JP4894501B2 - 車両用サスペンションシステム - Google Patents
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Description
そのサスペンションスプリングと並列的に設けられ、動力源としての電動モータを有し上下方向において車体と車輪とを接近・離間させる力であるアクチュエータ力を発生させる電磁式アクチュエータと、
その電磁式アクチュエータの作動を制御する制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記制御装置が、上下方向における車体と車輪との距離である車体車輪間距離を変更する距離変更制御を実行可能とされ、その距離変更制御において、前記電磁式アクチュエータがアクチュエータ力を発生させていない状態における車体車輪間距離である基準距離に向かって車体車輪間距離を変更する際、車体と車輪との相対動作に対して、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、前記電動モータに生じる起電力に依拠した特定の大きさの制動力として発生させる特定制動力発生制御を実行する車両用サスペンションシステム。
前記電動モータの各相に対応する複数のスイッチング素子を有し、それら複数のスイッチング素子の作動制御によって前記電動モータを制御駆動する駆動回路を備えた(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
前記制御装置が、それら複数の電磁式アクチュエータの作動を制御するものとされるとともに、それら複数の電磁式アクチュエータの各々に対して前記距離変更制御を実行することによって、当該車両の車高を変更する車高変更制御を実行可能とされ、かつ、その車高変更制御において、複数の車輪の各々についての車体車輪間距離を前記基準距離に向かって変更する際に、前記複数の電磁式アクチュエータの各々に対して前記特定制動力発生制御を実行する(1)項ないし(12)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
前記制御装置が、複数の車輪の各々についての車体車輪間距離を前記基準距離に向かって変更する際に、設定された程度以上の車体の傾斜が発生した場合に、複数の電磁式アクチュエータのうちの一部であるいずれか1以上のものについての前記特定制動力発生制御を禁止するとともに、そのいずれか1以上のものの各々に対して、その各々のアクチュエータ力を車体の傾斜を抑制するための力として発生させる傾斜抑制制御を実行する(13)項または(14)項に記載の車両用サスペンションシステム。
第1実施例の車両用サスペンションシステムは、SUV等の比較的車高が高い車両に搭載されるサスペンションシステムであり、図1に、その第1実施例のサスペンションシステム10を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
図4に示すように、各アクチュエータ26のモータ54は、コイルがスター結線(Y結線)された3相ブラシレスモータであり、上述したようにインバータ146によって駆動される。インバータ146は、図4に示すような一般的なものであり、high側(高電位側),low側(低電位側)のそれぞれに対応し、かつ、モータ54の3つの相であるU相,V相,W相のそれぞれに対応する6つのスイッチング素子HUS,HVS,HWS,LUS,LVS,LWSを備えている。ECU140のコントローラ142は、モータに設けられたレゾルバ184によりモータ回転角(電気角)を判断し、そのモータ回転角に基づいてスイッチング素子を開閉作動させる。インバータ146は、いわゆる正弦波駆動によってモータ54を駆動するのであり、モータ54の3つの相の各々に流れる電流量が、それぞれが正弦波状に変化し、その位相差が電気角で120°ずつ異なるように制御される。そして、インバータ146は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってモータ54に通電するようにされており、コントローラ142がパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することで、モータ54への通電電流量を変更して、モータ54が発生させる回転トルクの大きさを変更する。詳しくは、デューティ比が大きくされることで、通電電流量が大きくされて、モータ54の発生する回転トルクは大きくなり、逆に、デューティ比が小さくされることで、通電電流量が小さくされて、モータ54の発生する回転トルクは小さくなる。
