ところで、上記従来の接点装置における可動接点及び固定接点は、一般的な接点材料(例えば、金、ニッケル、銅、クロムなどの合金)で形成されていたが、アーマチュアブロックとボディ及びカバーとの陽極接合時に加熱(通常は400℃以上)されることで、最表面以下の金属が最表面に析出するため、両接点の接触面が酸化してしまい、電気抵抗が増大してしまうという問題があった。さらに、接点材料にAu−Co合金を使用している場合、電気抵抗の増大に伴ってコバルトが接点表面に析出して酸化膜(絶縁性皮膜)を形成し、しかも、上述のような接点装置では接点圧が元々低いために接点表面に形成された絶縁性皮膜を突き破ることが困難であるから、接触信頼性が低下するという問題もあった。一方、接点開閉を重ねると接点同士が固着(スティッキング)する虞があった。
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、製造時や使用時に高温環境に置かれても接点の電気抵抗の増大を抑えるとともに接点同士が固着することを防ぐことができる接点構造及びそれを用いた接点装置並びにマイクロリレーを提供することを目的とする。
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、ガラス又はシリコン又はセラミック等の剛性及び絶縁性の高い剛体から成る基板に形成される第1の接点と、ガラス又はシリコン又はセラミック等の剛性及び絶縁性の高い剛体から成る基板に形成されて第1の接点と接離する第2の接点とを有する接点構造であって、第1の接点並びに第2の接点の少なくとも何れか一方は、相手方との接触面を含む最表層がイリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウムの何れかの金属、又はこれらの金属のうち少なくとも1つを含む合金で形成され、最表層と基板との間に介装されてイリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウムの何れかの金属、又はこれらの金属のうち少なくとも1つを含む合金の何れかであって最表層を形成する金属材料以外の金属材料で形成される第1の中間層と、第1の中間層と基板との間に介装されて銀、ニッケル、金、又は当該3種類の金属のうち少なくとも2種類を含む合金、銅、パラジウム、ルテニウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、Au−Pd合金、Pd−Ni合金、Ni−B合金、Ni−P合金の何れかで形成される第2の中間層とを有することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、第2の中間層と基板との間に介装されてクロム又はチタン又はタングステン又はタンタルの何れかの金属で形成される第1の密着層を有することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、最表層と第1の中間層との間に介装されて金又は銀又はニッケルの何れかの金属で形成される第2の密着層を有することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2の発明において、第2の中間層と第1の密着層との間に介装されて金又は銀又はパラジウムの何れかの金属で形成される保護層を有することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1項の発明において、最表層の厚みが0.01マイクロメートル乃至5マイクロメートルの範囲であることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の接点構造と、第1又は第2の接点の少なくとも何れか一方の接点を他方の接点に接離させる接点開閉機構とを備えたことを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の接点構造を有し、シリコン又はガラスの何れか一方で形成されて電磁石装置を備えたボディと、シリコン又はガラスの何れか一方で形成されるカバーと、シリコンで形成されて表面に磁性体が備えられることでアーマチュアを構成する可動基台部及び可動基台部の全周を包囲してアーマチュアを揺動自在に支持するフレーム部を一体に備えたアーマチュアブロックと、アーマチュアの揺動により第1の接点である固定接点と第2の接点である可動接点とが接離する接点機構とを備え、フレーム部がその全周に亘ってボディの周縁部とカバーの周縁部とに固着することでボディとカバーとアーマチュアブロックとで密閉空間が構成されるとともに、該密閉空間内にアーマチュア及び接点機構が収納されることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7の発明において、電磁石装置は、通電した時に発生する磁界の磁路を形成するヨークを備え、ボディは、その厚み方向における両面に貫通するように形成された貫通孔を有し、ボディの厚み方向の一面側に貫通孔を閉じる薄膜が設けられるとともにボディの前記他面側にヨークを収納する収納部が形成され、薄膜は、シリコン又はガラスの何れか一方で形成され、ボディに固着することで密閉空間と収納部とを隔てることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項7の発明において、ボディは、その厚み方向における両面を貫通して外部基板に実装した際に外部基板の回路と固定接点との配線経路となるスルーホールと、スルーホールの開口を閉塞する閉塞手段とを備えたことを