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JP4894501B2 - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

車両用サスペンションシステム Download PDF

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JP4894501B2
JP4894501B2 JP2006346422A JP2006346422A JP4894501B2 JP 4894501 B2 JP4894501 B2 JP 4894501B2 JP 2006346422 A JP2006346422 A JP 2006346422A JP 2006346422 A JP2006346422 A JP 2006346422A JP 4894501 B2 JP4894501 B2 JP 4894501B2
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Description

本発明は、車体と車輪とを上下方向において接近・離間させる力を発生させる電磁式アクチュエータを含んで構成されるサスペンションシステムに関する。
近年では、車両用のサスペンションシステムとして、車体と車輪とを上下方向において接近・離間させる力を発生させる電磁式アクチュエータを含んで構成されるいわゆる電磁式サスペンションシステムが検討されており、例えば、下記特許文献に記載のサスペンションシステムが存在する。この電磁式サスペンションシステムは、いわゆるスカイフック理論に基づくサスペンション特性を容易に実現できる等の利点から、高性能なサスペンションシステムとして期待されている。
特開2006−117210号公報 特開2003−42224号公報
電磁式アクチュエータは、振動減衰のためのショックアブソーバとして機能させることも可能であり、走行中において常時作動させられる。そのため、電磁式アクチュエータによるシステムの電力消費は、電磁式サスペンションシステムの抱える重大な問題となっている。上記特許文献2に記載されているシステムでは、一定時間内の平均消費電力が設定された上限値より大きくなる場合に、供給電流を低減させて消費電力を抑制することで、上記の問題に対処している。このように、何らかの対処手段によって、電磁式アクチュエータによる消費電力を低減することにより、電磁式アクチュエータを備えたサスペンションシステムの実用性を向上させ得るのである。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、電磁式アクチュエータを備えたサスペンションシステムの実用性を向上させることを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用サスペンションシステムは、車高を変更することを目的として車体車輪間距離を変更する制御において、電磁式アクチュエータがアクチュエータ力を発生させていない状態における車体車輪間距離である基準距離とは異なる車体車輪間距離を、電磁式アクチュエータに電力を供給してアクチュエータ力を発生させることで維持する状態から、その電力の供給を止めて基準距離に向かって車体車輪間距離を変更する際、その際の車体と車輪との相対動作に対して、アクチュエータ力を、電動モータに生じる起電力に依拠した特定の大きさの制動力として発生させる制御を実行可能に構成されたことを特徴とする。
本発明のサスペンションシステムは、車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際に、電動モータへ電力を供給することがないため、アクチュエータによる消費電力を低減することが可能である。したがって、本発明によれば、システムの電力消費が抑制されることになり、実用性の高いサスペンションシステムが構築されることになる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項および(5)項を合わせるとともに、さらなる特徴を加えたものが請求項1に相当し、(7)項,(8)項の各々が請求項2,請求項3の各々に、請求項1ないし請求項3のいずれかに(10)項および(11)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれかに(10)項および(12)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項5に、請求項1ないし請求項5のいずれかに(13)項および(15)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項6に、それぞれ相当する。
(1)車体の一部をなすばね上部材と車輪を保持するばね下部材とを相互に弾性的に支持するサスペンションスプリングと、
そのサスペンションスプリングと並列的に設けられ、動力源としての電動モータを有し上下方向において車体と車輪とを接近・離間させる力であるアクチュエータ力を発生させる電磁式アクチュエータと、
その電磁式アクチュエータの作動を制御する制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記制御装置が、上下方向における車体と車輪との距離である車体車輪間距離を変更する距離変更制御を実行可能とされ、その距離変更制御において、前記電磁式アクチュエータがアクチュエータ力を発生させていない状態における車体車輪間距離である基準距離に向かって車体車輪間距離を変更する際、車体と車輪との相対動作に対して、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、前記電動モータに生じる起電力に依拠した特定の大きさの制動力として発生させる特定制動力発生制御を実行する車両用サスペンションシステム。
距離変更制御においては、アクチュエータによって車体車輪間距離を目標となる車体車輪間距離まで変更する際、サスペンションスプリングの弾性力に抗して目標まで到達させる。そのため、その目標まで到達させた時点におけるサスペンションスプリングの弾性力と分担荷重(1つの車輪が分担する車体の重量であり、ばね上重量と考えることもできる)とのバランスが崩れた分を、アクチュエータがアクチュエータ力を発生させることで、その距離を維持する。そして、車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際には、サスペンションスプリングの弾性力と分担荷重とのバランスの崩れを利用して、アクチュエータを基準距離に向かって車体車輪間距離を変更するように動作させることが可能である。本項に記載の態様は、その際に、電動モータを発電機として機能させて、アクチュエータ力を、電動モータに生じる起電力に依拠した特定の大きさの制動力として発生させるのである。つまり、本項の態様によれば、基準距離に向かって車体車輪間距離を変更する際に、電動モータへ電源から電力を供給する必要がないため、アクチュエータによる消費電力を低減し、システムの電力消費を抑制することが可能となるのである。なお、本項の態様における「特定制動力発生制御」には、例えば、アクチュエータ力をある固定的な値の制動力として発生させる制御や、アクチュエータ力を車体車輪間距離の変動速度等に応じた特定の大きさの制動力として発生させる制御を採用することが可能である。また、本項にいう「車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際」とは、車体車輪間距離を変更する方向を限定することを意味するのであって、変更の目的となる距離を限定することを意味するのではない。
本項の態様における「サスペンションスプリング」には、例えば、コイルスプリングや、流体の圧力によって車体と車輪とを相互に弾性的に支持する流体スプリング等、種々のスプリングを採用することが可能である。
本項の態様における「電磁式アクチュエータ」は、それの具体的な構造が限定されるものではなく、また、機能に関しても特に限定されず、例えば、車体のロール,ピッチ等の抑制を目的として車体の姿勢を制御する機能,ショックアブソーバとしての機能等を有するものを採用可能である。本項における「電動モータ」は、アクチュエータの構造に応じて適した動作を行うモータであればよく、例えば、回転モータであっても、リニアモータであってもよい。
(2)前記電磁式アクチュエータが、(a)前記ばね上部材と前記ばね下部材との一方に対して相対移動不能とされた雄ねじ部と、(b)前記ばね上部材と前記ばね上部材との他方に対して相対移動不能とされ、前記雄ねじ部と螺合するとともに、車体と車輪との接近・離間に伴って前記雄ねじ部と相対回転する雌ねじ部とを有し、前記電動モータにより前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とに相対回転力を付与することによって、アクチュエータ力を発生させる構造とされた(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、電磁式アクチュエータを、いわゆるねじ機構を採用したものに限定した態様である。ねじ機構を採用すれば、上記電磁式アクチュエータを容易に構成することができる。なお、本項の態様においては、ばね上部材側,ばね下部材側のいずれに雄ねじ部を設け、いずれに雌ねじ部を設けるかは、任意である。さらに、雄ねじ部を回転不能とし、雌ねじ部を回転可能とするような構成としてもよく、逆に、雌ねじ部を回転不能とし、雄ねじ部を回転可能とするような構成としてもよい。
(3)前記電動モータが、ブラシレスDCモータである(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ブラシレスDCモータは、制御性が良好であるため、電磁式アクチュエータの駆動源として好適である。
(4)前記制御装置が、
前記電動モータの各相に対応する複数のスイッチング素子を有し、それら複数のスイッチング素子の作動制御によって前記電動モータを制御駆動する駆動回路を備えた(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の「駆動回路」には、例えば、インバータ等を採用可能である。本項の態様によれば、各相ごとに設けられたFET等のスイッチング素子のON/OFF状態の組み合わせの変更等、スイッチング素子の作動制御により、電動モータの制御駆動を容易にかつ正確に行うことができる。
