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JP4896393B2 - 燃料電池の電極用ペーストの製造方法、燃料電池の電極の製造方法、燃料電池の膜電極接合体の製造方法及び燃料電池システムの製造方法 - Google Patents

燃料電池の電極用ペーストの製造方法、燃料電池の電極の製造方法、燃料電池の膜電極接合体の製造方法及び燃料電池システムの製造方法 Download PDF

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JP4896393B2 JP2004329513A JP2004329513A JP4896393B2 JP 4896393 B2 JP4896393 B2 JP 4896393B2 JP 2004329513 A JP2004329513 A JP 2004329513A JP 2004329513 A JP2004329513 A JP 2004329513A JP 4896393 B2 JP4896393 B2 JP 4896393B2
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Description

本発明は、燃料電池のカソード極やアノード極を構成する電極用ペーストの製造方法と、それら電極の製造方法と、膜電極接合体の製造方法と、燃料電池システムの製造方法に関する。
従来、図18に示すような膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)90を用いた燃料電池システムが知られている。この膜電極接合体90は、ナフィオン(登録商標、Nafion(Du Pont社製))等の固体高分子膜からなる電解質膜91と、この電解質膜91の一面に接合されて空気が供給されるカソード極93と、電解質膜91の他面に接合されて水素等の燃料が供給されるアノード極92とを有している。
カソード極93は、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等のガス透過性のある基材と、この基材の一面に形成されたカソード触媒層93aとからなる。カソード極93におけるカソード触媒層93a以外の部分は基材によって構成されており、ここは非電解質側でカソード触媒層93aに空気を拡散するカソード拡散層93bとされている。
また、アノード極92も、上記基材と、この基材の一面に形成されたアノード触媒層92aとからなる。アノード極92におけるアノード触媒層92a以外の部分も基材によって構成されており、ここは非電解質側でアノード触媒層92aに空気を拡散するアノード拡散層92bとされている。
カソード触媒層93aやアノード触媒層92aは、図19に示すように、ほぼ球形のカーボン粉末81aに白金(Pt)等の触媒金属81bを担持してなる無数の触媒担持カーボン81と、各触媒担持カーボン81を互いに結合するとともに図示しない基材に結合する高分子電解質82とを含むものである。高分子電解質82としては、電解質膜91と同様のものが用いられ得る。
そして、この膜電極接合体90を図示しないセパレータで挟むことにより最小発電単位である燃料電池のセルが構成され、このセルが多数積層されて燃料電池スタックが構成される。カソード触媒層93aには空気供給手段によって空気が供給され、アノード触媒層92aには水素供給手段等によって水素等が供給されるようになっている。こうして燃料電池システムが構成される。
この膜電極接合体90では、アノード触媒層92aにおける電気化学的反応により、燃料から水素イオン(H+;プロトン)と電子とが生成される。そして、プロトンは水分子を伴ったH3+の形で電解質膜91内をカソード触媒層93aに向かって移動する。また、電子は、燃料電池システムに接続された負荷を通り、カソード触媒層93aに流れる。一方、カソード触媒層93aにおいては、空気中に含まれる酸素とプロトンと電子とから水が生成される。このような電気化学的反応が連続して起こることにより、燃料電池システムは起電力を連続して発生することができる。
