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JP4973892B2 - キャパシタ - Google Patents

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Description

本発明はキャパシタに関し、特に、Liイオンを利用したキャパシタに関する。
電気二重層キャパシタは、各種キャパシタの中でも容量が大きいため、最近注目されている。例えば、キャパシタは電気機器のメモリーバックアップ用として幅広く使われており、近年この用途にも電気二重層キャパシタの利用が促進されている。更に、ハイブリッド車、燃料自動車等の自動車用にも利用が期待されている。
電気二重層キャパシタには、ボタン型、円筒型、角型といった種類があり、各種キャパシタが知られている(特許文献1〜5)。ボタン型は、例えば、活性炭電極層を集電体上に設けた分極性電極を一対として、その電極間にセパレーターを配置して電気二重層キャパシタ素子を構成し、電解質とともに金属ケース内に収納し、封口材と両者を絶縁するガスケットで密封することにより製造される。円筒型は、この一対の分極性電極とセパレーターを重ね、捲回して電気二重層キャパシタ素子を構成し、この素子に電解液を含覆させてアルミニウムケース中に収納し、封口材を用いて密封することにより製造される。角型も、基本的構造はボタン型や円筒型と同様である。
上記メモリーバックアップ用、自動車用等の用途に用いられる電気二重層キャパシタは、より一層の高容量化等が求められている。つまり、単位体積当たりの容量の高容量化と内部抵抗の低減が求められている。しかしながら、従来のキャパシタは、容量を増やそうとすると内部抵抗が大きくなり容量が増えないという問題がある。
すなわち、集電体の形状が二次元構造である場合には、容量密度を高めるために厚い電極を作製すると、集電体と活性炭の距離が長くなるため、集電体から離れたところは電気抵抗が高くなり、活性炭の利用率が小さくなって、容量密度も小さくなってしまう。また、内部抵抗低減については、電気抵抗改善を目的として導電助剤を添加すると、活性炭の量が少なくなるため、やはり容量密度が小さくなる。
また、正極の容量が小さいため、負極容量を増やしても容量が増えないという問題がある。すなわち、正極集電体にアルミニウム箔を採用した場合、容量を大きくするために活性炭を厚く塗ると、利用率が落ちたり、剥離したりして容量を大きくできない。このため、Liを出し入れできる炭素系負極に比べて正極の容量が小さく、セルのエネルギー密度を高くできない。
また、活性炭の電位が3V( vs Li/Li+ )であるため、電解液の耐電圧性からセル電圧を2.5V程度までしか上げることができない。このため、電圧が低く、エネルギー密度、出力密度が低いといった問題もある。
集電体を金属箔に代えて多孔体(三次元構造)にしたりすることも試みられている。しかしながら、多孔体として、スクリーンパンチ、パンチングメタル、ラスなどを用いても、その構造は実質的には二次元構造であり、大幅な静電容量の向上は期待できない。
現在、量産可能な三次元構造集電体としては、発砲状ニッケルがあり、アルカリ電解質二次電池用の集電体として普及している。しかし、高電圧・高容量化を目的として非水電解質を用いる電気二重層キャパシタでは、ニッケルは非水電解液による酸化を受けやすく、電解液中に溶解してしまい、長期の充放電で充分な充電ができなくなる。
ニッケル以外の金属としては、耐食性の高いアルミニウムやステンレスがあるが、これらの金属は、多孔度の高い多孔質有機樹脂表面に金属被覆層を形成できないという問題がある。すなわち、アルミニウムのめっき処理には非常に高温の溶融塩状態で処理する必要があるため、有機樹脂を被めっき体として使用することができず、有機樹脂表面にめっき処理することは困難である。
ステンレスも正極集電体の材料として広く使用されているが、このステンレスもアルミニウムと同様の理由から、有機樹脂表面にめっき処理することにより、多孔度の大きい集電体とすることは困難である。なお、ステンレスについては、粉末状にして有機樹脂多孔体に塗着して焼結することにより、多孔体を得る方法が提供されているが、ステンレススチール粉末は非常に高価である。また、粉末が付着した後に、基材である有機樹脂多孔体は焼却除去されるため、強度が衰えてしまい使用に耐えないという問題がある。
更に、炭素材料のリチウム吸蔵容量は372mAh/gであり、アルミニウム(993mAh/g)、スズ(994mAh/g)、シリコン(4200mAh/g)に比べて小さい。このため、負極に炭素材料を用いるリチウムイオンキャパシタは、負極の体積を小さくできないので、セルの体積に占める正極の割合が大きくすることができず、セルの容量が大きくならないという問題もある。
特開平11−274012号公報 特開平09−232190号公報 特開平11−150042号公報 特許第3252868号公報 特許第3689948号公報
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、静電容量が大きく、かつ耐久性に優れたキャパシタを安価に提供することを課題とする。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、正極用金属多孔体に活性炭を主体とした正極活物質を充填した正極と、負極用金属多孔体にリチウムイオンを吸蔵脱離できる金属を主体とした負極活物質を塗布した負極と、リチウム塩を含む非水電解液とを備え、負極にリチウムイオンを化学的あるいは電気化学的手法で吸蔵させることが有効であることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係るキャパシタは以下の特徴を有する。
