JP4901226B2 - 医療用シミュレーションシステム及びそのコンピュータプログラム - Google Patents
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Description
そして、医師は、患者の検査結果や臨床所見などの判断材料に基づいて、自己の経験と勘を頼りに、治療方法を選択しているというのが現状である。
診療を支援するシステムとしては、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、血糖値を予測するシステムがある。
これらのシステムは、患者の血糖値の変化を予測して、予測血糖値を医師に提供することにより、診療を支援するものである。
例えば、糖尿病の場合、その病気の程度を示す指標として「血糖値」が用いられる。しかし、「血糖値」は、あくまでも結果にすぎず、この結果をもたらしたインスリン分泌不全、末梢インスリン抵抗性、肝糖取込低下、肝糖放出亢進といった要因を、医師が的確に把握することが診療において重要である。
このように複数の要因が同時に出現すると、薬剤の組み合わせが困難である等の理由により、全ての病態を治療することは、不可能なことがある。
このような場合には、いずれの要因に対する治療を施せば、効率の良い治療となるかを医師が判断する必要が生じる。
しかも、上記本発明では、置換前後の生体応答を表示することで、置換によって生体応答がどのように変化したかを容易に確認することができる。
[システム全体構成]
図1は、医療用シミュレーションシステムSSを、サーバ−クライアントシステムとして構成した場合のシステム構成図を示している。
前記クライアント端末Cは、WebブラウザC1を備えている。このWebブラウザC1は、システムSSのユーザインターフェースとして機能し、ユーザは、WebブラウザC1上で、入力、必要な操作を行うことができる。また、WebブラウザC1には、サーバSで生成されて送信された画面が出力される。
また、サーバSには、WebブラウザC1で表示されるユーザインターフェース画面を生成するユーザインターフェイスプログラムS2がコンピュータ実行可能に搭載されている。このユーザインターフェイスプログラムS2は、WebブラウザC1に表示される画面を生成してクライアント端末Cに送信したり、WebブラウザC1上で入力された情報をクライアント端末Cから受け付ける機能を有している。
なお、クライアント端末Cは、サーバSから、WebブラウザC1に表示される画面の一部又は全部の機能を実現するためのjava(登録商標)アプレット等のプログラムをダウンロードして、WebブラウザC1に画面を表示してもよい。
また、サーバSには、患者の検査結果等の各種データを有するデータベースS4が設けられており、システムSSに入力されたデータやシステムで生成されたデータその他のデータは、このデータベースS4に保存されている。
なお、図1では、医療用シミュレーションシステムの構成例として、ネットワーク接続されたサーバ−クライアントシステムを示しているが、本システムを、1つのコンピュータ上で構成してもよい。
ROM S110bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU S110aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
ハードディスクS110dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU S110aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。プログラムS2,S3も、このハードディスクS110dにインストールされている。
また、ハードディスクS110dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラムS140a(S2,S3)は当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
画像出力インタフェースS110hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイS120に接続されており、CPU S110aから与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイS120に出力するようになっている。ディスプレイS120は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
