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JP4807735B2 - 電力取引プログラム及び電力取引システム - Google Patents

電力取引プログラム及び電力取引システム Download PDF

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JP4807735B2 JP2006018355A JP2006018355A JP4807735B2 JP 4807735 B2 JP4807735 B2 JP 4807735B2 JP 2006018355 A JP2006018355 A JP 2006018355A JP 2006018355 A JP2006018355 A JP 2006018355A JP 4807735 B2 JP4807735 B2 JP 4807735B2
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Description

本発明は電力取引プログラム及び電力取引システムに関し、特に、学習能力を有する複数の電力需要者及び電力供給者をモデル化して、仮想的な卸電力取引市場で取引させる場合に適用して有用なものである。
欧米諸国を初めとして、電力産業の規制緩和とそれに伴う産業の構造改革が世界的に進展する中、わが国でも卸電力取引市場の運営が開始されることとなっている。今後、卸電力取引市場に参加する電力会社や卸売業者等の参加者が増えるにしたがって競争が激しくなることが想定されるため、参加者は卸電力取引市場の電力価格の変動に適切に対応して、経済的損失を抑え、利益を上げることが重要な課題となる。
このような課題の解決にあたっては、コンピュータによって電力取引を仮想的に実現して、電力の市場価格がどのように変動するかを把握し、現実の電力取引に活かす手法がある。
このような卸電力取引市場の電力取引を仮想的に実行するものに、発電機データ、電力系統データ、需要データ等の電力価格に影響を与える要因を基に、コンピュータで電力取引を演算し、最終的に電力価格を予測するシステムがある(特許文献1参照)。
ところで、現実の卸電力取引市場においては、参加者は様々な戦略を有して電力の売買をする。例えばある発電事業者は、買い手がつかないという危険性はあるものの卸値を高く設定したり、逆に利益は減少するものの電力を確実に販売できるように卸値を低く設定したりするといった戦略を有している。
また、かかる戦略に従って売買をした結果、どの程度の利益又は損失が発生したかが明らかになるため、参加者は取引結果に基づいて戦略を修正して、次の取引に臨むということが通常行われる。つまり参加者は電力取引を繰り返す過程で経験を重ね、次の電力取引の際にその経験を活かして、より大きな利益を挙げようとする学習能力を有している。
しかしながら、特許文献1に示される電力価格予測システムにおいては、上述のような参加者の売買行動における特性が考慮されたものではなく、必ずしも現実の電力取引市場を適切にシミュレートしているとはいえない。
特開2005−25377号公報
本発明は、かかる事情に鑑み、コンピュータ上で仮想的な卸電力取引市場、電力需要者及び電力供給者を形成すると共に、電力売買に関して学習能力を有する電力需要者及び電力供給者が仮想的に電力取引を実行する電力取引プログラム及び電力取引システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、現実世界における電力需要者の電力需要量データと電力供給者の発電電力量データ及び発電費用データに基づき、仮想的に卸電力取引市場、電力需要者及び電力供給者を形成すると共に、前記卸電力取引市場を介して前記電力需要者と前記電力供給者との間で電力取引を行わせるプログラムであって、コンピュータを、前記コンピュータに設けられた入力手段を介して、前記電力需要量データと前記発電電力量データと前記発電費用データと電力を購入する方針を決定する需要者戦略パラメータと電力を販売する方針を決定する供給者戦略パラメータと前記電力需要者及び前記電力供給者の生成数と電力取引を繰り返す回数を表す総取引ターン数と電力の小売価格を表す小売価格データとを取得するパラメータ入力手段と、所定の需要予測関数より見積需要電力量を算出すると共に、前記見積需要電力量と前記需要者戦略パラメータに基づいて、購入を希望する電力量とその価格を表す需要者入札データとを算出する前記電力需要者を前記電力需要者の生成数だけ形成する需要者形成手段と、前記発電電力量データと前記発電費用データと前記供給者戦略パラメータとに基づいて、販売を希望する電力量とその価格を表す供給者入札データとを算出する前記電力供給者を前記電力供給者の生成数だけ形成する供給者形成手段と、前記需要者入札データと前記供給者入札データに基づいて電力の市場価格を算出すると共に、前記市場価格、前記需要者入札データ及び前記供給者入札データに基づいて、前記電力需要者の購入できた電力量を表す実購入電力量及び前記電力供給者の販売できた電力量を表す実販売電力量を算出する前記卸電力取引市場を形成する卸電力取引市場形成手段と、前記卸電力取引市場での前記需要者入札データ及び前記供給者入札データから前記市場価格、前記実購入電力及び前記実販売電力を算出する過程を1つの取引ターンとして、前記取引ターン数で指定された回数の取引ターンを繰り返して処理をする電力取引制御手段と、1つの取引ターンが終了する毎に、前記市場価格と前記電力需要量データと前記実購入電力量と前記小売価格とに基づいて、電力取引における損益を算出して、前記損益が正となるように前記需要者戦略パラメータを更新する需要者パラメータ学習手段と、1つの取引ターンが終了する毎に、前記市場価格と前記実販売電力量と前記発電費用データとに基づいて電力取引における損益を算出して、前記損益が正となるように前記供給者戦略パラメータを更新する供給者パラメータ学習手段として機能させることを特徴とする電力取引プログラムにある。
かかる第1の態様では、電力需要者及び電力供給者の電力取引を行う際に、需要者戦略パラメータ及び供給者戦略パラメータに基づいて売買する電力量及び価格を決定し、且つこれらのパラメータを電力取引の結果に基づいて更新することで、電力需要者及び電力供給者はより多くの利益を得るような電力取引を行うようになる。この結果、現実の卸電力取引市場での電力取引をより忠実にコンピュータ上で再現することになるため、仮想的な卸電力取引市場での市場価格は、現実の卸電力取引市場での市場価格をより高い精度で予測するものとなる。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する電力取引プログラムにおいて、前記電力取引制御手段は、利用者により指定された初回から所定の回数の取引ターンを前記需要者戦略パラメータ及び前記供給者戦略パラメータのパラメータ獲得期間として繰り返し、前記パラメータ獲得期間の終了後は前記総取引ターン数に達するまで取引ターンを処理することを特徴とする電力取引プログラムにある。
かかる第2の態様では、電力需要者及び電力供給者は、初期設定期間の間、取引ターンを繰り返すことで、需要者戦略パラメータ及び供給者戦略パラメータを適切な値に設定した上で、電力取引を行うことが可能となる。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する電力取引プログラムにおいて、前記需要者パラメータ学習手段は、前記パラメータ獲得期間において、前記損益と前記需要者戦略パラメータとの関係式を最小二乗法で推定する一方、前記損益が正となる確率を計算するシグモイド関数を用いて、前記損益が正となる確率が最も高い需要者戦略パラメータを算出し、当該需要者戦略パラメータを前記パラメータ獲得期間後の取引ターンで用いることを特徴とする電力取引プログラムにある。
かかる第3の態様では、電力取引プログラムの利用者が電力需要者を直接的に操作することで、電力取引を擬似的に体験したり、電力の売買戦略を検討したりする等の教育的な効果を奏する。
本発明の第4の態様は、第2の態様に記載する電力取引プログラムにおいて、前記供給者パラメータ学習手段は、前記パラメータ獲得期間において、前記損益と前記供給者戦略パラメータとの関係式を最小二乗法で推定する一方、前記損益が正となる確率を計算するシグモイド関数を用いて、前記損益が正となる確率が最も高い供給者戦略パラメータを算出し、当該供給者戦略パラメータを前記パラメータ獲得期間後の取引ターンで用いることを特徴とする電力取引プログラムにある。
