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JP4885530B2 - 高強度高延性Ni基超合金と、それを用いた部材及び製造方法 - Google Patents

高強度高延性Ni基超合金と、それを用いた部材及び製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高温強度及び延性の優れたNi基超合金に係り、特に普通鋳造材あるいは一方向凝固材のいずれであっても高い強度と優れた延性を有するNi基超合金に関する。また、本発明はNi基超合金の鋳造物によって製造されたターボチャージャー又はマイクロタービン用の遠心式ホイール、或いは軸流式ガスタービンの動翼又は静翼に関する。
航空機エンジン用ガスタービン或いは産業用ガスタービンにおいて、高温に加熱される部品、例えば動翼や静翼には、Ni基超合金が用いられている。また、ターボチャージャー又はマイクロタービン用の遠心式ホイールにも、Ni基超合金が用いられている。
ガスタービンの燃焼ガス温度は、熱効率向上の観点から年々上昇する傾向にあり、これに合わせて、動翼或いは静翼には、従来使用されてきた普通鋳造材に代わって、一方向凝固材が使用されるようになった。また、ガスタービンのなかでも、比較的小型の航空機エンジン用ガスタービンでは、より高温強度の優れた単結晶翼が実用化されている。
一方向凝固材用に開発されたNi基超合金には、Tiを強化元素として含む合金が多く見られる(例えば特許文献1参照)。
単結晶材用に開発された合金の多くは結晶粒界強化元素を含んでいないので、鋳造中に結晶粒界が発生しやすい大型品、例えば産業用ガスタービンへの適用は困難である。単結晶材を大型品に適用できるようにするために、単結晶材にC,B,Hf,Zrなどの結晶粒界強化元素を添加した合金が開発されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、産業用ガスタービンの翼は大型で、さらに内部の冷却構造も複雑であるため、鋳造中に結晶粒界が発生しやすく、単結晶翼の歩留まりは航空機エンジン用ガスタービン翼に比べると著しく低い。従って、高強度を有する一方向凝固材用Ni基超合金が開発されることが望まれる。
一方、遠心応力方向と平行方向の一方向凝固が難しいターボチャージャー又はマイクロタービンの遠心式ホイールには、普通鋳造材が用いられている(例えば、特許文献3参照)。これは、方向性凝固を前提に開発された高強度Ni基超合金で鋳造した普通鋳造品は、結晶粒界強度が低いため延性が極端に低く、遠心式ホイールに適用することができないためである。
USP5069873号明細書 USP6051083号明細書 USP3720509号明細書
単結晶材用に開発された合金は、結晶粒界強化元素を含んでいる合金であっても、非常に高い結晶粒内強度に比べて結晶粒界発生時の強度が低く、鋳造中に結晶粒界が発生しやすい大型の複雑形状翼には適用しにくい。
一方向凝固材用に開発された合金は、析出強化相であるγ’相の体積率及びW,Re,Ta等の耐火金属元素の添加量を増やすことで、凝固方向の強度を向上させることができるが、一方で結晶粒界の強度が相対的に低下してしまう。凝固方向の強度を高めた合金は、凝固方向に直角方向の強度、つまり結晶粒界の強度が著しく低くなってしまうという問題がある。
特許文献2に示される合金は、単結晶翼の鋳造歩留まりを向上させるために十分な結晶粒界強度を有しているが、大型複雑形状の産業用ガスタービン用の一方向凝固翼に適用するためには、結晶粒界強度がやや不足している。特許文献1に示される一方向凝固材用合金は、結晶粒界強度はほぼ十分であるが、凝固方向の強度が低い。
特許文献3に示される普通鋳造材用合金は、適度な延性を有しているが高温強度が低く、ターボチャージャー又はマイクロタービンの遠心式ホイールに適用するには、高温化に対応した強度向上が要求される。
本発明の目的は、一方向凝固材及び普通鋳造材のいずれにおいても、高い高温強度と優れた延性が得られ、産業用ガスタービンや、ターボチャージャー又はマイクロタービンの遠心式ホイールに適用するのに適したNi基超合金を提供することにある。
本発明の第一は、重量%で、C:0.06〜0.3%、B:0.01〜0.05%、Hf:0.2〜3.0%、Co:10.2〜25%、Ta:1〜12%、Cr:1.5〜16%、Mo:0〜0.95%、W:2〜15%、Al:3.5〜6.5%、Re:0.5〜9%、Nb:0.2〜2%、V:0〜1%、Zr:0〜0.02%、白金族元素から選ばれた少なくとも1種:0〜2%、希土類元素から選ばれた少なくとも1種:0〜2%、アルカリ土類金属及びSiから選ばれた少なくとも1種:0〜0.1%、FeとGa及びGeから選ばれた少なくとも1種:0〜5%、残部がNiと不可避不純物よりなるNi基超合金にある。この合金は、一方向凝固材および普通鋳造材のいずれであっても、高い高温強度と優れた延性を有する。なお、不可避不純物とは、例えばCrを添加するときに、Cr原料に含まれている不純物のように、原料に同伴して混入する不純物を云う。このような不純物としては、Si,S,O,N,P,Mn,Cuなどがある。
前述の成分組成を有するNi基超合金は、単結晶材にしても高い高温強度を有する。また、Hfを重量%で1.1〜3.0%含むようにしたものは、極めて優れた延性を有する。
