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JP4935755B2 - 電子部品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は電子部品、特にICチップをリードフレームに搭載した半導体装置のような、端子を有する電子部品の製造方法に関する。
近年、例えばICチップをリードフレームに搭載した半導体装置のような接続端を有する電子部品は一層の小型化が求められており、結果として、その端子間の間隔は数百μm程度まで狭くなってきている。半導体装置のような電子部品において、前記端子の基材として銅、銅合金、42アロイなどが用いられるが、素地のままでは端子表面が酸化して導通不良(はんだ付け不良等による)を引き起こす恐れがあるので、通常、めっき等により端子の表面に保護膜が形成されている。めっき層の材料としては、主にSn(錫)やSn合金が用いられる。
めっき層の材料としてSnやSn合金を用いる場合、従来から鉛(Pb)を含む合金が用いられてきた。近年、環境負荷を軽減する観点から鉛フリー化が求められるようになり、端子のめっき層材料にも、例えば、Sn,Sn−Cu,Sn−Bi,Sn−Ag合金のように、鉛を含まない材料が使用されるようになっている。しかし、鉛フリーの材料で電子部品の端子表面をめっき処理すると、Snのウィスカが発生することが知られており、前記のように端子間の間隔が数百μm程度と狭い場合には、発生したウィスカにより端子間ショートが発生するおそれがあるので、その対策が求められている。
このような点を鑑みて、例えば、絶縁性のベース部材と、このベース部材の表面に形成された導体層とを有して構成された基板と、この導体層の表面に形成されたSnを含む鉛フリー被覆層と、を備え、該ベース材が、内部応力を吸収する材料で構成された電子部品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−353948号公報
しかしながら、特許文献1に記載の電子部品の如く製造すれば、端子のめっき層であっても、初期の段階においてウィスカの発生を低減することができるが、やはり、めっき層にはSnが残留しているため、使用環境や使用年月の経過に伴いSnのウィスカの発生を抑えることは難しい。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用環境及び使用時間にかかわらず、電子部品の端子表面のめっき層からウィスカの発生を回避することができる電子部品の製造方法を提供することにある。
前記課題を解決すべく、発明者ら鋭意検討を重ねた結果、ウィスカは、電子部品の端子のめっき層が露呈した箇所から発生するので、このめっき層を端子から除去すれば、ウィスカの発生を回避することができると考えた。
このような場合、例えば、めっき層をエッチングにより除去したり、加熱によりめっき層を溶融させて除去したりすることも考えられるが、この場合、端子を含む電子部品にダメージを与えることは避けることができない。そこで、発明者らは、通常のめっき層はβSn相からなるが、その一部をαSn相に相転移させることにより、電子部品にダメージを与えることなく、その相転移されためっき層を端子から容易に除去することができるとの新たな知見を得た。
本発明は、発明者らの前記新たな知見に基づくものであり、本発明に係る電子部品の製造方法は、βSn相を含むめっき層が表面に被覆された端子の一部を、接合材料を介して前記基板に接合する工程と、前記めっき層を冷却して、該めっき層に含まれるβSn相の少なくとも一部をαSn相に相転移させる工程と、前記相転移されためっき層のうち、前記接合材料と未接触部分のめっき層を除去する工程とを少なくとも含むことを特徴とする。
本発明によれば、βSn相を含むめっき層が表面に被覆された端子の一部を、はんだなどの接合材料を介して基板に接合した場合には、めっき層のうち接合材料と未接触部分のめっき層が露呈し、これがウィスカの発生の要因となるが、この未接触部分のめっき層を除去することにより、ウィスカの発生を回避することができる。
