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JP4815666B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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JP4815666B2
JP4815666B2 JP2000370322A JP2000370322A JP4815666B2 JP 4815666 B2 JP4815666 B2 JP 4815666B2 JP 2000370322 A JP2000370322 A JP 2000370322A JP 2000370322 A JP2000370322 A JP 2000370322A JP 4815666 B2 JP4815666 B2 JP 4815666B2
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    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

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  • Fuel Cell (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池システムに関し、さらに詳しくは、可搬型の小型電源、車載用動力源、コジェネレーションシステム等として好適な燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子型燃料電池は、一般に、固体高分子電解質膜の両面に燃料極及び空気極を接合し、その両側を反応ガス流路が形成されたセパレータで挟んだ構造を取る。また、燃料極及び空気極は、一般に、拡散層と触媒層の2層構造になっており、触媒層は、触媒を担持した担体と固体高分子電解質の複合体からなる。固体高分子型燃料電池を用いた燃料電池システムは、通常、このような単電池を多数積層した燃料電池スタックと、燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、空気極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段とを備えている。
【0003】
燃料ガス供給手段及び酸化剤ガス供給手段を用いて、燃料極及び空気極に、それぞれ、燃料ガス及び酸化剤ガスを供給すると、燃料が酸化され、水が生成する。その際に放出される自由エネルギー変化は、集電体を兼ねたセパレータを介して、直接、電気エネルギーとして取り出すことができる。この時、触媒層に含まれる固体高分子電解質は、三相界面においてプロトンの授受を行い、固体高分子電解質膜は、燃料極で生成したプロトンを空気極側に移動させる役割を果たす。従って、高い出力を安定して得るためには、膜及び電極の双方に含まれる電解質には、高プロトン伝導性が要求される。
【0004】
一方、固体高分子型燃料電池に用いられる電解質には、種々の材料が知られているが、これらは、いずれもプロトン伝導性を発現するためには水を必要とする。従って、連続的に供給される反応ガスによって電解質に含まれる水分が持ち去られると、電解質のプロトン伝導性が低下し、燃料電池の出力を低下させる原因となる。すなわち、固体高分子型燃料電池を用いた燃料電池システムにおいて、高い出力を安定して得るためには、電解質の含水率を一定に保つ必要がある。
【0005】
従来の燃料電池システムにおいては、この問題を解決するために、燃料電池の内部圧力を一定とし、かつ、バブラ、ミスト発生器等を用いて反応ガスを加湿したり、あるいは、セパレータ内部に形成された反応ガス流路に直接水分を注入する等、補機を用いて電解質に水分を補給する方法が用いるのが一般的である。
【0006】
また、反応ガスへの加湿を前提として、固体高分子型燃料電池の内部圧力をコントロールする高圧システムも知られている(例えば、David H.他著、"Fuel Cell Dynamics in Transit Applications, Univ. Calf.参照。)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、補機を用いた電解質の加湿は、加湿用の水を貯蔵するための水タンク、加湿器、燃料電池から排出される水を回収するための凝縮器等、さまざまなコンポーネントが必要となり、燃料電池システムが複雑かつ大型化するという問題がある。特に、高出力密度で発電を行う場合等、発熱が大きい場合には、燃料電池の温度の上昇によって電解質が乾燥し、電解質の抵抗が極端に上昇するので、大量の水を用いて電解質を加湿する必要がある。従って、このような場合には、大容量の水タンクとその回収システムが必要となり、燃料電池システムがさらに複雑かつ大型化する。
