JP4927000B2 - センサレスブラシレスモータの制御回路、センサレスブラシレスモータ装置、及び真空ポンプ装置 - Google Patents
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Description
ブラシレスモータには、2極の永久磁石を備えたロータと、その周りにロータを回転させるための磁界を発生する3つのモータ巻線を備えたものがある。
このようなブラシレスモータのうち、磁極の位置を検出するセンサのないセンサレスブラシレスモータ制御回路として、3つのモータ巻線のうち2つのモータ巻線にモータ駆動用の電流を流してロータを回転させ、ロータの回転により残りの1つのモータ巻線に生じる誘導起電力からロータの磁極位置を検出し、この磁極位置に基づいてモータ巻線の電流を順次切り替えるもの等がある。
図8は3相全波方式のブラシレスモータを表した概念図である。ロータ150は2極の永久磁石を備えている。ロータの回りにはU相、V相及びW相のモータ巻線151U、151V、151Wが配置されている。これらモータ巻線の2つに電流を流して励磁し、その磁力の吸引力によってロータ150を回転させる。この励磁されるモータ巻線151U、151V、151Wはロータ150の磁極の位置によって順次切り替え、ロータ150の回転を持続させるようになっている。磁極の位置の検出は励磁されていない残りの1つのモータ巻線に誘導される電圧を検出することにより行う。
U相モータ巻線からV相モータ巻線に電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル1、U相モータ巻線からW相モータ巻線に電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル2、V相モータ巻線からW相モータ巻線に電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル3、V相モータ巻線からU相モータ巻線に電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル4、W相モータ巻線からU相モータ巻線に電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル5、W相モータ巻線からV相モータ巻線に電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル6とし、以降は番号により各駆動電圧ベクトルを区別することにする。
これらの駆動電圧ベクトルの番号は図9に丸で囲んで示してある。
また、V相モータ巻線からW相モータ巻線へ流す電流をV→W方向の電流等と記すことにする。
ところで、このPLL回路をロックする(作動させる)ためには、入力信号の周波数が少なくとも20ヘルツ程度必要である。即ち、ロータ150が毎秒20回程度回転しないと、PLL回路を作動させることはできない。
従来は、モータを起動してロータ150の回転数がPLL回路をロックできる回転数に上昇するまではオープンループで各駆動電圧ベクトルを切り替えていた。即ち、なんらフィードバックをかけずに、モータ巻線151U、151V、151Wに印加する電圧ベクトルを最初はDC(直流)に近い低速で順次切り替え、徐々に切り替え速さ速めながら、これに、ロータを吸引追随させて、PLL回路をロックできる回転数まで加速する等していた。
3つホールセンサを120°の角度の間隔を置いてロータの磁極の周りに配置し、モータ始動時のロータがPLL回路がロックできない低速で回転しているときは、これら3つのホールセンサによる検出信号で駆動電圧ベクトルを制御し、ロータの回転数がPLL回路をロックできる回転数に達すると、このうちの1つのホールセンサの検出信号からPLL回路がロータ回転数の3倍の周期を持った逓倍同期パルスを生成し、この逓倍同期パルスにより駆動電圧ベクトルを切り替えるものである。
なお、この技術はホールセンサを用いなくとも、モータ巻線に発生するロータの回転により生じる逆起電圧を検出することでも応用できる。即ち、PLL回路を用いたホールセンサレスのモータ駆動回路に応用できる。
センサレスブラシレスモータの制御回路はロータの磁極位置を検出しながら、モータ巻線に流れる電流をフィードバック制御している。ロータの磁極位置の検出は、ロータの回転によりモータ巻線に誘導される電圧、即ち誘導起電力を検出することにより行われる。例えば、3相ブラシレスモータの場合、2つモータ巻線に電圧を印可し、残りの無通電相に誘導される電圧を検出する。そしてこの電圧によって検出された磁極位置に基づいて次に電圧を印可すべき2つのモータ巻線を判断し、電圧を印可する。その際、無通電相となったモータ巻線の誘導起電力を検出し、これによって磁極の位置を検出する。このプロセスを連続して行うことによりモータを駆動する。
図20は従来のセンサレスブラシレスモータの制御回路の磁極位置検出タイミングを示した図である。波形201a、201b、201cはあるモータ巻線に誘導される電圧の波形図である。後に述べるように、図20(a)はモータ巻線の電流による回転磁界の位相がロータの回転の位相より進んでいる場合であり、図20(b)は両者の位相が揃っている場合であり、図20(c)は前記回転磁界の位相がロータの位相より進んである場合を示している。
仮想中性電位202a、202b、202cと波形201a、201b、201cの交点203a、203b、203cをサンプリングすることにより磁極位置を検出する。
この制御回路はモータ巻線に電圧を出力する駆動モードと出力しないサンプリングモードを有している。図20に示したようにロータ回転周期の2/3の間は駆動モードでモータ巻線に電圧を出力し、残りの1/3の間はサンプリングモードで電圧を出力しない。これは、磁極位置検出時に波形201a、201b、201cにノイズが重畳されるのを防ぐためである。
交点203a、b、cの検出はサンプリングモード時に行われる。
図20(a)は回転磁界の位相がロータの回転の位相より進んでいる場合であり、交点201aの左側の波形201aと仮想中性電位202aで囲まれた面積が交点201aの右側の波形201aと仮想中性電位202aで囲まれた面積より小さくなる。図20(b)は両者の位相が一致している場合であり、左右の前記面積が等しくなる。図20(c)は回転磁界の位相がロータの位相より遅れている場合であり、交点203cの左側の前記面積が右側の前記面積より大きくなる。
従来の制御回路は交点203bのように交点の左右の前記面積が常に等しくなるようにモータ巻線に出力する電圧をフィードバック制御している。
ターボ分子ポンプのモータ部は、永久磁石を備えたロータ軸と、当該永久磁石の周囲に所定の間隙を隔てて複数個配設された電磁石から構成されているDCブラシレスモータによって構成される場合がある。
なお、第1の構成の変形として、前記磁束取得手段は、前記磁極による2つの前記モータ巻線の鎖交磁束の差を取得する構成としても良い。
本発明のセンサレスブラシレスモータの制御回路においては、ロータの磁極の回転位置をモータ稼動中、任意の時に取得することができるため、モータの負荷の変動などによりロータ回転数が大きく変化した場合も、モータ巻線の電流を適正に制御することができる。
第2の構成及び第2の構成の変形では、積分値を取得する際に、当該信号は積分器を用いて積分されるので、当該信号に重畳されているノイズがキャンセルされ、ノイズの少ない信号を得ることができる。このため、モータを稼動させながらロータの回転を監視することができる。
この方法は例えばモータを始動する前に直流電流を所定の2つのモータ巻線に導通することにより行われる。
この方法は例えばモータ始動前にロータが追随できない程度の高周波電流を所定の2つのモータ巻線に導通することにより行うことができる。上記所定の値は2πである。
電流を切り替えて前記ロータを回転させるロータ回転手段と、前記モータ巻線の電流を切
り替える前及び後で前記積分値取得手段にて取得された積分値をサンプリングするサンプリング手段と、所定の2つの前記モータ巻線に供給する電流値のピーク値を取得する電流ピーク値取得手段と、前記サンプリング手段にて取得した前記電流切り替え前後での前記積分値の差の絶対値を前記電流ピーク値取得手段にて取得した電流ピーク値で除する第3の演算手段と、を備えたインダクタンス取得手段にて取得することができる。
この方法はロータをある程度の回転数までオープンループで回転させ、その際にモータ
駆動電流の切り替え時に第1の積分手段で得られる波形に現れる段差の大きさによりイン
ダクタンスを求めるものである。
最初に仮定の合成抵抗値とインダクタンスを用いてモータ巻線に生じる鎖交磁束を求め
、これによって、前記の仮定の合成抵抗値とインダクタンスを補正する。このプロセスを
数回繰り返すことにより、逐次補正された合成抵抗値とインダクタンスが真の値に近づい
ていく。
また、本発明のセンサレスブラシレスモータの制御回路はモータ巻線の抵抗値とモータを接続するケーブルの抵抗値の合成抵抗値Rpとモータ巻線のインダクタンスLpを自動的に計測するので、たとえ、使用現場などでケーブル長を変更したり、モータを別のモータと取り替えても再度Rp、Lpを計測器を用いて計測せずに、即使用することができる。
また、本発明によれば、起動速度が速く、安定してブラシレスモータを運転することができる。
以下、本発明のブラシレスモータの制御回路の第1の実施の形態を図1と図2を用いて説明する。図1は第1の実施の形態のブラシレスモータの制御回路の主要構成を示した図である。
本実施の形態の制御回路141は2極の永久磁石を備えたロータ112及びロータ112を回転させるためのスター結線されたモータ巻線107U、107V、107Wからなるモータ105と、これらのモータ巻線107U、107V、107Wへ電流を供給するモータ駆動回路115と、モータ駆動回路115を制御するマイクロコンピュータ130と、それぞれ抵抗値が等しくスター結線された抵抗体108U、108V、108Wを備えている。
図1では便宜上各モータ巻線107U、107V、107Wとロータ112が別に示されているが、実際はモータ巻線7はロータ112の外周部に配置されている。
モータ駆動回路115は直流電源116と、3相ブリッジを構成する6つのトランジスタ121a、121b、121c、121d、121e、121fを備えている。各トランジスタ121a、121b、121c、121d、121e、121fのベースはそれぞれマイクロコンピュータ130に接続されている。各トランジスタ121a、121b、121c、121d、121e、121fはマイクロコンピュータ130からのゲート駆動パルスによりオン/オフされ、モータ巻線107U、107V、107Wに所定の電流を供給する。
モータ駆動回路115はマイクロコンピュータ130に制御されながらモータ巻線107U、107V、107Wに所定の電流を供給する。
制御回路141は更に差動増幅器103、直流遮断フィルタ102、積分器101及びコンパレータ104を備えている。
差動増幅器103は抵抗体108U、108V、108Wの中点110と抵抗体108Uに接続されており、抵抗体108Uの両端の電位差即ち、抵抗体108Uに現れている電圧を出力する。ここで、中点109と中点110の電位は同じであり、また後述するようにモータ巻線107Uにはロータ112を駆動するための電流は流さないので、差動増幅器103から出力される電圧はロータ112の回転によりモータ巻線107Uに誘導される電圧と同一になる。以降中点109を基準としたV相の電位をVu−nなどと表すことにする。添え字のuはU相端子をnは中点109を表す。
モータ巻線107Uに生じている電圧は差動増幅器103のマイナス端子を中点110ではなく、直接モータ105の中点109に接続しても検出できるが、モータの構造上中点109に差動増幅器103の端子を接続することができないので、抵抗体108によって間接的に前記誘導起電力を検出する方法を採用した。
積分器101は直流成分を取り除いた差動増幅器103の出力を積分し、差動増幅器103の出力に重畳している電気的ノイズを取り除く。モータが稼働するといろいろな電気的ノイズが発生する。差動増幅器103で得られる信号にはこれらのノイズが重畳されており、このままではこの信号を使用することができない。これらのノイズに埋もれた信号を積分器101にて積分するとノイズは平均化されてノイズに埋もれた前記信号のみを得ることができる。
これは信号に重畳しているノイズは信号に対して正負両方にほぼ等しい割合でランダムに発生するため、積分するとノイズは平均化されてキャンセルされるためである。
積分器101の出力する信号を磁束推定信号と呼ぶことにする。これは、モータ巻線に生じている電圧を積分するとモータ巻線107Uの鎖交磁束になるからである。
コンパレータ104は磁束推定信号とグランドレベルを比較し、磁束推定信号がグランドレベルより大きければHiを出力し、磁束推定信号がグランドレベルより小さければLoを出力する。コンパレータ104の出力をROT(回転パルス信号)信号と呼ぶことにする。このようにコンパレータ104はロータ112と同期したパルス信号を生成する。