かかる第4の態様では、電力取引プログラムの利用者が電力供給者を直接的に操作することで、電力取引を擬似的に体験したり、電力の売買戦略を検討したりする等の教育的な効果を奏する。
本発明の第5の態様は、インターネット又はLANで相互に接続された複数のコンピュータのそれぞれに導入されて、実行される請求項1〜4の何れかの電力取引プログラムにおいて、
前記複数のコンピュータの各々で形成された前記卸電力取引市場と前記電力需要者との間で前記需要者入札データ、前記市場価格及び前記実購入電力量を送受信する需要者通信手段と、
前記複数のコンピュータの各々で形成された前記卸電力取引市場と前記電力供給者との間で前記供給者入札データ、前記市場価格及び前記実販売電力量を送受信する供給者通信手段と
を更に具備することを特徴とする電力取引プログラムにある。
かかる第5の態様では、電力取引プログラムをインターネット又はLANで接続されたコンピュータ上で分散して実行することが可能となる。このことにより、コンピュータの負荷が分散されることで、より多くの電力需要者、電力供給者及び卸電力取引市場を形成して、大規模な電力取引を行うことが可能となる。
本発明の第6の態様は、現実世界における電力需要者の電力需要量データと電力供給者の発電電力量データ及び発電費用データに基づき、仮想的に卸電力取引市場、電力需要者及び電力供給者を形成すると共に、前記卸電力取引市場を介して前記電力需要者と前記電力供給者との間で電力取引を行わせる電力取引システムであって、前記コンピュータに設けられた入力手段を介して、前記電力需要量データと前記発電電力量データと前記発電費用データと電力を購入する方針を決定する需要者戦略パラメータと電力を販売する方針を決定する供給者戦略パラメータと前記電力需要者及び前記電力供給者の生成数と電力取引を繰り返す回数を表す総取引ターン数と電力の小売価格を表す小売価格データとを取得するパラメータ入力手段と、所定の需要予測関数より見積需要電力量を算出すると共に、前記見積需要電力量と前記需要者戦略パラメータに基づいて、購入を希望する電力量とその価格を表す需要者入札データとを算出する前記電力需要者を前記電力需要者の生成数だけ形成する需要者形成手段と、前記発電電力量データと前記発電費用データと前記供給者戦略パラメータとに基づいて、販売を希望する電力量とその価格を表す供給者入札データとを算出する前記電力供給者を前記電力供給者の生成数だけ形成する供給者形成手段と、前記需要者入札データと前記供給者入札データに基づいて電力の市場価格を算出すると共に、前記市場価格、前記需要者入札データ及び前記供給者入札データに基づいて、前記電力需要者の購入できた電力量を表す実購入電力量及び前記電力供給者の販売できた電力量を表す実販売電力量を算出する前記卸電力取引市場を形成する卸電力取引市場形成手段と、前記卸電力取引市場での前記需要者入札データ及び前記供給者入札データから前記市場価格、前記実購入電力及び前記実販売電力を算出する過程を1つの取引ターンとして、前記取引ターン数で指定された回数の取引ターンを繰り返して処理をする電力取引制御手段と、1つの取引ターンが終了する毎に、前記電力需要量データと前記実購入電力量と前記小売価格に基づいて、電力取引における損益を算出して、前記損益が正となるように前記需要者戦略パラメータを更新する需要者パラメータ学習手段と、1つの取引ターンが終了する毎に、前記実販売電力量及び前記発電費用データに基づいて電力取引における損益を算出して、前記損益が正となるように前記供給者戦略パラメータを更新する供給者パラメータ学習手段とを具備することを特徴とする電力取引システムにある。
かかる第6の態様では、電力需要者及び電力供給者の電力取引を行う際に、需要者戦略パラメータ及び供給者戦略パラメータに基づいて売買する電力量及び価格を決定し、且つこれらのパラメータを電力取引の結果に基づいて更新することで、電力需要者及び電力供給者はより多くの利益を得るような電力取引を行うようになる。この結果、現実の卸電力取引市場での電力取引をより忠実にコンピュータ上で再現することになるため、仮想的な卸電力取引市場での市場価格は、現実の卸電力取引市場での市場価格をより高い精度で予測するものとなる。
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載する電力取引システムにおいて、前記電力取引制御手段は、利用者により指定された初回から所定の回数の取引ターンを前記需要者戦略パラメータ及び前記供給者戦略パラメータのパラメータ獲得期間として繰り返し、前記パラメータ獲得期間の終了後は前記総取引ターン数に達するまで取引ターンを処理することを特徴とする電力取引システムにある。
かかる第7の態様では、電力需要者及び電力供給者は、初期設定期間の間、取引ターンを繰り返すことで、需要者戦略パラメータ及び供給者戦略パラメータを適切な値に設定した上で、電力取引を行うことが可能となる。
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載する電力取引システムにおいて、前記需要者パラメータ学習手段は、前記パラメータ獲得期間において、前記損益と前記需要者戦略パラメータとの関係式を最小二乗法で推定する一方、前記損益が正となる確率を計算するシグモイド関数を用いて、前記損益が正となる確率が最も高い需要者戦略パラメータを算出し、当該需要者戦略パラメータを前記パラメータ獲得期間後の取引ターンで用いることを特徴とする電力取引システムにある。
かかる第8の態様では、電力取引プログラムの利用者が電力需要者を直接的に操作することで、電力取引を擬似的に体験したり、電力の売買戦略を検討したりする等の教育的な効果を奏する。
本発明の第9の態様は、第7の態様に記載する電力取引システムにおいて、前記供給者パラメータ学習手段は、前記パラメータ獲得期間において、前記損益と前記供給者戦略パラメータとの関係式を最小二乗法で推定する一方、前記損益が正となる確率を計算するシグモイド関数を用いて、前記損益が正となる確率が最も高い供給者戦略パラメータを算出し、当該供給者戦略パラメータを前記パラメータ獲得期間後の取引ターンで用いることを特徴とする電力取引システムにある。
かかる第9の態様では、電力取引プログラムの利用者が電力供給者を直接的に操作することで、電力取引を擬似的に体験したり、電力の売買戦略を検討したりする等の教育的な効果を奏する。
本発明の第10の態様は、第6〜9の何れかの態様において、
インターネット又はLANで相互に接続された複数のコンピュータと、
前記複数のコンピュータの各々で形成された前記卸電力取引市場と前記電力需要者との間で前記需要者入札データ、前記市場価格及び前記実購入電力量を送受信する需要者通信手段と、
前記複数のコンピュータの各々で形成された前記卸電力取引市場と前記電力供給者との間で前記供給者入札データ、前記市場価格及び前記実販売電力量を送受信する供給者通信手段と
を更に具備することを特徴とする電力取引システムにある。
かかる第10の態様では、電力取引プログラムをインターネット又はLANで接続されたコンピュータ上で分散して実行することが可能となる。このことにより、コンピュータの負荷が分散されることで、より多くの電力需要者、電力供給者及び卸電力取引市場を形成して、大規模な電力取引を行うことが可能となる。
本発明によれば、コンピュータ上で複数の電力需要者及び電力供給者を形成し、仮想的な電力取引を実行することが可能となる。また、これらの電力需要者及び電力供給者が電力取引の結果に基づいて戦略パラメータを更新することで、卸電力取引市場の価格変動に適応する電力需要者及び電力供給者を実現することが可能となる。この結果、仮想的な電力取引における電力の市場価格は、現実の市場価格を高い精度で予測するものとなる。また異なるコンピュータで電力需要者、電力供給者価格及び卸電力取引市場を分散して形成することでコンピュータにかかる負荷を分散することができ、より多くの電力需要者、電力供給者及び卸電力取引市場を形成して、大規模な電力取引を行うことが可能となる。さらに電力需要者及び電力供給者を利用者が直接的に操作することで、利用者は電力取引を疑似体験することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る電力取引プログラムがコンピュータ上で動作する際の機能ブロック図である。この実施形態は、電力取引プログラム1を1台のコンピュータ50にインストールして、仮想的な電力取引を実行する例を示す。
