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JP4969101B2 - 吸収性物品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、吸収性物品の製造方法に関するものである。
幼児や大人のテープ式やパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、使用面側のトップシートと、背面側の液の透過を防止するバックシートと、これらのシート間に介在され、トップシートを透過した排泄された液を受け入れ保持する吸収要素とを基本要素としている。
この基本要素に対し、バックシートの裏面側にたとえば不織布などからなる外装シートを設け、バックシートとしてプラスチックシートを使用した場合における肌触りを改良する形態、製品の両側にいわゆるバリヤーカフスを形成する形態など、ウエスト周りや腹周りのフィット性を改良するために弾性伸縮性を付与する形態などが、適宜付加される。
使用面側のトップシートを透過した液を受け入れ保持する吸収要素としては、従来は、パルプ短繊維の積繊体が一般的に使用されている。また、液に吸収量を高めるために高吸収性ポリマー粒子(以下「SAP」ともいう。)を使用することも知られている。
SAPはパルプ短繊維の積繊体上に散布する場合のほか、パルプ短繊維のSAPを分散保持させ積繊体させる場合(特許文献1)がある。
一方、近年では、特表2002−524399号(WO99/27879:特許文献2)及び特表2004−500165号(米国特許第6,646,180号:特許文献3)に示されるように、セルロースアセテートのトウを液体取得層、つまり吸収要素として使用することが提案されている。この吸収要素では、トウを構成するフィラメントは前後方向に沿って、吸収要素の前後端部まで延在している。
特開2004−65300号公報 特表2002−508218号(WO99/27879)公報
しかしながら、セルロースアセテートのトウのように、それ自体吸水性が殆ど無い難吸収フィラメントが束状に集合したフィラメント集合体を用いた吸収要素では、フィラメントの連続方向に沿って液が拡散し易く、フィラメントの両端が吸収要素の周縁まで延在していると、当該端部に多量の液が素早く供給されることに起因して漏れが発生することがあった。
そこで、本発明の主たる課題は、吸収要素の縁部に対する液の過供給に起因する漏れを防止することにある。
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項記載の発明>
使用面側のトップシートを透過した液を吸収する吸収要素を備え、
前記吸収要素は、下層吸収体と、そのトップシート側に設けられた上層吸収体とを有しており、
前記下層吸収体は、パルプ繊維又はフィラメントの集合体、及び高吸収性ポリマー粒子からなり、包被シートで包まれており、
前記上層吸収体は、トウを開繊して得られ且つ吸収量が自重の1.0倍以下の難吸収フィラメント集合体を前記包被シートとは別の液透過性シートに貼り付けるか又は前記包被シートとは別の液透過性シートで包んだものであり、このフィラメント集合体は、フィラメントがトップシートに沿って延在しており、かつフィラメントの両端が前記下層吸収体の周縁から内側に10〜300mm離間している、
ことを特徴とする吸収性物品を製造する方法であって、
前記吸収要素の製造にあたり、
パルプ繊維又はフィラメントの集合体、及び高吸収性ポリマー粒子を、包被シートで包んで前記下層吸収体を製造するとともに、
トウを開繊して得られ且つ吸収量が自重の1.0倍以下の難吸収フィラメント集合体を、前記包被シートとは別の液透過性シートに貼り付けるか又は前記包被シートとは別の液透過性シートで包んだ後、前記難吸収フィラメントの連続方向に所定の間隔で切断して前記上層吸収体を製造し
前記上層吸収体を、フィラメントの両端が前記下層吸収体の周縁から内側に10〜300mm離間するように、前記下層吸収体の上または前記下層吸収体におけるパルプ繊維又はフィラメントの集合体の上の所定位置に貼り付ける、ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
(作用効果)
トウを開繊して得られるフィラメント集合体は、散けたり、型崩れを起こしたりし易いため、製造上の取り扱いが困難な素材である。このため、従来の吸収体の製造においては、フィラメント集合体を連続状のままで取り扱い、個々の吸収体への切断を利用して、フィラメント集合体の切断も行っていた。
しかし、このような製造方法では、フィラメントの両端が吸収要素の周縁まで延在している吸収体しか製造することができず、前述したような漏れの問題を回避することができない。このため、フィラメントの集合体を吸収体内の所望の位置に配置できる製造技術の開発が望まれた。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものである。本発明では、切断に先立って、連続状のフィラメント集合体を、連続状の液透過性シートに貼り付けるか又は液透過性シートで包むため、フィラメント集合体が散けたり、型崩れを起こしたりし難くなる。またシートと一体化されたフィラメント集合体に対しては、スリップカッターのようなシート向けの加工装置を用いることができ、特別な設備を要せずにフィラメントの集合体を吸収体内の所望の位置に配置できるようになる。
他方、本発明により製造される吸収性物品では、フィラメントの両端が吸収要素の周縁から内側に離間しているため、液がフィラメントを伝ってその両端まで拡散したとしても、吸収要素の周縁の手前で拡散を止めることができる。よって、吸収要素の端部に対する液の過供給が抑制されるようになり、漏れ防止が図られるようになる。
なお、本発明の吸収量とは次の手順で測定されるものである。
(1) サンプル繊維を5.0g秤量し、人工尿1L中に5分間浸漬する。
(2) 次に、サンプルを人工尿中から取り出して1分間吊り下げる。
(3) 次に、遠心分離機を用いて2250rpmで6分間液分を分離する。
(4) 次に、サンプルの重量を測定し、繊維重量(5.0g)を差し引いた値を吸収量とする。
さらに、この吸収性物品では、上層吸収体に供給された液分が上層吸収体内を通りフィラメントの両端に達したとしても、そこで液の拡散が止まり、吸収要素の周縁までは拡散しない。そして、上層吸収体内に拡散した液分は下層吸収体に移行して保持されるようになる。よって、吸収要素の端部に対する液の過供給が抑制されるようになり、漏れ防止が図られるようになる。
加えて、フィラメント両端と下層吸収体の周縁との離間距離が上記範囲内にあると、他の性能を損ねることなく、前述の漏れ防止効果に優れたものとなる。離間距離が短すぎると、漏れ防止効果に乏しくなり、長すぎると上層吸収体による拡散距離が短くなり、拡散性能が乏しくなるおそれがある。
<請求項記載の発明>
前記難吸収フィラメント集合体に前記液透過性シートを貼り付ける工程と、前記難吸収フィラメント集合体に高吸収性ポリマー粒子を間欠的に散布・投射する工程と、前記難吸収フィラメント集合体を、高吸収性ポリマー粒子の間欠部分で切断する工程とを有する、請求項に記載の吸収性物品の製造方法。
以上のとおり、本発明によれば、吸収要素の縁部に対する液の過供給が抑制され、漏れ防止が図られる等の利点がもたらされる。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について詳説する。
<パンツ型使い捨ておむつの例>