マイクロコンピュータ130はコンパレータ104から ROT信号を受け取り、このROT信号に同期してモータ駆動回路115のトランジスタ121c、121d、121e、121fをスイッチングして、所定の駆動電圧ベクトルをモータ巻線107V、107Wに出力する。ROT信号がLoの時はトランジスタ121f、121cをオンして、駆動電圧ベクトル3を出力し、ROT信号がHiの時はトランジスタ121e、121dをオンして駆動電圧ベクトル6を出力する。
図2はモータ巻線107U、107V、107Wに流れる電流Iu、Iv、Iw、差動増幅器103の出力Vu−n、積分器101から出力される磁束推定信号φu−n、コンパレータ104から出力されるROT信号、駆動電圧ベクトル3、6の関係を表したものである。
モータ始動時は駆動電圧ベクトル3、即ちV→W方向に電流を流す場合と、駆動電圧ベクトル6、即ちW→V方向に電流を流す場合をDCに近い周波数で交互に繰り返し、ロータ112の磁極をモータ巻線107Vとモータ巻線107Wがつくる磁界に吸引追随させる。ロータ112が毎秒1回転程度回転するようになるとモータ巻線107Uに誘導される電圧が検出できるようになる。
駆動電圧ベクトル3が出力されている間はV→W方向に電流が流れ、駆動電圧ベクトル6が出力されている間はW→V方向に電流が流れ、モータ巻線107Uには電流が流れないので、電流Iu、Iv、Iwの波形はそれぞれ図2に示したようになる。Iuは0である。
駆動電圧ベクトル3、6が交互に出力されロータ112が回転すると、モータ巻線107Uに図2に示した誘導起電力Vu−nが生じる。前述したようにこの電圧はロータ112の回転に同期したサインカーブとなる。この電圧は抵抗体108Uの両端に接続された差動増幅器103により検出される。
差動増幅器103から出力されたVu−nは直流遮断フィルタ102で直流成分をカットした後、積分器101に入力される。
磁束推定信号φu−nはVu−nを積分したものであるため図2に示したように位相が90°遅れる。
コンパレータ104はグランドレベルと磁束推定信号φu−nを比較し、ROT信号を生成する。磁束推定信号φu−nがグランドレベル以上のときはLo信号を出力し、グランドレベル以下であるときはHi信号を出力する。ROT信号は図2に示したような波形となる。ROT信号はロータ112の回転と同期しており、ロータ112が半回転するごとにHiとLoを交互に繰り返す。
マイクロコンピュータ130はROT信号がLoである間はモータ駆動回路115のトランジスタ121f、121cをオンし、ROT信号がHiである間はトランジスタ121e、121dをオンする。
モータ駆動回路115はトランジスタ121f、121cがオンである間は駆動電圧ベクトル3をモータ105に出力し、トランジスタ121e、121dがオンである間は駆動電圧ベクトル6をモータ105に出力する。
なお、駆動電圧ベクトル3、6によりモータ巻線107V、107Wに流れる電流はマイクロコンピュータ130によりPWM(パルス幅変調)制御されている。
他の駆動電圧ベクトル1、2、4、5は出力されない。
また、ロータの低速回転時でもロータの位置を検出できるため、ロータの負荷が変動してロータの回転数が急激に変化した場合でも駆動電圧ベクトルの切り替えをロータの回転数の変化に追従させることができる。また、モータ始動中に停電が発生した場合でも電力供給が復旧した時点で、ロータの回転を停止せずに始動を再開することができる。
なお、磁気軸受にモータドライブを使用する場合、モータドライバのスイッチングノイズが軸受け本体や回路などを経由して磁気軸受の変位センサや、温度センサなどのセンサに伝搬するばあいがある。特に磁気軸受をデジタルシグナルプロセッサなどを用いてデジタル制御する場合は、変位信号をA/D(アナログ/デジタル)コンバータでサンプリング検出して検出しているため、磁気軸受の変位信号にノイズが重畳している瞬間にこれをサンプリングすると誤差を含んだ変位信号を検出してしまい、その結果磁気軸受から騒音や振動が発生する場合があった。そのため、磁気軸受に使用するモータドライバは変位センサの信号をサンプリングする瞬間(例えば2マイクロ秒)に、モータのスイッチを切るか、もしくは切り替えないようにすると磁気軸受から騒音や振動を抑制することができる。
以下、本発明のブラシレスモータの制御回路の第2の実施の形態を図3と図4を用いて説明する。
本実施の形態は駆動電圧ベクトル3と駆動電圧ベクトル5を交互に出力してモータ巻線107V、107Wとモータ巻線107W、107Uに交互に磁界を発生させ、この磁界にロータ112を吸引させて回転させる。そして、U相端子とV相端子の電圧の差からROT信号を生成し、このROT信号により駆動電圧ベクトル3、5をフィードバック制御する。
図3は本実施の形態に係る制御回路142を示した図である。第1の実施の形態の制御回路141と同じ機能を有する部分には同じ番号を付すことにする。
制御回路141と制御回路142の構成の相違点は制御回路142はスター結線した抵抗体108U、108V、108Wを有しない点と、差動増幅器103がU相端子とV相端子の電圧の差を検出する点である。制御回路141と制御回路142の他の部分の構成は同一である。
モータ105はスター結線されたモータ巻線107U、107V、107WとN極とS極の2つの磁極を有したロータ112から成る。
駆動電圧ベクトル3、5が交互に出力されることにより、モータ巻線107V、Wとモータ巻線107V、107Uが交互に磁界を作り、これにロータ112の磁極が吸引されて回転する。第1の実施の形態では、駆動電圧ベクトル3、6を交互に出力することによりロータ112を回転させたため、ロータ112の磁極の位置によってはロータ112を始動できない場合がある(駆動電圧ベクトル3、6が生成する磁界は互いに平行であるため、ロータ112停止時にこの磁界の方向と磁極の方向が平行な場合は、ロータ112にトルクが発生せず起動できない)が、本実施の形態ではロータ112が始動時にどの位置にあろうとも始動することができる。
なお、第1の実施の形態でも、始動時に短時間の間、駆動電圧ベクトル3、6以外の磁界を発生してモータを始動させることが可能である。
図4に示した通り、Vu−n、Vv−nにはモータ巻線107U、107V、107Wのインダクタンスに起因するスパイク状の電圧117、118等が現れる。これらは大きさと発生する位相が同じなので差動増幅器103により差を取ることで消去される。
図4のVu−vのうち点線で示した波形は差動増幅器103からの出力を示している。この波形はスパイク状の電圧117、118等は消去されているが、いまだ直流成分119を含んでいる。この直流成分119はモータ巻線107U、107V、107Wの抵抗値に起因するものである。
直流遮断フィルタ102は直流成分119をカットし、直流遮断フィルタ102からは図4のVu−vの実線で示した波形が得られる。
コンパレータ104は磁束推定信号φu−vをグランドレベルと比較しROT信号を出力する。第1の実施の形態と同様にROT信号は磁束推定信号がグランドレベルより大きいときはHiとなり、磁束推定信号φがグランドレベルより小さいときは信号Loとなる。
マイクロコンピュータ130はROT信号と同期してモータ駆動回路115のトランジスタ121b、121c、121e、121fをオンオフする。
モータ駆動回路115はトランジスタ121c、121fがオンのときはモータ巻線107V、107Wに駆動電圧ベクトル3を出力し、トランジスタ121e、121bがオンのときはモータ巻線107W、107Uに駆動電圧ベクトル5を出力する。
モータ始動時は駆動電圧ベクトル3、即ちV→W方向に電流を流す場合と、駆動電圧ベクトル5、即ちW→U方向に電流を流す場合をDC(直流)に近い周波数で交互に繰り返す。ロータ112は駆動電圧ベクトル3が出力されているときは、モータ巻線107V、107Wの作る磁界に、駆動電圧ベクトル5が出力されているときはモータ巻線107W、107Uの作る磁界により、吸引され回転を始める。ロータ112の回転数が毎秒1回転程度になると磁極位置が検出できるようになる。
モータ巻線107U、モータ巻線107V、モータ巻線107Wにはそれぞれ図4のIu、Iv、Iwで示した電流が流れる。駆動電圧ベクトル3が出力されている間は電流はモータ巻線107Vからモータ巻線107Wへ流れ、駆動電圧ベクトル5が出力されている間は電流はモータ巻線107Wからモータ巻線107Uへ流れる。
図4の波形Vv−nは中点109を基準としたV相端子の電圧を表している。波形中にはVu−nと同じ理由により所々にスパイク状の電圧118が現れる。
この2つの波形に現れるスパイク状の電圧117、118は、発生する位相が同じであり、また、大きさも等しい。
これらのVu−nとVv−nは差動増幅器103に入力され、両者の差分が出力される。
図4の波形Vu−vのうち点線で示したものは差動増幅器103の出力信号を表している。前述したようにVv−nとVu−nに現れるスパイク状の電圧117と118は発生する場所と大きさが等しいため、差動増幅器103で両差の差を取ることによりこれらは相殺される。
直流遮断フィルタ102で直流成分をカットされたVu−vは積分器101によって積分され、図4に示した磁束推定信号φu−vに変換される。積分によってVu−vに重畳されていたノイズは除去され、目的の信号のみ得られる。磁束推定信号φu−vはロータ112に同期して変化する。
積分器101から出力された磁束推定信号φu−vはコンパレータ104でグランドレベルと比較し、図4に示したROT信号(回転パルス信号)を出力する。ROT信号は磁束推定信号φu−vがグランドレベルより大きいときLoとなり、グランドレベルより小さいなときHiとなる。
図4に示したようにROT信号がLoのときは駆動電圧ベクトル5がモータ巻線107V、107Wに出力され、ROT信号がHiのときはモータ巻線107W、107Uに駆動電圧ベクトル3が出力される。
なお、これらの駆動電圧ベクトル3、5によりモータ巻線に流れる電流はマイクロコンピュータ130によりPWM制御されている。駆動電圧ベクトル1、2、4、6は出力されない。
また、本実施の形態の制御回路142はモータ巻線の電圧を検出するための抵抗体等を設置する必要がなく、簡単な回路構成でロータ112が低速回転していてPLL回路がロックできない場合でもロータ112の位置を検出し駆動電圧ベクトルの切り替えをフィードバック制御することができる。
なお、モータ起動時間を短縮でき、また、ロータ112の負荷が変動したり、停電した後電力供給が復活したときなども脱調せずにモータ105を制御できる点は第1の実施の形態と同じである。
本実施の形態では駆動電圧ベクトル3、5を用いてモータを駆動したが、駆動電圧ベクトルの選び方をこれに限定するものではなく、例えば、駆動電圧ベクトル5、1または駆動電圧ベクトル1、3を用いても良い。即ち、差動増幅器103でモータ巻線7のインダクタンスにより現れるスパイク状の電圧が相殺されるように駆動電圧ベクトルを選択することにより磁束推定信号を得ることができる。
本実施の形態では、第2の実施の形態の手段で起動されたモータのロータの回転数がPLL回路をロックできる回転数(約毎秒20回転)に達した後、PLL回路を用いた定常運転に切り替える場合について説明する。
モータの定常運転時は磁極の位置を検出しながら、PLL回路にロータが1回転するごとに6パルスを発生させ、このパルスに同期させて駆動電圧ベクトルを1→2→3→4→5→6→1→・・・の順番で順次切り替えることによりロータを回転させる。
一方、第2の実施の形態のロータ112の回転は駆動電圧ベクトル3、5を交互に切り替えることにより行われている。
よって、第2の実施の形態の手段による運転からPLL回路を用いた通常運転に切り替える際に、最初に出力する駆動電圧ベクトルと、この駆動電圧ベクトルを出力するタイミングを適切に求める必要がある。通常運転への切り替え時に不適切な駆動電圧ベクトルを出力したり、また、駆動電圧ベクトルの出力タイミングを誤ると、モータが脱調したり、異常音を発したりする。
回転速度センサ125はモータ105の外部に取り付けられており、ロータ軸に取り付けられたターゲットを検知して、ロータ112の回転に同期した信号を発生する。例えば、回転速度センサ125はホール素子等で形成され、ターゲットは磁石等で構成されている。回転速度検出器はモータ105の内部に設置して、ロータ112の磁極を直接検出する構成にしても良い。回転速度センサ125からは電気的ノイズが重畳されていないきれいな波形を得ることができる。
ROTA信号はロータ112が半回転する間Hiとなり、続く半回転でLoとなる。
マイクロコンピュータ130とPLL回路127は回転速度検出回路126に接続されており、回転速度検出回路126からROTA信号を受け取る。
PLL回路127はROTA信号の周波数の6倍の周波数に同期したパルス状の同期信号6×fROTA信号を生成する。この同期信号は6つの駆動電圧ベクトルを切り替える際に使用される。
また、マイクロコンピュータ130には記憶部128が接続されている。これはロータ112の回転数が上昇すると、回転速度センサ125の出力信号がターゲットが検出位置に到達したタイミングより遅れる場合があり、記憶部128にはこれを補正する値があらかじめ記憶されている。マイクロコンピュータ130はロータ112の回転数に応じてこの補正値を用いROTA信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を補正する。