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ26のアクチュエータ力が独立して制御されて、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動を減衰するための制御(以下、「減衰力制御」という場合がある)が実行される。また、車体のロールを抑制するための制御(以下、「ロール抑制制御」という場合がある),車体のピッチを抑制するための制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)、つまり、それらを併せた制御として、車体の姿勢制御が実行される。さらに、本システム10では、高速走行時の走行安定性の向上や乗員の車両への乗降の容易性等を目的として車両の車高を変更する制御(以下、「アクチュエータ依存車高変更制御」という場合がある)が実行されるのであり、各アクチュエータに対して、各アクチュエータ26に対応する車体車輪間距離を変更する制御(以下、「距離変更制御」という場合がある)が実行される。なお、上記の車体姿勢制御および距離変更制御は、後に詳しく説明するように、車体車輪間距離を直接の制御対象とする制御であり、いわゆる位置制御の手法に従う制御であるため、それらを併せた制御を、目標位置依拠制御と呼ぶこととする。上記減衰力制御,目標位置依拠制御は、各制御ごとのアクチュエータ力の成分である減衰力成分,目標位置依拠成分を合計して目標アクチュエータ力が決定され、アクチュエータ26がその目標アクチュエータ力を発生させるように制御されることで、一元的に実行される。また、本サスペンションシステム10では、エアスプリング28によって、悪路走行への対処等を目的として運転者の意思に基づいて車両の車高を変更する制御(以下、「エアスプリング依存車高変更制御」という場合がある)が実行される。なお、以下の説明において、アクチュエータ力およびそれの成分は、車体と車輪12とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが正の値,車体と車輪12とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
エアスプリング28によって車両の車高を変更するエアスプリング依存車高変更制御は、運転者の意図に基づく車高変更スイッチ166の操作によって実現すべき設定車高である目標設定車高が変更された場合において、実行される。前記3つの設定車高の各々に応じて、各車輪12についての目標となる車体車輪間距離LS *が設定されており、ストロークセンサ164の検出値に基づいて、それぞれの車輪12についての車体車輪間距離が目標距離LS *になるように、エア給排装置80の作動が制御され、各車輪12の車体車輪間距離が目標設定車高に応じた距離に変更されるのである。また、本サスペンションシステム10においては、Hi車高において車速vが閾速度v0(例えば、50km/h)以上となった場合に、車両の走行安定性に鑑み、N車高に戻されるようにされており、エアスプリング依存車高変更制御は、この場合にも実行される。さらに、このエアスプリング依存車高変更制御では、例えば、乗員数の変化,荷物の積載量の変化等による車高の変動に対処することを目的とした、いわゆるオートレベリングと呼ばれる制御も行われる。
目標位置依拠制御は、車体の姿勢を制御することや車高を変更することを目的として、アクチュエータ力によって各車輪12についての車体車輪間距離を調整するものである。この目標位置依拠制御では、ロール抑制制御,ピッチ抑制制御,距離変更制御の各制御に基づいて、各車輪12についての目標となる車体車輪間距離(以下、単に「目標距離」という場合がある)L*を決定し、車体車輪間距離がその目標距離となるようにアクチュエータ26を制御すべく、アクチュエータ力の目標位置依拠成分FTが決定される。
L*=LB+δLR+δLP+δLH
そして、ストロークセンサ164により検出される実車体車輪間距離Lrの目標距離L*に対する偏差である車体車輪間距離偏差ΔL(=L*−Lr)が認定され、その車体車輪間距離偏差ΔLが0となるように、目標位置依拠成分FTが決定されるのである。その目標位置依拠成分FTは、ECU140において、車体車輪間距離偏差ΔLに基づき、次式のPID制御則に従って決定される。
FT=KP・ΔL+KD・ΔL’+KI・int(ΔL)
ここで、第1項,第2項,第3項は、それぞれ、目標位置依拠成分FAにおける比例項成分(P項成分),微分項成分(D項成分),積分項成分(I項成分)を意味し、KP,KD,KIは、それぞれ、比例ゲイン,微分ゲイン,積分ゲインを意味する。また、Int(ΔL)は、車体車輪間距離偏差ΔLの積分値に相当する。以下に、ロール抑制制御,ピッチ抑制制御,距離変更制御の各々を、ロール抑制成分δLR,ピッチ抑制成分δLP,距離変更成分δLHの決定方法を中心に説明する。