しかし、膜電極接合体90のアノード触媒層92aにおいて生成されたプロトンは、水分子を伴って電解質膜91内をカソード触媒層93aに向かって移動することから、アノード触媒層92a及び電解質膜91のアノード触媒層92a側では、含水率が低下して乾燥しがちな状態になり、プロトンの移動が阻害され、燃料電池システムの出力が低下しやすい。
また、カソード触媒層93aでは、プロトンとともに移動した水と電池反応で生じた生成水とにより水が過剰となり、空気の拡散が阻害される(以下、「フラッディング」という。)ため、これによっても燃料電池システムの出力が低下しやすい。
このため、従来は、アノード触媒層92a及び電解質膜91の乾燥の問題については水素ガスを加湿装置によって加湿することにより解決し、またカソード触媒層93aの問題についてはカソード触媒層93aを撥水的に作成して外部に水を排出しやすいようにすることにより解決しようとしている。なお、従来、特許文献1〜6に本発明に関連する技術が開示されている。
特開2004−199915号公報 特開2004−185900号公報 特開2003−59505号公報 特開2002−324557号公報 特開2003−7308号公報 特開2002−134120号公報
しかし、上記のようにアノード極92側に加湿装置を設けるとすると、その作動のためにエネルギーを消費してしまい、燃料電池システムのランニングコストが高くなってしまう。また、その場合、カソード極93側にさらに過剰な水が存在することとなり、フラッディングによる出力低下の懸念も生じてしまう。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ランニングコストが低く、かつ出力低下を生じ難い燃料電池システムを製造可能にすることを解決すべき課題としている。
発明者の知見によれば、燃料電池のセルにおいて、固体高分子膜等の電解質膜は水を良好に移動させるものの、その電解質膜に接合されるアノード極やカソード極は水を良好に移動させることができない。アノード極やカソード極は、上述のように、無数の触媒担持カーボンと高分子電解質とを含むものであることから、その原因は、これらが水を局部的に含んでいなかったり、これらにおいては、各触媒担持カーボン同士の接触が阻害されていたり、高分子電解質と各触媒担持カーボンとの間に各触媒担持カーボン周りに存在して水によって互いに連続する親水層が形成されていなかったりすることにあると発明者は推論した。
すなわち、図19に示すように、従来のMEA90においては、電解質膜91は少なくとも使用中においては水32を含み、電解質膜91内には厚さ方向に連続する親水層71が形成されていることが推察される。しかしながら、アノード触媒層92aやカソード触媒層93aは、少なくとも使用中においては水32は含むものの、各触媒担持カーボン81同士の接触が阻害されていたり、高分子電解質82と各触媒担持カーボン81との間に水32によって互いに連続する親水層72が形成されていなかったりすると推論される。このため、アノード触媒層92aで生じたプロトンは、アノード触媒層92a内のイオン抵抗が高いためにアノード触媒層92a内を移動し難く、アノード触媒層92aから電解質膜91内へのイオン抵抗も高いために電解質膜91内に移動し難く、かつカソード触媒層93a内のイオン抵抗も高いためにカソード触媒層93a内を移動し難いと考えられる。また、カソード触媒層93aで生じた生成水がカソード極93側に溜まり、フラッディングを生じ易くなるとともに、アノード極92及び電解質膜91で水が不足してさらなるプロトンの伝導性を阻害するに至るものと考えられる。
また、高分子電解質82は極性を有しており、水を良好に移動させることができないアノード極92やカソード極93においては、それが好適に配向していないとも発明者は推論した。
発明者は、それらの推論による不具合を解決した燃料電池システムを試作し、これによって軽加湿又は無加湿でも高出力が得られることを発見した。本発明はこうして完成されたのである。