【0008】
また、補機を用いた電解質の加湿は、余分な補機動力が必要となり、燃料電池システムの発電効率を低下させる原因となる。さらに、車載用動力源への応用を考える場合、冬場に水タンクや燃料電池内部で水が凍結し、起動不能や、電池の故障の原因となることがある。
【0009】
一方、加湿を前提とした高圧タイプのシステムでは、上述した問題に加え、空気ポンプの動力損失が大きくなり、システム全体の効率を下げるという問題がある。また、電池の温度上昇を避けるために冷却容量を大きくすると、システムが大型化するという問題がある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、固体高分子型燃料電池を備えた燃料電池システムにおいて、補機による電解質の加湿を不要化することにある。また、本発明が解決しようとする他の課題は、100℃付近の高温をもカバーする広い温度範囲においても、安定に作動可能な燃料電池システムを提供することにある。さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、発電効率に優れ、出力密度が高く、しかも、コンパクトな燃料電池システムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、固体高分子型燃料電池と、該固体高分子型燃料電池の燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記固体高分子型燃料電池の空気極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段とを備えた燃料電池システムにおいて、前記空気極側の内部圧力を制御することによって、前記固体高分子型燃料電池に備えられる固体高分子電解質の含水率を安定作動に必要な水準に維持する含水率制御手段をさらに備えていることを要旨とするものである。
【0012】
空気極側の内部圧力を高くすると、空気極側の相対湿度が高くなり、空気極側から持ち去られる水分量が減少する。そのため、固体高分子型燃料電池の内部温度、出力電圧等に応じて空気極側の内部圧力を最適化すれば、反応ガスに対して加湿を行わなくても、固体高分子電解質の含水率を安定作動に必要な水準に維持することができる。また、これによって、100℃付近の高温においても、固体高分子型燃料電池を安定に作動させることができる。さらに、反応ガスを加湿するための補機が不要となるので、発電効率に優れ、出力密度が高く、しかも、コンパクトな燃料電池システムが得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に、本発明の第1の実施の形態に係る燃料電池システム10の概略構成図を示す。図1において、燃料電池システム10は、燃料電池20と、燃料ガス供給手段30と、空気供給手段(酸化剤ガス供給手段)40と、含水率制御手段50とを備えている。
【0014】
本実施の形態において、燃料電池20には、固体高分子型燃料電池が用いられる。固体高分子型燃料電池は、一般に、固体高分子電解質膜の両面に燃料極及び空気極を接合して膜電極接合体とし、その両側を燃料流路及び空気流路(いずれも図示せず)が形成されたセパレータで挟んだ構造を取る。燃料電池20には、通常、このような単電池が多数積層されたスタックが用いられる。
【0015】
燃料ガス供給手段30は、燃料インガス通路32と、燃料オフガス通路34と、水素供給源36とを備えている。燃料インガス通路32の一端は、水素供給源36に接続され、燃料インガス通路32の他端は、燃料電池20の燃料流路の一端に接続されている。また、燃料オフガス通路34の一端は、燃料電池20の燃料流路の他端に接続され、燃料オフガス通路34の他端は、排気口(図示せず)に接続されている。なお、水素供給源36は、純水素を供給する水素ボンベ、あるいは改質ガスを供給する改質器のいずれであっても良く、特に限定されるものではない。
【0016】
