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JP4807290B2 - 皮膜の成膜方法、及び皮膜形成部材 - Google Patents

皮膜の成膜方法、及び皮膜形成部材 Download PDF

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本発明は、基材の表面への皮膜の成膜方法及び基材の表面に皮膜が形成された皮膜形成部材に係り、密着性に優れた皮膜の成膜方法、及び皮膜形成部材に関する。
従来から、部材の耐摩耗性の向上、及び、摩擦係数の低減を図るべく、部材の表面に皮膜を成膜することがある。近年では、このような皮膜として、他の材質に比べて硬質であるという特性と、固体潤滑として作用するという特性とを兼ね備えていることから、非晶質炭素皮膜(いわゆるDLC皮膜)が注目されている。
前記非晶質炭素皮膜は、アーク式イオンプレーティング(以下、AIP)や、スパッタリングにより成膜されることが一般的である。しかし、非消失炭素皮膜は、成膜において圧縮残留応力が内部に蓄積されることがあり、基材との密着性が低く、場合によっては、皮膜が基材から剥離することがあった。
このような問題点を解決すべく、非晶質炭素皮膜と基材との間に、皮膜と基材との密着性を向上させるための中間層の役割を果たす皮膜を成膜する場合がある。前記中間層となる皮膜の材料は、基材との間に炭素との炭化物を形成し易い金属材料が選定されることが多い。たとえば、基材の表面に、前記中間層としてクロム層、クロム傾斜層、DLC硬度傾斜層、硬質DLC層の順に成膜した摺動部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このような摺動部材は、表面にDLC皮膜を形成することにより、摺動部材の耐摩耗性の向上、摩擦係数の低減を図ることができると共に、中間層としてクロムを含む層を有するので、基材と皮膜との密着性を確保することができる。
特開2004−10923号公報
しかし、前記中間層を形成した場合であっても、高面圧摺動などの環境においては、基材との密着性確保のレベルが低く、耐久評価などで剥離してしまう現象が多く見られている。さらに、前記皮膜の剥離の形態には、基材と中間層との間の剥離、中間層と非晶質炭素皮膜との剥離があり、これらの双方の剥離を抑える必要があった。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基材との密着性を確保すると共に、非晶質炭素皮膜との密着性も確保でき、中間層の役割を果たすことができる、皮膜の成膜方法、及び該皮膜が形成された皮膜形成部材を提供することにある。
前記課題を解決すべく、発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、これらの剥離の形態は、中間層及び非晶質炭素皮膜の成膜方法に起因することがわかった。そして、発明者は、前記2つの形態の剥離を解消するためには、中間層として作用する皮膜に、以下の二つの要件を充足させることが重要であると考えた。まず、第一の要件は、基材と中間層との剥離を防止させるために、前記中間層として作用する皮膜を、基材に対して投錨作用を有するように成膜することである。第二の要件は、中間層と非晶質炭素皮膜との剥離を防止させるために、前記中間層として作用する皮膜を、非晶質炭素皮膜に対してさらに濡れ性を向上させることである。そして、前記2つの要件を満たす成膜方法として、AIPによる成膜方法が有効であるとの新たな知見を得た。
本発明は、発明者の前記新たな知見に基づくものであり、本発明に係る皮膜の成膜方法は、金属ターゲットの金属をアーク放電によりイオン化させると共に、基材にバイアス電圧を印加することにより、前記基材の表面に前記イオン化した金属を付着させて、前記金属からなる皮膜を成膜する工程を少なくとも含む皮膜を成膜する方法であって、該金属皮膜の成膜工程において、前記成膜開始時の前記バイアス電圧の大きさを少なくとも500V以上とし、前記成膜終了時の前記バイアス電圧の大きさを少なくとも100V以下とし、前記成膜開始時から前記成膜終了時まで、前記バイアス電圧の大きさを傾斜的に減少させながら前記金属皮膜の成膜を行うことを特徴としている。
