JP4984037B2 - 石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブおよび不織布 - Google Patents
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Description
従って、カード機によって繊維を開繊ウェブ化した後、繊維同士を水流交絡法により交絡させる(乾式スパンレース不織布)またはバインダーを用いて接着させる(ケミカルボンド不織布)または繊維を熱融着させる(サーマルボンド不織布)方法で作られた不織布は乾式不織布に分類される。
dT(デシテックス)は繊維の太さを表す単位で、繊維10,000mあたりのグラム重量を現す単位である。dTが大きいほど太い繊維になる。石英ガラス繊維はその特殊性から通常のmm、あるいはμm単位による表記を用いている。
半導体素子の高速化、および通信機器、放送機器の高速大容量伝送の要求が急速に高まってきており、プリント配線基板の高周波特性の改善が求められてきていることから、特に周波数が1GHzを超える高周波回路用プリント配線基板においては、より低損失なDガラスやNEガラスクロスが使用されてきている。(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
更に、ガラスの中でも特に誘電率および誘電損失の小さな石英ガラスクロスを用いたプリント配線基板も開発されてきている(例えば特許文献3および特許文献4参照)。
この石英ガラスクロスは、電気特性は極めて良好であるものの、非常に高価であるために、その使用が一部の高周波回路に限定されてしまうという問題に加え、石英ガラス繊維が非常に硬い為、ドリルでの穿孔性が悪くなる欠点がある。
そこで、より価格の安く、加工性もよい石英ガラス不織布をプリント配線基板用のクロスとして用いるという試みもなされている(特許文献5参照)。
しかしながら、石英ガラス不織布はクロスに比べて織り込まれていない為に構造的に不均一で、目付(または密度)や厚さにむらが生じやすく、このむらによって、樹脂と複合する際に樹脂の流れ込みが不均一になったり、基板内に扁平な泡が発生したり、プリント配線基板とした後にも厚さのばらつきや電気特性、特に1GHz以上の高周波におけるインピーダンスのばらつきが大きくなってしまうという問題がある。
特に、上記特許文献5に記載されたメルトブロー法による石英ガラス不織布の製造においてはガラス溶液を吹き飛ばして形成する為に一本一本の繊維の径や長さがばらつき、また、一本の繊維内においても先端部は細く、中央部で太いという形状的な特徴が避けられないため、目付や厚さを一定にすることが難しく、均一な電気特性を持った不織布を作成する事が難しいことが判った。
さらに、できあがったプリント配線基板の厚さを薄くしたり、基板の耐久性を向上させるために、種々研究を行ったところ、上記のようなファクターは、上記不織布の目付が大きく関係していることが知見され、しかもその値の範囲が特定されることが必要であることが判明した。
(1)周波数が1GHz以上の高周波回路を形成するプリント配線基板に用いられる石英ガラス繊維含有不織布を製造するための石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブであって、石英ガラス長繊維を切断することにより得られた直径1μm以上、20μm以下の石英ガラス繊維、および熱融着性繊維によって構成され、かつ目付が5g/m2以上、70g/m2以下であり、前記熱融着性繊維は、1MHzの高周波に対する比誘電率ε’が2.5以下で、誘電損失tanδが3×10−3以下であり、繊維径が0.5dT以上10dT以下であり、繊維全体における配合割合が5質量%以上、90質量%以下であることを特徴とする石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブ。
(2)前記熱融着性繊維がポリオレフィン系合成繊維である上記(1)に記載の石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブ。