図1には、パンツ型使い捨ておむつの例が示されている。このパンツ型使い捨ておむつ10は、外面(裏面)側の外装シート12と内面(表面)側の内装体20とを備えており、外装シート12に内装体20が固定されているものである。内装体20は、尿や軟便などの液(後述する生理用ナプキンでは経血)を受け止めて吸収保持する部分である。外装シート12は着用者に装着するための部分である。
(外装シート)
外装シート12は、胴開口部WOから脚開口部LOの上端に至る前後方向範囲として定まる胴周り部12Tと、脚開口部LOを形成する部分の前後方向範囲として定まる中間部12Lとを有する。胴周り部12Tは、概念的に「胴周り上端部」12Wと「胴周り下部」12Uとに分けることができる。これらの前後方向の長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、胴周り上端部12Wは15〜40mm、胴周り下部12Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間部12Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うように括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。この結果、外装シート12は、全体としては略砂時計形状をなしている。図示例では、股間部における外装シート12の幅が、内装体20より短くされているが、この幅の関係は逆でもよいし、同一の幅でもよい。
外装シート12は、図2に示すように、内装体20が所定位置に設置され固定された後、前後に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。これによって、図1に示す構造の、ウエスト開口部WOと一対のレッグ開口部LOを有するパンツ型使い捨ておむつが得られる。
外装シート12は、一層のシートで形成しても良いが、外側層と内側層とをホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせた二層シートで形成するのが好ましい。外側層及び内側層としては、特に限定無く使用できるが、肌触りや防水性の観点から撥水性不織布を用いるのが好ましい。外側層、内側層の各々は、複数の素材を積層してなるものであっても良い。外側層及び内側層の各厚さは適宜定めることができるが、外側層の厚さが内側層の厚さ以上であるのが好ましい。外側層及び内側層は、それぞれ坪量5〜30g/m2の範囲内にあるのが好ましい。また、外側層12Sの厚さは5mm以下が好ましく、内側層の厚さは1mm以下が好ましい。
外装シート12には弾性伸縮部材12C,12Dが伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。弾性伸縮部材12C,12Dとしては、糸状や紐状、帯状等の細長状のゴム材であれば特に限定無く使用できる。
より詳細には、外装シート12の胴周り下部12Uにおける外側層と内側層との間に、幅方向に沿って延在する胴回り弾性伸縮部材12Cが前後方向に所定の間隔を空けて多数、例えば15〜40本程度平行に設けられる。
図1に示すように、内装体20と重なる部分において胴回り弾性伸縮部材12Cをエンボス加工や針刺し加工等により切断する、あるいは内装体20と重なる部分には胴回り弾性伸縮部材12Cを設けないことにより、収縮力を無くす若しくは弱めることができる。切断の場合、特開2002−178428号公報に示されるように、幅方向に所定の間隔で多数箇所切断しても良く、また一箇所だけ切断しても良い。このように、内装体20と重なる部分(一部または全部のいずれでも良い)において弾性伸縮部材12Cが不連続になっていると、内装体20に対して作用する収縮力が無くなる或いは弱くなり、内装体20が収縮することによる吸収阻害が発生し難くなる。この弾性伸縮部材12Cの切断部分または無い部分の幅は適宜定めることができる。また、図示形態と異なり、背側Bおよび腹側Fのいずれか一方のみ、胴回り弾性伸縮部材12Cを不連続にすることもできる。
胴回り弾性伸縮部材12Cの太さ、配置間隔は適宜定めることができるが、好適には、太さは1000dtex以下、特に700〜400dtex、配置間隔は1〜20mm、特に1〜10mmとされる。
一方、外装シート12の胴回り上端部Uでは、外側層が胴開口部WOにおいて外装シート12の内側に折り返され、この折り返し部分と外装シート12との間に、胴開口部WOの端縁に平行に間隔を置いて胴端部弾性伸縮部材12Dが伸張状態で固定されている。この胴端部伸縮部材12Dの太さ、間隔および本数は適宜定めることができるが、例えば太さとしては400〜900dtex、間隔としては3〜6mm、本数としては4〜10本程度が好ましい。
(内装体)
内装体20は、図3に示されるように、液透過性のトップシート30と、液不透過性シート(バックシートとも呼ばれる)70と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えている。この液不透過性シート70の裏面側には、前述した外装シート12が設けられている。さらに、内装体20の両側部に、使用面側に突出するバリヤーカフス60、60が設けられている。
(トップシート)
トップシート30は、液透過性の素材を用いて形成することができ、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。不織布としては、原料繊維により限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを用いることができる。さらに、不織布は、製造法により限定されるものでもなく、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の公知の方法により製造したものを用いることができる。このうち、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が好ましく、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が好ましい加工方法となる。
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
(液不透過性シート)
液不透過性シート70は、吸収体56の裏面側に配されるシートである。液不透過性シートの素材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを用いることができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。
(吸収要素)
吸収要素50は、下層吸収体56Bと、そのトップシート30側に設けられた上層吸収体56Aとを有しており、このうち上層吸収体56Aが、トウを開繊して得られ且つ吸収量が自重の1.0倍以下の難吸収フィラメント52の集合体で形成されている。そして、上層吸収体56Aのフィラメント52はトップシート30に沿って図示形態では前後方向に延在しており、かつ図2に示されるように、フィラメント52の両端(先端及び基端)が下層吸収体56Bの前縁及び後縁(吸収要素50の周縁)から内側に離間している。
この場合、上層吸収体56Aに供給された液分が上層吸収体56A内を通りフィラメントの両端に達したとしても、そこで液の拡散が止まり、吸収要素50の周縁までは拡散しない。そして、上層吸収体56A内に拡散した液分は下層吸収体56Bに移行して保持されるようになる。
フィラメント52の両端(上層吸収体56Aの前縁及び後縁)と、下層吸収体56Bの前縁及び後縁との離間距離yは、対象となる装着者によって異なるため一概には言えないが、10〜300mm、特に50〜150mmであるのが望ましい。離間距離yが短すぎると、漏れ防止効果に乏しくなり、長すぎると上層吸収体56Aによる拡散距離が短くなり、拡散性能が乏しくなるおそれがある。
