JP6561003B2 - 工作機械の熱変位補正方法、工作機械 - Google Patents
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Description
加工精度を確保する方法として、特に同一ワークを繰り返し加工する量産加工においては、ワーク寸法を計測し、それを機械の補正量にフィードバックする方法が一般に用いられている。しかしながら、フィードバックの頻度を増やすと生産性が低下する場合がある。特に、加工精度の必要な箇所が複数ある場合にはそれらを全て測定し、それぞれの部位について補正をかける必要がある。そのため計測に要する時間が長くなり、処理も複雑になるという問題もある。また、量産加工でない場合には、計測フィードバックを行うことが困難な場合が多い。
しかし、実際の加工においては、機台差による機械発熱のばらつきや、加工するワークの材質や大きさの違いなど様々な要因により、予めプログラムされた熱変位推定式では熱変位量がうまく推定できず、補正誤差が大きくなってしまうことがある。この問題に対処するため、特許文献2では、実測結果に基づいて、熱変位推定式における係数を修正し、それによって主軸および送り軸の発熱による熱変位の推定精度を向上させる方法を開示している。
所定の座標位置で前記熱変位推定量を切り替える際、当該切替時点における前記第1の熱変位推定量と前記第2の熱変位推定量との差分を求め、前記差分と前記第2の熱変位推定量とに基づいて前記軸指令値の補正量を決定することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、前記熱変位推定量の差分は、ワーク原点の座標位置で求めることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、前記熱変位推定量の切替時点は、前記所定の座標位置での加工開始時点であり、前記第1の熱変位推定量は、当該加工開始時点以前に取得した前記温度情報に基づいて求めることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、所定位置に設置した温度センサから得られる温度情報に基づいて所定の熱変位推定式を用いて熱変位推定量を求め、前記熱変位推定量に基づいて軸指令値を補正する熱変位補正手段を有し、前記熱変位補正手段が、前記熱変位推定量を、第1の熱変位推定式に基づいて推定した第1の熱変位推定量から、第2の熱変位推定式に基づいて推定した第2の熱変位推定量に切替可能な切替機能を有する工作機械であって、
前記熱変位補正手段は、所定の座標位置で前記熱変位推定量を切り替える際、当該切替時点における前記第1の熱変位推定量と前記第2の熱変位推定量との差分を求め、前記差分と前記第2の熱変位推定量とに基づいて前記軸指令値の補正量を決定することを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、熱変位推定量の差分をワーク原点の座標位置で求めることで、ワーク全体の加工精度を向上させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、上記効果に加えて、熱変位推定量の切替時点を所定の座標位置での加工開始時点として、第1の熱変位推定量を当該加工開始時点以前に取得した温度情報に基づいて求めることで、熱変位補正量の変更と同時にそれまでの基準寸法からのズレも修正されて加工精度を維持することができる。
図1は、工作機械の一例であるNC旋盤の説明図であるが、本発明はこれに限らず、マシニングセンタ、複合加工機のような他の形態の工作機械にも適用可能である。
NC旋盤1は、刃物台2、土台となるベッド3、主軸台4を構造体として備えた周知の構造で、これらの構造体には、温度センサ5〜7がそれぞれ取り付けられている。
一般に機械が冷えた状態から加工を開始すると、主軸発熱や切削液の温度変化により、熱変位が生じる。そこで、NC旋盤1では、熱変位補正部10を設けて、各温度センサ5〜7による検出信号を、温度測定部11によって温度数値として取得し、補正量演算部12によって熱変位補正量を演算し、演算された熱変位補正量に基づいてNC装置13が軸指令値の補正を行って図示しない送り軸モータ等を制御するようになっている。14は、補正量演算部12において熱変位補正量の演算に用いる熱変位推定式や演算された熱変位補正量、温度情報等を記憶するための記憶部である。