すなわち、本発明では、接合材料により接合工程後に、めっき層に含まれるβSn相の少なくとも一部をαSn層に相転移する。このβSn相の一部が、αSn相に転移されるので、めっき層中のαSn相が増加し、めっき層は、それまでのものに比べて、よりめっき密度が低くなり脆性なめっき層となる。この結果、相転移された(αSn相が増加した)めっき層は、この相転移したαSn相が起因となって、端子の表面から剥離し易くなる。このようにして、相転移されためっき層のうち、前記接合材料と未接触部分のめっき層を除去することにより、電子部品のうち、ウィスカの発生箇所が除去されるので、使用環境及び使用時間にかかわらず、電子部品の端子表面のめっき層からウィスカの発生を回避することができ、端子間のショートの発生を抑えることができる。
上記相転移をさせることができるのであれば、特に、その冷却方法等は限定されるものではなく、一般的に、Snのみの純Snの場合、αSn相は、13.5℃以下で存在するとされ、この温度領域下にSnのめっき層を晒すことにより、βSn相からαSn相に相転移を行なうことも可能である。しかし、単に、この温度領域のみを条件として相転移させた場合には、相転移に非常に長い時間を要することが、発明者らの実験等によりわかっている。
よって、より好ましくは、本発明に係る電子部品の製造方法は、前記相転移工程において、前記めっき層の冷却を5℃/秒以上で行なうことがより好ましい。このような冷却速度でめっき層を冷却(急冷)させることにより、より短時間でめっき層のβSn相をαSn相に相転移させることができ、その後のめっきの除去をより好適に行なうことができる。すなわち、めっき層の冷却速度が5℃/秒よりも小さい場合(緩やかな冷却である場合)には、αSn相に相転移し難いので、めっき層の剥離を好適に行なえない場合がある。
また、より好ましくは、本発明による電子部品の製造方法は、前記相転移工程において、前記めっき層の冷却を、−35℃以下の温度まで行なうことがより好ましい。本発明によれば、冷却速度が5℃/秒以上であった場合には、この条件で、−35℃以下に冷却することにより、よりαSn相に相転移し易くなる。すなわち、本発明では、冷却温度が−35℃より高い場合であっても、αSn相への相転移を図ることができることもあるが、前述したように、その場合には長い時間を要することになる。また、冷却温度は、−60℃以上であることが好ましい。−60℃近傍で、めっき層のβSn相の殆どがαSn相に相転移するので、これ以上の冷却を行なわなくてもよい。
また、本発明にかかる電子部品の製造方法は、前記接合材料として、Biを含むSn系材料を用い、前記相転移工程において、めっき層の冷却前後の温度差が80℃以下となるように、前記めっき層の冷却を行うことがより好ましい。
本発明によれば、前記接合材料として、Biを含むはんだを用い、前記相転移工程において、冷却速度が5℃/秒以上であっても、めっき層の冷却前後の温度差が80℃を越えた場合には、基材及び端子から接合材料であるはんだそのものが剥離するおそれがある。
また、このような冷却ができるのであれば、例えば冷却装置(例えば冷凍機など)に端子が接合された基板を投入して、めっき層を冷却させたり、めっき層に直接液体窒素を晒すことによりめっき層を冷却したり、その冷却方法は特に限定されるものではない。
本発明による電子部品の製造方法は、半導体装置など端子を有する任意の電子部品を対象とした製造方法である。一例として、ICチップと該ICチップを搭載したリードフレームを有し、前記端子はリードフレームの一部であるような電子部品等の製造方法に好適に利用することができる。
本発明によれば、鉛フリーの材料をめっき層に採用しながら、端子基材の表面に形成しためっき層にウィスカが発生するのを確実に回避することができる。
以下に、図面を参照して、本発明に係る電子部品の製造方法の一実施形態に基づいて説明する。
図1は、第一実施形態に係る電子部品の製造方法を説明するための図であり、図1(a)は、接合前の基板と端子の状態図であり、図1(b)は、接合工程を示した図であり、図1(c)は、相転移工程を示した図であり、図1(d)は、めっき層の除去工程を説明するための図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電子部品1の製造方法は、基板と端子とを接合する工程を少なくとも含む電子部品の製造方法である。図1(a)に示すように、基板10は、例えばICチップ等の端子が接合される基板であり、端子20は、例えばリードフレーム等の端子である。
端子20は、通常銅合金などからなり、厚さは100〜500μmのものであり、端子20の基材表面には鉛フリー材料であるSn系めっき層21が形成されている。Sn系めっき層は、純Snめっき層でもよく、Sn−Cu,Sn−Bi,Sn−Ag合金等の、1〜5wt%のCu,Bi,Agを含むSn系合金によるめっき層であってもよく、めっき層21は、βSn相を含んでいる。