ここで、コンピュータ50は、例えば、図示しないCPU、ROM及びハードディスクとRAM53を主なハードウェアとして具備すると共に、これらのハードウェアを機能させるオペレーティングシステム(OS)、例えばマイクロソフト社製Windows(登録商標)を具備し、このOS上で電力取引プログラム1が実行される。さらに、コンピュータ50は各種情報を入力するキーボード及びマウス等の入力装置51と各種情報を出力するディスプレイなどの表示装置52とを備えている。なお、電力取引プログラム1は、コンピュータ50のOS上で起動するものではなく、ベーシックインプットアウトプットシステム(BIOS)等を介してコンピュータ50のハードウェア上で直接機能するものであってもよい。
電力取引プログラム1は、電力取引プログラム1の利用者から入力装置51を介して与えられた入力値を基に所定の情報を構成してRAM53に記憶するパラメータ入力手段2と、仮想的な電力需要者を形成する需要者形成手段3と、仮想的な電力供給者を形成する供給者形成手段4と、仮想的な卸電力取引市場を形成する卸電力取引市場形成手段5と、形成された卸電力取引市場を介して電力需要者と電力供給者との間での売買を1つの取引ターンとして、所定の回数の取引ターンを繰り返す電力取引制御手段6と、1つの取引ターンが終了する毎に需要者の電力を購入する方針を決定する需要者戦略パラメータを更新する需要者パラメータ学習手段7と、1つの取引ターンが終了する毎に供給者の電力を購入する方針を決定する供給者戦略パラメータを更新する供給者パラメータ学習手段8としてコンピュータ50を機能させるものである。
なお、電力需要者とは現実の卸電力取引市場における電力の卸売業者を、電力供給者とは現実の卸電力取引市場における発電事業者を本実施形態における仮想的な電力取引上で表したものである。また、本実施形態では仮想的な電力取引において、一般消費者を直接に扱うことはないが、上記電力需要者が購入する電力量を算出する際に、一般消費者の存在を想定する。
ここで、電力取引プログラム1を実行して電力需要者、電力供給者、卸電力取引市場を形成し、電力取引を実行している状態の一例を模式的に表示すると図2のようになる。図2を用いて、電力取引プログラム1の各構成要素について説明する。
パラメータ入力手段2は、電力取引に必要な各種の初期設定値を取得し、保持する機能を実現する。具体的には、入力装置51を介して得られた入力値を基に、電力需要量データ、発電電力量データ、発電費用データ、需要者戦略パラメータ、供給者戦略パラメータ、需要者形成手段3によって形成する需要者の生成数、供給者形成手段4によって形成する供給者の生成数、繰り返す取引ターンの数を指定する総取引ターン及び小売価格データを構成して、例えばRAM53やハードディスクに記憶する。なお、これらの入力データは利用者が個々に入力するものであってもよいし、ファイルに記録されたものであってもよい。
需要者形成手段3は、電力取引を行う仮想的な電力需要者を形成する機能を実現する。具体的には電力需要者の生成数に従って需要者10,11,12を形成する。需要者10は、需要者戦略パラメータ40と見積需要電力量に基づいて、購入を希望する電力量とその価格を表す需要者入札データを算出する処理として実装される。例えば手続き型の言語では関数やプロシージャで実装される処理である。需要者11,12は、固有の需要者戦略パラメータ41,42と見積需要電力量を持つが、処理については需要者10と同様である。需要者10での処理については後述する。また、生成可能な需要者の数は特に限定されない。
供給者形成手段4は、電力取引を行う仮想的な電力供給者を形成する機能を実現する。具体的には電力供給者の生成数に従って供給者20,21,22を形成する。供給者20は、供給者戦略パラメータ43と発電電力量データに基づいて、販売を希望する電力量とその価格を表す供給者入札データを算出する処理として実装される。供給者21,22は、固有の供給者戦略パラメータ44,45と発電電力量データを持つが、処理については供給者20と同様である。供給者20での処理については後述する。また、生成可能な供給者の数は特に限定されない。
卸電力取引市場形成手段5は、仮想的な卸電力取引市場を形成する機能を実現する。具体的には前日市場30とリアルタイム市場31を形成する。前日市場30とリアルタイム市場31の各々は、需要者10,11,12と供給者20,21,22が算出した購入、販売を希望する電力量とその価格から市場価格を算出すると共に、各需要者10,11,12と供給者20,21,22が購入、販売できた量である実購入電力量、実販売電力量を算出する処理として実装される。これによりコンピュータ上で仮想的な電力取引を実行することが可能となる。
ここで、前日市場30とは、現実の卸電力取引市場において前日市場と称される卸電力取引市場の1つに対応する市場であって、前日市場では翌日受渡しの電力が売買される。リアルタイム市場31とは、現実の卸電力取引市場においてリアルタイム市場と称される卸電力取引市場の1つに対応する市場であって、リアルタイム市場では直近に受け渡す電力が売買される。したがって、現実のリアルタイム市場での取引者は5分や1時間といった短い時間で売買の意思決定を行っている。この前日市場30及びリアルタイム市場31で行われる具体的な処理については後述する。
需要者パラメータ学習手段7は、需要者10,11,12の電力購入結果に基づいて、需要者戦略パラメータ40,41,42を更新する機能を実現する。具体的には、前日市場30及びリアルタイム市場31で算出された市場価格、実購入電力量及び小売価格データに基づいて、需要者10,11,12の損益を計算する。この損益に応じて、需要者戦略パラメータ40,41,42を更新する。これによって、需要者10,11,12は電力取引を繰り返すたびに、損失を生じなくなるような需要者入札データを算出することとなり、この結果、現実の電力取引市場で電力市場に適応していく電力需要者をコンピュータ50上で表現することが可能となる。なお、需要者戦略パラメータ40,41,42の更新処理の詳細については後述する。
供給者パラメータ学習手段8は、供給者20,21,22の電力販売結果に基づいて、供給者戦略パラメータ43,44,45を更新する機能を実現する。具体的には、前日市場30及びリアルタイム市場31で算出された市場価格、実販売電力量と発電費用データに基づいて、供給者20,21,22の損益を計算する。この損益に応じて、供給者戦略パラメータ43,44,45を更新する。これによって、供給者20,21,22は電力取引を繰り返すたびに、損失を生じなくなるような供給者入札データを算出することとなり、この結果、現実の電力取引市場で電力市場に適応していく電力供給者をコンピュータ50上で表現することが可能となる。なお、供給者戦略パラメータ43,44,45の更新処理の詳細については後述する。
電力取引制御手段6は、後述する需要者入札データ算出処理(S3)、供給者入札データ算出処理(S4)、電力取引処理(S5)、パラメータ更新処理(S6)を1つの取引ターンとして、総取引ターン数で指定された回数だけ取引ターンを繰り返す機能を実現する(図3参照)。
また、総取引ターンの内、初回から利用者が指定する任意の回数分だけ、需要者戦略パラメータ及び供給者戦略パラメータのパラメータ獲得期間としてもよい。パラメータ獲得期間とは、これらのパラメータがある程度の精度を有するまでの期間のことをいう。取引ターンが少ない場合は、取引ターン毎の市場価格や実購入電力量等の取引データが不十分なため、精度が不十分な需要者戦略パラメータ40,41,42及び供給者戦略パラメータ43,44,45を用いて電力取引を行うことなり、結果的に、現実の電力の市場価格に比して、精度の低い電力の市場価格が算出されるからである。
なお、特に図示はしていないが、取引ターン毎の電力の市場価格、実購入電力量、実販売電力量などの算出結果はグラフやテキスト等の形式で表示装置52を介して利用者に提示される。
ここで、電力取引プログラム1の処理の一例を図3を参照して説明する。図3は、電力取引プログラム1がコンピュータ50上で動作する際の処理手順の概略を示す図である。
図示するように、何回目の取引ターンを実行しているかを記録する変数であるターン数を0で初期化し(S1)、利用者による各種データの入力処理を行い(S2)、各種データに基づいて形成された需要者10,11,12のそれぞれについて、需要者入札データ算出処理を行い(S3)、同様に供給者20,21,22それぞれについて、供給者入札データ算出処理を行い(S4)、前日市場30、リアルタイム市場31毎に、需要者入札データ及び供給者入札データに基づいて市場価格、実購入電力量及び実販売電力量の算出をする電力取引処理を行う(S5)。電力取引処理の結果に基づいて、需要者戦略パラメータ40,41,42及び供給者戦略パラメータ43,44,45を更新するパラメータ更新処理を行い(S6)、ターン数を1つインクリメントする(S7)。このターン数が、利用者によって入力された総取引ターン数未満であるならばS3の処理に戻って再び処理を繰り返し、総取引ターン数以上であるならば、電力取引プログラム1を終了する(S8)。
