以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
[図面の説明]
図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の外観構成を示す斜視図である。図2は、複合機10の内部構成の概略を示す縦断面図である。図3は、プリンタ部11の主要構成を示す平面図である。図4は、駆動切換機構70付近の構成を示す部分斜視図である。図5は、第2駆動伝達位置における駆動切換機構70の構成を示す正面図である。図6は、入力レバー74及び当接部材75の構成を示す分解斜視図である。図7は、第3駆動伝達位置における駆動切換機構70の構成を示す正面図である。図8は、第1駆動伝達位置における駆動切換機構70の構成を示す正面図である。なお、各図に示される各ギヤは特に言及されない限り平歯車であり、各図において各ギヤの歯は省略されている。また、図5、図7及び図8では、キャリッジ62や記録ヘッド61、インクチューブ59、プラテン63、ベルト駆動機構46、パージ機構55などは省略されている。
[複合機10の概略構成]
図1及び図2に示されるように、複合機10は、下部にプリンタ部11を、上部にスキャナ部12を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。複合機10のうち、プリンタ部11が本発明にかかる画像記録装置に相当する。したがって、本発明において、プリンタ機能以外の機能は任意のものであり、例えば、スキャナ部12がなく、スキャン機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明にかかる画像記録装置が実施されてもよい。
プリンタ部11は、主にコンピュータなどの外部情報機器と接続されて、外部情報機器から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、被記録媒体に画像や文書を記録する。なお、複合機10は、メモリカードなどの各種記憶媒体が装填されて、記憶媒体に記録された画像データなどを記録用紙に記録することも可能である。また、プリンタ部11に用いられる被記録媒体として、例えば、紙や樹脂シートなどがあげられる。
複合機10は、概ね直方体の外形であり、その正面に開口13が形成されている。開口13の内側に、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。給紙トレイ20には、被記録媒体である記録用紙が収容される。給紙トレイ20が収容可能な記録用紙の大きさは、例えば、リーガルサイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズなどの各種定形サイズである。給紙トレイ20に収容された記録用紙がプリンタ部11の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
開口13の下側には給紙カセット14が配設されている。給紙カセット14には、例えば、リーガルサイズ、A4サイズ、B5サイズなどの記録用紙が収容可能である。給紙カセット14は、給紙トレイ20が収容可能な記録用紙の枚数の数倍から十倍程度の枚数の記録用紙を収容可能である。したがって、給紙カセット14には、A4サイズのように使用頻度の高い記録用紙が大量に収容される。
スキャナ部12は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2に示すように、複合機10の上面に原稿カバー15が開閉自在に設けられている。原稿カバー15を開くと、プラテンガラス16が露出される。プラテンガラス16の下側にはイメージセンサ17が設けられている。プラテンガラス16に載置された原稿に対して、イメージセンサ17が移動しながら画像読取りを行う。また、原稿カバー15には、自動原稿搬送機構であるオート・ドキュメント・フィーダ(ADF;Auto Document Feeder)18が設けられている。このようなスキャナ部12は任意の構成なので、ここでは詳細な説明が省略される。
複合機10の正面上部には、操作パネル19が設けられている。操作パネル19は、複数の操作ボタンや液晶表示部から構成されている。操作ボタンは、例えば、電源のオン/オフを行う電源ボタン、画像読取りや画像記録の開始を入力するスタートボタン、動作の停止を入力するストップボタン、コピーモード、スキャナモード、ファクシミリモードなどのモード設定を行うモードボタン、画像記録条件や読取条件などの各種設定やファクシミリ番号の入力を行うテンキーなどである。複合機10は、操作パネル19からの操作指示に基づいて動作する。複合機10が外部のコンピュータに接続されている場合には、コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機10が動作する。
[プリンタ部11]
図2に示されるように、給紙トレイ20の奥側に分離傾斜板22が設けられている。分離傾斜板22は、給紙トレイ20から給送された記録用紙を1枚ずつ分離して、最上位置の記録用紙のみを上方へ案内する。給紙トレイ20の上側には、給紙トレイ20に収容された記録用紙を分離傾斜板22へ向かって給送する第1給紙ローラ25が設けられている。第1給紙ローラ25は、第1アーム26の先端に軸支されている。第1給紙ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構によってASF(Auto Sheet Feed)モータの出力が伝達されて回転する。第1給紙ローラ25が本発明における第3駆動部に相当する。本発明において被記録媒体の搬送とは、給紙トレイ20や給紙カセット14からの記録用紙の給送と、第1搬送路23や第2搬送路33における記録用紙の搬送との双方を含むが、第2駆動部は主として前者による被記録媒体の搬送を担う。また、第1給紙ローラ25へ駆動力を付与するASFモータはDCモータであり、本発明における第2駆動源に相当する。
第1アーム26は、支軸26Aに回動自在に支持されて、給紙トレイ20に接離可能に上下動する。第1アーム26は、自重により又はバネなどに付勢されて給紙トレイ20に接触するように下側へ回動されており、給紙トレイ20の挿抜の際に上側へ退避可能に構成されている。第1アーム26が下側へ回動されることによって、その先端に軸支された第1給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接する。その状態で、第1給紙ローラ25が回転されることによって、第1給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ給送される。