本発明は、カーボン粉末に触媒金属を担持してなる無数の触媒担持カーボンと、各該触媒担持カーボンを互いに結合するとともにガス透過性を有する基材に結合するための高分子電解質の溶液とを混合して電極用ペーストを得る燃料電池の電極用ペーストの製造方法であって、
チャンバー内に無数の前記触媒担持カーボンからなる集合体と水とを含む第一の混合物を収容した後、該チャンバーを公転させることによって該第一の混合物に遠心力を付与しつつ、該チャンバーを自転させることによって該第一の混合物を自身の自重で攪拌し、中間物を得る第1工程と、
該チャンバー内に該中間物と、前記高分子電解質のアルコール水溶液とからなる第二の混合物を収容した後、該チャンバーを公転させることによって該第二の混合物に遠心力を付与しつつ、該チャンバーを自転させることによって該第二の混合物を自身の自重で攪拌することにより、前記電極用ペーストを得る第2工程とよりなり
前記第1工程では、各前記触媒担持カーボンの表面から空気を強制的に剥がし、カーボン粉末の隙間に水を充填し、該触媒担持カーボンに水に対する濡れ性を付与して前記中間物を得
前記第2工程では、前記第二の混合物から空気を強制的に剥がすことを特徴とする軽加湿又は無加湿で安定した高出力が得られる燃料電池の電極用ペーストの製造方法である
本発明の製造方法では、まず第1工程において、チャンバー内に無数の触媒担持カーボンからなる集合体と水とを含む第一の混合物を収容した後、チャンバーを公転させることによって第一の混合物に遠心力を付与しつつ、チャンバーを自転させることによって第一の混合物を自身の自重で攪拌し、中間物を得る。こうして、各触媒担持カーボンの表面から空気を強制的に剥がすことができる。また、各触媒担持カーボンの表面を水で覆われた状態にすることができる。この際、遠心力の付与及び攪拌のためにボール、プロペラ等の異物を用いないことから、触媒担持カーボン同士の接触は阻害され難い。
そして、第2工程として、中間物に高分子電解質のアルコール水溶液を混合し、この第二の混合物から、軽加湿又は無加湿で安定した高出力が得られる電極用ペーストを得る。この際、各触媒担持カーボンは水に対する濡れ性を有していることから、高分子電解質は各触媒担持カーボン側に高分子電解質が有するイオン反応基を配向させる。そして、互いに接触する各触媒担持カーボンと高分子電解質との間に水によって互いに連続する親水層が形成された本発明の電極用ペーストが得られる。
こうして得られた電極用ペーストは、互いに接触する各触媒担持カーボンと高分子電解質との間に水によって互いに連続する親水層が形成されている。このため、この電極用ペーストを用いて燃料電池のアノード極やカソード極を製造すれば、そのアノード極やカソード極は親水層によってプロトンが移動しやすい。また、高分子電解質はその親水層側にイオン反応基を配向させているため、プロトンの移動に親水層が有効に活用される。親水層は、各触媒担持カーボンの表面に生成された水酸基と、高分子電解質のイオン反応基とによって構成されるものと考えられることから、薄膜状をなしていると思われる。このため、燃料電池システムは、MEAのアノード極、電解質膜及びカソード極でH3Oが良好に移動し、軽加湿又は無加湿でありながら高出力が得られる。
したがって、本発明によれば、ランニングコストが低く、かつ出力低下を生じ難い燃料電池システムを実現できる。
なお、上記特許文献1〜6には触媒担持カーボンの親水化についての記載はある。しかしながら、これらに開示された電極用ペーストによって得られる燃料電池システムは、本発明の電極用ペーストによって得られる燃料電池システム程の効果を奏し得ないのである。これらに開示された電極用ペーストによって得られるアノード極やカソード極が水を局部的に含んでいなかったり、これらにおいては、各触媒担持カーボン同士の接触が阻害されていたり、高分子電解質と各触媒担持カーボンとの間に水によって互いに連続する親水層が形成されていなかったりすることにあると発明者は推論する。また、これらにおいては、高分子電解質が部分的に配向してはいるものの、それらが連続的に形成されていなかったりするとも発明者は推論する。さらに、本発明の電極用ペーストは、各触媒担持カーボンの親水化のために高価なプラズマ照射を行なう必要がないため、燃料電池システムの低廉化にも貢献する。