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側の車体と車輪12とが離間させられるとともに、旋回外輪側の車体と車輪12とが接近させられる。図6(a)は、ロールモーメントを指標する横加速度Gyと車体車輪間距離の変化量δLとの関係を示す図であり、この図における破線が、アクチュエータ26を働かせなかった場合のものである。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、ロールモーメントの大きさに応じて、図6(a)の実線に示した車体車輪間距離となるようにアクチュエータ26を制御する。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車速vに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ174によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、調整距離のロール抑制成分δLRが決定される。詳しくは、コントローラ142内には制御横加速度Gy*をパラメータとするロール抑制成分δLRの図6(a)に示すマップデータが格納されており、そのマップデータを参照して、ロール抑制成分δLRが決定される。
車体の制動時等に発生する車体のノーズダイブに対しては、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側の車体と車輪12とが接近させられるとともに、後輪側の車体と車輪12とが離間させられる。また、車体の加速時等に発生する車体のスクワットに対しては、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側の車体と車輪12とが離間させられるとともに、後輪側の車体と車輪12とが接近させられる。図6(b)は、ピッチモーメントを指標する前後加速度Gxと車体車輪間距離の変化量δLとの関係を示す図であり、この図における破線が、アクチュエータ26を働かせなかった場合のものである。ピッチ抑制制御では、それらの場合の接近・離間距離を抑制すべく、ピッチモーメントに応じて、図6(b)の実線に示した車体車輪間距離となるようにアクチュエータ26を制御する。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ172によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、調整距離のピッチ抑制成分δLPが決定される。詳しくは、コントローラ142内には、図6(b)に示すマップデータ、つまり、前後加速度Gxをパラメータとするピッチ抑制成分δLPのマップデータが格納されており、そのマップデータを参照して、ピッチ抑制成分δLPが決定される。なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ180によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ182によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
本サスペンションシステム10においては、N車高において車速vが閾速度v1(例えば、80km/h)以上となった場合には、車両の走行安定性に鑑み、N車高より低い車高(設定低車高より高い車高)である「高速時車高」に車高が変更されるようになっている。また、運転者の乗降や荷物の積み降ろしを容易にするために、乗降時には、Low車高よりさらに低い車高である「乗降時車高」に車高が変更されるようになっている。これらの場合の車高変更制御が、アクチュエータ26によって行われるのであり、そのアクチュエータ26の各々に対して実行される制御が距離変更制御である。具体的には、目標となる高速時車高あるいは乗降時車高に応じて、各車輪12についての調整距離の距離変更成分δLHが決定される。ただし、図7に示すように、目標距離L*が急変することのないように、距離変更成分δLHが時間tに応じて徐々に減少されるようになっている。また、高速時車高あるいは乗降時車高からN車高に戻す場合についても同様に、距離変更成分δLHは徐々に増加されるようになっている。
減衰力制御では、車体および車輪12の振動を減衰するためにその振動の速度に応じた大きさのアクチュエータ力を発生させるべく、アクチュエータ力の減衰力成分FVが決定される。具体的には、車体のマウント部24に設けられた縦加速度センサ176によって検出される縦加速度に基づいて計算される車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上速度VUと、ロアアーム22に設けられた縦加速度センサ178によって検出される縦加速度に基づいて計算される車輪の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下速度VLとに基づいて、次式に従って、減衰力成分FVが演算される。