(1)本発明に係るキャパシタは、少なくとも、正極用金属多孔体に活性炭を主体とした正極活物質を充填した正極と、負極用金属多孔体に、リチウムを吸蔵脱離できる金属を主体とした負極活物質を充填した負極と、リチウム塩を含む非水電解液を備え、負極にリチウムイオンを化学的あるいは電気化学的手法で吸蔵させ、前記正極用金属多孔体が、発泡状ウレタンにニッケルを被覆した後にウレタンを焼失させて得たニッケル目付が150〜500g/m2の発泡状ニッケルにクロマイジング処理を行って作製した、クロムの含有量が20質量%以上で、多孔度が80〜97%の発泡状ニッケルクロム合金であることを特徴とする。
(2)上記(1)に記載のキャパシタであって、前記リチウムイオンを吸蔵脱離できる金属が、アルミニウム、スズ、シリコンのうち一つ以上から選ばれた金属を20質量%以上含む合金、又は複合体であることを特徴とする。
(3)上記(1)または(2)に記載のキャパシタであって、前記負極用金属多孔体が、発泡状ウレタンにニッケルを被覆した後にウレタンを焼失させて得た多孔度が80〜97%、ニッケル目付が150〜500g/m2の発泡状ニッケルであることを特徴とする。
)上記(1)〜()のいずれか一に記載のキャパシタであって、前記リチウム塩が、LiClO4,LiBF4、LiPF6から選ばれる1種以上であり、前記非水電解液の溶媒が、エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、ブチレンカーボネイト、ジメチルカーボネイト、ジエチルカーボネイト、エチルメチルカーボネイトから選ばれる1種以上であることを特徴とする。
)上記(1)〜()のいずれか一に記載のキャパシタであって、負極容量が正極容量よりも大きく、負極のリチウムイオンの吸蔵量が、正極容量と負極容量の差の90%以下であることを特徴とする。

本発明により、従来のキャパシタに比べて容量・耐久性に優れたキャパシタを安価に提供することができる。
本発明に係るキャパシタは、正極用金属多孔体に活性炭を主体とした正極活物質を充填した正極と、負極用金属多孔体にリチウムイオンを吸蔵脱離できる金属を主体とした負極活物質を充填した負極と、リチウム塩を含む非水電解液により構成される。そして、負極にリチウムイオンを化学的あるいは電気化学的手法で吸蔵させておくことを特徴とする。これにより、すなわち、正極に金属多孔体を使い、負極にリチウムイオンを吸蔵させることで、負極の電位が下がりセル電圧を上げることが可能となる。このとき、金属多孔体を使用することにより、充填できる活物質量が増え、リチウムイオンを負極に吸蔵してセル電圧を上げることができる。キャパシタのエネルギーは電圧の二乗に比例するため、高いエネルギーを持ったキャパシタとなる。
しかしながら、本発明ではリチウム塩を含む非水電解液によりリチウムイオンを電荷として使用するため、リチウムの析出によるデンドライト成長、短絡といった危険が存在する。このため、負極へのリチウムイオンの吸蔵量は、あらかじめ吸蔵した分と、充電される分の和が、負極の吸蔵可能量以下であることが必要である。
したがって、本発明に係るキャパシタは、負極容量が正極容量よりも大きく、該負極容量と正極容量の差の90%まで、リチウムイオンを負極に吸蔵させておくことを特徴とする。放電時におけるリチウムイオンの吸蔵量を、負極容量と正極容量の差の90%以下としておくことにより、充電時の負極面内におけるリチウムイオン吸蔵量のばらつきの程度を吸収することができる。
本発明に係るキャパシタは以下の方法により製造することができる。
本発明に係るキャパシタは、正極、負極の電極2枚を一対とし、これらの電極間にセパレーターを配置し、電解液を含浸することにより作製することができる。セパレーターとしては、公知又は市販のものを使用できる。例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンレテフタラート、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ガラス繊維等からなる絶縁性膜が好ましい。セパレーターの平均孔径は特に限定されず、通常0.01μm〜5μm程度であり、平均厚さは通常10μm〜100μm程度である。
以下、各構成についてより詳しく説明する。
−正極−
本発明に係るキャパシタに用いる正極は、正極集電体(金属多孔体)に活性炭を主体とした正極活物質を充填することにより作製できる。
集電体に正極活物質を充填する場合の充填量(含有量)は特に制限されず、集電体の厚み、キャパシタの形状等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、充填量は、13〜40mg/cm程度、好ましくは16〜32mg/cm程度とすればよい。
正極活物質を充填する方法としては、例えば、活性炭等をペースト状にし、該活性炭正極ペーストを圧入法などの公知の方法などを使用すればよい。他には、例えば、活性炭正極ペースト中に集電体を浸漬し、必要に応じて減圧する方法、活性炭正極ペーストを集電体の一方面からポンプ等で加圧しながら充填する方法等が挙げられる。