本発明によれば、アーク式イオンプレーティングにより、前記成膜開始時の前記バイアス電圧の大きさを少なくとも500V以上として金属皮膜を成膜することにより、金属ターゲットの金属イオンを界面(基材の表面)に打ち込む(金属イオンに運動エネルギを与え、金属イオンを基材の表面に衝突させるエネルギを増加させる)ことができるので、金属皮膜が、基材に対して投錨効果もたらすことができる。この結果、金属皮膜と基材との間の密着性を高めることが可能となる。また、基材の表面及びその近傍(基材と接触する部位及びその皮膜厚さ方向の近傍)の金属皮膜の結晶組織は、前記基材の表面に対して垂直方向に延出した、投錨作用を有した柱状の結晶組織(軸芯が基材の表面に対して垂直となる柱状組織)となる。さらに、このような金属イオンのイオンボンバードにより、基材の表面の酸化膜を除去し、表面の活性化を図ることができる。なお、前記成膜開始時の前記バイアス電圧の大きさを500V未満とした場合には、前記投錨効果を得ることができず、基材と皮膜とが剥離しやすくなる。また、前記バイアス電圧の上限値は、皮膜が形成可能な値(1000V)以下である。
さらに、本発明に係る皮膜の成膜方法は、前記成膜終了時の前記バイアス電圧の大きさを少なくとも100V以下とすることにより、金属皮膜の表面及びその近傍では、基材表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織(軸芯が基材の表面に対して平行となる柱状組織)を有することになり、金属皮膜の表面の濡れ性を向上させることができる。この結果、金属皮膜の表面にさらに皮膜(たとえば、非晶質炭素皮膜)を成膜した場合であっても、金属皮膜との密着性を向上させることができる。なお、前記成膜終了時の前記バイアス電圧の大きさが100Vを越えた場合には、濡れ性が低下してしまい、金属皮膜とその表面に被覆するさらなる皮膜とは、剥離しやすくなる。
また、前記成膜開始時から前記成膜終了時まで、前記バイアス電圧の大きさを傾斜的に減少させながら前記金属皮膜の成膜を行うので、基材の表面に接触している部位及びその近傍にでは、前記柱状の結晶組織は、前記基材の表面に対して垂直方向に延出し、金属皮膜の厚さ方向(膜厚方向)に沿った表面に進むに従って、基材の表面に対して柱状組織の軸芯が傾斜し、さらに、金属皮膜の表面及びその近傍では、柱状の結晶組織は、基材表面に対して平行方向に延出することになる。この結果、金属の強度は安定する。なお、バイアス電圧を傾斜的に減少させる方法としては、例えば、連続的に傾斜させて減少させる方法や、ステップ状に傾斜させて減少させる方法などが挙げられる。
また、本発明に係る皮膜の成膜方法は、前記金属皮膜の表面に前記金属ターゲットの前記金属を含む非晶質炭素皮膜を成膜する工程をさらに含み、前記金属ターゲットとして、4A族元素、5A族元素、6A族元素、3B族元素、及びSiから選択される1種以上の金属ターゲットを用いて前記金属皮膜の成膜を行い、前記非晶質炭素皮膜の成膜を、前記金属ターゲットと前記基材との間に炭化水素ガスをさらに供給した状態で、前記ターゲットの金属及び前記炭化水素ガスの炭化水素をイオン化させると共に、前記基材にバイアス電圧を付加することにより行うことがより好ましい。
本発明によれば、前記に示す金属は酸化物形成能及び炭化物形成能が高いので、このような金属からなるターゲットを用いることにより、基材及び非晶質炭素皮膜の密着性を高めることができる。また、前記金属のうち、より好ましい金属元素としては、Ta、Ti、Cr、Al、Mg、W、V、Nb、Moから選択される一種以上の金属元素であり、これらの中でも、Ta、Ti、Crが特に好ましい。
また、前記非晶質炭素皮膜は、固体カーボンターゲットを使用せず、金属ターゲットのみを配置し、該金属ターゲットをアーク放電で昇華させ、金属及び導入された炭化水素ガスの炭化をイオン化することにより形成されるので、金属複合の非晶質炭素皮膜にすることができる。さらに、このような成膜方法は、従来のスパッタリングでは、カーボン蒸発源である固体カーボンターゲットと金属蒸発源である金属ターゲットを併用していたのに対し、本発明では、金属ターゲットのみをアーク放電でイオンプレーティング(アーク式イオンプレーティング(AIP)法)を行う点が異なるので、本発明に係る成膜方法で成膜した場合には、非晶質炭素皮膜の摩擦係数を低減し、金属皮膜との密着性を高め、耐摩耗性を向上させ、さらに、成膜時間の短縮化を図ることができる。
また、本発明でいう炭化水素ガスとしては、アルカン化合物、アルケン化合物及びアルキン化合物から選択される鎖状炭化水素化合物の1種以上が好ましく、その中で、メタン、エチレン、アセチレンから選択される1種以上が好ましい。
また、本発明に係る皮膜の成膜方法は、前記金属皮膜の厚さを少なくとも20nm以上となるように前記金属皮膜の成膜を行うことがより好ましい。前記皮膜を20nm以上にすることにより、金属皮膜と基材との密着性を確保することができる。すなわち、前記皮膜を20nm未満にした場合には、皮膜が基材から剥離し易くなる。なお、金属皮膜の厚さは、100nm以下であることがより好ましい。100nmを越えたとしても、それ以上の密着性の効果は期待できず、経済的ではない。
