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JP4926121B2 - ディスクブレーキ - Google Patents

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本発明は、車両の制動用に用いられるディスクブレーキに関する。
車両の制動用に用いられるディスクブレーキには、車両の非回転部に固定され、摩擦パッドをディスク軸線方向に摺動可能に支持するキャリアと、このキャリアにスライドピンを介してディスク軸線方向に摺動可能に支持され、摩擦パッドをディスクに押圧するキャリパとを備えたピンスライド型のディスクブレーキがある。このようなピンスライド型のディスクブレーキにおいては、キャリアとキャリパとの摺動を円滑にするために、スライドピンとキャリアのピン穴との間にクリアランスが設けられている。そして、このクリアランスに起因して生じるキャリパの振動を抑制するため、スライドピンの嵌合長の範囲内にキャリパの重心を配置する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−46076号公報
しかしながら、例えば、ホイールとの干渉の関係等から、スライドピンの嵌合長の範囲内にキャリパの重心を配置できない場合がある。この場合、特に、パーキングブレーキ機構付きのキャリパであると、パーキングブレーキケーブルが装着されていることから、このケーブルがフリー状態に戻ろうとする外力がキャリパへ作用することになり、その結果、キャリパがディスクに対して傾いてしまい、パッドとディスクとの軸方向隙間が減少し、引き摺りトルクの上昇や異音の発生の可能性があった。また、スライドピンの嵌合長の範囲内にキャリパの重心を配置できたとしても、十分な効果が得られない場合もある。
したがって、本発明は、キャリパに取り付けられたスライドピンとキャリアのピン穴との間のクリアランスに起因して生じるキャリパの傾きおよび振動を抑制することができるディスクブレーキの提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、キャリパのスライドピンが取り付けられる腕部のうち鉛直方向上側となる腕部に一端部が固定され、他端部がキャリアのディスク円周方向外側に当接してキャリアをディスク円周方向内方に押圧する弾性部材を設けた。
本発明によれば、キャリパのスライドピンが取り付けられる腕部に一端部が固定された弾性部材が、その他端部においてキャリアのディスク円周方向外側に当接してこのキャリアをディスク円周方向内方に押圧するため、スライドピンとキャリアのピン穴との間にクリアランスがあっても、キャリパの傾きおよび振動を抑制することができる。
「第1実施形態」
本発明の第1実施形態を図1〜図3を参照して以下に説明する。
図1および図2は、ディスクブレーキ1を示すものである。このディスクブレーキ1は、車両の車輪と一体に回転するディスク10と、ディスク10の外周側を跨ぐように配置されて二箇所の取付部11で車両の非回転部に固定されるキャリア12と、ディスク10の軸線方向両側に配設された状態でキャリア12に摺動可能に支持される一対の摩擦パッド13と、キャリア12に一対のスライドピン15を介してディスク軸線方向に摺動可能に支持されるキャリパ16とで主に構成されている。
キャリパ16は、一方のパッド13のディスク10とは反対側に配設されるシリンダ18と、このシリンダ18からディスク10の外周部を跨いで延出するディスクパス部19と、このディスクパス部19から他方のパッド13のディスク10とは反対側に対向するように延出する爪部20と、シリンダ18からディスク10の円周方向の両側に突出する一対の腕部21とを有するキャリパ本体22と、シリンダ18内に挿入される図示略のピストンとを備えている。
そして、キャリパ16は、一対の腕部21にディスク軸線方向に沿って爪部20側に延出するようにスライドピン15が取り付けられ、これらのスライドピン15がキャリア12のピン穴24に摺動可能に嵌合されることで、キャリア12に取り付けられる。
キャリパ16は、シリンダ18とピストンとの間に導入されるブレーキ液圧によって、ピストンをパッド13の方向に移動させることで、このピストンと爪部20とで一対のパッド13を両側から把持することによりディスク10に接触させてディスク10の回転を制動することになり、その際に、スライドピン15がピン穴24をスライドすることによってキャリア12およびディスク10に対するディスク軸線方向の位置を調整する。
また、キャリパ16のシリンダ18側には、ピストンをブレーキ液圧ではなく、作動レバー25の回動により機械的に移動させて一対のパッド13をディスク10に接触させるパーキングブレーキ機構26が設けられている。パーキングブレーキ機構26の作動レバー25は、キャリパ16に固定されたケーブルガイド27に支持されるケーブル28を介して車室内に設けられた図示略のパーキングブレーキレバーに連結されており、パーキングブレーキレバーの手動操作力がケーブル28を介して伝達されて回転する。