FV=CU・VU−CL・VL
ここで、CUは、車体のマウント部24の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインであり、CLは、車輪12の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインである。つまり、CU,CLは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。なお、減衰力成分FVは、他の手法で決定することも可能である。例えば、ばね上ばね下相対速度に基づく減衰力を発生させる制御を実行すべく、車体と車輪12との相対速度の指標値として、モータ54に設けられている回転角センサ184の検出値から得られたモータ54の回転速度ωに基づき、次式に従って決定することも可能である。
FV=C・ω(C:減衰係数)
アクチュエータ26の制御は、それが発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力に基づいて行われる。詳しく言えば、上述のようにして、アクチュエータ力の目標位置依拠成分FT,減衰力成分FVが決定されると、それらに基づき、次式に従って目標となるアクチュエータ力F*が決定される。
F*=FT+FV
ただし、減衰力制御が実行される場合には、目標位置依拠成分FTの決定において、比例項成分KP・ΔLおよび微分項成分KD・ΔL’が0とされるようになっている。その場合には、積分項成分KI・int(ΔL)のみが、すなわち、モータ54が現在の回転位置を維持するために必要なアクチュエータ力成分のみが、目標位置依拠成分FTとされ、その目標位置依拠成分FTと減衰力成分FVとが加算されて上記目標アクチュエータ力F*が決定される。このことにより、目標位置依拠制御の減衰力制御への干渉が小さくされることになる。そして、上述のように決定された目標アクチュエータ力F*に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ146に送信される。インバータ146は、その適切なデューティ比の下、目標アクチュエータ力を発生させるようにモータ54を駆動する。
上記距離変更制御においては、アクチュエータ26によって車体車輪間距離を目標となる車体車輪間距離まで変更する際、エアスプリング28の弾性力に抗して目標まで到達させる。そのため、その目標まで到達させた時点におけるエアスプリング28の弾性力と分担荷重とのバランスが崩れた分を、アクチュエータ26がアクチュエータ力を発生させることで、その距離を維持している。そして、車体車輪間距離を基準距離に向かって変更する際には、エアスプリング28の弾性力と分担荷重とのバランスの崩れを利用して、アクチュエータ26を基準距離に向かって車体車輪間距離を変更するように動作させ、モータ54に起電力を生じさせることができる。本サスペンションシステム10においては、車体と車輪12との相対動作に対して、アクチュエータ力を、その起電力に依拠した特定の大きさの制動力として発生させる特定制動力発生制御を実行することが可能とされている。具体的には、特定制動力発生制御として、充電量センサ186により検出されたバッテリ150の充電量(=残量)Eが比較的多い(設定値E0以上)場合には、モータ54の各相の通電端子間を短絡させることによって、アクチュエータ力を制動力として発生させる短絡制動制御が実行される。また、充電量Eが設定値E0より少ない場合には、起電力に依拠する発電電力をバッテリ150に回生しつつ、アクチュエータ力を、回生される電力量が最も大きくなるような大きさの制動力として発生させる特定制動力回生制御が実行される。なお、特定制動力発生制御は、本システム10が減衰力制御,車体姿勢制御を実行せずに距離変更制御のみを実行している場合であって、その距離変更制御において車体車輪間距離を基準距離に復帰させる場合に、実行されるようになっている。以下、それら短絡制動制御および特定制動力回生制御について、詳しく説明する。
短絡制動制御は、モータ54の各相の通電端子間を短絡させることによって、アクチュエータ力を制動力として発生させる制御である。具体的に言えば、インバータ146のhigh側のスイッチング素子HUS,HVS,HWSのすべてをON状態(閉状態),low側のスイッチング素子LUS,LVS,LWSのすべてをOFF状態(開状態)とすることで、スイッチング素子HUS,HVS,HWSと、それらに並設された還流ダイオードとにより、モータ54の各相の通電端子間を、あたかも相互に短絡させられた状態とするのである。そのことにより、距離変更制御において車体車輪間距離を基準距離に復帰させる際には、モータ54には起電力が発生し、その起電力に依拠したアクチュエータ力を発生させることになる。なお、そのアクチュエータ力は、車体車輪間距離の変動速度(モータ54の回転速度ω)に応じて、図5に示した短絡特性線に従った特定の大きさの制動力となる。つまり、本短絡制動制御においては、モータ54に生じた起電力に依拠したアクチュエータ力を発生させることで、本制御におけるバッテリ150の消費電力を0とすることができるため、本サスペンションシステム10の電力消費を抑制することが可能となるのである。
