JP4891104B2 - 工作機械の熱変位推定方法 - Google Patents
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Description
後者の熱変位推定方法として、従来、本出願人は、特許文献1において、回転速度変化後の過渡状態から定常状態に至るまで、測定された温度変化を基に、回転時の相当発熱量を算出し、該算出値から熱変位を算出することで、あらゆる運転状況において熱変位を正確に推定する技術を提案している。
また、特許文献2では、過渡状態における温度と熱変位の時間応答が同様となるように時間或いは補正回数に応じて熱変位推定演算式の係数を変化させながら主軸の熱変位を求める熱変位推定演算を提案し、あらゆる運転状況において正確に補正することを提案している。これについては、特許文献3において、温度センサの時定数や取付位置(熱源からの距離)によって生じる測定温度のムダ時間(追従遅れ)をキャンセルするため、温度及び熱変位の時間応答を等しくする関数で対応することを提案している。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、工作機械の温度上昇をセンサで測定して数値化し、得られた温度データに基づいて熱変位を推定する工作機械の熱変位推定方法であって、主軸回転速度が変化した際には、予め設定した主軸回転速度と第2相当発熱量との関係から主軸回転速度変化前後での第2相当発熱量の差を求め、その差と主軸回転速度変化後の経過時間とから、温度データに基づいて演算可能な第1相当発熱量へ加えることによって第1相当発熱量の変化が矩形波となるような補償量を求めて、その補償量に一次遅れ系の応答処理を行って補償温度を演算し、得られた補償温度を測定した温度に加えることを特徴とするものである。
図1は、マシニングセンタにおける主軸回転速度の経時変化を示す。ここでは本発明の特徴を明らかにするために、主軸回転数として、定常状態を作る13,000min−1と、過渡状態を作る25,000min−1とを例示する。図2は、図1の運転条件下における主軸の実際の熱変位及び温度上昇値(機体温度からの相対値)の経時変化を示す。熱変位は、非接触式変位センサを用いて10秒間隔で測定し、温度上昇値は主軸軸受の近傍に設置した温度センサで測定したものである。そして、図3は、本出願人による従来方法で推定した熱変位と図2に示した実際の熱変位との誤差を示すものである。
具体的には、図3に示す熱変位推定誤差量は下記の式1〜3に夫々具体的な係数を用いた式1’〜式3’により求められている。
TXn:n回目の温度−相当発熱量 TYn:n回目の温度変化
αT :応答特性係数
Yn = Yn−1 + (Xn −Yn−1)・α 式2
Xn :n回目の温度−推定発熱量 Yn:n回目の一次遅れ応答処理演算値
α :応答特性係数
推定熱変位 = K・Yn 式3
K : 熱変位変換係数 (μm/℃)
Yn = Yn−1 + (Xn −Yn−1 )・0.038 式2’
推定熱変位 = 5・Yn 式3’
そこで、この原因を発熱位置と温度測定位置の温度センサとの距離と構造で決まる一次遅れ系であるとおき、本発明では、図7の温度−相当発熱量の変化が矩形波となるように回転速度変化後に補償量を加えるものである。この補償量を式4に示す。
LTn : 回転速度変化後n回目の補償量 As : 補正係数
t : 回転速度変化後の経過時間 β : 応答時定数
なお、LTnが小さくなった場合には補償量の計算を終了することができる。具体的には、LTnの値に式3に示すK(熱変位変換係数)を乗じて得られた結果が、求められる加工表面粗さに対して十分に小さいと判断された場合には終了する。
As : 回転速度変化後の補正係数 C,γ : 近似係数
Ns : 主軸指令回転速度 N0s : 変更前の回転速度
又は、主軸回転速度と設定−相当発熱量との関係を対比表で表し、該当する回転速度が指令された場合には、近い回転速度から内挿して求めることもできる。
LTn = 5・exp(−t/0.6) 式4’
まずここでは、過渡状態における温度と熱変位の時間応答とが同様となるように、回転速度変化後の過渡状態から定常状態に戻るまで回転速度と時間或いは補正回数とに応じて、熱変位推定演算式の係数を変化させながら主軸の熱変位を求める方法となっている。