マイクロコンピュータ130はこれらの値から所定の演算を行い、モータ駆動回路115のトランジスタ121a、121b、121c、121d、121e、121fへのゲート駆動パルスを第2の実施の形態の始動運転のものからから通常運転のものへ切り替える。
モータ105を起動してロータ112の回転数がPLL回路がロックできる回転数(例えば毎秒20回転)に達するまでは、第2の実施の形態で説明した方法でモータ105を駆動する。即ち、駆動電圧ベクトル3、5を交互に出力し、V相端子とU相端子の電圧の差を積分等してROT信号を生成し、このROT信号に同期して前記駆動電圧ベクトル3、5を切り替える。
ロータ112の回転数がPLL回路をロックできる最低の回転数に達っするとマイクロコンピュータ130は通常運転切り替え時に最初に出力する駆動電圧ベクトルとそれを出力するタイミングを演算し、モータ105の運転を通常運転に切り替える。
運転切り替え時に最初に出力する駆動電圧ベクトルは以下の様にして演算する。
マイクロコンピュータ130はROT信号の周期Tを検出し、記憶する。また、ROT信号とROTA信号の時間差Taを検出し記憶する。
図6のROTはROT信号を、ROTAはROTA信号を表している。またφu−vは積分器101から出力される磁束推定信号φu−vである。
次にROT信号とROTA信号の位相差Yを以下の式によって計算する。
Y=Ta/T ・・・・・(1)
例えば、3/12≦Y<5/12の時は、駆動電圧ベクトル1から開始する。
図7にの表に従って駆動電圧ベクトルを出力すると、ロータ112の磁極の位置と駆動電圧ベクトルにより生成される磁界が適切な位置関係となる。
図6の「3相全波モード時に駆動すべき電圧ベクトル」欄の駆動電圧ベクトル番号と磁束推定信号φu−vの波形は両者の対応関係を示している。
また、φu−vとROT信号は同期しているので、ROT信号と駆動電圧ベクトルの対応関係もこの波形図から分かる。例えば、ROT信号の立ち上がりが、駆動電圧ベクトル4が出力されている期間の中間となる。
ROT信号の1周期を6分割し、ROT信号に同期して1→2→3→・・・の順に駆動電圧ベクトルを出力すれば良い。
ROTA信号の波形はROT信号の波形を平行移動したものであるので、式1のYにより、図7に示したようにROTA信号と駆動電圧ベクトルの番号を対応させることができる。
式1によってROTA信号に対応して出力する駆動電圧ベクトルの番号は求まったので、次に6×fROTA信号の出力タイミングを微調整し、6×fROTA信号の立ち上がり及び立ち下がりのタイミングをROT信号立ち上がり及び立ち下がりのタイミングに揃える。
図7の「位相遅れ量D」欄にそれぞれのYの値に対応する位相遅れ量が示されている。マイクロコンピュータ130はROTA信号の周期Tと位相遅れ量Dから位相遅れ時間Tdを次式にて計算する。
Td=T×D ・・・・・(2)
またロータ112の回転速度が上昇すると、回転速度センサ125の検出信号がターゲットが回転速度センサ125の検出位置に達した時間より遅れてくる場合がある。この場合ROTA信号が本来あるべき値より遅れて出力される。この遅れの量とロータ112の回転速度の関係があらかじめ分かっていれば、それらを補正値として記憶部128に記憶しておき、マイクロコンピュータ130内部でROTA信号を補正する。
通常センサレスブラシレスモータの制御にはモータ配線のインピーダンスを測定したり、モータの電流をモニタして補正したりする必要があるが、本実施の形態のブラシレスモータの制御回路143ではこれらの必要がないので回路が単純になりコストが下げられる。
また、第1の実施の形態のブラシレスモータの制御回路141で起動したモータ105を定常運転に切り替える場合も、本実施の形態と同様にして行うことができる。
本実施の形態ではモータ巻線内に生じている磁束の変化からロータの磁極位置を検出する。
まず、本実施の形態を実施する上で基本となる理論式を導いておく。
図10はモータを接続するケーブルとモータ巻線の抵抗値とインダクタンスを示した図である。U相、V相、W相のモータ巻線はスター結線されている。
ここで、以下のようにRp、Lp、Viu−vをおく。
Rc+Ru=Rc+Rw=Rc+Rv=Rp
Lu=Lw=Lv=Lp
(Viu−n)−(Viv−n)=Viu−v
Vu−v=Viu−v+Rp(Iu−Iv)+Lp×d(Iu−Iv)/dt
∫Vu−vdt=∫(Viu−v+Rp×(Iu−Iv))dt+Lp×(Iu−Iv) (3)
φu−v=∫Viu−vdt (4)
∫Rp×(Iu−Iv)dt (6)
Lp×(Iu−Iv) (7)
本実施の形態ではこれらの関係式を電気回路を用いて実現し、磁束推定φu−vを求め、この磁束推定信号φu−vに基づいてモータ巻線の電流を切り替える。
制御回路41はモータ5とモータ駆動回路17と駆動制御回路19を備えている。
モータ5はスター結線されたモータ巻線7U、7V、7Wと、N極とS極の1対の磁極を備えたロータ6から構成されている。図示する都合上モータ巻線7U、7V、7Wとロータ6は別々に示したが、実際にはモータ巻線7U、7V、7Wはロータ6の周りに配置されている。モータ駆動時は例えばモータ巻線7U、7VにU→V方向に電流を流すというように、2つのモータ巻線に電流を流し、この電流によってモータ巻線が作る磁界にロータ6の磁極を吸引させてこれを回転させる。電流を流すモータ巻線と電流の方向をロータ6の磁極の位置に基づいて順次切り替えることにより、ロータ6の回転を持続させる。
モータ駆動回路17は直流電源18と3相ブリッジを形成する6個のトランジスタ21a、21b、21c、21d、21e、21fから構成されている。これらのトランジスタのベースはそれぞれ駆動制御回路19内のマイクロコンピュータ30に接続されており、マイクロコンピュータ30からゲート信号によりオンオフされ、モータ巻線7U、7V、7Wに所定の電流を供給する。
差動増幅器8はモータ巻線7U、7Vと接続されており、モータ巻線7Uの電圧からモータ巻線7Vの電圧を引いた値、Vu−vを出力する。
差動増幅器9はモータ巻線7U、7Vに流れる電流Iu、Ivを検出し、両者の差Iu−Ivを出力する。
掛算器10は差動増幅器9と駆動制御回路19内のRp信号設定回路14に接続されている。Rp信号設定回路14は、モータ巻線7U、7V、7Wの内何れかの抵抗値(3つとも抵抗値は同じ)とそのモータ巻線とモータ駆動回路17を接続するケーブル3U、3V、3Wの何れかの抵抗値(3つとも抵抗値は同じ)の合成抵抗値である。掛算器10は差動増幅器9からIu−Ivを、Rp信号設定回路14からはRpを受け取り、両者の積であるRp×(Iu−Iv)を出力する。
加算器11は差動増幅器8と掛算器10に接続されており、加算器11は差動増幅器8からVu−vを、掛算器10からRp×(Iu−Iv)を受け取り、Vu−vからRp×(Iu−Iv)を引いた差、即ち(Vu−v)−Rp×(Iu−Iv)を出力する。これは、式(6)の被積分値である。
積分器1は直流成分を除去した加算器11の出力を積分し、∫((Vu−v)−Rp×(Iu−Iv))dtを出力する。積分器1の出力は式(5)から式(6)を引いた場合に対応する。また、積分することにより、積分器1の入力信号、即ち(Vu−v)−Rp×(Iu−Iv)に重畳している電気的ノイズは除去される。これは、ノイズは信号値を基準にして正負にランダムに発生するため、これらを積分して足し合わせると相殺するためである。
掛算器12は差動増幅器9とLp信号設定回路15に接続されており、差動増幅器9からIu−Ivを、Lp信号設定回路15からLpを受け取り両者の積、即ちLp×(Iu−Iv)を出力する。この値は式(7)に対応する。
加算器13は積分器1の出力、即ち∫((Vu−v)−Rp×(Iu−Iv))dtから掛算器12の出力、即ちLp×(Iu−Iv)を引いた値を出力する。加算器13の出力は式(5)から式(6)と式(7)を引いた値に対応し、磁束推定信号φu−vに等しい。磁束推定信号φu−vの波形はロータ6の回転に同期したサイン曲線となる。
そして、コンパレータ4は磁束推定信号φu−vとグランドレベルを比較し、磁束推定信号φu−vがグランドレベルより小さいときはLoを、磁束推定信号φu−vがグランドレベルより大きいときはHiを出力する。
φu−vはロータ6に同期したサイン波となるので、コンパレータ4はロータが半回転する間Hiを、続く半回転の間Loを出力する。この信号をROT信号(回転パルス信号)と呼ぶ。コンパレータ4の出力端子はマイクロコンピュータ30とPLL回路16に接続されている。
Rp信号設定回路はマイクロコンピュータ30に記憶してある抵抗値Rpの値を掛算器10に出力する。
Lp信号設定回路はマイクロコンピュータ30に記憶してあるインダクタンス値Lpを掛算器12に出力する。
モータ巻線7U、7V、7Wの抵抗値とこれとモータ駆動回路17を接続するケーブル3U、3V、3Wの抵抗値の合成抵抗値Rpと、モータ巻線のインダクタンスLpはあらかじめ計測器を用いて計測され、マイクロコンピュータ30に格納されている。
マイクロコンピュータ30はPLL回路16の12×fROT信号に基づいてトランジスタ21a、21b、21c、21d、21e、21fに所定のゲート信号を供給し、モータ巻線7U、7V、7Wの電流を順次切り替えるようになっている。
PLL回路16をロックできる(作動させる)周波数が約20[Hz]なので、モータ5を起動してからロータ6の回転速度が毎秒20回転程度に達するまでは、オープンループでモータ巻線7U、7V、7Wの電流を切り替える。
ロータ6の回転速度が毎秒20回転程度に達すると、磁束推定信号φu−vからROT信号を作り、これによってモータ巻線7U、7V、7Wの電流の切り替えをフィードバック制御することができるようになる。
モータ巻線7U、7V、7Wの電流はそれぞれ図12のIu、Iv、Iwの波形のようになる。マイクロコンピュータ30は電流が矩形波となるようにモータ巻線7U、7V、7Wに印加する電圧をPWM(Puls Width Modulation)制御する。
差動増幅器8はモータ巻線7U、7Vの電圧の差を取り、図12のVu−vで示した波形を出力する。モータ巻線7U、7V、7Wの電流切り替え時に現れるスパイク状の電圧20はモータ巻線7U、7V、7Wの持つインダクタンスLpに起因するものであり、隣接する波形との段差21はモータ巻線7U、7V、7Wの抵抗値とこれらとモータ駆動回路17を接続するケーブル3U、3V、3Wの抵抗値の合成抵抗値Rpによる電圧降下である。
掛算器10はこのIu−IvとRpを掛け合わせる。
加算器11は(Vu−v)−Rp×(Iu−Iv)を出力する。この信号は重畳されている直流成分を直流遮断フィルタ2で取り除かれた後、積分器1に入力される。
積分器1は∫((Vu−v)−Rp×(Iu−Iv))dtを出力し、これは図12のXで示した波形となる。波形Xに見られる段差はモータ巻線7U、7V、7Wのインダクタンスに起因するものである。
積分器1の出力は加算器13にてLp×(Iu−Iv)を減算される。加算器13からは図12のφu−vの波形で示した磁束推定信号φu−vが出力される。
この波形から分かるように磁束推定信号φu−vはロータ6が1回転すると1周期となるサイン波になる。
コンパレータ4は磁束推定信号φu−vとグランドレベルを比較し、ROT信号を出力する。前述したようにROT信号は磁束推定信号φu−vがグランドレベルより小さいときはHiとなり、グランドレベルより大きいときは信号Loとなる。ROT信号は図12のROTの波形で示したようにロータ6の半回転する間Hiに、その後の半回転する間Loになる。
モータ巻線7U、7V、7Wの電流の切り替え方は、例えばW→V方向、U→V方向など全部で6種類あるので、基本的にはROT信号の6倍の周波数を持った逓倍同期信号6×fROT信号を生成すれば、この信号に同期して上記6つの電流を切り替えることができる。ここで、ROT信号の12倍の周波数を持った12×fROT信号を生成したのは積分によるφu−vの位相のずれを補正するためである。
より詳しく説明すると以下のようになる。
マイクロコンピュータ30はロータ6が60°回転するごとにモータ巻線7U、7V、7Wの電流を切り変える。図12の縦線は電流を切り替えるタイミングでありその間隔はロータ6の回転にして60°である。ところで、φu−vは積分により位相が元の信号より位相が90°進む。そのため、φu−vから生成したROT信号も位相が90°進んでおり、ROT信号の立ち上がりと立ち下がりと電流を切り替えるタイミングとは30°のずれがある。そこでROT信号の12倍の周期を持った12×fROT信号を生成すると、前記電流を切り替えるタイミングと、12×fROT信号の立ち上がりを一致させることができる。
このようにしてモータ巻線7U、7V、7Wの電流を切り替えるタイミングと、12×fROT信号の立ち上がりを一致させ、12×fROT信号が2回立ち上がるごとにモータ巻線7U、7V、7Wの電流を切り替えればモータ5を運転することができる。
また、本実施の形態ではモータ巻線7U、7Vの電流と電圧をモニタしたが、これに限定されるものではなく、任意のモータ巻線の電圧と電流をモニタしても良い。
