定する。
第一の調芯制御手段30は、第一のモータ駆動制御を行う際に、ディテントピン18がディテントプレート17の個々の係合凹部23P、23R、23N、23Dのいずれに存在していることに応じてモータ14の回転方向を決定して、所定のモータ駆動を実行し、その後、角度センサ19が検出するディテントプレート17の回転位置の出力電圧値を学習手段27により谷底中心として学習する。
前記第二の調芯制御手段31による第二のモータ駆動制御では、モータ14を第二の回転方向に回転駆動した後、ディテント機構16のディテントプレート17とディテントピン18との係合関係に基づき自ら有する調芯機能を働かせる第二の調芯制御を実行し、その後、角度センサ19が検出するディテントプレート19の回転位置の出力電圧値を学習手段27により谷底中心として学習する。(例えば、図4の(D)、(E))
前記シフト制御装置4は、第一の調芯制御を終えた後に角度センサ19により得られたディテントプレート17の回転位置の出力電圧値と、第二の調芯制御を終えた後に角度センサ19により得られたディテントプレート17の回転位置の出力電圧値との二つの値を平均化し、それら二つの出力電圧値の中間値を学習手段27により谷底中心として学習する。
前記シフト制御装置4は、第一の調芯制御を行う際の第一のモータ駆動制御と、第二の調芯制御を行う際の第二のモータ駆動制御とのいずれに対しても、モータ14を駆動する回転角度による制限(図5参照)、または、モータ14を駆動する時間による制限を設けている。シフト制御装置4は、第一のモータ駆動制御を行う際、または、第二のモータ駆動制御を行う際に、回転角度による制限、または、時間による制限を超えると、モータ14の駆動を停止する。
モータ14の回転角度による制限は、図5に示すように、レンジ位置P、R、N、Dに対応する係合凹部23P、23R、23N、23Dの規定位置での谷底中心の回転角度をθP、θR、θN、θDとし、例えば、係合凹部Nにおける補正前の谷底中心の位置をθ0とすると、θ0から見て左隣の係合凹部23Rに回転しない角度θN1、θ0から見て右隣の係合凹部23Dに回転しない角度θN2を、それぞれモータ14の回転停止角度として設定する。また、モータ14の時間による制限は、例えば、係合凹部23Nにおける補正前の谷底中心の位置をθ0から見て左隣の係合凹部23Rに向かって角度θN1だけ回転するのに要する時間T1、θ0から見て右隣の係合凹部23Dに向かって角度θN2だけ回転するのに要する時間T2を、それぞれモータ14の駆動停止時間として設定する。
前記シフト制御装置4は、第一の調芯制御によるディテントプレート17の回転位置の学習補正、または、第一の調芯制御ないし第二の調芯制御によるディテントプレート17の回転位置の学習補正を、車両の起動時を含む所定の状態で一回のみ実行する。
前記シフト制御装置4は、学習によって補正されたレンジ範囲に基づいて車両の起動終了時に判定された自動変速機1のレンジを記憶する手段を設ける一方、ディテント機構16を取り付けたマニュアルシャフト15に自動変速機1のレンジを検出するインヒビタスイッチ20を併設している。この実施例では、車両の起動終了時に判定されたレンジを記憶する手段として、前記メモリ26を用いている。シフト制御装置4は、車両の起動時を含む所定の状態の下で、レンジを記憶する手段であるメモリ26に記憶されたレンジとインヒビタスイッチ20の検出するレンジとが一致しない場合、インヒビタスイッチ20の検出するレンジを有効とする。
自動変速機1のレンジ切換装置2は、車両の起動時に、第一の調芯制御によりディテントプレート17の回転位置を学習し、第一の調芯制御を終えた後、第二の調芯制御によりディテントプレート17の回転位置を学習する。
まず、自動変速機1のレンジ切換装置2は、第一の調芯制御を実行する。レンジ切換装置2は、図7に示すように、システムを起動(車両を起動)して第一の調芯制御をスタートすると(A01)、メモリ26より前回システム停止(車両の起動終了)時の自動変速機1のレンジを読み出し(A02)、インヒビタスイッチ20により現在の自動変速機1のレンジを検出する(A03)。
前記メモリ26に記憶されたレンジと前記インヒビタスイッチ20の検出するレンジとの一致により現在のレンジを確認してから、モータ14を駆動して現在のレンジにおける停止位置からディテントプレート17を第一の回転方向に回転させる(A04)。なお、メモリ26に記憶されたレンジとインヒビタスイッチ20の検出するレンジとが一致しない場合は、インヒビタスイッチ20の検出するレンジを有効とし、現在のレンジとする。
前記ディテントプレート17の第一の回転方向(A04)は、図4(A)に示すように、現在のレンジがパーキングレンジPである場合、右側(D側)である。ディテントピン18は、ディテントプレート17の右側への回転によって、図4(B)に示すように、相対的に図3の矢印1に示す方向に移動する。