また、上層吸収体56Aは、フィラメント52の両端のみならず、両側縁についても、下層吸収体56Bの両側縁から離間しているのが望ましい。この離間距離xは、対象となる装着者によって異なるため一概には言えないが、0〜90mm、特に0〜50mmであるのが望ましい。
なお、下層吸収体56Bのサイズとしては、前後長さ200〜600mm、幅100〜180mmとするのが好ましく、上層吸収体56Aのサイズとしては、前後長さ100〜500mm、幅50〜120mmとするのが好ましい。
上層吸収体56Aをなすフィラメント52の集合体は束状の集合体であり、散けたり、型崩れを起こしたりし易い。よって、製造上の取り扱いを容易にするために、図3に示すように、上層吸収体56Aのトップシート30側面に液透過性シート40をホットメルト接着剤等を用いて貼り付けたり、図4に示すように、上層吸収体56Aの周囲全体(表裏及び両側)を液透過性シート40で一体的に包んだり、あるいは図5に示すように、上層吸収体56Aの裏面に液透過性シート41をホットメルト接着剤等を用いて貼り付けるのが好ましい。前2者の場合、液透過性シート40の一部または全部を後述する中間シートとすることができる。また、いずれの場合においても、別途、トップシート30と上層吸収体56Aとの間に中間シートを設けることができる。
上層吸収体56Aを構成する難吸収フィラメント集合体は、難吸収フィラメント(実質的に連続する長繊維)で構成されたトウ(繊維束)を開繊することにより製造することができる。フィラメント52は物品の長手方向、幅方向、または厚さ方向等、任意の方向に沿って延在させることができる。
難吸収フィラメント52の材質としては、吸収量が自重の1.0倍以下であれば特に限定なく用いることができ、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸されたものであってもよい。
好適に採用できるセルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。ちなみに、セルロースアセテートの場合、吸収量は自重の0.1〜0.3倍程度である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。特に好ましいセルロースエステルは、セルロースジアセテートである。
難吸収フィラメントは、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
難吸収フィラメントの繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexが望ましい。フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。フィラメントの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。フィラメントは、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用される。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度のフィラメントを集束して構成するのが好ましい。
トウは、フィラメント間の絡み合いが弱いため、主に形状を維持する目的で、フィラメントの接触部分を接着または融着する作用を有するバインダーを用いることができる。バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
バインダーとして使用する熱可塑性樹脂には、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性または水難溶性樹脂、および水溶性樹脂が含まれる。水不溶性または水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
水不溶性または水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
トウは公知の方法により製造できるので詳説はしない。吸収要素50に好適に使用できるセルロースジアセテートのトウのベールは、セラニーズ社やダイセル化学工業などにより市販されている。セルロースジアセテートのトウのベールは、密度は約0.5g/cm3であり、総重量は400〜600kgである。
このベールから、トウを引き剥がし、所望のサイズ、嵩となるように広い帯状に開繊する。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは製品の吸収体の幅の100〜300mm程度とすることができる。また、トウの開繊度合いを調整することにより、吸収体の密度を調整することができる。
トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛け渡し、トウの進行に伴って次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアーを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
上層吸収体56Aは、高吸収性ポリマー粒子を含有しないのが好ましいが、含有させることもできる。高吸収性ポリマー粒子の詳細は後述する。
一方、下層吸収体56Bは、パルプ繊維55及び高吸収性ポリマー粒子54を混合し綿状に積繊してなる汎用吸収体である。下層吸収体56Bは、上層吸収体と同様に長方形とすることもできるが、図示例のように、股間部の両側部を脚周りに沿って弧状に切り欠いた砂時計状の形状とすることもできる。
高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む意味である。高吸収性ポリマー粒子54の粒径は特に限定されるものではないが、100〜1000μm、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の吸水量は特に限定されるものではないが、40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子54の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。また、高吸収性ポリマー粒子54としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
下層吸収体56Bにおける高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、当該吸収体の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。高吸収性ポリマー粒子54の目付け量を50g/m2以下とすることにより、高吸収性ポリマー粒子54の重量によって、軽量化効果が発揮されにくくなるのを防止できる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰により、製品に触れたときにジャリジャリした違和感を与えるようになる。
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子54は、下層吸収体56Bの平面方向で密度あるいは量を調整できる。たとえば、排泄部位に他の部位より多量の高吸収性ポリマー粒子54を存在させることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の密度(量)を高め、女用は中央部の密度(量)を高めることができる。また、下層吸収体56Bの平面方向において局所的(例えばスポット状)に高吸収性ポリマー粒子54が存在しない部分を設けることもできる。