正極は、活性炭ペーストを充填した後、必要に応じて乾燥処理を施すことにより、ペースト中の溶媒が除去されてもよい。更に必要に応じて、活性炭ペーストを充填した後、ローラープレス機等により加圧することにより、圧縮成形されていてもよい。圧縮前後の厚さは、圧縮前の厚さは、通常300μm〜1500μm、好ましくは400μm〜1200μmとすればよく、圧縮成形後の厚さは、通常100μm〜700μm程度、好ましくは200μm〜600μm程度とすればよい。
また、電極には、リード端子が具備されていてもよい。リード端子は、溶接を行ったり、接着剤を塗布したりすることにより、取り付ければよい。
[正極活物質]
活性炭正極ペーストは、例えば、活性炭粉末を溶媒に混合機で攪拌することにより得られる。活性炭ペーストは、活性炭及び溶媒を含有していればよく、その配合割合は限定的ではない。溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、水等が挙げられる。特に、バインダとしてポリフッ化ビニリデンを用いる場合は、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いればよく、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を用いる場合は、溶媒として水を用いればよい。また、必要に応じて導電性助剤、バインダ等の添加剤を含んでいてもよい。
(活性炭)
活性炭は電気二重層キャパシタ用に一般的に市販されているものを使用することができる。活性炭の原料としては、例えば、木材、ヤシ殻、パルプ廃液、石炭、石油重質油、又はそれらを熱分解した石炭・石油系ピッチのほか、フェノール樹脂などの樹脂などが挙げられる。炭化後に賦活するのが一般的であり、賦活法は、ガス賦活法及び薬品賦活法が挙げられる。ガス賦活法は、高温下で水蒸気、炭酸ガス、酸素等と接触反応させることにより活性炭を得る方法である。薬品賦活法は、上記原料に公知の賦活薬品を含浸させ、不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、賦活薬品の脱水及び酸化反応を生じさせて活性炭を得る方法である。賦活薬品としては、例えば、塩化亜鉛、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
活性炭の粒径は限定的でないが、20μm以下であることが好ましい。比表面積も限定的でなく、800〜3000m/g程度が好ましい。この範囲とすることにより、キャパシタの静電容量を大きくすることができ、また、内部抵抗を小さくすることできる。
(導電助剤)
導電助剤の種類には特に制限はなく、公知又は市販のものが使用できる。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、酸化ルテニウム等が挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維等が好ましい。さらには、アセチレンブラックあるいはケッチェンブラックと、炭素繊維を混合することが好ましく、混合比は炭素繊維が導電助剤全体の20重量%以下となることが好ましい。これにより、キャパシタの導電性を向上させることができる。導電助剤の含有量は限定的でないが、活性炭100質量部に対して0.1〜10質量部程度が好ましい。0.1重量部以下では導電性を向上させる効果が小さく、10質量部を超えると静電容量が低下するおそれがある。
(バインダ)
バインダの種類には特に制限はなく、公知又は市販のものが使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロリド、ポリオレフィン、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。使用する溶媒にあわせて選択すればよいが、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いる場合はポリフッ化ビニリデンが、水を用いる場合はポリテトラフルオロエチレンとカルボキシメチルセルロースを混合した物が好ましい。これらの組み合わせでは、キャパシタの内部抵抗を低く抑えることができ、大きな静電容量を得ることができる。
バインダの含有量は、活性炭100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましい。バインダが0.5重量部より少ないと活性炭を集電体に保持できず、容量や寿命が小さくなる。また、バインダが10重量部より多いと活性炭の働きが阻害されるため、容量が小さくなる。より好ましくは1〜5重量部である。
[正極集電体]
前記正極集電体は、金属多孔体をクロマイジング処理することにより得られる。ニッケルの金属多孔体は耐食性が不十分であるが、クロム合金化することにより耐食性を向上させることができる。
(金属多孔体)
金属多孔体としては、前記活物質の充填性や多孔度の観点から、発泡状ニッケル、不織布状ニッケル等、発泡ウレタンや不織布を基材としたものを好ましく用いることができる。他にも、金属板に多数の小孔をあけたものや、金属板に凹凸を受けて擬似的に3次元構造としたもの、焼結体や連通気孔の構造体などが用いられる。
<発泡状ニッケル>
発泡状ニッケルは、発泡状樹脂の表面にニッケル被覆層を形成したのち、基材である樹脂を除去し、次いで必要に応じて還元性雰囲気中で加熱処理してニッケルを還元することにより得られる。
発泡状樹脂は、多孔性のものであればよく公知又は市販のものを使用でき、例えば、発泡ウレタン、発泡スチレン等が挙げられる。これらの中でも、特に多孔度が大きい観点から、発泡ウレタンが好ましい。