なお、このβSn相は、通常端子20の表面に、Sn系材料を用いて電気めっき、溶融めっき等によりめっきを施した場合に、めっき層21に必然的に含まれるものである。また、Sn系めっき層21の厚さに制限はないが、通常、5〜15μm程度である。
このような基板10及び端子20を、図1(b)に示すように、接合材料であるはんだ30を介して接合する。このはんだも、Sn系の材料であり、純Sn、Sn−Cu,Sn−Bi,Sn−Ag合金等を挙げることができ、鉛フリー材料である。なお、本実施形態に係る接合材料は、基板10と端子20の電気導電性及び接合性を確保することができるのであれば、特にその接合材料の種類はSn系材料には限定されるものではないが、より好ましくは、Bi(ビスマス)を含むSn又はSn合金の錫系材料である。Biを含むことにより、はんだの融点を下げることができ、接合時に電子部品1に作用する熱負荷を抑えることができる。
次に、図1(c)に示すように、少なくとも、はんだ30と未接触部分のめっき層22を冷却することにより、めっき層22に含まれるβSn相の少なくとも一部をαSn相に相転移させる。このとき、めっき層22の冷却を5℃/秒以上で行い、めっき層22を冷却する温度を、−35℃以下の温度まで行なう。特に、はんだにBiを含む場合には、めっき層22の冷却前後の温度差が80℃以下となるように、前記めっき層22の冷却を行う。冷却にあたっては、冷却装置を用いてもよく、液体窒素に直接接触させてもよい。
その後、図1(d)に示すように、相転移されためっき層22のうち、接合材料と未接触部分にエアを吹付けたり、基板そのものを振動させたりして、未接触部分のめっき層を除去し、電子部品1は製造される。
このように、はんだ30により接合工程後に、めっき層22に含まれるβSn相の少なくとも一部をαSn層に相転移するので、めっき層22中のαSn相が増加し、めっき層22は、それまでのものに比べて、よりめっき密度が低くなり脆弱になる。この結果、相転移された(αSn相が増加した)めっき層22は、この相転移したαSn相が起因となって、端子20の表面から、エアまたは振動などにより容易に剥離する。このようにして、相転移されためっき層22のうち、はんだ30と未接触部分のめっき層を除去することにより、電子部品1のうち、ウィスカの発生箇所が除去され、使用環境及び使用時間にかかわらず、ウィスカの発生を回避し、端子間のショートを防止することができる。
(実施例1)
以下に示す方法で電子部品の製造を行なった。具体的には、一般的にICのリードフレーム材料として使用されている厚さ500μmの銅合金に電解めっきによりSn−1.5wt%Cu材料からなる厚さ9μmめっき層を形成した。めっき層が形成された端子の一部と、銅合金からなる基材とを、接合材料としてSn−3wt%Ag−0.5wt%Cuのはんだを溶融し、これを介して接合し、その後放冷した。そして、はんだにより接合された基板を、冷却装置に投入し、室温20℃から、冷却速度を5℃/秒として、−20℃よりも低い温度(下限温度)まで冷却した。そして、このときのαSn相の割合(wt%)を顕微鏡を用いて測定した。この結果を表1及び図2に示す。次に、めっき層のうち、接合材料と未接触部分のめっき層にエアを吹付けた。このとき、残存しためっき層の量(割合wt%)を測定した。この結果を表1及び図3に示す。なお、表2に、エアの吹付けにより、めっき層が除去されたかの結果も合わせて示す。なお、めっき層が少しでも除去(剥離)されれば○、全く除去されない場合は×を表2の結果の欄に示した。
Figure 0004935755
Figure 0004935755
(実施例2)
実施例1と同じように、はんだによる接合、めっき層の冷却、エアの吹付けを行ない、電子部品の製造を行なった。実施例1と相違する点は、相転移において、冷却速度を10℃/秒にした点である。このときに、エアの噴き付けにより、めっき層が除去されるかの確認を行なった。結果を表2に示す。
(比較例1)
実施例1と同じように電子部品の製造を行なった。実施例と相違する点は、冷却を−20℃以上の温度(下限温度)まで冷却した点である。そして、実施例1と同じように、αSn相の割合、残存しためっき層の量を測定した。この結果を図2及び3に示す。
(比較例2)
