以下、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両の運転席の前方には、後側ほど高くなるように傾斜した状態でステアリングシャフト11が回転可能に設けられており、このステアリングシャフト11の後端部にステアリングホイール12が取付けられている。ステアリングホイール12は、円環状をなすリム部(リング部と呼ばれる場合もある)13と、リム部13によって囲まれた空間に配置されたパッド部14と、リム部13及びパッド部14を連結する複数本(図1では3本)のスポーク部15とを備えて構成されている。
なお、リム部13における周方向の位置を特定するために、本実施形態では、車両が直進しているときの状態(中立状態)を基準に、「上」、「下」、「左」、「右」を規定するものとする。
ステアリングホイール12の上記構成部材(リム部13、パッド部14及びスポーク部15)の各内部には、鉄、アルミニウム、マグネシウム、又はこれらの合金等の金属材料によって形成された芯金が配設されている。芯金はステアリングホイール12の骨格部分をなすものであり、図2に示すように円環状のリム部芯金16と、リム部芯金16の中心部分に位置し、上記ステアリングシャフト11に対し一体回転可能に取付けられるボス部芯金17と、リム部芯金16及びボス部芯金17を連結するスポーク部芯金18,19,20とを備えている。
図5、図13及び図14の少なくとも1つに示すように、リム部芯金16は、鉄製のパイプ材(丸パイプ)21を加工することにより形成され、ステアリングシャフト11の軸線A1に直交する断面において円環状(円形)をなしている(図14参照)。また、リム部芯金16は、上記軸線A1を含む断面において円環状をなしている(図5参照)。パイプ材21としては、板厚T1の比較的小さな(1mm前後)ものが適している。これは、後述するかしめを行ったときに、パイプ材21の意図する箇所を意図する形状に確実に塑性変形させるうえで必要な条件である。上記パイプ材21の周方向についての両方の開口端21A,21Bは溶接により相互に接合されており、リム部芯金16は無端状をなしている。
なお、リム部芯金16の材料としては、上記断面に継ぎ目のない、いわゆるシームレスパイプが適している。これは、パイプ材21に継ぎ目があると、後述する第1弾性部材35の摺動や弾性変形を妨げるおそれがあるからである。
図2に示すように、スポーク部芯金18〜20は、アルミニウム合金等の比較的比重の小さな金属材料を用い、ダイカスト、中圧鋳造、低圧鋳造等の鋳造法により一体に形成されている。スポーク部芯金18〜20の各々の外端部(ボス部芯金17から遠い方の端部)には、円弧状をなす結合部22,23,24が設けられている。これらの結合部22〜24は、特許請求の範囲において、リム部芯金16のスポーク部芯金18〜20との連結部分に該当する。各スポーク部芯金18〜20は、これらの結合部22〜24においてリム部芯金16の一部を被覆している。結合部22〜24のうち2つ(結合部22,23)は、リム部芯金16における車幅方向についての両側部、すなわちリム部芯金16の左側部及び右側部を被覆し、1つ(結合部24)はリム部芯金16の下部を被覆している。
なお、図示はしないが、リム部芯金16の全体、及び結合部22〜24は、断熱性、弾性等に富んだ合成樹脂等によって取り囲まれ、さらにその外側に皮革等からなる表皮が被せられている。
図1において二点鎖線で示すように、リム部芯金16の一部には、ダイナミックダンパからなる制振機構Dが組み込まれている。制振機構Dは、リム部13の周方向及び上下方向の各振動を抑制するための機構である。ここで、車両の走行中、タイヤにバランスウエイトの脱落等によって回転アンバランスが生ずると、その回転アンバランスに起因する振動がステアリングシャフト11を介してステアリングホイール12に伝達される。この伝達によりリム部13に発生する振動が、上記リム部13の周方向の振動(フラッター振動)である。また、上記リム部13の上下方向の振動は、車両のアイドリング時等において、エンジンからステアリングシャフト11等を介してリム部13に伝達される振動である。
ステアリングホイール12において上記制振機構Dを組み込む余地のある箇所としては、パッド部14(ロアカバー)内、及びリム部13内が考えられる。しかし、パッド部14内を制振機構Dの組込み先とすると、同制振機構Dを設定するためのスペースをパッド部14内に確保しなければならず、ステアリングホイール12の機能に付加価値を与える他部材の搭載を妨げる。そこで、本実施形態では、上記他部材の搭載がパッド部14内ほど行われないリム部13の内部、より詳しくは中立状態にあるリム部13の上部の内部を制振機構Dの組込み先としている。