(包被シート)
下層吸収体56B中に高吸収性ポリマー粒子54を含有させる場合、包被シート58で包むのが好ましい。上層吸収体56A中に高吸収性ポリマー粒子54を含有させる場合も同様である。この包被シート58も吸収要素50の構成要素である。
包被シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、8〜20g/m2、特に10〜15g/m2のものが望ましい。
包被シート58は、図3に示すように下層吸収体56Bのみ包む形態の他、図6に示すように上層吸収体56A及び下層吸収体56Bをまとめて包む形態も採用することができる。また、包被シート58は、図3に示すように対象全体を包むのが望ましいが、対象の裏面及び側面のみを包被するだけでも良い(図示せず)。
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体56Aへ移行させるために、トップシート30の裏面に直接接触するように、トップシート30より液の透過速度が速い中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれる)40を設けることができる。この中間シート40も吸収要素50の構成要素である。中間シート40は、液を速やかに上層吸収体56Aへ移行させて吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の「逆戻り」現象を防止するものである。
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を用いることができる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
中間シート(セカンドシート)40は、トップシート30の裏面に接触するように配置される。中間シート(セカンドシート)40を設けない形態としても良い。
中間シート40は、図示形態のように吸収要素50の幅よりも狭く且つ中央に配置されているのが好ましいが、吸収要素50の全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、吸収要素50の長さと同一でもよいし、排泄部を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。特に、中間シート40の幅、長さは、上層吸収体56Aの幅、長さと同じにするのが好ましい。
(保持シート)
吸収要素50として、高吸収性ポリマー粒子54を用いる場合、図6や図8に示すように、高吸収性ポリマー粒子54の配設部分よりも裏面側、すなわち図示形態では、下層吸収体56Bまたは吸収体56の裏面と、包被シート58との裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80を設けることができる。この保持シート80も吸収要素50の構成要素である。この保持シート80は必須の構成要素ではなく、従って設けなくても良い。
高吸収性ポリマー粒子54は、製造工程、あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、移動することがある。例えば、下層吸収体56B内に高吸収性ポリマー粒子54を混合した場合、下層吸収体56B内から高吸収性ポリマー粒子54が抜け落ちることがある。抜け落ちた高吸収性ポリマー粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。この問題点に対して、高吸収性ポリマー粒子54の配設部分よりも裏面側に吸収性ポリマーの保持性能を有する保持シート80を介在させると、包被シート58のみでは足りないコシを補強して、消費者が使用する際に手で触ったとき違和感を軽減又は防止する。
保持シート80の素材は、特に限定されず、高吸収性ポリマー粒子54の保持性能を有するものであれば足りる。具体的には、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維等を例示することができる。
保持シート80を不織布とする場合、その保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
保持シート80を設ける理由は、たとえば吸収体56から下方に抜け落ちた(抜け出た)高吸収性ポリマー粒子54を保持することにある。したがって、抜け出た高吸収性ポリマー粒子54に対して、包被シート58及び保持シート80を介して使用者に接触するので、使用者にジャリジャリした違和感として、伝わるおそれがない。特に上記の縮エネルギー及び圧縮レジリエンスである不織布であると、保持機能が十分に発揮される。
また、抜け出た高吸収性ポリマー粒子54は、保持シート80によって保持され、包被シート58上を移動することがないため、吸収能力の偏在が生じるおそれもない。特に、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布することができる。また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面とすることで、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するようにしてもよい。このための粗面化又は毛羽立ち手段としては、不織布の製造時におけるネット面でない非ネット面とする、マーブル加工を行う、ニードルパンチにより加工する、ブラシッング加工するなどを挙げることができる。
保持シート80は、図6等に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図示しないが、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。
上記例は、吸収体56と包被シート58の裏面側部位との間に保持シート80を設ける例であるが、保持シート80は、包被シート58より裏面側であってもよく(その形態は図示していない)、要は、吸収体56に対して裏面側に保持シート80を設ければ、製品の裏面から触る場合におけるジャリジャリした違和感を軽減させるあるいは生じさせないものとなる。
保持シート80を吸収体56と液不透過性シート70との間に設ける場合、難吸収フィラメント集合体よりも吸収量の多い繊維集合体、例えば吸収量が5〜30倍程度の繊維集合体を用いて保持シート80を形成すると、保持シート80により吸収体56の吸水性能を補うことができ、初期吸収速度および拡散性を向上できるため好ましい。させることができる。
(他の吸収要素の形態)
吸収要素50の下層吸収体56Bは、上記例のようにパルプ繊維55と高吸収性ポリマー粒子54の混合積繊体とするのが好ましいが、上層吸収体56Aと同様の難吸収フィラメント52の集合体に、高吸収性ポリマー粒子54を含有させることもできる。この場合、高吸収性ポリマー粒子54は、フィラメント52の集合体に対して、実質的に厚み方向全体に分散されるのが望ましい。この実質的に厚み方向全体に分散されている状態を図3の要部拡大図に概念的に示した。なお、フィラメント集合体の上部、下部、及び中間部に高吸収性ポリマー粒子54が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、フィラメント集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部の高吸収性ポリマー粒子54がフィラメント集合体表面に残存している形態や、一部の高吸収性ポリマー粒子54がフィラメント集合体から抜け落ちて包被シート58上にある形態、保持シート80上にある形態も排除されるものではない。