(3)石英ガラス繊維の直径が1μm以上、20μm以下で繊維径のばらつきが±10%以内の範囲にあり、長さが10mm以上、500mm以下で所定の長さに揃えられており、カード機により開繊されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブ。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載された石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブを水流交絡法により交絡させることにより得られ、目付が5g/m2以上、70g/m2以下であり、周波数が1GHz以上の高周波回路を形成するプリント配線基板に用いられる石英ガラス繊維含有不織布。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載された石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブを加熱することにより、石英ガラス繊維を熱融着性繊維で熱融着することにより得られ、目付が5g/m2以上、70g/m2以下である石英ガラス繊維含有不織布。
(6)上記(1)〜(3)のいずれかに記載された石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブを水流交絡法により交絡させ、さらに加熱することにより、石英ガラス繊維を熱融着性繊維で熱融着して得られ、目付が5g/m2以上、70g/m2以下である石英ガラス繊維含有不織布。
(7)厚さ30μm以上、200μm以下である上記(4)〜(6)のいずれかに記載の石英ガラス繊維含有不織布。
(8)目付のばらつきが±20%以内である上記(4)〜(7)のいずれかに記載の石英ガラス繊維含有不織布。
(9)厚さのばらつきが±20%以内である上記(4)〜(8)のいずれかに記載の石英ガラス繊維含有不織布。
(10)10GHzの高周波に対する比誘電率ε’が3.8以下で、誘電損失tanδが3.5×10−3である上記(4)〜(9)のいずれかに記載の石英ガラス繊維含有不織布。
(11)縦方向の引張強度がJIS L−1913「一般短繊維不織布試験方法」によって、10N以上である上記(4)〜(10)のいずれかに記載の石英ガラス繊維含有不織布。
石英ガラス繊維の直径が上記範囲未満であると、繊維径のばらつきを抑制することが困難になると同時に繊維を作成する際の歩留まりが低下する。上記範囲を超えると、得られる石英ガラス不織布の厚さを、例えば100μm以下に薄くすることが困難になる。径のばらつきが±10%を超えると、カード機で開繊してウェブを形成する際、歩留まりが悪くなると同時に得られた不織布の目付、厚さ、電気特性におけるばらつきが大きくなり易い。繊維長が、上記範囲未満であると、得られた不織布の強度が低下しやすくなり、また不織布とする際の歩留まりが悪くなりやすい。また、上記範囲を超えると、カード機によるウェブ形成が困難なものとなったり、ウェブが形成されたとしても得られた不織布の地合いが悪くなり、また、目付、厚さ、電気特性のばらつきが大きくなり易い。ここで、地合いとは、不織布を目視した場合の均質性を表す。
長繊維を経由することにより石英ガラス繊維の繊維径を、上記の範囲内で任意に設定することが可能で、かつその径ばらつきを上記の範囲内に抑制することが可能となる。また、上記のような方法によって延伸された石英ガラス長繊維は、真直ぐでねじれ等がないために、得られた石英ガラス繊維の特にカード特性が良好で、収率良く密度むらの少ないウェブを形成できる。
更に、石英ガラス長繊維の線引きの際、炉の下端と巻き取り機の中間地点でサイジング材を塗布することが可能となり、メルトブロー法では非常に困難であったサイジング材の塗布が可能となり、この結果、繊維の強度が増し、後工程である特にカード機による開繊が容易になるという特徴も併せて有する。
用いることのできる熱融着性合成繊維としては、ポリオレフィン系合成繊維、ダイワボウ製ポリプロPN、NBF(E)等が挙げられる。これらポリオレフィン系合成繊維の1MHzにおける比誘電率ε’は2.3、誘電損失tanδは3.0×10−4程度である。