図3及び図4の少なくとも一方に示すように、上記制振機構Dは錘収容室25を備えている。錘収容室25は、上記リム部芯金16の内部空間Sの一部によって構成されている。図4、図6及び図8の少なくとも1つに示すように、リム部芯金16の斜め左上部及び斜め右上部の各々において、同リム部芯金16の中心軸線A2に直交する断面上であって同中心軸線A2の周りの複数箇所には、同リム部芯金16の内部空間Sへ突出する内端壁部28,29が設けられている。本実施形態では、リム部芯金16の中心軸線A2を挟んで相対向する2箇所に内端壁部28,28(29,29)が設けられている。ここでの「2箇所」とは、中心軸線A2を基準として、それよりも内周側近傍となる箇所と、外周側近傍となる箇所である。各内端壁部28,29は、V字状の断面を有し、かつステアリングシャフト11の軸線A1に平行な内壁面を有している。内端壁部28,29は、錘収容室25の内壁のうち周方向における両端部に位置する。また、リム部芯金16の内壁のうち、両内端壁部28,29によって周方向に挟まれた箇所は、円形の断面形状を有する内周壁部31を構成している。表現を変えると、上記リム部芯金16の内部空間Sのうち両内端壁部28,29及び内周壁部31によって挟まれた箇所が錘収容室25となっている。錘収容室25がパイプ材21の一部によって構成されていることから、リム部芯金16の中心軸線A2に直交する断面では、錘収容室25は、内端壁部28,28,29,29の部位を除いて、円環状(円形)をなしている。また、錘収容室25は、ステアリングシャフト11の軸線A1に直交する断面では、略円弧状をなしている(図4参照)。
図4及び図9の少なくとも一方に示すように、上記錘収容室25内には、制振用の錘32が移動可能に配置されている。錘32は、錘収容室25内で移動可能な形状を有している。ここでは、錘32は、錘収容室25に対応した断面形状を有している。すなわち、錘32は、ステアリングシャフト11の軸線A1に直交する断面において略円弧状をなしており(図4参照)、リム部芯金16の中心軸線A2に直交する断面において円形をなしている(図9参照)。こうした構成により、錘収容室25内において錘32の周囲には円環状の隙間が生ずる。
錘32の周方向についての両端部とは異なる部分(以下、「中間部32M」という)の複数箇所、ここでは中央部及び両端部近傍の3箇所には、少なくともそれらの近傍よりも外径の小さな円柱状の被着部33が形成されている。この被着部33の直径D1は8〜12mmに設定されることが望ましく、ここでは10mmに設定されている(図11参照)。
上記錘32は、例えば、鉄、鉛、銅、真鍮等の金属材料を鋳造、押出成形し曲げ加工する等して形成することができる。そのほか、錘32はセラミック等によって形成されてもよい。
上記錘32は、その複数箇所に装着された第1弾性部材35及び第2弾性部材41によって、錘収容室25の内壁に弾性支持されている。これらの第1弾性部材35及び第2弾性部材41は、いずれも各種のゴム、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム(NR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム等によって形成されている。
第1弾性部材35は、特許請求の範囲における「弾性部材」に該当するものであって、錘32を錘収容室25の内周壁部31から離間させた状態で、同内周壁部31に弾性支持する役割を担う。第1弾性部材35は装着部36及び弾性部37を備えて構成されている。図10及び図11の少なくとも一方に示すように、装着部36は円筒状をなし、錘32の外周面のうち、上記被着部33に対し嵌合されている。弾性部37は、装着部36の周方向についての両方の端部のうち、リム部芯金16に対する錘32の挿入方向前側(図11では左側)の端部36Fに接続され、かつ同挿入方向後側(図11では右側)ほど拡径するテーパ状をなしている。装着部36の上記端部36Fにおいて、第1弾性部材35のリム部芯金16への挿入方向後側の面38Rは曲面状に形成されている。第1弾性部材35は、装着部36において錘32の被着部33に面接触し、弾性部37の外周部分において錘収容室25の内周壁部31に略線接触している。
ここで、第1弾性部材35(装着部36及び弾性部37)の板厚T2は、0.8〜1.6mmに設定されることが望ましい。板厚T2が0.8mmよりも薄いと、弾性部37を成形することが難しくなる。また、板厚T2が1.6mmよりも厚いと、弾性部37が弾性変形し難くなる。
第1弾性部材35がリム部芯金16内に挿入される前の状態では、弾性部37において外径の最も大きな箇所での直径D2は、次の条件を満たす値に設定される必要があり、例えば14〜20mmであることが望ましい。
(i)リム部芯金16の内径よりもわずかに大きいこと。
(ii)弾性部37をリム部芯金16内に挿入できること。
(iii )弾性部37がリム部芯金16内で弾性変形できること。
弾性部37の周方向についての長さL1は、4〜10mmに設定されることが望ましい。
装着部36の上記面38Rの半径R1は、0.2〜0.6mmに設定されることが望ましい。半径R1が0.2mmよりも小さいと、第1弾性部材35を成形するための成形型において必要な強度を確保することが難しくなる。また、半径R1が0.8mmよりも大きくなると、装着部36に対する弾性部37の接続箇所だけが他の箇所よりも極端に肉厚状となり、弾性部37が弾性変形しにくくなる。
弾性部37の装着部36となす角度α1は、20〜60°に設定されることが望ましい。角度α1が20°よりも小さいと、第1弾性部材35を成形するための成形型において必要な強度を確保することが難しくなる。角度α1が60°よりも大きいと、それに伴い弾性部37の周方向についての上記長さL1が短くなり、弾性部37が弾性変形しにくくなる。
