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JP4960663B2 - 椅子 - Google Patents

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JP4960663B2
JP4960663B2 JP2006210600A JP2006210600A JP4960663B2 JP 4960663 B2 JP4960663 B2 JP 4960663B2 JP 2006210600 A JP2006210600 A JP 2006210600A JP 2006210600 A JP2006210600 A JP 2006210600A JP 4960663 B2 JP4960663 B2 JP 4960663B2
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Description

本願発明は、座の前部が前傾するタイプの椅子に関するものである。
座の前部を前傾させ得る椅子が提案されている。例えば特許文献1は、股関節や膝関節が不自由な人に好適な椅子として、座の前端部を前傾動可能な前垂れ部となして、前垂れ部を任意の前傾角度に保持できるようにした椅子が開示されている。
また、特許文献2には、座を前後中間部において前後に分けて、座前部と脚とをガスシリンダやリンクで連結することにより、座の高さが高くなると座前部の前傾姿勢が大きくなるようにした椅子が開示されている。更に特許文献3には、座の前端寄り部分を座後部に対して、ばねに抗して前傾動するように連結することが開示されている。
これら各特許文献において座を屈曲可能な構造としているのは、目的の違いはあれ、着座した人の身体のプロフィールに座の形状(側面形状)を追従させんとしたものである。
特許第3316188号公報 特許第3150148号公報 実用新案登録2555234号公報
一般に、椅子は人が腰掛けて何らかの作業を行うことに使用されるが、近年、パソコンを主体としOA機器の普及により、オフィスでの作業はディスプレイと対峙してキーボードやマウスを操作する作業(以下、VDT作業という)が中心になっている。そして、調査によると、VDT作業を行う女性の大多数が下腿部のむくみに悩んでいることが分かった。
むくみは主として血行が悪くなることに基因したものであるが、女性に下腿部のむくみが発生しやすい理由は、次のように推測される。すなわち、男性の場合は、足を広げたり背を伸ばしたりというように作業中でも随時リラックスした姿勢を採るため血行障害はさほど現われないが、女性は椅子に両膝を揃えて下腿を動かさず、かつ、前傾姿勢で大腿部を座面で圧迫したまま長時間同じ姿勢で作業を行う傾向が強いためと推測される。或いは、同じ条件下で男性より女性のほうがむくみが発生しやすいという生理的な要因があるのかもしれない。
なお、女性に特有の障害として冷え性があるが、血行の悪化は冷え性の一因にもなっていると推測される(冷え性は、冷房のような椅子以外の要因が大きく作用していると解され、必ずしも大腿部の圧迫が主因であるとは言えないかもしれないが、大腿部の圧迫による血行不良が冷え性を助長していると推測される。)。
前記各特許文献のように座の前部を前傾させると大腿部に対する圧迫を抑制できるため、血行不良を防止してむくみを防止又は低減できるのではないかと考えられる。
しかし、特許文献1は摩擦を利用してロック機構によって座の前端部の姿勢を保持するものであり、座の前端部の姿勢変更に際して一々グリップを回転操作してロックを解除したりロックし直したりしなければならないため、変更作業が面倒であるという問あった。
また、特許文献3のものは、座の前部が前傾するとは言いつつも、座の前部が前傾すると、ばねが着座した人の大腿部に対して抵抗として作用するため、圧迫の除去という効果はあまり期待できない。
更に特許文献2のものは、座の前部の姿勢は座の高さによって一律に規定されてしまうため、ユーザーの個人差に全く対応できないという問題がある。また、特許文献2は、座前部と座後部とは殆ど同じ前後幅寸法になっており、このため、座前部を前傾させると身体が前滑りする傾向を呈する虞もある。