また、本発明に係る皮膜の成膜方法は、前記非晶質炭素皮膜の成膜工程において、前記炭化系水素ガスの濃度を上昇させることにより、前記非晶質炭素皮膜中の炭素の割合を、該非晶質炭素皮膜の表面に向かう厚さ方向に沿って傾斜的に増加させることがより好ましい。本発明によれば、非晶質炭素皮膜の表面の炭素元素の割合が増加するため、耐摩耗性及び低摩擦に優れた皮膜を形成することができる。
また、前記非晶質炭素皮膜の成膜方法に加えて、本発明に係る皮膜の成膜方法は、前記非晶質炭素皮膜の成膜開始時のバイアス電圧を、前記金属皮膜の成膜終了時のバイアス電圧と同じ大きさすることがより好ましい。本発明によれば、前記バイアス電圧を一致させることにより、金属皮膜の表面の結晶組織と、該金属皮膜の表面に形成される結晶組織の形態を、いずれも、基材の表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織とすることが可能となるので、濡れ性の高い界面同士が密着するため、金属皮膜と非晶質炭素皮膜とのミスフィットを抑制し、これらの密着性をさらに向上させることができる。また、前記非晶質炭素皮膜中の炭素の割合を、該非晶質炭素皮膜の厚さ方向に沿って傾斜的に増加させる成膜方法、すなわち、前記非晶質炭素皮膜中の金属ターゲットの金属の割合を、該非晶質炭素皮膜と金属皮膜との界面に向う厚さ方向に沿って傾斜的に増加させる成膜方法を行うことにより、界面の金属組織の組成がより近くなるので、金属組織の形態をさらに整合させることができる。これにより、非晶質炭素皮膜と金属皮膜の密着性をさらに向上させることができる。
また、本発明に係る皮膜の成膜方法は、前記非晶質炭素皮膜の成膜を、前記バイアス電圧の大きさを増加させながら行うことがより好ましい。本発明によれば、非晶質炭素皮膜の内部の圧縮残留応力を緩和し、非晶質炭素皮膜と金属皮膜との密着性を確保することができる。そして、このような成膜方法により成膜された皮膜を基材に形成した部材は、摺動部材として好適である。
さらに、本発明として、本発明に係る皮膜の成膜方法により製造された好適な皮膜形成部材をも開示する。本発明に係る皮膜形成部材は、基材の表面に少なくとも金属皮膜を形成した皮膜形成部材であって、前記金属皮膜は、前記基材の表面との接触部位およびその近傍では、前記基材の表面に対して垂直方向に延出した柱状の結晶組織を形成しており、前記金属皮膜の表面及びその近傍では、基材表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織を形成していることを特徴とする。
本発明によれば、前記皮膜形成部材は、前記基材の表面との接触部位およびその近傍では、前記基材の表面に対して垂直方向に延出した柱状の結晶組織を形成しているので、該柱状の結晶組織が、基材との投錨作用をもたらす。この結果、基材から金属皮膜が剥離し難くなる。さらに、前記皮膜形成部材は、金属皮膜の表面及びその近傍では、基材表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織を形成しており、該柱状の結晶組織が形成された表面は濡れ性が向上する。この結果、金属皮膜面に被覆する皮膜の密着性を向上させることができる。
また、本発明に係る皮膜形成部材は、前記金属皮膜の金属が、4A族元素、5A族元素、6A族元素、3B族元素、及びSiから選択される1種以上の金属であり、前記金属皮膜の表面には、さらに前記金属皮膜の金属を含む非晶質炭素皮膜が形成されていることが好ましい。前記に示す金属は酸化物形成能及び炭化物形成能が高いので、このような金属からなるターゲットを用いることにより、基材及び非晶質炭素皮膜の密着性を高めることができる。
本発明に係る皮膜形成部材は、前記金属皮膜の厚さは少なくとも20nm以上であることがより好ましく、また、前記非晶質炭素皮膜は、該非晶質炭素皮膜の表面に向かう厚さ方向に沿って、傾斜的に炭素の割合が増加していることがより好ましい。
また本発明に係る皮膜形成部材は、金属皮膜の表面上及びその近傍の非晶質炭素皮膜が、基材表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織を有することがより好ましい。本発明によれば、濡れ性の高い金属皮膜及び非晶質炭素皮膜の表面同士が密着するため金属皮膜と非晶質炭素皮膜との密着性をさらに向上させることができる。
本発明によれば、基材に対して投錨効果もたらし、金属皮膜と基材との間の密着性を高めることができ、かつ、金属皮膜の表面の濡れ性を向上させて、金属皮膜の表面にさらに皮膜を成膜した場合であっても、金属皮膜とさらなる皮膜との密着性を向上させることができる金属皮膜を得ることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る金属皮膜及び該金属皮膜表面の非晶質炭素皮膜を形成するに、好適な皮膜形成装置の概略図であり、図2は、本実施形態に係る金属皮膜及び非晶質炭素皮膜の好適な製造方法を説明するための図である。図3は、本実施形態に係る金属皮膜の断面における金属組織の模式図である。