発泡状樹脂の多孔度は、通常80〜97%程度、好ましくは90〜96%程度である。平均孔径は、通常20μm〜200μm程度、好ましくは30μm〜100μm程度である。発泡状樹脂の厚みは、キャパシタの用途等に応じて適宜決定されるが、通常300μm〜1600μm程度、好ましくは400μm〜1200μm程度とすればよい。
発泡状樹脂の表面にニッケル被覆層を形成するには、公知のニッケル被覆方法を採用することができる。例えば、電解めっき法、無電解めっき法、スパッタリング法等が挙げられる。これらの被覆方法は単独で用いてもよく、複数の被覆方法を組み合わせて用いても良い。生産性、コストの観点からは、まず、無電解めっき法又はスパッタリング法によって発泡状樹脂表面を導電処理し、次いで、これに電解めっき法によって所望の目付量までニッケルめっきする方法を採用することが好ましい。
導電処理は、発泡状樹脂の表面に導電性を有する層を設けることができる限り限定的でない。導電性を有する層(導電被覆層)を構成する材料としては、例えば、ニッケル、チタン、ステンレススチール等の金属の他、黒鉛等が挙げられる。これらの中でも特にニッケルが好ましい。導電処理の具体例としては、例えば、ニッケルを用いる場合は、無電解めっき処理、スパッタリング処理等が好ましく挙げられる。また、チタン、ステンレススチール等の金属、黒鉛などの材料を用いる場合は、これら材料の微粉末にバインダを加えて得られる混合物を、発泡状樹脂に塗着する処理が好ましく挙げられる。
ニッケルを用いた無電解めっき処理としては、例えば、還元剤として次亜リン骸ナトリウムを含有した硫酸ニッケル水溶液等の公知の無電解ニッケルめっき浴に発泡状樹脂を浸漬すればよい。必要に応じて、めっき浴浸漬前に、発泡状樹脂を微量のパラジウムイオンを含む活性化液(カニゼン社製の洗浄液)等に浸漬してもよい。ニッケルを用いたスパッタリング処理としては、例えば、基板ホルダーに発泡状樹脂を取り付けた後、不活性ガスを導入しながら、ホルダーとターゲット(ニッケル)との問に直流電圧を印加することにより、イオン化した不活性ガスをニッケルに衝突させて、吹き飛ばしたニッケル粒子を発泡状樹脂表面に堆積すればよい。
無電解めっき処理及び/又はスパッタリング処理によってニッケルめっき膜の厚みを増していけば電解めっき処理の必要性はないが、生産性、コストの観点から、上記したような、まず発泡状樹脂を導電化処理し、次いで電解めっき法によりニッケルめっき層を形成する方法を採用することが好ましい。
電解ニッケルめっき処理は、常法に従って行えばよい。前記の無電解メッキやスパッタリングにより表面に導電層を形成された発泡状樹脂をメッキ浴に浸し、発泡状樹脂を陰極に、ニッケル対極板を陽極に接続して直流或いはパルス断続電流を通電させることにより、導電層上に、さらにニッケルの被覆を形成することができる。電解ニッケルめっき処理に用いるめっき浴としては、公知又は市販のものを使用することができ、例えば、ワット浴、塩化浴、スルファミン酸浴等が挙げられる。
導電被覆層及び電解めっき層の目付量(付着量)は特に制限されない。導電被覆層は発泡状樹脂表面に連続的に形成されていればよく、電解ニッケルめっき層は導電被覆層が露出しない程度に当該導電被覆層上に形成されていればよい。
導電被覆層の目付量は限定的でなく、通常5〜15g/m程度、好ましくは7〜10g/m程度とすればよい。電解ニッケルめっき層の目付量は限定的でなく、通常150〜500g/m程度、好ましくは200〜450g/m程度とすればよい。
これら導電被覆層、電解ニッケルめっき層の目付量の合計量としては、好ましくは200g/m以上500g/m以下である。合計量がこの範囲を下回ると、集電体の強度が衰えるおそれがある。また、合計量がこの範囲を上回ると、分極性材料の充填量が減少し、またコスト的にも不利となる。
次いで、上記により得られた導電被覆層/ニッケルめっき層形成発泡状樹脂中の発泡状樹脂成分を除去する。除去方法は限定的でないが、焼却により除去することが好ましい。具体的には、例えば600℃程度以上の大気等の酸化性雰囲気下で加熱すればよい。また、水素等の還元性雰囲気中750℃程度以上で加熱してもよい。これにより、導電被覆層、電解ニッケルめっき層からなる金属多孔体が得られる。得られた多孔体を還元性雰囲気下で加熱処理してニッケルを還元することにより発泡状ニッケルが得られる。
<不織布状ニッケル>
不織布状ニッケルは、樹脂不織布の表面にニッケル被覆層を形成したのち、基材である樹脂を除去し、次いで必要に応じて還元性雰囲気中で加熱処理してニッケルを還元することにより得られる。
本発明で用いる多孔質不織布は、公知又は市販のものを使用することができるが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のオレフィン単独重合体からなる繊維、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体からなる織碓、これら繊維の混合物が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂繊維を構成するポリオレフィン系樹脂の分子量及び密度は特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂の種類等に応じて適宜決定すればよい。また、融点の異なる2種の成分からなる芯鞘型繊維を用いても良い。
芯鞘型複合繊維の具体例としては、ポリプロピレンを芯成分に、ポリエチレンを鞘成分とした芯鞘型繊維を挙げることができる。この場合、ポリプロピレン樹脂:ポリエチレン樹脂の配合割合(質量比)は、通常20:80〜80:20程度であり、好ましくは40:60〜70:30程度である。