更に、オフィスでの作業は全く同じという訳ではなく、上半身を起こした姿勢で作業を行ったり前傾姿勢で作業を行ったりというように違いはあるものであり、このような作業の違いにより、座の前部が前傾していない状態としたり前傾した状態としたりというように変更したいと欲することがあるが(むしろ、このような用法が一般的であると言える)、特許文献2の構成ではユーザーの要望に応えることができないという点も問題であった。
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものである。
請求項1の発明は、脚で高さ調節可能に支持されたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、着座した人が凭れ掛かり得る背もたれとを備えており、前記座は、左右方向に延びる折り目を挟んで座前部と座後部とに分けられており、前記座前部は、側面視姿勢を変更させ得るように前記折り目を中心にして前傾可能な構成において、前記座と背もたれとは、前記背もたれが後傾動すると座が少なくとも後退動するように連動しており、このため、前記ベースには、前記背もたれと連動して動く中間部材が取り付けられており、前記座のうち座後部は前記中間部材に固定されている一方、前記座のうち座前部は、側面視姿勢を変更し得るように前記中間部材の前部に設けた支持手段を介して支えられており、着座した人が操作レバーを回動操作することで前記座前部の側面視姿勢が変更させられる。
請求項2の発明は、請求項1において、前記支持手段は、前記操作レバーの回動によって前記座前部を前傾前姿勢と前傾後姿勢とに選択的に支持するカム部材を備えている。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記座の全体の前後幅寸法は約430〜470mmに設定されている一方、前記座前部の前後幅寸法は約180〜220mmに設定されており、かつ、前記座前部の前傾角度が水平に対して約10〜20度に設定されている。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちの何れかにおいて、前記座後部は縦断側面視で上向き凹状に緩く凹んでおり、前記座後部が最も凹んでいる部分は座全体の前後中間点よりも後方に位置しており、更に、前記折り目は前記座後部の最も凹んだ部分よりも約90〜110mm前端側に位置している。
なお、座前部は前傾可能部と言い換え、座後部は固定部と言い換えても良い。この場合の固定部とは背もたれシンクロしない限り側面視姿勢が変化しないという意味であり、姿勢が全く変化しないという意味ではない。
人が着座した状態で上半身の重量は骨盤を介して座に作用するが、上半身の重量は主として臀部で分散された状態で座に作用する。従って、着座した人の臀部(骨盤)は座で安定的に支持される必要がある。換言すると、少なくとも座骨のやや前方よりも後方の部分は座で安定的に支持される必要がある。そして、座のうち前傾する座前部の前後幅が小さ過ぎると大腿部の圧迫除去効果が乏しく、逆に座前部の前後幅寸法が大き過ぎると、大腿部の圧迫は除去できても臀部(骨盤)の安定性が悪くなって逆に腰痛の原因になる虞がある。
これに対して本願発明は、実際に着座状態において体圧がどのように作用しているのかといった点を研究することで好適な数値を見出したもので、実施形態のように、座のうち前傾可能な座前部の前後幅寸法を座全体の前後幅寸法の1/4より大きくて1/2より小さい寸法とすることにより、人(骨盤)の安定性を損なうことなく大腿部に対する圧迫を可能な限り除去できるに至った。また、本願発明はレバーの回動操作によって座前部の姿勢を段階的に変えるものであり、このため座前部の姿勢変更をワンタッチ的に行うことができる。
この場合、実施形態に記載しているように、レバーの摘まみを細長い形状に形成して、座の座前部が水平姿勢のときには摘まみも水平姿勢と成し、座の座前部が前傾し切った姿勢のときには摘まみの姿勢を下向きとなるように設定すると、摘まみをどのような姿勢に回動させると座の座前部がどのような姿勢に変わるかということが使用者に非常に分かりやすいため、特に好適である。また、座の座前部は3段階以上の姿勢に変更させることも可能である。