分離傾斜板22から上方へ向かって延びるように第1搬送路23が形成されている。第1搬送路23は、分離傾斜板22から上方へ向かった後、複合機10の正面側へ曲がり、画像記録ユニット24を経て排紙トレイ21へ通じている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、第1搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
第1搬送路23は、画像記録ユニット24などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する一対のガイド面から構成されている。例えば、複合機10の背面側の第1搬送路23の湾曲部は、第1ガイド部材27と第2ガイド部材28とが装置フレームに固定されることによって構成されている。なお、第1搬送路23において、特に第1搬送路23が曲がっている箇所には、回転コロが外側ガイド面へローラ面を露出するようにして、第1搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられていてもよい。回転自在な各回転コロにより、第1搬送路23が曲がっている箇所において、ガイド面に摺接する記録用紙が円滑に搬送される。
第1搬送路23の湾曲部より搬送方向下流側には、画像記録ユニット24が設けられている。画像記録ユニット24は、記録ヘッド61を搭載して往復動するキャリッジ62を備えている。記録ヘッド61は、所謂インクジェット方式のものである。記録ヘッド61には、複合機10内において記録ヘッド61とは独立に配置されたインクカートリッジからインクチューブ59(図3参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。キャリッジ62が往復動される間に、記録ヘッド61のノズルから各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出されることによって、プラテン63上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。なお、画像記録ユニット24の詳細な構成は後述される。
画像記録ユニット24の上流側には、一対の搬送ローラ29及びピンチローラ30が設けられている。搬送ローラ29及びピンチローラ30は、第1搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持してプラテン63上へ搬送する。搬送ローラ29には、LF(Line Feed)モータの出力が駆動伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動される。ピンチローラ30は、搬送ローラ29と接離する方向に移動可能に設けられ、コイルバネによって弾性付勢されて搬送ローラ29に圧接されている。搬送ローラ29とピンチローラ30との間に記録用紙が進入すると、ピンチローラ30は、その記録用紙の厚み分だけ弾性付勢力に抗して退避し、その記録用紙を搬送ローラ29に圧接するように狭持する。これにより、搬送ローラ29の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。搬送ローラ29へ駆動力を付与するLFモータはDCモータであり、本発明における第1駆動源に相当する。
画像記録ユニット24の下流側には、一対の排紙ローラ31及び拍車32が設けられている。排紙ローラ31及び拍車32は、記録済みの記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。搬送ローラ29及び排紙ローラ31は、第1駆動源であるLFモータの出力が駆動伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動される。搬送ローラ29及び排紙ローラ31の回転は同期されている。搬送ローラ29に設けられたロータリーエンコーダ(不図示)は、搬送ローラ29とともに回転するエンコーダディスクのパターンを光学センサで検知する。この検知信号に基づいて、第1駆動源であるLFモータの回転が制御される。なお、図2ではロータリーエンコーダが省略されている。
拍車32は、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸されている。拍車32は、排紙ローラ31と接離する方向に移動可能に設けられ、コイルバネにより弾性付勢されて排紙ローラ31に圧接されている。排紙ローラ31と拍車32との間に記録用紙が進入すると、拍車32は、記録用紙の厚み分だけ付勢力に反して退避し、その記録用紙を排紙ローラ31に圧接するように狭持する。これにより、排紙ローラ31の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。
図2に示されるように、第1搬送路23における画像記録ユニット24より下流側の部位と、給紙トレイ20における給紙ローラ25より上流側の部位とを結ぶように、第2搬送路33が形成されている。第2搬送路33は、画像記録ユニット23の下流側から給紙ローラ25へ向かって傾斜しながら下降する経路である。この第2搬送路33によって、画像記録ユニット24によって一方の面に画像が記録された記録用紙が給紙トレイ20上へ案内される。第2搬送路33も、第1搬送路23と同様に、所定の間隔で対向する一対のガイド面によって形成されている。
図2に示されるように、第1搬送路23における画像記録ユニット24より下流側の部位には、第2搬送路33に対応して経路切換部34が設けられている。経路切換部34は、第1搬送路23を搬送された記録用紙を、排紙トレイ21又は第2搬送路23のいずれかへ給送する。経路切換部34は、スイッチバックローラ35、拍車36、フレーム37、及び拍車38を有する。
第1搬送路23における第2搬送路33との接続部位より下流側には、スイッチバックローラ35及び拍車36が設けられている。記録用紙に対して片面記録を行う場合は、画像記録ユニット24によって画像記録が行われて、第1搬送路23を搬送される記録用紙は、スイッチバックローラ35及び拍車36によって排紙トレイ21へ排出される。記録用紙に対して両面記録を行う場合は、画像記録ユニット24によって一方の面に画像記録が行われて、第1搬送路23を搬送される記録用紙は、スイッチバックローラ35及び拍車36によってスイッチバック搬送される。
