以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
[画像形成装置の全体構成及び動作]
先ず、本発明を適用し得る画像形成装置の一例の全体構成及び動作について説明する。
尚、各図面において同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付し、極力重複する説明は省略する。又、以下の説明において、異なる種類の記録材料(具体的にはトナー)に対応して設けられた、実質的に同じ構成、機能を有する要素を画像形成装置が複数有していることがある。これらの要素について、特に区別して説明する必要がない場合は、いずれかの種類のトナーに対して設けられた要素であることを表すために図中符号に与えた添え字Bk、LBk、C、LC、M、LM、Y、LYを省略して総括的に説明する。
図1〜図4は、それぞれ本発明を適用し得る画像形成装置の一例として、少なくとも1組の同一色相で明度の異なる記録材料で画像形成を行うことが可能な電子写真方式の画像形成装置の概略断面構成を示す。以下、本実施例では、同一色相で明度の高いトナーのことを同一色相で濃度の低いトナー(淡色トナー)と呼ぶ。また、同一色相で明度の低いトナーのことを同一色相で濃度の高いトナー(濃色トナー)と呼ぶ。特に、図1〜図4の画像形成装置100a、100b、100c、100dは、同一色相で濃度の異なる記録材料として、より濃度の高い「濃色トナー」とより濃度の低い「淡色トナー」との、2種類の濃度の異なるトナーの組み合わせを用いる。そして、図1〜図4の画像形成装置100a〜100dは、概略、次のようにして、同一色相で濃度の異なるトナーを用いて画像を形成することができる。即ち、画像濃度情報を、濃色トナー用の画像データと淡色トナー用の画像データとに分解する。濃色トナー用の画像データに基づく像露光と濃色トナーを用いての現像によって濃色トナー画像を形成し、淡色トナー用の画像データに基づく像露光と淡色トナーを用いての現像によって淡色トナー画像を形成する。そして、濃色トナー画像と淡色トナー画像とを重ね合わせて画像形成を行う。
図1は、白黒画像形成装置の一例を示す。
図1の画像形成装置100aは、同一色相で異なる濃度のトナーのうちより濃度の高い濃色トナーを用いて画像を形成する濃色トナー画像形成部としてのブラック(Bk)画像形成部200Bkを有する。又、画像形成装置100bは、同一色相で異なる濃度のトナーのうちより濃度の低い淡色トナーを用いて画像を形成する淡色トナー画像形成部としてのライトブラック(LBk)(又はグレー)画像形成部200LBkを有する。このように、図1の画像形成装置100aでは、濃色トナーにより現像を行う濃色現像部と淡色トナーにより現像を行う淡色現像部とは、異なる感光ドラム1Bk、1LBk上に、それぞれBkトナー、LBkトナーを用いて画像を形成する。
画像形成部200には、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム1が設けられている。感光ドラム1は、図示矢印A方向(時計回り)に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ(帯電装置)2、感光ドラム1上に静電像を書き込む露光手段(画像書き込み手段)としての露光装置(本例では、レーザスキャナー)3が設けられている。又、感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1上の静電像を現像する現像手段としての現像器4、感光ドラム1上のクリーニングするクリーニング手段としてのクリーナ(クリーニング装置)7が設けられている。
又、各画像形成部200LBk、200Bkの感光ドラム1LBk、1Bkに対向して、中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト40が設けられている。中間転写ベルト40は、複数の支持部材として駆動ローラ20、支持ローラ21及びバックアップローラ22の3個のローラに張架されており、駆動ローラ20が図示矢印B方向へ回転駆動されることによって、図示矢印D方向に周回移動(回転)する。
中間転写ベルト40の内周面側には、各画像形成部200の感光ドラム1に対向する位置に、1次転写手段としての1次転写ローラ(1次転写装置)5が配置されている。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト40の内周面に接触して、中間転写ベルト40を感光ドラム1に向けて押圧する。これにより、中間転写ベルト40と感光ドラム1とが接触する1次転写部N1にニップ(1次転写ニップ)が形成される。又、中間転写ベルト40の外周面側においてバックアップ22に対向する位置には、2次転写手段としての2次転写ローラ(2次転写装置)23が配置されている。2次転写ローラ23は、バックアップローラ22に対向する位置で中間転写ベルト40に圧接し、中間転写ベルト40と感光ドラム1とが接触する2次転写部N2にニップ(2次転写ニップ)を形成する。
尚、図1に示す画像形成装置100aでは、複数の画像形成部は、中間転写ベルト40のトナー画像転写面の移動方向に沿って、LBk、Bkの各色用の順序で配置されている。
回転する感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2により、本例では負極性に略一様(均一)に帯電される(例えば、帯電電位:−400V)。次に、露光装置3が画像情報に応じたレーザー光を感光ドラム1表面に照射することにより、感光ドラム1上に静電像が形成される(例えば、露光部電位:−50V)。
次に、感光ドラム1上の静電像は、現像器4によってトナー画像として現像される。現像器4は、現像剤としてのトナーを感光ドラム1と対向する現像部まで搬送する現像剤担持体として現像スリーブを有する。現像時には、現像スリーブに所定の現像バイアス(例えば、DC:−250V、AC:1000Vpp)が印加される。これにより、本例では負極性に帯電したトナーが感光ドラム1上の静電像に応じて、現像スリーブから感光ドラム1へと転移する。本例では、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーを、感光ドラム1上のレーザー光を照射した部位(電荷が減衰した部位)に付着させる反転現像方式によって、感光ドラム1上にトナー画像が形成される。
感光ドラム1上のトナー画像は、1次転写ローラ5に印加された、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本例では正極性)の電圧により、中間転写ベルト40上に静電的に転写(1次転写)される。
1次転写工程が終了した感光ドラム1は、その表面上に残留しているトナー(転写残トナー)がクリーナ7により除去、回収された後、再び帯電ローラ2により略一様(均一)に帯電され、次の画像形成に供される。
図1の画像形成装置100aでは、実画像(原稿画像)の形成時(原稿画像形成時)には、上述の工程が、LBk画像形成部200LBk、Bk画像形成部200Bkにおいて順次に行われる。これにより、先ず、感光ドラム1LBk上に画像情報に応じて形成されたLBkトナー画像が、中間転写ベルト40上に1次転写される。次いで、同様にして、感光ドラム1Bk上に画像情報に応じて形成されたBkトナー画像が、中間転写ベルト40上のLBk画像に重ねて中間転写ベルト40上に1次転写される。
次に、中間転写ベルト40上の2種類のトナーの重ね合わせトナー画像は、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本例では正極性)の電圧が印加された2次転写ローラ23によって、転写材P上に転写(2次転写)される。
転写材Pは、図示しない転写材供給手段によって、所定のタイミングで2次転写部N2に搬送される。
2次転写工程が終了した中間転写ベルト40は、その表面上に残留しているトナー(転写残トナー)が中間転写体クリーニング手段としての中間転写ベルトクリーナ(中間転写ベルトクリーニング装置)30により除去、回収されて、次の画像形成に供される。
中間転写ベルト40から2次転写されたトナー画像を担持した転写材Pは、中間転写ベルト40から分離された後に、定着手段としての定着装置6に搬送され、ここで熱及び圧力を受ける。これによって、転写材P上のトナー画像が転写材P上に定着される。その後、転写材Pは画像形成装置本体外に排出される。
図1の画像形成装置100aは、タンデムタイプと呼ばれ、複数の画像形成部が配置され、中間転写ベルト40の1回転で1画像を形成することができる。そのため、斯かる構成の画像形成装置100aは、高速化に適しているという利点を有する。
図1に示すようなタンデムタイプの画像形成装置では、次の各手段を有して、転写材P上に濃色トナー画像を形成する濃色画像形成手段(第二像形成手段)が構成される。つまり、濃色トナー(第二のトナー)を用いる画像形成部の感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像器4及び1次転写ローラ5、並びに、中間転写ベルト40及び2次転写ローラ23の各手段である。又、次の各手段を有して、転写材P上に淡色トナー画像を形成する淡色画像形成手段(第一像形成手段)が構成される。つまり、淡色トナー(第一のトナー)を用いる画像形成部の感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像器4及び1次転写ローラ5、並びに、中間転写ベルト40及び2次転写ローラ23の各手段である。ここで、中間転写ベルト40及び2次転写ローラ23は、濃色画像形成手段と淡色画像形成手段とで共通である。
図2は、白黒画像形成装置の他の一例を示す。
図2の画像形成装置100bは、図1の画像形成装置100aと同様に、同一色相で異なる濃度のトナーとして、濃色トナーであるBkトナーと淡色トナーであるLBkトナーとを用いる。但し、図2の画像形成装置100bは、図1の画像形成装置100aのように複数の画像形成部を有しておらず、1つの感光ドラム1に対して複数の現像器4が設けられ、濃色トナー、淡色トナーをそれぞれ用いる異なる現像器4で現像を行うようになっている。
即ち、図2の画像形成装置100bは、回転可能な現像器支持体(回転体)に複数の現像器4が配置された回転式現像装置4Aを有する。そして、この回転式現像装置4Aに、濃色トナーであるBkトナーを用いるBk現像器4Bkと、淡色トナーであるLBkトナーを用いるLBk現像器4LBkとが配置される。現像器支持体が回転することにより、所望の現像器4を、感光ドラム1の対向位置(現像位置)へと移動させることができる。このように、図2の画像形成装置100bでは、濃色トナーにより現像を行う濃色現像部と淡色トナーにより現像を行う淡色現像部は、単一の感光ドラム1上の略同一位置で、それぞれBkトナー、LBkトナーを用いて画像を形成する。
