しかしながら、上述した特許文献2及び3に記載の技術では、外部の装置を用いることなく溶液を定量的に秤取して流路内で分析を行うことはできないという問題点がある。なお、特許文献1及び4に記載の技術では、流路内における送液を制御する観点について記載されているものの、溶液を定量的に秤取して分析を行う観点については、一切記載されていない。
ここで、図18に基づき、特許文献2で提案された秤量に用いる流路の基本構造について説明する。図18に示すように、該流路は、第1の流路410、第2の流路411、及び第3の流路412を備える構造である。
このような構造の流路を用いることで、第1の流路410に導入された液体が、第3の流路412の開口部を介して毛細管現象により第3の流路412内に引き込まれた後、第1の流路410に残存する液体が取り除かれ、第3の流路内412に残存する液体が第2の流路411に押し出されることにより、第3の流路412の容積に応じた体積の液体が秤量される。
しかしながら、秤量された液体を取り出して分析するためには、第1の流路410に残存する液体を取り除き、第3の流路412内に残存する液体を第2の流路411に押し出す必要がある。よって、特許文献2の流路構造では、毛細管力利用した送液方法のみで、秤量された液体を取り出すことは困難であり、ポンプ等の外部の動力源が必要となるため、分析装置全体の小型化が図りがたいという問題点がある。
一方、特許文献3に記載された技術においては、溶液を、遠心力を利用して秤量管に導入し、秤量管の容積に応じた体積の液体が秤量される。
この方法では、外部に回転させるための機構が必要であり、さらに、送液のためのポンプ等の外部の動力源も必要となる。よって、分析装置全体の小型化が図りがたいという問題点がある。
本発明は、前記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、簡単な構成で溶液を定量的に秤取すると共に、秤取した溶液を流路内に充填したままで分析することができるマイクロ分析チップなどを提供することにある。
本発明のマイクロ分析チップは、前記課題を解決するために、一端が外部に解放された開放孔に接続されているメイン流路と、溶液を前記メイン流路の内部に導入する第1導入流路と、前記メイン流路の内部に導入された溶液を排出する第1排出流路と、前記メイン流路の内部に導入された溶液の特性を、当該メイン流路の内部で分析する分析部とを備えており、前記第1導入流路及び前記第1排出流路が、共に、前記メイン流路において前記分析部に対して前記開放孔と異なる側に設けられていることを特徴とする。
前記構成によれば、溶液は、第1導入流路を介してメイン流路の内部に導入され、メイン流路の一端と開放孔との間に充填される。このとき、開放孔に達した溶液は、その開放孔に繋がる流路内面の疎水性又は親水性の程度に応じて、溶液の表面張力によりドーム状に少し張り出した凸形状、略平面形状、若しくは小皿状に中央部が少し窪んだ凹形状、のいずれかの気相‐液相界面を形成して停止する。
ここで、第1導入流路及び第1排出流路は、共に、メイン流路において分析部に対して開放孔と異なる側に設けられている。よって、分析部の第1導入流路に近い側の端部から開放孔までの間に充填される一定量の溶液のみが、分析部を通過し、充填された一定量の溶液以外の溶液は、分析部を通過しない。
したがって、複数枚のマイクロ分析チップを用いて分析を行う場合、導入する溶液の量がマイクロ分析チップ毎に異なったとしても、分析部を通過する溶液の量(分析に使用される溶液の量)を、一定量とすることができる。
ここで、上述のように、第1導入流路及び第1排出流路は、共に、メイン流路において分析部に対して開放孔と異なる側に設けられている。よって、溶液の充填後に第1導入流路を介して導入される溶液は、分析部を通過することなくそのまま第1排出流路から排出される。
また、最終的に、メイン流路の内部の溶液は、液残りすること無く排出される。
以上より、簡単な構成で溶液を定量的に秤取すると共に、秤取した溶液を流路内に充填したままで分析することができる。
また、副次的効果として、分析に使用される溶液の量を一定に保った状態で、溶液を導入したり、排出したりすることができる。
ここで、「分析」とは、物質の鑑識、検出、又は、化学的組成を定性的若しくは定量的に識別することであり、本明細書では、化学反応によって生じる物質の鑑識、検出、又は化学的組成の識別を含むものとする。よって、「分析部」は、検出のみを行う検出部のみで構成されていても良いし、化学反応を生じさせる反応部と、検出部との組合せで構成されていても良い。
また、本発明のマイクロ分析チップを用いた溶液の送液方法は、前記課題を解決するために、一端が外部に開放された開放孔に接続されているメイン流路と、一端が前記メイン流路の流路内面に接続され、他端に、前記メイン流路の内部に導入される溶液が注入される液導入孔が形成された導入流路と、前記導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入された溶液の排出が可能な排出流路と、前記メイン流路の内部に導入された溶液の特性を、当該メイン流路の内部で分析する分析部とを備えており、前記導入流路及び前記排出流路が、共に、前記メイン流路において前記分析部に対して前記開放孔と異なる側に設けられているマイクロ分析チップを用いた溶液の送液方法であって、前記液導入孔に溶液を注入し、注入された溶液を、前記導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する導入ステップと、前記導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填する充填ステップと、前記液導入孔に残存する溶液を排出する第1排出ステップと、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填された溶液を排出する第2排出ステップとを含んでいることを特徴とする。
前記方法によれば、充填ステップにおいて、導入ステップでメイン流路の内部に導入された溶液を、メイン流路の一端から開放孔までの間に充填させることができる。このとき、開放孔に達した溶液は表面張力により上述した形状の気相‐液相界面を形成して停止する。
ここで、第1導入流路及び第1排出流路は、共に、メイン流路において分析部に対して開放孔と異なる側に設けられている。よって、導入ステップ、第1排出ステップ及び第2排出ステップの各ステップで、分析部の第1導入流路に近い側の端部から開放孔までの間に充填される一定量の溶液のみが、分析部を通過し、充填された一定量の溶液以外の溶液は、分析部を通過しない。
したがって、複数枚のマイクロ分析チップを用いて分析を行う場合、導入する溶液の量がマイクロ分析チップ毎に異なったとしても、分析部を通過する溶液の量(分析に使用される溶液の量)を、一定量とすることができる。
以上より、溶液を定量的に秤取すると共に、秤取した溶液を流路内に充填したままで分析することができる。
また、副次的効果として、分析に使用される溶液の量を一定に保った状態で、溶液を導入したり、排出したりすることができる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記メイン流路、前記第1導入流路、及び前記第1排出流路のそれぞれは、毛細管力を駆動力として送液を行うことができるように、流路内面の少なくとも一部が親水性材料で構成されていることが好ましい。
前記構成によれば、メイン流路、第1導入流路、及び第1排出流路のそれぞれが、毛細管力によって送液できるようになっている。よって、各流路で送液を行うために、ポンプなどの外部の動力源等を用いる必要がないので、例えば、後述するマイクロ分析チップを備えた分析装置全体の小型化、軽量化及び簡素化が可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記第1排出流路における溶液の排出側である第1液排出部に溶液を吸収する吸収体が設けられていることが好ましい。
前記構成によれば、ポンプなどの外部の動力源等を用いることなく、メイン流路の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。また、吸収体が溶液を保持することにより、溶液のマイクロ分析チップの外部への流出を防ぐことが可能となる。
ところで、上述したメイン流路の内部において一端から開放孔まで溶液が充填される構成においては、溶液の表面張力による気相‐液相界面の形状が、開放孔に繋がる流路内面の疎水性又は親水性の程度、及び溶液の粘性などの条件により変化するという問題点がある。
このような、副次的課題を解決するために、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、溶液を堰き止める堰止部が、前記一端と前記分析部との間に設けられていることが好ましい。
前記構成によれば、メイン流路の内部に充填される溶液は堰止部により確実に堰き止められる。よって、分析部の端部から堰止部までの間に充填される溶液については、より高精度に、定量的な分析を行うことができる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記堰止部が、疎水性材料で構成されていても良い。
前記構成によれば、堰止部は、疎水性材料で構成されているため、開放孔への溶液の進入を防止することができ、より安定に送液することが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記堰止部が、エレクトロウェッティングバルブで構成されていても良い。
エレクトロウェッティングバルブは微小かつ簡単な構造で液体の流れを制御できるのでマイクロ流路用の開閉バルブとして好適である。
よって、前記構成によれば、堰止部において溶液を堰き止めるか否かを、すなわち、溶液を堰止部まで充填するか、或いは開放孔まで充填するかを切り換えることが可能となる。よって、必要に応じて、分析に使用される溶液の量を2通りの溶液の量から選択して定量的な分析を行うことが可能となる。
なお、エレクトロウェッティングバルブは、少なくとも作動電極と参照電極とを有する構成とすることが好ましく、さらに対向電極を備えていてもよい。このようなバルブの作動電極としては、後述するように、導電性薄膜からなる構成や、導電性薄膜とその上に設けられた導電性薄膜と材料が異なる薄膜とからなる構成を採用できる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記第1排出流路は、溶液の流れを調整する第1開閉バルブを備えており、前記メイン流路の内部に溶液を導入する第2導入流路を備えており、前記第2導入流路は、液体の流れを制御する第2開閉バルブを備えていても良い。
前記構成によれば、溶液がメイン流路の内部に充填され停止した後、第1開閉バルブを開くことで、例えば、第1導入流路が、溶液が注入される第1液導入孔を備える場合には、第1液導入孔に残った溶液が、第1排出流路を介して排出される。
また、上述したように、第1導入流路及び第1排出流路は、共に、メイン流路において分析部に対して開放孔と異なる側に設けられている。よって、その後、メイン流路の内部に充填された溶液は、メイン流路の内部に液残りすること無く排出される。
次に、第1開閉バルブを閉じ、第2導入流路の第2開閉バルブを開くことで、第2導入流路を介してメイン流路の内部に溶液が導入される。よって、複数枚のマイクロ分析チップを用いて分析を行う場合、第2導入流路を介して導入される溶液の量がマイクロ分析チップ毎に異なったとしても、メイン流路の内部において分析部を通過する溶液の量が一定となる。
なお、第2導入流路は、メイン流路において分析部に対して開放孔と異なる側に設けられていることが好ましいが、メイン流路において分析部に対して開放孔と同じ側に設けられていても良い。
前者の場合、2つの溶液に対して、共通の溶液量で定量的に分析を行うことが可能となる。
なお、後者の場合、第2導入流路を介して導入される溶液のうち、分析部を通過する溶液は、分析部の開放孔側の端部からメイン流路の他端(開放孔側の端を一端とする)までの間に充填される溶液であるが、第2導入流路を介して導入される溶液の量が、マイクロ分析チップ毎に異なったとしても、メイン流路の内部において分析部を通過する溶液の量が一定となることには変わりがない。
また、本発明のマイクロ分析チップを用いた溶液の送液方法は、前記課題を解決するために、一端が外部に開放された開放孔に接続されているメイン流路と、一端が前記メイン流路の流路内面に接続され、他端に、前記メイン流路の内部に導入される溶液が注入される第1液導入孔が形成された第1導入流路と、前記第1導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入された溶液の排出が可能な第1排出流路と、前記第1排出流路に設けられた溶液の流れを調整する第1開閉バルブと、一端が前記メイン流路の流路内面に接続され、他端に、前記メイン流路の内部に導入される溶液が注入される第2液導入孔が形成された第2導入流路と、前記第2導入流路に設けられた溶液の流れを調整する第2開閉バルブと、前記メイン流路の内部に導入された溶液の特性を、当該メイン流路の内部で分析する分析部とを備えており、前記第1導入流路及び前記第1排出流路が、共に、前記メイン流路において前記分析部に対して前記開放孔と異なる側に設けられているマイクロ分析チップを用いた溶液の送液方法であって、前記第1液導入孔及び前記第2液導入孔に溶液を注入し、前記第1液導入孔に注入された溶液を、前記第1導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第1導入ステップと、前記第1導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端と前記開放孔との間に充填する第1充填ステップと、前記第1開閉バルブを開いて、前記メイン流路の内部に導入された溶液の排出を促し、前記第1液導入孔に残存する溶液を排出する第1排出ステップと、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填された溶液を排出する第2排出ステップと、前記第1開閉バルブを閉じ、前記第2開閉バルブを開いて、前記第2液導入孔に注入された溶液を、前記第2導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第2導入ステップと、前記第2導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填する第2充填ステップとを含んでいることを特徴とする。
前記方法によれば、第1導入ステップ及び第1充填ステップは、それぞれ上述した導入ステップ及び充填ステップと同様であり、第1排出ステップでは、溶液がメイン流路の内部に充填され停止した後、第1開閉バルブを開くことで、例えば、第1液導入孔に残った溶液が、第1排出流路を介して排出される。