図4、図12及び図16の少なくとも1つに示すように、各第2弾性部材41は、主として錘32を錘収容室25の内端壁部28,29から周方向へ離間させた状態で、同内端壁部28,29に弾性支持する役割を担う弾性部材であり、装着部42、弾性部43及び連結部44を備えて構成されている。装着部42は円筒状をなし、その一方の端部を蓋部42Cによって塞がれている。第2弾性部材41は、装着部42において錘32の周方向についての端部32Eに被せられている(図7参照)。装着部42は加硫接着等の手段によって上記端部32Eに固定されていて、同錘32と一体となっている。弾性部43は円筒状をなしており、直方体状をなす連結部44によって上記装着部42の蓋部42Cに連結されている。弾性部43の中心軸線A3(図6及び図8参照)はステアリングシャフト11の軸線A1(図3参照)に対し平行となっている。弾性部43の外表面(外周面)は、内端壁部28,29において、同軸線A1に平行な内壁面に対し略線接触している。各弾性部43は、内端壁部28,29と錘32との間で弾性変形可能である。
上記のようにして本実施形態におけるステアリングホイール12が構成されている。このステアリングホイール12では、内部に制振機構Dを有するリム部芯金16が次の(I)〜(VII )の工程を経て製作される。
(I)図13及び図14の少なくとも一方に示すように、円環状の開口を有する直線状のシームレスパイプ(以下、単にパイプ材21という)を所定の曲率(直径)にて円環状に曲げ加工する。この曲げ加工を経た段階では、パイプ材21の両方の開口端21A,21Bが相互に接近している。
(II)上記(I)の工程とは別に、上記パイプ材21と略同一の曲率で湾曲する円弧状をなし、かつ被着部33を有する錘32を、鍛造、鋳造、切削加工等により製作する。
(III )上記(II)の工程を経て得られた錘32の各被着部33に対し、図15に示すように第1弾性部材35を装着する。この際、錘32の周方向の一方の端部32Eから、第1弾性部材35の装着部36を拡径させながら錘32の外周に被せる。この装着部36を錘32に沿って周方向へ押すことで、目的の被着部33まで移動させる。錘32では被着部33が他の箇所よりも小径に形成されていることから、両者の間には段差34(図11参照)が生ずる。このため、装着部36を錘32の被着部33まで移動させて同被着部33上に嵌合させれば、第1弾性部材35が円弧状の錘32の周方向についての所望とする箇所に装着される。この状態では、上記の段差34によって装着部36の周方向への移動が規制される。
また、錘32の周方向についての両端部32Eに第2弾性部材41を装着する。この装着に際しては、第2弾性部材41の装着部42を錘32の端部32Eに被せる。装着部42を端部32Eに加硫接着する。
(IV)上記(I)の曲げ加工を経たパイプ材21において次の条件を満たす箇所(図14において「+」で示す箇所)に、それぞれ三角柱状をなす一対のかしめ具(図示略)を、それらの頂辺を対向させた状態で配置し、両かしめ具でパイプ材21を加圧する。
条件:パイプ材21の一方の開口端21Aから他方の開口端21Bに向けて、制振機構Dの周長(両第2弾性部材41の外端間の周長CL)以上離れていて(図15参照)、同パイプ材21の内周側近傍及び外周側近傍となる箇所であること。
上記加圧(かしめ)により、図15に示すように、パイプ材21の中心軸線(リム部芯金16の中心軸線A2と実質的に同じであるため、「中心軸線A2」と表記する)を中心として点対称の関係となる2箇所(180°おきとなる2箇所)が塑性変形する。この塑性変形により、V字状の断面を有し、かつステアリングシャフト11の軸線A1に平行な内壁面を有する内端壁部28が上記2箇所に形成される。
(V)上記(III )の工程により第1弾性部材35及び第2弾性部材41がそれぞれ取付けられた錘32を、図15に示すように周方向についての一方(図15では左方)の端部32Eから同周方向に沿って順に、上記(I)の工程を経たパイプ材21の一方(図15では右方)の開口端21Aから挿入する。この挿入に際しては、第1弾性部材35における装着部36の周方向についての両端部のうち、装着部36に対する弾性部37の接続されている端部36F(図11参照)が挿入方向前側となるようにする。錘32の挿入に伴い、その中間部32Mに装着された第1弾性部材35も、錘32と一緒に上記一方の開口端21Aからリム部芯金16内に入り込む。この際、弾性部37は挿入方向後側ほど拡径するテーパ状をなしていて、挿入方向前側ではリム部芯金16の内周壁部31よりも小径となっている。そのため、第1弾性部材35は上記開口端21Aからリム部芯金16内に容易に挿入されていく。
上記挿入の途中で弾性部37がリム部芯金16の内周壁部31に当接しても、この状態で、さらに第1弾性部材35がリム部芯金16内に挿入されると、弾性部37が装着部36側へ弾性変形することで、第1弾性部材35がそれ以上リム部芯金16内へ挿入されることが可能となる。このとき、第1弾性部材35(弾性部37)とリム部芯金16の内周壁部31との間で生ずる摩擦抵抗は、同第1弾性部材35を、中実体(特許文献1に記載されているような、断面形状が一様に円環状をなすもの、円筒状をなすもの、又は円筒状をなし、かつ周囲に複数の突部を有するもの等)とした場合よりも小さい。そのため、第1弾性部材35ひいては錘32は容易にリム部芯金16内へ挿入されていく。
このとき、挿入方向前側の内端壁部28は第2弾性部材41の位置決め部として機能し、同第2弾性部材41の開口端21B側(錘32等の挿入方向前側)への動きを規制する。
また、第1弾性部材35における円筒状の装着部36は、錘32において他の箇所よりも小径の円柱状をなす被着部33に嵌合されている。そのため、錘32が周方向へ移動したときに、仮に第1弾性部材35が錘32に対し相対移動したとしても、被着部33と他の箇所との間の段差34に当って止まる。装着部36が被着部33から外れることが起こりにくい。