本発明の第二は、重量%で、C:0.16〜0.3%、B:0.016〜0.05%、Hf:1.4〜3.0%、Co:10.2〜25%、Ta:1〜4.9%、Cr:1.5〜8%、Mo:0〜0.95%、W:7.2〜15%、Al:3.5〜6.5%、Re:1.1〜9%、Nb:0.2〜2%、V:0〜1%、Zr:0〜0.02%、白金族元素の少なくとも1種:0〜2%、希土類元素の少なくとも1種:0〜2%、アルカリ土類金属及びSiの少なくとも1種:0〜0.1%、FeとGa及びGeから選ばれた少なくとも1種:0〜5%、残部がNiと不可避不純物からなるNi基超合金にある。この合金は、特に普通鋳造材で使用するのに適する。
第二の発明に係るNi基超合金において、重量%でCrを1.5〜7%、Wを9〜15%としたときには、優れた延性を維持しつつ、高温強度の向上を図ることができる。高温強度の更なる向上を図りたい場合には、重量%でCrを1.5〜7%、Wを11.2〜15%含むようにすることが望ましい。第二の発明に係る普通鋳造材用Ni基超合金において、重量%で、Cを0.18〜0.3%、Hfを1.8〜3.0%、Crを1.5〜7%、Wを11.2〜15%としたものは、強度及び延性がいずれも極めて優れている。
本発明の第三は、重量%で、C:0.06〜0.3%、B:0.01〜0.05%、Hf:1.4〜3.0%、Co:10.2〜25%、Ta:1〜12%、Cr:1.5〜16%、Mo:0〜0.95%、W:7.2〜15%、Al:3.5〜6.5%、Re:1.1〜9%、Nb:0.2〜2%、V:0〜1%、Zr:0〜0.02%、白金族元素の少なくとも1種:0〜2%、希土類元素の少なくとも1種:0〜2%、アルカリ土類金属及びSiの少なくとも1種:0〜0.1%、FeとGa及びGeから選ばれた少なくとも1種:0〜5%、残部がNiと不可避不純物からなるNi基超合金にある。この合金は特に一方向凝固材で使用するのに適する。
第三の発明に係るNi基超合金において、重量%で、Taを1〜6.5%、Wを9〜15%としたものは、高温強度と共に耐酸化性も優れる。Taを1〜6.5%、Wを10.5〜5%にしたものは、特に高温強度が優れる。一方向凝固材において、耐酸化性を維持しつつ、更なる高温強度向上を図る場合には、重量%で、Taを1〜4.9%、Wを11.2〜15%含むようにすることが望ましい。また、TaとWの合計量を15〜17%にし、W/W+Taの比率を0.6〜0.8にすることが極めて望ましい。
本発明のNi基超合金は、溶体化熱処理と時効熱処理を施すことによって、高い高温強度と延性が得られる。本発明のNi基超合金のソルバス(solvus)温度は1240℃以下であり、部分溶融温度は1260℃以上である。ここで、ソルバス温度は、デンドライトコア部で、析出強化相であるγ’相がγ相中に固溶する温度と定義する。部分溶融温度とは、鋳造中に融点の低い元素が偏析した共晶部の溶融が始まる温度のことであり、合金の強度を最大にする溶体化熱処理はソルバス温度以上、部分溶融温度以下で行われる。ソルバス温度と部分溶融温度の間隔は20℃以上であることが好ましく、本発明の合金はこの点からも好ましい。
本発明のNi基超合金による鋳造物は、軸流式産業用ガスタービンの翼、或いは、ターボチャージャー又はマイクロタービンの遠心式ホイールに用いるのに適する。一方向凝固法で鋳造された一方向凝固鋳造物あるいは一方向凝固法で鋳造された単結晶鋳造物は、特に軸流式ガスタービンの翼の中でも大型で形状が複雑な翼用として好適である。翼とは、動翼又は静翼を指す。本発明のNi基超合金を用いて、セレクタ法又は種結晶法で鋳造を行い、鋳造物の重要部のみを単結晶とし、その他の比較的重要度が低い部位には結晶粒界が存在するようにすることもできる。本発明の合金は、優れた凝固方向強度(結晶粒内の強度)と結晶粒界強度を併せ持っているため、重要部は単結晶にし、その他の部位には結晶粒界を存在させても良いという用途には好適である。
本発明の合金は、マスターインゴットとして成分調整され、その後、適当なサイズに分割され、鋳造に供される。
本発明のNi基超合金によりターボチャージャー又はマイクロタービン用の遠心式ホイールを製造する場合には、翼部表面が微細結晶、翼部からハブ部へ向けた部分が翼部からハブ部へ向けた凝固方向の柱状晶、ハブ部が結晶粒径5mm以上の粗大結晶となるように、鋳造することが望ましい。これにより、低コストで、欠陥の少ない鋳物が製造可能である。なお、鋳造に際しては、製品部の全ての部位で、凝固前面と接する溶湯が必ず湯口まで連続している凝固形態にすることが好ましい。また、鋳造後、溶体化熱処理の前に、温度1185〜1285℃以上、圧力120〜185MPaの条件で、2時間以上のHIP処理を施すことが望ましく、これにより、欠陥を減らすことが可能である。微細結晶とは、結晶粒径が1mm以下のものを云い、チル晶も含む。
本発明により、一方向凝固材及び普通鋳造材のいずれであっても、高い高温強度と延性を有するNi基超合金を得ることができた。本発明のNi基超合金よりなり、一方向凝固法で鋳造されたガスタービンは、低コストで大幅な熱効率向上が期待される。また、形状上の理由から、一方向凝固材が適用できず、普通鋳造材で製造されたターボチャージャー又はマイクロタービン用の遠心式ホイールでは、高強度化、高温化が図れる。
本発明のNi基超合金における個々の元素の効果及び適正含有量について述べる。
Cは、Hf,Ta,Nb等とMC型炭化物、Cr,W,Mo等とM23及びMC型炭化物を形成し、高温で結晶粒界が移動するのを阻止することで結晶粒界を強化する効果があり、本発明において特に重要な役割を果たす元素である。この効果を発揮させるためには最低でも0.06%以上添加する必要がある。普通鋳造材で、より高い粒界強度が要求される場合には0.09%以上、より好ましくは0.16%以上添加するのがよい。普通鋳造材において、強度と延性をいずれも増大させたい場合には、0.18%以上添加することが好ましい。炭素が0.18%以上添加されると、全ての結晶粒界に炭化物が晶出又は析出し、HIP処理あるいは溶体化熱処理中及び変形中に結晶粒界が移動するのを防止し、高温強度及び延性向上に著しい効果がある。しかし、C量を多くしすぎると、γ相及びγ’相の固溶強化に有効な元素が炭化物にとられることで、かえって高温強度が低下するようになる。また、過剰の炭化物は疲労強度を低下させる。従って、Cの上限は0.3%に規制する必要がある。