(5)前記制御装置が、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、少なくともばね上振動に対する減衰力として発生させる減衰力制御を実行可能とされた(1)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に態様における「減衰力制御」には、ばね上振動のみに対する減衰力を発生させるいわゆるスカイフック理論に基づいた制御を採用することが可能である。また、ばね上振動とばね下振動とに対する減衰力、あるいは、ばね上ばね下相対振動に対する減衰力を発生させて、アクチュエータをショックアブソーバ(「ダンパ」と呼ぶこともできる)として機能させる制御を採用することも可能である。
(6)前記制御装置が、前記電磁式アクチユエ−タのアクチュエータ力を、車体のロールを抑制するためのロール抑制力とピッチを抑制するピッチ抑制力との少なくとも一方として発生させる車体姿勢制御を実行可能とされた(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項の態様は、上記アクチュエータによって、例えば、車両旋回時,車両加減速時に生じる車体の傾斜を抑制することを可能とする態様である。本項の態様によれば、例えば、車速,操舵角,車体に発生する横加速度,前後加速度等に応じてアクティブな車体の姿勢制御が実行可能となる。
(7)前記特定制動力発生制御が、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、車体車輪間距離の変動速度に応じた特定の大きさの制動力として発生させて実行される制御である(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
一般的に、電動モータが電源からの電力を受けて力を発生させる状態となるか、電動モータが発電しつつ力を発生させる状態となるかは、電動モータの動作速度と電動モータの力との関係によって、つまり、車体車輪間距離の変動速度とアクチュエータ力との関係によって定まる。したがって、本項に記載の態様によれば、アクチュエータ力を、適切な大きさの制動力として発生させることが可能である。なお、本項の態様は、例えば、電動モータの動作速度と電動モータの力との間の比である減衰係数を固定したアクチュエータ力を発生させるような態様とすることが可能である。
(8)前記特定制動力発生制御が、前記電動モータの各相の通電端子間を導通させることによって実行される制御である(1)項ないし(7)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、電動モータの各相の通電端子間に何らかの抵抗を存在させて導通させるものであってもよく、また、通電端子間を短絡させるようにして導通させるものであってもよい。本項の態様によれば、比較的簡便な制御によって特定制動力発生制御における消費電力を0として、システムの電力消費を抑制することが可能である。なお、制御装置が、複数のスイッチング素子を有する駆動回路を備える態様である場合には、各相のスイッチング素子のON/OFF状態を後述のような固定した状態とすることで実現することが可能である。ちなみに、各相の通電端子間を導通させた場合に得られる制動力は、車体車輪間距離の変動速度に応じた大きさとなる。つまり、本項の態様は、アクチュエータ力を車体車輪間距離の変動速度に応じた特定の大きさの制動力として発生させる態様の一態様であると考えることもできる。
(9)前記特定制動力発生制御が、前記電動モータの各相の通電端子間を短絡させることによって実行される制御である(8)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、上記の通電端子間を導通させる態様において、通電端子間を短絡させるものに限定した態様である。本項の態様によれば、起電力に依拠した制動力のなかでも大きな制動力を発生させることが可能である。
(10)前記特定制動力発生制御が、前記電動モータに生じる起電力に依拠する発電電力をその電動モータへ電力を供給する電源に回生しつつ実行される制御である(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項の態様は、特定制動力発生制御によって電源の充電量を増加させることが可能であるため、システムの省電力化という観点から、特に有効な態様である。
(11)前記特定制動力発生制御が、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、回生される電力量がもっとも大きくなる制動力として発生させて実行される制御である(10)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(12)前記特定制動力発生制御が、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、前記電動モータの各相の通電端子間を短絡させた場合に得られる制動力の1/2の制動力として発生させて実行される制御である(10)項または(11)項に記載の車両用サスペンションシステム。
後者の態様のように特定した大きさの制動力としてアクチュエータ力を発生させれば、回生される電力量を、もっとも大きくすることが可能である。つまり、後者の態様は、前者の態様の一態様であると考えることができる。上記2つの項に記載の態様によれば、効率的に電力を回生することが可能である。
(13)当該車両用サスペンションシステムが、車両が有する複数の車輪に対応して、それぞれが前記サスペンションスプリングである複数のサスペンションスプリングと、それぞれが前記電磁式アクチュエータである複数の電磁式アクチュエータとを備え、
前記制御装置が、それら複数の電磁式アクチュエータの作動を制御するものとされるとともに、それら複数の電磁式アクチュエータの各々に対して前記距離変更制御を実行することによって、当該車両の車高を変更する車高変更制御を実行可能とされ、かつ、その車高変更制御において、複数の車輪の各々についての車体車輪間距離を前記基準距離に向かって変更する際に、前記複数の電磁式アクチュエータの各々に対して前記特定制動力発生制御を実行する(1)項ないし(12)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、複数の車輪に対応してサスペンションスプリングおよび電磁式アクチュエータが配設され、それら複数の電磁式アクチュエータを利用して車両の車高を変更可能とされた態様であり、それぞれの電磁式アクチュエータが、前述した各態様を採用可能である。
(14)前記車高変更制御が、複数の車輪の各々についての車体車輪間距離を前記基準距離に向かって変更する際に、設定された程度以上の車体の傾斜を発生させない制御とされた(13)項に記載の車両用サスペンションシステム。
複数の車輪の各々についての車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際、複数のアクチュエータの各々に対して特定制動力発生制御が実行された場合において、例えば、それらのアクチュエータのうちの一部のアクチュエータについての車体車輪間距離の変動速度が他のアクチュエータの変動速度より速ければ、車体に傾斜が発生する虞がある。本項に記載の態様によれば、車高を変更する際に、車体に傾斜が発生しないように制御されるため、乗員に違和感を与えずに済むのである。本項の態様には、複数の電磁式アクチュエータの各々が、他のものに対して、設定された程度以上は先行することがないようにする制御を採用してもよく、設定された程度以上は遅れることがないようにする制御を採用してもよい。また、本項の態様には、複数の車輪の各々についての車体車輪間距離を相互に合わせるような制御や、複数の車輪の各々についての車体車輪間距離の変動速度を相互に合わせるような制御等を採用することが可能である。
(15)前記複数の電磁式アクチュエータの各々に対する前記特定制動力発生制御が、それら複数の電磁式アクチュエータの各々のアクチュエータ力を、車体車輪間距離の変動速度に応じた特定の大きさの制動力として発生させて実行される制御とされ、
前記制御装置が、複数の車輪の各々についての車体車輪間距離を前記基準距離に向かって変更する際に、設定された程度以上の車体の傾斜が発生した場合に、複数の電磁式アクチュエータのうちの一部であるいずれか1以上のものについての前記特定制動力発生制御を禁止するとともに、そのいずれか1以上のものの各々に対して、その各々のアクチュエータ力を車体の傾斜を抑制するための力として発生させる傾斜抑制制御を実行する(13)項または(14)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、車体の傾斜を発生させない制御を、具体的に限定した態様である。本項の態様によれば、複数のアクチュエータのうち少なくとも一部のものに対しては特定制動力発生制御が実行されるため、車体の傾斜を抑制するとともに、システムの電力消費を抑制することが可能である。
以下、請求可能発明の実施例およびその変形例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
≪サスペンションシステムの構成および機能≫
第1実施例の車両用サスペンションシステムは、SUV等の比較的車高が高い車両に搭載されるサスペンションシステムであり、図1に、その第1実施例のサスペンションシステム10を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
スプリング・アブソーバAssy20は、図2に示すように、車輪12を保持するばね下部材としてのサスペンションロアアーム22と、車体に設けられたばね上部材としてのマウント部24との間に、それらを連結するようにして配設された電磁式アブソーバであるアクチュエータ26と、それと並列的に設けられたサスペンションスプリングとしてのエアスプリング28とを備えている。
アクチュエータ26は、アウターチューブ30と、そのアウターチューブ30に嵌入してアウターチューブ30の上端部から上方に突出するインナチューブ32とを含んで構成されている。アウターチューブ30は、それの下端部に設けられた取付部材34を介してロアアーム22に連結され、一方、インナチューブ32は、それの上端部に形成されたフランジ部36においてマウント部24に連結されている。アウターチューブ30には、その内壁面にアクチュエータ26の軸線の延びる方向(以下、「軸線方向」という場合がある)に延びるようにして1対のガイド溝38が設けられるとともに、それらのガイド溝38の各々には、インナチューブ32の下端部に付設された1対のキー40の各々が嵌まるようにされており、それらガイド溝38およびキー40によって、アウターチューブ30とインナチューブ32とが、相対回転不能、軸線方向に相対移動可能とされている。ちなみに、アウターチューブ30の上端部には、シール42が付設されており、後に説明する圧力室44からのエアの漏れが防止されている。
