JP4937442B2 - 5−フルオロオキシインドールの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステルから5-フルオロオキシインドールを製造する方法に関する。5-フルオロオキシインドールは、抗癌剤や消炎鎮痛剤等の医薬品の合成中間体として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
従来、2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステルから5-フルオロオキシインドールを製造する方法としては、Synthesis,1993,51に、水とジメチルスルホキシドの混合溶媒中で、2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジメチルに塩化リチウムを作用させて、一旦5-フルオロ-2-ニトロフェニル酢酸メチルを生成させた後、次いで、鉄の存在下、酢酸中で脱炭酸させて5-フルオロオキシインドールを製造する方法が記載されている。しかしながら、この方法では、反応系が複雑な上に、目的物の合計収率が49%と低いという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、簡便な方法にて、入手が容易な2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステルから5-フルオロオキシインドールを高収率で得る、工業的に好適な5-フルオロオキシインドールの製造法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、
(A)一般式(1)
【0005】
【化5】
【0006】
(式中、R1及びR2は、同一又は異なっていても良く、反応に関与しない基を示す。)
で示される2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステルを還元条件下で環化させて、一般式(2)
【0007】
【化6】
【0008】
(式中、R1は、前記と同義である。)
で示される5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステルを生成させる第一工程、
(B)次いで、5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステルを脱炭酸させる第二工程、
を含んでなることを特徴とする、式(3)
【0009】
【化7】
【0010】
で示される5-フルオロオキシインドールの製造法によって解決される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、
(A)一般式(1)で示される2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステルを還元条件下で環化させて、一般式(2)で示される5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステルを生成させる第一工程、
(B)次いで、5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステルを脱炭酸させる第二工程、
を含んでなる二つの工程によって5-フルオロオキシインドールを反応生成物として得るものである。
【0012】
引き続き、前記の二つの工程を順次説明する。
(A)第一工程
本発明の第一工程は、一般式(1)で示される2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステルを還元条件下で環化させて、一般式(2)で示される5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステルを得る工程である。
【0013】
本発明の第一工程において使用する2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステルは、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、R1及びR2は、同一又は異なっていて良く、反応に関与しない基であり、具体的には、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示す。
【0014】
前記アルキル基としては、特に炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。これらの基は、各種異性体も含む。
【0015】
前記シクロアルキル基としては、特に炭素数3〜7のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。これらの基は、各種異性体も含む。
【0016】
前記アラルキル基としては、特に炭素数7〜10のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基が挙げられる。これらの基は、各種異性体も含む。
【0017】
前記アリール基としては、特に炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。これらの基は、各種異性体も含む。
【0018】
本発明の第一工程は、一般的に行われる還元方法であれば特に限定されないが、触媒の存在下、水素雰囲気で行うのが好ましい。
【0019】
前記触媒としては、パラジウム、白金、ニッケルからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属原子を含むものであり、具体的には、例えば、パラジウム/炭素、パラジウム/硫酸バリウム、水酸化パラジウム/炭素、白金/炭素、パラジウム-白金/炭素、酸化白金、ラネ−ニッケル等が挙げられるが、好ましくはパラジウム/炭素が使用される。
【0020】
前記触媒の使用量は、2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステルに対して、金属原子換算で、好ましくは0.01〜1.0重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%である。なお、これらの触媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0021】