なお、上記第2弾性部材41は錘32の周方向についての端部32Eに装着されている。このことから、錘32のリム部芯金16への挿入時にこの第2弾性部材41が挿入の妨げとはなりにくい。
そして、錘32は、第2弾性部材41の弾性部43が内端壁部28に略線接触する位置まで挿入されると、同錘32が第1弾性部材35及び第2弾性部材41によって錘収容室25の各壁部に弾性的に支持された状態となる。
(VI)図15に示すように、上記(V)の工程を経たパイプ材21の周方向について第2弾性部材41に対応する箇所であって、同パイプ材21の内周側近傍及び外周側近傍となる箇所(図15において「×」で示す箇所)に、三角柱状をなす一対のかしめ具(図示略)を、それらの頂辺を対向させた状態で配置し、両かしめ具でパイプ材21を加圧する。ここで、「パイプ材21の周方向について第2弾性部材41に対応する箇所」とは、パイプ材21の一方の開口端21Aから他方の開口端21A側へ若干離れ、かつ、かしめたときに左右の両弾性部43を周方向に押圧して若干弾性変形させることのできる箇所である。
上記加圧(かしめ)により、図4に示すように、パイプ材21の中心軸線A2を中心として点対称の関係となる2箇所(180°おきとなる2箇所)が塑性変形し、V字状の断面を有し、かつステアリングシャフト11の軸線A1に平行な内壁面を有する内端壁部29が上記2箇所に形成される。これらの内端壁部29は、第2弾性部材41の位置決め部として機能し、同第2弾性部材41の開口端21A側(錘32等の挿入方向後側)への動きを規制する。
(VII )上記(VI)の工程を経たパイプ材21の両方の開口端21A,21Bを合致させ、溶接により両開口端21A,21Bを接合させる。この接合により、パイプ材21が無端状となる。
上記の(I)〜(VII )の工程を経ることにより、内端壁部28,29を有するリム部芯金16が簡単かつ確実に形成される。このリム部芯金16の内部空間Sのうち両内端壁部28,29によって挟まれた箇所が錘収容室25となる。そして、この錘収容室25、錘32、第1弾性部材35及び第2弾性部材41によって制振機構Dが構成される。
上記の一連の工程では、リム部芯金16がパイプ材21によって形成されているため、リム部芯金16が、断面半円弧状をなす一対の半割体に分割された上記特許文献1とは異なり、一方の半割体内に錘32を配置した後に、この半割体に他方の半割体を接合させなくてもよい。これに伴い、第1弾性部材35の弾性変形や摺動に支障のないように両半割体を接合する際、比較的容易に精度を保って錘収容室25を形成することが可能となる。なお、上記のようにリム部芯金16をパイプ材21によって形成することは、錘32として、ステアリングシャフト11の軸線A1に直交する断面において「円弧状」をなすものを用いることにより初めて可能となる。錘として円環状(無端状)をなすものを用いる特許文献1では、パイプ材21によって形成されたリム部芯金16には組み込むことができず、半割体に分割されたリム部芯金を採用せざるを得ない。
上記のように制振機構Dが組み込まれた状態のリム部芯金16は、スポーク部芯金18〜20の形成に際し、ボス部芯金17とともに鋳型にセットされる。そして、鋳造法が実施されることにより、図2に示すようにボス部芯金17及びリム部芯金16を連結するスポーク部芯金18〜20が形成される。この際、上述したように、2つのスポーク部芯金18,19の結合部22,23は、リム部芯金16における車幅方向についての両側部、すなわちリム部芯金16の左側部及び右側部を被覆した状態で形成される。これらの結合部22,23の形成位置は、錘収容室25の両端の内端壁部28,29から周方向についての下方へ離れた箇所である。
なお、開口端21A,21B同士の接合部も、内端壁部29から周方向についての下方へ離れた箇所に設けられるが、この接合部は、結合部23の形成の際の影響(例えば、結合部23を鋳造で形成する際、接合部の溶接による凹凸が、溶湯の流れを乱す等)を考慮するならば、内端壁部29と結合部23との間の部位に設けることが望ましい。ただし、この点を考慮しなくてもよければ、接合部の溶接の際の、各弾性部材35,41への熱伝導が少しでも抑制される(距離的に離れる)ため、接合部を結合部23で覆われる部位に設けることが望ましい。また、接合部の凹凸を均す加工を施す等、凹凸の影響を抑制し、接合部を結合部23で覆われる部位に設ける構成としてもよい。
次に、上記のように構成された本実施形態の作用及び効果について説明する。
図4、図16(B)及び図17(B)は、リム部芯金16が周方向にも、上下方向にも振動していないときの制振機構Dの状態を示している。このときの錘32の位置を「中立位置」とする。このように錘32が中立位置にある状態では、各第1弾性部材35の弾性部37が装着部36側へ若干弾性変形し、同弾性部37のうち外径の最も大きな箇所において錘収容室25の内周壁部31に押圧状態で略線接触している。被着部33と内周壁部31の上部との間隙G1nは、同被着部33と内周壁部31の下部との間隙G2nと同程度となっている(図16(B)参照)。また、各第2弾性部材41の弾性部43が若干弾性変形し、同弾性部43が錘収容室25の対応する内端壁部28,29にそれぞれ押圧状態で略線接触している。内端壁部28及び錘32間の間隙G3nと、内端壁部29及び錘32間の間隙G4nとは同程度となっている(図4参照)。