ここで、スライドピン15は、腕部21を貫通する取付ボルト30に螺合されることで腕部21に取り付けられることになる。スライドピン15の取付ボルト30側の外周部とピン穴24の開口側との間には伸縮自在のブーツ31が取り付けられている。
そして、第1実施形態においては、上記した取付ボルト30に共締めされて、キャリパ16の腕部21にスプリング部材(弾性部材)33が設けられている。このスプリング部材33は、一枚のバネ鋼材からプレス成形により一体成形されるもので、図3に示すように、幅広の基板部34と、基板部34よりも幅狭で基板部34から先細形状をなして延出するバネ部35と、基板部34の幅方向の相反する端縁部から基板部34と垂直をなして同側に延出する一対の挟持板部36と、これら挟持板部36のバネ部35の延在方向とは反対側の端縁部から挟持板部36と垂直をなして相互近接側に延出する一対の取付板部37とを有している。
基板部34およびバネ部35には、バネ部35の延出方向に沿って延在する補強用のリブ40が複数具体的には2カ所形成されている。
バネ部35は、その延出方向の途中位置から、先端の係止部41が挟持板部36の延出側に位置するように傾斜形状に折り曲げられている。
互いに平行をなす一対の挟持板部36には、それぞれの基板部34とは反対側の端部に、相互近接側に突出するように係合部42が屈曲形成されている。
一対の取付板部37は、同一平面上に配置されており、相互近接側には、取付ボルト30を挿通させる挿通穴43を形成する円弧状の切欠部44がそれぞれに形成されている。
このようなスプリング部材33は、その一端部に設けられた一対の挟持板部36が、腕部21をディスク半径方向の内側および外側から挟持するようにして腕部21に被せられることになり、この状態で、同じく一端部に設けられた一対の取付板部37の挿通穴43に挿通された取付ボルト30が腕部21を貫通してスライドピン15に螺合固定されると、この取付ボルト30と腕部21とに一対の取付板部37が挟持されて固定されることになる。
このようにしてスプリング部材33は、基板部34、一対の挟持板部36および一対の取付板部37からなる固定部(一端部)46が腕部21に固定される。このように固定部46において腕部21に取り付けられた状態で、スプリング部材33は、バネ部35がキャリア12の方向に延出して、その先端の係止部(他端部)41つまり他端側がキャリア12のディスク円周方向外側の側面47に当接する。このとき、バネ部35は弾性変形させられることになり、その結果、キャリア12をディスク円周方向内方に押圧する。図1から明らかなように、スプリング部材33の係止部41は、スライドピン15の嵌合長の範囲内でキャリア12のディスク円周方向外側に当接する。
ここで、上記したキャリア12およびキャリパ16は、車載時にディスク10に対して前側または後側に配置されることになり、その際に、一方の腕部21を上側に他方の腕部21を下側にして配置されることになる。そして、上記したスプリング部材33は、鉛直方向上側に配置される腕部21に取り付けられることになる。その結果、キャリパ16が、自重およびケーブル28の入力によりかしぐのを解除する方向に引き上げられる。
つまり、まず、図1中A点は、キャリパ16の重心位置を示し、このキャリパ16の自重によりキャリパ16にはキャリア12の口元B点に関してモーメントM1が作用する。キャリパ16の重量をW1、キャリア12のピン穴口元B点からキャリパ16の重心A点までの距離をL1とすると、M1=L1×W1となる。図1から明らかなように、キャリパ16の重心はスライドピン15の嵌合長の範囲外となっている。
また、キャリパ16にはパーキングブレーキ機構26のケーブル28が装着されている。このケーブル28がY方向に曲げられてキャリパ16に固定されたケーブルガイド27に装着されている。よって、キャリパ16にはケーブル28が自由状態に戻るZ方向への荷重が負荷されるのでモーメントM2が作用する。ケーブル28の戻り力をW2、キャリア12のピン穴口元B点からケーブル28の取付位置までの距離をL2とすると、M2=L2×W2となる。
上記のモーメントM1,M2によって、キャリパ16は図中X方向に傾くことになる。これに対して、上記したスプリング部材33が、キャリア12の円周方向外側の側面47に当接する係止部41を支点としてキャリパ16の腕部21への固定部46をC方向へ引き上げるようにバネ力を発生する。このバネ力により、キャリパ16へC方向のモーメントM3を作用させる。引き上げ力をW3、キャリア12のピン穴口元B点からスプリング部材33の固定部46までの距離をL3とすると、M3=L3×W3となる。
ここで、M3をM1+M2にほぼ等しくすることで、キャリパ16がX方向へ傾くのを防止することができる。なお、M3が過大であると、逆回りのモーメントの発生によるキャリパ16の傾きが発生すること、およびキャリア12の円周方向外側の側面47とスプリング部材33の係止部41との当接部分の摺動抵抗が大きくなりキャリア12に対してキャリパ16が円滑に動けなくなる可能性があるため、M3の設定値は、M1<M3≦M1+M2とするのが良い。