本発明の第一工程は、溶媒の存在中で反応させるのが好ましく、使用する溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族短か水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられるが、好ましくは水、アルコール類、エステル類、更に好ましくは水、メタノール、エタノール、酢酸エチルが使用される。
【0022】
前記溶媒の使用量は、溶液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステルに対して、好ましくは3〜50重量倍、更に好ましくは5〜30重量倍である。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0023】
本発明の第一工程は、例えば、水素雰囲気にて、2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステル、触媒及び溶媒を混合して、攪拌する等の方法によって行われる。その際の反応圧力は、好ましくは0.1〜5MPa、更に好ましくは0.1〜2MPaであり、反応温度は、好ましくは20〜80℃、更に好ましくは30〜60℃である。
【0024】
本発明の第一工程では、主な生成物として5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステルを含んだ溶液が得られるが、本発明においては、通常、必要ならば触媒を分離後、該溶液をそのまま又は濃縮した後に次の工程を行う。しかし、場合によっては、生成した5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステルを、例えば、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等による一般的な方法によって一旦単離した後に、次の工程を行っても良い。
【0025】
また、本発明の第一工程で得られる、一般式(2)
【0026】
【化8】
【0027】
(式中、R1は、前記と同義である。)
で示される5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステル(ケト型)は、5-フルオロオキシインドールの中間体として有用な新規化合物である。なお、溶液中では、一般式(4)
【0028】
【化9】
【0029】
(式中、R1は、前記と同義である。)
で示されるエノール型との平衡になる場合がある。
【0030】
(B)第二工程
本発明の第二工程は、第一工程で得られた一般式(2)で示される5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステルを脱炭酸させて、5-フルオロオキシインドールを得る工程である。
【0031】
本発明の第二工程は、一般的に行われる脱炭酸方法であれば特に限定されないが、酸の存在下で行うのが好ましい。
【0032】
前記酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、酢酸等が挙げられるが、好ましくは塩酸、硫酸が使用される。
【0033】
前記酸の使用量は、5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステルに対して、好ましくは1〜10倍モル、更に好ましくは2〜5倍モルである。なお、これらの酸は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0034】
本発明の第二工程は、溶媒の存在中で反応させるのが好ましく、使用する溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、水;メタノール、エタノール、n-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素類が挙げられるが、好ましくは水、アルコール類、エーテル類、更に好ましくは水、メタノール、エタノールが使用される。
【0035】
前記溶媒の使用量は、溶液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステルに対して、好ましくは2〜20重量倍、更に好ましくは4〜10重量倍である。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0036】
本発明の第二工程は、例えば、不活性ガス雰囲気にて、第一工程で得られた5-フルオロオキシインドール-3-カルボン酸エステル又はこれを含む反応液、酸及び溶媒を混合して、攪拌する等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは20〜110℃、更に好ましくは50〜90℃であり、反応圧力は特に限定されない。
【0037】
本発明の第二工程で得られた5-フルオロオキシインドールは、例えば、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等による一般的な方法によって分離・精製される。
【0038】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0039】
参考例1(2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジメチルの合成)
攪拌装置、温度計、蒸留装置及び滴下漏斗を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに、アルゴン雰囲気下、ナトリウムメトキシド3.40g(62.9mmol)及びジメチルスルホキシド30mlを加え、次いで、室温で攪拌しながら、純度98%のマロン酸ジメチル8.48g(62.9mmol)を5分間かけてゆるやかに滴下した。更に、シクロヘキサン10mlを加え、100〜105℃まで昇温後、生成するメタノールをシクロヘキサンと共に共沸蒸留(留去)した。この操作(メタノールの留去)を2回繰り返した後、70℃まで冷却し、純度98%の2,4-ジフルオロニトロベンゼン5.10g(31.4mmol)を10分間かけてゆるやかに滴下し、70〜80℃にて1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、トルエン100mlを加え、攪拌しながら6mol/l塩酸5.25ml(31.4mmol)をゆるやかに滴下した。次いで、有機層を分離し、水50ml、飽和食塩水50mlの順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。濾過後、減圧下で濃縮し、得られた濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤:Daisogel 1002W、展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=9:1(容量比))で精製し、白色結晶として、純度98%(高速液体クロマトグラフィーの面積百分率)の2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジメチル5.60gを得た(単離収率64%)。