また、上述したように、第1導入流路及び第1排出流路は、共に、メイン流路において分析部に対して開放孔と異なる側に設けられている。よって、第2排出ステップでは、メイン流路の内部に充填された溶液は、メイン流路の内部に液残りすること無く排出される。
次に、第2導入ステップで、第2導入流路の第2開閉バルブを開くことで、第2導入流路を介してメイン流路の内部に溶液が導入される。このとき、第2導入流路を介して導入される溶液の量にかかわらず、メイン流路の内部において分析部を通過する溶液の量が一定となる。
よって、簡単な構成で溶液を定量的に秤取すると共に、秤取した溶液を流路内に充填したままで分析することができる。
また、副次的効果として、分析に使用される溶液の量を一定に保った状態で、溶液を導入したり、排出したりすることができる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記メイン流路の内部に溶液を導入する第3導入流路を備えており、前記第3導入流路は、液体の流れを制御する第3開閉バルブを備えており、前記第3導入流路が、前記メイン流路において前記分析部に対して前記第1排出流路と異なる側に設けられていても良い。
前記構成によれば、溶液は、第1導入流路を介してメイン流路の内部に導入され、メイン流路の一端と開放孔との間に充填される。このとき、開放孔に達した溶液は表面張力ににより上述した形状の気相‐液相界面を形成して停止する。
その後、第1開閉バルブを開くことで、第1液導入孔に残った溶液が、第1排出流路を介して排出される。また、上述したように、第1導入流路及び第1排出流路は、共に、メイン流路において分析部に対して開放孔と異なる側に設けられている。よって、その後、メイン流路の内部に充填された溶液は、メイン流路の内部に液残りすること無く排出される。
次に、第1開閉バルブを閉じ、第3導入流路の第3開閉バルブを開くことで、溶液が、第3導入流路を介してメイン流路の内部に導入され、メイン流路の内部に充填される。
その後、第1開閉バルブを開くことで、第1排出流路を介してメイン流路の内部に充填された溶液はメイン流路の内部に液残りすること無く排出される。
次に、上述した第2導入流路及び第2開閉バルブを備えている場合は、第2導入流路の第2開閉バルブを開くことで、溶液が、第2導入流路を介してメイン流路の内部に導入され、メイン流路の内部に充填され停止する。
以上の構成によれば、3つの溶液を順次送液することができ、且つ、2つの溶液に対して、共通の溶液量で定量的に分析を行うことが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップを用いた溶液の送液方法は、前記課題を解決するために、一端が外部に開放された開放孔に接続されているメイン流路と、一端が前記メイン流路の流路内面に接続され、他端に、前記メイン流路の内部に導入される溶液が注入される第1液導入孔が形成された第1導入流路と、前記第1導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入された溶液の排出が可能な第1排出流路と、前記第1排出流路に設けられた溶液の流れを調整する第1開閉バルブと、一端が前記メイン流路の流路内面に接続され、他端に、前記メイン流路の内部に導入される溶液が注入される第2液導入孔が形成された第2導入流路と、前記第2導入流路に設けられた溶液の流れを調整する第2開閉バルブと、一端が前記メイン流路の流路内面に接続され、他端に、前記メイン流路の内部に導入される溶液が注入される第3液導入孔が形成された第3導入流路と、前記第3導入流路に設けられた溶液の流れを調整する第3開閉バルブと、前記メイン流路の内部に導入された溶液の特性を、当該メイン流路の内部で分析する分析部とを備えており、前記第1導入流路及び前記第1排出流路が、共に、前記メイン流路において前記分析部に対して前記開放孔と異なる側に設けられていると共に、前記第3導入流路が、前記メイン流路において前記分析部に対して前記第1排出流路と異なる側に設けられているマイクロ分析チップを用いた溶液の送液方法であって、前記第1液導入孔、前記第2液導入孔、及び前記第3導入流路に溶液を注入し、前記第1液導入孔に注入された溶液を、前記第1導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第1導入ステップと、前記第1導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填する第1充填ステップと、前記第1開閉バルブを開いて、前記メイン流路の内部に導入された溶液の排出を促し、前記第1液導入孔に残存する溶液を、前記第1排出流路を介して排出する第1排出ステップと、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填された溶液を排出する第2排出ステップと、前記第1開閉バルブを閉じ、前記第3開閉バルブを開いて、前記第3液導入孔に注入された溶液を、前記第3導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第2導入ステップと、前記第2導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填する第2充填ステップと、前記第1開閉バルブを開いて、前記第2充填ステップにおいて充填された溶液及び前記第3液導入孔に残存する溶液を、前記第1排出流路を介して排出する第3排出ステップと、前記第1開閉バルブを閉じ、前記第2開閉バルブを開いて、前記第2液導入孔に注入された溶液を、前記第2導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第3導入ステップとを含んでいることを特徴とする。
前記方法によれば、溶液は、第1導入ステップで、第1導入流路を介してメイン流路の内部に導入され、第1充填ステップで、メイン流路の一端と開放孔との間に充填される。このとき、開放孔に達した溶液は表面張力により上述した形状の気相‐液相界面を形成して停止する。
その後、第1排出ステップで、第1開閉バルブを開くことで、第1液導入孔に残った溶液が、第1排出流路を介して排出される。また、上述したように、第1導入流路及び第1排出流路は、共に、メイン流路において分析部に対して開放孔と異なる側に設けられている。よって、その後、第2排出ステップで、メイン流路の内部に充填された溶液は、メイン流路の内部に液残りすること無く排出される。
次に、第1開閉バルブを閉じ、第2導入流路の第2開閉バルブを開くことで、溶液が、第2導入流路を介してメイン流路の内部に導入され、メイン流路の内部に充填される。
その後、第3排出ステップで、第1開閉バルブを開くことで、第1排出流路を介してメイン流路の内部に充填された溶液はメイン流路の内部に液残りすること無く排出される。
次に、第3導入流路の第3開閉バルブを開くことで、溶液が、第3導入流路を介してメイン流路の内部に導入され、メイン流路の内部に充填され停止する。
以上の構成によれば、3つの溶液を順次送液することができ、且つ、2つの溶液に対して、共通の溶液量で定量的に分析を行うことが可能となる。
よって、簡単な構成で溶液を定量的に秤取すると共に、秤取した溶液を流路内に充填したままで分析することができる。
また、副次的効果として、分析に使用される溶液の量を一定に保った状態で、溶液を導入したり、排出したりすることができる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記メイン流路の内部に導入された溶液を排出する第2排出流路が設けられており、前記第2排出流路は、液体の流れを制御する第4開閉バルブを備えており、前記第2排出流路が、前記メイン流路において前記分析部に対して前記第3導入流路と異なる側に設けられていても良い。
前記構成によれば、マイクロ分析チップは2つの排出流路を有する。よって、第1導入流路から導入される溶液が、第1排出流路から、及び、第3導入流路から導入される溶液が、第2排出流路から、をそれぞれ排出される。
したがって、排出流路を別々にすることにより、各排出流路の排液動作を1回のみとすることができ、各排出流路の排液量を少なくすることができるため、溶液の排出をより安定に行うことが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記第2排出流路における溶液の排出側である第2液排出部に溶液を吸収する吸収体が設けられていることが好ましい。
前記構成によれば、外部のポンプ等を用いることなく、第2排出流路から、溶液を安定に排出することができる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記第1開閉バルブ、前記第2開閉バルブ、前記第3開閉バルブ、及び前記第4開閉バルブのうち少なくとも1つが、エレクトロウェッティングバルブで構成されていることが好ましい。
上述したように、エレクトロウェッティングバルブは微小かつ簡単な構造で液体の流れを制御できるのでマイクロ流路用の開閉バルブとして好適である。
よって、前記構成によれば、マイクロ分析チップの小型化を図ることが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記エレクトロウェッティングバルブが、導電性薄膜で構成される電極を備えていても良い。
前記構成によれば、エレクトロウェッティングバルブが、導電性薄膜で形成されているため、電極の厚みが流路の送液に与える影響を最小限にとどめることが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記電極上に、前記導電性薄膜と異なる材料で構成された薄膜が設けられていても良い。
前記構成によれば、電極上に、電極とは異なる材料で構成された薄膜を設けることで、電極に用いられる金属材料の導電性と、薄膜の疎水性などの有利な特性を併せ持つ電極を形成することが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記薄膜の厚みが、100nm以下であることが好ましい。
前記構成によれば、薄膜の厚みを、100nm以下とすることで、エレクトロウェッティングバルブの動作に必要な電圧を低減することができ、マイクロ分析チップを備えた分析装置の小型化が可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記薄膜の常温における純水に対する接触角が80°以上であることが好ましい。
前記構成によれば、薄膜の、常温における純粋に対する接触角は80°以上である。このように、薄膜として、電極に用いられる導電性薄膜の構成材料よりも接触角の大きい物質を採用すれば、電圧印加しない状態で溶液を確実に停止することができ、エレクトロウェッティングバルブを安定に動作することが可能となる。
なお、具体的には、常温は、約25℃であり、純水は、比抵抗が約18MΩ・cmであることが好ましい。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記薄膜がフッ素を含む物質又はチオール基を有する物質で構成されていることが好ましい。
前記構成によれば、薄膜の構成材料として、これらの物質を採用することにより、例えば、作動電極上の接触角が90°よりも大きい、すなわち強い疎水性を示す薄膜とすることができ、電圧を印加しない状態で、バルブで液を停止しやすくなるので、バルブ動作をより安定に行うことができる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記メイン流路を構成するためのメイン流路形成溝、前記第1導入流路を構成するための第1導入流路形成溝、及び、前記第1排出流路を構成するための第1排出流路形成溝が少なくとも形成された第1基板と、前記第1基板に形成された前記メイン流路形成溝、前記第1導入流路形成溝、及び第1排出流路形成溝のそれぞれを封止する第2基板とを備えていても良い。
ところで、複雑な流路を毛細管のように細い管によって形成することは一般的に困難である。しかし、前記構成のように、第1基板に形成した溝部を、第2基板によって封止することで毛細管(各流路)を形成すれば、その作成は容易である。よってマイクロ分析チップを容易に製造することが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記メイン流路を構成するためのメイン流路形成孔、前記第1導入流路を構成するための第1導入流路形成孔、及び、前記第1排出流路を構成するための第1排出流路形成孔が少なくとも形成された流路形成層と、前記流路形成層に形成された前記メイン流路形成孔、前記第1導入流路形成孔、及び第1排出流路形成孔のそれぞれを、前記流路形成層の一方側から封止する第3基板と、前記流路形成層に形成された前記メイン流路形成孔、前記第1導入流路形成孔、及び第1排出流路形成孔のそれぞれを、前記流路形成層の他方側から封止する第4基板とを備えていても良い。
前記構成のように、流路形成層に流路形成孔を設けて両側から基板で挟むことは、容易に実行できる。よって、マイクロ分析チップを容易に製造することが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記メイン流路、前記第1導入流路、及び第1排出流路のそれぞれの断面が、矩形であることが好ましい。
前記構成によれば、第1基板に形成された溝、又は流路形成層に形成された孔が、三つの流路内面(内壁面)を有する凹形状の溝、又は孔となる。基板の表面に三つの流路内面を有する形状の凹形状の溝、又は孔を形成することは極めて容易であり、さらにマイクロ分析チップを容易に製造することが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記第1基板は、疎水性材料で構成されており、前記第2基板は、親水性材料で構成されていることが好ましい。
前記構成によれば、各流路において、第1基板の溝の流路内面が疎水性となるため、第1基板及び第2基板の貼り合わせ部分からの液漏れを防止することができる。
また、溝幅が広くなるにつれ流路内面全体における親水性が増す特性とすることができるため、親水性を弱めることなくメイン流路の溝幅を広く設計し、分析部の面積を大きくすることが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記第1基板を構成する疎水性材料は、ポリジメチルシロキサンであり、前記第2基板を構成する親水性材料は、ガラスであることが好ましい。
ポリジメチルシロキサンは疎水性であり、ガラスは親水性である。よって、前記構成によれば、各流路において、第1基板の第1基板の溝の流路内面が疎水性となるため、第1基板及び第2基板の貼り合わせ部分からの液漏れを防止することができる。
また、メイン流路の溝幅を広く設計することが可能であり、分析部の面積を大きくすることが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記メイン流路形成溝の平均溝幅が、前記第1導入流路形成溝の平均溝幅よりも大きいことが好ましい。