記録用紙のスイッチバック搬送に伴って、フレーム37が第2搬送路33へ向かって回動されて、拍車38が降下する。スイッチバック搬送された記録用紙は、拍車38により第2搬送路33へ案内されて、給紙トレイ20へ送られる。記録用紙の先端が給紙ローラ25に到達すると、その記録用紙は、給紙ローラ25によって再び第1搬送路23を経て画像記録ユニット24へ搬送される。その際、記録用紙は、画像記録が行われていない他方の面が記録ヘッド61に対向される。そして、両面に画像記録が行われた記録用紙は、経路切換部34によって排紙トレイ21へ排出される。
経路切換部34におけるスイッチバックローラ35は、第1駆動源としてのLFモータの出力が駆動伝達されて回転され、搬送ローラ29と同期されている。また、経路切換部34におけるフレーム37は、第2駆動源としてのASFモータの出力が駆動伝達されて回転される。つまり、スイッチバックローラ35及びフレーム37は、本発明における複数の駆動部のうちの1つにそれぞれが相当する。また、搬送ローラ29、排紙ローラ31及びスイッチバックローラ35が本発明における第4駆動部に相当する。本発明において被記録媒体の搬送とは、給紙トレイ20や給紙カセット14からの記録用紙の給送と、第1搬送路23や第2搬送路33における記録用紙の搬送との双方を含むが、第4駆動部は主として後者による被記録媒体の搬送を担う。
図2に示されるように、給紙トレイ20の下側には給紙カセット14が装填されている。給紙カセット14は上面が開口した直方体の箱形状のものであり、その内部に記録用紙が積載状態で収容される。給紙カセット14の装置奥側には、分離傾斜板39が設けられている。分離傾斜板39は、給紙カセット14から重送された記録用紙を分離して、最上位置の記録用紙のみを上方へ案内する。
分離傾斜板39から上方へ向かって第3搬送路40が形成されている。第3搬送路40は、分離傾斜板39から上方へ向かった後、正面側へ曲がって、搬送ローラ29より搬送方向上流側において第1搬送路23に通じている。第3搬送路40は、第1搬送路23の外側ガイド面を形成する第2ガイド部材28の背面側を内側ガイド面とし、第2ガイド部材28と所定間隔を隔てられてさらに外側に配設された第3ガイド部材41とによって形成されている。給紙カセット14に収容された記録用紙は、第3搬送路40により下方から上方へUターンするように案内されて第1搬送路23に進入し、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
給紙カセット14の上側には、給紙カセット14に積載された記録用紙を第3搬送路40へ供給する第2給紙ローラ42が設けられている。第2給紙ローラ42は、第2アーム43の先端に軸支されている。第2給紙ローラ42は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構によって第2駆動源としてのASFモータの出力が伝達されて回転する。第2給紙ローラ42が本発明における第3駆動部に相当する。
第2アーム43は、支軸43Aに回動自在に支持されており、給紙カセット14内部の底面に接離可能に上下動する。第2アーム43は、自重により又はバネなどに付勢されて給紙カセット14に接触するように下側へ回動されており、給紙カセット14の挿抜の際に上側へ退避可能に構成されている。第2アーム43が下側へ回動されることにより、その先端に軸支された第2給紙ローラ42が給紙カセット14内の記録用紙に圧接する。その状態で、第2給紙ローラ42が回転されることにより、第2給紙ローラ42のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が分離傾斜板39へ給送される。記録用紙は、その先端が分離傾斜板39に当接して上方へ案内され、第3搬送路40へ送り出される。
[画像記録ユニット24]
図3に示されるように、第1搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向(図3の上側から下側方向)に所定距離を隔てられて、一対のガイドレール44,45が記録用紙の搬送方向と直交する方向(図3の左右方向)に延設されている。ガイドレール44,45は、プリンタ部11の筐体内に設けられて、プリンタ部11を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ62は、ガイドレール44,45を跨ぐように載置されて、ガイドレール44,45上を記録用紙の搬送方向と直交する方向にスライド可能である。
記録用紙の搬送方向上流側に配設されたガイドレール44は、第1搬送路23の幅方向(図3の左右方向)の長さがキャリッジ62の往復動範囲より長い平板状のものである。記録用紙の搬送方向下流側に配設されたガイドレール45は、第1搬送路23の幅方向の長さがガイドレール44とほぼ同じ長さの平板状のものである。キャリッジ62における搬送方向上流側の端部がガイドレール44上に載置され、下流側の端部がガイドレール45上に載置されて、ガイドレール44,45の長手方向に沿ってキャリッジ62が摺動される。ガイドレール45における搬送方向上流側の縁部45Aは、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール44,45に担持されたキャリッジ62は、縁部45Aをローラ対などの狭持部材により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ62は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動可能になる。
ガイドレール45の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、第1搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のベルト49が張架されてなるものである。駆動プーリ47の軸にはCRモータ(不図示)から駆動力が入力され、駆動プーリ47の回転によりベルト49が周運動する。なお、ベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ62に固着するものを用いてもよい。