また、アクチュエータ26は、ねじ溝が形成された雄ねじ部としてのねじロッド50と、ベアリングボールを保持してそのねじロッド50と螺合する雌ねじ部としてのナット52とを含んで構成されたボールねじ機構と、動力源としての電動モータ54(3相のブラシレスDCモータであり、以下、単に「モータ54」という場合がある)とを備えている。モータ54はモータケース56に固定して収容されるとともに、そのモータケース56の鍔部がマウント部24の上面側に固定されており、モータケース56の鍔部にインナチューブ32のフランジ部36が固定されていることで、インナーチューブ32は、モータケース56を介してマウント部24に連結されている。モータ54の回転軸であるモータ軸58は、ねじロッド50の上端部と一体的に接続されている。つまり、ねじロッド50は、モータ軸58を延長する状態でインナチューブ32内に配設され、モータ54によって回転させられる。一方、ナット52は、ねじロッド50と螺合させられた状態で、アウタチューブ30の内底部に付設されたナット支持筒60の上端部に固定支持されている。
エアスプリング28は、マウント部24に固定されたハウジング70と、アクチュエータ26のアウタチューブ30に固定されたエアピストン72と、それらを接続するダイヤフラム74とを備えている。ハウジング70は、概して有蓋円筒状をなし、蓋部76に形成された穴にアクチュエータ26のインナチューブ32を貫通させた状態で、蓋部76の上面側においてマウント部24の下面側に固定されている。エアピストン72は、概して円筒状をなし、アウタチューブ30を嵌入させた状態で、アウタチューブ30の上部に固定されている。それらハウジング70とエアピストン72とは、ダイヤフラム74によって気密性を保ったまま接続されており、それらハウジング70とエアピストン72とダイヤフラム74とによって圧力室44が形成されている。その圧力室44には、流体としての圧縮エアが封入されている。このような構造から、エアスプリング28は、その圧縮エアの圧力によって、ロアアーム22とマウント部24、つまり、車輪12と車体とを相互に弾性的に支持しているのである。
上述のような構造から、車体と車輪12とが接近・離間する場合、アウタチューブ30とインナチューブ32とは、軸線方向に相対移動が可能とされている。その相対移動に伴って、ねじロッド50とナット52とが軸線方向に相対移動するとともに、ねじロッド50がナット52に対して回転する。モータ54は、ねじロッド50に回転トルクを付与可能とされ、この回転トルクによって、車体と車輪12との接近・離間に対して、その接近・離間を阻止する抵抗力を発生させることが可能とされている。この抵抗力を車体と車輪12との接近・離間に対する減衰力として作用させることで、アクチュエータ26は、いわゆるアブソーバ(「ダンパ」と呼ぶこともできる)として機能するものとなっている。言い換えれば、アクチュエータ26は、自身が発生させる軸線方向の力であるアクチュエータ力によって、車体と車輪12との相対移動に対して減衰力を付与する機能を有しているのである。また、アクチュエータ26は、アクチュエータ力を、車体と車輪12との相対移動に対する推進力つまり駆動力として作用させる機能をも有している。この機能により、ばね上絶対速度に比例する減衰力を作用させるスカイフック制御を実行することが可能とされている。さらに、アクチュエータ26は、アクチュエータ力によって上下方向における車体と車輪との距離(以下、「車体車輪間距離」という場合がある)を積極的に変更し、また、車体車輪間距離を所定の距離に維持する機能をも有している。この機能によって、旋回時の車体のロール,加速・減速時の車体のピッチ等を効果的に抑制すること、車両の車高を調整すること等が可能とされているのである。
なお、アウタチューブ30の上端内壁面には環状の緩衝ゴム77が貼着されており、アウタチューブ30の内部底壁面にも緩衝ゴム78が貼着されている。車体と車輪12とが接近・離間する際、それらが離間する方向(以下、「リバウンド方向」という場合がある)にある程度相対移動した場合には、キー40が緩衝ゴム77を介してアウターチューブ30の縁部79に当接し、逆に、車体と車輪12とが接近する方向(以下、「バウンド方向」という場合がある)にある程度相対移動した場合には、ねじロッド50の下端が緩衝ゴム78を介してアウタチューブ30の内部底壁面に当接するようになっている。つまり、スプリング・アブソーバAssy20は、車体と車輪12との接近・離間に対するストッパ(いわゆるバウンドストッパおよびリバウンドストッパ)を有しているのである。
サスペンションシステム10は、各スプリング・アブソーバAssy20が有するエアスプリング28に対して流体としてのエア(空気)を流入・流出させるための流体流入・流出装置、詳しく言えば、エアスプリング28の圧力室44に接続されて、その圧力室44にエアを供給し、圧力室44からエアを排出するエア給排装置80を備えている。図3に、そのエア給排装置80の模式図を示す。エア給排装置80は、圧縮エアを圧力室44に供給するコンプレッサ82を含んで構成される。コンプレッサ82は、ポンプ84と、そのポンプ84を駆動するポンプモータ86とを備え、そのポンプ84によって、フィルタ88,逆止弁90を経て大気からエアを吸入し、そのエアを加圧して逆止弁92を介して吐出するものである。そのコンプレッサ82は、個別制御弁装置100を介して前記4つのエアスプリング28の圧力室44に接続されている。個別制御弁装置100は、各エアスプリング28の圧力室44に対応して設けられてそれぞれが常閉弁である4つの個別制御弁102を備え、各圧力室44に対する流路の開閉を行うものである。なお、それらコンプレッサ82と個別制御弁装置100とは、圧縮エアの水分を除去するドライヤ104と、絞り106と逆止弁108とが互いに並列に設けられた流通制限装置110とを介して、共通通路112によって接続されている。また、その共通通路112は、コンプレッサ82とドライヤ104との間から分岐しており、その分岐する部分に圧力室44からエアを排気するための排気制御弁114が設けられている。
上述の構造から、本サスペンションシステム10は、エア給排装置80によって、各エアスプリング28の圧力室44内のエア量を調整することが可能とされており、エア量の調整によって、各エアスプリング28のばね長を変更し、各車輪12についての車体車輪間距離を変化させることが可能とされている。具体的に言えば、圧力室44のエア量を増加させて車体車輪間距離を増大させ、エア量を減少させて車体車輪間距離を減少させることが可能とされている。
本サスペンションシステム10は、サスペンション電子制御ユニット(ECU)140によって、スプリング・アブソーバAssy20の作動、つまり、アクチュエータ26およびエアスプリング28の制御が行われる。詳しくは、アクチュエータ26のモータ54およびエア給排装置80の作動の制御が行われる。ECU140は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたコントローラ142と、エア給排装置80の駆動回路としてのドライバ144と、各アクチュエータ26が有するモータ54に対応する駆動回路としてのインバータ146とを有している。そのドライバ144およびインバータ146は、コンバータ148を介して電力供給源としてのバッテリ150に接続されており、エア給排装置80が有する各制御弁102,ポンプモータ86等、および、各アクチュエータ26のモータ54には、そのバッテリ150から電力が供給される。なお、モータ54は定電圧駆動されることから、モータ54への供給電力量は、供給電流量を変更することによって変更され、モータ54の力は、その供給電流量に応じた力となる。
車両には、イグニッションスイッチ[I/G]160,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ[v]162,各車輪12についての車体車輪間距離を検出する4つのストロークセンサ[St]164,車高変更指示のために運転者によって操作される車高変更スイッチ[HSw]166,ステアリングホイールの操作角を検出するための操作角センサ[δ]170,車体に実際に発生する前後加速度である実前後加速度を検出する前後加速度センサ[Gx]172,車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ[Gy]174,各車輪12に対応する車体の各マウント部24の縦加速度(上下加速度)を検出する4つの縦加速度センサ[GzU]176,各車輪12の縦加速度を検出する4つの縦加速度センサ[GzL]178,アクセルスロットルの開度を検出するスロットルセンサ[Sr]180,ブレーキのマスタシリンダ圧を検出するブレーキ圧センサ[Br]182,モータ54の回転角を検出する回転角センサであるレゾルバ[θ]184,バッテリ150の充電量を検出するための充電量センサ[E]186等が設けられており、それらはコントローラ142に接続されている。ECU140は、それらのスイッチ,センサからの信号に基づいて、スプリング・アブソーバAssy20の作動の制御を行うものとされている。ちなみに、[ ]の文字は、上記スイッチ,センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。
コントローラ142のコンピュータが備えるROMには、後に説明するところの目標車高を決定するプログラム,アクチュエータ26の制御に関するプログラム,エアスプリング28の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。なお、本サスペンションシステム10では、運転者の選択可能な設定車高は、設定標準車高(N車高),設定標準車高より高い設定高車高(Hi車高),設定標準車高より低い設定低車高(Low車高)の3つが設定されており、運転者の車高変更スイッチ166の操作によって所望の設定車高に選択的に変更される。この車高変更スイッチ166は、設定車高を段階的に高い側の設定車高あるいは低い側の設定車高にシフトさせるような指令、つまり、車高増加指令あるいは車高減少指令が発令される構造とされている。
≪インバータ等の構成≫