前記構成によれば、メイン流路の内部に溶液が充填された後に、メイン流路の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記流路形成層は、疎水性材料で構成されていることが好ましい。
前記構成によれば、流路形成層に形成された孔の壁面が疎水性となるため、基板の貼り合わせ部分からの液漏れを防止することができる。また、メイン流路の孔幅を広く設計することが可能であり、分析部の面積を大きくすることが可能となる。
また、本発明のマイクロ分析チップは、前記構成に加えて、前記メイン流路形成孔の平均孔幅が、前記第1導入流路形成孔の平均孔幅よりも大きいことが好ましい。
前記構成によれば、メイン流路の内部に溶液が充填された後、メイン流路の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。
また、本発明の分析装置は、前記構成に加えて、前記マイクロ分析チップを備えていることが好ましい。
前記構成によれば、簡単な構成で溶液を定量的に秤取すると共に、秤取した溶液を流路内に充填したままで分析することができる分析装置を提供することが可能となる。
本発明のマイクロ分析チップは、以上のように、一端が外部に解放された開放孔に接続されているメイン流路と、溶液を前記メイン流路の内部に導入する第1導入流路と、前記メイン流路の内部に導入された溶液を排出する第1排出流路と、前記メイン流路の内部に導入された溶液の特性を、当該メイン流路の内部で分析する分析部とを備えており、前記第1導入流路及び前記第1排出流路が、共に、前記メイン流路において前記分析部に対して前記開放孔と異なる側に設けられている構成である。
また、本発明のマイクロ分析チップを用いた溶液の送液方法は、以上のように、前記液導入孔に溶液を注入し、注入された溶液を、前記導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する導入ステップと、前記導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填する充填ステップと、前記液導入孔に残存する溶液を排出する第1排出ステップと、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填された溶液を排出する第2排出ステップとを含んでいる方法である。
また、本発明のマイクロ分析チップを用いた溶液の送液方法は、以上のように、前記第1液導入孔及び前記第2液導入孔に溶液を注入し、前記第1液導入孔に注入された溶液を、前記第1導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第1導入ステップと、前記第1導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端と前記開放孔との間に充填する第1充填ステップと、前記第1開閉バルブを開いて、前記メイン流路の内部に導入された溶液の排出を促し、前記第1液導入孔に残存する溶液を排出する第1排出ステップと、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填された溶液を排出する第2排出ステップと、前記第1開閉バルブを閉じ、前記第2開閉バルブを開いて、前記第2液導入孔に注入された溶液を、前記第2導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第2導入ステップと、前記第2導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填する第2充填ステップとを含んでいる方法である。
また、本発明のマイクロ分析チップ用いた溶液の送液方法は、以上のように、前記第1液導入孔、前記第2液導入孔、及び前記第3導入流路に溶液を注入し、前記第1液導入孔に注入された溶液を、前記第1導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第1導入ステップと、前記第1導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填する第1充填ステップと、前記第1開閉バルブを開いて、前記メイン流路の内部に導入された溶液の排出を促し、前記第1液導入孔に残存する溶液を、前記第1排出流路を介して排出する第1排出ステップと、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填された溶液を排出する第2排出ステップと、前記第1開閉バルブを閉じ、前記第3開閉バルブを開いて、前記第3液導入孔に注入された溶液を、前記第3導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第2導入ステップと、前記第2導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填する第2充填ステップと、前記第1開閉バルブを開いて、前記第2充填ステップにおいて充填された溶液及び前記第3液導入孔に残存する溶液を、前記第1排出流路を介して排出する第3排出ステップと、前記第1開閉バルブを閉じ、前記第2開閉バルブを開いて、前記第2液導入孔に注入された溶液を、前記第2導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第3導入ステップとを含んでいる方法である。
それゆえ、簡単な構成で溶液を定量的に秤取すると共に、秤取した溶液を流路内に充填したままで分析することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について図1〜図18に基づいて説明すれば、次の通りである。以下の特定の実施形態で説明すること以外の構成は、必要に応じて説明を省略する場合があるが、他の実施形態で説明する構成と同じである。また、説明の便宜上、各実施形態に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
〔実施の形態1〕
(マイクロ分析チップ100の構成)
図1及び2を参照しつつ、実施の形態1に関するマイクロ分析チップ100の構成について説明する。図1(a)は、実施の形態1にかかるマイクロ分析チップ100の構造を示す平面図であり、図1(b)は、マイクロ分析チップ100のX−Y断面図である。
マイクロ分析チップ100は、図1(a)に示すように、メイン流路1、第1導入流路(導入流路)2、第1排出流路(排出流路)3、第2導入流路4、第1液導入孔(液導入孔)5、第2液導入孔6、開放孔7、第1液排出部8、吸収体9、疎水部(堰止部)11、反応検出部(分析部)13、第1基板15、第2基板16、作動電極(電極、第1開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)20、作動電極(電極、第2開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)21、参照電極22(電極、第1開閉バルブ、第4開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)、参照電極23(電極、第2開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)、電極パッド30、及び引き出し電極34を含む。
メイン流路1は、第1の液体(溶液)40が充填、排出され、さらに、第2の液体(溶液)41が充填される流路部分である。メイン流路1の内部には、疎水部11、反応検出部13(分析部)が設けられている。また、メイン流路1の一端(紙面に対して右側の端)は、開放孔7に接続されている。
なお、メイン流路1の他端(紙面に対して左側の端)は、図1(a)に示すように閉じていても良いし、図1(f)に示すように、閉じておらず、第1導入流路2などが接続されていても良い。
疎水部11は、その外壁面(気相‐固相界面又は液相‐固相界面)の全部又は一部が疎水性材料で構成されており、その疎水性により、メイン流路1の内部に導入された第1の液体40が開放孔7に達する手前で堰き止める(静止させる)。
なお、疎水部11の外壁面の一部の領域を疎水性とし、他の一部の領域を親水性とすることにより、疎水部11の疎水性の程度を調整することができる。
また、本実施形態では、疎水部11で、第1の液体40を堰き止める構成を採用しているが、疎水部11は、設けられていなくても良い。この場合は、開放孔7に達した第1の液体40は、表面張力により、その開放孔7に繋がる流路内面(第1基板15及び第2基板16の表面状態)の疎水性又は親水性の程度に応じて、溶液の表面張力によりドーム状に少し張り出した凸形状(図1(c))、略平面形状(図1(d))、若しくは小皿状に中央部が少し窪んだ凹形状(図1(e))、のいずれかの気相‐液相界面を形成して停止する。
なお、図1(c)は、第1基板15及び第2基板16の表面が疎水表面(接触角>90°)である場合を示し、図1(d)は、同表面の接触角=90°の場合を示し、図1(e)は、同表面が、親水表面(接触角<90°)の場合を示している。
反応検出部13は、メイン流路1の内部に導入された第1の液体40を反応させ、及び/又は、第1の液体40の成分の検出を行う部分であり、抗原抗体反応(分析)と電気化学検出(分析)を行うための電極により形成されている。なお、本実施の形態では、同じ電極で反応及び検出を行う構成を用いたが、これに限定されるものではなく、反応部と検出部を別々に設けた構成でも良い。また、複数の物質を測定するため、反応検出部13を複数個設けても良い。
第1導入流路2は、一端が、構造体内(メイン流路1の内部)に導入する第1の液体40が注入される第1液導入孔5に接続され、他端がメイン流路1の内壁面(流路内面)に接続される。
なお、図1(a)に示すマイクロ分析チップ100では、第1導入流路2が、メイン流路1の内壁面に接続されているが、このような構造に限られない。例えば、図1(f)に示すように、第1導入流路2が、メイン流路1の他端に接続されていても良い。
第1排出流路3は、一端が、外部に開放された第1液排出部8に接続され、他端が、メイン流路1の内壁面に接続される。また、第1排出流路3には、液体の流れを制御する第1開閉バルブが備えられている。なお、本実施形態では、第1開閉バルブは、作動電極20と、参照電極22との組合せからなるエレクトロウェッティングバルブであるが、これに限定されるものではない。ダイヤフラム型バルブなど、溶液の流入を停止、又は開始できるもの(又は溶液の流れを調整できるもの)を用いることができる。以下、同様の説明は適宜、省略する。
第2導入流路4は、一端が、構造体内に導入する第2の液体(溶液)41が注入される第2液導入孔6に接続され、他端がメイン流路1の内壁面に接続される。また、第2導入流路4には、液体の流れを制御する第2開閉バルブが備えられている。なお、本実施形態では、第2開閉バルブは、作動電極21と、参照電極23との組合せからなるエレクトロウェッティングバルブである。
開放孔7は、図1(b)に示すように、第2基板16に対して上側(紙面に対して上側)に開放された孔であり、メイン流路1の一端に接続され、メイン流路1の内部と外部とを接続する(繋ぐ)孔である。開放孔7を空気が出入りすることによって、溶液の導入及び充填をスムーズに行うことが可能である。
次に、第1導入流路2及び第1排出流路3は、共に、メイン流路1において反応検出部13に対して、開放孔7とは異なる側(開放孔7と反対側)に設けられている。
また、マイクロ分析チップ100は、図1(a)及び(b)に示すように、第1基板15(図2(a)も併せて参照)と、第2基板16(図2(b)も併せて参照)とで形成されている。第1基板15には、各流路用の溝(メイン流路1を形成するためのメイン流路形成溝、第1導入流路2を形成するための第1導入流路形成溝、第1排出流路3を形成するための第1排出流路形成溝など)が形成されており、第2基板16が第1基板15に形成された各溝を封止することで、各流路(メイン流路1、第1導入流路2、及び第1排出流路3)が構成される。
なお、図1(b)における領域R1は、第1の液体40が充填される際に反応検出部13を通過した液体が充填される範囲である。領域R1内の液量は分析実験ごとに変化することは無いため、充填の際に反応検出部13を通過する第1の液体40の量は毎回一定であると言える。また、第2導入流路4を介して導入される第2の液体41の領域R2内の液量も分析実験ごとに変化することは無いため、充填の際に反応検出部13を通過する第2の液体の量は毎回一定であるといえる。なお、領域R1は、反応検出部13の左側(メイン流路1の他端側)の端部から疎水部11(厳密には、疎水部11で堰き止められた溶液の気液境界である)の左端までの範囲である。一方、領域R2は、反応検出部13の右側(メイン流路1の他端側)から一端までの範囲である。
図2(a)は、本実施形態に関するマイクロ分析チップ100の第1基板15の構造を示す構造図であり、図2(b)は、第2基板16の構造を示す構造図である。
図2(a)に示すように、第1基板15には、メイン流路1、第1導入流路2、第2導入流路4、及び第1排出流路3用の凹形状の溝(メイン流路形成溝、第1導入流路形成溝、第1排出流路形成溝)と、第1液排出部8、開放孔7、第1液導入孔5及び第2液導入孔6用の貫通孔とが形成されている。
また、図2(b)に示すように、第2基板16は、第1基板15に形成された各溝及び各貫通孔を下方からシール(封止)する基板である。この第2基板16には、反応検出部13、作動電極20、作動電極21、参照電極22、参照電極23、電極パッド30、引き出し電極34、疎水部11が形成されている。また、吸収体9を第1液排出部8に載置する。第1基板15及び第2基板16の詳細な構成は後述する。
第1排出流路3の排出側に設けられた第1液排出部8は、第1基板15に設けられた貫通孔により大気開放されており、吸収体9が第2基板16上に備えられている。
吸収体9は、液体(溶液)を吸収する吸収体であって、高分子吸収体や、多孔性物質、親水性メッシュ、海綿体、綿、濾紙等、その他毛細管力を利用し液体を吸収する材料により構成されていれば何であっても構わない。
この吸収体9により、溶液の排出を短時間に行うことが可能となり、測定時間を短縮することができる。また、吸収体9が液体を保持することにより、溶液の外部への流出を防ぐことが可能となるという利点がある。
電極パッド31及び引き出し電極34は、電気的制御信号の入力や、検出信号の出力などを行う。ここで、電極パッド31及び引き出し電極34の材料として金電極を用いると、金を用いた他の電極と作成工程を併用できるので、工程を簡易化できる。電極パッド31及び引き出し電極34は、その他、白金、アルミニウム、銅などの材料を含んだ導電性材料を用いて形成してもよい。
(第1基板15及び第2基板16の構成)
第1基板15の厚みは0.1mm〜10mm程度である。また、第2基板16の厚みは0.01mm〜10mm程度である。開放孔7は直径が10μm以上の貫通孔とする。