キャリッジ62は、その底面側においてベルト49に固着されている。したがって、CRモータによるベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ62が縁部45を基準としてガイドレール44,45上を往復動する。このようなキャリッジ62に記録ヘッド61が搭載されて、記録ヘッド61が、第1搬送路23の幅方向を所定方向として往復動される。
ガイドレール44には、リニアエンコーダ(不図示)のエンコーダストリップ50が配設されている。エンコーダストリップ50は、透明な樹脂からなる帯状のものである。ガイドレール44の幅方向(キャリッジ62の往復動方向)の両端には、その上面から起立するように一対の支持部51,52が形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部が支持部51,52に係止されて、縁部45に沿って架設されている。
エンコーダストリップ50には、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、等ピッチで長手方向に交互に配置されたパターンが記されている。キャリッジ62の上面のエンコーダストリップ50に対応する位置には、透過型センサである光学センサ53が設けられている。光学センサ53は、キャリッジ62とともにエンコーダストリップ50の長手方向に沿って往復動し、その往復動の際にエンコーダストリップ50のパターンを検知する。記録ヘッド61には、インクの吐出を制御するヘッド制御基板が設けられている。ヘッド制御基板は、光学センサ53の検知信号に基づくパルス信号を出力し、このパルス信号に基づいてキャリッジ62の位置が判断されて、CRモータの回転駆動が制御される。なお、図3では、キャリッジ62に搭載されたヘッド制御基板はカバーで覆われており、図に現れていない。
図2及び図3に示されるように、第1搬送路23の下側には、記録ヘッド61と対向してプラテン63が配設されている。プラテン63は、キャリッジ62の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン63の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいので、第1搬送路23を搬送される記録用紙における幅方向の両端は常にプラテン63上を通過する。このプラテン63上の領域が画像記録領域A1であり、本発明における画像記録領域に相当する。
図3に示されるように、プラテン63における幅方向の両側のうち、一方にはパージ機構55が配設され、他方には廃インクトレイ56が配設されている。パージ機構55及び廃インクトレイ56は、記録ヘッド61のメンテナンスを行うものである。パージ機構55が配設された領域が第1メンテナンス領域M1であり、本発明におけるメンテナンス領域に相当する。廃インクトレイ56が配設された領域が第2メンテナンス領域M2である。第1メンテナンス領域M1及び第2メンテナンス領域M2は、画像記録領域A1の両端側にそれぞれ隣接して位置する。キャリッジ62は、画像記録領域A1、第1メンテナンス領域M1及び第2メンテナンス領域M2に渡って往復動可能である。
パージ機構55は、記録ヘッド61のノズルから気泡や異物を吸引除去するものである。パージ機構55は、記録ヘッド61のノズルを覆うノズルキャップ57と、記録ヘッド61の排気口を覆う排気キャップ58とを有する。ノズルキャップ57及び排気キャップ58は、公知のリフトアップ機構によって上下動されて記録ヘッド61と接離する。図3には現れていないが、パージ機構55は、さらに吸引ポンプを有する。吸引ポンプは、ノズルキャップ57及び排気キャップ58と接続されており、吸引ポンプが動作されることによって、ノズルキャップ57及び排気キャップ58の内部が負圧にされる。ノズルキャップ57及び排気キャップ58が記録ヘッド61と接触してノズル及び排気口をそれぞれ覆った状態において吸引ポンプが作動されると、記録ヘッド61から気泡や異物が吸引除去される。パージ機構55における吸引ポンプは、第1駆動源であるLFモータの出力が駆動伝達されることによって動作される。また、パージ機構55におけるリフトアップ機構は、第2駆動源であるASFモータの出力が駆動伝達されることによって動作される。つまり、パージ機構55における吸引ポンプが、本発明における第1駆動部に相当し、リフトアップ機構が、本発明における第2駆動部に相当する。
廃インクトレイ56は、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド61からのインクの空吐出を受けるためのものである。廃インクトレイ56内にはインク吸収材としてフェルトが敷設されており、フラッシングされたインクは、このフェルトに吸収されて保持される。このようにパージ機構55及び廃インクトレイ56が用いられて、記録ヘッド61内の気泡や混色インクの除去、乾燥防止などのメンテナンスが行われる。
各図には示されていないが、プリンタ部11には、カートリッジ装着部が設けられ、各種インクを貯蔵するインクカートリッジが装着される。カートリッジ装着部からキャリッジ62へは、各色インクに対応した複数本のインクチューブ59が引き回されている。キャリッジ62に搭載された記録ヘッド61には、各インクチューブ59を通じて、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジから各色インクが供給される。インクチューブ59は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ62の往復動に追従して撓む可撓性を有する。
図示されていない制御部を構成するメイン基板から記録ヘッド61のヘッド制御基板へはフラットケーブル60を通じて記録用信号などの伝送が行われる。なお、メイン基板は装置正面側(図3手前側)に配設されており、図3には現れていない。フラットケーブル60は、電気信号を伝送する複数本の導電線をポリエステルフィルムなどの合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものであり、メイン基板とヘッド制御基板とを電気的に接続している。フラットケーブル60は、キャリッジ62の往復動に追従して撓む可撓性を有する。
[駆動切換機構70]
以下、2つのモータ(LFモータとASFモータ)から第1給紙ローラ25、パージ機構55、第2給紙ローラ42への駆動切換機構70について説明する。駆動切換機構70は、ガイドレール44,45などにより構成されるフレームの右側(図2における右側)に配置されて、2つのモータ(LFモータとASFモータ)から独立に出力される2系統の駆動を、各駆動部へそれぞれ択一的に伝達するものである。