空気供給手段40は、空気インガス通路42と、空気オフガス通路44と、空気ポンプ46とを備えている。空気インガス通路42の一端は、空気を取り込むための吸気口(図示せず)に接続され、空気インガス通路42の他端は、燃料電池20の空気流路の一端に接続されている。また、空気オフガス通路44の一端は、燃料電池20の空気流路の他端に接続され、空気オフガス通路44の他端は、排気口(図示せず)に接続されている。さらに、空気インガス通路42には、空気ポンプ46が設けられ、酸化剤ガスとしての空気を燃料電池20の空気流路に送り込むようになっている。
【0017】
含水率制御手段50は、第1センサ(第1検出手段)52と、第2センサ(第2検出手段)54と、第1背圧弁(第1圧力変動手段)56と、制御回路(制御手段)58とを備えている。第1センサ52は、燃料電池20の空気極側の内部圧力を検出するためのものであり、本実施の形態では、燃料電池20内部に設けられている。第1センサ52により検出される空気極側の内部圧力は、制御回路58に送信されるようになっている。
【0018】
第2センサ54は、含水率監視変数を検出するためのものであり、本実施の形態では、燃料電池20の内部に設けられる。また、第2センサ54により検出された含水率監視変数の値は、制御回路58に送信されるようになっている。
【0019】
ここで、「含水率監視変数」とは、燃料電池20の作動状態を表す各種変数の内、固体高分子電解質の含水率と強い相関があるものをいう。含水率監視変数としては、具体的には、燃料電池20の内部温度、出力電圧、内部抵抗及びオフガス相対湿度が好適な一例として挙げられる。第2センサ54は、これらの内の少なくとも1以上の含水率監視変数を検出するものが好ましい。
【0020】
なお、本実施の形態において、含水率監視変数として用いられる「オフガス相対湿度」は、空気極側から排出されるオフガスの相対湿度であっても良く、あるいは、空気極側及び燃料極側の双方から排出されるオフガスの相対湿度の平均値(以下、これを「両極平均オフガス相対湿度」という。)であっても良い。また、図1においては1個の第2センサ54が示されているが、これは単なる例示であり、2種以上の含水率監視変数を同時に検出する場合には、必要数の第2センサ54が燃料電池20内部又はその周辺に設けられる。
【0021】
第1背圧弁56は、燃料電池20の空気極側の内部圧力を変動させるためのものであり、空気オフガス通路44上に設けられる。空気極側の内部圧力は、第1背圧弁56の開度を調節することにより制御され、第1背圧弁56の開度は、制御回路58から送信される背圧弁制御信号により制御されるようになっている。
【0022】
制御回路58は、燃料電池システム10の制御に必要な情報(例えば、第1センサ52、第2センサ54等により検出される燃料電池20の内部圧力、内部温度、内部抵抗、オフガス相対湿度等。)を受信する信号受信手段(図示せず)と、入力信号に基づいてシステム内にある各装置の制御量を算出する演算手段(図示せず)と、算出された制御量をシステム内の各装置に送信する信号送信手段(図示せず)を備えている。
【0023】
演算手段は、CPU、ROM、RAM等により構成され、ROMには、第2センサにより検出される含水率監視変数の値に応じて第1背圧弁56の開度を制御するための制御プログラムや、要求される出力が得られるように燃料流量及び空気流量を制御する制御プログラムなど、燃料電池システム10全体を制御するための各種の制御プログラムが格納されている。
【0024】
次に、本実施の形態に係る燃料電池システム10の運転方法について説明する。まず、燃料電池システム10に対して燃料電池20の出力の増減を指示する制御信号が入力されると、制御回路58は、要求される出力を得るために必要な燃料流量及び空気流量を算出する。次いで、制御回路58は、燃料供給源36及び空気ポンプ46に対し、それぞれ、燃料流量制御信号及び空気流量制御信号を送信し、算出された燃料流量及び空気流量が得られるように、燃料供給源36及び空気ポンプ44を制御する。
【0025】
制御回路58は、この状態で燃料電池20の運転を続けながら、第1センサ52及び第2センサ54を用いて、それぞれ、燃料電池20の内部圧力及び少なくとも1つの含水率監視変数を検出する。検出された含水率監視変数の値に変動がない場合には、現状の内部圧力のまま燃料電池20の運転が行われる。一方、含水率監視変数の変動が検出された場合には、制御回路58は、第1背圧弁56に対して背圧弁制御信号を送信し、第1背圧弁56の開度を制御する。
【0026】
第1背圧弁56の制御方法は、検出される含水率監視変数の種類によって異なる。一般的には、含水率監視変数が固体高分子電解質の含水率の低下傾向を強く示すほど、空気極側の内部圧力が高くなるように、第1背圧弁56の開度を制御すればよい。