このマイクロ分析チップ100は、第1基板15及び第2基板16を貼りあわせることにより構成することができる。例えば、第1基板15は、各流路用の凹形状の溝が形成されているPDMS(ポリジメチルシロキサン)で、第1基板15を蓋(封止)する第2基板16は、ガラスで構成することができる。PDMSからなる第1基板15は、疎水性(接触角100°〜120°)であり、ガラスからなる第2基板16は、親水性(接触角5°〜30°)である。よって、各流路を形成する4つの内壁面(本実施形態では、例えば、メイン流路1の矩形の断面を形成する4つの内壁面)のうち、ガラスで構成された1つの内壁面が親水性(ガラス)となり、他の3つの内壁面が疎水性(PDMS)となる。
この構造においては、溝幅が狭くなるに従って流路を構成する4つの内壁面全体に占める親水性の壁面(ガラス)の割合が相対的に小さくなり、疎水性の壁面(PDMS)の割合が相対的に大きくなるので、全体として毛細管力が小さくなる。他方、流路幅(溝幅)が広くなるに従い毛細管力が大きくなる。この原理を利用して、各流路に作用する毛細管力を調整することができる。
第1基板15及び第2基板16の材料は、これらに限定されるものではなく、各流路の内壁面の少なくとも一部が親水性となる材料であれば、マイクロ分析チップ100の用途に応じて適切な素材を選択することが可能である。例えばマイクロ分析チップ100に光学的検出を行う検出部を組み込む場合には、第1基板15及び第2基板16の何れか一方又は双方の材料として、励起光による発光が少ない透明又は半透明の材質の材料を用いることが望ましい。
このような透明又は半透明な材料としては、ガラス、石英、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、フィルム等が挙げられる。なかでも、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂は、透明性及び成型性の観点から好ましい。励起光による発光が少ないプラスチック材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレートの水素原子をフッ素原子に置換したフッ化ポリメチルメタクリレート等のフッ素系のプラスチック材料や、触媒や安定剤等の添加剤に蛍光を発しない部材を用いたポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
他方、マイクロ分析チップ100の流路内で電気的な制御や電気的な測定を行う場合には、第1基板15又は第2基板16の表面に電極を形成する必要があるので、第1基板15又は第2基板16の一方又は両方を電極形成可能な材料とする。電極形成可能な材料としては、平坦性、加工性の観点からガラス、石英、シリコンが好ましい。また、電極は、作製が容易である点で、溝を形成しない第2基板16に形成するのが好ましい。
なお、各流路の内壁面の「親水性」や「疎水性」は、基板材料が親水性の基板又は疎水性の基板を用いることにより容易に実現できるが、本発明でいう親水性や疎水性は基板材料自身の持つ性質に由来するものに限定されない。例えば、疎水性である流路の一部に親水性処理を施すことにより、「流路の内壁面の一部が親水性」を実現することができる。逆に、親水性材料からなる基板表面の一部に疎水膜の形成等の疎水処理を施すことにより、「流路の内壁面の一部が親水性」としてもよい。
親水化処理としては、例えば酸素プラズマ処理やUV(Ultra Violet)処理などを用いることができる。また、界面活性剤や親水性の官能基を持つ試薬を表面に塗布することによっても親水性を高めることができる。他方、疎水化処理としては、フッ酸処理や、テトラフルオロエチレン被膜を形成する等の方法がある。
(流路の形成方法)
流路の形成方法としては、例えば、機械加工による方法、レーザー加工による方法、薬品やガスによるエッチングによる方法、金型を用いた射出成型法、プレス成型法、鋳造による方法等が考えられる。これらの内、金型を用いる方法及びエッチングを用いる方法が、形状寸法の再現性が高い点で好ましい。
溶液の流れる方向(流れ方向)に直交する流路断面の形状は矩形に限定されるものではなく、円形状、楕円形状、半円形状、逆三角形状等であってもよい。
(流路寸法)
メイン流路1、第1導入流路2、第2導入流路4、及び第1排出流路3の幅(溝幅)と高さ(溝深さ)とは、溶液の濡れと毛細管力によって溶液が前記各流路へ浸透していくことが可能な寸法に設定される。
高さに関して好ましくは、1μm〜5mm程度に設定し、例えば全て略一定(50μm程度)とする。高さは必ずしも一定とする必要はないが、一定であると作製が容易であり、幅の調整のみで毛細管力を調整することが可能である。
なお、外部のポンプを用いて溶液を送液する場合は、毛細管力は不要となるため、各流路において内壁面の一部が親水性である必要は無い。よって、この場合は第1排出流路3に第1開閉バルブを設けなくても構わない。
幅に関して好ましくは、1μm〜5mm程度に設定される。この場合、高さは一定であることが望ましい。
ここで、平均溝幅は、各流路において液体が流れる方向に対して垂直方向の溝幅の流路全体での平均値とする。
ここで、メイン流路1の平均溝幅をW1とし、第1導入流路2の平均溝幅をW2としたとき、W2<W1が満たされることが好ましい。このような構成にすることで、第1液導入孔5に残った溶液が排出された後、メイン流路1の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。
なお、流路の幅は一定でなくてもよく、例えばメイン流路1において反応検出部13が設けられた部分のみ幅が広くなった構造でも構わない。幅を広げることにより、反応検出部13の面積を大きくすることが可能となる。
また、流路の高さは一定でなくてもよく、この場合も、高さと溝幅の両方を最適設計することで、第1液導入孔5に残った溶液が排出された後、メイン流路1の内部の溶液を液残りすることなく排出することができる。
また、メイン流路1と開放孔7との接続部には、疎水部11が設けられている。疎水部11は、溶液と、第1基板15と(又は第2基板16)との接触角が90°以上となる部分であって、例えば、フッ素系の疎水剤やネガ型レジスト等の疎水性材料を第2基板16の一部に設けることにより形成できる。
メイン流路1と開放孔7との接続部に疎水部11を設けることにより、当該箇所において毛細管現象が働かなくなるため、開放孔7への溶液の流入を防止することができ、開放孔7の機能を確実に果たすことが可能となり、溶液の導入を安定に動作することが可能となる。
なお、疎水部11は、液体の流れを電圧の印加によって制御可能な、エレクトロウェッティングバルブにより構成されていても良い。当該構成によれば、疎水部11において溶液を堰き止めるか否かを、すなわち、液体を疎水部11まで充填するか、或いは開放孔7まで充填するかを切り換えることが可能となる。よって、必要に応じて、分析に使用される液体の量を2通りの液体の量から選択して定量的な分析を行うことが可能となる。なお、エレクトロウェッティングバルブの詳細については後述する。
(エレクトロウェッティングバルブ)
次に、図16及び17を用いて、エレクトロウェッティングについての説明を行う。簡便な溶液の移送切換(溶液の流れの開閉)方法として、特許文献1において提案されているような、エレクロトウェッティングを利用したマイクロバルブ(エレクトロウェッティングバルブ)が存在する。図16は、エレクトロウェッティングバルブを利用したマイクロ分析チップの一例を示す模式図である。
図16に示すように、このマイクロ分析チップの流路402内には、作動電極405と参照電極406とを備えたエレクトロウェッティングバルブが設けられている。作動電極405表面は、電圧を印加しない状態では、疎水性であり、電圧を印加したときには親水性となる。このため、電圧印加により溶液の停止と移動とを切り換える(溶液の流れを開閉する)ことができる。
次に、図17(a)は、エレクロトウェッティングバルブにおいて、作動電極405と参照電極406との間に電圧を印加していない状態を示す模式図であり、図17(b)は、作動電極405と参照電極406との間に電圧を印加した状態を示す模式図である。電圧を印加していない状態では、作動電極405の表面には疎水性膜407が形成されているため、流路内を毛細管力により移動してきた溶液408は、作動電極405に到達した時点で停止する。電圧を印加することにより、エレクロトウェッティングの効果で作動電極405表面が親水化され、停止していた溶液408が作動電極405上を通過して、流路内を移動する。
マイクロ分析チップ100の第1排出流路3及び第2導入流路4には、それぞれ少なくとも参照電極と作動電極とを有するエレクトロウェッティングバルブ(それぞれ第1開閉バルブ及び第2開閉バルブ)が、溶液の流れを制御する開閉バルブとして形成されている。
第1排出流路3及び第2導入流路4には、エレクトロウェッティングバルブ用の作動電極20及び21が設けられ、メイン流路1の一端側の第1排出流路3の近傍及び第2液導入孔6内には、エレクトロウェッティングバルブ用の参照電極22及び23が設けられている。
作動電極20及び21、参照電極22及び23はそれぞれ、引き出し電極34により電極パッド30に配線されており、電極パッド30に接続される外部の装置(図示せず)により印加電圧が制御されて、開閉バルブの開閉動作が行われる。
エレクトロウェッティングバルブは、作動電極の表面が、電圧を印加しない状態では疎水性であり、電圧を印加したときには親水性となる。このため、電圧印加により溶液の停止と移動とを切り換える(溶液の流れを開閉する)ことができる。
図17に示すように、電圧を印加していない状態では、流路内を毛細管力により移動してきた溶液408は、作動電極405の表面が疎水性であるため、作動電極405に到達した時点で停止する(図17(a))。電圧を印加することにより、エレクロトウェッティングの効果で、作動電極405の表面が親水化され、停止していた溶液408が作動電極を通過して、流路内を移動する(図17(b))。
作動電極405上の流路は、溶液408を確実に停止させるために、電圧を印加しない状態では疎水性であることが好ましい。そのために、第1基板15自体に疎水性の材料を用いるのが好ましい。また、第1基板15の一部若しくは全面に疎水性膜を形成する等により、第1基板15の一部若しくは全面を疎水性にしても構わない。
また、本実施形態では、マイクロバルブとしてエレクトロウェッティングバルブを用いているが、これに限定されるものではない。ダイヤフラム型バルブなど、液体の流入を停止、又は開始できるもの(又は溶液の流れを調整できるもの)を用いることができる。
また、図17(c)は、親水性材料の表面における水滴の様子を示す模式図であり、図17(d)は、疎水性材料の表面における水滴の様子を示す模式図である。図17(c)及び(d)に示す接触角θは、材料と液滴表面とが接触する点における液滴表面の接線と材料表面とが成す角であり、接触角と呼ばれる。液体と材料とが互いになじみやすい性質を持っている場合、図17(c)のように小さな接触角θとなり、液体と材料とが互いになじみにくい性質を持っている場合、図17(d)のように大きな接触角となる。毛細管現象は、接触角θの小さい、すなわち、互いになじみやすい液体と材料との間で発生する。
(作動電極20及び21の構成)
作動電極20及び21は、金薄膜(導電性薄膜)で形成されている。金以外にカーボンやビスマスを用いても良い。これらの材料は、作動電極20及び21に電圧を印加した状態において、水素等の発生が少なく電極が劣化しにくいという利点がある。
作動電極20及び21の表面に、25℃(常温)、比抵抗が18kΩ・cmの純水に対する接触角が80°以上の薄膜を設ける構成とすることができる。この構成を採用することにより、電圧印加しない状態で溶液を確実に停止することができ、開閉バルブを安定に動作することが可能となる。
前記薄膜としては、フッ素含有物質若しくはチオール基を有する物質が適している。これらの疎水性の物質を前記薄膜の構成材料として用いることにより、電圧を印加しない状態で、作動電極20及び21上の接触角を90°よりも大きくすることができ、開閉バルブで液を停止しやすくなる。よって、開閉バルブの開閉動作をより安定に行うことができる。なお、薄膜は、前記物質に限定されるものではなく、表面の接触角が金薄膜よりも大きい、すなわち、金薄膜よりも強い疎水性を示すものであればよい。
また、作動電極20及び21表面の薄膜の厚みは、0.1nm以上、100nm以下であることが好ましい。
なお、薄膜の厚みは、単原子膜若しくは単分子膜を考慮すると、1オングストローム程度、すなわち、0.1nm程度が下限となる。
この構成によれば、より小さな電圧で作動電極20及び21表面を親水性とすることが可能となるため、開閉バルブの開閉動作に必要な電圧を低減することができる。したがって、電圧を印加する装置の小型化、さらにはシステムの小型化が可能となる。
また、導電性薄膜と薄膜との間に、誘電体膜を設けてもよい。この場合、開閉バルブの開閉動作の安定性が向上するが、開閉バルブの開閉動作に必要な印加電圧が高くなる。
また、作動電極は、導電性薄膜のみを形成する構成とすることができる。金属表面を自然空気に曝すと、表面にカーボン堆積物などからなる薄膜(接触角60°〜85°)が形成される。この薄膜は、接触角が前記純水に対して90°より小さいが、前記純水に対する接触角が60〜85°と親水性度合いが低く、且つ、0.1nm以上、1nm以下の極めて薄い膜である。
よって、エレクトロウェッティングバルブの作動電極として十分に機能する。また、前記のような薄膜を形成する場合に比べ、開閉バルブの開閉動作に必要な印加電圧を小さくできる利点がある。
作動電極部の溝幅は、狭くすることが好ましい。この構成によると、電圧を印加しない状態で、作動電極上で液を停止させやすくなり、バルブ動作をより安定に行うことができる。
(参照電極22及び23の構成)
エレクトロウェッティングバルブ用の参照電極22及び23は、銀/塩化銀で形成されている。参照電極22及び23を銀/塩化銀で形成することにより、電極に電流を流した場合に、電位の変化が少ないという利点がある。銀/塩化銀以外に、金、カーボン、ビスマスで形成してもよい。
作動電極20及び21と参照電極22及び23の間に印加する電圧は、作動電極20及び21の構成により異なるが、3V以下が好ましい。特に、作動電極20及び21が金薄膜と、金薄膜の表面を空気に曝して形成させた薄膜と、からなる構成の場合、印加電圧が1V以下で動作が可能である。印加電圧を低減することにより、システムの小型化が可能となり、携帯機器への応用が可能となる。
(動作説明)
図3に、マイクロ分析チップ100における溶液の流れを示す。ここでは、図3(a)〜(e)を参照しながら、マイクロ分析チップ100内における溶液の流れを説明する。
先ず、第2の液体41を第2液導入孔6に注入し(図3(a))、続いて、第1の液体40を第1液導入孔5に注入する。各溶液の注入量は、メイン流路1の容積よりも多ければよく、一定量にする必要は無い。