Xtn :n回目の入力計算用温度
Ytn :n回目の熱変位推定用中間値
f(n,T(n)):関数
入力計算用温度=測定温度−段差分・exp(−t/Ttmp) 式7
段差分=回転速度変化直前の温度−回転速度変化直前の熱変位推定用中間値 式8
t:回転速度が変化してからの時間
Ttmp:温度時定数
入力計算用温度=測定温度−段差分・exp(−t/240) 式7’
B点における段差分=1.5 式8’
図12は、立形マシニングセンタにおける熱変位補正システムを示すものであるが、これと同様のシステムを横形マシニングセンタに適用してもよい。マシニングセンタは、周知のように、主軸ヘッド1、コラム2、主軸3、ベッド4、移動テーブル5等から構成されている。主軸3の近傍には、その発熱温度を測定するための第1温度センサ6が取り付けられている(図6参照)。また、ベッド4には基準温度を測定する第2温度センサ7が取り付けられている。
まず、熱変位補正プログラムが開始されると、温度センサ6,7による温度測定が実行される(Step1、以下単に「S1」のように略記する)。この間に主軸3の回転速度が変化する(S2)と、カウンタがスタート(S3)して、S4で回転速度に応じた回転速度変化後の補正係数を式5から算出する。
次に、S5では、式1による温度−相当発熱量が演算され、S6で式4による補償量が演算されて、S7では、それらの和でムダ時間補償の相当発熱量を求める。なお、補償量が小さくなった場合には補償量の算出は行わなくても良い。
そして、S8では、式2と式3にて熱変位換算の推定演算をして、S9でNC装置11により補正処理を行わせる。続けて補正を行う場合はS1へ戻る(S10)。
まず、熱変位補正プログラムが開始されると、温度センサ6,7による温度測定が実行される(S11)。この間に主軸3の回転速度が変化する(S12)と、S13でカウンタがスタートし、S14で式8により段差分の算出を行うと共に、S15で回転速度に応じた回転速度変化後の補正係数を式5から算出する。
次に、S16では、式7により段差分の時間経過を考慮した段差吸収量と測定温度とを合算して入力計算用温度を算出する。なお、段差吸収量の算出は、推定用中間値Ynの算出に影響が出ないほど小さくなったときには実施しないものとする。
そして、S17では、式4により発熱量の補償量を算出して、続くS18で、取付位置に起因する一次遅れ系の応答処理をして補償温度を求め、補償温度を入力計算用温度に加えてムダ時間補償温度を求める。次に、S19で、得られたムダ時間補償温度を入力計算用温度として式6に代入して熱変位推定用中間値を算出した後、式3を用いて熱変位換算の推定演算を行い、S20でNC装置11に補正処理を行わせる。続けて補正を行う場合はS11へ戻る(S21)。
なお、補償量が小さくなった場合には、S17,S18は行わなくてもよい。
Claims (2)
- 工作機械の温度上昇をセンサで測定して数値化し、得られた温度データに基づいて第1相当発熱量を推定演算し、該第1相当発熱量から熱変位を推定する工作機械の熱変位推定方法であって、
第1相当発熱量の演算を離散値を用いて行うと共に、主軸回転速度が変化した際には、予め設定した主軸回転速度と第2相当発熱量との関係から主軸回転速度変化前後での第2相当発熱量の差を求め、その差と主軸回転速度変化後の経過時間とから補償量を求めて、得られた補償量を第1相当発熱量に加え、第1相当発熱量の変化を矩形波とすることを特徴とする工作機械の熱変位推定方法。 - 工作機械の温度上昇をセンサで測定して数値化し、得られた温度データに基づいて熱変位を推定する工作機械の熱変位推定方法であって、
主軸回転速度が変化した際には、予め設定した主軸回転速度と第2相当発熱量との関係から主軸回転速度変化前後での第2相当発熱量の差を求め、その差と主軸回転速度変化後の経過時間とから、温度データに基づいて演算可能な第1相当発熱量へ加えることによって第1相当発熱量の変化が矩形波となるような補償量を求めて、その補償量に一次遅れ系の応答処理を行って補償温度を演算し、得られた補償温度を測定した温度に加えることを特徴とする工作機械の熱変位推定方法。
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