次に、図16(A)は、リム部芯金16の上下方向への振動に応じ、錘32が上記中立位置(図16(B))から上方へ移動するときの制振機構Dの状態を示している。この状態では、各弾性部37の上部が錘32により上方へ押圧される。同弾性部37の上部は、被着部33と内周壁部31の上部との間で圧縮されてさらに弾性変形する。この際、各第1弾性部材35では、装着部36の上部と弾性部37の上部との間の空間45(図11参照)が弾性変形に利用されるため、同空間45を有しない場合(第1弾性部材35が中実体によって形成されている場合)に比べて弾性部37が弾性変形しやすく、錘32が上方へ移動しやすい。錘32の上記移動に伴い、被着部33と内周壁部31の上部との間隙G1が上記中立位置(図16(B))での間隙G1nより小さくなり、同被着部33と内周壁部31の下部との間隙G2が中立位置での間隙G2nよりも大きくなる。この間隙G2の拡大に伴い、被着部33と内周壁部31の下部との間で圧縮されていた弾性部37の下部が弾性復元する。
その後、錘32は移動方向を上方から下方へ変える。錘32の下方への移動が進むにつれ、被着部33と内周壁部31の上部との間隙G1が大きくなるとともに、同被着部33と内周壁部31の下部との間隙G2が小さくなる。錘32による弾性部37の上部に対する上方への押圧力が減少し、同弾性部37の上部が弾性復元し始める。そして、錘32が中立位置まで移動すると、制振機構Dは上述した図16(B)に示す状態に戻る。
引き続き、錘32が下方へ移動すると、弾性部37の下部が錘32により下方へ押圧される。同弾性部37の下部は、被着部33と内周壁部31の下部との間で圧縮されて弾性変形する。この際、装着部36の下部と弾性部37の下部との間の空間46(図11参照)が弾性変形に利用されるため、同空間46を有しない場合に比べて弾性部37の下部が弾性変形しやすく、錘32が下方へ移動しやすい。図16(C)に示すように、被着部33と内周壁部31の下部との間隙G2が上記中立位置(図16(B))での間隙G2nより小さくなるとともに、被着部33と内周壁部31の上部との間隙G1が上記中立位置での間隙G1nより大きくなる。
その後、錘32は移動方向を下方から上方へ変える。錘32の上方への移動が進むにつれ、被着部33と内周壁部31の下部との間隙G2が大きくなるとともに、同被着部33と内周壁部31の上部との間隙G1が小さくなる。錘32による弾性部37の下部に対する下方への押圧力が減少し、弾性部37の下部が弾性復元し始める。そして、錘32が中立位置まで移動すると、制振機構Dは図16(B)に示す状態に戻る。
上記のように上下方向への移動を行う錘32と、弾性変形する第1弾性部材35とは、所定の共振周波数(略30Hz)を有するばね−質量系のダイナミックダンパとして機能する。すなわちリム部芯金16が特定周波数域で上下方向に振動すると、錘32及び第1弾性部材35が、入力振動(リム部芯金16の上下方向の振動)とは逆の位相角をもって共振する。この共振による振動変位が、入力された振動による変位とは逆方向に生じることによって制振機能を奏する。この制振機構Dの発揮により、リム部芯金16の上下方向の振動が抑制(制振)される。
ここで、上記錘32は、第2弾性部材41を介し錘収容室25の内端壁部28,29に弾性支持され、第1弾性部材35を介して錘収容室25の内周壁部31に弾性支持されている。そのため、上記のように錘32が上下方向へ移動すると、第2弾性部材41の弾性部43と、内端壁部28,29との間でそれぞれ摩擦抵抗が発生する。この摩擦抵抗が錘32の上下方向への移動を妨げようとする。
しかし、本実施形態では、各第2弾性部材41の弾性部43が円筒状に形成されていて、その中心軸線A3がステアリングシャフト11の軸線A1に対し平行となっている。そして、上記軸線A1に平行な母線を有する弾性部43の曲面状の外表面(外周面)が、内端壁部28,29において上記軸線A1に平行な内壁面に略線接触している。このことから、錘32の上下方向への移動時には、第2弾性部材41が内端壁部28,29に対し摺動することとなるが、その摺動に伴い発生する摩擦抵抗は小さい。
そのため、リム部芯金16の上下方向への振動に応じて、錘32が上下方向へ移動しようとするとき、第2弾性部材41が錘32の移動の妨げとはなりにくい。錘32はリム部13の振動に応じて移動しやすく、高い制振性能を発揮する。
図17(A)は、リム部芯金16の周方向への振動に応じ、錘32が上記中立位置から反時計回り方向へ移動するときの制振機構Dの状態を示している。この状態では、錘32の移動方向前方に位置する左側の弾性部43が錘32により反時計回り方向へ押圧される。左側の弾性部43は、錘32と錘収容室25の内端壁部28との間で圧縮されて非円筒状に弾性変形する。この際、左側の弾性部43の内部の空間47が弾性変形に利用されるため、同空間47を有しない場合、すなわち、左側の弾性部43が円柱状をなす等、中実体である場合に比べて左側の弾性部43が弾性変形しやすく、錘32が反時計回り方向へ移動しやすい。錘32及び内端壁部28間の間隙G3が上記中立位置(図17(B))での間隙G3nより小さくなる。なお、図示はしないが、このときには、錘32及び内端壁部29間の間隙G4が上記中立位置(図4参照)での間隙G4nより大きくなる。右側の弾性部43に対する錘32による押圧力が減少・消失する。