本実施の形態のセンサレスブラシレスモータの制御回路41ではロータ6の磁極位置を常時監視できるので、負荷の変動によってロータ6の回転数が大きく変化した場合も脱調せずにモータ5を適切に制御することができる。また、ロータ6の磁極位置を検出するための信号を積分処理するために、この信号に重畳している電気的ノイズの影響を受けずに、前記磁極位置を正確に検出することができる。
第4の実施の形態ではモータ巻線7U、7V、7Wの抵抗値とこれらとモータ駆動回路17を接続するケーブル3U、3V、3Wの抵抗値の合成抵抗値Rpをあらかじめ計測器で計測し、それらをマイクロコンピュータ30に記憶させたが、本実施の形態ではRpを自動的に計測してマイクロコンピュータ30に格納する場合について述べる。
図13は本発明の第5の実施の形態に係るセンサレスブラシレスモータの制御回路42の構成を示したブロック図である。
本実施の形態の制御回路42は第4の実施の形態の制御回路41に新たにローパスフィルタ22、23を追加したものである。他の構成は制御回路41と同じであるので、これらの構成要素には制御回路41と同じ番号を付すことにする。
ローパスフィルタ22は差動増幅器9からIu−Ivを受け取り、これに重畳している高周波ノイズを除去した後、マイクロコンピュータ30へ出力する。
ローパスフィルタ23は差動増幅器8と駆動制御回路19内の図示しないマイクロコンピュータ30に接続されている。ローパスフィルタ23は差動増幅器8からケーブル3U、3Vの線間電圧Vu−vを受け取り、これに重畳されている高周波ノイズを除去した後、これをマイクロコンピュータ30に出力する。
このようにローパスフィルタ22、23を用いるのは、差動増幅器9から出力される信号Iu−Ivや差動増幅器8から出力される信号Vu−vには、モータ巻線7U、7V、7Wの電流の切り替えや、またこれらのPWM制御等のために高周波ノイズが重畳されており、これを取り除き、測定精度を向上させるためである。
なおここではRpを自動計測する手順についてのみ説明する。制御回路42の他の動作は第4の実施の形態の制御回路41と同じである。
モータ5の起動時にモータ巻線7U、7VにU→V方向に直流電流を流し差動増幅器8によってケーブル3U、3Vの線間電圧を計測する。
その電圧からローパスフィルタ23でノイズを除去した後、その値をマイクロコンピュータ30に記憶させる。
次に、ケーブル3U、3Vに流れる電流値を差動増幅器9によって計測し、その値に重畳された高周波ノイズをローパスフィルタ22で除去した後、その値をマイクロコンピュータ30に記憶させる。
マイクロコンピュータ30は次の式によってRpを計算する。
Rp=(Vu−v)/(Iu−Iv) (8)
なお、Rp計測の際にトランジスタ21dをスイッチオンしたままにし、トランジスタ21aのみをPWM制御することにより、測定精度を向上させることができる。
なお、ここでは差動増幅器9によってIu−Ivを求めたが、これは、IuとIvをそれぞれ検出してマイクロコンピュータ30にて差を求める構成にしても良い。
また、計算の結果得たRpの値が正常値範囲(例えば0.5[Ω]から10[Ω])を超えた場合はアラームを出力し、モータ5が駆動しないような安全装置を設置すると安全性を高めることができる。
そのため、従来はセンサレスブラシレスモータの使用現場でケーブル3U、3V、3Wを延長したり、モータ5を別のモータと交換した場合は、Rpを再度計測器を用いて再計測する必要があったが、本実施の形態の制御回路42ではそのような作業は不要となる。
第4の実施の形態ではモータ巻線7U、7V、7WのインダクタンスLpをあらかじめ計測器で計測し、それらをマイクロコンピュータ30に記憶させたが、本実施の形態ではLpを自動的に計測してマイクロコンピュータ30に格納する場合について述べる。
図14は本発明の第6の実施の形態に係るセンサレスブラシレスモータの制御回路43の構成を示したブロック図である。
本実施の形態の制御回路43は第5の実施の形態の制御回路42のローパスフィルタ22、23を特に高周波除去用のローパスフィルタ24、25としたものである。他の構成は制御回路42と同じであり、これら同じ構成要素には制御回路42と同じ番号を付すことにする。
本実施の形態ではモータ巻線7U、7V、7Wのインダクタンスを求めるために、例えば1[kHz]程度の高周波の交流電圧を用いる。また、この交流電圧は駆動制御回路19内の図示しないマイクロコンピュータ30によりPWM制御するのでPWM周波数、例えば50[kHz]のノイズが重畳されている。そこで例えば、カットオフ周波数が5[kHz]のローパスフィルタを用いれば、目的の信号からPWM制御によるノイズを除去することができ、測定精度を高めることができる。
ロータ6が停止している状態でモータ巻線7U、7VにU→V方向にロータ6が回転応答できない高周波の交流電圧Vu−v(例えば、ft=1[kHz])を印加する。ロータ6はモータ巻線7U、7Vの作る反転する磁界に追随できず回転しない。
次に、差動増幅器9は、この時の交流電流Iu−Ivを検出する。この値はローパスフィルタ25で高周波ノイズを除去した後、駆動制御回路内の図示しないマイクロコンピュータ30に記憶される。
一方、差動増幅器8はケーブル3U、3Vの線間電圧を検出する。この値はローパスフィルタ24により高周波ノイズを除去された後、マイクロコンピュータ30に記憶される。
マイクロコンピュータ30は記憶した交流電圧Vu−vと交流電流Iu−Ivから次の式(9)によりLpを計算する。
Lp=(Vu−v)/(2×π×ft×(Iu−Iv)) (9)
また、計算の結果得たLpの値が正常値範囲(例えば0[mH]から1[mH])を超えた場合はアラームを出力し、モータ5が駆動しないような安全装置を設置すると安全性を高めることができる。
そのため、従来はセンサレスブラシレスモータの使用現場でモータ5を別のモータと交換した場合は、Lpを再度計測器を用いて再計測する必要があったが、本実施の形態の制御回路43ではそのような作業は不要となる。
また、制御回路43の構成で第5の実施の形態と同様にしてRpを計測することもでき、RpとLpを共に自動計測することができる。
また、通常毎秒300回転以上の高速で回転する磁気軸受式ターボ分子ポンプに用いられるセンサレスブラシレスモータのLpは小さいので、Lpの検出を省略して、これをあらかじめ所定の値(例えば数百[μH])に設定しておき、これを使用してもモータ5を運転することもできる。
本実施の形態では、更に第6の実施の形態とは異なった手段でモータ巻線7U、7V、7WのインダクタンスLpを自動計測する場合について説明する。
図15は本発明の第7の実施の形態に係るセンサレスブラシレスモータの制御回路44の構成を示したブロック図である。制御回路44は第4の実施の形態の制御回路41に更にサンプリング回路26を付加したものである。サンプリング回路26は積分器1と駆動制御回路内にある図示しないマイクロコンピュータ30に接続されている。サンプリング回路26はマイクロコンピュータ30からサンプル信号出力指令を受け取ると積分器の出力Xの値をサンプリングし、このサンプル信号をマイクロコンピュータ30に送信する。
他の構成は制御回路41と同じであるので、制御回路41と同一の構成要素については同じ番号を付すことにする。
サンプリング回路26がサンプリングする積分器1の出力Xは次の式(10)で表される。
X=Lp×(Iu−Iv)+∫Viu−vdt (10)
X(点32)−X(点31)=Lp×Ip (11)
式(11)からLpは式(12)で表される。
Lp=(X(点32)−X(点31))/Ip (12)
Lp=(X(点32)−X(点31)+X(点33)−X(点34))/(2×Ip) (13)
点31のタイミングで、即ちモータ巻線7U、7VにU→V方向に電流を切り替える直前に、マイクロコンピュータ30はサンプリング回路26にサンプル信号出力指令を出力し、サンプリング回路26は積分器1の出力X(点31)をサンプリングする。そして、マイクロコンピュータ30はサンプリング回路26からX(点30)を受け取り、記憶する。
次に同様にしてマイクロコンピュータ30は点32のタイミングで、即ちモータ巻線7U、7VにU→V方向に電流を切り替えた直後にサンプリング回路26を介して積分器1の出力X(点32)を受け取り、記憶する。
ただし、モータ巻線7U、7V、7Wの電流を切り替えた直後は積分器1の出力Xにノイズが現れるため、このノイズが消えるまでの短時間(例えば50μ秒)をマイクロコンピュータ30の内部タイマでカウントした後、X(点32)のサンプリングを行う。
同様にしてX(点33)、X(点34)をサンプリングし、それらの値をマイクロコンピュータ30に記憶する。
なお前記Ipの設定値はマイクロコンピュータ30に記憶してある。
なお、制御回路44では、差動増幅器9によりIu、Ivをモニタしているので、Ipとしてこれを用いても良い。
また、計算の結果得たLpの値が正常値範囲(例えば0[mH]から1[mH])を超えた場合はアラームを出力し、モータ5が駆動しないような安全装置を設置すると安全性を高めることができる。
本実施の形態では更に別の手段でモータ巻線7U、7V、7Wの抵抗値とケーブル3U、3V、3Wの抵抗値の合成抵抗値Rpとモータ巻線7U、7V、7WのインダクタンスLpを自動的に計測する場合について説明する。
この実施の形態では、ロータをある回転数でフリーランさせたときのROT信号とこれに駆動電圧を供給した直後のROT信号とのずれと、ロータをフリーランしたときのモータ巻線に誘導される電圧と、前記駆動電圧からRpとLpを計算するものである。
図16は本発明の第8の実施の形態に係るセンサレスブラシレスモータの制御回路45の構成を示したブロック図である。制御回路45は第4の実施の形態の制御回路41に更にケーブル27を付加したものである。ケーブル27は積分器1の出力Xを駆動制御回路内にある図示しないマイクロコンピュータ30に伝達する。
他の構成は制御回路41と同じであるので、制御回路41と同一の構成要素については同じ番号を付すことにする。
まず、以下のように諸量を定義する。
ロータの角周波数=ω
差動増幅器9の出力Iu−Iv=I
モータ5を駆動しているときのモータ巻線7U、7Vの
電圧の差Vu−v=Vd
ロータ6をフリーランさせているときのモータ巻線の
誘導起電力の実際値Viu−v=Vir
ロータ6をフリーランさせているときのモータ巻線の
誘導起電力の推定値Viu−v=Vie
Rpの実際値=Rpr
Rpの推定値=Rpe
Lpの実際値=Lpr
Lpの推定値=Lpe
VirとVdの位相差=θ1
VirとVieの位相差=θ2
これらの関係を電圧ベクトル図で表すと図17のようになる。
電圧の検出値には高周波ノイズが多く重畳しているので、図17の諸量を積分した値からRpr、Lprを計算すると計算精度が向上する。
図18は図17の諸量を積分したものである。図17を積分すると各ベクトルは反時計方向に90°回転、即ち電圧のベクトルに対して位相が90°遅れるが、図18はこれを見やすくするため時計方向に90°回転して図示している。図18のベクトル図から以下の関係式が成り立つ。
θ2=θ1−arcsin(ω×Lpe×I/Vd)
Vie/ω=Vd×cos(θ1−θ2)/ω−RpeI/ω
I×(Rpr−Rpe)/ω=(Vie−Vir*cosθ2)/ω
I×Lpr−I×Lpe=Vir×sinθ2/ω
Rpr=(Vie−Vir×cosθ2)/I+Rpe (14)
Lpr=Vir×sinθ2/(ω×I)+Lpe (15)
以下にセンサレスブラシレスモータの制御回路45の動作を説明する。
前述したように、マイクロコンピュータ30に記憶されているRpe、LpeはRpe=Lpe=0に初期化されている。
ロータ6を停止状態からオープンループで起動し、所定の回転速度ω(例えば毎秒20回転)まで加速する。
ロータ回転数が所定の値ωに達したら、モータ5に供給している電流を一瞬止めロータ6をフリーランさせる。この時、差動増幅器8からモータ巻線の誘導起電力の実際値Virを検出する。積分器1の出力はケーブル27を介してマイクロコンピュータ30に記憶される。
次に、Virを計測した直後に引き続きモータ巻線7U、7V、7Wに電流を供給する。その時のモータ巻線7U、7Vの電圧の差Vdを差動増幅器8によって計測する。積分器1の出力はケーブル27を介してマイクロコンピュータ30に記憶される。また、θ1は後に説明する方法により以上の電流オンオフの動作と同時に取得される。
マイクロコンピュータ30はロータ6がフリーランしているときに図19に示したようなROT信号を駆動制御回路19内の図示しないコンパレータ4から受け取る。
マイクロコンピュータ30は内部タイマ(例えば10μ秒ごとにカウントアップする)を有しており、前記ROT信号に同期してロータ6が1回転する間タイマのパルスをカウントアップする。例えば、ロータ6が0.1秒で1回転するとすると、タイマのカウント数Nrは1000となる。
この直後からマイクロコンピュータ30はタイマのカウント数が1000になるごとに、0からカウントを再開する。ロータ6の回転数はフリーランの間ほぼ一定なので、ROT信号とタイマのカウント動作は同期している。
