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JP4880866B2 - ガソリン - Google Patents

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忠豪 曽根
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Description

【0001】
【発明の属する技術的分野】
本発明は、自動車用燃料として有用なエタノール配合ガソリンに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の地球温暖化抑制等の環境問題への意識の高まりから、排出ガス中の二酸化炭素、一酸化炭素、炭化水素を削減するために、含酸素化合物をガソリンに配合することが注目され、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を配合したガソリンが脚光を浴びてきた(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、MTBEによる水質汚染などの問題から、MTBE以外の含酸素化合物のガソリンへの配合を検討する必要が生じてきている。中でも、エタノールが地球温暖化抑制の面から注目を集めている。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−93894号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ガソリンにエタノールを配合した場合の問題点の一つは、共沸現象により蒸気圧が上昇することである。このため、エタノール配合前のベースガソリンのリード蒸気圧(RVP)を調整せずに、通常のガソリンに単にエタノールを配合すると配合後のガソリンのリード蒸気圧は、配合前のガソリンに比べて大幅に上昇する。
現在、国内を走行するガソリン車のほとんどには給油時蒸発ガス回収装置(On−Board Refueling Vapour Recovery、以降ORVRと省略する。)が装着されていないのが現状である。ORVRを装着しない車両からは蒸気圧に依存して給油時に燃料蒸発ガスが大気中に放出される。この燃料蒸発ガスは光化学オキシダント生成の原因となるため、ガソリンの蒸気圧の上昇を抑制することが求められる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題について鋭意研究を重ねた結果、特定量のエタノールを配合した特定の蒸留性状を有するガソリンにおいて、ある特定の指標を満足するように調整した場合に、蒸気圧の上昇を最小限に抑えることができることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、ガソリン全量基準で1〜10容量%のエタノールを含有し、50容量%留出温度が75〜95℃であり、下記式(1)の揮発性指標を満たすことを特徴とするリサーチオクタン価89以上のガソリンに関する。
3272≦383×A+119×B+36×C≦5437 (1)
上記式(1)におけるA、BおよびCは、次の値を示す。
A:ガソリン中の炭素数4の化合物の総量(モル%)
B:ガソリン中の炭素数5の化合物の総量(モル%)
C:ガソリン中の炭素数6の化合物の総量(モル%)
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明のガソリンは、(A)成分としてエタノールを1〜10容量%含有することが必要である。エタノールの含有割合は既販車の燃料供給系統部材への影響を抑える観点から7容量%以下が好ましく、5容量%以下がさらに好ましい。
エタノールの製造法は特に限定されるものではなく、公知の製造法から得られるすべてのエタノールが使用可能である。製造法としては、例えば、エチレンを原料として工業的に合成する方法や酵母の働きにより糖から製造する発酵法などが挙げられる。これらの中でも、製造時の二酸化炭素排出量など環境への影響を考慮すると、とうもろこし、さとうきびやその他の農産物の副産物、または木質資源や木質系廃棄物を利用したバイオマスからエタノールを製造することが試みられている。
【0007】
本発明のガソリンは、さらに下記式(1)の要件を具備することが必要である。
3272≦383×A+119×B+36×C≦5437 (1)
上記式(1)におけるA、BおよびCは、次の値を示す。
A:ガソリン中の炭素数4の化合物の総量(モル%)
B:ガソリン中の炭素数5の化合物の総量(モル%)
C:ガソリン中の炭素数6の化合物の総量(モル%)
【0008】
式(1)における「383×A+119×B+36×C」は、ガソリンの揮発性を判断するために本発明者らが見いだした指標である。この値は、ORVRを装着していない車両からの給油時燃料蒸発ガス排出量を抑制する点で、5437以下であることが必要である。また、良好な運転性確保の点で、3272以上であることが必要であり、3500以上が好ましい。