図4に示すように、各アクチュエータ26のモータ54は、コイルがスター結線(Y結線)された3相ブラシレスモータであり、上述したようにインバータ146によって駆動される。インバータ146は、図4に示すような一般的なものであり、high側(高電位側),low側(低電位側)のそれぞれに対応し、かつ、モータ54の3つの相であるU相,V相,W相のそれぞれに対応する6つのスイッチング素子HUS,HVS,HWS,LUS,LVS,LWSを備えている。ECU140のコントローラ142は、モータに設けられたレゾルバ184によりモータ回転角(電気角)を判断し、そのモータ回転角に基づいてスイッチング素子を開閉作動させる。インバータ146は、いわゆる正弦波駆動によってモータ54を駆動するのであり、モータ54の3つの相の各々に流れる電流量が、それぞれが正弦波状に変化し、その位相差が電気角で120°ずつ異なるように制御される。そして、インバータ146は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってモータ54に通電するようにされており、コントローラ142がパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することで、モータ54への通電電流量を変更して、モータ54が発生させる回転トルクの大きさを変更する。詳しくは、デューティ比が大きくされることで、通電電流量が大きくされて、モータ54の発生する回転トルクは大きくなり、逆に、デューティ比が小さくされることで、通電電流量が小さくされて、モータ54の発生する回転トルクは小さくなる。
モータ54が発生する回転トルクの方向は、モータ54が実際に回転している方向と同じ方向である場合もあり、また、逆の場合もある。モータ54が発生する回転トルクの方向とモータ54の回転方向が逆となる場合、つまり、アクチュエータ26が、アクチュエータ力を車輪と車体との相対動作に対する抵抗力として作用させている場合には、モータ54の発生させる力は、必ずしも、電源から供給される電力に依拠するものとはならない。詳しく言えば、モータ54が外部からの力によって回転させられることで、そのモータ54に起電力が生じ、モータ54は、その起電力に基づくモータ力を発生させる場合、つまり、アクチュエータ26が起電力に基づくアクチュエータ力を発生させる場合もある。
図5に、モータ54の回転速度ωとモータ54が発生させる回転トルクとの関係を概念的に示す。この図における領域(a)が、モータ54の回転トルクの方向と回転方向が同じ方向となる領域であり、領域(b)および領域(c)が、モータ54の回転トルクの方向と回転方向が逆となる領域である。領域(b)と領域(c)とを区画する線は、モータ54の各相の通電端子間を短絡させた場合の特性線、すなわち、いわゆる短絡制動させた場合に得られるモータ54の回転速度ωと回転トルクとの関係を示す短絡特性線である。回転速度ωに対してモータ54が発生させる回転トルクがその短絡特性線における回転トルクより小さい領域(c)が、モータ54が発電機として機能し、モータ54が起電力に依拠して制動力となる回転トルクを発生させる領域である。ちなみに、領域(b)は、モータ54がバッテリ150から電力の供給を受けて制動力となるトルクを発生させる領域、いわゆる逆転制動領域であり、領域(a)は、モータ54がバッテリ150から電力の供給を受けてトルクを発生させる領域である。
なお、インバータ146は、起電力よって発電された電力をバッテリ150に回生可能な構造とされている。つまり、モータ54の回転速度ωとモータ54が発生する回転トルクとの関係が上記領域(c)となる場合に、起電力に依拠した発電電力が回生されるのである。また、前述したスイッチング素子のPWM制御は、起電力によってモータ54の各コイルに流れる電流量をも制御するものとなっており、モータ54が発生する回転トルクとモータ54の回転方向が逆となる場合においても、デューティ比を変更することで、モータ54が発生する回転トルクの大きさが変更されることになる。すなわち、インバータ146は、電源からの供給電流であるか、あるいは、起電力によって生じる電流であるかに拘わらず、モータ54のコイルを流れる電流、つまり、モータ54の通電電流を制御して、モータ力を制御する構造とされているのである。
≪サスペンションシステムの基本的な制御≫
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ26のアクチュエータ力が独立して制御されて、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動を減衰するための制御(以下、「減衰力制御」という場合がある)が実行される。また、車体のロールを抑制するための制御(以下、「ロール抑制制御」という場合がある),車体のピッチを抑制するための制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)、つまり、それらを併せた制御として、車体の姿勢制御が実行される。さらに、本システム10では、高速走行時の走行安定性の向上や乗員の車両への乗降の容易性等を目的として車両の車高を変更する制御(以下、「アクチュエータ依存車高変更制御」という場合がある)が実行されるのであり、各アクチュエータに対して、各アクチュエータ26に対応する車体車輪間距離を変更する制御(以下、「距離変更制御」という場合がある)が実行される。なお、上記の車体姿勢制御および距離変更制御は、後に詳しく説明するように、車体車輪間距離を直接の制御対象とする制御であり、いわゆる位置制御の手法に従う制御であるため、それらを併せた制御を、目標位置依拠制御と呼ぶこととする。上記減衰力制御,目標位置依拠制御は、各制御ごとのアクチュエータ力の成分である減衰力成分,目標位置依拠成分を合計して目標アクチュエータ力が決定され、アクチュエータ26がその目標アクチュエータ力を発生させるように制御されることで、一元的に実行される。また、本サスペンションシステム10では、エアスプリング28によって、悪路走行への対処等を目的として運転者の意思に基づいて車両の車高を変更する制御(以下、「エアスプリング依存車高変更制御」という場合がある)が実行される。なお、以下の説明において、アクチュエータ力およびそれの成分は、車体と車輪12とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが正の値,車体と車輪12とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
i)エアスプリング依存車高変更制御
エアスプリング28によって車両の車高を変更するエアスプリング依存車高変更制御は、運転者の意図に基づく車高変更スイッチ166の操作によって実現すべき設定車高である目標設定車高が変更された場合において、実行される。前記3つの設定車高の各々に応じて、各車輪12についての目標となる車体車輪間距離LS *が設定されており、ストロークセンサ164の検出値に基づいて、それぞれの車輪12についての車体車輪間距離が目標距離LS *になるように、エア給排装置80の作動が制御され、各車輪12の車体車輪間距離が目標設定車高に応じた距離に変更されるのである。また、本サスペンションシステム10においては、Hi車高において車速vが閾速度v0(例えば、50km/h)以上となった場合に、車両の走行安定性に鑑み、N車高に戻されるようにされており、エアスプリング依存車高変更制御は、この場合にも実行される。さらに、このエアスプリング依存車高変更制御では、例えば、乗員数の変化,荷物の積載量の変化等による車高の変動に対処することを目的とした、いわゆるオートレベリングと呼ばれる制御も行われる。
具体的には、車高を上げる場合のエア給排装置80の作動(以下、「車高増加作動」という場合がある)では、まず、ポンプモータ94が作動させられるとともに、すべての個別制御弁102が開弁されることで、圧縮エアがエアスプリング28の圧力室44に供給される。その状態が継続された後、車体車輪間距離が目標距離LS *となったものから順に個別制御弁102が閉弁され、すべての車輪12についての車体車輪間距離が目標距離LS *となった後に、ポンプモータ94の作動が停止させられる。車高を下げる場合のエア給排装置80の作動(以下、「車高減少作動」という場合がある)では、まず、排気制御弁114が開弁されるとともに、すべての個別制御弁102が開弁されることで、エアスプリング28の圧力室44からエアが大気に排気される状態とされる。その後、車体車輪間距離が目標距離LS *となったものから順に個別制御弁102が閉弁され、すべての車輪12についての車体車輪間距離が目標距離LS *となった後に、排気制御弁114が閉弁される。なお、オートレベリングが行われる場合には、車高を変更する必要があるものに対応する個別制御弁102が開弁され、エアが供給あるいは排気されるのである。
ただし、上記の車高増加作動,車高減少作動は、特定の禁止条件(以下、「車高変更禁止条件」という場合がある)を充足する場合には実行が禁止される。具体的には、車体にロールモーメント,ピッチモーメントが作用していること、車体と車輪12との少なくとも一方が設定値以上の加速度で上下方向に動いていること、4輪の車体車輪間距離がある許容範囲を越えて揃っていないことが、1つでも充足されると、エア給排装置80の作動が禁止される。その場合においては、個別制御弁102が閉弁され、ポンプモータ94の作動の停止あるいは排気制御弁114の閉弁が行われ、エアスプリング28の圧力室44内のエア量は、その時点でのエア量に保たれる。
ちなみに、後に説明する目標位置依拠制御において用いられる基準距離LBは、アクチュエータ26がアクチュエータ力を発生させていない状態における車体車輪間距離である。つまり、各車輪12において、エアスプリング28によって維持される車体車輪間距離LS *が、基準距離LBとされる。なお、車高増加作動,車高減少作動がその実行中に車高禁止条件により実行が禁止される場合には、その実行が禁止された時点における車体車輪間距離が、基準距離LBとされる。
ii)目標位置依拠制御
目標位置依拠制御は、車体の姿勢を制御することや車高を変更することを目的として、アクチュエータ力によって各車輪12についての車体車輪間距離を調整するものである。この目標位置依拠制御では、ロール抑制制御,ピッチ抑制制御,距離変更制御の各制御に基づいて、各車輪12についての目標となる車体車輪間距離(以下、単に「目標距離」という場合がある)L*を決定し、車体車輪間距離がその目標距離となるようにアクチュエータ26を制御すべく、アクチュエータ力の目標位置依拠成分FTが決定される。