以上のような特性を有する石英ガラス繊維および熱融着性繊維を混繊して得られた混繊繊維群を用いて、カード方式、エアレイド方式、その他類する方式により石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブを得る。カード機としては、石英ガラス繊維の長さと径を上記したように揃えることによって従来の合成繊維不織布製造に用いられる乾式カード機を用いることができるようになった。なお、従来の合成繊維不織布を製造する場合と同様に、乾式カード機の設定を変えることにより、カードウェブにおける目付、厚さ、地合いを必要に応じて変化させることが出来る。
上記目付は、10g/m2以上、40g/m2以下が好ましく、さらには15g/m2以上30g/m2以下が好ましい。前記熱融着性合成繊維は、繊維全体における配合割合が5質量%以上、90質量%であることが好ましい。配合割合が、上記の範囲未満であると、石英ガラス繊維同士を完全に接着できないために得られた不織布において十分な強度が得られず、一方、上記の範囲を超えると電気特性が低下するとともに、石英ガラス繊維の数が少ないために強度が上がらない。熱融着性合成繊維の上記配合割合は、10質量%〜60質量%が好ましく、特に15質量%〜50質量%が好ましい。発明者らの実験によれば、配合割合が10質量%〜60質量%の間では、その範囲未満、その範囲を超える配合割合のものに比べて誘電率および誘電損失が低下した結果となった。したがって、誘電率、誘電損失の特性のみを考えると、配合割合は、10質量%〜60質量%が好ましい。
まず、カード機による開繊の前に、上記した特性の石英ガラス繊維と熱融着性合成繊維の混合体(以下、原綿と称することがある)を解きほぐし均一に混繊する。この工程により、後のカード機によるカード適性が向上する。なお、本混合体は、石英ガラス繊維単独のものよりカード適性が良好であるという特徴もある。この工程においても石英ガラス繊維の繊維径が一定でなかったり、また石英ガラス繊維が捻じれていたり折れ曲がっていると、石英ガラス繊維同士が絡み合ってしまい、均一な解きほぐしや熱融着繊維との均一な混合を行う事が困難になる。更に、石英ガラス繊維の長さが、長すぎる場合、後述するビーターロール内で繊維自体がちぎれたり、絡まったりする為に好ましくない。
オープナー10は、原綿を解きほぐし、均一に混繊するためのビーターロール12、コンベア14から送られてきた原綿mをビーターロール12内に所定量ずつ投入する第1フィードロール16を備えている。ビーターロール12は、表面に五寸釘程度の針が無数に飛び出たロールで、その回転速度は800〜1,000rpm程度である。ビーターロール12の下流側には、ビーターロール12で解きほぐされて繊維同士が均一に混繊した原綿小片を次工程である開繊工程に送るための送風機18が設けられている。
原綿のビーターロール12への投入量は、上記第1フィードロール16の回転速度によって調整され、その速度は0〜5m/分程度である。投入された原綿は、高速回転するビーターロール12により細かい原綿の小片にちぎられ、送風機18により、開繊工程に送られる。
開繊工程は、図2に示すような、原綿を充填するホッパーフィーダ22付きカード機20によって行われる。オープナー10によって解きほぐされた原綿は、送風機18により送風されホッパーフィーダ22に充填される。
カード機20は、原綿の開繊を行うためのシリンダーロール24aおよびワーカーロール24bを備えており、このシリンダーロール24aの上流側には、このシリンダーロール24aに原綿を供給するための第2フィードロール26が配置されている。
ホッパーフィーダ22には気圧検知器(図示せず)が設置されており、ホッパーフィーダ22内の気圧が常時測定されている。オープナー10の第1フィードロール16は、この気圧検知器によりその作動が制御されるようになっており、ホッパーフィーダ22内の気圧の変化により、ホッパーフィーダ22に充填される原綿の量が調整される。すなわち、ホッパーフィーダ内の気圧は2,000〜2,500mmAqに設定されており、原綿がカード機に送られることにより、ホッパーフィーダ内の気圧が2,000mmAq以下になると第1フィードロール16が起動して原綿が充填される。ホッパーフィーダ内の気圧が2,500mmAq以上になると第1フィードロール16が停止して、原綿の送りが止められる。これにより、第2フィードロール26までに投入される原綿のカード機20の流れ方向の量を一定にする。これにより、得られるカードウェブwの縦方向(カード機20の流れ方向に沿う方向)の目付のばらつきを極力抑える。