データ入力処理(S2)は、コンピュータ50の入力装置51を介して、電力需要量データと発電電力量データと発電費用データと需要者戦略パラメータと供給者戦略パラメータと電力需要者及び前記電力供給者の生成数と総取引ターン数と小売価格データとを取得する処理である。これらのデータはグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を介して逐次入力されるものであってもよいし、ファイルに格納されてまとめて入力されるものであっても良い。各データの詳細についてはS3〜S6の処理と共に後述する。
図4は、需要者入札データ算出処理の手順の概略を示す図であり、この図を用いて、需要者入札データ算出処理(S3)の手順について詳細に説明する。なお、需要者入札データ算出処理は、需要者形成手段3によって形成された需要者10,11,12が行う処理である。需要者10,11,12は用いる各種パラメータの値は異なるものの、処理内容は同一であるため、ここでは代表して需要者10に関して説明する。
需要者入札データ算出処理は、最初に見積需要電力量及びその価格の算出を行い(S10)、次に需要者戦略パラメータ40に基づいて需要者入札データの算出を行う(S11)。算出された需要者入札データは、後述する電力取引処理(S5)に用いられる。
ここで見積需要電力量とは、需要者10が考える一般消費者の必要とする電力量である。需要者10は現実の世界における電力の卸売業者を想定しており、卸売業者は一般消費者に小売する電力量に基づいて、市場で電力を調達するということに対応している。具体的な見積需要電力量は、過去の見積需要電力量を基に平均値を算出するか、移動平均法又は指数平滑法から求めた値である。またはランダムな値を用いても良い。ここでは見積需要電力量をeとする。単位はメガワットアワー(MWh)である。
この見積需要電力量eよりその価格wを求める。具体的にはw=ae+bの一次関数を基に算出する。係数aと切片bは任意の値を設定してよいが、大量の電力を購入する場合は、電力の単価が安価になることを想定するならば、係数aは負の値をとることが望ましい。
次に、見積需要電力量eとその価格wと需要者戦略パラメータ40とに基づいて、需要者入札データを算出する。ここで需要者入札データとは、需要者10が購入を希望する電力量とその価格であり、それぞれdd1とpd1とすると、以下の式によって算出する。
・dd1=e×δ
・pd1=w×λ
ここで需要者戦略パラメータ40はδとλからなり、それぞれ購入電力余裕率と購入電力価格余裕率のことをいう。δ及びλは共に0以上1以下の値をとる。δは算出した見積需要電力量eの内、実際に前日市場30又はリアルタイム市場31で購入する量を決定するパラメータである。例えばδが1ならば、見積需要電力量eの分を購入希望する電力量とすることとなり、またδが0.1ならば見積需要電力量eの10%に相当する分だけを購入を希望する電力量とすることとなる。すなわち、δの値が大きければ大きいほど、一般消費者の需要を十分満たすことができるものの、電力を多く買いすぎてしまう危険性がある。逆にδの値が小さければ小さいほど、電力を多く買いすぎる危険性は少ないものの、一般消費者の需要を満たしきれない場合がある。
λは、実際に前日市場30又はリアルタイム市場31で購入する価格を算出した見積需要電力量eの価格wよりも高くするか又は安くするかを決定するパラメータである。λの値が大きければ大きいほど高い価格で購入をしようとすることになるので、前日市場30で電力を購入できないという危険性は低いものの、購入価格が高くなるため小売をしても利益が少なくなる危険性がある。逆にλが小さければ小さいほど小売をした際の利益が大きくなるものの、前日市場30で電力を購入できなくなる可能性がある。これらのパラメータの設定する値に応じて、需要者10の電力を購入する方針を変えることが可能となる。
なお、このδとλは利用者が直接に値を決定してもよいが、図5に示す需要者戦略パラメータセットの内から、戦略1〜4を選んでも良い。需要者戦略パラメータセットとはδとλの組であって、それぞれ一定範囲の値をとるように制限されているものである。これによって、需要者10が電力取引で電力を購入する際の性格づけが可能となる。例えば戦略2では、δが0.5から1の間、λも同様に0.5から1の間の値をとる。δが0.50から1の間の値ということは見積需要電力量eに近い値を購入希望する電力量とするため、一般需要者に電力を十分供給できないということが生じにくい。一方λが0.5から1の値をとるということは、見積需要電力量eの価格wに近い価格で電力の購入を希望することとなるので、利益がそれほど高くならない代わりに、確実に購入できるということが期待できる。
需要者11,12にも固有のδとλを与えて、需要者10,11,12の各々が購入を希望する電力量と価格を算出することで、現実の卸電力取引市場における取引をより忠実に再現することが可能となる。
なお、本実施形態においては、dd1とpd1に示される需要者入札データは前日市場30での取引に用いられる。前日市場30において、購入を希望したdd1の分の電力量を購入できなかった場合、その不足した分をリアルタイム市場31で購入することとなる。この処理に関しては後述する。
図6は、供給者入札データ算出処理の手順の概略を示す図であり、この図を用いて、供給者入札データ算出処理(S4)の手順について詳細に説明する。なお、供給者入札データ算出処理は、供給者形成手段4によって形成された供給者20,21,22が行う処理である。供給者20,21,22は用いる各種パラメータの値は異なるものの、処理内容は同一であるため、ここでは代表して供給者20に関して説明する。
供給者入札データ算出処理は、発電電力量データと発電費用データと供給者戦略パラメータに基づいて供給者入札データの算出を行う(S20)。算出された供給者入札データは、後述する電力取引処理(S5)に用いられる。
ここで、発電電力量データとは供給者20が前日市場30又はリアルタイム市場31で販売できる最大電力量(以下Smaxと表記する。)をいい、単位はMWhである。また発電費用データは電力の発電にかかる1MWhあたりの生産コスト(以下、限界コストMCと表記する。)を表す。
供給者20の最大電力量Smaxと限界コストMCと供給者戦略パラメータとに基づいて、供給者入札データを算出する。ここで供給者入札データとは、供給者20が販売を希望する電力量とその価格であり、前日市場30及びリアルタイム市場31毎に決定するものである。
前日市場30へ販売する電力量をs、その価格をps1、リアルタイム市場31へ販売する電力量をS、その価格をps0とすると、それぞれは以下の式によって算出する。
・s=Smax×α
・s=Smax×(1−α)
・ps1=MC/(1−β)
・ps0=MC/(1−η)
ここで供給者戦略パラメータ43はα、β及びηからなり、それぞれ販売先市場選択パラメータ、前日市場30の販売費用余裕率、リアルタイム市場31の販売費用余裕率のことをいう。αは0以上1以下の値をとり、β及びηは0以上1未満の値をとる。αはsmaxの発電量を前日市場30及びリアルタイム市場31のそれぞれにどの程度の量を販売するかを決定するパラメータである。例えばαが1ならば、供給者20は発電したsmaxの全てを前日市場30で販売することを示す。
βは前日市場30で販売するsの価格を限界コストMCに基づいて決定するパラメータである。例えば、βが1に近ければ近いほど、限界コストMCよりも高い単価で電力を前日市場30に販売することとなる。このβを1に近くした場合は、高い単価で電力を販売するため、利益を大きくすることが可能となるが、前日市場30において買い手がつかず、販売できない可能性もある。
ηはリアルタイム市場31で販売するsの価格を限界コストMCに基づいて決定するパラメータである。例えば、ηが1に近ければ近いほど、限界コストMCよりも高い単価で電力をリアルタイム市場31に販売することとなる。このηを1に近くした場合は、高い単価で電力を販売するため、利益を大きくすることが可能となるが、リアルタイム市場31において買い手がつかず、販売できない可能性もある。