なお、ここでガソリン中の炭素数4、炭素数5および炭素数6の化合物のそれぞれの総量(モル%)は、社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−52−99により規定されているキャピラリーカラムガスクロマトグラフ法により求められる値である。
【0009】
本発明のガソリンのリサーチ法オクタン価(RON)は89以上が必要である。好ましくは90以上である。RONが89に満たない場合には耐ノッキング性が悪くなり好ましくない。
なお、ここでいうリサーチ法オクタン価とは、JIS K 2280「オクタン価及びセタン価試験方法」により測定されるリサーチ法オクタン価を意味する。
【0010】
本発明のガソリンの蒸留性状は下記の通りであることが好ましい。ここでいう蒸留性状とは、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定される蒸留性状を意味する。
蒸留初留点 :20〜37℃
10容量%留出温度(T10):35〜70℃
30容量%留出温度(T30):55〜77℃
50容量%留出温度(T50):75〜105℃
70容量%留出温度(T70):100〜130℃
90容量%留出温度(T90):115〜180℃
蒸留終点 :150〜220℃
【0011】
蒸留初留点の下限値は20℃であることが好ましく、更に好ましくは23℃である。20℃に満たない場合は排出ガス中の炭化水素が増加する可能性がある。一方、上限値は37℃であることが好ましく、更に好ましくは35℃である。37℃を超える場合には、低温運転性に不具合が生じる可能性がある。
T10の下限値は35℃であることが好ましく、更に好ましくは40℃である。35℃に満たない場合は排出ガス中の炭化水素が増加する可能性があり、また、ベーパーロックにより高温運転性の不具合を生じる可能性がある。一方、T10の上限値は70℃であることが好ましく、更に好ましくは60℃である。70℃を超える場合には、低温始動性に不具合を生じる可能性がある。
【0012】
T30の下限値は55℃であることが好ましく、更に好ましくは60℃である。55℃に満たない場合は燃費が悪化する可能性がある。一方、T30の上限値は77℃であることが好ましく、更に好ましくは75℃、更に好ましくは70℃である。77℃を超える場合には、中低温運転性に不具合を生じる可能性がある。
T50の下限値は75℃であることが好ましく、更に好ましくは80℃である。75℃に満たない場合は燃費が悪化する可能性がある。一方、T50の上限値は105℃であることが好ましく、更に好ましくは100℃、更に好ましくは95℃である。105℃を超える場合には、排出ガス中の炭化水素が増加する可能性がある。
【0013】
T70の下限値は100℃であることが好ましい。100℃に満たない:場合は、燃費が悪化する可能性がある。一方、T70の上限値は130℃であることが好ましく、更に好ましくは128℃である。130℃を越える場合は冷機時の中低温運転性に不具合が発生する可能性があり、また、排出ガス中の炭化水素の増加、吸気弁デポジットの増加、燃焼室デポジットが増加する可能性がある。
T90の下限値は115℃であることが好ましく、更に好ましくは120℃である。115℃に満たない場合は、燃費が悪化する可能性がある。一方、T90の上限値は、冷機時の低温および常温運転性の悪化、エンジンオイルのガソリンによる希釈の増加、炭化水素排出ガスの増加、エンジンオイルの劣化およびスラッジの発生を防止することができるなどの点から、180℃であることが好ましく、更に好ましくは170℃、更に好ましくは160℃である。
【0014】
蒸留終点の下限値は150℃であることが好ましい。一方、蒸留終点の上限値は、220℃であることが好ましく、更に好ましくは200℃、更に好ましくは195℃、最も好ましくは190℃である。終点が220℃を越える場合は吸気弁デポジット、燃焼室デポジットが増加する可能性があり、また、点火プラグのくすぶりが発生する可能性がある。
【0015】
本発明のガソリンの密度は、0.71〜0.77g/cm3であることが好ましい。より好ましくは0.735g/cm3以上であり、また0.76 g/cm3以下である。ガソリンの密度が0.71g/cm3に満たない場合は燃費が悪化する可能性があり、一方、0.77g/cm3を超える場合は加速性の悪化やプラグのくすぶりを生じる可能性がある。ここでいう密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
【0016】
本発明のガソリンは、その硫黄分がガソリン全量基準で10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは8ppm以下である。硫黄分が10ppmを越える場合、排出ガス処理触媒の性能に悪影響を及ぼし、排出ガス中のNOx、CO、HCの濃度が高くなる可能性があり、またベンゼンの排出量も増加する可能性がある。ここでいう硫黄分とは、JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」により測定される硫黄含有量を意味する。