また、吸収要素50は、図示しないが三層以上の吸収体を有する構造としても良い。この場合、トップシート30側に位置する一つまたは複数の吸収体が前述の難吸収フィラメント集合体で形成されているのが好ましい。
吸収要素50として、複数の吸収体を積層する場合、全て同じ素材構成とすることも、またいずれか一つ又は複数の層を他の層に対して異なる素材構成とすることもできる。また、層数によらず、高吸収性ポリマー粒子のみからなる層を有しないのが好ましい。
(バリヤーカフス)
製品の両側に設けられたバリヤーカフス60、60は、トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために設けられている。
図示のバリヤーカフス60は、撥水性不織布シートを二重にしたものであり、吸収体56の裏面側からトップシート30の下方への折り込み部分を覆って、表面側に突出するように形成されている。防漏性を高めるために、特に、二重の不織布シート間に第2液不透過性シート72が挿入され、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在している。
また、バリヤーカフス60自体の形状は適宜に設計可能であるが、図示の例では、バリヤーカフス60の突出部の先端部及び中間部に弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム62が伸張下で固定され、使用状態においてその収縮力により、バリヤーカフス60が起立するようになっている。中間部の糸ゴム62が先端部の糸ゴム62、62よりも中央側に位置してトップシート30の前後端部に固定される関係で、図3のように、バリヤーカフス60の基部側は中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端部は外側に斜めに起立する形態となる。
(エンボス加工)
図7に示すように、トップシート30の表面側から厚み方向にエンボスによる凹部E,Fを形成してもよい。この場合、トップシート30のみにエンボスによる凹部Eを形成したりするほか、図示しないがトップシート30と中間シート40との両者にのみエンボスによる凹部を形成したり、図3や図7等に示すように、トップシート30の表面側から吸収体56A(または56B)の厚さ方向一部または略全体に達するようにエンボスによる凹部Fを形成したりすることができる。このようなエンボスによる凹部E,Fを形成させるためには、中間シート40としては、坪量が8〜60g/m2、厚さ0.2〜1.5mm、トップシート30としては、坪量が15〜80g/m2、厚さ0.2〜3.5mmの範囲にあるのが、透液性を阻害しない条件で、十分なエンボス加工を行えるため好ましい。
また、図示しないが、トップシート30に凹部を形成することなく、中間シート40のみにエンボスによる凹部を形成してもよく、さらにトップシート30及び中間シート40に凹部を形成することなく、吸収要素56のみにエンボスによる凹部を形成しても、また、トップシート30、中間シート40および包被シート58に凹部を形成することなく、吸収体58のみにエンボスによる凹部を形成してもよい。
さらに、図示しないが、裏面側から厚み方向にエンボスによる凹部を形成することもできる。このような凹部は、保持シート80、包被シート58、液不透過性シート70または外装シート12の裏面側から、トップシート30までのいずれかの部材に達するようにエンボス加工を施すことにより形成できる。また、このような裏面側の凹部は、表面側の凹部Eとともに形成するのが好ましいが、表面側の凹部Eを形成せずに裏面側の凹部のみ形成することもできる。凹部を表裏両側に設ける場合には、凹部の形態を表裏共通にしても良く、また表裏異なるものとしても良い。この場合、彫刻ロールと彫刻ロールとの間に製品を挟んで表裏同時にエンボス加工を施しても良い。
エンボスによる凹部E,Fはその延在方向に液を誘導し拡散させる効果がある。また剛性を高める効果もある。よって、エンボスによる凹部E,Fの形態はこれらの効果を考慮して決定するのが望ましい。例えば、凹部は、実質的に溝状に連続するもの(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)の他、複数の凹部が間隔を空けて点状に配置されるものであっても良い。また、平面パターンとしては、溝状または点状の凹部が、製品の長手方向、幅方向、これらを組み合わせた格子状、幅方向に往復するジグザグ状(千鳥状)、あるいは不規則に配置された形態等を採ることができる。さらに、ピン状、富士山状、蛇腹状等、適宜の形態を採用することができる。
特に、エンボス凹部としては、図2に示す平面パターンで、図3等に示すようにトップシート30の表面側から上層吸収体56Aに達するように形成するのが好ましい。この平面パターンのエンボス凹部Fは、少なくとも股間部の両側に、前後方向に沿って延在するとともに前後方向中間部が幅方向中央側に膨出する弧状部分を有する。このような弧状部分を有すると、幅方向中央の使用面を両脇よりも隆起させ、股間や臀裂に対するフィット性を高めることができる。また、図示形態のエンボス凹部Fでは、内側の弧状部分の前後端部間が幅方向に延びる部分により繋がれており、排泄部位が環状のエンボス凹部Fにより取り囲まれている。また、両側の弧状部分は、図示のように幅方向に間隔を空けて複数形成されている。この結果、不必要な液の拡散がエンボス凹部Fにより抑制され、漏れ防止効果に優れるようになる。
(その他)
なお、図示しないが、内装体20の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより相互に固定することができる。
(テープ式使い捨ておむつの例)
一方、図9及び図10はテープ式使い捨ておむつの例を示している。図10は図9における9−9線矢視図であるが、内装体20についてはやや誇張して図示してある。
テープ式使い捨ておむつ10Aは、おむつの背側両側端部に取り付けられたファスニング片を有し、このファスニング片の止着面にフック要素を有するとともに、前記おむつの裏面を構成するバックシートを不織布積層体とし、おむつの装着に当り、前記ファスニング片のフック要素を前記バックシートの表面の任意個所に係合可能となしたおむつである。
内装体20は、トップシート30と、液不透過性シート70との間に、吸収体56を介在させたものとなっている。この吸収体56は、包被シート58により全体が包まれており、平面的に視て長方形をなしている。吸収体56と包被シート58との間には保持シート80が設けられている。
さらに、トップシート30と吸収体56との間には、中間シート40が介在されている。液不透過性シート70は吸収体56より幅広の長方形をなし、その外方に砂時計形状の不織布からなるバックシート12Aが設けられている。
トップシート30は吸収体56より幅広の長方形をなし、吸収体56の側縁より若干外方に延在し、液不透過性シート70とホットメルト接着剤などにより固着されている。
おむつの両側部には、使用面側に突出するバリヤーカフス60Aが形成され、このバリヤーカフス60Aは、実質的に幅方向に連続した不織布からなるバリヤーシート64と、弾性伸縮部材、例えば糸ゴムからなる1本の又は複数本の脚周り用弾性伸縮部材としての糸ゴム62とにより構成されている。130は面ファスナーによるファスニング片である。