樹脂繊維の平均繊維径は、通常9μm〜70μm程度、好ましくは10μm〜50μm程度とすればよい。平均繊維長も限定的でなく、通常5mm〜100mm程度、好ましくは30mm〜70mm程度とすればよい。不織布の多孔度は、通常80〜97%程度であり、好ましくは86〜96%程度である。この範囲にすることにより、分極性電極としての強度を保ちつつ不織布状集電体中に活性炭を多く充填することができ、キャパシタの高出力化及び高容量化が可能となる。
また、不織布の孔径は、通常10μm〜250μm程度、好ましくは15μm〜200μm程度である。なお、孔径はバブルポイント法により測定されるものである。不織布の平均厚みは、製造するキャパシタの用途、目的等に応じて適宜決定すればよいが、通常100μm〜1000μm程度、好ましくは150μm〜800μm程度とすればよい。
不織布は、めっき処理に先立って、ニードルパンチ法、水流交絡法等の交絡処理、樹脂繊維の軟化温度付近での熱処理などの前処理を行ってもよい。この前処理によって、繊維同士の結合が強固になり、不織布の強度を向上させることができる。その結果、活性炭を当該不織布に充填する際に必要な三次元構造を十分に保持することができる
不織布は、通常、公知の乾式法及び湿式法のいずれかで製造されるが、本発明ではいずれの方法で製造されたものでもかまわない。乾式法としては、例えば、カート法、エアレイ法、メルトブロー法、スパンボンド法等が挙げられる。湿式法としては、例えば、単繊維を水中に分散し網状ネット上に漉す方法等が挙げられる。本発明では、目付量及び厚みのばらつきが小さく、厚みが均一な集電体を製造できる観点から、湿式法により得られた不織布を使用することが好ましい。
樹脂不織布の表面にニッケル被覆層を形成するためには、前記発泡状樹脂の場合と同様に、公知のニッケル被覆方法を採用することができる。
すなわち、電解めっき法、無電解めっき法、スパッタリング法等が挙げられ、これら単独でもよく、複数の被覆方法を組み合わせても良い。発泡状樹脂の場合と同様に樹脂不織布表面を導電処理し、次いで、これに電解めっき法によって所望の目付量までニッケルめっきする方法を採用することが好ましい。
導電処理は、前記発泡状樹脂の場合と同様の方法を採用することができる。なお、導電処理としてスパッタリング処理を行う場合には、樹脂不織布が溶解しない温度下で行うことが好ましい。具体的には、100〜200℃程度、好ましくは120〜180℃程度で行えばよい。
導電性被覆層の目付量は不織布に導電性を付与できる程度あればよい。例えば、5g/m2〜15g/m2程度、好ましくは7g/m2〜10g/m2程度とすればよい。
電解ニッケルめっき処理も、上記発泡状樹脂の場合と同様に、常法に従って行えばよい。電解ニッケルめっき層の目付量は、導電性、多孔度、強度、耐食性、経済性等の観点から、不織布に対して150〜500g/m程度、好ましくは200〜450g/m程度とすればよい。合計量がこの範囲を下回ると、集電体の強度が衰えるおそれがある。また、合計量がこの範囲を上回ると、分極性材料の充填量が減少したり、コスト的に不利となったりする。
樹脂不織布の除却処理も、発泡状樹脂の場合と同様に行える。すなわち、加熱により焼却すればよい。得られた不織布状多孔体を還元性雰囲気下で加熱処理してニッケルを還元することにより発泡状ニッケルが得られる。
(クロマイジング処理)
クロマイジング処理は、ニッケル膜にクロムを拡散浸透させる処理であり、公知の手法を採用できる。例えば、前記金属多孔体(発泡状ニッケル、不織布状ニッケル等)にクロム粉末、ハロゲン化物、アルミナ粉末を混合した浸透材を充填して還元性雰囲気で加熱する粉末パック法を採用することができる。また、浸透材と金属多孔体を離間して配置し、還元性雰囲気中で加熱し、浸透材のガスを形成して金属多孔体表面のニッケルに浸透材を浸透させることもできる。
ニッケルクロムは製造方法が確立しているため、アルミニウムやステンレスの多孔体に比べて安価に製造することができる。
ニッケルクロム中のクロムの含有量はクロマイズ処理の加熱時間によって調整することができる。本発明においてはクロマイジング処理によってクロムの含有率を20質量%以上とすることが必要である。クロムの含有率は20〜50質量%であり、好ましくは30〜40質量%である。20質量%未満であると耐酸化性が不足し、50質量%を超えると電気抵抗が増加して集電性が下がる。
不織布状ニッケルクロムを構成する繊維の太さは、12〜90μmであることが好ましい。繊維の太さが12μmより細いと、集電体の目が細かくなり過ぎて活物質の充填性が悪くなって静電容量が小さくなってしまう。一方、90μmより太いと活物質ペーストの保持性が悪くなって充填量が減り、静電容量が小さくなる。更に、目が大きいことで集電性も悪くなる。
発泡状ニッケルクロム、不織布状ニッケルクロムの多孔度は80〜97%であることが好ましい。この範囲とすることにより、分極性電極としての強度を保ちつつ、集電体中に活性炭を多く充填することができ、キャパシタの高出力化及び高容量化が可能となる。
以上の方法により作製される正極集電体は、ニッケルをクロマイジング処理された被覆層からなる構造を有するためニッケルの耐食性が上がり、非水系キャパシタの電圧でもニッケルが酸化されずに集電体として使用することができる。更に、かかる正極集電体は多孔体構造であるため、より多くの活性炭を充填することができ、静電容量を向上させることができる。また、多孔体中の空隙に活性炭が包まれる構造であるため、活性炭と集電体とを結合させるためのバインダ(絶縁体)等の含有量を少なくすることができ、内部抵抗を小さくすることができる。