Bは結晶粒界の非整合部を埋め、結晶粒界の結合力を増加させる効果がある。本発明の合金においては、最低でも0.01%のBの添加が必要である。普通鋳造材として、より高い粒界強度が要求される場合には0.016%以上添加することが望ましい。しかし、BはNi基超合金の融点を著しく低下させるため、最大でも0.05%とする必要がある。
Hfは結晶粒界に偏析して結晶粒界の延性を向上させる。合金の凝固方向強度の向上は、合金の結晶粒内の強度が向上することにより達成される。しかし、合金の結晶粒内の強度が向上し、結晶粒界の強度を大幅に上回ると、相対的に結晶粒界の強度が低下し、結晶粒界に対して直角方向となる凝固直角方向の延性が著しく低下し、結果として凝固直角方向の強度が低下する。また、普通鋳造材の場合、結晶粒界の強度が低く、延性も低いと、結晶粒内をいくら強化しても、鋳物としての強度は向上しない。Hfは、このような現象を防止するための必須元素であり、最低でも0.2%以上、特に0.5%以上添加することが好ましい。延性を重視する場合には、普通鋳造材或いは一方向凝固材のいずれにおいても1.1%以上添加するのがよく、高い粒界強度が要求される場合には1.4%以上にするのがよい。Hfを1.8%以上添加すると、共晶組織の面積率が増加し、炭化物と同様に結晶粒界の移動を防止する効果が高まり、結晶粒界の強度が向上する。これは、特に普通鋳造材の場合に有効である。しかし、過度の添加はBと同様に合金の融点を低下させるため、3.0%以下の添加量に抑える必要がある。
Coはγ’相の固溶温度を低下させ、溶体化熱処理を容易にする効果があり、特に本発明合金のように、部分溶体化で使用される場合には低い熱処理温度でも溶体化率を大きくすることが可能となる。その効果を得るためには、最低でも10.2%以上の添加が必要である。しかし、Coの過度の添加は、γ’相を不安定化し、むしろ強度低下につながる。従って、Coは最大でも25%にする必要がある。
Taはγ’相の固溶強化元素として、Ti,Nbより優れるので、非常に有効な元素である。凝固方向強度を向上させるためには、その添加量は多いほど良く、最低でも1%の添加が必要である。しかし、過度の添加は合金の相安定性を悪化させ、かえって強度低下につながるため、最大でも12%に規制する必要がある。また、本発明のポイントとして、W量を多くし、相対的にTa量を減らすことで、鋳物の延性が向上することが明らかになった。合金の強度を向上させるためには、WとTaの合計量は多いほど良いが、一方で、その合計量が或るレベルを超えると、TCP相が析出し、かえって強度が低下する。従って、高強度高延性を実現するためには、W量を高め、その分だけTa量を下げた組成にするのが好ましく、Taは6.5%以下、特に4.9%以下にすることが好ましい。
WはTaと反対に主にγ相を固溶強化する元素である。従って、凝固方向強度を向上させるためには、その添加量は多いほど良く、最低でも2%以上添加する必要がある。さらに、前述のように高強度と高延性を両立させるためには、TaよりWを高めた組成が適当であり、Wは7.2%以上、より好ましくは9%以上、さらに好ましくは11.5%以上とすることが適当である。しかし、Taと同様に、Wも過度の添加は合金の相安定性を悪化させTCP相等の有害相の析出につながり、かつ耐食性を著しく低下させるため、最大でも15%に規制する必要がある。
なお、WとTaは質量数がほぼ同じであるため、合金の特性を表すのに重要な原子%比と重量%比はほぼ同じになる。W/W+Taで表される比が0.6〜0.8の範囲にある時に、特に強度と延性が優れた合金が得られた。また、TaとWの合計量が15〜17%であるときに、非常に高い強度が得られた。
MoはWと同属であり、Ni基超合金の様々な特性に対する効果もWとほぼ同様である。しかしながら、本発明者らは、MoはWと比べて、燃焼環境中の耐食性を著しく悪化させることを見出した。従って、本発明合金では0〜0.95%とする。
ReもW及びMoと同様に主にγ相を固溶強化する元素である。MoやWと比べ、燃焼環境中の耐食性を悪化させないことから、耐食性と高温強度を両立させるためには非常に有効な元素であり、WあるいはMoと置き換えることで、耐食性を改善すると同時に合金を強化することができる。この効果を得るためには、最低でも0.5%以上、好ましくは1.1%以上添加することが必要である。しかし、Reはγ’相側への分配率が著しく低いため、相安定性に影響を及ぼす。従って、添加量は最大でも9%に押さえる必要がある。
CrはCrの保護皮膜を形成し、Ni基超合金の耐食性を維持するための必須元素である。従って、最低でも1.5%以上の添加が必要である。しかし、過度の添加は、Wと同様に合金の相安定性を悪化させ、TCP相等の有害相の析出につながるため、16%以下に規制する必要がある。さらに高温強度を重視し、WやReの添加量を増やす必要がある場合はCrの添加量を8%以下とし、より高温強度を重視する場合は7%以下とすることが好ましい。