目標距離L*は、ロール抑制制御,ピッチ抑制制御,距離変更制御の各制御ごとに、アクチュエータ26がアクチュエータ力を発生させていない状態における車体車輪間距離である上記基準距離LBからの調整距離であるロール抑制成分δLR,ピッチ抑制成分δLP,距離変更成分δLHが決定され、それらを合計して決定される。
*=LB+δLR+δLP+δLH
そして、ストロークセンサ164により検出される実車体車輪間距離Lrの目標距離L*に対する偏差である車体車輪間距離偏差ΔL(=L*−Lr)が認定され、その車体車輪間距離偏差ΔLが0となるように、目標位置依拠成分FTが決定されるのである。その目標位置依拠成分FTは、ECU140において、車体車輪間距離偏差ΔLに基づき、次式のPID制御則に従って決定される。
T=KP・ΔL+KD・ΔL’+KI・int(ΔL)
ここで、第1項,第2項,第3項は、それぞれ、目標位置依拠成分FAにおける比例項成分(P項成分),微分項成分(D項成分),積分項成分(I項成分)を意味し、KP,KD,KIは、それぞれ、比例ゲイン,微分ゲイン,積分ゲインを意味する。また、Int(ΔL)は、車体車輪間距離偏差ΔLの積分値に相当する。以下に、ロール抑制制御,ピッチ抑制制御,距離変更制御の各々を、ロール抑制成分δLR,ピッチ抑制成分δLP,距離変更成分δLHの決定方法を中心に説明する。
a)ロール抑制制御
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側の車体と車輪12とが離間させられるとともに、旋回外輪側の車体と車輪12とが接近させられる。図6(a)は、ロールモーメントを指標する横加速度Gyと車体車輪間距離の変化量δLとの関係を示す図であり、この図における破線が、アクチュエータ26を働かせなかった場合のものである。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、ロールモーメントの大きさに応じて、図6(a)の実線に示した車体車輪間距離となるようにアクチュエータ26を制御する。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車速vに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ174によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、調整距離のロール抑制成分δLRが決定される。詳しくは、コントローラ142内には制御横加速度Gy*をパラメータとするロール抑制成分δLRの図6(a)に示すマップデータが格納されており、そのマップデータを参照して、ロール抑制成分δLRが決定される。
b)ピッチ抑制制御
車体の制動時等に発生する車体のノーズダイブに対しては、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側の車体と車輪12とが接近させられるとともに、後輪側の車体と車輪12とが離間させられる。また、車体の加速時等に発生する車体のスクワットに対しては、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側の車体と車輪12とが離間させられるとともに、後輪側の車体と車輪12とが接近させられる。図6(b)は、ピッチモーメントを指標する前後加速度Gxと車体車輪間距離の変化量δLとの関係を示す図であり、この図における破線が、アクチュエータ26を働かせなかった場合のものである。ピッチ抑制制御では、それらの場合の接近・離間距離を抑制すべく、ピッチモーメントに応じて、図6(b)の実線に示した車体車輪間距離となるようにアクチュエータ26を制御する。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ172によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、調整距離のピッチ抑制成分δLPが決定される。詳しくは、コントローラ142内には、図6(b)に示すマップデータ、つまり、前後加速度Gxをパラメータとするピッチ抑制成分δLPのマップデータが格納されており、そのマップデータを参照して、ピッチ抑制成分δLPが決定される。なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ180によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ182によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
c)距離変更制御
本サスペンションシステム10においては、N車高において車速vが閾速度v1(例えば、80km/h)以上となった場合には、車両の走行安定性に鑑み、N車高より低い車高(設定低車高より高い車高)である「高速時車高」に車高が変更されるようになっている。また、運転者の乗降や荷物の積み降ろしを容易にするために、乗降時には、Low車高よりさらに低い車高である「乗降時車高」に車高が変更されるようになっている。これらの場合の車高変更制御が、アクチュエータ26によって行われるのであり、そのアクチュエータ26の各々に対して実行される制御が距離変更制御である。具体的には、目標となる高速時車高あるいは乗降時車高に応じて、各車輪12についての調整距離の距離変更成分δLHが決定される。ただし、図7に示すように、目標距離L*が急変することのないように、距離変更成分δLHが時間tに応じて徐々に減少されるようになっている。また、高速時車高あるいは乗降時車高からN車高に戻す場合についても同様に、距離変更成分δLHは徐々に増加されるようになっている。
iii)減衰力制御
減衰力制御では、車体および車輪12の振動を減衰するためにその振動の速度に応じた大きさのアクチュエータ力を発生させるべく、アクチュエータ力の減衰力成分FVが決定される。具体的には、車体のマウント部24に設けられた縦加速度センサ176によって検出される縦加速度に基づいて計算される車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上速度VUと、ロアアーム22に設けられた縦加速度センサ178によって検出される縦加速度に基づいて計算される車輪の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下速度VLとに基づいて、次式に従って、減衰力成分FVが演算される。
V=CU・VU−CL・VL
ここで、CUは、車体のマウント部24の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインであり、CLは、車輪12の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインである。つまり、CU,CLは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。なお、減衰力成分FVは、他の手法で決定することも可能である。例えば、ばね上ばね下相対速度に基づく減衰力を発生させる制御を実行すべく、車体と車輪12との相対速度の指標値として、モータ54に設けられている回転角センサ184の検出値から得られたモータ54の回転速度ωに基づき、次式に従って決定することも可能である。
V=C・ω(C:減衰係数)
なお、減衰力制御は、設定された周波数以上(例えば、1Hz以上)の振動が生じているとみなせる場合にのみ実行される。具体的には、縦加速度センサ176,178のいずれかの検出値が設定値以上となった場合に、上記式に従った減衰力成分FVの決定がなされることになる。減衰力制御を実行しない場合には、減衰力成分FVは、0に決定される。
iv)目標アクチュエータ力とモータの作動制御
アクチュエータ26の制御は、それが発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力に基づいて行われる。詳しく言えば、上述のようにして、アクチュエータ力の目標位置依拠成分FT,減衰力成分FVが決定されると、それらに基づき、次式に従って目標となるアクチュエータ力F*が決定される。
*=FT+FV
ただし、減衰力制御が実行される場合には、目標位置依拠成分FTの決定において、比例項成分KP・ΔLおよび微分項成分KD・ΔL’が0とされるようになっている。その場合には、積分項成分KI・int(ΔL)のみが、すなわち、モータ54が現在の回転位置を維持するために必要なアクチュエータ力成分のみが、目標位置依拠成分FTとされ、その目標位置依拠成分FTと減衰力成分FVとが加算されて上記目標アクチュエータ力F*が決定される。このことにより、目標位置依拠制御の減衰力制御への干渉が小さくされることになる。そして、上述のように決定された目標アクチュエータ力F*に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ146に送信される。インバータ146は、その適切なデューティ比の下、目標アクチュエータ力を発生させるようにモータ54を駆動する。
≪距離変更制御における制動制御≫
上記距離変更制御においては、アクチュエータ26によって車体車輪間距離を目標となる車体車輪間距離まで変更する際、エアスプリング28の弾性力に抗して目標まで到達させる。そのため、その目標まで到達させた時点におけるエアスプリング28の弾性力と分担荷重とのバランスが崩れた分を、アクチュエータ26がアクチュエータ力を発生させることで、その距離を維持している。そして、車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際には、エアスプリング28の弾性力と分担荷重とのバランスの崩れを利用して、アクチュエータ26を基準距離に向かって車体車輪間距離を変更するように動作させ、モータ54に起電力を生じさせることができる。本サスペンションシステム10においては、車体と車輪12との相対動作に対して、アクチュエータ力を、その起電力に依拠した特定の大きさの制動力として発生させる特定制動力発生制御を実行することが可能とされている。具体的には、特定制動力発生制御として、充電量センサ186により検出されたバッテリ150の充電量(=残量)Eが比較的多い(設定値E0以上)場合には、モータ54の各相の通電端子間を短絡させることによって、アクチュエータ力を制動力として発生させる短絡制動制御が実行される。また、充電量Eが設定値E0より少ない場合には、起電力に依拠する発電電力をバッテリ150に回生しつつ、アクチュエータ力を、回生される電力量が最も大きくなるような大きさの制動力として発生させる特定制動力回生制御が実行される。なお、特定制動力発生制御は、本システム10が減衰力制御,車体姿勢制御を実行せずに距離変更制御のみを実行している場合であって、その距離変更制御において車体車輪間距離を基準距離に復帰させる場合に、実行されるようになっている。以下、それら短絡制動制御および特定制動力回生制御について、詳しく説明する。