なお、このα、β及びηは利用者が直接に値を決定してもよいが、図7に示す供給者戦略パラメータセットの内から、戦略1〜8を選んでも良い。この供給者戦略パラメータセットとはα、β及びηの組であって、それぞれ一定範囲の値をとるように制限されているものである。これによって、供給者20が電力取引で電力を販売する際の性格づけが可能となる。例えば戦略2では、αが0.5から1の間、βが0.5から0.99の間、ηが0.01から0.49の間の値をとる。αが0.5から1の間ということはsmaxのうち半分以上は前日市場30で販売することを意味する。つまり電力の販売先となる市場の志向が前日市場30に向いているということである。βが0.50から0.99ということは前日市場30における販売価格の設定において、限界コストMCの2倍以上の価格を設定することを意味し、前日市場30においてはより大きな利益を得る可能性があるものの、買い手がつかないというリスクをとることとなる。同様に、ηが0.01から0.5ということはリアルタイム市場31における販売価格の設定において、限界コストMCの2倍以下の価格を設定することを意味し、リアルタイム市場31においてはそれほど大きな利益を得ることができないものの、買い手がつかないというリスクを抑えることが可能となる。
供給者21,22にも固有のα、β及びηを与えて、供給者20,21,22の各々が販売を希望する電力量と価格を算出することで、現実の卸電力取引市場における取引をより忠実に再現することが可能となる。
図8は、前日市場30とリアルタイム市場31での電力の需要と供給を表す図であり、この図を用いて、電力取引処理(S5)の手順について詳細に説明する。なお、電力取引処理は、卸電力取引市場形成手段5によって形成された前日市場30,リアルタイム市場31が行う処理である。
前日市場30及びリアルタイム市場31は、需要者10,11,12及び供給者20,21,22からのそれぞれの入札データを基に、市場価格、実購入電力量及び実販売電力量を算出するものである。したがって、それぞれ市場価格等を算出するために同じ処理を行ってもよいが、異なる処理でもよい。例えば、一方の市場は需要者入札データ及び供給者入札データから市場価格を算出し、他方の市場は供給者入札データを中心に市場価格を算出するという処理である。前者の処理は現実世界における、いわゆる市場原理に基づいた市場価格の決定を再現し、後者の処理は現実世界における、いわゆる売り手市場のように供給者側の希望する販売価格が強く反映されるような市場価格の決定を再現する。本実施形態においては、前日市場30は前者の処理、リアルタイム市場31は後者の処理を行い、以下にそれぞれの処理内容を説明する。
図8(a)は前日市場30での電力の需要と供給を表す図である。図8(a)を用いて前日市場30での市場価格の算出処理を説明する。
供給者20,21,22の算出した販売を希望する電力量とその価格を(販売を希望する電力量,その価格)のように表記し、供給者20,21,22の供給者入札データをそれぞれ(s1:20,ps1:20)、(s1:21,ps1:21)、(s1:22,ps1:22)とする。
一方、需要者10,11,12の算出した購入を希望する電力量とその価格を(購入を希望する電力量,その価格)のように表記し、需要者10,11,12の需要者入札データをそれぞれ(d1:10,pd1:10)、(d1:11,pd1:11)、(d1:12,pd1:12)とする。
まず、供給者の購入を希望する電力量の価格について昇順に並べ、その結果をps1:20,ps1:21,ps1:22とする。この状態を、縦軸に価格、横軸に電力量をとりグラフで表現したものが供給線60である。更に、需要者の購入を希望する電力量の価格について降順に並べ、その結果をpd1:10,pd1:11,pd1:12とする。この状態を、上述のグラフに重ねて表現したものが需要線61である。この供給線60と需要線61との交差する点が均衡点62となり、この均衡点62に対応する価格であるps1:21の値が市場価格Pep1となる。
次に需要者10,11,12毎の実購入電力量及び供給者20,21,22毎の実販売電力量を算出する。この均衡点62に対応する電力量が売買の成立した電力量となる。すなわち、d1:10,d1:11の和の電力量が売買されたこととなる。この場合、需要者10,11,12のそれぞれの実購入電力量をD1:10,D1:11,D1:12と表すと、それぞれの値は、d1:10,d1:11,0 になる。つまり需要者10,11のように市場価格よりも高い価格で電力の購入を希望した場合は、その希望通りの量の電力を購入することができる。また需要者12のように市場価格よりも低い価格で電力の購入を希望した場合は、電力を購入できないこととなる。同様に、供給者20,21,22のそれぞれの実販売電力量をS1:20,S1:21,S1:22と表すと、それぞれの値は、S1:20,電力量63,0となる。つまり供給者22のように市場価格Pep1よりも高い価格で電力の販売を希望した場合は、電力を販売できない。また供給者21の実販売電力量のように、販売しようとした電力量の全てが販売しきれるとは限らない。
図8(b)はリアルタイム市場31での電力の需要と供給を表す図である。図8(b)を用いてリアルタイム市場31での市場価格の算出処理を説明する。
供給者20,21,22の供給者入札データをそれぞれ(s0:20,ps0:20)、(s0:21,ps0:21)、(s0:22,ps0:22)とする。
一方、需要者10,11,12については、前日市場30で購入を希望する電力量の電力を購入できなかった需要者12のみが取引に参加する。具体的には需要者12はd1:12の電力量を調達すべくリアルタイム市場31で取引を行う。その電力量をリアルタイム市場31ではd0:12と表記する。なお、需要者12はリアルタイム市場31においては購入を希望する価格を設定することはない。これは現実世界において、電力がどんな値段であってもリアルタイム市場31で電力を購入し一般消費者に供給しなければならないという、電力供給の特性を考慮したものである。
まず、供給者の購入を希望する電力量の価格について昇順に並べ、その結果をps0:20,ps0:21,ps0:22とする。この状態を、縦軸に価格、横軸に電力量をとりグラフで表現したものが供給線70である。
次に、リアルタイム市場31に参加する需要者12のd0:12の箇所から横軸に垂直な線71を引き、供給線70と交わる点が均衡点72となり、この均衡点72に対応する価格であるps0:21の値が市場価格Pep0となる。
上述の処理により需要者12の実購入電力量をD0:12と表すと、その値はd0:12となる(需要者10,11の実購入電力量をD0:10,D0:11と表すと、それぞれの値は0である)。また供給者20,21,22のそれぞれの実販売電力量をS0:20,S0:21,S0:22と表すと、それぞれの値は、S0:20,電力量73,0となる。つまり供給者22のように、市場価格Pep0よりも高い価格で電力の販売を希望した場合は、電力を販売できない。また供給者21の実販売電力量のように、販売しようとした電力量の全てが販売しきれるとは限らない。
上記のごとく、電力取引処理が完了すると、需要者入札データ及び供給者入札データから、各市場の市場価格Pep0,Pep0と需要者毎の実購入電力量と供給者毎の実販売電力量が算出されることとなる。
図9は、パラメータ獲得期間におけるパラメータ更新処理の手順の概略を示す図であり、図10は、パラメータ獲得期間後におけるパラメータ更新処理の手順の概略を示す図である。これらの図を用いて、パラメータ更新処理(S6)の手順について詳細に説明する。なお、パラメータ更新処理は、需要者パラメータ学習手段7及び供給者パラメータ学習手段8が主体となって行う処理である。
本実施形態においては、パラメータ獲得期間を設定し、その期間中、需要者10,11,12は図9(a)のパラメータ更新処理を行い、供給者20,21,22は図9(b)のパラメータ更新処理を行う。
需要者10,11,12は用いる各種パラメータの値は異なるものの、処理内容は同一であるため、ここでは代表して需要者10に関して説明する。
需要者10のパラメータ獲得期間中のパラメータ更新処理は、需要者戦略パラメータ40を乱数値で決定し(S30)、電力取引処理で得た実購入電力量と電力需要量データと小売価格とに基づいて損益を計算し(S31)、損益を目的変数、需要者戦略パラメータ40を説明変数として最小二乗法によって各係数の推定を行い(S32)、推定した結果を基に、その需要者戦略パラメータ40を用いて取引をする場合の勝率を算出する(S33)。
かかる処理では、取引ターン毎に乱数で決定した需要者戦略パラメータ40が、電力取引で、どの程度の勝率を得られるパラメータであるかを算出することを目的とする。ここで得た勝率の高い需要者戦略パラメータ40を、パラメータ獲得期間後に用いる。