また、上記ホッパーフィーダ22の入口部には、図3に示したように左右方向(カード機の横方向/カード機の流れの方向と直交する方向)に揺動するノズル30が設けられており、これによりホッパーフィーダ22に供給される原綿の小片の横方向の量が一定にされて、原綿が、ホッパーフィーダ22内の横方向に均一に充填される。これにより、得られるカードウェブの縦方向(カード機20の流れ方向に沿う方向)の目付のばらつきを極力抑える。以上により、得られるカードウェブは、目付が縦横の両方向で均一である。
上記シリンダーロール24aの下流側には、ドッファーロール32、コンデンスロール34およびコンベア36が配置されている。上記ドッファーロール32は、高速で回転するシリンダーロール24a上のウェブを低速回転で受け止め、ウェブの目付を大きくするものである。コンデンスロール34は、ドッファーロール32より更に低速で回転して、ドッファーロール32上のウェブを受け止め、ウェブの形を整えるとともに、ウェブの送り出しをコンベア36の移送速度にあわせる。また、ドッファーロール32、コンデンスロール34は、ウェブの受け渡しを繰り返すことにより、繊維の配列をパラレルからセミランダムにする作用も行う。作製されたカードウェブは、図示しない巻取りドラムにより巻き取られる。
カードウェブの作製方法は、従来の方法と同様であってよいので、これ以上の詳細な説明は省略する。
上述したように、目付が上記の範囲未満であると、繊維密度が小さすぎて均一な不織布を得ることが極めて困難になるし、厚さもプリント配線基板用石英ガラス不織布として好ましい30μmより薄くなってしまう。更に、プリント配線基板用石英ガラス不織布として必要である、強度10N以上を得ることが難しくなる。逆に目付が上記の範囲を超えると、厚さが厚くなりやすく、プリント配線基板用石英ガラス繊維不織布として好ましい厚さである200μmを超えてしまう。また、目付の均一性も悪くなる傾向がある。
本不織布の目付と厚さのばらつきが上記の値を超えると、比誘電率と誘電損失のばらつきを上記の値以下に設定することが困難になる傾向がある。
本不織布は、周波数が1GHz以上の高周波回路を形成するプリント配線基板に好適に用いられる。
本不織布は、上記した乾式短繊維ウェブを水流交絡法(ウオーターパンチ方式)により交絡させることにより得られるか、加熱することにより、石英ガラス繊維を熱融着性繊維で熱融着する(サーマルボンド法)ことにより得られる。また、本不織布は、上記の乾式短繊維ウェブを水流交絡法により交絡させ、さらに加熱することにより、石英ガラス繊維を熱融着性繊維で熱融着して得られる。
水流交絡法はウォータージェット機という装置を用いて、乾式短繊維ウェブを構成する繊維同士を水流によって交絡する方法である。水流の圧力を調整することにより繊維同士の交絡の程度を抑制することが可能である。処理速度が非常に速いことから、近年、一般有機繊維を用いた不織布製造には多く用いられるが、石英ガラス繊維に応用するのは本件が始めてである。
サーマルボンド法は、上記乾式短繊維ウェブ(上記水流交絡法で処理したものも含む)を熱融着させることにより、不織布を形成する方法である。熱融着性を有する合成繊維の熱融着方法としては、従来の不織布製造装置に用いられる乾燥機、加熱機を用いる方法および熱プレスロールを用いる方法がある。熱プレスロールを用いる熱融着方法においては、プレスロールの間隙を調整することにより、厚さがより均一でかつ厚さの薄い石英ガラス不織布を製造することが可能である。サーマルボンド法における加熱温度は配合する熱融着性を有する合成繊維の溶融特性に応じて適宜設定される。例えばポリオレフィン系熱融着繊維を用いる場合には、およそ130〜140℃に設定される。