図2の例では、加工時間が15分のワークを4時間稼動、1時間停止、4時間稼動のサイクルで繰り返し加工している。熱変位補正なしの場合では、主軸や切削液の温度上昇による熱変位の影響により時間の経過とともにワークの加工寸法が三角点線1のように大きく変化していく。熱変位補正を適用した場合、熱変位推定式が適切であれば、図3の太実線3のように図2の三角点線1の変化と一致するように熱変位が推定でき、これに基づいて補正を行うことで、図2の丸点線3のように寸法変化を抑制することができる。
熱変位推定式は、例えば以下のような式(1)で表される。
式(1)の熱変位推定式は温度の一次式となっており、各部の温度および機械の座標によって熱変位推定量が求められ、これが補正量となって熱変位補正が実施される。ただし、式(1)は熱変位推定式の一例であり、座標によらず温度のみに依存する式としても良い。また二次式や微分要素や積分要素を含んだ式など、さらに複雑な式を設定したとしても、本発明の手法は適用可能である。
しかし、加工結果の寸法変化と温度変化のデータから、重回帰分析のような公知の多変量解析手法を用いて、式(1)の係数k1〜k3とl1〜l3を決定することにより、実際の加工結果に基づいた最適な熱変位推定式を構築できる。
例えば加工開始2時間後において、最初に設定されていた熱変位推定式A(第1の熱変位推定式)から最適化された熱変位推定式B(第2の熱変位推定式)に切り替えたとする。この場合、図4の丸点線3のように、切替時点(2時間経過時点)での熱変位推定式Aの補正量と熱変位推定式Bの補正量との差分だけ補正量が変化することになる。このとき、切り替えた後は変化が小さくなるが、切替時点では寸法が大きく変化してしまうため、変更してすぐのワークは精度不良になってしまうと考えられる。
そこで、このような急激な補正量変化を防ぐためには、切替時点での熱変位推定式Aによる熱変位推定量(第1の熱変位推定量)と熱変位推定式Bによる熱変位推定量(第2の熱変位推定量)との差分を求め、その分をシフトさせた量を切替後の熱変位推定量(第2の熱変位推定量)に加算して補正量とすればよい。このときある時点tとある座標xでの補正量は以下の式(2)で表される。
ここで、以上の補正量の変更に加えて、熱変位推定式の切替時点での基準寸法からのズレ分をワーク原点オフセットの再設定あるいは工具補正量の変更により修正すれば、以降の加工は計測によるフィードバックを行わなくても熱変位補正を有効にしておくだけで基準寸法に近い値で加工することができる。
Claims (4)
- 所定位置に設置した温度センサから得られる温度情報に基づいて所定の熱変位推定式を用いて熱変位推定量を求め、前記熱変位推定量に基づいて軸指令値を補正する熱変位補正手段を有し、前記熱変位補正手段が、前記熱変位推定量を、第1の熱変位推定式に基づいて推定した第1の熱変位推定量から、第2の熱変位推定式に基づいて推定した第2の熱変位推定量に切替可能な切替機能を備える工作機械において、前記軸指令値を補正する方法であって、
所定の座標位置で前記熱変位推定量を切り替える際、当該切替時点における前記第1の熱変位推定量と前記第2の熱変位推定量との差分を求め、前記差分と前記第2の熱変位推定量とに基づいて前記軸指令値の補正量を決定することを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。 - 前記熱変位推定量の差分は、ワーク原点の座標位置で求めることを特徴とする請求項1に記載の工作機械の熱変位補正方法。
- 前記熱変位推定量の切替時点は、前記所定の座標位置での加工開始時点であり、前記第1の熱変位推定量は、当該加工開始時点以前に取得した前記温度情報に基づいて求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械の熱変位補正方法。
- 所定位置に設置した温度センサから得られる温度情報に基づいて所定の熱変位推定式を用いて熱変位推定量を求め、前記熱変位推定量に基づいて軸指令値を補正する熱変位補正手段を有し、前記熱変位補正手段が、前記熱変位推定量を、第1の熱変位推定式に基づいて推定した第1の熱変位推定量から、第2の熱変位推定式に基づいて推定した第2の熱変位推定量に切替可能な切替機能を有する工作機械であって、
前記熱変位補正手段は、所定の座標位置で前記熱変位推定量を切り替える際、当該切替時点における前記第1の熱変位推定量と前記第2の熱変位推定量との差分を求め、前記差分と前記第2の熱変位推定量とに基づいて前記軸指令値の補正量を決定することを特徴とする工作機械。
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