図1に示すように、皮膜形成装置は、アーク式イオンプレーティング(AIP)用の装置であり、該装置は、真空ポンプによって排気される真空チャンバー(真空容器)内に複数の金属ターゲットが配置され、皮膜を形成すべき基材は、後述する金属ターゲットに対してバイアス電圧が印加可能なように、中央の回転テーブル上に配置されている。一方、金属皮膜の材料となる金属ターゲット材料の金属をアーク放電により昇華させてイオン化させるべく、金属ターゲット材料(カソード)とアノードが、アーク電流が通電可能なように、真空チャンバー内に配置されている。また、カソードとなる金属ターゲットとしては、Cr、Ti、Ta等が選定されている。一方、窒素、アルゴンなどの放電用の不活性ガスはノズルから真空容器内に導入され、処理後に排気されるようになっており、放電ガス以外のプロセスガスである炭化水素ガスもノズルから導入され、処理後に排気されるようになっている。
このような図1に示す装置を用いて、放電用の不活性ガスを真空チャンバーに供給しながら、金属ターゲット材料(導電性の金属)をカソードにし、アノードとの間でアーク放電を発生させる。このエネルギにより金属ターゲット材料の金属は、昇華してイオン化し、基材へ負のバイアス電圧を掛けることによりイオンを基材に付着させ、金属皮膜を形成することができる。たとえば、代表的なTiN皮膜の場合は、材料にTiを用い、ガスに窒素を導入することにより基材の表面にTiN皮膜を形成することができる。
また、本実施形態では、金属皮膜の表面にさらに非晶質炭素皮膜を形成する場合に、ターゲット材料としてカーボン材料を使わずに、金属ターゲットと基材との間に炭化水素ガスをさらに供給した状態で、ターゲットの金属及び炭化水素ガスの炭化水素をイオン化させると共に、基材にバイアス電圧を付加することにより行うことにより、非晶質炭素皮膜を形成させる。
このような装置を用いて、本実施形態では、図2に示すようにして、基材の表面に成膜を行う。より具体的には、まず、金属皮膜の成膜開始時(成膜初期)の基材に印加する前記バイアス電圧の大きさを少なくとも500V以上(図2では800V)とし、金属ターゲットの金属をアーク放電によりイオン化させると共に、前記バイアス電圧により、前記基材の表面に前記イオン化した金属を付着させる(図2の金属層成膜初期)。そして、前記バイアス電圧の大きさを傾斜的に減少させながら、前記成膜終了時(成膜終期)の前記バイアス電圧の大きさを少なくとも100V以下(図2では50V)として、イオン化した金属を継続して付着させる。
このようにして、図3に示すように、基材70の表面は、入り組んだ凹凸上の投錨効果を有した表面となり、さらに、基材70の表面及びその近傍(基材と接触する部位及びその皮膜厚さ方向の近傍)には、前記基材70の表面に対して垂直方向に延出した、投錨作用を有した柱状の結晶組織21(軸芯が基材70の表面に対して垂直となる柱状組織21)が形成される。また、金属皮膜20の表面及びその近傍には、基材表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織22(軸芯が基材70の表面に対して平行となる柱状組織22)が形成され、金属皮膜20の表面の濡れ性を向上させることができる。
さらに、金属皮膜を成膜(金属層形成後)後、図2に示すように、金属皮膜(金属層)の表面に、さらに非晶質炭素皮膜(金属複合DLC傾斜組織)を形成する。具体的には、前記金属ターゲットと前記基材との間に炭化水素ガスをさらに供給した状態で、アーク放電により前記ターゲットの金属及び前記炭化水素ガスの炭化水素をイオン化させると共に、前記基材にバイアス電圧を付加することにより、非晶質炭素皮膜の成膜を行う。但し、前記非晶質炭素皮膜の成膜開始時のバイアス電圧は、前記金属皮膜の成膜終了時のバイアス電圧と同じに大きさする。このようにして金属皮膜の表面の結晶組織と、該金属皮膜の表面に形成される非晶質炭素皮膜の結晶組織の形態を、いずれも、基材の表面に対して基材表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織とすることが可能となるので、濡れ性の高い界面同士が密着するため金属皮膜と非晶質炭素皮膜との密着性をさらに向上させることができる。
また、非晶質炭素皮膜を成膜する際には、前記炭化系水素ガス(例えばCガス)の濃度を上昇させることにより、前記非晶質炭素皮膜中の炭素の割合を、該非晶質炭素皮膜の表面に向かう厚さ方向に沿って傾斜的に増加させる共に、前記バイアス電圧の大きさを減少させながら非晶質炭素皮膜の成膜を行う。このようにして、図2に示すような、基材の表面に、金属層(金属皮膜)、金属複合DLC傾斜組織を有した層(非晶質炭素皮膜)が順次形成された摺動部材に好適な皮膜形成部材を得ることができる。