その後、錘32は移動方向を、上記反時計回り方向から時計回り方向へ変える。錘32の時計回り方向への移動が進むにつれ、錘32及び内端壁部28間の間隙G3が大きくなるとともに、錘32及び内端壁部29間の間隙G4が小さくなる。左側の弾性部43に対する錘32による反時計回り方向への押圧力が減少し、同弾性部43が弾性復元し始める。そして、錘32が中立位置まで移動すると、制振機構Dは図17(B)に示す状態に戻り、左側の弾性部43は略円筒状となる。
引き続き、錘32が時計回り方向へ移動すると、移動方向前側(右側)の弾性部43が錘32により時計回り方向へ押圧される。右側の弾性部43は、錘32と内端壁部29との間で圧縮されて非円筒状に弾性変形する(図示略)。この際、右側の弾性部43の内部の空間47が弾性変形に利用されるため、同空間47を有しない場合に比べて同弾性部43が弾性変形しやすく、錘32が時計回り方向へ移動しやすい。錘32及び内端壁部29間の間隙G4が上記中立位置(図4参照)での間隙G4nより小さくなるとともに、図17(C)に示すように、錘32及び内端壁部28間の間隙G3が上記中立位置(図17(B))での間隙G3nより大きくなる。この場合、第2弾性部材41は円筒状を維持する、あるいは同図17(C)に示すように、さらに慣性により非円筒状に弾性変形する。
その後、錘32は移動方向を、上記時計回り方向から反時計回り方向へ変える。錘32の反時計回り方向への移動が進むにつれ、錘32及び内端壁部29間の間隙G4が大きくなるとともに、錘32及び内端壁部28間の間隙G3が小さくなる。右側の弾性部43に対する錘32による時計回り方向への押圧力が減少し、同弾性部43が弾性復元し始める。そして、錘32が中立位置まで移動すると、制振機構Dは図17(B)に示す状態に戻り、右側の弾性部43は略円筒状となる。
上記のように時計回り方向への移動、及び反時計回り方向への移動を行う錘32と、弾性変形する第2弾性部材41とは、所定の共振周波数(略15Hz)を有するばね−質量系のダイナミックダンパとして機能する。すなわちリム部芯金16が特定周波数域で周方向に振動すると、錘32及び第2弾性部材41が、入力振動(リム部芯金16の周方向の振動)とは逆の位相角をもって共振する。この共振による振動変位が、入力された振動による変位とは逆方向に生じることによって制振機能を奏する。この制振機能の発揮により、リム部13の周方向の振動(フラッター振動)が抑制(制振)される。
ここで、第1弾性部材35における円筒状の装着部36は、錘32において他の箇所よりも小径の円柱状の被着部33に嵌合されている。そのため、錘32の周方向へ移動したときに、仮に第1弾性部材35が錘32に対し相対移動したとしても、被着部33と他の箇所との間の段差34に当って止まる。装着部36が被着部33から外れることが起こりにくい。
また、上記錘32は、第1弾性部材35を介して錘収容室25の内周壁部31に支持されている。そのため、上記のように錘32がリム部13の周方向(時計回り方向及び反時計回り方向)へ移動すると、第1弾性部材35の弾性部37と錘収容室25の内周壁部31との間で摩擦抵抗が発生し、錘32の移動を妨げようとする。
しかし、本実施形態では、各第1弾性部材35が錘32の周方向についての中間部32Mに装着されていて、弾性部37が錘32の移動方向後側ほど拡径するテーパ状に形成されている。各第1弾性部材35は、弾性部37において内周壁部31に対し略線接触しているに過ぎない。このことから、錘32の上記移動時には、第1弾性部材35が略線接触の状態を維持しながら周方向へ移動することとなり、内周壁部31との間で発生する摩擦抵抗は小さい。そのため、リム部芯金16の振動に応じて、錘32が周方向へ移動しようとするとき、第1弾性部材35がその錘32の移動の妨げとはなりにくい。錘32はリム部芯金16の振動に応じて移動しやすく、高い制振性能を発揮する。
また、上記周方向の振動(フラッター振動)の振幅は充分に小さいため、錘32とともに第1弾性部材35が周方向へ往復動しても、弾性部37が反転する(裏返る)おそれはない。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)錘32として、ステアリングシャフト11の軸線A1に直交する断面において円弧状をなすものを用いているため、リム部芯金16としてパイプ材21からなるものを用いることができる。その結果、比較的容易に高い精度を保って錘収容室25を形成することができる。
(2)錘32の周方向についての中間部32Mに装着される第1弾性部材35として、円筒状の装着部36と、テーパ状の弾性部37とを備えるものを用いている。そのため、錘32をリム部芯金16に挿入する際に、弾性部37を撓ませることにより第1弾性部材35を錘32とともにリム部芯金16内に容易に挿入することができる。
(3)上記(2)に関連するが、第1弾性部材35をリム部芯金16内に挿入しやすくするための手法の1つとして、その挿入に先立ち第1弾性部材35にグリースを塗布することが挙げられる。グリースは、第1弾性部材35とリム部芯金16の内周壁部31との間の摩擦を小さくし、同第1弾性部材35を挿入しやすくする反面、その後に完全に除去されない限り、制振機構Dによる制振性能に影響を及ぼし、制振性能のばらつきを大きくするおそれがある。この点、本実施形態では、第1弾性部材35の形状を工夫することにより、リム部芯金16内に挿入しやすくなることからグリースが不要となる。そのため、グリースを使用することによる上記懸案事項(制振性能の不安定化、ばらつき増大)を招くことがない。