ディテントプレート17の第一の回転方向への回転において(A04)、モータ14の回転角度が制限される回転停止角度を超えたか又はモータ14の駆動時間が制限される駆動停止時間を超えたかを判断する(A05)。
この判断(A05)がNOの場合は、ディテントプレート17の回転(A04)に戻る。この判断(A05)がYESの場合は、モータ14の駆動を停止してディテントプレート17の回転を止め(A06)、ディテント機構16が有する調芯機能を働かせる。
ディテント機構16の調芯機能は、モータ14の駆動を停止すると、図4(C)に示すように、ディテントスプリング24の付勢力により、ディテントピン18をパーキングレンジPの係合凹部23Pの傾斜面を谷底中心に向かって移動させる。ディテントプレート17は、このディテントピン18の谷底中心への移動によって左側(P側)に回転され、谷底中心の回転角度θPをパーキングレンジPの基準位置に向かって移動される。
前記モータ14の駆動を停止(A06)した後に、ディテントスプリング24の付勢力によるディテントプレート17の回転が停止したかを判断する(A07)。この判断(A07)がNOの場合は、モータ14の駆動の停止(A06)に戻る。この判断(A07)がYESの場合は、第一の調芯制御を終えた後に角度センサ19が検出するディテントプレート17の角度位置の出力電圧値を谷底中心として学習し(A08)、システム停止(車両の起動終了)時は、自動変速機1のレンジ及びディテントプレート17の角度位置をメモリ26に記録させる(A09)。
ディテントプレート17の谷底中心を合わせる第一の調芯制御は、モータ14を駆動してディテント機構16のディテントプレート17とディテントピン18との係合関係を変化させる第一のモータ駆動制御を行った後、ディテント機構16のディテントプレート17とディテントピン18との係合関係に基づき自ら有する調芯機能を働かせる2段ステップを1サイクルとする制御である。なお、ディテント機構16が自ら有する調芯機能は、各部の経年劣化のばらつきなどにより、谷底中心付近は機能低下することも考えられ、ここではそれを踏まえてもある程度ディテントスプリング24の付勢力を得られる程度に回動させる。
これにより、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、ディテント機構16の機械的な構造に基づく調芯機能を利用して、ディテントプレート17を隣のレンジに回転させることなく、ディテントプレート17の各々のレンジ位置P、R、N、Dに対応する係合凹部23P、23R、23N、23Dの谷底中心を、レンジの基準位置に合わせることができる。このため、このレンジ切換装置2は、人為的なレンジ切換操作を行っていない状態でも、ディテントプレート17の回転方向におけるレンジの基準位置を学習することができ、レンジの基準位置の学習補正により、ディテントプレート17の基準位置に対する回転位置のずれに因る誤動作を防止できる。
第一の調芯制御を行う際の第一のモータ駆動制御は、ディテントプレート17の係合凹部23P、23R、23N、23Dの個々の谷底中心に関してモータ14の第一の回転方向が予め決められている。第一の調芯制御は、第一のモータ駆動制御を行う際に、個々の谷底中心のいずれに存在しているのか、その肯定結果に応じてモータ14の回転方向を決定して、所定のモータ駆動を実行し、第一のモータ駆動制御を終えた後、ディテントプレート17の回転位置を谷底中心として学習する。
これにより、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、第一のモータ駆動制御において、フェールセーフ、例えば、過剰に動くような不測の動作不良を起こしても、比較的、対応操作し易いような安全の高いレンジを選択するようにできる。
また、このシフト操作装置2は、長期使用やモータ4やギア機構の構成によりディテント機構16のディテントプレート17とディテントピン18との間の摩擦が大きくなり(図6(A)参照)、また、ディテントスプリング24の付勢力が低下し、マニュアルシャフト15の回転負荷が増加するなどの原因によって、ディテントプレート17の係合凹部23P、23R、23N、23Dの谷底中心にディテントピン18が達しない場合にも、能動的にモータ14を駆動させてディテントプレート17を回転させることで摩擦抵抗を減少させて(図6(B)参照)、係合凹部23P、23R、23N、23Dの谷底中心にディテントピン18を移動し易くし、ディテントプレート17の角度位置を補正することができる。
これにより、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、モータ14の駆動に制限を設けてモータ停止の確実性を高めることで、モータ駆動制御において、フェールセーフ、例えば、過剰に動くような不測の動作不良そのものを起こし難くすることができる。なお、この実施例では、モータ14の回転角度による制限と、モータ14の駆動する時間による制限との両者を組み合わせているが、一方だけでも良い。