又、図2の画像形成装置100bでは、2次転写ローラ23は、中間転写ベルト40の表面に接触する接触位置(2次転写位置)と、中間転写ベルト40の表面から離間した離間位置(退避位置)との間で移動可能とされている。同様に、中間転写ベルトクリーナ30は、中間転写ベルト40の表面に接触する接触位置(クリーニング位置)と、中間転写ベルト40の表面から離間した離間位置(退避位置)との間で移動可能とされている。
図2の画像形成装置100bでは、先ず、図1の画像形成装置100aの各画像形成部200における動作と同様にして、LBk現像器4LBkを用いて感光ドラム1上に画像情報に応じたLBkトナー画像が形成される。そして、1次転写ローラ5に印加されたトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本例では正極性)の電圧により、中間転写ベルト40上にLBk画像が1次転写される。
次に、LBkトナー画像を担持した中間転写ベルト40は、回転移動を継続する。この時、中間転写ベルト40の表面に対して2次転写ローラ23と中間転写ベルトクリーナ30とが退避していることによって、中間転写ベルト40上のLBkトナー画像が乱されることなく、2色目の1次転写工程に備えることができる。
LBkトナー画像を担持した中間転写ベルト40が回転している間に、回転式現像装置4AのBk現像器4Bk及びLBk現像器4LBkが矢印C方向に回転して、現像器4Bkが感光ドラム1の対向位置(現像位置)に配置される。
そして、Bkトナー画像の形成時と同様にして、Bk現像器4Bkを用いて感光ドラム1上に画像情報に応じたBkトナー画像が形成される。そして、1次転写ローラ5に印加された、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本例では正極性)の電圧により、中間転写ベルト40上のLBkトナー画像に重ねて、Bkトナー画像が中間転写ベルト40上に1次転写される。
それぞれのトナーを用いた1次転写工程が終了する毎に、感光ドラム1は、その表面上に残留しているトナー(転写残トナー)がクリーナ7により除去、回収されて、次の画像形成に供される。
次に、退避していた2次転写ローラ23は、2次転写工程に備えて、中間転写ベルト40に接触する2次転写位置に戻る。そして、中間転写ベルト40上の2種類のトナーの重ね合わせトナー画像は、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本例では正極性)の電圧が印加された2次転写ローラ23によって転写材P上に2次転写される。
転写材Pは、図示しない転写材供給手段によって、所定のタイミングで2次転写部N2に搬送される。
一方、退避していた中間転写ベルトクリーナ30は、中間転写ベルト40のクリーニング工程に備えて、中間転写ベルト40に接触するクリーニング位置に戻る。そして、2次転写工程が終了した中間転写ベルト40は、その表面上に残留しているトナー(転写残トナー)が中間転写ベルトクリーナ30により除去、回収されて、次の画像形成に供される。
中間転写ベルト40から2次転写されたトナー画像を担持した転写材Pは、中間転写ベルト40から分離された後に、定着装置6に搬送され、ここで転写材P上にトナー画像が定着される。その後、転写材Pは、画像形成装置本体外に排出される。
図2の画像形成装置100bは、1ドラムタイプと呼ばれ、1つの感光ドラムで複数の現像器により画像を形成し、中間転写ベルト40の複数回転で1画像を形成することができる。このため、図1の画像形成装置100aと比較すると、高速化には不利であるが、部品点数を少なくできるため、低コスト及び小型化(省スペース)の利点を有する。
図2に示すような1ドラムタイプの画像形成装置では、次の各手段を有して、転写材P上に濃色トナー画像を形成する濃色画像形成手段が構成される。つまり、感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、濃色トナー用の現像器4、1次転写ローラ5、中間転写ベルト40及び2次転写ローラ23の各手段である。又、次の各手段を有して、転写材P上に淡色トナー画像を形成する淡色画像形成手段が構成される。つまり、感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、淡色トナー用の現像器4、1次転写ローラ5、中間転写ベルト40及び2次転写ローラ23の各手段である。ここで、感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、1次転写ローラ5、中間転写ベルト40及び2次転写ローラ23は、濃色画像形成手段と淡色画像形成手段とで共通である。
図3は、カラー画像形成装置の一例を示す。
図3の画像形成装置100cは、少なくとも1組の同一色相で濃度の異なるトナーを用いてフルカラー画像の形成が可能な、図1の画像形成装置100aと同様のタンデムタイプの画像形成装置である。
図3の画像形成装置100cは、同一色相で異なる濃度のトナーの組み合わせとして、図1の画像形成装置100aと同様の濃色トナーであるBkトナーと淡色トナーであるLBkトナーの他に、次の各組み合わせを用いる。即ち、それぞれ濃色トナー、淡色トナーである、イエロー(Y)トナーとライトイエロー(LY)トナー、マゼンタ(M)トナーとライトマゼンタ(LM)トナー、シアン(C)トナーとライトシアン(LC)トナーである。
即ち、図3の画像形成装置100cは、濃色トナーを用いて画像を形成する濃色トナー画像形成部として、Bk画像形成部200Bk、C画像形成部200C、M画像形成部200M、Y画像形成部200Yを有する。又、図3の画像形成部100cは、淡色トナーを用いて画像を形成する淡色トナー画像形成部として、LBk画像形成部200LBk、LC画像形成部200LC、LM画像形成部200LM、LY画像形成部200LYを有する。
図3に示す画像形成装置100cでは、複数の画像形成部は、中間転写ベルト40のトナー画像転写面の移動方向に沿って、LY、Y、LM、M、LC、C、LBk、Bkの各色用の順序で配置されている。
図3の画像形成装置100cにおいて実画像(原稿画像)を形成する場合の動作は、画像形成部の数が増加したことを除いて実質的に図1の画像形成装置100aと同様である。即ち、図3の画像形成装置100cでは、例えば、フルカラーの実画像(原稿画像)の形成時には、LY、Y、LM、M、LC、C、LBk、Bkの各トナー画像が順次に中間転写ベルト40上に重ね合わせて1次転写される。各感光ドラム1上へのトナー画像の形成、トナー画像の中間転写ベルト40への転写は、図1の画像形成装置100aにおけるLBk、Bkの各トナー画像の場合と同様にして行われる。
中間転写ベルト40上の8種類のトナーの重ね合わせトナー画像は、図1の画像形成装置100aと同様にして、転写材P上に2次転写され、その後、定着装置6において転写材P上に定着される。
尚、図3の画像形成装置100cは、8個の画像形成部を有するが、本発明を適用し得る画像形成装置は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、LBk画像形成部200LBkとLY画像形成部200LYを削除して、6個の画像形成部を有する画像形成装置を構成しても良く、画像形成部の組合せは任意である。
図4は、カラー画像形成装置の他の一例を示す。
図4の画像形成装置100dは、少なくとも1組の同一色相で濃度の異なるトナーを用いてフルカラー画像の形成が可能な、図2の画像形成装置100bと同様の1ドラムタイプの画像形成装置である。
図4の画像形成装置100dは、同一色相で異なる濃度のトナーの組み合わせとして、図2の画像形成装置100bと同様の濃色トナーであるBkトナーと淡色トナーであるLBkトナーの他に、次の各組み合わせを用いる。即ち、それぞれ濃色トナー、淡色トナーである、イエロー(Y)トナーとライトイエロー(LY)トナー、マゼンタ(M)トナーとライトマゼンタ(LM)トナー、シアン(C)トナーとライトシアン(LC)トナーである。
即ち、図4の画像形成装置100dは、回転可能に配置されたBk現像器4Bk、LBk現像器4LBk、C現像器4C、LC現像器4LC、M現像器4M、LM現像器4LM、Y現像器4Y、LY現像器4LYを有する。図2の画像形成装置100bと同様に、上記各現像器は、回転可能な現像器支持体(回転体)に装着され、回転式現像装置4Bを構成している。
図4の画像形成装置100dにおいて実画像(原稿画像)を形成する場合の動作は、現像器の数が増加したことを除いて実質的に図2の画像形成装置100bと同様である。即ち、図4の画像形成装置100dでは、例えば、フルカラーの実画像(原稿画像)の形成時には、LY、Y、LM、M、LC、C、LBk、Bkの各トナー画像が順次に感光ドラム1上に形成される。感光ドラム1上へのトナー画像の形成は、図2の画像形成装置100bにおけるLBk、Bkの各トナー画像の場合と同様して行われる。そして、これらのトナー画像は、感光ドラム1上に形成される都度、中間転写ベルト40上に1次転写される。これにより、LY、Y、LM、M、LC、C、LBk、Bkの各トナー画像が順次に中間転写ベルト上に重ね合わせて1次転写される。
中間転写ベルト40上の8種類のトナーの重ね合わせトナー画像は、図2の画像形成装置100bと同様にして、転写材P上に2次転写され、その後、定着装置6において転写材P上に定着される。
尚、図4の画像形成装置100dは、8個の現像器を有するが、本発明を適用し得る画像形成装置は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、LBk現像器4LBkとLY現像器4LYを削除して、6個の現像器備えた回転式現像装置を有する画像形成装置を構成しても良く、現像器の組合せは任意である。
ここで、図1〜図4を参照して、本発明を適用し得るいくつかの画像形成装置を例示して説明したが、画像形成装置の実施態様は上述のものに限定されるものではない。
例えば、タンデムタイプと1ドラムタイプとを組み合わせた態様が考えられる。即ち、単一の感光ドラムに対して単一の現像器が設けられた画像形成部と、単一の感光ドラムに対して複数の現像器が設けられた画像形成部と、を有する画像形成装置を構成してもよい。
又、図1〜図4の画像形成装置100a〜100dは、中間転写体を用いた中間転写方式を採用するものとして説明したが、これに限定されるものではない。中間転写体の代わりに、転写材を担持して搬送する転写材担持体を用いた直接転写方式を採用してもよい。
例えば、図5は、図3の画像形成装置100cと同様に8個の画像形成部を有する、直接転写方式を採用した画像形成装置100eの概略断面構成を示す。図5の画像形成装置100eは、図3の画像形成装置100cの中間転写ベルト40に代えて、転写材担持体としての無端状のベルトで形成された搬送ベルト50を有する。搬送ベルト50の内周面側には、各画像形成部200の各感光ドラム1に対向して、図3の画像形成装置100cの1次転写ローラと概略同様の作用をなす転写手段としての転写ローラ5が設けられている。転写ローラ5は、搬送ベルト50を感光ドラム1に向けて押圧する。これにより、搬送ベルト50と感光ドラム1とが接触する転写部Nにニップ(転写ニップ)が形成されている。転写材Pは、所定のタイミングで搬送ベルト50上に供給されて、好ましくは静電的に吸着される。そして、搬送ベルト50の図示矢印D方向の回転に伴って、各転写部Nにおいて、各画像形成部200の各感光ドラム1から搬送ベルト50上に担持された転写材P上に複数種類のトナーから成るトナー画像が順次に重ね合わせて転写される。その後、転写材Pは、搬送ベルト50から分離されて定着装置6へと搬送され、ここでトナー画像が転写材Pに定着される。