(4)錘32の周方向についての中間部32Mに、他の箇所よりも小径の円柱状の被着部33を設け、この被着部33に第1弾性部材35の装着部36を嵌合させている。そのため、装着部36の錘32への装着後(錘32及び第1弾性部材35をリム部芯金16に挿入するときも含む)に、弾性部37が被着部33から外れることを抑制することができる。
(5)錘32の周方向についての両端部に一対の第2弾性部材41を装着している。そのため、リム部芯金16が周方向へ振動する際には、その振動に応じ、両第2弾性部材41を弾性変形又は弾性復元させながら錘32を同周方向へ移動させ、リム部芯金16の周方向の振動(フラッター振動)を抑制することができる。
(6)第2弾性部材41の弾性部43として、円筒状をなし、かつ外表面が曲面状に形成されたものを用いている。そのため、弾性部43を、曲面状の外表面において錘収容室25の内端壁部28,29に対し略線接触させ、第2弾性部材41が略上下方向へ摺動する際の摩擦抵抗を小さくすることができる。リム部芯金16の振動に応じて錘32が上下方向へ移動しようとするとき、弾性部43がその錘32の移動の妨げとならないようにすることができる。
また、上記のように弾性部43を円筒状とすることにより、内部に空間47を有する構造としている。そのため、弾性部43を弾性変形しやすくし、錘32を移動しやすくして制振性能のさらなる向上を図ることができる。
(7)錘収容室25を、リム部芯金16のうちスポーク部芯金18〜20との連結部分(結合部22〜24)から離れた箇所である上部に設けている。そのため、スポーク部芯金18〜20を鋳造により製造する際に、溶湯の熱が錘収容室25内の耐熱性の低い部材である第1弾性部材35及び第2弾性部材41に伝わりにくくし、同弾性部材35,41の熱による影響を抑制することができる。
(8)リム部13の骨格部分として用いられる既設のリム部芯金16を利用し、その内部空間Sの一部を錘収容室25とし、ここに錘32、第1弾性部材35及び第2弾性部材41を収容している。そのため、ケース等を別途設けなくても錘収容室25を確保し、ステアリングホイール12の部品点数の削減を図ることができる。
(9)上記(8)に関連するが、リム部芯金16の内部空間Sへ突出する内端壁部28を設けるとともに、同内端壁部28からリム部芯金16の周方向へ離間した箇所に、上記内部空間Sへ突出する内端壁部29を設けている。そして、内部空間Sのうち両内端壁部28,29によって挟まれた箇所を錘収容室25としている。これらの内端壁部28,29により、リム部芯金16の内部空間Sについて錘収容室25とそうでない箇所とを区画することができる。表現を変えると、両内端壁部28,29により、錘収容室25の周方向についての両端を構成することができる。
これに伴い、両第1弾性部材35の錘収容室25から抜け出る方向への動きを内端壁部28,29により規制し、錘32の移動に伴う第2弾性部材41の弾性変形又は弾性復元を確実に行わせることができる。
(10)内端壁部28(29)を、リム部芯金16の中心軸線A2に直交する断面の複数箇所に設けている。そのため、両内端壁部28,29の錘収容室25への突出部分を簡単に多く確保でき、第1弾性部材35の錘収容室25から抜け出る方向への動きをより確実に規制することができる。
(11)第1弾性部材35の装着部36は、錘32の被着部33に対し単に嵌合されているにすぎず、固定されていない。そのため、装着部36は被着部33の周りを回転し得る。しかし、装着部36が円筒状をしていること、及び弾性部37がテーパ状をなしていること等から、第1弾性部材35が回転したとしても、常に錘収容室25の内周壁部31に略線接触した状態を維持できるため、問題となることはない。
(12)第2弾性部材41の装着部42を錘32の端部32Eに固定している。そのため、装着部42が端部32Eの周りを回転することがなく、回転により弾性部43の内端壁部28,29との接触態様の変化が生ずることを抑制することができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<スポーク部芯金18〜20について>
・スポーク部芯金18〜20をリム部芯金16とは別に製作し、同スポーク部芯金18〜20をリム部芯金16に対し溶接により結合してもよい。この場合にも、溶接の熱がリム部芯金16(錘収容室25)を通じて第1弾性部材35及び第2弾性部材41に伝わる。そのため、錘収容室25を、リム部芯金16のうちスポーク部芯金18〜20との連結部分から離れた箇所に設けることが有効である。このようにすれば、上述した(7)と同様の効果が得られる。
<錘収容室25について>
・リム部芯金16のうち、スポーク部芯金18〜20との連結部分(結合部22〜24)から離れた箇所であることを条件に、錘収容室25の位置を変更してもよい。
・錘収容室25をリム部芯金16の周方向の複数箇所に設け、各々の錘収容室25に対し、第1弾性部材35及び第2弾性部材41の装着された錘32を収容してもよい。
・リム部芯金16の中心軸線A2に直交する同一断面における内端壁部28(29)の数が単数、又は2以外の複数に変更されてもよい。単数の場合、内端壁部28(29)は、上記断面において円環状をなすリム部芯金16の全周にわたって形成されてもよい。また、内端壁部28(29)が複数設けられる場合、それらの内端壁部28(29)は、リム部芯金16の中心軸線A2を中心とした点対称の関係となる箇所に設けられてもよいし、点対称の関係とならない箇所に設けられてもよい。