第一の調芯制御によるディテントプレート17の学習補正は、車両の起動(イグニッションスイッチのON、電源スイッチのON等)時を含む所定の状態に一回のみ実行している。所定の状態には、異常処理後の復帰時を含めても良い。
これにより、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、起動時のレンジ位置でのみ実施することで、自動変速機1の変速システムが稼働中での学習補正を不要にでき、更新回数を低減でき、補正用のプログラムを単純化できる。
車両の起動時を含む所定の状態の下で、車両起動終了時(電源スイッチのOFF(イグニッションスイッチのON以外、電源スイッチのON以外)等)にメモリ26に記憶されたレンジと、インヒビタスイッチ20の検出する現在のレンジとが一致しない場合、インヒビタスイッチ20のレンジを有効としている。インヒビタスイッチ20の検出信号を優先させるのは、停車中に自動変速機1を修理してレンジが強制的に変更されている場合を考慮しているからである。
これにより、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、インヒビタスイッチ20のレンジを有効とすることで、学習補正は、インヒビタスイッチ20のレンジに対して行われることになる。このため、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、車両の走行前に、学習補正を働かせることができ、補正の空白期問をなくすことができ、車両起動時に選択されたレンジ位置に関係なく、ディテントプレート17の回転位置を学習補正できる。また、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、起動時の現在のレンジ位置の誤判定も抑制できる。
レンジ切換装置2は、図8に示すように、システムを起動(車両を起動)して第一の調芯制御をスタートすると(B01)、メモリ26より前回システム停止(車両の起動終了)時の自動変速機1のレンジを読み出し(B02)、インヒビタスイッチ20により現在の自動変速機1のレンジを検出する(B03)。
前記メモリ26に記憶されたレンジと前記インヒビタスイッチ20の検出するレンジとの一致により現在のレンジを確認してから、モータ14を駆動して現在のレンジにおける停止位置からディテントプレート17を第一の回転方向に回転させる(B04)。なお、メモリ26に記憶されたレンジとインヒビタスイッチ20の検出するレンジとが一致しない場合は、インヒビタスイッチ20の検出するレンジを有効とし、現在のレンジとする。
前記ディテントプレート17の第一の回転方向(B04)は、図4(A)に示すように、現在のレンジがパーキングレンジPである場合、右側(D側)である。ディテントピン18は、ディテントプレート17の右側への回転によって、図4(B)に示すように、相対的に図3の矢印1に示す方向に移動する。
ディテントプレート17の第一の回転方向への回転において(B04)、モータ14の回転角度が制限される回転停止角度を超えたか又はモータ14の駆動時間が制限される駆動停止時間を超えたかを判断する(B05)。
この判断(B05)がNOの場合は、ディテントプレート17の回転(B04)に戻る。この判断(B05)がYESの場合は、モータ14の駆動を停止してディテントプレート17の回転を止め(B06)、ディテント機構16が有する調芯機能を働かせる。
ディテント機構16の調芯機能は、モータ14の駆動を停止すると、図4(C)に示すように、ディテントスプリング24の付勢力により、ディテントピン18をパーキングレンジPの係合凹部23Pの傾斜面を谷底中心に向かって移動させる。ディテントプレート17は、このディテントピン18の谷底中心への移動によって左側(P側)に回転され、谷底中心の回転角度θPをパーキングレンジPの基準位置に向かって移動される。
前記モータ14の駆動を停止(B06)した後に、ディテントスプリング24の付勢力によるディテントプレート17の回転が停止したかを判断する(B07)。この判断(B07)がNOの場合は、モータ14の駆動の停止(B06)に戻る。この判断(B07)がYESの場合は、第一の調芯制御を終えた後に角度センサ19が検出するディテントプレート17の角度位置の出力電圧値をメモリ26に記録し(B08)、モータ14を第一の回転方向とは反対方向に回転させる第二の調芯制御の処理が終了したかを判断する(B09)。
ディテントプレート17の第二の回転方向への回転(B10)は、図4(C)に示すように、現在のレンジがパーキングレンジPである場合、左側(P側)である。ディテントピン18は、ディテントプレート17の左側への回転によって、図4(D)に示すように、相対的に図3の矢印2に示す方向に移動する。