次に、マイクロコンピュータ30はモータ巻線7U、7V、7Wに電流供給を再開した際のROT信号の切り替え点でのカウンタのカウント数Neを記憶する。このROT信号は図19に示したようにフリーラン時のROT信号と周期はほぼ同じであるが、位相がθ1進む。
Nr、Neの値からマイクロコンピュータ30はθ1を計算する。
例えば、カウント数Nr=1000、カウント数Ne=900だったとするとVirとVdの位相のずれθ1は以下のように求まる。
θ1=(Nr−Ne)/Nr×360°=36°
次に、マイクロコンピュータ30はこのRpr、Lprの値を以てRpe、Lpeの値を更新する。
以上の手順をモータ5起動時に数回繰り返すことにより、より正確なRpr、Lprを求めることができる。
制御装置45は以上の手順で取得したRpe、Lpeにより、磁束推定信号φu−vを求めてモータ5をフィードバック制御する。この動作は第4の実施の形態と同じである。
また、計算の結果得たRpe、Lpeの値が正常値範囲(例えば0.5[Ω]から10[Ω]及び0[mH]から1[mH])を超えた場合はアラームを出力し、モータ5が駆動しないような安全装置を設置すると安全性を高めることができる。
そのため、従来はセンサレスブラシレスモータの使用現場でモータ5を別のモータと交換した場合は、Rpr、Lprを再度計測器を用いて再計測する必要があったが、本実施の形態の制御回路45ではそのような作業は不要となる。
また、本実施の形態では積分器1からマイクロコンピュータ30へケーブル27を増設するだけで、RpeをLpe計測することができるので、第6の実施の形態から第7の実施の形態までの制御回路より回路構成が簡単になる。
なお本実施の形態ではモータ巻線7U、7Vを用いてRpr、Lprを求めたが、これに限定するものではなく、任意のモータ巻線によりRpr、Lprを計測することができる。
本実施の形態は、磁気浮上式ターボ分子ポンプのように、起動時間約3〜10分と長い場合は、ロータの加速度が小さく高精度にθ1を測定できる。
本実施の形態は、第4第の実施の形態の制御回路41(図11)に、抵抗値信号Rp、インダクタンス値信号Lpを一時的にゼロとする機能などを追加することにより、制御回路41を用いて第2の実施の形態の制御回路142(図3)と同じ機能を実現することが可能となるものである。これによって、新たに機能を追加された制御回路41で制御回路142の機能を兼用することができ、モータ5の運転をPLL回路16がロックできない低速回転から定常回転まで行うことができる。なお、定常回転とは、ロータを所定の回転周波数(例えば毎分3万回転)にて定常的に回転させることを言う。
モータ駆動回路17はモータ5に電流を供給する電流供給手段を構成している。
Rp信号設定回路14、差動増幅器9、掛算器10、及び加算器11は、電源装置からの配線とモータ巻線7U、7V、7Wの合成抵抗による電圧の変化の補正量を線間電圧から減算してこれを補正する抵抗分補正手段を構成している。
差動増幅器8はモータ巻線7U、7Vの線間電圧を取得する線間電圧取得手段を構成している。積分器1は磁束信号取得手段を構成し、線間電圧を積分して磁束信号(モータ巻線7U、7Vの鎖交磁束を推定する信号なので以降磁束推定信号φと記す)を得る。
Lp信号設定回路15、差動増幅器9、掛算器12及び加算器13は、モータ巻線7U、7Vのリアクタンスによる電圧の変化を掛算器を積分器1の出力から減算することより磁束推定信号φを補正するリアクタンス分補正手段を構成している。
コンパレータ4は磁極位置取得手段を構成している。磁束推定信号φの位相はロータ6の磁極位置と対応関係があるので、磁束信号φの位相を検出することにより磁極位置を検出することができる。そこでコンパレータ4は、グランドレベルと磁束信号φを比較することにより、磁束推定信号φの位相が2nπ、(2n+1)πとなる点を検出し、磁極位置を検出することができる。ただし、nは整数である。
また、Lp信号設定回路15も、インダクタンス値信号Lp(=Lu=Lw=Lv)とゼロの2つの値をマイクロコンピュータ30からの信号により選択的に出力するようになっている。
Rp信号設定回路14とLp信号設定回路15の出力を共にゼロとすると、掛算器12及び掛算器10の出力は共にゼロとなり、第2の実施の形態の制御回路142の差動増幅器103、直流遮断フィルタ102、積分器101及びコンパレータ104から構成される回路と同じ構成の回路を実現することができる。例えば、制御回路47が制御回路142と同じように動作する場合を第1のモード、制御回路41と同じように動作する場合を第2のモードとすると、制御回路47は、抵抗値信号Rp及びインダクタンス値信号Lpを出力させることにより第2のモードにて動作し、これらの信号をゼロとすることにより第1のモードにて動作する。
コンパレータ4が出力するROT信号は、ロータ6の回転に同期してロータ6が1回転するごとにHiとLoを繰り返すので、例えば単位時間あたりのROT信号の立ち上がり又は立下りを計数することによりロータ6の回転周波数を計算することができる。
そしてマイクロコンピュータ30は、第4の実施の形態と同様にしてモータ5を運転する。即ち、コンパレータ4は磁束推定信号φからROT信号を生成し、更にPLL回路16はROT信号から12×fROT信号を生成する。そしてマイクロコンピュータ30は、12×fROT信号に同期してモータ駆動回路17のトランジスタ21a、21b、21c、21d、21e、21fをオンオフし、モータ巻線7U、7V、7Wに3相交流を流し、ロータ6を回転させる(第2のモード)。
そしてマイクロコンピュータ30は第2の実施の形態と同様にしてモータ5を運転する。即ち、コンパレータ4から出力されるROT信号に同期してトランジスタ21b、21c、21e、21fをオンオフして電流をV→W方向(駆動電圧ベクトル3が出力された場合)、及びW→U方向(駆動電圧ベクトル5が出力された場合)に交互に流してロータ6を回転させる(第1のモード)。
また、マイクロコンピュータ30は、駆動電圧ベクトルの駆動タイミング取得手段をも構成し、第1のモードにおいては、コンパレータ4のROT信号から駆動電圧ベクトルの駆動タイミング(第1の駆動タイミング)を取得し、第2のモードにおいてはPLL回路16の12×fROT信号から駆動タイミング(第2の駆動タイミング)を取得する。そしてマイクロコンピュータ30は、第1の駆動タイミングによって第1のモードにてトランジスタ21b、21c、21e、21fをオンオフする第1の駆動電圧ベクトル出力手段と、第2の駆動タイミングによって第2のモードにて21a、21b、21c、21d、21e、21fをオンオフする第2の駆動電圧ベクトル出力手段を構成している。
制御回路47が制御回路142と同様に動作し、ロータ6を加速又は定常回転する場合を2相加速モードと呼び、逆に減速する場合は2相減速モードと呼ぶことにする。また、両者を区別しない場合は単に2相モードと呼ぶことにする。
また、制御回路47が制御回路41と同様に動作し、ロータ6を加速又は定常回転する場合を3相加速モードと呼び、逆に減速する場合は3相減速モードと呼ぶことにする。また両者を区別しない場合は単に3相モードと呼ぶことにする。
2相減速モード及び3相減速モードは、それぞれ2相加速モードと3相加速モードの界磁の方向を反転したものである。即ち、界磁の位相を180度シフトさせる。
このように界磁の極性を反転すると後に説明するように、界磁はロータ6の回転の逆方向にトルクを発生させる。
(1)のモード切替は、ロータ6を2相加速モードで加速中にモードを切替えて2相減速モードで減速する停止させる場合である。これは、例えば、ロータ6の回転を開始した後で回転周波数が30[Hz]に満たないときに、ユーザがモータ5を停止させる場合や、モータ5の安全装置が作動して停止する場合などがある。
以下同様に、(2)のモード切替は、2相減速モードから2相加速モードに切替える場合である。(3)のモード切替は、2相加速モードから3相加速モードに切替える場合である。(4)のモード切替は、3相加速モードから2相減速モードに切替える場合である。(5)のモード切替は、2相減速モードから3相加速モードに切替える場合である。(6)のモード切替は、3相減速モードから2相減速モードに切替える場合である。(7)のモード切替は、3相加速モードから3相減速モードに切替える場合である。(8)のモード切替は、3相減速モードから3相加速モードに切替える場合である。
制御回路47は、2相加速モードにてモータ5を始動する。即ち、マイクロコンピュータ30は、Rp信号設定回路14とLp信号設定回路15の出力をそれぞれゼロとした後、モータ駆動回路17のトランジスタ21b、21c、21e、21fをオンオフして駆動電圧ベクトル3、駆動電圧ベクトル5を交互に出力する。トランジスタ21c、21fがオンの場合は、モータ巻線7V、7Wに駆動電圧ベクトル3が出力され、トランジスタ21e、21bがオンの場合は、モータ巻線7W、7Uに駆動電圧ベクトル5が出力される。
なお、駆動電圧ベクトルの番号及びモータ巻線7U、7V、7Wに流す電流の方向及びスイッチングするトランジスタ21a、21b、21c、21d、21e、21fの関係を図23に示した。例えば、図23からわかるように、駆動電圧ベクトル1を出力する場合にモータ駆動回路17が供給する電流の方向はモータ巻線7Uからモータ巻線7Vの方向であり、スイッチオンするトランジスタはトランジスタ7a、7dである。同様にして図23から、他の駆動電圧ベクトルと電流の方向及びスイッチオンするトランジスタの関係を読み取ることができる。
マイクロコンピュータ30は、コンパレータ4から受信したROT信号に同期してトランジスタ21b、21c、21e、21fをオンオフして駆動電圧ベクトル3、駆動電圧ベクトル5を交互に出力する。なお、ROT信号がHiのときは駆動電圧ベクトル5が出力され、ROT信号がLoのときは駆動電圧ベクトル3が出力されるものとする。このようにロータ6の回転周波数が1[Hz]程度になると、ロータ6の磁極の位置を検出して駆動電圧ベクトル3、5の出力をフィードバック制御することができる。
マイクロコンピュータ30は、3相加速モードに移行するとRp信号設定回路14及びLp信号設定回路15にそれぞれ抵抗値信号Rpとインダクタンス値信号Lpを出力させると共に、モータ駆動回路17のトランジスタ21a、21b、21c、21d、21e、21fをオンオフしてモータ巻線7U、7V、7Wに駆動電圧ベクトル1〜6の供給を開始する。
加算器13からは磁束推定信号φが得られ、これによってコンパレータ4からROT信号が得られる。PLL回路16は、コンパレータ4から受信したROT信号から12×fROT信号を生成する。
マイクロコンピュータ30は、PLL回路13から12×fROT信号を受信し、第4の実施の形態と同様にしてモータ巻線7U、7V、7Wへ供給する電流の切替えをフィードバック制御する。
以上の3相加速モードによりロータ6は毎分3万回転程度まで加速された後、定常回転を行う。
モータ5を停止させる場合は、ロータ6の磁極にモータ巻線7U、7V、7Wが生成する磁界を作用させてブレーキをかける。まず、ロータ6を減速する方法について説明する。
図24は、界磁によってロータ6を減速する仕組みを説明するための図である。
図24(a)は、ロータ6を加速する場合を示した図である。ロータ6は紙面に向かって時計方向に回転している。ロータ6の上下にある磁極は、モータ巻線7U、7V、7Wが生成する界磁を模式的に表したものである。図22(a)の場合では、紙面上方に向かってモータ巻線7U、7V、7Wによる界磁が形成されていることを示している。
ロータ軸6の磁極とモータ巻線7U、7V、7Wが生成す界磁が図に示したような関係にあるとき、即ち、ロータ軸6の回転する方向にロータ軸6の磁極を吸引するような界磁が形成されている場合にロータ軸6は加速される。
一方、図24(b)のように、ロータ軸6の回転する方向にロータ軸6の磁極を反発するような界磁が形成されている場合にロータ軸6は減速される。
以上の考察から、ロータ軸6を減速する場合は、加速する際に出力した駆動電圧ベクトルと逆方向の駆動電圧ベクトルを、2相減速モードの場合はROT信号に同期して、また3相減速モードの場合には12×fROT信号に同期して出力すればよいことがわかる。
このように、マイクロコンピュータ30は、12×fROT信号に同期して3相加速モードの場合とは逆方向の電流をモータ巻線7U、7V、7Wに供給してロータ6を減速していく。
マイクロコンピュータ30は、2相減速モードになるとRp信号設定回路14とLp信号設定回路15の出力を共にゼロとし、トランジスタ21b、21c、21e、21fをオンオフして駆動電圧ベクトル3、駆動電圧ベクトル5を交互に出力する。ただし、2相加速モードのときとは逆に、ROT信号がHiのときは駆動電圧ベクトル3が出力され、ROT信号がLoのときは駆動電圧ベクトル5が出力される。
以上3相減速モードと2相減速モードの併用によりロータ6は速やかに停止する。
第2の実施の形態の制御回路142(図3)の機能を第4の実施の形態の制御回路41(図11)の一部分を用いて実現するため、制御回路47を用いて、ロータ6がPLL回路16がロックできる周波数(例えば20[Hz]程度)以下の回転周波数で回転している場合でも、磁極の位置を検出して界磁をフィードバック制御することができ、またモータ5が定常運転しているときに急激な負荷変動などが生じた場合でも脱調せずに運転を維持できる。