集電体の平均厚みは、通常100μm〜1000μm程度、好ましくは150〜800μm程度とすればよい。
−負極−
負極は、負極用金属多孔体による負極集電体に、リチウムイオンを吸蔵脱離できる金属を主体とした負極活物質を充填することにより作製することができる。負極活物質を充填する方法としては、例えば、負極活物質をペースト状にし、該負極活物質ペーストをドクターブレード法等により塗布する方法が挙げられる。また、必要に応じて、乾燥後にローラープレス機等により加圧成形してもよい。
リチウムイオンを吸蔵脱離できる金属にリチウムイオンを吸蔵させるには、例えば、下記工程を経て作製した負極にLi箔を圧着させておき、製造後のセル(キャパシタ)を60℃の恒温層中で24時間保温する等の方法が挙げられる。他にも、リチウムイオンを吸蔵脱離できる金属とリチウム材料を混合してメカニカルアロイ法で混合する方法や、Li金属をキャパシタセルに組み込んで、負極とLi金属を短絡する方法等が挙げられる。
[負極集電体]
負極集電体としては、金属多孔体を好ましく用いることができる。前述のように本発明に係るキャパシタは、リチウムイオンを吸蔵脱離できる金属を主体とする負極活物質を使用する。リチウムイオンと合金化する金属は、リチウムとの反応時に発生する体積変化が大きいため、通常の構成である銅箔などを使用した場合には剥離を起こし、寿命特性が低下してしまう。しかし、本発明では、負極集電体に金属多孔体を使用し、該金属多孔体の骨格内に負極活物質を保持させることで、前記金属が体積変化を起こしても剥離を生じさせず、寿命特性に優れたキャパシタとすることができる。
負極用金属多孔体としては、発泡状ウレタンにニッケルを被覆した後にウレタンを焼失させて得た多孔度が80〜97%、ニッケル目付が150〜500g/m2の発泡状ニッケルを好ましく使用することができる。また、ポリオレフィン系繊維からなる不織布にニッケルを被覆して得た多孔度が80〜97%、ニッケル目付が150〜500g/m2の不織布状ニッケルも好ましく使用することができる。
これらの金属多孔体は、前述の正極集電体の場合と同様の方法により作製することが可能である。
[負極活物質]
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵脱離できる金属粉末を溶媒に混ぜ、混合機で攪拌することにより得られる。必要に応じて導電性助剤、バインダを含んでもよい。
本発明では、負極に、リチウムと合金化する金属を充填するが、かかる金属は、従来の黒鉛系材料に比べて容量が大きいため使用量を減らすことができる。このため、本発明に係るキャパシタは、負極の厚さを薄くしてセルの体積を減少させることができ、キャパシタの体積エネルギー密度を向上させることが可能となる。
(リチウムイオンを吸蔵脱離できる金属)
リチウムイオンを吸蔵脱離できる金属としては、リチウムイオンを吸蔵脱離できるものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、スズ、シリコン等が挙げられる。また、アルミニウム、スズ、シリコンのうちいずれか一種以上の金属を20wt%以上含む合金、又は複合体であることが好ましい。特に、理論容量が300mAh/g以上あるものが好ましい。複合体の例としては、アルミ‐ニッケル合金や銅とスズを混ぜた銅スズ合金(スズ10〜70質量%)、シリコン粉末とシリカ粉末を複合した物が好ましく挙げられる。
(導電性助剤)
導電性助剤としては、前記正極活物質の場合と同様に、公知又は市販のものが使用できる。すなわち、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、酸化ルテニウム等が挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維等が好ましい。さらには、アセチレンブラックあるいはケッチェンブラックと、炭素繊維を混合することが好ましく、混合比は炭素繊維が導電助剤全体の20重量%以下となることが好ましい。これにより、キャパシタの導電性を向上させることができる。
(バインダ)
バインダも、前記正極活物質の場合と同様に、特に種類に制限はなく、公知又は市販のものが使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロリド、ポリオレフィン、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。使用する溶媒にあわせて選択すればよいが、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いる場合はポリフッ化ビニリデンが、水を用いる場合はポリテトラフルオロエチレンとカルボキシメチルセルロースを混合した物が好ましい。これらの組み合わせでは、キャパシタの内部抵抗を低く抑えることができ、大きな静電容量を得ることができる。
−非水電解液−
本発明に係るキャパシタはリチウムを有するため、電解液としては、非水電解液を用いる必要がある。かかる非水電解液は、例えば、充放電に必要なリチウム塩を有機溶媒に溶かしたものを使用することができる。
(リチウム塩)
リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6等を用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、いずれか1種以上を混合して用いてもよい。
(溶媒)