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項9の発明において、ボディの厚み方向における外部基板に実装される側の面に設けられるバンプであることを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項7の発明において、可動基台部は、その厚み寸法がフレーム部の厚み寸法よりも小さく、フレーム部のボディとの対向面に対して可動基台部のボディとの対向面がボディと反対側に凹むように可動基台部がフレーム部に保持されることを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項7の発明において、可動基台部は、弾性変形可能な支持ばね部によってフレーム部に支持され、支持ばね部は、一端が可動基台部に連続一体に連結されるとともに他端がフレーム部に連続一体に連結され、前記一端と他端との間の部位はフレーム部と同一平面において蛇行した形状に形成されたことを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項12の発明において、支持ばね部は、略U字状に湾曲した部位を少なくとも1つ以上含むことを特徴とする。
請求項14の発明は、請求項7の発明において、可動基台部及びボディの対向する面のうち何れか一方に支点突起が形成され、可動基台部は、支点突起の頂点を支点として揺動動作することを特徴とする。
請求項15の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の接点構造を有し、一方の面に第1の接点である固定接点が設けられた基板と、磁性体から成り第2の接点である可動接点が設けられ弾性復帰した状態では可動接点が固定接点から離間するように基板に対して保持され可動接点を固定接点に接触導通させるように弾性変形可能なアーマチュアと、磁性体から成り基板に保持されたヨークと、可動接点と固定接点との離接を切り替えるようにアーマチュアを駆動する磁界を発生させるようにヨークを励磁するコイルと、ヨーク上への磁性体の堆積によって形成されアーマチュアに対し可動接点を固定接点に接触させる方向に作用する向きの磁界を発生させるように着磁された永久磁石とを備えることを特徴とする。
請求項16の発明は、請求項15の発明において、基板は複数枚のセラミックスシートが積層されてなり、コイルは、基板を構成するセラミックスシート間に設けられた導電パターンで構成されていることを特徴とする。
請求項17の発明は、請求項15又は16の発明において、基板に固着されてアーマチュアと固定接点とをそれぞれ覆うカバーを備えることを特徴とする。
請求項18の発明は、請求項17の発明において、カバーは、基板に対向するカバー基板と、カバー基板に保持されてアーマチュアを挟んでヨークの反対側に位置するカバーヨークと、可動接点を固定接点から引き離す方向にアーマチュアを駆動する磁界を発生させるようにカバーヨークを励磁するカバーコイルとを有することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、最表層をイリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウムの何れかの金属、又はこれらの金属のうち少なくとも1つを含む合金で形成することで、陽極接合時などの製造時や使用時の高温環境を経た後でも高い硬度が維持できるため、接点同士の固着及び接点の接離に伴う金属の転移を防ぐことができる。さらに、酸化され難いために酸化膜が形成されず、したがって電気抵抗の増大による導通不良を防止することができる。また、イリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウムの何れかの金属、又はこれらの金属のうち少なくとも1つを含む合金の何れかであって最表層を形成する金属材料以外の金属材料で形成される第一の中間層を有することで、第二の中間層が最表面へ拡散することを防止、あるいは、逆に最表層を形成する金属材料が拡散するのを防止することができる。更に、銀、ニッケル、金、又は当該3種類の金属のうち少なくとも2種類を含む合金、銅、パラジウム、ルテニウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、Au−Pd合金、Pd−Ni合金、Ni−B合金、Ni−P合金の何れかで形成される第二の中間層を有することで、接点の厚み方向の寸法を大きくすることができる。
請求項2の発明によれば、クロム又はチタン又はタングステン又はタンタルの何れかの金属で形成される第一の密着層を有することで、第二の中間層と基板との間の密着性を高めることができる。
請求項3の発明によれば、金又は銀又はニッケルの何れかの金属で形成される第二の密着層を有することで、最表層と第一の中間層との間の密着性を高めることができる。
請求項4の発明によれば、金又は銀又はパラジウムの何れかの金属で形成される保護層を有することで、第一の密着層よりも表面側における各層を積層する工程が実施されるまでの間、第一の密着層の表面を覆うことで第一の密着層の酸化及び硫化を防ぐことができる。
請求項5の発明によれば、最表層の厚みを0.01マイクロメートル乃至5マイクロメートルの範囲にしたので、第一の中間層の性質が反映されることなく、また第一の中間層と剥離するのを防ぐことができる。
請求項6の発明によれば、請求項1乃至5の何れか1項の発明の効果を奏する接点装置を実現することができる。