また、特定制動力回生制御は、起電力に依拠する発電電力をバッテリ150に回生しつつ、アクチュエータ力を、回生される電力量が最も大きくなるような大きさの制動力として発生させる制御である。詳しくは、アクチュエータ26の目標アクチュエータ力F*が、モータ54の各相の通電端子間を短絡させた場合に得られる制動力の1/2の制動力となるように、次式に従って決定される。
F*=(1/2)・CS・ω (CS:短絡制動に従う場合の減衰係数)
そして、この決定された目標アクチュエータ力F*に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ146に送信される。インバータ146は、その適切なデューティ比とすることで、発電電力をバッテリ150に回生しつつ、制動力を発生させるようにモータ54を駆動するのである。本特定制動力回生制御においては、アクチュエータ力が、モータ54の各相の通電端子間を短絡させた場合に得られる制動力の1/2の大きさとなる制動力として発生させられ、回生される電力量がもっとも大きくされている。つまり、本サスペンションシステム10は、効率的に電力を回生して、システム10の電力消費を抑制することが可能となるのである。
4つのアクチュエータ26の各々に対して上記の特定制動力発生制御が実行された場合において、例えば、それら4つのアクチュエータ26のうちの一部のアクチュエータ26についての車体車輪間距離の変動速度が他のアクチュエータ26の変動速度と異なれば、車体に傾斜が発生する虞がある。しかし、本サスペンションシステム10では、車体に傾斜を発生させないように制御されることになる。
上述のようなエアスプリング28の制御、および、アクチュエータ26の制御は、それぞれ、図8にフローチャートを示すエアスプリング制御プログラム,図9にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが、短い時間間隔(例えば、数msec〜数十msec)をおいてコントローラ142により繰り返し実行されることによって行われる。本サスペンションシステム10が配備されている車両は、電子キーを採用しており、車両に設けられたセンサ(図示省略)は、その電子キーが車両から所定範囲内に存在する場合にその電子キーを検知可能とされている。上記2つのプログラムは、そのセンサによって電子キーが検知されてから、電子キーが検知されなくなった後に一定時間(例えば、60sec)が経過するまでの間実行される。なお、それら2つの制御プログラムに従う処理のうち車高を変更する処理は、目標車高に基づいて行われるのであり、その目標車高の決定、つまり、目標となる車体車輪間距離の決定および車体車輪間調整距離の距離変更成分の決定は、図10にフローチャートを示す目標車高決定プログラムが実行されることによって行われる。また、その目標車高決定プログラムは、先の2つの制御プログラムと同じ期間、互いに並行して実行される。以下に、それぞれの制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
目標車高決定プログラムでは、目標となる車高を示すフラグである目標車高フラグfHが用いられ、そのフラグfHに基づいて目標設定車高が決定される。本サスペンションシステム10では、基本となる車高として、「標準車高」(以下、「N車高」という場合がある)と、N車高より低い「Low車高」、N車高より高い「Hi車高」との3つの車高が設定されており、目標車高フラグfHのフラグ値[1],[2],[3]は、それぞれ、Low車高,N車高,Hi車高に対応するものとされている。基本的には、車高変更スイッチ166の操作に基づく指令が車高増加指令あるいは車高減少指令であるかに応じて、高車高側あるいは低車高側のいずれかに目標車高フラグfHのフラグ値が変更される。