図3は、システムSSの病態シミュレータプログラムS3で用いられる生体モデルの一例の全体構成を示すブロック図である。この生体モデルは、特に、糖尿病に関連した生体器官(生体機能)を模したものであり、膵臓ブロック1、肝臓ブロック2、インスリン動態ブロック3及び末梢組織ブロック4から構成されている。
肝臓ブロック2は、消化管からのグルコース吸収5、血中グルコース濃度6及びインスリン分泌速度7を入力とし、正味グルコース放出8及び肝臓通過後インスリン9を出力としている。
また、インスリン動態ブロック3は、肝臓通過後インスリン9を入力とし、末梢組織でのインスリン濃度10を出力としている。
さらに、末梢組織ブロック4は、正味グルコース放出8及び末梢組織でのインスリン濃度10を入力とし、血中グルコース濃度6を出力としている。
また、それぞれの機能ブロック1〜4は、シミュレータプログラムがサーバSのCPUによって実行されることにより実現される。
膵臓ブロック1の入出力の関係は、以下の微分方程式(1)を用いて記述することができる。また、微分方程式(1)と等価な、図4に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(1):
dY/dt = −α{Y(t)−β(BG(t)−h)}
(ただし、BG(t)> h)
= −αY(t) (ただし、BG(t)<=h)
dX/dt = −M・X(t)+Y(t)
SR(t) = M・X(t)
変数:
BG(t):血糖値
X(t) :膵臓から分泌可能なインスリン総量
Y(t) :グルコース刺激に対しX(t)に新たに供給されるインスリン供給速度
SR(t):膵臓からのインスリン分泌速度
パラメータ:
h :インスリン供給を刺激できるグルコース濃度のしきい値
α :グルコース刺激に対する追従性
β :グルコース刺激に対する感受性
M :単位濃度あたりの分泌速度
ここで、図3における膵臓ブロック1への入力である血糖値6はBG(t)と対応し、また出力であるインスリン分泌速度7はSR(t)と対応する。
肝臓ブロック2の入出力の関係は、以下の微分方程式(2)を用いて記述することができる。また、微分方程式(2)と等価な、図5に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(2):
dI4(t)/dt = α2{−A3I4(t) + (1−A7)・SR(t) }
Goff(FGB) = f1 (ただし FGB<f3)
= f1 + f2・(FGB−f3)
(ただしFGB>=f3)
Func1(FGB)= f4 − f5・(FGB−f6)
Func2(FGB)=f7/FGB
b1(I4(t))= f8{1 + f9・I4(t)}
HGU(t) =r・Func1(FGB)・b1(I4(t))・RG(t)+ (1−r)・Kh・BG(t)・I4(t) (ただしHGU(t)>=0)
HGP(t) = I4off・Func2(FGB)・b2+Goff(FGB)−I4(t)・Func2(FGB)・b2 (ただしHGP(t)>= 0)
SGO(t) =RG(t)+ HGP(t)−HGU(t)
SRpost(t) = A7SR(t)
変数:
BG(t):血糖値(血液単位体積あたりのグルコース濃度)
SR(t):膵臓からのインスリン分泌速度
SRpost(t):肝臓通過後のインスリン
RG(t) :消化管からのグルコース吸収
HGP(t) :肝糖放出
HGU(t) :肝糖取込
SGO(t) :肝臓からの正味グルコース
I4(t) :肝インスリン濃度
パラメータ:
Kh :単位インスリン、単位グルコース当たりの肝臓でのインスリン依存グルコース取り込み速度
A7 :肝臓でのインスリン通過率
Goff :基礎代謝に対するグルコース放出速度
b2 :肝糖放出抑制率に関する調整項
r :インスリン非依存性肝糖取り込みへの分配率
α2 :インスリン刺激に対する追従性
I4off :肝糖放出が抑制されるインスリン濃度のしきい値
関数:
Goff(FGB): 基礎代謝に対するグルコース放出速度
Func1(FGB): 消化管からのグルコース刺激に対する肝糖取り込み率
Func2(FGB): インスリン刺激に対する肝糖放出抑制率
f1〜f9 : 上記の3要素の表現にあたって用いた定数
b1(I4(t)): 肝糖取り込み率に関する調整項
ここで、図3における肝臓ブロックへの入力である、消化管からのグルコース吸収5はRG(t)、血糖値6はBG(t)、インスリン分泌速度7はSR(t)とそれぞれ対応し、また出力である正味グルコース放出8はSGO(t)、肝臓通過後インスリン9はSRpost(t)とそれぞれ対応している。
インスリン動態分泌の入出力の関係は、以下の微分方程式(3)を用いて記述することができる。また、微分方程式(3)と等価な、図6に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(3):