一般に女性は着座状態で膝を揃える傾向があるが、一般に人の大腿部は股関節から膝に向けて細くなっているため、着座状態で膝を揃えていると、平面視において臀部から膝にかけて全体としての左右幅寸法は小さくなっている。そして、実施形態のように座の前端を平面視前向き凹状に形成すると、両膝を閉じ易くなるため特に好適である。また、座を最大幅部から前端に向けて左右幅が小さくなる形状にすると、膝を揃えている人の大腿部の平面形状と座とが相似形となり、このため見た目が良い。逆に見ると、座のうち大腿部が載る部分が先窄まりであるため、着座した人は自然に膝を閉じる(揃える)傾向を呈することになり、このため行儀良く見える。
座の具体的な数値としては、請求項3に記載している数値が好適であった。女性用の椅子の場合は、通常の椅子(従来は男女兼用)よりもやや小さめとするのが好適である。座の座前部の前後幅寸法は200mm程度が好適であった(なお、座の前端が平面視で凹んでいる場合の座前部の前後幅寸法は、凹みの最奥部から後端までの寸法を計っている。)。
人の臀部は丸みを帯びており、従って、座に上向き凹状の凹みを形成するとフィット感にすぐれていると共に、体圧を分散させることができて疲れにくい利点がある。そして、請求項4のように、座の折り目を最も凹んだ部分から90〜110mm前方に位置させると、人の身体にぴったりと馴染んで、安定性を確保しつつ圧迫を効果的に除去できて特に好適であった。
背もたれが後傾するロッキングタイプの椅子において、座を背もたれの後傾動に連動させて後退動及び/又は後傾させると、ロッキング時に座と背もたれとが離反することに基因して背もたれと人の背とがずれて生じるいわゆるシャツ捲れ(或いは背ずれ)を防止又は抑制できる等の利点があり、近年のオフィス用椅子ではこの連動機構(シンクロ機構)が多く採用されている。
そして、本願発明では、座の座前部は背もたれに連動して動く中間部材で支持されているため、シンクロタイプの椅子についても座前部を前傾させることができる。このため、椅子はより価値あるものとなっている。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(1).椅子の概要
まず、図1〜図7に基づいて椅子の概要を説明する。図1のうち(A)は正面図、(B)は右側面図、図2のうち(A)は平面図、(B)は図1(A)の IIB-IIB視断面図、(C)は背面図、(D)は座と背もたれのみの縦断側面図、図3は椅子の縦断側面図、図4〜図6は部材の斜視図、図7は動きを示す模式図である。
椅子は、脚1と、脚1の上端に取り付けたベース2と、その上方に配置した座3と、座3の後方に配置した背もたれ4とを備えている。脚1は、ガスシリンダからなる脚柱5と、脚柱5から放射状に延びる枝足6とを備えており、各枝足6の先端にはキャスター7を設けている。脚柱5のロックはベース2に設けたレバー8(図1(A)参照)の操作によって解除できる。
図5に示すように、ベース2は上向きに開口した略箱状に形成されている(詳細は後述する)。図2(D)及び図3に示すように、座3は、樹脂製の前後インナーシェル(座板)9,10とそれらの上面に一連に延びるように張ったクッション体11とを備えており、前部インナーシェル9の部分が座前部3aとなり、後部インナーシェル10の部分が座後部3bになっている。詳細は後述するが、前後座インナーシェル9,10は互いに連結されており、座前部3aは座後部3bとの連結部を中心にして前傾させることができる。
座3とベース2との間には、図4及び図6に示すように、座3と背もたれ4とが取り付く中間金具12が配置されている。中間金具12は請求項に記載した中間部材の例である。中間金具12は左右2本のパイプ13を備えており、パイプ13の後端は上向きに延びて背支柱13aになっている。すなわち、本願発明では座3の取り付けと背もたれ4の取り付けとを、一つの中間金具12で行っている。逆の見方をすると、背支柱13aに前向き水平部を一体に設けて、前向き水平部に座3を取り付けている。
中間金具12を構成する左右のパイプ13の前部には正面視上向き開口コ字状のフロントブラケット14が溶接によって固着されており、左右のフロントブラケット14に左右横長の第1支軸15が溶接によって固着されており、また、左右のパイプ13の水平部は、第1連結部体16及び第2連結体17で一体に連結されている。図3に示すように、後部インナーシェル10の下方には樹脂製の座アウターシェル18が配置されており、後部インナーシェル10は座受け板(座アウターシェル)18に着脱可能に固定されており、座受け板18は中間金具12の第1連結体16にビス等によって固定されている。