上記リチウム塩を溶かす溶媒としては、例えば、エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、ブチレンカーボネイト、ジメチルカーボネイト、ジエチルカーボネイト、エチルメチルカーボネイトから選ばれるいずれか1種以上を好ましく用いることができる。特に、リチウム塩としてLiPF6を、溶媒としてエチレンカーボネイトとジエチルカーボネイトの混合溶液を用いることが好ましい。電解液のイオン伝導度が高くなり、キャパシタの内部抵抗を低く抑えることができる。
以上の方法により製造される、本発明に係るキャパシタは、負極容量が正極容量よりも大きく、リチウムイオンの吸蔵量が、正極容量と負極容量の差の90%以下であることが好ましい。このように正極で容量を規制することにより、リチウムのデンドライト成長による短絡を防止することができる。
[実施例1]
<正極集電体の作製>
発泡状ニッケルにクロマイジング処理をして、発泡状のニッケルクロム合金基材を作製した。発泡状ニッケルは、ウレタンシート(市販品、平均孔径90μm、厚さ1.4mm、多孔度96%)に導電処理後、所定量のニッケルめっきを行い、ウレタンを大気中800℃で焼却除去後に還元性雰囲気(水素)で1000℃に過熱し、ニッケルを還元して作製した。導電処理はスパッタリングにより10g/m2のニッケルをつけた。ニッケルめっき量は、導電処理の分も合計して400g/m2になるようにした。作製した発泡状ニッケルは、平均孔径80μm、厚さ1.2mm、多孔度95%となった。
クロマイジング処理は、クロム粉末とハロゲン化物、アルミナを混合した浸透材を基材に充填して還元雰囲気で過熱する粉末パック法を用いて行った。作製した発泡状ニッケルに浸透材(クロム:90%、NH4Cl:1%、Al23:9%)を充填し、水素ガス雰囲気中で800℃に加熱した。
クロムの含有量はクロマイズ処理の加熱時間で調整し、クロム含有量が30wt%の基材を作製し、集電体aとした。作製した集電体の厚さは1.4mmであった。
<正極の作製>
活性炭粉末(比表面積2500m2/g、平均粒径約5μm)21.5重量部に、導電助剤としてケッチェンブラック(KB)0.7重量部、バインダとしてポリフッ化ビニリデン粉末2.5重量部、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)75.3重量部を添加し、混合機で攪拌することにより、活性炭正極ペーストを調製した。
この活性炭ペーストを、あらかじめギャップ550μmのローラープレス機により厚さを調整した集電体に、活性炭の含量が18mg/cm2となるように充填した。実際の充填量は17.5mg/cm2であった。次に、乾燥機で100℃、1時間乾燥させて溶媒を除去した後、直径500ミリのローラープレス機(ギャップ:250μm)で加圧して実施例1の正極Aを得た。加圧後の厚さは350μmであった。
<負極集電体>
正極集電体の作製方法と同様の方法にて作製した発泡状ニッケルを用いた。(ニッケル目付400g/m2、平均孔径80μm、厚さ1.2mm、多孔度95%)これを集電体a’とする。
<負極の作製>
シリコン粉末(平均粒径約10μm)21.5重量部に、導電助剤としてケッチェンブラック(KB)0.7重量部、バインダとしてポリフッ化ビニリデン粉末2.5重量部、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)75.3重量部を添加し、混合機で攪拌することにより、シリコン負極ペーストを調製した。
このシリコンペーストを、あらかじめギャップ550μmのローラープレス機により厚さを調整した集電体に、シリコンの含量が13mg/cm2となるように充填した。実際の充填量は12.2mg/cm2であった。次に、乾燥機で100℃、1時間乾燥させて溶媒を除去した後、直径500ミリのローラープレス機(ギャップ:150μm)で加圧して実施例1の負極A’を得た。加圧後の厚さは185μmであった。
<セルの作製>
正極A及び負極A’をさらに200℃で8時間、減圧環境で乾燥した。これらをドライルーム中(露点−65℃)にうつし、得られた正極A及び負極A’を直径14mmに打ち抜き、その後、負極A’に厚さ50μmのリチウム金属箔を圧着した。両電極の間にポリプロピレン製のセパレーター(厚さ25μm)を挟んで対向させて単セル素子とし、ステンレススチール製スペーサを用いてR2032サイズのコインセルケースに収納し、1mol/LのLiPF6を溶かした、エチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネイト(DEC)を体積比1:1で混合した電解液を注入して電極及びセパレーターに含浸した。さらに、プロピレン製の絶縁ガスケットを介してケース蓋を締めて封口して、コイン形の試験用キャパシタAを作製した。その後、60℃の恒温槽中で24時間放置した。この操作により、負極に圧着したリチウムがイオン化して負極のシリコンに吸蔵される。
[比較例1]
負極集電体として、銅箔(市販品、厚さ20μm)を用いた。実施例1で作製した負極活物質ペーストをドクターブレード法により両面合計が5mg/cm2となるように塗着して圧延し、比較例1の負極B’を作製した。実際の塗布量は11mg/cm2、電極の厚みは、110μmであった。
これ以降の操作は、実施例1と全く同じにしてコイン型のキャパシタBを作製した。
[比較例2]
リチウムを吸蔵脱離できる天然黒鉛粉末21.5重量部に、導電助剤としてケッチェンブラック(KB)0.7重量部、バインダとしてポリフッ化ビニリデン粉末2.5重量部、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)75.3重量部を添加し、混合機で攪拌することにより、黒鉛系負極ペーストを調製した。