上下に穴の開いた縦型の管状電気炉の上部に直径5mmの合成石英ガラスロッドを200本セットした。炉温度が2000℃以上に加熱されている事を確認した後、これらロッドを炉内をゆっくりと下降(送り)させ、熔融した端部を縦型管状電気炉下部から高速で連続的に引き出し、ボビンにて200本同時に巻き取った。合成石英ガラスロッドの送り速度と、石英ガラス長繊維の巻き取り速度を種々調整して種々の径の石英ガラス長繊維を作成した。表1に本実施例で作成した繊維径の平均値と最大値、最小値、及び送り速度と巻き取り速度を示す。形成された長繊維の長さは、10,000mであった。
なお、巻き取る際に、サイジング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 信越化学工業製KBM−503)の1質量%酢酸水溶液にローラーを介して塗布した。
即ち、繊維径の最大値をdmax、最小値をdmin、平均値をdaveとした場合、繊維径のばらつきは、以下の式で表される。
ばらつき(正)=(dmax−dave)/dave × 100
ばらつき(負)=(dmin−dave)/dave × 100
従って、平均径3.0μmの場合の繊維径のばらつきは±3.3%、平均径6.0μmの場合の繊維径のばらつきは±1.7%、そして平均径9.0μmの場合の繊維径のばらつきは±1.1%である。従って、全ての径の繊維が、本発明の範囲であるばらつき±10%を満たしている。
なお、繊維径1μm未満の石英ガラス長繊維も作成したが、径の均一性を維持することが難しくなる上、繊維が極端に切れ易かった。繊維径が1μmより細い超極細繊維は歩留まりが悪く製造に適さない。
一方、繊維径が20μmを超える太径繊維は、製造的にも容易でまた繊維径の均質性も良好であるが、不織布とした際の厚さが厚くなり、また目付も大きくなり易く、目付及び厚さをそれぞれ70g/m2以下、200μm以下にするためには好ましくない。
得られた合成石英ガラス長繊維の束を、方向を揃えて、長さ30mm、100mm、300mmにセラミクス製の刃を取り付けた裁断機を用いて裁断し、それぞれの長さの石英ガラス繊維群を作成した。
本例では、熱融着性を有するオレフィン系合成繊維、具体的には芯鞘構造を有する熱融着性繊維であるダイワボウ製NBF(E)の繊維束、及び、単一組成構造の熱融着性繊維ダイワボウ製ポリプロPNを用いた。前者のダイワボウ製NBF(E)は、1MHzの高周波に対する比誘電率ε’は2.3、誘電損失tanδは3.0×10−4であり、後者のダイワボウ製ポリプロPNは、1MHzの高周波に対する比誘電率ε’は2.4、誘電損失tanδは3.0×10−4である。
ダイワボウ製NBF(E)の場合、繊維長は38mm〜64mmのものが市販されているので、その中から用いる石英ガラス繊維の長さに最も近いものを使用した。
また、繊維径は2.2〜4.4dTのものが市販されているので、その中から用いる石英ガラス繊維の長さに最も近いものを使用した。
[カードウェブの作成]
繊維径が6μmの石英ガラス繊維群の内、長さが100mmの繊維、および繊維径2.2dT、長さ64mmのダイワボウ製芯鞘型合成繊維NBF(E)を、混合比を3種類に変えて図に示したようにオープナー及びホッパーフィーダーを用いて混繊し、更に目付を、10g/m2、30g/m2、60g/m2に変えて別個にカード機(大和機工株式会社製造
サンプルローラカード30−300DR)にかけて開繊して、3種類のカードウェブを作成した。
混合比は石英ガラス繊維90質量%、合成繊維10質量%、石英ガラス繊維70質量%、合成繊維30質量%、石英ガラス繊維40質量%、合成繊維60質量%の3種類で行った。
実施例1−1〜1-3:繊維径6μm、繊維長100mm、石英ガラス繊維対合成繊維9:1、目付10g/m2、30g/m2、60g/m2、
実施例1-4〜1-6:繊維径6μm、繊維長100mm、石英ガラス繊維対合成繊維7:3、目付10g/m2、30g/m2、60g/m2、
実施例1−7〜1−9:繊維径6μm、繊維長100mm、石英ガラス繊維対合成繊維4:6、目付10g/m2、30g/m2、60g/m2