【0017】
本発明のガソリン中の芳香族分は、20〜45容量%であることが好ましい。より好ましくは25容量%以上、42容量%以下である。芳香族分が45容量%越えると、吸気弁デポジット、燃焼室デポジットが増加する可能性があり、また、点火プラグのくすぶりが発生する可能性がある。あるいはまた、排出ガス中のベンゼン濃度が増加する可能性がある。一方、芳香族分が20容量%を下回る場合には燃費が悪化する可能性がある。ここでいう芳香族分とは、JIS K 2536「石油製品−炭化水素タイプ試験方法」の蛍光指示薬吸着法により測定されるガソリン組成物中の含有量を意味する。
【0018】
本発明のガソリン中のオレフィン分は、0〜30容量%であることが好ましい。オレフィン分は、更に好ましくは5容量%以上、25容量%以下である。オレフィン分が30容量%を越えるとガソリンの酸化安定性が悪化する可能性があり、また、排出ガス中のNOxが増加する可能性がある。ここでいうオレフィン分とは、JIS K 2536「石油製品−炭化水素タイプ試験方法」の蛍光指示薬吸着法により測定されるガソリン中の含有量を意味する。
【0019】
本発明のガソリンの未洗実在ガム量は、20mg/100mL以下であることが好ましい。また洗浄実在ガム量は、3mg/100mL以下であることが好ましく、1mg/100mL以下であることがより好ましい。未洗実在ガム量および洗浄実在ガム量が上記の値を超えた場合は、燃料導入系統において析出物が生成したり、吸入弁が膠着する心配がある。ここでいう未洗実在ガム量とは、JIS K 2261「石油製品−自動車ガソリン及び航空燃料油−実在ガム試験方法−噴射蒸発法」により測定した値を意味する。
【0020】
本発明のガソリンの低発熱量は燃費悪化防止の点から、40000J/g以上が好ましく、42000J/g以上がより好ましい。なお、ここでいう低発熱量とは、JIS K 2279「原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法」により測定される低発熱量を意味する。
【0021】
本発明のガソリンの酸化安定度は、480分以上であることが好ましく、1440分以上であることがより好ましい。酸化安定度が480分に満たない場合は、貯蔵中にガムが生成する可能性がある。ここでいう酸化安定度とは、JIS K 2287「ガソリン酸化安定度試験方法(誘導期間法)」によって測定した値を意味する。
【0022】
本発明のガソリンは、銅板腐食(50℃、3h)が1であるのが好ましく、1aであるのがより好ましい。銅板腐食が1を越える場合は、燃料系統の導管が腐食する可能性がある。ここでいう銅板腐食とは、JIS K 2513「石油製品−銅板腐食試験方法」(試験温度50℃、試験時間3時間)に準拠して測定した値を意味する。
【0023】
本発明のガソリンは、灯油混入量が0〜4容量%であることが望ましい。ここでいう灯油混入量とは、ガソリン全量基準での炭素数13〜14の炭化水素含有量(容量%)を表し、この量は以下に示すガスクロマトグラフィー法により定量して得られるものである。すなわち、カラムにはメチルシリコンのキャピラリーカラムを、キャリアガスにはヘリウムまたは窒素を、検出器には水素イオン化検出器(FID)を用い、カラム長25〜50m、キャリアガス流量0.5〜1.5ml/分、分割比1:50〜1:250、注入口温度150〜250℃、初期カラム温度−10〜10℃、終期カラム温度150〜250℃、検出器温150〜250℃の条件で測定した値である。
【0024】
本発明のガソリンは、本発明で規定する性状を具備するようにエタノールと、一種又は二種以上のガソリン基材とを配合し、所望により清浄分散剤やその他の添加剤を添加することで調製することができる。
ガソリン基材は、従来公知の任意の方法で製造することができる。ガソリン基材としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる軽質ナフサ;接触分解法、水素化分解法などで得られる分解ガソリン;接触改質法で得られる改質ガソリン;オレフィンの重合によって得られる重合ガソリン;イソブタンなどの炭化水素に低級オレフィンを付加(アルキル化)することによって得られるアルキレート;軽質ナフサを異性化装置でイソパラフィンに転化して得られる異性化ガソリン;脱n−パラフィン油;ブタン;芳香族炭化水素化合物;プロピレンを二量化し、続いてこれを水素化して得られるパラフィン留分などが挙げられる。
【0025】
本発明のガソリンに添加することができる清浄分散剤としては、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどのガソリン清浄分散剤として公知の化合物を挙げることができる。特に、用いる清浄分散剤としては空気中300℃で熱分解を行った場合にその残分が無いものであることが望ましい。これらの添加剤の添加によりIVDを防止し、CCDを低減させることができる。清浄分散剤の添加量はガソリン全量基準で通常1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下である。