・内端壁部28,29が、上記実施形態とは異なる断面形状で形成されてもよい。
・内端壁部28,29は、第2弾性部材41の円筒状の弾性部43と略線接触するものであることが望ましい。上述したように、弾性部43の中心軸線A3(図6及び図8参照)はステアリングシャフト11の軸線A1(図3参照)に対し平行となっている。弾性部43の母線も同軸線A1に対し平行となっている。この弾性部43の外表面(外周面)に略線接触するには、内端壁部28,29において少なくとも弾性部43との接触に係る面は、軸線A1に平行である必要がある。この条件を満たす形状としては、前記実施形態において採用したV字状の断面を有し、かつ軸線A1に平行な内壁面を有するもののほか、四角錐状が挙げられる。この場合には、内端壁部28,29の少なくとも1つの面を軸線A1に平行に形成する。なお、こうした形状の内端壁部28,29であっても、先端が四角錐状に尖ったかしめ具を用いてパイプ材21を加圧し、窪ませることによって容易に形成することができる。
・錘32が周方向に移動したときに第1弾性部材35の弾性部37が摺動しやすくなるように、内周壁部31の表面を滑らかな面に形成してもよい。このようにすると、錘32をリム部芯金16に挿入する際の第1弾性部材35と内周壁部31との間の摩擦抵抗が小さく、挿入しやすくなるメリットもある。また、上記と同様に、錘32が上下方向へ移動したときに第2弾性部材41の弾性部43が摺動しやすくなるように、内端壁部28,29の表面を滑らかな面に形成してもよい。
・内端壁部28,29の形成の際のかしめ角度は、リム部13のF−S(荷重−ストローク)特性に応じて変更可能である。
<リム部芯金16について>
・制振機構Dを内蔵したリム部芯金16の製造工程の順を、次の条件を満たす範囲内で変更してもよい。
条件1:パイプ材21を円環状に曲げ加工した後に、錘32、第1弾性部材35及び第2弾性部材41を同パイプ材21内に挿入すること。
条件2:条件1を満たした後に、パイプ材21の両方の開口端21A,21Bを溶接して接合すること。
従って、例えば、内端壁部28,29をかしめにより形成する作業を、上記実施形態とは異なる時期に実施してもよい。
<錘32について>
・錘32の被着部33とは異なる箇所の断面形状(ステアリングシャフト11の軸線A1に直交する断面での形状)を、パイプ状をなすリム部芯金16の一方の開口端21Aから挿入でき、錘収容室25内で移動できることを条件に、非円形に変更してもよい。
<第1弾性部材35について>
・第1弾性部材35を、錘32における中間部32Mの周方向についての4箇所又はそれ以上の箇所に配置する構成に変更してもよい。
・第1弾性部材35の装着部36を錘32の被着部33に対し加硫接着等に固定してもよい。この場合、第1弾性部材35は錘32と一体となって移動するため、上記実施形態のような小径状の被着部33に取付ける必要はなくなる。
・装着部36と弾性部37との間の空間(上記空間45,46を含む)に、同装着部36から放射状に延びて弾性部37に接続される複数のリブを形成してもよい。これらのリブの追加により、弾性部37の弾性変形のしやすさを調整して制振性能を変えることができる。
<第2弾性部材41について>
・装着部42を錘32の端部32Eに対し固定せずに、回転し得る態様で装着してもよい。例えば、装着部42を被着部33に単に嵌合させるだけにとどめてもよい。
・第2弾性部材41の弾性部43を、内部に空間47を有しない構造、いわゆる中実の構造としてもよい。
・内端壁部28,29との摩擦抵抗を小さくする観点からは、第2弾性部材41の弾性部43は、曲面状の外表面を有することが望ましい。この条件を満たす形状としては、上記実施形態で採用したような円筒状のほかに円柱状や球状がある。弾性部43を球状に形成した場合には、弾性部43はその球面状の外表面にて内端壁部28,29に対し略点接触する。この形態の接触により、弾性部43と内端壁部28,29との間で生ずる摩擦抵抗が、上記線接触の場合に比べ小さくなる。そのため、リム部13の上下方向の振動に応じて錘32が上下方向へ移動しようとするとき、第2弾性部材41は一層、錘32の移動の妨げとなりにくい。
・両第2弾性部材41は、錘32が中立位置にあるとき、ともに弾性変形させられていない状態で錘収容室25に収容されてもよい。この場合、中立位置から錘32が周方向の一方へ移動し始めたときに、錘32の移動方向の後側に位置する第2弾性部材41が一時的に内端壁部28(29)から離れる現象が起り得る。しかし、リム部芯金16の周方向への振動により錘32が周方向へ往復運動するようになると、錘32の移動方向の後側に位置する第2弾性部材41も内端壁部28(29)に接した状態で伸縮するため、特に問題とはならない。
<その他の事項について>
・本発明は、スポーク部芯金18〜20の数や、同スポーク部芯金18〜20のリム部芯金16との連結位置が前記実施形態とは異なるタイプのステアリングホイールにも適用可能である。
11…ステアリングシャフト、12…ステアリングホイール、16…リム部芯金、18〜20…スポーク部芯金、21…パイプ材、21A,21B…開口端、22〜24…結合部(リム部芯金のスポーク部芯金との連結部分)、25…錘収容室、28,29…内端壁部、31…内周壁部、32…錘、32M…中間部、33…被着部、35…第1弾性部材、36…装着部、36F…端部、37…弾性部、41…第2弾性部材、A1…ステアリングシャフトの軸線。