Alはγ’相(NiAl)を形成するために必須の元素であり、最低でも3.5%以上の添加が必要である。γ’相の体積率を高くし、凝固方向強度を重視する場合には5%以上にすることが好ましい。また、AlはAl保護皮膜を形成することで、耐酸化性及び耐食性を向上させる。しかし、過度に添加するとγ’相の固溶強化度が低下し、かえって高温強度が低下することから、添加量は最大でも6.5%にする必要がある。
NbはTiより効果は小さいが、CrとAlの複合酸化物の形成を防止し、合金の耐食性を改善する効果がある。一方、Taより効果は小さいが、γ’相を固溶強化する効果はTiより高い。従って、Nbは高温強度を落とさずに耐食性を改善できる有効な元素であり、0.2%以上添加する必要がある。しかしながら、γ’相の相安定性を保つためには、Nbの添加量は2%以下とする必要がある。耐食性を特に重視する場合は、0.5%以上の添加が好ましい。
TiはCrとAlの複合酸化物の形成を防止し、合金の耐食性を向上させる効果がある。しかし、本合金系のように、TaとNbの両方の元素を添加している場合、そこに、さらにTiを添加するとγ’相の安定性を阻害してしまう。また、強度と耐食性及び耐酸化性のバランスを考えた場合、TiよりもNbあるいはTaを添加した方がよい。さらに、本発明合金のように、結晶粒界強化元素を含むため、合金の部分溶融温度が低くなる傾向がある合金系にとって、合金元素のバランスを最適化し、合金の部分溶融温度をできるだけ高くすることが、溶体化熱処理性を改善するために有効であり、結果として、強度向上につながる。TaとNbとTiを比較した場合、合金の部分溶融温度低下に及ぼす1原子%当たりの効果は、Ta<Nb<Tiであり、合金の部分溶融温度を向上させるためにもTiの添加は好ましくない。従って、本発明合金ではTiは無添加とした。前述のように、本発明合金ではγ相側に入るWと、γ’相側に入るTaのバランスを制御することで、優れた特性を得ることが可能となり、γ’相側に入るTaの比率が小さいところで優れた特性を得た。従って、同じくγ’相側に入るTiを添加すると、もともと低く抑えられているγ’相側に入る元素の中で、高温強度向上に最も有効なTaの添加量をさらに低下させなくてはならなくなってしまう。このことからも、本発明合金においてはTiを無添加とすることが重要である。
Zrは、従来はHfと同様に、結晶粒界の強度を向上させる効果があると考えられてきたが、本発明者らの研究により、結晶粒界強度向上に及ぼす効果はHfに比べて著しく小さいことがわかった。更に、前述のTa,NbとTiの関係と同様に、Zrの部分溶融温度低下に及ぼす効果はHfより大きい。従って、結晶粒界の強度向上に及ぼす効果がHfより小さい上に、部分溶融温度低下に及ぼす効果がHfより大きいZrは、合金に添加する効果が見出せない。Zrを添加すると、本発明合金における重要な元素の一つであるHfの添加量を大幅に少なくしなくてはならない。従って、本発明合金ではZrを不純物レベルの0〜0.02%に規制した。これによりHfの添加量を増やすことができ、結晶粒界強度の向上を図ることが可能となった。
Vを添加するとTa及びNbの固溶限度が低下し、高温強度の低下につながる。また、耐食性を著しく低下させることから、本発明合金では不純物レベルの0〜1%とした。
Y等の希土類元素は、Al保護皮膜の密着性を改善し、耐酸化性を大幅に改善する。しかし、Ni基超合金の融点を著しく低下させることから、添加量は0〜2%とすることが好ましい。希土類元素は、周期律表の3A族に属する元素で、Yの他に、Sc及びLa,Ce等のランタノイド、Ac等のアクチノイドが含まれる。これらの元素の効果はほぼ同じであり、単独又は2種以上の混合物を添加しても、その効果はほぼ同等であることから、これらの元素の総量を0〜2%とした。
アルカリ土類金属及びSiは酸化皮膜の密着性を向上させる効果があるが、過度の添加は結晶粒界の延性を低下させる。従って、その総量は0〜0.1%とすることが好ましい。
Pt及びRu等の白金族元素は、高温強度向上に有効な元素であるW,Re等の固溶限度を広げる作用があるが、非常に高価な元素であるので、添加量は0〜2%とする。
Fe,Ga及びGeは酸化皮膜の密着性向上の効果がある。また、Ga及びGeはNiと金属間化合物を形成して高温強度を向上する効果がある。しかし、何れも過度の添加は結晶粒界の延性を低下させる。従って、その総量は0〜5%とする。
以下、一方向凝固鋳物及び普通鋳造鋳物を製造し、試験片を切り出して、強度及び延性を測定した結果について説明する。実験に使用したNi基超合金の成分組成を表1に示す。alloy1061はUSP6051083の組成範囲に含まれる合金である。本発明の実施例は、alloy1064〜1066、1071〜1073、1077、1079〜1081、1086〜1104である。
Figure 0004885530
評価に用いた鋳物は100mm×15mm×230mmの平板で、普通鋳造(CC)と一方向凝固(DS)の一方または両方の鋳物を製造した。表1記載の組成に予め調整したマスターインゴットを用い、CC平板は一般的な真空鋳造法で、DS平板は鋳型引出し式一方向凝固法で鋳造した。鋳造後、溶体化熱処理と時効熱処理を施し、その後に、各々の評価用試験片を機械加工で採取した。なお、CC材には、溶体化熱処理に先立ち、HIP処理を施した。HIP処理はAr中で、温度1200℃,圧力150MPaの条件で4時間行った。溶体化熱処理(ST)条件は、ソルバス以上の温度で、かつ部分溶融温度以下であることを標準とした。溶体化熱処理後はガス吹付けの急冷を行った。ソルバス温度と部分溶融温度の間の温度差が大きい合金の一部は、数種類のST温度の試験片を用意したものもある。時効熱処理は、いずれの合金とも、1080℃で4時間加熱後、室温まで急冷し、その後、871℃で20時間加熱後、室温まで急冷する2段熱処理とした。