dI1(t)/dt = −A3I1(t)+A5I2(t)+A4I3(t)+SRpost(t)
dI2(t)/dt= A6I1(t)− A5I2(t)
dI3(t)/dt=A2I1(t) − A1I3(t)
変数:
SRpost(t):肝臓通過後のインスリン
I1(t) :血中インスリン濃度
I2(t) :インスリン非依存組織でのインスリン濃度
I3(t) :末梢組織でのインスリン濃度
パラメータ:
A1 :末梢組織でのインスリン消失速度
A2 :末梢組織へのインスリン分配率
A3 :肝臓通過後のインスリン消失速度
A4 :末梢組織通過後のインスリン流出速度
A5 :インスリン非依存組織でのインスリン消失速度
A6 :インスリン非依存組織へのインスリン分配率
ここで、図3におけるインスリン動態ブロックの入力である肝臓通過後のインスリン9は、SRpost(t)と対応し、また出力である末梢組織でのインスリン濃度10は、I3(t)と対応する。
末梢組織ブロック4の入出力の関係は、以下の微分方程式(4)を用いて記述することができる。また、微分方程式(4)と等価な、図7に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(4):
dBG´/dt=SGO(t)−u* Goff(FGB)−Kb(BG´(t)−FBG´)−Kp・I3(t)・BG´(t)
変数:
BG´(t) :血糖値(単位体重あたりのグルコース濃度)
(ただしBG[mg/dl]、BG´[mg/kg])
SGO(t) :肝臓からの正味グルコース
I3(t) :末梢組織でのインスリン濃度
FBG´ :空腹時血糖(ただしFBG´=BG´(0))
パラメータ:
Kb :末梢組織でのインスリン非依存グルコース消費速度
Kp :単位インスリン、単位グルコースあたりの
末梢組織でのインスリン依存グルコース消費速度
u :基礎代謝に対するグルコース放出速度のうち
基礎代謝に対するインスリン非依存グルコース消費が占める割合
関数:
Goff(FGB):基礎代謝に対するグルコース放出速度
f1〜f3 :Goffの表現にあたって用いた定数
ここで、図3における末梢組織ブロックへの入力である末梢組織でのインスリン濃度10はI3(t)、肝臓からの正味グルコース8はSGO(t)とそれぞれ対応し、また出力である血糖値6はBG(t)と対応する。
図8は、本システムSSが、医師による治療効果の判断を支援するための判断支援情報を生成して表示するまでの処理手順を示している。
図8の処理は、大きくわけて、生体応答入力処理STP1、置換前処理STP2、置換処理STP3、置換後処理STP4、そして判断支援情報作成処理STP5を含んでいる。
なお、図8の処理は、ユーザインターフェイスプログラムS2又は病態シミュレータプログラムS3がコンピュータによって実行されることによって実現される。
まず、生体応答情報(実測臨床データ)としてのOGTT(Oral Glucose Tolerance Test;経口ブドウ糖負荷試験)時系列データの入力処理が行われる。
OGTT時系列データは、生体モデルによってシミュレートしようとする患者に対して実際に行った検査であるOGTT(所定量のブドウ糖液を経口負荷して血糖値や血中インスリン濃度の時間的変化を測定)の結果であり、本システムは、クライアント端末Cから、実際の生体応答(実際の検査値)として入力を受け付ける。ここでは、OGTT時系列データとして、血糖値データとインスリン濃度データの2つが入力される。
クライアント端末Cに入力された生体応答情報は、サーバSに送信され、サーバSは、その情報を受け付ける。このように、サーバSは、生体応答入力部としての機能を有している。
なお、生体応答入力は、システム外の他のコンピュータから生体応答情報がシステムSSへ送信されることによって行われても良い。
なお、図9の血糖値データは、図3〜図7に示す生体モデルにおける出力項目の1つである血糖値BG(t)の時間的変化に対応した実測データである。
また、図9のインスリン濃度変動データは、図3〜図7に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血中インスリン濃度I1(t)の時間的変化に対応した実測データである。
続いて、置換前処理として、生体モデルのパラメータセット獲得処理STP2−1、病態シミュレーション処理STP2−2、表示処理STP2−3が行われる。