この場合、転写材P上に濃色トナー画像を形成する濃色画像形成手段は、濃色トナーを用いる画像形成部の感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像器4及び転写ローラ5の各手段を有して構成される。又、転写材P上に淡色トナー画像を形成する淡色画像形成手段は、淡色トナーを用いる画像形成部の感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像器4及び転写ローラ5の各手段を有して構成される。
同様に、例えば、図4の画像形成装置100dのような1ドラムタイプの画像形成装置において直接転写方式を採用する場合は、搬送ベルト50を複数周回させることによって、搬送ベルト50上に担持された転写材Pを同一の転写部に複数回搬送する。これによって、搬送ベルト50上の転写材P上に複数種類のトナーから成るトナー画像を重ね合わせて転写することができる。
この場合、転写材P上に濃色トナー画像を形成する濃色画像形成手段は、感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、濃色トナー用の現像器4及び転写ローラ5の各手段を有して構成される。又、転写材P上に淡色トナー画像を形成する淡色画像形成手段は、感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、淡色トナー用の現像器4及び転写ローラ5の各手段を有して構成される。ここで、感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3及び転写ローラ5は、濃色画像形成手段と淡色画像形成手段とで共通である。
上述のいずれの画像形成装置も、画像形成装置本体に設けられるか通信可能に接続された画像読取手段(図示せず)からの画像情報に応じて画像を形成(コピー)する複写機としての機能を有していてよい。又、これに加えて又は代えて、上述のいずれの画像形成装置も、画像形成装置本体に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器(図示せず)から画像情報に応じて画像を形成(プリント)するプリンタとしての機能を有していてよい。
[画像処理システム]
次に、画像処理システムに関して説明する。
図6は、本実施例における画像処理システムのブロック図を示す。
コピー時は、CCD等の固体撮像素子を用いた画像読取手段(リーダー)によって原稿像の読取が行われる(F1A)。プリント時は、PDL(ページ記述言語)処理部から展開された画像データがコンピュータ等から送信される(F1B)。カラーの場合はRGB信号、白黒の場合はV(輝度)信号である。
次に、CCDから出力増幅したアナログ信号が8〜10ビットのデジタル信号にA/D変換され、シェーディング補正と、これに引き続いて色空間変換、対数変換、黒生成、色補正等の画像処理が行われる(F2)。尚、画像データは、それが収容されたメモリから読み取り、同様な処理をしても良い。
画像処理(F2)で得られた画像データは、各色に色分解され(F3)、濃色トナー用画像データ(F4A)と淡色トナー用画像データ(F4B)とが作成される。
分解した濃色トナー用及び淡色トナー用の画像データは、各々のトナーに対してのγ補正を行い(F5A、F5B)、PWM変調(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)を行う(F6)。PWM変調に当たっては、ハイライト部(低濃度部)でのドット再現を向上させるように大ドットで形成し、記録単位を大きくすることが好ましい。例えば淡色トナー用画像データに対しては、階調性を高めるために2画素PWMを行い、記録単位を大きくする。一方、濃色トナー用画像データに対しては、解像力を重視することから1画素PWMを行う。尚、PWM変調に代えて、強度変調やディザ法であっても差し支えない。
PWM変調を終えた濃色トナー用及び淡色トナー用の画像データに従って、露光装置により感光ドラム上への像露光が行われる(F7)。
濃色トナーと淡色トナーとを用いる画像形成装置において、濃色トナーと淡色トナーとの間に、例えば図7に示すような出力画像信号と濃度(反射濃度)の関係があることが望ましい。尚、濃色トナーと淡色トナーとの濃度差は、トナー粒子中に含まれる顔料の量の差等によって生じる。又、各トナーの濃度は、画像形成装置に依存する。一般的には、図7の実線で示すように、濃色トナーの濃度は、最大濃度(光学濃度)Dmax(H)=1.3〜2.0となるように設定することが望ましい。又、一般的には、図7の1点鎖線で示すように、淡色トナーの濃度は、最大濃度Dmax(L)=0.2〜1.0となるように設定することが望ましい。好ましくは、淡色トナーの濃度は、濃色トナーの濃度の50%以下である。
より詳しくは、同一色相で濃度の異なるトナーとは、典型的には、通常樹脂と顔料とを基体とするトナーの中に含まれる発色成分(顔料)の分光特性が等しく、その量が異なるトナーをいう。又、ここで同一色相とは、発色成分(顔料)の分光特性が同一であるものをいうが、厳密に同一でなくても、一般的にマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックなどのように、通常の色概念上同一色と呼べる範囲とする。
又、トナー粒径や帯電量については、濃色トナーと淡色トナーについて同等程度の状態であることが好適である。
図7に示した階調特性は、トナーの粒径やトナーに含まれる色材、γ変換によっても変化するが、傾き比が濃色トナーと淡色トナーにおいて同程度となるように設計することが好適である。
例えば、画像データ色分解(F3)で行われる従来の濃色トナー(Bk)から、濃色トナー(Bk)及び淡色トナー(LBk)への色分解の典型的な例の色変換テーブルを図8に示す。図8の色変換テーブルにおいて、横軸は画像データの従来の濃色トナー(Bk)の入力画像信号、縦軸は画像データの濃色トナー(Bk)と淡色トナー(LBk)の出力画像信号であり、濃色トナー(Bk)を実線、淡色トナー(LBk)を1点鎖線で示す。図8に示すように、低濃度部では淡色トナー(LBk)の出力画像信号が大きくなり、高濃度部に行くに従って、濃色トナー(Bk)の出力画像信号を大きくするように制御する。淡色トナー(LBk)の出力画像信号は、中濃度部から高濃度部にかけてはトナーの載り量の制限を守るために減少させるのが好適である。
又、図8に示すような濃色トナーと淡色トナーの色分解のための色変換テーブルは、画像データに応じて変更する(複数持つ)構成でも良い。これにより、例えば、画像処理(F2)で得られた画像データが中間調画像(写真画像等)であるか、文字画像であるかに応じて、濃色トナーと淡色トナーの色変換テーブルを変更することができる。例えば、図8は中間調画像用色変換テーブル、図9は文字画像用色変換テーブルとし、画像データが中間調画像であるか文字画像であるかによって、濃色トナーと淡色トナーの構成割合を変更する。即ち、中間調画像に対して図8に示すように淡色トナーの使用を多くする画像データを作成して階調性を向上させ、文字画像に対しては図9に示すように濃色トナーの使用を多くする画像データを作成して明瞭な文字画像とすると好適である。
ここで、濃色トナーのみを使用する場合には、濃色トナー画像信号を、濃色トナーと淡色トナーに色変換する必要がないので、図10に示す色変換テーブルを使用する。尚、この場合、図10の色変換テーブルは、入力画像信号=出力画像信号とすることができるので、色変換テーブルを省くことができる。
[複写抑止地紋]
次に、複写抑止地紋に関して説明する。本実施例の複写抑止地紋(地紋画像)とは、セキュリティの観点から、領収書や証券、証明書に、簡単に複写されることがないように、複写すると文字や画像が浮かび上がる特殊な模様が背景に印刷されているものを指す。この特殊な模様は、複写によって原本が容易に複製できないような仕掛けを施し、心理的にではあるが、原本の複写を抑止(抑制)する効果を実現している。地紋画像は、複写すると像が消える(強調されない)背景部と、複写しても像が消えないことで画像が浮かび上がってみえる(強調される)潜像部と、を有する。
地紋画像が成立する画像形成装置のシステムとしては、例えば以下のようなシステムがある。即ち、出力した原稿の背景部のドットの大きさがリーダーの読み取り限界よりも小さければ、背景部の像が複写後に消失されることになる。
より具体的に、地紋画像が成立する複写機のメカニズムついて説明する。
図32の実線MAに一般的な複写機の複写解像能力(複写MTF)を示す。横軸に周波数情報の1つである線数(LPI=Line Per Inch)、縦軸にコントラスト(強度)を取ると、高周波領域を再現することができない。この現象は、複写時のリーダーMTF、画像処理手法、ハーフトーニング、画像形成の解像能力等の要因から発生する現象であるが、複写MTFの傾向は各メーカー同様な傾向で、高周波成分であるほど複写再現能力は低下する。ここでいう線数とは、画像形成した場合の孤立ドットの重心間距離の最小値のことを指す。ドット集中型で画像形成した場合、隣接する孤立ドットの重心間距離は一定である為、線数=孤立ドットの重心間距離となる。高線数のものはドット間隔が短く、低線数のものはドットの間隔が長い。このように、孤立ドットの間隔が近すぎると、孤立ドットに挟まれる余白部と、隣接する孤立ドットが影響しあい、リーダーでは孤立ドットの輪郭がボケて(濃度が低く)読みとられる。
例えば、複写機の濃度調整部を操作することによって、複写時に、地紋部の全てを消失させる、あるいは背景部も全て残すことも可能である。図32の1点鎖線MBで示すように、濃い側に濃度調整をした場合には、高線数側の再現性が向上する(複写原稿の濃度低下が小さい)。図32の2点鎖線MCで示すように、薄い側に濃度調整をした場合には、低線数側の再現性が低下する(複写原稿の濃度低下が大きい)。
特公昭58−47708号公報に記載されているように、複写時に背景部を消失させ、潜像部を残すように、これらを達成するバランスの取れた空間周波数、並びに濃度域(網点%)を選択して、地紋画像を形成することができる。
そこで、本実施例では、リーダーMTF(リーダーの読み取り解像能力)を調整することで地紋画像が成立する画像形成システムを構築している。具体的には、300〜2400dpiの解像度、リーダーMTF(リーダーの読み取り解像能力)が600lpi時に0.8以下程度の解像能力であれば、地紋画像が成立する。本実施例では、リーダーMTFが線数が600lpi時に0.7以下程度を推奨し、0.7とした。この時、背景部の線数が200lpi程度以上であれば複写後にドットが消失し、潜像部が80lpi程度以下であれば複写後にドットが残存する。このため、本実施例では背景部の線数を206lpiとし、潜像部を60lpiとした。リーダーMTFを変更する方法としては、特開平11−191830号公報に記載されている。また、地紋画像は、ドットの集中度合いを変化させることでも形成可能である。集中したドットや分散したドットは、異なる線数、異なる特徴のディザマトリクスを用いたディザ処理によって生成できる。