この黒鉛系負極ペーストを、あらかじめギャップ550μmのローラープレス機により厚さを調整した集電体に、シリコンの含量が13mg/cm2となるように充填した。実際の充填量は12.9mg/cm2であった。次に、乾燥機で100℃、1時間乾燥させて溶媒を除去した後、直径500ミリのローラープレス機(ギャップ:150μm)で加圧して比較例2の負極C’を得た。加圧後の厚さは235μmであった。
これ以降の操作は、実施例1と全く同じにしてコイン型のキャパシタCを作製した。
[比較例3]
負極として実施例1で用いた正極と同じものを用いてキャパシタDを作製した。電解液はテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを1mol/Lとなるように溶解したプロピレンカーボネイト溶液を用い、セパレーターはセルロース繊維製セパレーター(厚さ60μm、密度450mg/cm3、多孔度70%)を用いた。
<静電容量の評価>
実施例1及び比較例1〜3と同様のキャパシタ(A〜D)をそれぞれ10個作製し、充電を2mA/cm2で2時間、放電を1mA/cm2で行い、初期静電容量及び充電電圧・作動電圧範囲・エネルギー密度を調べた。エネルギー密度の基準とする体積は、セル内の電極積層体の体積とし、(正極の厚さ+セパレーターの厚さ+負極の厚さ)×電極面積によって求めた。それらの平均値を表1に示す。
Figure 0004973892
表1から明らかなように、本発明のキャパシタは、比較例3のリチウムドープしないキャパシタよりも作動電圧の範囲が大きく、また電極の厚さも薄くできたため、エネルギー密度が大きく向上できる。
<耐久性試験1>
次に、キャパシタ特性として重要な耐久性を調べた。高電圧で保持されたときの耐久性は、バックアップ用などの用途で重要である。65℃で表1に示した各セルの充電電圧を印加しながら2000時間保持した。その後25℃にして静電容量を測定し、初期からの静電容量の変化率を調べた。結果を表2に示す。
Figure 0004973892
表2から明らかなように、実施例は従来の構成である比較例3と同様、2000時間経過後も静電容量及び内部抵抗の変化は小さかった。したがって、本発明のキャパシタは、高い静電容量が得られるとともに、耐久性に優れていることが分かった。
<耐久性試験2>
別の耐久性評価法として充放電サイクル特性を調べた。サイクル特性はセルの寿命を現す重要な指標である。条件として、雰囲気温度45℃で0.5〜3.0Vの間で1mAの定電流による充放電サイクルを1万回繰り返し、1万サイクル後の放電容量を測定し、初期容量と比較して評価を行った。その結果を表3に示す。
Figure 0004973892
表3から明らかなように、実施例は従来の構成である比較例3と同様、1万サイクル経過後も静電容量の変化は小さかった。しかしながら、銅箔を用いた比較例1は大きく容量が減少している。試験後にセルを分解してみると負極集電体の銅箔が露出しており、負極シリコンの剥離が原因と考えられる。
したがって、本発明のキャパシタは、高い静電容量が得られるとともに、寿命に優れていることが分かった。
以上により、本発明の集電体をキャパシタ用の電極に用いた場合、従来のキャパシタに比べて容量・耐久性に優れたキャパシタを提供できることが分かった。

Claims (5)

  1. 少なくとも、
    正極用金属多孔体に活性炭を主体とした正極活物質を充填した正極と、
    負極用金属多孔体に、リチウムを吸蔵脱離できる金属を主体とした負極活物質を充填した負極と、
    リチウム塩を含む非水電解液を備え、
    負極にリチウムイオンを化学的あるいは電気化学的手法で吸蔵させたキャパシタであって、
    前記正極用金属多孔体が、発泡状ウレタンにニッケルを被覆した後にウレタンを焼失させて得たニッケル目付が150〜500g/m2の発泡状ニッケルにクロマイジング処理を行って作製した、クロムの含有量が20質量%以上で、多孔度が80〜97%の発泡状ニッケルクロム合金であることを特徴とするキャパシタ。
  2. 前記リチウムイオンを吸蔵脱離できる金属が、アルミニウム、スズ、シリコンのうち一つ以上から選ばれた金属を20質量%以上含む合金、又は複合体であることを特徴とする請求項1に記載のキャパシタ。
  3. 前記負極用金属多孔体が、発泡状ウレタンにニッケルを被覆した後にウレタンを焼失させて得た多孔度が80〜97%、ニッケル目付が150〜500g/m2の発泡状ニッケルであることを特徴とする請求項1または2に記載のキャパシタ。
  4. 前記リチウム塩が、LiClO4,LiBF4、LiPF6から選ばれる1種以上であり、前記非水電解液の溶媒が、エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、ブチレンカーボネイト、ジメチルカーボネイト、ジエチルカーボネイト、エチルメチルカーボネイトから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載のキャパシタ。
  5. 負極容量が正極容量よりも大きく、負極のリチウムイオンの吸蔵量が、正極容量と負極容量の差の90%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載のキャパシタ。
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