i)短絡制動制御
短絡制動制御は、モータ54の各相の通電端子間を短絡させることによって、アクチュエータ力を制動力として発生させる制御である。具体的に言えば、インバータ146のhigh側のスイッチング素子HUS,HVS,HWSのすべてをON状態(閉状態),low側のスイッチング素子LUS,LVS,LWSのすべてをOFF状態(開状態)とすることで、スイッチング素子HUS,HVS,HWSと、それらに並設された還流ダイオードとにより、モータ54の各相の通電端子間を、あたかも相互に短絡させられた状態とするのである。そのことにより、距離変更制御において車体車輪間距離を基準距離に復帰させる際には、モータ54には起電力が発生し、その起電力に依拠したアクチュエータ力を発生させることになる。なお、そのアクチュエータ力は、車体車輪間距離の変動速度(モータ54の回転速度ω)に応じて、図5に示した短絡特性線に従った特定の大きさの制動力となる。つまり、本短絡制動制御においては、モータ54に生じた起電力に依拠したアクチュエータ力を発生させることで、本制御におけるバッテリ150の消費電力を0とすることができるため、本サスペンションシステム10の電力消費を抑制することが可能となるのである。
ii)特定制動力回生制御
また、特定制動力回生制御は、起電力に依拠する発電電力をバッテリ150に回生しつつ、アクチュエータ力を、回生される電力量が最も大きくなるような大きさの制動力として発生させる制御である。詳しくは、アクチュエータ26の目標アクチュエータ力F*が、モータ54の各相の通電端子間を短絡させた場合に得られる制動力の1/2の制動力となるように、次式に従って決定される。
*=(1/2)・CS・ω (CS:短絡制動に従う場合の減衰係数)
そして、この決定された目標アクチュエータ力F*に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ146に送信される。インバータ146は、その適切なデューティ比とすることで、発電電力をバッテリ150に回生しつつ、制動力を発生させるようにモータ54を駆動するのである。本特定制動力回生制御においては、アクチュエータ力が、モータ54の各相の通電端子間を短絡させた場合に得られる制動力の1/2の大きさとなる制動力として発生させられ、回生される電力量がもっとも大きくされている。つまり、本サスペンションシステム10は、効率的に電力を回生して、システム10の電力消費を抑制することが可能となるのである。
iii)距離変更制御における車体の傾斜への対処
4つのアクチュエータ26の各々に対して上記の特定制動力発生制御が実行された場合において、例えば、それら4つのアクチュエータ26のうちの一部のアクチュエータ26についての車体車輪間距離の変動速度が他のアクチュエータ26の変動速度と異なれば、車体に傾斜が発生する虞がある。しかし、本サスペンションシステム10では、車体に傾斜を発生させないように制御されることになる。
本サスペンションシステム10では、車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際には、先に述べたように、時間tに対して距離変更成分δLHが徐々に増加させられることで目標距離L*が徐変させられる。詳しくは、各アクチュエータ26の目標距離L*は、通常の状態において特定制動力発生制御が実行された場合に推定される車体車輪間距離の変動速度より、適当なマージンをとった速い変動速度となるように、徐変させられる。また、本システム10では、特定制動力発生制御は、車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際、言い換えれば、目標距離L*が実際の車体車輪間距離Lrより基準距離LBに近い場合に実行される。そのため、ある一部のアクチュエータ26において、車体車輪間距離の変動速度が非常に速く、実車体車輪間距離Lrが目標距離L*を超えて基準距離LBに近づいた場合には、その一部のアクチュエータ26に対して、特定制動力発生制御が実行されずPID制御則に従った位置制御が実行されることになる。つまり、車体車輪間距離の変動速度の速いアクチュエータ26に対しては、車体車輪間距離を目標距離L*とするようなアクチュエータ力が発生させられることになる。したがって、本サスペンションシステム10では、4つの車輪12の各々についての車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際に、車体の傾斜をほとんど発生させないように制御されることになるのである。
≪制御プログラム≫
上述のようなエアスプリング28の制御、および、アクチュエータ26の制御は、それぞれ、図8にフローチャートを示すエアスプリング制御プログラム,図9にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが、短い時間間隔(例えば、数msec〜数十msec)をおいてコントローラ142により繰り返し実行されることによって行われる。本サスペンションシステム10が配備されている車両は、電子キーを採用しており、車両に設けられたセンサ(図示省略)は、その電子キーが車両から所定範囲内に存在する場合にその電子キーを検知可能とされている。上記2つのプログラムは、そのセンサによって電子キーが検知されてから、電子キーが検知されなくなった後に一定時間(例えば、60sec)が経過するまでの間実行される。なお、それら2つの制御プログラムに従う処理のうち車高を変更する処理は、目標車高に基づいて行われるのであり、その目標車高の決定、つまり、目標となる車体車輪間距離の決定および車体車輪間調整距離の距離変更成分の決定は、図10にフローチャートを示す目標車高決定プログラムが実行されることによって行われる。また、その目標車高決定プログラムは、先の2つの制御プログラムと同じ期間、互いに並行して実行される。以下に、それぞれの制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
i)目標車高決定プログラム
目標車高決定プログラムでは、目標となる車高を示すフラグである目標車高フラグfHが用いられ、そのフラグfHに基づいて目標設定車高が決定される。本サスペンションシステム10では、基本となる車高として、「標準車高」(以下、「N車高」という場合がある)と、N車高より低い「Low車高」、N車高より高い「Hi車高」との3つの車高が設定されており、目標車高フラグfHのフラグ値[1],[2],[3]は、それぞれ、Low車高,N車高,Hi車高に対応するものとされている。基本的には、車高変更スイッチ166の操作に基づく指令が車高増加指令あるいは車高減少指令であるかに応じて、高車高側あるいは低車高側のいずれかに目標車高フラグfHのフラグ値が変更される。
また、本サスペンションシステム10では、車速感応型の車高変更を実行するものとされており、Hi車高(fH=3)において車速vが閾速度v0(例えば、50km/h)以上となった場合には、車両の走行安定性に鑑み、N車高に戻すようにフラグ値が[2]に変更される。また、N車高(fH=2)において車速vが閾速度v1(例えば、80km/h)以上となった場合には、車両のさらなる走行安定性に鑑み、N車高よりδLだけ低い車高(Low車高より高い車高)である「高速時車高」に対応するフラグ値である[2’]とされるようになっている。なお、一旦車速が閾速度v1以上になった後に、閾速度v1未満となった場合には、N車高に戻るようにされている。
さらに、本サスペンションシステム10では、運転者の乗降や荷物の積み降ろしを容易にするための制御として乗降時の車高変更を実行するようにされている。乗降時の車高として、Low車高よりさらに低い車高である「乗降時車高」が設定されており、乗降時車高変更では、イグニッションスイッチ160がOFFとされた場合に、目標車高フラグfHが乗降時車高に対応するフラグ値である[0]とされ、電子キーを携帯している乗員がセンサで検知できる範囲外に移動した場合に、目標車高フラグfHのフラグ値が[2]とされるようになっている。ちなみに、この場合には、アクチュエータ26の距離変更制御によってフラグ値が[0]とされる前の車高に戻された後、エアスプリング28によってフラグ値[2]に対応する車高に調整されるようになっている。逆に、電子キーを携帯している乗員がセンサで検知できる範囲内に入った場合に、目標車高フラグfHのフラグ値が[0]とされ、イグニッションスイッチ160がONとされた場合に、目標車高フラグfHのフラグ値が[2]とされるようになっている。
本目標車高決定プログラムでは、上述したフラグfHの値である[1],[2],[3]の各々に対応して、ステップ47(以下、「S47」と略す、他のステップも同様である)において、エアスプリング28による車高変更制御の目標となる車体車輪間距離LS *が、L1,L2,L3とされる。また、フラグfHの値が[0],[2’]である場合には、その各々に対応する目標設定車高に応じた目標となる車体車輪間距離はL0,L2'であり、アクチュエータ26による目標位置依拠制御において用いられる距離変更成分δLHが、S49の減少時距離変更成分決定サブルーチン、あるいは、S50の増加時距離変更成分決定サブルーチンが実行されることによって、決定される。ちなみに、フラグfHの値が[1],[2],[3]である場合には、S48において、距離変更成分δLHは0とされる。
減少時距離変更成分決定サブルーチンは、図11にフローチャートを示すルーチンであり、フラグ値[0],[2’]に対応する目標となる車体車輪間距離L0,L2'に近づける場合の距離変更成分δLHを決定するルーチンである。本サブルーチンでは、距離変更成分δLHが、プログラムの実行毎にδLDずつ減少させられる。そして、距離変更成分δLHが、アクチュエータ26がアクチュエータ力を発生させていない状態における車体車輪間距離である基準距離LBと、目標となる車体車輪間距離との差分まで減少させられれば、目標車体車輪間距離を維持するように、その差分が維持される。また、車体車輪間距離を基準距離LBに向かって変更する場合には、図12にフローチャートを増加時距離変更成分決定サブルーチンが実行されて、距離変更成分δLHが決定される。本サブルーチンでは、距離変更成分δLHが、0となるまで、プログラムの実行毎にδLIずつ増加させられる。そして、距離変更成分δLHが0となった時点で、車高変更フラグfHのフラグ値が[2]とされる。