第1液導入孔5から導入された第1の液体40は、毛細管力によって、第1導入流路2を経て、メイン流路1を開放孔7へと向かって移動し、第1の液体40はメイン流路1の内部に充填され停止する(図3(b))。
次に、第1排出流路3の第1開閉バルブを開くことで、第1液導入孔5に残った第1の液体40が、毛細管力によって、第1排出流路3を通り、第1液排出部8に排出される(図3(c))。ここで、第1導入流路2及び第1排出流路3は、メイン流路1の反応検出部13に対して、開放孔7と反対側(異なる側)に、メイン流路1と接続されている。よって、第1液導入孔5に残った第1の液体40は反応検出部13を通過することなく第1排出流路3から排出される。よって、第1の液体40は、注入する溶液量にかかわらず、メイン流路1の反応検出部13を通過する溶液量が毎回一定となり、定量的に反応及び/又は検出を行うことが可能となる。
続いて、メイン流路1の内部に充填された第1の液体40が、第1排出流路3を通り、第1液排出部8に排出される(図3(d))。第1排出流路3がメイン流路1の反応検出部13に対して開放孔7と反対側に接続されているため、第1の液体40は、メイン流路1の内部に液残りすること無く排出することができる。
また、第1液排出部8に吸収体9を備える構造としても良い。当該構成により、流路における毛細管力のみでの排出に比べ、排出速度を速くすることができ、メイン流路1の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。
また、メイン流路1の溝幅の最小値を、第1導入流路2及び第1排出流路3の溝幅の最小値より大きくすることにより、開放孔7から空気が導入されやすくなる。よって、メイン流路1の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。
さらに、メイン流路1と開放孔7との接続部に、外壁面の全部又は一部が疎水性である疎水部11が設けられている構造とすることにより、開放孔7への溶液の進入を防止することができ、より安定に送液することが可能となる。
次に、第2導入流路4の第2開閉バルブを開くと、第2液導入孔6から導入した第2の液体41が、毛細管力によって、第2導入流路4を通り、メイン流路1に移動し、メイン流路1の内部に充填され停止する(図3(e))。この際、第2の液体41がメイン流路1の反応検出部13を通過する量は、注入する溶液量にかかわらず毎回一定となり、定量的に反応及び/又は検出を行うことが可能となる。したがって、2つ(2種類)の溶液に対して、定量的に反応及び/又は検出を行うことが外部のポンプ等を用いることなく可能となる。
なお、第1導入流路2に開閉バルブを設けても構わない。この場合、第2の液体41が第1液導入孔5に侵入することが防止され、メイン流路1の反応検出部13を通過する第2の液体41の溶液量の定量性がさらに向上する。
また、第1導入流路2に逆流防止部を設けても構わない。逆流防止部としては、メニスカスを利用した溝構造や逆止弁を設けた構造等を用いることができる。この場合、第2の液体41が第1液導入孔5に侵入することが防止されるため、メイン流路1の反応検出部13を通過する第2の液体41の溶液量の定量性がさらに向上する。
(免疫分析)
図1に示したマイクロ分析チップ100は、外部のポンプ等を用いることなく、複数の溶液の送液制御及び定量的に反応及び/又は検出を行うことが可能である。
例えば、まず、メイン流路1の内部に抗体等を固定化し、抗原を含む液と酵素標識抗体を含む液の混合液を流して抗原抗体反応させる。そこへ、さらに基質溶液を流して酵素基質反応を行わせ、酵素基質反応により生じた電極活性物質の量を検出用電極で検出することにより、抗原の量を測定するという免疫分析法による抗原濃度の測定に利用することができる。
下記の手順を行うことにより、本マイクロ分析チップ100を用いて特定タンパク質を測定することができる。
(1)検出用電極上に抗体を固定。
(2)第1の液体40として、前処理(分離、希釈、分解)後の血液サンプルと酵素標識抗体との混合液を、メイン流路1に導入し、一定時間停止後、排出。
(3)第2の液体41として、基質溶液を導入し、一定時間停止。
(4)電気化学検出により、血液サンプル中の特定タンパク質の量を測定。
本構成によれば、少量の溶液を定量的に反応及び検出を行うことが可能となり、免疫分析法による特定タンパク質の測定を簡便かつ正確に行うことが可能となる。本実施形態のマイクロ分析チップ100を用いることにより、システムの小型化、低コスト化が可能となり、携帯機器への応用が容易になるという利点がある。
本実施形態では、電気化学的検出を行う場合を示したが、光学的検出等の他の方法で検出を行っても構わない。例えば、まずメイン流路1の内部に抗体等を固定化し、抗原を含む液と蛍光色素を付けた抗体を含む液との混合液を導入して抗原抗体反応を起こす。その後、溶液を排出し、励起光を照射すれば、その蛍光の量から抗原の量を測定することができる。この場合は、第2導入流路4及び第2開閉バルブを設ける必要が無い。
〔実施の形態2〕
(マイクロ分析チップ101の構成)
次に、前記実施の形態1とは異なる構造のマイクロ分析チップ101について、図4を用いて詳細に説明する。
図4は、マイクロ分析チップ101の構造を示す平面図である。本実施形態によるマイクロ分析チップ101は、第3導入流路50及び第2排出流路51を備えること以外は、前記実施の形態1と同様である。このため、第3導入流路50及び第2排出流路51についてのみ、構造を詳細に説明し、その他の説明は省略する。
第3導入流路50は、一端が、構造体内に導入する第3の液体42が注入される第3液導入孔52に接続され、他端がメイン流路1の内壁面に接続される。また、第3導入流路50には、液体の流れを制御する第3開閉バルブが備えられている。
第2排出流路51は、一端が、外部に開放された第2液排出部53に接続され、他端が、メイン流路1の内壁面(流路内面)に接続される。また、第2排出流路51には、液体の流れを制御する第4開閉バルブが備えられている。そして、第2排出流路51は、メイン流路1の反応検出部13に対して、開放孔7及び第3導入流路50と反対側に、メイン流路1と接続されている。
また、第3導入流路50及び第2排出流路51は、内壁面(流路内面)の少なくとも一部が親水性である。
図5(a)は、本実施形態に係るマイクロ分析チップ101の第1基板15の構造を示す構造図であり、図5(b)は、第2基板16の構造を示す構造図である。
図5(a)に示すように、第1基板15には、メイン流路1、第1導入流路2、第2導入流路4、第3導入流路50、第1排出流路3及び第2排出流路51用の溝と、第1液排出部8、第2液排出部53、開放孔7、第1液導入孔5、第2液導入孔6及び第3液導入孔52用の貫通孔とが形成されている。
また、図5(b)に示すように、第2基板16には、反応検出部13、エレクトロウェッティングバルブ用の作動電極(電極、第1開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)20、作動電極(電極、第2開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)21、作動電極(電極、第3開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)60、作動電極(電極、第4開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)61、エレクトロウェッティングバルブ用の参照電極(電極、第1開閉バルブ、第4開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)22、参照電極(電極、第2開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)23、参照電極(電極、第3開閉バルブ、エレクトロウェッティングバルブ)62、電極パッド30、引き出し電極34及び疎水部11が形成されている。また、吸収体9及び54が液排出部に載置されている。
第3導入流路50及び第2排出流路51の幅(溝幅)と高さ(溝深さ)は、溶液の濡れと毛細管力によって溶液が浸透していくことが可能な寸法に設定される。
高さに関して好ましくは、1μm〜5mm程度に設定され、例えば全て略一定(50μm程度)とする。高さは必ずしも一定とする必要はないが、一定であると作製が容易であり、幅のみで毛細管力を調整することが可能である。
幅に関しては、毛細管力を利用するため、好ましくは1μm〜5mm程度に設定される。
第2液排出部53は、第1基板15が大気開放されており、第2基板16に吸収体54が備えられている。
本構成により、溶液の排出を短時間に行うことが可能となり、測定時間を短縮することができる。また、吸収体54により溶液を保持することにより、溶液の外部への流出を防ぐことできるという利点がある。
第3導入流路50及び第2排出流路51のそれぞれには、溶液の流れを開閉する開閉バルブとして、少なくとも参照電極と作動電極とを有するエレクロトウェッティングバルブが形成されている。
第3導入流路50及び第2排出流路51のそれぞれには、エレクロトウェッティングバルブ用の作動電極60、及び61が設けられ、メイン流路1の第2排出流路51の近傍及び第3液導入孔52のそれぞれには、エレクロトウェッティングバルブ用の参照電極22、及び62が設けられている。
各作動電極及び各参照電極はそれぞれ、引き出し電極34により電極パッド30に配線されており、電極パッド30に接続される外部の装置(図示せず)により印加電圧が制御されて、各開閉バルブの開閉動作が行われる。
作動電極上の流路は、溶液を確実に停止させるために、電圧を印加しない状態では疎水性であることが好ましい。
また、本実施形態では、マイクロバルブとしてエレクトロウェッティングバルブを用いているが、これに限定されるものではない。ダイヤフラム型バルブなど、液体の流入を停止、又は開始できるものを用いることができる。
作動電極は、金薄膜(導電性薄膜)で形成されている。金以外にカーボンやビスマスを用いても良い。
作動電極の表面に、25℃、比抵抗が18kΩ・cmの純水に対する接触角が80°以上の薄膜を設ける構成とすることができる。この薄膜としては、フッ素含有物質若しくはチオール基を有する物質が適している。薄膜は、前記物質に限定されるものではなく、表面の接触角が金薄膜よりも大きなものであればよい。また、金薄膜上の薄膜の厚みは、0.1nm以上、100nm以下であることが好ましい。
また、作動電極は、導電性薄膜のみを形成する構成とすることができる。作動電極部の溝幅は、狭くすることが好ましい。エレクトロウェッティングバルブ用の参照電極は、銀/塩化銀で形成されている。
作動電極と参照電極との間に印加する電圧は、作動電極の構成により異なるが、3V以下が好ましい。特に、作動電極が金薄膜と、金薄膜の表面を空気に曝して形成させた薄膜とからなる構成の場合、印加電圧が1V以下で動作が可能である。
(動作説明)
図6に、マイクロ分析チップ101における溶液の流れを示す。ここでは、図6(a)〜(i)を参照しながら、マイクロ分析チップ100内における溶液の流れを説明する。
先ず、第2の液体41を第2液導入孔6に、第3の液体42を第3液導入孔52にそれぞれ注入し(図6(a))、続いて、第1の液体40を第1液導入孔5に注入する。各溶液の注入量は、メイン流路1の容積よりも多ければよく、一定量にする必要は無い。
第1液導入孔5から導入された第1の液体40は、第1導入流路2を経て、毛細管力によって、メイン流路1を開放孔7へと向かって移動する。そして、第1の液体40はメイン流路1の内部に充填され停止する(図6(b))。
次に、第1排出流路3の第1開閉バルブを開くことで、第1液導入孔5に残った第1の液体40が、毛細管力によって、第1排出流路3を通り、第1液排出部8に排出される(図6(c))。ここで、第1導入流路2及び第1排出流路3は、メイン流路1の反応検出部13に対して、開放孔7と反対側に、メイン流路1と接続されている。よって、第1液導入孔5に残った第1の液体40は反応検出部13を通過することなく第1排出流路3から排出される。よって、第1の液体40は、注入する溶液量にかかわらず、メイン流路1の反応検出部13を通過する溶液量が毎回一定となり、定量的に反応及び/又は検出を行うことが可能となる。
続いて、メイン流路1の内部に充填された第1の液体40が、第1排出流路3を通り、第1液排出部8に排出される(図6(d))。第1排出流路3がメイン流路1の反応検出部13に対して開放孔7と反対側に接続されているため、第1の液体40は、メイン流路1の内部に液残りすること無く排出することができる。
また、第1液排出部8に吸収体9を備える構造としても良い。当該構成により、流路における毛細管力のみでの排出に比べ、排出速度を速くすることができ、メイン流路1の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。
また、メイン流路1の溝幅の最小値を、第1導入流路2及び第1排出流路3の溝幅の最小値より大きくすることにより、開放孔7から空気が導入されやすくなる。よって、メイン流路1の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。
さらに、メイン流路1と開放孔7との接続部に、外壁面の全部又は一部が疎水性である疎水部11が設けられている構造とすることにより、開放孔7への溶液の進入を防止することができ、より安定に送液することが可能となる。
次に、第3導入流路50の第3開閉バルブを開き、第3液導入孔52から導入した第3の液体42が、毛細管力によって、第3導入流路50を通り、メイン流路1に移動し、メイン流路1の内部に充填される。(図6(e))
次に、第2排出流路51の第4開閉バルブを開くことで、第3液導入孔52、第3導入流路50及びメイン流路1の内部の第3の液体42が、順次、第2排出流路51を通り、第2液排出部53に排出される(図6(f))。
ここで、第2排出流路51が、メイン流路1の反応検出部13に対して、第3導入流路50と反対側に、メイン流路1と接続されている。よって、第3の液体42は、全て、メイン流路1の反応検出部13を通過することになる。
第2排出流路51が、メイン流路1の反応検出部13に対して、開放孔7と反対側に接続されているため、第3の液体42は、メイン流路1の内部に液残りすること無く排出することができる。
また、第2液排出部53に吸収体54を備える構造にすることにより、毛細管力のみでの排出に比べ、排出速度を速くすることができ、メイン流路1の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。
また、メイン流路1の溝幅の最小値を、第3導入流路50及び第2排出流路51の溝幅の最小値より大きくしても良い。この場合、開放孔7から空気が導入されやすくなり、メイン流路1の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。