ディザマトリクスを用いたディザ処理法において、集中したドット配置を得るためには、ドット集中型ディザマトリクス(特開平05−167810号公報参照)を用いるとよい。また、分散したドット配置を得るためには、ドット分散型ディザマトリクス(特開2003−291468号公報参照)を用いると良い。
上述したディザ処理を用いて地紋画像を生成する場合、潜像部は低い線数の網点処理が、背景部は高い線数の網点処理が適している。さらに言うと、潜像部はドット集中型ディザマトリクスを用いたディザ処理が、背景部はドット分散型ディザマトリクスを用いたディザ処理が適している。ドット集中型は、特開平11−331621号公報記載のように、ディザマトリクス内のサブマトリクスと呼ばれる周期で線数が決定するが、ドット分散型はサブマトリクス内でもドットが分散するため、高解像度画像である。ドット分散型は濃度を変化させるために、ドットのサイズを小さく一定にし、ドットの個数を増やす。すなわち、600dpiのドット分散型ディザであれば、1dot1space(1ドット1スペース)が最小間隔となり、300lpiが最大線数となる(隣接した場合を除いた時)。
また、本実施例では地紋画像の濃度を0.7としている。リーダーMTFを変更する方法としては、特開平11−191830号公報に記載されている。
また、地紋画像は、ドットの集中度合いを変化させることでも形成可能である。集中したドットや分散したドットは、画像処理的には、異なる線数の網点を用いた網点処理や、異なる特徴のディザマトリクスを用いたディザ処理によって生成できる。
この網点処理においては、集中したドット配置を得るためには、低い線数の網点を用い、分散したドット配置を得るためには、高い線数の網点を用いると良い。
又、ディザマトリクスを用いたディザ処理法では、集中したドット配置を得るためには、ドット集中型ディザマトリクスを用い、分散したドット配置を得るためには、ドット分散型ディザマトリクスを用いると良い。
従って、上述した網点処理を用いて地紋画像を生成する場合、潜像部は低い線数の網点処理が、背景部は高い線数の網点処理が適している。又、ディザ処理を用いて地紋画像を生成する場合、潜像部はドット集中型ディザマトリクスを用いたディザ処理が、背景部はドット分散型ディザマトリクスを用いたディザ処理が適している。ディザ処理の詳細については後述する。
本実施例では、背景部に対応する画像は、ドット分散型ディザマトリクスを用いてドットが離散的に配置されるように設計し、潜像部に対応する画像はドット集中型ディザマトリクスを用いてドットが集中して配置されるように設計するものとする。
一般に、複写機には、複写原稿の微小なドットを読み取る入力解像度や、微小なドットを再現する出力解像度に依存した、画像再現能力の限界が存在する。従って、複写機の入力又は出力画像再現能力の限界を超えた孤立した微小ドットが原稿中に存在すると、その複写物では微小ドットを完全には再現できず、孤立した微小ドットの部分が抜け落ちてしまう。
具体的には、ドット集中させた大ドットかつ低線数は複写によって再現できる。しかしながら、ドット集中させた高線数もしくはドット分散させた高線数は再現できなくなってくる。これによって、隠された画像(潜像)が浮かび上がる現象が起きる。又、複写により分散したドットが完全に消えなくとも、集中したドットと比較して、明らかに複写後に濃度差(潜像部と背景部との濃度差)があるような場合にも、隠された画像(潜像)が浮かび上がる。
(1)カモフラージュ技術
又、複写抑止地紋では、隠されている文字や画像(潜像)をより判別しにくくする、「カモフラージュ」という技術も良く知られている。このカモフラージュ技術は、潜像部や背景部とは濃度を異ならせた模様を複写抑止地紋画像全体に配置する方法である。カモフラージュ技術によれば、一見、マクロ的には、潜像部や背景部とは異なる濃度のカモフラージュ模様が目立ち、潜像が更に目立たなくなる効果がある。
又、カモフラージュ模様無しの複写抑止地紋に比べ、カモフラージュ模様が存在する複写抑止地紋は、印刷物に装飾的な印象を与える効果もある。このカモフラージュ模様は、複写後に潜像を容易に判別できるようにするために、複写後にはカモフラージュ模様の内部のドットはできるだけ消失することが望ましい。最も簡単な場合、カモフラージュは、カモフラージュ模様に相当する箇所でドットを打たないことで実現できる。
(2)リーダー解像と解像力に関して
解像度とは、どれだけ細かいエリアの画像情報を信号でやり取りできるかを表した数値であるといえる。一方、解像力とは、実際に読取り能力がどれくらいあるのか、複写再現能力がどれくらいあるのか、を表した数値であるといえる。そのため、リーダーの解像度とリーダーのMTF(解像力)は必ずしも一致するわけではない。例えば、リーダー(解像度600dpi)に高精細チャートを読み込ませると、300lpiのパターンでコントラスト比0.3〜0.5付近のリーダーが多い。コントラスト比とは、2cm角程度の白と黒のパッチの読取り値差を1としたとき、所望ラインのコントラスト比(300lpiチャートのコントラスト/2cm角程度の白と黒のパッチコントラスト)のことで、コントラスト比が低いほどボケてみえる。上記300lpiとは、600dpiの1画素ライン1スペースのパターンである。コントラスト0.3という値は、ディザ処理などで2値化した際、上記パターンは現れない(ラインもスペースも、白若しくは黒で出力)。このことからも、解像度とMTF(解像力)が違うことが理解できよう。
高精細チャートは、600dpiの1画素ライン1画素スペースを完全に白と黒とで形成されたDDCP(コニカミノルタ社製Digital Konsensus Pro等)で作成することができる。また、フイルムセッター(大日本スクリーン製造株式会社製 GENASETT等)で作成することもできる。
解像力(MTF)の周波数側の単位として、1インチあたりのライン本数で定義したが、1mmあたりのライン本数で規定しても構わない。さらに、縦と横のMTF特性も重要であり、片側だけMTFが高い系などでは地紋効果を発揮しづらい。
(3)地紋画像の濃度に関して
ドット集中型のディザマトリクスを用いて背景部を形成する場合、同じ線数であってもドットのサイズ(ドット径)はある程度小さいドットで画像を形成しなければならない。リーダーのMTF特性から孤立ドットを再現できなくても、マクロ濃度としてD=0.25を超えるとコピー原稿に濃度が再現されてしまうからである。すなわち背景部の濃度が高くなり、潜像部との差がわかりづらい。よって、背景部はD=0.25以下を推奨する。このときの網点面積率(ベタは100%)は、機種ごとに異なるが25%以下である場合が多い。なお、DとはDensityのことで、光源はSTATUS A、Visual Densityである。
(4)解像力特性(MTF特性)
複写機には、複写原稿の微小なドットを読み取る入力解像度や、微小なドットを再現する出力解像度に依存した、画像再現能力の限界が存在する。画像再現能力の限界を超えた微小ドットが原稿中に存在すると、その複写物では微小ドットを完全に再現することができない。この特性は、リーダーのMTF特性が支配的である。さらに言うと、レンズの硝材特性(磨き度合や材料特性等)やミラーの平面度で、像面湾曲、色収差、拡散光の増加、透過性等に影響を及ぼし、最終的な解像能力特性としてのMTFが決まる。
MTFが高い(高線数側のコントラスト比が高い)ほど良いわけでは無い。複写機の原稿は、網点原稿(プリンターや一般的なオフセット印刷物)が多く、忠実に網点を読み取った場合、出力時のプリンタ側のディザ処理と干渉し、モアレが発生してしまう。即ち、適度にボケたリーダーMTF特性が複写機には最適である。そのため、300lpiのパターンでコントラスト比0.3〜0.5付近となっている。
このように、ボケたラインやドットになると、通常のディザ処理やγLUT(Look Up Table)で消える、もしくは原稿のドットよりも小さく再現される。
さらに、複写機の標準的なモードは、原稿の下地を飛ばすように設計されている。原稿に対して忠実に再現しようとすると、原稿の紙の色、シワやカール、折り目等も再現してしまい(色が付いてしまい)、画像品質が落ちる。又、不要な部分にトナーを使用するため、ランニングコスト的にも利点が無い。この下地飛ばし機能は、γLUTと呼ばれる1次元の入出力関係のテーブルを最適化する(ハイライトを出にくくする)ことによって実現される。これは、例えば新聞を複写する場合、文字のみを複写し、新聞紙の下地の灰色を飛ばす(白にする)ように設定する等に用いられる。
次に、より詳細に複写抑止地紋画像を画像形成装置で形成する方法に関して説明する。
以下、背景部の画像生成に用いるディザマトリクスを「背景ディザマトリクス」、潜像部の画像生成に用いるディザマトリクスを「潜像ディザマトリクス」と呼ぶ。
ディザ法は、多値の出力画像信号を一定の規則により算出された閾値と比較して、その大小関係で2値画像を出力する方法である。ディザマトリクスは、ディザ法で出力画像信号を2値化する際の閾値が2次元的に配置された閾値マトリクスである。
出力画像信号の画素値を対応するディザマトリクスの閾値で2値化処理することにより、2値画像(閾値パターン)が得られる。この時、得られる2値画像は、出力画像信号の階調がディザマトリクスの閾値未満の場合には、画素値に一方のビット(例えば1)、閾値以上の場合には他方のビット(例えば0)が割り当てられる。
以下の説明では、背景部を構成する2値画像を「背景閾値パターン」、潜像部を構成する2値画像を「潜像閾値パターン」と呼ぶ。
本実施例では、地紋画像形成時に背景部と潜像部の濃度が等しくなるような、背景部と潜像部を構成するパターン(2値画像)である背景閾値パターン、潜像閾値パターンの組合せを予め決定しておく。そして、背景閾値パターン、潜像閾値パターン、背景部と潜像部を指定する2値画像である潜像背景領域指定画像、及びカモフラージュ領域を指定する2値画像であるカモフラージュ領域指定画像を用いて、論理演算を実行する。これにより、高速且つ省メモリで地紋画像を生成することができる。
尚、背景閾値パターン、潜像閾値パターンは、地紋画像形成時の地紋画像の背景部と潜像部の濃度を決定するパラメータであり、「地紋濃度パラメータ」の具体的な構成要素とする。
図11は、本実施例におけるプリント時の地紋画像生成の内部処理を示すブロック図である。この地紋画像生成は、プリンタドライバ300の地紋画像生成部301、合成部302及び画像データ処理部303と、画像形成装置304と、を有して構成される処理ブロック群によって行われる。プリンタドライバ300は、画像形成装置304から画像を出力するために、例えば、画像形成装置304に付属して提供され、画像形成装置304に通信可能に接続される各コンピュータにインストールされるアプリケーションソフトウェアである。