このようにして成膜された非晶質炭素皮膜は、金属皮膜との密着性をさらに向上させることができる。さらに、非晶質炭素皮膜の表面は、炭素元素が含有する割合が多いので、耐摩耗性が向上し、摩擦係数は低減される。
以下に本実施形態に係る実施例を示す。
(実施例1)
<皮膜形成部材>
前記実施形態に係る皮膜形成部材として、以下に示す試験片を作成した。基材として、直径28mm、厚さ3mmの焼入れ焼戻しを行った、ビッカース硬さHv800のクロムモリブデン鋼(JIS規格:SCM415相当)を準備し、直径28mmの円表面を、ダイヤモンドラップにより、表面粗さを中心線平均粗さ0.007μmとなるように、研磨した。そして、金属ターゲットとしてチタンターゲットを準備し、成膜開始時(成膜初期)のバイアス電圧の大きさを800Vとし、成膜終了時(成膜終期)の前記バイアス電圧の大きさを50Vとし、成膜開始時から成膜終了時まで、バイアス電圧の大きさを傾斜的に減少させながら、チタンターゲットの金属をアーク放電によりイオン化させると共に、バイアス電圧により、円表面にイオン化したチタンを付着させて、チタンからなる金属皮膜を成膜した。なお、この段階で、後述する表面の組織観察及び濡れ性の試験を行った。
次に、チタンターゲットと基材との間に炭化水素ガスとしてアセチレンガス(C)ガスをさらに供給した状態で、チタンターゲットのチタン及び炭化水素ガスの炭化水素(具体的には炭素)をイオン化させると共に、図2に示すように、アセチレンガスを0〜300scmまで傾斜的に増加させ、基材にバイアス電圧を、成膜時において50Vから300Vまで傾斜的に増加させて、チタン元素が含まれる割合が、非晶質炭素皮膜の表面に向かう膜厚方向に沿って、100質量%〜20質量%に傾斜的に変化するチタン合金が複合した非晶質炭素皮膜の成膜を行い、試験片を製作した。
<顕微鏡観察>
前記試験片の皮膜の断面を観察すべく、試験片を切断し、その断面をTEM(透過型電子顕微鏡)より観察した。この結果を図4(a)に示す。また、前記非晶質炭素皮膜を形成する前に、チタンの金属皮膜の成膜を完了した際の金属皮膜表面をAFM(原子間力顕微鏡)により観察した。この結果を、図5(a)に示す。
<濡れ性試験>
図6に示すように、金属皮膜が形成された基材(個体)の表面に、(a)純水、(b)ホルムアミン、(c)エチレングリコールを滴下し、これらの液体の接触角を測定し、該接触角から、表面の密着性の指標として、付着仕事の大きさを算出した。この結果を、図6に示す。
<密着性試験>
スクラッチ法による試験:皮膜の密着力を測定した。具体的には、半径0.2μmのダイヤモンド圧子を用いて、この薄膜表面に、負荷速度100N/minで負荷をかけながら、圧子を10mm/minで相対移動させ、この薄膜が剥離した時点での荷重を、その薄膜の密着力として測定した。この結果を図7に示す。
ロックウェル法による試験:硬さ測定法であるHRc法(ロックウェル硬さ測定法)の圧子(先端の曲率半径0.2mm、円錐角120°のダイヤモンド圧子)を皮膜表面に荷重150kgで押し込んで、皮膜の密着性(剥離性)を確認した。この結果を図7に示す。
<摩擦摩耗試験>
図8に示すボールオンディスク試験装置を用いて、摩擦摩耗試験を行った。具体的には、皮膜を形成した試験片を回転数500rpmで回転させると共に、直径6.35mmの高炭素クロム軸受鋼(JIS規格:SUJ2)を10Nで押しつけて、試験片の回転抵抗を測定することにより、摩擦係数を算出し、皮膜の摩耗深さを測定し、該摩耗深さを摩耗量とした。この結果を図7に示す。
(比較例1)
実施例1と同じ基材を準備した。実施例1と相違する点は、スパッタリングにより金属皮膜と非晶質炭素皮膜とを成膜した点であり、基材とチタンからなるチタンターゲットとの間に、炉内圧が0.3Paとなるようにアルゴンガスを流し、この処理ガスを流した状態で、成膜温度(具体的には基材の温度)を150℃に保持して、チタンターゲットと基材との間に800Vに調整したバイアス電圧をかけながら、プラズマを発生させて、基板の表面をスパッタリングすることにより、金属皮膜を成膜した。さらに、チタンターゲットとカーボンターゲットを準備し、前記条件で、厚さ方向に沿ってチタンの割合が減少するチタン−カーボン複合層を形成し、さらに、チタンが複合した非晶質炭素皮膜(Ti複合DLC層)を形成した。そして、実施例1と同様の条件で、顕微鏡観察、密着性試験、及び摩擦試験を行った。この結果を図4(b)、図5(b)、図7に示す。
(比較例2)
実施例1と同じようにして、AIP法により皮膜を成膜した。実施例1と相違する点は、金属皮膜の成膜時のおけるバイアス電圧の大きさを800V一定とした点である。そして、実施例1と同じように、顕微鏡観察、及び濡れ性試験を行った。この結果を、図5(c)、図6に示す。