2つのモータ(LFモータとASFモータ)は各図には現れていないが、一方のLFモータの出力は、搬送ローラ29の一端(図3における左側)に入力される。搬送ローラ29の他端(図3における右側)には第1駆動ギヤ(不図示)が搬送ローラ29と同軸かつ一体に回転するように設けられている。この第1駆動ギヤに第1切換ギヤ71が噛合されて、第1切換ギヤ71がLFモータの出力に基づいて回転駆動される。第1切換ギヤ71を回転駆動するための一方のLFモータが、本発明における第1駆動源に相当する。第1駆動ギヤの厚みは、第1切換ギヤ71のスライド範囲に対して十分に厚いので、第1切換ギヤ71のスライド範囲において第1切換ギヤ71と第1駆動ギヤとは常時噛合される。第1切換ギヤ71の軸線は、第1駆動ギヤの軸線と平行であり、第1切換ギヤ71は第1駆動ギヤに対して平行移動可能である。第1駆動ギヤの軸線方向の厚みは、第1切換ギヤ71の移動範囲に対応されており、第1切換ギヤ71の移動範囲において、第1駆動ギヤと第1切換ギヤ71との噛合は維持される。
他方のASFモータは、駆動切換機構70付近に配置されて、その出力軸から第2駆動ギヤ(不図示)を介して第2切換ギヤ72に出力が伝達されて、第2切換ギヤ72が回転駆動される。第2切換ギヤ72を回転駆動するための他方のASFモータが、本発明における第2駆動源に相当する。第2駆動ギヤの厚みは、第2切換ギヤ72のスライド範囲に対して十分に厚いので、第2切換ギヤ72のスライド範囲において、第2切換ギヤ72と第2駆動ギヤとは常時噛合される。第2切換ギヤ72の軸線は、第2駆動ギヤの軸線と平行であり、第2切換ギヤ72は第2駆動ギヤに対して平行移動可能である。第2駆動ギヤの軸線方向の厚みは、第2切換ギヤ72の移動範囲に対応されており、第2切換ギヤ72の移動範囲において、第2駆動ギヤと第2切換ギヤ72との噛合は維持される。
図5に示されるように、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、1本の支軸73に軸線方向にスライド可能に軸支されている。第1切換ギヤ71は、装置の外側(図5における右側)に配置され、第2切換ギヤ72は装置の内側(図5における左側)に配置されている。支軸73は、フレームにより水平方向に支持されている。支軸73の軸方向(図5における左右方向)は、キャリッジ62が往復動する方向と一致する。この支軸73を第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72がスライド移動されることにより、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72と後述される第1〜3伝達ギヤ101,102,103との噛合が選択される。
支軸73には、第1切換ギヤ71よりキャリッジ62の往復動方向外側(図5における右側)に、入力レバー74及び当接部材75がそれぞれスライド移動可能に設けられている。この入力レバー74及び当接部材75と、後述されるレバーガイド83とによって、本発明にかかる位置決め部材が実現されている。
図6に示されるように、入力レバー74は、支軸73に外嵌される円筒軸76と、円筒軸76から径方向に突設されたレバー77とを有する。円筒軸76は、支軸73に外嵌されて軸線方向にスライド自在且つ回転自在である。つまり、レバー77は、支軸73の軸線方向にスライドさせることができ、また、支軸73回りに回転させることができる。レバー77の基端付近にはリブ78が円筒軸76の軸線方向に延設されている。
当接部材75は、入力レバー74の円筒軸76に外嵌される円筒軸79と、円筒軸79から径方向にY字状に突設されたスライドガイド80とを有する。円筒軸79は、入力レバー74の円筒軸76に外嵌されて軸線方向にスライド自在且つ回転自在である。円筒軸79の入力レバー74側の端部には、端面から軸線回りを螺旋状に進むガイド面81が、円筒軸79の一部が切り欠かれるようにして形成されている。ガイド面81は、Y字状のスライドガイド80に対応する範囲に形成されている。円筒軸79の反対側の端部82はテーパ状に縮径されている。端部82は、その内径が入力レバー74の円筒軸76の外径より小さくなるように縮径されている。これにより、円筒軸76に対する円筒軸79の外嵌位置が規制される。
スライドガイド80は、レバーガイド83を跨ぐY字形状である。スライドガイド80がレバーガイド83に当接することにより、当接部材75が入力レバー74の円筒軸76回りに回転することが規制される。これにより、当接部材75は、入力レバー74の円筒軸76に対して所定の回転姿勢を維持して軸線方向にスライドされる。
当接部材75のガイド面81は、入力レバー74のリブ78に当接される。図には示されていないが、当接部材75は、支軸73の軸線方向に伸縮するコイルバネにより入力レバー74側(図5における矢印84)へ付勢されている。第2切換ギヤ72は、支軸73の軸線方向に伸縮する別のコイルバネにより入力レバー74側(図5における矢印85)へ付勢されている。第2切換ギヤ72を介在させて、第1切換ギヤ71も、同じコイルバネによって入力レバー74側へ付勢される。つまり、第2切換ギヤ72と当接部材75とは、相反する方向へ付勢する2つのコイルバネにより、第1切換ギヤ71及び入力レバー74を介在させて互いに接近する方向へ付勢されている。これにより、第2切換ギヤ72、第1切換ギヤ71、入力レバー74及び当接部材75は、支軸73において相互に当接されて一体となる。当接部材75を付勢するコイルバネの付勢力(矢印84)は、第2切換ギヤ72を付勢するコイルバネの付勢力(矢印85)より大きい。したがって、第2切換ギヤ72、第1切換ギヤ71、入力レバー74及び当接部材75は、外力が付与されなければ、支軸73を矢印84へ向かってスライド移動する。なお、2つのコイルバネによって相互に当接された第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、一体となった状態において独立して回転可能である。