エアスプリング制御プログラムは、各車輪12に対して個別に実行される。この制御プログラムでは、まず、S1において、前述した車高変更禁止条件を充足しているか否かが判断され、S5において、目標車高フラグfHが[0]あるいは[2’]であるか否かが判定される。車高変更禁止条件を充足していないと判断され、目標車高フラグfHが[0]あるいは[2’]ではないと判定された場合には、S6,7において、各車輪12に対応する現時点での実車体車輪間距離Lrと、目標車高フラグfHのフラグ値に応じた目標車体車輪間距離となる目標距離LS *とがそれぞれ比較判定される。車体車輪間距離を増加させる必要があると判定された場合には、S8において、エアスプリング28の圧力室44にエアを供給し、逆に、車体車輪間距離を減少させる必要があると判定された場合には、S9において、エアスプリング28の圧力室44からエアを排出させる。また、車高変更禁止条件を充足している場合,目標車高フラグfHが[0]あるいは[2’]である場合,車体車輪間距離を変化させる必要がないと判定された場合には、S10において、先に述べたようにエア量が維持される。また、本プログラムにおいては、S2〜4において、先に説明したように、エアスプリング28によって維持される車体車輪間距離LS *が基準距離LBとされ、車高禁止条件により実行が禁止される場合には、その実行が禁止された時点における車体車輪間距離が基準距離LBとされる。以上の一連の処理の後、本プログラムの1回の実行が終了する。
アクチュエータ制御プログラムは、4つの車輪12にそれぞれ設けられたスプリング・アブソーバAssy20のアクチュエータ26の各々に対して実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ26に対しての本プログラムによる処理について説明する。この処理では、アクチュエータ力の成分である減衰力成分FV,目標位置依拠成分FTがそれぞれ決定される。
FT=KP・ΔL+KD・ΔL’+KI・int(ΔL)
ただし、S15において、減衰力制御が必要か否かが判定され、必要である場合には、減衰力成分FVが決定されるとともに、前述したように比例ゲインKPおよび微分ゲインKDが0とされる。また、減衰力制御が必要でない場合には減衰力成分FVが0とされるとともに、比例ゲインKPおよび微分ゲインKDが規定値とされる。
上述したECU140の機能を、模式的に示した機能ブロック図が、図13である。上記機能に基づけば、ECU140のコントローラ142は、目標車高を決定する目標車高決定部200と、エアスプリング28に依存して車高変更を行うエアスプリング依存車高変更制御部202と、アクチュエータ26に依存して車高変更を行うアクチュエータ依存車高変更制御部204と、アクチュエータ26に発生させるアクチュエータ力の減衰力成分FVを決定する減衰力制御部206と、ロールモーメントとピッチモーメントとを抑制するために車体の姿勢制御を行う車体姿勢制御部208とを含んで構成されるものとなっている。アクチュエータ依存車高変更制御部204は、4つのアクチュエータ26の各々に対応する車体車輪間距離を変更する距離変更制御部210を含んで構成され、その距離変更制御部210は、車体車輪間距離の基準距離に対する調整距離の距離変更成分δLHを決定する距離変更成分決定部212と、特定制動力発生制御を実行する特定制動力発生制御部214とを備えている。また、車体姿勢制御部208は、車体車輪間距離の基準距離に対する調整距離のロール抑制成分δLRを決定するロール抑制制御部216と、調整距離のピッチ抑制成分δLPを決定するピッチ抑制制御部218とを備えており、この車体姿勢制御部208と、距離変更制御部210の距離変更成分決定部212とを含んで、アクチュエータ力の目標位置依拠成分FTを決定する目標位置依拠制御部220が構成されている。さらに、特定制動力発生制御部214は、短絡制動制御を実行する短絡制動制御部222と、特定制動力回生制御を実行する特定制動力回生制御部224とを備えている。ちなみに、本サスペンションシステム10のECU140においては、アクチュエータ制御プログラムのS22〜S26の処理を実行する部分を含んで特定制動力発生制御部214が構成されている。
本変形例は、アクチュエータ26によって車両の車高を変更する制御が、上記実施例における制御とは相違する。詳しくは、アクチュエータ依存車高変更制御においては、図14(乗降時車高に変更,その車高から復帰させる場合の図である)に示すように、目標となる高速時車高あるいは乗降時車高に変更する場合には、上記実施例と同様に、目標距離L*が急変することのないよう、距離変更成分δLHが時間tに応じて徐々に変更されるようになっているが、本変形例においては、高速時車高あるいは乗降時車高から基準距離LBに向かって変更する場合には、距離変更成分δLHがただちに0とされ、目標距離L*が基準距離LBに急変させられるようになっている。なお、そのように目標距離L*を基準距離LBに急変させれば、車体車輪間距離が基準距離LBに復帰するまで、PID制御則に従った位置制御は実行されず、特定制動力発生制御が実行されるのである。なお、その場合には、車体車輪間距離は、特定制動力発生制御によって、図14に一点鎖線で示すように変更させられることになる。