図3〜図7に示す上述の生体モデルによって、個々の患者の生体器官をシミュレートするには、個々の患者に応じた特性を有する生体モデルを生成する必要がある。具体的には、生体モデルのパラメータと変数の初期値とを、個々の患者に応じて決定し、決定されたパラメータ及び初期値を生体モデルに適用して、個々の患者に対応した生体モデルを生成する必要がある(なお、以下では、特に区別しなければ、変数の初期値も生成対象のパラメータに含めるものとする)。
生体モデル生成部によって生成されたパラメータセットを前記生体モデルに与えることで、生体モデル演算部が、生体器官の機能のシミュレートを行って、実際の生体応答(検査結果)を模した疑似応答を出力することができる。
図10に示すように、本システムSSは、入力されたOGTT時系列データと、テンプレートデータベースDB1のテンプレートとのマッチングを行う。なお、テンプレートデータベースDB1は、サーバSのデータベースS4に含まれる1つのデータベースである。
テンプレートデータベースDB1は、図11に示すように、テンプレートとなる生体モデルの参照用出力値T1,T2,・・と、当該参照用出力値を発生させるパラメータセットPS#01,PS#02・・とが対応付けられた複数組のデータが予め格納されたものである。参照用出力値とパラメータセットの組を作成するには、任意の参照用出力値に対して、適当なパラメータセットを割り当てたり、逆に任意のパラメータセットを選択した場合の生体モデルの出力を生体シミュレーションシステムで求めたりすればよい。
誤差総和=αΣ|BG(0)−BGt(0)|+βΣ|PI(0)−PIt(0)|
+αΣ|BG(1)−BGt(1)|+βΣ|PI(1)−PIt(1)|
+αΣ|BG(2)−BGt(2)|+βΣ|PI(2)−PIt(2)|
+・・・
=α{Σ|BG(t)−BGt(t)|}+β{Σ|PI(t)−PIt(t)|}
ここで、
BG:入力データの血糖値[mg/dl]
PI:入力データの血中インスリン濃度[μU/ml]
BGt:テンプレートの血糖値[mg/dl]
PIt:テンプレートの血中インスリン濃度[μU/ml]
t:時間[分]
また、α及びβは規格化に用いる係数であり、
α=1/Average{ΣBG(t)}
β=1/Average{ΣPI(t)}
定式のAverageはテンプレートデータベースDB1に格納された全テンプレートに対する平均値を指す。
そこで、CPU S110aは、テンプレートデータベースDB1中の各テンプレートについて誤差総和を求め、誤差総和(類似度)が最小となるテンプレート、すなわちOGTT時系列データに最も近似するテンプレートを決定する。
さらに、システムSSは、STP2−2−1において決定されたテンプレートに対応するパラメータセットを、テンプレートデータベースDB1から獲得する。以下では、獲得されたパラメータセットを「置換前パラメータセット」といい、置換前パラメータセットを構成する個々のパラメータを「置換前パラメータ」という。
このように、生体モデル生成部は、入力され生体応答を模した疑似応答を出力できる生体モデルを生成できるものであれば、その具体的生成方法は特に限定されない。
システムSSは、パラメータセット獲得処理STP2−1によって得られた置換前パラメータセットを生体モデルに与え、その生体モデルに基づき演算を行い、入力されたOGTT時系列データを模した疑似生体応答情報(血糖値及びインスリン濃度の時間変化を示すグラフ)を生成する。なお、この機能は、病態シミュレータプログラムS3によって実現されている。
また、以下では、シミュレーション(置換前)STP2−2で生成された疑似応答を、「置換前疑似生体応答」という。置換前疑似生体応答は、OGTT時系列データを模したものである。
[置換前生体応答(入力された生体応答と置換前疑似生体応答)の表示]
図13は、STP2−2の処理結果に基づき、サーバSのユーザインターフェイスプログラムS2によって生成され、サーバS2からクライアントCに送信されて、当該クライアントCのWebブラウザC1上に表示される画面表示を示している。
図13の画面は、入力されたOGTT時系列データと置換前疑似生体応答を共に表示するものである。OGTT時系列データと置換前疑似生体応答の両方を出力することで、置換前疑似生体応答が、OGTT時系列データ(入力された生体応答)を良く再現しているか否かをユーザが確認することができる。
なお、OGTT時系列データとこれを再現した置換前疑似生体応答とを、特に区別しない場合、両者を総称して「置換前生体応答」という。
図14は、STP2−1の処理結果に基づき、サーバSのユーザインターフェイスプログラムS2によって生成され、サーバS2からクライアントCに送信されて、当該クライアントCのWebブラウザC1上に表示される画面表示を示している。