請求項7の発明によれば、ボディとカバーとがフレーム部に固着されているので、ボディとカバーとをシール剤を用いて封止することなく、アーマチュア及び接点機構を密閉空間内に収納することができる。また、ボディとフレーム部、及びカバーとフレーム部との固着はシリコンとガラス、又はシリコン同士の接合となるので、既知の接合方法を用いて容易に接合することができる。更に、シリコンやガラスの加工に半導体微細加工技術を用いることで、容易に小型化することができる。
請求項8の発明によれば、収納部と密閉空間とが薄膜のみで隔てられているため、収納部に収納されたヨークと密閉空間内に収納されたアーマチュアとの磁気ギャップを小さくすることができ、密閉空間の気密性を保ったまま電磁石機構の吸引力を大きくすることができる。また、薄膜の厚さを調節することで、吸引力を調節することができる。
請求項9の発明によれば、スルーホールを介して外部基板の回路と固定接点との電気的接続を容易に行うことができ、また、閉塞手段を設けることで密閉空間内の気密性を保つことができる。
請求項10の発明によれば、スルーホールを閉塞するとともに外部基板にフリップチップ接合を用いてマイクロリレーを実装することができる。
請求項11の発明によれば、ボディとフレーム部とを接合するだけでアーマチュアが揺動自在に収納される空間を確保することができる。
請求項12の発明によれば、限られたフレーム部内側の空間において支持ばねを長く形成することができ、アーマチュアが揺動する際に支持ばねが捩られることで生じるばね力のばね定数を小さくすることができるとともに、支持ばねに加えられる応力を分散することができる。
請求項13の発明によれば、支持ばねを効率的に長く形成することができる。
請求項14の発明によれば、アーマチュアが支点突起を介してボディにも支持されるので、安定して揺動動作をすることができる。また、支点突起がアーマチュアとボディとの間に設けられるので、電磁石装置の吸引力が強くてアーマチュア全体がボディに吸着されて揺動しなくなるのを防ぐことができる。
請求項15の発明によれば、永久磁石が堆積によって形成されていることにより、永久磁石を接着によって形成する場合に比べて製造コストの低減が可能となる。
請求項16の発明によれば、基板が複数枚のセラミックスシートが積層されて成ることにより、比較的良好な高周波特性が得られる。また、基板を構成するセラミックスシート間にコイルが設けられていることにより、コイルを基板の外に形成する場合に比べ、コイルの巻数の増加や小型化が可能となる。
請求項17の発明によれば、カバーによってアーマチュアや固定接点が保護される。
請求項18の発明によれば、可動接点を固定接点から引き離す方向にコイルに通電する際にカバーコイルにも通電することにより、スティッキングを抑制することができる。
(実施形態1)
初めに、本発明の接点構造を用いたマイクロリレーの実施形態1について図2〜図6を参照して説明し、その後に本発明の接点構造の実施形態について図1を参照して説明する。本実施形態は、シリコン基板をマイクロマシニング技術により加工して形成されるアーマチュア30、アーマチュア30により変位可能な可動接点39、可動接点39と接離する固定接点14を、ボディ1とカバー4とアーマチュアブロック3で構成される密閉空間に収納し、電磁石装置2の電磁力でアーマチュア30を駆動するようにしたものである。ボディ1は矩形板状のガラス基板からなり、厚み方向の一面側において長手方向の両端部それぞれに各一対の固定接点14が設けられている。アーマチュアブロック3は、ボディ1の上記一表面側に固着される枠状(矩形枠状)のフレーム部31と、フレーム部31の内側に配置されて4本の支持ばね部32を介してフレーム部31に揺動自在に支持され、電磁石装置2が発生する電磁力により駆動されるアーマチュア30と、アーマチュア30にそれぞれ2本の接圧ばね部35を介して支持されそれぞれ可動接点39が設けられた2つの可動接点基台部34とを有する。また、カバー4は矩形板状のガラス基板からなり、アーマチュアブロック3におけるボディ1とは反対側で周部がフレーム部31に固着される。
電磁石装置2はヨーク20に巻回されたコイル22,22への励磁電流に応じて磁束を発生するものである。ヨーク20は、2つのコイル22,22が直接巻回される細長の矩形板状のコイル巻回部20aと、コイル巻回部20aの長手方向の両端部それぞれからアーマチュア30に近づく向きに延設されコイル22,22への励磁電流に応じて互いの先端面が異極に励磁される一対の脚片20b,20bと、ヨーク20の両脚片20b,20bの間でコイル巻回部20aの長手方向の中央部に重ねて配置された矩形板状の永久磁石21と、細長の矩形板状であってヨーク20のコイル巻回部20aにおける永久磁石21との対向面とは反対側でコイル巻回部20aと直交するようにコイル巻回部20aに固着されるプリント基板23とを備えている。尚、ヨーク20は、電磁軟鉄などの鉄板を曲げ加工あるいは鋳造加工することにより形成されており、両脚片20b,20bの断面が矩形状に形成されている。
永久磁石21は、コイル巻回部20aとの重ね方向(厚み方向)の両面それぞれの磁極面が異極に着磁されており、一方の磁極面がヨーク20のコイル巻回部20aに当接し、他方の磁極面がヨーク20の両脚片20b,20bの先端面と同一平面上に位置するように厚み寸法を設定してある。