第2工程は、チャンバー内に中間物及び高分子電解質のアルコール水溶液からなる第二の混合物を収容した後、チャンバーを公転させることによって第二の混合物に遠心力を付与しつつ、チャンバーを自転させることによって第二の混合物を自身の自重で攪拌し、電極用ペーストを得る。こうして、第二の混合物から空気を強制的に剥がすことができる。この際も、遠心力の付与及び攪拌のためにボール、プロペラ等の異物を用いないことから、触媒担持カーボン同士の接触が阻害され難い。
本発明の燃料電池の電極の製造方法は、ガス透過性を有する基材と、該基材の一面に形成された触媒層とを有し、該触媒層は、カーボン粉末に触媒金属を担持してなる無数の触媒担持カーボンと、各該触媒担持カーボンを互いに結合するとともに該基材に結合する高分子電解質とを含む燃料電池の電極の製造方法であって、
上記電極用ペーストを前記基材の一面に塗布して電極を得ることを特徴とする。塗布のためには印刷等の手段を採用することができる。
こうして得られる電極は親水層が触媒層中に連続的に形成されているので、これを伝ってプロトンが移動しやすい。また、高分子電解質がその親水層側に高分子電解質が有するイオン交換基を配向させているため、プロトンの移動に親水層が有効に活用される。このため、燃料電池システムは、アノード極の触媒層、電解質膜及びカソード極の触媒層中の触媒担持カーボンと高分子電解質との間において、高分子電解質が有するイオン反応基を触媒担持カーボン側に配向して水路を形成し、水路が触媒担持カーボンの全面に形成されるので、プロトンの移動に必要な量の水が水路内に保水されて水路内を良好に移動し、過剰な水は必要ないので、軽加湿又は無加湿でありながら高出力が得られる。
本発明の燃料電池の膜電極接合体の製造方法は、電解質層と、該電解質層の一面に接合されて空気が供給されるカソード極と、該電解質層の他面に接合されて燃料が供給されるアノード極とを有する燃料電池の膜電極接合体の製造方法において、
上記電極を前記カソード極及びアノード極の少なくとも一方に用いることを特徴とする。
こうして得られる膜電極接合体は親水層が触媒層中に連続的に形成されているので、これを伝ってプロトンが移動しやすい。また、高分子電解質がその親水層側に高分子電解質が有するイオン交換基を配向させているため、プロトンの移動に親水層が有効に活用される。このため、燃料電池システムは、アノード極の触媒層、電解質膜及びカソード極の触媒層中の触媒担持カーボンと高分子電解質との間において、高分子電解質が有するイオン反応基を触媒担持カーボン側に配向して水路を形成し、水路が触媒担持カーボンの全面に形成されるので、プロトンの移動に必要な量の水が水路内に保水されて水路内を良好に移動し、過剰な水は必要ないので、軽加湿又は無加湿でありながら高出力が得られる。
カソード極及びアノード極の少なくとも一方は、基材の他面に形成され、空気又は燃料を拡散する拡散層を有することが好ましい。これにより、燃料電池システムは、電池反応が生じ易く、高出力が得られる。
本発明の燃料電池システムの製造方法は、膜電極接合体と、前記カソード極に空気を供給する空気供給手段と、前記アノード極に前記燃料を供給する燃料供給手段とを備えた燃料電池システムの製造方法において、
上記膜電極接合体を用いることを特徴とする。
こうして得られる燃料電池システムは、アノード極、電解質膜及びカソード極で水が良好に移動し、軽加湿又は無加湿でありながら高出力が得られる。
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例の燃料電池システムでは、図13に示す複数のセル1が用いられている。各セル1は膜電極接合体(MEA)10と一対のセパレータ20とを備えている。
MEA10は、ナフィオンからなる電解質膜11と、この電解質膜11の一面に一体に接合されたアノード極12と、電解質膜11の他面に一体に接合されたカソード極13とを有している。
アノード極12は、電解質膜11側に設けられるアノード触媒層12aと、アノード触媒層12aの非電解質膜側に接合され、アノード触媒層12aに水素を拡散するアノード拡散層12bとからなる。