図4から理解できるように、中間金具12の第1支軸15は上下に重なり合う下部受け部材19と上受け部材20とで挟まれており、更に、上受け部材20には押さえ部材21が重なっており、これら三者は互いに重ねた状態でベース2にねじ(図示せず)で共締めされている。
図5に示すように、下受け部材19には前後左右4個の係合穴19aが上下に貫通して空いている一方、ベース2には、前記係合穴30aがきっちり嵌まるボス体2aが一体に形成されており、ボス体2aに下受け部材19を嵌め込むことにより、下受け部材19は水平方向に移動不能に保持される。押さえ部材21はボス体2aにビスで締結されている。ボス体2aは上窄まりになっており、このため、下受け部材19の嵌め込みが容易である。
ベース2には、下受け部材19の後端が当たるセンター突起2b、脚柱5が嵌まる穴2c、肘掛け(図示せず)を取り付けるための張り出し部2dなどが形成されている。なお、ベース2や上下受け部材19,20はアルミ等のダイキャスト製品であり、押さえ部材21は板金製品であるが、勿論、素材や加工方法は任意に選択できる。
上下受け部材19,20には第1支軸15が前後にスライドすることを許容する長溝22が形成されている。上下の長溝22は互いに重なることで長穴となっており、また、下受け部材19の長溝22が上受け部材20の長溝22よりも深さが深くなっている。
更に、上下受け部材20,19の間にはばね(圧縮コイルばね)23が配置されており、下受け部材19の後端にはばね23を後方から支持するための後ろ壁24が形成されている。他方、中間金具12の第1支軸15には、ばね23を前方から支える前部ばね受け25が重なっている。従って、中間金具12(及び座3と背もたれ4)は、ばね23に抗して後方にスライド可能でかつ第1支軸15を中心にして後傾し得る。
図3に示すように、背もたれ4は、樹脂製の背インナーシェル4aとその前面に張ったクッション4bとを備えており(勿論,クロスも張っている)。背インナーシェル4aは、例えば多数の横長スリットを形成するなどして、側面視形状を軽い力で変形させ得るように柔軟性を持たせている。中間金具12に一体に設けた左右背支柱13aの上端は断面コ字状のアッパー連結体13bによって連結されており、背インナーシェル4aの上端部はこのアッパー連結体13bに固定(連結)されている。
また、図3及び図6に示すように、背もたれ4の支持機構として、左右2本のパイプ材を有する側面視略L文字状の補助フレーム26が配置されている。補助フレーム26を構成する左右のパイプ15の前端部にはブラケット板27を介して第2支軸28が一体に固着されている。前記第2支軸28は、ベース2の後部に上下2割り方式の軸受け29,30で回動可能な状態に挟まれており、軸受け29,30は押さえ部材31によってビスでベース2に固定されている。従って、補助フレーム26はその支軸28を中心にして傾動し得る。
なお、図3において軸受け29,30は本来は断面表示すべきであるが、煩雑になるため断面表示(ハッチング)は施していない。また、図6では上方の軸受け部材29しか表示していない。
補助フレーム26を構成する左右パイプの前端部には、金属板製の第4連結体33が一体に固着されており、また、左右パイプの上端部には金属板製の第5連結体34が一体に固着されている。第4連結体33は前向き溝33aと羽根板33bとを備えている一方、左右背支柱13aの下部にはブラケット材36を介して第3支軸37が一体に固定されている。
そして、第3軸37を前後二つ割方式の軸受け38,39で回転可能に挟むと共に、前後軸受け38,39を前方から重なった押さえ部材40を介して第3連結体33に固定している。従って、中間金具12(背支柱13a)と補助フレーム26とは連動して回動する。後ろ側の軸受け38は第3連結体33の前向き溝33aに嵌まっており、押さえ部材40は第3連結体33の羽根板33bにビスで固定されている。
補助フレーム26における第4連結体34には、上向きに延びる左右一対の軸受け片34aが一体に形成されており、この左右軸受け片34aに挿通したピン41にコロ42を回転可能に嵌め入れて、コロ42を背インナーシェル4aの背面に当てている。背インナーシェル4aは、コロ42が当たった部分が最も手前に位置するように側面視で前向き凸状に押し曲げられている。また、背インナーシェル4aの最も前向き頂点部分は、着座した人の第3腰椎と略同じ高さになるように設定している。