図4及び図5に示されるように、支軸73の上側には、レバーガイド83が設けられている。レバーガイド83は、ガイドレール44のパージ機構55側に形成された孔85(図4参照)に嵌め込まれてガイドレール44に固定されている。レバーガイド83は、内側に所定形状のガイド孔86が形成された略平板状の部材である。ガイド孔86には、入力レバー74のレバー77が挿入されて、ガイドレール44の上側へ突出される。前述したように、当接部材75は、入力レバー74の円筒軸76に対して所定の回転姿勢を維持しており、その回転姿勢において、ガイド面81がスライドガイド80とほぼ同じ回転位置にある。入力レバー74のリブ78はガイド面81に当接して、コイルバネの付勢力を受けてガイド面81に沿って、矢印87(図6参照)へ案内される。これにより、ガイド孔86に挿入されたレバー77は、外力が付与されなければ、図4に示されるように、ガイド孔86における搬送方向下流側と装置内側との隅部である第1ガイド位置88に維持される。この第1ガイド位置88が、第2駆動伝達位置に対応する。
図4に示されるように、ガイド孔86の搬送方向下流側の縁には、第1ガイド位置88から装置外側へ向かって、第2ガイド位置89、第3ガイド位置90が順次形成されている。第2ガイド位置89は、第1ガイド位置152から搬送方向下流側へ凹欠されている。第2ガイド位置89は、この凹欠によって、入力レバー74が弾性付勢される矢印84側に対して、レバー77を係止可能である。第2ガイド位置89から第3ガイド位置90へは搬送方向上流側へ迫り出す傾斜面が形成されており、この傾斜面に案内されてレバー77が第2ガイド位置89から第3ガイド位置90へ円滑に移動可能である。この第2ガイド位置89が、第3駆動伝達位置に対応し、第3ガイド位置90が、第1駆動伝達位置に対応する。
ガイド孔86の搬送方向上流側の縁には、リターンガイド91が形成されている。リターンガイド91は、ガイド孔86の縁から鉛直上方へ突出し、搬送方向下流側へ向かってガイド孔86の中央付近まで水平方向に延出され、その延出端が、レバー77の上端より下方となるように、鉛直下方へ垂下された鈎形状である。リターンガイド91は、レバー77が第3ガイド位置90から第1ガイド位置88へ戻る際の経路を案内する。
図3及び図5に示されるように、キャリッジ62の搬送方向上流端には、搬送方向上流側へ水平方向に突出するガイド片92が設けられている。ガイド片92はキャリッジ62とともに往復動される。ガイド片92のレバー77と当接する側(図3及び図5における右側)の端部には、キャリッジ62の基端側に傾斜面93が形成され、先端側に係合部94が形成されている。傾斜面93は、第1ガイド位置88又は第2ガイド位置89にあるレバー77と当接可能であり、その当接面が搬送方向下流側を向いて傾斜している。キャリッジ62とともにガイド片92が移動されることにより、傾斜面93が第1ガイド位置88又は第2ガイド位置89に位置するレバー77に当接し、そのレバー77が、傾斜面93によって搬送方向下流側へ押しやられつつ第2ガイド位置89又は第3ガイド位置90へ移動される。
ガイド片92の係合部94は、第3ガイド位置90にあるレバー77と係合する。レバー77は、第2ガイド位置89から第3ガイド位置90に移動される際に、矢印87と反対方向へ回動され、第3ガイド位置90においてガイド片92の係合部94と係合する。レバー77は、コイルバネにより矢印84へ付勢され、且つ当接部材75のガイド面81により矢印87へ付勢されている。これらの付勢力により、レバー77と係合部94との係合が維持される。
キャリッジ62とともにガイド片92が矢印96へ移動すると、係合部94に係合されたレバー77は、矢印84への付勢力により、ガイド片92とともに矢印96へ移動する。その際に、レバー77は、リターンガイド91に案内されてガイド孔86の搬送方向上流側の縁に沿って第1ガイド位置88と対向する搬送方向上流側の隅部まで移動し、その縁部に当接することにより、係合部94から離脱する。係合部94から離脱したレバー77は、当接部材75のガイド面81に付勢されて矢印87側へ回転し、第1ガイド位置88に位置せしめられる。このようにして、キャリッジ62の往復動が制御されることにより、入力レバー74が第1〜3ガイド位置88〜89のいずれかに選択的に移動され、これに対応して第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72が第1駆動伝達位置〜第3駆動伝達位置のいずれかに選択的に移動されて位置決めされる。
図3及び図4に示されるように、入力レバー74は、画像記録領域A1と第1メンテナンス領域M1との境界より若干第1メンテナンス領域M1側に配置されている。このような配置が、本発明における画像記録領域とメンテナンス領域との境界付近に含まれる。もちろん、入力レバー74が、画像記録領域A1と第1メンテナンス領域M1との境界より若干画像記録領域A1側に配置されていても本発明の効果が発揮されるが、画像記録領域A1においてキャリッジ62がレバー77と当接して負荷が変動することは記録画質の劣化を惹起しかねないので、入力レバー74は当該境界より第1メンテナンス領域M1側に配置されることが好ましい。
図5に示されるように、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72の下方には、支軸73と平行な支軸100に第1伝達ギヤ101、第2伝達ギヤ102及び第3伝達ギヤ103が並列に配置されている。第1伝達ギヤ101は、第1切換ギヤ71と噛離可能である。第2伝達ギヤ102及び第3伝達ギヤ103は第2切換ギヤ72と噛離可能である。第1伝達ギヤ101、第2伝達ギヤ102及び第3伝達ギヤ103は、その厚みや傘歯ギヤ104の有無が異なるが、外径は同等である。第1伝達ギヤ101、第2伝達ギヤ102及び第3伝達ギヤ103は、支軸100に、メンテナンス領域M1側から画像記録領域A1側へ向かって(図5における右側から左側)順に並べられており、かつ、第1伝達ギヤ101と第2伝達ギヤ102との間には、第2伝達ギヤ102の厚みに相当するスペーサ106が設けられて、これらの間が隔てられている。このような配置において、第1伝達ギヤ101は、第1切換ギヤ71と噛離可能であり、第2伝達ギヤ102及び第3伝達ギヤ103は、第2切換ギヤ72と噛離可能である。
第1伝達ギヤ101及び第3伝達ギヤ103は、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72と同等乃至若干厚い程度の厚みである。なお、本実施形態では、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72の厚みは同等であって、1つの駆動伝達位置に対応する。また、本実施形態において単に「厚み」と称する場合は、ギヤの軸方向(図5における左右方向)の厚みを意味する。これに対し、第2伝達ギヤ102の厚みは、第1伝達ギヤ101又は第3伝達ギヤ103の厚みの2倍程度であって、2つの駆動伝達位置に対応する。