図1にDS平板の金属組織を示した。図1中には、凝固方向、結晶粒界、凝固直角方向を記載した。DS材は、凝固(DS−L)方向と凝固直角(DS−T)方向のクリープ破断強度を測定した。DS−L方向のクリープ破断強度は、850℃−40kgf/mm又は1040℃−14kgf/mmの条件で、クリープ破断時間を測定することにより評価した。DS−T方向のクリープ破断強度は、982℃−14kgf/mmの条件で、クリープ破断時間を測定することにより評価した。CC平板は等軸晶であるので、試験片の採取方向は特に規定せず、任意の場所から試験片を採取した。クリープ破断強度は、982℃−14kgf/mmの条件で、クリープ破断時間を測定することにより評価した。なお、クリープ試験及び引張試験の試験片形状及び条件はASTM又はJIS規格準拠とした。耐食性はDS材及びCC材共に900℃のバーナリグ試験で評価した。腐食重量変化量が20mg/cmに到達する時間の長短で耐食性の優劣を判断した。試験は1サイクル10時間とし、1サイクル毎に重量変化量を測定した。燃料には硫黄を0.06mass%含む重油を用い、腐食を加速するために0.1mass%NaCl溶液を30cc/minで燃焼ガス中に噴霧した。耐酸化性の評価にはDS材及びCC材のいずれも、縦10mm、横15mm、厚さ3mmの平板を用いた。これらを大気中で、1サイクル当たり1100℃で100時間加熱し、1サイクル毎に重量変化量を測定し、その絶対値の大小で耐酸化性の優劣を判断した。試験は最大10サイクル、合計1000時間とした。
まず、DS材の評価結果について説明する。
表2に、alloy1061〜1063のDS−L方向のクリープ破断時間を示した。また、図2に、これらの合金について、DS−L方向のクリープ破断時間とCo量の関係を示した。クリープ破断時間が長いほど、クリープ破断強度は高いことを示す。alloy1061は単結晶(SC)材として開発されたものであり、DS材にした場合にはDS−L方向のクリープ破断強度が低い。alloy1061に対し、Co量を増やしたものは、DS−L方向のクリープ破断強度が高い。Coを約10%含有するalloy1063は、alloy1061に比べてクリープ破断時間が4倍以上長いことが確認された。
表3に、alloy1063と、alloy1063に比べてCo、Hf量を増加したalloy1064〜1066のDS−T方向のクリープ破断時間を示した。また、図3に、これらの合金について、DS−T方向のクリープ寿命とHf量の関係を示した。alloy1063は、DS−L方向のクリープ破断強度は高いが、DS−T方向、つまり結晶粒界の強度が低い。alloy1063に対し、Co量を若干多くし、更にHf量を多くすることで、DS−T方向のクリープ破断強度が大幅に向上することがわかった。
以上により、alloy1061に対し、Co量とHf量をいずれも増やし、Coは10.2%以上、Hfは0.5%以上、好ましくは1.1%以上にすることにより、DS−L方向及びDS−T方向のクリープ破断強度がいずれも高くなることが確認された。
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Co及びHfを多く含むNi基超合金のDS材は、DS−L方向及びDS−T方向の強度がいずれも高いことが分かったので、次に、W量とTa量について検討を行った。
Wはγ相側に主に入る元素で、反対にTaは析出相であるγ’相側に主に入る元素である。W量が多い合金はγ相側の格子定数が大きくなり、一般に(γ’相の格子定数−γ相の格子定数)/(両相の格子定数平均)で定義される格子定数ミスマッチが小さくなる。格子定数ミスマッチはNi基超合金の変形機構に大きな影響を及ぼす重要な因子である。
表4に、表3に示した結果より、DS−T方向のクリープ破断強度が高いことが確認されたalloy 1065と、alloy 1071〜1073について、DS−L方向の850℃−40kgf/mmクリープ破断時間を示した。また、図4に、これらの合金について、W/W+Taの重量%における比と、DS−L方向の850℃−40kgf/mm2クリープ破断時間の関係を示した。更に、表5に、これらの合金について、DS−T方向の982℃−14kgf/mmクリープ破断時間を示し、図5にW/W+Taの比とDS−T方向の982℃−14kgf/mmクリープ破断時間の関係を示した。
この結果、W/W+Taの比が大きくなるほど、DS−L方向のクリープ破断強度及びDS−T方向のクリープ破断強度が向上することが分かった。alloy 1073のDS−L方向の850℃−40kgf/mmにおけるクリープ破断時間2654時間は、同条件におけるalloy 1061の単結晶(SC)材のクリープ破断時間2470時間をも上回る。
以上より、alloy 1061に対し、CoとHfの量を多くし、更にW/W+Taの重量比が0.6〜0.8の範囲に入るようにした合金は、alloy 1061のSC材と同等のDS−L方向のクリープ破断強度を有しながら、優れた結晶粒界強度(DS−T方向強度)を有し、大型の複雑形状翼に好適であることが確認された。特にalloy 1073のクリープ特性から明らかなように、W量が11%を超え、Ta量が4%を下回るようにしたものは、DS−L方向とDS−T方向の強度がいずれも極めて高く、最上の特性を有することがわかった。
alloy 1065とalloy 1071〜1073のDS−T方向の室温引張伸びを表6に示した。また、図6に、これらの合金について、DS−T方向の室温引張伸びとW/W+Taの比の関係を示した。いずれの合金も室温引張伸びは3%以上が得られており、高延性を有することが実証された。W/W+Taの比が0.65付近で最も室温の延性が優れており、延性向上の点からもW/W+Taの重量比は0.6〜0.8にすることが好ましいことが分かった。