図14の画面は、生体モデルが示す生体機能の状態値として置換前パラメータセットを表示するものである。より具体的には、図14の画面は、生体モデルのパラメータ名(BETA、H、・・等)表示部100、置換前パラメータセット表示部101、健常者の平均パラメータ値を示す正常型平均表示部102、境界型糖尿病患者の平均パラメータ値を示す境界型平均表示部103、糖尿病患者の平均パラメータ値を示す糖尿病型平均表示部104を含んでいる。
例えば、図14におけるパラメータ「BETA」は、生体モデルの膵臓ブロック1における「β:グルコース刺激に対する感受性(「インスリン分泌感度」ともいう)」に対応している。置換前パラメータセットの「BETA」の値は、正常型平均値の「BETA」の値から離れており、医師は、病態としてインスリン分泌感度が悪化しているという判断を容易に行うことができる。
なお、図14の表示は、パラメータセットを構成するパラメータのうち、一部のパラメータだけを表示しているが、他のパラメータを表示してもよい。また、図14では、生体機能状態値として、パラメータ値をそのまま表示しているが、1又は複数のパラメータ値に基づいて演算された値を、生体機能状態値としてもよい。
[置換対象選択処理STP3−1]
続いて、ユーザは、図14の画面表示を参照しつつ、値の置換対象となるパラメータ(生体機能状態値)の選択を行う。この選択は、図14の画面上で、マウスポインタにより、置換対象としたいパラメータ名をクリックする等の、コンピュータにおいて採用されている一般的な選択入力機能を利用して行うことができる。
なお、置換対象の選択は、ユーザからの入力に限らず、システムSSが自動的に行っても良い。例えば、正常型平均から所定値以上離れているパラメータを置換対象として自動選択としてもよい。
また、システムSSによる自動選択で挙げられた置換候補の中から、ユーザが置換したいパラメータを選択してもよい。
システムSSは、置換対象(置換対象パラメータ)の選択を受け付けると、置換対象パラメータ値を、正常な生体(健常者)の値、すなわち、図14の正常型平均表示部102に表示されている値、に置換する。
例えば、図14に示す置換前パラメータセットのうち、「BETA」を置換対象パラメータとして置換処理を行った場合(以下、この処理を「BETA置換」という)、置換後パラメータセットは、BETAの値が、正常型平均値である「0.39939」になり、その他のパラメータ値は、置換前パラメータセットの値と同じである。図14では、BETA置換後パラメータセットを、BETA置換表示部105に表示している。
また、上記説明では、正常型平均値への置換を行ったが、境界型平均値や糖尿病型平均値への置換を行っても良い。つまり、病状が悪化する方向の置換を行っても良い。
また、置換の仕方が異なる複数の置換後パラメータセット(置換後生体モデル)を生成するという処理には、同じパラメータを、異なる値に置換することも含まれる。例えば、置換前パラメータセットのBETAを、正常型平均値に置換した置換後パラメータセットと、境界型平均値に置換した置換後パラメータセットは異なるパラメータセットであるとみなすことができる。
[置換後シミュレーション処理STP4−1]
置換前シミュレーション処理STP2−2と同様に、システムSSは、置換処理STP3によって得られた置換後パラメータセットを生体モデルに与え、その生体モデルに基づき演算を行い、置換後疑似生体応答情報(血糖値及びインスリン濃度の時間的変化を示すグラフ)を生成する。なお、この機能は、病態シミュレータプログラムS3によって実現されている。
また、以下では、置換後シミュレーションSTP4−1で生成された疑似応答を、「置換後疑似生体応答」という。置換後疑似生体応答は、置換されたパラメータに対応する病態が改善された患者のOGTT時系列データを模したものである。
図15及び図16は、STP4−1のシミュレーション処理結果に基づき、サーバSのユーザインターフェイスプログラムS2によって生成され、サーバS2からクライアントCに送信されて、当該クライアントCのWebブラウザC1上に表示される画面表示を示している。
図15の画面は、置換前擬似生体応答とBETA置換を行った置換後疑似生体応答とを共に表示するものである。置換前疑似生体応答と置換後疑似生体応答の両方を出力することで、BETA置換前の生体応答とBETA置換後の生体応答とが、どのように変化しているかを、ユーザが容易に把握することができる。
すなわち、図15の画面をみれば、BETA(インスリン分泌感度)という病因を薬物治療などによって治療を行ったときに、OGTTデータがどのようになるかを治療前に確認することが可能である。すなわち、図15の画面は、治療効果の判断を支援するための判断支援情報となっており、図15の画面表示機能は、判断支援情報作成部及び判断支援情報表示部としても機能している。