図3に示すように、背インナーシェル4aの背面のうち補助フレーム26の第3連結体33と第4連結体34との間の部分には、後ろ向きに突出した左右ブラケット部43を介して左右横長のピン44を一体に形成している(ピン44は背インナーシェル4aと別部材でも良い)。
他方、図6から理解できるように、補助フレーム26の第3連結体33と第4連結体34とに、ピン44が嵌まるガイド体45をビスで固定している。ガイド体45は、上下長手でかつ下部が前向きに開口したガイド溝45aを有しており、ガイド溝45aにピン44が嵌まることにより、背インナーシェル4aは補助フレーム26から前向き離反不能に保持される。補助フレーム26は補助カバー46で前方から覆われている。
次に、図7に基づいて座3と背もたれ4の動きを説明する。本実施形態は中間金具12に座3と背もたれ4とが取り付けられているので、座と背もたれ4とは一体に後傾動する。そして、補助フレーム26と背支柱13a(中間金具12)とが連結されているため、補助フレーム26も背支柱13aの後傾動に連動して後傾するが、補助フレーム26の回動支点が背支柱13aの回動支点よりも後方に位置しているため、補助フレーム26は背支柱13aよりも大きな角度で後傾する。
このため、コロ42は、背支柱13aに対して相対的に後傾することになる。そして、背インナーシェル4aの下部に設けたピン44がガイド部材45に嵌まっていて、背インナーシェル4aの下部は補助フレーム26から離反不能に保持されているため、コロ42が背支柱13aに対して相対的に後退すると、背インナーシェル4aは、弾性復元力によって、縦断側面視で前向き凸状に大きく変形していた状態から扁平に近い状態に戻り変形することになる。つまり、背もたれ4(背インナーシェル4a)は、後傾すると扁平な状態に伸び勝手になる。
着座した人が上半身を直立姿勢又はやや前傾姿勢にしてキーボード操作等の作業を行う場合は、腰椎(特に第3腰椎のあたり)が背もたれ4で支えられることにより、人は安定した姿勢を保持できる。他方、ロッキング時に背もたれ4が前向き凸状に大きく湾曲したままであると、人の上半身はのけぞるような状態に曲げられるため安楽性に欠けるが、本実施形態では、ロッキング状態で背もたれ4は扁平な状態に伸び勝手になるため身体に違和感を与えることはない。
また、背もたれ4が伸び勝手となることにより、結果として背もたれ4は座3よりも大きな角度で後傾することになり、このため座3と背もたれ4とを中間金具12(背インナーシェル4a)に取り付けたものでありながら、背もたれ4に必要な後傾角度を保持せしめることができる。
なお、着座した人の腰椎の高さには個人差があるが、平均的な身長の人を基準にして高さ位置を設定しておけば、多少の身長の違いがあっても、概ね腰椎の上部あたりを前向き凸部で支えることができる。具体的には、成人女性向け椅子の場合、座面(座3の左右中間部)から背もたれ4における前向き凸部の最先端までの高さは190〜250mmに設定するのが好ましいと言える。
図2(C)から理解できるように、背もたれ4は、下端寄りの略3/5程度の範囲は、着座した人の腰の高さ位置において最も巾広となるように左右外側に張り出してかつ丸みを帯びており、その上方の部分は、上端に行くに従って左右巾が僅かに広がっている形状になっている。すなわち、背もたれ4は、着座した人の腰を中心にその上下の部分を左右から覆う腰ガード(サイドガード)が備えられた形態になっている。
背インナーシェル4aの後方には、背インナーシェル4aの略全高にわたって延びるバックカバー47を配置している(バックカバー47は背支柱13aに固定されている)。また、バックカバー47とベース2との間の空間はリアカバー48で塞がれており、更に、ベース2の前方にはフロントカバー49を装着しており、フロントカバー49の左右両側には、座前部3aを傾動操作するためのフロントレバーの摘まみ50が露出している。なお、フロントカバー49は座の前部インナーシェル9に取り付けられている。図1及び図2に示す符号51は背もたれ4を後傾可能な状態と後傾不能状態とに切り換えるレバーである。
(2).座部の詳細