前記ディテントプレート17の第二の回転方向への回転において(B10)、モータ14の回転角度が制限される回転停止角度を超えたか又はモータ14の駆動時間が制限される駆動停止時間を超えたかを判断する(B05)。
この判断(B05)がNOの場合は、ディテントプレート17の回転(B10)に戻る。この判断(B05)がYESの場合は、モータ14の駆動を停止してディテントプレート17の回転を止め(B06)、ディテント機構16が有する調芯機能を働かせる。
ディテント機構16の調芯機能は、モータ14の駆動を停止すると、図4(E)に示すように、ディテントスプリング24の付勢力により、ディテントピン18をパーキングレンジPの係合凹部23Pの傾斜面を谷底中心に向かって移動させる。ディテントプレート17は、このディテントピン18の谷底中心への移動によって右側(D側)に回転され、谷底中心の回転角度θPをパーキングレンジPの基準位置に向かって移動される。
前記モータ14の駆動を停止(B06)した後に、ディテントスプリング24の付勢力によるディテントプレート17の回転が停止したかを判断する(B07)。この判断(B07)がNOの場合は、モータ14の駆動の停止(B06)に戻る。この判断(B07)がYESの場合は、第二の調芯制御を終えた後に角度センサ19が検出するディテントプレート17の角度位置の出力電圧値をメモリ26に記録し(B08)、モータ14を第一の回転方向とは反対方向に回転させる処理が終了したかを判断する(B09)。
この判断(B09)がNOの場合は、前述第二の調芯制御(B10)、(B05)〜(B08)を行う。この判断(B09)がYESの場合は、メモリに記憶された第一の調芯制御で得られた出力電圧値と第二の調芯制御で得られた出力電圧値との二つの値を平均化して補正値とし(B11)、これら二つの値の中間値を谷底中心として学習し(B12)、システム停止(車両の起動終了)時は、自動変速機1のレンジ及びディテントプレート17の角度位置をメモリ26に記録させる(A13)。
これにより、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、前述図7に示す第一の調芯制御による効果に加えて、二つの第一・第二の調芯制御においてリスクの高い側の第二の調芯制御を後段とすることで、万一の動作不良に対してもリスクを大幅に下げることができる。この自動変速機1のレンジ切換装置2は、ディテントプレート17の係合凹部23P、23R、23N、23Dの谷底中心両側にある異なる傾斜面に対して得られる調芯作用に基づき谷底中心を得るので、大幅な更新を避けて、誤学習の影響を抑制できる。
自動変速機1のレンジ切換装置2は、第一の調芯制御を終えた後に得られたディテントプレート17の回転位置の出力電圧値と、第二の調芯制御を終えた後に得られたディテントプレート17の回転位置の出力電圧値とがずれ、二つの値が得られる場合も、二つの値を平均化し、それら二つの値の中問値を谷底中心として学習している。二つの値が同じ値の場合は、平均化してもずれることはない。自動変速機1のレンジ切換装置2は、一つの係合凹部23を構成する谷に対して両側の2つの傾斜面それぞれに対して調芯を行うことになる。
これにより、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、ディテントプレート17の回転位置について得られた二つの出力電圧値の中間値を谷底中心として採ることで、一方の出力電圧値に判定誤差を含んでいても、その誤差を半減できる。この自動変速機1のレンジ切換装置2は、ディテント機構16の経年劣化やその他の要因でディテントプレート17の回転位置について得られた出力電圧値に誤差を生じても、その誤差を半減できる。
これにより、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、モータ14の駆動に制限を設けてモータ停止の確実性を高めることで、モータ駆動制御において、フェールセーフ、例えば、過剰に動くような不測の動作不良そのものを起こし難くすることができる。なお、この実施例では、モータ14の回転角度による制限と、モータ14の駆動する時間による制限との両者を組み合わせているが、一方だけでも良い。
第一の調芯制御によるディテントプレート17の学習補正、または、第一の調芯制御ないし第二の調芯制御によるディテントプレート17の学習補正は、車両の起動(イグニッションスイッチのON、電源スイッチのON等)時を含む所定の状態に一回のみ実行している。所定の状態には、異常処理後の復帰時を含めても良い。
これにより、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、自動変速機1の変速システムが稼働中での学習補正を不要にでき、更新回数を低減でき、補正用のプログラムを単純化できる。