(結果1:顕微鏡観察)
図4(a)から、実施例1の基材と金属層(金属皮膜)であるチタン層(Ti層)と界面が、入り組んだ凹凸面となっている。さらに、金属層は、基材の表面と接触している部位およびその近傍には、基材表面に対して垂直方向に延出した幅40nm〜50nm、長さ200mm〜400nmの柱状の金属結晶が形成されていた。さらに、図5(a)に示すように、実施例1の金属皮膜(金属層)の表面およびその近傍では、基材表面に対して平行方向に延出した幅40nm〜50nm、長さ200mm〜400nmの柱状の結晶組織が形成されていた。
比較例1の基材の表面と接触している金属層およびその近傍、さらには、金属層(金属皮膜)の表面およびその近傍には、基材表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織を有する柱状の結晶組織が確認できた。
さらに、比較例2の基材の表面と接触している部位およびその近傍、金属層(金属皮膜)の表面およびその近傍には、基材表面に対して垂直方向に延出した柱状の結晶組織を有する柱状の結晶組織が確認できた。なお、実施例1、比較例1,2の表面粗さはいずれも中心線平均粗さRaが1.0nm程度であった。
(結果2:濡れ性試験)
図6に示すように、実施例1の金属皮膜の表面の付着仕事が、いずれの液体を用いた場合であっても、比較例2のものに比べて大きかった。
(結果3:密着性試験)
図7に示すように、実施例1のほうが、比較例1に比べてスクラッチ法による荷重が40Nと高く(比較例1は20N)、HRc法では、比較例1の皮膜のみが剥離した。この結果から、実施例1の皮膜のほうが密着性に優れていることがわかった。
(結果4:摩擦摩耗試験)
実施例1と比較例1の摩擦係数は同程度であり、実施例1の摩耗量は、比較例1のものに比べ、より少なかった。尚、実施例1の皮膜の成膜時間は、比較例1のものに比べて、4倍程度短かった。
(考察)
結果1より、実施例1の基材と金属層と界面は、入り組んだ凹凸面が形成されており、基材の表面に接触している金属層の部位およびその近傍には、基材表面に対して垂直方向に延出した柱状の金属結晶が形成されたことにより、基材と金属層との間に投錨効果が得られたと考えられる。これにより、結果3に示すように、実施例1のほうが、比較例1に比べて、皮膜の密着性が高くなったと考えられる。なお、実施例1の成膜初期においては、AIPによりTi原子がイオン化され、バイアス電圧が一般的な成膜時のバイアス電圧よりも大きいので、原子がひきつけられる力が強い。これにより、基材に衝突する際のエネルギが大きいため、基材と金属層と界面が入り組んだ凹凸面となり、基材表面に対して垂直方向に延出した柱状の金属結晶が形成されたものと推定される。
また、結果1より、実施例1の金属皮膜(金属層)の表面およびその近傍では、基材表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織を有しており、このような結晶組織からなる表面は、付着仕事の大きさが大きく、濡れ性が高いと考えられる。一方、比較例2の金属皮膜は、膜厚方向に沿って、基材表面に対して垂直方向に延出した柱状の結晶組織を有しており、このような結晶組織からなる表面は、付着仕事の大きさが小さく、濡れ性も低いと考えられる。このような特性により、比較例2に比べて、実施例1のほうが金属皮膜(金属層)と非晶質炭素皮膜との密着性が高いと考えられる。なお、実施例1の成膜終期においては、AIPによりTi原子がイオン化されるものの、バイアス電圧は小さいので、原子がひきつけられる力が弱い。これにより、基材に衝突する際のエネルギが小さいため基材表面に対して平行方向に延出した柱状の金属結晶が形成されたと推定される。
(実施例2,3)
実施例1と同じようにして、基材の表面に、金属層(金属皮膜)及び金属複合DLC層(非晶質炭素皮膜)を成膜した。実施例1と相違する点は、金属皮膜の成膜開始時(初期)の前記バイアス電圧の大きさを500Vとした点である。なお、実施例3は実施例2と同一の条件で成膜した。そして、実施例2,3の皮膜に対して、実施例1の密着性試験のうちHRc法により、荷重を100kg,150kg加え、皮膜の剥離を確認した。この結果を表1に示す。
(比較例3,4)
実施例1と同じようにして、基材の表面に、金属層(金属皮膜)及び金属複合DLC層(非晶質炭素皮膜)を成膜した。比較例3が、実施例1と相違する点は、金属皮膜の成膜開始時(初期)の前記バイアス電圧の大きさを250Vとした点である。比較例4が、実施例1と相違する点は、金属皮膜の成膜開始時(初期)の前記バイアス電圧の大きさを250Vとした点と、厚さ方向に沿ったチタンの割合を20質量%一定として、非晶質炭素皮膜を形成した点である。そして、比較例2,3の皮膜に対して、実施例2と同様の密着性試験を行った。この結果を表1に示す。