【0027】
例えば、燃料電池20の内部温度が高くなるほど、燃料電池20内部が乾燥するので、固体高分子電解質の含水率は低下する傾向を示す。従って、第2センサ54により内部温度を検出する場合には、内部温度が高くなるほど第1背圧弁56の開度を小さくし、空気極側の内部圧力を高くすれば良い。
【0028】
また、例えば、燃料電池20の出力電圧が高くなるほど、発熱量が多くなるので、固体高分子電解質の含水率は低下する傾向を示す。従って、第2センサ54により出力電圧を検出する場合には、出力電圧が高くなるほど第1背圧弁56の開度を小さくし、空気極側の内部圧力を高くすれば良い。
【0029】
また、例えば、固体高分子電解質のドライアップが発生すると、一定の電圧に対する電流が減少し、燃料電池20の内部抵抗の増大となって現れる。従って、第2センサ54により内部抵抗を検出する場合には、内部抵抗が高くなるほど第1背圧弁56の開度を小さくし、空気極側の内部圧力を高くすれば良い。
【0030】
また、例えば、燃料電池20のオフガス相対湿度が低くなるほど、固体高分子電解質から持ち去られる水分量は増加する傾向を示す。従って、第2センサ54によりオフガス相対湿度を検出する場合には、オフガス相対湿度が低くなるほど第1背圧弁56の開度を小さくし、空気極側の内部圧力を高くすれば良い。
【0031】
さらに、上述した含水率監視変数の内の2種以上を同時に検出し、これらに基づいて固体高分子電解質の含水率が所定の水準に維持されるように、第1背圧弁56を制御してもよい。
【0032】
次に、本実施の形態に係る燃料電池システム10の作用について説明する。固体高分子型燃料電池の場合、空気極側では、電池反応により水が生成する。また、プロトンが空気極側に移動する際に、電気浸透により水分子も同時に空気極側に移動する。一方、燃料極側においては、水は生成せず、空気極側にある水の一部が、バックディフュージョンにより燃料極側に移動するのみである。
【0033】
すなわち、固体高分子型燃料電池の内部では、燃料極側よりも空気極側の方がより多くの水分を含んだ状態にある。従って、反応ガスを連続的に流しながら発電を行うと、燃料電池内部の水分の大部分は、オフガスと共に空気極側から外部に排出される。この排出される水分量は、通常、電池反応による生成水量より多いので、反応ガスに対する加湿量が少ないと、固体高分子電解質の含水率が低下し、出力低下を引き起こす。特に、燃料電池の内部温度が100℃付近の高温になると燃料電池内部が乾燥し易くなるので、反応ガスに対する加湿を行うことなく燃料電池の内部圧力を一定に維持したまま発電を行うと、固体高分子電解質の抵抗が極端に上昇し、発電できなくなる。
【0034】
これに対し、本実施の形態に係る燃料電池システム10は、含水率制御手段50により空気極側の内部圧力が可変制御されるので、内部圧力の変動に応じて固体高分子電解質の含水率も変動する。これは、空気極側の内部圧力が高くなるほど空気極側の相対湿度が高くなり、膜の含水率が高くなるためである。
【0035】
従って、含水率制御手段50を用いて、燃料電池20の作動状況に応じて空気極側の内部圧力を最適化すれば、補機を用いて反応ガスの加湿を行わなくても、固体高分子電解質の含水率を安定作動に必要な水準に維持することができる。また、100℃付近の高温域をもカバーする広い温度範囲において、固体高分子電解質の抵抗の上昇が抑えられ、無加湿でも安定に作動させることができる。さらに、反応ガスを加湿するための補機が不要となるので、発電効率に優れ、出力密度が高く、しかも、コンパクトな燃料電池システムが得られる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る燃料電池システムについて説明する。図2に、本実施の形態に係る燃料電池システム12の概略構成図を示す。図2において、燃料電池システム12は、燃料電池20と、燃料ガス供給手段30と、空気供給手段40と、含水率制御手段60とを備えている。
【0037】
ここで、燃料電池20、燃料ガス供給手段30及び空気供給手段40は、第1の実施の形態に係る燃料電池システム10と同一であるので、説明を省略する。
【0038】
含水率制御手段60は、第1センサ52と、第2センサ54と、第1背圧弁56と、第3センサ(第3検出手段)62と、第2背圧弁(第2圧力変動手段)66と、制御回路68とを備えている。これらの内、第1センサ52,第2センサ54及び第1背圧弁56は、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0039】