次に、第2導入流路4の第2開閉バルブを開き、第2液導入孔6から導入した第2の液体41が、毛細管力によって、第2導入流路4を通り、メイン流路1に移動し、メイン流路1の内部に充填され停止する(図6(g))。この際、第2の液体41がメイン流路1の反応検出部13を通過する量は、注入する溶液量にかかわらず毎回一定となり、定量的に反応及び/又は検出を行うことが可能となる。
したがって、2つの溶液(第1の液体40及び第2の液体41)に対して定量的に反応及び/又は検出を行い、且つ、他の1つの溶液(第3の溶液42)に対して、注入した全ての液に反応検出部13を通過させることが、外部のポンプ等を用いることなく可能となる。
第1導入流路2に開閉バルブ若しくは逆流防止部を設けても構わない。この場合、第2の液体41が第1液導入孔5に侵入することが防止され、メイン流路1の反応検出部13を通過する第2の液体41の溶液量の定量性がさらに向上する。
(免疫分析)
図4に示したマイクロ分析チップ101は、外部ポンプ等を用いることなく、複数の液の送液制御及び定量的に反応及び/又は検出を行うことが可能である。
例えば、メイン流路1の内部に抗体等を固定化し、抗原を含む液と酵素標識抗体を含む液の混合液を流して抗原抗体反応させ、洗浄溶液を流して非特異的に吸着した抗原を洗浄する。さらに、基質溶液を流して酵素基質反応を行わせ、酵素基質反応により生じた電極活性物質の量を検出用電極で検出することにより、抗原の量を測定するという免疫分析法による抗原濃度の測定に利用することができる。
下記の手順を行うことにより、本マイクロ分析チップ101を用いて特定タンパク質を測定することができる。
(1)検出用電極上に抗体を固定。
(2)第1の液体40として、前処理(分離、希釈、分解)後の血液サンプルと酵素標識抗体の混合液を、メイン流路1に導入し、一定時間停止後、排出。
(3)第3の液体42として、洗浄溶液を導入し、排出。
(4)第2の液体41として、基質溶液を導入し、一定時間停止。
(5)電気化学検出により、血液サンプル中の特定タンパク質の量を測定。
本構成によれば、洗浄及び少量の溶液を定量的に反応及び検出を行うことが可能となり、免疫分析法による特定タンパク質の測定を簡便かつ正確に行うことが可能となる。マイクロ分析チップ101を用いることにより、システムの小型化、低コスト化が可能となり、携帯機器への応用が容易になるという利点がある。
本実施形態では、電気化学的検出を行う場合を示したが、光学的検出を行っても構わない。例えば、メイン流路1の内部に抗体等を固定化し、抗原を含む溶液を第1導入流路2から導入・充填して抗原抗体反応させ、蛍光色素を付けた標識抗体を含む溶液を第2導入流路4から流して抗原抗体反応させ、励起光を照射してその蛍光の量により抗原の量を測定するという光学的測定に利用できる。
本実施形態では、第1の液体40と第3の液体42を排出する液排出部(第1液排出部8、第2液排出部53)を別々に設けているが、図6(h)及び(i)に示すように液排出部(第1液排出部8)を1つにしても構わない。なお、図6(h)に至るまでの動作は、図6(a)〜(e)までの動作と同様である。また、図6(i)では、第1開閉バルブを開いて第3の液体42をメイン流路1の内部から第1排出流路3を介して排出している。また、第1の液体40と第3の液体42を排出する液排出部を別々に設けた場合、各液排出部の排出動作を1回のみとすることができ、排出量を少なくすることができるため、各溶液の排出をより安定に行うことが可能である。一方、第1の液体40と第3の液体42を共通の液排出部から排出する構成とした場合、排出流路及び液排出部は一つずつ設ければよいので、装置を簡素化することが可能である。
また、本実施形態では、導入する溶液の数が3つ(3種類)であったが、これに限定されるものではなく、4つ(4種類)以上であっても構わない。導入する溶液を定量的に反応及び/又は検出させる必要がある場合は、導入流路と排出流路を、メイン流路1の反応検出部13に対して、開放孔7と反対側に、メイン流路1と接続される構造とすればよい。
〔実施の形態3〕
次に、前記実施の形態1及び実施の形態2とはさらに別の構造を有するマイクロ分析チップ102について、図7を用いて詳細に説明する。
図7(a)は、マイクロ分析チップ102の構造を示す平面図であり、(b)はマイクロ分析チップ102のX−Y断面図である。
本実施形態によるマイクロ分析チップ102は、前記実施の形態1及び実施の形態2と、流路を形成する基板の構成が異なっており、流路構造は、前記実施の形態1と同様である。このため、基板構成と形成方法を詳細に説明し、その他の説明は省略する。
本実施形態3に係るマイクロ分析チップ102は、図7(a)に示すように、前記実施の形態1に係るマイクロ分析チップ100と同様の流路構造を有している。
そして、マイクロ分析チップ102は、図7(b)に示すように、前記各流路用の溝側面が形成された中間層(流路形成層)18と、中間層18の溝を上下面から蓋をする(封止する)第2基板(第3基板)16と第3基板(第4基板)17とで形成されている。
図8(a)は、本実施形態に係るマイクロ分析チップの中間層18の構造を示す構造図であり、図8(b)は、第3基板17の構造を示す構造図である。
図8(a)に示すように、中間層18には、メイン流路1、第1導入流路2、第2導入流路4及び第1排出流路3用の溝(メイン流路1を形成するためのメイン流路形成孔、第1導入流路2を形成するための第1導入流路形成孔、第1排出流路3を形成するための第1排出流路形成孔)と、第1液排出部8、開放孔7、第1液導入孔5及び第2液導入孔6用の貫通孔とが形成されている。
図8(b)に示すように、第3基板17は、第1液排出部8、開放孔7、第1液導入孔5及び第2液導入孔6用の貫通孔が形成されており、中間層18に形成された溝を上方からシール(封止)する基板である。
第2基板16は、図2(b)に示すように、前記実施の形態1と同様の構造で、中間層18に形成された溝(孔)、貫通孔を下方からシール(封止)する基板である。
第3基板17の厚みは0.1mm〜10mm程度であり、第2基板16の厚みは0.01mm〜10mm程度である。開放孔7は直径が10μm以上の貫通孔とする。
中間層18の厚みは、溝高さ(溝深さ)に相当するため、溶液の濡れと毛細管力によって溶液が浸透していくことが可能な寸法に設定される。好ましくは、1μm〜5mm程度に設定され、この場合、溝高さが一定となり、幅のみで毛細管力を調整することが可能である。
このマイクロ分析チップ102は、例えば、貫通孔が形成されているPDMS(ポリジメチルシロキサン)からなる第3基板17と、各溝(孔)、各貫通孔が形成されている疎水性のフィルムレジストからなる中間層18と、中間層18を蓋(封止)するガラスからなる第2基板16とを貼りあわせることにより構成することができる。PDMSからなる第3基板17とフィルムレジストからなる中間層18は疎水性であり、ガラスからなる第2基板16は親水性であるので、流路の4つの内壁面のうち、ガラスで構成された1つの内壁面が親水性となり、他の3つの内壁面が疎水性となる。
この構造においては、溝幅(孔幅)が狭くなるに従い流路を構成する4つの内壁面全体に占める親水性の内壁面の割合が相対的に小さくなり、疎水性の内壁面の割合が相対的に大きくなるので、全体として毛細管力が小さくなる。他方、流路幅(孔幅)が広くなるに従い毛細管力が大きくなる。この原理を利用して、各流路に作用する毛細管力を調整することができる。
また、中間層18として、フォトレジストを用いてもよい。この場合は、第2基板16上に、フォトリソグラフィ法により、中間層18を直接形成することにより、貼りあわせる方法に比べて、位置合わせの精度を上げることができる。
第3基板17、中間層18及び第2基板16は、これらに限定されるものではなく、各流路の内壁面の少なくとも一部が親水性であればよい。マイクロ分析チップ102の用途に応じて適切な素材を選択するのがよく、例えばマイクロ分析チップ102に光学的検出を行う検出部を組み込む場合には、第3基板17及び第2基板16の何れか一方又は双方の材料として、励起光による発光が少ない透明又は半透明の材質を用いることが望ましい。
このような透明又は半透明な材料としては、ガラス、石英、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、フィルム等が挙げられる。なかでも、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂は、透明性、成型性の観点から好ましい。励起光による発光が少ないプラスチック材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレートの水素原子をフッ素原子に置換したフッ化ポリメチルメタクリレート等のフッ素系のプラスチック材料や、触媒や安定剤等の添加剤に蛍光を発しない部材を用いたポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
他方、マイクロ分析チップ102の流路内で電気的な制御や電気的な測定を行う場合には、第3基板17又は第2基板16の表面に電極を形成する必要があるので、第3基板17又は第2基板16の一方又は両方を電極形成可能な材料とする。電極形成可能な材料としては、平坦性、加工性の観点からガラス、石英又はシリコンが好ましい。また、電極は、作製が容易である点で、溝を形成しない第2基板16に形成するのが好ましい。
(流路の形成方法)
中間層18の各溝(メイン流路形成孔、第1導入流路形成孔、第1排出流路形成孔など)、貫通孔の形成方法としては、例えば、機械加工による方法、レーザー加工による方法、薬品やガスによるエッチングによる方法等がある。また、上述のとおり、フォトリソグラフィ法を用いてフォトレジストに溝、貫通孔のパターンを形成してもよい。
メイン流路1、第1導入流路2、第2導入流路4及び第1排出流路3の幅(溝幅又は孔幅)は、溶液の濡れと毛細管力によって溶液が浸透していくことが可能な寸法に設定される。
メイン流路1の平均溝幅(平均孔幅)をW1とし、第1導入流路2の平均溝幅(平均孔幅)をW2としたとき、W2<W1が満たされれば良い。ただし、毛細管力を利用するため、好ましくは1μm〜5mm程度に設定される。この構成にすることで、第1液導入孔5に残った溶液が排出された後、メイン流路1の内部の溶液を液残りすることなく容易に排出することが可能となる。
流路の幅は一定でなくてもよく、例えばメイン流路1の反応検出部13が設けられた部分の幅が広くなった構造でも構わない。幅を広げることにより、反応検出部13の面積を大きくすることが可能となる。
(動作説明)
実施の形態3にかかるマイクロ分析チップ102は、図3に示した実施の形態1と同様の溶液の流れとなる。本実施形態のマイクロ分析チップ102により、2つの溶液に対して定量的に反応及び/又は検出を行うことが、外部ポンプ等を用いることなく可能となる。
(免疫分析)
図7に示したマイクロ分析チップ102は、外部のポンプ等を用いることなく、複数の溶液の送液制御及び定量的に反応及び/又は検出を行うことが可能である。例えば、メイン流路1の内部に抗体等を固定化し、抗原を含む液と酵素標識抗体を含む液との混合液を流して抗原抗体反応させ、さらに基質溶液を流して酵素基質反応を行わせ、酵素基質反応により生じた電極活性物質の量を検出用電極で検出する等である。このように、マイクロ分析チップ102は、抗原の量を測定するという免疫分析法による抗原濃度の測定に利用することができる。
本実施形態では、前記実施の形態1と同様の流路構造を用いたが、前記実施の形態2の流路構造を用いることも可能である。この場合、2つの溶液に対して定量的に反応及び/又は検出を行い、且つ、他の1つの溶液に対して、注入した全ての液を反応検出部13を通過させることが、外部ポンプ等を用いることなく可能となる。
〔実施の形態4〕
実施の形態4は、携帯可能なハンディ型のマイクロ分析装置(分析装置)に関する。実施の形態4の内容を図11に基づいて説明する。図11は、実施の形態4にかかる携帯可能なハンディ型のマイクロ分析装置の概要を説明するための概念図である。
このハンディ型マイクロ分析装置は、マイクロ分析チップ2302と、マイクロ分析チップ2302を駆動制御する制御用ハンディ機器2301とで構成されている。マイクロ分析チップ2302は、前記実施の形態1から実施の形態3までで、説明したのと同じマイクロ分析チップである。よって、ここではマイクロ分析チップの詳細な説明は省略する。
図11に示すように、制御用ハンディ機器2301には、表示部2304、入力部2305及びチップ接続口2303が設けられている。
チップ接続口2303は、制御用ハンディ機器2301の下部に設けられており、チップ接続口2303に、マイクロ分析チップ2302の外部接続端子2015を挿入して使用する。チップ接続口2303の奥には、外部接続端子2306と電気的に接続する外部入出力端子(図示せず)が設けられている。マイクロ分析チップの外部接続端子2306をチップ接続口2303に挿入すると、制御用ハンディ機器2301の内部の外部入出力端子とマイクロ分析チップ2302の外部接続端子とが電気的に接続される。
表示部2304は、マイクロ分析チップ2302の測定結果(被検出物質の量など)を表示することができる。
入力部2305は、測定の開始、停止や、測定パラメータを特定するための様々なデータを入力することができる。入力部2305としては、例えばタッチパネル構造が採用できる。
更に制御用ハンディ機器2301には、図示しないが、データを処理することのできるCPUや入力情報及び出力情報を処理するI/O論理回路などの情報処理システムが組み込まれている。
(動作説明)
制御用ハンディ機器2301及びマイクロ分析チップ2302の使用方法としては、まず、マイクロ分析チップ2302を制御用ハンディ機器2301に接続し、各種データを入力し、測定開始ボタンを押す。これにより、予めマイクロ分析チップに備えられ、且つ開閉バルブにより流路内への流入が停止されていた試薬液や試料液(溶液)などの溶液が流路内に順次進入する。これにより各流路内で所定の反応が行われて検出可能物質になり検出部に至り、ここで被検出物質の量に応じた電気信号が発せられる。この電気信号は外部接続端子2306から外部に出力される。
外部接続端子2306から出力された信号は、外部接続端子2306と電気的に接続された制御用ハンディ機器2301の外部入力端子が受け取り、この信号を制御用ハンディ機器2301に予め格納されたソフト情報に基づいて分析する。これにより、被検出物質の量又は種類などを特定することができる。
制御用ハンディ機器2301しては、例えば携帯電話やPDAなどの携帯電子機器を活用することができる。例えばコンピュータ機能を備えた携帯電話に、前記したチップ接続口を設け、この携帯電話にマイクロ分析チップから発信されたデータを処理する分析ソフトを格納する。この携帯電話は通常は携帯電話として機能し、必要に応じて制御用ハンディ機器2301として機能させることができる。