ii)エアスプリング制御プログラム
エアスプリング制御プログラムは、各車輪12に対して個別に実行される。この制御プログラムでは、まず、S1において、前述した車高変更禁止条件を充足しているか否かが判断され、S5において、目標車高フラグfHが[0]あるいは[2’]であるか否かが判定される。車高変更禁止条件を充足していないと判断され、目標車高フラグfHが[0]あるいは[2’]ではないと判定された場合には、S6,7において、各車輪12に対応する現時点での実車体車輪間距離Lrと、目標車高フラグfHのフラグ値に応じた目標車体車輪間距離となる目標距離LS *とがそれぞれ比較判定される。車体車輪間距離を増加させる必要があると判定された場合には、S8において、エアスプリング28の圧力室44にエアを供給し、逆に、車体車輪間距離を減少させる必要があると判定された場合には、S9において、エアスプリング28の圧力室44からエアを排出させる。また、車高変更禁止条件を充足している場合,目標車高フラグfHが[0]あるいは[2’]である場合,車体車輪間距離を変化させる必要がないと判定された場合には、S10において、先に述べたようにエア量が維持される。また、本プログラムにおいては、S2〜4において、先に説明したように、エアスプリング28によって維持される車体車輪間距離LS *が基準距離LBとされ、車高禁止条件により実行が禁止される場合には、その実行が禁止された時点における車体車輪間距離が基準距離LBとされる。以上の一連の処理の後、本プログラムの1回の実行が終了する。
ii)アクチュエータ制御プログラム
アクチュエータ制御プログラムは、4つの車輪12にそれぞれ設けられたスプリング・アブソーバAssy20のアクチュエータ26の各々に対して実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ26に対しての本プログラムによる処理について説明する。この処理では、アクチュエータ力の成分である減衰力成分FV,目標位置依拠成分FTがそれぞれ決定される。
本プログラムにおいては、まず、S11〜13において、先に説明したように、基準距離LBからの調整距離の成分であるロール抑制成分δLR,ピッチ抑制成分δLPがそれぞれ決定され、それらロール抑制成分δLR,ピッチ抑制成分δLPと、目標車高決定プログラムにおいて決定された距離変更成分δLHとに基づいて目標距離L*(=LB+δLR+δLP+δLH)が決定される。次に、その決定された目標距離L*に対する実車体車輪間距離Lrの偏差である車体車輪間距離偏差ΔL(=L*−Lr)が認定され、その車体車輪間距離偏差ΔLが0となるように、アクチュエータ力の目標位置依拠成分FTが決定される。
T=KP・ΔL+KD・ΔL’+KI・int(ΔL)
ただし、S15において、減衰力制御が必要か否かが判定され、必要である場合には、減衰力成分FVが決定されるとともに、前述したように比例ゲインKPおよび微分ゲインKDが0とされる。また、減衰力制御が必要でない場合には減衰力成分FVが0とされるとともに、比例ゲインKPおよび微分ゲインKDが規定値とされる。
次いで、S22,S23において、特定制動力発生制御を実行するか否かが判定される。詳しくは、S22において、車体にロールモーメント,ピッチモーメントが作用しているか否かが判定され、S23において、車体車輪間距離を基準距離LBに向かって変更しているか否かが、目標距離L*が実車体車輪間距離Lrより基準距離LBに近いか否かによって判定される。より具体的には、目標距離L*と基準距離LBとの差分|LB−L*|が、実車体車輪間距離Lrと基準距離LBとの差分|LB−Lr|より小さいか否かによって判定される。車体にロールモーメント,ピッチモーメントが作用しておらず、かつ、車体車輪間距離を基準距離LBに向かって変更している場合に、特定制動力発生制御を実行する。制動制御を実行しない場合には、減衰力成分FVと目標位置依拠成分FTとを足し合わせて目標アクチュエータ力F*が決定され、その目標アクチュエータ力F*に基づいて決定されたデューティ比に応じた制御信号が、インバータ146に送信される。
また、特定制動力発生制御を実行すると判定された場合において、バッテリ150の充電量が多くない場合、起電力に依拠する発電電力をバッテリ150に回生することが望ましい。そのため、S24においてバッテリ150の充電量が多くないと判定された場合には、S25において、特定制動力回生制御が実行される。詳しくは、目標アクチュエータ力F*が、前述した式F*=(1/2)・CS・ωによって決定され、その目標アクチュエータ力F*に基づいて決定されたデューティ比に応じた制御信号が、インバータ146に送信される。また、S24においてバッテリ150の充電量が多いと判定された場合には、S26において、短絡制動制御が実行されるのであり、スイッチング素子のON/OFF状態を前述したように、high側のスイッチング素子HUS,HVS,HWSのすべてをON状態(閉状態),low側のスイッチング素子LUS,LVS,LWSのすべてをOFF状態(開状態)とするように、制御信号がインバータ146に送信される。以上の一連の処理の後、アクチュエータ制御プログラムの1回の実行が終了する。
≪制御装置の機能構成≫
上述したECU140の機能を、模式的に示した機能ブロック図が、図13である。上記機能に基づけば、ECU140のコントローラ142は、目標車高を決定する目標車高決定部200と、エアスプリング28に依存して車高変更を行うエアスプリング依存車高変更制御部202と、アクチュエータ26に依存して車高変更を行うアクチュエータ依存車高変更制御部204と、アクチュエータ26に発生させるアクチュエータ力の減衰力成分FVを決定する減衰力制御部206と、ロールモーメントとピッチモーメントとを抑制するために車体の姿勢制御を行う車体姿勢制御部208とを含んで構成されるものとなっている。アクチュエータ依存車高変更制御部204は、4つのアクチュエータ26の各々に対応する車体車輪間距離を変更する距離変更制御部210を含んで構成され、その距離変更制御部210は、車体車輪間距離の基準距離に対する調整距離の距離変更成分δLHを決定する距離変更成分決定部212と、特定制動力発生制御を実行する特定制動力発生制御部214とを備えている。また、車体姿勢制御部208は、車体車輪間距離の基準距離に対する調整距離のロール抑制成分δLRを決定するロール抑制制御部216と、調整距離のピッチ抑制成分δLPを決定するピッチ抑制制御部218とを備えており、この車体姿勢制御部208と、距離変更制御部210の距離変更成分決定部212とを含んで、アクチュエータ力の目標位置依拠成分FTを決定する目標位置依拠制御部220が構成されている。さらに、特定制動力発生制御部214は、短絡制動制御を実行する短絡制動制御部222と、特定制動力回生制御を実行する特定制動力回生制御部224とを備えている。ちなみに、本サスペンションシステム10のECU140においては、アクチュエータ制御プログラムのS22〜S26の処理を実行する部分を含んで特定制動力発生制御部214が構成されている。
≪変形例≫
本変形例は、アクチュエータ26によって車両の車高を変更する制御が、上記実施例における制御とは相違する。詳しくは、アクチュエータ依存車高変更制御においては、図14(乗降時車高に変更,その車高から復帰させる場合の図である)に示すように、目標となる高速時車高あるいは乗降時車高に変更する場合には、上記実施例と同様に、目標距離L*が急変することのないよう、距離変更成分δLHが時間tに応じて徐々に変更されるようになっているが、本変形例においては、高速時車高あるいは乗降時車高から基準距離LBに向かって変更する場合には、距離変更成分δLHただちに0とされ、目標距離L*が基準距離LBに急変させられるようになっている。なお、そのように目標距離L*を基準距離LBに急変させれば、車体車輪間距離が基準距離LBに復帰するまで、PID制御則に従った位置制御は実行されず、特定制動力発生制御が実行されるのである。なお、その場合には、車体車輪間距離は、特定制動力発生制御によって、図14に一点鎖線で示すように変更させられることになる。
本変形例においては、距離変更成分δLHは、図10の目標車高決定プログラムに代わって実行されるところの図15にフローチャートを示す目標車高決定プログラムにおいて決定される。具体的には、車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する場合には、S81において、実車体車輪間距離Lrが基準距離LBとなったか否かが判定され、実車体車輪間距離Lrが基準距離LBとなるまで、S48において、距離変更成分δLHが0とされるのである。また、実車体車輪間距離Lrが基準距離LBとなった場合には、S82において、車高変更フラグfHのフラグ値が[2]とされる。
本変形例においても、車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際には、4つのアクチュエータ26の各々に対して、上記実施例と同様の特定制動力発生制御が実行される。つまり、充電量センサ186により検出されたバッテリ150の充電量が比較的多い場合には、短絡制動制御が実行され、充電量Eが少ない場合には、特定制動力回生制御が実行されるのである。ただし、4つの車輪12の各々についての車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際に、それら各車輪12についての車体車輪間距離の変動速度が異なると、車体に比較的大きな傾斜が発生してしまうことがある。そこで、アクチュエータ依存車高変更制御は、設定された程度以上の車体の傾斜を発生させない制御とされている。詳しくは、設定された程度以上の車体の傾斜が発生した場合には、4つのアクチュエータ26のうちの一部のものについての特定制動力発生制御を禁止するととともに、その一部のものに対して、アクチュエータ力を車体の傾斜を抑制するための力として発生させる傾斜抑制制御が実行される。その傾斜抑制制御は、4つの車輪12の各々についての車体車輪間距離が、他のものに対して、設定された距離以上は先行することがないようにする制御である。具体的には、車体車輪間距離の変動速度が最も遅いアクチュエータ26の車体車輪間距離と、その他のアクチュエータ26の車体車輪間距離との差が設定値以上となった場合に、その差が設定値以上となったアクチュエータ26に対して、その差をなくすようなアクチュエータ力を発生させる制御である。