目付は、投入する繊維束の重量を予め測定し、それをカード機にて開繊して得られるカードウェブの面積を測定して設定した。カード機の開繊条件が一定であれば、投入量に拘らず、得られるカードウェブの面積はほぼ一定となるので、開繊条件とカードウェブの面積の関係を求めた後、設定した目付に対応する重量の繊維束を投入することで目付の設定をした。
開繊条件は、原料投入速度8g/分(原料投入コンベア速度3m/分)、シリンダーロール速度600m/分、高速ワーカーロール速度600m/分、低速ワーカーロール速度8m/分、巻取りドラム速度3m/分で行ったが、これらの条件設定は、得られたカードウェブの地合いを見ながら、良好な地合いが得られるように駆動部の速度を調整して行い、投入する繊維の径、長さ、気温、湿度によって細かな調整が必要である。実際には上記のように基本条件を設定し、出来てきたカードウェブの地合いを目視で観察しながら、各速度を微調整した。このようにして、石英ガラス繊維を含むカードウェブを作成した。
得られたカードウェブを平型熱プレスにかけて熱プレスした。熱プレス条件は加圧加重2kgf/cm2、温度130℃にて2分間である。熱プレス後、清浄雰囲気下、室温にて放置、放冷し、石英ガラス繊維を含むサーマルボンド不織布を作成した。
得られた不織布を40cm×25cmに裁断し、裁断したシートの四隅近傍および中央から、更に5cm×5cmの小サンプルを5枚切り出して、その重量を1枚毎に測定することにより、目付及び厚さを測定した。また、それらの数値から各々平均値、最大値、最小値を求め、目付及び厚さのばらつきを求めた。
実施例における不織布の目付及び厚さ、ならびにそれらのばらつきを他の実施例と併せて表2に示した。目付は各シートの重量を測定し求めた。また、厚さはJIS P8118「紙及び板紙―厚さ及び密度の試験方法」に準じて53.9kPa(550gf/cm2)で測定した。
目付及び厚さの測定に用いた上記5枚の小サンプルを用いて実施例における不織布の電気特性をJIS R1641に準じて12GHzの周波数で比誘電率及び誘電損失(tanδ)を1枚につき1箇所毎測定した。また、それらの数値から各々平均値、最大値、最小値を求め、比誘電率及び誘電損失のばらつきを求めた。評価結果を他の実施例と併せて表3(誘電率)および表4(誘電損失)に示す。
また、得られたサーマルボンド不織布から、幅5cm、長さ20cmのサンプルを任意の場所から5枚切り出し、1枚毎に引張強度の測定を行った。また、それら5つの数値から平均値、最大値、最小値を求め、引張強度のばらつきを求めた。引張強度の評価はJIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて試験片幅5cm、つかみ間隔20cm、引張速度100mm/分にて行った。
各例における不織布の物理強度(引張強度)及びそのばらつきを表5に示す。
水流交絡法+サーマルボンドの実施例
実施例1で作成した9種類の石英ガラス繊維を含むカードウェブを、水流交絡法により石英ガラス乾式スパンレース不織布を作成した。
水流交絡法は、カードウェブを50メッシュのプラスチックネットからなる搬送ベルト上に供給し、搬送ベルトを約7m/分で走行させ、搬送ベルトの走行経路に配置されたウォーター・ジェット処理装置(川之江造機株式会社製造 水圧力 最高160kg/cm2)で、高圧液体柱状流による交絡処理を行った。
ウォーター・ジェット処理装置は、ノズル細孔を孔径0.08〜0.1mm、間隔0.6〜1.0mmで横一列に配設させたものを、搬送ベルトの走行方向に対して水平に3列で設置し、ウォーター・ジェット処理装置のノズル細孔とカードウェブの表面との距離を2cmに設置し、三列の水流噴射機から水圧1.0〜5.0MPaで水流を噴射させた。
上記の方法で交絡させたシートをスルードライヤー方式の乾燥機を用い、120℃で1分間乾燥させ、石英ガラス繊維を含む乾式スパンレース不織布を形成した。
得られた石英ガラス繊維を含むスパンレース不織布についても、実施例1と同様の条件にて熱プレスを行い、サーマルボンド・スパンレース不織布とした。
[評価]