バリヤーシート64の内面は、トップシート30の側縁と離間した位置において固着始端を有し、この固着始端から液不透過性シート70の延在縁にかけて、幅方向外方部分がホットメルト接着剤などにより固着されている。バリヤーシート64の外面は、その下面においてバックシート12Aにホットメルト接着剤などにより固着されている。さらに、ガスケットカフス用弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム66が設けられている。
バリヤーシート64の内面の、液不透過性シート70への固着始端は、バリヤーカフス60Aの起立端を形成している。脚周りにおいては、この起立端より内側は、製品本体に固定されていない自由部分であり、この自由部分が糸ゴム62の収縮力により起立するようになる。
本例では、ファスニング片130として、面ファスナーを用いることで、バックシート12Aに対して、メカニカルに止着できる。したがって、いわゆるターゲットテープを省略することもでき、かつ、ファスニング片130による止着位置を自由に選択できる。
ファスニング片130は、プラスチック、ポリラミ不織布、紙製などのファスニング基材の基部がバックシート12Aに、例えば接着剤により接合されており、先端側にフック要素130Aを有する。フック要素130Aはファスニング基材に接着剤により接合されている。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合片を有する。フック要素130Aより先端側に仮止め接着剤部130Bを有する。製品の組立て末期において、仮止め接着剤部130Bがバリヤーシート64に接着されることによりファスニング片130の先端側の剥離を防止するようにしている。使用時には、その接着力に抗して剥離し、ファスニング片130の先端側を前身頃に持ち込むものである。仮止め接着剤部130Bより先端側はファスニング基材が露出して摘みタブ部とされている。
前身頃の開口部側には、バックシート12Aの内面側に、デザインシートとしてのターゲット印刷シート74が設けられ、ファスニング片130のフック要素130Aを止着する位置の目安となるデザインが施されたターゲット印刷がなされ、外部からバックシート12Aを通して視認可能なように施されている。
おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム62の収縮力が作用するので、脚周りでは、糸ゴム62の収縮力によりバリヤーカフス60Aが起立する。
起立部で囲まれる空間は、尿又は軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿はトップシート30を通って吸収体56内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、バリヤーカフス60Aの起立部がバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。万一、起立部の起立遠位側縁を乗り越えて横に漏れた尿は、平面当り部によるストップ機能により横漏れが防止される。
本形態において、各起立カフスを形成するバリヤーシート64は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましい。また、本発明の表面シート(不織布積層体)に対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。いずれにしても、バリヤーシート64及びバックシート12Aは、それぞれ通気性があり、かつバリヤーシート64及びバックシート12Aは、それぞれ耐水圧が100mmH2O以上のシートであるのが好適である。これによって、製品の幅方向側部において通気性を示すものとなり、着用者のムレを防止できる。
その他の点、例えば各部の使用素材等については、前述のパンツ型紙おむつの場合と同じであるため、敢えて説明を省略する。
<紙おむつの製造方法例>
次に、本発明の製造方法の実施形態について説明する。
(吸収要素の製造工程)
図11は、図3や図10等に示される吸収要素50の製造工程例を示している。ラインに上流側から包被シート58が供給され、次に保持シート80を設ける場合には保持シート80が供給される。この保持シート80に対しては、後に供給される下層吸収体56Bを固定するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤等の接着剤を塗布することができる。
続いて、積繊ドラム装置91においてパルプ繊維55及び高吸収性ポリマー粒子54を混合し積繊して形成された下層吸収体56Bが、間欠的に包被シート58または保持シート80上に供給される。その後、下層吸収体56Bは、セーラ92を通ることにより包被シート58により包み込まれる。
一方、中間シート40が供給され、ノズル95から中間シート40の上面にホットメルト接着剤等の接着剤が塗布された後、この中間シート40の上面に、上層吸収体56Aとして、トウ52Yを開繊してなる難吸収性フィラメント集合体52Zが供給され、貼り付けられる。開繊工程の詳細は後述する。なお、本工程に代えて、上層吸収体56Aよりも幅広な中間シート40を用い、中間シート40上に難吸収性フィラメント集合体52Zを配置した後、セーラを用いて中間シートの両側部を難吸収性フィラメント集合体52Zの上面に折り返して包むことにより、図4に示す吸収要素を製造することができる。
上層吸収体56Aに高吸収性ポリマー粒子を含有ささせる場合、開繊後から後の下層吸収体56Bへの貼り付けに先立って、SAP供給装置90により難吸収性フィラメント集合体52Zに高吸収ポリマー粒子を含有させることができる。SAP供給装置90の例については後述する。
続いて、下面に中間シート40が貼り付けられた難吸収性フィラメント集合体52Zは、スリップカッター等の切断貼付装置93により所定の長さに切断されるとともに、切断された難吸収性フィラメント集合体が下層吸収体56B上に間欠的に貼り付けられる。つまり、所定の間隔を空けて搬送されてくる下層吸収体56B上の所定位置に、切断された難吸収性フィラメント集合体が順次貼り付けられる。
図示形態では、切断貼付装置93の前では、中間シート40が下、難吸収性フィラメント集合体52Zが上となっているが、切断貼付装置93により折り返されるため、吸収要素50においては、中間シート40が上、難吸収性フィラメント集合体52Zが下となり、図3に示す形態となる。これに対して、切断貼付装置93により折り返さないように構成すれば、図5に示す形態と同様になる。
この上層吸収体56Aが貼り付けられた下層吸収体56Bは、その後、カッター装置94により搬送方向に分割され、個別の吸収要素50とされる。
(パンツ型の使い捨ておむつの場合)
次に、パンツ型の使い捨ておむつの場合、図12に示すように、上方からバリヤーカフス60の構成要素及びトップシート30が、下方から液不透過性シート70がそれぞれ供給される。ここで、バリヤーカフス60を構成するバリヤーシート64の供給ラインでは、予め、図示しない装置により2枚の不織布間に糸ゴム62が伸張下で、かつ第2液不透過性シート72が固定された状態での供給がなされ、トップシート30と共に主ラインに供給される。主ラインに供給されたバリヤーカフス60の構成要素、トップシート30及び液不透過性シート70は、図3等に示す形状に、セーラ96により折り畳みがなされる。
そして、カッター装置98により切断され、長手方向が搬送方向に沿う長方形の吸収性本体20が得られる。得られた吸収性本体20は、転回装置100により吸収性本体20の長手方向がラインと直交するように90度転回される。