第3センサ62は、燃料電池20の燃料極側の内部圧力を検出するためのものであり、本実施の形態では、燃料電池20内部に設けられている。第3センサ62により検出される燃料極側の内部圧力は、制御回路68に送信されるようになっている。
【0040】
第2背圧弁66は、燃料電池20の燃料極側の内部圧力を変動させるためのものであり、燃料オフガス通路34上に設けられる。燃料極側の内部圧力は、第2背圧弁66の開度を調節することにより制御され、第2背圧弁66の開度は、制御回路68から送信される背圧弁制御信号により制御されるようになっている。
【0041】
制御回路68は、信号受信手段、演算手段及び信号送信手段を備えている点、並びに、演算手段には、第1背圧弁56の制御や燃料電池システム10全体を制御するための各種の制御プログラムが格納されている点は、第1の実施の形態と同様であるが、演算手段には、さらに、第2センサ54により検出される含水率監視変数の値に応じて第2背圧弁66の開度を制御するための制御プログラムが格納されている点が異なっている。
【0042】
次に、本実施の形態に係る燃料電池システム12の運転方法について説明する。まず、制御回路68は、要求される出力が得られるように、燃料供給源36及び空気ポンプ44を制御する。制御回路68は、この状態で燃料電池20の運転を続けながら、第1センサ52及び第3センサ62並びに第2センサ54を用いて、それぞれ、燃料電池20の空気極側及び燃料極側の内部圧力、並びに、少なくとも1つの含水率監視変数を検出する。検出された含水率監視変数の値に変動がない場合には、現状の内部圧力のまま燃料電池20の運転が行われる。一方、含水率監視変数の変動が検出された場合には、制御回路68は、第1背圧弁56及び第2背圧弁66に対して背圧弁制御信号を送信し、第1背圧弁56及び第2背圧弁66の開度を制御する。
【0043】
この場合、第2背圧弁66の一般的な制御方法は、第1背圧弁56と同様である。すなわち、第2センサ54により検出される含水率監視変数が固体高分子電解質の含水率の低下傾向を強く示すほど、第2背圧弁66の開度を小さくし、燃料極側の内部圧力を高くすれば良い。なお、空気極側及び燃料極側の内部圧力を同時に制御する場合、第1背圧弁56及び第2背圧弁66は、空気極側及び燃料極側の内部圧力がほぼ等圧となるように制御しても良く、あるいは、両者を独立に制御しても良い。
【0044】
次に、本実施の形態に係る燃料電池システム12の作用について説明する。固体高分子型燃料電池の場合、空気極側からより多くの水が排出されるが、水分の一部は、燃料極側からも排出される。また、燃料極側の内部圧力が変動すれば、燃料極側の相対湿度も変動する。そのため、含水率制御手段60を用いて、燃料電池20の作動状況に応じて空気極側及び燃料極側の双方の内部圧力を最適化すれば、加湿を行わなくても、固体高分子電解質の含水率を所定の水準に維持することができる。
【0045】
また、100℃付近の高温域をもカバーする広い温度範囲において、燃料電池20を安定に作動させることができ、発電効率に優れ、出力密度が高く、しかも、コンパクトな燃料電池システムが得られる。さらに、空気極側及び燃料極側の内部圧力を同時に制御することによって、固体高分子電解質膜の両側に発生する差圧が小さくなるので、膜の耐久性も向上する。
【0046】
次に、本発明に係る燃料電池システムの具体的な制御方法について説明する。上述したように、燃料電池20の作動状況に応じて燃料電池20の内部圧力を最適化すると、無加湿下においても固体高分子電解質の含水率を安定作動に必要な水準に維持することができる。燃料電池20の無加湿運転を可能とする内部圧力の具体的な制御方法としては、以下のような方法がある。
【0047】
(1) 第1の方法は、制御マップを使用する方法である。この方法は、燃料電池20の内部圧力、含水率監視変数、及び、固体高分子電解質の含水率の間の相関を予め制御マップとして求めておき、この制御マップに従って、燃料電池20の内部圧力を可変制御する方法である。
【0048】
図3に、制御マップの一例を示す。図3に例示する制御マップは、空気極側及び燃料極側の内部圧力がほぼ等圧となるように、その内部圧力を可変制御する燃料電池システム12を想定しているものであり、含水率監視変数として燃料電池20の内部温度Tを用いている。また、固体高分子電解質の含水率を直接、変数として用いる代わりに、両極平均オフガス相対湿度RHOFFで代用している。さらに、空気ストイキ比Sairは、1.2及び1.5の2種類とし、水素ストイキ比SH2は、1.2(一定)と仮定している。