実施例1と同様にして、目付および厚さ、ならびにそれらのばらつき、比誘電率及び誘電損失(tanδ)、ならびにそれらのばらつき、物理強度(引張強度)及びそのばらつきを求めた。結果を表2〜5に示した。
繊維径3μm、長さ30mmの石英ガラス繊維と繊維径2.2dT、長さ38mmの熱融着性を有するポリオレフィン系単一組成構造の熱融着性繊維ダイワボウ製ポリプロPNを用い、混合比で石英ガラス繊維対合成繊維を7:3、目付30g/m2で、実施例1と同じ要領で混繊、カード機にて開繊して、カードウェブを作製した。
開繊条件は、原料投入速度8g/分(原料投入コンベア速度3m/分)、シリンダーロール速度400m/分、高速ワーカーロール速度400m/分、低速ワーカーロール速度5.3m/分、巻取りドラム速度2.0m/分で行った。
このカードウェブを実施例1と同様にして熱プレスすることで石英ガラス繊維を含むサーマルボンド不織布を作成した。
実施例3の不織布についても実施例1、2と同様の評価を行った。結果を表2〜5に併せて示す。
繊維径9μm、長さ300mmの石英ガラス繊維と繊維径4.4dT、長さ68mmの熱融着性を有するポリオレフィン系単一組成構造の熱融着性繊維ダイワボウ製ポリプロPNを用い、混合比で石英ガラス繊維対合成繊維を7:3、目付30g/m2で、実施例1と同じ要領で混繊、カード機にて開繊し、カードウェブを作製した。
開繊条件は、原料投入速度8g/分(原料投入コンベア速度3m/分)、シリンダーロール速度700m/分、高速ワーカーロール速度700m/分、低速ワーカーロール速度8.2m/分、巻取りドラム速度3.5m/分で行った。
このカードウェブ不織布を実施例1と同様に熱プレスすることで石英ガラス繊維を含むサーマルボンド不織布を作成した。
実施例4の不織布についても実施例1、2と同様の評価を行った。結果を表2〜5に併せて示す。
直径0.3mmの石英ガラスロッドを線速度1.8m/分で回転する原料供給ローラーにより酸水素バーナーの火炎中に導入すると共に、その上方からエアーサクションにより吸引して排気する。この時、酸水素バーナーのガス圧力は酸素8kg/cm2、水素2kg/cm2とした。繊維径が約6μmになるように吹き飛ばされた石英ガラス短繊維を金網にて回収して繊維の長さ及び繊維径のばらつきを測定した。その結果、石英ガラス繊維の長さの平均値は1.2m、最小値は0.5m、最大値は2.0mであり、繊維径の平均値は6.0μm、最小値は3μm、最大値は8.5μmであった。
この短繊維を実施例と同様の要領で長さをおよそ100mmに切断し、繊維径2.2dT、長さ64mmのダイワボウ製芯鞘型合成繊維NBF(E)を、混合比で石英ガラス繊維90質量%、NBFを10質量%に設定して、カード機にて開繊したカードウェブとした後、目付けを30g/m2に設定して、水流交絡法により石英ガラス不織布とした。
この際、カード特性があまり良好ではなく、投入重量のおよそ40%がきれいに開繊することが出来ず、だまになってしまい、除外された。歩留まりが悪かったので、特性については測定しなかった。
繊維径6μm、長さ100mmの石英ガラス繊維および繊維径2.2dT、長さ64mmのダイワボウ製芯鞘型合成繊維NBF(E)を、混合比で石英ガラス繊維70質量%、NBFを30質量%に設定して混繊して、目付をそれぞれ3g/m2および100g/m2に設定して実施例1と同様の条件にて開繊して、カードウェブを作成した。
得られた石英ガラス繊維を含有するカードウェブ不織布を実施例と同様の条件で熱プレスして石英ガラス繊維を含むサーマルボンド不織布を作成した。
他の例と同様の評価を行い、結果を表2〜5に併せて示す。
繊維径6μm、長さ100mmの石英ガラス繊維および繊維径2.2dT、長さ64mmのダイワボウ製芯鞘型合成繊維NBF(E)を、混合比で石英ガラス繊維3質量%、NBFを97質量%に設定して混繊して、目付を30g/m2に設定して実施例1と同様の条件にて開繊して、カードウェブを作成した。
得られた石英ガラス繊維を含有するカードウェブ不織布を実施例と同様の条件で熱プレスして石英ガラス繊維を含むサーマルボンド不織布を作成した。
他の例と同様の評価を行い、結果を表2〜5に併せて示す。