次に、座部の詳細を主として図8以下の図面に基づいて説明する。図8は前後部インナーシェル9,10の分離斜視図、図9は座アウターシェル18の斜視図、図10は連結した状態での前後インナーシェル9,10の平面図、図11は座前部3aを傾動させるための部材の斜視図、図12はインナーシェル9,10,18を省略した状態での平面図、図13は図12の XIII-XIII視断面図、図14は図12の部分的な XIV-XIV視断面図、図15は座前部3aを傾動させるための部材の分離平面図、図16は図15の XVI-XVI視断面図、図17は座を省略した状態での部分的な平面図、図18は座を表示した状態での図17の XVIII-XVIII視断面図、図19及び図20は構造と動きを示す図で、それぞれ、(A)は図17のA−A視断面図箇所の断面図、(B)は図17の(B)−(B)視箇所での断面図である。
まず、インナーシェル9,10及び座アウターシェル18について説明する。前部インナーシェル9は略平板に近い形態であり、後部インナーシェル10は、正面視で上向き凹状に緩く曲がっており、また、縦断正面視では上向き凹状に緩く湾曲している。そして、前後インナーシェル9,10は、左右一対ずつの筒状軸受け部53と、半円状軸受け部54とに連結ピン55を通すことで屈曲可能に連結されている。
筒状軸受け部53はそれぞれ左右端部寄りに位置しており、半円状軸受け部54と中間部寄りに位置している。なお、本実施形態では、前後インナーシェル9,10を連結してからインサート成形法によってクッション体11を一体に成形しているが、クッション体11は別に製造して取り付けることも可能である。
座アウターシェル18は後部インナーシェル10の真下に配置されており、爪状係合部56と穴状係合部57との嵌め合わせにより、後部インナーシェル10を座アウターシェル18に取り付けている。座アウターシェル18が中間金具12に固定されていることは既述のとおりである。
ばね23と第1支軸15との関係は図13に明示されている。また、図14に示すように、上下受け部材19,20の長溝穴22は水平方向に延びている。このため、ばね23のばね力が過度に大きくなくても、人が座3に腰掛けただけで座3が後傾することはない。
ところで、従来のシンクロタイプの椅子では第1支軸は側面視で後傾姿勢の長穴に嵌まっており、このため、ばねのばね力が弱いと、着座によって座が後傾することになり、さりとて強いばねを使用すると背もたれ4の後傾に対して抵抗が強すぎてしまう。
これに対して本実施形態のように第1支軸15を水平動させると、着座の荷重Wが座3を後退させるように作用することはなく、人が背もたれ4に凭れ掛かることによって初めて座3が後退するため、ばね23は従来よりもばね力が遥かに弱いものを使用でき、このため、体重が軽い使用者(特に女性)が使用して背もたれ4に凭れ掛かっても、背もたれ4を軽快に後傾動させて快適なロッキング状態を確保できるのである。
次に、座前部3aを傾動させるための機構を図11以下の図面に基づいて説明する。中間金具12のフロントブラケット14は座前部3aの支持手段の一部を構成するものであり、フロントブラケット14には、パイプ13から前向きに突出した樋状張り出し部14aが形成されている。樋状張り出し部14aはパイプ13よりも下方に位置して、かつ、上面は側面視で前傾している。
左右フロントブラケット14の張り出し部14aには、座前部3aの支持手段の一部を構成する軸受け部材58が重ね配置されている。軸受け部材58は、左右外側に位置した側板58aと、側板58aの内側に位置した支持面58bと、樋状張り出し部14aの溝内に嵌まり込む下向き凸部58cと、パイプ13の下方まで入り込む後ろ向き凸部58dと、左右内側に張り出した内向き片58eと、フロントブラケット14の前面に当たる背面板58fとを備えており、後ろ向き凸部58dがピン59でフロントブラケット14に連結されている。
従って、軸受け部材58はフロントブラケット14に対して姿勢変更不能に保持されている。軸受け部材58の支持面58bは、基端部は水平状でそれより手前側は傾斜面になっている。なお、フロントブラケット14及び軸受け部材58においてピン59が嵌まる穴を符号60,61で示している。