具体的に、L1=29mm、L2=69mm、L3=35mm、W1=15N、W2=11N、W3=20Nの場合、モーメントは、M1=435N・mm、M2=759N・mm、M3=700N・mmとする。
以上に述べた第1実施形態によれば、キャリパ16のスライドピン15が取り付けられる腕部21に一端の固定部46が固定されたスプリング部材33が、その他端のバネ部35の係止部41においてキャリア12のディスク円周方向外側の側面47に当接してこのキャリア12をディスク円周方向内方に押圧するため、スライドピン15とキャリア12のピン穴24との間にスライドのためのクリアランスがあっても、キャリパ16の傾きおよび振動を抑制することができる。
また、生産車へ市場対応する場合に、スプリング部材33を追加するのみで対応できるので、低コストで簡単に、しかも短いリードタイムで対応できる。つまり、キャリパ16の基本構造の変更は必要とせず、変更に対する弊害もないので、特別な評価等無く設定が可能となる。
「第2実施形態」
本発明の第2実施形態を図4〜図6を参照して、第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分は、同一の称呼、同一の符号として、その説明は略す。
第2実施形態においては、第1実施形態に対して異なるスプリング部材(弾性部材)50が用いられている。つまり、第2実施形態のスプリング部材50は、幅広の基板部51と、基板部51よりも幅狭で基板部51から先細形状をなして延出するバネ部52と、基板部51の幅方向の相反する端縁部から基板部51と垂直をなして同側に延出する一対の補強板部53とを有している。このスプリング部材50も、一枚のバネ鋼材からプレス成形により一体成形される。
基板部51には、バネ部52とは反対側に板厚方向に貫通する取付穴55が幅方向に離間して複数カ所形成されている。
バネ部52は、その延出方向の途中位置から、先端の係止部56が補強板部53の折曲側に位置するように傾斜形状に折り曲げられている。
このようなスプリング部材50は、その一端部に位置する基板部51のバネ部52とは反対側の端部が、腕部21のディスク円周方向外側の側面58に当接させられることになり、この状態で、ディスク円周方向外側から取付穴55に挿通された取付ビス60が腕部21のネジ穴61に螺合固定されると、この取付ビス60と腕部21とに基板部51が挟持されて固定されることになる。このように腕部21に取り付けられた状態で、スプリング部材50は、バネ部52がキャリア12の方向に延出して、その先端の係止部56つまり他端側がキャリア12のディスク円周方向外側の側面47に当接する。このとき、バネ部52は弾性変形させられることになり、その結果、第1実施形態と同様、キャリア12をディスク円周方向内方に押圧する。この第2実施形態のスプリング部材50は、第1実施形態のようにスライドピン15を腕部21に取り付ける取付ボルト30と共締めされるのではなく、専用の取付ビス60によって腕部21に固定される。
本発明の第1実施形態のディスクブレーキを示す正面図である。 本発明の第1実施形態のディスクブレーキを示す側面図である。 本発明の第1実施形態のディスクブレーキに用いられるスプリング部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。 本発明の第2実施形態のディスクブレーキを示す正面図である。 本発明の第2実施形態のディスクブレーキを示す平面図である。 本発明の第2実施形態のディスクブレーキを示す側面図である。
符号の説明
1 ディスクブレーキ
10 ディスク
12 キャリア
13 摩擦パッド
15 スライドピン
16 キャリパ
21 腕部
33,50 スプリング部材(弾性部材)
41,56 係止部(他端部)
46 固定部(一端部)

Claims (3)

  1. 車両の非回転部に固定され、摩擦パッドをディスク軸線方向に摺動可能に支持するキャリアと、
    該キャリアに一対のスライドピンを介してディスク軸線方向に摺動可能に支持され、前記摩擦パッドをディスクに押圧するキャリパとを備えディスクブレーキにおいて、
    前記キャリパの前記スライドピンが取り付けられる腕部のうち鉛直方向上側となる腕部に一端部が固定され、他端部が前記キャリアのディスク円周方向外側に当接して前記キャリアをディスク円周方向内方に押圧する弾性部材が設けられることを特徴とするディスクブレーキ。
  2. 前記キャリパは、ケーブルを介して伝達される操作力によって前記キャリパ内のピストンを機械的に移動させるパーキングブレーキ機構を有し、前記キャリパの重心が前記スライドピンの嵌合長の範囲外となっていることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
  3. 前記弾性部材の他端部は、前記スライドピンの嵌合長の範囲内で前記キャリアのディスク円周方向外側に当接することを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
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