また、カソード極13は、電解質膜11側に設けられるカソード触媒層13aと、カソード触媒層13aの非電解質膜側に接合され、カソード触媒層13aに空気を拡散するカソード拡散層13bとからなる。
各セパレータ20は、一面側にアノード極12に水素を供給するための水素室21が形成され、他面側にカソード極13に空気を供給するための空気室22が形成されたものである。
各セル1は、アノード極12側に水素室21が対面し、カソード極13側に空気室22が対面するようにMEA10と一対のセパレータ20とが積層されたものである。そして、MEA10とセパレータ20とを順次積層することによりスタックが構成される。また、アノード極12側とカソード極13側とで共通する上記セパレータ20を採用している。なお、スタックの両端のセパレータ20には水素室21又は空気室22だけが形成されている。
スタックには、各セル1の水素室21に図示しないバルブを介して連通する水素ボンベ2と、各セル1の空気室22に連通するブロア3とが接続されている。水素ボンベ2及びセパレータ20の水素室21がアノード触媒層12aに水素を供給する水素供給手段である。また、ブロア3及びセパレータ20の空気室22がカソード触媒層13aに空気を供給する空気供給手段である。
実施例の燃料電池システムは、MEA10のカソード極13及びアノード極12に特徴を有している。より詳細には、カソード極13のカソード触媒層13a及びアノード極12のアノード触媒層12aに特徴を有している。
これらカソード触媒層13a及びアノード触媒層12aは図8に模式的に示す特殊な電極用ペースト50を用いて製造されている。この電極用ペースト50は以下の製造方法によって製造したものである。
まず、図1に示すように、ステップS1において、無数の触媒担持カーボン81(図14及び図15参照)からなる市販の集合体31(図4参照)を用意した。各触媒担持カーボン81は、図14及び図15に示すように、ほぼ球形のカーボン粉末81aにPtからなる触媒金属81bを担持してなるものである。そして、図1に示すステップS2において、この集合体31を150°Cの真空乾燥チャンバー内に1時間投入し、真空乾燥した。触媒担持カーボン81を真空乾燥するのは、各触媒担持カーボン81の表面の不純物を可及的に除去し、親水性に近づけるためである。この際、触媒担持カーボン81同士の接触を阻害しないようにするため、集合体31を粉砕しなかった。
その後、ステップS3において、中間物41を得る。この際、図5に示すように、各触媒担持カーボン81の表面には親水基である水酸基が元々存在せず、各触媒担持カーボン81は濡れ性が悪いため、単に集合物31に水32を添加するだけでは、各触媒担持カーボン81の表面に水が存在しない。このため、まず、図4に示すチャンバー35を有する自転/公転式遠心攪拌機(キーエンス社製、商品名「ハイブリッドミキサーHM−500」)を用意した。このチャンバー35は、容器35aと、この容器35aを封止する蓋35bとからなり、中心点O回りに高速で公転されるとともに、中心点Oから延びる自己の軸芯P回りに高速で自転され得るようになっている。このチャンバー35内に集合体31と、集合体31の8倍当量の水32とを含む第一の混合物40を収容した。この後、チャンバー35を公転させることによって第一の混合物40に遠心力を付与しつつ、チャンバー35を自転させることによって第一の混合物40を自身の自重で攪拌した。こうして、各触媒担持カーボン81の表面から空気を強制的に剥がし、カーボン粉末81aの隙間にも水を充填し、図6に示すように、触媒担持カーボン81に水に対する濡れ性が付与され、中間物41が得られた。この際、遠心力の付与及び攪拌のためにボール、プロペラ等の異物を用いないことから、触媒担持カーボン81同士の接触を阻害することがない。