先ず、地紋画像生成部301には、入力背景画像311、色情報312、処理領域情報313、潜像閾値パターン314、背景閾値パターン315、潜像背景領域指定画像316、カモフラージュ領域指定画像317が入力される。そして、地紋画像生成部301により、地紋画像318が生成されて出力される。
地紋画像生成部301は、所定の規則に従って入力背景画像311に画像処理を行い、地紋画像318を生成する。尚、入力背景画像311は、多値画像でも2値画像でも良い。又、処理領域情報313は、入力画像情報中で地紋の埋め込み処理を行う領域を示す情報である。
潜像背景領域指定画像316は、潜像部と背景部を指定するための画像であり、1画素=1ビットで構成される。潜像背景領域指定画像316の一方のビット(例えば1)は潜像部を表し、他方のビット(例えば0)は背景部を表す。カモフラージュ領域指定画像317は、カモフラージュ効果を持たせるために、濃度を薄くする領域を指定するための画像であり、潜像背景領域指定画像316と同様に1画素=1ビットで構成される。カモフラージュ領域指定画像317の一方のビット(例えば1)は、カモフラージュ領域でないことを示し、他方のビット(例えば0)は、周囲に比べて濃度を薄くするカモフラージュ領域であることを示す。
図12は、潜像背景領域指定画像316及びカモフラージュ領域指定画像317の一例を示す図である。図12において、501は潜像背景領域指定画像316の一例である。図12において、502はカモフラージュ領域指定画像317の一例である。
既に述べたように、潜像閾値パターン314と背景閾値パターン315は、印刷出力時に等しい濃度として出力されるように、適当な画像信号をそれぞれ潜像ディザマトリクスと背景ディザマトリクスの閾値で閾値処理して生成されている。
図13は、潜像閾値パターン314及び背景閾値バターン315の一例を示す図である。図13において、511は潜像閾値パターン314の一例である。512は背景閾値パターン315の一例である。
次に、地紋画像生成部301で生成された地紋画像318は、合成部302に出力される。
合成部302では、コンピュータ等のアプリケーションソフトウェアで作成された画像である入力原稿画像(実画像)319と、生成された地紋画像318とを合成し、「地紋合成出力原稿画像」を生成する。尚、入力原稿画像319に関わらず、地紋画像318をそのまま地紋合成出力原稿画像とする場合には、合成部302で入力原稿画像319を参照する必要はない。このとき、地紋画像318や入力原稿画像319を構成するオブジェクト毎にカラーマッチング処理を実行し、その後、入力原稿画像319を構成するオブジェクトと地紋画像318を合成しても良い。これにより、地紋合成出力原稿画像に対して、カラーマッチング処理を実行することができる。
次に、画像データ処理部303では、合成部302で合成された地紋合成出力原稿画像を描画情報として受け取り、逐次印刷コマンドへと変換していく。このとき、必要に応じて、カラーマッチング処理やRGB−YMCBk変換、ハーフトーン処理等の画像処理を実行する。そして、画像データ処理部303は、「地紋合成出力原稿画像データ」として、画像形成装置304で解釈可能なデータ形式(例えば、ページ記述言語で記述されたデータ形式や印刷ビットマップに展開されたデータ形式)を後段の画像形成装置304に送信する。
画像形成装置304は、前述の白黒又はカラー画像形成装置であり、入力された地紋合成出力原稿画像データの情報に従って、出力原稿地紋画像320を出力する。
ここで、プリンタの場合を例として説明すると、画像形成装置304は、図示しないプリンタコントローラとプリンタエンジンとを有して構成される。プリンタコントローラは、前述の図6の処理を行う。プリンタコントローラは、パーソナルコンピュータ等から送信されるページ記述言語(PDL)を解析し、描画及び印字に関するコマンドについては、対応するパターンをページメモリに展開する。ここで、必要に応じて、RGB−YMCBk変換やハーフトーン処理等の画像処理(F2)を実行する。そして、ページメモリの内容をビデオ信号に変換し、図1〜図4を参照して説明した画像形成装置に対応するプリンタエンジンで出力する。
図14は、本実施例におけるコピー時の地紋画像生成の内部処理を示すブロック図である。この地紋画像生成は、プリンタドライバ300と、画像形成装置304の地紋画像生成部301、合成部302及び画像データ処理部303と、を有して構成される処理ブロック群によって行われる。プリント時と異なるのは、地紋画像生成部301、合成部302、画像データ処理部303が画像形成装置304内のプリンタコントローラに実装されている点であるが、基本的には、コピー時とプリント時とで同様である。
地紋画像生成部301で生成された地紋画像318は、合成部302に出力される。
合成部302では、画像形成装置304の図示しないリーダ部(画像読取手段)で、CCD等の固体撮像素子を用いた画像読取手段によって原稿画像(実画像)を読み取った画像である入力原稿画像319と、生成された地紋画像318とを合成する。これにより、合成部302は、地紋合成出力原稿画像を生成する。尚、入力原稿画像319に関わらず、地紋画像318をそのまま地紋合成出力原稿画像とする場合には、合成部302で入力原稿画像319を参照する必要はない。
次に、画像データ処理部303では、合成部302で合成された地紋合成出力原稿画像を、図6に示すようなカラーマッチング処理やRGB−YMCBk変換、ハーフトーン処理等の画像処理(F2)を実行する。そして、入力された地紋合成出力原稿データの情報に従って、出力原稿地紋画像320を出力する。
(5)フローチャート
次に、図15を参照して、複写抑止地紋生成の内部処理について更に詳しく説明する。
図15は、本実施例における地紋画像生成部301の内部処理手順を示すフローチャートである。
初めに、ユーザインターフェース等を通じて、ステップS101で、地紋画像生成処理が開始される。次に、ステップS102で、入力背景画像311、潜像閾値パターン314、背景閾値パターン315、潜像背景領域指定画像316、カモフラージュ領域指定画像317を読み込む。
次に、ステップS103で、地紋画像を生成する際の初期画素を決定する。例えば、入力背景画像全体に対して、左上から右下までラスター走査順に画像処理を行い、地紋画像に変更する場合、左上を初期位置とする。
次に、ステップS104では、潜像閾値パターン314、背景閾値パターン315、潜像背景領域指定画像316、カモフラージュ領域指定画像317は、入力背景画像311の左上からタイル状に配置するものとして、次の処理を行う。即ち、処理対象となっている入力背景画像311の画素に対して、所定の論理式を計算して、出力時のドットに対する画素値を書き込むか否かを判定する。このとき、画素値は入力された色情報312に対応する。
又、生成される地紋画像では、潜像閾値パターン314、背景閾値パターン315、潜像背景領域指定画像316、カモフラージュ領域指定画像317の縦横の長さの最小公倍数の大きさの画像が繰り返しの最小単位となる。そのため、地紋画像生成部301では、繰り返しの最小単位である地紋画像の一部分のみを生成し、その地紋画像の一部分を入力背景画像311の大きさにタイル状に繰り返し並べると、地紋画像318の生成にかかる処理時間を短縮できる。
次に、ステップS105では、ステップS104での計算結果を判定する。
ステップS105で画素値を書き込む場合(Yes)、ステップS106では、出力時のドットに対応する画素値を書き込む処理を行う。画素値の値は、地紋画像の色により変えることができる。黒色の地紋を作成したい場合、入力背景画像311の処理対象画素を黒に設定する。その他、画像形成装置が用いるトナーの色に合わせて、シアン、マゼンタ、イエローに設定すれば、カラーの地紋画像318を作成することもできる。
入力背景画像311が1画素当たり1〜数ビットの画像データである場合には、インデックスカラーを用いて画素値を表現すれば良い。インデックスカラーとは、画像データの表現方法で、対象とするカラー画像で頻繁に出現する色情報に目次を設定し、各画素の値は色情報を記載した目次番号で表現する方法である。例えば、インデックス0は白、インデックス1はシアン等として、対象とするカラー画像で頻繁に出現する色情報に目次を設定する。又、例えば、1番目の画素値はインデックス1の値、2番目の画素値はインデックス2の値、・・・と各画素の値を、色情報を記載した目次番号で表現する。
ステップS105で画素値を書き込まない場合(No)、ステップS107では、入力背景画像311の処理対象領域の全画素が処理されたかを判定する。入力背景画像311の処理対象領域の全画素が処理されていない場合はステップS108へ進み、未処理の画素を選択し、再びステップS104〜S106の処理を実行する。又、入力背景画像311の処理対象領域の全画素に対する処理が完了していれば、ステップS109へ進み、地紋画像生成部301における画像処理を終了する。上述した処理により、入力背景画像311に対して、画像処理を加えた地紋画像318が生成できる。
(6)ドット配置方法
次に、本実施例における潜像部と背景部におけるドットの配置方法について更に詳しく説明する。
本実施例では、潜像部をドット集中型ディザマトリクス、背景部をドット分散型ディザマトリクスに基づいて生成する場合について説明する。
潜像部を生成する際に用いるドット集中型ディザマトリクスの代表としては、渦巻型ディザマトリクスが挙げられる。図16は、4×4の渦巻型ディザマトリクスの一例を示す図である。4×4の渦巻型ディザマトリクスの閾値は渦巻状に中心から数値が増加する形で配置されている。
図17は、図16の4×4の渦巻型ディザマトリクスを用いて所定の出力画像信号を閾値処理して得られる閾値パターン(ドット配置)を表す図である。図17において、401、402、403は出力画像信号3、6、9を図16のディザマトリクスでそれぞれ閾値処理して得られる閾値パターンを示している。ここで得られる閾値パターン(ドット配置)は、各々のドットが集中して配置されるパターンとなっている。
一方、背景部を生成する際に用いるドット分散型ディザマトリクスの代表としては、Bayer型ディザマトリクスが挙げられる。図18は、4×4のBayer型ディザマトリクスの一例を示す図である。任意の出力画像信号をBayer型ディザマトリクスでディザ処理を行って生成される閾値パターンは、各々のドットが分散して配置されるように設計されている。
図19は、図18の4×4のBayer型ディザマトリクスを用いて所定の出力画像信号を閾値処理して得られる閾値パターン(ドット配置)を表す図である。図19において、601、602、603は出力画像信号の2、4、5を図18のディザマトリクスでそれぞれ閾値処理して得られる閾値パターンを示している。ここで得られる閾値パターン(ドット配置)は、各々のドットが互いに分散して配置されるパターンとなっている。Bayer型ディザでは、ディザマトリクスのサイズが大きくなるとマトリクスによる周期的なテクスチャ(モアレ)が目立つ場合も存在するが、特定の階調では、周期的で美しいパターンが得られるメリットがある。