まず需要者戦略パラメータ40であるδとλに乱数値を設定する(S30)。この値は需要者入札データ算出処理に用いられる。
次に、先の電力取引処理(S5)で得られた実購入電力量と電力需要量データと小売価格データに基づいて損益を計算する。
ここで電力需要量データとは、一般消費者の電力需要量のことをいう。また小売価格データとは、その販売の際の価格を言う。したがって、需要者10の損益をr、電力需要量データをR、小売価格をrpと表すと、
・r=rp×R−(D1:10×Pep1+D0:10×Pep0
と表すことができる。なおRの値は利用者によって与えられた値でもよいし、
・R=ax+b+csin(x×π/180)+rand(d)
の式を用いてもよい。a,b,c,dの値は利用者が与える任意の係数であり、rand(d)はdを種とした乱数値である。
この損益rを目的変数、δとλを説明変数として次の一次式を想定し、最小二乗法を用いて各係数(C0,C1,C2)を推定する。
・r=C0+C1×δ+C2×λ+ε
εは誤差を表す。さらに、この推定した各係数の値を(C0,C1,C2)と表し、その各係数から電力取引における勝率を計算する。勝率を求めるに際しては、次のシグモイド関数を用いる。
・Prob(σ)=1/{1+e^(−σ)}
e^(−σ)は、自然対数eを−σ乗することを表す。このシグモイド関数を用いて、電力取引における勝率Prob(W)とは以下のように定義する。
・Prob(W)=Prob(r≧0)
=Prob{ε≧−(C0+C1×δ+C2×λ)}
=1−1/{1+e^(C0+C1×δ+C2×λ)}
=e^(C0+C1×δ+C2×λ)/
1+e^(C0+C1×δ+C2×λ)
かかる処理を行うことで、需要者戦略パラメータ40であるδとλより勝率を算出できる。この処理は、パラメータ獲得期間終了後のパラメータ更新処理において用いられる。
パラメータ獲得期間中の供給者20,21,22のパラメータ更新処理を以下に説明する。ここでは代表して供給者20に関して説明する。
供給者20のパラメータ獲得期間中のパラメータ更新処理は、供給者戦略パラメータ43を乱数値で決定し(S40)、電力取引処理で得た実販売電力量と発電費用データとに基づいて損益を計算し(S41)、損益を目的変数、供給者戦略パラメータ43を説明変数として最小二乗法によって各係数の推定を行い(S42)、推定した結果を基に、その供給者戦略パラメータ43を用いて取引をする場合の勝率を算出する(S43)。
かかる処理では、取引ターン毎に乱数で決定した供給者戦略パラメータ43が、電力取引で、どの程度の勝率を得られるパラメータであるかを算出することを目的とする。ここで得た勝率の高い供給者戦略パラメータ43を、パラメータ獲得期間後に用いる。
まず、供給者戦略パラメータ43であるα、β及びηに乱数値を設定する(S40)。この値は供給者入札データ算出処理に用いられる。

次に、先の電力取引処理(S5)で得られた実販売電力量と発電費用データに基づいて損益を計算する。供給者10の損益をrと表すと、
・r=(S1:20×Pep1+S0:20×Pep0)−MC×(S1:20+S0:20
と表すことができる。
この損益rを目的変数、α、β及びηを説明変数として次の一次式を想定し、最小二乗法を用いて各係数(C10,C11,C12,C13)を推定する。
・r=C10+C11×α+C12×β+C13×η+ε
εは誤差を表す。さらに、この推定した各係数の値を(C10,C11,C12,C13)と表し、その各係数から電力取引における勝率を計算する。需要者10の場合と同様に、シグモイド関数を用いて、電力取引における勝率Prob(W)とは以下のように定義する。
・Prob(W)=Prob(r ≧0)
=e^(C10+C11×α+C12×β+C13×η)/
1+e^(C10+C11×α+C12×β+C13×η)
かかる処理を行うことで、供給者戦略パラメータ43であるα、β及びηと勝率とが関連付けられる。これらの関連付けは、パラメータ獲得期間の終了後のパラメータ更新処理において用いられる。
次に、図10を用いてパラメータ獲得期間後の、需要者10の需要者戦略パラメータの更新処理について説明する。
需要者10のパラメータ獲得期間後のパラメータ更新処理は、需要者戦略パラメータ40の上限値,下限値に基づいて、需要者戦略パラメータ40を仮設定し(S50),電力取引処理で得た実購入電力量と電力需要量データと小売価格とに基づいて損益を計算し(S51)、損益を目的変数、需要者戦略パラメータ40を説明変数として最小二乗法によって各係数の推定を行い(S52)、推定した結果を基に、需要者戦略パラメータ40の算出をし(S53)、損益の値が正ならば、需要者戦略パラメータ40の上限値,下限値の値を更新する(S54)。
かかる処理では、電力取引での売買した結果の損益に基づいて、漸近的に需要者戦略パラメータ40を更新する。
まず需要者戦略パラメータ40であるδとλに対応する仮設定値として、δ,λを決定する。また、それらの上限値としてδ,λ及び下限値としてδ,λを決定する。
パラメータ獲得期間の直後の最初の取引ターンであって、図5に示すような需要者戦略パラメータセットを用いる場合、このδ,λ及びδ,λは、それぞれその値が設定される。例えば、戦略1を用いるならば、δ,δはそれぞれ0.50と1であり、λ,λはそれぞれ0.01と0.49となる。またδ,λは、それぞれδ≦δ≦δ,λ≦λ≦λとなるように値を設定する。例えばδはδとδ間のランダムな値でもよいし、中間値であってもよい。
一方、パラメータ獲得期間の直後の最初の取引ターンであって、需要者戦略パラメータセットを用いない場合、このδ,λは1、δ,λは0が設定される。またδ,λは、それぞれδ≦δ≦δ,λ≦λ≦λとなるように、パラメータ獲得期間中に得たδとλを用いる。このδとλはこれらに関連付けられた勝率の高いものを選んでもよい。またパラメータ獲得期間中に得たδとλの値を基に移動平均法又は平滑指数法で算出してもよい。
次に、先の電力取引処理(S5)で得られた実購入電力量と電力需要量データと小売価格データに基づいて損益を計算する(S51)。この処理は、S31に示す処理と同様であるので説明を省略する。同様に、需要者10の損益rを目的変数、δとλを説明変数として次の一次式を想定し、最小二乗法を用いて各係数(C0,C1,C2)を推定する処理(S52)についても、S32に示す処理と同様であるので説明を省略する。
S52の処理で推定された(C0,C1,C2)の各係数の符号に基づいて、δとλを算出する。
・r=C0+C1×δ+C2×λ+ε
であるため、C1の符号が正ならばδを増加することでrも増加する。逆に、C1の符号が負であるならばδを減少することでrの減少を少なくできる。したがって、C1とC2の符号の組合せに応じて、以下のようにδ、λを更新する。
・C1>0 且つ C2>0 のとき (δ,λ)=(δ+ζ/2,λ+ζ/2)
・C1>0 且つ C2=0 のとき (δ,λ)=(δ+ζ/2,λ
・C1>0 且つ C2<0 のとき (δ,λ)=(δ+ζ/2,λ−ζ/2)
・C1=0 且つ C2>0 のとき (δ,λ)=(δ,λ+ζ/2)
・C1=0 且つ C2=0 のとき (δ,λ)=(δ,λ
・C1=0 且つ C2<0 のとき (δ,λ)=(δ,λ−ζ/2)
・C1<0 且つ C2>0 のとき (δ,λ)=(δ−ζ/2,λ+ζ/2)
・C1<0 且つ C2=0 のとき (δ,λ)=(δ−ζ/2,λ
・C1<0 且つ C2<0 のとき (δ,λ)=(δ−ζ/2,λ−ζ/2)
ここで、ζはδを更新する際の増減分であり、δ−δ,δ−δ,λ−λ,λ−λのそれぞれの絶対値の中から最小の値である。この段階で計算された(δ,λ)は図3の需要者入札データ算出処理(S3)で用いられる。
次にδとλの上限値,下限値(δ,λ,δ,λ)を更新する。具体的には算出した損益の値が正の場合に、以下のように右辺の内容で更新をする。
・C1>0 且つ C2>0 のとき (δ,λ,δ,λ)=(δ,λ,δ,λ
・C1>0 且つ C2=0 のとき (δ,λ,δ,λ)=(δ,λ+ζ/2,δ,λ−ζ/2)
・C1>0 且つ C2<0 のとき (δ,λ,δ,λ)=(δ,λ,δ,λ
・C1=0 且つ C2>0 のとき (δ,λ,δ,λ)=(δ+ζ/2,λ,δ−ζ/2,λ
・C1=0 且つ C2=0 のとき (δ,λ,δ,λ)=(δ,λ,δ,λ
・C1=0 且つ C2<0 のとき (δ,λ,δ,λ)=(δ+ζ/2,λ,δ−ζ/2,λ
・C1<0 且つ C2>0 のとき (δ,λ,δ,λ)=(δ,λ,δ,λ
・C1<0 且つ C2=0 のとき (δ,λ,δ,λ)=(δ,λ+ζ/2,δ,λ−ζ/2)