そのため、モータ5の起動時間を短縮することができると共に、定常運転中の安定性を向上させることができる。
また、単一の制御回路47でモータ5の起動と定常運転の何れも制御することができるので、制御回路142を制御回路41に追加する必要が無く、製造コストを低減することができる。
2相モードではLp信号設定回路15から出力される信号がゼロとなるため、理論的には掛算器12の出力はゼロになるはずである。ところが、掛算器12は、オペアンプなどの各種素子を組み合わせて作るため、これらの素子の性質によりインダクタンス値信号Lpをゼロとしても掛算器からオフセット電圧(直流)が出力されてしまう場合がある。
このため、2相モードにおいて、加算器13から出力される磁束推定信号φに直流成分が重畳されてしまうことがある。一方コンパレータ4は、磁束推定信号のレベルとグランドレベルを比較しているため、磁束推定信号φがオフセットされると適切に動作することができない。そこで、加算器13とコンパレータ4の間に直流遮断フィルタを挿入し、加算器13で重畳された直流成分を取り除くと、より適切にコンパレータ4を動作させることができる。
加算器13とコンパレータ4の間に挿入した直流遮断フィルタは、制御回路47が3相モードで動作しているときでも取り付けたままでよい。これは、コンパレータ4に入力される磁束推定信号φは直流成分が取り除かれたものが望ましいため、コンパレータ4の入力側に直流遮断フィルタを設けても何等悪影響が無いのに加え、3相モードにおいて掛算器12の出力が素子の特性などにより直流成分を有していた場合にこれを除去できるためである。
図25は、本変形例に係る制御回路49の構成を示した図である。制御回路49は、2相モードにおいて、Lp信号設定回路15の出力のみをゼロとし、Rp信号設定回路14からはモードに関わらず抵抗値信号Rpを出力するものであり、この他の回路の構成は制御回路47と同様である。このように、2相モードで抵抗値信号Rp信号を出力すると以下の理由により、制御回路47の始動直後の特性を向上させることができる。
そのため、制御回路47が始動した直後の所定の期間(約1秒程度)は直流遮断フィルタ2は直流成分を十分に遮断することができず、直流成分が積分器1に出力されてしまう。
ところで、加算器11は、差動増幅器8の出力から掛算器10の出力(差動増幅器8の直流成分)を減算している。即ち、掛算器10の出力が加算器11に入力されることにより、差動増幅器8の出力の直流成分が消去される。
一方、2相モードの際に、Rp信号設定回路14から掛算器10に抵抗値信号Rpが出力されていても、掛算器10の出力はもともと差動増幅器8の直流成分を消去するためのものなので、何等モータ5の運転には影響しない。即ち、差動増幅器8の出力から加算器11で直流成分が取り除かれ、更に直流遮断フィルタ2で直流成分を取り除くことになる。しかも加算器11での直流成分の消去はモータ5が始動した直後から行われる。
図26(a)は、差動増幅器8から出力される直流成分を示した図であって、縦軸は電圧を、横軸は時間を表している。制御回路47を時刻t1に始動すると、差動増幅器8から信号が出力され、当該信号には直流成分が含まれる。即ち、図に示したように、制御回路47を始動すると差動増幅器8から直流成分81がステップ状に現れる。
図26(b)は、Rp信号設定回路14の出力をゼロとし、掛算器10の出力をゼロとした場合に、直流遮断フィルタ2から出力される信号の直流成分を表した図であり、縦軸は電圧、横軸は時間を表している。時間軸の原点は図26(a)と揃えてある。
図26(b)に示したように、掛算器10の出力をゼロとすると、制御回路47が始動した直後に直流成分82が出力され、所定の時間を経て減衰される。
図26(c)は、Rp信号設定回路14から抵抗値信号Rpを出力する場合の直流遮断フィルタ2から出力される信号の直流成分を表した図である。縦軸は電圧、横軸は時間を表している。時間軸の原点は図26(a)と揃えてある。
図26(c)に示したように、この場合、直流遮断フィルタ2は、制御回路47が始動した直後から直流成分を遮断することができる。
以上のように、2相モードにおいてRp信号設定回路14から抵抗値信号Rpを出力することにより、制御回路47の始動直後における直流遮断フィルタ2からの直流成分の出力を抑制することができる。
このように本変形例では、始動直後の制御回路47の特性を向上させることができる。
第9の実施の形態の変形例1で説明したように、2相モードと3相モードとの切替えは8種類ある(図22)。このうち、2相モードから3相モードへの切替、即ち(3)及び(5)のモード切替時に加算器13(図21)から出力される磁束推定信号φが不安定になる場合があることが新たに分かった。
本変形例は、磁束推定信号φの安定性を高めるために、2相モードから3相モードへのモードを切替えるときにモータ巻線7U、7V、7Wにロータ6のトルクに影響を生じない程度の微小電流を所定時間(約1〜5秒程度)導通するものである。
図27は、2相減速モードから休止時間を経て3相加速モードに切替えた場合の((5)のモード切替え)、差動増幅器8の信号の直流成分、磁束推定信号φ、W相の電流Iwの変化を示した図であり、横軸は時間を表している。マイクロコンピュータ30は、2相減速モードから3相加速モードに切替えるときに、トランジスタ21a、21b、21c、21d、21e、21fのショートを防ぐために2相モードと3相モードの間に所定の休止時間(10μ秒〜0.1秒程度)を設けている。
マイクロコンピュータ30が休止時間の後に3相モードでモータ5を駆動すると、差動増幅器8には、信号の直流成分の変動(オフセット)71が現れる。この変動はモータ5や回路素子の特性のばらつきに起因するものである。
直流遮断フィルタ2は積分作用があるため直流電圧の変動71をカットするのにある程度時間を要する。そのため、直流電圧の変動71が現れた直後はこれを十分にカットできず、そのため積分器1は直流成分を積分してしまう。その結果、磁束推定信号φが揺らいでしまう。この揺らいだ磁束推定信号φを元に3相モードでの運転を行うとモータ巻線7U、7V、7Wの通電位相を正しいタイミングで切替えられなくなり、加速動作をうまく行えない場合がある。
一方、モータ巻線7U、7V、7Wへの電流の供給は次のように行われる。符号74はIwを表し、符号75はIwの包絡線を示している。図に示したようにマイクロコンピュータ30は、2相モードから3相モードに切替えるときに、一端Iw(Iu、Ivも)をゼロにしてモータ駆動回路17を休止した後、磁束推定信号φから生成したROT信号に同期してIwの振幅を徐々に大きくしていき、3相モードに移行する。
ところで、ROT信号はコンパレータ4が磁束推定信号φのレベルとグランドレベルを比較して生成するため、磁束推定信号φが揺らいでしまうとROT信号がロータ6の磁極の位置と一致せず、Iwは符号76で示した部分のように正しい相に通電されないこととなる。
磁束推定信号φの揺らぎが速やかに収束しないのは、変動71による磁束推定信号φの揺らぎが収まる前に3相加速モードの電流をモータ5に供給することが新たな磁束推定信号φの揺らぎを引き起こすためと思われる。
図28は、この場合の差動増幅器8の直流成分、磁束推定信号φ、W相の電流Iwの変化を示した図である。
この例では、マイクロコンピュータ30は、2相減速モード(区間51)から3相加速モード(区間55)に切替える際に、一端、モータ駆動回路17がモータ5に供給する電流をオフにした後(区間52、時間は10μ秒〜0.1秒程度)、モータ5のトルクに影響を与えない程度の3相の微小電流を一定時間(1秒〜5秒程度)モータ5に供給する(区間53)。その後3相電流の電流値を徐々に大きくしていき(区間54)、3相モードに移行する(区間55)。
なお、3相加速モードでのIwの大きさは6[A]程度であり、3相微小電流の大きさは0.1〜0.5[A]程度である。
直流成分の変動58は、3相モードを開始した時点で生じるが、この例では、磁束推定信号φの変動が収束するまで大きな3相電流をモータ5に供給しないため、モータ巻線7U、7V、7Wに供給した電流による新たな磁束推定信号φの揺らぎが生じず、その結果、速やかに磁束推定信号φの揺らぎを収束させることができる。
本実施の形態は、磁束推定信号φをコンパレータ4に入力する前に直流遮断フィルタに通すと共に、当該直流遮断フィルタの遮断周波数をロータ6が低速回転しているときと高速回転しているときとで切替えるものである。
第9の実施の形態で述べたように制御回路47においてLp信号設定回路15の出力をゼロとしても掛算器12がオフセット電圧を出力してゼロとならず、その結果、加算器13が出力する磁束推定信号φに直流成分が重畳される場合がある。そこで、加算器13とコンパレータ4の間に直流遮断フィルタを挿入することにより、磁束推定信号φに重畳された直流成分を除去することができる。
ところで、制御回路47は、ロータ6の始動から定常回転まで磁束推定信号φによってモータ5をフィードバック制御するため、当該直流遮断フィルタは、回転周波数にして1[Hz]程度の小さい周波数の磁束推定信号φをも通過させる必要がある。
一方、直流遮断フィルタは例えばハイパスフィルタを用いて形成される。そのため、直流遮断フィルタ2と積分器1を組み合わせた回路の周波数特性は、後に説明するように遮断周波数を小さくするとゲインが大きくなってしまい、小さな直流ノイズをも増幅されてしまう場合がある。直流ノイズが直流遮断フィルタ2と積分器1を組み合わせた回路で増幅されるとコンパレータ4が正しくROT信号を出力することが困難となる。
そこで本変形例では、加算器13とコンパレータ4の間に直流遮断フィルタを挿入し、当該直流遮断フィルタの遮断周波数をロータ6の低速回転時と、高速回転時で切替えることにより、より適切な磁束推定信号φを生成することとした。
以下に図29を用いてこれらの周波数特性について説明する。
図29(a)は、遮断周波数が可変であるハイパスフィルタで遮断周波数をf1及びf2とした場合の周波数特性を示した図である。
遮断周波数がf1のときは、曲線62で示したように、低周波側から周波数f1まで急激にゲインが増大し、周波数f1よりも大きい周波数ではゲインは所定の一定値で飽和する。
同様に遮断周波数がf2(f2>f1)の場合は、曲線61で示したように、低周波側から周波数f2まで急激にゲインが増大し、周波数f2よりも大きい周波数では、ゲインは所定の一定値で飽和する。
図29(c)は、直流遮断フィルタと積分器を組み合わせた回路の周波数特性を示した図である。当該直流遮断フィルタは、当該ハイパスフィルタで形成したため、直流遮断フィルタと積分器を組み合わせた回路のゲインは当該ハイパスフィルタの周波数特性と当該積分器の周波数特性を加算したものとなる。
直流遮断フィルタと積分器を組み合わせた回路の周波数特性は、ハイパスフィルタの周波数特性が曲線61で表される場合は、曲線64のように遮断周波数f2でゲインが最大となり、ハイパスフィルタの周波数特性が曲線62で表される場合は曲線65のよう遮断周波数f1でゲインが最大になる。
図29(c)から分かるように、ハイパスフィルタの遮断周波数を小さくして直流遮断フィルタと積分器を組み合わせた回路の遮断周波数を小さくすると、直流遮断フィルタと積分器を組み合わせた回路は、低周波数の信号をより通過させることができるようになるが、ゲインはΔだけ増大する。
このように、直流遮断フィルタと積分器を組み合わせた回路の遮断周波数を小さくすると、低周波数の磁束推定信号φを通過させることができるが、ゲインが大きくなるためDCノイズ(ノイズの直流成分)をも増幅してしまう。
直流遮断フィルタと積分器を組み合わせた回路の遮断周波数を小さくすると、低周波数の磁束推定信号φを通過させることができるため、モータの始動時の運転は安定するが、直流ノイズが増幅されるため、モータを定常運転しているときに運転が不安定になる場合がある。一方、直流遮断フィルタと積分器を組み合わせた回路の遮断周波数を大きくすると、直流ノイズが増幅されないのでモータの定常運転は安定するが、低周波数の磁束推定信号φが通過しにくいため、モータ始動時の運転が不安定になる場合がある。
そのため、モータ5の始動時(低い周波数の磁束推定信号φを通過させる必要がある)と、ロータ6の回転数がある程度大きくなった時点でハイパスフィルタの遮断周波数を変更するのが望ましい。
直流遮断フィルタ28、2は共にハイパスフィルタで構成されている。積分器1に直流成分が入力されて積分されるのは好ましくないため、本変形例では直流遮断フィルタ2の遮断周波数を可変とすることとした。
マイクロコンピュータ30は、直流遮断フィルタ28、2の遮断周波数をモータ5の停止時から始動後の所定時間(例えば10秒間)の間はf1[Hz]に設定し、所定時間経過後は遮断周波数をf2(f1<f2)[Hz]に高めて設定する。
マイクロコンピュータ30は、遮断周波数変更信号をリセット側にして直流遮断フィルタ28、2に送信することによりこれらの遮断周波数をf1[Hz]に設定し、遮断周波数変更信号をセット側にして送信することにより、これらの遮断周波数をf2に設定することができる。即ち、マイクロコンピュータ30は、遮断周波数を切替える切替え手段を構成している。
本変形例では、f1=0.05[Hz]、f2=0.5[Hz]とした。