実施例1と同じように電子部品の製造を行なった。実施例1と相違する点は、冷却速度を2℃/秒にした点である。このときに、エアの噴き付けにより、めっき層が除去されるかの確認を行なった。結果を表2に示す。
[結果及び考察]
図2及び3に示すように、−20℃よりも低く、−35℃よりも高い温度領域まで冷却した場合には、めっき層は、一部残存するものの端子から除去された。そして、−20℃よりも低い温度領域では、αSn相が増加しており、βSn相がαSn相に相転移したことがわかった。この結果から、βSn相がαSn相に相転移することにより、めっき層を剥離させることができ、接合条件等によっては、すべてのめっき層を剥離することができると考えられる。
さらに、−35℃以下の温度まで冷却させた場合には、図2及び3に示すように、αSn相の割合が20wt%以上になり、このときには、接合条件等にかかわらず、確実に、めっき層の除去ができた。また、−60℃以下の温度まで冷却した場合には、αSn相の割合が100wt%となり、完全に相転移されたといえる。
しかし、比較例1は、めっき層の除去はされなかった。これは、比較例1のめっき層は、冷却したものの、αSn相への相転移が成されなかったことによると考えられる。また、比較例2も、めっき層の除去はされなかった。これは、冷却速度が緩やかであることによると考えられる。しかし、冷却速度が緩やかな場合であっても、より低い温度を長時間保ち、αSn相への相転移が成されれば、めっき層の除去はできると考えられる。
以上より、めっき層を除去するためには、βSn相がαSn相に相転移することが条件にあり、さらに、より迅速且つ確実にめっき層の除去を行なうためには、冷却速度は、5℃/秒以上であることが好ましく、この冷却速度で、−35℃以下の温度まで冷却することがより好ましい。
(実施例3)
実施例1と同じように、電子部品の製造を行なった。実施例1と相違する点は、接合材料であるはんだに、Sn−2.5wt%Bi材料を用いて、室温20℃から、冷却温度を−100℃(温度差が80℃まで温度)まで行った点である。
(比較例3)
実施例1と同じように、電子部品の製造を行なった。実施例1と相違する点は、室温から、冷却温度−60℃(温度差が80℃を超える温度)まで、冷却した点である。
[結果]
実施例3は、良好にめっき層の剥離ができ、はんだの剥離はみられなかったが、比較例3では、基材及び端子から接合材料であるはんだそのものが剥離した。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
本実施形態に係る電子部品の製造方法を説明するための図であり、図1(a)は、接合前の基板と端子の状態図であり、図1(b)は、接合工程を示した図であり、図1(c)は、相転移工程を示した図であり、図1(d)は、めっき層の除去工程を説明するための図。 実施例1及び比較例1の冷却速度とαSn相の割合の関係を示した図。 実施例1及び比較例1のαSn相の割合と残存めっき量の関係を示した図。
符号の説明
1:電子部品
10:基板
20:端子
21:めっき層
22:相転移しためっき層
30:接合材料

Claims (4)

  1. βSn相を含むめっき層が表面に被覆された端子の一部を、接合材料を介して基板に接合する工程と、
    前記めっき層を冷却して、該めっき層に含まれるβSn相の少なくとも一部をαSn相に相転移させる工程と、
    前記相転移されためっき層のうち、前記接合材料と未接触部分のめっき層を除去する工程とを少なくとも含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
  2. 前記相転移工程において、前記めっき層の冷却を、5℃/秒以上で行なうことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
  3. 前記相転移工程において、前記めっき層の冷却を、−35℃以下の温度まで行なうことを特徴とする請求項2に記載の電子部品の製造方法。
  4. 前記接合材料として、Biを含むSn系材料を用い、前記相転移工程において、めっき層の冷却前後の温度差が80℃以下となるように、前記めっき層の冷却を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の電子部品の製造方法。
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