Figure 0004885530
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次に、W/W+Taの重量比が0.6〜0.8の範囲内にある数種のNi基超合金について、DS−L方向及びDS−T方向のクリープ破断強度を評価した。DS−L方向のクリープ破断強度は、850℃−40kgf/mmと1040℃―14kgf/mmの二つの条件で測定した。表7に、alloy 1072,1073,1086〜1098についての評価結果を示す。また、図7に、これらの合金について、DS−L方向の1040℃−14kgf/mmクリープ破断時間とW/W+Taの重量比の関係を示す。表7及び図7の結果から、alloy 1072,1073をベースにCo量を増加して14%以上含有させたalloy 1091,1097を除いて、いずれの合金においても強度増大が認められた。この結果より、Co量はむしろ14%以下に抑えた方が良いことがわかる。Re量が1.4%台の合金では、alloy 1073にくらべてWとTa増量したalloy 1093が、クリープ破断強度が最も高い。しかし、長時間の組織安定性を考えると、alloy 1073からWを増加させたalloy 1092の方が適当と考えられる。WやTaと比べると著しく高価な元素であるReを増量したalloy 1090,1096,1098は、クリープ破断強度が非常に高く、高価格にはなっても、高温強度向上を図りたい場合には、Re量の増加は有効であることがわかった。また、Hfについては、alloy 1088のDS−T方向のクリープ破断時間が他の合金と比べ著しく短いことから、DS−T方向の強度を重視する場合は、1.5%までの添加が好ましいと考えられる。
図16に、alloy 1072,1073及び1086〜1098について、Ta量及びW量とDS−L方向のクリープ破断時間の関係を示した。W/W+Taの重量%比が0.6〜0.8、W量が10.5〜15%、Ta量が1〜6.5%のときに、クリープ破断強度が高く、特にWとTaの合計量が15〜17%のときに、極めて高い強度が得られることが分かる。
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図8にalloy1092のDS材及び比較材の耐酸化性試験結果を示した。alloy1061の単結晶(SC)材及び産業用ガスタービンで実績のある14%Cr合金(CC材)の何れと比べても、耐酸化性は向上している。図9に、alloy1092のDS材及び比較材のバーナリグによる耐食性の試験結果を示した。alloy1061のSC材、USP5069873に示されるDS材及び産業用ガスタービンで実績のある14%Cr合金(CC材)の何れと比べても耐食性が向上している。
次に、CC材の評価結果について説明する。
ターボチャージャーやマイクロタービンの遠心式ホイールには、CC材が適用される。表8に、alloy1061,1077,1079のCC材について、クリープ破断試験結果を示した。また、図10に、これらの合金のCC材について、クリープ破断時間とHf量の関係を示した。alloy1061のCC材をベースにHf量を増加したものは、クリープ破断強度が高いことが確認された。
そこで、Hf量を増加してクリープ破断強度を向上させたalloy1079のCC材をベースに、クリープ破断強度に及ぼすC量の影響を検討した。表9に、alloy1079〜1081及び1201のCC材のクリープ破断時間を示し、図11にクリープ破断時間とC量の関係を示した。alloy1079をベースにC量を増やすことで、クリープ破断強度はさらに向上することが確認された。
表9に示した合金のうちで、最も強度が高かったC量0.2%のalloy1081について、ST温度を1260℃と20℃高くして評価した。その結果、982℃−14kgf/mmのクリープ破断時間は2164hであった。これは、応力14kgf/mmにおける10時間耐用温度に直すと898℃に相当する。この耐用温度は、USP5069873など、いわゆる第2世代DS合金(Reを3%含むグループ)の耐用温度に匹敵する。CC材でありながら第2世代DS合金に匹敵する強度を有することから、alloy1081に匹敵する組成の合金よりなるCC材は、DS合金の適用が困難なターボチャージャーやマイクロタービン用の遠心式ホイールに極めて好適であることがわかった。また、従来はDS材を使用していた軸流タービンの翼をCC材で置き換えることが可能となり、コストの面でも大きな効果が得られることがわかった。alloy1081のST温度1260℃での室温引張延性を評価した結果、室温の破断伸びは5.3%であり、高い高温強度を有していながら、延性も十分であることが確認された。alloy1081は、CとHfを除く元素の量がDS材のalloy1092とほぼ同等である。このことから、高温強度はalloy1092と同様にCo量やW/Ta比の適正化などで達成され、さらにHf量とC量を最適化することで、結晶粒界強度も向上した、ターボチャージャーやマイクロタービンの遠心式ホイールに最適な合金が得られたと考えられる。
図12にalloy1081のCC材及び比較材の耐酸化性試験結果を示す。alloy1061のSC材及び産業用ガスタービンで実績のある14%Cr合金(CC材)の何れと比べても耐酸化性は向上している。図13に、alloy1081のCC材及び比較材のバーナリグによる耐食性の試験結果を示す。alloy1061のSC材、USP5069873に示されるDS材及び産業用ガスタービンで実績のある14%Cr合金(CC材)の何れと比べても、alloy1081のCC材は耐食性が向上している。