本実施例では、背景部に用いるディザマトリクスとして、Bayer型ディザマトリクスを用いる場合を中心に説明するが、Bayer型に限定するものではなく、その他のドット分散型ディザマトリクスを用いても良い。例えば、ブルーノイズマスクも、ドット分散型ディザマトリクスの一例である。これは、任意の階調での閾値パターンが全てブルーノイズ特性(局所的に非周期的、且つ、等方的で低周波成分が少ない)を有し、閾値パターンを形成する画素分布がランダムではあるが一様性が高く、粒状性が目立ちにくい。そのため、モアレ発生を防止し、視覚的に好ましい出力パターンが得られる長所がある。又、閾値パターンを用いる方法ではないが、誤差拡散法を用いた背景部の構成も可能である。誤差拡散法は、処理時間がかかる短所があるが、ドットが均一に分散した視覚特性の良い画像が得られるメリットがある。
又、各階調における閾値パターンは、ディザマトリクスに基づき生成しなくても良い。階調毎に独自に背景閾値パターン、潜像閾値パターンを生成しても良い。この場合、各階調毎に画質の良い閾値パターンを選択することが出来る利点もある。
図20は、潜像閾値パターンと背景閾値パターンの例えば黒画素の面積比率を比較するための図である。図20に示すように、潜像ディザマトリクスの縦と横の大きさをXL、YL、出力画像信号の階調TLとし、背景ディザマトリクスの縦と横の大きさをXS、YS、出力画像信号の階調をTSとする。その時、潜像閾値パターン内の黒画素が占める割合(PL)は、PL=TL/(XL*YL)となり、背景閾値パターン内の黒画素が占める割合(PS)は、PS=TS/(XS*YS)となる。
図21は、出力画像信号をディザマトリクスで閾値処理して得られる閾値パターンの黒画素の面積比率と、閾値パターンを出力した時の濃度との関係を表す図である。尚、ディザ処理では、出力画像信号の階調に従って、黒画素の面積比率が変化するため、図21の横軸を出力画像信号の階調と見ても良い。
ここで、潜像部のディザマトリクス(潜像閾値パターン)と、背景部のディザマトリクス(背景閾値パターン)とが、同一の辺の大きさを持つ必要はなく、異なる大きさであっても良い。例えば、潜像ディザマトリクスと背景ディザマトリクスの階調特性が801に示すような同一の階調特性の場合を考える。この場合、潜像部のディザマトリクスと背景部のディザマトリクスの大きさに関わらず、横軸の値(黒画素の面積比率)がほぼ等しいならば潜像閾値パターンと背景閾値パターンの濃度はほぼ等しくなり、潜像が目立たない地紋画像を生成することができる。ここで、潜像部のディザマトリクスと背景部のディザマトリクスの大きさに関わらず、横軸の値(黒画素の面積比率)がほぼ等しいことは、即ち、PLとPSがほぼ等しくなるような出力画像信号の階調TL、TSの値を用いることに相当する。
しかしながら、実際には、画像形成装置の特性により、潜像ディザマトリクスと背景ディザマトリクスの階調特性が必ずしも同一になるとは限らない。
例えば、潜像ディザマトリクスの階調特性は802に示すような緩やかなS字カーブで、背景ディザマトリクスの階調特性は803に示すような急峻なS字カーブで表されるものとする。このような場合、潜像閾値パターンと背景閾値パターンの黒画素の面積比率をほぼ等しく設定しても、出力時の潜像部と背景部の濃度は同一にはならない。
潜像部又は背景部の一方、又は双方のディザマトリクスに対する出力画像信号を適当に調整することで、できるだけ他方の出力時の濃度に近づけることができる。
又、潜像ディザマトリクス又は背景ディザマトリクスで表現可能な階調の数が大きければ、出力画像信号の階調の調整により、潜像部又は背景部の濃度を細かく調整することができる。
潜像ディザマトリクスが図16に示すようなドット集中型ディザマトリクスの場合、出力画像信号の階調が一定以下となると孤立ドットに近くなり、複写時に潜像部が消失し易くなる。一方、出力画像信号の階調が一定以上になると、ドットが集中して、潜像を構成する固まりのドット自体が人の目にはっきりと認識され易くなる。
従って、潜像ディザマトリクスにおいては、取り得る出力画像信号の階調は一定の範囲に留めておいた方が良い。又、図16に示すような潜像ディザマトリクスにおいては、ディザマトリクスのサイズが変化しても、出力画像信号の階調が同一であれば、ほぼ同一の集中したドット配置が得られる。従って、潜像ディザマトリクスに対する出力画像信号階調を一定に保ち、ディザマトリクスのサイズ(線数)を変化させることで、単位面積あたりの濃度を変えることも可能である。
一方、背景ディザマトリクスが図18に示すようなドット分散型ディザマトリクスの場合、出力画像信号の階調を変化させることで全体的に均一にドットを打ちながら濃度を変化させることができる。従って、背景ディザマトリクスの階調が広い(即ち、ディザマトリクスの大きさが大きい)方が背景部の濃度調整に優れていると言える。
図22は、図11又は図14の処理ブロックを用いて地紋を形成する様子を示す模式図である。図22において、901、902、903はそれぞれ、潜像閾値パターン、背景閾値パターン、潜像背景領域指定画像を示し、904は生成した地紋画像を示す。尚、地紋画像904の生成段階ではカモフラージュ模様は導入されていない。
図22に示す地紋画像904では、丸で囲んだ領域910に示すように、潜像背景領域指定画像903の潜像と背景の切り替わり部分で、潜像閾値パターンと背景閾値パターンとが合体したドットの固まりが生成されている。このドットの固まりは、潜像背景領域指定画像903の潜像と背景との切り替わりと、潜像閾値パターンの大きさとが同期していない時に生じ易い。又、このドットの固まりは、潜像背景領域指定画像903の潜像と背景とが切り替わる部分にのみ集中して現れるため、潜像の概形が目立ち、複写抑止地紋の効果が薄れるデメリットが生じることがある。
従って、高画質の地紋画像を生成するために、潜像背景領域指定画像の潜像と背景との切り替わり部分で、ドットの固まりが生じないようにする処理を行うことが好ましい。
潜像背景領域指定画像の潜像と背景との切り替わり部分で、ドットの固まりが生じないようにする一例として、バウンダリ処理がある。この処理を用いると、画像の端でない限りは、潜像閾値パターンの黒画素の周囲に白地が存在することになる。この白地が緩衝地帯となって、潜像閾値パターンの黒画素と背景閾値パターンの黒画素が接することがなくなり、潜像背景領域指定画像で指定する潜像と背景とが切り替わる部分が目立つことがなくなる。図22の905はバウンダリ処理を行った地紋画像である。905は、潜像と背景との切り替わり部分で潜像閾値パターンと背景閾値パターンとが合体したドットの固まりが生じていないことが分かる。地紋生成部301に上述のバウンダリ処理を追加すると、潜像背景領域指定画像で指定する潜像と背景との切り替わり部分を潜像閾値パターンの大きさと同期させて潜像背景領域指定画像を作成する必要がないため、利用者にとっても使い勝手が良い。
図23は、バウンダリ処理により地紋生成部301で生成された地紋画像の一部を示す図である。図23で示す地紋画像を生成する際には、潜像背景領域指定画像、カモフラージュ領域指定画像は、それぞれ、図12に示す501、502の画像を用い、潜像閾値パターン、背景閾値パターンは、それぞれ図13に示す511、512の画像を用いている。尚、501、502、511、512の画像を囲む破線は画像の境界を示しており、実際の画像には存在しない。図23の地紋画像はバウンダリ処理が施されているため、潜像部と背景部の境界でドットが固まる現象が起きておらず、潜像部が判別しにくくなっている。
次に、上述した地紋生成部301で生成された地紋画像と入力原稿画像(例えば帳票や証明書)を合成する合成部302における処理について更に詳しく説明する。
図24は、入力原稿画像と地紋画像の合成処理を示す模式図である。図24において、521はテキスト属性のデータ、522はグラフィック属性のデータ、523はイメージ属性の地紋画像を表している。
プリンタドライバや画像形成装置のプリンタコントローラに備えられる合成部302では、521〜523の各々の画像を配置する優先順位に従って、ソフトウェア的に重ね合わせる。これにより、図24において524に示すような、テキスト属性のデータ、グラフィック属性のデータ、及びイメージ属性の地紋画像が合成された画像が生成される。
図24に示す例では、イメージ属性の地紋画像523は、テキスト属性のデータ521、グラフィック属性のデータ522と比べて、最下位のレイヤーとして重ね合わされている。例えば、イメージ属性の地紋画像523とテキスト属性のデータ521が重なる位置では、テキスト属性のデータ521を優先して描画する。従って、地紋画像は入力原稿画像の背景に適切に配置され、テキスト属性のデータやグラフィック属性のデータの視認性を低下させることはない。
又、図24に示す例では、地紋画像523は入力画像と同じ大きさの画像となっている。しかし、一部の領域のみ地紋画像を重ね合わせたい場合には、地紋画像生成部301で一部の領域に相当する大きさの入力背景画像を入力し、入力した画像サイズに一致する地紋画像だけを生成し、合成部302で入力原稿画像と合成すれば良い。生成する地紋画像が小さい分だけ、地紋画像生成部301での処理を高速化できる。
又、様々な画像が既に合成されたレイヤー構造を持たない入力原稿画像に対して地紋画像を合成する場合には、例えば、入力原稿画像の特定の画素値領域(例えば白地領域)を検出し、その領域にのみ地紋画像を合成するような構成としても良い。
[地紋画像生成に使用するトナー]
ところで、前述のように、従来の濃度レベルの異なる複数種類のトナー(濃色トナーと淡色トナー)を用いる画像形成装置における実画像(原稿画像)の形成用の色変換テーブルを用いて地紋の形成を行うと、ドットズレによる濃度ムラの問題が発生することがある。
又、濃色トナーと淡色トナーの混合で地紋を形成する場合、濃色トナーのみで地紋を形成する場合と比較して、同じ濃度の地紋画像を形成する際、トナー付着量が多くなる、即ちトナー消費量が多くなるため、ランニングコストが増加する。
本発明の目的の1つは、濃度レベルの異なる複数種類のトナー(濃色トナーと淡色トナー)を用いる画像形成装置において、ドットズレを防止して地紋画像濃度の均一化を向上させると共に、トナー消費量を低減することである。又、本発明の目的の1つは、適正な複写抑止地紋画像を形成することである。
[地紋画像形成制御]
以下、本発明の特徴部分に関する説明をする。
本実施例では、濃色トナーと淡色トナーを用いて画像形成可能な画像形成装置において、上述のようなドットズレ起因による地紋画像濃度ムラを低減する方法、及びトナー消費量を低減する方法として、濃色トナーのみで地紋画像を形成する。
即ち、本実施例では、画像形成装置は、少なくとも1組の同一色相で明度の異なる記録材料のうち、より明度の低い記録材料を用いて画像を形成する濃色画像形成手段と、より明度の高い記録材料を用いて画像を形成する淡色画像形成手段と、を有している。又、本実施例では、画像形成装置は、複写することでコントラスト差が生じて複写を抑制する地紋画像を形成可能である。又、画像形成装置は更に、潜像部と背景部とを含む地紋画像、又は、実画像(原稿画像)を、それぞれの画像情報に従って上記濃色画像形成手段及び/又は淡色画像形成手段によって形成するように制御可能な制御手段を有している。そして、制御手段は、原稿画像の形成時は濃色画像形成手段及び淡色画像形成手段のそれぞれを用いて画像形成し、地紋画像の形成時は濃色画像形成手段のみを用いて画像形成するように制御可能となっている。本発明では、地紋画像である特殊パターン以外の画像を実画像(原稿画像)と呼んでいる。