そして、図1に示すステップS4において、図4に示すように、自転/公転式遠心攪拌機のチャンバー35内に中間物41及び高分子電解質82としてのナフィオンと、アルコールと、水とからなるアルコール水溶液を収容した後、チャンバー35を公転させることによって第二の混合物に遠心力を付与しつつ、チャンバー35を自転させることによって第二の混合物を自身の自重で攪拌した。こうして、ステップS4においても、第二の混合物から空気を強制的に剥がす。この際、図7に示すように、各触媒担持カーボン81は水に対する濡れ性を有していることから、高分子電解質82は各触媒担持カーボン81側に高分子電解質82自身が有するスルホン基からなるイオン反応基82aを配向させた。また、遠心力の付与及び攪拌のためにボール、プロペラ等の異物を用いないことから、触媒担持カーボン81同士の接触が阻害され難い。こうして、図4及び図8に示すように、発電時には互いに接触する各触媒担持カーボン81と高分子電解質82との間に水32によって互いに連続する親水層72が形成された電極用ペースト50が得られた。
一方、図2に示すステップS5において、ガス透過性を有する基材として、カーボンクロスを作製した。カーボンクロスを基材とし、両面にカーボンブラックとPTFEとの混合物からなる撥水層を付与した拡散層を作製した。この後、ステップS6において、上記電極用ペースト50を用いてカソード触媒層13a及びアノード触媒層12aの印刷を行なった。この際、チャンバー35又は容器30の壁面に付着した電極用ペースト50は攪拌不良が予想されるため、チャンバー35又は容器30内で上澄みとして存在する電極用ペースト50を用いた。そして、ステップS7において、印刷後の基材を乾燥させ、高分子電解質の溶液のアルコール及び水を蒸発させてカソード極13及びアノード極12を得た。
カソード拡散層13b又はアノード拡散層12bの断面を50倍に拡大した顕微鏡写真を図9に示し、5万倍の顕微鏡写真を図10に示す。図9及び図10より、カソード拡散層13b又はアノード拡散層12bでは微細な孔が無数に開いていることがわかる。このため、酸素や水素がカソード拡散層13bやアノード拡散層12bを容易に通り得ることがわかる。
そして、ステップS8において、電解質膜11を一定の大きさにサイズカットした。また、ステップS9において、カソード極13及びアノード極12の外観を検査した後、ステップS10において、カソード極13及びアノード極12も一定の大きさにサイズカットした。
この後、ステップS11において、アノード極12、電解質膜11及びカソード極13の順でこれらを積層し、140°C、加圧力60kgfでホットプレスした。こうしてMEA10を得た。ステップS12でMEA10をサイズカットし、ステップS13でMEA10を検査し、ステップS14でMEA10が完成する。
なお、本願発明の電極用ペーストを用いてMEAを作製する方法は、他への応用が可能である。
例えば、まず、ステップS4で得られた電極用ペーストを転写用フィルム上にアノード用及びカソード用としてそれぞれ所定面積に均一に塗布する。この後、各ペーストを乾燥させて転写用フィルム上に触媒層を形成する。そして、各触媒層が高分子電解質の膜に面するように、膜を挟むように転写用フィルムを配置し、ホットプレスで膜に触媒層を転写する。こうしてMEAを作製することも可能である。
また、高分子電解質の膜の両面に電極用ペーストを用いたスプレー法や塗布法等により触媒層を形成する。そして、各触媒層の表面に電極用の基材が接するように配置し、ホットプレスする。こうしてMEAを作製することも可能である。
上記MEA10の断面を2万倍に拡大した顕微鏡写真を図11に示す。また、カソード触媒層13a又はアノード触媒層12aの部分の100万倍の顕微鏡写真を図12に示す。図11及び図12からは必ずしも明らかではないが、上記のようにカソード極13のカソード触媒層13a及びアノード極12のアノード触媒層12aを製造していることからすれば、これらにおいては、図14に示すように、各触媒担持カーボン81同士の接触が維持され、かつ高分子電解質82と各触媒担持カーボン81との間に水32によって互いに連続する親水層72が形成されていることが推論される。このため、アノード触媒層12aで生じたプロトンは、形成されている親水層72を伝わってアノード触媒層12a内を移動するのでアノード触媒層12a内のイオン抵抗が低くなり、結果的にアノード触媒層12a内を移動し易いと考えられる。そして、それらのプロトンは、図16に示すように、アノード触媒層12aから電解質膜11内へのイオン抵抗も親水層72が連続しているので低くなり、電解質膜11内に移動し易く、かつ親水層72を伝わってカソード触媒層13a内を移動するのでカソード触媒層13a内のイオン抵抗が低くなり、結果的にカソード触媒層13a内を移動し易いと考えられる。こうして、このMEA10のアノード極12やカソード極13はプロトンが移動しやすいと考えられるのである。