座前部3aは例えば図11に示すフロントレバー62の回転によって側面視姿勢変更できる(図11ではフロントレバー62は他の部材よりも小さい縮尺で表示している。)。フロントレバー62は操作レバーの例であり、軸受け部材58の側板58aに形成した軸受け穴63に嵌まる左右の中心軸62aと、左右中心軸62aの間に折り曲げ形成したセンタークランク62bと、左右中心軸62aの外側に折り曲げ形成したサイドクランク62cと、サイドクランク62cの先端に折り曲げ形成した鉤部62dとから成っており、鉤部62dに既述した摘まみ50を固定している。
センタークランク62bの張り出し方向とサイドクランク62cの張り出し方向とは、中心軸58aの軸方向から見て略90度ずれている。フロントレバー62の角部は若干の丸みを帯びている一方、軸受け部材58の側板58aは薄いため、フロントレバー62は、その中心軸62aを軸受け部材58の軸受け穴63に嵌め入れることができる。
図15以降に示すように、フロントレバー62におけるセンタークランク62bの左右端部には、座前部3aの支持手段の一部を構成するカム部材(回動部材)65が外側から嵌め込まれている。カム部材65は、フロントレバー62のセンタークランク62bがその軸線と直交した方向にスライド可能な長穴65aを備えていて略扁平な筒状に形成されており、一端部は軸受け部材58の支持面58aに載っている。また、カム部材65の一端部(基端部)と他端部(先端部)とは側面視で丸みを帯びており、また、側面視において先端に行くに従って幅寸法が大きくなるように設定している。
カム部材65の先端部には、フロントレバー62のセンタークランク62bに上方から重なる左右の張り出し部62aを設けている。これは、センタークランク62bとの接触面積を大きくして回動の確実性を担保するためである。また、左右に張り出し部65aを設けているのは、1種類のカム部材65を左右に兼用するためである。
図19,図20に示すように、カム部材65はその基端を中心に回動して、軸受け部材58の背面板58fに重なった直立姿勢と、支持面58bの傾斜部に重なった前倒れ姿勢(水平状姿勢)とに姿勢を変更できる。カム部材65が直立した姿勢では摘まみ50は上下長手の姿勢になっており、カム部材65が前倒れした姿勢では摘まみ50も水平状に倒れた姿勢になっている。
そして、座3における前部インナーシェル9の下面には、カム部材65を直立姿勢に保持するためのストッパー突起66を形成している。ストッパー突起66の高さは低いため、フロントレバー62にある程度の力をかけるとカム部材65はストッパー突起66を乗り越えて回動しうる。また、着座した人の大腿部で座前部3aが押さえられていると、ストッパー突起66によってカム部材65の前向き回動が阻止されるため、座前部3aが不測に前傾する不都合はない。
図19(B)に示すように、前部インナーシェル9の前部かつ左右中間部には、フロントレバー62におけるセンタークランク62bの左右中間部が嵌まる側面視円弧状のガイド穴67けている。ガイド穴67は、前部インナーシェル9に下向き凹状の上ガイド面68を形成することと、上向き凹状の下ガイド体69を装着することによって形成されており、下ガイド体69は、前部インナーシェル9に形成した係合穴70に嵌め込み装着している。なお、下ガイド体69はその弾性に抗しての変形を利用して左右方向にスライドさせつつ係合穴70に嵌め込んでおり、前部インナーシェル9から下向きに離脱することはない。
(3).まとめ
図19及び図20から理解できるように、摘まみ50を介してフロントレバー62を回動(回転)操作して、カム部材65を直立姿勢と倒れ姿勢とに変更することにより、座前部3aは前傾していない通常姿勢と前傾姿勢とに変更することができる。この場合の前傾角度はθ(図20(B)参照)は15程度が好ましい。座前部3aの前傾姿勢においてカム部材65は軸受け部材58の傾斜した支持面58bに重なっているため、座前部3aの前傾姿勢が保持される。
座3の座前部3aと座後部3bとの前後幅寸法(奥行き寸法)の関係は図2(D)及び図10で表示している(実際の寸法は、インナーシェル9,10から前後方向にはみ出ているクッションの厚さも加算される。)。座3の全体の前後幅寸法をW0、座前部3aの前後幅寸法をW1とすると、(1/4・W0)<W1<(1/2・W0)になっており、かつ、実寸では、200mm程度が好適である。また、連結部(屈曲中心)は、座後部3bが最も凹んでいる部分3b′から90〜110mm手前に位置しているのが好ましい。座後部3bの最凹部3b′は座3全体の前後中心位置3′よりも後方に位置している。