【0049】
例えば、図3の実線で示す制御曲線は、空気ストイキ比Sairが1.5である場合において、内部温度Tの変動に応じて、空気極側及び燃料極側の実際の内部圧力がシステム圧力Pに等しくなるように曲線に沿って内部圧力を可変制御すれば、両極平均オフガス相対湿度RHOFFを100%に維持できることを示している。同様に、図3の破線で示す制御曲線は、空気ストイキ比Sairが1.5である場合において、両極平均オフガス相対湿度RHOFFを90%に維持するための内部温度Tとシステム圧力Pの関係を示す。同様に、図3の一点鎖線又は2点差線で示す制御曲線は、空気ストイキ比Sairが1.2である場合において、両極平均オフガス相対湿度RHOFFを、それぞれ、100%又は90%に維持するための内部温度Tとシステム圧力Pの関係を示す。
【0050】
実際に発電を行う際には、まず、このような1又は2以上の制御マップを燃料電池システム12の制御回路68に記憶させる。次に、所定の空気ストイキ比Sairで発電を行いながら、第2センサ54を用いて内部温度Tを検出する。次いで、検出された内部温度Tと制御マップとを対比し、所望の両極平均オフガス相対湿度RHOFFが得られるシステム圧力Pを求める。さらに、空気極側及び燃料極側の実際の内部圧力が、それぞれ、システム圧力Pに等しくなるように、第1センサ52及び第3センサ54で内部圧力を監視しながら、第1背圧弁56及び第2背圧弁66を制御する。これにより、燃料電池20の作動条件が変動しても、両極平均オフガス相対湿度RHOFFを一定の値に維持することができる。また、無加湿下においても、安定して発電を継続することができる。
【0051】
なお、実際の燃料電池システムにおいて、無加湿で安定に作動させるために必要な両極平均オフガス相対湿度RHOFFは、燃料電池20の構造に応じて最適な値を用いると良い。具体的には、固体高分子電解質膜の膜厚が50μm以上である場合には、両極平均オフガス相対湿度RHOFFが90%以上となるように、内部圧力を制御するのが好ましい。一方、固体高分子電解質膜の膜厚が50μm未満である場合には、両極平均オフガス相対湿度RHOFFが50%以上となるように、内部圧力を制御するのが好ましい。これは、電解質膜の膜厚が薄くなるほど、バックディフュージョンによる水の移動が容易となり、固体高分子電解質の含水率が安定作動に必要な水準に維持されやすくなるためである。
【0052】
(2) 第2の方法は、関係式を使用する方法である。この方法は、燃料電池20の内部圧力、含水率監視変数、及び、固体高分子電解質の含水率に関する実験式、理論式等の関係式を予め求めておき、この関係式に従って燃料電池20の内部圧力を可変制御する方法である。
【0053】
次の数5〜数8の式に、このような関係式の一例を示す。数5〜数8の式に例示する関係式は、空気極側及び燃料極側の内部圧力がほぼ等圧となるように、その内部圧力を可変制御する燃料電池システム12を想定しているものであり、含水率監視変数として燃料電池20の内部温度Tを用いている。また、固体高分子電解質の含水率を直接、変数として用いる代わりに、両極平均オフガス相対湿度RHOFFで代用している。
【0054】
【数5】
Figure 0004815666
【0055】
【数6】
Figure 0004815666
【0056】
【数7】
Figure 0004815666
【0057】
【数8】
Figure 0004815666
【0058】
数5の式は、燃料電池20の空気極側及び燃料極側の出口近傍での水蒸気分圧の平均値(両極平均水蒸気分圧)Pを表す関係式である。数5の式においては、両極平均水蒸気分圧Pに影響を及ぼす変数として、システム圧力P、空気ストイキ比Sair、燃料ストイキ比SH2、空気中の酸素モル分率CO2及び燃料中の水素モル分率CH2が考慮されている。これらの内、空気ストイキ比Sair及び燃料ストイキ比SH2は、主に燃料電池20に要求される出力によって決まる。また、空気中の酸素モル分率CO2及び燃料中の水素モル分率CH2は、使用する反応ガスの種類によって決まり、運転中に変動することはほとんどない。従って、数5の式において、両極平均水蒸気分圧Pに実質的に影響を及ぼすものは、システム圧力Pのみである。
【0059】