・C1<0 且つ C2<0 のとき (δ,λ,δ,λ)=(δ,λ,δ,λ
上述の処理を行った後、次の取引ターンにおいてパラメータ更新処理を行う際のδとλをそれぞれδとλの値を代入する。
なお供給者20のパラメータ獲得期間後のパラメータ更新処理については、需要者10の処理において、δ及びλをα、β及びηに、C1及びC2をC10,C11及びC12に置き換えれば同様の処理となるため、説明は省略する。
実施形態1に係る電力取引プログラム1を実行して得られた市場価格と現実の市場とを比較し、電力取引プログラム1によって得られた市場価格の精度を算出した。さらに他の手法による市場価格の予測手法との比較を行った結果を図11に示す。
図11の市場の欄には、現実の卸電力取引市場の名前が記載してあり、これらの4つの市場の市場価格を比較の対象とした。また、他の手法としてDirect Fomula(DF)、ニューラルネットワーク(NN)を用いて、4つの市場での市場価格を予測させ、精度を計算した。さらに本実施形態に係る電力取引プログラムで、需要者戦略パラメータ・供給者戦略パラメータの更新を伴わないで電力取引を行った場合(タイプI)とこれらのパラメータの更新を行った場合(タイプII)に算出された市場価格に基づいて精度を計算した。なお、DF,NNおよび精度の計算方法に関しては、「Agent−based Approach to Deal with Business Complexity in U.S. Wholesale Power Trading(25th USAEE/IAEE Annual North American Conferenceの予稿集に記載)」を参照のこと。
図示するように、タイプIIの予測精度は、他の手法と比較しても高い数値を示しており、各市場における電力の市場価格を高い精度で予測しているといえる。
上述したように電力取引プログラム1の一連の処理によって、前日市場30及びリアルタイム市場31での取引結果に応じて、取引ターンを繰り返す毎に、需要者戦略パラメータ及び供給者戦略パラメータの値を漸近的に高い勝率を得るような値に収束させることで、卸電力取引市場での市場価格の変動に適応する電力需要者及び電力供給者を、仮想的な電力取引で再現することが可能となっている。また、このような電力取引を再現した結果として得られる取引ターン毎の市場価格は、現実の卸電力取引市場における市場価格を予測したものと捉えることができる。すなわち、この予測した結果を基に、現実の卸電力取引市場における市場価格の価格変動によるリスクを抑えることが可能となる。
<実施形態2>
実施形態2では、本発明に係る電力取引プログラムを複数のコンピュータにそれぞれインストールして、インターネット又はLANを介して、仮想的な電力取引を行うと共に、電力需要者及び電力供給者を利用者が直接的に操作して、仮想的な電力取引に参加する場合を例示して説明する。なお、上述した実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して重複する説明については省略する。
図12は実施形態2に係る電力取引プログラムの利用の態様を示す図である。図13は各コンピュータで実行される処理の手順及びデータの流れを示す図である。図12に図示するようにコンピュータ80,81,82がそれぞれインターネット83を介して相互に接続されている。またコンピュータ80,81,82にはそれぞれ電力取引プログラム1がインストールされている。ここで、コンピュータ80は、利用者Aが操作するコンピュータであって、少なくとも前日市場30とリアルタイム市場31が形成されている。同様にコンピュータ81は、利用者Bによって直接的に操作される需要者10と供給者形成手段4によって供給者20が形成され、コンピュータ82には、利用者Cによって直接的に操作される供給者20と需要者形成手段3によって需要者10が形成されている。
このような構成において、各コンピュータで実行される各処理について図13を用いて説明する。
需要者10は実施形態1と同様に需要者戦略パラメータに基づいて需要者入札データ算出処理を行う(S3)。算出した需要者入札データは通信手段を介して、コンピュータ80の前日市場30及びリアルタイム市場31へ送信される(S72)。供給者20についても実施形態1と同様に供給者戦略パラメータに基づいて供給者入札データ算出処理を行う(S4)。算出した供給者入札データは通信手段を介して、コンピュータ80の前日市場30及びリアルタイム市場31へ送信される(S73)。
需要者13については、GUIなどのユーザインタフェースを介して、利用者Bの購入を希望する電力量とその価格が直接的に入力され(S70)、コンピュータ80の前日市場30及びリアルタイム市場31へ送信される(S74)。同様に供給者23については、利用者Cの販売を希望する電力量とその価格が直接的に入力され(S71)、コンピュータ80の前日市場30及びリアルタイム市場31へ送信される(S75)。
上述の各需要者及び供給者からの電力量とその価格を受け取ったコンピュータ80では、これらの値に基づいて前日市場30とリアルタイム市場31について電力取引処理を行う(S5)。この電力取引処理の結果、需要者10,13へはそれぞれ市場価格及び実購入電力量が送信され(S75,S77)、供給者20,23へは市場価格及び実販売電力量が送信される(S76,S78)。
需要者10及び供給者20は、上記の市場価格等に基づいてパラメータ更新処理(S6)を行い、次回の取引ターンのために、それぞれの戦略パラメータを更新する。一方、供給者13及び供給者23にも市場価格等が送信されるものの、それをどのように利用して次回の取引ターンに活かすかは利用者B及びCの意思による。
かかる処理を総取引ターンに指定された回数だけ繰り返して電力取引を行う。本実施形態のように電力取引プログラムを利用することにより、複数の台数で仮想的な電力取引を行うことで、コンピュータの負荷を分散することが可能となり、より多くの電力需要者や電力供給者を参加させることができる。また、利用者による直接的な仮想電力取引への参加を可能とすることで、利用者に対して現実の電力取引を行う際のリスクを負わせることなく、電力取引についての教育的な効果を提供することが可能となる。
本発明はコンピュータ上で仮想的に電力の取引を行い電力価格の推移を予測する場合又は仮想的に電力取引を疑似体験する場合に関連する産業分野で利用することができる。
実施形態1に係る電力取引プログラムがコンピュータ上で動作する際の機能ブロック図の概略である。 実施形態1に係る電力取引プログラムがコンピュータ上で動作する際の機能ブロック図である。 実施形態1に係る電力取引プログラムがコンピュータ50上で動作する際の処理手順の概略を示す図である。 需要者入札データ算出処理の手順の概略を示す図である。 需要者戦略パラメータセットの一覧を表す図である。 給者入札データ算出処理の手順の概略を示す図である。 供給者戦略パラメータセットの一覧を表す図である。 前日市場30とリアルタイム市場31での電力の需要と供給を表す図である。 パラメータ獲得期間におけるパラメータ更新処理の手順の概略を示す図である。 パラメータ獲得期間後におけるパラメータ更新処理の手順の概略を示す図である。 実施形態1に係る電力取引プログラムで予測した市場価格の予測精度と他の手法による予測精度の比較を表す図である。 実施形態2に係る電力取引プログラムの利用の態様を示す図である 各コンピュータで実行される処理の手順及びデータの流れを示す図である
符号の説明
1 電力取引プログラム
2 パラメータ入力手段
3 需要者形成手段
4 供給者形成手段
5 卸電力取引市場形成手段
6 電力取引制御手段
7 需要者パラメータ学習手段
8 供給者パラメータ学習手段
10,11,12,13 需要者
20,21,22,23 供給者
30 前日市場
31 リアルタイム市場
50,80,81,82 コンピュータ

Claims (10)

  1. 現実世界における電力需要者の電力需要量データと電力供給者の発電電力量データ及び発電費用データに基づき、仮想的に卸電力取引市場、電力需要者及び電力供給者を形成すると共に、前記卸電力取引市場を介して前記電力需要者と前記電力供給者との間で電力取引を行わせるプログラムであって、コンピュータを、
    前記コンピュータに設けられた入力手段を介して、前記電力需要量データと前記発電電力量データと前記発電費用データと電力を購入する方針を決定する需要者戦略パラメータと電力を販売する方針を決定する供給者戦略パラメータと前記電力需要者及び前記電力供給者の生成数と電力取引を繰り返す回数を表す総取引ターン数と電力の小売価格を表す小売価格データとを取得するパラメータ入力手段と、