さらには、カソード触媒層13aの触媒金属81bで生成する生成水がこの連続した親水層72を通って速やかにアノード極12側に逆拡散するようになる。このため、特に、低加湿運転時の電解質膜11及びアノード触媒層12aのドライアップを効果的に抑止し、高い発電性能を維持することができる。
また、カソード触媒層13a及びアノード触媒層12aにおいては、図15に示すように、スルホン基によって極性を有する高分子電解質82が好適に配向していることが推論される。このため、カーボン粉末81a及び触媒金属81bの表面上にスルホン基が向けられ、カーボン粉末81aとスルホン基との間には親水72が形成される。こうして、このMEA10では、プロトンの移動に親水層72が有効に活用されると考えられるのである。
こうして、親水層72は、各触媒担持カーボン81の表面に生成された水酸基と、高分子電解質82のイオン反応基82aとによって薄膜状に構成されるものと考えられる(PFF(Proton Film Flow)構造)。このため、この燃料電池システムは、MEA10のアノード極12、電解質膜11及びカソード極13で薄膜状の親水72を伝わってH3Oが良好に移動する。このように、水の通路として親水層72が予め形成されているので、外部から過剰な水をアノード電極12や電解質膜11に供給することを低減でき、さらに過剰な水によるフラッディング等も起こり難いので、軽加湿又は無加湿でありながら高出力が得られるのである。
実施例の燃料電池システム及び比較例の燃料電池システムについて、無加湿動作性能を比較した。比較例の燃料電池システムは従来のMEA90を用いたものである。従来のMEA90は、触媒担持カーボン粉末を溶剤(水/エチレングリコール等)と混合した後、イオン交換樹脂と溶剤とに分散させてペーストを作製し、このペーストを基材に印刷・乾燥してアノード電極及びカソード電極を作製し、電解質膜をこれらアノード電極及びカソード電極で挟持したものである。比較例の燃料電池システムの他の構成は実施例の燃料電池システムと同一である。
試験条件は、動作温度70°C、負荷0.7A/cm2、空気のストイキ比「4」、水素のストイキ比「1.3」である。なお、水素及び空気の動作圧力は対抗流方式とした。結果を図17に示す。
図17より、実施例の燃料電池システムでは以下のことがわかる。まず、抵抗については、0.1〜0.15(Ω・cm2)の間で安定しており、これはフル加湿条件で測定した場合と同程度である。一方、電圧については、0.5〜0.6(V)の間で安定して発電しているといった特徴が見られる。これら二つの結果は、生成水の逆拡散が良好である現象の証拠である。これに対し、作動後、すぐにMEA90が水不足のために運転不能になってしまったことがわかる。
したがって、実施例の燃料電池システムによれば、軽加湿又は無加湿でも高出力が得られるため、ランニングコストを低下を実現することができるのである。
本発明は電気自動車等の移動用電源、あるいは据え置き用電源に利用可能である。
実施例の燃料電池システムに係り、製造方法の一部を示す流れ図である。 実施例の燃料電池システムに係り、製造方法の一部を示す流れ図である。 実施例の燃料電池システムに係り、製造方法の一部を示す流れ図である。 実施例の製造方法で用いた自転/公転式遠心攪拌機のチャンバの模式図である。 第一の混合物の拡大模式図である。 中間物の拡大模式図である。 中間物と高分子電解質とを示す拡大模式図である。 電極用ペーストの拡大模式図である。 カソード極又はアノード極の断面を50倍に拡大した顕微鏡写真である。 カソード触媒層又はアノード触媒層の部分の5万倍の顕微鏡写真である。 MEAの断面を2万倍に拡大した顕微鏡写真である。 カソード触媒層又はアノード触媒層の部分の100万倍の顕微鏡写真である。 実施例のセルを示す模式断面図である。 実施例のカソード触媒層又はアノード触媒層を示す模式拡大断面図である。 実施例の燃料電池システムに係り、図15のXIV部分の模式拡大断面図である。 実施例のMEAを示す模式拡大断面図である。 試験1に係り、実施例及び比較例の燃料電池システムにおける無加湿動作性能を示すグラフである。 従来及び比較例のMEAを示す模式断面図である。 従来及び比較例のMEAを示す模式拡大断面図である。