車両の起動時を含む所定の状態の下で、車両起動終了時(電源スイッチのOFF(イグニッションスイッチのON以外、電源スイッチのON以外)等)にメモリ26に記憶されたレンジとインヒビタスイッチ20の検出する現在のレンジとが一致しない場合、インヒビタスイッチ20のレンジを有効としている。
これにより、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、インヒビタスイッチ20のレンジを有効とすることで、学習補正は、インヒビタスイッチ20のレンジに対して行われることになる。このため、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、車両の走行前に、学習補正を働かせることができ、補正の空白期問をなくすことができ、車両起動時に選択されたレンジ位置に関係なく、ディテントプレート17の回転位置を学習補正できる。また、この自動変速機1のレンジ切換装置2は、起動時の現在のレンジ位置の誤判定も抑制できる。
さらに、実施例においては、システム起動時のレンジとしてパーキングレンジPにより説明したが、パーキングレンジP以外であっても実施可能であり、システム起動時のレンジに関係無く実施可能である。また、実施例においては、起動時に学習補正を行うとしたが、その他(異常発生から復帰する場合等)においても実施可能である。実施例においては、メモリ26とインヒビタスイッチ20とによりレンジを判定するが、どちらか一方でも同様である。実施例においては、モータ14の停止条件を回転角度又は駆動時間としたが、その他、モータ電流,回転速度等でも可能である。実施例においては、一つのレンジに対して学習補正を実施するが、2つ以上のレンジで実施して、これらのデータを総合して補正することも可能である。
2 レンジ切換装置
3 シフト操作装置
4 シフト制御装置
5 通信回線
14 モータ
15 マニュアルシャフト
16 ディテント機構
17 ディテントプレート
18 ディテントピン
19 角度センサ
20 インヒビタスイッチ
21 マニュアルバルブ
22 シフト制御手段
24 ディテントスプリング
25 モータ制御手段
26 メモリ
27 学習手段
28 補正手段
29 車両情報装置
30 第一の調芯制御手段
31 第二の調芯制御手段
Claims (1)
- 運転者により操作されるシフト操作装置を備え、このシフト操作装置の操作状態に基づいて駆動されるモータと、このモータに作動連結したマニュアルシャフトと、このマニュアルシャフトに取り付けられて前記マニュアルシャフトの回転角度を位置決めするディテント機構と、このディテント機構のディテントプレートのディテントピンに対する回転位置の変化を検出する角度センサと、前記シフト操作装置の操作状態に基づいて自動変速機内のマニュアルバルブを制御して、レンジの切り換えを行うシフト制御手段と、を有するシフト制御装置を備え、このシフト制御装置は、前記角度センサの出力電圧値に基づき前記ディテントプレートの回転位置が各々のレンジ位置にあることを判断して前記モータを制御する手段と、前記角度センサが出力する各々のレンジ位置に応じた出力電圧値を記憶するメモリと、このメモリに記憶する出力電圧値を学習する手段と、前記メモリに記憶された学習電圧値を、レンジ位置に対応する新たな出力電圧値として補正する手段と、を備える自動変速機のレンジ切換装置において、前記シフト制御装置は、前記ディテント機構のディテントピンに対してディテントプレートに形成した各々のレンジ位置に対応する係合凹部の谷底中心を合わせるための第一の調芯制御を行って、前記角度センサが検出する前記ディテントプレートの回転位置の出力電圧値を谷底中心として学習し、前記第一の調芯制御では、前記ディテントプレートの個々の係合凹部の谷底中心に関して前記モータの第一の回転方向が予め決められており、前記ディテントピンがディテントプレートの個々の係合凹部のいずれに存在していることに応じて前記モータの回転方向を決定して、所定のモータ駆動を実行し、前記ディテントプレートの係合凹部とディテントピンとの係合関係を変化させる第一のモータ駆動制御を行った後、前記ディテントプレートとディテントピンとの係合関係に基づき前記ディテント機構が自ら有する調芯機能を働かせるように制御し、前記学習によって補正されたレンジ範囲に基づいて車両の起動終了時に判定されたレンジを記憶する手段を設ける一方、前記ディテント機構を取り付けたマニュアルシャフトにインヒビタスイッチを併設し、車両の起動時を含む所定の状態の下で前記レンジを記憶する手段に記憶されたレンジと前記インヒビタスイッチの検出するレンジとが一致しない場合、インヒビタスイッチの検出するレンジを有効とすることを特徴とする自動変速機のレンジ切換装置。
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