    所定の需要予測関数より見積需要電力量を算出すると共に、前記見積需要電力量と前記需要者戦略パラメータに基づいて、購入を希望する電力量とその価格を表す需要者入札データとを算出する前記電力需要者を前記電力需要者の生成数だけ形成する需要者形成手段と、
    前記発電電力量データと前記発電費用データと前記供給者戦略パラメータとに基づいて、販売を希望する電力量とその価格を表す供給者入札データとを算出する前記電力供給者を前記電力供給者の生成数だけ形成する供給者形成手段と、
    前記需要者入札データと前記供給者入札データに基づいて電力の市場価格を算出すると共に、前記市場価格、前記需要者入札データ及び前記供給者入札データに基づいて、前記電力需要者の購入できた電力量を表す実購入電力量及び前記電力供給者の販売できた電力量を表す実販売電力量を算出する前記卸電力取引市場を形成する卸電力取引市場形成手段と、
    前記卸電力取引市場での前記需要者入札データ及び前記供給者入札データから前記市場価格、前記実購入電力及び前記実販売電力を算出する過程を1つの取引ターンとして、前記取引ターン数で指定された回数の取引ターンを繰り返して処理をする電力取引制御手段と、
    1つの取引ターンが終了する毎に、前記市場価格と前記電力需要量データと前記実購入電力量と前記小売価格とに基づいて、電力取引における損益を算出して、前記損益が正となるように前記需要者戦略パラメータを更新する需要者パラメータ学習手段と、
    1つの取引ターンが終了する毎に、前記市場価格と前記実販売電力量と前記発電費用データとに基づいて電力取引における損益を算出して、前記損益が正となるように前記供給者戦略パラメータを更新する供給者パラメータ学習手段
    として機能させることを特徴とする電力取引プログラム。
  2. 請求項1に記載する電力取引プログラムにおいて、
    前記電力取引制御手段は、利用者により指定された初回から所定の回数の取引ターンを前記需要者戦略パラメータ及び前記供給者戦略パラメータのパラメータ獲得期間として繰り返し、前記パラメータ獲得期間の終了後は前記総取引ターン数に達するまで取引ターンを処理することを特徴とする電力取引プログラム。
  3. 請求項2に記載する電力取引プログラムにおいて、
    前記需要者パラメータ学習手段は、前記パラメータ獲得期間において、前記損益と前記需要者戦略パラメータとの関係式を最小二乗法で推定する一方、前記損益が正となる確率を計算するシグモイド関数を用いて、前記損益が正となる確率が最も高い需要者戦略パラメータを算出し、
    当該需要者戦略パラメータを前記パラメータ獲得期間後の取引ターンで用いる
    ことを特徴とする電力取引プログラム。
  4. 請求項2に記載する電力取引プログラムにおいて、
    前記供給者パラメータ学習手段は、前記パラメータ獲得期間において、前記損益と前記供給者戦略パラメータとの関係式を最小二乗法で推定する一方、前記損益が正となる確率を計算するシグモイド関数を用いて、前記損益が正となる確率が最も高い供給者戦略パラメータを算出し、
    当該供給者戦略パラメータを前記パラメータ獲得期間後の取引ターンで用いる
    ことを特徴とする電力取引プログラム。
  5. インターネット又はLANで相互に接続された複数のコンピュータのそれぞれに導入されて、実行される請求項1〜4の何れかの電力取引プログラムにおいて、
    前記複数のコンピュータの各々で形成された前記卸電力取引市場と前記電力需要者との間で前記需要者入札データ、前記市場価格及び前記実購入電力量を送受信する需要者通信手段と、
    前記複数のコンピュータの各々で形成された前記卸電力取引市場と前記電力供給者との間で前記供給者入札データ、前記市場価格及び前記実販売電力量を送受信する供給者通信手段と
    を更に具備することを特徴とする電力取引プログラム。
  6. 現実世界における電力需要者の電力需要量データと電力供給者の発電電力量データ及び発電費用データに基づき、仮想的に卸電力取引市場、電力需要者及び電力供給者を形成すると共に、前記卸電力取引市場を介して前記電力需要者と前記電力供給者との間で電力取引を行わせる電力取引システムであって、
    前記コンピュータに設けられた入力手段を介して、前記電力需要量データと前記発電電力量データと前記発電費用データと電力を購入する方針を決定する需要者戦略パラメータと電力を販売する方針を決定する供給者戦略パラメータと前記電力需要者及び前記電力供給者の生成数と電力取引を繰り返す回数を表す総取引ターン数と電力の小売価格を表す小売価格データとを取得するパラメータ入力手段と、
    所定の需要予測関数より見積需要電力量を算出すると共に、前記見積需要電力量と前記需要者戦略パラメータに基づいて、購入を希望する電力量とその価格を表す需要者入札データとを算出する前記電力需要者を前記電力需要者の生成数だけ形成する需要者形成手段と、
    前記発電電力量データと前記発電費用データと前記供給者戦略パラメータとに基づいて、販売を希望する電力量とその価格を表す供給者入札データとを算出する前記電力供給者を前記電力供給者の生成数だけ形成する供給者形成手段と、
    前記需要者入札データと前記供給者入札データに基づいて電力の市場価格を算出すると共に、前記市場価格、前記需要者入札データ及び前記供給者入札データに基づいて、前記電力需要者の購入できた電力量を表す実購入電力量及び前記電力供給者の販売できた電力量を表す実販売電力量を算出する前記卸電力取引市場を形成する卸電力取引市場形成手段と、
    前記卸電力取引市場での前記需要者入札データ及び前記供給者入札データから前記市場価格、前記実購入電力及び前記実販売電力を算出する過程を1つの取引ターンとして、前記取引ターン数で指定された回数の取引ターンを繰り返して処理をする電力取引制御手段と、
    1つの取引ターンが終了する毎に、前記電力需要量データと前記実購入電力量と前記小売価格に基づいて、電力取引における損益を算出して、前記損益が正となるように前記需要者戦略パラメータを更新する需要者パラメータ学習手段と、
    1つの取引ターンが終了する毎に、前記実販売電力量及び前記発電費用データに基づいて電力取引における損益を算出して、前記損益が正となるように前記供給者戦略パラメータを更新する供給者パラメータ学習手段と
    を具備することを特徴とする電力取引システム。
  7. 請求項6に記載する電力取引システムにおいて、
    前記電力取引制御手段は、利用者により指定された初回から所定の回数の取引ターンを前記需要者戦略パラメータ及び前記供給者戦略パラメータのパラメータ獲得期間として繰り返し、前記パラメータ獲得期間の終了後は前記総取引ターン数に達するまで取引ターンを処理することを特徴とする電力取引システム。
  8. 請求項7に記載する電力取引システムにおいて、
    前記需要者パラメータ学習手段は、前記パラメータ獲得期間において、前記損益と前記需要者戦略パラメータとの関係式を最小二乗法で推定する一方、前記損益が正となる確率を計算するシグモイド関数を用いて、前記損益が正となる確率が最も高い需要者戦略パラメータを算出し、
    当該需要者戦略パラメータを前記パラメータ獲得期間後の取引ターンで用いる
    ことを特徴とする電力取引システム。
  9. 請求項7に記載する電力取引システムにおいて、
    前記供給者パラメータ学習手段は、前記パラメータ獲得期間において、前記損益と前記供給者戦略パラメータとの関係式を最小二乗法で推定する一方、前記損益が正となる確率を計算するシグモイド関数を用いて、前記損益が正となる確率が最も高い供給者戦略パラメータを算出し、
    当該供給者戦略パラメータを前記パラメータ獲得期間後の取引ターンで用いる
    ことを特徴とする電力取引システム。
  10. 請求項6〜9の何れかに記載する電力取引システムにおいて、
    インターネット又はLANで相互に接続された複数のコンピュータと、
    前記複数のコンピュータの各々で形成された前記卸電力取引市場と前記電力需要者との間で前記需要者入札データ、前記市場価格及び前記実購入電力量を送受信する需要者通信手段と、
    前記複数のコンピュータの各々で形成された前記卸電力取引市場と前記電力供給者との間で前記供給者入札データ、前記市場価格及び前記実販売電力量を送受信する供給者通信手段と
    を更に具備することを特徴とする電力取引システム。
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