ゲインは周波数に比例するので、遮断周波数f1時のゲインは遮断周波数f2時のゲインの10倍となる。
モータ5が停止状態から始動する時に、マイクロコンピュータ30は、直流遮断フィルタ28、2に遮断周波数変更信号をリセット側にして出力し、これらの遮断周波数をf1=0.05[Hz]に設定する。
その後、マイクロコンピュータ30は、モータ駆動回路17を2相加速モードにて始動すると、これと同時にモータ5を始動してからの経過時間の計測を開始する。
マイクロコンピュータ30は、モータ5を始動してから10秒経過すると、遮断周波数変更信号をセット側にして直流遮断フィルタ28、2に出力し、これらの遮断周波数をf2=0.5[Hz]に設定する。
以降、第9の実施の形態と同様にしてモータ5を運転する。
本実施の形態では、第9の実施の形態で説明した制御回路47によってモータを制御する真空ポンプについて説明する。
本実施の形態では、真空ポンプの一例として磁気軸受式のターボ分子ポンプを用いて説明する。
図31は、ターボ分子ポンプ301のロータ軸303の軸線方向の断面図の一例を示した図である。
ケーシング316は、円筒形の形状を有しており、ターボ分子ポンプ301の外装体を形成している。
紙面に向かってロータ軸303の上部と下部及び底部には、それぞれ磁気軸受部308、312、320が設けられている。ターボ分子ポンプ301が稼働しているときは、ロータ軸303は、磁気軸受部308、312によってラジアル方向(ロータ軸303の径方向)に磁気浮上し非接触で支持され、磁気軸受部320によってスラスト方向(ロータ軸303の軸方向)に磁気浮上し非接触で軸支される。
これらの磁気軸受部は、いわゆる5軸制御型の磁気軸受を構成しており、ロータ軸303、及びロータ軸303に固着したロータ311は、ロータ軸303の軸線周りに回転できるようになっている。
変位センサ309は、ロータ軸303のラジアル方向の変位を検出するラジアルセンサである。制御装置325は、変位センサ309からの変位信号によってロータ軸303がラジアル方向に所定の位置から変位したことを検出すると、各電磁石の磁力を調節してロータ軸303を所定の位置に戻すように動作する。この電磁石の磁力の調節は、各電磁石の励磁電流をフィードバック制御することにより行われる。
磁気軸受部312では、ロータ軸303の周囲に、90°ごとに電磁石が4つ配置されており、これらの電磁石の磁力の吸引力により、ロータ軸303は、磁気軸受部312でラジアル方向に非接触で保持される。
変位センサ313は、ロータ軸303のラジアル方向の変位を検出するラジアルセンサである。
制御装置325は、変位センサ313の信号に基づいて磁気軸受部312をフィードバック制御し、これによってロータ軸303は、磁気軸受部312でラジアル方向に磁気浮上し、空間中に非接触で保持される。
金属ディスク318は、鉄などの高透磁率材で構成されており、その中心においてロータ軸303に垂直に固定されている。金属ディスク318の上には電磁石314が設置され、下には電磁石315が設置されている。電磁石314は、磁力により金属ディスク318を上方に吸引し、電磁石315は、金属ディスク318を下方に吸引する。制御装置325は、この電磁石314、315が金属ディスク318に及ぼす磁力を適当に調節し、ロータ軸303をスラスト方向に磁気浮上させ、空間に非接触で保持するようになっている。
ロータ軸303がスラスト方向のどちらかに移動して所定の位置から変位した場合、制御装置325は、この変位を修正すように電磁石314、315の励磁電流をフィードバック制御して磁力を調節し、ロータ軸303を所定の位置に戻すように動作する。制御装置325の、このフィードバック制御により、ロータ軸303はスラスト方向に所定の位置で磁気浮上し、保持される。
以上に説明したように、ロータ軸303は、磁気軸受部308、312によりラジアル方向に保持され、磁気軸受部320によりスラスト方向に保持されるため、ロータ軸303は磁気浮上によりの軸線周りに非接触で軸支される。
ロータ軸303は、磁気軸受部308、312、320により、磁気浮上し、空間中に非接触で保持されているが、ロータ軸303の軸線周りの振れが生じるなどして、ロータ軸303が保持位置から大きくずれる場合がある。保護ベアリング306、307は、このような場合に、ロータ軸303が磁気軸受部308、312、320の電磁石に接触したり、モータ部310で永久磁石が電磁石に接触するのを防ぐために設けられている。
ロータ軸303が所定の位置からある量以上移動すると、ロータ軸303は保護ベアリング306、307に接触し、ロータ軸303の移動は物理的に制限される。
ロータ311の吸気口324の側には、ロータ翼321が、ロータ軸303の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して、ロータ311から放射状に複数段取り付けてある。ロータ翼321は、ロータ311に固着されており、ロータ311と共に高速回転するようになっている。
また、ケーシング316には、ステータ翼322が、ケーシング316の内側に向けて、ロータ翼321の段と互い違いに固定されてる。また、ステータ翼322はロータ軸303の軸線に垂直な平面から所定の角度をもって、ケーシング316に固定されている。
ねじ溝スペーサの内周面にはらせん状のねじ溝304が形成されており、ねじ溝304の深さは下段に行くほど小さくなっている。ロータ311が回転すると、ねじ溝304をガスが下段へ輸送されるが、ねじ溝304の深さが下段に行くに従って小さくなるため、ガスはねじ溝304中を輸送されるに従って圧縮されるようになっている。
制御装置325は、第9の実施の形態で示した制御回路47が格納されており、制御回路47がモータ部310を制御する。
吸気口324から吸引されたガスは、ロータ翼321とステータ翼322の作用により圧縮され、ねじ溝ポンプ部に送られる。
ねじ溝ポンプ部に送られたガスは、ねじ溝304中をガイドされながら下段へ輸送され、更に圧縮された後、排気口319から排出される。
モータ部10は、U相電磁石326e、326f、V相電磁石326c、326d及びW相電磁石326a、326bの各電磁石を有している。これら電磁石は60度ごとに同心状に、かつ同相の電磁石は互いに対向するように配設されており、各電磁石には各相に対応するモータ巻線7U、7V、7Wが巻いてある。これらの電磁石のコアは積層鋼板などによって構成されており、モータ巻線に電流が供給されると励磁されるようになっている。また、例えば、モータ巻線7Uに電流を流すとU相電磁石326eがN極になり、U相電磁石326fがS極になるといったように、モータ巻線7U、7V、7Wは、対向する各電磁石の極性が逆になるよう巻かれている。
図32に示したように、駆動電圧ベクトル1が出力されると電磁石326c、326eがS極、電磁石326d、326fがN極となり、かつ、永久磁石328は紙面上側、329は下側に位置している場合、永久磁石328は電磁石326c、326eに吸引され、永久磁石329は、電磁石326d、326fに吸引されるため、ロータ軸303に紙面に向かって時計方向のトルクを生じる。
このように、磁極328、329の位置を検出しながら、ロータ軸303にトルクを生じるように駆動電圧ベクトルを1→2→3→4→5→6と順次出力することによってロータ軸303を回転させることができる。なお、磁極328、329の位置の検出は、磁束推定信号φによって行う。
また、逆に、永久磁石328、329が図32で示した位置にあるときに、電磁石326c、326eをN極、電磁石326d、326fをS極にすると(即ち極性を反転すると)、ロータ軸303に反時計方向のトルクが生じ、ロータ軸303(時計方向に回転しているとする)にブレーキをかけることができる。
停止状態から始動する場合は、制御装置325が磁気軸受部308、312、320を駆動してロータ軸303を磁気浮上した後、モータ部310モータ部310を2相加速モードにて駆動し、ロータ軸303を回転させる。
ロータ軸303の回転周波数がPLL回路をロックできる周波数(例えば30Hz)に達すると、制御装置325は、モータ部310の駆動を3相加速モードに切替えて、定常回転(例えば毎分3万回転)まで、ロータ軸303を加速する。そして、そのまま3相加速モードにてロータ軸303の回転を維持する。
ロータ軸303が回転するとターボ分子ポンプ301が接続されたチャンバ(被排気容器)内のガスは吸気口324から吸引されて、ロータ翼321及びステータ翼322の作用により圧縮される。
ロータ翼321及びステータ翼322で圧縮されたガスはねじ溝ポンプ部のねじ溝304を輸送されながら更に圧縮された後、排気口319から排出される。
ターボ分子ポンプ301を定常運転状態から停止する場合は、制御装置325は、ロータ軸303の回転を3相減速モードにて所定の回転周波数(例えば60[Hz]程度)まで減速した後、2相減速モードに切替えて更に減速して停止させる。制御装置325は、ロータ軸303の回転を停止した後、磁気軸受部308、312、320を停止する。
なお、以上は、2相加速モード→3相加速モード→3相減速モード→2相減速モードの順でターボ分子ポンプ301を運転したが、モードの切替えは第9の実施の形態で説明したように8種類ある。
2相加速モードでは、磁極328、329の初期位置に関わらずロータ軸3の回転をスタートさせることができるため、ロータ軸3の始動時に磁極328、329を直流制動する必要が無い。
PLL回路16がロックできない回転周波数に於いても磁束推定信号φにて磁極位置328、329を検出して界磁をフィードバック制御することができる。
以上の2点によりターボ分子ポンプ301の始動時間を短縮することができ、また起動の失敗を抑制することかできる。
また、ターボ分子ポンプ301が稼動中に、例えば外気突入などの外乱があってロータ軸3の回転周波数が大きく変化した場合でも、ロータ軸3を磁束推定信号φによって脱調せずに制御することができる。
なお、起動時に永久磁石328、329を直流制動する際のロータ軸303の振動を、磁気軸受部308、312、320を用いずに保護ベアリング306、307を用いて機械的摩擦により減衰させることも考えられるが、磁気軸受部308、312、320を停止して直流制動する回路を構成する必要があり、また、保護ベアリング306、307の磨耗を招くので好ましくない。
また、本実施の形態では、制御装置325にモータ部310の制御回路として第9の実施の形態の制御回路47を装備したが、これに限定するものではなく、第1の実施の形態ないし第8の実施の形態及び第9の実施の形態の各変形例に係る制御装置(制御回路)を装備することもできる。まお、第3の実施の形態の制御回路143を用いる場合は、回転数センサ125をロータ軸103近傍に取り付ける。例えばロータ軸303の下端にターゲットとして永久磁石を取付け、これをホールセンサなどで検出するように構成することができる。
本実施の形態においては、磁気軸受式のターボ分子ポンプの例を挙げたが、軸受の方式はこれに限定されるものではなく、ころがり軸受やすべり軸受などの機械式軸受を用いたものでも良い。すべり軸受としては、気体や液体による静圧軸受や動圧軸受を用いても良い。
本実施の形態は、モータ5をアウタロータ型のモータで構成したものである。
以下に図33を用いてアウタロータ型のモータ5の構成の一例を説明する。なお、制御回路47の構成及び動作の説明は、第9の実施の形態と同様であるので省略する。
ロータ6は、永久磁石86、87、ヨーク88及び図示しないロータ軸などから構成されている。
ヨーク88は円筒形状に形成された鉄などであり、内周面に永久磁石86、87が固着されている。本実施の形態では、永久磁石は2極とし、それぞれ内周面側が永久磁石86はS極、永久磁石87はN極となっている。
一方、ステータはステータコア85、モータ巻線7U、7V、7Wなどから構成されている。ステータコア85には、120度ごとにU相、V相、W相の磁極が形成されており、それぞれの磁極にはモータ巻線7U、7V、7Wが巻かれている。
[2相モードの場合]
マイクロコンピュータ30(制御回路47、図11参照)は、コンパレータ4から出力されるROT信号に同期して、モータ駆動回路17のトランジスタ7b、7c、7e、7fをオンオフし、駆動電圧ベクトル3、5を交互にモータ巻線7U、7V、7Wに出力する。これによって、ロータ6は回転する。
なお、駆動電圧ベクトル3が出力されているときは電流はV→W方向に流れ、駆動電圧ベクトル5が出力されているときは電流はW→U方向に流れる。
マイクロコンピュータ30は、インダクタンス値信号Lp及び抵抗値信号Rpをゼロとして掛算器12及び掛算器10の出力をゼロとしている。
[3相モードの場合]
マイクロコンピュータ30は、PLL回路16から出力される12×fROT信号に同期してモータ駆動回路17のトランジスタ7a、7b、7c、7d、7e、7fをオンオフし、駆動電圧ベクトル1ないし駆動電圧ベクトル6を順次モータ巻線7U、7V、7Wに出力する。これによって、ロータ6は、回転する。
マイクロコンピュータ30は、Rp信号設定回路14及びLp信号設定回路にそれぞれ抵抗値信号Rp及びインダクタンス値信号Lpを出力させている。