また、各コイル22,22はそれぞれ、永久磁石21とヨーク20の脚片20b,20bとによって長軸方向(つまり、コイル巻回部20aの長手方向)への移動が規制される。プリント基板23は、絶縁基板23aの一表面における長手方向の両端部に導電パターン23bが形成されており、各導電パターン23bにおいて円形状に形成された部位が外部接続用電極を構成し、矩形状に形成された部位がコイル接続部を構成している。ここにおいて、コイル接続部には、コイル22,22の端末が接続されるが、コイル22,22は、外部接続用電極間に電源を接続してコイル22,22へ励磁電流を流したときにヨーク20の両脚片20b,20bの先端面が互いに異なる磁極となるように接続されている。尚、各導電パターン23bにおける外部接続用電極には、導電性材料(例えば、Au,Ag,Cu,半田など)からなるバンプ24が適宜固着されるが、バンプ24を固着する代わりに、ボンディングワイヤをボンディングしてもよい。
ボディ1は耐熱ガラスにより形成されており、外周形状が矩形状であって、中央部には厚み方向に貫通し電磁石装置2を収納する貫通孔16が貫設され、四隅の各近傍と長手方向両端部の中央付近には厚み方向に貫通するスルーホール10が貫設されている。また、ボディ1の厚み方向の両面であって各スルーホール10それぞれの周縁にはランド12が形成されている。ここに、ボディ1の厚み方向において重なるランド12同士はスルーホール10の内周面を導電性材料(例えば、Cu,Cr,Ti,Pt,Co,Ni,Au,あるいはこれらの合金など)でめっきしてなるめっき層10aにより電気的に接続されている。また、ボディ1の厚み方向の他表面側の各ランド12にはバンプ13が適宜固着されており、バンプ13をランド12に固着することによって、ボディ1の上記他表面側ではスルーホール10の開口面がバンプ13により覆われる。スルーホール10の開口面は円形状であって、ボディ1の上記一表面には、それぞれスルーホール10の開口面を閉塞する導電パターン18が設けられている。
また、上述の各一対の固定接点14は、ボディ1の長手方向の両端部においてボディ1の短手方向に離間して形成された2つのスルーホール10の間で上記短手方向に並設されており、上記短手方向両端のスルーホール10の周縁に形成されたランド12と導電パターン18を介して電気的に接続されている。而して、スルーホール10は、ボディ1の上記他表面側を外部基板(図示せず)に実装した際に、外部基板の回路(図示せず)と固定接点14との配線経路となる。さらに、ボディ1の長手方向両端部における固定接点14の近傍には、上記短手方向に沿った幅細形状であって中央のスルーホール10の周縁に形成されたランド12と接続された接地用導電パターン18’が設けられており、中央のスルーホール10も接地用導電パターン18’によって閉塞されている。
また、貫通孔16の開口面は十字状であって、ボディ1の上記一表面側には、貫通孔16を閉塞するシリコン薄膜からなる蓋体17が固着されている。すなわち、電磁石装置2は、ヨーク20の両脚片20b,20bの各先端面が蓋体17と対向する形で貫通孔16に挿入される。尚、本実施形態では、貫通孔16の内周面と蓋体17とで囲まれる空間が電磁石装置2を収納する収納部を構成しており、電磁石装置2は、永久磁石21がボディ1の厚み寸法内でアーマチュア30とヨーク20とにより形成される磁路中に設けられ、プリント基板23における絶縁基板23aの表面がボディ1の上記他表面と略面一となっている。
アーマチュアブロック3は、シリコン基板からなる半導体基板を半導体微細加工プロセスにより加工することによって、上述の矩形枠状のフレーム部31と、上述の4本の支持ばね部32と、フレーム部31の内側に配置されアーマチュア30の一部を構成する矩形板状の可動基台部30aと、上述の4本の接圧ばね部35と、上述の2つの可動接点基台部34とを形成してあり、可動基台部30aと、可動基台部30aにおけるボディ1との対向面に固着された磁性体(例えば、軟鉄、電磁ステンレス、パーマロイなど)からなる矩形板状の磁性体部30bとでアーマチュア30を構成している。したがって、アーマチュア30が4本の支持ばね部32を介してフレーム部31に揺動自在に支持されている。尚、可動基台部30aはフレーム部31よりも薄肉であり、アーマチュア30の厚み寸法は、アーマチュアブロック3とボディ1とを固着した状態においてアーマチュア30の磁性体部30bと蓋体17との間に所定のギャップが形成されるように設定されている。
上述の支持ばね32は、可動基台部30aの短手方向の両側面側で可動基台部30aの長手方向に離間して2箇所に形成されている。各支持ばね部32は、一端部がフレーム部31に連続一体に連結され他端部が可動基台部30aに連続一体に連結されている。尚、各支持ばね部32は、平面形状において上記一端部と上記他端部との間の部位を同一面内で、略U字状に湾曲しながら蛇行した形状に形成することにより長さ寸法を長くしてあり、アーマチュア30が揺動する際に各支持ばね部32にかかる応力を分散させることができ、各支持ばね部32が破損するのを防止することができる。
また、可動基台部30aは、短手方向の両側縁の中央部から矩形状の突片36が連続一体に延設され、フレーム部31の内周面において突片36に対応する部位からも矩形状の突片37が連続一体に延設されている。即ち、可動基台部30aから延設された突片36とフレーム部31から延設された突片37とは互いの先端面同士が対向している。ここに、可動基台部30aから延設された各突片36の先端面には凸部36aが形成されており、フレーム部31から延設された各突片37の先端面には、凸部36aが入り込む凹部37aが形成されている。したがって、凸部36aが凹部37aの内周面に当接することでフレーム部31の厚み方向に直交する面内におけるアーマチュア30の移動が規制される。尚、アーマチュア30の同一の側縁側に配設される2つの支持ばね部32は、突片36の両側に位置している。