表10に、alloy1081に近い組成の合金、具体的にはalloy1099〜1104について、982℃−14kgf/mmのクリープ破断試験結果を示した。また、比較のためにUSP3720509に該当する合金のクリープ破断試験結果を示した。これらの合金の中ではalloy1101が、クリープ破断時間が最も長い。C量0.15〜0.2%、Hf量1.50〜2.04%の範囲では、C量とHf量を共に多くした組成がクリープ破断強度の上で優れていることがわかった。alloy1104はWの量がalloy1099〜1103にくらべて少なく、ST温度も低いため、alloy1099〜1103にくらべるとクリープ破断強度は低いが、室温の引張破断伸びを測定した結果では6.4%と高く、結晶粒界の強度を重視する場合には優れた合金であることがわかった。alloy1104のクリープ破断強度は、ターボチャージャーやマイクロタービンの遠心式ホイールで広く用いられているUSP3720509に示される合金に比べれば著しく高い。
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alloy1077,1079,1099〜1103のCC材について、Hf量及びC量と982℃―14kgf/mmクリープ破断時間の関係を図17に示す。Hf量が1.4〜3%の範囲内にあり、しかも、Hf量が(−10C+3.4)よりも多く、(−10C+4.4)よりも少ないときに、極めて高いクリープ破断強度が得られた。
alloy1092の組成で150kgのマスターインゴットを鋳造し、大型マスターインゴットの鋳造性を評価した結果、問題の無いことが確認された。また、そのマスターインゴットを用い、図14に示す製品部全長230mmの産業用軸流ガスタービン用動翼1を鋳型引出し式一方向凝固法で鋳造した。この一方向凝固翼のマクロ組織とミクロ組織を検査し、更に蛍光浸透探傷検査及びX線検査を行った結果、この合金の鋳造性に問題の無いことを確認した。また、別の一方向凝固翼に対し、真空中で、1260℃で4時間加熱後、Arガスを吹き付けて急冷する溶体化熱処理を施し、その後、同じく真空中で、1080℃で4時間加熱後、室温まで急冷し、更に871℃で20時間加熱後、室温まで急冷する2段時効処理を施して、この翼から試験片を採取し、クリープ破断試験を行った。その結果、850℃−40kgf/mmの条件でのDS−L方向のクリープ破断時間は2400時間であり、alloy1061の単結晶(SC)試験片のクリープ破断時間2470時間に匹敵する良好な結果を有していた。
また、alloy1101の組成で150kgのマスターインゴットを鋳造し、大型マスターインゴットの鋳造性を評価し、問題の無いことを確認した。さらに、そのマスターインゴットを用い、図15に示す翼最大径がφ230mmのマイクロタービン用遠心式ホイールを真空中普通鋳造法にて鋳造した。このホイールのマクロ組織とミクロ組織を検査し、更に蛍光浸透探傷検査とX線検査を行った結果、この合金の鋳造性に問題の無いことが確認された。また、別のホイールを鋳造し、Ar中で、温度1200℃,圧力150MPaの条件で4時間のHIP処理を施した後、真空中で、1240℃で4時間加熱後、Arガスを吹き付けて急冷する溶体化熱処理と、その後、同じく真空中で、1080℃で4時間加熱後、室温まで急冷し、更に871℃で20時間加熱後、室温まで急冷する2段時効処理を施した。この翼の中心の最大径部から遠心応力方向に試験片を採取し、982℃−14kgf/mmの条件でクリープ破断強度を評価した。
USP3720509に示される合金についても、同形のマイクロタービン用遠心式ホイールを真空中普通鋳造法にて鋳造した。鋳造後、本発明の実施例と同様の条件でHIP処理、溶体化熱処理及び2段時効処理を施した。このホイールからもalloy1101からなるホイールと同様の方法で試験片を採取し、982℃−14kgf/mmの条件でクリープ破断強度を評価した。
その結果、USP3720509に示される合金からなるホイールから採取した試験片の破断時間は450時間であったのに対し、alloy1101からなるホイールから採取した試験片の破断時間は1800時間であり、USP3720509に示される合金の約4倍も長いことが確認された。
DS平板の金属組織を表す。 DS材の凝固方向のクリープ破断時間とCo量の関係を示した図。 DS材の凝固直角方向のクリープ破断時間とHf量の関係を示した図。 DS材の凝固方向のクリ−プ破断時間とW/W+Ta比の関係を示した図。 DS材の凝固直角方向のクリープ破断時間とW/W+Ta比の関係を示した図。 DS材の凝固直角方向の室温引張伸びとW/W+Ta比の関係を示した図。 DS材の凝固方向のクリープ破断時間に及ぼすW/W+Ta比の影響を示した図。 alloy 1092のDS材と比較材の酸化試験結果を示した図。 alloy 1092のDS材と比較材の腐食試験結果を示した図。 CC材のクリープ破断時間とHf量の関係を示した図。 CC材のクリープ破断時間とC量の関係を示した図。 alloy 1081のCC材と比較材の酸化試験結果を示した図。 alloy 1081のCC材と比較材の腐食試験結果を示した図。 産業用軸流ガスタービン用動翼の外観図。 マイクロタービン用遠心式ホイールの断面金属組織を表す図。 DS材について、Ta量及びW量とDS−L方向のクリープ破断時間の関係を示した図。 CC材について、Hf量及びC量とクリープ破断時間の関係を示した図。