典型的には、地紋画像は、対象となる複写機による複写後にドットが残り、像として浮かび上がる潜像部と、複写後に上記潜像部のドットが像として浮かび上がる程度に十分にドットが消える背景部と、を含む。そして、複写前には、極力潜像部と背景部とが一見して区別できないように設定される。又、実画像(原稿画像)とは、潜像部と背景部とを含む地紋画像ではない画像情報(複写機であれば複写原稿、プリンタであればコンピュータ上のアプリケーションソフトウェア等で生成される文字やグラフィック画像情報)に従う画像である。典型的には、実画像(原稿画像)と地紋画像とが合成されて出力される。
一実施態様では、潜像部と背景部とを含む地紋画像情報を生成する画像処理手段は、画像形成装置に通信可能に接続されたホスト機器にインストールされたプリンタドライバによって実現される。そして、このプリンタドライバによって生成された地紋画像情報が、画像形成装置の上記制御手段に入力される。又、他の実施形態では、潜像部と背景部とを含む地紋画像情報を生成する画像処理手段は画像形成装置に設けられている。そして、この画像処理手段によって生成された地紋画像情報が、上記制御手段に入力される。この場合、上記画像処理手段と上記制御手段としての機能を有するプリンタコントローラが画像形成装置に設けられていてよい。
即ち、例えば図11の処理ブロックに示すように、プリント時には、地紋画像生成部301、合成部302及び画像データ処理部303を有して構成される画像処理手段は、プリンタドライバ300によって実現される。そして、プリンタドライバ300によって生成された地紋画像情報が、画像形成装置(より詳しくは上記制御手段としてのプリンタコントローラ)304に入力される。又、例えば図14の処理ブロックに示すように、コピー時には、地紋画像生成部301、合成部302及び画像データ処理部303を有して構成される画像処理手段は、画像形成装置(より詳しくは、そのプリンタコントローラ)304に実装される。そして、この画像処理手段によって生成された地紋画像情報が、該プリンタコントローラが兼ねるものであってよい上記制御手段に入力される。
更に説明すると、従来、図1〜図4の濃色トナーと淡色トナーを用いて画像形成可能な画像形成装置において、例えば図8や図9に示すような原稿画像の色変換テーブルを、地紋画像についても用いていた。そのため、地紋画像が濃色トナーと淡色トナーの混合で形成されていた。これにより、濃色トナーと淡色トナーとのそれぞれにより形成されるトナー画像のドットズレ(色ズレ)が発生し、地紋画像濃度が安定しないという問題が発生することがあった。
図25は、濃色トナーと淡色トナーのドットズレを説明するための模式図である。
図25の531は、濃色トナー(例えばBk、黒部)と淡色トナー(例えばLBk、グレー部)の各2ドットが、ドットズレ無しで配置されていることを示す。図25の532は、濃色トナーと淡色トナーの各2ドットが、ドットズレが有る状態で配置されている様子の一例を示す。
図25の531に示す画像の濃度と比較すると、532に示す画像の濃度は、淡色トナーの面積が実質的には小さくなるので、小さくなってしまう。
上述のようなドットズレは、図1、図3のタンデムタイプの画像形成装置で特に顕著である。タンデムタイプの画像形成装置では、複数の画像形成部が配置されているため、画像形成部の位置精度のズレを拾って発生するドットズレがある。又、画像形成するトナー量(原稿画像のトナー量)によって、中間転写ベルト40と感光ドラム1との摩擦係数が変化(トルクが変化)することによって発生するドットズレがある。更に、複数種類のトナーから成るトナー画像を中間転写ベルト40上に重ねて形成する時に発生する画像同期タイミングのズレによって発生するドットズレがある。
図2、図4の1ドラムタイプは、画像形成部(即ち、感光ドラム1)が1つしかないので、上記位置精度に起因するドットズレがタンデムタイプより軽微である利点を有する。しかし、上記摩擦係数起因及び画像同期タイミングに起因するドットズレはタンデムタイプとほぼ同等レベルである。
ここで、上記摩擦係数変化起因のドットズレについて説明する。
感光ドラム1上のトナー量が多い場合(中間転写ベルト40に1次転写するトナー量が多い場合)、感光ドラム1と中間転写ベルト40との間でトナーがスペーサとして働き(スペーサ効果)、摩擦係数が減少し、中間転写ベルト40の回転スピードが速くなる。又、感光ドラム1上のトナー量が少ない場合(中間転写ベルト40に1次転写するトナー量が少ない場合)、感光ドラム1と中間転写ベルト40との間にトナーがスペーサとして働かないので、摩擦係数が増加し、中間転写ベルト40の回転スピードが遅くなる。従って、この中間転写ベルト40の回転スピードの変動により、ドットズレが発生する。
又、上記画像同期タイミング起因のドットズレについて説明する。
複数種類のトナーから成るトナー画像を中間転写ベルト40上に重ね合わせて形成する場合には、画像が同期して重なり合うように、例えば次のような種々のタイプの方法が用いられる。先ず、中間転写ベルト40のスピードを計算してタイミングを取る方法がある。又、中間転写ベルト40上にトナーで基準位置パッチを形成して、このパッチを検知してタイミングを取る方法がある。更に、中間転写ベルト40に基準となる部材を付加して、この部材を検知してタイミングを取る方法がある。しかしながら、どのタイプの方法でも画像同期タイミングの振れや公差を持つため、重ね合わせの画像同期タイミングのズレが発生し、この画像同期タイミングのズレに起因するドットズレが発生する。
本実施例に従って濃色トナーのみで地紋画像を形成する場合には、上述のドットズレが発生することがないので、ドットズレ起因の地紋画像濃度ムラが発生することは無い。
又、前述では、黒色の地紋画像におけるドットズレに関して説明したが、フルカラー地紋画像においても、濃色トナーのみを用いることで、ドットズレを減少することができる。
例えば、赤色の地紋画像を生成する場合、イエローとマゼンタを混色させるので、従来は、イエロー(Y)、ライトイエロー(LY)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(LM)の4色を混合させる場合が有る。この場合、ドットズレ起因の地紋画像濃度ムラ、さらには地紋画像色味ムラが大きかった。
この場合においても、濃色トナーのみを用いることで、YとMの2色のみを用いて地紋画像を形成するので、ドットズレ起因の地紋画像濃度ムラ、さらには地紋画像色味ムラを減少させることができた。
又、図26は、同じ濃度に設定した、濃色トナードット541と淡色トナードット542を示す。
図7の出力画像信号(面積)と濃度の関係から、図26の濃色トナードット541の2ドットと、図26の淡色トナードット542の4ドットは、ほぼ同等の濃度である。
従って、同じ濃度の地紋画像を形成する場合、濃色トナーで地紋画像を形成するよりも、淡色トナーで地紋画像を形成する方が、地紋画像のドットが大きくなる。即ち、濃色トナーで地紋画像を形成するよりも、淡色トナーで地紋画像を形成する方が、トナー消費量が多くなり、ランニングコストの増大に繋がる。
本実施例に従って濃色トナーのみで地紋画像を形成する場合には、トナー消費量を低減して、ランニングコストの増大を防止することができる。
このように、本実施例によれば、濃色トナーのみで地紋画像を形成することにより、ドットズレを防止して地紋画像濃度ムラを低減し、又、トナー消費量を低減してランニングコストを低減することができる。
次に、濃色トナーのみで地紋画像形成を行う方法をより具体的に説明する。
従来、図8又は図9の原稿画像用の色変換テーブルを地紋画像にも用いていたため、地紋画像濃度によっては、濃色トナーと淡色トナーの2種類のトナーで地紋画像を形成していた。これに対して、本実施例では、図8又は図9の原稿画像の色変換テーブルとは異なる、例えば図10に示す地紋画像用の色変換テーブルを用いる。
図10は、濃色トナーのみを用いる場合の色変換テーブルの一例である。本実施例の地紋画像形成時には、この色変換テーブルを用いることによって、濃色トナーのみで地紋画像が形成される。又、図10に示す色変換テーブルは、入力画像信号=出力画像信号となっているため、色変換テーブルを省くことも可能である。この場合、地紋画像形成処理速度が向上する利点がある。地紋画像形成時のトナー消費量は、図8の色変換テーブルを用いる場合と比較すると、図10の色変換テーブルを用いることにより、最大半分に低減することができる。
このように、本実施例では、実画像(原稿画像)形成時と地紋画像形成時とにおいて、異なる色変換テーブルを使用する。地紋画像形成時において、実画像(原稿画像)形成時と異なる濃色トナーのみを使用するような色変換テーブルを用いることにより、濃色トナーのみで地紋画像を形成することができる。
図27は、地紋画像の潜像部用に設計した色変換テーブルの一例である。図27の色変換テーブルでは、所定値以下の入力画像信号に対して出力画像信号が所定値で一定となり、入力画像信号の低下に伴って出力画像信号が低下しないように設定されている。
図27に示す色変換テーブルによれば、潜像部が所定濃度以下にならないように、下限濃度を設定することが可能なので、複写時に潜像部が消失することがないように設定することが可能となる利点がある。
図28は、地紋画像の背景部用に設計した色変換テーブルの一例である。図28の色変換テーブルでは、所定値以上の入力画像信号に対して出力画像信号が所定値で一定となり、入力画像信号の増大に伴って出力画像信号が増大しないように設定されている。
図28に示す色変換テーブルによれば、背景部が所定濃度以上にならないように、上限濃度を設定することが可能なので、複写時に背景部が残存することがないように設定することが可能となる利点がある。
従って、図28の色変換テーブルを地紋画像の背景部の色変換テーブルとし、図27の色変換テーブルを地紋画像の潜像部の色変換テーブルとするように、地紋画像の背景部と潜像部とで、色変換テーブルを異なるように設定しても良い。
このように、地紋画像形成時において、地紋画像の潜像部と背景部とで、異なる色変換テーブルを使用することができる。これにより、地紋画像の潜像部及び背景部に対し、濃度上下限に制限を設ける等、各々の特性に応じた色変換テーブルを用いることにより、より適正な地紋画像を形成することができる。
実際に、図1〜図4の画像形成装置において、図10の色変換テーブルを用いて、濃色トナーのみで地紋画像形成を行ったところ、ドットズレ起因の地紋画像濃度ムラは発生しなかった。又、図10の色変換テーブルを用いて、濃色トナーのみで地紋画像形成を行ったところ、トナー消費量が低減し、ランニングコストを減少させ得ることが分かった。