Figure 0004807290
(結果5及び考察)
実施例2,3の皮膜は、剥離しなかったが、比較例3,4の皮膜は、基材と金属皮膜との界面から剥離した。この結果から、実施例2,3は、金属皮膜を成膜開始時(初期)のバイアス電圧が、比較例3,4に比べて大きかったことにより、基材と金属皮膜の界面に前記した投錨効果が得られ、この結果、実施例2,3の皮膜は剥離しなかったと考えられる。このことから、前記投錨効果を得るためには、実施例2,3のように、金属皮膜の成膜開始時(初期)のバイアス電圧の大きさは、少なくとも500V以上である必要がある。また、比較例4のように、金属組成比を変化させても、基材と金属皮膜の界面における密着性に及ぼす影響は少ないと考えられる。
(実施例4〜6)
実施例2と同じようにして、基材の表面に、金属層(金属皮膜)及び金属複合DLC層(非晶質炭素皮膜)を成膜した。実施例4〜6が、実施例2と相違する点は、金属皮膜の成膜終了時(終期)のバイアス電圧の大きさを順次25V,50V,100Vとした点であり、非晶質炭素皮膜の成膜開始時(初期)のバイアス電圧の大きさを順次25V,50V,100Vとした点である。実施例6は、厚さ方向に沿ったチタンの割合を20質量%一定として、非晶質炭素皮膜を形成した点もさらに実施例2と相違する。そして、実施例4〜6の皮膜に対して、実施例2と同様の密着性試験を行った。この結果を表2に示す。
(比較例5)
実施例4と同じようにして、基材の表面に、金属層(金属皮膜)及び金属複合DLC層(非晶質炭素皮膜)を成膜した。比較例4が、実施例4と相違する点は、金属皮膜の成膜終了時(終期)の前記バイアス電圧の大きさを500Vとした点である。そして、比較例5の皮膜に対して、実施例4と同様の密着性試験を行った。この結果を表2に示す。
Figure 0004807290
(結果6及び考察)
実施例4〜6の皮膜は、剥離しなかったが、比較例5の皮膜は、金属皮膜と非晶質炭素皮膜との界面から剥離した。この結果から、実施例4〜6は、金属皮膜を成膜終了時(終期)のバイアス電圧が、比較例3,4に比べて小さかったことにより、金属皮膜の表面の濡れ性が向上し、金属皮膜と非晶質炭素皮膜との密着性が向上したものと考えられる。このような理由から、実施例4〜6の皮膜は剥離しなかったと考えられる。このことから、前記濡れ性を得るためには、実施例4〜6のように、金属皮膜の成膜終了時(終期)のバイアス電圧の大きさは、100V以下である必要がある。また、実施例6のように、金属組成比を変化させても、金属皮膜と非晶質炭素皮膜との密着性に及ぼす影響は少ないと考えられる。
(実施例7,8)
実施例2と同じようにして、基材の表面に、金属層(金属皮膜)及び金属複合DLC層(非晶質炭素皮膜)を成膜した。実施例7の成膜条件は、実施例2と同一であり、実施例8が、実施例2と相違する点は、金属皮膜の厚さを50nmとした点である。そして、実施例7,8の皮膜に対して、実施例2と同様の密着性試験を行った。この結果を表2に示す。
(比較例6〜9)
実施例7と同じようにして、基材の表面に、金属層(金属皮膜)及び金属複合DLC層(非晶質炭素皮膜)を成膜した。比較例6〜9が、実施例7と相違する点は、金属皮膜の厚さを5nmとした点である。比較例7は、非晶質炭素皮膜の成膜開始時(初期)の前記バイアス電圧の大きさを300Vとした点がさらに相違する。比較例8は、金属皮膜の成膜開始時(初期)のバイアス電圧の大きさを250Vにした点が相違する。また、比較例9は、金属皮膜の成膜開始時(初期)のバイアス電圧の大きさを250Vにした点、及び非晶質炭素皮膜の成膜開始時(初期)の前記バイアス電圧の大きさを300Vとした点が相違する。そして、実施例4と同様の試験を行った。この結果を表3に示す。
Figure 0004807290
(結果7及び考察)
実施例7,8の皮膜は、剥離しなかったが、比較例6〜9の皮膜は、基材と金属皮膜との界面から剥離した。但し、比較例6の皮膜は、測定箇所によっては、100kgで剥離しない箇所もあった。また、比較例7,9は、さらに、金属皮膜と非晶質炭素皮膜との界面から剥離するものもあった。この結果から、実施例7,8は、皮膜厚さが、比較例6〜9に比べて大きかったことにより、基材と金属皮膜の密着性が確実に向上したものと考えられる。このような理由より、実施例7,8の皮膜は剥離しなかったと考えられる。このことから、実施例7,8のように、皮膜厚さは、20nm以上であることが好ましいと考えられる。また、比較例7,9のように、金属皮膜と非晶質炭素皮膜との界面から剥離するものもあったのは、非晶質炭素皮膜の成膜開始時(初期)のバイアス電圧の大きさを、金属皮膜の成膜終了時(終期)のバイアス電圧の大きさよりも大きくしたため、濡れ性の高い金属皮膜の界面の組織形態とは異なった結晶組織が、非晶質炭素皮膜の界面に形成され、これにより、界面同士の密着性が低下したものと考えられる。