第1伝達ギヤ101のメンテナンス領域M1側には、傘歯ギヤ104が設けられている。傘歯ギヤ104の外径は第1伝達ギヤ101より大きく、これによって、これら間に径方向外側へ突出する規制面105が形成されている。第1切換ギヤ71は、この規制面105に当接することによって、第1伝達ギヤ101と噛合した位置からさらに矢印85へのスライド移動が制止される。これによって、第1切換ギヤ71と第1伝達ギヤ101との噛合が維持され、かつ入力レバー74及び当接部材75から第1切換ギヤ71から離れる。
第1伝達ギヤ101、第2伝達ギヤ102及び第3伝達ギヤ103は、各駆動部に駆動力をそれぞれ伝達するためのものである。詳細には、第1伝達ギヤ101は、その一端側に設けられた傘歯ギヤ104とともにパージ機構55における吸引ポンプなどへ駆動伝達を行う。第2伝達ギヤ102は、その回転方向の正逆によって経路切換部34又はパージ機構55におけるノズルキャップ57のリフトアップ機構へ選択的に駆動伝達を行う。第3伝達ギヤ103は、その回転方向の正逆によって第1給紙ローラ25又は第2給紙ローラ42へ選択的に駆動伝達を行う。パージ機構55における吸引ポンプ及びノズルキャップ57のリフトアップ機構の駆動は、本発明におけるメンテナンスに際する駆動である。なお、本発明においてメンテナンスとは、必ずしもパージ動作を必要とせず、単に記録ヘッド61のノズルをキャッピングする動作をも含む意味である。また、本発明において搬送とは、搬送ローラ29、排紙ローラ31及びスイッチバックローラ35による記録用紙の搬送のほか、第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ42による記録用紙の給送も含む意味である。
このように、第1伝達ギヤ101、第2伝達ギヤ102及び第3伝達ギヤ103は、複数の各駆動部に駆動力をそれぞれ伝達すべく割り当てが定められている。第1伝達ギヤ101、第2伝達ギヤ102及び第3伝達ギヤ103から各駆動部への駆動伝達機構は、ギヤ列やベルトなどを用いた公知の駆動伝達機構を採用することができ、本発明の要旨には直接影響しないので、ここでは詳細な説明が省略される。
[駆動伝達機構70における駆動切換]
以下、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72と第1伝達ギヤ101、第2伝達ギヤ102及び第3伝達ギヤ103との噛合の切り換えについて表1を参照しながら説明する。
図4、図5及び表1に示されるように、ガイド孔86に挿入されたレバー77が第1ガイド位置88にあると、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、第2駆動伝達位置に位置する。第2駆動伝達位置においては、第1切換ギヤ71は、スペーサ106によって形成された空間のうち第2伝達ギヤ102側に位置する。この際、第1切換ギヤ71からはいずれの駆動部へも駆動伝達されないが、第1切換ギヤ71と噛合する第1駆動ギヤは搬送ローラ29とともにLFモータ(第1駆動源)の出力によって回転され、搬送ローラ29と同期されている排紙ローラ31及びスイッチバックローラ35も回転される。第2切換ギヤ72は、第3伝達ギヤ103と噛合して、ASFモータ(第2駆動源)の出力を第1給紙ローラ25又は第2給紙ローラ42へ伝達する。第1切換ギヤ71と第2切換ギヤ72とは、独立した2つのモータ(LFモータとASFモータ)の出力を受けて回転されるので、第1駆動伝達位置においては、給紙トレイ20又は給紙カセット14からの給紙と、第1搬送路23における用紙搬送とを独立して制御することができる。したがって、例えば、一の記録用紙の搬送中に他の記録用紙を給紙トレイ20又は給紙カセット14から給紙したり、両面印刷におけるスイッチバック搬送において任意のタイミングで第1給紙ローラ25を動作させたりすることができる。また、キャリッジ62は、第2駆動伝達位置に第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72を位置決めする入力レバー74と当接することなく、画像記録領域A1を往復動可能である。
図7及び表1に示されるように、キャリッジ62の移動に伴ってガイド片92がレバー77と当接して、レバー77を第2ガイド位置89(図4参照)へ移動させると、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、コイルバネの弾性付勢力によって矢印85へ付勢されて第3駆動伝達位置へスライド移動する。第3駆動伝達位置においては、第1切換ギヤ71は、スペーサ106によって形成された空間のうち第1伝達ギヤ101側に位置する。この際、第1切換ギヤ71からはいずれの駆動部へも駆動伝達されないが、前述と同様に、搬送ローラ29、排紙ローラ31及びスイッチバックローラ35はLFモータ(第1駆動源)の出力によって回転される。
第2切換ギヤ72は、第2駆動伝達位置から第3駆動伝達位置への移動に伴って、スライド移動によって第3伝達ギヤ103から離脱すると共に、第2伝達ギヤ102と噛合する。第2切換ギヤ72が第3伝達ギヤ103から離脱して第2伝達ギヤ102と噛合する際に、第2駆動ギヤが、それまでの回転方向に対して若干逆回転されることによって、第2切換ギヤ72と第3伝達ギヤ103との面圧が解除される。そして、第2切換ギヤ72と第2伝達ギヤ102との位相を合わせるために、第2駆動ギヤに対して微小な正転及び逆転が交互に繰り返し行われる。これにより、第2切換ギヤ72と第2伝達ギヤ102との位相が合致して、第2切換ギヤ72がコイルバネの弾性付勢力によって支軸73をスライド移動し、第3伝達ギヤ103から離脱すると共に第2伝達ギヤ102と噛合する。このような面圧の解除や位相合わせのための第2切換ギヤ72の正逆転と、第1切換ギヤ71の回転は独立して制御することができる。つまり、第2切換ギヤ72を正逆転する際に、第1切換ギヤ71を静止又は一方向へ回転させることができる。また、第2駆動伝達位置から第3駆動伝達位置への変更に際して、第1切換ギヤ71は第1伝達ギヤ101、第2伝達ギヤ102及び第3伝達ギヤ103のいずれとも噛離しないので、第1切換ギヤ71については、面圧の解除や位相合わせのための回転制御を行う必要がない。