また、数6の式及び数7の式は、水の飽和水蒸気圧Pを示す理論式である。さらに、数8の式は、両極平均オフガス相対湿度RHOFFを定義する関係式であり、両極平均オフガス相対湿度RHOFFは、水の飽和水蒸気圧Pに対する両極平均水蒸気分圧Pの割合として定義される。従って、反応ガスの種類及び反応ガスの流量が与えられた場合において、内部温度Tが検出されると、数5〜数8の式より、両極平均オフガス相対湿度RHOFFを一定の水準に維持するためのシステム圧力Pを求めることができる。
【0060】
実際に発電をする際には、まず、このような関係式を燃料電池システム12の制御回路68に記憶させる。次に、所定の反応ガス供給条件下で発電を行いながら、第2センサ54を用いて内部温度Tを検出する。次いで、検出された内部温度Tと、これとは別に制御回路68により演算・検出される反応ガス供給条件とを関係式に代入し、所望の両極平均オフガス相対湿度RHOFFが得られるシステム圧力Pを算出する。
【0061】
さらに、空気極側及び燃料極側の実際の内部圧力が、それぞれ、算出されたシステム圧力Pに等しくなるように、第1センサ52及び第3センサ54で内部圧力を監視しながら、第1背圧弁56及び第2背圧弁66を制御する。これにより、燃料電池20の作動条件が変動しても、両極平均オフガス相対湿度RHOFFを一定の値に維持することができる。また、無加湿下においても、安定して発電を継続することができる。
【0062】
なお、圧力制御の判断基準となる両極平均オフガス相対湿度RHOFFの値は、燃料電池20の構造に応じて最適な値を用いれば良い点は、上述した第1の方法と同様である。また、固体高分子電解質膜の膜厚が50μm以上である場合には、両極平均オフガス相対湿度RHOFFは90%以上が好ましい点、及び、固体高分子電解質膜の膜厚が50μm未満である場合には、両極平均オフガス相対湿度RHOFFは50%以上が好ましい点も第1の実施の形態と同様である。
【0063】
【実施例】
(実施例1)
図2に示す燃料電池システム12を用いて、無加湿作動試験を行った。なお、燃料電池20には、電解質膜として厚さ50μmのナフィオン(デュポン社製、登録商標)112を用い、この両面に触媒層及び拡散層として、それぞれ、転写電極及びE−tek製拡散層を接合し、さらにその両側をカーボン製セパレータで狭持したものを用いた。電極面積は、13cmとした。
【0064】
無加湿作動試験の手順は、以下の通りである。すなわち、まず、内部温度T=80℃、空気ストイキ比Sair=1.77、カソード無加湿、水素ストイキ比SH2=1.2、アノード加湿(バブラ温度:70℃)の条件で燃料電池20を起動し、0.5A/cmの定電流条件下で発電を行った。
【0065】
燃料電池20の出力電圧が安定した後、アノードの加湿を止め、両極無加湿の状態で内部圧力を可変制御しながら発電を行った。具体的には、上述の数5〜数8の式を用いて、生成水のみによりカソードの両極平均オフガス相対湿度RHOFFが90%となるシステム圧力Pを求め、空気極側及び燃料極側の内部圧力が共にシステム圧力Pに等しくなるように第1背圧弁56及び第2背圧弁66を制御した。また、30分ごとに内部温度Tを5℃ずつ上昇させ、100℃までの出力電圧及びセルの内部抵抗を計測した。
【0066】
(比較例1)
空気極側及び燃料極側の内部圧力を2ata一定とした以外は、実施例1と同一の条件下で、無加湿作動試験を行った。
【0067】
実施例1及び比較例1で得られた無加湿作動試験の結果を、図4に示す。内部圧力一定の条件下で作動させた比較例1の場合、燃料電池20の内部温度Tが80℃の時には、両極無加湿であっても、約0.5(V)の出力電圧が得られた。しかしながら、内部温度Tの上昇に伴い、燃料電池20の内部抵抗は急激に上昇し、出力電圧は急激に低下した。また、内部温度Tが90℃以上になると、抵抗が大きくなりすぎ、運転できなくなった。
【0068】
これに対し、内部温度Tが80、85、90、95及び100℃の時に、内部圧力が、それぞれ、2.2、2.7、3.2、3.9及び4.7ataとなるように内部圧力を可変制御した実施例1の場合、内部抵抗は、内部温度Tによらずほぼ一定の値(約0.009(Ω))を示した。また、出力電圧は、内部温度Tが80℃から100℃までの広い温度範囲において、0.5(V)以上を示し、特に、内部温度Tが95℃以下の時には、出力電圧は0.6(V)以上を示した。図4より、温度に追随した圧力可変制御を行うことにより、高温無加湿の条件下においても安定に作動し、かつ高出力電圧が得られることがわかる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0070】