繊維径6μm、長さ100mmの石英ガラス繊維を、目付30g/m2に設定し、熱融着繊維との混繊はせずに、石英ガラス繊維のみで、実施例1と同じ条件で、カード機にて開繊した。
開繊条件は、原料投入速度8g/分(原料投入コンベア速度3m/分)、シリンダーロール速度600m/分、高速ワーカーロール速度600m/分、低速ワーカーロール速度8m/分、巻取りドラム速度3m/分で行った。
但し、熱融着性繊維を含有していないので、熱プレスは行わず不織布とした。
他の例と同様の評価を行い、結果を表2〜5に併せて示す。
w カードウェブ
10 オープナー
12 ビーターロール
14 コンベア
16 第1フィードロール
18 送風機
20 カード機
22 ホッパーフィーダ
24a シリンダーロール
24b ワーカーロール
26 第2フィードロール
30 ノズル
32 ドッファーロール
34 コンデンスロール
36 コンベア
Claims (11)
- 周波数が1GHz以上の高周波回路を形成するプリント配線基板に用いられる石英ガラス繊維含有不織布を製造するための石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブであって、石英ガラス長繊維を切断することにより得られた直径1μm以上、20μm以下の石英ガラス繊維、および熱融着性繊維によって構成され、かつ目付が5g/m2以上、70g/m2以下であり、前記熱融着性繊維は、1MHzの高周波に対する比誘電率ε’が2.5以下で、誘電損失tanδが3×10−3以下であり、繊維径が0.5dT以上10dT以下であり、繊維全体における配合割合が5質量%以上、90質量%以下であることを特徴とする石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブ。
- 前記熱融着性繊維がポリオレフィン系合成繊維である請求項1に記載の石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブ。
- 石英ガラス繊維の直径が1μm以上、20μm以下で繊維径のばらつきが±10%以内の範囲にあり、長さが10mm以上、500mm以下で所定の長さに揃えられており、カード機により開繊されていることを特徴とする請求項1または2に記載の石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブ。
- 請求項1〜3のいずれかに記載された石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブを水流交絡法により交絡させることにより得られ、目付が5g/m2以上、70g/m2以下であり、周波数が1GHz以上の高周波回路を形成するプリント配線基板に用いられる石英ガラス繊維含有不織布。
- 請求項1〜3のいずれかに記載された石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブを加熱することにより、石英ガラス繊維を熱融着性繊維で熱融着することにより得られ、目付が5g/m2以上、70g/m2以下である石英ガラス繊維含有不織布。
- 請求項1〜3のいずれかに記載された石英ガラス繊維含有乾式短繊維ウェブを水流交絡法により交絡させ、さらに加熱することにより、石英ガラス繊維を熱融着性繊維で熱融着して得られ、目付が5g/m2以上、70g/m2以下である石英ガラス繊維含有不織布。
- 厚さ30μm以上、200μm以下である請求項4〜6のいずれかに記載の石英ガラス繊維含有不織布。
- 目付のばらつきが±20%以内である請求項4〜7のいずれかに記載の石英ガラス繊維含有不織布。
- 厚さのばらつきが±20%以内である請求項4〜8のいずれかに記載の石英ガラス繊維含有不織布。
- 10GHzの高周波に対する比誘電率ε’が3.8以下で、誘電損失tanδが3.5×10−3である請求項4〜9のいずれかに記載の石英ガラス繊維含有不織布。
- 縦方向の引張強度がJIS L−1913「一般短繊維不織布試験方法」によって、10N以上である請求項4〜10のいずれかに記載の石英ガラス繊維含有不織布。
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