以下に操作方法を例示する。携帯電話にマイクロ分析チップ2302を接続し、携帯電話のボタンにより各種データを入力した後、測定開始ボタンとして設定されたボタンを押す。これにより、あらかじめマイクロ分析チップ2302に準備され、かつ開閉バルブにより流路内への流入が停止されていた試薬液や溶液などが流路内へ進行する。この後、マイクロ分析チップ2302が順次動作して検出部において検出された被検出物質量に応じた電気信号を携帯電話に出力する。携帯電話のコンピュータがこの信号をソフト的に解析し被検出物質の量や種類などを特定する。これを携帯電話のディスプレイに表示する。また、オペレータの指示を受け、その電送機能を利用して解析情報を離れた場所にまで電送する。
このように、携帯機器を利用することにより、コストパフォーマンスに優れ、かつ利便性・使い勝手性に優れたマイクロ分析装置を実現することができる。
なお、分析チップと携帯電子機器との間の信号伝達方式は、両者間で電気信号がやり取りできる限りどのような方式・形態でもよく、必ずしも前記のようなチップ接続口を介する方式である必要はない。
次に、実施例により本発明の説明を行うが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本実施例は、前記実施の形態1に関するものである。図9に、本実施例に関するマイクロ分析チップ103の構造を示す。
本実施例のマイクロ分析チップ103は、図9に示すように、メイン流路1、第1導入流路2、第1排出流路3、第2導入流路4、第1液導入孔5、第2液導入孔6、開放孔7、第1液排出部8及び反応検出部13を備えている。
第1導入流路2、第1排出流路3及び第2導入流路4は、メイン流路1にそれぞれ接続されている。また、第1導入流路2の一端には、第1液導入孔5が、第1排出流路3の排出側には、第1液排出部8が、そして、第2導入流路4の一端には、第2液導入孔6が、それぞれ接続されている。また、反応検出部13はメイン流路1の内部に備えられており、開放孔7はメイン流路1の終端に接続されている。
第1導入流路2及び第1排出流路3は、メイン流路1の反応検出部13に対して、開放孔7と反対側に、メイン流路1と接続されている。
第1導入流路2、第1排出流路3、及び第2導入流路4は、作動電極と参照電極からなるエレクトロウェッティングバルブを備えている。
前記のマイクロ分析チップ103は、前記の実施の形態1と同様に、流路用の凹形状の溝が形成されているPDMSからなる第1基板15とガラスからなる第2基板16とで構成されている。
第1基板15内の溝の形成は、金型による樹脂成型方法を用いた。金型は、シリコン基板にフォトリソ法でレジストパターンを形成後、ドライエッチングプロセス法によりエッチングを行って作製した。作製された金型型枠に、PDMS(東レダウコーニング社製 ジルポット184)を厚みが2mmになるまで流し込み、100℃、15分の加熱を行い、硬化させた。硬化後、金型と硬化したPDMSを分離させ、PDMSを縦15mm、横30mm、厚み2mmに整形し、第1基板15を作製した。
第1基板15のメイン流路1の幅を600μm、開閉バルブ用の作動電極部以外の第1導入流路2、第1排出流路3、及び第2導入流路4の幅を300μm、開閉バルブ用の作動電極部の第1導入流路2、第1排出流路3、及び第2導入流路4の幅を50μmに設定した。流路高さは全て50μmとした。
第1基板15の開放孔用の貫通孔、第1液導入孔5、第1液導入孔5、第3液導入孔52用の貫通孔は、それぞれ、直径が2mmで、ポンチ加工によって形成した。また、第1液排出部8は、第1基板15を貫通した形状をしており、金型により形成した。
第2基板16は、厚み600μmのガラス基板をダイシングソーで縦17mm、横34mmに切断して作製した。
第2基板には、予め、反応検出部13、エレクトロウェッティングバルブ用の作動電極20、21、73、エレクトロウェッティングバルブ用の参照電極22、23、74、電極パッド30、引き出し電極34、疎水部11を作製した。
反応検出部13の一部である検出用作用電極(分析部)70、検出用対向電極(分析部)72、エレクトロウェッティングバルブ用の作動電極20、21、73の作製は、フォトリソ法でレジストをパターニング後、スパッタ法によってチタンを積層したチタン層50nm、金を積層した金層100nmを形成した後、リフトオフ法によってパターニングして形成した。
反応検出部13の一部である検出用参照電極(分析部)71、エレクトロウェッティングバルブ用の参照電極22、23、74は、フォトリソ法でレジストをパターニング後、スパッタ法によって銀を積層した銀層を1μm形成し、リフトオフ法によってパターニングして参照電極を形成した。参照電極を作製後、銀の表面の塩化処理を行い、銀/塩化銀層の参照電極を作製した。塩化処理は、0.1Mの塩酸中で電極153に+100mV、50秒間の電圧印加を行う条件で行った。
作製された反応検出部13とポテンショスタットを接続することによって、反応検出部13へ導入された電気的に活性のある物質の電気化学測定を行った。
更に、エレクトロウェッティングバルブ用の作動電極20、21、73及びメイン流路1と開放孔7との接続部の疎水部11に、テトラフルオロエチレンからなる疎水性膜を形成した。フォトリソ法によりレジストをパターニング後に、テトラフルオロエチレンで被覆して疎水性膜を形成し、リフトオフ法によってレジスト及びレジスト上に形成された疎水性膜を除去する方法で形成した。
以上のようにして作製した第1基板15と第2基板16とを自己吸着作用を利用して貼り合わせ、第1液排出部8に、セラミックス製の吸収体9を載置し、実施例1にかかるマイクロ分析チップ103を完成させた。
本実施例では、エレクトロウェッティングバルブの作動電極を、金薄膜上に疎水性膜を形成した構成を用いたが、金薄膜のみを形成する構成としてもよい。金表面を自然空気に曝すと、表面にカーボン堆積物などからなる接触角60°〜85°の薄膜が形成され、作動電極として機能させることができる。
〔比較例1〕
比較例1のマイクロ分析チップ200の構造を図12に示す。図12に示すように、第1導入流路2が、メイン流路1の反応検出部13に対して、第1排出流路3及び開放孔7と反対側に、メイン流路1と接続されている以外は、前記実施例1と同様にして、比較例1にかかるマイクロ分析チップ200を作製した。
(送液試験、免疫分析1)
実施例1にかかるマイクロ分析チップ103を用いて、溶液を流す試験を行った。
先ず、前処理後の血液サンプルと酵素標識抗体の混合液(第1の液体40)を第1液導入孔5に、基質溶液(第2の液体41)を第2液導入孔6に、それぞれ2μL注入した。注入した溶液は、毛細管現象により導入流路を移動し、導入流路内の開閉バルブ用の作動電極に達した時点で停止した。
続いて、作動電極73と参照電極74の間に電圧印加することにより、第1導入流路2の第5開閉バルブがONし、第1の液体40が、毛細管力によって、第1導入流路2を通り、開放孔7に向かい、メイン流路1に移動し、メイン流路1内に充填し停止した。印加した電圧は2.5Vとした。
次に、作動電極20と参照電極22の間に2.5Vの電圧を印加することにより、第1排出流路3の第1開閉バルブがONし、第1液導入孔5に残った第1の液体40が、毛細管力によって、第1排出流路3を通り、第1液排出部8に排出された。
続いて、メイン流路1の内部に充填された第1の液体40が、第1排出流路3を通り、第1液排出部8に排出された。第1排出流路3がメイン流路1の反応検出部13に対して開放孔7と反対側に接続され、メイン流路1の溝幅の最小値が第1導入流路2及び第1排出流路3の溝幅の最小値より大きいため、開放孔7から空気が導入されやすくなり、第1の液体40がメイン流路1内に液残りすること無く排出することができた。
また、第1液排出部8に吸収体9を備える構造にすることにより、毛細管力のみでの排出に比べ、排出速度を速くすることができた。さらに、メイン流路1と開放孔7との接続部に、外壁面の全部又は一部が疎水性である疎水部11が設けられた構造により、開放孔7への溶液の進入を防止することができ、より安定に送液することが可能であった。
次に、作動電極21と参照電極23の間に2.5Vの電圧を印加することにより、第2導入流路4の第2開閉バルブがONし、第2の液体41が、毛細管力によって、第2導入流路4を通り、メイン流路1に移動し、メイン流路1内に充填され停止した。
第1の液体40及び第2の液体41は、注入する溶液量にかかわらず、メイン流路1の反応検出部13を通過する溶液量が一定であり、定量的に反応及び/又は検出を行うことが可能となった。したがって、2つの溶液に対して、定量的に反応及び/又は検出を行うことが外部ポンプ等を用いることなく可能となった。
また、エレクトロウェッティングバルブの作動電極を、金薄膜のみを形成する構成とした場合も、同様の送液動作を行うことができた。この場合、金薄膜上に疎水性膜を形成した構成と比べて、作動電極と参照電極の間の印加電圧が低減され、印加電圧は1.0Vとした。
他方、比較例1のマイクロ分析チップ200では、第1液導入孔5に残った第1の液体40が第1液排出部8に排出されるまでは実施例1と同様であった。しかし、メイン流路1の内部に充填された第1の液体40が第1液排出部8に排出される際に、開放孔7から空気が導入されることにより、メイン流路1の内部に第1の液体40の液残りが発生し、安定に排出することができなかった。
以上により、実施例1にかかるマイクロ分析チップ103が、2つの溶液に対して、外部のポンプ等を用いることなく、毛細管力により安定に送液でき、定量的に反応及び/又は検出できることを確認できた。
次に、実施例1にかかるマイクロ分析チップ103を用いて、免疫分析法による特定タンパク質の測定を行った。なお、以下の説明では、単位記号「L」は、「l(リットル)」であり、単位記号「M」は、「mol/l(モル/リットル)」を意味する。
特定タンパク質として濃度が100ng/mLのアディポネクチン(R&D社製 1065AP)のサンプル液を用意し、下記の手順で測定を行った。
(1)予め、メイン流路1の内部の検出用作用電極70に、抗体(R&D社製 MAB10651)を固体させた。抗体の固定方法は、37℃で10分間インキュベーションし物理吸着固定により行った。
(2)第1導入流路2から、アディポネクチン(100ng/mL)と酵素(ALP)標識抗体(2.5μg/mL)との混合液(1μL、2.5μL、4μL)を、メイン流路1に導入し、3分間停止後、第1排出流路3より排出。
(3)第2導入流路4から、基質(pAPP(p-Aminophenyl phospphate))溶液(1mM)2μLを、メイン流路1に導入し、停止。
(4)3分後に、酵素と基質とが反応して生成されるpAP(p-Aminophenol)を、検出部電極で電気化学的(サイクリックボルタンメトリー法)検出を行い、ピーク電流値のアディポネクチンのサンプル量依存性を測定した。
実施例1にかかるマイクロ分析チップ103の場合、ピーク電流値は、アディポネクチン溶液のサンプル量が1〜4μLの範囲でほぼ一定の電流値が得られた。一方、比較例1のマイクロ分析チップ200で同様の測定を行った場合、同じ濃度でも、アディポネクチン溶液のサンプル量により、電流値が変わってしまった。
以上の結果から、本発明により、免疫分析法による特定タンパク質の濃度測定を、注入するサンプル量に拠らず、簡便かつ短時間に行うことが可能であることがわかる。
〔実施例2〕
本実施例は、前記実施の形態2にかかるものである。図10に、本実施例にかかるマイクロ分析チップ104の構造を示す。
本実施例によるマイクロ分析チップ104は、第3導入流路50及び第2排出流路51を備えること以外は、前記実施の形態1と同様である。
前記実施の形態1と同様にして実施例2のマイクロ分析チップ104を作製した。
第2排出流路51は、メイン流路1の反応検出部13に対して、開放孔7及び第3導入流路50と反対側に、メイン流路1と接続されている。
第3導入流路50と第2排出流路51は、作動電極と参照電極からなるエレクトロウェッティングバルブを備えている。
バルブ用作動電極部以外の第3導入流路50、第2排出流路51の幅を300μm、バルブ用作動電極部の第3導入流路50、第2排出流路51の幅を50μmに設定した。流路高さは50μmとした。
液導入孔用の貫通孔は、直径が2mmで、第2液排出部53は、第1基板15を貫通した形状をしており、セラミックス製の吸収体54を第2液排出部53に載置した。
本実施例では、エレクトロウェッティングバルブの作動電極を、金薄膜上に疎水性膜を形成した構成を用いたが、金薄膜のみを形成する構成としてもよい。金表面を自然空気に曝すと、表面にカーボン堆積物などからなる接触角60°〜85°の薄膜が形成され、作動電極として機能させることができる。
〔比較例2〕
比較例2のマイクロ分析チップ201の構造を図13に示す。図13に示すように、第1導入流路2が、メイン流路1の反応検出部13に対して、第1排出流路3及び開放孔7と反対側に、メイン流路1と接続されている以外は、前記実施例2と同様にして、比較例2にかかるマイクロ分析チップ201を作製した。
(送液試験、免疫分析2)
実施例2にかかるマイクロ分析チップ104を用いて、溶液を流す試験を行った。
先ず、前処理後の血液サンプルと酵素標識抗体の混合液(第1の液体40)を第1液導入孔5に、基質溶液(第2の液体41)を第2液導入孔6に、洗浄溶液(第3の液体42)を第3液導入孔52に、それぞれ2μL注入した。注入した溶液は、毛細管現象により第3導入流路50を移動し、第3導入流路50の内部の開閉バルブ用の作動電極に達した時点で停止した。
続いて、作動電極73と参照電極74の間に電圧印加することにより、第1導入流路2の第5開閉バルブがONし、第1の液体40が、毛細管力によって、第1導入流路2を通り、開放孔7に向かい、メイン流路1に移動し、メイン流路1の内部に充填し停止した。印加した電圧は2.5Vとした。
次に、作動電極20と参照電極22の間に2.5Vの電圧を印加することにより、第1排出流路3の第1開閉バルブがONし、第1液導入孔5に残った第1の液体40が、毛細管力によって、第1排出流路3を通り、第1液排出部8に排出された。
続いて、メイン流路1内に充填された第1の液体40が、第1排出流路3を通り、第1液排出部8に排出された。第1排出流路3がメイン流路1の反応検出部13に対して開放孔7と反対側に接続され、メイン流路1の溝幅の最小値が第1導入流路2及び第1排出流路3の溝幅の最小値より大きいため、開放孔7から空気が導入されやすくなり、第1の液体40がメイン流路1内に液残りすること無く排出することができた。また、第1液排出部8に吸収体9を備える構造にすることにより、毛細管力のみでの排出に比べ、排出速度を速くすることができた。さらに、メイン流路1と開放孔7との接続部に、外壁面の全部又は一部が疎水性である疎水部11が設けられた構造により、開放孔7への溶液の進入を防止することができ、より安定に送液することが可能であった。
次に、作動電極60と参照電極62の間に2.5Vの電圧を印加することにより、第3導入流路50の第3開閉バルブがONし、第3の液体42が、毛細管力によって、第3導入流路50を通り、メイン流路1に移動し、メイン流路1の内部に充填された。