また各突片36におけるボディ1との対向面には支点突起40がそれぞれ突設されており、これら一対の支点突起40を設けることでアーマチュア30の揺動動作をより安定させることができる。尚、ボディ1に当接する支点突起40の先端部には、摩耗や割れあるいは欠けなどを低減するために、金属薄膜からなる保護膜41が形成されている。
また、アーマチュアブロック3は、アーマチュア30の長手方向においてアーマチュア30の両端部とフレーム部31との間にそれぞれ可動接点基台部34が配置されており、各可動接点基台部34におけるボディ1との対向面に導電性材料からなる可動接点39が固着されている。ここに、可動接点基台部34は上述の2本の接圧ばね部35を介して可動基台部30aに支持されている。尚、可動基台部30aは上述のように矩形板状に形成されており、磁性体部30bの変位量を制限するストッパ部33が四隅それぞれから連続一体に延設されており、接圧ばね部35の平面形状は、ストッパ部33の外周縁の3辺に沿ったコ字状に形成されている。このストッパ部33は、ボディ1の上記一表面と接触することにより磁性体部30bの変位量を制限する。尚、アーマチュアブロック3は、上述の説明から分かるように、フレーム部31、可動基台部30a、支持ばね部32、可動接点基台部34、接圧ばね部35が上述の半導体基板の一部により構成されている。また、カバー4は耐熱ガラスにより構成されており、アーマチュアブロック3との対向面にアーマチュア30の揺動空間を確保する凹所(図示せず)が形成されている。
次に、本実施形態のリレーの製造方法について簡単に説明する。
本実施形態のリレーの製造にあたっては、半導体基板たるシリコン基板をリソグラフィ技術、エッチング技術などの半導体微細加工プロセス(マイクロマシニング技術)により加工してフレーム部31、支持ばね部32、接圧ばね部35、可動接点基台部34、アーマチュア30の一部を構成する可動基台部30aを形成した後で可動基台部30aにおいてボディ1側となる一面に磁性体からなる磁性体部30bを固着し且つ可動接点基台部34に可動接点39を固着することでアーマチュアブロック3を形成するアーマチュアブロック形成工程と、アーマチュアブロック形成工程にて形成したアーマチュアブロック3とボディ1及びカバー4を陽極接合により固着することでボディ1とカバー4とアーマチュアブロック3のフレーム部31とで囲まれる空間を密封する密封工程と、密封工程の後でボディ1に収納部に電磁石装置2を収納してボディ1に固定する電磁石装置配設工程とを備えている。
ここにおいて、ボディ1の形成にあたっては、ボディ1となるガラス基板において収納部に対応する部位に厚み方向に貫通する貫通孔16を形成するとともにガラス基板の四隅近傍並びに長手方向両端部の中央に厚み方向に貫通するスルーホール10を形成した後、ボディ1の一表面側に導電材料を部分的にめっきすることでランド12、固定接点14、導電パターン18,18’、めっき層10aを一体に形成してから、上記ガラス基板において固定接点14を設けた側の表面に貫通孔16を覆う薄膜(例えば、シリコン薄膜、ガラス薄膜など)を固着し、当該薄膜をパターニングすることによって貫通孔16の開口面を閉塞する蓋体17を形成すればよい。尚、貫通孔16はエッチング法やサンドブラスト法などにより形成すればよい。
また、カバー4の形成にあたっては、カバー4となるガラス基板においてエッチング法やサンドブラスト法などにより凹所を形成すればよい。そして、アーマチュアブロック3のフレーム部31にボディ1及びカバー4を陽極接合することでボディ1とカバー4とフレーム部31とで構成される空間を密閉すれば、本実施形態のリレーが完成する。
以下、本実施形態のリレーの動作について説明する。
本実施形態のリレーでは、コイル22,22への通電が行われると、磁化の向きに応じて磁性体部30bの長手方向の一端部がヨーク20の一方の脚片20bに吸引されてアーマチュア30が揺動しアーマチュア30の一端側の可動接点基台部34に固着された可動接点39が対向する一対の固定接点14,14に所定の接点圧で接触する。この状態で通電を停止しても、永久磁石21の発生する磁束により、吸引力が維持され、そのままの状態が保持される。
また、コイル22,22への通電方向を逆向きにすると、アーマチュア30の磁性体部30bがヨーク20の他方の脚片20bに吸引されてアーマチュア30が揺動しアーマチュア30の他端側の可動接点基台部34に保持された可動接点39が対向する一対の固定接点14,14に所定の接点圧で接触する。この状態で通電を停止しても、永久磁石21の発生する磁束により、吸引力が維持され、そのままの状態が保持される。
次に、本発明の接点構造の実施形態について図1を参照して説明する。但し、図1では第1の接点である固定接点14のみ図示して、第2の接点である可動接点39の図示は省略し、以下では固定接点14の構造についてのみ説明する。固定接点14は、図1に示すように、固定接点14の先端部であって可動接点39の先端部と接離する最表層14aと、最表層14aとガラス基板(ボディ1)との間に介装される第1の中間層14bと、第1の中間層14bとガラス基板との間に介装される第2の中間層14cと、第2の中間層14cとガラス基板との間に介装される第1の密着層14dと、最表層14aと第1の中間層14bとの間に介装される第2の密着層14eと、第2の中間層14cと第1の密着層14dとの間に介装される保護層14fとを積層した多層構造を有している。