上記のような制御は、図9のアクチュエータ制御プログラムに代わって実行されるところの図16にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが実行されることによって行われる。詳しくは、車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際の距離変更制御が、アクチュエータ制御プログラムのS91において、図17にフローチャートを示す特定時距離変更制御サブルーチンが実行されることによって行われる。特定時距離変更制御サブルーチンでは、まず、S101において、4つの車輪12についての実車体車輪間距離Lrのうち、車体車輪間距離の変動速度が最も遅い車体車輪間距離である最遅アクチュエータ距離Lr(late)が認定される。次いで、S102において、その最遅アクチュエータ距離Lr(late)に対する実車体車輪間距離Lrの偏差である対最遅アクチュエータ距離偏差ΔL(late)が求められ、S103において、その対最遅アクチュエータ距離偏差ΔL(late)の絶対値が閾距離Le以上である場合に、S105以下の特定制動力発生制御が禁止され、S104の傾斜抑制制御が実行される。S104においては、対最遅アクチュエータ距離偏差ΔL(late)が0となるように、目標アクチュエータ力F*が、対最遅アクチュエータ距離偏差ΔL(late)に基づきPID制御則に従って決定されるのである。
本変形例におけるECU140の機能を、模式的に示した機能ブロック図が、図18である。本変形例においては、距離変更制御部210が、車体車輪間距離の基準距離に対する調整距離の距離変更成分δLHを決定する距離変更成分決定部212と、特定制動力発生制御を実行する特定制動力発生制御部214とに加えて、傾斜抑制制御を実行する傾斜抑制制御部250を備えている。なお、本実施例のECU140においては、特定時距離変更時制御サブルーチンのS101〜S104の処理を実行する部分を含んで傾斜抑制制御部250が構成されている。
本変形例のサスペンションシステムにおいても、前述した実施例と同様に、特定制動力発生制御が実行されることによって、車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際に、消費電力を0あるいはバッテリ150に電力を回生することが可能であるため、本システムの電力消費を抑制することが可能となるのである。
請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1に示すスプリング・アブソーバAssyを示す正面断面図である。 図1に示すスプリング・アブソーバAssyとエア給排装置とを示す模式図である。 図2のアクチュエータが備える電動モータを駆動するインバータの回路図である。 図2のアクチュエータが備える電動モータの回転速度と回転トルクとの関係を示す図である。 車体に発生する横加速度と車体車輪間距離の変化量との関係、車体に発生する前後加速度と車体車輪間距離の変化量との関係を示す図である。 時間経過に対する目標車体車輪間距離の変化を示す図である。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行されるエアスプリング制御プログラムを表すフローチャートである。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行されるアクチュエータ制御プログラムを表すフローチャートである。 図1に示すサスペンション電子制御ユニットによって実行される目標車高決定プログラムを表すフローチャートである。 目標車高決定プログラムにおいて実行される減少時距離変更成分決定サブルーチンを示すフローチャートである。 目標車高決定プログラムにおいて実行される増加時距離変更成分決定サブルーチンを示すフローチャートである。 図1のサスペンション電子制御ユニットの機能を示すブロック図である。 変形例の車両用サスペンションシステムにおける、時間経過に対する目標車体車輪間距離および実車体車輪間距離の変化を示す図である。 変形例の車両用サスペンションシステムにおいて実行される目標車高決定プログラムを示すフローチャートである。 変形例の車両用サスペンションシステムにおいて実行されるアクチュエータ制御プログラムを示すフローチャートである。 変形例のアクチュエータ制御プログラムにおいて実行される特定時距離変更制御サブルーチンを示すフローチャートである。 変形例のサスペンション電子制御ユニットの機能を示すブロック図である。
符号の説明
10:車両用サスペンションシステム 20:スプリング・アブソーバAssy 22:ロアアーム(ばね下部材) 24:マウント部(ばね上部材) 26:電磁式アクチュエータ 28:エアスプリング(サスペンションスプリング) 50:ねじロッド(雄ねじ部) 52:ナット(雌ねじ部) 54:電動モータ(ブラシレスDCモータ) 80:エア給排装置 140:サスペンション電子制御ユニット(制御装置) 146:インバータ(駆動回路) 150:バッテリ(電源) 186:充電量センサ 200:目標車高決定部 202:エアスプリング依存車高変更制御部 204:アクチュエータ依存車高変更制御部 206:減衰力制御部 208:車体姿勢制御部 210:距離変更制御部 212:特定制動力発生制御部 214:ロール抑制制御部 216:ピッチ抑制制御部 218:目標位置依拠制御部 220:短絡制動制御部 222:特定制動力回生制御部 250:傾斜抑制制御部

Claims (6)

  1. 車体の一部をなすばね上部材と車輪を保持するばね下部材とを相互に弾性的に支持するサスペンションスプリングと、
    そのサスペンションスプリングと並列的に設けられ、動力源としての電動モータを有し上下方向において車体と車輪とを接近・離間させる力であるアクチュエータ力を発生させる電磁式アクチュエータと、
    その電磁式アクチュエータの作動を制御する制御装置であって、(a)アクチュエータ力を制御して、少なくともばね上振動を減衰させる振動減衰制御と、(b)アクチュエータ力を制御して、車両の車高を変更するために、上下方向における車体と車輪との距離である車体車輪間距離を変更する距離変更制御とを実行するように構成された制御装置
    を備えた車両用サスペンションシステムであって、
    前記制御装置が、
    前記振動減衰制御においてアクチュエータ力を制御する必要がない場合における前記距離変更制御において、
    前記電磁式アクチュエータがアクチュエータ力を発生させていない状態における車体車輪間距離である基準距離とは異なる車体車輪間距離を、前記電磁式アクチュエータに電力を供給してアクチュエータ力を発生させることで維持する状態から、前記電磁式アクチュエータへの電力の供給を止めて前記基準距離に向かって車体車輪間距離を変更する際、その際の車体と車輪との相対動作に対して、前記電動モータに生じる起電力に依拠した特定の大きさの制動力となるように、アクチュエータ力を制御する特定制動力発生制御を実行する車両用サスペンションシステム。
  2. 前記特定制動力発生制御が、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、車体車輪間距離の変動速度に応じた特定の大きさの制動力として発生させて実行される制御である請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 前記特定制動力発生制御が、前記電動モータの各相の通電端子間を導通させることによって実行される制御である請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記特定制動力発生制御が、前記電動モータに生じる起電力に依拠する発電電力をその電動モータへ電力を供給する電源に回生しつつ、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、回生される電力量がもっとも大きくなる制動力として発生させて実行される制御である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記特定制動力発生制御が、前記電動モータに生じる起電力に依拠する発電電力をその電動モータへ電力を供給する電源に回生しつつ、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、前記電動モータの各相の通電端子間を短絡させた場合に得られる制動力の1/2の制動力として発生させて実行される制御である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  6. 当該車両用サスペンションシステムが、車両が有する複数の車輪に対応して、それぞれが前記サスペンションスプリングである複数のサスペンションスプリングと、それぞれが前記電磁式アクチュエータである複数の電磁式アクチュエータとを備え、
    前記制御装置が、
    それら複数の電磁式アクチュエータの作動を制御するものとされるとともに、それら複数の電磁式アクチュエータの各々に対して前記距離変更制御を実行することによって、当該車両の車高を変更する車高変更制御を実行可能とされ、
    前記振動減衰制御においてアクチュエータ力を制御する必要がない場合における前記車高変更制御において、
    複数の車輪の各々についての車体車輪間距離を前記基準距離に向かって変更する際に、(a)前記複数の電磁式アクチュエータの各々に対して、それら複数の電磁式アクチュエータの各々のアクチュエータ力を車体車輪間距離の変動速度に応じた特定の大きさの制動力として発生させて実行される制御とされた前記特定制動力発生制御を実行し、かつ、(b)前記特定制動力発生制御の実行により複数の車輪の各々についての車体車輪間距離の変動速度が相違することによって設定された程度以上の車体の傾斜が発生した場合に、複数の電磁式アクチュエータのうちの一部であるいずれか1以上のものについての前記特定制動力発生制御を禁止するとともに、そのいずれか1以上のものの各々に対して、その各々のアクチュエータ力を車体の傾斜を抑制するための力として発生させる傾斜抑制制御を実行する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
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