次に、作動電極61と参照電極22との間に2.5Vの電圧を印加することにより、第2排出流路51の第4開閉バルブがONし、第3導入流路50及びメイン流路1内の第3の液体42が、順次、毛細管力によって、第2排出流路51を通り、第2液排出部53に排出された。第2排出流路51が、メイン流路1の反応検出部13に対して、第3導入流路50と反対側に、メイン流路1と接続されているため、第3の液体42は、全て、メイン流路1の反応検出部13を通過した。
第2排出流路51が、メイン流路1の反応検出部13に対して、開放孔7と反対側に接続され、メイン流路1の溝幅の最小値が第3導入流路50及び第2排出流路51の溝幅の最小値より大きいため、開放孔7から空気が導入されやすくなり、第2の液体41がメイン流路1の内部に液残りすること無く排出することができた。また、第2液排出部53に吸収体54を備える構造にすることにより、毛細管力のみでの排出に比べ、排出速度を速くすることができた。
次に、作動電極21と参照電極23との間に2.5Vの電圧を印加することにより、第2導入流路4の第2開閉バルブがONし、第2の液体41が、毛細管力によって、第2導入流路4を通り、メイン流路1に移動し、メイン流路1内に充填され停止した。
第1の液体40及び第2の液体41は、注入する溶液量にかかわらず、メイン流路1の反応検出部13を通過する溶液量が一定であり、定量的に反応及び/又は検出を行うことが可能となった。したがって、2つの溶液に対して、定量的に反応及び/又は検出を行い、且つ、他の1つの溶液に対して、注入した全ての液を反応検出部13を通過させることが、外部ポンプ等を用いることなく可能となった。
また、エレクトロウェッティングバルブの作動電極を、金薄膜のみを形成する構成とした場合も、同様の送液動作を行うことができた。この場合、金薄膜上に疎水性膜を形成した構成と比べて、作動電極と参照電極の間の印加電圧が低減され、印加電圧は1.0Vとした。
他方、比較例2のマイクロ分析チップ201では、第1液導入孔5に残った第1の液体40が第1液排出部8に排出されるまでは実施例1と同様であった。しかし、メイン流路1の内部に充填された第1の液体40が第1液排出部8に排出される際に、開放孔7から空気が導入されたため、メイン流路1の内部に第1の液体40の液残りが発生し、安定に排出することができなかった。さらに、第3の液体42が第2液排出部53に排出される際にも、メイン流路1の内部に第3の液体42の液残りが発生し、安定に排出することができなかった。
以上により、実施例2にかかるマイクロ分析チップ104が、3つの溶液に対して、外部ポンプ等を用いることなく、毛細管力により安定に送液でき、且つ、2つの溶液に対して、定量的に反応及び/又は検出できることを確認できた。
次に、実施例2にかかるマイクロ分析チップ104を用いて、免疫分析法による特定タンパク質の測定を行った。
特定タンパク質として濃度が100ng/mLのアディポネクチン(R&D社製 1065AP)のサンプル液を用意し、下記の手順で測定を行った。
(1)予め、メイン流路1の内部の検出用作用電極70に、抗体(R&D社製 MAB10651)を固定させた。抗体の固定方法は、37℃で10分間インキュベーションし物理吸着固定により行った。
(2)第1導入流路2から、アディポネクチン(100ng/mL)と酵素(ALP)標識抗体(2.5μg/mL)の混合液(1μL、2.5μL、4μL)を、メイン流路1に導入し、3分間停止後、第1排出流路3より排出。
(3)第3導入流路50から、洗浄用のトリス緩衝溶液(THAM(tris hydroxymethyl aminomethane):10mM、NaCl:137mM、MgCl:1mM、PH9.0)2μLを、メイン流路1に導入し、排出。
(4)第2導入流路4から、基質(pAPP(p-Aminophenyl phospphate))溶液(1mM)2μLを、メイン流路1に導入し、停止。
(5)3分後に、酵素と基質とが反応して生成されるpAP(p-Aminophenol)を、検出部電極で電気化学的(サイクリックボルタンメトリー法)検出を行い、ピーク電流値のアディポネクチン溶液のサンプル量依存性を測定した。
この測定結果を、図14に示す。図中の黒丸が、実施例2にかかるマイクロ分析チップ104によるピーク電流値の測定結果で、アディポネクチン溶液のサンプル量が1〜4μLの範囲でほぼ一定の電流値が得られた。一方、図中の白丸が、比較例2のマイクロ分析チップ201によるピーク電流値の測定結果で、この場合、同じ濃度でも、アディポネクチン溶液のサンプル量により、電流値が変わってしまった。
以上の結果から、本発明により、免疫分析法による特定タンパク質の濃度測定を、注入するサンプル量に拠らず、簡便かつ短時間に行うことが可能であることがわかる。
本発明は上述した実施の形態や実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、前記した各実施の形態に記載された技術要素を組み合わせた構成とすることもできる。
なお、本発明は、以下のようにも表現できる。
すなわち、本発明に係るマイクロ分析チップは、外部に開放された開放孔に接続され、反応部及び/又は検出部を備えたメイン流路と、第1液導入孔に接続され、前記メイン流路に接続された第1導入流路と、第1液排出部に接続され、前記メイン流路に接続された第1排出流路と、少なくとも備え、前記第1導入流路及び前記第1排出流路が、前記メイン流路の反応部及び/又は検出部に対して、前記開放孔と反対側に、前記メイン流路と接続されていることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、外部に開放された第2液導入孔に接続され、前記メイン流路に接続された第2導入流路を少なくとも備え、前記第1排出流路に液体の流れを制御する第1開閉バルブ、前記第2導入流路に液体の流れを制御する第2開閉バルブ、がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、外部に開放された第3液導入孔に接続され、前記メイン流路に接続された第3導入流路を少なくとも備え、前記第3導入流路に液体の流れを制御する第3開閉バルブ、が設けられており、前記第3導入流路が、液体の流れる方向において、前記メイン流路の反応部及び/又は検出部に対して、前記第1排出流路と反対側に、前記メイン流路と接続されていることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、各流路において、内壁面の少なくとも一部が親水性であり、毛細管力を駆動力として送液を行う、ことを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記第1液排出部に吸収体が備えられていることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、外部に開放された第2液排出部に接続され、前記メイン流路に接続された第2排出流路を少なくとも備え、前記第2排出流路に液体の流れを制御する第4開閉バルブが設けられており、前記第2排出流路が、液体の流れる方向において、前記メイン流路の反応部及び/又は検出部に対して、前記開放孔及び前記第3導入流路と反対側に、前記メイン流路と接続されていることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記第2液排出部に吸収体が備えられている、ことを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、少なくとも前記各流路用の溝が形成された第1基板と、前記第1基板を蓋する第2基板と、を有し、前記第1基板と前記第2基板とが重ね合わされて前記各流路が構成されていることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記第1基板に形成された溝は、三つの壁面を有する凹形状であることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記第1基板は、疎水性材料からなり、
前記第2基板は、親水性材料からなることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記第1基板はポリジメチルシロキサンからなり、前記第2基板はガラスからなることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記メイン流路の平均溝幅をW1とし、前記第1導入流路の平均溝幅をW2としたとき、W2<W1が成立する構造であることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、少なくとも前記各流路用の溝の側壁部が形成された中間層と、前記中間層の溝部を両面から蓋する第2基板及び第3基板と、を有し、前記第3基板と前記中間層と前記第2基板が重ね合わされて前記各流路が構成されていることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記中間層は、疎水性材料からなることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記メイン流路の平均溝幅をW1とし、前記第1導入流路の平均溝幅をW2としたとき、W2<W1が成立する構造であることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記メイン流路と前記開放孔との接続部に、外壁面の全部又は一部が疎水性である疎水部が設けられていることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記開閉バルブが、それぞれエレクトロウェッティングバルブであることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記開閉バルブの作動電極が、導電性薄膜からなることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記開閉バルブの作動電極が、導電性薄膜と該導電性薄膜上に形成された薄膜とからなることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記薄膜の厚みが、100nm以下であることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、25℃で比抵抗が18MΩ・cmである純水に対する前記薄膜の接触角が、80°以上であることを特徴としている。
また、前記マイクロ分析チップは、前記薄膜が、フッ素含有物質又はチオール基を含む物質からなることを特徴としている。
また、本発明に係るマイクロ分析装置は、前記マイクロ分析チップを必須要素として備えることを特徴としている。
また、本発明に係るマイクロ分析方法は、マイクロ分析チップの送液方法前期マイクロ分析チップを用い、第1液導入孔から導入した溶液を、第1導入流路を通り、開放孔に向かい、メイン流路に移動し、メイン流路内に充填させ、次に、第1液導入孔に残った溶液を、第1排出流路を通り、第1液排出部に排出させ、その後、メイン流路内に充填された溶液を、第1排出流路を通り、第1液排出部に排出させることを特徴としている。
また、本発明の溶液の送液方法は、一端が外部に開放された開放孔に接続されているメイン流路と、一端が前記メイン流路の流路内面に接続され、他端に、前記メイン流路の内部に導入される溶液が注入される第1液導入孔が形成された第1導入流路と、前記第1導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入された溶液の排出が可能な第1排出流路と、前記第1排出流路に設けられた溶液の流れを調整する第1開閉バルブと、一端が前記メイン流路の流路内面に接続され、他端に、前記メイン流路の内部に導入される溶液が注入される第2液導入孔が形成された第2導入流路と、前記第2導入流路に設けられた溶液の流れを調整する第2開閉バルブと、一端が前記メイン流路の流路内面に接続され、他端に、前記メイン流路の内部に導入される溶液が注入される第3液導入孔が形成された第3導入流路と、前記第3導入流路に設けられた溶液の流れを調整する第3開閉バルブと、前記第3導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入された溶液の排出が可能な第2排出流路と、前記第3導入流路に設けられた溶液の流れを調整する第4開閉バルブと、前記メイン流路の内部に導入された溶液の特性を分析する分析部とを備えており、前記第1導入流路及び前記第1排出流路が、共に、前記メイン流路において前記分析部に対して前記開放孔と異なる側に設けられていると共に、前記第3導入流路が、前記メイン流路において前記分析部に対して前記第1排出流路と異なる側に設けられているマイクロ分析チップを用いた溶液の送液方法であって、前記第1液導入孔、前記第2液導入孔、及び前記第3導入流路に溶液を注入し、前記第1液導入孔に注入された溶液を、前記第1導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第1導入ステップと、前記第1導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填する第1充填ステップと、前記第1開閉バルブを開いて、前記メイン流路の内部に導入された溶液の排出を促し、前記第1液導入孔に残存する溶液を、前記第1排出流路から排出する第1排出ステップと、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填された溶液を、前記第1排出流路から排出する排出する第2排出ステップと、前記第1開閉バルブを閉じ、前記第3開閉バルブを開いて、前記第3液導入孔に注入された溶液を、前記第3導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第2導入ステップと、前記第2導入ステップで前記メイン流路の内部に導入された溶液を、前記メイン流路の一端から前記開放孔までの間に充填する第2充填ステップと、前記第4開閉バルブを開いて、前記第2充填ステップにおいて充填された溶液及び前記第3液導入孔に残存する溶液を前記第2排出流路から排出する第3排出ステップと、前記第4開閉バルブを閉じ、前記第2開閉バルブを開いて、前記第2液導入孔に注入された溶液を、前記第2導入流路を介して前記メイン流路の内部に導入する第3導入ステップとを含んでいても良い。
なお、以上に説明したように、本発明によると、ポンプやバルブ等の外部の動力源を必要とせず、簡単な構成により、少量の溶液を定量的に秤取することが可能な流路構造を有するマイクロ分析チップを提供することができる。特に、開閉バルブを組み込んだ本発明のマイクロ分析チップは、簡素な構造であるのにもかかわらず、使用する溶液を定量的に扱うことができ、正確な分析を行うことができるので、極めて有用である。本発明にかかるマイクロ分析チップは、特に、医療分野、生化学分野、アレルゲンなどの測定分野等において使用するマイクロ分析チップ及び装置の簡素化・コンパクト化を図るのに極めて有用であり、その産業上の利用価値は大きい。