ここで、リレーに用いられる一般的な接点の構造は、例えば、接触面から順に金、ニッケル、銅、クロムの各金属を積層したような構造となっているが、既に説明したように本発明に係るリレーでは、アーマチュアブロック3のフレーム部31にカバー4を陽極接合する際にリフロー炉の温度(およそ200℃)よりも十分に高い高温環境(例えば、400℃)に長時間(例えば、1時間)晒されることから、加熱によって各金属が拡散し且つ酸化され、接触面から順に酸化ニッケル−酸化銅−金の合金、銅−金の合金、銅−クロムの合金を積層したような構造となり、接点の電気抵抗が増大するとともに硬度が低下して導通不良や接点同士の固着(スティッキング)、並びに接点の接離に伴う金属の転移などの不具合が生じる虞がある。
そこで本発明者らは、製造プロセスや使用状態で高温環境に長時間晒された場合でも電気抵抗の増大による導通不良や固着などが起こらない接点材料を種々検討し、固定接点14の最表層14aをイリジウム又はオスミウム又はロジウム又はルテニウム又は白金又はパラジウムの何れかの金属若しくはこれらの金属のうち少なくとも1つを含む合金で形成すれば、上述の導通不良やスティッキングなどの不具合の発生が防止できることを見出した。即ち、接触面を含む最表層14aを相対的に硬い金属であるイリジウム又はオスミウム又はロジウム又はルテニウム又は白金又はパラジウムの何れかの金属若しくはこれらの金属のうち少なくとも1つを含む合金で形成することによってスティッキングが防止でき、しかも上記の金属材料は酸化し難いために酸化膜(絶縁性皮膜)が形成されず、電気抵抗の増大による導通不良が防止できる。
尚、最表層14aの厚みが薄すぎると、最表層14aが連続膜にならずに後述する第1の中間層14bの性質が反映されるため、最低0.01マイクロメートルの厚みが必要である。また、最表層14aの厚みが厚すぎると、最表層14aの応力が増加して第1の中間層14bと剥離する虞がある。したがって、最表層14aの厚みは0.01マイクロメートル乃至5マイクロメートルの範囲で形成されるのが好ましく、特には0.05マイクロメートル乃至0.5マイクロメートルの範囲で形成されるのが望ましい。
第2の中間層14cは、銀又はニッケル又は金若しくは当該3種類の金属のうち2種類を含む合金、銅又はパラジウム又はルテニウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、Au−Pd合金又はPd−Ni合金、Ni−B又はNi−Pの何れかで形成され、該第2の中間層14cの厚み方向の寸法を大きくすることで固定接点14の厚み方向の寸法を大きくしている。
第1の中間層14bは、イリジウム又はオスミウム又はロジウム又はルテニウム又は白金又はパラジウムの何れかの金属若しくはこれらの金属のうち少なくとも1つを含む合金の何れかであって最表層14aを形成する金属材料以外の金属材料で形成され、最表層14aを形成する金属材料が第2の中間層14cに拡散するのを阻止するとともに、アーマチュアブロック3のフレーム部31にカバー4を陽極接合する際の第2の中間層14cを形成する金属材料の最表層14aへの拡散を阻止している。
つまり、第1の中間層14bが無い場合、第2の中間層14cを形成する金属材料が拡散して最表層14a表面に酸化膜(絶縁性皮膜)が形成されて接触信頼性が低下する虞があるが、上述のように第1の中間層14bを最表層14aと第2の中間層14cとの間に介装することで、最表層14aの硬度低下や絶縁性皮膜形成による接触信頼性低下を防止することができる。特に本実施形態のようなリレーでは、その構造上、固定接点14と可動接点39との接触圧が非常に小さいために表面に形成された絶縁性皮膜を突き破ることが困難であるから、最表層14aの表面に酸化膜(絶縁性皮膜)が形成されるのを防ぐ効果が大きいと言える。
最表層14aと第1の中間層14bとの間には、金又は銀又はニッケルの何れかの金属で形成される第2の密着層14eが介装されており、最表層14aを形成する金属材料と第1の中間層14bを形成する金属材料との密着性を高めている。
第2の中間層14cとガラス基板との間には、クロム又はチタン又はタングステン又はタンタルの何れかの金属で形成される第1の密着層14dが介装されている。これらの金属が金や銀に比較してガラス基板との密着性に優れることから、該第1の密着層14dによってガラス基板との密着性を高めることができる。また、第2の中間層14cと第1の密着層14dとの間には、金又は銀又はパラジウムの何れかの金属で形成される保護層14fが介装されている。該保護層14fは、第1の密着層14dの表面側に積層されることで、第1の密着層14dよりも表面側に積層される最表層14aから第2の中間層14cまでの各層を積層する工程が実施されるまでの間、第1の密着層14dが酸化又は硫化するのを防ぐ機能を有している。
尚、最表層14aをIr−Au合金又はIr−Ag合金で形成した場合は、第1の中間層14bは適宜省略しても構わない。また、上述した固定接点14の構造を可動接点39の構造に採用しても上記と同様の効果を奏することは言うまでもない。
以下、上記接点構造の耐スティッキング性に関する実験を行った結果について説明する。この実験は、上記マイクロリレーの実施形態1を用いて、図7に示すように、固定接点14及び可動接点39の最表層14aをルテニウムで形成した仕様1〜5、最表層14aをロジウムで形成した仕様6,7、最表層14aをイリジウムで形成した仕様8,9、最表層14aを金で形成した仕様10の各仕様に対して接点の開閉を50万回以上行うことで耐スティッキング性を測定したものである。尚、実験は、コイル22,22に印加される直流電圧が3V、固定接点14及び可動接点39の接触時に両接点間を流れる信号の直流電圧及び直流電流が各々1.5V、10mA、接点の開閉頻度が1分間に20回という条件で行った。実験の結果、図7に示すように、最表層14aを金で形成した場合(仕様10)と比較すると、最表層14aをルテニウム、ロジウム、イリジウムで形成した場合(仕様1〜仕様9)には、接点の開閉を50万回以上行ってもスティッキングが生じなかった。而して、最表層14aをルテニウム、ロジウム、イリジウム等で形成することによる耐スティッキング性の向上が実証された。