符号の説明
81a…カーボン粉末
81b…触媒金属
81…触媒担持カーボン
82…高分子電解質
50…電極用ペースト
32…水
72…親水層
12、13…電極(12…アノード極、13…カソード極)
12a、13a…触媒層(12a…アノード触媒層、13a…カソード触媒層)
11…電解質膜
10…膜電極接合体(MEA)
12b…アノード拡散層
13b…カソード拡散層
3、22…空気供給手段、水素供給手段(3…ブロア、22…空気室)
2、21…燃料供給手段(2…水素ボンベ、21…水素室)

Claims (6)

  1. カーボン粉末に触媒金属を担持してなる無数の触媒担持カーボンと、各該触媒担持カーボンを互いに結合するとともにガス透過性を有する基材に結合するための高分子電解質の溶液とを混合して電極用ペーストを得る燃料電池の電極用ペーストの製造方法であって、
    チャンバー内に無数の前記触媒担持カーボンからなる集合体と水とを含む第一の混合物を収容した後、該チャンバーを公転させることによって該第一の混合物に遠心力を付与しつつ、該チャンバーを自転させることによって該第一の混合物を自身の自重で攪拌し、中間物を得る第1工程と、
    該チャンバー内に該中間物と、前記高分子電解質のアルコール水溶液とからなる第二の混合物を収容した後、該チャンバーを公転させることによって該第二の混合物に遠心力を付与しつつ、該チャンバーを自転させることによって該第二の混合物を自身の自重で攪拌することにより、前記電極用ペーストを得る第2工程とよりなり
    前記第1工程では、各前記触媒担持カーボンの表面から空気を強制的に剥がし、カーボン粉末の隙間に水を充填し、該触媒担持カーボンに水に対する濡れ性を付与して前記中間物を得
    前記第2工程では、前記第二の混合物から空気を強制的に剥がすことを特徴とする軽加湿又は無加湿で安定した高出力が得られる燃料電池の電極用ペーストの製造方法。
  2. 前記集合は真空乾燥されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池の電極用ペーストの製造方法。
  3. ガス透過性を有する基材と、該基材の一面に形成された触媒層とを有し、該触媒層は、カーボン粉末に触媒金属を担持してなる無数の触媒担持カーボンと、各該触媒担持カーボンを互いに結合するとともに該基材に結合する高分子電解質とを含む燃料電池の電極の製造方法であって、
    請求項1又は2記載の方法で製造した電極用ペーストを前記基材の一面に塗布して電極を得ることを特徴とする燃料電池の電極の製造方法。
  4. 電解質層と、該電解質層の一面に接合されて空気が供給されるカソード極と、該電解質層の他面に接合されて燃料が供給されるアノード極とを有する燃料電池の膜電極接合体の製造方法において、
    請求項3記載の方法で製造した電極を前記カソード極及びアノード極の少なくとも一方に用いることを特徴とする燃料電池の膜電極接合体の製造方法。
  5. 前記カソード極及び前記アノード極の少なくとも一方は、前記基材の他面に形成され、前記基材が前記空気又は前記燃料を拡散する拡散層を構成することを特徴とする請求項記載の燃料電池の膜電極接合体の製造方法。
  6. 膜電極接合体と、前記カソード極に空気を供給する空気供給手段と、前記アノード極に前記燃料を供給する燃料供給手段とを備えた燃料電池システムの製造方法において、
    請求項4又は5記載の方法で製造した膜電極接合体を用いることを特徴とする燃料電池システムの製造方法。
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