本実施形態に係る金属皮膜及び該金属皮膜表面の非晶質炭素皮膜を形成するに、好適な皮膜形成装置の概略図。 本実施形態に係る金属皮膜及び非晶質炭素皮膜の好適な製造方法を説明するための図。 本実施形態に係る金属皮膜の断面における金属組織の模式図。 実施例1及び比較例1のTEM(透過型電子顕微鏡)より観察した写真図。 実施例1及び比較例1,2の金属皮膜表面をAFM(原子間力顕微鏡)により観察した写真図。 実施例1及び比較例2の濡れ性試験の結果を示した図。 実施例1及び比較例1の密着性試験、摩擦摩耗試験の結果を示した図。 摩擦摩耗試験を説明するための図。
符号の説明
20:金属皮膜,21:基材の表面に対して垂直方向に延出した柱状の結晶組織,22:基材材表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織,70:基材

Claims (11)

  1. 金属ターゲットの金属をアーク放電によりイオン化させると共に、基材にバイアス電圧を印加することにより、前記基材の表面に前記イオン化した金属を付着させて、前記金属からなる皮膜を成膜する工程を少なくとも含む皮膜を成膜する方法であって、
    該金属皮膜の成膜工程において、前記成膜開始時の前記バイアス電圧の大きさを少なくとも500V以上とし、前記成膜終了時の前記バイアス電圧の大きさを少なくとも100V以下とし、前記成膜開始時から前記成膜終了時まで、前記バイアス電圧の大きさを傾斜的に減少させながら前記金属皮膜の成膜を行い、
    前記金属皮膜の表面に前記金属ターゲットの前記金属を含む非晶質炭素皮膜を成膜する工程をさらに含むことを特徴とする皮膜の成膜方法。
  2. 記金属ターゲットとして、4A族元素、5A族元素、6A族元素、3B族元素、及びSiから選択される1種以上の金属ターゲットを用いて前記金属皮膜の成膜を行い、
    前記非晶質炭素皮膜の成膜を、前記金属ターゲットと前記基材との間に炭化水素ガスをさらに供給した状態で、前記ターゲットの金属及び前記炭化水素ガスの炭化水素をイオン化させると共に、前記基材にバイアス電圧を付加することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の皮膜の成膜方法。
  3. 前記金属皮膜の厚さを少なくとも20nm以上となるように前記金属皮膜の成膜を行うことを特徴とする請求項2に記載の皮膜の成膜方法。
  4. 前記非晶質炭素皮膜の成膜工程において、前記炭化系水素ガスの濃度を上昇させることにより、前記非晶質炭素皮膜中の炭素の割合を、該非晶質炭素皮膜の表面に向かう厚さ方向に沿って傾斜的に増加させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の皮膜の成膜方法。
  5. 前記非晶質炭素皮膜の成膜を、前記バイアス電圧の大きさを増加させながら行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の皮膜の成膜方法。
  6. 前記非晶質炭素皮膜の成膜開始時のバイアス電圧を、前記金属皮膜の成膜終了時のバイアス電圧と同じ大きさとする請求項5に記載の皮膜の成膜方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の成膜方法により成膜された皮膜を基材の表面に形成した摺動部材。
  8. 基材の表面に少なくとも金属皮膜を形成した皮膜形成部材であって、
    前記金属皮膜は、前記基材の表面との接触部位およびその近傍では、前記基材の表面に対して垂直方向に延出した柱状の結晶組織を形成しており、
    前記金属皮膜の表面及びその近傍では、基材表面に対して平行方向に延出した柱状の結晶組織を形成しており、
    前記金属皮膜の表面には、さらに前記金属皮膜の金属を含む非晶質炭素皮膜が形成されていることを特徴とする皮膜形成部材。
  9. 前記金属皮膜の金属は、4A族元素、5A族元素、6A族元素、3B族元素、及びSiから選択される1種以上の金属であることを特徴とする請求項に記載の皮膜形成部材。
  10. 前記金属皮膜の厚さは少なくとも20nm以上であることを特徴とする請求項8又は9に記載の皮膜形成部材。
  11. 前記非晶質炭素皮膜は、該非晶質炭素皮膜の表面に向かう厚さ方向に沿って、傾斜的に炭素の割合が増加していることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の皮膜形成部材。
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