一方、外装シート12のラインでは、予め2枚の不織布シート間に糸ゴム12Cが介在された(図示略)状態で流れ、かつ、脚周り部分を形成するためにカッター(図示略)により楕円形にくりぬかれ、組合せステーション102に達すると、その上で、かつ、くりぬき部位間に転回済みの吸収性本体20が設置され、ホットメルト接着剤などにより固定され、外装シート12と結合される。その後、水平ラインを境にして上下に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。その後、ライン方向に分断して(分断手段は図示していない)個別製品が得られる。
(テープ式の使い捨ておむつの場合)
他方、図13は、図9及び図10に示すテープ式の使い捨ておむつの製造方法例を示している。個別の吸収要素50を得るまでは、パンツ型の場合と同様である。この個別の吸収要素に対して、上方からトップシート30が、下方から液不透過性シート70がそれぞれ供給され、その後にバリヤーカフス60を構成するバリヤーシート64が供給される。バリヤーシート64の供給ラインでは、予め、図示しない装置により2枚の不織布間に糸ゴム62が伸張下で固定された状態での供給がなされる。ラインの最後では、吸収性本体を備える半製品がカッター装置98により分断され、製品10が得られる。
(開繊)
開繊工程は、例えば図14に示す形態のラインにより実施できる。すなわち、ベール52Xからトウ52Yが引き出され、拡幅装置120を介して段階的に拡幅されながら第1ニップ126A、第2ニップ126B、及び第3ニップ126Cを通り、拡厚装置110に導かれ、ここで厚さが拡大され、略最終的なフィラメントの集合体52Zとされた後、その上に、高吸収性ポリマー粒子散布手段90により高吸収性ポリマー粒子54が散布供給され、しかる後にセーラ92へと送り込まれる。ベール52Xからのトウの引き出しは、第1ニップ126A(駆動ニップロールに相当)による引き込みにより行われるようになっている。
特徴的には、ベール52Xから引き出されたトウ52Yは、ターン部122により角度変えが行われた後、回転自由に構成された一対のニップロールからなるフリーニップロール124のニップを介して、第1ニップ126Aにより引き込まれるようになっている。このような構成では、フリーニップロール124の移送抵抗(ニップ圧力やロール自重に応じて定まる)があたかもトウ52Yの引き込み速度を抑えるブレーキとして機能し、フリーニップロール124以降における張力が安定するようになる。これは、フリーニップロール124の回転がトウの通過のみで発生するようになっていることに起因するものである。
フリーニップロール124のニップ圧や自重は適宜定めればよいが、通常の場合、ニップ圧は0MPa超5MPa以下とするのが好ましく、また、ロール自重は、ロール一本あたり0kg超10kg以下とするのが好ましい。この範囲内であれば、張力の安定化を容易に実現できる。
かくして、トウの供給量を支配する第1ニップ126Aに対するトウ52Yの供給量が安定するようになり、もって吸収体のサイズ、重量、品質が安定するようになる。
また、ベール52Xから引き出されたトウ52Yは、ベール52Xとフリーニップロール124との間、フリーニップロール124と第1ニップ126Aとの間、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間、ならびに第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間にそれぞれ設けられた拡幅装置120により、段階的に所望の幅まで拡幅される。この際、併せて厚さ方向にも拡大することができる。
図15及び図16は、拡幅装置の例120を示している。この拡幅装置120は、トウを通す所定幅Xの角筒状通路120Aと、この通路120A内面における幅方向に沿う面に形成された圧縮エアーの噴出口120Bとを有し、通路120A内に導入されるトウ52Yを圧縮エアーの力により通路幅一杯に拡幅するものである。通路の高さは、導入されるトウ52Yの厚さ以上とされており、トウ52Yの厚さよりも高い場合には、トウ52Yは厚さ方向にも拡大される。
噴出口120Bは、図16に示されるように、通路120Aの幅方向中央に関して線対称をなし且つ通路120Aの幅方向中央に向かうにつれてトウ通過方向下流側に位置するくの字状(もしくはV字状)スリットとされている。
このようなスリット120Bからエアーを噴出させた状態で、トウが通路120A内に進入すると、進入位置が幅方向中央からずれていたとしても、トウ52Yが圧縮エアーの力をバランス良く受けるように幅方向中央側(図13中の矢印方向)に逃げ、自然にトウ52Yが通路120Aの幅方向中央に案内される。つまり、拡幅のための圧縮エアーを利用してトウ52Yの導入位置のセンタリングも可能になるのである。また、この形態では、トウ52Yを非接触で案内するため、ガイド部材等のように接触により案内するのと比べて、トウの傷みや崩れも発生し難い利点もある。また、このようなセンタリング機能を有する拡幅装置120は、拡幅におけるセンタリングだけでなく移送位置の補正機能をも発揮する。
上述のような圧縮エアーを利用したセンタリングを行う場合、スリットの形状はくの字状に限られず、通路120Aの幅方向中央に関して線対称をなし且つ通路120Aの幅方向中央に向かうにつれてトウ通過方向下流側に位置する条件を満足する限り、曲線状、円弧状等に形成することもできる。
一方、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間では、トウ52Yにテンションをかけるように張力が付与されており、逆に第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間は弛緩されるように、各ニップロールの周速度が設定されている。この結果、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間でトウ52Yにテンションがかけられることで、フィラメント相互の絡み合い等がある程度まで強制的に除去され、フィラメントの分離が促進されるとともに、この分離に伴って拡幅装置120によりトウ52Yを拡幅することで、トウ52Yの更なる均一な拡幅が可能となっている。また、第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間でトウ52Yの弛緩を行いつつ、拡幅装置120によりトウ52Yを拡幅することで、トウ52Yの更なる均一な拡幅が可能となっている。
より好ましい形態では、第2ニップ126Bの一方のローラは、長手方向に小さな間隔を置いて周方向に連続する溝が多数形成される。この溝は、フィラメントが多数の溝内に入り込むことで、トウの解しを促進させる機能がある。さらに、この場合、溝の効果を高めるために、第2ニップ126Bの一方の溝付ローラにおけるトウ52Yの抱き角度(トウ接触部分の回転方向角度)を大きくし、トウ52Yと溝付ローラとの接触面積を大きくするのも好ましい形態である。具体的には、第2ニップ126B上流側のトウ52Yと下流側のトウ52Yとのなす角度、つまり溝付ローラによる方向転換角度が180度未満、特に鋭角(90度よりも小)となるように構成することのが好ましい。
また、第1ニップ126A、第2ニップ126B及び第3ニップ126Cは、対をなすロールの径の組み合わせが相違しても良いが、その場合、周速度差によりロール間でトウ52Yに加わる張力やロールとトウ52Yとの接触抵抗などが、トウ幅方向において不均一になるおそれがあるため、全て共通するように構成するのが好ましい。
次に、第3ニップ126Cを通過したトウは、拡厚装置110に導かれる。拡厚装置110は、たとえば、特開昭59−500422号公報(WO 83/03267)に開示されたものと同様な構造であり、概略的には図17に示すように、入口110Aと出口110Bとの間にベンチュリー部110bが形成されるとともに、入口側に圧空の吹き込み口110aを備えるとともに、ベンチュリー部110bに空気の排気孔110cを有するものである。平面的にはほぼ長方形をなし、図17の紙面を貫通する方向に扁平な形状である。