【0026】
本発明のガソリンに添加することができるその他の燃料油添加剤としては、具体的には、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤;N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパンのようなアミンカルボニル縮合化合物等の金属不活性化剤;有機リン系化合物などの表面着火防止剤;多価アルコールあるいはそのエーテルなどの氷結防止剤;有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩;高級アルコール硫酸エステルなどの助燃剤;アニオン系界面活性剤;カチオン系界面活性剤;両性界面活性剤などの帯電防止剤;アゾ染料などの着色剤;有機カルボン酸あるいはそれらの誘導体類;アルケニルコハク酸エステル等の防錆剤;ソルビタンエステル類等の水抜き剤;キリザニン、クマリンなどの識別剤;天然精油合成香料などの着臭剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、1種または2種以上を添加することができ、その合計添加量はガソリン全量基準で0.1質量%以下とすることが好ましい。
【0027】
本発明のガソリンは、四エチル鉛等のアルキル鉛化合物を実質的に含有しないガソリンであり、たとえ極微量の鉛化合物を含有する場合であっても、その含有量はJIS K 2255「ガソリン中の鉛分試験方法」の適用区分下限値以下である。
【0028】
本発明のガソリンには必要に応じてエタノール以外の含酸素化合物を適宜配合しても良い。エタノール以外の含酸素化合物としては、例えば、炭素数3〜4のアルコール類、炭素数4〜8のエーテル類などが含まれる。具体的な含酸素化合物としては、例えば、メチル−tert-ブチルエーテル(MTBE)、エチル−tert-ブチルエーテル、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、tert-アミルエチルエーテルなどを挙げることができる。なお、メタノールは排出ガス中のアルデヒド濃度が高くなる可能性があり、腐食性もあるので好ましくない。
エタノールを含む含酸素化合物の含有量(原料の由来の含有量及び/又添加剤として加えた場合の含有量)は酸素元素換算でその上限が3.7質量%であることが好ましく、より好ましくは2.5質量%、更に好ましくは2.0質量%である。3.7質量%を越える場合は、排出ガス中のNOxが増加する可能性がある。
【0029】
【発明の効果】
本発明のガソリンは、エタノール配合に起因する蒸気圧の上昇が抑制されるため、給油時の燃料蒸発ガスの排出量を低減することができる。
【0030】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0031】
(実施例1〜3および比較例1)
軽質ナフサ、分解ガソリン、改質ガソリン、ブタンおよびエタノールの基材を用いて、実施例1〜3および比較例1のガソリンを調製した。各ガソリンの性状を表1に示す。これらのガソリンの給油1回当りのオゾン生成量(g)を下記方法により算出した。その結果を表1に併記した。
【0032】
(a)給油1回当りのオゾン生成量
試験車両として下記緒元の国産乗用車を使用し、米国の40CFR86に記載されているORVR装着車の給油時蒸発ガス認証試験法に従い、給油時蒸発ガスの排出量、および燃料蒸発ガス中の個別の化合物組成を測定し、各化合物の排出量を算出した。そして、各化合物の排出量に、カリフォルニア州大気資源局より公表されているオゾン生成ファクターを乗じてオゾン生成量を算出した。
(b)試験車両
エンジン:直列4気筒
排気量:1.5L
燃料タンク容量:45L
キャニスタ容量:0.4L
ORVR装着無し
【0033】
【表1】
Figure 0004880866
【0034】
表1に示す通り、本発明のガソリンは、エタノール配合によるリード蒸気圧の上昇が小さく、給油時のオゾン生成が抑制されていることが分かる。

Claims (1)

  1. ガソリン全量基準で1〜10容量%のエタノールを含有し、50容量%留出温度が75〜95℃であり、下記式(1)の揮発性指標を満たすことを特徴とするリサーチオクタン価89以上のガソリン。
    3272≦383×A+119×B+36×C≦5437 (1)
    上記式(1)におけるA、BおよびCは、次の値を示す。
    A:ガソリン中の炭素数4の化合物の総量(モル%)
    B:ガソリン中の炭素数5の化合物の総量(モル%)
    C:ガソリン中の炭素数6の化合物の総量(モル%)
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