第2伝達ギヤ102は、ASFモータ(第2駆動源)の出力を経路切換機部34又はノズルキャップ57へ伝達する。第1切換ギヤ71と第2切換ギヤ72とは、独立した2つのLFモータの出力を受けて回転されるので、第3駆動伝達位置においては、経路切換部34における経路切換又はキャッピングと、第1搬送路23における用紙搬送とを独立して制御することができる。
例えば、両面印刷において、インクを乾燥すべく記録用紙の搬送を停止している間に、記録ヘッド61をキャッピングする場合には、キャリッジ62がノズルキャップ57の直上へ移動される。その際、キャリッジ62のガイド片92がレバー77と当接してレバー77が第3ガイド位置90へ移動するが、後述されるように、第2切換ギヤ72は第2伝達ギヤ102との噛合を維持するので、ASFモータ(第2駆動源)の出力によってノズルキャップ57をリフトアップすることができる。第1切換ギヤ71は、レバー77が第3ガイド位置90へ移動するに伴って、第1伝達ギヤ101と噛合しうる。第1切換ギヤ71が第1伝達ギヤ101と噛合するか否かは、記録用紙の搬送を停止した際の第1切換ギヤ71の位相と第1伝達ギヤ101の位相とが合致するか否かによる。しかし、記録用紙の搬送が停止されている間は、LFモータ(第1駆動源)が停止されているので、仮に第1切換ギヤ71が支軸73をスライドして第1伝達ギヤ101と噛合したとしても、その後にレバー77が第1ガイド位置88又は第2ガイド位置89へ移動されることによって、面圧の解除を行うことなく、第1切換ギヤ71が支軸73をスライドして第1伝達ギヤ101から離脱する。
インクの乾燥が終了して記録用紙が再び搬送されるに先立って、キャリッジ62が画像記録領域A1へ移動される。これに伴って、ガイド片92がレバー77を第3ガイド位置90から第1ガイド位置88へ移動させる。レバー77が第1ガイド位置88へ移動する際に、第2切換ギヤ72は第3伝達ギヤ103に噛合される。つまり、ASFモータ(第2駆動源)の制御によって面圧の解除及び位相合わせが行われて、第2切換ギヤ72が第3伝達ギヤ103と噛合する。さらに、キャリッジ62がメンテナンス領域M1側へ移動されて、ガイド片92がレバー77を第1ガイド位置88から第2ガイド位置89へ移動させる。このレバー77の移動に伴って、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、第3駆動伝達位置へ復帰し、第2切換ギヤ72は第3伝達ギヤ101から離脱し、第2伝達ギヤ102と噛合する。この際にも、前述と同様に、ASFモータ(第2駆動源)の制御によって面圧の解除及び位相合わせが行われる。一方、第1切換ギヤ71は第1伝達ギヤ101から離脱した後、いずれの伝達ギヤ101〜103とも噛合しないので、記録用紙の搬送を行うLFモータ(第1駆動源)については位相合わせを行う必要はない。したがって、駆動切換機構70による切換制御が容易である。
図8及び表1に示されるように、キャリッジ62がノズルキャップ57の直上へ移動するに伴って、ガイド片92がレバー77と当接して、レバー77を第3ガイド位置90(図4参照)へ移動させる。これによって、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、コイルバネの弾性付勢力によって矢印85へ付勢されて第1駆動伝達位置へスライド移動する。なお、レバー77が第3ガイド位置90へ移動されるに伴って、第1切換ギヤ71は、第1伝達ギヤ101の規制面105と当接して、さらに矢印85へ移動せずに第1駆動伝達位置に制止される。第2切換ギヤ72も第1切換ギヤ71と共に第1駆動伝達位置に制止される。入力レバー74及び当接部材75は、キャリッジ62とともにさらに矢印85へ移動され、当接部材75が第1切換ギヤ71から離れると共に、レバー77が第3ガイド位置90へ移動する。
第1駆動伝達位置においては、第1切換ギヤ71は、第1伝達ギヤ101と噛合する。第1切換ギヤ71が第1伝達ギヤ101と噛合する際に、第1切換ギヤ71と第1伝達ギヤ101との位相を合わせるために、第1駆動ギヤに対して微小な正転及び逆転が交互に繰り返し行われる。これにより、第1切換ギヤ71と第1伝達ギヤ101との位相が合致して、第1切換ギヤ71がコイルバネの弾性付勢力によって支軸73をスライド移動し、第1伝達ギヤ101と噛合する。この位相合わせのための第1切換ギヤ71の正逆転と、第2切換ギヤ72の回転は独立して制御することができる。つまり、第1切換ギヤ71を正逆転する際に、第2切換ギヤ72を静止又は一方向へ回転させることができる。
また、第1駆動伝達位置において、第2切換ギヤ72は、支軸73をスライド移動しつつ第2伝達ギヤ102との噛合を維持する。つまり、第3駆動伝達位置から第1駆動伝達位置への変更に際して、第2切換ギヤ72は第2伝達ギヤ102と噛合されたままスライド移動するので、第2切換ギヤ72については、位相合わせのための回転制御を行う必要がない。
キャリッジ62は、第1駆動伝達位置に位置決めされた第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72を移動させることなく、メンテナンス領域M1において往復動可能である。また、一方のLFモータ(第1駆動源)の出力は、第1切換ギヤ71及び第1伝達ギヤ101を介してパージ機構55の吸引ポンプなどへ駆動伝達されて、メンテナンスに際する駆動が行われる。また、他方のASFモータ(第2駆動源)の出力は、第2切換ギヤ72及び第2伝達ギヤ102を介してノズルキャップ57のリフトアップ機構へ駆動伝達されて、記録ヘッド61のキャッピングが行われる。
[本実施形態の作用効果]
このように本実施形態によれば、キャリッジ62が、第1駆動伝達位置に位置決めされた第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72を移動させることなく、メンテナンス領域M1において往復動可能であり、また、第2駆動伝達位置に位置決めされた第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72を移動させることなく、画像記録領域A1において往復動可能である。そして、駆動伝達機構70においては、第1駆動伝達位置においてメンテナンスに要する駆動が伝達され、第2駆動伝達位置において記録用紙の搬送に要する駆動が伝達される。これにより、キャリッジ62の位置に依存することなく、記録用紙の搬送及びメンテナンスを実現することができる。