2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジメチルの物性値は以下の通りであった。
【0040】
EI-MS(m/e);225(M-NO2)、CI-MS(m/e);272(M+1)
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));3.82(6H,s)、5.40(1H,s)、7.20〜7.35(2H,m)、8.1〜8.2(1H,m)
【0041】
実施例1
攪拌装置、温度計及びガス導入管を備えた内容積100mlのガラス製フラスコに、アルゴン雰囲気下、参考例1に準じて合成した純度98%の2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジメチル3.93g(14.2mmol)、5重量%パラジウム/炭素(49%含水品)0.5g(パラジウム原子として0.12mmol)及び酢酸エチル50mlを加えた。次いで、系内を水素で置換し、0.15MPaの水素圧力下、20℃で2時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過して触媒を除いた後、濾液を減圧下で濃縮し、得られた濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤:Daisogel 1002W、展開溶媒:クロロホルム)で精製し、白色結晶として、純度99%(高速液体クロマトグラフィーの面積百分率)の5-フルオロ-3-メトキシカルボニルオキシインドール2.76gを得た(単離収率92%)。
5-フルオロ-3-メトキシカルボニルオキシインドールは、以下の物性値を有する新規な化合物である。なお、1H-NMRの積分値より、重クロロホルム中では、ケト型とエノール型が1:2.2の割合で存在していた。
【0042】
融点;142〜143℃
EI-MS(m/e);209(M+)、CI-MS(m/e);210(M+1)
FT-IR(KBr法、cm-1);3300〜2600、1647、1569、1481、1204、1160、1108
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));
ケト型:3.82(3H,s)、4.48(1H,s)、6.81〜6.88(1H,m)、6.99(1H,ddd,J=2.7,8.5,8.5Hz)、7.08〜7.13(1H,m)、8.18(1H,s)
エノール型:3.97(3H,s)、6.81〜6.88(1H,m)、6.96〜7.02(1H,m)、7.39(1H,dd,J=2.3,9.4Hz)、8.24(1H,s)
【0043】
実施例2
攪拌装置、温度計、還流冷却器及びガス導入管を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに、アルゴン雰囲気下、参考例1に準じて合成した純度98%の2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジメチル60.0g(0.22mol)及びメタノール228gを加えた。攪拌下、液温を40〜45℃に維持しながら、5重量%パラジウム/炭素(49%含水品)3.0g(パラジウム原子として0.72mmol)を加えた。次いで、常圧で水素を123ml/min.の流速で吹き込みながら、同温度で3時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過して触媒を除いた後、濾液を減圧下で濃縮し、得られた濃縮液にメタノール80ml及び水240mlを加えて10℃に冷却した。次いで、析出した結晶を濾過後、乾燥させて、白色の粗結晶として純度80%(高速液体クロマトグラフィーによる分析値)の5-フルオロ-3-メトキシカルボニルオキシインドール54.5gを得た(単離収率94%)。
【0044】
実施例3
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに、実施例2で合成した純度80%(高速液体クロマトグラフィーによる分析値)の5-フルオロ-3-メトキシカルボニルオキシインドールの粗結晶26.5g(0.10mol)、メタノール66.9g及び6mol/l塩酸52.0ml(0.31mol)を加え、70〜80℃で2時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、8mol/l水酸化ナトリウム水溶液55.0ml(0.44mol)を加えた後、40℃で30分間攪拌した。次いで、12mol/l塩酸8.3ml(0.10mol)を加えた。減圧下でメタノールを留去した後、反応液を0〜5℃まで冷却すると固体が析出してきたので濾別した。得られた固体をイソプロピルアルコール/水で再結晶し、白色結晶として純度99%(高速液体クロマトグラフィーの面積百分率)の5-フルオロオキシインドール12.6gを得た(単離収率80%)。
5-フルオロオキシインドールの物性値は以下の通りであった。
【0045】
融点;141〜142℃
EI-MS(m/e);151(M+)、CI-MS(m/e);152(M+1)
元素分析;炭素63.56%、水素4.02%、窒素9.29%
(理論値(C8H6NOF);炭素63.57%、水素4.00%、窒素9.27%)
FT-IR(KBr法、cm-1);3400〜2500、1700、1633、1485、1317、1195、745、673、591
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));3.56(2H,s)、6.75〜6.85(1H,m)、6.85〜7.00(2H,m)、9.03(1H,brs)
【0046】
【発明の効果】
本発明により、簡便な方法にて、入手が容易な2-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)マロン酸ジエステルから5-フルオロオキシインドールを高収率で得る、工業的に好適な5-フルオロオキシインドールの製造法を提供することが出来る。
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