符号の説明
1…産業用軸流ガスタービン用動翼。

Claims (22)

  1. 普通鋳造法によって製造され、等軸晶組織を有するNi基超合金であって、重量%で、C:0.16〜0.3%、B:0.016〜0.05%、Hf:1.4〜3.0%、Co:10.2〜25%、Ta:1〜4.9%、Cr:1.5〜8%、Mo:0〜0.95%、W:7.2〜15%、Al:3.5〜6.5%、Re:1.1〜9%、Nb:0.2〜2%、V:0〜1%、Zr:0〜0.02%、白金族元素の少なくとも1種:0〜2%、希土類元素の少なくとも1種:0〜2%、アルカリ土類金属及びSiの少なくとも1種:0〜0.1%、FeとGa及びGeから選ばれた少なくとも1種:0〜5%、残部がNiと不可避不純物よりなることを特徴とする高強度高延性Ni基超合金。
  2. 重量%で、Cr:1.5〜7%、W:9〜15%を含むことを特徴とする請求項に記載の高強度高延性Ni基超合金。
  3. 重量%で、Cr:1.5〜7%、W:11.2〜15%を含むことを特徴とする請求項に記載の高強度高延性Ni基超合金。
  4. 重量%で、C:0.18〜0.3%、Hf:1.8〜3.0%、Cr:1.5〜7%、W:11.2〜15%を含むことを特徴とする請求項に記載の高強度高延性Ni基超合金。
  5. W/W+Taの比率が0.6〜0.8よりなることを特徴とする請求項に記載の高強度高延性Ni基超合金。
  6. 一方向凝固法によって鋳造されるNi基超合金であって、重量%で、C:0.16〜0.3%、B:0.016〜0.05%、Hf:1.4〜3.0%、Co:10.2〜25%、Ta:1〜4.9%、Cr:1.5〜%、Mo:0〜0.95%、W:7.2〜15%、Al:3.5〜6.5%、Re:1.1〜9%、Nb:0.2〜2%、V:0〜1%、Zr:0〜0.02%、白金族元素の少なくとも1種:0〜2%、希土類元素の少なくとも1種:0〜2%、アルカリ土類金属及びSiの少なくとも1種:0〜0.1%、FeとGa及びGeから選ばれた少なくとも1種:0〜5%、残部がNiと不可避不純物よりなることを特徴とする高強度高延性Ni基超合金。
  7. 重量%で、Ta:1〜6.5%、W:9〜15%を含むことを特徴とする請求項に記載の高強度高延性Ni基超合金。
  8. 重量%で、Ta:1〜6.5%、W:10.5〜15%を含むことを特徴とする請求項に記載の高強度高延性Ni基超合金。
  9. 重量%で、Ta:1〜4.9%、W:11.2〜15%を含むことを特徴とする請求項に記載の高強度高延性Ni基超合金。
  10. W/W+Taの比率が0.6〜0.8よりなることを特徴とする請求項に記載の高強度高延性Ni基超合金。
  11. 重量%で、Ta:1〜6.5%、W:10.5〜15%、TaとWの合計量が15〜17%、W/W+Taの比率が0.6〜0.8よりなることを特徴とする請求項に記載の高強度高延性Ni基超合金。
  12. 重量%で、Ta:1〜4.9%、W:11.2〜15%、TaとWの合計量が15〜17%、W/W+Taの比率が0.6〜0.8よりなることを特徴とする請求項に記載の高強度高延性Ni基超合金。
  13. 請求項1に記載の組成を有するNi基超合金鋳造物。
  14. 一方向凝固法あるいは普通鋳造法によって鋳造され、単結晶組織、柱状晶組織或いは等軸晶組織を有することを特徴とする請求項13に記載のNi基超合金鋳造物。
  15. 請求項1に記載の組成を有する、Ni基超合金鋳造物鋳造用のマスターインゴット。
  16. 請求項1に記載の組成を有するNi基超合金鋳造物により形成されたターボチャージャー又はマイクロタービン用の遠心式ホイール。
  17. ホイールの翼部表面が微細結晶、翼部からハブ部へ向けた部分が翼部からハブ部へ向けた凝固方向の柱状晶、ハブ部が結晶粒径5mm以上の粗大結晶よりなることを特徴とする請求項16に記載の遠心式ホイール。
  18. ホイールの翼部表面と、翼部からハブ部へ向けた部分、及びハブ部の全ての部分で、凝固前面と接する溶湯が湯口まで連続している凝固形態を有することを特徴とする請求項17に記載の遠心式ホイール。
  19. 請求項1に記載の組成を有するNi基超合金を鋳造してターボチャージャー又はマイクロタービン用の遠心式ホイールを製造し、その際に翼部表面が微細結晶、翼部からハブ部へ向けた部分が翼部からハブ部へ向けた凝固方向の柱状晶、ハブ部が結晶粒径5mm以上の粗大結晶となるように鋳造し、鋳造後、温度1185〜1285℃,圧力100〜185MPaの条件で2時間以上のHIP処理を行い、その後、溶体化熱処理を施すことを特徴とする遠心式ホイールの製造方法。
  20. 請求項1に記載の組成を有するNi基超合金を鋳造してターボチャージャー又はマイクロタービン用の遠心式ホイールを製造し、その際に翼部表面が微細結晶、翼部からハブ部へ向けた部分が翼部からハブ部へ向けた凝固方向の柱状晶、ハブ部が結晶粒径5mm以上の粗大結晶となり、製品部の全ての部位で凝固前面と接する溶湯が湯口まで連続している凝固形態となるように鋳造を行い、鋳造後、温度1185〜1285℃,圧力100〜185MPaの条件で2時間以上のHIP処理を行い、その後、溶体化熱処理を施すことを特徴とする遠心式ホイールの製造方法。
  21. 請求項1に記載の組成を有するNi基超合金鋳造物により形成された軸流式ガスタービン用の翼。
  22. 一方向凝固法によって鋳造され、単結晶組織、柱状晶組織を有することを特徴とする請求項21に記載の軸流式ガスタービン用の翼。
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