以上、本実施例によれば、濃色トナーと淡色トナーを用いて画像形成可能な画像形成装置において、地紋画像形成時は、濃色トナーのみを用いる。これにより、ドットズレ起因の地紋画像濃度ムラを防止することが可能となり、均一濃度の複写抑止地紋画像を形成することができる。又、本実施例によれば、トナー消費量を低減させてランニングコストを減少させることができる。即ち、本実施例によれば、濃度レベルの異なる複数種類のトナーを用いる画像形成装置において、地紋画像濃度の均一化を向上させ、トナー消費量を低減し、適正な複写抑止画像である地紋画像を形成することができる。
実施例2
次に、図29及び図30を参照して本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例は、実施例1にて説明したものと同じ基本構成を有する画像形成装置に適用することができる。
先ず、従来の地紋濃度調整(地紋濃度キャリブレーション)に関して説明する。
複写機やプリンタ等の画像形成装置を用いて実際に地紋画像を形成する場合、様々な原因により、必ずしも潜像部と背景部が意図した通りの濃度で出力されるとは限らない。
理由としては、例えば、次のものを挙げることができる。即ち、画像形成装置のエンジン特性や閾値パターンを出力するディザマトリクスの違い、装置の固体差、温度や湿度等の印刷環境、エンジンの耐久性、用紙(メディア)の違い、装置が用いるトナーの違い等、様々な条件に依存した濃度不安定性である。即ち、潜像部と背景部のディザマトリクスのそれぞれに対する最適な入力階調は、画像形成装置の機種、ディザマトリクス、画像形成装置の固体、印刷環境、用紙、トナー等に依存して異なる可能性がある。
そのため、画像形成装置のエンジン特性や印刷環境が異なる場合においても、出力時にほぼ等しい濃度となる潜像閾値パターン、背景閾値パターンを得た上で、地紋画像を生成することが好ましい。しかしながら、印刷環境による変動を含む全ての変動要因を考慮し、最適な潜像閾値パターン、背景閾値パターンを自動的に計算することは現実的に難しい。
従って、地紋画像を出力する前に、画像形成装置毎に潜像部と背景部の濃度がほぼ同一になる潜像閾値パターンと背景閾値パターンを得る機能、即ち、地紋濃度キャリブレーション機能を実装することが好ましい。
この地紋濃度キャリブレーション機能を実装する方法としては、潜像ディザマトリクス、背景ディザマトリクスの一方又は双方に対する出力画像信号の階調を変化させて、濃度がほぼ等しくなるように調整する方法が考えられる。
図29は、潜像閾値パターン、及び複数の出力画像信号の階調に対して、ディザマトリクスで閾値処理して得られる背景閾値パターンを示す図である。図29において、551は、一辺10画素の潜像ディザマトリクスに対して、階調6を入力して得られる潜像閾値パターンであり、黒画素の面積比率は6%となっている。
一方、図29において、552〜554は、一辺16画素の背景ディザマトリクスに対して、それぞれ諧調12、16、20を入力して得られる背景閾値パターンであり、それぞれ黒画素の面積比率は4.69%、6.25%、7.81%となっている。仮に背景ディザマトリクスが4×4画素であり、4×4画素の背景ディザマトリクスに対して出力画像信号の階調を変化させて濃度調整を行ったとする。この場合、黒画素の面積比率は4×4+1=17段階のレンジしか持たず、約6%ステップの階調変化しか与えられないため、微妙な濃度調整ができない。
しかしながら、図29の552〜554に示すように、表現可能な階調数が多いディザマトリクスから出力される背景閾値パターンは、出力画像信号の階調の選択によって、細かく濃度が調整可能であり、濃度キャリブレーションには適している。
次に、従来の地紋濃度キャリブレーション機能を実現するための地紋濃度試し刷りの概要について説明する。
地紋濃度試し刷りは、プリンタドライバや画像形成装置に実装することが可能である。
例えば、図30は、潜像部と背景部の濃度を変えたパッチを2次元的に配置した試し刷りシートの一例である。各々のパッチは、潜像部と背景部とを含む構成となっており、カモフラージュを含んでも良い。図30の各々のパッチは、中心部が潜像部、周辺部が背景部を示す。潜像部と背景部を指定する潜像背景領域指定画像は四角としているが、必ずしも四角に限定するものではなく、「無効」等の文字であっても良いし、潜像部と背景部とを別のパッチとして隣合わせて並べる等、視覚的に判定し易いように配置されていれば良い。
図30の試し刷りシートでは、用紙の縦方向に対して背景部の濃度を変化させている。背景部の濃度を変化させる方法としては、例えば、背景ディザマトリクスのサイズが16×16画素の場合、図29の552〜554の背景閾値パターンのように、背景ディザマトリクスに対する出力画像信号の階調を変化させる方法がある。例えば、背景ディザマトリクスの出力画像信号の階調を4ずつ変化させることで、閾値パターンの黒画素の面積比率は、約1.5%ずつ変化する。
又、図30の試し刷りシートでは、用紙の横方向に対して潜像部の濃度を変化させている。潜像部の濃度を変化させる方法としては、例えば、潜像ディザマトリクスのサイズを変化させる方法がある。例えば、潜像ディザマトリクスのサイズが10×10画素の場合、出力画像信号の階調を9として閾値パターンを生成すると、黒画素の面積比率は9%となる。又、潜像ディザマトリクスのサイズが12×12画素の場合、出力画像信号の階調を9として閾値パターンを生成すると、黒画素の面積比率は6.25%となる。又、潜像ディザマトリクスのサイズが14×14画素の場合、出力画像信号の階調を9として閾値パターンを生成すると、黒画素の面積比率は約4.6%となる。
又、潜像部の濃度を変化させる別の方法として、潜像ディザマトリクスのサイズを固定とし、潜像ディザマトリクスに対する出力画像信号の階調を変化させる方法がある。例えば、潜像ディザマトリクスの大きさを10×10で固定とし、出力画像信号の階調を6、9、12と変化させることで、閾値パターンの黒画素の面積比率は、それぞれ6%、9%、12%となる。
但し、複写後に潜像部のドットが消えてしまう程度にドットが小さくなり、複写してもドットが残るという潜像部に対する必要条件を満たさなくなることがないように、潜像ディザマトリクスに対する出力画像信号の階調は、一定以上とする必要がある。
又、潜像部の濃度を変化させる別の方法として、潜像ディザマトリクスのサイズと、潜像ディザマトリクスに対する出力画像信号の階調の双方を変化させて、潜像閾値パターンを生成し、濃度を変化させても良い。
画像形成装置により出力した図30の試し刷りシート画像により、潜像部と背景部の濃度がほぼ等しい調整値と、図30の試し刷りシートを画像形成装置により複写(コピー)した複写シート画像により、潜像部が残り、背景部が消失する調整値を選択する。そして、ユーザが最適調整値を画像形成装置又はプリンタドライバに入力して、地紋濃度キャリブレーションが終了する。
本実施例は、地紋濃度キャリブレーション機能を持ち、且つ、濃色トナーと淡色トナーを用いて画像形成可能な画像形成装置において、濃色トナーのみで地紋画像を形成する。これにより、地紋画像濃度ムラを防止し、且つ、地紋濃度キャリブレーション処理を迅速、適切に行うことができる。
例えば、地紋濃度キャリブレーションを行うために、従来の図8又は図9の色変換テーブルにおいて入力画像信号を変化させることにより出力画像信号を変化させる場合を考える。この場合、淡色トナーのみで地紋画像形成を行う場合と、濃色トナーと淡色トナーの混合で地紋画像形成を行う場合とが混在する。特に、濃色トナーと淡色トナーの混合で地紋画像形成を行う場合には、実施例1で説明したドットズレ起因の地紋画像濃度ムラが発生することがある。
又、例えば図7に示すような、濃色トナーと淡色トナーの濃度関係にある場合、淡色トナー用画像データに対しては、階調性を高めるために2画素PWMを行い、記録単位を大きくする。一方、濃色トナー用画像データに対しては、解像力を重視することから1画素PWMを行う。又、ディザマトリクスを用いる場合には、濃色トナー1画素分の濃度を出力するために、淡色トナー2画素を出力するような処理を行う。
従って、濃色トナーと淡色トナーの混合で地紋画像形成を行う場合には、次のような問題が発生することがある。即ち、地紋画像の入力画像信号を変化させて出力画像信号を変化させた時に、濃色トナードットと淡色トナードットが固まって偏在した場合、モアレの問題や、地紋画像ドットが2重に見える問題が発生する。そのため、濃色トナードットと淡色トナードットが分散して配置するように配置処理が必要となる。従って、例えば図16の潜像ディザマトリクス、及び図18の背景ディザマトリクスをそのまま使用できず、濃色トナードットと淡色トナードットの配置処理が必要となる。従って、地紋画像の潜像部及び背景部のドット配置が複雑化して地紋画像生成処理に時間を要する問題が発生することがある。
そこで、本実施例では、実施例1と同様に、濃色トナーのみで地紋画像を形成することにより、ドットズレ起因の地紋画像濃度ムラを防止する。しかも、地紋濃度キャリブレーション処理を、例えば図16及び図18のディザマトリクスと、図10、図27又は図28に示すような色変換テーブルを用いて入力画像信号を変化させて出力画像信号を変化させることで、地紋濃度を調整するようにする。これにより、トナードットの配置処理が不要となり、地紋画像生成処理に要する時間を、従来の濃色トナーのみの画像形成装置とほぼ同等程度に短縮することができる。
このように、本実施例によれば、画像形成装置は、地紋画像の潜像部と背景部の各々のドット大きさ又はドット量を変化させて、地紋画像濃度の調整を行えるようになっている。即ち、本実施例では、地紋画像の濃度調整機構を具備した画像形成装置において、濃色トナーのみで地紋画像を形成する。これにより、ドットズレを防止して地紋画像濃度ムラを低減し、且つ、濃色トナーと淡色トナーのドット配置処理が不要なため、地紋画像形成処理速度を向上させることができる。
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、例えば、上述のディザマトリクス、色変換テーブル等の諸数値は、説明を簡略化するための一例であって、これらの諸数値は、画像形成装置の構成及び設定等に応じて任意に定めることができる。
又、上記実施例では、地紋画像は常に濃色トナーのみを用いて形成するものとして説明した。これにより、上述のような作用効果を奏し得るので極めて有利である。しかし、所望により、画像形成装置が、地紋画像を濃色トナーのみを用いて形成するモード、地紋画像を濃色トナーと淡色トナーとを用いて形成するモードなど、複数のモードを有していてよい。この場合、上述の制御手段は、入力されるモード選択指示に応じて、地紋画像形成に用いる色変換テーブル、実画像(原稿画像)形成に用いる変換テーブルを適宜選択するなどして、地紋画像部、実画像部の画像をそれぞれ形成することができる。モード選択信号は、画像形成装置に設けられた操作部又は画像形成装置に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器の操作部を介して入力される。
又、本発明は、上記各実施例で説明した画像形成装置に限定されるものではなく、各実施例を任意に組合せる等、他の形態の画像形成装置にも適用できる。