Claims (6)
- 車体の一部をなすばね上部材と車輪を保持するばね下部材とを相互に弾性的に支持するサスペンションスプリングと、
そのサスペンションスプリングと並列的に設けられ、動力源としての電動モータを有し上下方向において車体と車輪とを接近・離間させる力であるアクチュエータ力を発生させる電磁式アクチュエータと、
その電磁式アクチュエータの作動を制御する制御装置であって、(a)アクチュエータ力を制御して、少なくともばね上振動を減衰させる振動減衰制御と、(b)アクチュエータ力を制御して、車両の車高を変更するために、上下方向における車体と車輪との距離である車体車輪間距離を変更する距離変更制御とを実行するように構成された制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記制御装置が、
前記振動減衰制御においてアクチュエータ力を制御する必要がない場合における前記距離変更制御において、
前記電磁式アクチュエータがアクチュエータ力を発生させていない状態における車体車輪間距離である基準距離とは異なる車体車輪間距離を、前記電磁式アクチュエータに電力を供給してアクチュエータ力を発生させることで維持する状態から、前記電磁式アクチュエータへの電力の供給を止めて前記基準距離に向かって車体車輪間距離を変更する際、その際の車体と車輪との相対動作に対して、前記電動モータに生じる起電力に依拠した特定の大きさの制動力となるように、アクチュエータ力を制御する特定制動力発生制御を実行する車両用サスペンションシステム。 - 前記特定制動力発生制御が、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、車体車輪間距離の変動速度に応じた特定の大きさの制動力として発生させて実行される制御である請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記特定制動力発生制御が、前記電動モータの各相の通電端子間を導通させることによって実行される制御である請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記特定制動力発生制御が、前記電動モータに生じる起電力に依拠する発電電力をその電動モータへ電力を供給する電源に回生しつつ、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、回生される電力量がもっとも大きくなる制動力として発生させて実行される制御である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記特定制動力発生制御が、前記電動モータに生じる起電力に依拠する発電電力をその電動モータへ電力を供給する電源に回生しつつ、前記電磁式アクチュエータのアクチュエータ力を、前記電動モータの各相の通電端子間を短絡させた場合に得られる制動力の1/2の制動力として発生させて実行される制御である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
- 当該車両用サスペンションシステムが、車両が有する複数の車輪に対応して、それぞれが前記サスペンションスプリングである複数のサスペンションスプリングと、それぞれが前記電磁式アクチュエータである複数の電磁式アクチュエータとを備え、
前記制御装置が、
それら複数の電磁式アクチュエータの作動を制御するものとされるとともに、それら複数の電磁式アクチュエータの各々に対して前記距離変更制御を実行することによって、当該車両の車高を変更する車高変更制御を実行可能とされ、
前記振動減衰制御においてアクチュエータ力を制御する必要がない場合における前記車高変更制御において、
複数の車輪の各々についての車体車輪間距離を前記基準距離に向かって変更する際に、(a)前記複数の電磁式アクチュエータの各々に対して、それら複数の電磁式アクチュエータの各々のアクチュエータ力を車体車輪間距離の変動速度に応じた特定の大きさの制動力として発生させて実行される制御とされた前記特定制動力発生制御を実行し、かつ、(b)前記特定制動力発生制御の実行により複数の車輪の各々についての車体車輪間距離の変動速度が相違することによって設定された程度以上の車体の傾斜が発生した場合に、複数の電磁式アクチュエータのうちの一部であるいずれか1以上のものについての前記特定制動力発生制御を禁止するとともに、そのいずれか1以上のものの各々に対して、その各々のアクチュエータ力を車体の傾斜を抑制するための力として発生させる傾斜抑制制御を実行する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
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