この構成により、身体の安定性を損なうことなく使用者の大腿部が圧迫を受けることを極力回避できるのであり、これにより、使用者の下腿部むくみが発生することを防止又は著しく抑制することができる。
なお、座の前端の凹み寸法は、インナーシェル9において13〜20mm程度が好適であった。
(4).その他
本願発明の具体例は上記の実施形態に限定されるものではなく、他にも様々の形態に具体化することができる。例えば、背もたれを後傾させる機構は実施形態のような中間金具を使用することには限らない。
クッションを座前部と座後部とで別々に構成することも可能であるが、身体へのフィット性の面からは、本実施形態のようにクッションが前後に一連に延びているのが好適であるといえる。
椅子の正面図及び右側面図である。 椅子の平面図、図1(A)の IIB-IIB視断面図、背面図、座と背もたれのみの縦断側面図である。 縦断側面図である。 座部を構成する部材の分離斜視図である。 ベースと下受け部座との分離斜視図である。 背部を構成する部材の分離斜視図である。 座と背もたれとの動きを説明する概念図である。 前後部インナーシェルの分離斜視図である。 アウターシェルの斜視図である。 連結した状態での前後インナーシェルの平面図である。 座前部を傾動させるための部材の斜視図である。 インナーシェルを省略した状態での平面図である。 図12の XIII-XIII視断面図である。 図12の部分的な XIV-XIV視断面図である。 座前部を傾動させるための部材の分離平面図である。 図15の XVI-XVI視断面図である。 座を省略した状態での部分的な平面図である。 座を表示した状態での図17の XVIII-XVIII視断面図である。 座前部の動きを示す図で、(A)は図17のA−A視箇所の断面図、(B)は図17の(B)−(B)視箇所での断面図である。 座前部の動きを示す図で、(A)は図17のA−A視箇所の断面図、(B)は図17の(B)−(B)視箇所での断面図である。
1 脚
2 ベース
3 座
3a 座前部
3b 座後部
4 背もたれ
9,10 座のインナーシェル
14 フロントブラケット
18 座のアウターシェル
12 中間金具(中間部材)
13a 背支柱
23 ロッキング用ばね
26 補助フレーム
50 フロントレバーの摘まみ
62 フロントレバー(操作レバー)
65 カム部材
67 ガイド穴

Claims (4)

  1. 脚で高さ調節可能に支持されたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、着座した人が凭れ掛かり得る背もたれとを備えており、前記座は、左右方向に延びる折り目を挟んで座前部と座後部とに分けられており、前記座前部は、側面視姿勢を変更させ得るように前記折り目を中心にして前傾可能な構成であって、
    前記座と背もたれとは、前記背もたれが後傾動すると座が少なくとも後退動するように連動しており、このため、前記ベースには、前記背もたれと連動して動く中間部材が取り付けられており、前記座のうち座後部は前記中間部材に固定されている一方、前記座のうち座前部は、側面視姿勢を変更し得るように前記中間部材の前部に設けた支持手段を介して支えられており、着座した人が操作レバーを回動操作することで前記座前部の側面視姿勢が変更させられる、
    椅子。
  2. 前記支持手段は、前記操作レバーの回動によって前記座前部を前傾前姿勢と前傾後姿勢とに選択的に支持するカム部材を備えている、
    請求項1に記載した椅子。
  3. 前記座の全体の前後幅寸法は約430〜470mmに設定されている一方、前記座前部の前後幅寸法は約180〜220mmに設定されており、かつ、前記座前部の前傾角度が水平に対して約10〜20度に設定されている、
    請求項1又は2に記載した椅子。
  4. 前記座後部は縦断側面視で上向き凹状に緩く凹んでおり、前記座後部が最も凹んでいる部分は座全体の前後中間点よりも後方に位置しており、更に、前記折り目は前記座後部の最も凹んだ部分よりも約90〜110mm前端側に位置している、
    請求項1〜3のうちの何れかに記載した椅子。
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