図15及び図16の表示も治療効果の判断を支援する情報として機能するが、ここでは、ユーザにとってさらに分かり易い判断支援情報を生成する。具体的には、処理STP5では、置換の仕方が異なる複数の置換(治療)について、どの置換(治療)が効果的であるかの判断をし易くする情報を生成する。
まず、複数の置換(BETA置換とKp置換)について、それぞれの置換前後の血糖降下度を算出する。血糖降下度は、置換前の血糖値と置換後の血糖値との差分(グラフでの差分面積)を求めることによって得られる。
続いて、BETA置換とKp置換のそれぞれの血糖降下度の比率から、病因の占有比率を算出する。図15及び図16の場合、病因「BETA」の占有比率は24%であるのに対して、病因「Kp」の占有比率は76%と高くなっていることがわかる。つまり、この患者の病因としては、比較的「Kp」が支配的であり、「Kp」を是正する治療の方がより効果が高いことになる。
図17は、判断支援情報としての病因占有比率を円グラフで画面表示したものである。図17の表示は、クライアントCのWebブラウザC1上にて行われる。医師は、この図17の表示をみることで、Kpを是正する治療の方が、治療効果が高いと判断することができる。
つまり、図18は、入力されたOGTT時系列データのグラフ表示画面であり、図19は、入力されたOGTT時系列データとその置換前疑似生体応答を示すグラフ表示画面である)。図20は、置換前パラメータセット他の表示画面であり、BETA置換及びKp置換を行った場合の値も表示されている。
さらに、図23は、図21及び図22の結果から算出された病因占有率のグラフ表示画面であり、図23の表示によって、インスリン分泌感度を是正する治療を行うと効果が高いことを、医師が一層容易に判断することができる。
1膵臓ブロック
2肝臓ブロック
3インスリン動態ブロック
4末梢組織ブロック
5消化管からのグルコース吸収
6血糖値
7インスリン分泌速度
8正味グルコース放出
9肝臓通過後インスリン
10末梢組織でのインスリン濃度
STP1 生体応答入力処理(生体応答入力部)
STP2−1 パラメータセット獲得処理(生体機能状態値生成部)
STP2−3 表示処理(生体機能状態値表示部)
STP3 置換処理(置換部)
STP3−1 置換対象選択受付処理(選択部)
STP4−1 置換後シミュレーション処理(シミュレーション部)
STP4−2 置換後生体応答表示処理(置換後生体応答表示部)
STP5 判断支援情報作成処理(判断支援情報作成部)
STP5−2 病因占有比率算出表示処理(判断支援情報表示部)
Claims (4)
- 生体の機能に関する内部パラメータセットを含む数理モデルによって表現された生体モデルを備えており、糖尿病患者の検査データを入力することによって構築された患者の生体モデルを用いて、擬似生体応答を生成する医療用シミュレーションシステムであって、
表示手段と、
処理手段と、を備え、
前記処理手段は、
患者の経口ブドウ糖負荷試験の時系列データの入力を受け付ける処理、
入力された前記時系列データを模した擬似生体応答を出力する生体モデルを形成する内部パラメータセットを、前記患者の生体モデルの内部パラメータセットとして獲得する処理、
前記患者の生体モデルの内部パラメータセットに含まれるパラメータの値を、生体機能状態値として、前記表示手段に表示する処理、
前記表示手段に表示された患者の生体モデルのパラメータのうち置換対象となるパラメータの選択入力を受け付ける処理、
前記表示手段に表示された患者の生体モデルのパラメータのうち、前記置換対象として選択されたパラメータの値を他の値に置換する処理、および
置換された値が反映された生体モデルの出力である置換後擬似生体応答の時間的変化を示すグラフと、置換前のパラメータ値が反映された生体モデルの出力である置換前擬似生体応答の時間的変化を示すグラフを重ねて前記表示手段に表示する処理、
を実行することを特徴とする医療用シミュレーションシステム。 - 前記置換する処理では、前記置換対象となるパラメータの値を、正常な生体が持つべき値に置換することを特徴とする請求項1記載の医療用シミュレーションシステム。
- 前記処理手段は、パラメータの値の置換の仕方が異なる複数の生体モデルの出力であるそれぞれの置換後擬似生体応答に基づいて、治療効果の判断を支援するための判断支援情報を作成する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の医療用シミュレーションシステム。
- コンピュータを、請求項1〜3のいずれかに記載の医療用シミュレーションシステムとして機能させるためのコンピュータプログラム。
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