(実施形態2)
以下、本発明の接点構造を用いたマイクロリレーの実施形態2について図8〜図13を参照して説明する。本実施形態は、図8に示すように、基板5を備える。尚、以下の説明では、図8における上下左右を上下左右方向、紙面手前側を前方向、紙面奥側を後方向と定めるものとする。
基板5には、導電性を有する磁性体から成り全体として環形状であって閉磁路を構成する磁性体ブロック6が保持されている。磁性体ブロック6の材料としては、例えば鉄ニッケル合金を用いることができる。
磁性体ブロック6は、基板5の下面上に形成された本体部60と、本体部60の右端部から基板5内を上方へ突設された第1の脚部61と、本体部60の左端部から基板5内を上方へ突設されて上端部が基板5の上面よりも上方に突出する第2の脚部62と、第2の脚部62の上端部から右方へ突設されて基板5の上面との間に隙間を空けて対向するアーマチュア部63とを有する。つまり、磁性体ブロック6において、本体部60と第1の脚部61と第2の脚部62とが請求項におけるヨークを構成し、アーマチュア部63が請求項におけるアーマチュアを構成している。また、第1の脚部61の上端は基板5の上面よりも下側に位置しており、第1の脚部61の上面には、N極を上方に、S極を下方に向けた永久磁石7が設けられている。永久磁石7の上面は、基板5の上面と略面一となっている。上記のような磁性体ブロック6の脚部21,22は、基板5に設けた穴の内面への磁性体のめっきにより形成することができる。また、アーマチュア部63は、例えば、基板5上に形成した犠牲層(図示せず)上にアーマチュア部63となる磁性体の層を堆積によって形成した後に、犠牲層をエッチングで除去することで形成することができる。
また、アーマチュア部63の右端は第1の脚部61よりも右方に突出しており、基板5の上面において、アーマチュア部63の右端部の下側には、第1の接点である固定接点80が設けられている。アーマチュア部63の右端部の下面には第2の接点である可動接点81が設けられており、アーマチュア部63は、左端部に対して右端部を下方へ変位させるように曲がって可動接点81を固定接点80に接触導通させるように弾性変形可能となっている。また、図10(a)に示すように、アーマチュア部2において可動接点81が設けられた右端部の前後方向の寸法は、他の部位の前後方向の寸法よりも小さくなっている。尚、本実施形態のようにアーマチュア部63が導電性を有する場合、可動接点81を特に設けず、アーマチュア部63を可動接点と兼用するようにしてもよい。
更に、基板5には、導電材料から成り一端が固定接点80に電気的に接続され他端が基板5の下面に露出した導電部80aが設けられており、導電部80aの下側には、球形状のはんだから成り導電部80aを介して固定接点80に電気的に接続された固定側バンプ90が設けられている。更に、磁性体ブロック6の本体部60の下側には、球形状のはんだから成り磁性体ブロック6を介して可動接点81に電気的に接続された可動側バンプ91が設けられている。つまり、固定接点80と可動接点81との離接(接点の開閉)が切り替わると、固定側バンプ90と可動側バンプ91との間の電気的接続のオン/オフが切り替わる。
ここで、基板5は、複数のセラミックスシートが積層されて成る低温同時焼成セラミックス(LTCC)基板であって、基板5には、それぞれセラミックスシート間に形成された複数個(図示では9個)の螺旋形状の導電パターンが互いに電気的に接続されて成るコイル100が設けられている。更に、基板5の下面には、それぞれ球形状のはんだから成りコイル100の一端ずつに電気的に接続された2個のコイル用バンプ92a,92bが設けられている。本実施形態では、基板5が上記のようにセラミックスで構成されていることにより、比較的良好な高周波特性を得ることができる。また、基板5を構成するセラミックスシート間にコイル100が設けられていることにより、コイル100を基板5の外に形成する場合に比べ、コイル100の巻数の増加や小型化が可能となっている。
更に、基板5には、基板5の上面を覆ってアーマチュア部63や固定接点80や可動接点81を保護するカバー110が被着されている。カバー110は、厚さ方向を上下方向に向けた直方体形状であって上方から見た形状及び寸法が基板5と略同一のカバー基板111と、カバー基板111の下面の周縁部に接合された長方形の環状のスペーサ112とで構成されている。スペーサ112により、カバー基板111と基板5との間には、磁性体ブロック6のアーマチュア部63や固定接点80や可動接点81が収納される密閉空間が構成されている。カバー110を基板5に接合する際に加熱する場合には、熱応力を低減するために、カバー基板111の材料として基板5と同じ材料を用いるのが望ましい。
以下、本実施形態の動作を説明する。磁性体ブロック6内に永久磁石7と同じ向きの磁束が生じるような方向でコイル用バンプ92a,92bを介してコイル100に通電すると、アーマチュア部63は右端部が下方に吸引されることによりアーマチュア部63のばね力に抗して右端部を下方へ変位させるように弾性変形し、ここにおいて可動接点81は固定接点80に接触導通して(接点がオンされて)、可動側バンプ91と固定側バンプ90とは可動接点81と固定接点80とを介して電気的に接続される。その後は、コイル100への通電が停止されても、永久磁石7の磁力により上記の状態は維持される。