例えば、上記実施の形態では、酸化剤ガスとして空気を用いた例について主に説明したが、酸化剤ガスとして酸素を用いてもよい。また、本発明による電解質の無加湿化の手法は、特に固体高分子型燃料電池を備えた燃料電池システムに対して好適であるが、本発明の手法は、電解質の水管理が必須である他の種類の燃料電池(例えば、リン酸型燃料電池、アルカリ型燃料電池等)を備えた燃料電池システムに対しても同様に適用することができる。
【0071】
また、上記実施の形態では、含水率監視変数として燃料電池20の内部温度Tを用いた制御方法について主に説明したが、出力電圧、内部抵抗又はオフガス相対湿度を含水率監視変数として用いる場合も同様であり、これらの含水率監視変数を含む制御マップあるいは関係式を用いて内部圧力を可変制御することにより、高温無加湿の条件下においても安定に作動し、かつ高出力電圧が得られる燃料電池システムを得ることができる。
【0072】
【発明の効果】
本発明に係る燃料電池システムは、空気極側の内部圧力を制御することによって、固体高分子型燃料電池に備えられる固体高分子電解質の含水率を安定作動に必要な水準に維持する含水率制御手段を備えているので、補機による電解質の加湿を行わなくても、燃料電池が安定に作動するという効果がある。また、100℃付近の高温をもカバーする広い温度範囲においても、燃料電池が安定に作動するという効果がある。さらに、加湿のための補機が不要となるので、発電効率に優れ、出力密度が高く、しかも、コンパクトな燃料電池システムが得られるという効果がある。
【0073】
また、空気極側の内部圧力を可変制御すると同時に、燃料極側の内部圧力の可変制御も行うと、燃料電池から排出される総水分量がさらに少なくなり、電解質の無加湿化がさらに容易化するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】 本発明の第2の実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【図3】 内部圧力を可変制御するための制御マップの一例である。
【図4】 内部圧力が一定の場合及び内部圧力の可変制御を行った場合における内部温度、出力電圧及び内部抵抗の関係を示す図である。
【符号の説明】
10、12 燃料電池システム
20 燃料電池(固体高分子型燃料電池)
30 燃料ガス供給手段
40 酸化剤ガス供給手段(空気供給手段)
50、60 含水率制御手段
52 第1センサ(第1検出手段)
54 第2センサ(第2検出手段)
56 第1背圧弁(第1圧力変動手段)
58、68 制御回路(制御手段)
62 第3センサ(第3検出手段)
66 第2背圧弁(第2圧力変動手段)

Claims (1)

  1. 固体高分子型燃料電池と、該固体高分子型燃料電池の燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記固体高分子型燃料電池の空気極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段とを備えた燃料電池システムにおいて、
    前記空気極側の内部圧力を検出する第1検出手段と、
    前記空気極側の内部圧力を変動させる第1圧力変動手段と、
    前記固体高分子型燃料電池の内部温度を検出する第2検出手段と、
    前記燃料極側の内部圧力を検出する第3検出手段と、
    前記燃料極側の内部圧力を変動させる第2圧力変動手段と、
    前記第2検出手段により検出される固体高分子型燃料電池の内部温度及び次の数1〜4式を用いて、前記固体高分子型燃料電池の両極平均オフガス相対湿度RHOFFが許容範囲となるシステム圧力Pを算出し、前記第1検出手段により検出される前記空気極側の内部圧力及び前記第検出手段により検出される前記燃料極側の内部圧力が、それぞれ、前記システム圧力Pに等しくなるように、前記1圧力変動手段及び前記第2圧力変動手段を制御することにより、
    前記内部温度が上昇すると前記固体高分子燃料電池に備えられる固体高分子電解質の含水率が低下するという前記内部温度と前記含水率の間の強い相関に基づき、前記含水率を安定作動に必要な水準に維持するように制御する制御手段とをさらに備えることを特徴とする燃料電池システム。
    Figure 0004815666
    Figure 0004815666
    Figure 0004815666
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