また、モータ5は、例えばステータコイルの極数が6及びロータ6の極数が6であるモータなど、他の形態の形態のモータとすることができる。
更に、本実施の形態のモータ5は、ラジアル方向にエアギャップのあるラジアルエアギャップ型のモータであるが、アキシャル方向(回転軸の方向)にエアギャップのあるアキシャルエアギャップ型のモータとしても良い。
2 直流遮断フィルタ
3U、3V、3W 接続ケーブル
4 コンパレータ
5 モータ
6 ロータ
7U、7V、7W モータ巻線
8 差動増幅器
9 差動増幅器
10 掛算器
11 加算器
12 掛算器
13 加算器
16 PLL回路
17 モータ駆動回路
19 駆動制御回路
22 ローパスフィルタ
23 ローパスフィルタ
24 ローパスフィルタ
25 ローパスフィルタ
26 サンプリング回路
28 直流遮断フィルタ
30 マイクロコンピュータ
101 積分器
102 直流遮断フィルタ
103 差動増幅器
104 コンパレータ
107U モータ巻線
107V モータ巻線
107W モータ巻線
108U 抵抗体
108V 抵抗体
108W 抵抗体
112 ロータ
115 モータ駆動回路
125 回転速度センサ
126 回転速度検出回路
127 PLL回路
128 記憶部
130 マイクロコンピュータ
301 ターボ分子ポンプ
302 ねじ溝スペーサ
303 ロータ軸
305 ボルト
306 保護ベアリング
307 保護ベアリング
308 磁気軸受部
309 変位センサ
310 モータ部
312 磁気軸受部
313 変位センサ
314 電磁石
315 電磁石
316 ケーシング
317 変位センサ
319 排気口
320 磁気軸受部
321 ロータ翼
322 ステータ翼
325 制御装置
Claims (14)
- 磁極を備えたロータと、
前記ロータを回転させるための複数のモータ巻線と、
前記複数のモータ巻線に電流を供給する電流供給手段と、
前記磁極による何れか少なくとも1つの前記モータ巻線の鎖交磁束を取得する磁束取得手段と、
前記磁束取得手段にて取得された鎖交磁束の変化から前記磁極の位置を取得する磁極位置取得手段と、を備え、
前記磁束取得手段は、前記モータ巻線の線間電圧から、少なくとも抵抗による電圧降下に基づく電圧を減算する電圧処理演算を行なう電圧処理演算手段と、前記電圧処理演算を行う際に、前記鎖交磁束を演算するための信号から重畳されている直流成分を取り除く直流遮断部と、を備え、
前記電流供給手段は、前記磁極位置取得手段にて取得された磁極の位置に基づいて、前記モータ巻線の電流を切り替えることを特徴とするセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 前記磁束取得手段は、
所定の2つの前記モータ巻線の線間電圧値を取得する第1の取得手段と、
所定の2つの前記モータ巻線の抵抗と、前記電流供給手段を構成する電源装置と前記モータ巻線を接続するケーブルの抵抗との合成抵抗による電圧降下を取得する第2の取得手段と、
所定の2つの前記モータ巻線の電流の差に、所定の2つの前記モータ巻線のインダクタンスの値を乗算した値を取得する第3の取得手段と、
前記第1の取得手段にて取得した値から、前記第2の取得手段にて取得した値を減算した後、積分する積分値取得手段と、
前記積分値取得手段にて取得した値から前記第3の取得手段にて取得した値を減算する減算手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載のセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 前記合成抵抗の値は、
所定の2つの前記モータ巻線に直流電流を供給する直流電流供給手段と、
前記線間電圧値を前記直流電流の電流値で除することにより前記合成抵抗の値を演算する第1の演算手段とを備えた合成抵抗値取得手段にて取得されることを特徴とする請求項2記載のセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 前記インダクタンスは、
所定の2つの前記モータ巻線に高周波電流を供給する高周波電流供給手段と、
前記高周波電流を供給した際の前記2つのモータ巻線の線間電圧値を取得する線間電圧値取得手段と、
前記線間電圧値を前記高周波電流の電流値と、前記高周波電流の周波数及び所定の定数で除した値を取得する第2の演算手段と、を備えたインダクタンス取得手段にて取得されることを特徴とする請求項2記載のセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 前記インダクタンスは、
オープンループで前記モータ巻線の電流を切り替えて前記ロータを回転させるロータ回転手段と、
前記モータ巻線の電流を切り替える前及び後で前記積分値取得手段にて取得された積分値をサンプリングするサンプリング手段と、
所定の2つの前記モータ巻線に供給する電流値のピーク値を取得する電流ピーク値取得手段と、
前記サンプリング手段にて取得した前記電流切り替え前後での前記積分値の差の絶対値を前記電流ピーク値取得手段にて取得した電流ピーク値で除する第3の演算手段と、を備えたインダクタンス取得手段にて取得されることを特徴とする請求項2記載のセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 前記合成抵抗の仮定値と前記インダクタンスの仮定値を用いて所定の2つの前記モータ巻線の鎖交磁束を取得する仮定磁束取得手段と、
前記ロータ回転手段にて前記ロータを所定の角速度で回転させた際の所定の2つの前記モータ巻線の線間電圧値と、
前記モータ巻線の電流の供給を止めて前記ロータを前記所定の角速度でフリーランさせたときの所定の2つの前記モータ巻線の線間電圧と、
前記電流の供給を止めたときの前記仮定磁束取得手段にて得られた信号と、
前記電流の供給を再開したときの前記仮定磁束取得手段にて得られた信号の位相差と、
から前記合成抵抗の仮定値と前記インダクタンスの仮定値を補正する補正手段を備えたことを特徴とする請求項2記載のセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 磁極を備えたロータを回転させるための複数のモータ巻線のうち、該モータ巻線のインダクタンスによる電圧降下の位相と大きさが等しくなる所定の2相間の電圧差を、少なくとも抵抗による電圧降下に基づく電圧の減算と、積分とからなる演算処理をして、磁束信号を取得する磁束信号取得手段と、
前記演算処理を行う際に、前記電圧差の信号に重畳される直流成分を取り除く直流遮断部と、
前記直流遮断部により重畳する直流成分を取り除かれた信号に基づき前記演算処理された磁束信号から、出力可能な駆動電圧ベクトルのうちの一部の駆動電圧ベクトルの駆動タイミングを取得する第1の駆動タイミング取得手段と、
前記第1の駆動タイミング取得手段にて取得した駆動タイミングに同期して前記一部の駆動電圧ベクトルを出力する第1の駆動電圧ベクトル出力手段と、
前記磁束信号取得手段にて取得した磁束信号から得たタイミングを逓倍することにより前記出力可能な駆動電圧ベクトルの駆動タイミングを取得する第2の駆動タイミング取得手段と、
前記第2の駆動タイミング取得手段にて取得した駆動タイミングに同期して前記出力可能な駆動電圧ベクトルを出力する第2の駆動電圧ベクトル出力手段と、
前記第1の駆動電圧ベクトル出力手段と、前記第2の駆動電圧ベクトル出力手段とを選択する選択手段と、
を具備したことを特徴とするセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 磁極を備えたロータを回転させるための複数のモータ巻線に電流を供給する電流供給手段と、
前記複数のモータ巻線のうち、該モータ巻線のインダクタンスによる電圧降下の位相と大きさが等しくなる所定の2つのモータ巻線の線間電圧を取得する線間電圧取得手段と、
前記線間電圧取得手段にて取得した線間電圧から、前記所定の2つの前記モータ巻線の抵抗と前記電流供給手段を構成する電源装置と前記モータ巻線を接続する接続ケーブルの抵抗との合成抵抗による電圧の変化を補正する抵抗分補正手段と、
前記抵抗分補正手段にて補正された前記線間電圧を積分して磁束信号を取得する磁束信号取得手段と、
前記磁束信号取得手段にて取得した磁束信号のうち、前記所定の2つのモータ巻線のリアクタンスによる変化分を補正するリアクタンス分補正手段と、
前記リアクタンス分補正手段にて補正された磁束信号から前記磁極の位置を取得する磁極位置取得手段と、
前記抵抗分補正手段と、前記リアクタンス分補正手段とのうち、少なくともリアクタンス分補正手段を無効にし、補正を行わないようにする補正無効手段と、を具備し、
前記ロータの回転数が所定の回転以下の場合は、
前記補正無効手段にて、少なくとも前記リアクタンス分補正手段を無効とし、前記電流供給手段は、前記磁極位置取得手段にて取得した磁極位置に基づいて前記所定の2つのモータ巻線に流す電流を切替える第1のモードにて前記2つのモータ巻線に電流を供給し、
前記ロータの回転数が所定の回転より大きい場合は、前記補正無効手段を用いずに、前記磁極位置取得手段にて取得した磁極位置に基づいて、前記モータ巻線の電流を切替える第2のモードにてモータ巻線に電流を供給することを特徴とするセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 前記電流供給手段は、前記第1のモードから前記第2のモードへモードを切替える場合に、所定の時間、前記複数のモータ巻線に所定の順序に従って微小電流を流すことを特徴とする請求項8に記載のセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 第1の遮断周波数と前記第1の遮断周波数より大きい周波数の第2の遮断周波数を切替え可能であって、前記磁束信号に重畳される直流成分を取り除く直流遮断手段と、
前記直流遮断手段の前記第1の遮断周波数と、前記第2の遮断周波数とを切替える切替え手段と、
を更に具備したことを特徴とする請求項8、又は請求項9に記載のセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 前記切替え手段は、前記ロータが始動してから所定時間の間、前記直流遮断手段の遮断周波数を前記第1の遮断周波数とし、所定の時間が経過すると前記第2の遮断周波数に切替えることを特徴とする請求項10に記載のセンサレスブラシレスモータの制御回路。
- 磁極を備えたロータと、
前記ロータを回転させるための複数のモータ巻線と、からなるモータ部と、
前記複数のモータ巻線に電流を供給する電流供給手段と、
前記磁極による何れか少なくとも1つの前記モータ巻線の鎖交磁束を取得する磁束取得手段と、
前記磁束取得手段にて取得された鎖交磁束の変化から前記磁極の位置を取得する磁極位置取得手段と、
からなる制御部を備え、
前記磁束取得手段は、前記モータ巻線の線間電圧から、少なくとも抵抗による電圧降下に基づく電圧を減算する電圧処理演算を行なう電圧処理演算手段と、前記電圧処理演算を行う際に、前記鎖交磁束を演算するための信号から重畳されている直流成分を取り除く直流遮断部と、を備え、
前記電流供給手段は、前記磁極位置取得手段にて取得された磁極の位置に基づいて、前記モータ巻線の電流を切り替えることを特徴とするセンサレスブラシレスモータ装置。
- 磁極を備えたロータと、
前記ロータを回転させるための複数のモータ巻線と、
前記複数のモータ巻線のうち、該モータ巻線のインダクタンスによる電圧降下の位相と大きさが等しくなるような所定の2相間の電圧差を、少なくとも抵抗による電圧降下に基づく電圧の減算と、積分とからなる演算処理をして、磁束信号を取得する磁束信号取得手段と、
前記演算処理を行う際に、前記電圧差の信号に重畳される直流成分を取り除く直流遮断部と、
前記直流遮断部により重畳する直流成分を取り除かれた信号に基づき前記演算処理された磁束信号から、出力可能な駆動電圧ベクトルのうちの一部の駆動電圧ベクトルの駆動タイミングを取得する第1の駆動タイミング取得手段と、
前記第1の駆動タイミング取得手段にて取得した駆動タイミングに同期して前記一部の駆動電圧ベクトルを出力する第1の駆動電圧ベクトル出力手段と、
前記磁束信号取得手段にて取得した磁束信号から得たタイミングを逓倍することにより前記出力可能な駆動電圧ベクトルの駆動タイミングを取得する第2の駆動タイミング取得手段と、
前記第2の駆動タイミング取得手段にて取得した駆動タイミングに同期して前記出力可能な駆動電圧ベクトルを出力する第2の駆動電圧ベクトル出力手段と、
前記第1の駆動電圧ベクトル出力手段と、前記第2の駆動電圧ベクトル出力手段とを選択する選択手段と、
を具備したことを特徴とするセンサレスブラシレスモータ装置。
- 一端に吸気口が形成され、他端に排気口が形成された外装体と、
前記外装体の内部に磁気軸受又は機械式軸受にて回転自在に軸支されたロータと、
前記ロータを回転させるモータと、
前記外装体の内部に配設されたステータと、
を具備し、
前記モータは、請求項12または請求項13に記載のセンサレスブラシレスモータ装置によって構成されたことを特徴とする真空ポンプ装置。
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