逆に、可動接点81が固定接点80に接触導通した状態で、磁性体ブロック6内に永久磁石7の逆向きの磁束が生じるような方向でコイル用バンプ92a,92bを介してコイル100に通電すると、磁性体ブロック6の磁束が減少する。すると、アーマチュア部63の右端部に作用する下向きの力がアーマチュア部63のばね力を下回ることにより、アーマチュア部63は弾性復帰し、可動接点81が固定接点80から離れ(接点がオフされ)、可動側バンプ91と固定側バンプ90との電気的接続は切断される。
ここで、永久磁石7は、エアロゾル・デポジション(AD)法や、パルスレーザ・デポジション(PLD)法や、めっきや、スクリーンプリントといった周知の方法により磁性体ブロック6上に堆積させた磁性体の層を研磨して着磁することにより形成されている。永久磁石7の材料としては、磁性体ブロック6より保磁力の大きい周知の材料を用いることができる。
上述の固定接点80及び可動接点81に、実施形態1と同様に本発明の接点構造を採用することによって、製造プロセスや使用状態で高温環境に長時間晒された場合でも電気抵抗の増大による導通不良や固着などが起こらないようにすることができる。また、上記構成によれば、永久磁石7を堆積によって形成したことにより、永久磁石を接着によって形成する場合に比べて製造コストを低減することができる。尚、永久磁石7の位置は、可動接点81と固定接点80との接触状態を維持させるための磁力をアーマチュア部63に作用させることができる位置であれば上記に限られないが、永久磁石7の磁束を有効に利用するためには、永久磁石7は上記のように磁性体ブロック6が構成する閉磁路中に設けることが望ましい。
また、接点のオフ時にアーマチュア部63の弾性力が不足して可動接点81が固定接点80に接触導通したままとなるのを抑制するために、図11、図12(a),(b)、図13(a),(b)に示すように、接点のオフ時にアーマチュア部63に上向きの磁力を作用させるためのカバーヨーク113と永久磁石114とカバーコイル115とを各々カバー基板111に設けてもよい。
詳しく説明すると、カバーヨーク113は磁性体から成り、上下に扁平であってカバー基板111の上面に露出する本体部113aと、本体部113aの右端部からカバー基板111内を下方へ突設され下端がカバー基板111の下面よりも上側に位置する第1の脚部113bと、本体部113aの左端部からカバー基板111内を下方へ突設され下端面がカバー基板111の下面と略面一となる第2の脚部113cとを有する。カバー基板111は、基板5と同様の積層基板であって、カバーコイル115は、コイル100と同様に、それぞれカバー基板111を構成するセラミックスシート間に形成され上下方向から見て第2の脚部113cを周回する渦巻形状の複数個(図示では9個)の導電パターンが互いに電気的に接続されて成る。
また、永久磁石114は、第1の脚部113bの下側において、下面をカバー基板111の下面と略面一とする形で、基板5側の永久磁石7と同様に、N極を上方に、S極を下方に向けて形成されている。カバー110側の永久磁石114は、基板5側の永久磁石7の上側に位置し、カバーヨーク113の第2の脚部113cは、磁性体ブロック6の第2の脚部62の上側に位置している。更に、図12(b)に示すように、カバー基板111の下面(図12(b)における上面)には、下面がスペーサ112の上面と略面一となる接続部111aが突設され、接続部111a内には、導電材料から成りカバーコイル115に電気的に接続された導電部111bが設けられている。尚、図12(b)には導電部111bを1個のみ図示しているが、実際には導電部111bはカバーコイル115の一端部ずつに対応した2個が設けられる。また、基板5には、上面においてカバー110の一方の導電部111bに対応した位置と下面とにそれぞれ露出した導電部(図示せず)が設けられており、図13(b)に示すように、この導電部とカバー110の導電部111bとを介してカバーコイル115の一端に電気的に接続された球形状のはんだから成るコイル用バンプ92cが、基板5の下面に設けられている。カバーコイル115の他端は、カバー110の他方の導電部111bを介して例えば基板5側のコイル100の一端に電気的に接続される。
図11〜図13の形態では、接点をオフする際には、磁性体ブロック6に永久磁石7の逆向きの磁束が生じる向きでコイル100に通電するとともに、カバーヨーク113に永久磁石114と同じ向きの磁束が生じる向きでカバーコイル115に通電すれば、アーマチュア部63に対して下向きの磁力が弱まるだけではなく上向きの磁力が作用することにより、確実に可動接点81を固定接点80から引き剥がすことができる。
尚、本発明の接点構造を用いた接点装置として上記実施形態1,2ではマイクロリレーを例示しているが、マイクロリレー以外の接点装置に本発明の接点構造を採用しても構わない。
ところで、接点表面にイリジウム、ルテニウム、ロジウムのうちの1つを主成分とする被膜層を配設したリードスイッチ(特開2004−288557号公報、特開平7−21867号公報)が知られている。しかしながら、上記リードスイッチでは、弾性を有する一対のリード片の各先端部に接点を設けているため、各接点の接触時に接点に加わる負荷が小さく、耐スティッキング性に対する条件が易しい。これに対して、本発明の接点構造では、第1の接点及び第2の接点を各々剛性の高い基板に形成しているので、接点同士が接触する際に摺動する等して接触時に接点に加わる負荷が大きいため、上記リードスイッチと比べて耐スティッキング性に対する条件が厳しい。したがって、本発明の接点構造では上記従来例と比べて耐スティッキング性の向上に関して顕著な効果を期待することができる。