吹き込み口110aからの圧空の吹き込みによって、エジェクター効果によって入口110Aから空気が入り込み、その結果、トウ52Yは引き込まれ、前進力が与えられる。トウ52Yがベンチュリー部110bに至ると、空気の排気孔110cから排気が行われ、かつ、ベンチュリー部110bの空間が拡大するために、主にトウ52Yの嵩が厚み方向に増加し、厚さが拡大される。なお、通路の幅を、導入されるトウ52Yの幅よりも広くすることにより、図17の下方に示すように拡幅も可能である。かくしてトウの開繊を行うことができる。
(SAP供給装置)
SAP供給装置90としては、フィラメント集52Z合体に対して高吸収性ポリマー粒子を実質的に厚み方向全体に分散させるものが好ましい。このような高吸収性ポリマー粒子散布手段90としては、高吸収性ポリマー粒子自体の自重よる落下力のみならず、加速力を与える手段が望ましい。この例を図18に示した。すなわち、下部に開口を有するケーシング90a内に投射孔90dを有する回転ドラム90bがウェブの移動方向(図18での反時計方向)に回転するように構成され、その内部にシャッタドラム90cが設けられたものである。これらを要素とする投射部90Aは、高吸収性ポリマー粒子を貯留するホッパーと連結されており、ホッパーからの高吸収性ポリマー粒子54は回転ドラム90b内に供給されるように構成されている。
このSAP供給装置では、予め、ケーシング90aの開口位置に対し、シャッタドラム90cの開口の位置調整が行われる。図18の状態では完全一致した全開状態を示してある。また、回転ドラム90bの投射孔90dは、周方向に分割された群として、図示では周方向に4つの群として分割され、したがって図示では回転ドラム90bが一回転する過程で、4枚分の紙おむつに対して高吸収性ポリマー粒子を散布・投射するようにしてある。
フィラメント52の集合体上に高吸収性ポリマー粒子54を連続的に散布・投射してもよいが、吸収要素50をカッター装置94によりライン方向に分割し、個別の吸収要素50とするときに、高吸収性ポリマー粒子54の存在によりカッター装置94の刃が短時間のうちに磨耗してしまう。そこで、高吸収性ポリマー粒子54を連続的に散布・投射するのではなく、図18に示すように、ゾーンZのみに間欠的に散布・投射するようにすることが望ましい。
このために、前述のように、回転ドラム90bの投射孔90dは、周方向に分割された群として、図示では周方向に4つの群として分割して形成することにより、高吸収性ポリマー粒子54をゾーンZのみに間欠的に散布・投射するようにしてあるのである。その結果、ゾーンZ、Z間でカッター装置94により分断でき、カッター装置94の刃の磨耗を抑制できる。
なお、高吸収性ポリマー粒子の散布量は、主に投射孔90dの孔径の大小、ケーシング90aの開口位置に対するシャッタドラム90cの開口の位置調整によって調節でき、加工ラインの速度に合わせて前記開口の位置は追従させると良い。また、高吸収性ポリマー粒子の散布パターンは、分割された投射孔90d群の配置によって調節できる。
一方、必要ならば、高吸収性ポリマー粒子54を圧力空気とともに、フィラメント52の集合体上に散布・投射することで、フィラメントの集合体に対して高吸収性ポリマー粒子が実質的に厚み方向全体に分散させることも可能である。しかし、フィラメント52の集合体上に散布・投射した高吸収性ポリマー粒子が、圧力空気によって散乱し、所定領域外に散布されるおれがある。
さらに、SAP供給装置90と共に、あるいはこれに換えて、フィラメントの集合体上に散布された高吸収性ポリマー粒子54をフィラメントの集合体の下方から、吸引するようにしてもよい。
また、前述の遠心分力を加えるSAP供給装置90に代えて、単に高吸収性ポリマー粒子を自重による落下させる形式の汎用のSAP供給装置を用いることもできる。
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、おむつカバーと併用する吸収パッド等の吸収性物品に好適なものである。
パンツ型使い捨ておむつの斜視図である。 パンツ型使い捨ておむつの展開状態平面図である。 図2の3―3線断面図である。 他の例の断面図である。 別の例の断面図である。 他の例の断面図である。 別の例の断面図である。 別の例の断面図である。 テープ式使い捨ておむつの展開状態平面図である。 図9の9−9線断面図である。 吸収要素の製造設備例を示す概要図である。 パンツ型紙おむつの製造設備例を示す概要図である。 テープ式使い捨て紙おむつの製造設備例を示す概要図である。 開繊設備の概要図である。 拡幅装置の概要図である。 図14のXV−XV断面図である。 拡厚装置の概要図である。 SAP供給装置例の概要図である。
10…パンツ型使い捨ておむつ、10A…テープ式使い捨ておむつ、12…外装シート、12A…バックシート、20…内装体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…難吸収フィラメント、52X…ベール、52Y…トウ、52Z…フィラメントの集合体、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、56A…上層吸収体、56B…下層吸収体、58…包被シート、60、60A…バリヤーカフス、64…バリヤーシート、70…液不透過性シート、72…第2液不透過性シート、80…保持シート、E…熱融着部分。

Claims (2)

  1. 使用面側のトップシートを透過した液を吸収する吸収要素を備え、
    前記吸収要素は、下層吸収体と、そのトップシート側に設けられた上層吸収体とを有しており、
    前記下層吸収体は、パルプ繊維又はフィラメントの集合体、及び高吸収性ポリマー粒子からなり、包被シートで包まれており、
    前記上層吸収体は、トウを開繊して得られ且つ吸収量が自重の1.0倍以下の難吸収フィラメント集合体を前記包被シートとは別の液透過性シートに貼り付けるか又は前記包被シートとは別の液透過性シートで包んだものであり、このフィラメント集合体は、フィラメントがトップシートに沿って延在しており、かつフィラメントの両端が前記下層吸収体の周縁から内側に10〜300mm離間している、
    ことを特徴とする吸収性物品を製造する方法であって、
    前記吸収要素の製造にあたり、
    パルプ繊維又はフィラメントの集合体、及び高吸収性ポリマー粒子を、包被シートで包んで前記下層吸収体を製造するとともに、
    トウを開繊して得られ且つ吸収量が自重の1.0倍以下の難吸収フィラメント集合体を、前記包被シートとは別の液透過性シートに貼り付けるか又は前記包被シートとは別の液透過性シートで包んだ後、前記難吸収フィラメントの連続方向に所定の間隔で切断して前記上層吸収体を製造し
    前記上層吸収体を、フィラメントの両端が前記下層吸収体の周縁から内側に10〜300mm離間するように、前記下層吸収体の上または前記下層吸収体におけるパルプ繊維又はフィラメントの集合体の上の所定位置に貼り付ける、ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
  2. 前記難吸収フィラメント集合体に前記液透過性シートを貼り付ける工程と、前記難吸収フィラメント集合体に高吸収性ポリマー粒子を間欠的に散布・投射する工程と、前記難吸収フィラメント集合体を、高吸収性ポリマー粒子の間欠部分で切断する工程とを有する、請求項に記載の吸収性物品の製造方法。
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